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特許7102127ガントリー型穿孔装置、及びガントリー型穿孔装置を用いた穿孔方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】ガントリー型穿孔装置、及びガントリー型穿孔装置を用いた穿孔方法
(51)【国際特許分類】
   B23B 39/14 20060101AFI20220711BHJP
   B23Q 1/28 20060101ALI20220711BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20220711BHJP
   B23Q 17/22 20060101ALI20220711BHJP
   B23Q 17/24 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
B23B39/14
B23Q1/28 B
B23Q1/28 C
B23Q17/00 A
B23Q17/22 Z
B23Q17/24 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017214154
(22)【出願日】2017-11-06
(65)【公開番号】P2019084620
(43)【公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000149505
【氏名又は名称】大同マシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002033
【氏名又は名称】特許業務法人東名国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 賢二
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-054611(JP,A)
【文献】特開昭63-150129(JP,A)
【文献】特開平02-152707(JP,A)
【文献】特開平04-152048(JP,A)
【文献】特開平07-001148(JP,A)
【文献】特開平07-164269(JP,A)
【文献】特開2004-261880(JP,A)
【文献】特開2008-155339(JP,A)
【文献】特開2014-210623(JP,A)
【文献】中国実用新案第204893409(CN,U)
【文献】中国実用新案第204893428(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 35/00-49/06
B23Q 1/00-1/76
B23Q 17/00-23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X軸及び前記X軸に直交するY軸が規定され、テーブル上面に穿孔対象のワークが載置される載置テーブルと、
前記X軸に沿って前記載置テーブルの両側に配設された一対のX軸ガイドレールと、
前記X軸ガイドレールの上にそれぞれ支持された一対の転動台車、前記転動台車からそれぞれ上方に向かって垂設された一対の脚、及び、前記Y軸に長手方向を一致させ、一対の前記脚の間に架設されたガーダーを有し、前記載置テーブルの上方を前記X軸に沿って水平方向に転動可能に形成されたゲート形状のガントリーユニットと、
前記ガーダーに取設され、前記Y軸に沿って水平方向に転動可能に形成されたドリル基体、及び、前記ドリル基体に取設され、前記X軸及び前記Y軸に互いに直交するZ軸に沿って上下方向に移動可能に形成された穿孔ドリルを有するドリルユニットと、
前記ガントリーユニット及び前記ドリルユニットの前記ドリル基体の転動を制御する転動制御部と
を具備するガントリー型穿孔装置であって、
前記転動台車に取設され、 前記X軸ガイドレールを左右方向及び/または上下方向から把持する一対のレールクランプ、及び前記レールクランプをレール把持位置及びレール把持解除位置に駆動制御するレールクランプ制御部を有し、前記レールクランプによって前記X軸ガイドレールをクランプし、前記ガントリーユニットの前記X軸に沿った転動を規制するレールクランプ部と、
前記脚の下部に取設され、前記Y軸方向から視た状態で一端が断面L字形状を呈するクランプ支持部、前記クランプ支持部に取設された脚クランプ、及び前記脚クランプを脚クランプ位置及び脚クランプ解除位置に駆動制御する脚クランプ制御部を有し、前記転動台車に前記脚を固定する脚クランプ部と
を更に具備するガントリー型穿孔装置。
【請求項2】
前記レールクランプ制御部及び前記脚クランプ制御部の少なくとも一方は、
油圧シリンダの油圧駆動力を用いて前記レールクランプ及び/または前記脚クランプを駆動制御する請求項1に記載のガントリー型穿孔装置。
【請求項3】
前記ドリルユニットは、
前記穿孔ドリルによる前記ワークの穿孔位置及びその周囲のワーク表面を含むワーク画像を撮像する撮像部と、
前記穿孔ドリルの穿孔位置に相当する穿孔位置表示マーカーを重ね合わせ、前記ワーク画像を表示するワーク画像表示部と
を具備し、
前記転動制御部は、
前記ワークに予め罫書きされた指定穿孔位置及び前記穿孔位置表示マーカーが一致するように、撮像された前記ワーク画像に基づいて、前記ガントリーユニット及び前記ドリルユニットの転動を制御する請求項1または2に記載のガントリー型穿孔装置。
【請求項4】
前記ワークは、
一対の縦板及び一対の横板を互いに組み合わせて仮溶接され、四角筒状を呈する四角ボックス柱の仮組体である請求項1~3のいずれか一項に記載のガントリー型穿孔装置。
【請求項5】
前記転動制御部は、
