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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】しゅう動部品
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/34 20060101AFI20220711BHJP
【FI】
F16J15/34 G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019518778
(86)(22)【出願日】2018-05-15
(86)【国際出願番号】 JP2018018624
(87)【国際公開番号】W WO2018212144
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2020-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2017099502
(32)【優先日】2017-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(74)【代理人】
【識別番号】100206911
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】井村 忠継
(72)【発明者】
【氏名】谷島 綾乃
(72)【発明者】
【氏名】井上 秀行
(72)【発明者】
【氏名】徳永 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】細江 猛
(72)【発明者】
【氏名】根岸 雄大
(72)【発明者】
【氏名】前谷 優貴
【審査官】山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/035860(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/203878(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/041048(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/112455(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/031530(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のしゅう動部品の互いに相対しゅう動する少なくとも一方側の環状のしゅう動面に複数のディンプルが配置されるしゅう動部品において、
前記複数のディンプルはランダムに配置されてランダムディンプル群が形成され、
前記ランダムディンプル群は、前記しゅう動面を周方向に分けた区画に配置され、かつ、隣接する前記ランダムディンプル群は、ランド部を介してしゅう動面の周方向に独立しており、
前記区画において、前記しゅう動面における径方向の中央の内径側にも外径側にも前記ディンプルが配置されるとともに、前記ランダムディンプル群を形成する前記ディンプルの中心から前記しゅう動面の中心までの長さの平均である半径方向座標平均が前記しゅう動面における径方向の中央から前記しゅう動面の中心までの長さであるしゅう動半径より小さくなるように前記ディンプルが配置されることを特徴とするしゅう動部品。
【請求項2】
前記区画において、前記ランダムディンプル群の前記ディンプルの前記しゅう動面の中心からの角度方向の標準偏差を、前記ディンプルを均一配置した場合の整列ディンプル群の前記ディンプルの前記しゅう動面の中心からの角度方向の標準偏差で除した値である角度方向標準偏差が1未満になるように前記ディンプルが配置されることを特徴とする請求項1に記載のしゅう動部品。
【請求項3】
前記区画において、前記ランダムディンプル群の前記ディンプルの前記しゅう動面の中心からの角度方向の標準偏差を、前記ディンプルを均一配置した場合の整列ディンプル群の前記ディンプルの前記しゅう動面の中心からの角度方向の標準偏差で除した値である角度方向標準偏差が0.8未満になるように前記ディンプルが配置されることを特徴とする請求項1に記載のしゅう動部品。
【請求項4】
一対のしゅう動部品の互いに相対しゅう動する少なくとも一方側の環状のしゅう動面に複数のディンプルが配置されるしゅう動部品において、
前記しゅう動面の外周側被密封流体側であり、前記しゅう動面の内周側が漏れ側であり、
前記複数のディンプルはランダムに配置されてランダムディンプル群が形成され、
前記ランダムディンプル群は、前記しゅう動面を周方向に分けた区画に配置され、かつ、隣接する前記ランダムディンプル群は、ランド部を介してしゅう動面の周方向に独立しており、
前記区画の前記漏れ側には、前記ランダムディンプル群を形成する前記ディンプルの中心から前記しゅう動面の中心までの長さの平均である半径方向座標平均が前記しゅう動面における径方向の中央から前記しゅう動面の中心までの長さであるしゅう動半径より小さくなるように前記ディンプルが配置されてなるポンピング形ランダムディンプル群が配設され、
