(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】蒸気弁および発電設備
(51)【国際特許分類】
F01D 17/10 20060101AFI20220711BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
F01D17/10 J
F01D17/10 A
F01D25/00 Q
F01D25/00 G
(21)【出願番号】P 2018072687
(22)【出願日】2018-04-04
【審査請求日】2021-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】宮下 和裕
(72)【発明者】
【氏名】大石 勉
(72)【発明者】
【氏名】竹丸 竜平
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】後藤 寿史
【審査官】落合 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-180143(JP,A)
【文献】特開平07-176182(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0273297(US,A1)
【文献】特開2017-057822(JP,A)
【文献】特開2012-202249(JP,A)
【文献】特開2004-316454(JP,A)
【文献】特表平03-500385(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0070666(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 17/10,25/00,
F16K 51/00,
F16L 55/24,
B01D 50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気流入口と蒸気流出口とに連通した弁室を有する弁ケーシングと、
前記弁室に設けられた弁座と、
前記弁室内に設けられた弁体であって、前記弁座よりも前記蒸気流入口の側に配置され、前記弁座に対して離接可能な弁体と、
前記弁体の周囲に設けられ、蒸気が通過する複数のストレーナ孔を有するストレーナと、を備え、
前記ストレーナは、外周面と、内周面と、を含み、
前記ストレーナ孔は、最小孔径を有する孔本体部と、前記孔本体部よりも前記ストレーナの前記外周面の側に設けられた、前記ストレーナの外側に向かって孔径が拡大した第1孔拡大部と、を含み、
前記第1孔拡大部の壁面は、前記ストレーナ孔の中心軸線を含む断面で見たときに、前記外周面から前記孔本体部にわたって湾曲状に形成され、
前記孔本体部の壁面は、前記中心軸線に平行に延びて、前記内周面に達し
、
前記ストレーナの前記内周面に凹部が設けられ、
前記凹部は、対応する前記ストレーナ孔の前記中心軸線に沿う方向から見たときに、当該ストレーナ孔の周囲に環状に形成されている、蒸気弁。
【請求項2】
前記第1孔拡大部の壁面は、前記中心軸線を含む断面で見たときに、曲率半径RでR形状に形成され、
前記孔本体部の最小孔径をdとしたとき、前記曲率半径Rは、d/6~d/3である、請求項1に記載の蒸気弁。
【請求項3】
蒸気を生成するボイラと、
前記ボイラにより生成された前記蒸気が供給される蒸気タービンと、
前記蒸気タービンによって駆動される発電機と、
前記ボイラから前記蒸気タービンに供給される前記蒸気の流れを制御する、請求項1
または2に記載の前記蒸気弁と、を備えた、発電設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、蒸気弁および発電設備に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンを備えた発電設備においては、ボイラから蒸気タービンに供給される蒸気の流れを制御するために蒸気弁が設けられている。蒸気弁は、蒸気の流量を調整したり、蒸気の流れを遮断したりする。
【0003】
蒸気弁は、蒸気流入口と蒸気流出口とに連通した弁室を有する弁ケーシングを備えている。弁室には弁体が収容されており、弁体が、弁室に設けられた環状の弁座に対して蒸気流入口の側から離接可能になっている。弁体は、弁棒を介して駆動装置に連結されている。弁体の周囲には、蒸気が通過する複数の孔を有するストレーナが設けられている。
【0004】
