(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】機械学習方法、及び地表変動判定方法
(51)【国際特許分類】
G01S 13/90 20060101AFI20220711BHJP
【FI】
G01S13/90 127
(21)【出願番号】P 2017097563
(22)【出願日】2017-05-16
【審査請求日】2020-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000135771
【氏名又は名称】株式会社パスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】根本 佳介
(72)【発明者】
【氏名】今泉 友之
(72)【発明者】
【氏名】彦坂 修平
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-175381(JP,A)
【文献】特表2003-500658(JP,A)
【文献】特開2009-289111(JP,A)
【文献】特開2006-3302(JP,A)
【文献】国際公開第2008/016034(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0019458(US,A1)
【文献】米国特許第5835055(US,A)
【文献】津田 覚之,"合成開口レーダ情報のニューラルネットワークによる構造化の提案",電子情報通信学会技術研究報告,Vol.115,No.200,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2015年08月20日,pp.31-36
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
G06T 1/00-19/20
G06N 20/00-20/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛翔体に搭載された合成開口レーダーにより得た2時期の
地表についてのSAR画像同士を干渉処理して得た干渉SAR画像の各画素の位相差θ
Sに基づいて画素値が定義されたn種類(nは2以上の所定数である。)の成分画像を生成する成分画像生成ステップと、
所定の地表の変動についてのユーザの判読結果を取得し、複数のサンプル領域について、前記n種類の成分画像と前記判読結果とを組み合わせた学習用データを生成する学習用データ生成ステップと、
前記学習用データを用いて機械学習により変動判定モデルを生成するモデル生成ステップと、を有し、
第k(kはn以下の任意の自然数である。)の前記成分画像は関数p
k(θ)のθ=θ
Sでの値を画素値とし、
前記各関数p
k(θ)は、前記位相差の範囲に対応した幅2πラジアンの区間Dを[α-π,α+π]として、Dで連続、かつp
k(α-π)=p
k(α+π)であり、さらに全kについての前記p
k(θ)の組で定義される座標をP(θ)と表すと、Dの両端同士以外のθ
1≠θ
2なる∀θ
1,θ
2∈Dに対してP(θ
1)≠P(θ
2)であること、
を特徴とする機械学習方法。
【請求項2】
請求項1に記載の機械学習方法において、
前記nは2であり、前記関数はsinθ及びcosθであること、を特徴とする機械学習方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の機械学習方法において、
前記変動判定モデルは畳み込みニューラルネットワークで構成されること、を特徴とする機械学習方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の機械学習方法により生成された前記変動判定モデルを用い対象領域における地表変動を判定する方法であって、
前記対象領域について生成された前記干渉SAR画像から各画素における位相差θTを抽出し、前記関数の値p
k(θ
T)(kは前記n以下の任意の自然数である。)を画素値とする前記n種類の成分画像を生成するステップと、
前記対象領域についての前記n種類の成分画像を含む入力データを前記変動判定モデルに入力して、当該対象領域について前記変動の有無の判定結果を得るステップと、
を有することを特徴とする地表変動判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成開口レーダー(Synthetic Aperture Radar:SAR)により得た2時期のSAR複素画像同士を干渉させて生成された干渉SAR画像に基づいて地表の変動を判定するシステムに用いるモデルを生成する機械学習方法、及び当該モデルを用いた地表変動判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