前記区画の前記被密封流体側には、前記ランダムディンプル群の前記ディンプルの前記しゅう動面の中心からの角度方向の標準偏差を、前記ディンプルを均一配置した場合の整列ディンプル群の前記ディンプルの前記しゅう動面の中心からの角度方向の標準偏差で除した値である角度方向標準偏差が少なくとも1未満になるように前記ディンプルが配置されてなる潤滑形ランダムディンプル群が配設され、
前記しゅう動面の径方向に対向する前記ポンピング形ランダムディンプル群及び前記潤滑形ランダムディンプル群が回転中心を通る中心線に対してそれぞれ対称に形成されていることを特徴とするしゅう動部品。
【請求項5】
前記しゅう動面には、前記漏れ側と離隔されると共に前記被密封流体側と連通された溝が配設され、前記溝の円周方向溝が前記ポンピング形ランダムディンプル群と前記潤滑形ランダムディンプル群との間に配設されることを特徴とする請求項4に記載のしゅう動部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、メカニカルシール、すべり軸受、その他、しゅう動部に適したしゅう動部品に関する。特に、しゅう動面に流体を介在させて摩擦を低減させるとともに、しゅう動面から流体が漏洩するのを防止する必要のある密封環または軸受などのしゅう動部品に関する。
【背景技術】
【0002】
しゅう動部品の一例である、メカニカルシールにおいて、密封性を維持しつつ、回転中のしゅう動摩擦を極限まで下げることが求められている。低摩擦化の手法としては、しゅう動面に多様なテクスチャリングを施すことで、これらの実現を図ろうとしており、例えば、テクスチャリングのひとつとしてしゅう動面にディンプルを配列したものが知られている。
【0003】
従来、密封と潤滑という相反する条件を両立させるため、しゅう動面にディンプルを設ける場合、複数のディンプルを整列に配置するのが一般的である。例えば、特開2003-343741号公報(以下、「特許文献1」という。)に記載の発明は、しゅう動面の摩擦係数を低減すると共に、シール能力を向上させることを目的として、しゅう動面に境界基準線Xを境に外周側と内周側とが傾斜方向を異にする複数の細長いディンプルを規則的に整列して設け、外周側のディンプルの回転方向先端を外周側へ向かって傾斜させると共に、内周側のディンプルの回転方向先端を内周側へ向かって傾斜させるようにしたものである。
【0004】
また、従来、潤滑性の向上のため、複数のディンプルをランダムに配置することも知られている。例えば、特開2001-221179号公報(以下、「特許文献2」という。)に記載の発明は、ロータリ圧縮機のシリンダの内壁としゅう動するベーンの先端面及び両側端面に、複数個のディンプルをランダム配列したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-343741号公報
【文献】特開2001-221179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の発明は、ディンプルを整列に配置していることから、漏れ側からしゅう動面への吸い込み効果及び被密封流体側からしゅう動面への流入効果が少ないため、外周側のディンプルの回転方向先端を外周側へ向かって傾斜させると共に、内周側のディンプルの回転方向先端を内周側へ向かって傾斜させるという複雑な構成をとる必要があり、また、しゅう動面の径方向の中心部に流体が集中するためしゅう動面全体を均一に潤滑することができないという問題があった。
また、特許文献2に記載の発明は、潤滑性の向上のため、複数のディンプルをランダムに配置したというに過ぎず、密封性の向上に関しての考察はされていない。
【0007】
複数のディンプルをランダムに配置することで整列配置に比べて潤滑性能の向上がみられるが、ランダム配置においては、低圧流体側に漏れようとする流体を吸い込む効果、いわゆる、ポンピング効果が得られにくいことから漏れが生じるという問題があり、また、ランダムに配置した結果、どのような配置がどのように潤滑性能に影響しているか不明瞭であるという問題もあった。
【0008】
本発明は、第一に、複数のディンプルをランダム配置する場合のディンプル配置特性とポンピング特性との関係を解明し、漏れ側からしゅう動面への流体の吸い込み特性の向上を図ることにより、密封性の優れたしゅう動部品を提供することを目的とするものである。
また、本発明は、第二に、上記第一の目的に加えて、被密封流体側からしゅう動面への流体の流入特性の向上を図ることにより、密封と潤滑という相反する条件を両立させることができるしゅう動部品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
〔本発明の原理〕
