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特許7102238樹脂成形装置および樹脂成形品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】樹脂成形装置および樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/26 20060101AFI20220711BHJP
   B29C 33/12 20060101ALI20220711BHJP
   B29C 45/02 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
B29C45/26
B29C33/12
B29C45/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018110281
(22)【出願日】2018-06-08
(65)【公開番号】P2019209665
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 高史
(72)【発明者】
【氏名】尾川 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】金丸 浩之
(72)【発明者】
【氏名】熊見 裕樹
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-132336(JP,A)
【文献】特開2004-253412(JP,A)
【文献】特開2006-049697(JP,A)
【文献】特開平01-201927(JP,A)
【文献】実開平03-110845(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B29C 33/00-33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属部分を含む成形対象物をトランスファー成形する樹脂成形装置であって、
上成形型と、
前記上成形型に対向し、キャビティを含む下成形型と、
前記成形対象物を前記上成形型と前記下成形型との間に搬送する搬送機構と、
前記成形対象物の前記金属部分に対応する位置に設けられ、前記下成形型の上面から突出可能な第1の突出部材と、
前記キャビティの底面から突出可能な第2の突出部材と、
前記下成形型の上面からの前記第1の突出部材の突出量と前記キャビティの底面からの前記第2の突出部材の突出量とを独立して制御可能な駆動機構と、
前記下成形型を加熱可能な加熱機構とを備え、
前記第1の突出部材は、前記搬送機構から前記成形対象物を受け渡されて前記金属部分を支持した状態で下方に駆動して前記成形対象物を前記下成形型に載置することが可能な、樹脂成形装置。
【請求項2】
前記駆動機構は、
第1の傾斜面を有する上楔部材と、
前記第1の傾斜面と対向する第2の傾斜面を有する下楔部材と、
前記第1の傾斜面と前記第2の傾斜面とが互いに摺動可能な状態で前記下楔部材を水平方向に移動させることが可能な駆動部とを含み、
前記下楔部材の水平方向の移動に伴なって前記上楔部材が鉛直方向に移動し、
前記第1の突出部材は前記上楔部材上に配置される、請求項1に記載の樹脂成形装置。
【請求項3】
搬送機構を用いて金属部分および位置決め穴を含む成形対象物を上成形型と下成形型の間に搬送する工程と、
前記下成形型の上面から突出部材を突出させる工程と、
前記成形対象物の前記位置決め穴の位置と前記下成形型に設けられた位置決め部材の位置とを合わせた状態で、前記下成形型の上面から突出した前記突出部材に前記搬送機構から前記成形対象物を受け渡す工程と、
前記突出部材で前記成形対象物の前記金属部分を支持した状態で、前記突出部材を下方に駆動して前記成形対象物を前記下成形型に載置する工程と、
前記上成形型と前記下成形型とを型締めして前記成形対象物をトランスファー成形する工程と、
前記上成形型と前記下成形型とを型開きする工程とを含む、樹脂成形品の製造方法。
【請求項4】
前記成形対象物を前記載置する工程は、前記突出部材で前記成形対象物の前記金属部分を支持した状態を一定時間維持してから、前記突出部材を下方に駆動して前記成形対象物を前記下成形型に載置する、請求項3に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項5】