干渉SAR解析(Interferometric SAR)は、それに用いるレーダーの波長より小さい地表の変位を測定することができ、例えば、ミリメートル単位の地表変動をモニタリングする上で有用な解析手法である。差分干渉SAR解析による解析結果は、一般的に、位相差を虹色の縞で示した干渉画像(インターフェログラム)で表され、人が当該干渉画像を目視し、例えば、地滑りなどの地表の変動を判読する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-309178号公報
【文献】特表2003-500658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
干渉画像にて目的とする地表変動による変動縞を抽出するには判読者の熟練を要する。そのため、判読のための人的資源の確保が容易ではなく、判読に要するコスト、処理時間が大きくなる。また、目視判読では抽出基準が定性的にならざるを得ないため、判読結果にばらつきが生じ易く、品質の確保が容易ではない。そして以上の課題は、広域で地表変動をモニタリングすることを難しくしている。
【0005】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、干渉SAR画像に基づく地表変動の有無の判定の自動化を可能とする機械学習方法、及び地表変動判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る機械学習方法は、飛翔体に搭載された合成開口レーダーにより得た2時期の地表についてのSAR画像同士を干渉処理して得た干渉SAR画像の各画素の位相差θSに基づいて画素値が定義されたn種類(nは2以上の所定数である。)の成分画像を生成する成分画像生成ステップと、所定の地表の変動についてのユーザの判読結果を取得し、複数のサンプル領域について、前記n種類の成分画像と前記判読結果とを組み合わせた学習用データを生成する学習用データ生成ステップと、前記学習用データを用いて機械学習により変動判定モデルを生成するモデル生成ステップと、を有し、第k(kはn以下の任意の自然数である。)の前記成分画像は関数pk(θ)のθ=θSでの値を画素値とし、前記各関数pk(θ)は、前記位相差の範囲に対応した幅2πラジアンの区間Dを[α-π,α+π]として、Dで連続、かつpk(α-π)=pk(α+π)であり、さらに全kについての前記pk(θ)の組で定義される座標をP(θ)と表すと、Dの両端同士以外のθ1≠θ2なる∀θ1,θ2∈Dに対してP(θ1)≠P(θ2)である。
【0007】
(2)上記(1)に記載の機械学習方法において、前記nは2であり、前記関数はsinθ及びcosθである構成とすることができる。
【0008】
(3)上記(1)又は(2)に記載の機械学習方法において、前記変動判定モデルは畳み込みニューラルネットワークで構成することができる。
【0010】
(4)本発明に係る地表変動判定方法は、上記(1)~(3)のいずれか1つに記載の機械学習方法により生成された前記変動判定モデルを用い対象領域における地表変動を判定する方法であって、前記対象領域について生成された前記干渉SAR画像から各画素における位相差θTを抽出し、前記関数の値pk(θT)(kは前記n以下の任意の自然数である。)を画素値とする前記n種類の成分画像を生成するステップと、前記対象領域についての前記n種類の成分画像を含む入力データを前記変動判定モデルに入力して、当該対象領域について前記変動の有無の判定結果を得るステップと、を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、干渉SAR画像に基づく地表変動の有無の判定の自動化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る学習システムの概略の構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態における地表の変動判定モデルの機械学習の概略の流れを示す模式図である。
【
図3】干渉SAR画像から成分画像を生成する変換関数の他の例を示すグラフである。
【
図4】本発明の実施形態に係る地表変動判定システムの概略の構成を示すブロック図である。
【
