(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】放射性廃水処理装置、および、放射性廃水処理方法
(51)【国際特許分類】
G21F 9/10 20060101AFI20220711BHJP
G21F 9/06 20060101ALI20220711BHJP
G21F 9/12 20060101ALI20220711BHJP
G21F 9/30 20060101ALI20220711BHJP
G21F 9/36 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
G21F9/10 C
G21F9/06 521J
G21F9/10 B
G21F9/12 501J
G21F9/12 501K
G21F9/30 101
G21F9/30 501Z
G21F9/36 511C
(21)【出願番号】P 2018094436
(22)【出願日】2018-05-16
【審査請求日】2021-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤田 紘子
(72)【発明者】
【氏名】並木 千晶
(72)【発明者】
【氏名】井上 由樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】茂庭 忍
(72)【発明者】
【氏名】田嶋 直樹
(72)【発明者】
【氏名】大村 恒雄
【審査官】松平 佳巳
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-110930(JP,A)
【文献】特開2013-164379(JP,A)
【文献】特開2016-114472(JP,A)
【文献】特表2014-514133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/10
G21F 9/06
G21F 9/12
G21F 9/30
G21F 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形分を含有する放射性廃水に無機凝集剤を混合し凝集液を形成する凝集剤混合部と、
前記凝集剤混合部で形成された前記凝集液を第1の分離固形分と第1の清澄液とに分離する固液分離処理を実行する第1固液分離部と
前記凝集剤混合部において前記放射性廃水に前記無機凝集剤が混合される前に、前記放射性廃水に溶解する溶解性の放射性核種と反応することで沈殿物を生成する沈殿剤を前記放射性廃水に混合する沈殿剤混合部と、
前記凝集剤混合部から前記凝集液が排出された後であって前記第1固液分離部において固液分離処理が実行される前に、前記凝集液に濾過助剤を添加する濾過助剤添加部と
を有する、
放射性廃水処理装置。
【請求項2】
前記凝集剤混合部は、放射性物質を吸着する吸着剤を前記無機凝集剤と共に前記放射性廃水に混合する、
請求項1に記載の放射性廃水処理装置。
【請求項3】
前記第1固液分離部によって分離された前記第1の分離固形分について固化処理を実行する固化処理部
を有する、
請求項1または2に記載の放射性廃水処理装置。
【請求項4】
前記沈殿剤は、カルボキシル基を有する物質である、
請求項
1から3のいずれかに記載の放射性廃水処理装置。
【請求項5】
前記沈殿剤混合部において前記沈殿剤の添加が実行される前に、前記放射性廃水を第2の分離固形分と第2の清澄液とに分離する固液分離処理を実行する第2固液分離部
を更に有し、
前記沈殿剤混合部は、前記第2固液分離部において分離された第2の清澄液に前記沈殿剤を混合する、
請求項
1から4のいずれかに記載の放射性廃水処理装置。
【請求項6】
前記第1固液分離部において分離された第1の分離固形分を少なくとも貯蔵固形分として貯蔵する固形分受槽と、
前記固形分受槽で貯蔵する貯蔵固形分について脱水処理を実行する脱水処理部と、
前記第1固液分離部において分離された第1の清澄液に含まれる放射性物質、および、前記脱水処理部で実行された脱水処理によって脱離された脱離水に含まれる放射性物質を吸着する吸着塔と
を更に備える、
請求項1から
5のいずれかに記載の放射性廃水処理装置。
【請求項7】
前記濾過助剤添加部は、前記凝集剤混合部よりも下流であって前記第1固液分離部よりも上流で、または、第1固液分離部で前記凝集液に濾過助剤を添加する
、
請求項1から6のいずれかに記載の放射性廃水処理装置。
【請求項8】
固形分を含有する放射性廃水に無機凝集剤を混合することによって凝集液を形成する凝集剤混合ステップと、
前記凝集剤混合ステップで形成された前記凝集液を分離固形分と清澄液とに分離する固液分離処理を実行する固液分離ステップと
を有する放射性廃水処理方法であって、
前記放射性廃水に前記無機凝集剤が混合される前に、前記放射性廃水に溶解する溶解性の放射性核種と反応することで沈殿物を生成する沈殿剤を前記放射性廃水に混合する沈殿剤混合ステップと、
前記凝集剤混合ステップの実施後であって前記固液分離ステップの実施前に、前記凝集液に濾過助剤を混合する濾過助剤混合ステップ
と
を更に有し、
前記固液分離ステップでは、前記濾過助剤を添加された前記凝集液について固液分離処理を実行する、
