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特許7102265スイッチング電源およびスイッチング電源制御回路
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】スイッチング電源およびスイッチング電源制御回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20220711BHJP
【FI】
H02M3/28 Q
H02M3/28 H
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018126281
(22)【出願日】2018-07-02
(65)【公開番号】P2020010414
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120385
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 健之
(72)【発明者】
【氏名】堀江 民夫
(72)【発明者】
【氏名】久田 茂
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-024301(JP,A)
【文献】特開2014-045595(JP,A)
【文献】特開2013-021758(JP,A)
【文献】特開2015-204726(JP,A)
【文献】特開2012-019595(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0087543(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00-3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が電源の正極端子に接続された第1スイッチング素子と、
一端が前記第1スイッチング素子の他端との接続点に接続され、他端が前記電源の負極端子に接続された第2スイッチング素子と、
前記接続点と前記第2スイッチング素子の他端との間に接続された1次巻線および前記1次巻線に磁気結合する2次巻線を有するトランスと、
前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子を制御する制御回路と、を備え、
前記制御回路は、
充放電可能なキャパシタと、
前記電源から供給される電力による前記キャパシタの充放電を制御するとともにキャパシタ電圧を検出し、前記キャパシタ電圧に応じて前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子のオンオフを制御するスイッチング制御部と、
前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子の一方のオフから他方のオンまでの期間であるデッドタイムを補正するデッドタイム補正部と、を有し、
前記スイッチング制御部は、
前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子がオフした状態で前記キャパシタ電圧が下限設定電圧に達したときに、前記第2スイッチング素子をオフしたまま前記第1スイッチング素子をオンし、前記第1スイッチング素子をオンした後に前記キャパシタ電圧が上限設定電圧に達したときに、前記第1スイッチング素子をオフし、前記第1スイッチング素子をオフした後に前記キャパシタ電圧が前記下限設定電圧に達したときに、前記第1スイッチング素子をオフしたまま前記第2スイッチング素子をオンし、前記第2スイッチング素子をオンした後に前記キャパシタ電圧が前記上限設定電圧に達したときに、前記第2スイッチング素子をオフし、
前記デッドタイム補正部は、
前記接続点の電圧を検出し、前記接続点の検出電圧が、前記スイッチング制御部によって前記キャパシタを放電させる放電期間において基準電圧に達したときに、前記キャパシタの単位時間当たりの放電量を増加させて前記キャパシタ電圧が前記下限設定電圧に達するまでの所要時間を短縮させることで前記デッドタイムを補正することを特徴とするスイッチング電源。
【請求項2】
一端が電源の正極端子に接続された第1スイッチング素子と、
一端が前記第1スイッチング素子の他端との接続点に接続され、他端が前記電源の負極端子に接続された第2スイッチング素子と、
前記接続点と前記第2スイッチング素子の他端との間に接続された1次巻線および前記1次巻線に磁気結合する2次巻線を有するトランスと、
前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子を制御する制御回路と、を備え、
前記制御回路は、
充放電可能なキャパシタと、
前記電源から供給される電力による前記キャパシタの充放電を制御するとともにキャパシタ電圧を検出し、前記キャパシタ電圧に応じて前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子のオンオフを制御するスイッチング制御部と、
前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子の一方のオフから他方のオンまでの期間であるデッドタイムを補正するデッドタイム補正部と、を有し、
前記スイッチング制御部は、
前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子がオフした状態で前記キャパシタ電圧が上限設定電圧に達したときに、前記第2スイッチング素子をオフしたまま前記第1スイッチング素子をオンし、前記第1スイッチング素子をオンした後に前記キャパシタ電圧が下限設定電圧に達したときに、前記第1スイッチング素子をオフし、前記第1スイッチング素子をオフした後に前記キャパシタ電圧が前記上限設定電圧に達したときに、前記第1スイッチング素子をオフしたまま前記第2スイッチング素子をオンし、前記第2スイッチング素子をオンした後に前記キャパシタ電圧が前記下限設定電圧に達したときに、前記第2スイッチング素子をオフし、
前記デッドタイム補正部は、
前記接続点の電圧を検出し、前記接続点の検出電圧が、前記スイッチング制御部によって前記キャパシタを充電させる充電期間において基準電圧に達したときに、前記キャパシタの単位時間当たりの充電量を増加させて前記キャパシタ電圧が前記上限設定電圧に達するまでの所要時間を短縮させることで前記デッドタイムを補正することを特徴とするスイッチング電源。
【請求項3】
前記制御回路は、
前記接続点の電圧を分圧する分圧回路を更に有し、
前記デッドタイム補正部は、
前記分圧された電圧を検出することで前記接続点の電圧を検出することを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源。
【請求項4】
前記デッドタイム補正部は、
前記電源の電圧を検出し、前記電源の検出電圧に応じた値を有するように前記基準電圧を生成する基準電圧生成器を有し、
