(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】ハニカム構造体
(51)【国際特許分類】
B01J 35/04 20060101AFI20220711BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
B01J35/04 301A
B01J35/04 301E
F01N3/28 301P
F01N3/28 311R
B01J35/04 ZAB
(21)【出願番号】P 2018095132
(22)【出願日】2018-05-17
【審査請求日】2021-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】川上 顕史
(72)【発明者】
【氏名】古田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 光宏
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-136211(JP,A)
【文献】特開2017-164714(JP,A)
【文献】特開2017-170385(JP,A)
【文献】特開2014-180606(JP,A)
【文献】特開2015-192988(JP,A)
【文献】特開2013-173133(JP,A)
【文献】特開2016-077930(JP,A)
【文献】特開2008-200605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
B01D 39/00 - 41/04
B01D 46/00 - 46/54
B01D 53/73
B01D 53/86 - 53/96
C04B 38/00 - 38/10
F01N 3/00 - 3/38
F01N 9/00 - 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一端面から第二端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを取り囲むように配置された多孔質の隔壁を有する柱状のハニカム構造部を備え、
前記ハニカム構造部は、前記ハニカム構造部の前記セルの延びる方向に直交する断面における最外周を含む外周部と、前記外周部を除く前記断面における中央部分に配置された中央部とによって構成され
(但し、前記中央部の前記セルを取り囲む前記隔壁は、中心基本隔壁と、前記中央部と前記外周部の境界から内側に距離R1までの中心強化領域内に前記セルの開口部がすべて含まれる前記セルを囲む前記中心基本隔壁よりも平均厚さが大である中心強化隔壁と、を有するものを除き、且つ、前記外周部の前記セルを取り囲む前記隔壁は、外周基本隔壁と、前記中央部と前記外周部の境界から外側に距離R2までの外周強化領域内に前記セルの開口部がすべて含まれる前記セルを囲む前記外周基本隔壁よりも平均厚さが大である外周強化隔壁と、を有するものを除く)、
前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記セルの形状が、少なくとも1本の対称軸を有する三角形又は六角形であり、且つ、前記中央部に形成された前記セルの形状と、前記外周部に形成された前記セルの形状とが、合同又は相似形状であり、
前記セルの形状において、前記対称軸の数をAとし、前記セルの形状の頂点の数をNとし、下記式(1)に示される値をθとし、
前記中央部における前記セルの配列方向に対して、前記外周部における前記セルの配列方向が、θ-15°~θ+15°の範囲で傾いている、ハニカム構造体。
【数1】
【請求項2】
前記ハニカム構造部は、前記中央部と前記外周部との境界部分に配設された境界壁を更に有する、請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記ハニカム構造部は、前記中央部と前記外周部との境界部分が、連続する又は不連続な前記隔壁によって構成されたものである、請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記中央部に形成された前記セルの水力直径が、前記外周部に形成された前記セルの水力直径よりも小さい、請求項1~3のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記中央部のセル密度が、前記外周部のセル密度よりも大きい、請求項1~4のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項6】
前記セルの前記第一端面側又は前記第二端面側のいずれか一方の端部に配設された目封止部を更に備える、請求項1~5のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体に関する。更に詳しくは、アイソスタティック強度の低下を抑制することが可能なハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等のエンジンから排出される排ガス中に含まれるHC、CO、NOx等の有害物質の浄化処理のため、ハニカム構造体に触媒を担持したものが使用されている。また、ハニカム構造体は、多孔質の隔壁によって区画形成されたセルの開口部に目封止を施すことにより、排ガス浄化用のフィルタとしても使用されている。
【0003】
