(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 4/48 20060101AFI20220711BHJP
H01R 4/50 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
H01R4/48 C
H01R4/50 C
(21)【出願番号】P 2017233865
(22)【出願日】2017-12-06
【審査請求日】2020-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094330
【氏名又は名称】山田 正紀
(72)【発明者】
【氏名】坂井 健
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03243757(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第00014789(EP,A1)
【文献】特開平10-302857(JP,A)
【文献】特表2016-528681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/48-4/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティを有し絶縁性材料で形成されたハウジングと、
前記ハウジングへの圧入を担う平板状の基部、および該基部から延長して外力の影響を受けない状態で該基部とともに一枚の平板を成し、電線に接する接触面に電線との接触を担うセレーションが形成されたセレーション部を備え
、前記キャビティに収容される端子部材と、
前記キャビティに収容されて該キャビティ内で弾性変形し、前記セレーション部の、前記接触面に対する背面を押圧する
、前記ハウジングとは別体の弾性部材
とを備えたことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記弾性部材が、
前記ハウジングの、前記キャビティを形成している内壁面に当接して該ハウジングから反力を受ける当接面を有する当接部と、
前記当接部から折り返されて前記セレーション部を弾性的に押圧する押圧部とを有し、
前記キャビティ内で弾性変形することで前記ハウジングへの圧入なしに該キャビティ内に嵌り込むことを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記弾性部材が、前記キャビティに収容されて前記端子部材を押圧した状態において、前記押圧部の、前記当接部から折り返された側の固定端から延びた先端側の自由端部が、該当接部の、前記当接面に対する裏面である背面に当接することを特徴とする請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記弾性部材が、前記端子部材に、前記電線が太径であるほど大きな押圧力を与えて該端子部材と該電線とを導通させる部材であることを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか1項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セレーションが形成された端子をエナメル線等の電線に押し当てて端子と電線とを導通させる構造のコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
モータにはエナメル線等の電線を巻いたコイルが存在する。このため、そのコイルの電線と外部回路とを接続するコネクタが必要となる。このコネクタには、セレーションと呼ばれる凹凸部をつけた端子が用いられる。このコネクタは、端子の、セレーションが形成された面を電線に押し当てて電線の被覆を破ることによって、端子と電線を導通させる構造となっている。
【0003】
特許文献1には、第1部材と第2部材とに分かれて役割分担された端子を用いたコネクタが開示されている。第1部材は、片持ち梁形状の弾性部材である。そして、この第1部材は、セレーションが形成されて電線に押し当てられる円弧状の接触面を有する。第2部材は、外部回路との接続部を有する部材であって、第1部材を電線に押し当てる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上掲の特許文献1のコネクタの場合、弾性部材である第1部材の片持ち梁形状の先端部を第2部材で押す構造となっている。この構造の場合、第1部材を予め定められた太さの電線に対し適切な押圧力で押し当てることは可能である。しかしながら、この構造の場合、電線の太さに関し狭いレンジ内の太さの電線にしか、適切な押圧力で押し当てることは出来ない。すなわち、この構造の場合、太さの異なる電線ごとに異なる設計によるコネクタが必要となる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、広いレンジの太さの電線に適用することが可能なコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明のコネクタは、
キャビティを有し絶縁性材料で形成されたハウジングと、
ハウジングへの圧入を担う平板状の基部、およびその基部から延長して外力の影響を受けない状態で基部とともに一枚の平板を成し、電線に接する接触面に電線との接触を担うセレーションが形成されたセレーション部を備え、上記キャビティに収容される端子部材と、
上記キャビティに収容されてそのキャビティ内で弾性変形し、セレーション部の、接触面に対する背面を押圧する、ハウジングとは別体の弾性部材とを備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明のコネクタの場合、端子部材がセレーション部を有し、そのセレーション部の、セレーションが形成された接触面が電線に押し当てられる。そして弾性部材は、セレーション部の、接触面に対向する背面を押圧している。本発明のコネクタの場合、この構造により、太い電線ほど弾性部材が大きく変形して端子部材が電線に強く押し当てられる。したがって、本発明のコネクタの場合、1つの設計で広いレンジの太さの電線に適用することができる。