前記接続点の検出電圧が前記基準電圧生成器で生成された基準電圧に達したときに、前記キャパシタの放電量を増加させることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源。
【請求項5】
前記基準電圧生成器は、
前記電源の略1/2の値で前記キャパシタの放電電流を増加させるように前記基準電圧を生成することを特徴とする請求項4に記載のスイッチング電源。
【請求項6】
前記基準電圧生成器は、
前記電源の検出電圧が入力される非反転入力端子と、前記基準電圧が出力される出力端子と、前記出力端子から出力された前記基準電圧が入力される反転入力端子と、を有するバッファ・アンプを備えることを特徴とする請求項4に記載のスイッチング電源。
【請求項7】
前記デッドタイム補正部は、
前記接続点の検出電圧と前記基準電圧とを比較して、前記接続点の検出電圧の前記基準電圧への立上りまたは立下りを検出するための第2のコンパレータを更に有し、
前記第2のコンパレータによって前記接続点の検出電圧の前記立上りまたは立下りが検出されたときに、前記キャパシタの放電量を増加させることを特徴とする請求項6に記載のスイッチング電源。
【請求項8】
前記第2のコンパレータは、
反転入力端子に前記バッファ・アンプの出力端子から出力された前記基準電圧が入力され、非反転入力端子に前記接続点の検出電圧が入力され、出力端子から前記接続点の検出電圧の前記立上りまたは立下りを検出するための検出信号が出力されることを特徴とする請求項7に記載のスイッチング電源。
【請求項9】
前記デッドタイム補正部は、
前記検出信号に基づいて前記接続点の検出電圧の立上りまたは立下りを検出し、前記立上りまたは立下りが検出されたときにパルス信号を出力するパルス発生器を更に有し、
前記パルス発生器から出力された前記パルス信号に応じて、前記キャパシタの放電量を増加させることを特徴とする請求項8に記載のスイッチング電源。
【請求項10】
前記デッドタイム補正部は、前記パルス信号に応じて前記キャパシタを放電する放電回路を更に有することを特徴とする請求項9に記載のスイッチング電源。
【請求項11】
前記キャパシタは、一端が前記放電回路に接続され、他端が固定電位に接続され、
前記スイッチング制御部は、前記キャパシタの一端と前記放電回路との間の検出ノードの電圧を検出することで前記キャパシタ電圧を検出することを特徴とする請求項10に記載のスイッチング電源。
【請求項12】
前記放電回路は、
一端が前記キャパシタの一端に接続された抵抗と、
一端が前記抵抗の他端に接続され、他端が固定電位に接続され、制御端子が前記パルス発生器の出力端に接続されたトランジスタと、を有することを特徴とする請求項11に記載のスイッチング電源。
【請求項13】
前記スイッチング制御部は、
前記接続点の検出電圧の立上りが検出されたときの前記パルス信号の出力期間が終了したときに、前記第1スイッチング素子をオンし、前記接続点の検出電圧の立下りが検出されたときの前記パルス信号の出力期間が終了したときに、前記第2スイッチング素子をオンすることを特徴とする請求項9に記載のスイッチング電源。
【請求項14】
前記パルス発生器は、前記キャパシタ電圧が前記下限設定電圧に達した時点で前記パルス信号の出力を終了することを特徴とする請求項9に記載のスイッチング電源。
【請求項15】
一端が電源の正極端子に接続された第1スイッチング素子と、
一端が前記第1スイッチング素子の他端との接続点に接続され、他端が前記電源の負極端子に接続された第2スイッチング素子と、
前記接続点と前記第2スイッチング素子の他端との間に接続された1次巻線および前記1次巻線に磁気結合する2次巻線を有するトランスと、を備えるスイッチング電源に備えられ、
充放電可能なキャパシタと、
前記電源から供給される電力による前記キャパシタの充放電を制御するとともにキャパシタ電圧を検出し、前記キャパシタ電圧に応じて前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子のオンオフを制御するスイッチング制御部と、
前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子の一方のオフから他方のオンまでの期間であるデッドタイムを補正するデッドタイム補正部と、を有し、
前記スイッチング制御部は、
前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子がオフした状態で前記キャパシタ電圧が下限設定電圧に達したときに、前記第2スイッチング素子をオフしたまま前記第1スイッチング素子をオンし、前記第1スイッチング素子をオンした後に前記キャパシタ電圧が上限設定電圧に達したときに、前記第1スイッチング素子をオフし、前記第1スイッチング素子をオフした後に前記キャパシタ電圧が前記下限設定電圧に達したときに、前記第1スイッチング素子をオフしたまま前記第2スイッチング素子をオンし、前記第2スイッチング素子をオンした後に前記キャパシタ電圧が前記上限設定電圧に達したときに、前記第2スイッチング素子をオフし、
前記デッドタイム補正部は、
前記接続点の電圧を検出し、前記接続点の検出電圧が、前記スイッチング制御部によって前記キャパシタを放電させる放電期間において基準電圧に達したときに、前記キャパシタの単位時間当たりの放電量を増加させて前記キャパシタ電圧が前記下限設定電圧に達するまでの所要時間を短縮させることで前記デッドタイムを補正することを特徴とするスイッチング電源制御回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源およびスイッチング電源制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、直流電源の正極端子と負極端子との間において直列接続された2つのスイッチング素子と、ローサイド側のスイッチング素子の両端間において直列接続された共振コンデンサ、リーケージインダクタンスおよび1次巻線と、1次巻線とともにトランスを構成する2次巻線とを備えるスイッチング電源が採用されていた。この種のスイッチング電源においては、2つのスイッチング素子が同時にオンしないようにデッドタイムを設けて各スイッチング素子を交互にオンすることで、電源からトランスの出力側に供給されるエネルギを調整していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3459142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来は、スイッチング素子のオンオフの周波数が高い(すなわち、単位時間当たりのオンオフの切替回数が多い)高周波のスイッチング動作に対応したデッドタイムを設けることについて何ら有効な提案がなされていないのが実情であった。このため、従来は、高周波のスイッチング動作に対応したZVS(Zero Voltage Switching)ができず、スイッチング効率を向上させることが困難であるといった問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、高周波のスイッチング動作におけるスイッチング効率を向上させることができるスイッチング電源およびスイッチング電源制御回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るスイッチング電源は、
