(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】多眼カメラ装置およびミラー可動機構
(51)【国際特許分類】
G03B 35/08 20210101AFI20220711BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20220711BHJP
G02B 7/182 20210101ALI20220711BHJP
G03B 17/17 20210101ALI20220711BHJP
G03B 17/54 20210101ALI20220711BHJP
H04N 5/225 20060101ALI20220711BHJP
H04N 5/232 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
G03B35/08
G01C3/06 110V
G01C3/06 140
G02B7/182
G03B17/17
G03B17/54
H04N5/225 100
H04N5/225 400
H04N5/225 800
H04N5/225 900
H04N5/232
(21)【出願番号】P 2018117777
(22)【出願日】2018-06-21
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390010308
【氏名又は名称】東芝デベロップメントエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】石過 壮
【審査官】登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-152096(JP,A)
【文献】特開2012-185397(JP,A)
【文献】特開平09-026635(JP,A)
【文献】特開平06-095276(JP,A)
【文献】特開2009-063838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 35/08
G01C 3/06
G02B 7/182
G03B 17/17
G03B 17/54
H04N 5/225
H04N 5/232
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のカメラと、
第2のカメラと、
少なくとも1枚のミラーである第1のミラー群を含み、前記第1のカメラへ第1の光線を導く第1の導光系と、
前記第1のミラー群のうちの1枚である第1の可動ミラーを取り付けられ、前記第1のカメラおよび前記第2のカメラと独立して回転および変位の少なくとも1つが可能であって、前記回転および変位の少なくとも1つに連動して当該第1の可動ミラーの回転角および位置の少なくとも1つが変化する第1の可動部材と、
少なくとも1枚のミラーである第2のミラー群を含み、前記第2のカメラへ第2の光線を導く第2の導光系と、
前記第2のミラー群のうちの1枚である第2の可動ミラーを取り付けられ、前記第1のカメラ、前記第2のカメラおよび前記第1の可動部材と独立して回転および変位の少なくとも1つが可能であって、前記回転および変位の少なくとも1つに連動して当該第2の可動ミラーの回転角および位置の少なくとも1つが変化する第2の可動部材と
を具備
し、
前記第1のカメラは、前記第1のカメラの光軸と前記第1の可動ミラーの反射面の法線との成す角度が前記第1のカメラおよび前記第2のカメラを互いに背中合わせに配置した場合に比べて小さくなるように、前記第1のカメラおよび前記第2のカメラを互いに背中合わせに配置した場合に比べて一定の角度傾けて配置され、
前記第2のカメラは、前記第2のカメラの光軸と前記第2の可動ミラーの反射面の法線との成す角度が前記第1のカメラおよび前記第2のカメラを互いに背中合わせに配置した場合に比べて小さくなるように、前記第1のカメラおよび前記第2のカメラを互いに背中合わせに配置した場合に比べて前記一定の角度傾けて配置される、
多眼カメラ装置。
【請求項2】
前記第1のカメラの仮想的なカメラ位置および姿勢の少なくとも1つは、前記第1のミラー群のうち前記第1の光線の光路上で前記第1のカメラから最も遠いミラーにおける入射光としての前記第1の光線を仮想的に延長した直線に基づいて決まり、
前記第2のカメラの仮想的なカメラ位置および姿勢の少なくとも1つは、前記第2のミラー群のうち前記第2の光線の光路上で前記第2のカメラから最も遠いミラーにおける入射光としての当該第2の光線を仮想的に延長した直線に基づいて決まる、
請求項1に記載の多眼カメラ装置。
【請求項3】
前記第1の可動部材の位置および回転角の少なくとも1つを前記第1のカメラおよび前記第2のカメラの目標輻輳角、目標視野方向および目標光軸間隔の少なくとも1つに基づいて制御する機構制御部をさらに具備する、請求項1または請求項2に記載の多眼カメラ装置。
【請求項4】
第1の面と、第2の面と、前記第1の面および前記第2の面の間を貫く第1のスリットとを有する第1のベース部材と、
第1の面と、第2の面と、前記第1の面および前記第2の面の間を貫く第2のスリットとを有する第2のベース部材と
をさらに具備し、
前記第1の可動部材は、突起部を有し、当該突起部を前記第1のベース部材の前記第1の面に掛けた状態で当該第1の可動部材の一部が前記第2の面から露出するように前記第1のスリットを貫通しており、当該突起部を前記第1のベース部材の前記第1の面に掛けた状態で(a)当該第1の可動部材の長手方向を軸とした回転、および(b)前記第1のスリットに沿った変位、の少なくとも1つが可能であり、
前記第2の可動部材は、突起部を有し、当該突起部を前記第2のベース部材の前記第1の面に掛けた状態で当該第2の可動部材の一部が前記第2の面から露出するように前記第2のスリットを貫通しており、当該突起部を前記第2のベース部材の前記第1の面に掛けた状態で(a)当該第2の可動部材の長手方向を軸とした回転、および(b)前記第2のスリットに沿った変位、の少なくとも1つが可能である、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の多眼カメラ装置。
【請求項5】
前記第1の可動部材および前記第2の可動部材の位置を前記第1のカメラおよび前記第2のカメラの目標光軸間隔に基づいて制御する機構制御部をさらに具備する、請求項4に記載の多眼カメラ装置。
【請求項6】
前記第1の可動部材の位置および回転角の少なくとも1つと、前記第2の可動部材の位置および回転角の少なくとも1つとを前記第1のカメラおよび前記第2のカメラの目標輻輳角、目標視野方向および目標光軸間隔の少なくとも1つに基づいて制御する機構制御部をさらに具備する、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の多眼カメラ装置。
【請求項7】
