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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】ベルト及び心電測定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/256 20210101AFI20220711BHJP
   A61B 5/02 20060101ALI20220711BHJP
   A61B 5/332 20210101ALI20220711BHJP
【FI】
A61B5/256 210
A61B5/02 310V
A61B5/332
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018129400
(22)【出願日】2018-07-06
(65)【公開番号】P2020005863
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】藤田 麗二
(72)【発明者】
【氏名】川端 康大
(72)【発明者】
【氏名】藤井 健司
(72)【発明者】
【氏名】松村 直美
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 晃人
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-523037(JP,A)
【文献】特開2016-158709(JP,A)
【文献】国際公開第01/070101(WO,A2)
【文献】国際公開第2012/160550(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/25-5/297
A61B 5/318-5/367
A61B 5/02-5/0295
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上腕の複数個所で検出した電位に基づいて心電の情報を生成する心電測定装置に用いられるベルトであって、
前記上腕の周方向に巻き付けられるベルト本体と、
前記ベルト本体の前記上腕側の内面に前記ベルト本体の長手方向に並んで固定された、心電の情報を得る為に必要な電極数をNとしたときN+2より大きい複数の電極を具備し、並び方向の一端に位置する電極を含んで当該電極から前記並び方向にN+1番目までの電極が所定の間隔で等間隔に並び、前記N+1番目以降の電極の間隔は、前記所定の間隔より大きい電極アレイと、
を備え
前記Nは、3以上であり、
前記N+1番目までの前記電極の間隔は、装着が想定される最も上腕の細いユーザの上腕の周長の1/Nの長さに設定される、ベルト。
【請求項2】
前記並び方向の一端に位置する電極、及び当該電極を含んで当該電極から前記並び方向にN+1番目以降の電極間の間隔は、前記一端に配置された電極から前記並び方向に数えた番号が大きくなるにつれて、広くなる
請求項1に記載のベルト。
【請求項3】
前記並び方向の一端に位置する前記電極から、当該電極を含んで当該電極からN+2番目以降の電極までの距離は、前記N+2番目以降の各電極の適応周長の最大長をLとしたとき、(N-1)/N×Lである
請求項2に記載のベルト。
【請求項4】
上腕の周方向に巻き付けられるベルト本体と、
前記ベルト本体の前記上腕側の内面に前記ベルト本体の長手方向に並んで固定された、心電の情報を得る為に必要な電極数をNとしたときN+2より大きい複数の電極を具備し、並び方向の一端に位置する電極を含んで当該電極から前記並び方向にN+1番目までの電極が所定の間隔で等間隔に並び、前記N+1番目以降の電極間の間隔は、前記所定の間隔より大きい電極アレイと、
前記電極の出力に基づいて心電の情報を生成する処理部と、
を備え
前記Nは、3以上であり、
前記N+1番目までの前記電極の間隔は、装着が想定される最も上腕の細いユーザの上腕の周長の1/Nの長さに設定される、心電測定装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記複数の電極のうちの1つを基準電極として、この基準電極と他の電極のそれぞれとの電位差を算出し、算出結果のうちの負の最大値及び正の最大値に基づいて、心電の情報を生成する