図5】本発明の実施形態における地表の変動判定処理の概略の流れを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)である学習システム2、及び地表変動判定システム4について、図面に基づいて説明する。学習システム2は、干渉SAR画像により得られる位相差情報に基づいて、地表変動判定システム4に用いる変動判定モデルを本発明に係る機械学習方法により生成するシステムである。一方、地表変動判定システム4は、本発明に係る地表変動判定方法により、学習システム2で生成された変動判定モデルを用いて対象領域における地表変動を判定するシステムである。本システムにより例えば、地滑りや地盤沈下などによる地表変動を判定、検出することができる。
【0014】
[学習システム]
図1は、実施形態に係る学習システム2の概略の構成を示すブロック図である。学習システム2は、学習操作部20、学習記憶部21、学習制御部22及び学習出力部23を含んで構成される。学習操作部20、学習記憶部21及び学習出力部23は学習制御部22と接続される。
【0015】
学習操作部20は学習制御部22への入力を行うためのユーザインターフェース装置であり、キーボード、マウス等からなる。学習操作部20はユーザにより操作され、サンプル領域についての変動有無の判読結果を学習制御部22に入力するほか、学習開始指示や生成された変動判定モデルの出力指示を学習制御部22に与える。
【0016】
学習記憶部21はROM、RAM、ハードディスク等の記憶装置であり、学習制御部22で使用されるプログラムやデータを記憶する。学習記憶部21はこれらプログラム、データを学習制御部22との間で入出力する。本実施形態では学習記憶部21に記憶されるデータには、干渉SAR画像データ211、地形画像データ212、判読結果(GTデータ)213及び変動判定モデル214が含まれる。
【0017】
干渉SAR画像データ211は、飛翔体に搭載された合成開口レーダーにより得た2時期のSAR複素画像(SAR画像)同士を干渉させて生成された干渉SAR画像のデータである。
【0018】
地形画像データ212は、数値標高モデル(Digital Elevation Model:DEM)や、地形図などの地形を表す二次元情報である。
【0019】
判読結果213は正解データ(Ground Truth:GT)であり、例えば、ユーザが干渉SAR画像データ211を判読して生成される。
【0020】
干渉SAR画像データ211及び地形画像データ212は学習システム2による学習に際して予め学習記憶部21に記憶される。判読結果213は本実施形態では、学習システム2における学習用データの生成処理にて取得する構成としているが、学習システム2による学習処理に先行して取得して学習記憶部21に記憶してもよい。
【0021】
変動判定モデル214は、学習システム2により生成される学習モデルであり、学習制御部22が機械学習にて複数のサンプル領域の学習用データを順次処理するのに合わせて更新される。
【0022】
学習制御部22は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の演算装置を用いて構成される。また、学習制御部22を構成する演算装置はCPUに代えて、MPU(Micro-Processing Unit)や、画像処理を高速に実行するGPU(Graphics Processing Unit)等を用いてもよい。例えばGPUの機能を画像処理以外の用途に転用する技術であるGPGPU(General-Purpose computing on Graphics Processing Units)を利用して、本実施形態に係る各機能を実現してもよい。具体的には学習制御部22はコンピュータであり、当該コンピュータは学習記憶部21からプログラムを読み出して実行し、後述する成分画像生成手段221、学習用データ生成手段222、モデル生成手段223として機能する。これら学習制御部22の各手段については学習制御部22の処理に沿って後述する。
【0023】
学習出力部23は、学習により生成された変動判定モデルを学習システム2の外部へ出力するUSB端子、CDドライブ、ネットワークアダプタ等のインターフェース回路、及びそれぞれのドライバ・プログラムからなる。本実施形態では、変動判定モデルは学習出力部23を介して地表変動判定システム4へ渡される。また、学習出力部23は、ディスプレイ、プリンタなど、ユーザが学習制御部22の動作及びその結果を把握することを可能とするユーザインターフェース装置を含み得る。
【0024】
図2は、地表の変動判定モデルの機械学習の概略の流れを示す模式図である。2時期のSAR画像300から干渉SAR解析処理304により干渉SAR画像が生成され、干渉SAR画像データ211として学習記憶部21に記憶される。
