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特許7102146薬剤送達装置のためのカートリッジホルダアセンブリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】薬剤送達装置のためのカートリッジホルダアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/24 20060101AFI20220711BHJP
   A61M 5/31 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
A61M5/24
A61M5/31
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2017550558
(86)(22)【出願日】2016-03-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-04-12
(86)【国際出願番号】 EP2016056907
(87)【国際公開番号】W WO2016156387
(87)【国際公開日】2016-10-06
【審査請求日】2019-01-30
【審判番号】
【審判請求日】2021-08-13
(31)【優先権主張番号】15161852.7
(32)【優先日】2015-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】オステルガルド, ブリーアン
【合議体】
【審判長】千壽 哲郎
【審判官】栗山 卓也
【審判官】井上 哲男
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-500746(JP,A)
【文献】特表2005-511152(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0312715(US,A1)
【文献】特開2001-87387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向軸を画定し、かつ、概して円筒型の主部(121)と、外周肩部を伴う首部(122)を有する遠位出部と、外周縁部(125)に取り囲まれた開口を有する近位部とを備える、封入されたカートリッジ(120)と、
前記カートリッジの前記首部と係合し、かつ、遠位方向への動きに抗して前記カートリッジを支持するよう適合している、遠位支持構造体(225)を備える、カートリッジホルダ遠位部(210)と、
前記カートリッジの前記外周縁部と係合し、かつ、近位方向への動きに抗して前記カートリッジを支持するよう適合している、近位支持構造体(235)を備える、カートリッジホルダ近位部(230)とを備える、カートリッジホルダアセンブリであって、
前記遠位支持構造体は、軸方向に配向されたいくつかのリブ部(225)の形態であり、各リブ部は前記カートリッジの前記外周肩部と係合するよう適合した近位自由端部を備え、
前記近位支持構造体は弾性変形するだけであり、
前記遠位支持構造体の前記リブ部の前記近位自由端部は少なくとも一部が塑性変形する、カートリッジホルダアセンブリ。
【請求項2】
前記近位支持構造体は基本的に変形しない、請求項1に記載のカートリッジホルダアセンブリ。
【請求項3】
前記近位支持構造体が、前記カートリッジ縁部と係合するよう適合した、軸方向に配向されたいくつかのリブ部(235)の形態である、請求項1または2に記載のカートリッジホルダアセンブリ。
【請求項4】
前記近位支持構造体が、前記カートリッジ縁部と係合するよう適合したいくつかの外周セグメントの形態である、請求項1または2に記載のカートリッジホルダアセンブリ。
【請求項5】
前記遠位支持構造体が前記カートリッジホルダ遠位部と一体的に形成され、かつ/又は、前記近位支持構造体が前記カートリッジホルダ近位部と一体的に形成される、請求項1から4のいずれか一項に記載のカートリッジホルダアセンブリ。
【請求項6】
前記カートリッジホルダ近位部(230)と前記カートリッジホルダ遠位部(210)とが互いに取り外し不可に接続される、請求項1から5のいずれか一項に記載のカートリッジホルダアセンブリ。
【請求項7】
前記カートリッジホルダ遠位部(210)は、前記カートリッジの前記主部が内部に配置される管状主部を備える、請求項1から6のいずれか一項に記載のカートリッジホルダアセンブリ。
【請求項8】
前記カートリッジホルダが概して円筒型である、請求項1から7のいずれか一項に記載のカートリッジホルダアセンブリ。