請求項4に記載の心電測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓の動きに起因して生じる生体の表面の電位に応じた信号を出力するベルト、及び心電測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓の動きに起因して生体の皮膚の表面に生じる電圧を検出することにより、ユーザの心電波形を計測する心電計測装置が知られている。
【0003】
このような心電計測装置として、ユーザの上腕に巻き付けるベルト本体と、このベルト本体の内面に一方向に等間隔で固定された複数の電極と、を有するベルトを用いる心電計測装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5428889号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ベルトの内面に等間隔で固定された複数の電極を有する心電測定装置は、様々なユーザの上腕に対応する為に多くの電極を有する。すなわち、上腕の周方向の長さはユーザによって異なる為、異なる周方向の長さを有する上腕に対応する為に、多くの電極を要する。この為、各電極の出力に基づいて心電波形を形成する回路は複雑になる。
【0006】
そこで本発明は、電極数が多くなることを防止できるベルト、及び心電測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様によれば、上腕の複数個所で検出した電位に基づいて心電の情報を生成する心電測定装置に用いられるベルトであって、前記上腕周方向に巻き付けられるベルト本体と、前記ベルト本体の前記生体側の内面に前記ベルト本体の長手方向に並んで固定された、心電の情報を得る為に必要な電極数をNとしたときN+2より大きい複数の電極を具備し、並び方向の一端に位置する電極を含んで当該電極から前記並び方向にN+1番目までの電極が所定の間隔で等間隔に並び、前記N+1番目以降の電極の間隔は、前記所定の間隔より大きい電極アレイと、を備え、前記Nは、3以上であり、前記N+1番目までの前記電極の間隔は、装着が想定される最も上腕の細いユーザの上腕の周長の1/Nの長さに設定されるベルトが提供される。
【0008】
ここで、生体は、例えば上腕である。並び方向の一端に位置する電極を含んで当該電極からとは、一端に配置された電極を1番目として数えることである。
【0009】
この態様によれば、少ない電極数で、生体の周方向に周長の略1/Nの間隔の位置に電極が配置される。この為、電極数が多くなることを防止可能となる。
【0010】
上記一態様のベルトにおいて、前記並び方向の一端に位置する電極、及び当該電極を含んで当該電極から前記並び方向にN+1番目以降の電極間の間隔は、前記一端に配置された電極から前記並び方向に数えた番号が大きくなるにつれて、広くなる。
【0011】
この態様によれば、電極数が多くなることを防止可能となる。
【0012】
上記一態様のベルトにおいて、前記並び方向の一端に位置する前記電極から、当該電極を含んで当該電極からN+2番目以降の電極までの距離は、前記N+2番目以降の各電極適応周長の最大長をLとしたとき、(N-1)/N×Lである、ベルトが提供される。
【0013】
ここで、N+2番目以降の電極のそれぞれが、使用される電極のうち一端に位置する電極を含んで当該電極から前記並ぶ方向に数えて最大となる、周長が適応周長である。ここで、使用される複数の電極とは、生体の皮膚に接触する電極である。例えば、前記一端から数えて5番目の電極まで使用されるとは、1乃至5番目までの5つの電極が生体に接触し、6番目以降の電極が、巻回されたベルトの外面に接触する。
【0014】
N+2番目以降の電極のそれぞれが、使用される複数の電極のうち一端に位置する電極から並ぶ方向に最も離れた電極となるときの生体の適応周長とは、例えば、一端に位置する電極を1番目としたときこの1番目の電極から並ぶ方向に最も離れた電極が5番目の電極である場合では、ベルトが生体に巻き付けられたときに5番目の電極が1番目の電極に対して生体の周方向に隣接する位置となる生体の周長以上であり、6番目の電極が生体の周方向に直交する方向に1番目の電極と対向する位置に配置される生体の周長以下である。この場合、最大長は、生体の周方向に直交する方向に、1番目の電極に対して6番目の電極が並ぶ周長である。
【0015】
この態様によれば、少ない電極数で、生体の周方向に周長の略1/Nの間隔の位置に電極が配置可能となる。
