(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】放射状グラデーションナノ粒子化合物とその使用方法
(51)【国際特許分類】
B22F 1/00 20220101AFI20220711BHJP
B22F 1/102 20220101ALI20220711BHJP
B22F 1/14 20220101ALI20220711BHJP
B22F 1/16 20220101ALI20220711BHJP
B22F 7/04 20060101ALI20220711BHJP
B82Y 25/00 20110101ALI20220711BHJP
B82Y 30/00 20110101ALI20220711BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20220711BHJP
【FI】
B22F1/00 S
B22F1/00 M
B22F1/00 Y
B22F1/102
B22F1/14 200
B22F1/14 600
B22F1/16
B22F7/04 G
B82Y25/00
B82Y30/00
B82Y40/00
(21)【出願番号】P 2018545562
(86)(22)【出願日】2016-11-18
(86)【国際出願番号】 US2016062666
(87)【国際公開番号】W WO2017087744
(87)【国際公開日】2017-05-26
【審査請求日】2018-05-18
【審判番号】
【審判請求日】2020-06-26
(32)【優先日】2015-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518176323
【氏名又は名称】メイエ,マシュー
(74)【代理人】
【識別番号】100064012
【氏名又は名称】浜田 治雄
(72)【発明者】
【氏名】メイエ,マシュー
【合議体】
【審判長】粟野 正明
【審判官】池渕 立
【審判官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0272447(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0057001(US,A1)
【文献】特開2003-055703(JP,A)
【文献】特開2011-246820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F1/00
B22F1/02
B22F4/04
B22F9/24
B82Y25/00
B82Y30/00
B82Y40/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄を含む少なくとも第1の金属から形成された金属中心と;
少なくとも第2の金属から形成された外部界面であって、第2の金属がニッケル、クロム、コバルト、モリブデン、タングステン、バナジウム、アルミニウム、およびチタン、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択されたものと;
前記金属中心から半径方向に外側に向かって前記外部界面まで、前記第2の金属の第1の濃度から前記第2の金属のさらに高い第2の濃度に遷移する勾配を有する領域とを含むナノ粒子。
【請求項2】
前記勾配の内部にボイドをさらに含む請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項3】
前記ナノ粒子が磁性体である請求項2に記載のナノ粒子。
【請求項4】
前記ナノ粒子が導電性である請求項2に記載のナノ粒子。
【請求項5】
前記ナノ粒子が少なくとも部分的に酸化されている請求項2に記載のナノ粒子。
【請求項6】
前記ナノ粒子が一つまたは複数の無機または有機化合物を用いて改質された請求項5に記載のナノ粒子。
【請求項7】
複数のナノ粒子を含むデバイスであって、各ナノ粒子が、少なくとも第1の金属から形成された金属中心と、少なくとも第2の金属から形成された外部界面と、
前記金属中心から半径方向に外側に向かって前記外部界面まで、前記第2の金属の第1の濃度から前記第2の金属のさらに高い第2の濃度に遷移する勾配を有する領域とを含み、前記複数のナノ粒子が被覆として基材に塗布され、前記被覆が基材を腐食から保護することを含むデバイス。
【請求項8】
前記被覆が、磁性体、導電体、触媒、またはそれらの組み合わせである請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記複数のナノ粒子が、ポリマーまたは複合材料中に埋め込まれた請求項7に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願の参照
本出願は、2015年11月19日に出願された米国仮特許第62/257,665号の優先権を主張する。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
本発明は、国立科学財団(NSF)による第1410569号の助成金のもと、連邦政府の支援を受けてなされた。連邦政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
1. 発明の分野
本発明は、酸化に対する安定性が劇的に改善したナノ粒子の組成に関するものであり、より詳細には、原子拡散、酸化物成長、サイズおよび形状の変化、ならびに反応性の制御を容易ならしめるように調整可能な半径方向の組成変化または合金勾配からなる、ナノ材料の組成および微細構造に関する。
【背景技術】
【0004】
2. 関連技術の記載
酸化理論、拡散速度、および相図に関連する発見が、超合金、形状記憶合金、およびステンレス鋼の進歩につながったのが、半世紀前であることから、金属表面の酸化を制御することは今日では非常に重要である。今日、金属と金属酸化物との界面おける研究は、技術的に重要な薄膜、および金属酸化物の成長が生じるナノスケールでのパラメータの最適化に重点を置いている。これは特に、遷移金属ナノ粒子に関して当てはまり、この場合、多くの研究が、金属酸化物のみに重点を置いている。これは第1には、遷移金属が酸化するのが容易であることが原因であり、これはナノスケール金属ではさらに当てはまる。したがって、克服しなければならない1つの技術的ハードルは、ナノ粒子の新しい組成物であって、それらの合成に何等かの固有の耐酸化能力が組み込まれたものを開発することである。もしそうしたナノ粒子が今日において利用可能であったなら、薄膜技術、磁性流体、磁気イメージング、および腐食に強い浄化が大きく前進する可能性があったであろう。本明細書に記載の技術は、合金特性および引き続く酸化傾向の変動を利用した半径方向の組成勾配(ナノ粒子の中心から外側に向かって距離の関数としての組成変化)変動を有するナノ粒子の発見に関する。すなわち、金属間の自己拡散速度およびそれら金属における酸化速度の複雑な違いを、新規組成および勾配を生み出すための合成ツールとして使用する。金属表面の酸化は、カブレラ-モット(Cabrera-Mott(CM))理論モデルを時に使用して、充分に理解されている。金属鉄(α-Fe)、金属クロム(α-Cr)、および金属ニッケル(Ni)における自己拡散を例にとり、
図1aを参照されたい。この場合、X、X、およびXである。興味深いことに、表面が部分的に酸化されているだけである場合には、そのような拡散はFe
2O
3中のFeの場合には増加することもあり、またはNiO中のNiの場合には減少することもあるものであり、これは
図1bを参照されたい。さらには、酸化速度は粒子サイズに依存し、その結果、ナノ粒子界面において予想される酸化物の厚さが異なるだけでなく、酸化物を通して異なる金属の拡散が誘起され、これは、酸化物の拡散より相当異なる速度であることが多い。この多様な拡散傾向により、ナノ界面で主な役割を果たすカーケンダル(Kirkendall)効果が生じ、この場合、金属-金属、または合金-合金の界面での不等拡散速度により、欠陥濃度の増加(すなわち、空のボイド形成、すなわち中空ナノ粒子)が生じる。さらに、配位子の導入、温度、圧力、および外部刺激の変化のような、合成のさらなる制御との組み合わせにより、さらにナノ粒子の組成勾配を変化させ制御することができる。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、複数の、金属、合金、ボイド、酸化物、または非金属の、半径方向の組成勾配からなる、ナノ粒子の新規組成物を含む。この勾配は遷移金属および酸化物からなるが、さらなる貴金属、半導体、またはイオン格子を使用してもよいことが理解される。本実施形態では、勾配は、中心において鉄に富んでおり、そこでは鉄は、ゼロ酸化状態(すなわち、金属鉄)であり、組成を、徐々にゼロ酸化状態(すなわち金属性)のニッケルから、ゼロ酸化状態(すなわち、金属性)のクロムに、もしくはその逆に、またはさらなる金属、例えばコバルト、バナジウム、マンガン、タングステン、もしくは他の好適なあらゆる金属との組み合わせに変化させることができる。さらには、勾配は、ゼロ酸化状態(すなわち、金属合金)のクロムおよびニッケルの混合物からなるものとすることもでき、この混合物は、さらなる金属、例えばコバルト、バナジウム、マンガン、タングステン、または他の好適なあらゆる金属と組み合わせることができる。加えて、カルコゲンを、酸素アニオン(すなわち、O2-)または硫黄アニオン(すなわち、S2-)の形態で格子全体に、必要であれば酸化物または硫化物の形態で導入してもよい。最後に、ナノ粒子勾配を、貴金属、例えば金、銀、パラジウム、もしくは白金の同心円状の区域、または偏析した(相分離した)区域を用いて終端させてもよい。これらの組成物を用いることで、本発明は、例えば耐酸化性における変態性能を向上させたナノ粒子につながり、この場合、ステンレス様の特性およびナノスケールでの金属特性の長期にわたる保持が保たれる。そのような一例が、ナノ粒子の磁性である。記載の組成勾配は、高いパーセンテージの金属的特徴を保持する材料から生じる金属性の強磁性特性から生じる磁気特性を有し、この特性はナノ粒子の完全な金属酸化物に特徴的な特性から生じるものではない。
【0006】