前記機構制御部は、前記第1の可動部材および前記第2の可動部材を互いに逆の方向に同量回転し、
前記第1の可動部材および前記第2の可動部材の回転方向および回転量は、前記第1のカメラおよび前記第2のカメラの目標輻輳角に基づく、
請求項
6に記載の多眼カメラ装置。
【請求項8】
前記第1の可動部材および前記第2の可動部材が回転された後に前記第1のカメラおよび前記第2のカメラの焦点を自動制御するカメラ制御部をさらに具備する、請求項
7に記載の多眼カメラ装置。
【請求項9】
第1のカメラおよび第2のカメラの焦点を自動制御し、制御後の焦点に基づいて前記第1のカメラおよび前記第2のカメラの目標輻輳角を決定するカメラ制御部をさらに具備する、請求項
7に記載の多眼カメラ装置。
【請求項10】
前記機構制御部は、前記第1の可動部材および前記第2の可動部材を同方向に同量回転し、
前記第1の可動部材および前記第2の可動部材の回転方向および回転量は、前記第1のカメラおよび前記第2のカメラの目標視野方向に基づく、
請求項
6に記載の多眼カメラ装置。
【請求項11】
前記第1の可動部材は、前記第1の可動ミラーの回転する範囲に亘って、前記第1の可動部材の回転軸が前記第1の光線の前記第1の可動ミラーへの入射方向から見て第1の平面
よりも後方に位置するように前記第1の可動ミラーに取り付けられ、
前記第1の平面は、前記第1の可動ミラーの幾何中心を通り、かつ前記第1の可動ミラーの反射面に略垂直であり、
前記第2の可動部材は、前記第2の可動ミラーの回転する範囲に亘って、前記第2の可動部材の回転軸が前記第2の光線の前記第2の可動ミラーへの入射方向から見て第2の平面よりも後方に位置するように前記第2の可動ミラーに取り付けられ、
前記第2の平面は、前記第2の可動ミラーの幾何中心を通り、かつ前記第2の可動ミラーの反射面に略垂直である、
請求項1乃至請求項
10のいずれか1項に記載の多眼カメラ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多眼カメラにおけるカメラ位置および/または姿勢の調整に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばステレオカメラにおいて立体視を行って被写体との間の距離を計測する場合に、左カメラおよび右カメラをそれらの光軸が両者の前面で交差するように傾けて設置することが一般的である。左カメラおよび右カメラの光軸がなす角は輻輳角と呼ばれる。また、両者の光軸間の距離、すなわち光軸間隔は、計測可能な対被写体距離やその精度に影響を与える。
【0003】
特許文献1には、光学レンズと、この光学レンズを通過した光線を反射してCCD(Charge Coupled Device)へと導く反射ミラーとを含む撮像ユニットを適宜移動または回動させることで光軸間隔または輻輳角を可変とする技法が開示されている(段落[0025]~[0029])。
【0004】
特許文献2には、ズームレンズの変倍状態に応じてミラーを回転させることで、ステレオベースおよび輻輳角を増減させるステレオアダプターが記載されている。具体的には、ズームレンズ5の端部5aが物体側(望遠側)に前進すると検出ピン19と係合している駆動レバー17L,17Rが枢軸17La,17Raを軸に回転すること、この回転によってミラーキャリッジ11L,11Rが広がる方向(ステレオベースが広がる方向)へ移動すること、この移動によりミラー9L,9Rが各々進行方向(矢印aL,aRの方向)へ向けて回転し、輻輳角θが減少する、といった記載がある([0044]~[0050])。また、ズームレンズをワイド側に操作して移動させると駆動レバー17L,17Rは先程と逆の方向に回動し、ミラーキャリッジ11L,11Rがピン16L,16Rを介してお互いが狭まる方向へ移動し、ミラー受け10L,10Rは前記したのと逆に輻輳角θが大きくなる方向へ動く、との記載もある([0051])。
【0005】
特許文献3には、測距手段414の測距結果に基づいてステップモータ411bにより
全反射ミラー411aR,411aLを駆動して輻輳角の変更を行う、ことが記載されている([0048])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-51969号公報
【文献】特開平8-36229号公報
【文献】特開2001-16615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技法では、光学レンズおよび反射ミラーを含む複数の部品からなる撮像ユニット全体を移動または回動させる必要があるので、撮像ユニット全体の可動範囲を確保するために十分な余剰スペースが必要となる。さらに、給電用または通信用のケーブルが撮像ユニットに接続されている場合には、当該ケーブルも必然的に撮像ユニットに連動して引っ張られたり撓んだりする。これにより、ケーブルの摩耗、断線が生じやすくなるという問題もある。加えて、一般に、対象および/またはその駆動機構の重量や寸法が大きくなるほど高速に対象を駆動することは困難となる。
【0008】
特許文献2に記載の技法では、左右のミラーを独立に動かすことは想定されていない。また、ズームレンズの変倍状態に応じてステレオベースおよび輻輳角が自動的に設定されるので、例えば両者を個別に設定することもできない。さらに、ミラーを駆動する機構の重量および寸法が大きいので、ミラーの角度を高速に変更することは困難となる。
【0009】
特許文献3の技法では、左右の全反射ミラーを1つのステップモータにより駆動しているので、両者を独立に動かすことは想定されていない。また、被写体との間に、シャッタ機能を有する液晶素子が配置されている。故に、全反射ミラーを回転させると、この液晶素子に対する入射角が変化し、当該液晶素子のシャッタとしての性能が悪化するという問題がある。また、液晶素子の開口により画角が制限される、という問題もある。
【0010】
輻輳角、光軸間隔などのパラメータが可変のステレオカメラは、例えば可動ロボットへの搭載が期待される。ただし、かかるロボットの構造上の制約などにより、当該ロボットに搭載されるステレオカメラにはコンパクト性および軽量性を求められることがある。
【0011】
本発明は、多眼カメラに関するパラメータの少なくとも1つを可変とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様によれば、第1のカメラと、第2のカメラと、第1の導光系と、第1の可動部材と、第2の導光系と、第2の可動部材とを含む。第1の導光系は、少なくとも1枚のミラーである第1のミラー群を含み、第1のカメラへ第1の光線を導く。第1の可動部材は、第1のミラー群のうちの1枚である第1の可動ミラーを取り付けられ、第1のカメラおよび第2のカメラと独立して回転および変位の少なくとも1つが可能であって、回転および変位の少なくとも1つに連動して第1の可動ミラーの回転角および位置の少なくとも1つが変化する。第2の導光系は、少なくとも1枚のミラーである第2のミラー群を含み、第2のカメラへ第2の光線を導く。第2の可動部材は、第2のミラー群のうちの1枚である第2の可動ミラーを取り付けられ、第1のカメラ、第2のカメラおよび第1の可動部材と独立して回転および変位の少なくとも1つが可能であって、回転および変位の少なくとも1つに連動して第2の可動ミラーの回転角および位置の少なくとも1つが変化する。