前記指定穿孔位置及び穿孔ドリルの穿孔位置の位置合わせを、予めプログラミングされた数値制御によって前記ガントリーユニット及び前記ドリルユニットを転動させる請求項3に記載のガントリー型穿孔装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のガントリー型穿孔装置を用いた穿孔方法であって、
前記ガントリー型穿孔装置の載置テーブルのテーブル上面にワークを載置するワーク載置工程と、
前記ガントリー型穿孔装置のゲート形状のガントリーユニットを前記載置テーブルのX軸に沿って配された一対のX軸ガイドレールに従って転動させるとともに、前記ガントリーユニットに取設されたドリルユニットを前記載置テーブルの前記X軸に直交するY軸に沿って転動させ、前記ドリルユニットの穿孔ドリルの穿孔位置を前記ワークに予め罫書きされた指定穿孔位置の近くに移動させる近接工程と、
前記ワーク及びその周囲のワーク表面を含むワーク画像を撮像する撮像工程と、
前記ガントリーユニット及び前記ドリルユニットの転動を制御し、前記指定穿孔位置及び前記ワーク画像に重ね合わせて表示される穿孔位置表示マーカーが一致するように、撮像されたワーク画像に基づいて調整する穿孔位置調整工程と、
前記ガントリー型穿孔装置のレールクランプ部によって、前記ガントリーユニットの前記X軸に沿った水平方向の転動を規制するレールクランプ工程と、
前記ガントリー型穿孔装置の脚クランプ部によって、前記ガントリーユニットの転動台車及び脚を固定する脚クランプ工程と
を具備するガントリー型穿孔装置を用いた穿孔方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガントリー型穿孔装置、及びガントリー型穿孔装置を用いた穿孔方法に関する(以下、それぞれ単に「穿孔装置」、及び「穿孔方法」と称す。)。更に詳しくは、四枚の鋼製の厚板を組み合わせて構築され、大型建造物等の柱部材として主に使用される四角ボックス柱(以下、単に「ボックス柱」と称す。)の製造工程で使用され、エレクトロスラグ溶接のための溶接作業用の孔を穿ける穿孔装置、及び当該穿孔装置を用いた穿孔方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高層ビルやスポーツ競技施設等の建築物、高速道路や鉄橋等の橋脚、或いはタンカー、客船、或いは貨物船等の大型船舶などの各種の大型の建造物や構造物を建築または建造する際において、主骨格となる柱部材として、鋼製の厚板を組み合わせて構築したボックス柱が多く用いられている。このボックス柱は、四枚の厚板によって囲まれた空間を内部に有する、四角筒状(或いは、四角管状)のものであり、高強度性及び高耐荷重性に優れた部材として、種々の産業分野において広範に使用されている。
【0003】
ボックス柱100の構成について、更に具体的に説明すると、図9等に示すように、互いに離間して配された鋼製の一対の縦板101a,101b(フランジ)と、当該縦板101a,101bとそれぞれ接続された鋼製の一対の横板102a,102b(ウェブ)と有し、縦板101a,101bの側辺及び横板102a,102bの側辺を連結し、四角筒状に組み合わせ、縦板101a,101b及び横板102a,102bのそれぞれの隅部を、例えば、「サブマージアーク溶接」によって溶接して形成されたものである。
【0004】
ここで、四角筒状を呈するボックス柱100の内部には、縦板101a等及び横板102a等によって囲まれた空間Sが存在している。そのため、ボックス柱100に強い荷重が加わると、当該空間Sが押し潰され、縦板101a等及び/または横板102a等の一部が撓んだり、或いは変形したりする可能性があった。そこで、ボックス柱100の耐荷重性を更に向上させるため、縦板101a等及び横板102a等によって囲まれた内部の空間Sに、ボックス柱100の断面方向を略閉塞するように、複数の補強材(ダイヤフラム104)が取設される。これにより、ボックス柱100の上方や側方から強い荷重が加わっても、複数のダイヤフラム104によって縦板101a等の変形を防ぐことができる。これにより、ボックス柱100の耐荷重性を高め、大型建造物等の柱部材として広く用いることができる。
【0005】
ダイヤフラム104は、ボックス柱100の内部の空間Sの断面形状と略一致し、所定の厚みを有する略矩形状の板状部材であり、縦板101a等及び横板102a等と同様に鋼製の厚板を用いて構成されている。そして、ボックス柱100の内部の空間Sで、縦板101a等及び横板102a等のそれぞれの内面103とダイヤフラム104の側辺105とを溶接することで、ダイヤフラム104が縦板101a等及び横板102a等に取付けられる(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
ここで、補強材として使用されるダイヤフラム104の中には、例えば、中央部分に円形状の刳抜孔109を有するものであっても構わない(図9参照)。かかる刳抜孔109を有しても補強材としての機能を十分に発揮することができる。更に、ボックス柱100を柱部材として大型建造物の一部に設置した後、当該ボックス柱100の内部の空間Sにコンクリート材を流し込み、その後固化させることで、ボックス柱100の内部にコンクリートを充填した柱部材が構築されることがある。複数のダイヤフラム104によってそれぞれ区画されたボックス柱100の内部の空間Sを、上記刳抜孔109によって連通させることができ、コンクリート材の流し込み作業を容易に行う利点を有している。内部の空間Sに充填されたコンクリート材が完全に固化することで、ボックス柱100の耐荷重性等の力学的特性を更に向上させることができる。
【0007】
ボックス柱100にダイヤフラム104を取付ける場合、例えば、一対の縦板101a,101b及び一対の横板102a,102bを仮溶接し、四角筒状に仮組みした仮組体110を用意する(図10等参照)。そして、縦板101a等及び横板102a等の内面103とダイヤフラム104の側辺105との間を、それぞれ「エレクトロスラグ溶接」によって溶接する。