一端が電源の正極端子に接続された第1スイッチング素子と、
一端が前記第1スイッチング素子の他端との接続点に接続され、他端が前記電源の負極端子に接続された第2スイッチング素子と、
前記接続点と前記第2スイッチング素子の他端との間に接続された1次巻線および前記1次巻線に磁気結合する2次巻線を有するトランスと、
前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子を制御する制御回路と、を備え、
前記制御回路は、
充放電可能なキャパシタと、
前記電源から供給される電力による前記キャパシタの充放電を制御するとともにキャパシタ電圧を検出し、前記キャパシタ電圧に応じて前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子のオンオフを制御するスイッチング制御部と、
前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子の一方のオフから他方のオンまでの期間であるデッドタイムを補正するデッドタイム補正部と、を有し、
前記スイッチング制御部は、
前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子がオフした状態で前記キャパシタ電圧が下限設定電圧に達したときに、前記第2スイッチング素子をオフしたまま前記第1スイッチング素子をオンし、前記第1スイッチング素子をオンした後に前記キャパシタ電圧が上限設定電圧に達したときに、前記第1スイッチング素子をオフし、前記第1スイッチング素子をオフした後に前記キャパシタ電圧が前記下限設定電圧に達したときに、前記第1スイッチング素子をオフしたまま前記第2スイッチング素子をオンし、前記第2スイッチング素子をオンした後に前記キャパシタ電圧が前記上限設定電圧に達したときに、前記第2スイッチング素子をオフし、
前記デッドタイム補正部は、
前記接続点の電圧を検出し、前記接続点の検出電圧が、前記スイッチング制御部によって前記キャパシタを放電させる放電期間において基準電圧に達したときに、前記キャパシタの単位時間当たりの放電量を増加させて前記キャパシタ電圧が前記下限設定電圧に達するまでの所要時間を短縮させることで前記デッドタイムを補正する。
【0007】
本発明の他の一態様に係るスイッチング電源は、
一端が電源の正極端子に接続された第1スイッチング素子と、
一端が前記第1スイッチング素子の他端との接続点に接続され、他端が前記電源の負極端子に接続された第2スイッチング素子と、
前記接続点と前記第2スイッチング素子の他端との間に接続された1次巻線および前記1次巻線に磁気結合する2次巻線を有するトランスと、
前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子を制御する制御回路と、を備え、
前記制御回路は、
充放電可能なキャパシタと、
前記電源から供給される電力による前記キャパシタの充放電を制御するとともにキャパシタ電圧を検出し、前記キャパシタ電圧に応じて前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子のオンオフを制御するスイッチング制御部と、
前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子の一方のオフから他方のオンまでの期間であるデッドタイムを補正するデッドタイム補正部と、を有し、
前記スイッチング制御部は、
前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子がオフした状態で前記キャパシタ電圧が上限設定電圧に達したときに、前記第2スイッチング素子をオフしたまま前記第1スイッチング素子をオンし、前記第1スイッチング素子をオンした後に前記キャパシタ電圧が下限設定電圧に達したときに、前記第1スイッチング素子をオフし、前記第1スイッチング素子をオフした後に前記キャパシタ電圧が前記上限設定電圧に達したときに、前記第1スイッチング素子をオフしたまま前記第2スイッチング素子をオンし、前記第2スイッチング素子をオンした後に前記キャパシタ電圧が前記下限設定電圧に達したときに、前記第2スイッチング素子をオフし、
前記デッドタイム補正部は、
前記接続点の電圧を検出し、前記接続点の検出電圧が、前記スイッチング制御部によって前記キャパシタを充電させる充電期間において基準電圧に達したときに、前記キャパシタの単位時間当たりの充電量を増加させて前記キャパシタ電圧が前記上限設定電圧に達するまでの所要時間を短縮させることで前記デッドタイムを補正する。
【0008】
前記スイッチング電源において、
前記制御回路は、
前記接続点の電圧を分圧する分圧回路を更に有し、
前記デッドタイム補正部は、
前記分圧された電圧を検出することで前記接続点の電圧を検出してもよい。
【0009】
前記スイッチング電源において、
前記デッドタイム補正部は、
前記電源の電圧を検出し、前記電源の検出電圧に応じた値を有するように前記基準電圧を生成する基準電圧生成器を有し、
前記接続点の検出電圧が前記基準電圧生成器で生成された基準電圧に達したときに、前記キャパシタの放電量を増加させてもよい。
【0010】
前記スイッチング電源において、
前記基準電圧生成器は、
前記電源の略1/2の値で前記キャパシタの放電電流を増加させるように前記基準電圧を生成してもよい。
【0011】
前記スイッチング電源において、
前記基準電圧生成器は、
前記電源の検出電圧が入力される非反転入力端子と、前記基準電圧が出力される出力端子と、前記出力端子から出力された前記基準電圧が入力される反転入力端子と、を有するバッファ・アンプを備えてもよい。
【0012】
前記スイッチング電源において、
前記デッドタイム補正部は、
前記接続点の検出電圧と前記基準電圧とを比較して、前記接続点の検出電圧の前記基準電圧への立上りまたは立下りを検出するための第2のコンパレータを更に有し、
前記第2のコンパレータによって前記接続点の検出電圧の前記立上りまたは立下りが検出されたときに、前記キャパシタの放電量を増加させてもよい。
【0013】
前記スイッチング電源において、
前記第2のコンパレータは、
反転入力端子に前記コンパレータの出力端子から出力された前記基準電圧が入力され、非反転入力端子に前記接続点の検出電圧が入力され、出力端子から前記接続点の検出電圧の前記立上りまたは立下りを検出するための検出信号が出力されてもよい。
【0014】
前記スイッチング電源において、
前記デッドタイム補正部は、
前記検出信号に基づいて前記接続点の検出電圧の立上りまたは立下りを検出し、前記立上りまたは立下りが検出されたときにパルス信号を出力するパルス発生器を更に有し、
前記パルス発生器から出力された前記パルス信号に応じて、前記キャパシタの放電量を増加させてもよい。
【0015】