【0013】
本発明の第2の態様によれば、ミラー可動機構は、第1のカメラおよび第2のカメラを含む多眼カメラに取り付け可能である。ミラー可動機構は、第1の導光系と、第1の可動部材と、第2の導光系と、第2の可動部材とを含む。第1の導光系は、少なくとも1枚のミラーである第1のミラー群を含み、ミラー可動機構が多眼カメラに取り付けられている時に第1のカメラへ第1の光線を導く。第1の可動部材は、第1のミラー群のうちの1枚である第1の可動ミラーを取り付けられ、ミラー可動機構が多眼カメラに取り付けられている時に、第1のカメラおよび第2のカメラと独立して回転および変位の少なくとも1つが可能であって、かつ回転および変位の少なくとも1つに連動して第1の可動ミラーの回転角および位置の少なくとも1つが変化する。第2の導光系は、少なくとも1枚のミラーである第2のミラー群を含み、ミラー可動機構が多眼カメラに取り付けられている時に第2のカメラへ第2の光線を導く。第2の可動部材は、第2のミラー群のうちの1枚である第2の可動ミラーを取り付けられ、ミラー可動機構が多眼カメラに取り付けられている時に、第1のカメラ、第2のカメラおよび第1の可動部材と独立して回転および変位の少なくとも1つが可能であって、かつ回転および変位の少なくとも1つに連動して第2の可動ミラーの回転角および位置の少なくとも1つが変化する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、多眼カメラに関するパラメータの少なくとも1つを可変とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係るステレオカメラを例示する図。
【
図2】
図1のステレオカメラを含む、視差/距離計測システムを例示する図。
【
図3】
図2の視差/距離計測システムの動作を例示するフローチャート。
【
図6】
図1のステレオカメラにプロジェクターを内蔵させた構成を例示する図。
【
図7】
図1のステレオカメラの変形例を示す正面図。
【
図8】
図1のステレオカメラの変形例を示す側面図。
【
図9】
図1のステレオカメラの変形例を示す底面図。
【
図10】
図1のステレオカメラにおける可動部材の配置に関する変形例を示す図。
【
図12】可動ミラーの回転に伴う、左カメラおよび右カメラへ入射する光束の変化の説明図。
【
図13】可動ミラーの回転に伴う、左カメラおよび右カメラへ入射する光束の変化の説明図。
【
図14】変形例2に係る多眼カメラ装置(ステレオカメラ)を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら実施形態の説明を述べる。なお、以降、説明済みの要素と同一または類似の要素には同一または類似の符号を付し、重複する説明については基本的に省略する。
【0017】
(実施形態)
実施形態に係る多眼カメラ装置は、例えば
図2に示す視差/距離計測システムに組み込むことができる。この視差/距離計測システムは、プロジェクター/カメラ制御部10と、プロジェクター20と、画像処理部40と、機構制御部50と、ステレオカメラ100とを含む。具体的には、この視差/距離計測システムは、例えばロボットビジョンを実現するために、ロボットに搭載され得る。ここで、実施形態に係る多眼カメラ装置は、
図2の要素のうちステレオカメラ100に限らず、その他の要素を含み得る。
【0018】
ステレオカメラ100は、
図1に例示されるように、(左)カメラ101と、(右)カメラ102と、可動ミラー111と、可動ミラー112と、可動部材121と、可動部材122と、支持部材131と、支持部材132とを含む。なお、ステレオカメラ100は、3眼以上の多眼カメラに置き換えられてもよい。
【0019】
プロジェクター/カメラ制御部10は、プロジェクター20、左カメラ101および右カメラ102を制御する。具体的には、プロジェクター/カメラ制御部10は、プロジェクター20に既定の計測用パターンの投射を命令する。それから、プロジェクター/カメラ制御部10は、左カメラ101および右カメラ102に、計測用パターンが投射された被写体30の撮影を命令する。
【0020】
また、プロジェクター/カメラ制御部10は、左カメラ101および右カメラ102の焦点を自動制御してもよい。具体的には、プロジェクター/カメラ制御部10は、後述される機構制御部50などにより可動部材121および可動部材122が回転され左カメラ101および右カメラ102の輻輳角が調整された後に、焦点を自動制御してもよい。或いは、逆に、プロジェクター/カメラ制御部10は、左カメラ101および右カメラ102の焦点を自動制御した後に、制御後の焦点に基づいて左カメラ101および右カメラ102の目標輻輳角を決定してもよい。
【0021】
ここで、計測用パターンは、プロジェクター/カメラ制御部10からプロジェクター20へ送られてもよいし、プロジェクター20に内蔵または外付けされた記憶装置に保存されていてもよい。
【0022】
また、計測用パターンは、計測用パターン生成装置(図示されない)によって生成され得る。計測用パターン生成装置は、プロジェクター/カメラ制御部10において実装されてもよいし、図示されない外部装置として実装されてもよい。後者の場合には、計測用パターン生成装置によって生成された計測用パターンが、通信媒体または記録媒体を経由して、最終的にプロジェクター20に届けられる。
【0023】
計測用パターン生成装置は、計測用パターンを生成するパターン生成部を含む。パターン生成部は、例えば、プロセッサおよびメモリの組み合わせであり得る。ここで、プロセッサは、典型的にはCPU(Central Processing Unit)および/またはGPU(Graphics Processing Unit)であるが、マイコン、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはDSP(Digital Signal Processor)、などであってもよい。
【0024】
プロジェクター20は、プロジェクター/カメラ制御部10からの命令に従って、計測用パターンを被写体30に投射する。そして、左カメラ101は、計測用パターンが投射された被写体30を撮影し、第1の撮影画像を生成する。同様に、右カメラ102は、計測用パターンが投射された被写体30を撮影し、第2の撮影画像を生成する。
【0025】
