(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】輸液回路
(51)【国際特許分類】
A61M 5/44 20060101AFI20220711BHJP
A61M 5/14 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
A61M5/44 522
A61M5/14 500
(21)【出願番号】P 2018081319
(22)【出願日】2018-04-20
【審査請求日】2021-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000138037
【氏名又は名称】株式会社メテク
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 憲昭
(72)【発明者】
【氏名】石橋 和敏
【審査官】鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】特表平9-500481(JP,A)
【文献】特開2010-148964(JP,A)
【文献】米国特許第7316666(US,B1)
【文献】特開2015-157049(JP,A)
【文献】特開昭56-11066(JP,A)
【文献】特開2002-17853(JP,A)
【文献】実開平4-104858(JP,U)
【文献】特開2015-73848(JP,A)
【文献】特開2015-157043(JP,A)
【文献】国際公開第2014/104338(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/44
A61M 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸液用の液体を収容する液体容器と、
前記液体容器の液体を患者に送液するための液体流路と、
前記液体流路の一部を構成し、外部から供給される熱により前記液体流路を流れる液体を加温するためのパネル状の加温部材と、を備え、
前記加温部材は、前記液体が流れる加温流路を有する相対的に軟質の流路部と、前記流路部を支持する相対的に硬質の支持部と、を有
し、
前記液体流路は、
第1のドリップチャンバーと、
前記液体容器と前記加温部材を接続する第1の流路と、
前記加温部材と前記第1のドリップチャンバーを接続する第2の流路と、
前記第1のドリップチャンバーと患者に輸液用の液体を輸液するための輸液部を接続する第3の流路と、
前記第1のドリップチャンバーと前記液体容器を接続する第4の流路と、を有し、
前記第3の流路には、第2のドリップチャンバーが設けられている、輸液回路。
【請求項2】
前記加温部材は、輸液装置の装置本体に対し挿入自在に構成されている、請求項1に記載の輸液回路。
【請求項3】
前記支持部は、前記加温部材の面内の所定方向に延び前記装置本体に対し挿入される挿入部を有する、請求項2に記載の輸液回路。
【請求項4】
前記挿入部には、挿入を所定の位置で止めるストッパが設けられている、請求項3に記載の輸液回路。
【請求項5】
前記挿入部が所定の位置までに挿入されたことを知らせる告知機構をさらに備える、請求項3又は4に記載の輸液回路。
【請求項6】
前記挿入部は、前記支持部の本体と別体に構成されている、請求項3~5のいずれか
一項に記載の輸液回路。
【請求項7】
前記液体流路は、前記輸液用の液体となる薬液を前記液体容器に導入するための複数の薬液導入部を備える、請求項1~6のいずれか
一項に記載の輸液回路。
【請求項8】
前記薬液導入部は、薬液バッグの出口径に応じて交換可能な、径の異なる複数の接続部材を有する、請求項7に記載の輸液回路。
【請求項9】
前記液体流路は、患者に前記輸液用の液体を輸液するための複数の輸液部を備える、請求項1~8のいずれか
一項に記載の輸液回路。
【請求項10】
前記液体容器は、軟質材により構成されている、請求項1~9のいずれか
一項に記載の輸液回路。
【請求項11】
前記第2のドリップチャンバーの内部圧力を検出する圧力検出用チューブをさらに備えた、請求項1~10のいずれか
一項に記載の輸液回路。
【請求項12】
前記第2の流路は、前記第1のドリップチャンバーの側面に接続されている、請求項1~11のいずれか
一項に記載の輸液回路。
【請求項13】
前記第1のドリップチャンバーを少なくとも保持するパネルを、さらに備え、