酸化理論、拡散速度、および相図に関連する発見が、超合金、形状記憶合金、およびステンレス鋼の進歩につながったのが、半世紀前であることから、金属表面の酸化を制御することは今日では非常に重要である。今日、金属と金属酸化物の界面おける研究は、技術的に重要な薄膜、およびナノスケールの金属特性と性能の最適化に重点を置いている。このことは特に、遷移金属ナノ粒子について当てはまる。バルクスケールでの遷移金属は、高温炉中で鍛造および合金化することで、合金化および酸化の制御を保証することができると同時に、現在重要なそして探求中の一つの領域は、酸化、ならびに遷移金属とそれらの酸化物との間の拡散速度の複雑な違いを、ナノスケールの性能を操作するための合成ツールとして使用することである。金属表面の酸化は、カブレラ-モット(Cabrera-Mott(CM))理論モデルを時に使用して、充分に理解されており、その結果は、コロイド合成化学者には意外なものである可能性がある。鉄(α-Fe)、クロム(α-Cr)、およびニッケル(Ni)中の自己拡散を例にとろう。鉄原子は、b.c.c.格子中で急速に自己拡散するが、NiおよびCrではもっと遅く拡散し、Cr中での拡散は、桁違いに遅い。しかしニッケル原子は、f.c.c.Ni-格子において中程度の速度でFeおよびCrの両方の中を自己拡散する。一方でクロムは、遅い自己拡散速度を有するが、FeおよびNiの両方の中を数桁速く拡散する。興味深いことに、表面が酸化されている場合、そのような拡散はFe2O3中のFeの場合のように増加する可能性があり、またはNiO中のNiの場合のように減少する可能性もある。さらには、酸化速度は、酸化物の厚さおよびタイプに高度に依存し、この場合、O2-アニオンはNiOおよびCr2O3酸化物中では遅く拡散するが、例えばFe3O4中では急速に拡散する。このように、混合された金属、酸化物タイプ、および酸化物の厚さとともに界面の組成は、原子の流れおよび酸化物の成長を支配する可能性があり、これはナノスケールでは、新規な挙動を生じさせる可能性がある。この多様な拡散傾向、およびこれが調整可能であることからは、ナノ界面において、特に酸化時に主な役割を果たすカーケンダル効果も生じる。この結果、酸化が生じるだけでなく、ナノ粒子内に原子拡散の結果としてボイドが形成されることもしばしばである。このように、合成材料化学者にとっては、材料の組み合わせの慎重な選択および酸化の制御を、反応条件(配位子環境、酸素圧力、アニーリング温度等)の調整につなげることができ、よって、新しいNP形態および微細構造につなげることができる。
【0007】
本発明は、材料の磁気特性、そしてまた材料の耐酸化能力(そのステンレスの挙動)を保つために、ナノスケールでの酸化挙動の制御を伴う。これを実現するため、本発明は、「勾配ナノ粒子」を含み、この場合、このナノ粒子の組成は、中心から半径方向に外側に向かって界面まで変化する。金属タイプだけでなくその濃度を含め組成を勾配に沿って制御することにより、本発明は、材料の性能を向上させることができる。
【0008】
上記のとおり、多元金属合金ナノ粒子(NP)は、重要な研究課題であるが、これは、金属の多くの組み合わせが、バルクまたは個々のNP対応物とは似つかぬ可能性のある独自の特性、例えば電気的、触媒的、および光学的な特性を生じる結果である。これら材料の潜在的な応用は様々であり、個別のナノスケール寸法での相の組み合わせの結果として、センサから磁性流体まで多岐にわたる。二元金属ナノ材料の独自の特性は、準備中に使用される部分に依存して実現されるものである。例えば、Fe3O4/AuのNPは、磁気的および触媒的な二官能性だけでなく、Fe3O4の磁気特性およびAuのプラズモン特性の両方を有する。合金NP、例えばFexCo1-xのNPは、強磁性FeとCoの組み合わせに起因する特有の磁気特性を示す。しかしながら、二元金属NPの製造では、相分離、酸化、およびレドックス反応といった難題が生じる。FeNiおよびFeCrの合金NPは、界面酸化および磁気特性のために興味深い。ナノ・フォーム(nano-form)として合成された場合、これらのNPは、高飽和磁化、低ヒステリシス、磁気相転移、高透磁率、および耐食性などの魅力的な特性を有し、生物医学、触媒作用、エレクトロニクス、ナノ流体、および磁気データ記憶での応用を考えられるようになる。FeNi合金NPの合成は典型的には、FeおよびNi前駆体の同時分解を伴う。この方法を利用すると、組成および形態を制御することは通常は困難である。これら粒子の酸化の結果として、合金/フェライト、例えばFeNi/NiFe2O4が形成され、これらは、酸化物の磁気的デッド(dead)層が粒子の表面に形成されることに起因して磁気特性に影響を及ぼすことがある。古典的なカブレラ-モット(CM)酸化理論が、単元金属系におけるNP酸化をモデル化し理解するのに用いられてきたものの、これは、二元金属系または多元金属系には適用されてはおらず、したがって、これら二元金属FeNiのNP系の酸化を、理論モデルを通じて理解することは特に興味深い。
【0009】
本発明は、添付図面と併せて以下の詳細な説明を読むことにより、さらに完全に理解し評価される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】勾配ナノ粒子組成物の概略図および変形例(a~b)である。5~500nmの限界寸法を有する金属ナノ粒子(1)、および付着した有機配位子または分子を有してもよい金属性のまたは酸化物の外部界面(周辺)(2)は、a
1-b
2の内部組成勾配を有することができ、ここでaおよびbは、遷移金属を表し、a
1は、ナノ粒子の中心において組成量が豊富であり、b
2は周辺で組成量が豊富である。代わりに、いかなる数のさらなる金属成分(これらは単純化のためc
3で示す)も存在することができ(3)、そして一連の多元金属組成は、いかなる組み合わせに調整することもできる(4)。組成勾配は急峻とすることができるものの(a-c)、勾配はまた、連続的に変化するもの、b
xc
1-xを用いて形成することもでき(5)、ここでxは半径の関数として変化する。ここでは、2つまたは3つの金属元素を用いて示すが、これは、簡潔さのためだけに示したものであり、成分、勾配、または勾配プロファイルの数は拡張可能であり、使用可能な、合金、金属間化合物、ならびにセラミックス、希土類、および非金属の結晶構造の数もそうである。
【0011】
【
図2】Ni-Fe=低(下)、中(中)、および高ニッケル勾配(上)について得られたNPの、酸化の前(a)および後(b)のXRDであり、これらは、ニッケルの厚さが0.5、2.0、および5.0ナノメートルのニッケルに富んだ区域に対応している。結果は、高ニッケル勾配において耐酸化性の向上を示している。
【0012】
【
図3】酸化前の低(a)、中(b)、および高(c)勾配を有するFe-Ni勾配ナノ粒子のTEM画像である。酸化後(d-f)では、低ニッケル勾配(d)は、ボイドに富んだ(中空の)内部微細構造(v-Fe-Ni組成)を示し、中ニッケル勾配は、2つの勾配の間のボイド(Fe-v-Ni勾配)を示す。
【0013】
【
図4】より高い温度(
図3の100℃と比較して)の140℃でのアニーリングと酸化であり、この結果、v-Fe-Ni勾配組成が得られ、この場合、中心は中空である。
【0014】
【
図5】Feの2p、およびNiの2p結合エネルギー領域のXPS分析であり、Ni-Fe=低(i)、中(ii)、および高(iii)ニッケル勾配に関して、酸化の前(上パネル、a~b)および後(下パネル、c~d)のものである。
【0015】
【
図6】Fe-Cr-NiのNP(a)、Fe-Ni-CrのNP(b)、およびFe-Cr
xNi
1-xの勾配ナノ粒子(c)の粉末XRDであり、酸化の前(i)および後(ii)のものである。結果は、aおよびcの両方において耐酸化性の向上を示している。
【0016】
【
図7】Fe-Ni-Cr(a)、Fe-Cr-Ni(b)、およびFe-Cr
xNi
1-x(c)のNPのTEM顕微鏡写真であり、酸化の前後(d、e、f)のものである。
【0017】
【
図8】Feの2p(a)、Niの2p(b)、およびCrの2p(c)結合エネルギー領域のXPS分析であり、Fe-Cr-Ni(i)、Fe-Ni-Cr(ii)、およびFe-Cr
xNi
1-x(iii)のNPに関して酸化の前(上パネル、a~c)および後(下パネル、d~f)のものである。
【0018】
【
図9】10および300K(a)で測定された一連の磁気ヒステリシスプロットと、零磁場冷却(ZFC)および磁場中冷却(FC)プロット(b)であり、酸化されたFe-Fe
xNi
1-xの低(i)、中(ii)、および高勾配(iii)についてのものである。
【0019】
【
図10】Fe-Cr-Ni、Fe-Ni-Cr、Fe-Cr
xNi
1-xについての磁気ヒステリシスループであり、酸化(「Ox」で示す)の前後で300K(a)および10K(b)で測定されたものである。
【0020】
【
図11】酸化後(a)、および酸化の4ヶ月後(b)でのNi-Fe勾配の勾配ナノ粒子である。形態には、ほとんどまたはまったく変化がみられず、時間経過に対する粒子の安定性および耐酸化能力を示している。
【0021】
【
図12】粉末XRDであり、T=180℃で準備され、空気中に150℃(a)、160℃(b)、および200℃(b)で48時間、開放することによりODE溶媒中で酸化されたFe-Cr
xNi
1-xナノ粒子についてのものである。Fe/Cr<110>およびNi<111>のb.c.c.反射が持続することは、高温での耐酸化性の有効性を示している。
【0022】
【
図13】粉末XRDであり、T=220℃で準備され、粉末形態で80℃(a)、150℃(b)で空気中に48時間、開放することにより酸化されたFe-Cr
xNi
1-xナノ粒子についてのものである。Fe/Cr<110>およびNi<111>のb.c.c.反射が持続することは、高温での耐酸化性の有効性を示している。
【0023】
【
図14】粉末XRDであり、100℃で48時間、酸化した後の、Fe-Fe
xMn
1-x(a)およびFe-Fe
xCo
1-x(b)勾配ナノ粒子についてのものである。Fe-Fe
xMn
1-x<110>のb.c.c.反射の持続性およびCoのh.c.p.<111>、<200>、および<220>反射は耐酸化性の有効性を示している。
【0024】
【
図15】Fe-Fe
xCo
1-x(A)、Fe-Fe
xMn
1-x(B)、およびFe-Fe
xMn
1-x(C)勾配ナノ粒子のTEM顕微鏡写真である。スケールバーはそれぞれ、50、100、および50nmである。
【0025】
【
図16】噴霧塗布工程の概略図である。勾配ナノ粒子は、水、溶媒、またはバインダー、プラスチック、エポキシ、もしくはシランとの組み合わせの中に分散され(1)、堆積速度、濃度、およびカバー率を細かく制御する(3)ことによって基材上に付けられる(2)。最終的な基材(4)は、金属、磁性体、半導体、非金属、プラスチック、複合材料、ガラス、紙、またはその何等かの組み合わせとすることができる。被覆の厚さ(5)は、このようにして調整することができる。勾配ナノ粒子は、粒界、亀裂、および不純物(8)を不動態化することを含め、基材表面の欠陥内を充填する。被覆の厚さは制御することができ、1~1000ナノメートルの範囲で変化させることができる。最終的な膜はさらに、付けられた後に熱処理、真空処理、または他の加工技術(例示せず)を介して加工することができる。
【0026】
【
図17】鉄釘の写真であり、
図15に要約したアプローチにしたがって勾配ナノ粒子を用いて噴霧塗布する前(A)およびその後(B)のものである。被覆は均一であり、被覆厚(15~100,000ナノメートル)に依存して変化する鈍いまたはマットな黒色仕上げを形成する。
【0027】
【
図18】工業用の亜鉛メッキされたナットおよびボルトであり、勾配ナノ粒子を用いた噴霧塗布の前(A)および後(B)のものである。