【0009】
ここで、上記弾性部材が、
ハウジングの、キャビティを形成している内壁面に当接してハウジングから反力を受ける当接面を有する当接部と、
その当接部から折り返されて上記被押圧領域を弾性的に押圧する押圧部とを有し、
キャビティ内で弾性変形することでハウジングへの圧入なしにキャビティ内に嵌り込む構造とすることが好ましい。
【0010】
この構造の弾性部材の場合、太さの異なる電線に対し押圧力を安定的に変化させることができる。
また、本発明のコネクタにおいて 上記弾性部材が、ハウジングのキャビティに収容されて端子部材を押圧した状態において、弾性部材の押圧部の、当接部から折り返された側の固定端から延びた先端側の自由端部が、当接部の、上記当接面に対する裏面である背面に当接することが好ましい。
【0011】
押圧部の自由端部が端子部材に当接した状態とすることにより、自由端部が端子部材から離れた状態にある場合よりも、より大きな押圧力を得ることができる。
【0012】
ここで、上記弾性部材は、端子部材に、電線が太径であるほど大きな押圧力を与えて端子部材と電線とを導通させる部材である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のコネクタによれば、広いレンジの太さの電線に適用することが可能なコネクタが実現する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態としてのコネクタの斜視図である。
【
図2】嵌合した状態にある本実施形態のコネクタおよび相手コネクタを示した斜視図である。
【
図3】本実施形態のコネクタのハウジングの斜視図である。
【
図4】本実施形態のコネクタの端子部材(A)および弾性部材(B)の斜視図である。
【
図5】本実施形態のコネクタの組立の過程を示した断面図である。
【
図6】コイル巻線の直径wと弾性部材の押圧部の変位量dとの関係を示す模式図である。
【
図7】弾性部材の各種変形例を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態としてのコネクタの斜視図である。
【0017】
このコネクタ1は、ハウジング10と、端子部材20と、弾性部材30とを備えている。
【0018】
ハウジング10は、例えば不図示のモータのハウジングの一部であって、絶縁性材料で形成されている。このハウジング10には、柱状部11が設けられている。この柱状部11には、モータ内のコイル巻線40(
図5参照)の先端部41が数回巻き付けられる。そのコイル巻線40は、端子部材20と導通する。詳細は後述する。
【0019】
図2は、嵌合した状態にある本実施形態のコネクタおよび相手コネクタを示した斜視図である。
【0020】
相手コネクタ2には、不図示の外部回路に接続されている電線50の端部が接続されている。本実施形態のコネクタ1に相手コネクタ2が嵌合すると、不図示のモータのコイル巻線40(
図5参照)に外部回路から電力が供給される。
【0021】
図3は、本実施形態のコネクタのハウジングの斜視図である。
【0022】
また、
図4は、本実施形態のコネクタの端子部材(A)および弾性部材(B)の斜視図である。この
図4では、分かり易さのため、端子部材20および弾性部材30を、
図3に示すハウジング10に対応する寸法よりも拡大して示している。また、この
図4では、特徴部分があらわれるように、端子部材20および弾性部材30を、
図3に示すハウジング10に挿し込む向きとは上下逆向きに示している。
【0023】
図3に示すように、ハウジング10には、キャビティ12が形成されている。このキャビティ12は、第1室121と第2室122とに分かれている。第1室121には、
図4(A)に示す端子部材20が挿し込まれる。また、第2室122には、
図4(B)に示す弾性部材30が挿し込まれる。
【0024】
端子部材20は、良導電性の金属製であり、
図4(A)にあらわれている接触面21と、その背面22を有する。接触面21は、セレーション23が形成されたセレーション領域211を有する。また、この端子部材20は、ハウジング30への圧入を担う圧入部24および相手コネクタ2(
図2参照)の端子(不図示)との電気的な接続を担う接続部25が設けられている。
【0025】
また、弾性部材30は、例えば高弾性を有する金属製であり、当接部31と押圧部32とを有する。当接部31は、ハウジング10のキャビティ12の第2室122を形成している内壁面(
図5に示す上面124)に接して、ハウジング10からの反力を受ける部分である。また、押圧部32は、当接部31から折り返されて、端子部材20の背面22を押圧する部分である。ここで、この押圧部32は、端子部材20の背面22のうちの、接触面21のセレーション領域211に対向する被押圧領域221を押圧する。
【0026】
図5は、本実施形態のコネクタの組立の過程を示した断面図である。ただし、コイル巻線40およびハウジング10の柱状部11については、断面図でなく模式図となっている。これは、ハウジング10の柱状部11にコイル巻線40の先端部41が巻き付けられている様子を示すためである。
【0027】
図5(A)には、端子部材20を挿し込む前の状態のハウジング10の断面が示されている。
【0028】
端子部材20が挿し込まれる前に、コイル巻線40が、
図5(A)に示すように、ハウジング10のキャビティ12を区画している下面123に沿って配置される。そして、そのコイル巻線40の先端部41が、ハウジング10の柱状部11への巻付けにより終端処理がなされる。このコイル巻線40は、本発明にいう電線の一例である。ここでは、このコイル巻線40の直径を直径wとする。