前記パネルは、輸液装置の装置本体に対し着脱自在に構成されている、請求項1~12のいずれか
一項に記載の輸液回路。
【請求項14】
前記加温部材は、前記第1のドリップチャンバーの入口が前記加温部材の加温流路の出口よりも高い位置になるように設置される、請求項1~13のいずれか
一項に記載の輸液回路。
【請求項15】
前記第3の流路は、輸液装置の装置本体の正面に装着される、請求項1~14のいずれか
一項に記載の輸液回路。
【請求項16】
前記液体容器に供給される薬液を貯留する薬液バッグをさらに備え、
前記薬液バッグは、前記液体容器より上方に保持され、
前記液体容器は、輸液装置の装置本体に装着される、請求項1~15のいずれか
一項に記載の輸液回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸液回路に関する。
【背景技術】
【0002】
病院では患者に輸液する血液製剤の機能を維持するため、血液製剤を冷蔵保管している。血液製剤を患者に輸液する際には、患者の負担を軽減するため、血液製剤を適切な温度まで加温して輸液する。そして、大量または危機的出血が発生した緊急時には、血液製剤を短時間で大量に輸液する必要があり、この際には、低温の大量の血液製剤を患者体温まで急速に加温して患者に輸液する必要がある。
【0003】
上述の輸液には、血液製剤を加温しながら患者に輸液する輸液装置が知られている。この輸液装置は、ポンプにより貯留バッグの血液製剤を液体流路に流し、ヒータにより液体流路の血液製剤を加温して患者に送り込む輸液回路を有している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、液体流路を流れる血液製剤を効率的に加温し、しかもその加温を簡易に実現するために、液体流路の一部に軟質の加温流路を設け、その加温流路を例えば熱板などの熱源に密着させることを考えている。
【0006】
しかしながら、この場合、熱源の熱を加温流路に効率的かつ安定的に伝えるためには、加温流路を安定かつ確実に保持して熱源等に固定する必要があるが、加温流路が軟質であるため、加温流路を安定かつ確実に保持することは難しい。
【0007】
本出願はかかる点に鑑みてなされたものであり、血液製剤などの輸液用の液体を加温する加温流路を安定かつ確実に保持することができる輸液回路を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、加温部材が、液体が流れる加温流路を有する相対的に軟質の流路部と、前記流路部を支持する相対的に硬質の支持部とを有することにより、上記問題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の態様を含む。
(1)輸液用の液体を収容する液体容器と、前記液体容器の液体を患者に送液するための液体流路と、前記液体流路の一部を構成し、外部から供給される熱により前記液体流路を流れる液体を加温するためのパネル状の加温部材と、を備え、前記加温部材は、前記液体が流れる加温流路を有する相対的に軟質の流路部と、前記流路部を支持する相対的に硬質の支持部と、を有する、輸液回路。
(2)前記加温部材は、輸液装置の装置本体に対し挿入自在に構成されている、(1)に記載の輸液回路。
(3)前記支持部は、前記加温部材の面内の所定方向に延び前記装置本体に対し挿入される挿入部を有する、(2)に記載の輸液回路。
(4)前記挿入部には、挿入を所定の位置で止めるストッパが設けられている、(3)に記載の輸液回路。
(5)前記挿入部が所定の位置までに挿入されたことを知らせる告知機構をさらに備える、(3)又は(4)に記載の輸液回路。
(6)前記挿入部は、前記支持部の本体と別体に構成されている、(3)~(5)のいずれかに記載の輸液回路。
(7)前記液体流路は、前記輸液用の液体となる薬液を前記液体容器に導入するための複数の薬液導入部を備える、(1)~(6)のいずれかに記載の輸液回路。
(8)前記薬液導入部は、薬液バッグの出口径に応じて交換可能な、径の異なる複数の接続部材を有する、(7)に記載の輸液回路。
(9)前記液体流路は、患者に前記輸液用の液体を輸液するための複数の輸液部を備える、(1)~(8)のいずれかに記載の輸液回路。
(10)前記液体容器は、軟質材により構成されている、(1)~(9)のいずれかに記載の輸液回路。