【0016】
別の態様によれば、上腕の周方向に巻き付けられるベルト本体と、前記ベルト本体の前記上腕側の内面に前記ベルト本体の長手方向に並んで固定された、心電の情報を得る為に必要な電極数をNとしたときN+2より大きい複数の電極を具備し、並び方向の一端に位置する電極を含んで当該電極から前記並び方向にN+1番目までの電極が所定の間隔で等間隔に並び、前記N+1番目以降の電極間の間隔は、前記所定の間隔より大きい電極アレイと、前記電極の出力に基づいて心電の情報を生成する処理部と、を備え、前記Nは、3以上であり、前記N+1番目までの前記電極の間隔は、装着が想定される最も上腕の細いユーザの上腕の周長の1/Nの長さに設定される心電測定装置が提供される。
【0017】
ここで、生体は、例えば上腕である。並び方向の一端に位置する電極を含んで当該電極から、とは、一端に位置する電極を1番目として数えることである。
【0018】
この態様によれば、心電測定装置の電極数が多くなることを防止可能となる。
【0019】
上記一態様の心電測定装置において、前記処理部は、前記複数の電極のうちの1つを基準電極として、この基準電極と他の電極のそれぞれとの電位差を算出し、算出結果のうちの負の最大値及び正の最大値に基づいて、心電の情報を生成する、心電測定装置が提供される。
【0020】
この態様によれば、電極アレイの電極以外に、心電の生成に必要な情報を生成する為の電極を要しないので、電極数が多くなることを防止可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、電極数が多くなることを防止できるベルト、及び心電測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る心電測定装置の構成を示す斜視図。
図2】同心電測定装置の構成を示すブロック図。
図3】同心電測定装置の構成を模式的に示す説明図。
図4】同心電測定装置の使用例を示す説明図。
図5】同心電測定装置の使用例を示す説明図。
図6】本発明の他の実施形態に係る心電測定装置の構成を模式的に示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係る心電測定装置10の一例について、図1乃至図5を用いて説明する。
【0024】
図1は、心電測定装置10の構成を、心電測定装置10がユーザに装着された状態で示す斜視図である。図2は、心電測定装置10の構成を示すブロック図である。図3は、心電測定装置10を、ベルト20が展開された状態で示す説明図である。図4及び図5は、心電測定装置10の使用例を示す説明図であり、心電測定装置10がユーザに装着された状態を示している。
【0025】
心電測定装置10は、生体の例えば上腕5に装着され、上腕5の皮膚の表面の複数個所の電位を検出し、これら検出した電圧に基づいて心電図の生成に必要な情報を生成する心電測定装置である。
【0026】
図1乃至図3に示すように、心電測定装置10は、ベルト20と、ベルト20に固定された電極アレイ30と、ベルト20に固定された装置本体40と、を有している。
【0027】
ベルト20は、帯状のベルト本体21と、ベルト本体21を上腕5に巻き付けた状態で固定する固定手段22と、を有している。ベルト20は、装置本体40を上腕5に固定する。
【0028】
ベルト本体21は、図4及び図5に示すように、ベルト本体21の長手方向の一端23から上腕5に巻き付けられる。ベルト本体21は、上腕5に巻き付けられた状態で上腕5側に配置される内面24と、内面24の反対側の面である外面25と、を有している。外面25の長手方向の他端部には、装置本体40が固定されている。
【0029】
固定手段22は、例えば面ファスナである。固定手段22は、外面25の例えば全面に設けられたループと、内面24の長手方向の他端部に設けられたフック26と、を有している。ベルト20が上腕5に、上腕5の周方向に巻き付けられてフック26がループに係合することによって、ベルト20が上腕5に固定される。
【0030】
電極アレイ30は、図3に示すように、内面24に設けられている。電極アレイ30は、例えば、内面24の、上腕5に装着されたときに肩側となる内面24の長手方向に沿う縁27側に設けられている。
【0031】
電極アレイ30は、複数の電極31を有している。複数の電極31は、内面24の長手方向の一端から、ベルト20の長手方向に配置されている。電極アレイ30は、心電図の生成に使用される必要な電極31の数の最小数をNとしたとき、Nプラス2より大きい複数の電極31を有している。