本願発明の発明者は、しゅう動面に複数ディンプルをランダムに配置したしゅう動部品において、ラテン超方格法による実験計画を用いた200ケースの配置条件の数値実験を行った結果、ディンプルの配置とポンピング特性及び潤滑特性との間には以下の関係があるという知見を得た。
(1)漏れ側からしゅう動面への吸い込み量(以下、ポンピング量ということもある。)は、ディンプルのしゅう動面の半径方向座標の平均値と相関がある(スピアマン順位相関係数0.672)。図2(a)に示すように、ディンプル群を構成するディンプル中心の半径方向座標平均値(ディンプル群の半径方向重心を意味する。)がしゅう動半径(しゅう動面の径方向の中心。)より小さくなると、すなわち平均半径方向座標rmeanが0.5より小さくなるとしゅう動面の内周側(漏れ側)からしゅう動面内に流体を吸い込む量が多くなる。ここで、図2(a)の平均半径方向座標rmeanは次の式により表される。
rmean=(ディンプル群を構成するディンプルの中心の半径方向座標の平均値-しゅう動面の内半径Ri)/(しゅう動面の外半径Ro-しゅう動面の内半径Ri)
(2)相対しゅう動するしゅう動面のトルクは、均一な分布によって正規化されたディンプルの角度方向座標の標準偏差(以下「角度方向標準偏差σθ」といい、ディンプル群の角度方向の分散度合を意味する。)と相関があり(スピアマン順位相関係数0.595)、図2(b)に示すように、角度方向標準偏差σθが1より小さく、より好ましくは、0.8より小さくなると、大きなトルクが発生しにくくなる。
本願発明は、上記の知見に基づき、第一に、ディンプル中心の半径方向座標平均値がしゅう動半径より小さくなるようにディンプルを配置して、漏れ側からしゅう動面への吸い込み特性の向上を図ることにより密封性を向上させるものであり、第二に、ディンプルの角度方向標準偏差σθが1より小さく、より好ましくは0.8より小さくなるようにディンプルを配置して、潤滑性を向上させ、大きなトルクの発生を防止するものである。
【0010】
上記目的を達成するため本発明のしゅう動部品は、第1に、
一対のしゅう動部品の互いに相対しゅう動する少なくとも一方側の環状のしゅう動面に複数のディンプルが配置されるしゅう動部品において、
前記複数のディンプルはランダムに配置されてランダムディンプル群が形成され、
前記ランダムディンプル群は、前記しゅう動面を周方向に分けた区画に配置され、かつ、隣接する前記ランダムディンプル群は、ランド部を介してしゅう動面の周方向に独立しており、
前記区画において、前記ランダムディンプル群の前記ディンプルの中心の半径方向座標平均が前記しゅう動面のしゅう動半径より小さくなるように前記ディンプルが配置されることを特徴としている。
この特徴によれば、漏れ側からしゅう動面への流体の吸い込み特性をしゅう動面の周方向に向上することができ、密封性の優れたしゅう動部品を提供することができる。
【0012】
また、本発明のしゅう動部品は、第に、第1の特徴において、
前記区画において、前記ランダムディンプル群の前記ディンプルの角度方向標準偏差が1未満になるように前記ディンプルが配置されることを特徴としている。
この特徴によれば、しゅう動面を周方向に分けた区画において、被密封流体側からしゅう動面への流体の流入特性を向上させ、厚い液膜を得ることができ、潤滑性の優れたとしゅう動部品を提供することができる。
【0013】
また、本発明のしゅう動部品は、第に、第1の特徴において、
前記区画において、前記ランダムディンプル群の前記ディンプルの角度方向標準偏差が0.8未満になるように前記ディンプルが配置されることを特徴としている。
この特徴によれば、しゅう動面を周方向に分けた区画において、より一層、被密封流体側からしゅう動面への流体の流入特性を向上させ、厚い液膜を得ることができ、潤滑性の優れたしゅう動部品を提供することができる。
【0014】
また、本発明のしゅう動部品は、
一対のしゅう動部品の互いに相対しゅう動する少なくとも一方側の環状のしゅう動面に複数のディンプルが配置されるしゅう動部品において、
前記しゅう動面の外周側及び内周側のうち、一方が被密封流体側であり、他方が漏れ側であり、
前記複数のディンプルはランダムに配置されてランダムディンプル群が形成され、
前記ランダムディンプル群は、前記しゅう動面を周方向に分けた区画に配置され、かつ、隣接する前記ランダムディンプル群は、ランド部を介してしゅう動面の周方向に独立しており、
前記区画の前記漏れ側には、前記ランダムディンプル群の前記ディンプルの中心の半径方向座標平均が前記しゅう動面のしゅう動半径より小さくなるように前記ディンプルが配置されてなるポンピング形ランダムディンプル群が配設され、
前記区画の前記被密封流体側には、前記ランダムディンプル群のディンプルの角度方向標準偏差が少なくとも1未満になるように前記ディンプルが配置されてなる潤滑形ランダムディンプル群が配設されることを特徴としている
この特徴によれば、しゅう動面の密封性を向上させると共に、潤滑性を、より一層、向上させることができる。
【0015】
また、本発明のしゅう動部品は、第に、第4の特徴において、