【請求項9】
前記カートリッジがガラスから製造される、請求項1から8のいずれか一項に記載のカートリッジホルダアセンブリ。
【請求項10】
前記近位部がねじ穴(232)を備える、請求項1から9のいずれか一項に記載のカートリッジホルダアセンブリ。
【請求項11】
薬剤送達装置の一部を形成するカートリッジホルダアセンブリであって、前記薬剤送達装置が、前記カートリッジから設定用量を吐出するための薬剤吐出手段を備える、請求項1から10のいずれか一項に記載のカートリッジホルダアセンブリ。
【請求項12】
薬剤送達装置の一部を形成するカートリッジホルダアセンブリであって、前記薬剤送達装置が用量設定手段を更に備える、請求項11に記載のカートリッジホルダアセンブリ。
【請求項13】
カートリッジホルダアセンブリを組み立てる方法であって、
(i)長手方向軸を画定し、かつ、概して円筒型の主部(121)と、外周肩部を伴う首部(122)を有する遠位出口部と、外周縁部(125)に取り囲まれた開口を有する近位部とを備える、カートリッジ(120)を提供するステップと、
(ii)前記カートリッジの前記首部と係合し、かつ、遠位方向への動きに抗して前記カートリッジを支持するよう適合した、遠位支持構造体であって、軸方向に配向されたいくつかのリブ部(225)の形態であり、各リブ部は前記カートリッジの前記外周肩部と係合するよう適合した近位自由端部を有する遠位支持構造体を備える、カートリッジホルダ遠位部(210)と、前記カートリッジの前記外周縁部と係合し、かつ、近位方向への動きに抗して前記カートリッジを支持するよう適合した、近位支持構造体(235)を備える、カートリッジホルダ近位部(230)とを提供するステップであって、前記カートリッジホルダ遠位または前記カートリッジホルダ近位部の一方が、前記カートリッジの前記主部を軸方向に受容するよう適合した管状部を備える、ステップと、
(iii)前記カートリッジを前記管状部内に挿入するステップと、
(iv)前記カートリッジホルダ遠位部と前記カートリッジホルダ近位部とを組み立てることによって、前記遠位支持構造体の前記リブ部の前記近位自由端部の少なくとも一部を塑性変形させるステップであって、前記近位支持構造体は弾性変形するだけである、ステップとを含む、カートリッジホルダアセンブリを組み立てる方法。
【請求項14】
前記近位支持構造体は基本的に変形しない、請求項13に記載のカートリッジホルダアセンブリを組み立てる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一定量の薬剤経皮送達に適合した医療用送達装置に関する。特定の一態様では、本発明は、薬剤送達装置と組み合わされて使用されるか、又は薬剤送達装置の一部を形成する、薬剤カートリッジ用のホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の開示では、主としてインスリンの送達による糖尿病治療に言及するが、これは本発明の例示的な一使用に過ぎない。
【0003】
薬剤注射装置の形態の薬剤送達装置は、薬剤及び生物学的製剤を自己投与する必要がある患者の生活を大いに改善してきた。薬剤注射装置は、注射手段を伴うアンプルと大差ない単純な使い捨て装置を含む、多くの形態をとりうるか、又は、高度に洗練され、電気的に制御された多機能器具でありうる。薬剤注射装置は、その形態に関わらず、患者による注射薬及び生物学的製剤の自己投与を支援する上で大いに役立つことが分かっている。また、薬剤注射装置は、自己注射を実施できない人々に対する注射剤の投与において、介護者を大いに支援するものである。
【0004】
特にペン型注射装置は、インスリンなどの薬剤及び生物学的製剤を投与するための、正確で使いやすく、多くの場合個別的(discrete)な方法を、提供することが分かっている。ペン型注射装置は、典型的には、円筒型であり、装着された針が装置の一端の最遠位部から突出しているものであるが、デンマーク、BagsvardのNovo Nordisk A/SによるInnovo(登録商標)及びInnoLet(登録商標)などの一部の装置は、他の形状を有し、針が装置の一端の最遠位部から突出しなくなっている。
【0005】