前記下成形型の上面から前記突出部材を突出させる工程は、第1の傾斜面を有する上楔部材と、前記第1の傾斜面と対向する第2の傾斜面を有する下楔部材とを含む機構を用いて、前記第1の傾斜面と前記第2の傾斜面とを互いに摺動させながら前記下楔部材を第1の水平方向に移動させることに伴なって前記上楔部材を上昇させ、前記上楔部材上に配置された前記突出部材を上方に駆動することを含む、請求項3または請求項4に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項6】
前記突出部材を下方に駆動して前記成形対象物を前記下成形型に載置する工程は、前記下楔部材を前記第1の水平方向とは反対の第2の水平方向に移動させることに伴なって前記上楔部材を下降させ、前記上楔部材上に配置された前記突出部材を下方に駆動することを含む、請求項5に記載の樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形装置および樹脂成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被搬送物を樹脂成形装置の金型の所定位置まで搬送する搬送機構が知られている。
たとえば、特許6094781号公報(特許文献1)には、被搬送物であるリードフレームの位置を所要位置に決める位置決めピンを有する搬送機構と、搬送機構の位置決めピンの先端と当接可能な案内部材を有する下金型とが開示されている(段落[0017]、[0018]、[0022]等)。
【0003】
また、特開2012-44139号公報(特許文献2)には、被成形物である半導体ウエハをモールディング部分のキャビティからリリースするのを補助する力を提供する突き出しピン上に半導体ウエハを載置した後、その半導体ウエハをキャビティに配置することが開示されている(段落[0026]、[0027]等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許6094781号公報
【文献】特開2012-44139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱硬化性樹脂を用いたトランスファー成形を行なうとき、成形型に載置された被成形物は所定の温度に加熱される。成形型および被成形物の位置決め手段は、互いに熱膨張した状態を前提とした位置に各々設けられる。被成形物を成形型に載置する工程において、被成形物の熱膨張が十分でない場合、位置合わせの精度が低下し、被成形物を成形型の所定の位置に配置できない場合がある。この結果、たとえば、ICチップや同チップとリードフレームを接続するワイヤが成形型のキャビティ面に接触するなどの懸念が生じ得る。
【0006】
本発明の目的は、成形型への成形対象物の位置決めを高い精度で行なうことが可能な樹脂成形装置および樹脂成形品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る樹脂成形装置は、金属部分を含む成形対象物をトランスファー成形する樹脂成形装置であって、上成形型と、上成形型に対向し、キャビティを含む下成形型と、成形対象物を上成形型と下成形型との間に搬送する搬送機構と、成形対象物の金属部分に対応する位置に設けられ、下成形型の上面から突出可能な第1の突出部材と、キャビティの底面から突出可能な第2の突出部材と、下成形型の上面からの第1の突出部材の突出量とキャビティの底面からの第2の突出部材の突出量とを独立して制御可能な駆動機構と、下成形型を加熱可能な加熱機構とを備える。
【0008】
本発明に係る樹脂成形品の製造方法は、搬送機構を用いて金属部分および位置決め穴を含む成形対象物を上成形型と下成形型の間に搬送する工程と、下成形型の上面から突出部材を突出させる工程と、成形対象物の位置決め穴の位置と下成形型に設けられた位置決め部材の位置とを合わせた状態で、下成形型の上面から突出した突出部材に搬送機構から成形対象物を受け渡す工程と、突出部材で成形対象物の金属部分を支持した状態で、突出部材を下方に駆動して成形対象物を下成形に載置する工程と、上成形型と下成形型とを型締めして成形対象物をトランスファー成形する工程と、上成形型と下成形型とを型開きする工程とを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、成形対象物を十分に熱膨張させた状態で成形型に載置することができる。また、下成形型の上面から突出させた突出部材の下方への駆動速度を適切に制御することで、成形対象物の位置ずれを抑制しながら該成形対象物を成形型に載置することができる。以上の結果として、成形対象物の成形型への位置決めの精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の1つの実施の形態に係る樹脂成形装置の全体構成を示す平面図である。