【0008】
かかるエレクトロスラグ溶接を実施するためには、縦板101a等(または横板102a等)の内面103及びダイヤフラム104の側辺105の間に所定の空隙106を設け、当該空隙106に溶接用のトーチ(図示しない)を進入させ、溶接を行いながら徐々にトーチを空隙106から引出し、溶接層107を形成する必要がある。そして、最終的には、縦板101a等(または横板102a等)、及び、ダイヤフラム104の間に均一な幅で形成された溶接層107によって、縦板101a等とダイヤフラム104との間が強力に固定される(図11等参照)。なお、溶接層107の一部は、図11に示すように、孔Hから縦板101a等の外面111から突出(または盛出)して形成されることがある。この外面111から突出した部分の溶接層107は、その後の研削処理等によって外面111と同一平面となるまで削られる。更に、縦板101a等及び横板102a等の間を「サブマージアーク溶接」が行われる。
【0009】
ここで、上記したエレクトロスラグ溶接をする場合、溶接前のダイヤフラム104は、縦板101a等の内面103に当該ダイヤフラム104の幅と略一致する間隔で互いに離間した一対の当板108の間に取付けられている(例えば、図12参照)。このような状態で仮組みされた仮組体110において、溶接用のトーチの先端を仮組体110の内部に進入させるための溶接作業用の“孔H”を設ける必要があった(図10参照)。
【0010】
一般的に、縦板101a等の金属材料からなる厚板(板状部材)に、上記のような孔Hを穿ける穿孔加工を行う場合、例えば、従来から周知の穿孔装置であるラジアルボール盤等が使用される。しかしながら、ラジアルボール盤等の場合、板状部材の穿孔加工を主に対象とするものであり、上記ボックス柱100のような立体的な形状の加工対象を直接穿孔する場合は、昇降式のラジアルボール盤等を使用する必要があった。そこで、ガントリー型穿孔装置(所謂「ガントリードリル」)の使用が想定される。このガントリー型穿孔装置(穿孔装置)は、穿孔対象となるワーク(上記厚板等)を支持する載置テーブルと、当該載置テーブルの長手方向(X軸)に沿って配された一対のガイドレールと、ガイドレールに支持され、当該ガイドレールに従ってX軸に沿って自在に移動するゲート状(門状)のガントリーユニットと、ガントリーユニットに取設され、載置テーブルのX軸に直交するY軸方向に沿って移動可能な穿孔ドリルを有するドリルユニットと等を主に備えている。
【0011】
これにより、ワークの任意の位置に穿孔ドリルを移動させ、更にX軸及びY軸に互いに直交するZ軸方向に沿って穿孔ドリルを昇降させることで、ワークの規定の位置に孔Hを穿けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開平7-1148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述した従来型のラジアルボール盤のような穿孔装置は、平板状の厚板を穿孔加工の対象とするものであり、柱部材として使用されるボックス柱のような立体的形状のものを穿孔対象として想定するものではなかった。一方、従来のガントリー型穿孔装置の場合、下記に掲げるような不具合を生じる可能性があった。
【0014】
すなわち、ボックス柱は、高層ビルの柱部材等としての使用が想定されるため、比較的大型のサイズのものが製造されている。例えば、縦板及び横板のそれぞれの幅が1000mm超のことがあり、かつ、ボックス柱の全長が10m以上になるものもあった。
【0015】
上記のような立体的形状(ボックス形状)のワークに対する穿孔を可能とするため、従来と比べて、穿孔ドリル等のドリルユニットを従来よりも高い位置に設置する必要があった。その結果、当該ドリルユニットの取付けられるガントリーユニットのガーダーの位置も必然的に高くなった。ドリルユニットは、穿孔ドリルを回転させるための駆動用モータ等を備える重量物であり、かかる重量物がガントリーユニットの高い位置に取付けられることで、ガントリーユニット及びドリルユニットの重心位置が従来よりも高所になった。
【0016】
その結果、従来の穿孔装置と比べて、ガントリーユニットがX軸ガイドレールに対して不安定に支持され、または穿孔ドリルの回転によって振動が発生しやすくなった。これにより、ボックス柱に対する穿孔加工の精度が低くなり、穿孔位置が指定穿孔位置からずれる等の問題が生じることがあった。
【0017】
そこで、本発明は、上記実情に鑑み、重心位置の高いガントリーユニットによるワークの穿孔加工において、振動等の発生を抑制することを第一の課題とし、更にワークに対する穿孔ドリルの穿孔位置の調整及び確認を速やかに行うことができ、当該穿孔加工に要する作業時間の短縮化、及びボックス柱の製造の効率化を図ることを第二の課題とした穿孔装置、及び当該穿孔装置を用いた穿孔方法の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明によれば、上記課題を解決した穿孔装置、及び穿孔方法が提供される。
【0019】
