(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】装飾用樹脂板
(51)【国際特許分類】
A63F 7/02 20060101AFI20220711BHJP
【FI】
A63F7/02 304D
(21)【出願番号】P 2018191723
(22)【出願日】2018-10-10
【審査請求日】2021-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】518359351
【氏名又は名称】株式会社バディーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100074169
【氏名又は名称】広瀬 文彦
(72)【発明者】
【氏名】青木 盛利
【審査官】辻野 安人
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-225941(JP,A)
【文献】特開2009-025666(JP,A)
【文献】特開2015-058057(JP,A)
【文献】特開2013-112942(JP,A)
【文献】登録実用新案第3172292(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技球または遊技メダルを投入して遊技を行うための遊技機本体の遊技盤面に装着する装飾用
樹脂板(1)が、
光透過性を有する透明な樹脂からなるアクリル板(100)と、該アクリル板に貼付する模様(20)が描画された貼付材(200)と、からなり、
前記アクリル板(100)は、前記模様(20)と同形状の模様(10)が
、切削部分断面が台形状または半円形状を形成するように切削描画されるとともに、該切削描画された模様と前記貼付材に描画された模様(20)が精確に整合するように前記貼付材(200)を微調整のうえ接着固定して形成され
、切削面に対して水平な各方向から電照されることを特徴とする装飾用
樹脂板。
【請求項2】
遊技球または遊技メダルを投入して遊技を行うための遊技機本体の遊技盤面に装着する装飾用
樹脂板(1)が、
光透過性を有する透明な樹脂からなるアクリル板(100)と、該アクリル板に貼付する模様(20)が描画された貼付材(200)と、からなり、
前記アクリル板(100)は、前記模様(20)の描画された前記貼付材(200)が接着固定されるとともに、前記模様と同形状の模様(10)が前記アクリル板(100)と貼付材(200)とを接着固定した面に
、切削部分断面が台形状または半円形状を形成するように切削され
、切削面に対して水平な各方向および切削面の背面から電照されることを特徴とする装飾用
樹脂板。
【請求項3】
遊技球または遊技メダルを投入して遊技を行うための遊技機本体の遊技盤面に装着する装飾用
樹脂板(1)において、
前記装飾用
樹脂板を構成するアクリル板(100)は、光透過性を有する透明な樹脂からなるとともに、該アクリル板(100)の表面に模様(20)が印刷描画されており、
前記模様(20)と同形状の模様(10)が、前記アクリル板(100)の模様が印刷された面に
、切削部分断面が台形状または半円形状を形成するように切削され
、切削面に対して水平な各方向および切削面の背面から電照されることを特徴とする装飾用
樹脂板。
【請求項4】
前記貼付材(200)は光遮断性を有する材質からなることを特徴とする請求項1乃至請求項2記載の装飾用
樹脂板。
【請求項5】
前記切削描画された模様(10)は、NC切削加工またはレーザー切削によって描画されることを特徴とする請求項1乃至請求項4記載の装飾用
樹脂板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下左右または背面より光を照射することによって装飾性の高い図柄を表示するための装飾用の樹脂板に関し、特に、照射された光の反射によって視覚効果が高められる様々な模様、図柄、色彩の表示されたアクリル板を遊技機等の遊技盤面や筐体の前面、側面に設置して高い美観を得ることにより、装飾遊興性を高めることを可能とした装飾用樹脂板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、光を透明なアクリル板に照射してアクリル板に施した様々な模様、図柄、色彩を目立つようにして掲示する装飾方法が数多く用いられている。特に、遊技機等では、遊技者への視覚的効果を高めることによって遊興性を向上させるため、このような装飾方法が多く用いられている。
【0003】