前記しゅう動面には、前記漏れ側と離隔されると共に前記被密封流体側と連通された深溝が配設され、前記深溝の円周方向深溝が前記ポンピング形ランダムディンプル群と前記潤滑形ランダムディンプル群との間に配設されることを特徴としている。
この特徴によれば、深溝を介してしゅう動面に被密封流体側から流体を供給できるのでしゅう動面の潤滑性を向上することができると共に、円周方向深溝によりポンピング形ランダムディンプル群と潤滑形ランダムディンプル群との相互干渉を防止することができ、ポンピング形ランダムディンプル群及び潤滑形ランダムディンプル群の有するそれぞれの機能を十分に発揮させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以下のような優れた効果を奏する。
(1)一対のしゅう動部品の互いに相対しゅう動する少なくとも一方側の環状のしゅう動面に複数のディンプルが配置されるしゅう動部品において、複数のディンプルはランダムに配置されてランダムディンプル群が形成され、ランダムディンプル群のディンプルの中心の半径方向座標平均がしゅう動面のしゅう動半径より小さくなるようにディンプルが配置されることにより、漏れ側からしゅう動面への流体の吸い込み特性を向上することができ、密封性の優れたしゅう動部品を提供することができる。
【0017】
(2)ランダムディンプル群は、しゅう動面の周方向に独立して複数形成されることにより、漏れ側からしゅう動面への流体の吸い込み特性をしゅう動面の周方向において均一に向上させることができる。
【0018】
(3)ランダムディンプル群のディンプルの角度方向標準偏差が1未満になるようにディンプルが配置されることにより、被密封流体側からしゅう動面への流体の流入特性を向上させ、厚い液膜を得ることができ、潤滑性の優れたとしゅう動部品を提供することができる。
【0019】
(4)ランダムディンプル群のディンプルの角度方向標準偏差が0.8未満になるようにディンプルが配置されることにより、より一層、被密封流体側からしゅう動面への流体の流入特性を向上させ、厚い液膜を得ることができ、潤滑性の優れたしゅう動部品を提供することができる。
【0020】
(5)漏れ側のしゅう動面には、ランダムディンプル群のディンプルの中心の半径方向座標平均がしゅう動面のしゅう動半径より小さくなるようにディンプルが配置されてなるポンピング形ランダムディンプル群が配設され、被密封流体側のしゅう動面には、ランダムディンプル群のディンプルの角度方向標準偏差が少なくとも1未満になるようにディンプルが配置されてなる潤滑形ランダムディンプル群が配設されることにより、しゅう動面の密封性を向上させると共に、潤滑性を、より一層、向上させることができる。
【0021】
(6)しゅう動面には、漏れ側と離隔されると共に被密封流体側と連通された深溝が配設され、深溝の円周方向深溝がポンピング形ランダムディンプル群と潤滑形ランダムディンプル群との間に配設されることにより、深溝を介してしゅう動面に被密封流体側から流体を供給できるのでしゅう動面の潤滑性を向上することができると共に、円周方向深溝によりポンピング形ランダムディンプル群と潤滑形ランダムディンプル群との相互干渉を防止することができ、ポンピング形ランダムディンプル群及び潤滑形ランダムディンプル群の有するそれぞれの機能を十分に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施例1に係るメカニカルシールの一例を示す縦断面図である。
図2】本発明の原理を説明するための説明図である。
図3】本発明の実施例1に係るしゅう動部品のしゅう動面の一例を説明するための平面図である。
図4】本発明の実施例2に係るしゅう動部品のしゅう動面の一例を説明するための平面図である。
図5】本発明の実施例3に係るしゅう動部品のしゅう動面の一例を説明するための平面図である。
図6】本発明の実施例4に係るしゅう動部品のしゅう動面の一例を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置などは、特に明示的な記載がない限り、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【実施例1】
【0024】
図1ないし図3を参照して、本発明の実施例1に係るしゅう動部品について説明する。
なお、以下の実施例においては、しゅう動部品の一例であるメカニカルシールを例にして説明するが、これに限定されることなく、例えば、円筒状しゅう動面の軸方向一方側に潤滑油を密封しながら回転軸としゅう動する軸受のしゅう動部品として利用することも可能である。
なお、メカニカルシールを構成するしゅう動部品の外周側を高圧流体側(被密封流体側)、内周側を低圧流体側(漏れ側)として説明するが、本発明はこれに限定されることなく、高圧流体側と低圧流体側とが逆の場合も適用可能である。
【0025】