[1] X軸及び前記X軸に直交するY軸が規定され、テーブル上面に穿孔対象のワークが載置される載置テーブルと、前記X軸に沿って前記載置テーブルの両側に配設された一対のX軸ガイドレールと、前記X軸ガイドレールの上にそれぞれ支持された一対の転動台車、前記転動台車からそれぞれ上方に向かって垂設された一対の脚、及び、前記Y軸に長手方向を一致させ、一対の前記脚の間に架設されたガーダーを有し、前記載置テーブルの上方を前記X軸に沿って水平方向に転動可能に形成されたゲート形状のガントリーユニットと、前記ガーダーに取設され、前記Y軸に沿って水平方向に転動可能に形成されたドリル基体、及び、前記ドリル基体に取設され、前記X軸及び前記Y軸に互いに直交するZ軸に沿って上下方向に移動可能に形成された穿孔ドリルを有するドリルユニットと、前記ガントリーユニット及び前記ドリルユニットの前記ドリル基体の転動を制御する転動制御部とを具備するガントリー型穿孔装置であって、前記転動台車に取設され、前記X軸ガイドレールを左右方向及び/または上下方向から把持する一対のレールクランプ、及び前記レールクランプをレール把持位置及びレール把持解除位置に駆動制御するレールクランプ制御部を有し、前記レールクランプによって前記X軸ガイドレールをクランプし、前記ガントリーユニットの前記X軸に沿った転動を規制するレールクランプ部と、前記脚の下部に取設され、前記Y軸方向から視た状態で一端が断面L字形状を呈するクランプ支持部、前記クランプ支持部に取設された脚クランプ、及び前記脚クランプを脚クランプ位置及び脚クランプ解除位置に駆動制御する脚クランプ制御部を有し、前記転動台車に前記脚を固定する脚クランプ部とを更に具備するガントリー型穿孔装置。
【0020】
[2] 前記レールクランプ制御部及び前記脚クランプ制御部の少なくとも一方は、油圧シリンダの油圧駆動力を用いて前記レールクランプ及び/または前記脚クランプを駆動制御するレールクランプ制御部前記[1]に記載のガントリー型穿孔装置。
【0021】
[3] 前記ドリルユニットは、前記穿孔ドリルによる前記ワークの穿孔位置及びその周囲のワーク表面を含むワーク画像を撮像する撮像部と、前記穿孔ドリルの穿孔位置に相当する穿孔位置表示マーカーを重ね合わせ、前記ワーク画像を表示するワーク画像表示部とを具備し、前記転動制御部は、前記ワークに予め罫書きされた指定穿孔位置及び前記穿孔位置表示マーカーが一致するように、撮像された前記ワーク画像に基づいて、前記ガントリーユニット及び前記ドリルユニットの転動を制御する前記[1]または[2]に記載のガントリー型穿孔装置。
【0022】
[4] 前記ワークは、一対の縦板及び一対の横板を互いに組み合わせて仮溶接され、四角筒状を呈する四角ボックス柱の仮組体である前記[1]~[3]のいずれかに記載のガントリー型穿孔装置。
【0023】
[5] 前記転動制御部は、前記指定穿孔位置及び前記穿孔ドリルの穿孔位置の位置合わせを、予めプログラミングされた数値制御によって前記ガントリーユニット及び前記ドリルユニットを転動させる前記[3]に記載のガントリー型穿孔装置。
【0024】
[6] 前記[1]~[5]のいずれかに記載のガントリー型穿孔装置を用いた穿孔方法であって、前記ガントリー型穿孔装置の載置テーブルのテーブル上面にワークを載置するワーク載置工程と、前記ガントリー型穿孔装置のゲート形状のガントリーユニットを前記載置テーブルのX軸に沿って配された一対のX軸ガイドレールに従って転動させるとともに、前記ガントリーユニットに取設されたドリルユニットを前記載置テーブルの前記X軸に直交するY軸に沿って転動させ、前記ドリルユニットの穿孔ドリルの穿孔位置を前記ワークに予め罫書きされた指定穿孔位置の近くに移動させる近接工程と、前記ワーク及びその周囲のワーク表面を含むワーク画像を撮像する撮像工程と、前記ガントリーユニット及び前記ドリルユニットの転動を制御し、前記指定穿孔位置及び前記ワーク画像に重ね合わせて表示される穿孔位置表示マーカーが一致するように、撮像されたワーク画像に基づいて調整する穿孔位置調整工程と、前記ガントリー型穿孔装置のレールクランプ部によって、前記ガントリーユニットの前記X軸に沿った水平方向の転動を規制するレールクランプ工程と、前記ガントリー型穿孔装置の脚クランプ部によって、前記ガントリーユニットの転動台車及び脚を固定する脚クランプ工程とを具備するガントリー型穿孔装置を用いた穿孔方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明の穿孔装置によれば、レールクランプ部及び脚クランプ部にかかる構成を備えることで、穿孔ドリルによる穿孔加工の際にゲート形状のガントリーユニットの剛性を高めることができ、ガントリーユニットの振動を抑えることができる。そのため、重心位置の高いガントリーユニットであっても、柱部材に使用される立体形状のボックス柱等のワークに対する穿孔加工を精度良く行うことができる。更に、本発明の穿孔方法によれば、上記穿孔装置を利用することでボックス柱等のワークに対する穿孔を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本実施形態の穿孔装置の平面視の概略構成を示す説明図である。
図2】本実施形態の穿孔装置におけるレールクランプ部の概略構成を示す説明図である。
図3】本実施形態の穿孔装置におけるガントリーユニット近傍の概略構成を示す一部拡大説明図である。
図4】本実施形態の穿孔装置における脚クランプ部の概略構成を示す説明図である。
図5】ガーダーに取設されたドリルユニットの側方視の概略構成を示す説明図である。
図6】ドリルユニットの撮像部とワーク表面の概略構成を示す説明図である。
図7】ワークの指定穿孔位置及び穿孔位置表示マーカーが非一致の状態を模式的に示す説明図である。
図8】ワークの指定穿孔位置及び穿孔位置表示マーカーが一致した状態を模式的に示す説明図である。
図9】ボックス柱の概略構成を示す斜視図である。
図10】仮組体の概略構成を示す正面図である。
図11】ダイヤフラムの溶接後のボックス柱の概略構成を示す断面図である。
図12】仮組体の上部の横板を除いた状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ本発明の穿孔装置、及び穿孔方法について詳述する。ここで、本発明の穿孔装置、及び穿孔方法は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、種々の設計の変更、修正及び改良等を加え得るものである。
【0028】