透明なアクリル板に図柄の印刷を施して光を照射すると、図柄が浮かび上がるが、立体感がないため、視覚的効果はあまり高くないと考えられる。これに対して、単にアクリル板に図柄を印刷したり、着色したりするにとどまらず、図柄に沿ってアクリル板を削ることによって、光の反射効果を得て視覚的効果を高めることが行われている。
【0004】
例えば、レーザーによってアクリル板の表面を削ることが行われている。これによると、アクリル板の上下左右から光を照射した場合に削られた部分が発光するため視覚的効果が高まることとなる。これによっても高い視覚的効果が得られるが、輝きの度合いの観点からは、不十分な場合があった。
【0005】
このような問題点を解決するための技術として、特開2008-245970号公報が存在する。ここでは、パチスロ機やパチンコ機を収納する空間にアクリル樹脂等の透明材で柱状の装飾体を取付け、装飾体の一端に多色のLED等の光が入光する円錐部を形成するとともに、周面に光源からの光を上方および下方に向かって反射する凹凸状の中間部を形成する技術が開示されている。これにより、光源を点灯することで周面全体が照明されるようになり、遊技者や通りがかる人に対して美観を与えると共に斬新性や驚嘆を与えることを可能とした遊技機を提供できる旨が開示されている。
【0006】
確かにこの技術によれば、装飾体から放出される光があらゆる方向に反射して美観を高めることが可能となるが、装飾体の設置場所や設置方法が限定されることや、図柄と一体化した模様を際立たせるのが困難であるなど、用い方に制限があるという問題点があった。
【0007】
そこで、特に遊技機の遊技盤面や筐体の前面、側面に設置するための樹脂板であって、照射された光の反射によって様々な模様、図柄、色彩が表示されたアクリル板の視覚効果を高めることで、ユーザの遊興性を高めることを可能とした、装飾用の樹脂板の開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題を解決するために、上下左右または背面より光を照射することによって装飾性の高い図柄を表示するための装飾用の樹脂板であって、特に、照射された光の反射によって視覚効果が高められた様々な模様、図柄、色彩の表示されたアクリル板を遊技機等の遊技盤面や筐体の前面、側面に設置して高い美観を得ることにより、遊興性を高めることを可能とした装飾用樹脂板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため本発明に係る装飾用樹脂板は、遊技球または遊技メダルを投入して遊技を行うための遊技機本体の遊技盤面に装着する装飾用樹脂板が、光透過性を有する透明な樹脂からなるアクリル板と、該アクリル板に貼付する模様が描画された貼付材と、からなり、前記アクリル板は、前記模様と同形状の模様が、切削部分断面が台形状または半円形状を形成するように切削描画されるとともに、該切削描画された模様と前記貼付材に描画された模様が精確に整合するように前記貼付材を微調整のうえ接着固定して形成され、切削面に対して水平な各方向から電照される構成である。
【0011】
また、本発明に係る装飾用樹脂板は、遊技球または遊技メダルを投入して遊技を行うための遊技機本体の遊技盤面に装着する装飾用樹脂板が、光透過性を有する透明な樹脂からなるアクリル板と、該アクリル板に貼付する模様が描画された貼付材と、からなり、前記アクリル板は、前記模様の描画された前記貼付材が接着固定されるとともに、前記模様と同形状の模様が前記アクリル板と貼付材とを接着固定した面に、切削部分断面が台形状または半円形状を形成するように切削され、切削面に対して水平な各方向および切削面の背面から電照される構成でもある。
【0012】
更に、本発明に係る装飾用樹脂板は、遊技球または遊技メダルを投入して遊技を行うための遊技機本体の遊技盤面に装着する装飾用樹脂板であって、前記装飾用樹脂板を構成するアクリル板は、光透過性を有する透明な樹脂からなるとともに、該アクリル板の表面に模様が印刷描画されており、前記模様と同形状の模様が、前記アクリル板の模様が印刷された面に、切削部分断面が台形状または半円形状を形成するように切削され、切削面に対して水平な各方向および切削面の背面から電照される構成でもある。
【0013】
また、前記貼付材は光遮断性を有する材質からなる構成である。
【0014】
また、前記切削描画された模様は、NC切削加工またはレーザー切削によって描画される構成である。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る装飾用樹脂板は、上記詳述した通りの構成であるので、以下のような効果がある。