ハニカム構造体は、排ガスの流路となり複数のセルを区画形成する隔壁を有する柱状の構造体である。このようなハニカム構造体は、セルの延びる方向に直交する面において、複数のセルが、所定の周期で規則的に配列したセル構造を有している。従来は、1つのハニカム構造体において、上記面内のセル構造は、1種類であったが、近年、排ガス浄化効率の向上等を目的として、上記面内に、2種類以上のセル構造を有するハニカム構造体が提案されている。例えば、セルの延びる方向に直交する面の、中央部と外周部において、セル密度やセル形状を異ならせることにより、上記面内に、2種類以上のセル構造を有するハニカム構造体が提案されている(例えば、特許文献1~3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-177794号公報
【文献】特開2008-018370号公報
【文献】特開2000-097019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~3には、2種類以上のセル構造を有するハニカム構造体として、例えば、セルの延びる方向に直交する面内において、中央部のセル密度が高く、外周部のセル密度が低くなるように構成されたハニカム構造体等が開示されている。また、2種類以上のセル構造を有するハニカム構造体として、セルの延びる方向に直交する面内において、中央部のセル形状と外周部のセル形状とが異なるように構成されたハニカム構造体も開示されている。
【0006】
このようなハニカム構造体において、中央部におけるセルの配列方向と、外周部におけるセルの配列方向とが、相互に傾くように構成されている場合に、当該ハニカム構造体のアイソスタティック強度等の機械的強度が大きく低下してしまうという問題があった。特に、このようなハニカム構造体は、外部からの圧力や高温環境下での熱応力によって、セルを取り囲むように配設された隔壁にひずみが発生し易く、機械的強度の低下を招来する。このため、従来、2種類以上のセル構造を有するハニカム構造体は、安定した機械的強度を確保することが極めて困難であった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものである。本発明は、アイソスタティック強度の低下を抑制することが可能なハニカム構造体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、以下に示すハニカム構造体が提供される。
【0009】
[1] 第一端面から第二端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを取り囲むように配置された多孔質の隔壁を有する柱状のハニカム構造部を備え、
前記ハニカム構造部は、前記ハニカム構造部の前記セルの延びる方向に直交する断面における最外周を含む外周部と、前記外周部を除く前記断面における中央部分に配置された中央部とによって構成され(但し、前記中央部の前記セルを取り囲む前記隔壁は、中心基本隔壁と、前記中央部と前記外周部の境界から内側に距離R1までの中心強化領域内に前記セルの開口部がすべて含まれる前記セルを囲む前記中心基本隔壁よりも平均厚さが大である中心強化隔壁と、を有するものを除き、且つ、前記外周部の前記セルを取り囲む前記隔壁は、外周基本隔壁と、前記中央部と前記外周部の境界から外側に距離R2までの外周強化領域内に前記セルの開口部がすべて含まれる前記セルを囲む前記外周基本隔壁よりも平均厚さが大である外周強化隔壁と、を有するものを除く)、
前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記セルの形状が、少なくとも1本の対称軸を有する三角形又は六角形であり、且つ、前記中央部に形成された前記セルの形状と、前記外周部に形成された前記セルの形状とが、合同又は相似形状であり、
前記セルの形状において、前記対称軸の数をAとし、前記セルの形状の頂点の数をNとし、下記式(1)に示される値をθとし、
前記中央部における前記セルの配列方向に対して、前記外周部における前記セルの配列方向が、θ-15°~θ+15°の範囲で傾いている、ハニカム構造体。
【0010】
【0011】
[2] 前記ハニカム構造部は、前記中央部と前記外周部との境界部分に配設された境界壁を更に有する、前記[1]に記載のハニカム構造体。
【0012】
[3] 前記ハニカム構造部は、前記中央部と前記外周部との境界部分が、連続する又は不連続な前記隔壁によって構成されたものである、前記[1]に記載のハニカム構造体。
【0013】
[4] 前記中央部に形成された前記セルの水力直径が、前記外周部に形成された前記セルの水力直径よりも小さい、前記[1]~[3]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0014】
[5] 前記中央部のセル密度が、前記外周部のセル密度よりも大きい、前記[1]~[4]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0015】
[6] 前記セルの前記第一端面側又は前記第二端面側のいずれか一方の端部に配設された目封止部を更に備える、前記[1]~[5]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【発明の効果】
【0016】
本発明のハニカム構造体は、アイソスタティック強度の低下を抑制することができるという効果を奏するものである。即ち、本発明のハニカム構造体は、セルの形状が、少なくとも1本の対称軸を有する三角形又は六角形であり、且つ、中央部に形成されたセルの形状と、外周部に形成されたセルの形状とが、合同又は相似形状となるように構成されている。そして、本発明のハニカム構造体は、上記式(1)に示される値をθとした際に、中央部におけるセルの配列方向に対して、外周部におけるセルの配列方向が、θ-15°~θ+15°の範囲で傾いている。このように構成することによって、外部からの圧力や高温環境下での熱応力が加わった場合でも、ハニカム構造部を構成する隔壁にひずみが発生し難くなり、ハニカム構造体のアイソスタティック強度の低下を有効に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すハニカム構造体の第一端面を模式的に示す平面図である。