図2】本発明の1つの実施の形態に係る樹脂成形装置の正面図である。
図3図2に示される樹脂成形装置の部分断面図である。
図4図2に示される樹脂成形装置の部分断面図である。
図5】(a)は図4に示される下成形型の上面図であり、(b)は(a)に対応する断面図である。
図6図4に示される樹脂成形装置の側面断面図である。
図7】本発明の1つの実施の形態に係る樹脂成形品の製造方法を示すフロー図である。
図8】本発明の1つの実施の形態に係る樹脂成形品の製造方法の1つの工程を示す図である。
図9】本発明の1つの実施の形態に係る樹脂成形品の製造方法の1つの工程を示す図である。
図10】本発明の1つの実施の形態に係る樹脂成形品の製造方法の1つの工程を示す図である。
図11】本発明の1つの実施の形態に係る樹脂成形品の製造方法の1つの工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0012】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本発明にとって必ずしも必須のものではない。
【0013】
図1は、本発明の1つの実施の形態に係る樹脂成形装置の全体構成を示す平面図である。図1に示すように、本実施の形態に係る樹脂封止装置は、たとえば半導体チップが搭載された基板を樹脂封止するモールド機構部1000を含むモールディングユニットAと、モールディングユニットAの成形型に基板を供給するインローダ2000を含むインローダユニットBと、モールディングユニットAの成形型から成形品を取り出すアウトローダ3000と上記成形品を収容する収容部とを含むアウトローダユニットCとを備える。インローダ2000およびアウトローダ3000は、図1中の上下方向に移動する。
【0014】
モールディングユニットAと、インローダユニットB、およびアウトローダユニットCは、ボルトやピンなどの連結機構を介して、互いに着脱可能に連結されている。図1の例では、モールディングユニットAは2個設けられているが、この個数は生産量に応じて増減調整することが可能である。モールディングユニットAは1つであってもよいし、たとえば4つに増設されてもよい。すなわち、本実施の形態の樹脂封止装置は、モールディングユニットの数を増減可能な構成とすることができる。
【0015】
また、図1の例では、モールディングユニットA、インローダユニットB、およびアウトローダユニットCがこの順で配設されているが、たとえば、モールディングユニットA、インローダユニットB、およびアウトローダユニットCが一体となった1つの親機と、モールディングユニットAのみを備えた1つまたは複数の子機とを並べて樹脂封止装置を構成してもよい。
【0016】
次に、図2~4を用いて、本発明実施の形態に係る樹脂成形装置について説明する。樹脂成形装置は、モールド機構部1000に設けられる。
【0017】
図2は、樹脂成形装置の正面図である。本実施の形態の樹脂成形装置は、リードフレームなどの金属部分を含む成形対象物(詳細は後述)をトランスファー成形する樹脂成形装置である。
【0018】
本実施の形態の樹脂成形装置は、上部固定盤200と、可動盤300と、下部固定盤400とを備えている。上部固定盤200と下部固定盤400とは互いに支柱部500によって固定されている。支柱部500は、円柱状支柱であってもよく、平板であってもよい。可動盤300は、上部固定盤200と下部固定盤400との間でプレス駆動機構600によって鉛直上方および鉛直下方に移動可能である。プレス駆動機構600は、下部固定盤400の上面に配置され、可動盤300を昇降および成形圧を生じさせるための動力発生機構である。本実施の形態において、上部固定盤200は固定されていることから、可動盤300は上部固定盤200に対して相対的に移動可能となっている。