放射性廃水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性廃水処理装置、および、放射性廃水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所等において建屋等の構造物を解体する工法として、ワイヤーソーやバンドソーを使用する方法が候補になっている。ワイヤーソーやバンドソーを使用する場合、切断時に生ずる摩擦熱や粉塵飛散を抑制するために、水中での解体もしくは水散布が行われる。このため、切断によって微細化されたコンクリート粉末などの固形分を含む放射性廃水が多量に発生する可能性がある。
【0003】
コンクリートの切削廃水は、コンクリートスラッジを主な固形分として含んでおり、固形分濃度が高く(たとえば10g/L)、pHが高い(たとえばpH12)。一般の建設現場等で発生するコンクリート切削廃水は、中和処理を実施後に、沈降分離を実施することによって、清澄液と沈降物とに分離される。清澄液は、排水され、沈降物は、脱水処理と乾燥処理とが実施された後に、廃棄される。
【0004】
原子力発電所等において建屋を構成するコンクリートは、放射化されているので、解体された場合には、固形分を含有する放射性廃水が生ずる。放射性廃水においては、たとえば、Ca-41、Co-60、Eu-152などの放射性核種が放射性物質として含まれる。放射性廃水において、放射性物質は、粒子状の固形分として存在するか、イオン等の形態で水に溶解している。
【0005】
放射性廃水などの廃水を処理する方法として、さまざまな方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4097817号
【文献】特開2002-333496号公報
【文献】特開2010-119982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
固形分を含有する廃水について浄化する際には、たとえば、凝集剤の添加と共に濾過助剤の添加を行って、固液分離処理が実行される。凝集剤は、廃水中に固形分として存在する浮遊物質を凝集させるために添加される。濾過助剤は、固形分を含有する廃水について固液分離処理を実施する際に要する時間を短縮するために添加される。分離された固形分は、放射性廃棄物として管理される。添加された濾過助剤は、固液分離処理後、固形分に含まれ、放射性廃棄物となる。放射性廃棄物を低減するためには、濾過助剤はできるだけ少ないほうが好ましい。
【0008】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、効率的に固液分離処理を行い、且つ、放射性廃棄物の増大を抑制する、放射性廃水処理装置および放射性廃水処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の放射性廃水処理装置は、凝集剤混合部と第1固液分離部と沈殿剤混合部と濾過助剤添加部とを有する。凝集剤混合部は、固形分を含有する放射性廃水に無機凝集剤を混合することによって凝集液を形成する。第1固液分離部は、凝集剤混合部で形成された凝集液を第1の分離固形分と第1の清澄液とに分離する固液分離処理を実行する。沈殿剤混合部は、凝集剤混合部において放射性廃水に無機凝集剤が混合される前に、放射性廃水に溶解する溶解性の放射性核種と反応することで沈殿物を生成する沈殿剤を放射性廃水に混合する。濾過助剤添加部は、凝集剤混合部から凝集液が排出された後であって第1固液分離部において固液分離処理が実行される前に、凝集液に濾過助剤を添加する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、効率的に固液分離処理を行い、且つ、放射性廃棄物の増大を抑制する、放射性廃水処理装置および放射性廃水処理方法を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る放射性廃水処理装置を模式的に示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る放射性廃水処理方法のフロー図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の変形例に係る放射性廃水処理装置を模式的に示すブロック図である。
【
図4】
図4は、第2実施形態に係る放射性廃水処理装置を模式的に示すブロック図である。
【
図5】
図5は、第3実施形態に係る放射性廃水処理装置を模式的に示すブロック図である。
【
図6】
図6は、第4実施形態に係る放射性廃水処理装置を模式的に示すブロック図である。
【
図7】
図7は、第5実施形態に係る放射性廃水処理装置を模式的に示すブロック図である。
【
図8】
図8は、第6実施形態に係る放射性廃水処理装置を模式的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1の実施形態>
[A]放射性廃水処理装置1
図1は、第1実施形態に係る放射性廃水処理装置1を模式的に示すブロック図である。
【0013】
図1に示すように、放射性廃水処理装置1は、凝集剤供給部10と凝集剤混合部11と濾過助剤添加部20と固液分離部21(第1固液分離部)とを有しており、放射性廃水L0について処理を行う。
【0014】