典型的には、注射装置は、1.5ml又は3.0mlのインスリン、或いは成長ホルモンなどの対象の薬物を内包する充填済みのカートリッジを使用する。カートリッジは、典型的には、概して円筒型の透明ガラス製シリンダの形態であり、このシリンダは、遠位開口が針穿刺可能な隔壁によって閉鎖されている遠位ボトルネック部と、反対側の近位開口とを有し、近位開口内には弾性ピストンが受容される。このピストンは、注射装置の投薬(dosing)機構によって動かされるよう、配置されている。注射装置は、概括的に、「耐久型」装置と「使い捨て」装置との、2つの種類のものである。耐久型装置は、ユーザが、1つのカートリッジを別のカートリッジに、典型的には、空のカートリッジの代わりに新しいカートリッジに、交換することを可能にするよう設計される。対照的に、使い捨て装置には、ユーザが交換できない一体的なカートリッジが設けられ、カートリッジが空になると装置全体が廃棄される。
【0006】
注射装置の、カートリッジを受容し保持する部分は、従来カートリッジホルダと称されており、主に、吐出機構のピストンロッドに対してカートリッジを位置付け、カートリッジをしっかりと保持する役割を果たす。特に、投薬精度のためには軸方向の固定が重要である。そのため、「完全型」カートリッジホルダは、円筒型本体部と、カートリッジの遠位部と係合する遠位部と、カートリッジの近位部と係合する近位部とを備える。しかし、典型的には、「カートリッジホルダ(cartridge holder)」という用語は、主部と遠位部の両方を一体的に形成し、かつ、カートリッジが遠位方向に挿入される近位開口を有する、管状部材に適用される。カートリッジホルダはカートリッジを受容した後に、注射装置の主部(すなわち、吐出機構を備える部分)に装着され、この主部が次いで、カートリッジと係合する。この方法で、カートリッジホルダアセンブリが形成される。
【0007】
代替的には、カートリッジホルダの円筒型本体部は、注射装置の主部の遠位管状延長部によって形成されうる。この遠位管状延長部内にカートリッジが近位方向に挿入され(すなわち前方搭載)、カートリッジホルダは、例えば単純なプラグ部、又はより手の込んだ作動可能閉鎖機構でありうる、遠位閉鎖部材によって閉鎖される。
【0008】
更なる代替例では、カートリッジホルダは、完全独立型のサブアセンブリを形成する。このサブアセンブリ内にカートリッジが完全に封入され、続いてサブアセンブリが注射装置の主部に装着される。かかるアセンブリには、ピストンロッドなどの吐出機構の部分が設けられてもよく、この部分は次いで、それ以外の部分であるピストンロッド駆動機構と連動する(例えばEP 1 458 440参照)。
【0009】
自明であるように、耐久型注射装置ではカートリッジホルダが解除可能な連結部材を使用して装着される一方、使い捨ての充填済み装置では、カートリッジホルダは装置の主部に恒久的に装着される。ガラス製カートリッジは長さに対して比較的大きな公差(例えば0.5mm)を有して製造されることから、カートリッジホルダはこの変動に適応する必要がある。ゆえに、耐久型装置では、カートリッジは、典型的には、US2012/0143143で開示されているように、ばね又は可撓性アームなどの弾性変形可能手段によって、軸方向に定位置に保持される。US 2009/0312715は、遠位センタリング構造を備える耐久型カートリッジホルダを開示している。対照的に、使い捨て装置では塑性変形係合構造が利用されうる。
【0010】
上述の種類のカートリッジホルダは、典型的には、ガラス製カートリッジであって、それ自体は注射装置との直接接続を可能にする連結手段を備えない、カートリッジを保持するよう設計される。しかし、薬剤カートリッジがポリマー材料から製造される場合、連結手段がカートリッジ自体と一体的に形成されうる。そのため、従来型のカートリッジホルダは不要になりうる。
【0011】
上記を考慮するに、本発明の1つの目的は、薬剤充填カートリッジが、コスト効率の良い方法で、安全かつ確実に薬剤送達装置内に装着されることを可能にする、構成要素、装置及び方法を提供することである。薬剤充填ガラス製カートリッジが、コスト効率の良い方法で、安全かつ確実に、使い捨ての薬剤送達装置内に装着されることを可能にする手段を提供することが、本発明の具体的な目的である。
【発明の概要】
【0012】
本発明の開示では、上記の一又は複数の目的に向けての、或いは、下記の開示から並びに例示的な実施形態の説明から明らかになる目的に向けての、実施形態及び態様について説明する。
【0013】