【
図3】
図2のA-A’断面を模式的に示す、断面図である。
【
図4】本発明のハニカム構造体の他の実施形態の第一端面を模式的に示す平面図である。
【
図5】本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態の第一端面を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。しかし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し適宜変更、改良等が加えられ得ることが理解されるべきである。
【0019】
(1)ハニカム構造体:
図1~
図3に示すように、本発明のハニカム構造体の一の実施形態は、多孔質の隔壁1を有する柱状のハニカム構造部4を備えた、ハニカム構造体100である。
図1~
図3に示すハニカム構造部4は、多孔質の隔壁1、及びこの隔壁1の外周を囲繞するように配設された外周壁3を有する。ハニカム構造部4の隔壁1は、第一端面11から第二端面12まで延びる流体の流路となる複数のセル2を区画形成している。即ち、隔壁1は、複数のセル2を取り囲むように配置されている。
【0020】
本実施形態のハニカム構造体100は、ハニカム構造部4が、以下のように構成されている点に特徴を有する。即ち、ハニカム構造部4は、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に直交する断面における最外周を含む外周部16と、外周部16を除く上記断面における中央部分に配置された中央部15とによって構成されている。そして、セル2の延びる方向に直交する断面において、セル2の形状が、少なくとも1本の対称軸を有する三角形又は六角形であり、且つ、中央部15に形成されたセル2aの形状と、外周部16に形成されたセル2bの形状とが、合同又は相似形状である。
図1~
図3に示すハニカム構造体100においては、セル2の延びる方向に直交する断面における「セル2の形状」は、正六角形である。また、
図1~
図3に示すハニカム構造体100において、中央部15に形成されたセル2aの形状と、外周部16に形成されたセル2bの形状とが、相似形状である。
【0021】
本明細書において、「セル2の形状」とは、当該セル2の周囲の全てが隔壁1によって囲われている場合の形状を意味する。以下、セル2の周囲の全てが隔壁1によって囲われているセル2のことを、「完全セル」ということがある。一方、セル2の周囲の全てが隔壁1によって囲われておらず、セル2の一部が外周壁3や境界壁5によって区画されているセル2のことを、「不完全セル」ということがある。例えば、
図2に示すように、外周壁3の近傍に形成されたセル2bは、その一部が外周壁3によって区画されている。このような不完全セルについては、セル2の形状が、三角形又は六角形でなくともよい。
【0022】
更に、本実施形態のハニカム構造体100においては、下記式(1)に示される値をθとした場合に、中央部15におけるセル2aの配列方向L1に対して、外周部16におけるセル2bの配列方向L2が、θ-15°~θ+15°の範囲で傾いている。下記式(1)において、Aは、セル2の形状における対称軸の数(本)を示し、Nは、セル2の形状の頂点の数(個)を示す。
図1~
図3においては、セル2の形状における対称軸の数は6本(対向する各頂点同士を結ぶ3本と、対向する各辺の中点同士を結ぶ3本)、セル2の形状の頂点の数は6個である。従って、下記式(1)のθの値は、30°である。そして、
図1~
図3に示すハニカム構造体100は、上記配列方向L1に対して、上記配列方向L2が30°傾いている場合を示している。以下、中央部15におけるセル2aの配列方向L1と、外周部16におけるセル2bの配列方向L2とのなす角を、「角θ1」とする。
【0023】
【0024】
上述したように構成されたハニカム構造体100は、アイソスタティック強度の低下を抑制することができるという効果を奏するものである。即ち、ハニカム構造体100は、外部からの圧力や高温環境下での熱応力が加わった場合でも、ハニカム構造部4を構成する隔壁1にひずみが発生し難くなり、ハニカム構造体100のアイソスタティック強度の低下を有効に抑制することができる。
【0025】
ここで、
図1は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図2は、
図1に示すハニカム構造体の第一端面を模式的に示す平面図である。
図3は、
図2のA-A’断面を模式的に示す、断面図である。
図1~
図3において、符号1aは、ハニカム構造部4の中央部15を構成する隔壁1aを示す。符号1bは、ハニカム構造部4の外周部16を構成する隔壁1bを示す。
【0026】
図1~
図3に示すハニカム構造体100において、配列方向L1に対して、配列方向L2が平行又はその傾きがθ-15°未満であると、外部からの圧力や高温環境下での熱応力が加わった場合に、ハニカム構造部4を構成する隔壁1にひずみが発生し易くなる。また、配列方向L1に対して、配列方向L2の方向がθを超えた場合は、θを境に対称な配置となる。このため、配列方向L1に対して、配列方向L2の傾きがθ+15°を超える際も、外部からの圧力や高温環境下での熱応力が加わった場合に、ハニカム構造部4を構成する隔壁1にひずみが発生し易くなる。
【0027】