【0028】
【
図19】ガラス顕微鏡スライドの写真であり、勾配ナノ粒子を用いた噴霧塗布の後のもので、非金属表面を被覆するのが容易であることを示している。
【0029】
【
図20】鉄釘の写真であり、190℃で15時間の加熱への暴露の前(A)および後(B)のものである。勾配ナノ粒子で被覆された鉄釘の写真であり、190℃で15時間の加熱への暴露の後(C)のものである。裸の鉄釘は、厚い赤色酸化膜に起因して深赤色に変わるが、一方で勾配ナノ粒子で被覆された鉄釘は、深いマットな黒色を保ったままであり、このことは、勾配被覆された釘の耐食性の向上を示している。
【0030】
【
図21】鉄釘の写真であり、190℃で30時間の加熱への暴露の前(A)および後(B)のものである。勾配ナノ粒子で被覆された鉄釘の写真であり、190℃で30時間の加熱への暴露の後(C)のものである。裸の鉄釘は、厚い赤色酸化膜に起因して深紫/青色に変わるが、一方で勾配ナノ粒子で被覆された鉄釘は、深いマットな黒色を保ったままであり、このことは、勾配被覆された釘の耐食性の向上を示している。
【0031】
【
図22】鉄釘の写真(A)であって、
図19Aに示すものと同様な由来のもの、そして塩水中に14時間、浸漬した後の勾配ナノ粒子で被覆された鉄釘(B)である。被覆されていない鉄釘は発錆および質量損失を明瞭に示しており、一方で被覆された釘は、変化が最小限であり、このことは、勾配被覆された釘の耐食性の向上を示している。水線は釘の底部から上方真ん中にある。
【0032】
【
図23】NdFeB磁石(a)、またはNi-Cr
xNi
1-x勾配ナノ粒子を用いて被覆されたNdFeB磁石(b)のいずれかを含む一連の写真である。被覆は上記の方法を介して付けられた。これら磁石の腐食防止の試験は、5%NaCl塩溶液中、25℃で36時間、実行された。
図23cに示すように、被覆されていないNdFeB磁石は腐食を示しており、これは溶液の錆びた色(c)だけでなく磁石表面の色の変化により明らかである。対照的に、勾配被覆されたNdFeB磁石は、腐食を示さず、その表面は依然として変化しておらず、溶液は色を変えず、保護勾配層が腐食に対して磁石を不動態化させていることを示している。
【0033】
【
図24】電磁気的(EM)測定の結果であり、磁気勾配ナノ粒子による8~12GHzの周波数の吸収を試験したものである。(a)エラストマー支持体に担持させた場合に、勾配ナノ粒子を従来のFe
3O
4磁性ナノ粒子と比較したEM吸収特性の比較であり、勾配による優れた吸収を示している。(b)勾配ナノ粒子を市販のマイクロ波吸収体(エコソーブ(eccosorb))と比較したものであり、エラストマーに埋めこまれた勾配が低充填量であるにもかかわらず同様の吸収を示している。
【0034】
【
図25】プラスチックに埋め込まれた勾配ナノ粒子である。(a)試料の写真であり、この場合、勾配ナノ粒子は、PVDF中に埋め込まれ、プレスされて円盤状試験試料となっている。(b)得られた高磁性複合材料円盤が磁石に引き寄せられている写真である。
【0035】
【
図26】緩衝水溶液中での磁気ビーズ除去試験の結果を示し、これは、機能化勾配ナノ粒子(i)を市販のMagnaBindTM(a,ii)、およびTurboBeadsTM(b,iii)と比較したものである。磁気スタンド上に載せて10秒後に撮影した写真である。
【0036】
【
図27】典型的なUV-可視光スペクトルを示し、これは、勾配ナノ粒子磁気ビーズ(i)への暴露時間をとおしてssDNA(30塩基)濃度をモニタリングしたもので、この場合、ssDNAおよび勾配ナノ粒子の濃度は両方とも、マイクロモル濃度であり、PBS緩衝液(pH=7.4)中に分散されたものである。親和性が低い勾配ナノ粒子ビーズを用いた対照実験(ii)は、同様の期間をとおして観測可能なssDNA吸収を示さなかった。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、中心から半径方向に変化する組成を有するナノ粒子を形成することを伴う。単純な実施形態では、金属鉄の中心(Fe)、および濃度の増加する、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、ニッケルとクロムの合金(NiXCrY)、または空のボイドすなわち中空領域(「v」で示すもの)を有するナノ粒子の形成を考えよう。そのようなナノ粒子は、単純化のために;Fe-Ni、Fe-Ni-Cr、Fe-Cr-Ni、Fe-CrXNiY、Fe-v-Ni、Fe-v-Cr、Fe-v-Ni-v-Cr、およびFe-v-NiYCrXで示す。これらのナノ粒子の重要な特徴は、金属的特徴から始まりこの特性を保持するということである。例えば、Fe中心が金属性であること、そして還元-酸化の化学によって勾配の電気化学メッキまたは酸化が生じたりしないことに細心の注意が払われる。本系では材料は、空気の入らない条件のもとで準備されたものの、その他の条件、薬品、および処理もまた、これらの組成物を必ず準備できるようするものとする。
【0038】
図1は、ナノ粒子設計および組成の概略図を示す。勾配は、選択される2つの金属よりも多くすることができ、勾配は、金属の位置および濃度に関して変化させることができる。いくつかの具体例を選択して、このアプローチの信ぴょう性、すなわち、Fe-Cr、Fe-Ni、Fe-Cr-Ni、Fe-Ni-Cr、Fe-Mn、Fe-CoおよびFe-Cr
xNi
1-xのNPを実証した。本発明のアプローチの重要な特徴は、すべてのナノ粒子および前駆体が完全に還元されて金属状態になること、そしてナノ粒子の最初の生成中に酸化物が存在しないことである。金属性α-Fe中心を出発点として選択したが、その理由は、これが豊富であり、この結晶構造が体心立方型(b.c.c.)であり、勾配の残りの合金化、拡散、および酸化の制御を出発材料が顕著に向上させるからである。第1の例では、勾配は、Fe-Ni組成から成っており、この場合、Ni組成および厚さが制御される。
【0039】
図2は、粉末X線回折(XRD)特性評価を示し、O
2-の導入の前(a)および後(b)での低(i)、中(ii)、および高(iii)のニッケル勾配で製造されたFe-Niナノ粒子についてのものである。ここで、「低」は、狭いNi領域、典型的には1~3ナノメートルを示し、「中」は3~5ナノメートルであり、「高」は>5nmである。興味深いことに、これらのXRDは非常に異なっており、Ni勾配が系において果たす役割を示している。例えば低勾配では、試料をO
2-に導入する前後に顕著な酸化が観測されている。(
図2b-i)。試料は、反応容器を空気に開放する間にNi-Feを100℃に加熱することによって、さらに酸化される(O
2の添加)可能性があり、この結果として完全酸化されM
3O
4(M=Fe、Ni)結晶タイプになる。中Ni勾配(ii)が増加する結果として、金属性のb.c.c.および金属性の面心立方f.c.c.が共存するNPが形成され、M
3O
4酸化物は少なくなる。高Ni勾配では、NPは専らf.c.c.であり、高温でのO
2導入の後でさえ、金属の形態で残っている。興味深いことに、このXRDパターンは、大気条件で4ヶ月後でも安定であった。
【0040】
図3は、Fe-Ni勾配ナノ粒子NPのTEMおよびHRTEMを示し、O
2-の導入の前(左パネル)および後(右パネル)の、低(a)、中(b)、および高(c)Ni勾配でのものである。この実施形態では、平均ナノ粒子直径(d)は、酸化の前に12.0±1.5(a)、11.2±1.2(b)、および18.0±2.6nm(c)であったことから、実際の勾配が約0.5、2.0、および5.0nmであることが示される。単純化のために、これ以降、試料を低(l)、中(m)、および高(h)勾配とする。酸化の前に、NPは固体形態を有しており、h勾配のFe-Ni組成だけが細長い形態への変化を示した。興味深いことに、O
2-の導入後、l-およびm-Fe-NiのNPは大幅な形態変化を示したが、この場合、内部勾配はもはや、NPの内部にボイド領域(v)を共存させている。このv勾配領域は、TEMにコントラストが見られないことにより観察され、TEMは、HRTEMによる調査時には格子面が見られないことから、空の空間、または原子の完全な乱れを示している。これは特に、低勾配Fe-Ni(
図3a-ii)に当てはまっていたが、この場合NPは、ボイド側の1つの区域に関してではあるが主に中空であった。
【0041】
図4は、酸化された低(a)、中(b)、および高勾配Fe-NiのHRTEM元素マッピングスキャンを示す。低Fe-Ni(a)については、この元素分析はナノ粒子勾配を示しており、これはわずかなNiの肩を有していて、これがおそらく、非対称ボイド形成の理由であろう。興味深いことに、Fe勾配は、勾配の外周近傍に観測されており、顕著なFe拡散を示している。中Fe-Niは、Fe-Ni勾配を良好にマッピングすることが示され、そこではFe-Niでの境界は緩やかである(b)。高Fe-Niは、同様の勾配プロファイルを示したが、Ni-領域は高く酸化物の成長はほとんどなかった。
【0042】
勾配ナノ粒子の組成の変化、およびそれら粒子の金属性の性質を、X線光電子分光(XPS)を通じてさらに確認した。表1に、O2-の導入時のそれぞれの組成、および組成変化を示す。例えば、それぞれ低、中、および高Fe-Ni勾配について、総Fe組成は、53.1%、48.8%、および31.2%であり、Ni組成は46.9%、51.2%、および68.8%であって、Ni含有量の増加を示していた。勾配へのO2-の導入時には、Fe組成は、それぞれ低、および中勾配については、55.3%および87.4%で高いままであった。これは、酸化中にFe原子が外方へ拡散し、その結果、Feに富んだしかし依然としてNiを含有する外部金属酸化物層が形成されたことを示唆している。Ni組成は、厚いNi-Fe勾配については酸化の後73.3%で高いままであり、このNi勾配組成がFe勾配の完全不動態化に必要であって、耐酸化性の向上につながることを示唆している。
【0043】
【0044】
図5は、低(i)、中(ii)、および高Fe-Ni勾配(iii)について、O
2-導入の前(a,b)および後(c,d)の鉄およびニッケルについての2p結合領域を示す。酸化の前(a~b)では、Feの2pは、約707eVの結合エネルギー(BE)を示すが、これはFe0の特徴(金属状態)であり、これだけでなく709.7eV(i)、711.1eV(ii)、および711.5eV(iii)にはさらに顕著なピークを示し、これは酸化物勾配成長を示すものである。Ni勾配が増加して中および高になるにつれ、Niの2p領域は、ますます金属性のNi
0の特徴(金属の形態)を示し、これは、852.7(i)、852.8eV(ii)、および852.6eV(iii)での2p
(3/2)結合エネルギー(B.E.)によって示されるとおりであり、これらは、低い酸化物勾配をナノ粒子が有していることを示唆している。
【0045】