【0032】
本実施形態では、後述する心電情報生成部44によって、少なくとも3つの電極31の検出値に基づいて、心電図が生成される。すなわち、N=3となる。この為、電極アレイ30は、本実施形態では、5より大きい一例として、7つの電極31を有している。
【0033】
複数の電極31のうち、ベルト20の内面24の長手方向の一端23に固定された電極31を第1の電極31Aとする。複数の電極31のうち、並び方向に第1の電極31に対して他端に設置された電極31を、第7の電極31Gとする。
【0034】
第1の電極31Aと第7の電極31Gとの間の電極31を、第1の電極31A側から、順番に第2の電極31B、第3の電極31C、第4の電極31D、第5の電極31E、及び第6の電極31Fとする。
【0035】
第1乃至第7の電極31A,31B,31C,31D,31E,31F,31Gは、それぞれ、信号線が接続されている。第1乃至第7の電極31A,31B,31C,31D,31E,31F,31Gは、上腕5の皮膚の、これら電極が接触する箇所の電位に応じた信号を、信号線を介して出力する。
【0036】
第1乃至第7の電極31A,31B,31C,31D,31E,31F,31Gは、心電図の生成に必要な情報の生成に使用する電極数の最小個数をNとしたとき、以下の条件1乃至条件4を満たす配置構造を有している。
【0037】
条件1は、第1の電極31Aから、電極31の並び方向のうちの一方向、本実施形態ではベルト本体21の一端23から他端へ向かう方向Xに、第1の電極31Aを含んで第1の電極31Aから数えて、N+1番目までの電極が、等間隔で並ぶという条件である。なお、第1の電極31Aを含んで第1の電極31Aから数えるとは、第1の電極31Aを1番目として数えることである。
【0038】
すなわち、第1の電極31Aから第4の電極31Dまでが、所定のピッチ幅Aで並んでいる。ピッチ幅Aは、例えば、心電測定装置10の想定する最も上腕の細いユーザの上腕周長の三分の一の長さに設定される。
【0039】
条件2は、第1の電極31Aを含んで第1の電極31Aから方向Xに数えて、N+1番目以降の電極間の間隔は、ピッチ幅Aより広い、という条件である。
【0040】
すなわち、第4の電極31Dと第5の電極31Eとの間のピッチ幅Bは、ピッチ幅Aより広い。第5の電極31Eと第6の電極31Fとの間のピッチ幅Cは、ピッチ幅Aより広い。第6の電極31Fと第7の電極31Gとの間のピッチ幅Dは、ピッチ幅Aより広い。
【0041】
条件3は、第1の電極31Aを含んで第1の電極31Aから方向Xに数えて、N+1番目以降の電極間の間隔は、方向Xに第1の電極31Aから離れた位置に位置する電極ほど大きくなる、という条件である。すなわち、ピッチ幅A<ピッチ幅B<ピッチ幅C<ピッチ幅Dとなる。
【0042】
条件4は、第1の電極31Aから、第1の電極31Aを含んで第1の電極31Aから方向Xに数えてN+2番目以降の電極31のそれぞれまでの距離は、N+2番目以降の電極31のそれぞれが、使用される複数の電極31のうち第1の電極31Aから方向Xに最も離れた電極となるときの上腕5の適応周長の最大長をLとしたとき、(N-1)/N×Lとなる、という条件である。
【0043】
なお、使用される複数の電極31とは、上腕5の皮膚に接触する電極である。例えば、第5の電極31Eまで使用されるとは、第1乃至第5の電極31A,31B,31C,31D,31Eが上腕5の皮膚に接触し、第6及び第7の電極31F,31Gが、巻回されたベルト20の外面25に接触することである。
【0044】
N+2番目以降の電極31のそれぞれが、使用される複数の電極31のうち第1の電極31Aから方向Xに最も離れた電極となるときの上腕5の適応周長とは、それぞれに対して次の電極が使用されない腕周である。
【0045】
例えば、第1の電極31Aから方向Xに最も離れた電極が第5の電極31Eである場合では、ベルト20が上腕5に巻き付けられたときに第5の電極31Eが第1の電極31Aに対して上腕5の周方向に隣接する位置となる上腕5の周長以上であり、方向Xに第5の電極31Eの次となる第6の電極31Fが上腕5の周方向に直交する方向に第1の電極31Aと対向する位置に配置される上腕5の周長以下である。この場合では、適応周長の最大長は、第6の電極31Fが上腕5の周方向に直交する方向に第1の電極31Aと対向する位置に配置される上腕5の周長である。