(11)前記液体流路は、第1のドリップチャンバーと、前記液体容器と前記加温部材を接続する第1の流路と、前記加温部材と前記第1のドリップチャンバーを接続する第2の流路と、前記第1のドリップチャンバーと患者に輸液用の液体を輸液するための輸液部を接続する第3の流路と、前記第1のドリップチャンバーと前記液体容器を接続する第4の流路と、を有する、(1)~(10)のいずれかに記載の輸液回路。
(12)前記第3の流路には、第2のドリップチャンバーが設けられている、(11)に記載の輸液回路。
(13)前記第2のドリップチャンバーの内部圧力を検出する圧力検出用チューブをさらに備えた、(12)に記載の輸液回路。
(14)前記第2の流路は、前記第1のドリップチャンバーの側面に接続されている、(11)~(13)のいずれかに記載の輸液回路。
(15)前記第1のドリップチャンバーを少なくとも保持するパネルを、さらに備え、
前記パネルは、輸液装置の装置本体に対し着脱自在に構成されている、(11)~(14)のいずれかに記載の輸液回路。
(16)前記加温部材は、前記第1のドリップチャンバーの入口が前記加温部材の加温流路の出口よりも高い位置になるように設置される、(11)~(15)のいずれかに記載の輸液回路。
(17)前記第3の流路は、輸液装置の装置本体の正面に装着される、(11)~(16)のいずれかに記載の輸液回路。
(18)前記液体容器に供給される薬液を貯留する薬液バッグをさらに備え、前記薬液バッグは、前記液体容器より上方に保持され、前記液体容器は、輸液装置の装置本体に装着される、(1)~(17)のいずれかに記載の輸液回路。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、輸液用の液体を加温する加温流路を安定かつ確実に保持することができる輸液回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図4】加温装置の構成の概略を示す部分分解図である。
【
図7】加温部材と熱板の重なり位置を説明するための熱板の正面図である。
【
図8】熱板に加温部材が挿入された状態を示す斜視図である。
【
図9】加温部材の挿入部のストッパを示す説明図である。
【
図10】突起部とスプリングプランジャーを示す説明図である。
【
図11】第2のドリップチャンバーを取り付けた液体流路の一例を示す模式図である。
【
図12】液体流路がパネルに取り付けられた状態を示す模式図である。
【
図13】薬液導入部が複数ある場合の液体流路の一例を示す模式図である。
【
図14】輸液部が複数ある場合の液体流路の一例を示す模式図である。
【
図15】第2の流路が第1のドリップチャンバーの側面に接続された場合の液体流路の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。また、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこの実施の形態に限定されるものではない。
【0013】
輸液装置1は、
図1に示すように装置本体10と、ポール部11と、台車部12と、輸液回路15を有している。装置本体10は、上方に長い直方体状に形成され、上部に操作パネル部13を備えている。装置本体10は、台車部12上に設けられている。ポール部11は、装置本体10の上方に延出して、その上端付近に薬液バッグ14を吊り下げることができる。
【0014】
装置本体10の第1の側面10aには、第1のポンプ20と第2のポンプ21が設けられている。また、第1の側面10aには、液体容器22を吊り下げることができる。装置本体10の正面10bには、後述の液体流路23を保持するパネル24が取り付けられている。装置本体10の正面10bの下部には、輸液用の液体としての血液製剤を加温する加温装置25が内蔵されており、加温装置25の後述の加温部材26を挿入するための挿入口10cが形成されている。
【0015】
図2は、輸液装置1の輸液回路15の構成の一例を示す。輸液回路15は、血液製剤を収容する液体容器22と、液体流路23等を有する。液体流路23は、例えば血液製剤を加温するパネル状の加温部材26と、血液製剤中の気泡を除去する第1のドリップチャンバー30と、液体容器22と加温部材26を接続する第1の流路40と、加温部材26と第1のドリップチャンバー30を接続する第2の流路41と、第1のドリップチャンバー30と患者に輸液用の液体を輸液するための輸液部42を接続する第3の流路43と、第1のドリップチャンバー30と液体容器22を接続する第4の流路44と、薬液バッグ14が接続される薬液導入部45と液体容器22を接続する第5の流路46を有している。