酸化の後(c~d)では、Feの2pおよびNiの2pの両方とも、高いBE信号ほどそのパーセンテージがわずかに増加することを示しており、NPの酸化物の成長が確認される。しかしながら、特に興味深いのは、広範囲の酸化の後でさえ金属Fe0が観察されている(BE≒707eV)という観察結果である。この観察結果は、鉄を用いて構築されたナノ粒子系では徐々に見られなくなっていき、この場合にはFe3O4またはFe2O3の酸化鉄が観察されている。まとめると、これらの結果は、耐酸化性および特性性能における金属Fe-Ni勾配の重要性を強く支持するものである
【0046】
上の結果は、合成および酸化中に、ナノ粒子中心から外向きにNi界面全体にFeが拡散することを示唆している。これを踏まえて、同様の寸法および形状のFe-Cr-Ni、Fe-Ni-Cr、およびFe-CrxNi1-xナノ粒子からなる三元金属系を含め、さらなる組成勾配を探った。これらの系では、Cr層の重要性は、第3の拡散バリアまたはプロモーターをもたらすということであり、これは合金化または酸化中のさらに多くの変態につながることが上に予想されているのに対して、CrxNi1-x合金の勾配は、酸化物の成長に対する新しいバリアを持ち込む。
【0047】
図6に、Fe-Cr-Ni(a)、Fe-Ni-Cr(b)、およびFe-Cr
xNi
1-x(c)勾配についてのXRDを示す。この実施形態では、約1nmの勾配拡散層を選択した。これらの三元金属勾配における酸化物に富んだ勾配の発現が、勾配組成に高度に敏感であることが見出されている。例えば、Fe-Cr-NiについてのXRD(
図6a)は、O
2-導入の前(i)および後(ii)の両方で金属性のb.c.c.<110>反射、および弱いf.c.c.<111>反射を示している。興味深いことに、M
3O
4酸化物反射は最小限であり、弱い<311>反射のみが観察されている。ここに、裸のFe-CrのNPはより容易に酸化するので、Niに富んだ外部勾配の重要性は、さらなる表面酸化を最小限にした。特に新規性のあるのは、もし、Fe-Ni-Crの場合(
図6b)のように勾配組成が反転するなら、最終的な勾配組成は常に酸化物であり、これはM
3O
4パターンの共存により観察されるとおりである。勾配の内部は金属性を保っており、これは、前述のb.c.c.反射が保持されていることから示唆されるとおりである。最後に、そして同等に新規性のあるのは、Fe-Cr
xNi
1-x勾配NPであり、この内部ではCr-Ni勾配はさらに一定した組成変化であって、O
2-の導入の前後(
図6c)でその金属状態を保持したNPを生成する。
【0048】
三元金属勾配ナノ粒子をTEMにより特性評価した。Fe-Cr-Ni勾配は、酸化の前にd=7.0±3.0nmの直径を示し、酸化後の同様のサイズd’=7.6±3.6nmを示した。Fe-Ni-Crは、酸化の前にd=8.7±2.3nm、そして後にd’=12.3±3.3nmのサイズを有していた。Fe-CrxNi1-xは、酸化の前にd=11.0±1.8nm、そして後にd’=10.9±2.0nmのサイズを有していた。
【0049】
三元金属組成物および元素状態をXPSにより特性評価した。
図Xは、Fe-Cr-Ni勾配(赤)を示す。酸化前には、Fe(a,i)は、金属的特徴を示し、それぞれ712.02eVおよび726.64eVに2p
3/2および2p
1/2のBEが存在する。O
2-導入後には、2p
3/2のBE(d,i)は、わずかに高いエネルギー側にシフトして714.6eVとなる。酸化前のNiの2pのBE(b,i)は、875.56eVにおいて主に金属状態が支配的であり、852.94eV、および856.04eV(2p
1/2)においてNi
2+の形態をとる。O
2-導入後には、2p
3/2ピーク(e,i)は880.65eVにシフトし、2p
1/2ピークは856.75eV、861.91eVにシフトして、最小限の酸化物成長のみを示している。Crの2pの痕跡は、より高いBE値を有し、酸化の前(c,i)および後(f,i)にほとんど変化を示さず、これは酸化が生じたことを示唆している。Crの2p
3/2ピークが578eVに観察され、2p
1/2ピークは587eVである。
【0050】
Fe-Ni-Cr勾配の場合(青)には、O2-導入の前(a,ii)および後(d,ii)のFeの2p3/2ピークが、711.56eV、716.80eV、および711.76eVに存在し、2p1/2ピークがそれぞれ、730.12eV、および732.33eVに存在する。未酸化のNiのBE(b,ii)は、852.70eV、858.66eV(2p3/2)、および877.74eV(2p1/2)である。酸化後には、ピーク(e,ii)は、高エネルギー側にシフトして、856.34eV、860eV(2p3/2)、および880.23eV(2p1/2)である。Crピークの高いBE値は、クロム酸化を示している。未酸化の(c,ii)および酸化された(f,ii)試料についてのCrの2p3/2ピークが581.32eVおよび577.84eVに存在し、2p1/2ピークがそれぞれ、590.56eV、および587.55eVに存在する。
【0051】
これらのNPについては、XPSの結果はPXRDの結果とよく一致した酸化を示している。表1にこれら勾配ナノ粒子の元素組成を列挙する。各場合に、ニッケルおよびクロムの存在の両方が確認され、Fe-Ni-Crのみが、ニッケル含有量のかなりの増加を示している。酸化後には、濃度は同様のままであるが、Fe-Ni-Crの場合は別で、これは、クロム濃縮量がかなり増加したことを示しており、ニッケルまたは鉄が酸化ステップの結果として失われたことが示唆される。
【0052】
Fe-CrxNi1-x勾配は、Feの2pのBE領域が明確なエネルギー変化を伴っていることを示している。O2-導入前には、Feの2p領域(a,iii)は幅広く広がっている一方、酸化されたFeの2pピーク(d,iii)は、局在化して複数の位置にある。酸化前(b,iii)のNiの2p3/2ピークが853.04eVおよび856.73eVに存在するが、酸化の後(e,iii)には856.24eVおよび862.27eVにシフトする。酸化前のNiの2p1/2ピークが872.75eVおよび880.25eVに存在するが、酸化の後には、875.17eVおよび881.75eVにシフトする。Crピークは、他の系に見られるように、より高いBE値に存在する。重要なのは、金属CrのBEの特徴が576.95eV、577.72eV(2p3/2)、および586.95eV(2p1/2)に存在し、これはFe-CrxNi1-xが金属性のFe、Ni、およびCrを有していることを示していることである。
【0053】
まとめると、三元金属勾配のXPSの結果は、勾配の順序および組成により酸化を調節でき、勾配がナノ粒子の金属的特徴を強く保持しているのが見出されたという、ナノ粒子の金属に富んだ性質の証拠を示している。
【0054】
酸化鉄ナノ粒子は、そのサイズ可変な磁気特性から長く研究されてきたものであり、超常磁性を示すことが知られている。対照的に、強磁性金属に由来する金属ナノ粒子はさらなる磁気強度および保磁力(Hc)を有している場合がある。この研究領域はあまり知られていないが、これは金属状態を有するナノ粒子を準備するのが困難であるせいである。上に示されたとおり、本明細書に記載の勾配ナノ粒子は、強い金属性を示し、そしてその磁気的特徴は以下に記載される。
【0055】
表2に、Fe-Ni勾配ナノ粒子の磁気特性を示すが、これらは準備してそのままのものおよび酸化の後のものである。勾配は、低および中の勾配では超常磁性であるのに対して、高勾配は、ゼロ(超常磁性状態)から約100Oeに増加するHcに起因して、強磁性の特性を示す。また示されているのは、予備的な磁化飽和値(Ms)であって、生のemuおよび規格化されたemu/gの値で列挙してあり、ここでgはナノ粒子の質量である。これらの系は、いくつか初期ばらつきを有しているが、>120の高いemu/g値は、これらの材料を、磁気に関する多くの応用に使用できる可能性を示している。これらの試料についての磁気ヒステリシスループを
図10に示す。
【0056】
【0057】
表3は、Fe-Cr-Ni、Fe-Ni-Cr、およびFe-CrNi勾配ナノ粒子に関して、対応する磁気値を示す。Fe-Ni勾配と比較すると、これらの材料は大幅に高いHcを示し、強磁性的特徴の向上を示しており、さらには、Fe-CrNi勾配についての140~156という予備的なemu/g値は、非常に大きな磁気特性、そしてまたナノ粒子の酸化傾向の減少に起因する磁気安定性を示している。
【0058】
これらの試料についての磁気ヒステリシスループを
図10に示す。
【0059】
【0060】
上の結果は、勾配ナノ粒子が原子スケールで高度に応答性のある酸化特性を有していることを示しており、さらにこれらを、バルク基材用の不動態層としての適用可能性について試験した。このために、精製勾配ナノ粒子を、記載のとおり精製してヘキサン中に溶解させた。この後、これらの勾配溶液を、噴霧塗布においてインクまたは塗料様材料として使用したが、このさいには圧縮ガスを使用してこのナノ粒子の希薄な被覆を基材上に発射した。
【0061】
図15は、このアプローチの一般的な概略図である。
図16は、いかなる亜鉛メッキ層も除去するために事前に砂吹きされた鉄釘の写真を示す。それは光沢のある金属(A)である。勾配ナノ粒子を用いて被覆した後、表面はもはや、マットブラック色(B)であり、その厚さは1ミクロン未満であった。
図17は、工業用のナットおよびボルトの同様の被覆を示すが、これは、複数の金属表面を被覆するのが容易であることを示している。
図18は、ガラス顕微鏡スライド上に噴霧塗布された勾配ナノ粒子の同様の写真を示しており、ナノ粒子を用いて複数の対象物を被覆するのに適用可能であることをさらに示している。
【0062】
その後、勾配被覆された基材を、高温で、そして塩水中で試験し、被覆されていない基材と比較した。
【0063】
図19および20は、オーブン中190℃でそれぞれ14および40時間加熱された鉄試料を示す。裸の鉄試料(A)はこれらの温度で、酸化して暗赤色(
図19b)に、または暗紫青色(
図20b)になる。対照的に、勾配ナノ粒子は他方で、マットブラック仕上げを保ったままである。勾配ナノ粒子で完全には覆われなかった鉄試料の領域では、酸化を観察することができ、これは、勾配ナノ粒子被覆が、鉄釘基材の酸化を停止させるのに基本的に重要であることをさらに示唆している。
【0064】
図21は、鉄釘(A)および勾配ナノ粒子で被覆された鉄釘(B)を塩水中に14時間、入れた場合の同様な一組の試料を示す。鉄釘は、水線(A、釘の上方ほぼ真ん中)下で劇的な変化を有しており、酸化を示している。対照的に、勾配ナノ粒子は、概ね変化なしを保っており、黒色の勾配被覆は、塩に富んだ条件に左右されない。
【0065】
希土類磁石を腐食から保護する勾配ナノ粒子の能力もまた示された。
図23は、勾配ナノ粒子を用いて被覆する前(a)および後(b)の市販のNdFeB磁石についての一組の写真を示す。両試料は、NaCl塩溶液(5%NaCl)に36時間、浸漬した。被覆されていない磁石は、溶液中の表面そしてまた金属固体の色の変化、および錆色(c)を通じて酸化を示す一方で、勾配ナノ粒子で被覆された磁石は、同じ条件および暴露時間(d)について、検出可能な変化を示していない。