画像処理部40は、左カメラ101第1の撮影画像を取得し、右カメラ102から第2の撮影画像を取得し、例えば画素毎に第1の撮影画像と第2の撮影画像との間で画素ブロックレベルでのマッチングを行う。そして、画像処理部40は、かかるマッチング結果に基づいて当該画素における左カメラ101および右カメラ102の視差、および/または左カメラ101および右カメラ102から被写体30における当該画素に対応する点までの距離を算出する。さらに、画像処理部40または図示されない後段の外部装置が、距離の算出結果に基づいて被写体の3次元形状を推定してもよい。
【0026】
具体的には、画像処理部40は、左カメラ101および右カメラ102からそれぞれ第1の撮影画像および第2の撮影画像を取得する。また、画像処理部40は、取得した第1の撮影画像および第2の撮影画像の画素ブロックレベルでのマッチングを行う。
【0027】
画像処理部40は、まず、第1の撮影画像における画素の1つを注目画素として決定する。なお、以降の説明では、第1の撮影画像、すなわち左カメラ101による撮影画像から注目画素を決定することとするが、第2の撮影画像、すなわち右カメラ102による撮影画像から注目画素を決定することも可能である。後者の場合には、以降の説明において「第1の撮影画像」および「第2の撮影画像」の用語を適宜読み替えれば良い。
【0028】
画像処理部40は、決定した注目画素を含む第1の画素ブロックを第1の撮影画像から抽出する。それから、画像処理部40は、第1の画素ブロックに対応する第2の画素ブロックを第2の撮影画像から探索する。
【0029】
画像処理部40は、注目画素を変更しながら第1の撮影画像の各画素について上記探索処理を繰り返す。これにより、第1の撮影画像内の各画素について、第2の撮影画像とのマッチングが行われる。マッチング結果は、例えば第1の撮影画像の各画素(マッチングに成功した画素)の座標(位置)と、第2の撮影画像において当該画素に対応するとして探索された画素の座標とを含み得る。
【0030】
画像処理部40は、マッチング結果に基づいて、第1の撮影画像内の各画素(マッチングに成功した画素)に関する左カメラ101および右カメラ102の視差を算出する。視差算出結果は、例えば第1の撮影画像の各画素の座標と当該画素に関する視差ベクトルとを含み得る。また、画像処理部40は、視差算出結果を図示されない外部装置へ送ってもよい。
【0031】
画像処理部40は、視差算出結果に基づいて、第1の撮影画像内の画素(マッチングに成功した画素)毎に、左カメラ101および右カメラ102から被写体30における当該画素に対応する点までの距離、すなわち深度を算出する。画像処理部40は、距離算出結果を図示されない外部装置へ送ってもよい。距離算出結果は、例えば第1の撮影画像の各画素の座標と当該画素の深度とを含み得る。距離算出結果は、いわゆる深度マップであってもよい。
【0032】
画像処理部40は、入出力制御、通信制御、および種々の画像処理(例えば、第1の撮影画像および第2の撮影画像の間のマッチング、視差および/または距離の算出、など)を行うプロセッサを含む。画像処理部40は、さらに、かかる処理を実現するためにプロセッサによって実行されるプログラムおよび当該プログラムによって使用されるデータなどを一時的に格納するメモリを含んでいる。
【0033】
機構制御部50は、可動部材121および可動部材122の回転角および/または位置を制御する。具体的には、機構制御部50は、例えばモーターなどの小型のアクチュエーターに所望の制御値を示す制御信号を与え、可動部材121および可動部材122を必要な分、回転および/または平行移動させる。
【0034】
機構制御部50は、例えば、左カメラ101および右カメラ102の目標輻輳角、目標視野方向および目標光軸間隔のうち少なくとも1つに基づいて、制御信号を生成してもよい。一例として、機構制御部50は、左カメラ101および右カメラ102の目標輻輳角または目標視野方向に基づいて、可動部材121および可動部材122の回転方向および回転量を制御してもよい。
【0035】
例えば、機構制御部50は、可動部材121および可動部材122を互いに逆の方向に同量回転させてもよい。これにより、左カメラ101および右カメラ102の視野方向を変えることなく輻輳角を調整することができる。ここで、可動部材121および可動部材122の回転の方向および大きさは、第1のカメラおよび第2のカメラの目標輻輳角に基づいて定められる。
【0036】
また、機構制御部50は、可動部材121および可動部材122を同方向に同量回転させてもよい。これにより、左カメラ101および右カメラ102の輻輳角を変えることなく視野方向を調整することができる。ここで、可動部材121および可動部材122の回転の方向および大きさは、第1のカメラおよび第2のカメラの目標視野方向に基づいて定められる。
【0037】
さらに、機構制御部50は、左カメラ101および右カメラ102の目標光軸間隔に基づいて、可動部材121および可動部材122の位置を制御してもよい。可動部材121および可動部材122の間の距離により、左カメラ101および右カメラ102の光軸間隔が決まる。
【0038】
ここで、可動部材121は、軸部と突起部とを有し、その軸部に可動ミラー111を取り付けられる。可動部材121は、左カメラ101および右カメラ102(を固定する支持部材)ならびに可動部材122とは独立して(すなわち連動することなく)回転および/または変位が可能である。可動部材121の回転および/または変位の少なくとも1つに連動して、可動ミラー111の回転角および/または位置が変化する。同様に、可動部材122は、軸部と突起部とを有し、その軸部に可動ミラー112を取り付けられる。可動部材122は、左カメラ101および右カメラ102ならびに可動部材121とは独立して(すなわち連動することなく)回転および/または変位が可能である。可動部材122の回転および/または変位の少なくとも1つに連動して、可動ミラー112の回転角および/または位置が変化する。なお、可動部材121および可動部材122の回転角および/または位置を手動で調整することも可能である。この場合に、機構制御部50は不要となり得る。
【0039】
可動ミラー111の回転角および/または位置は、前述のように、可動部材121の回転および/または変位に連動して変化する。同様に、可動ミラー112の回転角および/または位置は、前述のように、可動部材122の回転および/または変位に連動して変化する。
【0040】
ここで、
図1の例では、可動部材121は可動ミラー111の背面の中心付近に取り付けられ、可動部材122は可動ミラー112の背面の中心付近に取り付けられる。しかしながら、これは実装例の1つに過ぎない。可動部材121および可動部材122の取り付け位置は、
図11に例示されるように、可動ミラー112の背面の後方側に取り付けられてよい。
【0041】