【0016】
輸液装置1の第1のポンプ20は、第1の流路40に設けられ、第2のポンプ21は、第3の流路43に設けられている。輸液装置1は、第1のポンプ20、第2のポンプ21及び加温装置25等を制御する制御装置50を備えている。
【0017】
液体容器22は、例えば軟質の樹脂製であり、例えば0.5L以上の容量を有している。液体容器22の軟質材には、例えばPCV(ポリ塩化ビニル)、PC(ポリカーボネート)、ABS樹脂などが用いられている。
【0018】
第1の流路40、第2の流路41、第3の流路43及び第4の流路44及び第5の流路46は、軟質の可撓性のあるチューブにより構成されている。
【0019】
第1の流路40は、例えば液体容器22の側面下部から加温部材26の下部の入口部に接続されている。第2の流路41は、加温部材26の上部の出口部から第1のドリップチャンバー30の上面に接続されている。
【0020】
第3の流路43は、第1のドリップチャンバー30の下面に接続されている。
【0021】
第4の流路44は、第1のドリップチャンバー30の上面から液体容器22の上部に接続されている。
【0022】
第5の流路46は、液体容器22の上部に接続されている。
【0023】
第1のポンプ20及び第2のポンプ21には、例えばチューブポンプが用いられる。第1のポンプ20及び第2のポンプ21は、例えば100mL/min以上、好ましくは250mL/min以上、さらに好ましくは500mL/min以上の送液能力を有する。第1のポンプ20及び第2のポンプ21の動作は、制御装置50により制御される。
【0024】
加温装置25は、熱板70の表面に加温部材26を接触させて加温部材26の加温流路90を流れる血液製剤を所定温度まで加温する構成を有している。例えば加温装置25は、例えば
図3に示すように全体が方形で厚みのある平盤形状を有している。加温装置25は、例えば
図4に示すように筐体部100と、血液製剤が流れる加温流路90を有する加温部材26と、加温流路90に接触して給熱する熱板70と、熱板70と加温部材26を両側から挟む一対の断熱板101、102を備えている。
【0025】
図5に示すように加温部材26は、例えば樹脂製であり、全体が方形の薄い板状に形成されている。加温部材26は、血液製剤が流れる加温流路90を有する相対的に軟質の流路部120と、流路部120を支持する相対的に硬質の支持部121を有している。
【0026】
流路部120は、軟質で可撓性のある樹脂製であり、方形の薄い板状に形成されている。流路部120の材質には、例えばPVC(ポリ塩化ビニル)、PC(ポリカーボネート)、ABS樹脂などが用いられる。加温流路90は、例えば流路部120の面内にチューブ状に形成され、流路部120の面内を蛇行するように設けられている。加温流路90は、複数の往復路を上下に並べて繋げた形状を有している。
【0027】
加温流路90の入口部(上流部)130は、加温部材26の下部に位置し、加温流路90の出口部(下流部)131は、加温部材26の上部に位置している。加温流路90の入口部130と出口部131は、例えば加温部材26の同一方向の側部に設けられている。
【0028】
加温流路90の入口部130は、上流側は第1の流路40に接続され、加温流路90の出口部131は、第2の流路41に接続されている。
【0029】
支持部121は、流路部120の周りを囲む方形の薄い枠状に形成されている。支持部121は、流路部120よりも相対的に硬質の樹脂で成形されている。支持部121の材質には、例えばPVC(ポリ塩化ビニル)、PC(ポリカーボネート)、ABS樹脂などが用いられる。支持部121は、上下の2辺に熱板70の後述の被挿入部180に挿入するための挿入部150を有している。挿入部150は、加温部材26の面内の左右方向に細長い角棒状に形成されている。上下の2つの挿入部150は、互いに平行である。挿入部150は、例えば支持部121の本体と別体に構成され、支持部121の本体に対し溶着またはスナップフィットなどで固定されている。これにより支持部121の機械的強度が向上し、加温部材26を操作者が把持したとき、曲がりや撓みが少なくなり、安定かつ確実に挿入することができる。
【0030】
図4及び
