(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】射出装置、射出成形機および射出装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/77 20060101AFI20220711BHJP
B29C 45/17 20060101ALI20220711BHJP
B29C 45/00 20060101ALI20220711BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20220711BHJP
B29C 44/34 20060101ALI20220711BHJP
B29C 44/60 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
B29C45/77
B29C45/17
B29C45/00
B29C44/00 D
B29C44/34
B29C44/60
(21)【出願番号】P 2018094936
(22)【出願日】2018-05-16
【審査請求日】2021-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100141830
【氏名又は名称】村田 卓久
(72)【発明者】
【氏名】勝又 隆市
(72)【発明者】
【氏名】北堀 雄司
(72)【発明者】
【氏名】山崎 陽平
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-010647(JP,A)
【文献】特開2006-056135(JP,A)
【文献】特開2012-224068(JP,A)
【文献】特開2009-172780(JP,A)
【文献】特開2007-130826(JP,A)
【文献】特開2003-033941(JP,A)
【文献】特開昭61-239917(JP,A)
【文献】特開昭61-239916(JP,A)
【文献】特開2000-176958(JP,A)
【文献】特開2003-165135(JP,A)
【文献】特開2006-159898(JP,A)
【文献】特公昭47-037701(JP,B1)
【文献】特開平11-216756(JP,A)
【文献】特開2016-007725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B29C 33/00-33/76
B29C 44/00-44/60
B29C 67/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型閉された第1金型と第2金型との間のキャビティに成形材料を射出する射出装置であって、
前記第1金型および前記第2金型の少なくとも一方に設けられ、前記キャビティにガスを供給するガス供給部と、
前記ガス供給部に設けられ、前記キャビティに供給されるガスの流量を測定するガス流量計と、
前記ガス供給部に設けられ、ガス流路の圧力を測定するガス圧力計と、
前記キャビティに供給されるガスの流量
と前記ガス流路の圧力に基づいて、前記キャビティ内の圧力が或る圧力値に達したと判定する制御部を備え、
前記制御部は、前記ガス圧力計の圧力値が第1圧力値であり、前記ガス流量計の流量値が所定の条件を満たした場合に、前記キャビティ内の圧力が前記第1圧力値に達したと判定する、射出装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記
ガス流量計の流量値がガス供給時間の経過に伴って減少してガス供給時間の経過に対して
一定になった場合に、前記キャビティ内の圧力が前記第1圧力値に達したと判定する、
請求項1に記載の射出装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記
ガス流量計の流量値がガス供給時間の経過に伴って減少して第1流量値以下になった場合に、前記キャビティ内の圧力が前記第1圧力値に達したと判定する、
請求項1または請求項2に記載の射出装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記キャビティ内の圧力が前記第1圧力値に達したと判定した場合に、前記射出装置に前記成形材料を射出させる、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の射出装置。
【請求項5】
前記制御部は、
キャビティ内の圧力が前記第1圧力値に達したと判定した場合であっても、ガスの供給開始による
前記ガス流量計の流量値の上昇と前記
ガス流量計の流量値の減少との間の前記
ガス流量計の流量値のピーク値が所定の下限流量値以下である場合
には、前記射出装置に前記成形材料を射出させない、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の射出装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記キャビティ内の圧力が前記第1圧力値に達したと判定した場合であっても、第1タイムアウト期間内に前記キャビティ内の圧力が前記第1圧力値に達したと判定しない場合
には、前記射出装置に前記成形材料を射出させない、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の射出装置。
【請求項7】
前記成形材料は、発泡性樹脂であり、
前記第1圧力値は、前記発泡性樹脂の発泡圧力以上の圧力値である、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の射出装置。
【請求項8】
前記キャビティに供給される
発泡性溶融樹脂の供給圧力を測定する圧力計をさらに備え、
前記制御部は、前記圧力計の圧力値が第2圧力値に達した場合に、前記キャビティ内の圧力が前記第2圧力値に達したと判定する、
請求項4に記載の射出装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記キャビティ内の圧力が前記第2圧力値に達したと判定した場合に、前記第1金型および前記第2金型の少なくとも一方を移動させる型締機構に前記キャビティの容積を拡大させる、