図1は、メカニカルシールの一例を示す縦断面図であって、しゅう動面の外周から内周方向に向かって漏れようとする高圧流体側の被密封流体を密封する形式のインサイド形式のものであり、高圧流体側のポンプインペラ(図示省略)を駆動させる回転軸1側にスリーブ2を介してこの回転軸1と一体的に回転可能な状態に設けられた一方のしゅう動部品である円環状の回転側密封環3と、ポンプのハウジング4に非回転状態かつ軸方向移動可能な状態で設けられた他方のしゅう動部品である円環状の固定側密封環5とが設けられ、固定側密封環5を軸方向に付勢するコイルドウェーブスプリング6及びベローズ7によって、しゅう動面S同士で密接しゅう動するようになっている。すなわち、このメカニカルシールは、回転側密封環3と固定側密封環5との互いのしゅう動面Sにおいて、被密封流体が回転軸1の外周側から内周側へ流出するのを防止するものである。
なお、図1では、回転側密封環3のしゅう動面の幅が固定側密封環5のしゅう動面の幅より広い場合を示しているが、これに限定されることなく、逆の場合においても本発明を適用出来ることはもちろんである。
【0026】
回転側密封環3及び固定側密封環5の材質は、耐摩耗性に優れた炭化ケイ素(SiC)及び自己潤滑性に優れたカーボンなどから選定されるが、例えば、両者がSiC、あるいは、回転側密封環3がSiCであって固定側密封環5がカーボンの組合せが可能である。
相対しゅう動する回転側密封環3あるいは固定側密封環5の少なくともいずれか一方のしゅう動面には、ディンプルが配設される。
【0027】
本発明において、「ディンプル」とは、平坦なしゅう動面Sに形成される窪みのことであり、その形状は特に限定されるものではない。例えば、くぼみの平面形状は円形、楕円形、長円形、もしくは矩形が包含され、くぼみの断面形状もお椀状、または、方形など種々の形が包含される。
【0028】
しゅう動面の摩擦係数を低減させるためには、流体潤滑状態で作動させることが望ましい。ディンプルは窪み形状により流体潤滑作用が得られるものであり、ディンプルにおける流体潤滑のメカニズムは次のとおりである。
相手側しゅう動面が相対移動すると、ディンプルの穴部のくさび作用によって、穴部の上流側の部分では負圧、下流側の部分で正圧が発生する。その際、穴部の上流側の負圧部分では、液膜が破断され、液体の蒸気や気泡による空洞が形成され(キャビテーション)、負圧が打ち消される。その結果、正圧のみが残り負荷能力が発生することで、しゅう動面Sが持ち上がる。しゅう動面Sが持ち上がると、相対しゅう動する2つのしゅう動面の間隙が大きくなり、しゅう動面Sに潤滑性の流体が流入し、流体潤滑作用が得られる。
【0029】
本例では、固定側密封環5のしゅう動面Sに複数のディンプルがランダムに配置される場合について説明する。この場合、回転側密封環3にはディンプルは設けられなくても、設けられてもよい。
なお、ランダム配置とは、規則性を持って配置される整列配置を除く配置の意味であり、千鳥配置は含まれない。
【0030】
図3において、固定側密封環5のしゅう動面Sには、複数のディンプル10が配置されている。複数のディンプル10はランダムに配置されてランダムディンプル群11が形成されている。
図3の場合は、ランダムディンプル群11は、ランド部Rを介してしゅう動面Sの周方向に独立して36等配で配設されているが、本発明は、36等配に限定されることなく、1以上であればよい。
【0031】
各ランダムディンプル群11において、ランダムディンプル群11を構成するディンプル10の中心の半径方向座標の平均値がしゅう動面Sのしゅう動半径15(二点鎖線で示すしゅう動面Sの径方向の中心。)より小さくなるように、すなわち平均半径方向座標rmeanが0.5以下になるように配置される。ここで、しゅう動半径15は、Rm=(Ro+Ri)/2、Roはしゅう動面の外半径、Riはしゅう動面の内半径である。
【0032】
各ランダムディンプル群11のディンプル10の中心の半径方向座標平均が、しゅう動面Sのしゅう動半径15より小さくなると、しゅう動面Sの内周側(漏れ側)からしゅう動面内に流体を吸い込む量が多くなる。
本発明においては、ディンプル10の中心の半径方向座標平均がしゅう動面Sのしゅう動半径15(二点鎖線で示すしゅう動面Sの径方向の中心。)より小さくなるようにディンプル10が配置されてなる各ランダムディンプル群を「ポンピング形ランダムディンプル群」と呼ぶ。
【0033】
ポンピング形ランダムディンプル群のディンプル10の配置は次のようにして行われる。
(1)ディンプル10を質点系の電子とみなし、電子間に働くクーロン力によって複数のディンプル10をソフトウェアを用いてランダムに配置する。
(2)しゅう動面の内径側に多くのディンプル10が配置されるように、ソフトウェアで仮想の力を操作し、意図的に偏りを与える。
(3)偏りを与えたディンプルの座標から、ソフトウェアを用いて、ディンプル10の中心の半径方向座標平均を算出する。
(4)ディンプル10の中心の半径方向座標平均がしゅう動面Sのしゅう動半径15より小さいか確認する。
(5)ディンプル10の中心の半径方向座標平均がしゅう動面Sのしゅう動半径15より大きい場合は、上記(2)の操作を行う。
【0034】
図3に示す実施例1においては、さらに、各ランダムディンプル群11において、ディンプル10は、ディンプル10の角度方向標準偏差σθが1未満であるように配置されている。