図6に示すように熱板70は、方形の薄い板状に形成されている。熱板70は、熱伝導率の高い材質、例えばアルミニウム、銅、ステンレスにより形成されている。熱板70の一方の面には、給電により発熱する所定パターンのヒータ160が設けられている。熱板70の他方の面には、加温部材26が接触する。ヒータ160のパターンは、例えば一続きの電熱線であり、ジグザグ状に形成されている。
図7に示すようにヒータ160は、熱板70に加温部材26が固定されたときに、加温流路90に沿うように配置されている。ヒータ160は、例えば発熱量(ヒータ電力)が、加温流路90の上流側から下流側に向かって段階的に減少し、なおかつ各段階(領域)における発熱量の減少割合(傾き)が、上流側から下流側に向かって小さくなるように配置されている。
【0031】
図4及び
図6に示すように熱板70には、上下の隣同士のヒータ160の熱の干渉を抑制するためのスリット170が形成されている。
図7に示すようにスリット170は、熱板70に加温部材26が固定されたときに、加温流路90の間に位置するように設けられている。
【0032】
図8に示すように熱板70の上下の辺には、加温部材26の挿入部150が挿入される被挿入部180が形成されている。被挿入部180は、熱板70の左右方向に延びる溝状に形成されている。
【0033】
図4に示すように断熱板101、102は、熱板70と同程度の大きさで熱板70よりも厚い方形状に形成されている。断熱板101、102は、熱伝導率の低い材質、例えば樹脂、無機質断熱材、有機質と無機質の複合板により形成されている。第1の断熱板101が加温部材26の外側に配置され、第2の断熱板102が熱板70の外側に配置されている。
【0034】
加温装置25の筐体部100は、輸液装置1の装置本体10に内蔵されている。筐体部100は、厚みのある方形の枠状に形成されている。筐体部100内には、厚み方向に断熱板101、加温部材26、熱板70及び断熱板102がこの順で水平方向に積層されている。断熱板101、熱板70及び断熱板102は、筐体部100に固定されている。筐体部100の側面には、加温部材26を挿入するための挿入口190が設けられている。筐体部100の挿入口190は、
図1に示した輸液装置1の装置本体10の挿入口10cに一致している。加温部材26は、挿入口190から熱板70と断熱板101との間に挿入することができる。このとき、加温部材26の硬質の支持部121の挿入部150が熱板70の被挿入部180に挿入され、加温部材26が熱板70の表面に接触した状態で熱板70に対して固定される。
【0035】
図9に示すように加温部材26の挿入部150には、熱板70の被挿入部180への挿入を所定の位置で止めるストッパ200が設けられている。このストッパ200により加温部材26の加温流路90が熱板70のスリット170やヒータ160に対する適正な位置に位置決めされる。
【0036】
また、
図10に示すように挿入部150には、突起部201が設け、筐体部100には、挿入部150に対し進退自在に付勢されたスプリングプランジャー202が設けられている。挿入部150が被挿入部180の所定の位置(設定位置)の直前までに挿入されたときに、スプリングプランジャー202が突起部201に乗り上げて後退し、挿入部150が被挿入部180の所定の位置まで挿入されたときに、スプリングプランジャー202が突起部201を乗り越えて前方の元の位置に戻る。このとき、音や振動が発生し、これが、挿入部150が適正な位置まで挿入されたことの告知となる。
【0037】
図1及び
図2に示すように加温部材26は、第1のドリップチャンバー30の入口が加温部材26の加温流路90の出口よりも高い位置になるように輸液装置の装置本体10に装着されている。
図1に示すように装置本体10の正面10bには、輸液部42に通じる第3の流路43が配設される。
【0038】
図4に示すように断熱板102の加温流路90の入口部130に対応する位置と、加温流路90の出口部131に対応する位置には、加温流路90を流れる血液製剤の温度を検出する温度センサ210、211が設けられている。温度センサ210、211による加温流路90の入口部130と出口部131の血液製剤の温度の検出結果は、制御装置50に出力される。
【0039】