このような蒸気弁を開いた状態では、弁体が弁座から離れて、弁座と弁体との間に蒸気の流路が形成される。このことにより、蒸気流入口から弁室を通って蒸気流出口に向かう蒸気の流れが形成される。この際、蒸気流入口に流入した蒸気は、ストレーナの孔を通過して、弁座と弁体との間の流路を通って、蒸気流出口に向かう。
【0005】
ストレーナは、蒸気中の異物を除去するために設けられており、蒸気タービンへの異物の侵入の防止を図っている。このことにより、ストレーナの孔の孔径は、所望のサイズの異物を除去可能な程度に小さくなっている。このため、ストレーナの孔を通過する蒸気の流れに圧力損失が生じるという問題がある。この場合、蒸気の速度エネルギが失われ、発電設備の発電効率が低下し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-028195号公報
【文献】特開2004-316454号公報
【文献】特開2017-180143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、蒸気の流れの圧力損失を低減することができる蒸気弁および発電設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施の形態による蒸気弁は、蒸気流入口と蒸気流出口とに連通した弁室を有する弁ケーシングと、弁室に設けられた弁座と、弁室内に設けられた弁体と、を備えている。弁体は、弁座よりも蒸気流入口の側に配置され、弁座に対して離接可能になっている。弁体の周囲に、蒸気が通過する複数のストレーナ孔を有するストレーナが設けられている。ストレーナ孔は、最小孔径を有する孔本体部と、孔本体部よりもストレーナの外周面の側に設けられた、ストレーナの外側に向かって孔径が拡大した第1孔拡大部と、を含んでいる。第1孔拡大部の壁面は、ストレーナ孔の中心軸線を含む断面で見たときに、湾曲状に形成されている。
【0009】
実施の形態による発電設備は、蒸気を生成するボイラと、ボイラにより生成された蒸気が供給される蒸気タービンと、蒸気タービンによって駆動される発電機と、ボイラから蒸気タービンに供給される蒸気の流れを制御する上述の蒸気弁と、を備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、蒸気の流れの圧力損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施の形態における発電設備の全体構成を示す系統図である。
【
図2】
図2は、実施の形態における蒸気弁を示す縦断面図である。
【
図4】
図4は、
図2のストレーナの一部を示す拡大斜視図である。
【
図6】
図6は、比較例としてのストレーナ孔を示す断面図である。
【
図7】
図7は、
図5に示すストレーナ孔の変形例(変形例1)を示す断面図である。
【
図8】
図8は、
図5に示すストレーナ孔の他の変形例(変形例2)を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態における蒸気弁および発電設備について説明する。
【0013】
まず、
図1を用いて、本実施の形態における発電設備について説明する。
図1は、発電設備として、蒸気タービン発電プラントの一例を示す系統図である。
【0014】
図1に示すように、本実施の形態による発電設備1は、蒸気を生成するボイラ2と、ボイラ2により生成された蒸気が供給される蒸気タービン3、4、5と、蒸気タービン3、4、5によって駆動される発電機6と、を備えている。
図1に示す発電設備1は、蒸気タービン3、4、5として、高圧タービン3と、中圧タービン4と、低圧タービン5と、を備えている。
【0015】
ボイラ2の過熱器7では給水が加熱されて蒸気が生成される。生成された蒸気(主蒸気)は、主蒸気管8を通って高圧タービン3に供給される。主蒸気管8には、主蒸気止め弁9および蒸気加減弁10が設けられており、ボイラ2の過熱器7から高圧タービン3に供給される蒸気の流れを制御するように構成されている。より具体的には、主蒸気止め弁9および蒸気加減弁10は、主蒸気管8を流れる蒸気の流量を調整したり、流れを遮断したりする。高圧タービン3に供給された蒸気は仕事を行い、高圧タービン3のロータ3aを回転駆動させる。
【0016】