前記スイッチング電源において、
前記デッドタイム補正部は、前記パルス信号に応じて前記キャパシタを放電する放電回路を更に有してもよい。
【0016】
前記スイッチング電源において、
前記キャパシタは、一端が前記放電回路に接続され、他端が固定電位に接続され、
前記スイッチング制御部は、前記キャパシタの一端と前記放電回路との間の検出ノードの電圧を検出することで前記キャパシタ電圧を検出してもよい。
【0017】
前記スイッチング電源において、
前記放電回路は、
一端が前記キャパシタの一端に接続された抵抗と、
一端が前記抵抗の他端に接続され、他端が固定電位に接続され、制御端子が前記パルス発生器の出力端に接続されたトランジスタと、を有してもよい。
【0018】
前記スイッチング電源において、
前記スイッチング制御部は、
前記接続点の検出電圧の立上りが検出されたときの前記パルス信号の出力期間が終了したときに、前記第1スイッチング素子をオンし、前記接続点の検出電圧の立下りが検出されたときの前記パルス信号の出力期間が終了したときに、前記第2スイッチング素子をオンしてもよい。
【0019】
前記スイッチング電源において、
前記接続点と前記1次巻線との間に接続されたリーケージインダクタを更に備え、
前記デッドタイム補正部は、
前記接続点と前記リーケージインダクタとの間の電圧を検出することで前記接続点の電圧を検出してもよい。
【0020】
前記スイッチング電源において、
前記パルス発生器は、前記キャパシタ電圧が前記下限設定電圧に達した時点で前記パルス信号の出力を終了してもよい。
【0021】
本発明の一態様に係るスイッチング電源制御回路は、
一端が電源の正極端子に接続された第1スイッチング素子と、
一端が前記第1スイッチング素子の他端との接続点に接続され、他端が前記電源の負極端子に接続された第2スイッチング素子と、
前記接続点と前記第2スイッチング素子の他端との間に接続された1次巻線および前記1次巻線に磁気結合する2次巻線を有するトランスと、を備えるスイッチング電源に備えられ、
充放電可能なキャパシタと、
前記電源から供給される電力による前記キャパシタの充放電を制御するとともにキャパシタ電圧を検出し、前記キャパシタ電圧に応じて前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子のオンオフを制御するスイッチング制御部と、
前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子の一方のオフから他方のオンまでの期間であるデッドタイムを補正するデッドタイム補正部と、を有し、
前記スイッチング制御部は、
前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子がオフした状態で前記キャパシタ電圧が下限設定電圧に達したときに、前記第2スイッチング素子をオフしたまま前記第1スイッチング素子をオンし、前記第1スイッチング素子をオンした後に前記キャパシタ電圧が上限設定電圧に達したときに、前記第1スイッチング素子をオフし、前記第1スイッチング素子をオフした後に前記キャパシタ電圧が前記下限設定電圧に達したときに、前記第1スイッチング素子をオフしたまま前記第2スイッチング素子をオンし、前記第2スイッチング素子をオンした後に前記キャパシタ電圧が前記上限設定電圧に達したときに、前記第2スイッチング素子をオフし、
前記デッドタイム補正部は、
前記接続点の電圧を検出し、前記接続点の検出電圧が、前記スイッチング制御部によって前記キャパシタを放電させる放電期間において基準電圧に達したときに、前記キャパシタの単位時間当たりの放電量を増加させて前記キャパシタ電圧が前記下限設定電圧に達するまでの所要時間を短縮させることで前記デッドタイムを補正する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様に係るスイッチング電源は、一端が電源の正極端子に接続された第1スイッチング素子と、一端が第1スイッチング素子の他端との接続点に接続され、他端が電源の負極端子に接続された第2スイッチング素子と、接続点と第2スイッチング素子の他端との間に接続された1次巻線および1次巻線に磁気結合する2次巻線を有するトランスと、第1スイッチング素子および第2スイッチング素子を制御する制御回路と、を備え、制御回路は、充放電可能なキャパシタと、電源から供給される電力によるキャパシタの充放電を制御するとともにキャパシタ電圧を検出し、キャパシタ電圧に応じて第1スイッチング素子および第2スイッチング素子のオンオフを制御するスイッチング制御部と、第1スイッチング素子および第2スイッチング素子の一方のオフから他方のオンまでの期間であるデッドタイムを補正するデッドタイム補正部と、を有し、スイッチング制御部は、第1スイッチング素子および第2スイッチング素子がオフした状態でキャパシタ電圧が下限設定電圧に達したときに、第2スイッチング素子をオフしたまま第1スイッチング素子をオンし、第1スイッチング素子をオンした後にキャパシタ電圧が上限設定電圧に達したときに、第1スイッチング素子をオフし、第1スイッチング素子をオフした後にキャパシタ電圧が下限設定電圧に達したときに、第1スイッチング素子をオフしたまま第2スイッチング素子をオンし、第2スイッチング素子をオンした後にキャパシタ電圧が上限設定電圧に達したときに、第2スイッチング素子をオフし、デッドタイム補正部は、接続点の電圧を検出し、接続点の検出電圧が、スイッチング制御部によってキャパシタを放電させる放電期間において基準電圧に達したときに、キャパシタの単位時間当たりの放電量を増加させてキャパシタ電圧が下限設定電圧に達するまでの所要時間を短縮させることでデッドタイムを補正する。
これにより、本発明によれば、接続点の検出電圧が基準電圧に達したときにキャパシタの単位時間当たりの放電量を増加させてキャパシタ電圧が下限設定電圧に達するまでの所要時間を短縮させることで、デッドタイムを短縮することができる。
これにより、本発明によれば、高周波のスイッチング動作におけるスイッチング効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1の実施形態に係るスイッチング電源の一例を示す回路図である。
図2】第1の実施形態に係るスイッチング電源におけるデッドタイム補正部の一例を示す回路図である。
図3】第1の実施形態に係るスイッチング電源の動作例を示す波形図である。
図4】第2の実施形態に係るスイッチング電源におけるデッドタイム補正部の一例を示す回路図である。
図5】第2の実施形態に係るスイッチング電源の動作例を示す波形図である。
図6】分圧回路の第1の変形例を示す回路図である。
図7】分圧回路の第2の変形例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0025】