制御装置50は、例えば汎用コンピュータであり、メモリに記録されたプログラムをCPUで実行することにより、加温装置25のヒータ160、第1のポンプ20、第2のポンプ21等を制御して、輸液装置1における輸液プロセスを実行できる。例えば制御装置50は、温度センサ210、211の検出結果に基づいて、ヒータ160の発熱量を制御して、加温流路90の出口部131から流出する血液製剤の温度を目標温度に制御することができる。また、制御装置50は、第1のポンプ20及び第2のポンプ21の送液流量を制御して、患者に供給される輸液の流量を制御することができる。
【0040】
次に、以上のように構成された輸液装置1の動作について説明する。先ず、輸液が行われる際には、
図1に示すように液体流路23を保持したパネル24が装置本体10に装着される。また加温部材26は、装置本体10の挿入口10cから挿入される。このとき、
図8に示すように加温部材26の支持部121の挿入部150が熱板70の被挿入部180に挿入され、加温部材26が硬質の支持部121を介して熱板70に対して固定される。またこのとき加温部材26は熱板70の表面に密着した状態となる。また、挿入部150のストッパ200が被挿入部180にあたって止まり、加温部材26が熱板70に対して適正な位置に位置決めされる。さらに、スプリングプランジャー202が突起部201を乗り越え、カチっという音や振動が生じて、加温部材26が適正な位置まで挿入されたことが告知される。
【0041】
薬液バッグ14は、ポール部11に吊り下げられ、第5の流路46の薬液導入部45が薬液バッグ14に接続される。薬液バッグ14に貯留された例えば4℃程度の低温の血液製剤が、第5の流路46を通じて重力により落下し、液体容器22に貯留される。
【0042】
輸液が開始されると、
図2に示すように第1のポンプ20と第2のポンプ21が作動し、液体容器22の血液製剤が第1の流路40を通って加温装置25に送られる。加温装置25では、血液製剤が加温部材26の加温流路90を通過する。その際にヒータ160を熱源とする熱板70により、血液製剤が体温に近い37℃程度の目標温度まで加温される。血液製剤の温度は、温度センサ210の検出温度に基づいて、ヒータ160の発熱量を調整することにより制御される。加温流路90を通過する血液製剤の流量は、例えば0.2mL/min~1200mL/min程度に調整される。
【0043】
加温装置25により目標温度まで加温された血液製剤は、第2の流路41を通過し、第1のドリップチャンバー30に流入する。その後、血液製剤は、第2のポンプ21により第3の流路43を通過し、輸液部42から患者に輸液される。患者への輸液量は、第2のポンプ21の液送流量を調整することにより制御される。
【0044】
加温装置25において血液製剤中に生じた気泡は、第1のドリップチャンバー30で捕捉される。第1のドリップチャンバー30内の一部の血液製剤と気体は、第4の流路44を通って液体容器22に戻される。この第4の流路44を通過する気体を含む流体の流量は、第1のポンプ20の送液流量を調整することにより制御される。例えば第1のポンプ20の送液流量を増やすことにより、第1のドリップチャンバー30から第4の流路44に流出する流体の流量が増え、第1のポンプ20の送液流量を減らすことにより、第1のドリップチャンバー30から第4の流路44に流出する液体の流量が減る。
【0045】
本実施の形態によれば、加温部材26は、血液製剤が流れる加温流路90を有する相対的に軟質の流路部120と、流路部120を支持する相対的に硬質の支持部121とを有し、加温部材26は、支持部121を介して熱板70に対して固定されているので、軟質の流路部120を用いて熱板70の表面に密着させ、血液製剤を効率的及び簡易に加温することができる。また、支持部121により加温流路90を安定かつ確実に保持することができるので、加温流路90を熱板70に対し安定かつ確実に固定して熱板70の熱を加温流路90に効率的かつ安定的に伝えることができる。
【0046】
加温部材26の支持部121は、加温部材26の面内の所定方向に延びる挿入部150を有し、挿入部150を熱板70の被挿入部180に挿入するので、加温部材26が熱板70に安定かつ確実に固定される。また、加温部材26を熱板70に固定する作業を簡単に行うことができる。
【0047】
挿入部150には、被挿入部180への挿入を所定の位置で止めるストッパ200が設けられているので、加温部材26を熱板70の表面の適正な位置に位置決めすることができる。これにより、加温部材26の加温流路90と熱板70のヒータ160の位置関係が適正になり、加温流路90を流れる血液製剤を所望の温度に効率的に加温することができる。また、挿入部150を被挿入部180に挿入しすぎることがないので、作業者の加温部材26を差し込む作業を簡単かつ適切に行うことができる。