具体的には、可動部材121は、可動ミラー111の回転する範囲に亘って、可動部材121の回転軸が第1の光線の可動ミラー111への入射方向から見て第1の平面よりも後方に位置するように可動ミラー111に取り付けられてよい。ここで、第1の平面とは、可動ミラー111の幾何中心を通り、かつ可動ミラー111の反射面(正面)に略垂直な平面を指す。同様に、可動部材122は、可動ミラー112の回転する範囲に亘って、可動部材122の回転軸が第2の光線の可動ミラー112への入射方向から見て第2の平面よりも後方に位置するように可動ミラー112に取り付けられてよい。ここで、第2の平面とは、可動ミラー112の幾何中心を通り、かつ可動ミラー112の反射面に略垂直な平面を指す。
【0042】
可動部材121および可動部材122をこのように取り付けることで、可動ミラー111および可動ミラー112の背面の中心付近に取り付けた場合に比べて、可動部材121および可動部材122の回転による左カメラ101および右カメラ102のカメラ位置のずれを抑制することができる。すなわち、光軸間隔をあまり変化させずに、輻輳角または視野方向を変化させることが可能となる。
【0043】
図11において、左カメラ101の仮想的なカメラ位置および/または姿勢P11と、左カメラ101の仮想的なカメラ位置および/または姿勢P21とを比べると、仮想的なカメラ姿勢は変化しているが仮想的なカメラ位置は殆ど変化していない。同様に、
図11において、右カメラ102の仮想的なカメラ位置および/または姿勢P12と、右カメラ102の仮想的なカメラ位置および/または姿勢P22とを比べると、仮想的なカメラ姿勢は変化しているが仮想的なカメラ位置は殆ど変化していない。
【0044】
左カメラ101は、光学レンズと、受光画素と、ADC(Analog-to-Digital Converter)とを含む撮像ユニットである。左カメラ101は、さらに色フィルタを含んでもよい。右カメラ102の構成は、左カメラ101と同一または類似であり得る。
【0045】
左カメラ101は、後述される第1の導光系からの入射光をレンズにより受光画素に結像し、アナログ/デジタル変換を行って、第1の撮影画像を生成する。左カメラ101は、第1の撮影画像を画像処理部40へ送る。同様に、右カメラ102は、後述される第2の導光系からの入射光をレンズにより受光画素に結像し、アナログ/デジタル変換を行って、第2の撮影画像を生成する。右カメラ102は、第2の撮影画像を画像処理部40へ送る。
【0046】
第1の撮影画像および第2の撮影画像は、例えばUSB(Universal Serial Bus)ケーブル、光ファイバケーブル、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)ケーブル、などの有線通信I/Fを介して、または例えばBluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)などの無線通信技術を利用する無線通信I/Fを介して送信され得る。
【0047】
左カメラ101は、例えばその背面(光学レンズの備え付けられた面に対する裏面)が支持部材131に固定されており、可動部材121および可動部材122の回転および変位のいずれによる影響も実質的に受けない。同様に、右カメラ102は、例えばその背面が支持部材132に固定されており、可動部材121および可動部材122の回転および変位のいずれによる影響も実質的に受けない。すなわち、
図1の例では、左カメラ101および右カメラ102は、互いに背中合わせとなるように支持部材131および支持部材132にそれぞれ固定されている。なお、
図6に例示されるように、左カメラ101の背面と右カメラ102の背面との間に、プロジェクター20が配置されてもよい。これにより、ステレオカメラ100およびプロジェクター20を同一の筐体に収容することができる。他方、ステレオカメラ100を収容する筐体をコンパクト化する観点から、ステレオカメラ100およびプロジェクター20を別々の筐体に収容してもよい。
【0048】
第1の導光系は、少なくとも1枚のミラーである第1のミラー群を含み、左カメラ101へ第1の光線を含む入射光を導く。可動ミラー111は、この第1のミラー群に含まれる。同様に、第2の導光系は、少なくとも1枚のミラーである第2のミラー群を含み、右カメラ102へ第2の光線を含む入射光を導く。可動ミラー112は、この第2のミラー群に含まれる。
【0049】
左カメラ101の仮想的なカメラ位置および/または姿勢は、第1の導光系の構成に依存する。具体的には、
図1に例示されるように、左カメラ101の仮想的なカメラ位置および/または姿勢P11は、第1のミラー群のうち第1の光線の光路上で左カメラ101から最も遠いミラー(
図1の例では可動ミラー111)における入射光としての第1の光線を仮想的に延長した直線に基づいて決まる。同様に、右カメラ102の仮想的なカメラ位置および/または姿勢は、第2の導光系の構成に依存する。具体的には、
図1に例示されるように、右カメラ102の仮想的なカメラ位置および/または姿勢P12は、第2のミラー群のうち第2の光線の光路上で右カメラ102から最も遠いミラー(
図1の例では可動ミラー111)における入射光としての第2の光線を仮想的に延長した直線に基づいて決まる。
【0050】
可動ミラー111の位置または回転角が変化すると、左カメラ101の仮想的なカメラ位置および/または姿勢が変化する。同様に、可動ミラー112の位置または回転角が変化すると、右カメラ102の仮想的なカメラ位置および/または姿勢が変化する。これは、左カメラ101および右カメラ102の輻輳角、視野方向および光軸間隔の少なくとも1つが変化することを意味する。
【0051】
図4および
図5に一例としてのステレオカメラ100の正面図および底面図をそれぞれ示す。
図4において、図の上から下へ向かう方向が鉛直方向に相当する。すなわち、
図4および
図5の例では、ステレオカメラ100の下に被写体30が配置されていることになる。しかしながら、これは実装例の1つに過ぎず、
図4が底面図かつ
図5が正面図である、すなわち被写体30およびステレオカメラ100は鉛直方向上で重なり合っていない、と解することもできる。
【0052】
図4および
図5の例では、ステレオカメラ100は、
図1において説明した要素に加えて、ベース部材140と、ケーブル151と、ケーブル152とを含む。
【0053】
ベース部材140は、第1の面と、第2の面と、第1の面および第2の面の間を貫くスリットとを有する。
図4では、第1の面およびスリットが描かれているものの、第2の面は第1の面の反対側の面であるため描かれていない。可動部材121および可動部材122は、それぞれベース部材140のスリットを貫通するように配置されており、当該スリットに沿って平行移動することができる。
【0054】
なお、