放射性廃水処理装置1の処理の対象である放射性廃水L0は、たとえば、原子力発電所等の廃止措置において、放射化コンクリートを切断することで発生した放射性コンクリートスラッジなどの固形分を有する廃水である。放射性廃水L0は、上記の他に、放射化コンクリート切削廃水の清澄液、原子炉遮蔽水、炉内構造物解体時の遮蔽水、解体時飛散防止用散布水の排水、マイクロサンド併用凝集物を含む廃水であってもよい。
【0015】
放射性廃水処理装置1を構成する各部について順次説明する。
【0016】
[A-1]凝集剤供給部10
凝集剤供給部10は、たとえば、タンクを備えており、無機凝集剤F10を貯蔵している。凝集剤供給部10において貯蔵された無機凝集剤F10は、配管を介して、凝集剤混合部11に供給される。
【0017】
凝集剤混合部11が供給する無機凝集剤F10は、放射性廃水L0において固形分として存在する浮遊物質(コンクリートに由来するカルシウムを主成分とする物質)を凝集させる添加剤である。無機凝集剤F10は、たとえば、CaOおよびSO3を主成分として含むと共に、SiO2又はAl2O3を含んでいる無機材料である。無機凝集剤F10は、浮遊物質を効果的に凝集させるために、40~50質量%のCaO、25~40質量%のSO3、0~20質量%のSiO2、0~15質量%のAl2O3を含んでいることが好ましい。また、無機凝集剤F10は、浮遊物質の凝集性能が高く、放射性廃水L0の濾過性を向上させる点で、44質量%のCaOと27質量%のSO3と16質量%のSiO2と含む凝集剤、42質量%のCaOと40質量%のSO3と8質量%のSiO2と含む凝集剤、および、42質量%のCaOと35質量%のSO3と9質量%のAl2O3と含む凝集剤であることが特に好ましい。無機凝集剤F10は、放射線の影響を受けにくいため、放射性廃水L0に半減期が比較的長い放射性物質が含まれる場合には、好適に用いられる。
【0018】
[A-1]凝集剤混合部11
凝集剤混合部11は、固形分を含有する放射性廃水L0に無機凝集剤F10を混合することによって凝集液L11を形成するために設置されている。
【0019】
ここでは、凝集剤混合部11は、たとえば、撹拌機を備えた混合槽や、インラインミキサである。凝集剤混合部11は、固形分を含有する放射性廃水L0に、凝集剤供給部10から配管を介して無機凝集剤F10が供給され、撹拌機を用いて放射性廃水L0と無機凝集剤F10とを撹拌し混合する。これにより、放射性廃水L0に固形分として含まれる浮遊物質が無機凝集剤F10の作用で凝集して、浮遊物質の凝集物(フロック)を含む凝集液L11が形成される。凝集液L11は、凝集剤混合部11から配管を介して固液分離部21へ排出される。
【0020】
[A-2]濾過助剤添加部20
濾過助剤添加部20は、凝集液L11が凝集剤混合部11から排出された後であって固液分離部21において固液分離処理が実行される前に、凝集液L11に濾過助剤F20を添加するために設置されている。
【0021】
ここでは、濾過助剤添加部20は、たとえば、タンクを備えており、濾過助剤F20を貯蔵している。濾過助剤添加部20において貯蔵された濾過助剤F20は、配管を介して、固液分離部21に供給される。本実施形態では、濾過助剤F20は、凝集液L11と共に、固液分離部21に供給され、固液分離部21において固液分離処理が実行される前に、濾過助剤F20と凝集液L11とが混合する。
【0022】
濾過助剤添加部20が添加する濾過助剤F20は、固液分離部21において固液分離処理として濾過処理を行う際に、濾過性を向上させるために添加される。濾過助剤F20は、たとえば、フィルタープレス装置などの濾材の表面に堆積した分離固形分の層に流路を形成することで、濾過速度を向上させることができる。濾過助剤F20は、たとえば、珪藻土やパーライトなどのように、SiO2を主成分とする鉱物である。この他に、濾過助剤F20は、セルロース等であってもよい。珪藻土は、たとえば、85質量%程度のSiO2を主成分として含むと共に、Al2O3、Fe2O3、Na2O、K2O、CaO、MgOなどの成分を含んでいる。パーライトは、75質量%程度のSiO2と14質量%程度のAl2O3を主成分として含むと共に、Fe2O3、CaO、Na2O、K2O、MgOなどの成分を含んでいる。セルロースは、たとえば、木材を高度に精製することによって得られる。なお、濾過助剤F20としては、融剤焼成珪藻土や焼成珪藻土が特に好ましい。融剤焼成珪藻土は、珪藻土に少量の炭酸ナトリウムを添加し焼成することで形成される。焼成珪藻土は、珪藻土に含まれる有機物を分解して除去するために珪藻土を焼成して形成される。融剤焼成珪藻土や焼成珪藻土を濾過助剤F20として用いた場合には、濾過比抵抗を効果的に低減することが可能であり、濾過性の向上を容易に実現可能である。
【0023】
[A-3]固液分離部21
固液分離部21(第1固液分離部)は、凝集剤混合部11で形成された凝集液L11を分離固形分S21と清澄液L21とに分離する固液分離処理を実行するために設置されている。固液分離部21は、たとえば、遠心脱水機、フィルタープレス、サイクロン分離機、中空糸フィルタ、ロータリーフィルタである。固液分離部21は、上記装置を適宜組合せて構成されていてもよい。
【0024】