本発明の一実施形態の穿孔装置1は、図1~8に示されるように、所謂“ガントリータイプ”の穿孔装置1であって、載置テーブル10、一対のX軸ガイドレール20a,20b、ガントリーユニット30、ドリルユニット40、及び、転動制御部(図示しない)とを具備して主に構成されている。本実施形態の穿孔装置1を用いることで、載置テーブル10に載置された穿孔対象のワークWの任意の位置に、載置テーブル10のX軸及びX軸に直交するY軸(例えば、図2参照)に沿ってガントリーユニット30及びドリルユニット40を転動させ、ドリルユニット40の穿孔ドリル42の穿孔位置DPを合わせることができる。これにより、溶接作業用の孔H(例えば、図10及び図11参照)を穿けることができる。一方、本発明の一実施形態の穿孔方法は、上記穿孔装置1を用いてワークWに溶接作業用の孔Hを穿けることができる。
【0029】
本実施形態の穿孔装置1の穿孔対象は、最終製品として、大型建造物などの柱部材として使用される鋼製のボックス柱(図9参照)を製造するためのものであり、鋼製の厚板である一対の縦板101a,101b及び一対の横板102a、102bを互いに組み合わせて仮溶接し、四角筒状を呈するように仮組みした仮組体110が用いられる(図10等参照、以下「ワークW」と称す。)。ここで、ワークWは、縦板101a等及び横板102a等によって囲まれた空間Sを内部に有している。本実施形態の穿孔装置1を用いることにより、当該空間Sに耐荷重性等を向上させるための複数のダイヤフラム104をエレクトロスラグ溶接によって固定するための、溶接作業用の孔Hを穿けることができる。
【0030】
1.穿孔装置
本実施形態の穿孔装置1のそれぞれの構成について詳述すると、載置テーブル10は、X軸及び当該X軸に直交するY軸が規定され、テーブル上面11に、ワークWを横置きにした状態で載置するためのものである。ワークWのサイズは、特に限定されるものではないが、上述したように最終製品として柱部材となる鋼製のボックス柱100(本発明における四角ボックス柱に相当)であるため、縦板101a,101b及び横板102a,102bが、例えば、200mm~1500mm程度の広幅のものが使用されることがあり、縦板101a等及び横板102a等の長さも10m以上(例えば、700m超)のものがある。すなわち、ワークWは大型の長尺体であり、鋼製のため重量物である。
【0031】
そのため、この長尺体、かつ重量物のワークWの長手方向を水平方向に一致させた状態で、下方から安定して支持するために、載置テーブル10は堅牢な構造である必要がある。載置テーブル10は、例えば、複数の鋼材等を組み合わせて構築することができる。これにより、ワークWは、自重によって撓むことなく、水平方向の長手方向を一致させた状態で載置テーブル10に載置される。なお、載置テーブル10は、台車としてX軸方向に沿って移動可能なものであってもよい。すなわち、後述するゲート形状のガントリーユニット30のガーダー35の下方に位置するように、載置テーブル10に載置されたワークWを移動させることができる。
【0032】
穿孔装置1の一対のX軸ガイドレール20a,20bは、載置テーブル10の左右方向(図1における紙面上下方向、及び図2における紙面左右方向に相当)の両側に、それぞれ互いに平行にして配置されるものであり、後述するガントリーユニット30の転動方向をX軸方向に規制するためのものである。X軸ガイドレール20a,20bは、図1及び図2等に示されるように、断面略I字形状を呈するレール本体21と、レール本体21を設置面Gに固定するレール固定部22とを備えている。
【0033】
レール本体21のレール上端部23にガントリーユニット30を載せることで、ガントリーユニット30をX軸に沿って自在に転動させることができる。換言すれば、ワークWの長手方向の任意の位置までガントリーユニット30を移動させることができる。X軸ガイドレール20a,20bは、一般的なレール部材と同一の鋼材等を使用して形成することができる。この場合、レール本体21の長手方向(X軸に一致)に沿って変形や撓み等がないように、歪みのない直線状の部材が使用される。
【0034】
ガントリーユニット30は、それぞれのX軸ガイドレール20a,20bの上に載置され、載置テーブル10のX軸に沿って水平方向に転動するものであり、略平板状の台車基部31a,31b、及び台車基部31a,31bの下部に回転自在に軸支された複数の車輪部(図示しない)を有する一対の転動台車33a,33bと、転動台車33a,33bの略中央付近から上方に向かってそれぞれ垂設された一対の脚34a,34bと、載置テーブル10のX軸に直交するY軸(図1及び図2参照)に長手方向を一致させ、一対の脚34a,34の間に架設されたガーダー35とを備えるものである。これにより、図2の穿孔装置1の正面視に示されるように、ガントリーユニット30は、載置テーブル10及びワークWの上方を跨いだ状態のゲート状(門状)の構成となる。
【0035】
本実施形態の穿孔装置1において、ガーダー35のガーダー上面36には、載置テーブル10のY軸に沿って配されたY軸ガイドレール37が配設されている。本発明において、ガーダーは35上記構成に限定されるものではなく、後述するドリルユニット40がY軸に沿って自在に転動するのを支持できれば構わない。
【0036】
なお、X軸ガイドレール20a,20bに従って、X軸に沿ってガントリーユニット30が転動するための転動手段(駆動手段)は、特に限定されるものではなく、例えば、周知の駆動用モータによって発生させた駆動力をギアボックス等を介してガントリーユニット30に伝達し、転動させるものであっても、或いは、油圧シリンダ等を用いて駆動力を発生させるものであっても構わない。本実施形態の穿孔装置1の転動制御部によって、かかるガントリーユニット30のX軸方向の転動量を任意に制御することができ、例えば、数mm単位から数cm単位で精細な制御を行うことができる。転動制御部は、周知のガントリー型穿孔装置と略同一の構成を採用することが可能であり、穿孔装置1の一部に設けられた操作制御卓(操作パネル)を作業者が操作することで、上記ガントリーユニット30等の転動を制御することができる。そのため、詳細な説明は省略する。なお、操作制御卓には、後述する撮像部45の稼働を制御し、更に撮像されたワーク画像44を表示するためのワーク画像表示部46(液晶ディスプレイ等)等の各構成を備えている。