【0048】
加温装置25は、挿入部150が被挿入部180の所定の位置までに挿入されたことを知らせる突起部201とスプリングプランジャー202を備えるので、加温部材26を熱板70に挿入する作業が容易に行うことができる。なお、この挿入部150が被挿入部180の所定の位置までに挿入されたことを知らせる告知機構は、突起部201とスプリングプランジャー202に限られず、他の公知の機構を用いてもよい。
【0049】
挿入部150は、支持部121の本体と別体に構成されているので、複雑形状の挿入部150の構成を簡易に形成することができる。なお、挿入部150は、支持部121の本体と一体に形成されていてもよい。
【0050】
液体容器22は、軟質材により構成されているので、薬液バッグ14から供給された薬液を必要に応じて手作業で、誰でも容易に攪拌することができる。これにより、液体容器22に大量の薬液が供給される緊急時にも適切に対応することができる。また、液体容器22を折りたたむことができるので、大容量の液体容器22であっても、梱包サイズが小さくなり、搬送がしやすくなる。さらに、病院での液体容器22の保管スペースを小さくすることができる。
【0051】
輸液回路15は、第1のドリップチャンバー30を少なくとも保持するパネル24を備え、パネル24は、装置本体10に対し着脱自在であるので、輸液時に液体流路23を装置本体10に取り付ける準備作業を容易に行うことができる。また、液体流路23を梱包しやすくなり、液体流路23の搬送を簡単に行うことができる。
【0052】
加温部材26は、第1のドリップチャンバー30の入口が加温部材26の加温流路90の出口よりも高い位置になるように輸液装置の装置本体10に装着されるので、軟質の加温流路90に常に一定以上の内部圧力がかかり、加温流路90と熱板70との密着性が上がり、熱伝導率を向上することができる。
【0053】
第3の流路43は、輸液装置の装置本体10の正面10bに固定されているので、患者に対して輸液装置1をどの方向に配置しても患者に輸液部42を装着しやくなり、輸液時の作業性が向上する。
【0054】
輸液装置の装置本体10の正面10bには、加温部材26を挿入して装着するための挿入口10c(190)が設けられているので、加温部材26の取り付け作業を容易に行うことができる。なお、装置本体10の別の面に加温部材26の挿入口が設けられていてもよい。
【0055】
薬液バッグ14が、輸液装置1の装置本体10の上方に延びるポール部11に保持され、液体容器22が、装置本体10に設置されているので、薬液バッグ14が液体容器22の上方に設置されている。これにより、薬液バッグ14と液体容器22の落差を十分に確保して、液体容器22へ迅速に薬液を注入することができる。また、緊急時の準備時間が短縮され、その結果、救命率を向上することができる。なお、薬液バッグ14が液体容器22よりも上方にあるほど、迅速に液体容器22に薬液を充填でき,緊急時の輸液を適切に行うことができる。
【0056】
以上の実施の形態において、例えば
図11に示すように第3の流路43に第2のドリップチャンバー230を設けてもよい。このとき、輸液回路15は、第2のドリップチャンバー230の内部圧力を検出する圧力検出部240を備えていてもよい。圧力検出部240は、例えば第2のドリップチャンバー230に接続される圧力検出用チューブ241と、圧力検出用チューブ241に取り付けられた圧力センサ242により構成されていてもよい。圧力センサ242による圧力検出結果は、制御装置50に出力され、制御装置50では、第2のドリップチャンバー230の内部圧力に基づいて、例えば輸液部42の詰まりを監視する。
【0057】
さらに、かかる例において、例えば
図12に示すようにパネル24が、第1のドリップチャンバー30と第2のドリップチャンバー230の両方を保持するようにしてもよい。パネル24において、第1のドリップチャンバー30は、第2のドリップチャンバー230よりも高い位置に保持されていてもよい。なお、この例においては、第5の流路46と第4の流路44が一部供用になって液体容器22に接続されている。第3の流路43は、パネル24の中央下部から出ている。
【0058】