【0046】
本実施形態では、第1の電極31Aから第5の電極31Eまでの距離となる、(3A+B)は、第1乃至第5の電極31A,31B,31C,31D,31Eが使用され、第6及び第7の電極31F,31Gが使用されない場合の上腕5の適応周長の最大値をL1とすると、2/3×L1となる。すなわち、B=(2/3×L1)-(3×A)となる。
【0047】
第1の電極31Aから第6の電極31Fまでの距離となる、(3×A+B+C)は、第1乃至第6の電極31A,31B,31C,31D,31E,31Fが使用され、第7の電極331Gが使用されない場合の上腕5の適応周長の最大値をL2とすると、2/3×L2となる。すなわち、C=(2/3×L2)-(3×A)-Bとなる。
【0048】
第1の電極31Aから第7の電極31Gまでの距離となる、(3×A+B+C+D)は、第1乃至第7の電極31A,31B,31C,31D,31E,31F,31Gが使用される場合の上腕5の適応周長の最大値をL3とすると、2/3×L3となる。すなわち、D=(2/3×L3)-(3×A)-B-Cとなる。
【0049】
なお、上腕5の適応周長、及び適応周長の最大値は、予め決定されている。
【0050】
装置本体40は、ケース41と、操作部42と、表示部43と、心電情報生成部44と心電図生成部45と、制御部46と、を有している。
【0051】
ケース41は、操作部42の一部と、表示部43の一部と、制御部46と、心電情報生成部44と、を収容するとともに、操作部42の一部、及び表示部43の一部を外面から露出させる。
【0052】
操作部42は、ユーザからの指令を入力可能に構成される。例えば、操作部42は、ケース41に設けられた複数の釦47と、釦47の操作を検出するセンサと、を有している。なお、操作部42は、タッチパネルとし、表示部43に設けられてもよい。操作部42は、ユーザが操作することで、指令を電気信号に変換する。釦47の操作を検出するセンサは、制御部46に電気的に接続されている。釦47の操作を検出するセンサは、電気信号を制御部46に出力する。
【0053】
表示部43は、ケース41に、ケース41の外面から露出して配置されている。表示部43は、制御部46に電気的に接続されている。表示部43は、例えば、液晶ディスプレイ、又は有機エレクトロルミネッセンスディスプレイである。表示部43は、日時や心電図などの各種情報を表示する。
【0054】
心電情報生成部44は、電極アレイ30の複数の電極31に、例えば信号線を介して電気的に接続されている。心電情報生成部44は、複数の電極31のうちの1つの電極である基準電極と、他の1つの電極31との電位差を算出する。本実施形態では、基準電極として、例えば第1の電極31Aが設定されている。また、心電情報生成部44は、算出結果のうち、正の最大値及び負の最大値に基づいて、心電情報を生成する。心電情報生成部44は、心電図生成部45に電気的に接続されている。
【0055】
心電図生成部45は、心電情報生成部44が生成した心電情報に基づいて、心電図の情報を生成する。心電図生成部45は、制御部46に電気的に接続されている。
【0056】
制御部46は、例えば、単数又は複数のCPU(Central Processing Unit)により構成され、心電測定装置10全体の動作を制御する。また、制御部46は、操作部42、表示部43、及び心電情報生成部44に電気的に接続されている。制御部46は、操作部42、表示部43、心電情報生成部44、及び心電図生成部45の動作の制御、信号の送受信、及び電力の供給を行う。
【0057】
次に、心電測定装置10の動作を説明する。まず、ユーザは、図1に示すように、ベルト20を上腕に巻き付ける。このとき、ユーザは、図4及び図5に示すように、ベルト20の第1の電極31Aが設置された一端から、巻き付ける。ユーザは、ベルト20を上腕5に巻き付けると、固定手段22により固定する。
【0058】
図4は、周長が、おおよそ、ピッチ幅Aの3倍の長さである上腕5Aに心電測定装置10が固定された状態を、指側から見た状態を示している。図4に示すように、第1の電極31A、第2の電極31B、及び第3の電極31Cが上腕5Aの皮膚の表面に接触する。第1の電極31A、第2の電極31B、及び第3の電極31Cは、上腕5Aの周方向に、周長の略1/3の位置に位置する。第4の電極31D以降の番号の電極31は、上腕5Aに巻回されたベルト20の外面25に接触する。