なお、本発明のハニカム構造体においては、セルの形状が三角形又は六角形であり、且つ、中央部に形成されたセルの形状と、外周部に形成されたセルの形状とが、合同又は相似形状である。このため、中央部におけるセルの配列方向L1と、外周部におけるセルの配列方向L2とのそれぞれは、3軸又は6軸の配列方向を有する。このため、配列方向L1に対する配列方向L2の傾きの最大値は、例えば、セルの形状が正六角形の場合は、30°となる。30°を超えた場合は、対称となる。
【0028】
ここで、
図2に示すように、「中央部15におけるセル2aの配列方向L1」とは、セル2aが中央部15において一列に並んで配置されている状態において、当該セル2aによって構成される列の延びる方向のことを意味する。また、「外周部16におけるセル2bの配列方向L2」とは、セル2bが外周部16において一列に並んで配置されている状態において、当該セル2bによって構成される列の延びる方向のことを意味する。ここで、中央部15と外周部16において、それぞれのセル2a,2bの形状は、合同又は相似形状である。このため、合同又は相似形状のセル2a,2bにおいて、配列方向L1と配列方向L2とについては、相互に対応する配列方向とする。
【0029】
配列方向L1及び配列方向L2は、例えば、ハニカム構造部4の第一端面11又は第二端面12を撮像装置により撮像し、撮像した画像を画像解析することによって求めることができる。撮像した画像の画像解析は、例えば、ニコン社製の商品名「NEXIV、VMR-1515」の画像処理ソフトを用いることができる。また、配列方向L1に対する配列方向L2の傾きの大きさ(即ち、角θ1)についても、上記した画像処理ソフトを用いて求めることができる。また、セル2の形状における対称軸の有無及び本数についても、上記した画像処理ソフトを用いて求めることができる。なお、本発明において、「対称」とは、上記した画像処理ソフトによる画像解析において、撮像した画像における端面の重心を通る直線を対称軸とした際に、対称関係にある相互の面積一致率が90%以上となることをいう。なお、「対称軸」は、撮像した画像における端面の重心を通る直線の角度(別言すれば、直線の延びる方角)を変数とし、対称関係にある相互の面積一致率が極大値となるものとする。
【0030】
なお、配列方向L1及び配列方向L2のそれぞれの方向の特定については、中央部15と外周部16とで同一基準によって方向を特定する限りにおいて、上述した方法以外の方法で、各方向を特定してもよい。例えば、
図5に示すハニカム構造体300においては、セル42(42a,42b)の形状が三角形であり、セル42の延びる方向に直交する面において、中央部55及び外周部56を横断するように隔壁41(41a,41b)が配設されている。このような場合には、中央部55及び外周部56において、それぞれの隔壁41(41a,41b)が延びる方向を、配列方向L1及び配列方向L2としてもよい。また、特に限定されることはないが、例えば、「少なくとも1つの対称軸」と「配列方向L1」とが、直交する位置関係であることが好ましい。なお、
図5に示すハニカム構造体300の詳細については後述する。
【0031】
中央部15におけるセル2aの配列方向L1に対する、外周部16におけるセル2bの配列方向L2の傾きは、θ-15°~θ+15°の範囲であるが、θ-10°~θ+10°の範囲であることが好ましく、θ-5°~θ+5°の範囲であることが更に好ましい。このように構成することによって、外部からの圧力や高温環境下での熱応力が加わった場合に、ハニカム構造部4を構成する隔壁1にひずみが更に発生し難くなる。したがって、ハニカム構造体100のアイソスタティック強度の低下をより有効に抑制することができる。
【0032】
図1~
図3に示すハニカム構造体100は、ハニカム構造部4が、中央部15と外周部16との境界部分に、多孔質の境界壁5を有している。したがって、ハニカム構造体100においては、境界壁5よりも内側の領域が、中央部15となっている。このような境界壁5を有することにより、ハニカム構造体100のアイソスタティック強度を向上させることができる。
【0033】
また、図示は省略するが、ハニカム構造部の中央部と外周部との境界部分が、連続する又は不連続な隔壁によって構成されたものであってもよい。即ち、本実施形態のハニカム構造体は、例えば、
図2に示すような境界壁5を有していなくともよい。このようなハニカム構造体は、例えば、
図2における中央部15と外周部16との境界付近において、中央部15を構成する隔壁1aと、外周部16を構成する隔壁1bとが、相互に連続する又は一部途切れた不連続な状態で、セル2a及びセル2bを取り囲むように配設されることとなる。
【0034】
次に、本発明のハニカム構造体の他の実施形態について、
図4を参照しつつ説明する。
図4は、本発明のハニカム構造体の他の実施形態の第一端面を模式的に示す平面図である。
図4に示すように、ハニカム構造体200は、多孔質の隔壁21(21a,21b)を有する柱状のハニカム構造部24を備えたものである。
図4に示すハニカム構造部24は、多孔質の隔壁21、及びこの隔壁21の外周を囲繞するように配設された外周壁23を有する。ハニカム構造部24の隔壁21は、第一端面31から第二端面(図示せず)まで延びる流体の流路となる複数のセル22を区画形成している。
【0035】
図4に示すハニカム構造体200においても、ハニカム構造部24は、セル22の延びる方向に直交する断面における最外周を含む外周部36と、外周部36を除く上記断面における中央部分に配置された中央部35とによって構成されている。そして、セル22の延びる方向に直交する断面において、セル22の形状が正六角形である。
図4に示すハニカム構造体200においては、中央部35に形成されたセル22aの形状と、外周部36に形成されたセル22bの形状とが、合同となっている。そして、本実施形態のハニカム構造体200においても、中央部35におけるセル22aの配列方向L1に対して、外周部36におけるセル22bの配列方向L2が、θ-15°~θ+15°の範囲で傾いている。