高圧タービン3で仕事を行った蒸気は、低温再熱蒸気管11を通ってボイラ2の再熱器12に供給されて再熱される。再熱された蒸気(再熱蒸気)は、高温再熱蒸気管13を通って中圧タービン4に供給される。高温再熱蒸気管13には、再熱蒸気弁14が設けられており、ボイラ2の再熱器12から中圧タービン4に供給される蒸気の流れを制御するように構成されている。より具体的には、再熱蒸気弁14は、高温再熱蒸気管13を流れる蒸気の流量を調整したり、流れを遮断したりする。中圧タービン4に供給された蒸気は仕事を行い、中圧タービン4のロータ4aを回転駆動させる。
【0017】
中圧タービン4で仕事を行った蒸気は、クロスオーバ管15を通って低圧タービン5に供給される。低圧タービン5に供給された蒸気は仕事を行い、低圧タービン5のロータ5aを回転駆動させる。
【0018】
低圧タービン5で仕事を行った蒸気は、復水器16に供給されて、水(復水)に戻される。復水器16から排出された水は、給水ポンプ17によって昇圧され、給水としてボイラ2の過熱器7に供給される。なお、復水器16から排出された水は、低圧給水加熱器18において、低圧タービン5から抽気された蒸気を用いて加熱され、給水ポンプ17にて昇圧される。昇圧された水(給水)は、高圧給水加熱器19において、高圧タービン3から抽気された蒸気を用いて加熱される。
【0019】
各タービン3、4、5のロータ3a、4a、5aの回転で発電機6のロータ6aが回転駆動され、発電が行われる。
【0020】
このように、
図1に示す発電設備1は、主蒸気止め弁9と、蒸気加減弁10と、再熱蒸気弁14を備えている。これらの弁9、10、14は、蒸気弁30として構成されている。以下では、主蒸気止め弁9を例にとって、本実施の形態による蒸気弁30について説明するが、以下に説明する蒸気弁30のストレーナ50の構成は、再熱蒸気弁14にも同様に適用できる。
【0021】
図2および
図3に示すように、本実施の形態による蒸気弁30は、蒸気流入口32と蒸気流出口33とに連通した弁室34を有する弁ケーシング31と、弁室34に設けられた弁座40と、弁室34に設けられた弁体41と、を備えている。
【0022】
弁ケーシング31の蒸気流入口32は、弁室34の側方に配置されている。蒸気流入口32は、水平方向に延びる略円筒状の流入側配管状流路35に形成されており、蒸気弁30に蒸気を供給する配管等と接続可能に構成されている。弁ケーシング31の蒸気流出口33は、弁室34の下方に配置されている。蒸気流出口33は、垂直方向に延びる略円筒状の流出側配管状流路36に形成されており、蒸気弁30から蒸気を排出する配管等と接続可能に構成されている。弁室34は、流入側配管状流路35と流出側配管状流路36との間に設けられており、垂直方向に延びる略円筒状に形成されている。
【0023】
弁座40は、垂直方向から見たときに環状に形成されており、弁座40の内側を蒸気が通過するようになっている。弁座は、弁室34の下端部に配置されており、弁体41および後述する弁棒42と同軸上に配置されている。
【0024】
弁体41は、弁座40に対して離接可能になっている。弁体41は、弁座40よりも蒸気流入口32の側(上流側、
図2における上方)に配置されている。弁体41は、弁座40に当接する当接面41aを含んでいる。この当接面41aは、下方に向かって先細となるようにテーパー状に形成されている。また、当接面41aは、弁座と同様に垂直方向から見たときに環状に形成されており、蒸気弁30が閉じている間、全周にわたって弁座40に当接する。
【0025】
弁体41には、垂直方向に延びる弁棒42を介して、駆動装置43が連結されている。より具体的には、弁体41は、弁棒42の先端(
図2における下端)に固定されている。弁棒42の基端(
図2における上端)には、弁ケーシング31の外側に配置された駆動装置43が連結されている。この駆動装置43が弁体41を駆動することにより、弁体41は上下方向に直線的に移動可能になっている。蒸気弁30を閉じるときには弁体41の当接面41aが弁座40に当接して弁座40と弁体41との間に蒸気の流路が形成されないようになる。蒸気弁30を開くときには弁体41の当接面41aが弁座40から離れて、弁座40と弁体41との間に蒸気の流路が形成される。
【0026】
弁ケーシング31は、弁室34の上方に設けられたケーシング開口37を更に有している。このケーシング開口37は、弁室34の上側端部に配置されており、弁蓋44によって閉塞されている。弁蓋44は、図示しない締結ボルトによって弁ケーシング31に取り付けられている。
【0027】
上述した弁棒42は、弁蓋44の中央部を貫通して、弁ケーシング31の外側に延びている。弁棒42と弁蓋44との間には、弁棒ガイド筒体45が介在されている。弁棒ガイド筒体45は、垂直方向に延びる円筒状に形成されており、弁蓋44を貫通している。弁棒ガイド筒体45は、弁蓋44に固定されており、弁棒42を摺動可能に支持している。