この角度方向標準偏差が1未満であるとは、次の式1のとおりである。
角度方向標準偏差σθ=ランダムディンプル群の角度方向標準偏差σ/均一配置の整列ディンプル群の角度方向標準偏差σr <1 式1
【0035】
各ランダムディンプル群11において、角度方向標準偏差σθが1未満であるように配置されると、しゅう動面Sの潤滑性が向上され、大きなトルク(しゅう動の抵抗)の発生が防止される。また、角度方向標準偏差σθが0.8未満であるように配置されると、より一層、しゅう動面Sの潤滑性が向上される。
本発明において、角度方向標準偏差σθが1未満であるように配置されてなるランダムディンプル群を「潤滑形ランダムディンプル群」と呼ぶ。
【0036】
図3に示すランダムディンプル群11は、ディンプル10の中心の半径方向座標平均がしゅう動面Sのしゅう動半径15より小さくなるように配置されてなるポンピング形ランダムディンプル群であり、同時に、角度方向標準偏差σθが1未満であるように配置されてなる潤滑形ランダムディンプル群でもある。
【0037】
図3に示す実施例1において、各ランダムディンプル群11のディンプル10の角度方向標準偏差σθが1未満であるようなディンプル10の配置は次のようにして行われる。
(1)図3において、ランダムディンプル群11はしゅう動面Sの周方向に36等配で配設されているため、まず、36等配の場合の均一配置の整列ディンプル群の角度方向標準偏差σrを求める。36等配の場合の均一配置の整列ディンプル群の区画16の角度は10°であり、区画16の中心位置17からの均等位置は2.5°の位置になる。よって、36等配の場合の均一配置の整列ディンプル群の角度方向標準偏差σrは2.5°となる。
(2)次に、この状態で、中心位置17側に多くのディンプル10が配置されるように、ソフトウェアで仮想の力を操作し、意図的に偏りを与える。
(3)偏りを与えたディンプルの座標から、ソフトウェアを用いて、ランダムディンプル群11の角度方向標準偏差σを算出する。
(4)上記の式1に基づいて、ランダムディンプル群11の角度方向標準偏差σを整列ディンプル群の角度方向標準偏差σrによって正規化したランダムディンプル群11の角度方向標準偏差σθが1未満であるか確認する。
(5)ランダムディンプル群11の角度方向標準偏差σθが1より大きい場合は、上記(2)の操作を行う。
【0038】
以上の説明によれば、本発明の実施例1に係るしゅう動部品は以下のような格別顕著な効果を奏する。
(1)一対のしゅう動部品の互いに相対しゅう動する少なくとも一方側の環状のしゅう動面に複数のディンプルが配置されるしゅう動部品において、複数のディンプル10はランダムに配置されてランダムディンプル群11が形成され、ランダムディンプル群11のディンプル10の中心の半径方向座標平均がしゅう動面Sのしゅう動半径15より小さくなるようにディンプル10が配置されることにより、漏れ側からしゅう動面への流体の吸い込み特性を向上することができ、密封性の優れたしゅう動部品を提供することができる。
(2)ランダムディンプル群11は、しゅう動面Sの周方向に独立して複数形成されることにより、漏れ側からしゅう動面への流体の吸い込み特性をしゅう動面の周方向において均一に向上させることができる。また、その際、隣接するランダムディンプル群11がランド部Rを介して配設されるので、ランド部Rにおいて動圧発生効果を増大することができる。
(3)ランダムディンプル群11のディンプル10の角度方向標準偏差σθが1未満になるようにディンプル10が配置されることにより、被密封流体側からしゅう動面への流体の流入特性を向上させ、厚い液膜を得ることができ、潤滑性の優れたとしゅう動部品を提供することができる。
また、ランダムディンプル群11のディンプル10の角度方向標準偏差σθが0.8未満になるようにディンプル10が配置されると、より一層、被密封流体側からしゅう動面への流体の流入特性を向上することができ、潤滑性の優れたとしゅう動部品を提供することができる。
【実施例2】
【0039】
図4を参照して、本発明の実施例2に係るしゅう動部品について説明する。
実施例2に係るしゅう動部品は、ポンピング形ランダムディンプル群と潤滑形ランダムディンプル群とが区分けされて別々に配設される点で実施例1のしゅう動部品と相違するが、その他の基本構成は実施例1と同じであり、同じ部材には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0040】
図4において、漏れ側(図4においては内周側)のしゅう動面Sには、ランダムディンプル群11のディンプル10の中心の半径方向座標平均がしゅう動面Sのしゅう動半径15より小さくなるようにディンプル10が配置されてなるポンピング形ランダムディンプル群11-Pがランド部Rを介して36等配で配設され、被密封流体側(図4においては外周側)のしゅう動面Sには、ランダムディンプル群11のディンプル10の角度方向標準偏差が少なくとも1未満になるようにディンプル10が配置されてなる潤滑形ランダムディンプル群11-Lがランド部Rを介して36等配で配設されている。