図4に示すハニカム構造体200においては、中央部35におけるセル22aの配列方向L1と、外周部36におけるセル22bの配列方向L2とのなす角θ2が、30°となっている。
図4において、符号25は、中央部35と外周部36との境界部分に配設された境界壁を示す。
【0036】
このように構成されたハニカム構造体200も、アイソスタティック強度の低下を抑制することができるという効果を奏するものである。即ち、ハニカム構造体200は、外部からの圧力や高温環境下での熱応力が加わった場合でも、ハニカム構造部24を構成する隔壁21にひずみが発生し難くなり、ハニカム構造体200のアイソスタティック強度の低下を有効に抑制することができる。
【0037】
次に、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態について、
図5を参照しつつ説明する。
図5は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態の第一端面を模式的に示す平面図である。
図5に示すように、ハニカム構造体300は、多孔質の隔壁41(41a,41b)を有する柱状のハニカム構造部44を備えたものである。
図5に示すハニカム構造部44は、多孔質の隔壁41、及びこの隔壁41の外周を囲繞するように配設された外周壁43を有する。ハニカム構造部44の隔壁41は、第一端面51から第二端面(図示せず)まで延びる流体の流路となる複数のセル42を区画形成している。
【0038】
図5に示すハニカム構造体300においても、ハニカム構造部44は、セル42の延びる方向に直交する断面における最外周を含む外周部56と、外周部56を除く上記断面における中央部分に配置された中央部55とによって構成されている。
図5に示すハニカム構造体300においては、セル42の延びる方向に直交する断面において、セル42の形状が正三角形である。
図5に示すハニカム構造体300においては、中央部55に形成されたセル42aの形状と、外周部56に形成されたセル42bの形状とが、相似形状となっている。ハニカム構造体300においても、中央部55におけるセル42aの配列方向L1に対して、外周部56におけるセル42bの配列方向L2が、θ-15°~θ+15°の範囲で傾いている。
図5に示すハニカム構造体300においては、中央部55におけるセル42aの配列方向L1と、外周部56におけるセル42bの配列方向L2とのなす角θ3が、30°となっている。
図5において、符号45は、中央部55と外周部56との境界部分に配設された境界壁を示す。
【0039】
このように構成されたハニカム構造体300も、アイソスタティック強度の低下を抑制することができるという効果を奏するものである。即ち、ハニカム構造体300は、外部からの圧力や高温環境下での熱応力が加わった場合でも、ハニカム構造部44を構成する隔壁41にひずみが発生し難くなり、ハニカム構造体300のアイソスタティック強度の低下を有効に抑制することができる。
【0040】
図1~
図3に示すように、中央部15に形成されたセル2aの形状と、外周部16に形成されたセル2bの形状とが、相似形状である場合、中央部15に形成されたセル2
aの水力直径が、外周部16を構成するセル2bの水力直径よりも小さいことが好ましい。このように構成することによって、セル2の延びる方向に直交する面において、排ガスを外周部16に流入させ易くすることができ、ハニカム構造体100と排ガスを効率よく接触させて浄化することができる。なお、中央部15に形成されたセル2aの形状と、外周部16に形成されたセル2bの形状とが、相似形状である場合、中央部15におけるセル2aの配列と、外周部16におけるセル2bの配列とについても、相似形状となる。
【0041】
中央部15に形成されたセル2aの水力直径は、0.60~1.30mmであることが好ましく、0.80~1.20mmであることが更に好ましい。そして、中央部15に形成されたセル2aの水力直径と、外周部16に形成されたセル2bの水力直径とを比較した場合には、以下の関係を満たすことが好ましい。即ち、外周部16に形成されたセル2bの水力直径に対して、中央部15に形成されたセル2aの水力直径の値が5~40%小さいことが好ましく、10~30%小さいことが更に好ましい。中央部15に形成されたセル2aの水力直径は、セル2の延びる方向に直交する面における中央部15に形成された各セル2aの断面(別言すれば、各セル2aの流路断面)と等価な円管の直径である。
【0042】
図1~
図3に示すように、中央部15に形成されたセル2aの形状と、外周部16に形成されたセル2bの形状とが、相似形状である場合、中央部15のセル密度が、外周部16のセル密度よりも大きいことが好ましい。このように構成することによって、セル2の延びる方向に直交する面において、排ガスを外周部16のセル2bに流入させ易くすることができ、ハニカム構造体100と排ガスを効率よく接触させて浄化することができる。
【0043】
中央部15のセル密度は、20~170個/cm2であることが好ましく、30~150個/cm2であることが更に好ましい。中央部15のセル密度が20個/cm2未満であると、ハニカム構造体100の強度を確保し難くなることや、排ガスを外周部16に流入させることが難しくなることがある。また、中央部15のセル密度が170個/cm2を超えると、ハニカム構造体100の圧損が増大することや、触媒を担持した場合に、担持した触媒によってセル2の目詰まりが発生し易くなることがある。
【0044】