【0019】
上部固定盤200の鉛直下方側には上成形型10が取り付けられている。可動盤300の鉛直上方側には下成形型20が取り付けられている。下成形型20は上成形型10に対向している。上成形型10と下成形型20とを型締めすることにより、成形対象物が樹脂成形される。成形対象物は、後述の搬送機構により上成形型10と下成形型20との間に搬送される。
【0020】
図3は、図2に示される樹脂成形装置の部分断面図であって、上成形型10および上成形型保持部30を示す。上成形型10は、カル11と、凹部12とを含む。カル11は、トランスファー成形時に図3中の左右に位置する成形対象物に樹脂材料が移送される前の溜まり部である。凹部12は、上成形型10と下成形型20とを型締めする際に下成形型20の位置決め部材(たとえば、位置決めピン)(図4参照)が干渉しないようにするための空間である。
【0021】
上成形型保持部30は、上成形型10を上部固定盤200の下面に保持するための部材である。上成形型保持部30は、上部ヒータプレート31と、上部断熱板32と、上部スペーサプレート33とを備える。上部ヒータプレート31は、ヒータ34(上部加熱機構)を収容するプレートである。ヒータ34は、上成形型10を加熱可能な熱源である。ヒータ34は、図3の紙面の法線方向に延在している。上部断熱板32は、上部ヒータプレート31と上部固定盤200との間に位置する板状部材である。上部断熱板32は、ヒータ34からの熱によって上部固定盤200が熱変形することを抑制するために、熱を伝導しにくい素材からなることが好ましい。上部スペーサプレート33は、上部ヒータプレート31と上成形型10との間に配置されるプレートである。
【0022】
図4は、図2に示される樹脂成形装置の部分断面図であって、下成形型20、下成形型保持部40、下部第1プレート51および下部第2プレート52を示す。
【0023】
下成形型20は、キャビティ21と、位置決め部材22とを備える。キャビティ21は、下成形型20に設けられた成形形状の凹部である。位置決め部材22は、下成形型20の上面20a(成形型面)において成形対象物の位置決めをするための部材である。位置決め部材22は、先端側に位置する円錐状のテーパ部22aと、根元側に位置する円筒状のストレート部22bとを有する。
【0024】
下成形型保持部40は、下成形型20を可動盤300の上面に保持するための部材である。下成形型保持部40は、下部ヒータプレート41と、下部断熱板42と、下部第3プレート43と、クランパヘッド45と、クランパロッド46とを備える。下部ヒータプレート41は、ヒータ44(下部加熱機構)を収容するプレートである。ヒータ44は、下成形型20を加熱可能な熱源である。ヒータ44は、図4の紙面の法線方向に延在している。下部断熱板42は、下部ヒータプレート41と可動盤300との間に位置する板状部材である。下部断熱板42は、ヒータ44からの熱によって可動盤300が熱変形することを抑制するために、熱を伝導しにくい素材からなることが好ましい。下部第3プレート43は、下成形型保持部40の高さと下成形型20の高さとを合わせるための平面板状部材である。クランパヘッド45は、下部第2プレート52が嵌るように形成されたコの字形状を有する部材である。クランパロッド46は、クランパヘッド45に固定された棒状部材である。
【0025】
クランパロッド46の下方には、クランパ位置決め棒47が設けられている。クランパ位置決め棒47は、クランパロッド46に当接することによってクランパヘッド45およびクランパロッド46の最下点の位置決めをするための棒状部材である。
【0026】
本実施の形態に係る樹脂成形装置は、突出部材100(第1の突出部材)および突出部材110(第2の突出部材)をさらに備える。突出部材100は、上下方向に駆動可能であり、下成形型20の上面20aから突出可能である。突出部材110は、キャビティ21の底面21aから突出可能である。突出部材100の根元側には鍔部100aが設けられる。突出部材100の材料は、たとえば、金属であってもよく、セラミックであってもよい。
【0027】
突出部材100は、成形対象物の金属部分(たとえばICチップが搭載されたリードフレーム)に対応する位置に設けられる。突出部材110は、成形対象物の樹脂成形部分に対応する位置に設けられる。突出部材100,110は、成形対象物の樹脂成形後に上方に突出するピン部材(エジェクターピン)である。突出部材100,110が突出することにより、樹脂成形品が下成形型20から離型される。