本実施形態では、固液分離部21は、凝集剤混合部11から凝集液L11が供給されると共に、濾過助剤添加部20から濾過助剤F20が供給される。つまり、固液分離部21は、凝集液L11の流入と同時に、濾過助剤F20が添加される。そして、濾過助剤F20が混合された凝集液L11について、固液分離部21が固液分離処理を実行する。これにより、分離固形分S21(濾物、残渣等)が得られる共に、凝集液L11から分離固形分S21が除去された清澄液L21(濾液等)が得られる。
【0025】
[B]放射性廃水処理方法
上記の放射性廃水処理装置1を用いて、放射性廃水L0を処理する方法(放射性廃水処理方法)について説明する。
【0026】
図2は、第1実施形態に係る放射性廃水処理方法のフロー図である。
【0027】
[B-1]凝集剤混合ステップST10
図2に示すように、本実施形態において、放射性廃水L0を処理する際には、まず、凝集剤の混合を実行する(ST10)。
【0028】
本実施形態では、
図1に示すように、放射性廃水処理装置1において、固形分を含有する放射性廃水L0に無機凝集剤F10を混合することによって凝集液L11を形成する。具体的には、放射性廃水L0が供給された凝集剤混合部11に、凝集剤供給部10から無機凝集剤F10を供給する。そして、凝集剤混合部11において、無機凝集剤F10を放射性廃水L0に混合することによって、凝集液L11を形成する。これにより、凝集液L11においては、放射性廃水L0に固形分として含まれる浮遊物質が無機凝集剤F10によって凝集し、浮遊物質の凝集物が生成される。無機凝集剤F10は、放射性廃水L0に含まれる浮遊物質の量等に応じて適宜添加される。
【0029】
[B-2]濾過助剤混合ステップST20
つぎに、
図2に示すように、本実施形態では、濾過助剤の混合を実行する(ST20)。
【0030】
本実施形態では、
図1に示すように、凝集剤混合部11から凝集液L11が固液分離部21に供給される際に、濾過助剤添加部20において貯蔵された濾過助剤F20を固液分離部21に供給する。つまり、固液分離部21において固液分離処理が実行される前に、凝集液L11に濾過助剤F20が混合される。
【0031】
[B-3]固液分離ステップST30
つぎに、本実施形態では、固液分離を実行する(ST30)。
【0032】
本実施形態では、
図1に示すように、濾過助剤F20が混合された凝集液L11について固液分離部21が固液分離処理を実行することによって、凝集液L11が分離固形分S21と清澄液L21とに分離する。分離固形分S21は、たとえば、ドラム缶などの廃棄物容器に排出され、廃棄物として処分される。清澄液L21は、たとえば、コンクリートを切削する際に散布する散布水として用いられる。
【0033】
[C]まとめ
以上のように、本実施形態では、無機凝集剤F10が放射性廃水L0に混合した凝集液L11は、固液分離処理が実行される前に、濾過助剤F20が混合される。そして、凝集液L11は、濾過助剤F20が混合された後に、凝集液L11について固液分離処理が実行される。
【0034】
ここで、濾過助剤F20が存在する溶液に無機凝集剤F10が添加されると、濾過助剤F20も無機凝集剤F10によって凝集され、凝集された濾過助剤F20は、濾過を促進させるという機能を十分に発揮しない場合がある。そのため、濾過助剤F20が添加された溶液に無機凝集剤F10を添加する場合や、濾過助剤F20と無機凝集剤F10を同時に溶液に添加する場合には、無機凝集剤F10の影響を受けない濾過助剤F20を確保する為に、無機凝集剤F10よりも多くの濾過助剤F20を添加することがある。本実施形態では、無機凝集剤F10が添加された後であって固液分離処理よりも前に、濾過助剤F20が添加される。そのため、無機凝集剤F10が濾過助剤F20以外の物質を凝集させた後に濾過助剤F20が添加されることになり、無機凝集剤F10の影響を受けることなく機能する濾過助剤F20が多くなる。すなわち、無機凝集剤F10を添加後であって固液分離処理前に、濾過助剤F20を添加することで、濾過助剤F20を無機凝集剤F10よりも先に添加した場合、及び、濾過助剤F20と無機凝集剤F10を同時に添加した場合よりも、濾過助剤F20は、固液分離処理を効率的に行うことが可能であり、且つ、放射性廃棄物の増大を抑制することができる。
【0035】
[D]変形例
図3は、第1実施形態の変形例に係る放射性廃水処理装置1を模式的に示すブロック図である。
【0036】
図1に示したように、上記の実施形態では、濾過助剤添加部20が濾過助剤F20を固液分離部21に供給する場合について説明したが、これに限らない。
図3に示すように、凝集液L11が凝集剤混合部11から固液分離部21へ流れる配管に、濾過助剤添加部20が濾過助剤F20を添加するように構成されていてもよい。この場合も、無機凝集剤F10を添加後であって固液分離処理前に濾過助剤F20が添加されており、濾過助剤F20を無機凝集剤F10よりも先に添加した場合、及び、濾過助剤F20と無機凝集剤F10を同時に添加した場合よりも、濾過助剤F20は、固液分離処理を効率的に行うことが可能であり、且つ、放射性廃棄物の増大を抑制することができる。
【0037】