【0059】
図5は、周長が、第1乃至第7の電極31A,31B,31C,31D,31E,31F,31Gが皮膚の表面に接触する長さである上腕5Bに、心電測定装置10が装着された状態を指側から見た状態示している。第1の電極31A、第4の電極31D、及び第7の電極31Fは、上腕5Bの周方向に、周長の略1/Nの位置、すなわち略1/3の位置に位置する。
【0060】
ユーザは、上腕5に心電測定装置10をベルト20により固定すると、操作部42を操作することにより、電位の測定を開始する。
【0061】
電位の測定が開始されると、第1乃至第7の電極31A,31B,31C,31D,31E,31F,31Gのうち、上腕5の皮膚の表面に接触する電極は、当該電極が接触した箇所の電位に応じた信号を心電情報生成部44に出力する。
【0062】
図4に示す上腕5Aに装着された心電測定装置10では、第1乃至第3の電極31A,31B,31Cのそれぞれが、電位に応じた信号を心電情報生成部44に出力する。図5に示す上腕5Bに装着された心電測定装置10では、第1乃至第7の電極31A,31B,31C,31D,31E,31F,31Gのそれぞれが、電位に応じた信号を心電情報生成部44に出力する。
【0063】
心電情報生成部44は、電極アレイ30から送信された電位の情報に基づいて、第1の電極31Aに対する、第2乃至第7の電極31B,31C,31D,31E,31F,31Gのうち上腕5に接触している電極の電位差を算出する。
【0064】
心電情報生成部44は、図4に示す上腕5Aに装着された場合は、第1の電極31Aと第2の電極31Bとの電位差、及び、第1の電極31Aと第3の電極31Cとの電位差を算出する。
【0065】
心電情報生成部44は、図5に示す上腕5Bに装着された場合は、第1の電極31Aと第2の電極31Bとの電位差、第1の電極31Aと第3の電極31Cとの電位差、第1の電極31Aと第4の電極31Dとの電位差、第1の電極31Aと第5の電極31Eとの電位差、第1の電極31Aと第6の電極31Fとの電位差、及び、第1の電極31Aと第7の電極31Gとの電位差を算出する。
【0066】
心電情報生成部44は、電位差を算出すると、これら算出結果から、正の最大値、及び負の最大値に基づいて、心電情報を生成する。この心電情報は、心電図を生成する為に必要な情報の一例である。心電情報生成部44は、生成した情報を心電図生成部45に送信する。
【0067】
心電図生成部45は、心電情報生成部44からの情報に基づいて、心電図を生成する。制御部46は、心電図生成部45が生成した心電図の情報に基づいて、表示部43に心電図を表示する。
【0068】
このように構成された心電測定装置10によれば、電極アレイ30の複数の電極31が、条件1及び条件2に従って設置されることによって、少ない電極数で、上腕5の周方向に周長の略1/Nの間隔の位置に電極が配置される。
【0069】
すなわち、上腕5の周長が短いユーザに対しては、等間隔に配置された第1乃至第3の電極31A,31B,31Cが上腕5の周方向に周長の略1/3の位置に配置されるので、心電情報をより正確に検出することが可能となる。上腕5の周長が長いユーザに対しては、第4の電極31D以降の電極のいずれかが、上腕5の周方向に周長の略1/3、及び略2/3の位置に配置されるので、心電情報をより正確に検出することが可能となる。すなわち、電極数を少なくしても、上腕5の周方向に周長の略1/Nの間隔の位置にいずれかの電極が配置される。このように、電極数が多くなることを防止可能となる。
【0070】
さらに、複数の電極31が、条件3に従って設置されることによって、電極31の数をより一層少なくすることが可能となる。
【0071】
さらに、複数の電極31が、条件4に従って設置されることによって、電極数を少なくしても、いずれかの電極が、上腕5の周方向に周長の略1/Nの間隔の位置に配置される。
【0072】
さらに、心電情報生成部44が、電極アレイ30の複数の電極31の出力のみに基づいて情報を生成する。このように、電極アレイ30の電極31以外に、心電の生成に必要な情報を生成する為の電極を要しないので、電極数が多くなることを防止可能となる。
【0073】
さらに、心電測定装置10は、心電情報生成部44、心電図生成部45、及び表示部43を備えることから、表示部43に心電図を表示することできる。この為、ユーザは表示部43を見ることによって、簡単に自身の心臓の状態を認識することが可能となる。