ゆえに、本発明の第1態様では、封入されたカートリッジと、カートリッジホルダ遠位部(以下、「遠位部」という)と、カートリッジホルダ近位部(以下、「近位部」という)とを備える、カートリッジホルダアセンブリが提供される。封入されたカートリッジは、長手方向軸を画定し、かつ、概して円筒型の主部と、外周肩部を伴う首部を有する遠位出口部と、外周縁部に取り囲まれた開口を有する近位部とを備える。遠位部は、カートリッジ首部と係合し、かつ、遠位方向への動きに抗してカートリッジを支持するよう適合している、遠位支持構造体を備え、近位部は、カートリッジ外周縁部と係合し、かつ、近位方向への動きに抗してカートリッジを支持するよう適合している、近位支持構造体を備える。近位支持構造体は弾性変形するだけであり、遠位支持構造体は塑性変形する。カートリッジはガラスから製造されうる。近位支持構造体は基本的に変形しない(軸方向に0.3mm未満、0.2mm未満、又は0.1mm未満など)ものでありうる。
【0014】
この構成によって、組み立て中及び取り扱い中にカートリッジに作用する一点集中力(punctual forces)が首部の傾斜した外周肩部に作用し、このことによって、カートリッジが、コスト効率の良い方法で、カートリッジホルダ内に確実に装着されうることになる。
【0015】
遠位支持構造体は軸方向に配向されたいくつかのリブ部の形態であってよく、各リブ部はカートリッジ肩部と係合するよう適合した近位自由端部を備え、その端部の少なくとも一部分が変形する。
【0016】
近位支持構造体は、カートリッジ縁部と係合するよう適合した、軸方向に配向されたいくつかのリブ部の形態でありうる。近位支持構造体は、カートリッジ縁部と係合するよう適合した、いくつかの外周セグメントの形態でもありうる。
【0017】
遠位支持構造体が遠位カートリッジホルダ部と一体的に形成されてよく、かつ/又は、近位支持構造体が近位カートリッジホルダ部と一体的に形成されうる。
【0018】
例示的な一実施形態では、カートリッジホルダの遠位部と近位部とは、互いに取り外し不可に接続される。カートリッジホルダ遠位部は、カートリッジ主部が内部に配置される、管状主部を備えうる。カートリッジホルダは概して円筒型であってよく、近位部は、対応するねじ式ピストンロッドを受容するよう適合したねじ穴を備えてよく、これにより、薬剤吐出機構の一部を形成しうる。
【0019】
上述のカートリッジホルダアセンブリは、カートリッジから設定用量を吐出するための薬剤吐出手段を備える薬剤送達装置の一部を形成しうる。この装置は、一定用量装置でありうるか、又は、ユーザが吐出される所望の用量を設定することを可能にする、用量設定手段を備えうる。
【0020】
本発明の第2態様では、カートリッジホルダアセンブリを組み立てる方法が提供され、この方法は、(i)長手方向軸を画定し、かつ、概して円筒型の主部と、外周肩部を伴う首部を有する遠位出口部と、外周縁部に取り囲まれた開口を有する近位部とを備える、カートリッジを提供するステップと、(ii)カートリッジ首部と係合し、かつ、遠位方向への動きに抗してカートリッジを支持するよう適合した、遠位支持構造体を備える、遠位カートリッジホルダ部と、カートリッジ外周縁部と係合し、かつ、近位方向への動きに抗してカートリッジを支持するよう適合した、近位支持構造体を備える、近位カートリッジホルダ部とを提供するステップであって、これら2つのカートリッジホルダ部の一方が、カートリッジ主部を軸方向に受容するよう適合した管状部を備える、ステップとを含む。方法は、(iii)カートリッジを管状部内に挿入するステップと、(iv)遠位と近位のカートリッジホルダ部を組み立てることによって、遠位支持構造体を塑性変形させるステップであって、近位支持構造体は弾性変形するだけである、ステップとを、更に含む。近位支持構造体は基本的に変形しないものでありうる。
【0021】
本発明の更なる態様では、封入されたカートリッジと、遠位部と、近位部とを備える、カートリッジホルダアセンブリが提供される。封入されたカートリッジは、長手方向軸を画定し、かつ、概して円筒型の主部と、外周肩部を伴う首部を有する遠位出口部と、外周縁部に取り囲まれた開口を有する近位部とを備える。遠位部は、カートリッジ首部と係合し、かつ、遠位方向への動きに抗してカートリッジを支持するよう適合している、遠位支持構造体を備え、近位部は、カートリッジ外周縁部と係合し、かつ、近位方向への動きに抗してカートリッジを支持するよう適合している、近位支持構造体を備える。近位支持構造体は基本的に変形せず、遠位支持構造体は塑性変形する。カートリッジはガラスから製造されうる。
【0022】
この構成によって、組み立て中にカートリッジに作用する一点集中力が、塑性変形が起こる実施形態と比較して、低減する。
【0023】
遠位支持構造体は軸方向に配向されたいくつかのリブ部の形態であってよく、各リブ部はカートリッジ肩部と係合するよう適合した近位自由端部を備え、その端部の少なくとも一部分が変形する。