なお、ポンピング形ランダムディンプル群11-P及び潤滑形ランダムディンプル群11-Lは、36等配に限らず、複数であればよく、また、等配でなくてもよい。
【0041】
本例では、しゅう動面Sの漏れ側に漏れ側からしゅう動面Sへの大きな吸い込み量を有するポンピング形ランダムディンプル群11-Pが配設されると共に被密封流体側にしゅう動面への流体の流入特性が向上させ、液膜厚さを厚くする潤滑形ランダムディンプル群11-Lが配設されることにより、しゅう動面Sの密封性及び潤滑性を向上することができる。
【0042】
また、ポンピング形ランダムディンプル群11-P及び潤滑形ランダムディンプル群11-Lは、隣接する2個のディンプル群11-P及びディンプル群11-Lがそれぞれ回転中心を通る中心線rに対して対称に形成されている。
そのため、相手側しゅう動面がいずれの方向に回転しても同様の機能を果たすことができ、両回転型のしゅう動部品に適した形状とされている。
【0043】
以上の説明によれば、本発明の実施例2に係るしゅう動部品は以下のような格別顕著な効果を奏する。
(1)漏れ側(図3においては内周側)のしゅう動面Sには、ランダムディンプル群11のディンプル10の中心の半径方向座標平均がしゅう動面Sのしゅう動半径15より小さくなるようにディンプル10が配置されてなるポンピング形ランダムディンプル群11-Pが配設され、被密封流体側のしゅう動面Sには、ランダムディンプル群11のディンプル10の角度方向標準偏差が少なくとも1未満になるようにディンプル10が配置されてなる潤滑形ランダムディンプル群11-Lが配設されることにより、しゅう動面Sの密封性を向上させると共に、潤滑性を、より一層、向上させることができる。
(2)隣接する2個のディンプル群11-P及びディンプル群11-Lは、それぞれ、回転中心を通る中心線rに対して対称に形成されることにより、両回転型に好適なしゅう動部品を提供することができる。
【実施例3】
【0044】
図5を参照して、本発明の実施例3に係るしゅう動部品について説明する。
実施例3に係るしゅう動部品は、深溝12が設けられている点で実施例2(図4)のしゅう動部品と相違するが、その他の基本構成は実施例2と同じであり、同じ部材には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0045】
図5において、漏れ側(図5においては内径側)のしゅう動面Sにはポンピング形ランダムディンプル群11-Pが36等配で配設され、被密封流体側(図5においては外径側)のしゅう動面Sには潤滑形ランダムディンプル群11-Lが配設され、漏れ側(図5においては内径側)にはポンピング形ランダムディンプル群11-Pが配設され、潤滑形ランダムディンプル群11-Lとポンピング形ランダムディンプル群11-Pとの間には深溝12が配設されている。
【0046】
深溝12は、円周方向深溝12Aと半径方向深溝12Bとから構成される。円周方向深溝12Aはしゅう動面Sの全周に亘って設けられており、円周方向深溝12Aの外周側及び内周側はしゅう動面Sによって区画される。半径方向深溝12Bは一方が被密封流体側に開口する開口部を有し、他方が円周方向深溝12Aに連通している。これにより、深溝12は、被密封流体側に開口する開口部を除きしゅう動面Sによって区画され、漏れ側とは離隔されている。
【0047】
深溝12は、しゅう動面Sに被密封流体側から流体を供給し、しゅう動面Sを潤滑する機能を有すると共に、ポンピング形ランダムディンプル群11-Pの配設されたポンピング領域と潤滑形ランダムディンプル群11-Lの配設された液膜保持領域との間を遮断し、両領域の有するそれぞれの効果を減殺させることなく発揮させる機能を有するものである。
【0048】
以上の説明によれば、本発明の実施例3に係るしゅう動部品は以下のような格別顕著な効果を奏する。
(1)しゅう動面Sには、漏れ側と離隔されると共に被密封流体側と連通された深溝12が配設され、深溝12の円周方向深溝12Aがポンピング形ランダムディンプル群11-Pと潤滑形ランダムディンプル群11-Lとの間に配設されることにより、しゅう動面Sに被密封流体側から流体を供給し、しゅう動面Sの潤滑性を向上できると共に、ポンピング形ランダムディンプル群11-Pと潤滑形ランダムディンプル群11-Lとの相互干渉を防止し、ポンピング形ランダムディンプル群11-P及び潤滑形ランダムディンプル群11-Lの有するそれぞれの機能を十分に発揮させることができる。
(2)ポンピング形ランダムディンプル群11-Pと潤滑形ランダムディンプル群11-Lとの役割が分けられるため、しゅう動部品の設計を容易にすることができる。
【実施例4】
【0049】
図6を参照して、本発明の実施例4に係るしゅう動部品について説明する。