【0028】
弁室34には、ストレーナ50が設けられている。このストレーナ50は、弁座40よりも上流側(
図2における上方)であって、弁体41の周囲に配置されており、蒸気中の異物を除去するように構成されている。ストレーナ50は、弁座40からケーシング開口37まで垂直方向に延びるように円筒状に形成されており、弁体41および弁棒42と同軸上に配置されている。ストレーナ50の下端は、弁座40に当接しており、ストレーナ50の上端部は、弁蓋44に固定されている。より具体的には、図示しないピンを用いて、ストレーナ50が弁蓋44に固定されており、ストレーナ50が蒸気の流れによって回転することを防止している。
【0029】
本実施の形態においては、ストレーナ50は、
図3に示すように円筒状部品として構成されている。また、ストレーナ50は、蒸気弁30を流れる蒸気の温度および圧力に対する十分な耐性と強度とを備えた部材として構成されており、例えば、クロム-モリブデン鋼などの金属材料で形成されていてもよい。
【0030】
図2~
図5に示すように、ストレーナ50は、蒸気が通過する複数のストレーナ孔51を有している。ストレーナ孔51は、ストレーナ50の半径方向(ストレーナ50の外周面50aまたは内周面50bに直交する方向)に延びる中心軸線Cに沿って形成されている。また、ストレーナ孔51は、
図4に示すように、ストレーナ50の半径方向で見たときに千鳥状に配置されている。ストレーナ孔51は、蒸気中に存在し得る所望のサイズの異物を除去することができる程度の孔径を有している。
【0031】
図2に示すように、ストレーナ50のうちケーシング開口37に位置する上端部には、ストレーナ孔51は形成されていなくてもよい。また、
図3に示すように、上方から見たときに、ストレーナ50のうち蒸気流入口32の側とは反対側の部分(弁室34に近接している部分)には、ストレーナ孔51は形成されていなくてもよい。
【0032】
図5に示すように、ストレーナ孔51は、最小孔径を有する孔本体部52と、第1孔拡大部53と、を含んでいる。このうち孔本体部52は、第1孔拡大部53よりもストレーナ50の内周面50bの側に配置されており、孔本体部52の壁面52aは、全体的に、ストレーナ孔51の中心軸線Cに平行に延びている。すなわち、孔本体部52は、最小孔径を直径とする、中心軸線Cを中心とした円柱状の孔を形成している。この孔本体部52の最小孔径が、ストレーナ50の濾過性能を決定している。
【0033】
第1孔拡大部53は、孔本体部52よりもストレーナ50の外周面50aの側に配置されている。第1孔拡大部53の壁面53aは、ストレーナ孔51の中心軸線Cを含む断面で見たときに、ストレーナ50の外側に向かって孔径が徐々に拡大するように湾曲状に形成されており、孔本体部52の壁面52aに連続状に滑らかに接続されている。より具体的には、第1孔拡大部53の壁面53aは、ストレーナ孔51の中心軸線Cを含む断面で見たときに、曲率半径RでR形状に形成されている。本実施の形態では、第1孔拡大部53の壁面53aは、中心軸線Cに沿う方向における全体にわたって、R形状で形成されており、孔本体部52の上述した最小孔径をdとしたとき、第1孔拡大部53の壁面53aの曲率半径Rは、d/6~d/3になっている。なお、
図5は、ストレーナ孔51の中心軸線Cを含むとともに垂直な平面における断面図を示している。
【0034】
ところで、蒸気弁30のストレーナ50は、一般的な配管等に設置されるストレーナと大きく異なる点がある。一つは、ストレーナ50の内側に、弁体41および弁棒42が配置されている点である。もう一つは、流体(蒸気)がストレーナ50の外側から内側に向かって流れるという点である。これは、蒸気弁30が開いた場合に形成される弁座40と弁体41との間の流路を通過する蒸気に異物が混入されていないことが要求されるためである。このことにより、弁座40と弁体41との間の流路に、異物が噛み込まれるような事態が発生することを防止できる。
【0035】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
【0036】
図2に示す蒸気弁30が閉じている間、弁体41の当接面41aが弁座40に当接し、弁座40と弁体41との間に蒸気の流路が形成されない。このことにより、蒸気の流れが遮断される。
【0037】