1.アクリル板と貼付材とに分離したため、アクリル板に模様のみを削成した後に該模様が印刷された貼付材を削成面に模様がずれないように貼付する構成とすることができ、アクリル板の背面(貼付面)からの光を遮光して、側面からの照射時に削成図柄の効果的な光輝効果を得ることが可能となる。またこれにより、アクリル板の表裏何れも凹凸のない洗練された商品を提供することが可能となる。
2.アクリル板に予め模様の印刷された貼付材を貼付してから該模様に沿って切り込みを削成する構成としたため、印刷された模様と削成する模様のずれを確実に防止することが可能となる。また、背面からの光の照射を表面に透過させることが可能となり、効果的な光輝効果を得ることが可能となる。
【0016】
3.アクリル板に直接模様を印刷する構成としたため、貼付材を貼付する工程を省略することが可能となる。また、貼付材の貼付時のずれの発生をなくしエラーを防ぐことが可能となる。
4.貼付材を、光遮断性を有する材質で構成したため、アクリル板の背面からの不必要な入光や、アクリル板側面から入光した光の不要な拡散を防止することが可能となる。
【0017】
5.アクリル板への模様の切削部分断面が台形または楕円形状からなる構成としたため、アクリル板側面や背面から入光する光を効果的に反射させて視覚効果を高めることが可能となる。
6.NC切削加工またはレーザー切削によって、アクリルに模様を描画する構成としたため、所望する幅、深さ、形状の溝を精確に削成することが可能となる。
【0018】
7.アクリル板が切削面に対して水平な各方向から電照される構成としたため、水平に入射する光が切削部分で反射するため、模様が浮き立って光輝効果が高まり、視覚効果を高めることが可能となる。
8.アクリル板が切削面の背面から更に電照される構成としたため、予め貼付材を貼付してから模様を切削した場合に、背面からの垂直方向の光が切削部分で反射することとなり、より高い視覚効果を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る装飾用
樹脂板を、図面に示す実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の装飾用
樹脂板のアクリル板の正面図であり、
図2は、貼付材の正面図である。
図3は、アクリル板の切削後に貼付材を貼付する装飾用
樹脂板の概念図であり、
図4は、アクリル板に貼付材を貼付して切削する装飾用
樹脂板の概念図である。
【0020】
本発明に係る装飾用樹脂板1は、アクリル板100と、貼付材200とからなり、上下左右または背面より光を照射入光することにより、光輝効果を高めた装飾性の高い図柄を表示するための装飾用の樹脂板であって、特に、ユーザが遊技球または遊技メダルを投入することによって遊技を行うための遊技機本体またはその遊技盤面に装着する装飾用樹脂板である。
【0021】
アクリル板100は、
図1に示すように、本発明に係る装飾用
樹脂板1の本体を構成する部材であり、光透過性を有する透明な樹脂からなる構成である。本実施例では、遊技機本体またはその遊技盤面に装着されたうえで、電照して装飾性を高める構成であるが、これに限定されることはなく、電照せずに自然光で光輝性を高めるように設置する構成とすることが可能であり、また、遊技機本体やその遊技盤面ではなく、屋内外に設置する看板や標識等に使用することももちろん可能である。また、アクリル板100は、本実施例では薄型方形の板状部材からなるが、光透過性を有していれば材質もこれに限定されることはなく、また形状も、円形、三角形や、厚めの板体など、形状を適宜選択して使用することが可能である。
【0022】
貼付材200は、
図2に示すように、アクリル板100に貼付するための薄膜状の部材であり、本実施例では、アクリル板100と同じ形状・大きさからなる。貼付材200の表面には、模様20が描画されており、該模様面が光透過性を有するアクリル板100の貼付面に貼付されることにより、アクリル板100の反対側の面から該模様20を視認することが可能となる構成である。
【0023】
貼付材200の模様20は、本実施例では、印刷可能なフィルムからなり、模様が、オフセット印刷、スクリーン印刷、またはインクジェット印刷によって行われる構成である。模様が印刷されたフィルムを、アクリル板100に接着剤等によって接着固定する構成である。
【0024】
アクリル板100は、本発明に係る装飾用樹脂板を構成する前は、模様等が印刷乃至切削されていないプレーンな状態からなる板体である。このプレーンな状態の透明なアクリル板100に、まず貼付材200に印刷された模様20と同形状の切削された模様10が切削描画される構成である。
【0025】
その後、アクリル板100は、