【0037】
ドリルユニット40は、上述したガントリーユニット30のガーダー35の前方側(図1における紙面右側に相当)取設され、載置テーブル10のY軸に沿って水平方向に転動可能に形成されたドリル基体41と、ドリル基体41に取設され、載置テーブル10のX軸及びY軸に互いに直交するZ軸(図1における紙面手前から奥行方向に相当)に沿って上下方向に移動可能に形成され、先端にワークWの穿孔加工が可能な穿孔ドリル42とを備えるものである。
【0038】
ここで、本実施形態のガントリーユニット30に取設されたドリルユニット40は、Y軸に沿って転動自在に制御することができる。これにより、上述したガントリーユニット30のX軸に沿った転動を組み合わせることで、載置テーブル10に載置されたワークWの任意の位置に、X軸及びY軸の転動を制御することで穿孔ドリル42の先端の位置を合わせることができる。
【0039】
なお、Y軸に沿って各ドリルユニット40が転動するための転動手段(駆動手段)は、特に限定されるものではなく、前述したガントリーユニット30の転動と同様に周知の構成を採用することができる。そのため、これらの制御に係る構成については、ここでは詳細な説明を省略する。また、ワークWに対して穿孔加工を行うために、穿孔ドリル42をZ軸に沿って上下方向に移動させる機構及び当該移動に係る駆動手段等についても同様のため、詳細な説明は省略する。
【0040】
更に、本実施形態の穿孔装置1において転動台車33a,33bは、X軸ガイドレール20a,20bを左右方向及び/または上下方向から把持する一対のレールクランプ51及びレールクランプ51のレール把持位置及びレール把持解除位置に駆動制御するレールクランプ制御部52を有するレールクランプ部50が取設されている。これにより、レールクランプ部50によるX軸ガイドレール20a,20bの把持動作(クランプ動作)によって、一対のレールクランプ51でX軸ガイドレール20a,20bのレール本体21を挟み、転動台車33a,33bの台車基部31a,31bとの間の摩擦力を増大させることができる。これにより、転動台車33a,33bのX軸に沿った水平方向の転動を規制する、換言すれば、ガントリーユニット30の転動にブレーキを掛け、ガントリーユニット30を任意のX軸の位置に固定することができる。
【0041】
更に詳細に説明すると、本実施形態の穿孔装置1におけるレールクランプ部50は、X軸ガイドレール20a,20bの左右両側(図2における紙面左右方向に相当:Y軸に相当)からレール本体21のレール上端部23の側面と相対するように取付けられた一対のレールクランプ51を有し、通常はレール把持解除位置に設定される。このとき、レールクランプ51とレール本体21とは接していない。そのため、かかる状態では、ガントリーユニット30は、転動制御部による制御によってX軸に沿って水平方向に自在に転動することができ、当該X軸の任意の位置まで移動することができる。
【0042】
そして、転動制御部によってガントリーユニット30を所定のX軸の位置まで転動させた後、レールクランプ部50の一対のレールクランプ51をクランプ方向C(図2の矢印方向参照)に従って、レール本体21のレール上端部23を左右方向から挟み込むように駆動制御し、レール把持位置に変位させる。ここで、レール把持位置に変位させるためのレールクランプ制御部52は、本実施形態の穿孔装置1のいて、油圧シリンダを有して構成されている。そのため、当該油圧シリンダの油圧駆動力を用いてレールクランプ51がレール把持位置まで移動する。これにより、レールクランプ51がレール本体21のレール上端部23の側面と接することとなり、レールクランプ51及びレール本体21の間に強い摩擦力が生じる。その結果、ガントリーユニット30のX軸ガイドレール20a,20bに対する転動が規制される。
【0043】
本発明の穿孔装置は、従来の板状部材を穿孔加工するものに比べ、ワークWの穿孔加工を行う、穿孔ドリル42の位置、換言すれば、ワークWの穿孔位置が高い位置にある。そのため、穿孔ドリル42(ドリルユニット40)及びこれを支持するガントリーユニット30の重心位置が必然的に高くなる。加えて、一つのガントリーユニット30に対して、重量物であるドリルユニット40が取付けられ、かかるドリルユニット40がY軸に沿って転動することができる。そのため、重心位置がY軸に沿って変位する。そのため、ドリルユニット40を支えるガントリーユニット30がX軸及び/またはY軸方向に揺動するなどの不安定な状態になる可能性がある。
【0044】
そこで、上記レールクランプ部50を採用することで、穿孔加工の際にガントリーユニット30及びX軸ガイドレール20a,20bを強固に固定することができ、ガントリーユニット30のX軸方向の微動や振動によるガントリーユニット30の揺動を防ぐことができる。その結果、穿孔対象となるボックス形状のボックス柱を製造するためのワークWを穿孔する場合であっても、安定した穿孔加工を行うことが可能となる。
【0045】
更に、本実施形態の穿孔装置1は、図3,4に示すように、脚の下部に取設され、Y軸方向(図4における紙面手前から奥行方向)に視た状態で一端が断面L字形状を呈するクランプ支持部61と、クランプ支持部61に取設された脚クランプ62と、脚クランプ62を脚クランプ位置及び脚クランプ解除位置の間で上下方向に駆動制御する脚クランプ制御部63とを有する脚クランプ部60を具備している。
【0046】