蒸気弁30を開く場合、駆動装置43が弁体41を駆動し、弁体41が上方に移動する。このことにより、弁体41が弁座40から離れて、弁座40と弁体41との間に蒸気の流路が形成される。
【0038】
蒸気弁30が開いている間、
図2および
図3に示すように、蒸気流入口32から蒸気が流入し、流入した蒸気は、ストレーナ孔51を通ってストレーナ50の内側に流入する。
図3に示すように、蒸気は、ストレーナ50のうち蒸気流入口32の側の部分に設けられたストレーナ孔51に流入するだけでなく、ストレーナ50を回り込むようにして蒸気流入口32の側の部分よりも遠い位置に設けられたストレーナ孔51にも流入する。ストレーナ50の内側に流入した蒸気は、弁座40と弁体41との間の流路を通って蒸気流出口33に向かい、蒸気流出口33から流出される。
【0039】
蒸気は、ストレーナ孔51を通過する際、
図5に示すように、まず、ストレーナ孔51の第1孔拡大部53を流れ、その後に孔本体部52を流れて、ストレーナ孔51から流出する。第1孔拡大部53を流れる蒸気は、第1孔拡大部53の壁面53aの形状に沿って絞られるように流れる。本実施の形態では、第1孔拡大部53の壁面53aがR形状で形成されているため、蒸気は、第1孔拡大部53の壁面53aに形成されたR形状に沿って滑らかに絞られるように流れる。
【0040】
ここで、
図6を用いて、比較例としてのストレーナ孔100における蒸気の流れについて説明する。
図6に示すストレーナ孔100は、第1孔拡大部101の壁面101aが、湾曲状ではなく、ストレーナ孔100の中心軸線Cに対して45°の角度で傾斜してテーパー状に形成されている。孔本体部102の壁面102aは、孔本体部52と同様に、中心軸線Cに平行に延びている。この場合、第1孔拡大部101の壁面101aと孔本体部102の壁面102aとが、折れ曲がるように接続されている。このことにより、蒸気が第1孔拡大部101から流出して孔本体部102に流入する際に、流れの剥離が発生し、
図6に示すような渦が形成され得る。このため、蒸気の流れに生じる圧力損失が増大するという問題がある。
【0041】
しかしながら、本実施の形態によれば、
図5に示すように、第1孔拡大部53の壁面53aが湾曲状に形成されているため、第1孔拡大部53から孔本体部52にかけて、蒸気を滑らかに流すことができる。このため、孔本体部52のうち第1孔拡大部53の側の部分において蒸気の流れが剥離することを防止でき、圧力損失を低減することができる。
【0042】
とりわけ、本実施の形態では、第1孔拡大部53の壁面53aが曲率半径RでR形状に形成されており、孔本体部52の最小孔径をdとしたとき、曲率半径Rが、d/6~d/3になっている。このうち曲率半径Rをd/6以上にすることにより、曲率半径Rが小さくなることを防止し、流れの剥離が発生することを効果的に抑制できる。一方、曲率半径Rをd/3以下にすることにより、互いに隣り合うストレーナ孔51の間隔が過度に増大することを防止でき、ストレーナ50に形成されるストレーナ孔51の個数を確保することができる。
【0043】
このように本実施の形態によれば、ストレーナ孔51のうちストレーナ50の外周面50aの側に設けられた第1孔拡大部53の壁面53aが湾曲状に形成されている。このことにより、ストレーナ孔51内における蒸気の流れが剥離することを防止し、圧力損失を低減することができる。このため、蒸気の速度エネルギが失われて発電設備1の発電効率が低下することを防止できる。とりわけ、本実施の形態によれば、第1孔拡大部53の壁面53aが曲率半径RでR形状に形成されており、孔本体部52の最小孔径をdとしたときに、曲率半径Rがd/6~d/3になっている。このことにより、圧力損失を効果的に低減することができるとともに、互いに隣り合うストレーナ孔51の間隔が過度に増大することを防止できる。
【0044】
また、本実施の形態によれば、孔本体部52の壁面52aは、中心軸線Cに平行に延びている。このことにより、孔本体部52の加工を容易化させることができる。
【0045】
なお、上述した本実施の形態においては、孔本体部52の壁面52aが、中心軸線Cに平行に延びている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはない。
【0046】
(変形例1)
例えば、
図7に示すように、孔本体部52の一部は、ストレーナ50の内周面50bの側に向かって孔径が拡大するようにしてもよい。