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態に係るスイッチング電源およびスイッチング電源制御回路について説明する。図1は、第1の実施形態に係るスイッチング電源1の一例を示す回路図である。図2は、第1の実施形態に係るスイッチング電源1におけるデッドタイム補正部5の一例を示す回路図である。図3は、第1の実施形態に係るスイッチング電源1の動作例を示す波形図である。なお、図1に示されるスイッチング電源1は、ハーフブリッジ型DC/DCコンバータの態様であるが、本発明のスイッチング電源は、図1の態様に限定されるものではない。
【0026】
第1の実施形態に係るスイッチング電源1は、第1スイッチング素子Q1と、第2スイッチング素子Q2と、トランスTと、制御回路の一例であるスイッチング電源制御回路3とを備える。また、スイッチング電源1は、第1抵抗r1と、第2抵抗r2と、リーケージインダクタLrと、共振コンデンサCrと、第1ダイオードD1と、第2ダイオードD2と、整流コンデンサCaと、フィードバック制御部7とを備える。以下、これらのスイッチング電源1の構成部について順に説明する。
【0027】
(スイッチング素子Q1、Q2)
第1スイッチング素子Q1は、一端が電源2の正極端子に接続されている。第1スイッチング素子Q1は、図1に示すように、ドレインが電源2の正極端子に接続されたnMOSFETであってもよい。
【0028】
第2スイッチング素子Q2は、一端が第1スイッチング素子Q1の他端との接続点pに接続され、他端が電源2の負極端子に接続されている。第2スイッチング素子Q2は、図1に示すように、ドレインが第1スイッチング素子Q1のソースとの接続点pに接続され、ソースが電源2の負極端子に接続されたnMOSFETであってもよい。
【0029】
(トランスT)
トランスTは、1次巻線W1と、2次巻線W21、W22とを有する。
【0030】
1次巻線W1は、接続点pと第2スイッチング素子Q2の他端との間に接続されている。より具体的には、1次巻線W1は、接続点pと第2スイッチング素子Q2の他端との間において第2スイッチング素子Q2に並列に接続されている。2次巻線W21、W22は、1次巻線W1に磁気結合する。
【0031】
(スイッチング電源制御回路3)
スイッチング電源制御回路3は、第1スイッチング素子Q1および第2スイッチング素子Q2を制御する回路である。
【0032】
スイッチング電源制御回路3は、図1に示すように、充放電可能なキャパシタCと、スイッチング制御部4と、デッドタイム補正部(図1におけるDT補正部)5と、分圧回路6とを有する。
【0033】
デッドタイム補正部5は、図2に示すように、基準電圧生成器51と、コンパレータ52と、パルス発生器53と、放電回路54とを有する。
【0034】
[キャパシタC]
キャパシタCは、一端がデッドタイム補正部5の放電回路54に接続され、他端が固定電位の一例である接地電位に接続されている。
【0035】
[スイッチング制御部4]
スイッチング制御部4は、電源2から供給される電力によるキャパシタCの充放電を制御するとともにキャパシタCのキャパシタ電圧Ctを検出し、キャパシタ電圧Ctに応じて第1スイッチング素子Q1および第2スイッチング素子Q2のオンオフを制御する。
【0036】
スイッチング制御部4は、キャパシタCの一端と放電回路54との間の検出ノードNdの電圧を検出することでキャパシタ電圧Ctを検出する。
【0037】
スイッチング制御部4は、図3に示すように、第1スイッチング素子Q1および第2スイッチング素子Q2がオフした状態(すなわち、Q1のゲート電圧VGHおよびQ2のゲート電圧VGLがローレベルLの状態)でキャパシタ電圧Ctが下限閾値(下限設定電圧)に達したときに、第2スイッチング素子Q2をオフしたまま第1スイッチング素子Q1をオンする。具体的には、スイッチング制御部4は、第1スイッチング素子Q1のゲート電圧VGHをハイレベルHに制御することで、第1スイッチング素子Q1をオンする。
【0038】
第1スイッチング素子Q1がオンすることで、トランスTの一次側では、電源2、第1スイッチング素子Q1、リーケージインダクタLr、1次巻線W1、共振コンデンサCrの順に電流が流れる。また、トランスTの二次側では、2次巻線W21、第1ダイオードD1、整流コンデンサCaの順に電流が流れる。なお、図3において、第1スイッチング素子Q1に流れる電流は符号ID_Q1で表されている。
【0039】
また、トランスTの二次側の出力電圧Voは、フィードバック制御部7によってスイッチング制御部4に入力される。スイッチング制御部4は、フィードバック制御部7からの入力電圧FBに基づいて第1スイッチング素子Q1および第2スイッチング素子Q2のオンオフの周波数を制御する。例えば、スイッチング制御部4は、負荷が軽くなったと判断される場合は、周波数を高く制御し、負荷が重くなったと判断される場合は、周波数を低く制御してもよい。
【0040】
第1スイッチング素子Q1をオンした後に、スイッチング制御部4は、キャパシタ電圧Ctが上限閾値(上限設定電圧))に達したときに、第1スイッチング素子Q1をオフする。具体的には、スイッチング制御部4は、第1スイッチング素子Q1のゲート電圧VGHをローレベルLに制御することで、第1スイッチング素子Q1をオフする。
【0041】
第1スイッチング素子Q1をオフした後に、スイッチング制御部4は、キャパシタ電圧Ctが下限閾値に達したときに、第1スイッチング素子Q1をオフしたまま第2スイッチング素子Q2をオンする。具体的には、スイッチング制御部4は、第2スイッチング素子Q2のゲート電圧VGLをハイレベルHに制御することで、第2スイッチング素子Q2をオンする。
【0042】
第2スイッチング素子Q2がオンすることで、トランスTの一次側では、共振コンデンサCr、1次巻線W1、リーケージインダクタLr、第2スイッチング素子Q2の順で電流が流れる。また、トランスTの二次側では、2次巻線W22、第2ダイオードD2、整流コンデンサCaの順に電流が流れる。なお、図3において、第2スイッチング素子Q2に流れる電流は符号ID_Q2で表されている。
【0043】
第2スイッチング素子Q2をオンした後に、スイッチング制御部4は、キャパシタ電圧Ctが上限閾値に達したときに、第2スイッチング素子Q2をオフする。具体的には、スイッチング制御部4は、第2スイッチング素子Q2のゲート電圧VGLをローレベルLに制御することで、第2スイッチング素子Q2をオフする。
【0044】
スイッチング制御部4は、後述する接続点pの検出電圧DTSの立上りが検出されたときのパルス信号Pの出力期間が終了したときに、第1スイッチング素子Q1をオンする。また、スイッチング制御部4は、後述する接続点pの検出電圧DTSの立下りが検出されたときのパルス信号Pの出力期間が終了したときに、第2スイッチング素子Q2をオンする。
【0045】
[分圧回路6]
分圧回路6は、一端が接続点pとリーケージインダクタLrとの間のノードNに接続され、他端がデッドタイム補正部5に接続された第1分圧抵抗r61と、一端が第1分圧抵抗r61の他端に接続され、他端が接地電位に接続された第2分圧抵抗r62とを有する。
【0046】
より具体的には、第1分圧抵抗r61の他端は、デッドタイム補正部5のコンパレータ52の非反転入力端子に接続されている。