請求項8に記載の射出装置。
【請求項10】
前記圧力計は、前記
発泡性溶融樹脂の射出圧力を測定する
射出圧力センサである、
請求項8または請求項9に記載の射出装置。
【請求項11】
請求項1から
請求項10のいずれか一項に記載の射出装置を備える射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明による実施形態は、射出装置、射出成形機および射出装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は、型締された複数の金型間にあるキャビティへ溶融樹脂を流し込むことによって樹脂を成形する。この射出成形において、樹脂に発泡剤を加える等により、樹脂を発泡させる発泡成形法が用いられている。発泡成形法では、キャビティ内の圧力が低い場合、射出工程において流動する溶融樹脂の先端部から発泡ガスが飛び出し、製品表面にスワールマーク等の外観不良が生じることがある。そこで、射出工程の前に、ガスの供給によりキャビティ内を発泡圧力以上に加圧するCP(Counter Pressure)法が知られている。スワールマークの発生を抑制するためには、キャビティ内のガスの圧力制御が重要となる。例えば、金型に圧力センサを内蔵して、圧力制御をすることが知られている。
【0003】
しかし、この場合、圧力センサのセンサ検知部がキャビティに面している必要があるため、金型設計が複雑化するという問題があった。センサ検知部がキャビティに面しない場合、例えば、ガスの供給配管の途中に圧力センサが取り付けられた場合、配管の圧力損失によりキャビティ内の圧力を正確に測定できない可能性がある。これにより、キャビティ内の圧力不足が発生すると、スワールマークが出る可能性がある。また、キャビティ内の圧力を発泡圧力以上の圧力にするために、ガス供給時間が必要以上に長く設定される可能性があり、無駄にサイクルタイムが伸びてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
金型設計を複雑化することなく、キャビティ内の圧力を判定することができる射出装置、射出成形機および射出装置の制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態による射出装置は、型閉された第1金型と第2金型との間のキャビティに成形材料を射出する射出装置であって、キャビティに供給されるガスの流量またはキャビティに供給される流体の供給圧力に基づいて、キャビティ内の圧力が或る圧力値に達したと判定する制御部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態による射出成形機の構成の一例を示すブロック図。
【
図2】第1実施形態による射出装置、制御部、固定金型および移動金型の構成の一例を示すブロック図。
【
図3】第1実施形態による射出成形機のCP法の成形フローにおける動作を示す図。
【
図4】キャビティ内の圧力、ガス圧力計の圧力値およびガス流量計の流量値の関係を示す模式図。
【
図5】第2実施形態による射出成形機のCP法の成形フローにおける動作を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0009】
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。明細書と図面において、既出の図面に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態による射出成形機1の構成の一例を示すブロック図である。射出成形機1は、一連の射出成形動作を繰り返し実行可能な機械であり、例えば、成形品を1回成形する動作をサイクル動作として繰り返す。一連のサイクル動作を実行する時間をサイクルタイムという。
【0011】
射出成形機1は、フレーム2と、固定盤3と、移動盤4と、タイバー5と、型締駆動機構6と、射出装置7と、制御部8と、押出機構9と、ヒューマン・マシン・インタフェース60と、記憶部110と、射出圧力センサS1と、スクリュ位置センサS2とを備えている。
【0012】
フレーム2は、射出成形機1の土台である。固定盤3は、フレーム2上に固定されている。固定盤3には、第1金型としての固定金型11が取り付けられる。タイバー5の一端は、固定盤3に固定されており、その他端は、支持盤10に固定されている。タイバー5は、固定盤3から移動盤4を通過して支持盤10まで延びている。
【0013】
移動盤4は、フレーム2に設けられたリニアガイド(図示せず)上に載置されている。移動盤4は、タイバー5またはリニアガイドに案内され、固定盤3に接近しあるいは固定盤3から離れるように移動することができる。移動盤4には、第2金型としての移動金型12が取り付けられる。移動金型12は、固定金型11に対向しており、移動盤4とともに固定金型11へ接近し、固定金型11に組み合わされる。移動金型12と固定金型11とが合わされ接触することによって、移動金型12と固定金型11との間に製品形状に対応した空間が形成される。
【0014】
型締駆動機構6は、トグル機構13と、トグル機構駆動部14とを備えている。トグル機構駆動部14は、トグル機構13を駆動するために、型締サーボモータ21と、ボールねじ22と、伝達機構23とを備えている。ボールねじ22の先端部には、クロスヘッド15が取り付けられている。ボールねじ22が回転することで、クロスヘッド15が移動盤4に接近し、あるいは、移動盤4から離れるように移動する。伝達機構23は、型締サーボモータ21の回転をボールねじ22に伝達し、クロスヘッド15を移動させる。
【0015】
トグル機構駆動部14がクロスヘッド15を移動させると、トグル機構13が作動する。例えば、クロスヘッド15が移動盤4へ向かって移動すると、移動盤4が固定盤3に向かって移動し、金型11、12の型締が行われる。逆に、クロスヘッド15が移動盤4から離れる方向に移動すると、移動盤4が固定盤3から離れる方向に移動し、金型11、12の型開が行われる。