なお、放射性物質を吸着する吸着剤を無機凝集剤F10と共に凝集剤混合部11が放射性廃水L0に混合するように構成されていてもよい。吸着剤としては、ゼオライト系の吸着剤、チタン酸系の吸着剤(チタン酸塩)、ケイチタン酸系の吸着剤(ケイチタン酸塩)などを用いることができる。ゼオライト系の吸着剤は、たとえば、モルデナイト、チャバサイト、A型ゼオライトであって、Cs、Coに対する吸着性能が高い。チタン酸系の吸着剤は、Fe、Coに対する吸着性能が高い。ケイチタン酸系の吸着剤は、Csに対する吸着性能が高い。吸着剤は、粉粒状であることが好ましい。吸着剤の粒径が微小になるほど、比表面積が増大し、有効吸着面積が大きくなるため、放射性物質に対する吸着性能が高い。比表面積を増大させるには、粉粒状の吸着剤F11bは、平均粒子径が、300μm以下の範囲であることが好ましい。一方、良好な沈降性を維持する為に、平均粒子径が、50μm以上であるとさらに好ましい。
【0038】
<第2の実施形態>
[A]放射性廃水処理装置1
図4は、第2実施形態に係る放射性廃水処理装置1を模式的に示すブロック図である。
【0039】
本実施形態の放射性廃水処理装置1は、
図4に示すように、上記した第1実施形態の場合(
図1参照)と異なり、固化処理部40を更に有する。この点、および、これに関連する点を除き、本実施形態は、第1実施形態の場合と同様である。このため、重複する事項については、適宜、説明を省略する。
【0040】
固化処理部40は、固液分離部21によって分離された分離固形分S21について固化処理を実行するために設置されている。固化処理部40は、ドラム缶などの容器が載置される載置台を含み、分離固形分S21および固化材(セメント、ジオポリマーなど)が容器において混合され固化させる。これにより、分離固形分S21を含む固化体が形成される。
【0041】
[B]まとめ
以上のように、本実施形態では、固液分離部21において固液分離処理が実施された直後に、その固液分離処理で分離された分離固形分S21について固化処理を実行することができる。このため、本実施形態では、分離固形分S21は、貯蔵の際に圧密化等がされないので、分離固形分S21と固化材(セメント、ジオポリマーなど)との混合を容易に実施することができる。したがって、本実施形態では、効率的に固液分離処理を行うことが可能であり、且つ、放射性廃棄物の増大を抑制することができる。
【0042】
<第3の実施形態>
[A]放射性廃水処理装置1
図5は、第3実施形態に係る放射性廃水処理装置1を模式的に示すブロック図である。
【0043】
本実施形態の放射性廃水処理装置1は、
図5に示すように、上記した第1実施形態の場合(
図1参照)と異なり、沈殿剤供給部50と沈殿剤混合部51とを更に有する。この点、および、これに関連する点を除き、本実施形態は、第1実施形態の場合と同様である。このため、重複する事項については、適宜、説明を省略する。
【0044】
沈殿剤供給部50は、たとえば、タンクを備えており、沈殿剤F50を貯蔵している。沈殿剤供給部50において貯蔵された沈殿剤F50は、配管を介して、沈殿剤混合部51に供給される。
【0045】
沈殿剤F50は、放射性廃水L0に溶解する溶解性の放射性核種と反応することで沈殿物(放射性廃水L0に不溶な固形分)を生成する添加剤である。沈殿剤F50としては、生成する沈殿物がpHによらずに不溶な物質になるものが好ましい。沈殿剤F50は、たとえば、放射性廃水L0においてイオンなどの溶解性物質として存在する放射性核種(Ca-41、Co-60、Eu-152など)と反応し、カルボキシル化合物を沈殿物として形成する物質が好ましい。沈殿剤F50は、カルボキシル基を有する物質であって、たとえば、シュウ酸、クエン酸、酒石酸などのカルボン酸が沈殿剤F50として好適に用いられる。また、沈殿剤F50としては、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸アンモニウム、クエン酸ナトリウムなどのカルボン酸塩を好適に用いることができる。なお、沈殿剤F50を用いて生成するカルボキシル化合物は、溶解度が0.001(g/100g水、20℃)以下であることが更に望ましい。
【0046】
沈殿剤混合部51は、沈殿剤F50を放射性廃水L0に混合する。沈殿剤混合部51は、凝集剤混合部11において無機凝集剤F10の混合が行われる前に、放射性廃水L0に沈殿剤F50を混合する。
【0047】
ここでは、沈殿剤混合部51は、たとえば、撹拌機を備えた混合槽や、インラインミキサである。沈殿剤混合部51は、固形分を含有する放射性廃水L0に、沈殿剤供給部50から配管を介して沈殿剤F50が供給され、撹拌機を用いて放射性廃水L0と沈殿剤F50とを撹拌し混合する。これにより、沈殿剤F50と、放射性廃水L0に溶解する溶解性の放射性核種とが反応することで、沈殿物が生成される。
【0048】
沈殿剤混合部51において沈殿剤F50と放射性廃水L0とが混合された沈殿剤混合液F51は、沈殿剤混合部51から配管を介して凝集剤混合部11へ排出される。その後、第1実施形態の場合と同様に、凝集剤混合部11において沈殿剤混合液F51に無機凝集剤F10が混合される。そして、その無機凝集剤F10の混合で形成された凝集液L11は、固液分離部21において固液分離処理が施されて、分離固形分S21と清澄液L21とに分離される。
【0049】
[B]まとめ
以上のように、本実施形態では、沈殿剤F50と、放射性廃水L0に溶解する溶解性の放射性核種とを反応させて、沈殿物を生成する。この生成された沈殿物は、固液分離処理によって回収される。このため、本実施形態では、清澄液L21における放射能濃度を効果的に低減可能である。