図7に示す例では、孔本体部52は、孔直線部60と、第2孔拡大部61と、を含んでいる。このうち孔直線部60は、第2孔拡大部61よりも第1孔拡大部53の側に配置されている。すなわち、孔直線部60は、第1孔拡大部53と第2孔拡大部61との間に配置されている。第2孔拡大部61は、孔直線部60よりもストレーナ50の内周面50bの側に配置されている。
図7においては、孔本体部52の最小孔径をdとしたとき、ストレーナ50の厚さtが、2d~5dになっている例が示されている。
【0047】
孔直線部60の壁面60aは、ストレーナ孔51の中心軸線Cに平行に延びている。すなわち、孔直線部60は、最小孔径dを直径とする、中心軸線Cを中心とした円柱状の孔を形成している。孔直線部60の壁面60aは、第1孔拡大部53の壁面53aに連続状に滑らかに接続されている。孔直線部60は、第1孔拡大部53から第2孔拡大部61への蒸気の流れを整流して助走させ、圧力損失をより一層低減するための部分である。孔直線部60の中心軸線Cに沿う方向の長さLは、2d/6~3d/6であってもよい。当該長さLを2d/6以上にすることにより、助走区間としての機能を効果的に発揮させることができる。一方、当該長さLを3d/6以下にすることにより、孔直線部60が過度に長くなることを防止でき、第2孔拡大部61の中心軸線Cに沿う方向の長さを確保することができる。
【0048】
第2孔拡大部61は、ストレーナ50の内周面50bの側に向かって孔径が徐々に拡大している。この場合、孔本体部52を流れる蒸気の流路断面が下流側に向かって拡大するようになり、孔本体部52に、蒸気の流れの速度エネルギを圧力エネルギに変換することができるデフューザ機能を付与することができる。このため、ストレーナ孔51を通過する蒸気の流れに生じる圧力損失をより一層低減することができる。
【0049】
例えば、第2孔拡大部61の壁面61aは、中心軸線Cを含む断面で見たときに、中心軸線Cに対して、3°~10°の角度θで傾斜してテーパー状に形成されるようにしてもよい。この角度θを3°以上にすることにより、デフューザ機能を効果的に発揮させることができる。一方、角度θを10°以下にすることにより、孔径が急激に拡大することを防止でき、流れの剥離が発生することを防止できる。
【0050】
また、第2孔拡大部61から流出した蒸気は、滑らかに拡大するように流れる。このため、
図5において、ストレーナ50の内周面50bの近傍に形成されていた渦が発生することを抑制できる。この結果、ストレーナ孔51を通過する蒸気の流れに生じる圧力損失をより一層低減することができる。
【0051】
図7に示す変形例1においては、上述した孔直線部60は、設けられていなくてもよい。この場合、第2孔拡大部61の上流端(第1孔拡大部53の側の端)における孔径が、最小孔径となる。
【0052】
(変形例2)
他の変形例として、例えば、
図8および
図9に示すように、ストレーナ50の内周面50bに凹部70が設けられるようにしてもよい。この凹部70は、対応するストレーナ孔51の中心軸線Cに沿う方向から見たときに、当該ストレーナ孔51の周囲に環状に形成されている。凹部70は、ストレーナ孔51と同軸上に配置されている。
【0053】
凹部70の横断面は、特に限られることはない。
図8では、凹部70の横断面が、V字状に形成されている例が示されている。
【0054】
図8に示すように、蒸気がストレーナ孔51を通過する際、凹部70内に渦が形成される。このことにより、第2孔拡大部61から流出した蒸気は、凹部70によって形成された渦に引っ張られて、滑らかに、かつ
図7に示す変形例1よりも大きく拡大するように流れる。このため、
図5や
図7において、ストレーナ50の内周面50bの近傍に形成されていた渦が発生することをより一層抑制できる。この結果、ストレーナ孔51を通過する蒸気の流れに生じる圧力損失をより一層低減することができる。
【0055】
以上述べた実施の形態によれば、蒸気の流れの圧力損失を低減することができる。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
1:発電設備、2:ボイラ、3:高圧タービン、4:中圧タービン、5:低圧タービン、6:発電機、9:主蒸気止め弁、10:蒸気加減弁、14:再熱蒸気弁、30:蒸気弁、31:弁ケーシング、32:蒸気流入口、33:蒸気流出口、34:弁室、40:弁座、41:弁体、50:ストレーナ、50a:外周面、50b:内周面、51:ストレーナ孔、52:孔本体部、52a:壁面、53:第1孔拡大部、53a:壁面、60:孔直線部、60a:壁面、61:第2孔拡大部、61a:壁面、70:凹部、C:中心軸線