【0066】
また、勾配ナノ粒子の高い磁気強度を使用して電磁(EMI)放射線を吸収させた。
図24は、ナノ粒子の吸収率を8~12GHzで比較した典型的なEMI吸収測定を示す。これらの実験では、勾配ナノ粒子はPDMSエラストマー中に分散させた。
図24に示すとおり、磁気勾配ナノ粒子は、調べた周波数において>90%吸収を有しており、これは、PDMSエラストマーに同様の重量濃度で分散させた従来のFe
3O
4磁性ナノ粒子よりも大幅に高いものである。
図24(b)では、PDMSエラストマーに埋め込まれた同一勾配ナノ粒子を、市販のマイクロ波吸収体、エコソーブ(商標)(EccosorbTM)と比較した。これらの実験では、勾配ナノ粒子およびエコソーブ(商標)試料は、同様の厚さのものであったが、前者は10分の1よりも低い金属充填量であった。追加試験により、EMI吸収が勾配ナノ粒子サイズ、組成、および充填量に関係することが示された。しかし、さらなる試験により、勾配ナノ粒子による好都合なEMI吸収は、>20GHzの周波数にまで広いこと、そして特定の周波数を目標とし得ることが示されている。
【0067】
PDMSに加えて、勾配ナノ粒子は、プラスチックおよび複合材料を磁気的な面で増強する優れた候補であることが示された。
図25(a)に、PVDFポリマー埋め込まれた勾配ナノ粒子を示す。これらの例では、勾配ナノ粒子は、溶融PVDF中に溶解させた後、示すような円筒状基材に成型した。得られた複合材料は、勾配ナノ粒子充填量だけでなくサイズおよび組成に比例する磁気特性を有していた。
図25(b)は、磁石に吸い付けられた勾配ナノ粒子PVDFポリマーを示すが、ホストポリマーは今や磁気的特徴を示している。
【0068】
生命科学への応用に向けた磁気ビーズ支持体としての勾配ナノ粒子の使用について調べた。勾配ナノ粒子は、そのナノメートルの直径が調整可能であり、好都合な磁気特性(高磁化率、超常磁性等)を有することから、そのような特性を有する市販のナノサイズのビーズがないことを考えると生命科学にとって優れた候補である。
図26に、比較研究を示すが、この場合、勾配ナノ粒子ビーズは、上記のとおりに準備し、無機および有機表面の化学的性質を変化させる組み合わせにより、親水性となるようした。
図26では、勾配ナノ粒子(i)を、市販の磁気ビーズ、Thermo Fisherの商標であるMagnaBind(商標)(a,ii)、およびTurboBeadの商標であるTurboBeads(商標) TEMPOと比較した。磁気スタンド上10秒で撮影された場合に示される、いわゆる除去時間を比較した。多くの条件において耐酸化性とあいまって強力で調整可能な磁気特性を含む勾配ナノ粒子の特性を全体として考えると、生物学的なまたは環境にかかわるナノサイズの目的物の捕捉および放出を制御できる磁気ビーズの可能性は、従来のミクロンサイズの磁気ビーズを用いるのとは対照的に、より身近であるように見える。このようなナノサイズの目的物は、勾配ナノ粒子と同程度のサイズ、電荷、および溶解度を有しているので、インキュベーション、反応、および収集の向上を可能にすると同時に、ビーズのバックグラウンドを低下させ、分離を磁気的に調整することもできる。ナノサイズの生物学的目的物の例には、オリゴヌクレオチド、10~1000塩基対の一本鎖DNAまたは二本鎖DNA、ペプチド、タンパク質、ウイルス、酵素、エキソソーム、ペプチドアセンブリ、DNAアセンブリ、および生体高分子複合体、および薬物が挙げられる。一例として、短い一本鎖DNA断片であるナノサイズの生体分子を考えると、この収集は、フィルター、沈降、および市販のミクロンサイズのコロイド状磁気ビーズ支持体を用いては困難である。短い断片(<300塩基対)をそのように分離することは、高い忠実度で行われるさらに大きなサイズの分離とともに、PCRクリーンアップ、DNAアッセイ、および新たな診断試験のホストといった応用において基本的に重要である。
【0069】
原理の証明として、勾配ナノ粒子を上記のとおり磁気ビーズとして加工した場合に、それらはssDNAの短鎖を収集することが見出された。
図27は、紫外-可視光スペクトルを示すが、これは、DNAの短い断片を収集するように表面が修飾された勾配ナノ粒子に、30塩基のssDNA(5’-TTA TGC TAT CGA GTC ATG AAG GTT AGG TTA-3’)を暴露させた後のその濃度を比較したものである。時間とともに、DNA濃度が、勾配ナノ粒子濃度および暴露時間(i)対して線形に減少することが見出された。対照実験(ii)は、勾配ナノ粒子の組成、サイズ、および表面の化学的性質が、DNAの接着および放出において重要な因子であったことを示している。
【0070】
このように本発明は、特定の特徴を実現するためのナノ粒子の調整を伴う。本明細書における説明のとおり、ナノ粒子勾配の組成および濃度を調整するステップは、少なくとも1つの金属の金属中心を、少なくとも1つの第2の金属との界面の存在のもとでアニールすること、少なくとも1つの金属の金属中心を、少なくとも1つの第2の金属との界面であって、その厚さが0.5~100ナノメートルである界面の存在のもとで、アニールすることを伴うものとすることができる。粒子は、サイズが5~500ナノメートルにわたるものであってもよく、そしていかなる形状または形態で存在するものであってもよい。本発明では、記載のアニーリングは、加熱によるものであり、この場合、ナノ粒子は50~500℃の温度に加熱される。ナノ粒子のこのアニーリングは、一定温度で長時間、実行することができ、そしてまたナノ粒子のアニーリング中に熱サイクルを用いることができるが、この場合、低、高、および様々な温度昇降が用いられる。さらなるアニーリング技術、例えば、マイクロ波照射、超音波振動、紫外光、可視光、および近赤外レーザー光、磁場、ならびに放射線もまた適用可能であると想定される。さらには、ナノ粒子がアニーリング中に暴露される環境、例えば圧力、ガスの種類、酸素分圧、真空レベル、溶媒タイプ、および湿度を変更して、勾配を調整することもできる。
【0071】
結論
【0072】
まとめると、これらの結果は、組成勾配を有するナノ粒子を使用して、ナノ粒子の酸化の特徴、形態/微細構造の変化、および材料の磁気性能を変えられることを示している。勾配は変化させることができ、これにより、腐食、磁気、情報技術、イメージング、電磁吸収、被覆技術、および免疫沈降にわたる分野における特定の応用を目的とする勾配が可能になる。本明細書に示した主な例の単純な実証は容易に敷衍されて、将来の工業、技術、および生命科学の多くの分野に広がるであろう。
【実施例】
【0073】
実施例1:Fe-Ni、v-Fe-Ni、およびFe-v-Ni勾配の合成
【0074】
結晶性b.c.c.Feナノ粒子を使用した。金属Feナノ粒子は、多くの方法で準備できたが、この実施例では、配位子、例えばオレイルアミン(OAm)、および塩化ヘキサデシルアミン(HDACl)の存在下で、鉄(0)ペンタカルボニル、(Fe(CO)
5)の分解を用いて準備した。単純な場合では、19.0mLの高沸点溶媒、例えばオクタデセン(ODE)、約200mgのHDACl、および約1.0mLのOAmを一つにし、120℃で0.5時間、脱ガスした。この混合物を四つ口フラスコ中、Ar下で180℃に加熱し、次に0.35mLのFe(CO)
5(THF中1.0M)を、気密針を通じてAr下で溶液に注入し、鉄ナノ粒子中心を形成した。この実施例では、中心のサイズは、8~12ナノメートルの程度であり、概ね球形であったが、本明細書に記載のその後のステップは、濃度およびアニーリング条件の調整の後には、さらに大きいサイズの直径(5~500nm)や異なる形状(直方体、棒、多角形、等)の中心に対してもうまくいく可能性が期待される。例えば、鉄の中心を30分間、180℃でアニールした後、金属ニッケルをこの系に導入したが、この場合、[Ni]:[Fe]のモル供給比が制御された。この実施例では、ニッケル源はNi(PPh
3)
2(CO)
2であり、そのニッケルが金属性(Ni0)状態にあることから選択されたが、しかしながら、他の匹敵するNi源もまた使用することができる。典型的な合成では、1.5mmolのNi(PPh
3)
2(CO)
2(THF中0.1Mで3mL)をFe含有溶液に加えた。Ni注入は、少なくとも10回の個別の注入(各0.3mL)に分けたが、アニーリング時間は注入の合間、15分間であった。温度は少なくとも180℃に維持した。Fe-Ni勾配NPは、Ar下で乾燥エタノール(EtOH、200プルーフ)中に沈殿させることにより精製した。遠心分離(10分、4400RPM)の後、生成物を乾燥ヘキサン中に再分散させ、Ar中で保管した。NPの直接酸化を試験する場合には、この試験は、未洗浄の反応溶液を空気中に100℃で5.0時間、開放した後にEtOH沈殿させることにより実行した。さらに高いNi含有率勾配は、Ni添加の回数、1回の添加あたりのNiの濃度を増加させることにより、または[Fe]:[Ni]モル比を減少させることにより準備することができた。
図1~5、9を参照されたい。さらに大きな直径(10~100nm、>100nm)のFe-Ni勾配ナノ粒子は、金属前駆体の配位子濃度、核形成温度、勾配の数を変更することにより準備することができた。
【0075】
実施例2:Fe-Cr-Ni勾配の合成
【0076】
三元金属勾配ナノ粒子において、Cr前駆体を、合成における異なる時点で導入した。ヘキサカルボニルクロム(0)、(Cr(CO)6)の前駆体溶液は、100℃で不活性雰囲気のもと、650mgのCr(CO)6を20mLのジオクチルエーテル中に溶解させることにより準備した。この実施例では、Cr(CO)6前駆体を、そのCrが金属性(Cr0)であることから選択したが、他の前駆体を使用してもよいことは理解される。Ni前駆体を上記と同様にして準備した。
【0077】
典型的な合成では、6.8mLのCr前駆体を、FeのNP溶液(上に示したとおりに準備されたもの)に、Ar下180℃で加えた。例えば、2.3mLのアリコートをゆっくりと加えた後、さらなる成分の前に15分間、アニールした。次に、計9.4mLのNi前駆体をゆっくりと加えた。温度を最低180℃に維持した。Ni前駆体の注入量は、より小さな容積に等しく分割し、50分にわたって加えて急激な温度低下を回避した。溶液を45分間、180℃でアニールした。
図6~8、10を参照されたい。さらに大きな直径(10~100nm、>100nm)のFe-Ni-Cr勾配ナノ粒子は、金属前駆体の配位子濃度、核形成温度、勾配の数を変更することにより準備することができた。
【0078】
実施例3:Fe-Ni-Cr勾配の合成
【0079】
Fe-Ni-Cr勾配を同様にして、様々な前駆体順序を用いて準備した。この実施例では、計9.4mLのNi前駆体をゆっくりと、少なくとも180℃の温度で堆積させた。次に、6.8mLのCr前駆体をゆっくりと、少なくとも180℃の温度で加えた。ナノ粒子を上記のとおり精製した。