【0074】
上述したように、本発明の一実施形態に係る心電測定装置10によれば、電極数が多くなることを防止可能となる。
【0075】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されない。上述した例では、心電測定装置10は、心電の情報の生成に必要とする電極数の最小値が3である構成としたが、これに限定されない。他の例では、心電の情報を生成する為に必要な電極数の最小値を、4とする構成であってもよい。図6は、心電図の生成に使用する電極数を4とした場合の変形例である心電測定装置10Aの構成を示している。図6に示すように、心電測定装置10Aの電極アレイ30Aは、電極31を一例として9つ有する。
【0076】
複数の電極31の並び方向に第1の電極31Aの反対側の一端に固定された電極31を第9の電極31Iとし、第1の電極31Aと第9の電極31Iとの間に、第2乃至第8の電極31B,31C,31D,31E,31F,31G,31Hが並ぶ。
【0077】
第1の電極31Aから第5の電極31Eまでは、所定のピッチ幅Aで等間隔に並んでいる。第5の電極31E及び第6の電極31Fの間のピッチ幅B1と、第6の電極31F及び第7の電極31Gの間のピッチ幅C1と、第7の電極31G及び第8の電極31Hの間のピッチ幅D1と、第8の電極31H及び第9の電極31Iの間のピッチ幅Eとは、異なる。さらに、ピッチ幅B1,C1,D1,Eは、ピッチ幅Aとは異なる。さらに、A<B1<C1<D1<Eとなる。
【0078】
さらに、ピッチ幅B1は、第6の電極31Fまで使用される上腕5の適応周長の最大長をL4とすると、B1=(3/4×L4)-(4×A)となる。ピッチ幅C1は、第7の電極31Gまで使用される上腕5の適応周長の最大長をL5とすると、C1=(3/4×L5)-(4×A)-B1となる。ピッチ幅D1は、第8の電極31Hまで使用される上腕5の適応周長の最大長をL6とすると、D1=(3/4×L6)-(4×A)-B1-C1となる。ピッチ幅Eは、第9の電極31Iまで使用される上腕5の適応周長の最大長をL7とすると、E=(3/4×L7)-(4×A)-B1-C1-D1となる。
【0079】
また、上述した例では、心電測定装置10、10Aは、心電図を生成する構成を説明したがこれに限定されない。例えば、図1図3及び図6に2点鎖線示すように、ユーザの脈波を検出する脈波センサ50を有してもよい。脈波センサ50を有する構成の場合、電極アレイ30に対する脈波センサ50の位置は、心電測定装置10,10Aが上腕5に装着されたときに、脈波センサ50が電極アレイ30に対してユーザの抹消側に位置する位置であることが好ましい。すなわち、脈波センサ50は、装着時にユーザの心臓に対して電極アレイ30よりも遠い位置にあればよい。さらに、脈波センサ50を有する構成の場合は、制御部46は、心電波形と脈波形とに基づいて、PTT(Pulse Transit Time)を計測してもよい。表示部43は、脈波の波形を表示してもよい。
【0080】
また、心電測定装置10,10Aは、血圧を測定可能な血圧測定装置を備える構成であってもよい。血圧を測定可能な構成の一例として、オシロメトリック法によって血圧を測定する構成であってもよい。
【0081】
この場合、ベルト20は、例えば、内布、外布、及び内布と外布との間に設けられた押圧カフを有する。押圧カフは、上腕を取り囲むことができるように、ベルト20の長手方向に長い帯状体である。例えば、押圧カフは、伸縮可能な2枚のポリウレタンシートを厚さ方向に対向させ、それらの周縁部を溶着して、流体袋として構成されている。電極アレイ30は、装着状態で押圧カフと上腕5との間に位置するように内布に設けられる。
【0082】
また、上述した例では、心電測定装置10,10Aは、ユーザの上腕5に装着されたがこれに限定されない。心電測定装置10,10Aは、例えばユーザの手首に装着されてもよい。
【0083】
また、本実施形態では、心電測定装置10,10Aは、心電図生成部45及び表示部43を有しており、心電図をユーザに表示可能な構成であるが、これに限定されない。心電測定装置10,10Aは、例えば、表示部43を有していない構成であってもよい。この場合、心電測定装置10,10Aの心電図生成部45が他の表示装置に接続され、心電図生成部45がこの表示装置に心電図を表示してもよい。または、心電図生成部45を有さない構成であってもよい。この場合、心電情報生成部44が生成した情報に基づいて、心電情報を表示部43に数値で表示してもよい。