【0025】
ここで、干渉SAR解析処理304では、干渉SAR画像から地表の変動による位相変化(変動縞)以外の影響を除去する処理を行うことができる。具体的には、干渉SAR画像には、変動縞に加え、2時期の衛星の軌道が一致しないために生じる位相変化(軌道縞および地形縞)が重畳する。そこで、干渉SARで地表変動を求める場合、軌道縞、地形縞を除去して変動縞だけを取り出す処理が行われる。例えば、地形縞はDEMからシミュレートして除去することができ、このために干渉SAR解析処理304にてDEM302を用いる。
【0026】
また、大域誤差を除去フィルターなどを用いて除去するなど、干渉SAR画像からさらに誤差、ノイズを除去する処理を行ってもよい。
【0027】
学習制御部22は成分画像生成手段221として機能し、干渉SAR画像データ211の各画素の位相差θSに基づいて画素値が定義されたn種類(nは2以上の所定数である。)の成分画像を生成し、学習用データ生成手段222に渡す。本実施形態では、成分画像生成手段221は、位相差θSをsinθS,cosθSに変換する処理306を行い、当該変換済みの干渉画像308を成分画像とする。具体的には、画素値がsinθSで定義されるsin画像と、画素値がcosθSで定義されるcos画像との2種類の成分画像が生成される。
【0028】
学習制御部22は学習用データ生成手段222として機能し、干渉SAR画像データ211が得られている領域内にて設定した複数の小領域それぞれについて学習用パッチ画像を切り出す処理310を行い、学習用データ312を生成する。
【0029】
ここで、学習用パッチ画像を切り出す当該小領域をサンプル領域と称している。サンプル領域は例えば、ユーザにより設定される。ちなみに、サンプル領域の数は学習により十分な精度の変動判定モデルが得られる程度の比較的多数に設定される。また、基本的に各サンプル領域の大きさ・形状は共通とされる。
【0030】
学習用データ312は各サンプル領域について、n種類の成分画像である変換済み干渉画像308と、地表変動の有無についてのユーザの判読結果とを組み合わせて生成される。そのために、学習用データ生成手段222は当該判読結果を取得する処理314を行う。具体的には、ユーザ判読処理314として、例えば、干渉SAR画像データ211の領域全体を学習出力部23のディスプレイに表示させて、ユーザに変動の有無を判読させ、学習操作部20から判読結果213を取得する。当該判読処理314では、干渉SAR画像データ211のほか、地形画像データ212やその他、LiDAR(Light Detection and Ranging)などの高精度のセンサにより得られたデータや現地でのGPS(Global Positioning System)を用いた計測により得られたデータなどをユーザに判断材料のデータ316として提示することができる。これらデータは、例えば、干渉SAR画像211と地形画像データ212等とを組み合わせるなど、併用して判読処理314を行うことができる。また、LiDARやGPSなどにより干渉SARより高度な計測データが得られる場合は、当該データを単体で判読処理314に用いて判読結果213を生成することもできる。ユーザは例えば、これらデータの表示倍率の拡大・縮小等の操作をしながら、変動のある箇所をマークし判読結果(GTデータ)を生成する。生成された判読結果213は学習記憶部21に記憶される。
【0031】
判読結果213が得られると、学習用データ生成手段222は、干渉SAR画像データ211に対応した領域にて得られている、n種類の成分画像である変換済み干渉画像308と判読結果213とから各サンプル領域に対応する部分のデータをそれぞれパッチ画像として切り出して学習用データ312を生成する。なお、学習用データ312には、変動の解析に有用な他の情報も組み合わせることができ、例えば、本実施形態では、地形画像データ212のパッチ画像を学習用データ312に含める。
【0032】
学習制御部22はモデル生成手段223として機能し、多数のサンプル領域について生成された学習用データ312を用いて機械学習により変動判定モデル214を生成する。具体的には、本実施形態における機械学習は、畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network:CNN)を用いた深層学習318で行われ、学習済みのCNNが変動判定モデル214となる。なお、CNNではサンプル領域は基本的に矩形とされる。
【0033】