図6~8、10を参照されたい。さらに大きな直径(10~100nm、>100nm)のFe-Ni-Cr勾配ナノ粒子は、金属前駆体の配位子濃度、核形成温度、勾配の数を変更することにより準備することができた。
【0080】
実施例4:Fe-CrxNi1-x勾配の合成
【0081】
Fe-Cr
xNi
1-x勾配を、上記と同じ化学物質源を用いて記載した。Cr
xNi
1-x勾配を、CrおよびNi前駆体の両方を含有する保管溶液から加えた。[Cr]:[Ni]保管溶液のモル比は、典型的な注入の途中で変化させて、ナノ粒子中の所与の位置に様々なx組成を生成させた。典型的な合成では、6.8mLのCr前駆体および9.4mLのNi前駆体溶液を事前に混合した後、上記のとおりに準備され鉄に富んだ溶液を含有する溶液に、ゆっくりと注入した。実施例では、合成溶液を少なくとも180℃の温度に維持した。
図6~8、10を参照されたい。さらに大きな直径(10~100nm、>100nm)のFe-Cr
xNi
1-xの勾配ナノ粒子は、金属前駆体の配位子濃度、核形成温度、勾配の数を変更することにより準備することができた。
【0082】
実施例5:Fe-FexMn1-x勾配の合成
【0083】
Fe-Fe
xMn
1-x勾配濃度を有する勾配ナノ粒子を、類似のアプローチを用いて準備したが、この場合、Mn(CO)
6の添加は、さらなるFe(CO)
5のすぐ後に取り入れた。[Fe]:[Mn]のモル比は、合成の途中で調整(100~0)して、勾配を調整した。この系では、Mn(CO)
6の使用をマンガン源として利用したが、しかしながら、他の前駆体および金属塩もまた使用できる可能性がある。
図14を参照されたい。さらに大きな直径(10~100nm、>100nm)のFe-Cr
xMn
1-x勾配ナノ粒子は、金属前駆体の配位子濃度、核形成温度、勾配の数を変更することにより準備することができた。
【0084】
実施例6:Fe-FexCo1-x勾配の合成
【0085】
Fe-Fe
xCr
1-x勾配濃度を有する勾配ナノ粒子もまた準備し、Co(CO)
6の使用を、Fe(CO)
5の添加のすぐ後に取り入れた。[Fe]:[Co]のモル比は、合成の途中で調整(100~0)して、勾配を調節した。この系では、Co(CO)
6の使用をマンガン源として利用したが、しかしながら、他の前駆体および金属塩も使用できる可能性がある。
図14を参照されたい。さらに大きな直径(10~100nm、>100nm)のFe-Fe
xCo
1-x勾配ナノ粒子は、金属前駆体の配位子濃度、核形成温度、勾配の数を変更することにより準備することができた。
【0086】
実施例6:Fe-FexMo1-x勾配の合成
【0087】
Fe-Mo
xCr
1-x勾配濃度を有する勾配ナノ粒子もまた準備し、Mo(CO)
6の使用を、Fe(CO)
5の添加のすぐ後に取り入れた。[Fe]:[Co]のモル比は、合成の途中で調整(100~0)して、勾配を調節した。この系では、Mo(CO)
6の使用の使用をモリブデン源として利用したが、しかしながら、他の前駆体および金属塩も使用できる可能性がある。
図15を参照されたい。さらに大きな直径(10~100nm、>100nm)のFe-Fe
xMo
1-xの勾配ナノ粒子は、金属前駆体の配位子濃度、核形成温度、勾配の数を変更することにより準備することができた。
【0088】
実施例7:Fe-Cr-Fe-Ni-Co-Mn-W勾配およびその変形例の合成
【0089】
Fe-Cr-Fe-Ni-Co-MnまたはFe-CraFebNicCodMneの一般的な組成を有する勾配ナノ粒子であって、a~eがナノ粒子の中心から半径方向に変化してもよい組成であるナノ粒子をこの方法で準備することができ、ナノ粒子内部の組成勾配の位置の交代は、実施例1~6の二つ以上の合成を組み合わせることにより同様に制御することができる。180~500℃にわたるアニーリング温度を使用することができ、元素導入および勾配制御には複数の注入針、より正確には、タイミングおよび前駆体の濃度/容積の制御を自動化することのできる複数のシリンジポンプを使用することができる。さらには、さらなる金属、例えばタングステン、およびモリブデンの添加は、前駆体、例えばW(CO)
6およびMo(CO)
6、またはその他の好適な金属前駆体を使用して取り入れることができる。
図1~14を参照されたい。さらに大きな直径(10~100nm、>100nm)のFe-Cr-Fe-Ni-Co-Mn-Wの勾配ナノ粒子は、金属前駆体の配位子濃度、核形成温度、勾配の数を変更することにより準備することができた。
【0090】
実施例8:酸化物、硫化物、またはリン化物で終端された勾配ナノ粒子の合成。
【0091】
実施例1~7において準備された勾配ナノ粒子は、広範なセラミックス、酸化物、硫化物、およびリン化物を用いて終端することができた。酸化物については、ナノ粒子は、酸素に富んだ溶媒(溶媒中のO2のバブリングを通じて用意されたもの)中で、または各種化学酸化剤により80~200℃に加熱することができた。硫化物については、反応性硫黄種、例えばオクタデセンに溶解した分子硫黄(S8)、および反応性ホスフィン、例えばトリブチルホスフィン(TBP)、トリオクチルホスフィン(TOP)、またはトリフェニルホスフィン(P(Ph)3)に結合した硫黄に富んだ分子を加える。リン化物勾配成長については、反応性ホスフィン、例えばTBPおよびTOPを200℃の温度で過剰に加える。酸化物、ホスフィン、または硫化物の濃度は、薬品の導入および温度の昇降を変えることにより勾配全体にわたって変更することができる。
【0092】
実施例9:貴金属および合金で終端された勾配ナノ粒子の合成。
【0093】
実施例1~8に記載の勾配ナノ粒子は、様々な貴金属またはその合金を用い、金属塩を還元酸の存在下で還元することにより終端することができる。前駆体には、[AuCl4]-、[PtCl4]2-、[PtCl6]2-、[PdCl4]2-、およびAg+が挙げられるが、これらに限定はされない。こうした状況では、貴金属塩は、配位子または他の界面活性剤もしくは相間移動剤と錯形成して、勾配ナノ粒子ホスト溶液中の溶解度を促進させることができる。使用される還元剤には:H2ガスパージ、水素化ホウ素ナトリウム、水素化リチウムアルミニウム、および勾配ナノ粒子溶液における過剰アミンを通じた還元が挙げられる。堆積温度、圧力、および濃度を変化させることにより、貴金属勾配の厚さを単層以下のカバー率から複数ナノメートルにまで制御することができた。
【0094】
実施例10:アルミニウム、チタン、バナジウム、またはTi-Al-V合金で終端された勾配ナノ粒子の合成。
【0095】
実施例1~9に記載の勾配ナノ粒子は、アルミニウム、チタン、バナジウム、またはそれらの合金に富んだ勾配を用いて終端または機能化することができた。合成中の勾配ナノ粒子の溶液に、反応性アルミニウム前駆体、例えばアランを加えた。チタンについては、前駆体、例えばTiCl4を還元剤、例えば過水素化物の存在のもとで使用するか、有機金属錯体、例えばビス(シクロペンタジエニル)ジカルボニルチタン(II)またはビス(シクロペンタジエン)チタンジクロライド、μ-クロロ-μ-メチレンビス(シクロペンタジエニル)チタンジメチルアルミニウムを使用することができる。合金化を容易ならしめるには、これらの勾配前駆体は、合成中、制御された時点で加えることができ、さらにこれと組み合わせて、高温に加熱することができる。バナジウムの添加は、V(CO)6およびVCl4前駆体により容易になる。
【0096】
実施例11:希土類元素、ランタニド、およびアクチノイドで終端された勾配ナノ粒子の合成。
【0097】
実施例1~10に記載の勾配ナノ粒子は、希土類元素、希土類セラミックス、ランタニド、またはアクチノイドの勾配で終端する、またはこれらを含有することができた。勾配ナノ粒子の溶液に、希土類元素の前駆体、例えばネオジム(III)アセテート、またはトリス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ネオジムを加えて、様々な厚さおよび濃度の界面を形成することができる。同様に、他の希土類、例えばセリウム(セリウム(III)アセチルアセトネートまたは他の同様の前駆体を通じて)、サマリウム(サマリウム(III)アセチルアセトネートまたは他の同様の前駆体を通じて)、ユーロピウム(ユーロピウム(III)アセテートまたは他の同様の前駆体を通じて)、ガロジニウム(ガドリニウム(III)アセチルアセトネートまたは他の同様のものを通じて)、およびイットリウム(イットリウム(III)アセチルアセトネートまたは他の同様の前駆体を通じて)を使用することができる。これらの組み合わせにおいて、還元環境および高温アニーリングを加えることにより、上記のような勾配を可能にすることが容易になり得る。同様に、希土類の磁気勾配ナノ粒子は、Fe(上の実施例を参照されたい)およびホウ素に富んだ前駆体(ボランまたは同様の前駆体を通じて)の添加により容易になり、NdFeB勾配ナノ粒子が形成され得る。そのようなナノ粒子は、実施例1~10において、上記のような耐食性勾配を用いて終端することができ、高度に安定なNdFeBナノ磁石が形成され得る。同様に、セリウムに富んだ勾配および酸化物を用いて終端された勾配ナノ粒子もまた、ナノスケールおよびバルク形態で耐食性に効果的であることが実証される場合がある。
【0098】
実施例12:噴霧塗布勾配ナノ粒子膜
【0099】
実施例1~11およびそれらの組み合わせにおいて準備された勾配ナノ粒子は、多くのやり方で薄膜および被覆として堆積させることができる。最も単純な形態では、勾配ナノ粒子を上記のとおりに精製して、少なくとも10mg/mlの濃度(金属重量)で高揮発性溶媒に分散させる。ついでこれらを、塗料銃、エアブラシ、または同様の装置と組み合せることができるが、これらの装置内では圧縮空気を用いて勾配ナノ粒子の希薄な流れを生成する。噴霧時間、粒子濃度、温度、圧力、および表面処理を制御することにより、勾配を、金属、セラミックス、ガラス、プラスチック、ゴム、または様々なサイズおよび形状を有するその他の対象物上に堆積させることができる。膜はその後さらに、多くのやり方で、異なる温度および圧力、励起もしくは照射、または化学処理に暴露させることにより加工することができる。
【0100】
実施例13:勾配ナノ粒子膜の電気泳動堆積
【0101】
勾配ナノ粒子は、同様に電気泳動堆積アプローチ、または電気泳動堆積と密接に関連した他の堆積形態を用いても堆積させることができる。このために、ナノ粒子の非常に均一な性質およびコロイド安定性を、周囲にあるその配位子を伴った金属勾配界面の帯電した性質とともに、堆積のために使用することができる。ここで、高度に帯電した化学添加剤を必要に応じて加えて、ナノ粒子界面、または表面と相互作用させて、電荷を増加せることができる。勾配溶液の濃度、場の強度、および時間を堆積制御に使用することができる。
【0102】
実施例14:磁気蒸着。
【0103】