上記構成の脚クランプ部60によれば、脚クランプ制御部63によって脚クランプ62を脚クランプ位置に駆動させることで、脚34a,34bの下部に取設された断面L字形状のクランプ支持部61が当該脚クランプ62によって下方に向かって押し付けられる。すなわち、脚34a,34bを支持する転動台車33a,33bに固定される。
【0047】
これにより、穿孔ドリル42による穿孔加工時において、転動台車33a,33b及び脚34a,34bの間での振動の発生を抑制し、穿孔加工の際のガタツキ等を防止し、振動の発生を抑えることができる。なお、脚クランプ制御部63は、レールクランプ制御部52と同様に、油圧シリンダの油圧駆動力を用いて脚クランプ62を駆動制御することができる。一対の脚34a,34b及びガーダー35を有し、ゲート形状に形成されたガントリーユニット30は、X軸ガイドレール20a,20bに従ってX軸に沿って転動を繰り返すことにより、X軸ガイドレール20a,20bと接する転動台車33a,33bの摩耗等によって僅かに変形することがある。
【0048】
更に、本実施形態の穿孔装置1は、ドリルユニット40において、穿孔ドリル42によるワークWの穿孔位置DP及びその周囲のワーク表面47を含むワーク画像44を撮像する撮像部45と、穿孔ドリル42の穿孔位置DPに相当する穿孔位置表示マーカーDMを直接重ね合わせ、ワーク画像44を表示するワーク画像表示部46とを具備している。ここで、ワーク画像表示部46は、周知の液晶ディスプレイ等を用いることができる。更に、撮像部45は既存のCCDカメラ等を用いることができる。また、穿孔位置表示マーカーDMは、ワーク画像表示部46の略中央位置に表示される。
【0049】
上記構成を備えることにより、撮像されたワーク表面47の周辺を含むワーク画像44を、ワーク画像表示部46によって確認しながら、ワークWに予め罫書きされた指定穿孔位置SPとワーク画像44に重ね合わせて表示された穿孔位置表示マーカーDMとが一致するように、転動制御部を制御してガントリーユニット30及びドリルユニット40の転動を制御する。
【0050】
更に詳細に説明すると、指定穿孔位置SPと穿孔位置表示マーカーDMとのずれがワーク画像表示部46によって確認されると、転動制御部によってガントリーユニット30及びドリルユニット40を制御し、穿孔ドリル42の先端(穿孔位置DP)が指定穿孔位置SPで示された交点と一致するようにX軸及び/またはY軸に沿って転動制御する。このとき、作業者は、ワーク画像表示部46(液晶ディスプレイ)上で、ずれを視認し、転動制御部を操作し、ガントリーユニット30及びドリルユニット40を当該ずれに応じて適切な転動量だけ転動させる(図6参照)。更に、得られたレーザー投影画像46に基づいた画像処理を行うことで、自動的に適切な転動量を算出し、制御することもできる。
【0051】
なお、撮像部45は、動画撮影等の可能な周知のCCDカメラ等を用いることができる。
【0052】
なお、本実施形態の穿孔装置1では、ワークWに罫書きされる指定穿孔位置SPを二本の直線を交差させた“×状”または“+状”で示し、ワーク画像表示部46に直接表示される穿孔位置表示マーカーDMも同様に“×状”または“+状”となるように設定されている。本実施形態の穿孔装置1では、互いに二本の直線が交差する指定穿孔位置SP及び穿孔位置表示マーカーDMの交点同士が一致した状態を、指定穿孔位置SP及び穿孔位置DP(穿孔位置表示マーカーDM)が一致した状態と判断する。
【0053】
なお、本実施形態の穿孔装置1は、所謂数値制御(NC制御)が可能なものである。そのため、上記のワークWに罫書きされた上記の指定穿孔位置SPのうちのいくつかを基準点として設定し、指定穿孔位置SP及び穿孔ドリル42の穿孔位置DPの位置合わせ作業を登録することで、その他の指定穿孔位置SPに対しては予めプログラミングされた数値制御によってガントリーユニット30及びドリルユニット40のX軸及びY軸の転動を規制し、穿孔位置DPに到達した穿孔ドリル42をZ軸方向に制御し、所望の穿孔深さで穿孔ドリル42による穿孔加工を行うことができる。
【0054】
この場合、穿孔加工の実施時には、作業者は正しい位置で穿孔が行われているかをワーク画像表示部46によって確認する作業を行う。かかる確認作業において、穿孔ドリル42の穿孔位置DPとワークWの指定穿孔位置SPとの間にずれが認められる場合には、作業者が上記数値制御に割り込み、手動でガントリーユニット30及びドリルユニット40等の転動を制御することもできる。数値制御(NC制御)と手動による転動制御を併用することで、ワークWに対する穿孔加工の精度及び正確性が向上し、より短い作業時間で穿孔加工を完了することができる。すなわち、作業時間の短縮化を図り、製造効率を向上させ、最終製品としてのボックス柱の生産性を高めることができる。
【0055】
上記構成の穿孔装置1によって、従来と比べて、レールクランプ部50及び脚クランプ部60に係る構成を備え、X軸ガイドレール20a,20bに載置して支持されたゲート形状のガントリーユニット30の揺動等を抑え、穿孔加工時の安定性を高めることができる。その結果、穿孔加工の加工精度を高めることができる。
【0056】
更に、ドリルユニット40は、ドリル基体41に対し、穿孔ドリル42をX軸及び/またはY軸に沿って移動可能な微調整移動機構(図示しない)を備えている。上述したように、穿孔対象となるワークWは大型の長尺体であり、ガントリーユニット30及びドリルユニット40の転動量も数mm単位から数m単位で転動することもある。そのため、穿孔位置DPを僅かにX軸及び/またはY軸に沿って転動させようとする場合、ガントリーユニット30及びドリルユニット40を直接転動させるためには、多くの駆動力及び時間がかかることが予想される。そのため、ドリルユニット40の穿孔ドリル42自体をドリル基体41に対して移動させることにより、穿孔位置DPの微調整作業が容易、かつ短時間で可能となる。更に、ガントリーユニット30等を駆動させるよりも消費電力等を抑えることができる。このように、上述したガントリーユニット30及びドリルユニット40の転動と上記微調整移動機構とを併用することで、短い時間で少ない消費エネルギーで速やかに穿孔位置DPまで穿孔ドリル42を移動させることができる。これにより、ワークWに対して効率的な穿孔加工を行うことができる。