外周部16のセル密度は、10~130個/cm2であることが好ましく、20~100個/cm2であることが更に好ましい。外周部16のセル密度が10個/cm2未満であると、ハニカム構造体100の強度が不足することがある。また、外周部16のセル密度が130個/cm2を超えると、ハニカム構造体100の圧損が増大することや、触媒を担持した場合に、担持した触媒によってセル2の目詰まりが発生し易くなることがある。
【0045】
セル2の延びる方向に直交する断面において、中央部15及び外周部16におけるセル2の形状が六角形である場合、この六角形は、少なくとも1つの対称軸を有する六角形である。このような六角形としては、正六角形、又は、正六角形を一軸方向に拡大若しくは縮小した長六角形を挙げることができる。このような六角形とすることにより、中央部15及び外周部16にて、複数のセル2の繰り返しによって構成されるセル2の配列が、直線状となり易い。なお、中央部15に形成されたそれぞれのセル2aの形状は、同一形状であり、外周部16に形成されたそれぞれのセル2bの形状は、同一形状であることが好ましい。
【0046】
図5に示すように、セル42の延びる方向に直交する断面において、中央部55及び外周部56におけるセル42の形状が三角形である場合、この三角形は、正三角形、及び正三角形以外の二等辺三角形である。このような三角形とすることにより、中央部55及び外周部56にて、複数のセル42の繰り返しによって構成されるセル42の配列が、直線状となり易い。なお、中央部55に形成されたそれぞれのセル42aの形状は、同一形状であり、外周部56に形成されたそれぞれのセル42bの形状は、同一形状であることが好ましい。
【0047】
図1~
図3に示すようなハニカム構造体100において、セル2の延びる方向に直交する断面における中央部15の大きさについては特に制限はない。例えば、セル2の延びる方向に直交する断面におけるハニカム構造部4の全面積に対して、中央部15の面積が、30~70%であることが好ましく、40~60%であることが更に好ましい。セル2の延びる方向に直交する断面におけるハニカム構造部4の全面積、及び中央部15の面積は、当該断面におけるセル2の開口部分の面積を含めた面積である。
【0048】
中央部15における隔壁1の厚さは、0.02~0.15mmであることが好ましく、0.05~0.10mmであることが更に好ましい。中央部15における隔壁1の厚さが薄すぎると、ハニカム構造体100の強度が確保し難くなることや、排ガスを外周部16に流入させることが難しくなることがある。中央部15における隔壁1の厚さが厚すぎると、ハニカム構造体100の圧損が増大することや、触媒を担持した場合に、担持した触媒によってセル2の目詰まりが発生し易くなることがある。
【0049】
外周部16における隔壁1の厚さは、0.05~0.20mmであることが好ましく、0.07~0.15mmであることが更に好ましい。外周部16における隔壁1の厚さが薄すぎると、ハニカム構造体100の強度が確保し難くなることがある。外周部16における隔壁1の厚さが厚すぎると、ハニカム構造体100の圧損が増大することや、触媒を担持した場合に、担持した触媒によってセル2の目詰まりが発生し易くなることがある。
【0050】
外周壁3の厚さは、0.1~1.0mmであることが好ましく、0.2~0.7mmであることが更に好ましい。外周壁3の厚さが薄すぎると、ハニカム構造体100全体の機械的強度が低下してしまう点で好ましくない。外周壁3の厚さが厚すぎると、ハニカム構造体100のセル2の開口面積が減少し、圧損が増大することがある点で好ましくない。
【0051】
隔壁1は、セラミックを含む材料によって構成されたものであることが好ましい。隔壁1を構成する材料は、例えば、炭化珪素、珪素-炭化珪素複合材料、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素-コージェライト複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、アルミニウムチタネートから構成される群より選択される少なくとも一種のセラミックを含むものであることが好ましい。
【0052】
境界壁5は、隔壁1を構成する材料と同じものであることが好ましい。また、外周壁3は、隔壁1を構成する材料と同じものであることが好ましい。本実施形態のハニカム構造体100は、隔壁1、境界壁5、及び外周壁3が、一度の押出成形によって形成された一体成形品であることが特に好ましい。
【0053】
ハニカム構造部4の隔壁1の気孔率が、5~60%であることが好ましく、10~50%であることが更に好ましく、20~40%であることが特に好ましい。隔壁1の気孔率が5%未満であると、ハニカム構造体100をフィルタとして使用した際に、圧力損失が増大することがある。隔壁1の気孔率が60%を超えると、ハニカム構造体100の強度が不十分となり、排ガス浄化装置に用いられる缶体内にハニカム構造体100を収納する際に、ハニカム構造体100を十分な把持力で保持することが困難になることがある。隔壁1の気孔率は、水銀ポロシメータ(Mercury porosimeter)によって計測された値とする。水銀ポロシメータとしては、例えば、Micromeritics社製のAutopore 9500(商品名)を挙げることができる。
【0054】
ハニカム構造体100の全体形状については特に制限はない。本実施形態のハニカム構造体100の全体形状は、第一端面11及び第二端面12の形状が、円形、又は楕円形であることが好ましく、特に、円形であることが好ましい。また、ハニカム構造体100の大きさは、特に限定されないが、第一端面11から第二端面12までの長さが、25~200mmであることが好ましい。また、ハニカム構造体100の全体形状が円柱状の場合、ハニカム構造体100の端面の直径が、50~200mmであることが好ましい。