図3に示すように、貼付材200が接着固定される構成である。この際、アクリル板100表面に切削された模様10と、貼付材200に描画された模様20とが、精確に整合するように、貼付材200の位置を微調整したうえで、アクリル板100に接着固定される。これにより、模様が削成された装飾用
樹脂板1が形成される構成である。この構成とすることにより、模様10が施された部分が、光の照射によって輝くため、視覚的効果の高い装飾用
樹脂板1を提供することが可能になるとともに、アクリル板100の切削後に貼付材200を貼付する構成であるため、アクリル板100の切削された部分が貼付材200によって隠されるため、表面を平坦にすることが可能となり、装飾用
樹脂板1の裏面も綺麗にすっきりとすることが可能となる。
【0026】
本発明に係る装飾用
樹脂板1の別の実施例として、
図4に示すように、予め、模様20が描画された貼付材200をアクリル板100に接着固定したうえで、貼付材200に描画された模様20と同形状の切削模様10を、アクリル板100と貼付材200とを接着固定した面に切削する構成である。すなわち、アクリル板100に貼付した貼付材200ごとアクリル板100を切削して模様10を切削描画する。この構成とすることにより、貼付材200に印刷された模様20と削成する模様10のずれを確実に防止することが可能となる。また、切削箇所が露出することとなるため、背面からの光の照射を表面に透過させることが可能となり、効果的な光輝効果を得ることが可能となる。
【0027】
本発明に係る装飾用樹脂板1の更に別の実施例として、装飾用樹脂板1を構成する光透過性を有する透明な樹脂からなるアクリル板100は、その表面に模様20が印刷描画された構成である。模様20は、本実施例では、スクリーン印刷またはインクジェット印刷によって行われ、該模様20と同形状の切削模様10が、アクリル板100の模様を印刷した面に直接切削される。この構成とすることにより、貼付材200をアクリル板100に貼付する工程を省略することが可能となり、製造工程の簡略化が図れる。また、貼付材200をアクリル板100に貼り付ける際に生じる可能性のある模様のずれの発生といったエラーを防止することが可能となる。
【0028】
本発明に係る装飾用樹脂板1の貼付材200は、本実施例では、光遮断性を有する材質からなる構成とすることも可能である。この構成とすることにより、アクリル板100の背面からの不必要な入光による乱反射の発生や、アクリル板100側面から入光した光が後方へ拡散して輝度が低下することを防止することが可能となる。なお、後方から光を照射して装飾用樹脂板1全体を光らせる構成の場合には、これに限定されず、光透過性のある材質を使用した貼付材200とすることももちろん可能である。
【0029】
アクリル板100に切削描画された模様10は、本実施例では、切削部分の断面が尖鋭形状、台形状または半円形状を形成するように切削されて描画される構成である。この構成とすることにより、アクリル板100の側面や背面から入光する光を効果的に反射させることが可能となり、用途に応じて適宜形状を選択することにより、視覚効果を高めることが可能となる。なお、切削する形状はこれに限定されることはなく、適宜変更して切削する構成とすることが可能である。
【0030】
また、アクリル板100に切削描画された模様10は、本実施例では、NC切削加工またはレーザーによって切削描画される。この構成とすることにより、装飾用樹脂板1の用途に応じて、所望する幅、深さ、形状の溝を精確に削成することが可能となる。なお、切削方法はNC切削加工またはレーザー切削に限定されることはなく、他の方法を適宜選択して使用することが可能である。
【0031】
本発明に係る装飾用樹脂板1は、本実施例では、切削面に対して水平な各方向から電照される構成とすることが可能である。この構成とすることにより、模様10が浮き立って見えることとなり、光輝効果が高まり、視覚効果を高めることが可能となる。
【0032】
また、本発明に係る装飾用樹脂板1は、切削面に対して水平な各方向から電照されるとともに、切削面の背面から更に電照される構成とすることも可能である。この構成とすることにより、予め貼付材200を貼付してから模様を切削した場合において、背面からの垂直方向の光が切削部分で反射することとなり、より高い視覚効果を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図3】アクリル板の切削後に貼付材を貼付する装飾用
樹脂板の概念図
【
図4】アクリル板に貼付材を貼付して切削する装飾用
樹脂板の概念図
【符号の説明】
【0034】
1 装飾用樹脂板
10 模様
20 模様
100 アクリル板
200 貼付材