【0029】
この状態で、端子部材20が、接触面21をコイル巻線40側に向けた姿勢で、
図5(B)に示すように、ハウジング10のキャビティ12の第1室121に挿し込まれる。
【0030】
次に、ハウジング10のキャビティ12の第2室122に、押圧部32を端子部材20側に向けた姿勢で、弾性部材30が挿し込まれる。
【0031】
すると、弾性部材30の押圧部32が、端子部材20の背面22の、セレーション領域211と対向する被押圧領域221に接して弾性変形する。
図5(C)には、弾性変形した後の押圧部32が実線で示されている。また、この
図5(C)には、弾性変形する前の状態の押圧部32が破線で示されている。この
図5(C)には、押圧部32の、弾性変形する前の状態からの弾性変形による変位量dが示されている。
【0032】
この押圧部32の弾性変形により、弾性部材30の当接部31が、ハウジング10のキャビティ12を区画している上面124から反力を受ける。そして、弾性部材30の押圧部32が、端子部材20を、コイル巻線40に向けて下方に押圧する。この押圧により、端子部材20の接触面21に形成されたセレーション23がコイル巻線40の被覆を突き破り、端子部材20とコイル巻線40とが導通する。
【0033】
なお、弾性部材30が第2室122に挿入されると、押圧部32の、当接部31から折り返された側の固定端から延びた先端側の自由端部321が、押圧部31の、当接面311に対する裏面である背面312に当接する。この当接により、より大きな押圧力を得ることができ、端子部材20がコイル巻線40により強く押し当てられる。
【0034】
ここで、端子部材20には圧入部24(
図4(A)参照)が設けられていて、ハウジング10のキャビティ12に圧入される。これにより、端子部材20の、キャビティ12からの抜けが防止される。一方、弾性部材30には、端子部材20における圧入部24に相当する構造は設けられていない。ただし、この弾性部材30は、キャビティ12内で弾性変形することで、キャビティ12内に強く嵌り込んでいる。これにより、弾性部材30も、キャビティ12からの抜けが防止される。
【0035】
図6は、コイル巻線の直径wと弾性部材の押圧部の変位量dとの関係を示す模式図である。
【0036】
一般的に、太いコイル巻線は細いコイル巻線より通電容量が大きいので、端子部材との接触界面において広い接触面積が必要である。接触面積を広げるには、端子部材の押圧力を強くしてコイル巻線の一部を潰すことが有効である。このため、太いコイル巻線の場合、端子部材の押圧力を上げることが必要となる。
【0037】
ここで、本発明のコネクタ1の場合、
図6に示すように、コイル巻線40の直径wが大きい(コイル巻線40が太い)ほど、弾性部材30の押圧部32の変位量d(
図5(C)参照)が大きい。すなわち、太いコイル巻線40ほど、そのコイル巻線40に、端子部材20が強い押圧力で押し当てられる。
【0038】
そこで、コイル巻線40の直径wと弾性部材30の押圧部32の変位量dとの関係が適切な関係となるように、弾性部材30等を設計しておく。そうすることにより、1つの設計によるコネクタ1を使って、広いレンジの直径のコイル巻線40に対し、端子部材20を適切な押圧力で押圧することが可能となる。
【0039】
図7は、弾性部材の各種変形例を示した模式図である。
【0040】
上述の実施形態における弾性部材30の場合、押圧部32は、当接部31の延びた向きの一方の端部で折り返して片持ち梁形状に延びた形状を有している。
【0041】
これに対し、
図7(A)に示す弾性部材30の場合、当接部31の延びる向きの前後の端部の各々で折り返した2つの押圧部32が設けられている。
【0042】
また、
図7(B)に示す弾性部材30の場合、当接部31の一方の側面で折り返した押圧部32が設けられている。すなわち、この弾性部材30は、この
図7(B)に示す形状のまま、紙面に垂直な向きに延びた弾性部材である。
【0043】
さらに、また、
図7(C)に示す弾性部材30の場合、当接部31の両側の側面それぞれで折り返した2つの押圧部32が設けられている。すなわち、この弾性部材30は、
図7(B)の場合と同じく、この
図7(C)に示す形状のまま、紙面に垂直な向きに延びた弾性部材である。
【0044】
このように、
図4(B)に示す形状の弾性部材30に代えて、当接部31と押圧部32とを有する、様々な形状の弾性部材を採用し得る。
【0045】
なお、端子部材20についての変形例は、その図示を省略するが、端子部材20についても様々な形状のものを採用することができる。例えば、上述の実施形態における端子部材20の接続部25は角柱形状であるが、この接続部25は、例えば、円柱形状であってもよく、平板形状であってもよく、様々な形状のものが採用され得る。
【0046】
以上の通り、本実施形態のコネクタは、1つの設計で、広いレンジの径のコイル巻線40に適用することが可能である。
【0047】
ここでは、モータのコイル巻線40に繋がるコネクタ1について説明した。ただし、本発明は、モータのコイル巻線に接続されるコネクタに限られるものではない。本発明のコネクタは、端子にセレーションを形成しておいて、そのセレーションをエナメル線等の電線に押し当てて導通を図る様々な分野に適用するすることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 コネクタ
2 相手コネクタ
10 ハウジング
11 柱状部
12 キャビティ
121 第1室
122 第2室
123 下面
124 上面
20 端子部材
21 接触面
211 セレーション領域
22 背面
23 セレーション
24 圧接部
25 接続部
30 弾性部材
31 当接部
32 押圧部