【0084】
また、上述のように、PTTを計測する構成、及び、血圧を測定可能な構成を有する場合、PTTから血圧を推定し、この推定値が予め設定された閾値を越える場合に、血圧測定装置により、血圧を測定してもよい。
【0085】
または、心電測定装置10,10Aは、心電図生成部45、及び表示部43を有さない構成であってもよい。この場合、心電測定装置10,10Aの心電情報生成部44が、心電図生成部及び表示部を有する他の装置に接続され、心電情報生成部44がこの他の装置の心電図生成部に情報を送信してもよい。
【0086】
また、本実施形態では、電極アレイ3の複数の電極31は、条件1乃至条件4を満たす設置構造を有している。しかしながら、条件1及び条件2のみを満たす配置構造、または、条件1及び条件2に加えて、条件3及び条件4の少なくとも一方を満たす配置構造であってもよい。すなわち、条件1及び条件2、条件1乃至条件3、または、条件1、条件2、及び条件4を満たす配置構造であってもよい。
【0087】
この場合であっても、同様の効果が得られる。
【0088】
また、心電測定装置10は、ベルト20が交換可能に構成されてもよい。すなわち、破損したり、または使用によりベルト20が交換時期になると、別の新しいベルト20に交換可能に構成されてもよい。
【0089】
また、上述した例では、ベルト20の電極31の出力に基づいて心電の情報を生成したが、これに限定されない。ベルト20は、電位に応じた出力に基づいてユーザの状態を測定する装置に用いることが可能である。
【0090】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明と同等の記載を付記する。
[1]
生体に、当該生体の周方向に巻き付けられるベルト本体と、
前記ベルト本体の前記生体側の内面に前記ベルト本体の長手方向に並んで固定された、心電の情報を得る為に必要な電極数をNとしたときN+2より大きい複数の電極を具備し、並び方向の一端に位置する電極を含んで当該電極から前記並び方向にN+1番目までの電極が所定の間隔で等間隔に並び、前記N+1番目以降の電極の間隔は、前記所定の間隔より大きい電極アレイと、
を備えるベルト。
[2]
前記並び方向の一端に位置する電極、及び当該電極を含んで当該電極から前記並び方向にN+1番目以降の電極間の間隔は、前記一端に配置された電極から前記並び方向に数えた番号が大きくなるにつれて、広くなる[1]に記載のベルト。
[3]
前記並び方向の一端に位置する前記電極から、当該電極を含んで当該電極からN+2番目以降の電極までの距離は、前記生体の電極の適応周長の最大長をLとしたとき、(N-1)/N×Lである[2]に記載のベルト。
[4]
生体に、当該生体の周方向に巻き付けられるベルト本体と、
前記ベルト本体の前記生体側の内面に前記ベルト本体の長手方向に並んで固定された、心電の情報を得る為に必要な電極数をNとしたときN+2より大きい複数の電極を具備し、並び方向の一端に位置する電極を含んで当該電極から前記並び方向にN+1番目までの電極が所定の間隔で等間隔に並び、前記N+1番目以降の電極間の間隔は、前記所定の間隔より大きい電極アレイと、
前記電極の出力に基づいて心電の情報を生成する処理部と、
を備える心電測定装置。
[5]
前記処理部は、前記複数の電極のうちの1つを基準電極として、この基準電極と他の電極のそれぞれとの電位差を算出し、算出結果のうちの負の最大値及び正の最大値に基づいて、心電の情報を生成する
[4]に記載の心電測定装置。
【符号の説明】
【0091】
5…上腕、5A…上腕、5B…上腕、10…心電測定装置、10A…心電測定装置、20…ベルト、21…ベルト本体、22…固定手段、30…電極アレイ、30A…電極アレイ、31…電極、31A…第1の電極、31B…第2の電極、31C…第3の電極、31D…第4の電極、31E…第5の電極、31F…第6の電極、31G…第7の電極、31H…第8の電極、31I…第9の電極、40…装置本体、41…ケース、42…操作部、43…表示部、44…心電情報生成部、45…心電図生成部、46…制御部、47…釦、50…脈波センサ、A…ピッチ幅、B…ピッチ幅、B1…ピッチ幅、C…ピッチ幅、C1…ピッチ幅、D…ピッチ幅、D1…ピッチ幅、E…ピッチ幅。
図1
図2
図3
図4
図5
図6