【0028】
突出部材100,110は、下部第1プレート51および下部第2プレート52とともに昇降可能である。突出部材100,110が上方に移動すると、突出部材100は下成形型20の上面20aから突出し、突出部材110はキャビティ21の底面21aから突出する。このとき、突出部材100の上面20aからの突出量と、突出部材110の底面21aからの突出量とは同じである。
【0029】
突出部材100は、後述する駆動機構により、下部第1プレート51および下部第2プレート52に対して上下方向に駆動される。1つの例では、駆動機構は、図4に示す上楔部材71と下楔部材73とを含むコッター機構からなる。上楔部材71と下楔部材73とが水平方向に相対移動することにより、上楔部材71が上方に移動する。突出部材100の鍔部100aは上楔部材71に押され、上楔部材71とともに上方に移動する。これにより、下部第1プレート51および下部第2プレート52が静止した状態(突出部材110も静止した状態)で突出部材100が上方に移動することができる。すなわち、本実施の形態に係る樹脂成形装置においては、下成形型20の上面20aからの突出部材100の突出量と、キャビティ21の底面21aからの突出部材110の突出量とを独立して制御可能である。
【0030】
下部第1プレート51は、突出部材100の鍔部100aと、弾性部材77とを収容する平面板状部材である。下部第1プレート51は、下部第2プレート52に固定され、下部第2プレート52とともに昇降する。弾性部材77は、鍔部100aとともに下部第1プレート51に収納され、鍔部100aを下方に付勢している。1つの例では、弾性部材77は板バネから構成される。突出部材100が上方に駆動されるときは鍔部100aによって弾性部材77が撓み、突出部材100が下方に駆動されるときは弾性部材77が鍔部100aを下方に付勢する。これにより、突出部材100を上方に駆動するとき以外は、突出部材100が下成形型20の上面20aから突出することが抑制される。弾性部材77は、たとえば、コイル状のスプリングであってもよい。また、弾性部材77は、金属からなるものであってもよいし、ゴムからなるものであってもよいし、複数の素材が複合されたものであってもよい。
【0031】
下部第2プレート52は、下部第1プレート51の下方にある。下部第2プレート52は、上楔部材71と下楔部材73とを収容する。すなわち、下部第2プレート52は、突出部材100を上下に駆動する駆動機構の少なくとも一部を収容する。
【0032】
図5(a)は図4に示される下成形型20の上面図であり、図5(b)は図5(a)に対応する断面図である。図5(a)における二点鎖線は、成形対象物1の大きさの例を表す。本発明における成形対象物1は、たとえば、60mm以上100mm以下程度の幅と、200mm以上300mm以下程度の長さと、0.1mm以上0.3mm以下程度の厚さとを有する。成形対象物1は、ICチップを実装したものであってもよい。ICチップ間のピッチは、たとえば、第1の方向において3.5mm以上10.0mm以下程度、第1の方向と直交する方向において7mm以上10mm以下程度である。図5(a)には、複数の突出部材100の配置の例が示される。図5の例では、突出部材100は、キャビティ21が形成された部分(中央領域)を取り囲む領域(外周領域)に設けられている。なお、突出部材100の位置および数は図5の例に限定されないことは言うまでもない。
【0033】
図6は、図4に示される樹脂成形装置の側面断面図である。駆動機構70は、上楔部材71と、下楔部材73と、駆動部75とを含む。上楔部材71は、第1の傾斜面72を有する。下楔部材73は、第1の傾斜面72と対向する第2の傾斜面74を有する。駆動部75は、第1の傾斜面72と第2の傾斜面74とが互いに摺動可能な状態で下楔部材73を水平方向に移動させることが可能である。上楔部材71は、下楔部材73の水平方向(矢印76の方向)の移動に伴なって鉛直方向に移動する。上述のとおり、突出部材100は、上楔部材71上に配置されているため、上楔部材71の鉛直方向の移動に伴なって突出部材100も鉛直方向に移動する。駆動部75は下成形型保持部40の外側に設けられている。これにより、駆動部75に対するヒータ44からの熱の影響を抑制することができ、故障の発生を抑制できる。図6の例では、駆動部75は、下楔部材73を往復移動させることが可能なエアシリンダ等により構成されるが、たとえばサーボモータ等、より精密な速度制御可能な駆動機構を用いてもよい。また、複数の下楔部材73の駆動を1つのアクチュエータによって行なってもよいし、各々の下楔部材73に対して1つずつアクチュエータを配置してもよい。また、図6に示す楔機構ではなく、たとえばカム機構などを用いて突出部材100を鉛直方向に移動させてもよい。