【0047】
分圧回路6は、接続点pの電圧Vs(すなわち、中点電圧)を分圧する。
【0048】
[デッドタイム補正部5]
デッドタイム補正部5は、第1スイッチング素子Q1および第2スイッチング素子Q2の一方のオフから他方のオンまでの期間であるデッドタイムを補正する。
【0049】
デッドタイム補正部5は、接続点pの電圧Vsを検出する。具体的には、デッドタイム補正部5は、分圧回路6で分圧された電圧DTSを検出することで接続点pの電圧Vsを検出する。また、デッドタイム補正部5は、接続点pとリーケージインダクタLrとの間のノードNの電圧を検出することで、接続点pの電圧Vsを検出する。
【0050】
そして、デッドタイム補正部5は、接続点pの検出電圧DTSが、スイッチング制御部4によってキャパシタCを放電させる放電期間において基準電圧Vrefに達したときに、キャパシタCの単位時間当たりの放電量を増加させてキャパシタ電圧Ctが下限閾値に達するまでの所要時間を短縮させることでデッドタイムを補正する。
【0051】
基準電圧生成器51は、デッドタイムの補正のタイミングを判断するための基準電圧Vrefを生成する。基準電圧Vrefの生成にあたり、基準電圧生成器51は、電源2の電圧を検出し、電源2の検出電圧Vsenに応じた値を有するように基準電圧Vrefを生成する。
【0052】
基準電圧Vrefを生成するための具体的な構成として、基準電圧生成器51は、バッファ・アンプ511を備える。バッファ・アンプ511は、電源2の検出電圧Vsenが入力される非反転入力端子と、基準電圧Vrefが出力される出力端子と、出力端子から出力された基準電圧Vrefが入力される反転入力端子とを有する。電源2の検出電圧Vsenは、電源2の電圧Vinを第1抵抗r1および第2抵抗r2で分圧した電圧である。
【0053】
このように構成されたバッファ・アンプ511は、電源2の略1/2の値でキャパシタCの放電電流を増加させるように基準電圧Vrefを生成することができる。
【0054】
そして、デッドタイム補正部5は、接続点pの検出電圧DTSが基準電圧生成器51で生成された基準電圧Vrefに達したときに、キャパシタCの放電量を増加させる。
【0055】
接続点pの検出電圧DTSが基準電圧Vrefに達したことを判断するため、コンパレータ52は、接続点pの検出電圧DTSと基準電圧Vrefとを比較する。接続点pの検出電圧DTSと基準電圧Vrefとを比較することで、コンパレータ52は、接続点pの検出電圧DTSの基準電圧Vrefへの立上りまたは立下りを検出する。
【0056】
そして、デッドタイム補正部5は、コンパレータ52によって接続点pの検出電圧DTSの基準電圧Vrefへの立上りまたは立下りが検出されたときに、キャパシタCの放電量を増加させる。
【0057】
より具体的には、コンパレータ52は、反転入力端子にバッファ・アンプ511の出力端子から出力された基準電圧Vrefが入力され、非反転入力端子に接続点pの検出電圧DTSが入力され、出力端子から接続点pの検出電圧DTSの立上りまたは立下りを検出するための検出信号Aが出力される。検出信号Aは、パルス発生器53の入力端に出力される。
【0058】
パルス発生器53は、コンパレータ52から出力された検出信号Aに基づいて、接続点pの検出電圧DTSの立上りまたは立下りを検出する。そして、パルス発生器53は、検出電圧DTSの立上りまたは立下りが検出されたときにパルス信号Pを出力する。パルス発生器53は、図3に示すように、キャパシタ電圧Ctが下限閾値に達した時点でパルス信号Pの出力を終了する。これにより、キャパシタCの過放電を抑制することができる。
【0059】
そして、デッドタイム補正部5は、パルス発生器53から出力されたパルス信号Pに応じて、キャパシタCの放電量を増加させる。
【0060】
より具体的には、デッドタイム補正部5は、放電回路54によってキャパシタCを放電することで、キャパシタCの放電量を増加させる。
【0061】
キャパシタCを放電するための具体的な構成として、放電回路54は、放電抵抗rdと、トランジスタTrとを有する。
【0062】
放電抵抗rdは、一端がキャパシタCの一端に接続されている。
【0063】
トランジスタTrは、一端が放電抵抗rdの他端に接続され、他端が固定電位の一例である接地電位に接続され、制御端子がパルス発生器53の出力端に接続されている。トランジスタTrは、図2に示すように、npnバイポーラトランジスタであってもよい。
【0064】
このように構成された放電回路54は、パルス信号PによってトランジスタTrがオンすることで、キャパシタCから放電抵抗rdおよびトランジスタTrを経て接地電位に電流を流すことで、キャパシタCを放電することができる。
【0065】
ここで、もし、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2との間のデッドタイムを補正できない場合には、第1スイッチング素子Q1および第2スイッチング素子Q2を高周波動作させる場合に、デッドタイムが長いことでZVSを実行することが困難となる。
【0066】
これに対して、デッドタイム補正部5によれば、接続点pの検出電圧DTSの基準電圧Vrefへの立上りまたは立下りが検出されたときに、キャパシタCの放電量を増加させることで、デッドタイムを補正することができる。
【0067】
デッドタイムを補正することで、第1スイッチング素子Q1および第2スイッチング素子Q2を高周波動作させる場合においても、ZVSを実行するために好適なデッドタイムを確保することができる。
【0068】
次に、以上のように構成された第1の実施形態に係るスイッチング電源1によってもたらされる作用について説明する。
【0069】
既述したように、第1の実施形態に係るスイッチング電源1は、一端が電源2の正極端子に接続された第1スイッチング素子Q1と、一端が第1スイッチング素子Q1の他端との接続点pに接続され、他端が電源2の負極端子に接続された第2スイッチング素子Q2と、接続点pと第2スイッチング素子Q2の他端との間に接続された1次巻線W1および1次巻線W1に磁気結合する2次巻線W21、W22を有するトランスTと、第1スイッチング素子Q1および第2スイッチング素子Q2を制御するスイッチング電源制御回路3と、を備える。
【0070】
スイッチング電源制御回路3は、充放電可能なキャパシタCと、電源2から供給される電力によるキャパシタCの充放電を制御するとともにキャパシタCのキャパシタ電圧Ctを検出し、キャパシタ電圧Ctに応じて第1スイッチング素子Q1および第2スイッチング素子Q2のオンオフを制御するスイッチング制御部4と、第1スイッチング素子Q1および第2スイッチング素子Q2の一方のオフから他方のオンまでの期間であるデッドタイムを補正するデッドタイム補正部5と、を有する。
【0071】
スイッチング制御部4は、第1スイッチング素子Q1および第2スイッチング素子Q2がオフした状態でキャパシタ電圧Ctが下限閾値に達したときに、第2スイッチング素子Q2をオフしたまま第1スイッチング素子Q1をオンする(すなわち、図3におけるハイサイドのゲート電圧VGHをローレベルLからハイレベルHに切り替える)。