【0050】
なお、沈殿剤F50として、カルボキシル基を有する物質を用いた場合には、炭酸カルシウムやシュウ酸カルシウム等の水に溶けにくい物質が形成される。
【0051】
<第4の実施形態>
[A]放射性廃水処理装置1
図6は、第4実施形態に係る放射性廃水処理装置1を模式的に示すブロック図である。
【0052】
本実施形態の放射性廃水処理装置1は、
図6に示すように、上記した第1実施形態の場合(
図1参照)と異なり、固液分離部22(第2固液分離部)を更に有する。この点、および、これに関連する点を除き、本実施形態は、第1実施形態の場合と同様である。このため、重複する事項については、適宜、説明を省略する。
【0053】
固液分離部22(第2固液分離部)は、凝集剤混合部11において無機凝集剤F10の混合が実行される前に、放射性廃水L0を分離固形分S22(第2の分離固形分)と清澄液L22(第2の清澄液,粗清澄液)とに分離する固液分離処理を実行するために設置されている。固液分離部22は、たとえば、液体サイクロンであって、100μm以下のセメント粒子を分離可能な装置であることが好ましい。特に、50μm以下のセメント粒子を分離可能であることが、より好ましい。
【0054】
ここでは、固液分離部22は、下流側に位置する他の固液分離部21が分離する分離固形分S21よりも粒径が大きい粗大粒子が分離固形分S22として放射性廃水L0から分離されるように構成されている。このため、固液分離部22で分離された清澄液L22は、下流側に位置する他の固液分離部21で分離された清澄液L21よりも清澄度が低い。
【0055】
固液分離部22で分離された清澄液L22は、凝集剤混合部11において無機凝集剤F10が混合される。その結果、清澄液L22に含まれる浮遊物質が無機凝集剤F10によって凝集し、凝集液L11が形成される。凝集剤混合部11で形成された凝集液L11は、固液分離部21(第1固液分離部)に供給される際に、固液分離部22(第2固液分離部)で分離された分離固形分S22が混合される。そして、その分離固形分S22を含む凝集液L11が、第1実施形態の場合と同様に、固液分離部21(第1固液分離部)において固液分離処理が施される。その結果、凝集液L11が、分離固形分S21と清澄液L21とに分離される。
【0056】
[B]まとめ
以上のように、本実施形態では、凝集剤混合部11において無機凝集剤F10の混合が実行される前に、固液分離部22が放射性廃水L0を分離固形分S22と清澄液L22とに分離する固液分離処理を実行する。このため、凝集剤混合部11に供給される清澄液L22は、分離固形分S21が分離され、粗大粒子が取り除かれた状態である。したがって、凝集剤混合部11において無機凝集剤F10の混合が実行される際に、無機凝集剤F10が粗大粒子に付着されにくい。その結果、本実施形態では、無機凝集剤F10の使用量を低減することができる。
【0057】
なお、上記の実施形態では、固液分離部22で分離された分離固形分S22が凝集液L11に混合される場合について説明したが、これに限らない。固液分離部22で分離された分離固形分S22は、凝集液L11に混合されずに、直接、廃棄物として処分されてもよい。
【0058】
<第5の実施形態>
[A]放射性廃水処理装置1
図7は、第5実施形態に係る放射性廃水処理装置1を模式的に示すブロック図である。
【0059】
本実施形態の放射性廃水処理装置1は、
図7に示すように、上記した第3実施形態の場合(
図5参照)と異なり、固液分離部22(第2固液分離部)を更に有する。この点、および、これに関連する点を除き、本実施形態は、第3実施形態の場合と同様である。このため、重複する事項については、適宜、説明を省略する。
【0060】
固液分離部22(第2固液分離部)は、沈殿剤混合部51において沈殿剤F50の添加が実行される前に、放射性廃水L0を分離固形分S22(第2の分離固形分)と清澄液L22(第2の清澄液,粗清澄液)とに分離する固液分離処理を実行するために設置されている。固液分離部22は、たとえば、液体サイクロンである。
【0061】
ここでは、固液分離部22は、下流側に位置する他の固液分離部21が分離する分離固形分S22よりも粒径が大きい粗大粒子が分離固形分S22として放射性廃水L0から分離されるように構成されている。このため、固液分離部22で分離された清澄液L22は、下流側に位置する他の固液分離部21で分離された清澄液L21よりも清澄度が低い。
【0062】
固液分離部22で分離された清澄液L22は、沈殿剤混合部51において沈殿剤F50の添加が実行される。その結果、清澄液L22に溶解している溶解性の放射性核種と、沈殿剤F50とが反応することで、沈殿物(清澄液L22に不溶な固形分)が生成される。沈殿剤混合部51において沈殿剤F50と清澄液L22とが混合された沈殿剤混合液F51は、凝集剤混合部11へ排出される。
【0063】
その後、沈殿剤混合液F51は、凝集剤混合部11において無機凝集剤F10が混合される。その結果、沈殿剤混合液F51に含まれる浮遊物質が無機凝集剤F10によって凝集し、凝集液L11が形成される。凝集剤混合部11で形成された凝集液L11は、固液分離部21(第1固液分離部)に供給される際に、固液分離部22(第2固液分離部)で分離された分離固形分S22が混合される。そして、その分離固形分S22を含む凝集液L11が、第3実施形態の場合と同様に、固液分離部21(第1固液分離部)において固液分離処理が施される。その結果、凝集液L11が、分離固形分S21と清澄液L21とに分離される。