【0016】
押出機構9は、成形後の製品を移動金型12から取り外すために、押出サーボモータ71と、ボールねじ72と、伝達機構73及び押出ピン74とを備えている。押出ピン74の先端部は、移動金型12の内面に貫通している。ボールねじ72が回転することによって、押出ピン74が移動金型12の内面に付着した製品を押し出す。伝達機構73は、押出サーボモータ71の回転をボールねじ72に伝達し、ボールねじ72が回転して押出ピン74を
図1の左右方向に移動させる。
【0017】
射出装置7は、加熱バレル(バンドヒータ)41と、スクリュ42と、計量駆動部43と、射出駆動部44とを備えている。加熱バレル41は、溶融状態の樹脂を、型締めされた金型のキャビティ内に注入するノズル41aを備える。加熱バレル41は、ホッパ45からの樹脂を加熱溶融しつつ貯えておき、その溶融樹脂をノズルから射出する。スクリュ42は、加熱バレル41の内部で回転しながらあるいは回転せずに移動可能に設けられている。計量工程において、スクリュ42は回転し、スクリュ42の回転量(移動距離)によってバレル41から射出される溶融樹脂の射出量が計量され決定される。射出工程においては、スクリュ42は、回転することなく移動し、溶融樹脂をノズルから射出する。
【0018】
計量駆動部43は、計量サーボモータ46と、計量サーボモータ46の回転をスクリュ42に伝える伝達機構47とを有する。計量サーボモータ46が駆動され、加熱バレル41内でスクリュ42が回転されると、樹脂がホッパ45から加熱バレル41内に導入される。導入された樹脂は、加熱されかつ混練されながら加熱バレル41の先端側に送られる。樹脂は、溶融されて加熱バレル41の先端部分に貯えられる。計量時と逆方向にスクリュ42を移動させることによって、溶融樹脂はバレル41から射出される。このとき、スクリュ42は、回転することなく移動し、溶融樹脂をノズルから押し出す。尚、本実施形態では、成形材料として溶融樹脂を用いているが、成形材料は溶融樹脂に限定されることはなく、金属、ガラス、ゴム、炭素繊維を含む炭化化合物などでもよい。
【0019】
射出駆動部44は、射出サーボモータ51と、ボールねじ52と、伝達機構53とを有する。ボールねじ52が回転することで、加熱バレル41内でスクリュ42が
図1の左右方向に移動する。伝達機構53は、射出サーボモータ51の回転をボールねじ52に伝達する。これにより、射出サーボモータ51が回転すると、スクリュ42が移動する。スクリュ42が加熱バレル41の先端部分に貯えられた溶融樹脂をノズル41aから押し出すことによって、溶融樹脂がノズル41aから射出される。
【0020】
射出圧力センサS1は、バレル41から金型へ溶融樹脂を充填する際の充填圧力や保圧工程における保圧圧力を検出する。射出工程においては、射出圧力センサS1は、バレル41から金型への溶融樹脂料の射出圧力を検出する。保圧工程においては、射出圧力センサS1は、速度制御から圧力制御への保圧切替え後の溶融樹脂の保圧圧力を検出する。
【0021】
スクリュ位置センサS2は、スクリュ42の位置を検出する。スクリュ42は、射出サーボモータ51の回転に伴って移動するので、スクリュ位置センサS2は、射出サーボモータ51の回転数や角度位置からスクリュ42の位置を検出してもよい。所定の制御周期ごとにスクリュ42の位置を検出することによって、スクリュ42の速度や加速度が分かる。
【0022】
ヒューマン・マシン・インタフェース(HMI/F)60は、射出成形機1に関する様々な情報を表示する。HMI/F60は、例えば、表示部およびキーボードを備えてもよく、あるいは、タッチパネル式ディスプレイであってもよい。ユーザは、HMI/F60を通じて、射出成形機1の動作に関する指令等の設定を入力することができる。例えば、射出成形は、金型へ溶融樹脂を射出する射出工程と金型における溶融樹脂の保圧圧力を制御する保圧工程とによって製品を成形する。
【0023】
制御部8は、射出工程中に各種センサ(図示せず)から受け取るセンサ情報を監視し、そのセンサ情報に基づいて射出装置7を制御する。また、制御部8は、HMI/F60を通じて設定された上記設定値に従ってスクリュ42を制御する。さらに、制御部8は、必要なデータを表示部100に表示させる。尚、射出装置7が制御部8を備えていてもよい。
【0024】
記憶部110は、射出成形機1の複数の動作情報を格納する。動作情報は、金型11,12、型締駆動機構6、あるいは、射出装置7の動作を示す情報である。尚、射出装置7が記憶部110を備えていてもよい。
【0025】
図2は、第1実施形態による射出装置7、制御部8、固定金型11および移動金型12の構成の一例を示すブロック図である。以下では、キャビティは、型閉された固定金型11と移動金型12との間の空間を言う。
【0026】
射出装置7は、ガス供給部120と、ガス排出部130と、ガス流量計140と、ガス圧力計150とをさらに備えている。
【0027】
ガス供給部120は、ガス供給管121と、ガス供給バルブ122とを有する。ガス供給管121は、例えば、固定金型11に設けられる。また、ガス供給バルブ122は、ガス供給管121に設けられる。ガス供給バルブ122は、例えば、制御部8により制御される。ガス供給部120は、射出工程の前にガス供給バルブ122を開くことにより、キャビティ内にガスを供給する。これにより、ガス供給部120は、キャビティ内の圧力を上げることができる。ガスは、例えば、空気であるが、不活性ガスであってもよい。尚、ガス供給管121は、固定金型11および移動金型12の少なくとも一方に設けられてもよい。
【0028】
ガス排出部130は、ガス排出管131と、ガス排出バルブ132とを有する。ガス排出管131は、例えば、固定金型11に設けられる。また、ガス排出バルブ132は、ガス排出管131に設けられる。ガス排出バルブ132は、例えば、制御部8により制御される。ガス排出部130は、射出工程の後にガス排出バルブ132を開くことにより、キャビティ内からガスを排出する。これにより、ガス排出部130は、キャビティ内の圧力を下げることができる。ガス排出部130は、例えば、大気開放によりキャビティ内からガスを排出する。尚、ガス排出管131は、固定金型11および移動金型12の少なくとも一方に設けられてもよい。また、ガス排出部130を設けず、ガス供給部120に真空ポンプを接続してキャビティ内からガスを排出してもよい。