【0072】
また、スイッチング制御部4は、第1スイッチング素子Q1をオンした後にキャパシタ電圧Ctが上限閾値に達したときに、第1スイッチング素子Q1をオフする(すなわち、図3におけるハイサイドのゲート電圧VGHをハイレベルHからローレベルLに切り替える)。
【0073】
また、スイッチング制御部4は、第1スイッチング素子Q1をオフした後にキャパシタ電圧Ctが下限閾値に達したときに、第1スイッチング素子Q1をオフしたまま第2スイッチング素子Q2をオンする(すなわち、図3におけるローサイドのゲート電圧VGLをローレベルLからハイレベルHに切り替える)。
【0074】
このとき、図3に示すように、接続点pの電圧VsがGND(0V)まで下がったときにローサイドのゲート電圧VGLがハイレベルHに切り替えられることで、ZVSが成立する。ZVSが成立することで、サージ電圧の発生を抑制できる。
【0075】
また、スイッチング制御部4は、第2スイッチング素子Q2をオンした後にキャパシタ電圧Ctが上限閾値に達したときに、第2スイッチング素子Q2をオフする(すなわち、図3におけるローサイドのゲート電圧VGLをハイレベルHからローレベルLに切り替える)。
【0076】
このようなスイッチング素子Q1、Q2のオンオフ動作の過程において、デッドタイム補正部5は、接続点pの電圧Vsを検出し、接続点pの検出電圧DTSが、スイッチング制御部4によってキャパシタCを放電させる放電期間において基準電圧Vrefに達したとき(図3の時刻t1、t2)に、キャパシタCの単位時間当たりの放電量を増加させる。すなわち、図3のキャパシタ電圧Ctの減少の傾きを急峻にする。キャパシタCの単位時間当たりの放電量を増加させることで、デッドタイム補正部5は、キャパシタ電圧Ctが下限閾値に達するまでの所要時間を短縮させる。キャパシタ電圧Ctが下限閾値に達するまでの所要時間を短縮させることで、デッドタイム補正部5は、デッドタイムを補正する。
【0077】
このような構成によれば、接続点pの検出電圧DTSが基準電圧Vrefに達したときにキャパシタCの単位時間当たりの放電量を増加させてキャパシタCのキャパシタ電圧Ctが下限閾値に達するまでの所要時間を短縮させることで、デッドタイムを補正することができる。これにより、高周波のスイッチング動作におけるスイッチング効率を向上させることができる。
【0078】
また、既述したように、スイッチング電源制御回路3は、接続点pの電圧Vsを分圧する分圧回路6を更に有し、デッドタイム補正部5は、分圧された電圧DTSを検出することで接続点pの電圧Vsを検出する。
【0079】
このような構成によれば、デッドタイム補正部5の検出電圧が過大となることによるデッドタイム補正部5の故障を防止することができる。
【0080】
また、既述したように、デッドタイム補正部5は、電源2の電圧Vinを検出し、電源2の検出電圧Vsenに応じた値を有するように基準電圧Vrefを生成する基準電圧生成器51を有する。そして、デッドタイム補正部5は、接続点pの検出電圧DTSが基準電圧生成器51で生成された基準電圧Vrefに達したときに、キャパシタCの放電量を増加させる。
【0081】
このような構成によれば、電源2の検出電圧Vsenに基づいて生成された基準電圧Vrefに基づいて、ZVSを成立させるのに好適なデッドタイムの補正のタイミングを判断することができるので、デッドタイムを適切に補正することができる。
【0082】
また、既述したように、基準電圧生成器51は、電源2の略1/2の値でキャパシタCの放電電流を増加させるように基準電圧Vrefを生成する。
【0083】
このような構成によれば、電源2の電圧の入力変動にかかわらずZVSを成立させるのに最適なデッドタイムの補正のタイミングを判断することができるので、デッドタイムをより適切に補正することができる。
【0084】
また、既述したように、基準電圧生成器51は、電源2の検出電圧Vsenが入力される非反転入力端子と、基準電圧Vrefが出力される出力端子と、出力端子から出力された基準電圧Vrefが入力される反転入力端子と、を有するバッファ・アンプ511を備える。
【0085】
このような構成によれば、簡易な構成により、電源2の略1/2の値でキャパシタCの放電電流を増加させるように基準電圧Vrefを生成することができる。
【0086】
また、既述したように、デッドタイム補正部5は、接続点pの検出電圧DTSと基準電圧Vrefとを比較して、接続点pの検出電圧DTSの基準電圧Vrefへの立上りまたは立下りを検出するためのコンパレータ52を有する。そして、デッドタイム補正部5は、コンパレータ52によって接続点pの検出電圧DTSの立上りまたは立下りが検出されたときに、キャパシタCの放電量を増加させる。
【0087】
このような構成によれば、接続点pの検出電圧DTSの基準電圧Vrefへの立下りの検出をトリガーとして、第1スイッチング素子Q1をオンする直前のデッドタイムの補正を行うことができ、接続点pの検出電圧DTSの基準電圧Vrefへの立上りの検出をトリガーとして、第2スイッチング素子Q2をオンする直前のデッドタイムの補正を行うことができる。
【0088】
また、既述したように、コンパレータ52は、反転入力端子にバッファ・アンプ511の出力端子から出力された基準電圧Vrefが入力され、非反転入力端子に接続点pの検出電圧DTSが入力され、出力端子から接続点pの検出電圧DTSの立上りまたは立下りを検出するための検出信号Aが出力される。
【0089】
このような構成によれば、簡易な構成により、接続点pの検出電圧DTSの基準電圧Vrefへの立上りまたは立下りを検出することができる。
【0090】
また、既述したように、デッドタイム補正部5は、コンパレータ52から出力された検出信号Aに基づいて接続点pの検出電圧DTSの立上りまたは立下りを検出し、立上りまたは立下りが検出されたときにパルス信号Pを出力するパルス発生器53を有する。デッドタイム補正部5は、パルス発生器53から出力されたパルス信号Pに応じて、キャパシタCの放電量を増加させる。
【0091】
このような構成によれば、接続点pの検出電圧DTSの立上りまたは立下りの検出をトリガーとしたデッドタイムの補正をパルス信号Pに基づいて簡便に行うことができる。
【0092】
また、既述したように、デッドタイム補正部5は、パルス信号Pに応じてキャパシタCを放電する放電回路54を更に有する。
【0093】
このような構成によれば、パルス信号Pに応じたデッドタイムの補正を確実に行うことができる。
【0094】
また、既述したように、キャパシタCは、一端が放電回路54に接続され、他端が接地電位に接続され、スイッチング制御部4は、キャパシタCの一端と放電回路54との間の検出ノードNdの電圧を検出することでキャパシタ電圧Ctを検出する。
【0095】
このような構成によれば、キャパシタCの電圧を正確に検出することができるので、デッドタイムを正確に補正することができる。
【0096】