また強い磁気特性を使用して、勾配ナノ粒子の薄膜、被覆、およびその他の層形成を準備することができ、この場合、勾配ナノ粒子の溶液に沈めた選択基材の近傍には磁場が位置している。磁場および強度を制御することにより、勾配ナノ粒子堆積、パターン形成、および厚さを制御することができる。
【0104】
実施例15:エアロゲルおよび発泡金属中の勾配ナノ粒子。
【0105】
勾配ナノ粒子を、エアロゲルおよび発泡金属用の金属源として使用することができる。この加工では、勾配ナノ粒子は、超臨界二酸化炭素、または同様の超臨界物質中に溶解され、パターン、格子、またはその他の高表面積のホスト材料内に置かれる;またはポリマーおよび他のバインダーと組み合わされる。超臨界流体の蒸発時には、連結された勾配ナノ粒子の複合材料マトリクスが存在することになる。ボイド(v)に富んだ勾配ナノ粒子と組み合わさる場合、表面積および重量の減少を最小限にすることができる。乾燥勾配エアロゲルは、最終的な応用に依存して異なる温度および条件で加工することができる。
【0106】
実施例16:勾配ナノ粒子膜の試験。
【0107】
勾配ナノ粒子を、砂吹きされた鉄釘、酸洗浄されたガラス、および亜鉛メッキされたナットおよびボルトの例の上に、実施例11にしたがって噴霧塗布することにより、初期耐食性について試験した。鉄釘試料は、砂吹きされた釘の鉄表面を覆うのに充分な厚さを有する被覆とともに、実施例1~10の勾配ナノ粒子を用いて準備した。勾配被覆された釘の最終的な外観は黒色マット仕上げである。これらの試料を、高温(190℃以上)で空気中、少なくとも40時間の加熱に暴露させた、または塩水溶液([NaCl]>1.0M)に沈めた。ついで試料を、酸化、質量変化、または外観変化について観察した。同様に、NdFeB磁石を、保護金属カバーをていねいに取り外した後に被覆した。これらもまた塩水溶液([NaCl]~5%)に沈めて、時間とともに生じる表面または溶液の変化を写真撮影した。
【0108】
実施例17:電磁吸収特性の試験
【0109】
まずナノ粒子を真空下4時間、乾燥させることにより、勾配ナノ粒子を電磁放射(EMI)吸収について試験した。次に、スチルガード(stylgard)ポリジメチルシロキサン(PDMS)の所望の容積を測定し、乾燥させたナノ粒子を加えた。これに続き、オーバーヘッド・メカニカル・スターラー(overhead mechanical stirrer)により激しく混合し、この時点でナノ粒子を均等に分散させた。次に混合物を所望の型に入れ、硬化剤を加えて、この試料を80℃で6時間、アニールした。PDMS中の勾配ナノ粒子の重量パーセンテージを、PDMSまたはナノ粒子の量のいずれかを単に重量変化させることにより変化させた。同様のアプローチを使用して酸化鉄の対照例を準備したが、この場合、勾配ナノ粒子に対して同程度のサイズのFe3O4ナノ粒子を準備し、同一の重量充填率でPDMS中に分散させた。最後に、周波数分析器および適切な電磁波源を用いて、試料を8~12GHzで分析した。
【0110】
実施例18:磁性複合材料の準備
【0111】
また勾配ナノ粒子を、プラスチック中に埋め込んで準備した。上と同様に、勾配ナノ粒子は完全に乾燥させて、プラスチックの溶融混合物、またはプラスチック前駆体もしくはモノマーの溶液のいずれかに加え、所望の重量パーセンテージにした。得られた混合物は、自家製の装置を通じて成型するか押し出し成形した。磁気特性を、様々な充填比を用いた定性的実験を通じて、または計測器類を通じて定量的に調べた。
【0112】
実施例18:磁気ビーズ
【0113】
勾配ナノ粒子を磁気ビーズとして利用するには、表面の合金組成、それとともに表面の無機または有機化学的な封止を変化させて、粒子が親水性となるようにした。上記の実施例を用いて、表面はさらに、様々に異なる化学的性質を有するものとすることができた。勾配ナノ粒子ビーズを水または緩衝剤に分散させて、UV-可視光および動的光散乱によりコロイド安定性について特性評価したが、一方で組成安定性に続いて、緩衝条件(すなわち、塩、水等)に暴露した後にX線回折を行った。勾配ナノ粒子ビーズをビーズ除去効率、ビーズ除去時間、および充填効率について試験し、市販の磁気ビーズと比較した。
【0114】
実施例19:DNAクリーンアップおよび免疫沈降
【0115】
実施例18において準備された勾配ナノ粒子磁気ビーズを、一本鎖オリゴヌクレオチド(ssDNA)または二本鎖DNA(dsDNA)の短鎖と結合するように設計し構築した。典型的な実験では、勾配ナノ粒子の無機または有機表面を調整して、短い(<100bp)、中程度(100~300、300~800bp)、または長い(>800bp)DNAを選択的に吸収するようにした。さらにこれを容易ならしめるために、勾配ナノ粒子サイズもまた、10~100nmにわたり変化させた。ssDNAおよびdsDNAの吸収に続き、UV-可視光での評価を行ったが、この場合、所望の濃度を準備し、勾配ナノ粒子による暴露およびビーズ除去の後、モニタリングした。吸収は、様々なイオン強度、ナノ粒子に対する様々なDNA濃度比、および添加剤(すなわち、PEG、界面活性剤、BSA等)の存在の有無のもとで実行した。効率的な結合および放出は、磁気特性だけでなく、勾配ナノ粒子組成、さらにナノ粒子サイズ、表面電荷、表面化学、流体力学的半径、および表面二重層に依存して変化することが見いだされた。
【0116】
計測機器類
【0117】
すべての光吸収データは、Varian Cary Bio100 UV-Visible Spectrophotometer(UV-可視光)を用いて取得した。透過型電子顕微鏡写真(TEM)は、100kVで動作するJEOL 2000EX透過型電子顕微鏡を使用して取得した。試料は、炭素被覆された銅グリッド上にドロップキャスト(drop cast)した。高分解能TEM(HRTEM)画像は、200kVで動作するJEOL JEM2100F電界放出型TEM上で収集したが、これは、ビンガムトン(Binghamton)にあるニューヨーク州立大学の分析診断研究所(Analytical and Diagnostics Laboratory(ADL))のものであった。この計測器には、STEM検出器およびエネルギー分散X線分光(Energy dispersive x-ray spectroscopy)(EDS)検出器が備わっていた。フーリエ変換赤外(Fourier Transform Infrared)(FTIR)データは、Nicolet 6700 FTIR分光器を用いて取得したが、この分光器には、ダイヤモンドスマートiTR減衰内部反射アクセサリ、および液体N2冷却のMCT-A検出器が備わっていた。試料を、水で割らない溶液、または乾燥粉末として、ATR結晶上にドロップキャストした。粉末X線回折(XRD)パターンは、Bruker D8 Advance粉末回折装置でCuKα線(1.5406Å)を用いて取得した。試料は、ドロップキャストして、ゼロ回折SiO2結晶(MTI社(MTI Corp.))上で乾燥させた。X線光電子分光(XPS)測定は、単色光アルミニウムX線のK-α線(1486.6eV)(Cornell Center for Materials Research、CCMR)を使用するSurface Science Instruments(SSI)のモデルSSX0100上で実行した。NP粉末は、分析前に新たに切り出したSi基材上に分散させた。ピーク結合エネルギーのXPS分析およびデコンボリューションは、CasaXPSソフトウェアを用いて実行したが、このソフトウェアにおいてはガウス成分:ロ-レンツ成分が50:50の線幅である、シャーリー(Shirley)のバックグラウンド除去法を使用した。すべてのXPSは、284.8eVにあるCの1sピーク位置を用いて帯電補正を行った。磁気測定もまた、CCMRにおいて、Vibrating Magnetic Sample(VSM)付属品を備えたQuantum Design Physical Property Measurement System(PPMS)上で、-20kOeから20kOeにわたる印加磁場、300Kおよび10Kにおいて実行した。粉末磁性試料は、エタノール沈殿および空気乾燥により準備し、続いて質量の読み取り後、測定した。
【0118】
我々は、当業者が、本記載の、勾配ナノ粒子の組成、勾配ナノ粒子の概念、勾配ナノ粒子の耐酸化特性、および勾配ナノ粒子の電子的性質を、本明細書記載のとおりの様々な応用に活用するものと予想する。
【0119】
耐食性被覆。当業者は、金属、プラスチック、炭素繊維、複合材料、ガラス、セラミックス、磁石、半導体、または、あらゆる形態での腐食が性能に悪影響を及ぼすその他あらゆる面もしくは界面からなる表面上に、勾配ナノ粒子の、噴霧塗布、スピン塗布、蒸発、堆積、電気泳動による被覆、磁気的な被覆、または化学的な作製を行うことができる。当業者がさらに、多様な温度、大気、および圧力において高温アニーリングによりこれらの被覆を加工して、効果的な被覆を確実に行える可能性が想定される。さらに、異なる組成の勾配粒子の交代層を使用できること、そして勾配ナノ粒子を、ポリマー、プラスチック、エポキシ、シランおよびまたは希土類添加剤と組み合わせて接着力を増強し、そしてさらには腐食から保護することができると予期される。
【0120】
情報技術。磁気情報バイトを作製する技術分野の当業者は、個々の情報バイトに、または個々の情報バイトとして働くことができる磁区の先端構築に、勾配ナノ粒子の一様なサイズ、安定性、高い磁気強度、および低い保磁力を活用することができる。勾配ナノ粒子の薄膜、被覆、またはパターンを、本明細書に記載のような技術を用いて生み出すことができるであろうと予期される。さらに、磁気性能を調整するために、前記勾配が修正および変更されるであろうと予期されるが、これには;酸化物濃度の増加、希土類ランタニドイオンまたは原子、例えば;ネオジム、イットリウム、およびサマリウムの組み込み、またはホイスラー合金又はアルニコ合金に類似の新規磁気固体の準備を挙げても挙げなくてもよい。
【0121】
電磁気学。電磁気学の技術分野の当業者は、電気通信、信号生成と傍受の技術、誘導システムに基本的に重要な電磁信号の吸収、反射、または生成のために、勾配ナノ粒子の独自のサイズ、組成、および磁気特性を活用してもよい。当業者は、勾配ナノ粒子の新規安定性、磁性、および組成を、電磁スペクトルとのその相互作用、そして具体的には、それによるマイクロ波照射の吸収、反射、生成、または検出の手段として活用することになると予期される。そのような一つのスペクトル周波数は、4~8GHzの範囲にわたるCバンド、8~12GHzの範囲にわたるXバンド、ならびに18~27GHzにわたるKバンド、ならびに26~40GHzの範囲にわたるK-aバンド、ならびに12~18GHzの範囲にわたるK-u-バンド、ならびにそれぞれ40~75GHzおよび75~110GHzにわたるVおよびWバンドと呼ばれる。前記勾配を有するデバイスが一般的なセラミック基材上に堆積でき、既存の技術に組み込むことができると予期される。そのような堆積方法には、本明細書に記載のものが挙げられる。さらに、勾配ナノ粒子が、この実施形態の対象である既存の材料と組み合わせられることになり、さらには、前記ナノ粒子を不活性バインダー、例えば、炭素ならびにその多形体およびナノフォーム、セラミックスおよび酸化物、ゴム、またはそれらの複合材料と組み合わせることを含む場合があると予期される。当業者が、変化させたボイド濃度、およびまたは金属および酸化物のさらなる中間層を有する能力をさらに活用することになると予期される。