【0029】
ガス流量計140は、ガス供給管121に設けられ、キャビティに供給されるガスの流量を測定する。ガス流量計140は、測定した流量値を制御部8に送る。
【0030】
ガス圧力計150は、ガス供給管121に設けられ、ガス流路の圧力を測定する。ガス圧力計150は、測定した圧力値を制御部8に送る。
【0031】
制御部8は、ガス供給バルブ122、ガス排出バルブ132、ガス流量計140、ガス圧力計150、計量駆動部43および射出駆動部44に接続されている。制御部8は、ガス流量計140の流量値およびガス圧力計150の圧力値を受け取り、キャビティ内の圧力が或る圧力値に達したと判定する。キャビティ内の圧力が或る圧力値に達した場合、制御部8は、射出駆動部44を制御して、射出装置7に発泡性溶融樹脂を射出させる。
【0032】
射出装置7は、例えば、発泡成形法に用いられる。成形材料としては、発泡性溶融樹脂が用いられる。発泡性溶融樹脂は、発泡剤の添加等により発泡性を有する溶融樹脂である。発泡剤は、溶融樹脂に発泡ガスを供給することにより、溶融樹脂の内部に気泡を発生させる。これにより、製品の軽量化および材料削減をすることができる。また、射出装置7は、例えば、CP法に用いられる。CP法とは、発泡ガス以上のガス圧力を与える成形法である。例えば、射出装置7は、射出工程の前に、ガスの供給によりキャビティ内を発泡性溶融樹脂の発泡圧力以上に加圧する。発泡圧力とは、発泡性溶融樹脂に含まれる発泡ガスの圧力である。従って、射出装置7は、発泡ガスに対抗するガス圧力によって、射出工程において流動する発泡性溶融樹脂の表面から発泡ガスが飛び出すことを抑制する。従って、発泡性溶融樹脂の表面は、発泡ガスの飛び出しが抑制されたまま、金型11,12により冷やされて固化層を形成する。一方、発泡性溶融樹脂の内部は、射出工程においてすぐには固化しないため、未固化層である。射出工程の後、射出装置7は、供給されたガスをキャビティから抜く。ガス圧力が発泡圧力よりも低くなると、未固化層の発泡性溶融樹脂が発泡する。このように、CP法は、射出工程において、発泡性溶融樹脂の表面からの発泡ガスの飛び出しを抑制しつつ、その内部を発泡させることができる。その結果、製品表面にスワールマーク等の外観不良が発生することを抑制し、かつ、製品の軽量化または材料の削減をすることができる。尚、発泡成形法およびCP法に限られず、射出装置7は、ガスの供給によりキャビティ内を加圧する場合に用いられてもよい。
【0033】
次に、
図3を参照して、CP法の成形フローについて説明する。
【0034】
図3は、第1実施形態による射出成形機1のCP法の成形フローにおける動作を示す図である。
図3におけるL1,L2,L3は、それぞれキャビティ内の実圧力、射出装置7の射出圧力およびコアバック動作における移動金型12の移動距離を示す。射出圧力は、射出圧力センサS1が検出する圧力値である。
【0035】
まず、型閉動作において、移動金型12が固定金型11に接近するように移動する。移動金型12および固定金型11が接触すると、ロックアップ(型締め)開始となる。
【0036】
次に、ガス供給部120は、ロックアップ開始後のキャビティ内にガスを供給してキャビティ内の実圧力(L1)を上昇させる。
【0037】
次に、制御部8は、ガス流量計140の流量値およびガス圧力計150の圧力値に基づいて、キャビティ内の実圧力(L1)を監視する。制御部8は、ガス流量計140の流量値およびガス圧力計150の圧力値に基づいて、キャビティ内の実圧力(L1)が発泡性溶融樹脂の発泡圧力以上の圧力値に達したと判定する。
図3では、発泡性溶融樹脂の発泡圧力を0.7MPa、製品の不良が発生しづらい圧力値を1.0MPaとしている。また、製品に不良が発生しづらい0.7MPaから1.0MPaまでの範囲内の任意の圧力値として、発泡性溶融樹脂の発泡圧力以上の圧力値(第1圧力値)を1.0MPaとしている。すなわち、制御部8は、矢印Aにおいて、キャビティ内の実圧力(L1)が第1圧力値に達したと判定する。次に、ガス供給部120は、ガスの供給を止める。尚、制御部8によるキャビティ内の圧力の判定については、後で詳細に説明する。
【0038】
次に、制御部8は、ロックアップ完了及びキャビティ内の実圧力(L1)が1.0MPaに達したと判定した場合に、射出装置7に発泡性溶融樹脂を射出させる。これにより、ガス供給時間の無駄を削減して、サイクルアップすることができる。また、キャビティ内の圧力が発泡圧力以上の圧力値に達してから射出装置7が発泡性溶融樹脂を射出するため、スワールマーク等の外観異常の発生を抑制することができる。射出装置7による射出により、射出圧力(L2)が上昇する。
【0039】
次に、充填の完了前に、ガス排出部130は、キャビティ内のガスを排出させ、キャビティ内の実圧力(L1)を下げる。これは、キャビティ内のガスが断熱圧縮により高温になることを抑制し、製品の焼けを抑制するためである。また、後のコアバック動作において、発泡性溶融樹脂と金型11,12の内面との接触面におけるエア巻き込みを抑制するためでもある。尚、キャビティ内の実圧力(L1)を下げるタイミングは、例えば、射出時間またはスクリュ42の位置によって決められる。
【0040】
次に、射出成形機1は、充填完了後にコアバック動作をする。コアバック動作とは、移動金型12が固定金型11から離れるように移動することにより、キャビティ内の容積を大きくする動作である。コアバック動作により、キャビティ内の実圧力(L1)が下がる。キャビティ内の実圧力(L1)が発泡圧力である0.7MPaよりも小さくなると、未固化層の発泡性溶融樹脂は発泡し始め、未固化層の気泡を拡大させることができる。これにより、製品の軽量化および材料削減をすることができる。
【0041】
次に、