実施例4に係るしゅう動部品は、被密封流体側(図6においては外径側)のしゅう動面Sには潤滑形ランダムディンプル群11-Lが略20等配で配設され、漏れ側(図6においては内径側)にはポンピング形ランダムディンプル群11-Pが略10等配で配設され、潤滑形ランダムディンプル群11-Lの個数とポンピング形ランダムディンプル群11-Pの個数が異なる点で実施例3(図5)のしゅう動部品と相違するが、その他の基本構成は実施例3と同じであり、同じ部材には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0050】
図6において、漏れ側(図6においては内径側)のしゅう動面Sは略10等配に区画され、各区画18には、ポンピング形ランダムディンプル群11-Pが配設される。ポンピング形ランダムディンプル群11-Pのディンプル10は内周部5B(漏れ側)に直接接触して開口部を形成して、漏れ側からしゅう動面へ流体を吸込み、しゅう動部品の密封性を向上させている。また、被密封流体側(図6においては外径側)のしゅう動面Sは略20等配に区画され、各区画16には潤滑形ランダムディンプル群11-Lが配設される。潤滑形ランダムディンプル群11-Lのディンプル10は摺動面Sの外周部5A(被密封流体側)に直接接触して開口部を形成して、被密封流体側からしゅう動面への流体の流入特性を向上させ、厚い液膜を形成してしゅう動部品の潤滑性を向上している。なお、実施例4において、漏れ側のしゅう動面Sは略10等配に区画され、被密封流体側のしゅう動面Sは略20等配に区画されているが、区画数はこれに限らず、他の区画数であってもよい。
【0051】
ポンピング形ランダムディンプル群11-Pと潤滑形ランダムディンプル群11-Lとの間には深溝12が配設されている。深溝12は、円周方向深溝12Aと半径方向深溝12Bとから構成される。円周方向深溝12Aはしゅう動面Sの全周に亘って設けられており、円周方向深溝12Aの外周側及び内周側はしゅう動面Sによって区画される。半径方向深溝12Bは一方が被密封流体側に開口する開口部を有し、他方が円周方向深溝12Aに連通している。これにより、深溝12は、被密封流体側に開口する開口部を除きしゅう動面Sによって区画され、漏れ側とは離隔されている。
【0052】
深溝12は、しゅう動面Sに被密封流体側から流体を供給し、しゅう動面Sを潤滑する機能を有すると共に、ポンピング形ランダムディンプル群11-Pの配設されたポンピング領域と潤滑形ランダムディンプル群11-Lの配設された液膜保持領域との間を遮断し、両領域の有するそれぞれの効果を減殺させることなく発揮させる機能を有するものである。
【0053】
以上の説明によれば、本発明の実施例4に係るしゅう動部品は以下のような格別顕著な効果を奏する。
(1)しゅう動面Sには、漏れ側と離隔されると共に被密封流体側と連通された深溝12が配設され、深溝12の円周方向深溝12Aがポンピング形ランダムディンプル群11-Pと潤滑形ランダムディンプル群11-Lとの間に配設されることにより、しゅう動面Sに被密封流体側から流体を供給し、しゅう動面Sの潤滑性を向上できると共に、ポンピング形ランダムディンプル群11-Pと潤滑形ランダムディンプル群11-Lとの相互干渉を防止し、ポンピング形ランダムディンプル群11-P及び潤滑形ランダムディンプル群11-Lの有するそれぞれの機能を十分に発揮させることができる。
(2)ポンピング形ランダムディンプル群11-Pと潤滑形ランダムディンプル群11-Lとの役割の異なるディンプル群をしゅう動面の外径側、内径側に自由に配置できるので、しゅう動部品の設計を容易にすることができる。
【0054】
以上、本発明の実施の形態を実施例により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0055】
例えば、前記実施例では、しゅう動部品をメカニカルシール装置における一対の回転用密封環及び固定用密封環の少なくともいずれか一方に用いる例について説明したが、円筒状しゅう動面の軸方向一方側に潤滑油を密封しながら回転軸としゅう動する軸受のしゅう動部品として利用することも可能である。
【0056】
また、例えば、前記実施例では、外周側に高圧の被密封流体が存在する場合について説明したが、内周側が高圧流体の場合にも適用できる。
【0057】
また、例えば、前記実施例では、ポンピング形ランダムディンプル群及び潤滑形ランダムディンプル群は36等配で配設されているが、これに限らず、1以上配設されていればよく、また、等配でなくてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 回転軸
2 スリーブ
3 回転側密封環
4 ハウジング
5 固定側密封環
6 コイルドウェーブスプリング
7 ベローズ
10 ディンプル
11 ランダムディンプル群
11-P ポンピング形ランダムディンプル群
11-L 潤滑形ランダムディンプル群
12 深溝
12A 円周方向深溝
12B 半径方向深溝
15 しゅう動半径
16 区画
17 区画の中心位置
S しゅう動面
R ランド領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6