【0064】
[B]まとめ
以上のように、本実施形態では、沈殿剤混合部51において沈殿剤F50の添加が実行される前に、固液分離部22が放射性廃水L0を分離固形分S22との清澄液L22とに分離する固液分離処理を実行する。このため、沈殿剤混合部51に供給される清澄液L22は、分離固形分S21が分離され、粗大粒子が取り除かれた状態である。したがって、沈殿剤混合部51において沈殿剤F50の添加が実行された際には、清澄液L22に溶解している溶解性の放射性核種と、沈殿剤F50との混合が容易になる。沈殿剤F50と粗大粒子との反応が生じにくくなるので、本実施形態では、沈殿剤F50の使用量を低減することができる。
【0065】
なお、上記の実施形態では、固液分離部22で分離された分離固形分S22が凝集液L11に混合される場合について説明したが、これに限らない。固液分離部22で分離された分離固形分S22は、凝集液L11に混合されずに、直接、廃棄物として処分されてもよい。
【0066】
<第6の実施形態>
[A]放射性廃水処理装置1
図8は、第6実施形態に係る放射性廃水処理装置1を模式的に示すブロック図である。
【0067】
本実施形態の放射性廃水処理装置1は、
図8に示すように、上記した第5実施形態の場合(
図7参照)と異なり、固液分離部23(第3固液分離部)、固形分受槽71、脱水処理部81、吸着塔91、および、固化処理部40を更に備える。この点、および、これに関連する点を除き、本実施形態は、第5実施形態の場合と同様である。このため、重複する事項については、適宜、説明を省略する。
【0068】
[A-1]固液分離部23(第3固液分離部)
固液分離部23(第3固液分離部)は、凝集剤混合部11と、下流に位置する他の固液分離部21(第1固液分離部)との間に設けられた流路に設けられている。固液分離部23は、上流に位置する他の固液分離部22(第2固液分離部)で分離された分離固形分S22が混合した凝集液L11を、分離固形分S23(第3の分離固形分)と清澄液L23(第3の清澄液)とに分離する固液分離処理を実行するために設置されている。固液分離部23は、上流側に位置する他の固液分離部22と同様に、たとえば、液体サイクロンである。
【0069】
ここでは、固液分離部23は、下流側に位置する他の固液分離部21が分離する分離固形分S21よりも粒径が大きい粗大粒子が分離固形分S23として凝集液L11から分離されるように構成されている。このため、固液分離部23で分離された清澄液L23は、下流側に位置する他の固液分離部21で分離された清澄液L21よりも清澄度が低い。
【0070】
固液分離部23で分離された清澄液L23は、固液分離部23の下流に位置する他の固液分離部21において固液分離処理が実行される。固液分離部23で分離された分離固形分S23は、他の固液分離部21で分離された分離固形分S21と共に、固形分受槽71に排出される。
【0071】
[A-2]固形分受槽71
固形分受槽71は、固液分離部21で分離された分離固形分S21と、固液分離部23で分離された分離固形分S23とを貯蔵固形分S71として貯蔵するために設置されている。沈殿物が生ずることを防止するために、固形分受槽71は、たとえば、撹拌機を有しており、タンクに貯蔵された貯蔵固形分S71を撹拌機で撹拌するように構成されている。固形分受槽71は、撹拌機に代えてポンプを有していてもよく、ポンプを用いて貯蔵固形分S71を循環させるように構成されていてもよい。固形分受槽71で貯蔵された貯蔵固形分S71は、脱水処理部81に排出される。
【0072】
[A-3]脱水処理部81
脱水処理部81は、固形分受槽71で貯蔵された貯蔵固形分S71について脱水処理を実行するために設置されている。脱水処理部81は、脱水機を有し、貯蔵固形分S71から脱離水L81を脱離させる。これにより、貯蔵固形分S71は、脱離水L81と、貯蔵固形分S71から脱離水L81が脱離した脱水固形分S81とに分離される。脱離水L81は、固液分離部21で分離された清澄液L21と共に、吸着塔91へ排出される。脱水固形分S81は、含水率が貯蔵固形分S71よりも低減した状態で、固化処理部40へ排出される。
【0073】
[A-4]吸着塔91
吸着塔91は、固液分離部21において分離された清澄液L21に含まれる放射性物質、および、脱水処理部81で実行された脱水処理によって脱離された脱離水L81に含まれる放射性物質とを吸着するために設置されている。吸着塔91は、放射性物質を吸着する吸着剤が充填されている。吸着剤は、たとえば、けいチタン酸、ゼオライト、活性炭であって、固液分離部21で分離された清澄液L21、および、脱水処理部81で脱離された脱離水L81に残存する放射性物質を吸着する。吸着塔91において放射性物質が吸着されて除去された清澄液L91は、たとえば、コンクリートを切削する際に散布する散布水として用いられる。
【0074】
[A-5]固化処理部40
固化処理部40は、脱水処理部81で得られた脱水固形分S81について固化処理を実行するために設置されている。固化処理部40は、ラム缶などの容器が載置される載置台を含み、脱水固形分S81および固化材(セメント、ジオポリマーなど)が容器において混合され固化させる。これにより、脱水固形分S81を含む固化体が形成される。