図4を参照して、制御部8によるキャビティ内の圧力の判定について説明する。
【0042】
図4は、キャビティ内の圧力、ガス圧力計150の圧力値およびガス流量計140の流量値の関係を示す模式図である。縦軸は、圧力値および流量値を示し、横軸は、ガス供給開始からの時間を示す。
図4におけるL1は、
図3におけるL1と同様に、キャビティ内の実圧力を示す。尚、キャビティ内の実圧力(L1)は、ガスの供給による圧力の上昇を示している。
図4におけるL4は、ガス圧力計150が示す圧力値を示す。L5,L6は、ガス流量計140の流量値を示す。
【0043】
ガス供給部120がガスの供給を開始すると、ガス圧力計150が示す圧力値(L4)が上昇する。さらに時間が経過すると、ガス圧力計150が示す圧力値(L4)は、1.0MPaに達する。キャビティ内の実圧力(L1)も、ガスの供給開始により上昇する。しかし、配管の圧力損失や長さにより、キャビティ内の実圧力(L1)は、ガス圧力計150が示す圧力値(L4)よりも遅れて1.0MPaに達する。すなわち、ガス圧力計150が示す圧力値(L4)が1.0MPaに達してからキャビティ内の実圧力(L1)が1.0MPaに達するまでの遅延時間が存在する。この遅延時間により、ユーザは、ガス圧力計150が示す圧力値(L4)ではキャビティ内の実圧力(L1)が1.0MPaに達したか否かを正確に判断することは難しい。
【0044】
そこで、制御部8は、ガス圧力計150が示す圧力値(L4)が1.0MPaであり、ガス流量計140の流量値(L5)が所定の条件を満たした場合に、キャビティ内の実圧力(L1)が1.0MPaに達したと判定する。例えば、ガス流量計140の流量値(L5)は、ガスの供給開始により上昇する。しかし、キャビティ内の実圧力(L1)が高くなるとキャビティ内にガスが入りづらくなる。従って、ガス流量計140の流量値(L5)は、時間の経過に伴って上昇が緩やかになり、減少する。すなわち、ガス流量計140の流量値(L5)は、ガスの供給開始によるガス流量計140の流量値の上昇と減少との間にピークを示す。さらに時間が経過すると、キャビティ内の実圧力(L1)が1.0MPaに達する。ガス供給側であるガス圧力計150が示す圧力値(L4)とキャビティ内の実圧力(L1)とが略等しくなるため、キャビティへのガスの供給が止まる。すなわち、ガス流量計140の流量値(L5)は略ゼロになる。従って、矢印Aに示すように、制御部8は、ガス流量計140の流量値(L5)がガス供給時間の経過に伴って減少して略ゼロになった場合に、キャビティ内の圧力が1.0MPaに達したと判定する。すなわち、この場合の所定の条件は、ガス流量計140の流量値(L5)がガス供給時間の経過に伴って減少して略ゼロになることである。
【0045】
キャビティからガスの漏れが存在する場合、L6に示すように、ガス流量計140の流量値(L6)は略ゼロにはならない場合がある。この場合、ガス流量計140の流量値(L6)は、漏れるガスの流量に対応する流量値となり、時間の経過に対して略一定になる。従って、矢印Aに示すように、制御部8は、ガス流量計140の流量値(L6)がガス供給時間の経過に伴って減少してガス供給時間の経過に対して略一定になった場合に、キャビティ内の実圧力(L1)が1.0MPaに達したと判定してもよい。すなわち、この場合の所定の条件は、ガス流量計140の流量値(L6)がガス供給時間の経過に伴って減少してガス供給時間の経過に対して略一定になることである。また、制御部8は、ガス流量計140の流量値(L6)がガス供給時間の経過に伴って減少してガス供給時間の経過に対して略一定になってから所定の期間が経過した場合に、キャビティ内の圧力が1.0MPaに達したと判定してもよい。すなわち、この場合の所定の条件は、ガス流量計140の流量値(L6)がガス供給時間の経過に伴って減少してガス供給時間の経過に対して略一定になってから所定の期間が経過することである。
【0046】
また、ガス供給管121においてキャビティに接続する部分(ガスゲート)は、通常、樹脂の流れ込みを抑制するために狭く設計される。このガスゲートに樹脂が詰まった場合、キャビティ内にガスが入りづらくなる。この場合、ガス流量計140の流量値(L5)が略ゼロまたは略一定になるまでの時間が延びる。また、金型11,12によっては、ガス流量計140の流量値(L5)が略ゼロまたは略一定になるまでに長い時間がかかる場合もある。従って、判定の条件に閾値を設けてもよい。例えば、制御部8は、ガス流量計の流量値(L5)がガス供給時間の経過に伴って減少して第1流量値以下になった場合に、キャビティ内の圧力が1.0MPaに達したと判定してもよい。すなわち、この場合の所定の条件は、ガス流量計の流量値(L5)がガス供給時間の経過に伴って減少して第1流量値以下になることである。
【0047】
第1流量値は、例えば、ガス流量計140の流量値(L5)のピーク値に対する所定の割合の流量値である。また、第1流量値は、ガス供給時間に対するガス流量計140の流量値(L5)の変曲点における流量値であってもよい。この変曲点は、例えば、
図4において、ガス流量計140の流量値(L5)が上に凸から下に凸になる変曲点である。
【0048】
また、制御部8は、ガス流量計140の流量値(L5)のピークが生じてから第1判定期間が経過した場合に、キャビティ内の圧力が1.0MPaに達したと判定してもよい。すなわち、この場合の所定の条件は、ガス流量計140の流量値(L5)のピークが生じてから第1判定期間が経過することである。第1判定期間とは、ガス流量計140の流量値(L5)のピークが生じてからの待ち時間である。第1判定期間は、例えば、ユーザの経験則や勘により決定される。
【0049】
判定のための所定の条件は、上記の条件を複数組み合わされてもよい。尚、組み合わされた場合の所定の条件は、複数の条件のいずれか一つが満たされることであってもよく、複数の条件の全てが満たされることであってもよい。また、ユーザは、例えば、HMI/F60を通じて所定の条件を設定する。
【0050】