図4では、可動部材121が貫通するスリットと可動部材122が貫通するスリットとはつながっていないが、両者がつながっていてもよい。或いは、ベース部材140は、可動部材121が貫通するスリットを有する第1のベース部材と、可動部材122が貫通するスリットを有する第2のベース部材とで構成されてもよい。また、
図5の例では、ベース部材140は断面がH字型の柱状部材として形成されているが、スリットを有する複数の板状部材と当該複数の板状部材を接続する接続部材とで構成されてもよい。
【0055】
可動部材121は、その長手方向の両端にその周方向へ突出した突起部を有している。可動部材121は、この突起部をそれぞれベース部材140の面(例えば第1の面)に掛けた状態で、当該可動部材121の(軸部の)一部が当該面の反対側の面(例えば第2の面)から露出するようにスリットを貫通している。さらに、可動部材121は、この突起部がベース部材140の面に掛かった状態で、支持部材131および支持部材132ならびに可動部材122と独立して、当該可動部材121の長手方向を軸とした回転および/またはスリットに沿った変位が可能である。
【0056】
同様に、可動部材122は、その長手方向の両端に周方向へ突出した突起部を有している。可動部材122は、この突起部をそれぞれベース部材140の面(例えば第1の面)に掛けた状態で、当該可動部材122の(軸部の)一部が当該面の反対側の面(例えば第2の面)から露出するようにスリットを貫通している。さらに、可動部材122は、この突起部がベース部材140の面に掛かった状態で、支持部材131および支持部材132ならびに可動部材121と独立して、当該可動部材122の長手方向を軸とした回転および/またはスリットに沿った変位が可能である。
【0057】
ケーブル151は、例えばUSBケーブルであって、左カメラ101への電源供給および/またはデータ伝送に用いられる。同様に、ケーブル152は、例えばUSBケーブルであって、右カメラ102への電源供給および/またはデータ伝送に用いられる。
【0058】
次に、
図7、
図8および
図9に変形例としてのステレオカメラ100の正面図、側面図および底面図をそれぞれ示す。
図7において、図の上から下へ向かう方向が鉛直方向に相当する。すなわち、
図7乃至
図9の例では、ステレオカメラ100の下に被写体30が配置されていることになる。しかしながら、これは実装例の1つに過ぎず、
図7が底面図かつ
図9が正面図である、すなわち被写体30およびステレオカメラ100は鉛直方向上で重なり合っていない、と解することもできる。
【0059】
図7乃至
図9の例では、ステレオカメラ100は、
図1において説明した要素に加えて、ベース部材140と、ギア161と、ギア162と、モーター171と、モーター172とを含む。
【0060】
ベース部材140は、第1の面と、第2の面と、第1の面および第2の面の間を貫く孔とを有する。
図7では、第1の面が描かれているものの、第2の面は第1の面の反対側の面であるため、また孔は可動部材121、可動部材122、ギア161およびギア162によって遮蔽されているため、描かれていない。可動部材121および可動部材122は、それぞれベース部材140の孔を貫通するように配置されている。
【0061】
なお、ベース部材140は、可動部材121およびギア161が貫通する孔を有する第1のベース部材と、可動部材122およびギア162が貫通する孔を有する第2のベース部材とで構成されてもよい。また、
図9の例では、ベース部材140は、スリットを有する2つの板状部材と当該複数の板状部材を接続する接続部材とで構成されているが、ベース部材140は断面がH字型の柱状部材として形成されてもよい。
【0062】
可動部材121は、その長手方向の一端に周方向へ突出したギア状の突起部を有している。可動部材121は、この突起部をベース部材140の第1の面に掛けた状態で、当該可動部材121の一部が第2の面から露出するように孔を貫通している。また、可動部材121の突起部は、ギア161と噛み合うように配置される。故に、可動部材121は、この突起部がベース部材140の第1の面に掛かった状態で、支持部材131および支持部材132ならびに可動部材122と独立して、ギア161の回転に連動して当該可動部材121の長手方向を軸とした回転が可能である。
【0063】
同様に、可動部材122は、その長手方向の一端に周方向へ突出したギア状の突起部を有している。可動部材122は、この突起部をベース部材140の第1の面に掛けた状態で、当該可動部材122の一部が第2の面から露出するように孔を貫通している。また、可動部材122の突起部は、ギア162と噛み合うように配置される。故に、可動部材122は、この突起部がベース部材140の第1の面に掛かった状態で、支持部材131および支持部材132ならびに可動部材121と独立して、ギア162の回転に連動して当該可動部材122の長手方向を軸とした回転が可能である。
【0064】
ギア161は、モーター171のシャフトの先端に取り付けられ、可動部材121の突起部と噛み合うように、ベース部材140の第1の面上に配置される。同様に、ギア162は、モーター172のシャフトの先端に取り付けられ、可動部材122の突起部と噛み合うように、ベース部材140の第1の面上に配置される。
【0065】
モーター171は、そのシャフトの先端の一部がベース部材140の第1の面から露出するように孔を貫通しており、その露出部分にはギア161が取り付けられる。モーター171は、電気信号を受け取り、その電気的エネルギーを力学的エネルギーに変換し、この力学的エネルギーによってギア161を回転駆動する。モーター171は、第1の光線を含む左カメラ101への入射光の光路を妨げないように配置され得る。例えば、モーター171は、左カメラ101との間に第1の導光系が収まるように配置され得る。
【0066】
同様に、モーター172は、そのシャフトの先端の一部がベース部材140の第1の面から露出するように孔を貫通しており、その露出部分にはギア162が取り付けられる。モーター172は、電気信号を受け取り、その電気的エネルギーを力学的エネルギーに変換し、この力学的エネルギーによってギア162を回転駆動する。モーター172は、第2の光線を含む右カメラ102への入射光の光路を妨げないように配置され得る。例えば、モーター172は、右カメラ102との間に第2の導光系が収まるように配置され得る。
【0067】
モーター171およびモーター172は、互いに独立の電気信号により制御され得る。これらの電気信号は、例えば機構制御部50から供給され得る。
図7乃至
図9に例示されるステレオカメラ100によれば、可動部材121および可動部材122の回転角、すなわち左カメラ101および右カメラ102の少なくとも輻輳角および/または視野方向を電気的に制御することができる。
【0068】