【0034】
以下、図7図11を参照して、本実施の形態の樹脂成形装置を用いて樹脂成形品を製造する方法の一例である本実施の形態の樹脂成形品の製造方法について説明する。図7は、本実施の形態に係る樹脂成形品の製造方法を示すフロー図である。図7に示すように、本実施の形態に係る樹脂成形品の製造方法は、成形対象物を上成形型10と下成形型20との間に搬送する工程(S10)と、突出部材を下成形型から突出させる工程(S20)と、成形対象物を搬送機構から突出部材へ受け渡す工程(S30)と、突出部材を下方に駆動して成形対象物を下成形型に載置する工程(S40)と、型締め工程(S50)と、型開き工程(S60)とを含む。以下、各工程についてより詳細に説明する。
【0035】
まず、図8の模式的な断面図に示すように、搬送機構60を用いて金属部分2および位置決め穴3を含む成形対象物1を上成形型10と下成形型20の間に搬送する。なお、成形対象物1は、搬送機構60と共に動作するプレヒータ(図示せず)によって予め加熱されてもよい。
【0036】
その後、下成形型20の上面20aから突出部材100を突出させる。突出部材100の突出は、第1の傾斜面72を有する上楔部材71と、第1の傾斜面72と対向する第2の傾斜面74を有する下楔部材73とからなる駆動機構70を用いて行なわれる。第1の傾斜面72と第2の傾斜面74とを互いに摺動させながら下楔部材73を水平方向(図6中の矢印76方向)に移動させることに伴なって上楔部材71を上昇させ、上楔部材71上に配置された突出部材100を上方に駆動することで、突出部材100は下成形型20の上面20aから突出する。このとき、下部第1プレート51内に収容されている弾性部材77は突出部材100の鍔部100aに押されることによって弾性変形する。
【0037】
その後、成形対象物1の位置決め穴3の位置と下成形型20に設けられた位置決め部材22の位置とを合わせた状態で、下成形型20の上面20aから突出した突出部材100に搬送機構60から成形対象物1を受け渡す。搬送機構60の爪部61が開いた状態となることによって搬送機構60から突出部材100に成形対象物1が受け渡される。このとき、成形対象物1の位置決め穴3が下成形型20の位置決め部材22のテーパ部22aに嵌っている状態となる。また、成形対象物1の金属部分2が突出部材100の先端に支持される。搬送機構60の爪部61を開くときの成形対象物1の高さと突出部材100の先端の高さとを可能な限り近づけておくことで、爪部61から放された成形対象物1がすぐに突出部材100に保持され、成形対象物1のより精密な位置決めが可能となる。
【0038】
次に、図9に示すように、突出部材100で成形対象物1の金属部分2を支持した状態で、突出部材100を下方に駆動して成形対象物1を下成形型20に載置する。
【0039】
ここで、突出部材100で成形対象物1の金属部分2を支持するとともに、ヒータ44によって下成形型20が加熱され、下成形型20は昇温している。この加熱温度は、たとえば175℃である。成形対象物1はヒータ44によって昇温されている下成形型20からの輻射熱を受ける。これにより、成形対象物1は加熱され、プレヒートにより生じていた成形対象物1の熱膨張が維持される。
【0040】
その後、突出部材100が下方に駆動される。突出部材100の下方への駆動は、下楔部材73を矢印76(図6参照)で示される方向とは反対の水平方向に移動させることに伴なって上楔部材71を下降させることによって行なわれる。下楔部材73が元の位置に向かって移動し、上楔部材71は下降する。上楔部材71は弾性部材77の弾性力によって下方に付勢されて確実に下降し、元の位置に戻る。上楔部材71が下降することにより、上楔部材71上に配置された突出部材100も下方に移動する。
【0041】