以上のように、第1実施形態による射出装置7において、ガス供給部120は、型閉された固定金型11と移動金型12との間のキャビティにガスを供給する。ガス供給部120に設けられるガス流量計140は、キャビティに供給されるガスの流量を測定する。ガス供給部120に設けられるガス圧力計150は、ガス流路の圧力を測定する。制御部8は、ガス流量計140の流量値およびガス圧力計150の圧力値に基づいて、キャビティ内の圧力が発泡性溶融樹脂の発泡圧力以上の圧力値に達したと判定する。
【0051】
これにより、射出装置7は、ガス流量計140およびガス圧力計150により、キャビティ内の圧力を監視することができる。さらに、射出装置7は、キャビティ内の圧力が発泡圧力以上の圧力値に達したと判定することができる。
【0052】
もし、ガス圧力計150がキャビティ内に設けられる場合、ガス圧力計150のセンサ検知部をキャビティに面するようにする必要があるため、金型設計が複雑化してしまう。
【0053】
これに対し、第1実施形態による射出装置7では、ガス流量計140およびガス圧力計150は金型11,12の外部に設けられる。従って、金型設計を複雑化することなく、キャビティ内の圧力を判定することができる。
【0054】
第1実施形態による射出装置7は、キャビティ内の圧力を判定し、判定結果を射出開始の制御に利用する。これにより、射出装置7は、ガスゲートの詰まりが有る場合であっても、ガスの供給時間の無駄を削減して、サイクルアップすることができる。尚、ガスゲートの詰まりが無い場合であっても、同様に、ガスの供給時間の無駄を削減して、サイクルアップすることができる。
【0055】
更に、第1実施形態による射出装置7では、ガス流量計140およびガス圧力計150を制御部8に容易に接続させることができる。また、記憶部110は、ガス流量計140の流量値およびガス圧力計150の圧力値を動作記録として記憶してもよい。これにより、品質管理を容易にすることができる。
【0056】
(変形例1)
第1実施形態の変形例1は、制御部8が記憶部110に記憶された流量値に基づいてキャビティ内の圧力を判定する点で、第1実施形態とは異なる。
【0057】
記憶部110は、ガス流量計140の流量値を記憶する。
【0058】
制御部8は、ガス流量計140の流量値および記憶部110に記憶された流量値に基づいて、キャビティ内の圧力が発泡圧力以上の圧力値に達したと判定する。
【0059】
変形例1による射出成形機1のその他の構成は、第1実施形態による射出成形機1の対応する構成と同様であるため、その詳細な説明を省略する。
【0060】
射出工程においてキャビティ内の圧力が十分であれば、製品表面のスワールマーク等の外観異常は抑制される。すなわち、製品は良品となる。従って、例えば、制御部8は、キャビティ内の圧力を判定する前に、製品が良品であった場合の流量値の動作記録を記憶部110から読み出す。次に、制御部8は、ガス流量計140の流量値が、製品が良品であった場合の射出時の流量値と略一致した場合に、キャビティ内の圧力値が発泡圧力以上の圧力値に達したと判定する。すなわち、この場合の所定の条件は、ガス流量計140の流量値が、製品が良品であった場合の射出時の流量値と略一致することである。
【0061】
尚、製品が良品であった場合は、第1実施形態における判定の所定の条件に従って良品ができた場合であってもよく、ユーザの経験則や勘によりガス供給時間を決めて良品ができた場合であってもよい。
【0062】
これにより、変形例1による射出装置7は、製品が良品であった場合と同じガス流量計140の流量値において射出を開始することができる。すなわち、射出装置7は、製品が良品であった場合と同じキャビティ内の圧力において射出を開始することができる。また、射出装置7は、射出工程ごとに圧力の判定を行う必要が無くなる。
【0063】
(変形例2)
第1実施形態の変形例2は、キャビティ内の圧力が発泡圧力以上の圧力値に達したと判定される場合であっても、射出装置7に発泡性溶融樹脂を射出させないようにする点で、第1実施形態とは異なる。
【0064】
制御部8は、ガス流量計140の流量値に基づいて、射出装置7に発泡性溶融樹脂を射出させないようにする。
【0065】
変形例2による射出成形機1のその他の構成は、第1実施形態による射出成形機1の対応する構成と同様であるため、その詳細な説明を省略する。
【0066】
既述のように、ガスゲートに樹脂が詰まった場合、キャビティ内にガスが入りづらくなる。この詰まりの程度が大きくなると、ガス流量計140の流量値は、
図4に示すL1の波形とは異なる波形を示す。
【0067】
例えば、ガスゲートが完全に詰まっている場合、ガス圧力計150が示す圧力値(L4)が発泡圧力以上の圧力値に達する短時間の間に、ガス流量計140の流量値はピークを示して略ゼロまたは略一定になる。すなわち、ガス流量計140の流量値のピーク値が小さい値となる。これは、ガスがキャビティに流れず、ガスゲートまでの配管の狭い空間までしかガスが供給されないためである。従って、キャビティ内の圧力は上昇しない。このように、ガス流量計140の流量値のピーク値からガスゲートの詰まりを判定することができる。
【0068】
従って、制御部8は、ガス流量計140の流量値のピーク値が所定の下限値以下である場合、射出装置7に発泡性溶融樹脂を射出させないようにする。これにより、キャビティ内の圧力が低い状態における射出を止め、材料の無駄な消費を抑制することができる。
【0069】
また、例えば、ガスゲートが部分的に詰まっている場合、既述のように、ガス流量計140の流量値が略ゼロまたは略一定になるまでの時間が延びるようになる。従って、キャビティ内の圧力が発泡圧力以上の圧力値に達するまで時間が延びる。このように、制御部8によってキャビティ内の圧力が発泡圧力以上の圧力値に達したと判定されるまでの時間から、ガスゲートの詰まりを判定することができる。ガスゲートが部分的に詰まっている場合であっても、制御部8は、キャビティ内の圧力が発泡圧力以上の圧力値に達したと判定し得る。しかし、ガス供給時間が延びるため、サイクルタイムが延びてしまう。
【0070】