ステレオカメラ100における各種構造部品、具体的には、可動部材121、可動部材122、支持部材131、支持部材132、ベース部材140、ギア161、およびギア162の一部または全部には、例えばマグネシウムなどの軽金属、またはPPS(Polyphenylene sulfide)などの樹脂、といった軽量性および強度に優れた素材が用いられ得る。かかる素材を適切に用いることで、多眼カメラ装置を実用的な強度を維持しながらも軽量に構成することが可能である。
【0069】
以下、
図3を用いて、
図2の視差/距離計測システムの動作を説明する。
まず、プロジェクター20が、プロジェクター/カメラ制御部10からの命令に従って、被写体30に計測用パターンを投射する(ステップS201)。プロジェクター20は、少なくとも次のステップS202が終了するまで、被写体30に計測用パターンを投射し続ける必要がある。
【0070】
次に、左カメラ101および右カメラ102がそれぞれ、プロジェクター/カメラ制御部10からの命令に従って、被写体30を撮影し、第1の撮影画像および第2の撮影画像を生成する(ステップS202)。ステップS202において生成された第1の撮影画像および第2の撮影画像は、画像処理部40によって取得される。ステップS202の後に処理はステップS203へと進む。
【0071】
ステップS203において、画像処理部40は、第1の撮影画像内の未処理の画素の中から注目画素を決定する。注目画素は、例えばラスタスキャン順、またはその他の順序で順番に選定され得る。
【0072】
画像処理部40は、ステップS203において決定した注目画素を含む第1の画素ブロックを抽出する(ステップS204)。例えば、画像処理部40は、注目画素が中心に位置するように第1の画素ブロックを抽出してよい。画像処理部40は、ステップS204において抽出した第1の画素ブロックに対応する第2の画素ブロックを第2の撮影画像から探索する(ステップS205)。
【0073】
画像処理部40は、ステップS205において得られたマッチング結果に基づいて、ステップS203において決定した注目画素に関する左カメラ101および右カメラ102の視差を算出する(ステップS206)。
【0074】
画像処理部40は、ステップS206において得られた視差算出結果に基づいて、左カメラ101および右カメラ102から被写体30における注目画素に対応する点までの距離、すなわち深度を算出する(ステップS207)。そして、処理はステップS208へ進む。なお、さらに、図示されない外部装置、または画像処理部40が距離算出結果に基づいて被写体30の3次元形状を推定してもよい。
【0075】
ステップS208において、第1の撮影画像の各画素についてステップS203乃至ステップS207の処理が済んでいれば
図3の動作は終了し、未処理の画素が残存していれば処理はステップS203に戻る。
【0076】
なお、ステップS206およびステップS207は、第1の撮影画像の各画素についてマッチング(ステップS203乃至ステップS205)が完了した後にまとめて行われてもよい。
【0077】
以上説明したように、実施形態に係る多眼カメラ装置は、2つのカメラおよび他の可動部材と独立して回転および/または変位が可能な可動部材を2つ備えており、この可動部材の回転および変位の少なくとも1つに連動して当該可動部材に取り付けられたミラーの回転角および/または位置が変化する。そして、かかる変化に基づいて、2つのカメラの輻輳角、視野方向および間隔の少なくとも1つが変化する。故に、この多眼カメラ装置によれば、可動部材およびミラーという限られた部品を動かすことで、カメラ、すなわちレンズ、受光画素およびADCなどを含む撮像ユニット全体を何ら動かすことなく、多眼カメラに関するパラメータ、例えば、輻輳角、視野方向、および光軸間隔など、の少なくとも1つを可変とすることができる。すなわち、本実施形態によれば、パラメータ可変の多眼カメラをコンパクトな機構により実現し、可動ミラーの駆動、すなわちパラメータの変更を高速に行うことができる。また、この多眼カメラ装置において、パラメータの変更のためにカメラを動かす必要がないので、当該カメラに接続されたケーブルの摩耗、断線が生じにくい。
【0078】
なお、ステレオカメラ100のうち、左カメラ101および右カメラ102以外の要素の一部または全部をまとめて、ミラー可動機構と呼ぶこともできる。このミラー可動機構は、多眼カメラのアタッチメントであってよい。例えば、可動ミラー111、可動ミラー112、可動部材121、および可動部材122を含むミラー可動機構を、通常のステレオカメラに取り付けることでパラメータ可変のステレオカメラのパラメータを構成することができる。
【0079】
(変形例1)
図1、
図2、
図5、
図6、
図9および
図10の例では、いずれも左カメラ101および右カメラ102は互いに背中合わせとなるように配置されている。しかしながら、左カメラ101および右カメラ102の寸法、特に正面から背面までの奥行きが大きい場合には、両者を背中合わせに配置すると、ステレオカメラ100の幅が許容範囲を超えて大きくなるおそれがある。
【0080】
そこで、
図11に例示されるように、左カメラ101および右カメラ102は、光軸が略平行となるように配置されてもよい。これにより、ステレオカメラ100の幅をより小さくに構成することが可能となる。
【0081】
なお、
図11の例では、左カメラ101および右カメラ102の向きの変更に伴い、両カメラの入射光の光路をさらに曲げるためのミラー181およびミラー182が第1の導光系および第2の導光系にそれぞれ追加されている。
【0082】
具体的には、ミラー181は、第1の光線の光路上に配置され、可動ミラー111によって反射された第1の光線をさらに反射して左カメラ101へ導く。同様に、ミラー182は、第2の光線の光路上に配置され、可動ミラー112によって反射された第2の光線をさらに反射して右カメラ102へ導く。ミラー181およびミラー182は、固定であってもよいし、可動であってもよい。
【0083】
(変形例2)
前述の実施形態では、左カメラおよび右カメラを動かすことなく、パラメータ可変の多眼カメラを実現する。しかしながら、例えば
図12および
図13に例示されるように、左カメラ101および右カメラ102を動かすことなく可動ミラー111および可動ミラー112の回転角を変化させると、左カメラ101および右カメラ102へ入射する光束が変化する。故に、可動ミラー111および可動ミラー112の回転角次第では、左カメラ101および右カメラ102へ入射する光束が大幅に減少し撮影画像の画質が許容範囲を超えて劣化するおそれがある。
【0084】
そこで、上記実施形態に係る多眼カメラ装置または上記変形例1に係るミラー可動機構において、左カメラ101および右カメラ102を固定する支持部材131および支持部材132を回転させるための可動部材がさらに設けられてもよい。
【0085】
図14にこの変形例2に係る多眼カメラ装置(ステレオカメラ)を例示する。この多眼カメラ装置は、可動部材191および可動部材192を備えている点で、