【0075】
[B]まとめ
本実施形態では、第5実施形態の場合と同様に、放射性廃水L0は、沈殿剤混合部51において沈殿剤F50が添加されることで、放射性廃水L0に溶解する溶解性の放射性核種が、放射性廃水L0に不溶な固形分に変わる。その放射性廃水L0に不溶になった固形分は、固液分離部23と、他の固液分離部21とによって分離されるため、吸着塔91に供給される清澄液L21および脱水固形分S81には含まれない。このため、本実施形態では、吸着塔91でに必要な吸着剤の量を低減させることが可能である。その結果、本実施形態では、放射性廃水L0の処理で生ずる二次廃棄物の量を低減することができる。
【実施例】
【0076】
以下より、実施例などに関して、表1を用いて説明する。
【0077】
【0078】
[A]各例の処理内容について
[例1]
例1では、コンクリートのビルを解体することによって生じた切削廃水に対して、下記に示す条件で、無機系凝集剤を添加した。
【0079】
・切削廃水・・・100mL
・無機系凝集剤(商品名「水澄まいる」(登録商標) 標準型、スバル興業株式会社製)・・・0.5g
【0080】
つぎに、無機系凝集剤が添加された切削廃水について、10秒の急速撹拌を行った後に、2分30秒の緩速撹拌を行って混合した。そして、加圧濾過試験装置を用いて、混合後の切削廃水について、固液分離処理として加圧濾過を行った。加圧濾過は、孔径0.1μmのフィルタを用いて、0.2MPaGの加圧条件で実行した。
【0081】
[例2]
例2では、下記に示す条件で、切削廃水に対して無機系凝集剤と粉粒状吸着材との両者を同時に添加して混合した。そして、例1と同様に、固液分離処理として加圧濾過を実行した。
【0082】
・切削廃水・・・100mL
・無機系凝集剤(商品名「水澄まいる」(登録商標) 標準型、スバル興業株式会社製)・・・0.5g
・粉粒状吸着材(ゼオライト)・・・0.5g
【0083】
[例3]
例3では、下記に示す条件で、切削廃水に対して無機系凝集剤と粉粒状吸着材と濾過助剤の全てを同時に添加して混合した。そして、例1と同様に、固液分離処理として加圧濾過を実行した。
【0084】
・切削廃水・・・100mL
・無機系凝集剤(商品名「水澄まいる」(登録商標) 標準型、スバル興業株式会社製)・・・0.5g
・粉粒状吸着材(ゼオライト)・・・0.5g
・濾過助剤(珪藻土、商品名「RADIOLITE#500」(登録商標)、昭和化学工業製)・・・0.5g
[例4]
例4では、下記に示す条件で、切削廃水に対して無機系凝集剤と粉粒状吸着材との両者を同時に添加して混合した(例2と同様)。
【0085】
・切削廃水・・・100mL
・無機系凝集剤(商品名「水澄まいる」(登録商標) 標準型、スバル興業株式会社製)・・・0.5g
・粉粒状吸着材(ゼオライト)・・・0.5g
【0086】
つぎに、例4では、無機系凝集剤および粉粒状吸着材が混合された切削廃水に対して、下記条件で、濾過助剤を添加した後に、10秒の急速撹拌を行った。その後、例4では、例1と同様に、固液分離処理として加圧濾過を実行した。
【0087】
・濾過助剤(珪藻土、商品名「RADIOLITE#500」(登録商標)、昭和化学工業製)・・・0.5g
【0088】
[B]結果について
表1に示すように、各例で固液分離処理として実行した加圧濾過における濾過比抵抗を求めた。濾過比抵抗αについては、下記式(A)に基づいて、算出を行った。
【0089】
【0090】
・α:濾過比抵抗(m/kg)
・ΔP:濾過圧力(kg/cm2)
・A:濾過面積(cm2)
・K:濾過量X(cm3)と、濾過速度y(cm3/s)の逆数Y(s/cm3)(つまり、Y=1/y)とのグラフの傾きdY/dX(s/cm6)
・gc:重力加速度(m/s2)
・SS:SS濃度(ppm)
・μ:粘性係数(kg/m・s)
【0091】
表1において、例1の結果と例2の結果とを比較して判るように、粉粒状吸着材の添加によって、濾過比抵抗を低減することができる。例2の結果と例3の結果とを比較して判るように、粉粒状吸着材の添加と同時に濾過助剤の添加を実行した場合には、濾過比抵抗が上昇する。しかしながら、例4の結果から判るように、粉粒状吸着材の添加後であって、固液分離処理として加圧濾過を実行する前に、濾過助剤の添加を実行した場合には、濾過比抵抗を著しく低下させることができる。
【0092】
なお、本発明は上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階では、上述した実施例以外にも様々な形態で実施することができる。本発明は、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、追加、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0093】
1…放射性廃水処理装置、10…凝集剤供給部、11…凝集剤混合部、20…濾過助剤添加部、21…固液分離部(第1固液分離部)、22…固液分離部(第2固液分離部)、23…固液分離部(第3固液分離部)、40…固化処理部、50…沈殿剤供給部、51…沈殿剤混合部、71…固形分受槽、81…脱水処理部、91…吸着塔