【0055】
本実施形態のハニカム構造体100は、内燃機関の排ガス浄化用の部材として好適に用いることができる。例えば、排ガス浄化用の触媒を担持するための触媒担体として好適に利用することができる。本実施形態のハニカム構造体100は、ハニカム構造部4の隔壁1の表面及び隔壁1の細孔のうちの少なくとも一方に、排ガス浄化用の触媒が担持されたものであってもよい。
【0056】
また、図示は省略するが、本実施形態のハニカム構造体は、隔壁によって取り囲まれたセルのいずれか一方の端部に配設された目封止部を、更に備えたものであってもよい。すなわち、目封止部は、セルの流入側又は流出側のいずれか一方の端部に配設され、当該セルの片側の端部を封止するものである。目封止部を更に備えたハニカム構造体は、排ガス中の粒子状物質を除去するフィルタとして利用することができる。
【0057】
(2)ハニカム構造体の製造方法:
次に、本発明のハニカム構造体を製造する方法について説明する。
【0058】
まず、ハニカム構造部を作製するための可塑性の坏土を作製する。ハニカム構造部を作製するための坏土は、原料粉末として、前述の隔壁の好適な材料群の中から選ばれた材料に、適宜、バインダ等の添加剤、及び水を添加することによって作製することができる。
【0059】
次に、作製した坏土を押出成形することにより、複数のセルを区画形成する隔壁、及び最外周に配設された外周壁を有する、柱状のハニカム成形体を得る。押出成形においては、押出成形用の口金として、坏土の押出面に、成形するハニカム成形体の反転形状となるスリットが形成されたものを用いることができる。特に、本発明のハニカム構造体を製造する際には、押出成形用の口金として、押出成形するハニカム成形体の中央部分と外周部分とで、それぞれのセルの配列がθ-15°~θ+15°の範囲で傾くようにスリットが形成されたものを用いることが好ましい。
【0060】
得られたハニカム成形体を、例えば、マイクロ波及び熱風で乾燥してもよい。また、ハニカム成形体の製造に用いた材料と同様の材料で、セルの開口部を目封止することで目封止部を配設してもよい。
【0061】
次に、得られたハニカム成形体を焼成することにより、ハニカム構造体を得る。焼成温度及び焼成雰囲気は原料により異なり、当業者であれば、選択された材料に最適な焼成温度及び焼成雰囲気を選択することができる。なお、本発明のハニカム構造体を製造する方法は、これまでに説明した方法に限定されることはない。
【実施例】
【0062】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に
限定されるものではない。
【0063】
(実施例1)
コージェライト化原料100質量部に、分散媒を35質量部、有機バインダを6質量部、分散剤を0.5質量部、それぞれ添加し、混合、混練して坏土を調製した。コージェライト化原料としては、アルミナ、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク、及びシリカを使用した。分散媒としては水を使用し、造孔材としては平均粒子径1~10μmのコークスを使用し、有機バインダとしてはヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用し、分散剤としてはエチレングリコールを使用した。
【0064】
次に、ハニカム成形体作製用の口金を用いて坏土を押出成形し、全体形状が円柱形のハニカム成形体を得た。押出成形においては、押出成形用の口金として、その押出面に、正六角形の格子状のスリットが形成された口金を用いた。口金に形成された正六角形の格子状のスリットは、押出成形するハニカム成形体の中央部と外周部とで、相似形状の正六角形となっていた。また、正六角形の格子状のスリットは、押出成形するハニカム成形体の中央部と外周部とで、それぞれのセルの配列が15°傾くように形成されていた。
【0065】
次に、得られたハニカム成形体をマイクロ波乾燥機で乾燥し、更に熱風乾燥機で完全に乾燥させた後、ハニカム成形体の両端面を切断し、所定の寸法に整えた。
【0066】
次に、乾燥したハニカム成形体を、脱脂し、焼成して、実施例1のハニカム構造体を製造した。実施例1のハニカム構造体は、端面の直径が118mmの円柱状であった。このハニカム構造体は、セルの延びる方向の長さが118mmであった。
【0067】
実施例1のハニカム構造体は、セルの延びる方向に直交する面において、中央部に形成されたセルの形状と、外周部に形成されたセルの形状とが、共に六角形であった。ただし、中央部に形成されたセルの形状と、外周部に形成されたセルの形状とが、相似形状であり、中央部におけるセルの配列方向と、外周部におけるセルの配列方向とのなす角が、30°であった。表1の「セル配列のなす角(°)」の欄に、中央部におけるセルの配列方向と、外周部におけるセルの配列方向とのなす角の大きさを示す。また、実施例1のハニカム構造体における、セルの形状の「対称軸の数(本)」及び「式(1)のθの値」を、表1に示す。
【0068】
実施例1のハニカム構造体の中央部は、ハニカム構造部の端面において、円形状であり、その直径が83mmであった。この中央部は、隔壁の厚さが0.090mmであり、セル密度が81個/cm2であった。また、実施例1のハニカム構造体の外周部は、隔壁の厚さが0.115mmであり、セル密度が54個/cm2であった。表1の「中央部」の欄に、中央部の隔壁の厚さ、セル密度、及び中央部の直径を示す。表1の「外周部」の欄に、外周部の隔壁の厚さ、セル密度、及び外周部の直径(別言すれば、ハニカム構造体の外径)を示す。
【0069】
【0070】
(実施例2~3及び比較例1~2)