図1に例示された多眼カメラ装置(ステレオカメラ)とは異なる。
【0086】
可動部材191および可動部材192は、支持部材131および支持部材132を回転させるための任意の構成を採り得るが、ここでは可動部材121および可動部材122と同様の構成であることとする。また、可動部材191および可動部材192の回転角は、可動部材121および可動部材122の回転角と同様に、機構制御部50によって制御され得るが、可動部材191および可動部材192の回転角を手動で調整することも可能である。
【0087】
具体的には、可動部材191は、軸部と突起部とを有し、その軸部に支持部材131を取り付けられる。可動部材191は、可動部材121、可動部材122および可動部材192とは独立して(すなわち連動することなく)回転が可能であり、この回転に連動して、支持部材131の回転角が変化する。可動部材191の回転角は、可動部材121の回転角に基づいて決定され得る。例えば、可動ミラー111の回転角(
図14のθ1)が大きくなるほど、支持部材131の回転角(
図14のθ3)も大きくなるように、可動部材191の回転角は決定され得る。
【0088】
同様に、可動部材192は、軸部と突起部とを有し、その軸部に支持部材132を取り付けられる。可動部材192は、可動部材121、可動部材122および可動部材191とは独立して(すなわち連動することなく)回転が可能であり、この回転に連動して、支持部材132の回転角が変化する。可動部材192の回転角は、可動部材122の回転角に基づいて決定され得る。例えば、可動ミラー112の回転角(
図14のθ2)が大きくなるほど、支持部材132の回転角(
図14のθ4)も大きくなるように、可動部材192の回転角は決定され得る。
【0089】
支持部材131の回転に伴って、左カメラ101の光軸も回転する。同様に、同様に、支持部材132の回転に伴って、右カメラ102の光軸も回転する。
図14のように可動ミラー111および可動ミラー112の回転角の増減に応じて、支持部材131および支持部材132の回転角も増減させることで、可動ミラー111および可動ミラー112の回転に伴う、左カメラ101および右カメラ102へ入射する光束の減少を緩和することができる。さらに、可動ミラー111および可動ミラー112の要求寸法を小さくすることができるので、これらの重量およびモーメントを抑え、応答性を高めることが可能となる。
【0090】
なお、支持部材131および支持部材132の回転角の可変範囲を大きくするほど、上記効果の向上が期待できる。反面、支持部材131および支持部材132の回転角の可変範囲を大きくすることは、ミラー可動機構の大型化を招く。そこで、例えば、支持部材131および支持部材132の回転角の可変範囲が、例えば10度以内などに制限されてもよい。
【0091】
(変形例3)
前述の変形例2では、左カメラ101および右カメラ102の支持部材131および支持部材132に可動部材191および可動部材192をそれぞれ取り付け、左カメラ101および右カメラ102の光軸を傾けることを可能にした。さらなる変形例として、左カメラ101および右カメラ102とその支持部材131および支持部材132を
図14に例示されるように予め傾けて固定配置することで、かかる可動部材191および可動部材192を利用することなく、左カメラ101および右カメラ102の光軸を傾けてもよい。
【0092】
具体的には、左カメラ101および支持部材131は、左カメラ101および右カメラ102を互いに背中合わせに配置した場合(
図1)に比べて第1の角度(
図14のθ3に相当)傾けて配置され得る。また、右カメラ102および支持部材132は、左カメラ101および右カメラ102を互いに背中合わせに配置した場合(
図1)に比べて第1の角度(
図14のθ4に相当)傾けて配置され得る。ここで、第1の角度および第2の角度は、それぞれ例えば10度以内などに制限されてもよい。
【0093】
かかる構成によっても、可動ミラー111および可動ミラー112の回転角次第では、ミラー可動機構の大型化を招くことなく変形例2と同様の効果を得ることができる。すなわち、可動ミラー111および可動ミラー112の回転に伴う、左カメラ101および右カメラ102へ入射する光束の減少を緩和することができる。さらに、可動ミラー111および可動ミラー112の要求寸法を小さくすることができるので、これらの重量およびモーメントを抑え、応答性を高めることが可能となる。
【0094】
上述の実施形態は、本発明の概念の理解を助けるための具体例を示しているに過ぎず、本発明の範囲を限定することを意図されていない。実施形態は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、様々な構成要素の付加、削除または転換をすることができる。
【0095】
上述の実施形態では、いくつかの機能部を説明したが、これらは各機能部の実装の一例に過ぎない。例えば、1つの装置に実装されると説明された複数の機能部が複数の別々の装置に亘って実装されることもあり得るし、逆に複数の別々の装置に亘って実装されると説明された機能部が1つの装置に実装されることもあり得る。
【0096】
上記各実施形態において説明された種々の機能部は、回路を用いることで実現されてもよい。回路は、特定の機能を実現する専用回路であってもよいし、プロセッサのような汎用回路であってもよい。
【0097】
上記各実施形態の処理の少なくとも一部は、例えば汎用のコンピュータに搭載されたプロセッサを基本ハードウェアとして用いることでも実現可能である。上記処理を実現するプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に格納して提供されてもよい。プログラムは、インストール可能な形式のファイルまたは実行可能な形式のファイルとして記録媒体に記憶される。記録媒体としては、磁気ディスク、光ディスク(CD-ROM、CD-R、DVD等)、光磁気ディスク(MO等)、半導体メモリなどである。記録媒体は、プログラムを記憶でき、かつ、コンピュータが読み取り可能であれば、何れであってもよい。また、上記処理を実現するプログラムを、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ(サーバ)上に格納し、ネットワーク経由でコンピュータ(クライアント)にダウンロードさせてもよい。
【符号の説明】
【0098】
10・・・プロジェクター/カメラ制御部
20・・・プロジェクター
30・・・被写体
40・・・画像処理部
50・・・機構制御部
100・・・ステレオカメラ
101,102・・・カメラ
111,112・・・可動ミラー
121,122,191,192・・・可動部材
131,132・・・支持部材
140・・・ベース部材
151,152・・・ケーブル
161,162・・・ギア
171,172・・・モーター
181,182・・・ミラー