【0024】
近位支持構造体は、カートリッジ縁部と係合するよう適合した、軸方向に配向されたいくつかのリブ部の形態でありうるか、又は、カートリッジ縁部と係合するよう適合した、いくつか外周セグメントの形態でありうる。
【0025】
遠位支持構造体が遠位カートリッジホルダ部と一体的に形成されてよく、かつ/又は、近位支持構造体が近位カートリッジホルダ部と一体的に形成されうる。
【0026】
例示的な一実施形態では、カートリッジホルダの遠位部と近位部とは、互いに取り外し不可に接続される。カートリッジホルダ遠位部は、カートリッジ主部が内部に配置される管状主部を備えうる。カートリッジホルダは概して円筒型であってよく、近位部は、対応するねじ式ピストンロッドを受容するよう適合したねじ穴を備えてよく、これにより、薬剤吐出機構の一部を形成しうる。
【0027】
上述のカートリッジホルダアセンブリは、カートリッジから設定用量を吐出するための薬剤吐出手段を備える薬剤送達装置の一部を形成しうる。この装置は、一定用量装置でありうるか、又は、ユーザが吐出される所望の用量を設定することを可能にする、用量設定手段を備えうる。
【0028】
本発明のまた更なる態様では、上述の方法に類似した、カートリッジホルダアセンブリを組み立てる方法が提供され、その相違点は、遠位と近位のカートリッジホルダ部が組み立てられることにより、遠位支持構造体を弾性変形させ、近位支持構造体は基本的に変形しないことである。
【0029】
本書において、「インスリン(insulin)」という用語は、液体、溶液、ゲル又は微細懸濁液などの制御された様態でカニューレ又は中空針といった送達手段を通過可能であり、かつ、血糖値制御効果を有する任意の薬剤含有流動可能薬物、例えばヒトインスリン及びその類似体、並びに、GLP-1及びその類似体等の非インスリンを包含することを、意味する。例示的な実施形態の説明では、インスリンの使用への言及がなされる。
【0030】
下記の実施形態においては、図面を参照して本発明について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1A-1B】薬剤送達装置の一実施形態を示す。
図2】カートリッジホルダアセンブリの断面図を示す。
図3図2のカートリッジホルダアセンブリの遠位部を詳細に示す。
図4図2のカートリッジホルダアセンブリの近位部を詳細に示す。
図5-6】更なるカートリッジホルダアセンブリの遠位部と近位部の断面図をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図面では、類似の構造体を主に類似の参照番号によって特定する。
【0033】
下記において、「上方(upper)」及び「下方(lower)」、「右(right)」及び「左(left)」、「水平(horizontal)」及び「垂直(vertical)」などの用語、又は類似の相対表現が使用される場合、これらは付随する図面にのみ言及するものであり、必ずしも実際の使用状況を表すものではない。示されている図面は概略表現であるため、種々の構造体の構成、並びにそれらの相対的寸法は、例示目的の役割を果たすことのみを意図している。所与の構成要素に対して部材又は要素という用語が使用される場合、その用語は概括的に、説明されている実施形態においてその構成要素が一体型構成要素であることを示すが、代替的には、説明されている構成要素のうちの2つ以上が一体型構成要素として提供され(例えば単一射出成型部品として製造され)うる場合のように、同じ部材又は要素がいくつかの副構成要素を備えうる。「組み立て・アセンブリ(assembly)」という用語は、説明されている構成要素が所与の組立手順において必然的に一体型の又は機能的なアセンブリを提供するよう組み立てられうることを暗示するのではなく、単に、機能的により密接に関連したものとしてグループ化された構成要素を説明するために使用される。
【0034】
本発明の実施形態自体を参照する前に、再設定可能なダイヤルアップ/ダイヤルダウン自動薬剤送達装置の「ジェネリックな(generic)」従来技術の一例について説明する。かかる装置は、本発明の例示的な実施形態のための基礎を提供する。
【0035】