【0057】
2.穿孔方法
次に、上記穿孔装置1を用いた穿孔方法の一例について説明する。始めに穿孔装置1の載置テーブル10のテーブル上面10aに穿孔加工の対象となるワークWを載置する(ワーク載置工程)。既に説明したように、ワークWの長手方向と載置テーブル10のX軸とが略一致するようにワークWを載置する。その後、穿孔ドリル42の穿孔位置DPが、ワークWに予め罫書きされた指定穿孔位置SPの近くに位置するように穿孔装置1のガントリーユニット30及びドリルユニット40を転動させる(近接工程)。ここで、近接工程は、作業者が目視によって行っても、或いは撮像部によって撮像された画像を表示したディスプレイで確認しながら行っても構わない。更には、予め入力した数値に基づいて、自動制御を行うものであってもよい。
【0058】
ワークWの指定穿孔位置SPに穿孔ドリル42が近接した状態で、撮像部45によってワークW及びその周囲のワーク表面47を含む-ワーク画像44を撮像する(撮像工程)。撮像されたワーク画像44はワーク画像表示部46によって表示され、作業者はかかるワーク画像44を穿孔位置DP等から離れた位置から確認することができる。ここで、ワーク画像表示部46には、上記ワーク画像44と重ねて、穿孔ドリル42の先端の位置(穿孔位置DP)を示す“+”の穿孔位置表示マーカーDMが表示されている。
【0059】
その後、撮像工程によって得られたワーク画像44と、重ね合わせて表示される穿孔位置表示マーカーDMとを作業者が確認しながらガントリーユニット及びドリルユニットの転動を制御し、指定穿孔位置SP及び穿孔位置表示マーカーDM(=穿孔位置DP)が一致するように調整する(穿孔位置調整工程)。本実施形態の穿孔方法では、既に示した図5及び図6のように、罫書きされた“+”の指定穿孔位置SPに対し、同様に“+”の穿孔位置表示マーカーDMのそれぞれの交点が一致するように転動を行い、穿孔ドリル42による穿孔位置DPの調整を図っている。
【0060】
上記穿孔位置DPの調整が完了した後、穿孔ドリル42の回転を制御し、更にZ軸に沿って穿孔ドリル42を下方に移動させることで、ワークWの穿孔作業を行うことができる。このとき、穿孔開始前にレールクランプ部50を制御し、X軸ガイドレール20a,20bをそれぞれレール把持位置に駆動した一対のレールクランプ51によって把持し、ガントリーユニット30のX軸に沿った水平方向の移動を規制するレールクランプ工程が実施される。更に、脚クランプ部60を用いて、転動台車33a,33b及び脚34a,34bの間を固定する脚クランプ工程が実施される。これにより、ガントリーユニット30の転動が規制され、かつガントリーユニット30を構成する脚34a,34b及び転動台車33a,33bの間が強固に接続される。更に、上記レールクランプ工程によってガーダー35を上方から押し付けるとともに、当該ガーダー35の側方からシリンダ等を用いて挟み込んで固定する側方クランプ機構(図示しない)、或いはガーダー35の上下方向及び側方を同時に固定する方法として、当該ガーダー35の側方からシリンダ等を用いて“くさび”を挿入し、ガーダー35の浮き及び側方への移動(ズレ)を防止する機構を備えるものであっても構わない。
【0061】
このようにして、本実施形態の穿孔方法によれば、最終製品として柱部材となるワークW(仮組体110)に対し、エレクトロスラグ溶接のための溶接作業用の孔Hを精度よく、かつ作業者に無理な姿勢を強いることなく、安全性を確保した状態で穿孔加工を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の穿孔装置によれば、柱部材として使用されるボックス柱(四角ボックス柱)を製造する製造工程で使用されるガントリー型穿孔装置として、特に有用に使用することができる。更に、本発明の穿孔方法は、上記穿孔装置(ガントリー型穿孔装置)を用いて、エレクトロスラグ溶接のための溶接作業用の孔を穿ける穿孔工程に特に有用に使用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1:穿孔装置、10:載置テーブル、11:テーブル上面、20a,20b:X軸ガイドレール、21:レール本体、22:レール固定部、23:レール上端部、30:ガントリーユニット、31a,31b:台車基部、33a,33b:転動台車、34a,34b:脚、35:ガーダー、36:ガーダー上面、37:Y軸ガイドレール、40:ドリルユニット、41:ドリル基体、42:穿孔ドリル、44:ワーク画像、45:撮像部、46:ワーク画像表示部、47:ワーク表面、50:レールクランプ部、51:レールクランプ、52:レールクランプ制御部、60:脚クランプ部、61:クランプ支持部、62:脚クランプ、63:脚クランプ制御部、100:ボックス柱(四角ボックス柱)、101a,101b:縦板、102a,102b:横板、103:内面、104:ダイヤフラム、105:側辺、106:空隙、107:溶接層、108:当板、109:刳抜孔、110:仮組体、111:外面、C:クランプ方向、DM:穿孔位置表示マーカー、DP:穿孔位置、G:設置面、H:孔、S:空間、SP:指定穿孔位置、W:ワーク。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
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図12