成形対象物1の下成形型20への載置は、成形対象物1に設けられた位置決め穴3に、下成形型20の位置決め部材22のストレート部22bが入ることによって行なわれる。成形対象物1が下成形型20へ正確に位置決めされると、成形対象物1上のICチップ4等の電子部品が下成形型20のキャビティ21内に収容される。このようにして、成形対象物1が下成形型20へ位置決めされる。
【0042】
位置決め部材22のストレート部22bは、成形対象物1が十分に熱膨張した状態の位置決め穴3の位置に対応するように設けられている。成形対象物を搬送機構60から下成形型20へ受け渡すときに成形対象物1が搬送機構60と協働するプレヒータから離れると、成形対象物1の温度が低下し、成形対象物1が変形することがある。この場合、成形対象物1の熱膨張が不十分となることによって、成形対象物1の位置決め穴3の位置と下成形型20の位置決め部材22の位置とが正確に合わなくなる可能性がある。この状態で成形対象物1を下成形型20に載置しようとすると、成形対象物1が位置決め部材22に対して斜めに入ったり、位置決め部材22のテーパ部22aに引っかかるなどして、位置合わせの精度が低下する。これにより、成形対象物1を下成形型20の所定位置に設置することができない場合がある。このとき、成形対象物1がたとえば小型のICチップを実装するものである場合には、ICチップや同チップとフレームを接続するワイヤ等が下成形型20のキャビティ面に接触する懸念が生じる。
【0043】
本実施の形態の樹脂製造装置では、成形対象物1はヒータ44によって昇温されている下成形型20からの輻射熱を受けるため、成形対象物1を所定量熱膨張した状態とすることができる。その結果、成形対象物1の位置決め穴3の位置と下成形型20の位置決め部材22の位置とを正確に合わせることができるため、成形対象物1を下成形型20に対して正確に位置決めすることができる。
【0044】
また、成形対象物1の下降速度をより小さくする、すなわち成形対象物1をゆっくりと下降させた場合、成形対象物1はヒータ44によって昇温されている下成形型20からの輻射熱をより比較的長時間受けるため、成形対象物1をさらに十分に熱膨張させることができる。その結果、下成形型20への成形対象物1の位置決めの精度をさらに向上させることができる。
【0045】
また、突出部材100が熱伝導性を有する場合、ヒータ44からの熱は、突出部材100を介して突出部材100に支持される成形対象物1の金属部分2に伝導される。これにより、下成形型20への成形対象物1の位置決めの精度をさらに向上させることができる。
【0046】
また、成形対象物1の金属部分2が突出部材100の先端によって支持される状態を一定時間維持してもよい。これにより、成形対象物1をさらに十分に熱膨張させることができる。その結果、下成形型20への成形対象物1の位置決めの精度をさらに向上させることができる。なお、一定時間は、熱膨張による成形対象物1をトランスファー成形しても問題無い程度の形状となるまでに要する時間であって、1つの例では数秒から数分程度とすることができる。
【0047】
さらに、搬送機構60からの成形対象物1を下成形型20の上面20aから突出させた突出部材100で受けることにより、搬送機構60から放された成形対象物1を下成形型20の上面20aに直接載置するよりも、搬送機構60からの成形対象物1の落下距離を短くすることができる。このことも、成形対象物1の位置決め精度向上に寄与する。
【0048】
成形対象物1を下成形型20に載置した後、図10に示すように、上成形型10と下成形型20とを型締めして成形対象物1をトランスファー成形する。まず、プレス駆動機構600により、可動盤300および下成形型20を上昇させ、上成形型10と下成形型20との型締めを行なう。その後、下成形型20内のポット(図示せず)内に供給された樹脂材料6をプランジャ(図示せず)を用いて圧入することによって、樹脂通路23およびカル11を経て樹脂材料6を下成形型20のキャビティ21に移送する。
【0049】