学習システム2の特徴の一つは、干渉SAR画像データ211をそのまま機械学習に用いるのではなく、干渉SAR画像データ211を成分画像に変換する前処理を行い、当該成分画像を用いて学習処理を行う点にある。
【0034】
ここで、干渉SAR画像データ211の各画素値における位相差θを第k(kはn以下の任意の自然数である。)の成分画像の画素値に変換する関数をpk(θ)と表すと、上述の実施形態では、sin画像を第1の成分画像として、p1(θ)=sinθであり、cos画像を第2の成分画像として、p2(θ)=cosθである。
【0035】
位相θ1とθ2との差が2πラジアン〔rad〕である2つの位相状態η1,η2は物理的に同じであるところ、干渉SAR画像データ211を用いた学習では、θ1とθ2とが異なる値であることから位相状態η1とη2とは区別して扱われてしまう。これに対し、成分画像を用いた学習では、位相差θに対応付けられる関数値の組(sinθ,cosθ)は、(sinθ1,cosθ1)=(sinθ2,cosθ2)であり、位相状態η1,η2が物理的に同じであることが考慮される点で好適であり、当該学習により生成される変動判定モデルでは判定精度の向上が図られる。
【0036】
このような前処理の効果が得られるn種類(上述したようにn≧2)の成分画像の関数pk(θ)は基本的に以下の特徴(1)~(3)を有する。ここで、位相差θを定義する幅2πradの範囲[α-π,α+π]を区間Dとする。例えば、θを0~2πで定義する場合には、α=πとして、D=[0,2π]であり、θを-π~πで定義する場合には、α=0として、D=[-π,π]となる。
【0037】
(1)各関数pk(θ)は区間Dで連続であること(関数の連続性)
(2)各関数pk(θ)は区間Dの両端で同じ値となる、つまりpk(α-π)=pk(α+π)であること(関数の周期性)
(3)全kについてのpk(θ)の組で定義される座標をP(θ)と表すと、区間Dの両端同士を除いて区間D内の異なるθの値に対してP(θ)は一致しない、つまりθ1=α-πかつθ2=α+πである場合を除いてθ1<θ2なる∀θ1,θ2∈Dに対してP(θ1)≠P(θ2)であること(関数の単射性)。
【0038】
なお、特徴(2)については、θが区間Dの一方端から他方端へ変化する際に、pk(θ)の値が元に戻るという意味で「周期性」と述べている。よって、関数pk(θ)が周期2πの周期関数であれば当該特徴を有する一方、関数pk(θ)は区間Dで定義されれば足り、区間D外で定義される必要はないので、関数pk(θ)は周期2πの周期関数ではない場合もある。
【0039】
図3は上述の特徴(1)~(3)を有する関数p
k(θ)の例を示すグラフであり、当該例に示す関数p
k(θ)の組を用いてn種類の成分画像を定義することもできる。
図3(a)に示す例はn=2の場合であり、p
1(θ)及びp
2(θ)は次式で表される。なお0<β<πである。
【数1】
【0040】
図3(b)はn=3の場合の一例を示しており、p
1(θ)~p
3(θ)は次式で表される。
p
1(θ)=sin2θ
p
2(θ)=sin3θ
p
3(θ)=cosθ
【0041】
なお、上述の実施形態では、学習用データはn種類の成分画像と判読結果とに加え地形画像データ212を含む例を示した。この構成は、生成される変動判定モデルの精度が向上することが期待できる。その一方、学習用データは地形画像データ212を含まない構成とすることもできる。
【0042】
また、上述の実施形態では機械学習はCNNを用いる例を述べたが、他のアルゴリズムであってもよい。
【0043】
[地表変動判定システム]
図4は、実施形態に係る地表変動判定システム4の概略の構成を示すブロック図である。地表変動判定システム4は、入力部40、記憶部41、制御部42及び出力部43を含んで構成される。入力部40、記憶部41及び出力部43は制御部42と接続される。
【0044】
入力部40は制御部42への入力を行うためのユーザインターフェース装置であり、キーボード、マウス等からなる。ユーザは入力部40を操作し、例えば、変動判定を行わせるデータや対象領域を指定し制御部42に指示する。また、入力部40は変動判定モデル214を学習システム2から入力するUSB端子、CDドライブ、ネットワークアダプタ等のインターフェース回路、及びそれぞれのドライバ・プログラムを含む。
【0045】
記憶部41はROM、RAM、ハードディスク等の記憶装置であり、制御部42で使用されるプログラムやデータを記憶する。記憶部41はこれらプログラム、データを制御部42との間で入出力する。本実施形態では記憶部41に記憶されるデータには、干渉SAR画像データ411、地形画像データ412及び変動判定モデル413が含まれる。