ペン装置100は、キャップ部107と主部とを備えており、主部が、薬剤吐出機構が内部に配置され又は組み込まれたハウジング101を有する近位本体部又は駆動アセンブリ部と、遠位カートリッジホルダ部とを有し、この遠位カートリッジホルダ部内で、遠位針貫通可能隔壁を有する薬剤充填透明カートリッジ120が、近位部に取り付けられたカートリッジホルダによって定位置に配置されて保持され、カートリッジホルダは、カートリッジの一部分の視認を可能にする、一対の対向開口111を有する。遠位連結手段115は、針アセンブリが、カートリッジ内部と流体連通するように、取り外し可能に装着されることを可能にする。カートリッジには、吐出機構の一部を形成するピストンロッドによって駆動されるピストンが設けられ、カートリッジは例えば、インスリン、GLP-1、又は成長ホルモン製剤を内包しうる。最近位回転可能用量設定部材180は、表示窓102内に示される所望の薬剤用量を手動で設定するよう作用し、次いで、ボタン190が押されると、この所望の薬剤用量が吐出されうる。薬剤送達装置において具現化される吐出機構の種類に応じて、吐出機構は、用量設定中に引っ張られ、次いで、解放ボタンが押されると弛緩してピストンロッドを駆動する、実施形態に図示しているようなねじりばねを備えうる。より具体的には、用量設定中に、ばねに接続されている駆動部材が、設定用量に対応する回転位置へと回転することによって、付勢状態になる。用量サイズ数字を有するスケールドラムは、その時点で設定されている用量サイズが標示窓内に示されるように、例えばハウジングとのねじ式接続を用いて、駆動部材に連結される。駆動部材の回転を防止するために、用量設定機構には保持機構が設けられ、この保持機構は、図示されている実施形態では、ラチェット機構の形態である。ユーザが設定用量の吐出を望む時には、ボタンが押され、それによって、駆動部材がピストンロッド駆動機構と係合し、続いて保持機構が解放されることになる。
【0036】
図1A及び図1Bは、充填済みの種類の薬剤送達装置を示している(すなわち、この薬剤送達装置は、事前装着されたカートリッジと共に供給され、カートリッジが空になると廃棄される)が、代替的な実施形態では、薬剤送達装置は、例えばカートリッジホルダ内に装着されたカートリッジを備えるカートリッジアセンブリの形態のカートリッジアセンブリの、交換を可能にするよう設計された耐久型装置でありうる。かかるアセンブリには、事前装着されたピストンロッドが更に設けられうる。
【0037】
図5及び図6の本発明の例示的な一実施形態を参照する前に、図1A及び図1Bの薬剤送達装置の従来技術のカートリッジホルダ部について、図2から図4を参照して、より詳細に説明する。自明であるように、図2から図6には直立したカートリッジホルダを示しているが、遠位出口を有する手持ち式の薬剤送達装置について説明する際に使用する、通常の遠位-近位という用語を利用して説明する。
【0038】
より具体的には、図2は、管状主部材110と、それに取り付けられた近位閉鎖部材130とを備える、カートリッジホルダアセンブリ150の断面図を示しており、これら2つの部材は、組み合わされて封入体を形成し、この封入体の中で、薬剤充填カートリッジ120が定位置に装着され、保持される。
【0039】
図3及び図4を参照するに、カートリッジ120は、近位開口及び外周近位端部(又は縁部)125を有する管状主部121、遠位開口及び外周フランジ123を有する遠位部、並びに、それらの間に配置された、傾斜した肩部を有する首部122を備える。ピストン部材129が、管状主部内に摺動可能に受容される。遠位開口は、針貫通可能隔壁部材124で閉鎖され、針貫通可能隔壁部材124は、図示されている実施形態では、異なるゴム材料の2つの層を備え、かつ、金属キャップ126によって定位置に保持される。金属キャップ126は、遠位フランジ部の外周を把持することによって、隔壁部材をカートリッジとの密封係合に保持するものであり、針が隔壁部材を貫通することを可能にする中心開口を備える。
【0040】
カートリッジホルダ管状主部材110は、カートリッジが受容されることを可能にする内径を有する管状主部、遠位連結部115、遠位部と主部との間の首部117、並びに、近位連結部を備える。遠位連結部は、針アセンブリのための外側連結部材115(図2参照)を伴う、概して管状の構成を有し、中心開口が内向きに突出している遠位フランジ116に取り囲まれており、遠位部が、カートリッジの遠位キャップ部をスナッグ嵌合(snug fit)で受容するよう適合している。近位連結部は、外周外側フランジ119と、装置ハウジング部材101と係合するよう適合した第1外周連結部112と、閉鎖部材130と係合するよう適合した第2最近位外周連結部113とを備える。
【0041】