また、既述したように、放電回路54は、一端がキャパシタCの一端に接続された放電抵抗rdと、一端が放電抵抗rdの他端に接続され、他端が接地電位に接続され、制御端子がパルス発生器53の出力端に接続されたトランジスタTrとを有する。
【0097】
このような構成によれば、簡易な構成によって放電回路54を構成することができる。
【0098】
また、既述したように、スイッチング制御部4は、接続点pの検出電圧DTSの立上りが検出されたときのパルス信号Pの出力期間が終了したときに、第1スイッチング素子Q1をオンし、接続点pの検出電圧DTSの立下りが検出されたときのパルス信号Pの出力期間が終了したときに、第2スイッチング素子Q2をオンする。
【0099】
このような構成によれば、ZVSを成立させるためのパルス信号に基づいた第1スイッチング素子Q1および第2スイッチング素子Q2の制御を適切に行うことができる。
【0100】
また、既述したように、スイッチング電源1は、接続点pと1次巻線W1との間に接続されたリーケージインダクタLrを更に備え、デッドタイム補正部5は、接続点pとリーケージインダクタLrとの間の電圧を検出することで接続点pの電圧Vsを検出する。
【0101】
このような構成によれば、接続点pの電圧Vsを高精度に検出することができるので、デッドタイムを高精度に補正することができる。
【0102】
(第2の実施形態)
次に、図4および図5を参照して、第1の実施形態に対して反転した信号に基づいてデッドタイムを補正する第2の実施形態に係るスイッチング電源について説明する。図4は、第2の実施形態に係るスイッチング電源1におけるデッドタイム補正部5の一例を示す回路図である。図5は、第2の実施形態に係るスイッチング電源の動作例を示す波形図である。
【0103】
第2の実施形態に係るスイッチング電源1は、第1の実施形態と同様に、一端が電源2の正極端子に接続された第1スイッチング素子Q1と、一端が第1スイッチング素子Q1の他端との接続点pに接続され、他端が電源2の負極端子に接続された第2スイッチング素子Q2と、を備える。また、第2の実施形態に係るスイッチング電源1は、接続点pと第2スイッチング素子Q2の他端との間に接続された1次巻線W1および1次巻線W1に磁気結合する2次巻線W21、W22を有するトランスTと、第1スイッチング素子Q1および第2スイッチング素子Q2を制御するスイッチング電源制御回路3と、を備える。
【0104】
スイッチング電源制御回路3は、充放電可能なキャパシタCを有する。また、スイッチング電源制御回路3は、電源2から供給される電力によるキャパシタCの充放電を制御するとともにキャパシタCのキャパシタ電圧Ctを検出し、キャパシタ電圧Ctに応じて第1スイッチング素子Q1および第2スイッチング素子Q2のオンオフを制御するスイッチング制御部4を有する。また、スイッチング電源制御回路3は、第1スイッチング素子Q1および第2スイッチング素子Q2の一方のオフから他方のオンまでの期間であるデッドタイムを補正するデッドタイム補正部5を有する。
【0105】
一方、第1の実施形態と異なり、第2の実施形態におけるデッドタイム補正部5は、第1の実施形態における放電回路54の代わりに充電回路55を備える。充電回路55は、抵抗rcとトランジスタTrとを有する。
【0106】
放電抵抗rcは、一端がキャパシタCの一端に接続されている。
【0107】
トランジスタTrは、一端が電源VDDに接続され、他端が抵抗rcの他端に接続され、制御端子がパルス発生器53の出力端に接続されている。パルス発生器53は、第1の実施形態とは異なり、検出電圧DTSの立上りまたは立下りが検出されたときにパルス信号Pの出力を停止する。言い換えれば、パルス発生器53は、検出電圧DTSの立上りまたは立下りが検出されたときにパルス信号Pをハイレベルからローレベルに切り替える。トランジスタTrは、pnpバイポーラトランジスタであってもよい。
【0108】
このようなデッドタイム補正部5の構成により、第1の実施形態に対して極性反転したキャパシタ電圧Ctに基づいてスイッチング素子Q1、Q2のオンオフが制御される。
【0109】
具体的には、スイッチング制御部4は、図5に示すように、第1スイッチング素子Q1および第2スイッチング素子Q2がオフした状態でキャパシタ電圧Ctが上限閾値(上限設定電圧)に達したときに、第2スイッチング素子Q2をオフしたまま第1スイッチング素子Q1をオンする(すなわち、VGHをハイレベルHにする)。
【0110】
また、スイッチング制御部4は、第1スイッチング素子Q1をオンした後にキャパシタ電圧Ctが下限閾値(下限設定電圧)に達したときに、第1スイッチング素子Q1をオフする(すなわち、VGHをローレベルLにする)。
【0111】
また、スイッチング制御部4は、第1スイッチング素子Q1をオフした後にキャパシタ電圧Ctが上限閾値に達したときに、第1スイッチング素子Q1をオフしたまま第2スイッチング素子Q2をオンする(すなわち、VGLをハイレベルHにする)。
【0112】
また、スイッチング制御部4は、第2スイッチング素子Q2をオンした後にキャパシタ電圧Ctが下限閾値に達したときに、第2スイッチング素子Q2をオフする(すなわち、VGLをローレベルLにする)。
【0113】
デッドタイム補正部5は、接続点pの電圧Vsを検出し、接続点pの検出電圧DTSが、スイッチング制御部4によってキャパシタCを充電させる充電期間において基準電圧Vrefに達したときに、キャパシタCの単位時間当たりの充電量を増加させてキャパシタ電圧Ctが上限閾値に達するまでの所要時間を短縮させることでデッドタイムを補正する。
【0114】
第2の実施形態によれば、接続点pの検出電圧DTSが基準電圧Vrefに達したときにキャパシタCの単位時間当たりの充電量を増加させてキャパシタCのキャパシタ電圧Ctが上限閾値に達するまでの所要時間を短縮させることで、デッドタイムを補正することができる。これにより、高周波のスイッチング動作におけるスイッチング効率を向上させることができる。
【0115】
なお、上記した構成以外にも、スイッチング電源1には、種々の変形例を適用することができる。例えば、図6に示すように、直列接続された2つのキャパシタC61、C62によって分圧回路6を構成してもよい。また、図7に示すように、直列接続された2つのキャパシタC61、C62と、直列接続された2つの抵抗r61、r62とを並列接続することで分圧回路6を構成してもよい。
【0116】
上述した実施形態は、あくまで一例であって、発明の範囲を限定するものではない。発明の要旨を逸脱しない限度において、上述した実施形態に対して種々の変更を行うことができる。変更された実施形態は、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0117】
1 スイッチング電源
2 電源
3 スイッチング電源制御回路
4 スイッチング制御部
5 デッドタイム補正部
Q1 第1スイッチング素子
Q2 第2スイッチング素子
p 接続点
T トランス
W1 1次巻線
W21、W22 2次巻線
C キャパシタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7