【0046】
干渉SAR画像データ411は学習システム2で用いた干渉SAR画像データ211と同様、干渉SAR画像のデータであり、変動判定を行う対象領域を含む地表範囲のデータである。
【0047】
地形画像データ412は学習システム2の地形画像データ212と同様、DEMや地形図などの地形を表す二次元情報であり、変動判定を行う対象領域を含む地表範囲のデータである。
【0048】
これら干渉SAR画像データ411及び地形画像データ412は地表変動判定システム4による変動判定に際して予め記憶部41に記憶される。
【0049】
変動判定モデル413は、学習システム2により生成される学習モデルであり、学習記憶部21に記憶される変動判定モデル214を導入して用いる。
【0050】
制御部42は、例えば、CPU等の演算装置を用いて構成される。また、制御部42を構成する演算装置はCPUに代えて、MPUやGPU等を用いてもよい。また、例えばGPGPUを利用して、本実施形態に係る各機能を実現してもよい。具体的には制御部42はコンピュータであり、当該コンピュータは記憶部41からプログラムを読み出して実行し、後述する成分画像生成手段421、判定手段422として機能する。これら制御部42の各手段については制御部42の処理に沿って後述する。
【0051】
出力部43は、ディスプレイ、プリンタなど、ユーザが制御部42の動作及びその結果を把握することを可能とするユーザインターフェース装置である。
【0052】
図5は、地表変動判定システム4を用いた地表の変動判定処理の概略の流れを示す模式図である。2時期のSAR画像500及びDEM502から干渉SAR解析処理504により干渉SAR画像データ411を生成する処理は、基本的に学習システム2に関し
図2を用いて説明した干渉SAR画像データ211を生成する処理と同じとすることができる。本実施形態では地表変動判定システム4は、このように生成された干渉SAR画像データ411を処理対象データとして与えられるものとするが、地表変動判定システム4にてSAR画像500から干渉SAR画像データ411を生成する処理を行ってもよい。
【0053】
制御部42は成分画像生成手段421として機能し、干渉SAR画像データ411の各画素の位相差θ
Tに基づいて画素値が定義されたn種類の成分画像を生成する。この成分画像生成手段421における処理内容は、変動判定モデル413を生成した学習制御部22の成分画像生成手段221の処理内容と共通である。つまり、成分画像生成手段421における成分画像を生成する際の位相差θに対する変換処理(関数p
k(θ))及び成分画像の種類の数nは、変動判定モデル413を生成した学習システム2の成分画像生成手段221と共通とされる。本実施形態では、成分画像生成手段221が位相差θ
Sをsinθ
S,cosθ
Sに変換する
図2の処理306に対応して、成分画像生成手段421は干渉SAR画像データ411の位相差θ
Tをsinθ
T,cosθ
Tに変換する処理506を行い、成分画像となる変換済み干渉画像508として、画素値がsinθ
Tで定義されるsin画像と、画素値がcosθ
Tで定義されるcos画像との2種類を生成する。
【0054】
成分画像生成手段421は成分画像(変換済み干渉画像508)から変動の有無を判定する対象領域の部分をパッチ画像512として切り出す処理510を行う。ここで、学習システム2での学習用データに地形画像データ212を含めた場合には、切り出し処理510にて、地形画像データ412についてのパッチ画像512も生成される。対象領域の指定に関しては、例えば、干渉SAR画像データ411が与えられた地表範囲内の特定箇所をユーザが指定することもできるし、制御部42が当該地表範囲の全体に順次、対象領域を指定する処理を行ってもよい。
【0055】
制御部42は判定手段422として機能し、対象領域における所定の地表の変動の有無を判定する。具体的には判定手段422は対象領域のパッチ画像512を変動判定モデル413の入力データとして判定処理514を行い、その出力に基づいて判定対象とする変動である地滑りの有無を判定し、例えば、地滑り候補箇所マップ516を生成する。
【符号の説明】
【0056】
2 学習システム、4 地表変動判定システム、20 学習操作部、21 学習記憶部、22 学習制御部、23 学習出力部、40 入力部、41 記憶部、42 制御部、43 出力部、211,411 干渉SAR画像データ、212,412 地形画像データ、213 判読結果、214,413 変動判定モデル、221,421 成分画像生成手段、222 学習用データ生成手段、223 モデル生成手段、422 判定手段。