閉鎖部材130は、底部を有する概して椀型の構成を有し、この底部から、連結スカート部133が遠位方向に延在し、かつ、内部ねじ山(132)を有する中心ナット部131が近位方向に延在する。連結スカート部はカートリッジホルダと係合するよう適合しており、ナットねじ山は、ねじ式ピストンロッドを受容するよう適合し、ゆえに、薬剤送達装置の吐出機構の一部を形成する。底部から、いくつかの径方向リブ135(ここでは4つ)が遠位方向に延在し、各リブは、カートリッジ近位端部と係合するよう適合した自由遠位端部を有する。自由端部は、カートリッジをセンタリングするのに役立つよう、傾斜している。閉鎖部材は、装置ハウジング部材101と係合するよう適合した、外周連結突起136を更に備える。
【0042】
組み立て中に、閉鎖部材130が装置ハウジング部材101内に挿入される。カートリッジはカートリッジホルダ主部材110内に挿入され、それにより、カートリッジ金属キャップ126が、カートリッジホルダ遠位フランジ116に当接する。続いて、カートリッジホルダ主部材は、ハウジング部材内に挿入され、それにより、閉鎖部材130とハウジングの両方をロック係合に係合する。それによって、ハウジングリブ130が、カートリッジ近位端部125と係合する。カートリッジホルダ遠位フランジと保持リブの遠位端部との間の距離がカートリッジの最小長さよりも短いことから、組み立てによりリブが塑性変形されることになり、このことが、図2及び図4に示すように(変形したリブをカートリッジ端部に重なっているように示している)、カートリッジがその軸方向位置にしっかりと保持されることを確実にする。カートリッジホルダ主部材と閉鎖部材は、スナップ連結、接着、溶接、又はこれらの組み合わせを用いて組み立てられうる。
【0043】
自明であるように、ガラス製カートリッジに作用する近位方向に向いた力が、金属キャップ及び隔壁を介して遠位フランジ123の外周全体に分散される一方、ガラス製カートリッジに作用する遠位方向に向いた力は、4つの保持リブ135に対応する4点に集中する。
【0044】
図5及び図6を参照して、本発明の例示的な一実施形態について説明する。自明であるように、カートリッジホルダアセンブリのこの例示的な実施形態は、上述の従来技術のアセンブリをリサンプル(resample)しており、ゆえに、首部227を有する管状主部材210と組み合わされたカートリッジ120と、近位閉鎖部材230とを備える。本発明のこの例示的な実施形態は、主に2つの態様において、従来技術とは異なる。遠位では、カートリッジホルダ首部217には、近位方向に延在するいくつかの径方向遠位保持リブ225(ここでは3つ)であって、各リブが傾斜したカートリッジ肩部122と係合するよう適合した自由近位傾斜端部を有する、径方向遠位保持リブ225が設けられた。近位では、カートリッジ近位縁部と係合するよう適合した部分の傾斜をなくし、これにより、カートリッジ近位端部が閉鎖部材によって支持されることが可能になるように、近位保持リブ135をより厚く、それにより一層強くすることによって、閉鎖部材が改変された。代替的には、縁部は、より幅広の外周セグメントによって、又は単一面によって、支持されうる。
【0045】
そのため、図2から図4を参照して上記で説明したようにカートリッジホルダ210、230が組み立てられる時に、遠位保持リブ225が、カートリッジ首部122に当たって塑性変形する(図5は変形したリブをカートリッジのくびれに重なっているように示している)一方、近位保持リブは、塑性変形することなくカートリッジを支持する。実際のところ、遠位リブは、ある程度までは、弾性変形もする。結果として、ガラス製カートリッジに作用する遠位方向に向いた力が近位端部の外周全体に分散される一方、近位方向に向いた力は、3つの遠位保持リブ225に対応する、カートリッジ首部122の3点に集中する。図5には図示していないが、金属キャップ226は通常、カートリッジホルダ遠位フランジ216から若干離間する。
【0046】
この新たな構成によって、ガラス製カートリッジに作用する一点集中力が、近位端部から首部の傾斜した外周肩部に移転されている。このことにより、組み立て中並びに取扱い中の、例えば、薬剤送達装置が高所から落下した時に印加される力に、より良好に耐えることが見込まれる。この方法において、破砕するガラス製カートリッジの数が減少しうる。
【0047】
例示的な実施形態の上記の説明では、説明している機能を種々の構成要素に提供する種々の構造及び手段について、本発明の概念が当業者に明確になる程度に説明した。種々の構成要素のための詳細な構造及び仕様は、本明細書の規定に沿って当業者により実施される、通常の設計手順の目的と見なされる。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6