かかる例によれば、第3の流路43に第2のドリップチャンバー230が設けられているので、輸液部42の直前での気泡の除去を確実に行うことができる。液体流路23が詰まったときにも、第2のドリップチャンバー230がバッファとしての役割を果たし、液体流路23の圧力が急上昇することを防止し、輸液装置1を停止するまでの時間を確保することができる。
【0059】
また輸液回路15が第2のドリップチャンバー230の内部圧力を検出する圧力検出用チューブ241を備えているので、第2のドリップチャンバー230の圧力を監視し、例えば輸液を所望の圧力範囲で行うことができる。また、圧力検出用チューブ241が第2のドリップチャンバー230にあることで、圧力検出に対する第2のポンプ21による脈動の影響が低減され、圧力検出精度を向上することができる。
【0060】
本実施の形態によれば、第1の流路40に第1のポンプ20を設け、第3の流路43に第2のポンプ21を設けることにより、加温流路90における液送と、第1のドリップチャンバー30から患者への液送を別のポンプで分担して行うことができるので、第1のポンプ20の送液圧力を下げることができ、加温流路90の内圧を低減することができる。この結果、加温装置25における加温流路90を押さえる構造を簡略化することができ、加温装置25の重量を抑えることができる。
【0061】
また、患者への輸液量を減らす場合に、第2のポンプ21の液送流量だけを変更すればよく、第1のポンプ20の液送流量を変更する必要がないので、加温流路90を通過する血液製剤の流量が変動せず、加温流路90の血液製剤の温度が周辺の熱の影響を受けて不規則に変動することがない。この結果、輸液量の変動に対応して血液製剤の温度制御を適切に行うことができる。特に加温流路90において血液製剤に周囲の大量の熱が入り込み血液製剤が上限温度に加温されるようなことがない。
【0062】
第1のポンプ20の送液流量を変えることにより、第1のドリップチャンバー30から第4の流路44を通って液体容器22に戻す流体の流量を調整できるため、第1のドリップチャンバー30に気泡が多くなった場合には、第1のポンプ20の送液流量を増加させるだけでよく、気泡の除去を輸液を止めずに行うことができる。
【0063】
以上の実施の形態において、例えば
図13に示すように液体流路23が薬液導入部45を複数備えていてもよい。かかる場合、複数の薬液導入部45をそれぞれ別の薬液バッグ14に接続して、複数の薬液バッグ14から液体容器22に薬液を供給することができるので、血液製剤の生成を短時間で行うことができる。この結果、緊急時の輸液に適切に対応することができる。
【0064】
薬液導入部45は、薬液バッグ14の出口径に応じて交換可能な、径の異なる複数の接続部を有するものであってもよい。かかる場合、より多くの種類の薬液バッグ14を使用することができる。また、輸液時に薬液バッグ14の出口径の相違に迅速に対応することができるので、緊急時の輸液を適切に行うことができる。
【0065】
以上の実施の形態において、例えば
図14に示すように液体流路23が輸液部42を複数備えていてもよい。かかる場合、緊急時大流量で輸液を行うことができる。また、何らかの理由で一つの輸液部42が使用できなくなっても他の輸液部42を用いて輸液を継続することができる。よって、緊急時の輸液を適切に行うことができる。
【0066】
以上の実施の形態において、例えば
図15に示すように第2の流路41が、第1のドリップチャンバー30の側面に接続されていてもよい。かかる場合、第2の流路41から流入した血液製剤が第1のドリップチャンバー30の液面を叩いて気泡が入り込むことを防止できるので、第1のドリップチャンバー30の気泡の除去性能を向上することができる。
【0067】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0068】
例えば以上の実施の形態における輸液装置1、輸液回路15、液体流路23、加温装置25等の構成は、本実施の形態のものに限られない。また、輸液装置1で送液される輸液用の液体は血液製剤であったが、これに限られず、例えば新鮮凍結血漿(FFP)、アルブミン、細胞外液であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、輸液用の液体を加温する加温流路を安定かつ確実に保持することができる輸液回路を提供する際に有用である。
【符号の説明】
【0070】
1 輸液装置
15 輸液回路
22 液体容器
25 加温装置
26 加温部材
70 熱板
90 加温流路
120 流路部
121 支持部