次に、図11に示すように、上成形型10と下成形型20とを型開きする。この工程では、まず、プレス駆動機構600を下降させて下成形型20を下方に駆動し、上成形型10と下成形型20とを型開きする。このとき、クランパロッド46はクランパ位置決め棒47に接触し、これによりクランパロッド46の位置が固定される。その後、さらに下成形型20が下降すると、クランパヘッド45によって挟まれた下部第2プレート52が下成形型保持部40に対して相対的に上昇する。これにより、下部第2プレート52上に固定された突出部材100,110がそれぞれ下成形型20の上面20aおよびキャビティ21の底面21aから突出して樹脂成形品5が離型される。このとき、突出部材100,110は、エジェクターピンとしての機能を果たす。カル11で固化された樹脂材料6は、樹脂成形品5と分離されて廃棄される。
【0050】
その後、キャビティ21内に残った樹脂材料は除去され、新たな樹脂成形品を製造するために上記の製造工程が繰り返される。
【0051】
しかしながら、一部の樹脂材料および塵等が除去されないままキャビティ21内に残ることがある。
【0052】
キャビティ21内に樹脂材料等が残った状態で突出部材110がキャビティ21の底面21aから突出すると、突出部材110の先端付近に樹脂材料が付着したり、キャビティ21の底面21aと突出部材110との間の隙間に樹脂材料が入り込んだりする場合がある。すべてのエジェクターピンが同時に鉛直方向に駆動される樹脂成形装置においては、離型工程以外において突出部材を突出させると、キャビティの底面から突出する突出部材の周辺において、上記の問題が懸念される。
【0053】
一方、本実施の形態においては、駆動機構70によって突出部材100および突出部材110の突出量をそれぞれ独立して制御可能であるため、パッケージエジェクターピンである突出部材110を突出させることなく突出部材100を突出させることが可能となる。これにより、搬送機構60からの成形対象物1の受け渡し時には突出部材100のみが突出するため、先の樹脂成形でキャビティ21内から除去されずに残った樹脂材料6が突出部材110に付着したり、隙間に入り込んだりすることを抑制することができる。
【0054】
上記で説明された樹脂成形品の製造方法は、下成形型20にキャビティ21を設けたダイダウンに係る製造方法であるが、本発明に係る樹脂成形品の製造方法は、上成形型にキャビティを設けたダイアップに係る製造方法にも適用可能である。
【0055】
ダイアップに係る樹脂成形品の製造方法では、型開き後、下成形型に設けられた突出部材とは別に上成形型に設けられたエジェクターピンによって樹脂成形品を離型する。したがって、搬送機構からの樹脂成形品を保持する突出部材は樹脂成形品の離型時にエジェクターピンとして機能しない点で、ダイダウンに係る樹脂成形品の製造方法とは異なる。ダイアップに係る製造方法のその他の工程はダイダウンに係る製造方法とほぼ同様であるため、詳細な説明は繰り返さない。
【0056】
本実施の形態に係る樹脂成形装置および樹脂成形品の製造方法によれば、成形対象物1を十分に熱膨張させた状態で成形型に載置することができるため、成形対象物1の成形型への位置決めの精度を向上させることができる。
【0057】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0058】
1 成形対象物、2 金属部分、3 位置決め穴、4 ICチップ、5 樹脂成形品、6樹脂材料、10 上成形型、11 カル、12 凹部、20 下成形型、20a 上面、21 キャビティ、21a 底面、22 位置決め部材、22a テーパ部、22b ストレート部、23 樹脂通路、30 上成形型保持部、31 上部ヒータプレート、32 上部断熱板、33 上部スペーサプレート、34 ヒータ、40 下成形型保持部、41 下部ヒータプレート、42 下部断熱板、43 下部第3プレート、44 ヒータ、45 クランパヘッド、46 クランパロッド、47 クランパ位置決め棒、51 下部第1プレート、52 下部第2プレート、60 搬送機構、61 爪部、70 駆動機構、71 上楔部材、72 第1の傾斜面、73 下楔部材、74 第2の傾斜面、75 駆動部、76 矢印、77 弾性部材、100,110 突出部材、100a 鍔部、200 上部固定盤、300 可動盤、400 下部固定盤、500 支柱部、600 プレス駆動機構、1000 モールド機構部、2000 インローダ、3000 アウトローダ、A モールディングユニット、B インローダユニット、C アウトローダユニット。
図1
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