従って、制御部8は、第1タイムアウト期間内にキャビティ内の圧力が発泡圧力以上の圧力値に達したと判定しない場合、射出装置7に発泡性溶融樹脂を射出させないようにする。これにより、制御部8は、ガス供給時間が延びた場合に射出を止めることができる。尚、第1タイムアウト期間は、例えば、ガス流量計140の流量値のピークが生じてから第2タイムアウト期間が経過するまでの期間である。第2タイムアウト時間は、例えば、1サイクルの時間であり、約30秒である。
【0071】
以上のように、変形例2による制御部8は、ガス流量計140の流量値に基づいて、射出装置7に発泡性溶融樹脂を射出させないようにする。
【0072】
従来、ガス圧力計150は金型11,12の外部にあるため、ガス供給時間は、ユーザの経験則や勘によって設定されている。従って、ユーザは、ガスゲートに詰まりが生じた場合、キャビティ内の圧力が発泡圧力以上の圧力値に達したか否かを判断することができない。よって、ユーザは、製品表面のスワールマーク等の外観異常を見ることにより、ガスゲートに詰まりが生じてキャビティ内の圧力が不十分であったと判断する。
【0073】
これに対して、変形例2による射出装置7は、ガス流量計140の流量値に基づいてガスゲートの詰まりが生じたと判定する。さらに、射出装置7は、ガスゲートに詰まりが生じたと判定した場合、射出を止めることができる。これにより、材料の無駄な消費を抑制し、ガス供給時間が延びた場合に射出を止めることができる。
【0074】
また、固定金型11および移動金型12は、ガスゲートに詰まりが生じたと判定されたタイミングにおいて、メンテナンスが行われてもよい。これにより、射出装置7は、ガスゲートの詰まりに対して安定して動作することができる。
【0075】
(第2実施形態)
第2実施形態では、充填完了後のキャビティ内の圧力が或る圧力値に達した場合に、制御部8がコアバック動作を開始させる。この点で、第2実施形態は、第1実施形態とは異なる。尚、「達した」とは、上回ったことおよび下回ったことを含む。
【0076】
発泡成形法では、発泡性溶融樹脂の充填完了後に、コアバック動作が行われる。製品内部の気泡の寸法、形状等を精度良く制御するためには、適切なバレル41内の圧力およびキャビティ内の圧力となるタイミングでコアバック動作を開始させる必要がある。コアバック動作は、例えば、充填完了時、または、タイマーにより充填完了から一定期間経過した時に行われる。
【0077】
しかし、充填完了時では、バレル41内の圧力が高い。従って、コアバック動作によりキャビティ内の圧力が減少すると、発泡性溶融樹脂がバレル41からキャビティ内に流入してしまう。従って、製品内部の気泡の制御が困難になったり、製品の質量が変化してしまう。
【0078】
また、樹脂の種類や製品形状によって、発泡性溶融樹脂の固化によるキャビティ内の圧力の減少速度がばらつく場合がある。従って、タイマーを用いる場合、コアバック動作時のキャビティ内の圧力がばらつき、製品毎に製品内部の気泡の寸法、製品の質量を均一化することが難しくなってしまう。
【0079】
そこで、コアバック動作時において金型内への樹脂の流入を抑制し、かつ、製品毎に製品内部の気泡の寸法、製品の質量をより均一にすることができる射出装置および射出成形機を提供する。
【0080】
射出圧力センサS1は、キャビティに供給される流体としての発泡性溶融樹脂の射出圧力(供給圧力)を測定する。射出圧力センサS1は、例えば、スクリュ42に設けられるロードセルである。射出圧力センサS1は、測定した圧力値を制御部8に送る。
【0081】
制御部8は、射出圧力センサS1の圧力値に基づいて、キャビティ内の圧力が第2圧力値に達したと判定した場合に、型締駆動機構6にキャビティの容積を拡大させる(コアバック動作)。第2圧力値は、
図5を参照して後で説明するように、例えば、発泡圧力以上であり、発泡圧力になるべく近い圧力値である。尚、第2圧力値は、任意の圧力値であってもよい。
【0082】
第2実施形態による射出成形機1のその他の構成は、第1実施形態による射出成形機1の対応する構成と同様であるため、その詳細な説明を省略する。
【0083】
図5は、第2実施形態による射出成形機1のCP法の成形フローにおける動作を示す図である。
図5における充填完了までの動作は、
図3と同様である。既述のように、L2に示す射出圧力は、射出圧力センサS1の圧力値である。また、第2実施形態において、L4は、充填完了後の射出圧力を示す。L41およびL42は、それぞれ、減少速度が速い場合および遅い場合の射出圧力を示す。
【0084】
充填完了後、キャビティの内部からバレル41の内部までは、発泡性溶融樹脂で満たされている。従って、充填完了後の射出圧力センサS1の圧力値は、キャビティ内の圧力と略等しくなる。
【0085】
図5に示すように、充填完了後、スクリュ42は停止してキャビティ内の発泡性溶融樹脂の表面が固化するのを待つ。キャビティ内の発泡性溶融樹脂の表面が固化し始めると、キャビティ内の圧力が減少する。従って、発泡性溶融樹脂を介してキャビティ内と接続しているバレル41内の圧力も減少して、射出圧力(L4)は減少する。
【0086】
次に、射出圧力(L4)は、時間の経過とともに減少して第2圧力値に達する。射出圧力とキャビティ内の圧力とは略等しいため、制御部8は、充填後に射出圧力(L4)が減少して第2圧力値に達した場合に、型締駆動機構6にコアバック動作を開始させる。
【0087】
射出圧力(L4)の減少速度は、樹脂の種類や製品形状によって異なる。例えば、樹脂の種類や製品形状によって樹脂の固化が速い場合、キャビティ内の圧力の減少速度が大きい。この場合、L41に示すように、射出圧力の減少速度が大きくなる。一方、樹脂の固化が遅い場合、L42に示すように、射出圧力の減少速度は小さくなる。
【0088】
制御部8は、射出圧力(L4)の減少速度によらず、キャビティ内の圧力が第2圧力値に達した場合に、コアバック動作を開始させる。これにより、射出装置7は、キャビティ内の圧力の減少速度によらず、コアバック動作開始時のキャビティ内の圧力をより均一にすることができる。この結果、製品毎に製品内部の気泡の寸法、製品の質量をより均一にし、品質のばらつきを抑制した製品を安定して成形することができる。また、1サイクル毎における射出圧力のばらつきの影響を小さくすることができる。