中央部におけるセルの配列方向と、外周部におけるセルの配列方向とのなす角の大きさを表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~3、及び比較例1~2のハニカム構造体を製造した。
【0071】
実施例1~3及び比較例1~2のハニカム構造体について、以下の方法で、アイソスタティック強度の評価を行った。結果を表1に示す。
【0072】
[アイソスタティック強度]
中央部におけるセルの配列方向に対して、外周部におけるセルの配列方向が揃っているハニカム構造体のアイソスタティック強度を基準とし、アイソスタティック強度の向上率によって下記の評価とする。例えば、実施例1~3及び比較例1~2についての評価を行う場合は、基準となるハニカム構造体は、比較例1のハニカム構造体となる。
評価A:基準に対し、アイソスタティック強度の向上率が20%以上の場合を優とし、評価Aとする。
評価B:基準に対し、アイソスタティック強度の向上率が10%以上の場合を良とし、評価Bとする。
評価C:基準に対し、アイソスタティック強度の向上率が0%より大きく10%未満の場合を可とし、評価Cとする。
評価D:基準に対し、アイソスタティック強度の向上率が見られない場合を不可とし、評価Dとする。
【0073】
(実施例4~5及び比較例3~4)
実施例4~5及び比較例3~4においては、中央部に形成されたセルの形状と、外周部に形成されたセルの形状とが、合同形状となるようにハニカム構造体を作製した。実施例4~5及び比較例3~4のハニカム構造体の中央部及び外周部の、隔壁の厚さ、セル密度を表1に示す。
【0074】
(実施例6~7及び比較例5~6)
実施例6~7及び比較例5~6においては、中央部に形成されたセルの形状と、外周部に形成されたセルの形状とが、合同形状となるようにハニカム構造体を作製した。ただし、セルの形状については、正六角形を一軸方向に縮小した長六角形に変更した。この長六角形は、2種類の長さの辺からなる六角形である。実施例6~7及び比較例5~6のハニカム構造体の中央部及び外周部の、隔壁の厚さ、セル密度を表1に示す。
【0075】
(実施例8~10及び比較例7~8)
実施例8~10及び比較例7~8においては、中央部に形成されたセルの形状と、外周部に形成されたセルの形状とが、相似形状の正三角形となるようにハニカム構造体を作製した。実施例8~10及び比較例7~8のハニカム構造体の中央部及び外周部の、隔壁の厚さ、セル密度を表2に示す。
【0076】
【0077】
(実施例11~12及び比較例9~10)
実施例11~12及び比較例9~10においては、中央部に形成されたセルの形状と、外周部に形成されたセルの形状とが、合同形状の正三角形となるようにハニカム構造体を作製した。実施例11~12及び比較例9~10のハニカム構造体の中央部及び外周部の、隔壁の厚さ、セル密度を表2に示す。
【0078】
(実施例13~15及び比較例11~12)
実施例13~15及び比較例11~12においては、中央部に形成されたセルの形状と、外周部に形成されたセルの形状とが、相似形状の二等辺三角形となるようにハニカム構造体を作製した。実施例13~15及び比較例11~12のハニカム構造体の中央部及び外周部の、隔壁の厚さ、セル密度を表2に示す。二等辺三角形は、頂角の角度が30°となる三角形とした。
【0079】
(実施例16~18及び比較例13~14)
実施例16~18及び比較例13~14においては、中央部に形成されたセルの形状と、外周部に形成されたセルの形状とが、相似形状の正六角形となるようにハニカム構造体を作製した。実施例16~18及び比較例13~14のハニカム構造体の中央部及び外周部の、隔壁の厚さ、セル密度を表2に示す。実施例16~18及び比較例13~14においては、中央部と外周部との境界に境界壁を設けず、中央部と外周部とが連続する隔壁によって構成されたものとした。
【0080】
なお、実施例4~18及び比較例3~14のハニカム構造体の製造については、これまでに説明した各セルの形状に対応したスリットが形成された口金を用いて押出成形を行ったこと以外は、実施例1と同様の方法によって行った。
【0081】
実施例4~18及び比較例3~14のハニカム構造体についても、実施例1と同様の方法で、アイソスタティック強度の評価を行った。結果を表1及び表2に示す。なお、各評価におけるアイソスタティック強度の基準は、同じセル形状の実施例毎に、比較例3,5,7,9,11,13とした。
【0082】
(結果)
表1及び表2に示す結果から分かるように、実施例1~18のハニカム構造体は、アイソスタティック強度の評価において良好な結果を示すものであった。一方、比較例2,4,6,8,10,12,14のハニカム構造体は、基準となるハニカム構造体に対し、アイソスタティック強度の向上が見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明のハニカム構造体は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等から排出される排ガスを浄化するための触媒を担持する触媒担体や、排ガスを浄化するためのフィルタとして利用することができる。
【符号の説明】
【0084】
1,1a,1b,21,21a,21b,41,41a,41b:隔壁、2,22,42:セル、2a,22a,42a:セル(中央部のセル)、2b,22b,42b:セル(外周部のセル)、3,23,43:外周壁、4,24,44:ハニカム構造部、5,25,45:境界壁、11,31,51:第一端面、12:第二端面、100,200,300:ハニカム構造体、L1:中央部におけるセルの配列方向、L2:外周部におけるセルの配列方向、θ1,θ2,θ3:角(中央部におけるセルの配列方向と、外周部におけるセルの配列方向とのなす角)。