【0089】
第2圧力値は、なるべく低い圧力値に設定されることが好ましい場合がある。例えば、第2圧力値をなるべく低い圧力値に設定することにより、コアバック動作開始時における射出圧力(L4)、すなわち、バレル41内の圧力を小さくすることができる。バレル41内の圧力と略等しいキャビティ内の圧力は、コアバック動作により減少して大気圧となる。従って、コアバック動作開始時のバレル41内の圧力を小さくすることにより、コアバック動作後の大気開放されたキャビティ内の圧力とバレル41内の圧力との圧力差を小さくすることができる。これにより、コアバック動作時にバレル41内から圧力の低いキャビティ内に樹脂が流入することを抑制することができる。樹脂がキャビティ内に流入すると、製品内部の気泡の制御が困難になったり、製品の質量が変化してしまう場合がある。従って、キャビティ内への樹脂の流入を抑制することにより、製品内部の気泡の制御が困難になったり、製品の質量が変化してしまうことを抑制することができる。
【0090】
また、CP法では、CP法を用いない場合よりも、射出圧力(L4)およびキャビティ内の圧力が高くなる。この場合、コアバック動作時のキャビティの大気解放によって製品にかかる負荷が大きくなり、製品の表面が凹むアバタやエア巻き込み等の外観不良が出る場合がある。しかし、第2圧力値をなるべく低い圧力値に設定することにより、コアバック動作開始時のキャビティ内の圧力を低くすることができる。これにより、アバタやエア巻き込み等の外観不良を抑制することができる。
【0091】
尚、第3実施形態による射出装置7は、CP法を用いない発泡成形法であってもよい。この場合、射出装置7は、ガス供給部120、ガス排出部130、ガス流量計140およびガス圧力計150を有さなくてもよい。
【0092】
また、表示部100は、射出圧力(L4)を表示してもよい。これにより、ユーザは、充填完了後のキャビティ内の圧力を知ることができる。
【0093】
また、第2圧力値は、予め設定された範囲の上限値または下限値であってもよい。このとき、射出圧力が第2圧力値に達した場合とは、射出圧力が上限値を下回る、または、射出圧力が下限値を上回る場合、すなわち、射出圧力が予め設定された範囲内に達した場合であってもよい。
【0094】
また、第2実施形態は、第1実施形態と組み合わせてもよく、単独で実施されてもよい。
【0095】
(変形例3)
第2実施形態の変形例3は、キャビティ内の圧力の判定にガス圧力計150を用いる点で、第2実施形態と異なる。尚、第1実施形態では、配管の圧力損失が大きく、ガス圧力計150を用いてキャビティ内の圧力を判定することが難しかった。これは、短時間でキャビティ内を高圧にする必要があり、キャビティ内に供給されるガスの流速が速いためである。しかし、充填完了後では、発泡性溶融樹脂の固化によるキャビティ内の圧力の減少によって、ガス供給管121からキャビティ内にガスが流れる。この場合、キャビティ内に供給されるガスの流速が遅いため、樹脂の充填前のガス供給に比べて、配管の圧力損失は小さい。従って、第2実施形態では、ガス圧力計150を用いてキャビティ内の圧力を判定することができる。
【0096】
ガス圧力計150は、キャビティに供給される流体としてのガスの供給圧力を測定する。
【0097】
制御部8は、ガス圧力計150の圧力値に基づいて、キャビティ内の圧力が第2圧力値に達した場合に、型締駆動機構6にコアバック動作させる。
【0098】
変形例3による射出成形機1のその他の構成は、第2実施形態による射出成形機1の対応する構成と同様であるため、その詳細な説明を省略する。
【0099】
発泡性溶融樹脂の充填中では、キャビティ内のガスは、図示しないガスベントによって排出され、発泡性溶融樹脂に置換される。充填完了後、キャビティの内部には発泡性溶融樹脂が満たされ、キャビティ内からガスはほぼ抜けきっている。しかし、ガス供給バルブ122は閉じられ、キャビティ内からガス圧力計150まではガスで満たされている。従って、充填完了後のガス圧力計150の圧力値は、キャビティ内の圧力と略等しくなる。すなわち、
図5において、変形例3によるガス圧力計150が示す圧力値(L4)は、第2実施形態による射出圧力(L4)とほぼ同様の振る舞いを示す。従って、
図5について、その詳細な説明を省略する。
【0100】
変形例3による射出装置7は、第2実施形態による射出装置7と同様に、キャビティ内の圧力の減少速度によらず、コアバック動作開始時のキャビティ内の圧力をより均一にすることができる。また、1サイクル毎におけるキャビティ内の圧力減少のばらつきの影響を小さくすることができる。
【0101】
尚、変形例3は、第2実施形態と組み合わせても良い。この場合、キャビティ内の圧力の判定に用いる圧力計は、第1圧力計としての射出圧力センサS1および第2圧力計としてのガス圧力計150である。例えば、制御部8は、射出圧力センサS1およびガス圧力計150のいずれか一方、または、両方が第2圧力値に達した場合に、キャビティ内の圧力が第2圧力値に達したと判定する。
【0102】
また、表示部100は、ガス圧力計150が示す圧力値(L4)を表示してもよい。これにより、ユーザは、充填完了後のキャビティ内の圧力を知ることができる。
【0103】
また、第2圧力値は、予め設定された範囲の上限値または下限値であってもよい。このとき、ガス圧力計150が示す圧力値が第2圧力値に達した場合とは、ガス圧力計150が示す圧力値が上限値を下回る、または、ガス圧力計150が示す圧力値が下限値を上回る場合、すなわち、ガス圧力計150が示す圧力値が予め設定された範囲内に達した場合であってもよい。
【0104】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0105】
1 射出成形機、6 型締駆動機構、7 射出装置、8 制御部、11 固定金型、12 移動金型、110 記憶部、120 ガス供給部、140 ガス流量計、150 ガス圧力計、S1 射出圧力センサ