【0122】
磁気イメージング:磁気イメージングの技術分野の当業者が、磁気共鳴イメージング(MRI)のために、勾配ナノ粒子のサイズ、機能性、磁性、安定性、および耐酸化特性を活用してもよい。この実施形態では、勾配ナノ粒子それ自体を造影剤として使用して、イメージングを実現することが可能になる。当業者は、酸化鉄ナノ粒子の現在の通例と比較して、勾配ナノ粒子の向上した磁性および耐食特性を活用することになり、この勾配ナノ粒子はさらに高い磁気強度および安定性を有する。さらに、本明細書で予期されるとおり、医療用合金様組成物により勾配を終端することにより生体適合性を促進させつつ、磁気応答を向上させるように勾配を設計することができる。勾配ナノ粒子の安定した性質に起因して、磁気特性(磁化率、強度)は処置の途中ずっと変化せず、臨床医がさらに低い濃度のナノ粒子を使うことが可能になり、これが今度は、セラピーの副作用およびナノ粒子への暴露を制限することになる。
【0123】
薬物送達:薬物送達の技術分野の当業者は、本明細書のアプローチを活用して、治療用の化学薬品、生体高分子、薬物、性能向上物質、ビタミン、および生体適合性成分を、勾配ナノ粒子の化学的界面に加えてもよい。当業者は、勾配ナノ粒子の優れた磁気特性および耐食特性を活用して、「薬物」修飾された勾配ナノ粒子を、対象となる領域(すなわち、腫瘍)に磁気的に誘導することになると予期されるが、この領域では、本明細書に記載のとおり、薬物を受動拡散により放出して放出機構に組み込む、または振動磁場により熱を発生させることができる。調整可能な勾配ナノ粒子のサイズに起因して、当業者は使用する分野に特異的な送達、および温度勾配を設計することができる。
【0124】
医療セラピー。磁気温熱療法による医療の分野の当業者は、セラピー、例えば活動性腫瘍の加熱のために、勾配ナノ粒子の磁性および耐食特性を活用することになる。この実施形態では、当業者は、本明細書に記載のアプローチを活用して腫瘍部位に勾配ナノ粒子を送達(誘導)し、磁場を通じて腫瘍を加熱することになる。勾配ナノ粒子の安定した性質に起因して、磁気特性(磁化率、強度)は、処置の途中ずっと変化せず、臨床医がさらに低い濃度のナノ粒子を使用することが可能になり、これが今度は、セラピーの副作用およびナノ粒子への暴露を制限することになる。さらに、勾配ナノ粒子により発生した磁気強度が、酸化鉄粒子のような典型的な材料よりも相当に高いため、高温を発生させることができ、さらには局所的な効果を高めるだけでなく処置時間および訪問回数を減少させることができる。
【0125】
腫瘍外科の強化。腫瘍外科の技術分野の当業者は、本明細書のアプローチを磁気イメージングと組み合わせることにより、またはさらに発光性の金属、イオン、生体分子、または分子を勾配ナノ粒子界面に組み込むことにより、腫瘍部位を可視化することができる。この実施形態では、当業者は、勾配の磁気特性、耐食性、および組成機能性を活用して、発光性イオン、例えばガリウムまたは他のランタニドを、粒子の外周のセラミックまたは酸化物層に組み込むことになり、よって勾配ナノ粒子に発光性を付与することになる。他の実施形態では、本明細書のアプローチを使用して、界面を発光性分子、または生物発光性の酵素もしくはタンパク質を用いて修飾することになる。これらの光源は、このように臨床医による腫瘍部位への勾配の送達の後に活性化させることができる。
【0126】
電池部品。電池構造および電極設計の技術分野の当業者は、勾配ナノ粒子の耐食特性を活用することができると同時にまた、リチウムまたはナトリウムのインターカレーション、長期サイクリングに向けた電池の安定性の向上、および蓄電密度の増加のために、ボイド濃度に富んだ粒子を活用することができる。当業者は、高いボイド濃度およびアニオンに富んだ表面を有する前記勾配ナノ粒子を利用して、リチウムまたはナトリウムの安定なイオンインターカレーションを促進することになると予期される。さらには、導電性であるだけでなく酸化物または硫化物に富んだ勾配を有する勾配ナノ粒子により、最大限の機会が得られることなると予期される。
【0127】
燃料電池部品。燃料電池の構築、電極設計、および触媒調製の技術分野の当業者は、勾配設計および組成を活用して、動作する、または主電極もしくはエレクトロニクスを腐食から保護するナノ粒子を製造してもよいだけでなく、耐食性の内部勾配からなる触媒、続いてセラミックまたは酸化物に富んだ層を製造し、貴金属に富んだ薄い勾配で終端する。そのような触媒は、触媒コストを下げることになると同時に、対費用効果が高く導電性の内部勾配、および活性酸化物層、および少量であっても活性量の、白金、パラジウム、銀、金などの貴金属、または合金形態の前記貴金属であってニッケル、バナジウム、鉄、銅、コバルト、クロム、またはバナジウムと組み合わせたものを提供することにより効率を上げることになると予期される。さらに、当業者が前記勾配ナノ粒子を、導電性支持体、例えば炭素(カーボンブラック、HOPG等)ならびにそれらの多形体およびナノフォーム(グラフェン、C60、ナノチューブ等)と組み合わせることになり、高温、様々な雰囲気、および様々な圧力で勾配をさらに熱アニーリングすることになり、最終製造物が最終的な燃料電池構造においてイオン伝導性ポリマーと組み合わさることになると予期される。
【0128】
ガスの貯蔵および浄化。ガスの貯蔵および浄化(触媒プロセス)の技術分野の当業者は、高いボイド濃度、特定のボイドサイズ、および特定のボイド界面反応性(金属サイト)を有する勾配ナノ粒子を活用して、酸素、硫黄、または窒素に富んだガスを収集、吸収、または転換してもよい。前記勾配が、固体支持体、液体、イオン性液体、および他のデバイスと組み合わさって、製油所、発電所、自動車、およびその他の交通機関による排気から放出されるガスを吸収できる可能性が予期される。さらに、本明細書にさらに記載のとおり、勾配を排ガス処理装置としてさらに使用して、医療センター、病室、航空機、海上船舶、および宇宙船に見られるような生活エリアにおける前記汚染物質またはその他を除去/転換することができる。
【0129】
不均一触媒作用。不均一触媒作用の分野の当業者は、組成が高温にむけて安定な勾配ナノ粒子であって、その外部勾配が、特定の酸化物、またはセラミックスに富んだ組成を有し、必要に応じて、セラミック界面を覆うまたは部分的に覆う貴金属または他の金属に富んだ勾配により終端されている勾配ナノ粒子を活用してもよい。前記勾配が、自動車用触媒変換および排気管理デバイス/プログラム、有毒ガスの変換または浄化に使用可能であると予期される。さらに、前記ナノ粒子を、本明細書に記載のような被覆、膜、パターン、および噴霧剤として、または本明細書に記載のような支持体上に準備することができると予期される。
【0130】
潤滑。潤滑の分野の当業者は、乾燥潤滑剤および液体潤滑剤用の添加剤としての勾配粒子の高温安定性を活用してもよい。この実施形態では勾配は、高温において耐食性のある内部勾配からなることになり、そして濃度の増加する金属酸化物または金属硫化物を用いて終端されることになり、そして膜内部での勾配ナノ粒子の、そしてまた勾配内部での分子層の移動による摩耗を低減させることなる。この勾配潤滑剤は、本明細書に記載のような技術を用いて、組み立ての前に膜として堆積させることができる、または前記潤滑剤を添加剤として既存の油および液体潤滑剤に加えることにより堆積/再堆積させることができる。
【0131】
炭素複合材料。炭素複合材料、例えば炭素繊維を構築する技術分野の当業者は、勾配ナノ粒子の溶液加工性を活用して、複合材料に特定の濃度の金属を注入し、これによって複合材料に、新たなまたは向上した特性、例えば機械的摩耗、磁性、耐食性、電磁吸収、導電性、反射率、強度を付与することができる。勾配ナノ粒子は、炭素の黒鉛化の前後に堆積させる、または添加剤としてエポキシ硬化剤に注入するのいずれかを行うことができる。
【0132】
鋼。鋼を生成、加工する分野の当業者は、勾配ナノ粒子の組成制御、耐食性、およびナノサイズを活用して、鋼被覆、ワイヤー、膜、およびパターンを生成することができる。鋼被覆は、薄膜の堆積により準備し、この場合、厚さは勾配ナノ粒子の1~1000ナノメートルの間であり、その後、>200℃の温度に様々な大気条件で加熱して、連続した鋼層を生成することになる。同様のアプローチを使用して、細線(勾配を金型に堆積する)、およびパターン(この場合、パターン寸法はナノメートルからマイクロメートルの寸法範囲をとることができる)を形成することができる。当業者は、AISI/SAE協会により定義されたあらゆる一般的な鋼組成物および等級、すなわち;10XX、11XX、12XX、13XX、23XX、25XX、31XX、32XX、33XX、34XX、40XX、44XX、41XX、43XX、47XX、46XX、48XX、50XX、51XX、50XXX、51XXX、52XXX、61XX、72XX、81XX、86XX、87XX、88XX、92XX、93XX、94XX、97XX、98XXの勾配を準備することができると予期される。この場合、ホスト勾配(高濃度)は金属鉄であり、最初の2つの数はニッケル-クロム-モリブデン濃度、そして「XX」は炭素濃度に相当する。さらには、当業者は、ナノスケールの寸法の勾配を活用して、鋼を作るのに典型的に要求される温度よりも相当低い温度でそのような鋼を加工することになる。さらに異なる種類のステンレス鋼を、ナノ粒子勾配の異なる領域に付与することができ、それらの領域が機能性ボイドを含有していてもよいと予期される。
【0133】
鉄鋼の管理および準備。鋼を作る技術分野の当業者は、勾配ナノ粒子を使用して、相変化を誘起させる、粒界を減少または生成させる、析出を誘起または制御する、そして加工を改善する。本明細書の他の実施形態とは相違して、当業者は、勾配ナノ粒子を添加剤として活用して、バルク鋼加工を操作することになる。本明細書に記載のとおり、耐食性を促進させ、本明細書に記載の鋼の膜、ワイヤー、およびパターンを準備することに加えて、勾配ナノ粒子の組成、およびそれらのサイズ、サイズ比、濃度の制御を使用して、鋼の微細構造、そしてこれ以外では容易に一体化することのできない金属およびセラミックス(炭化物、金属間化合物、炭窒化物、および窒化物、硫化物、リン化物、酸化物、およびセラミックス)の取り込みを精緻化することができる。さらに、ナノ粒子勾配を用いたバルク鋼の最終加工により、大きな粒界、広がった欠陥、および界面を、その加工中に不動態化されることになると予期される。勾配ナノ粒子は、鋼の溶錬中に混合する、もしくは冷却中にその界面に加える、もしくは最終段階として、冷却され鍛造された鋼に加えることができ、これにより急速な組成変化が可能になる、またはバルク鋼の最終的な冷却後に加えた後、本明細書に記載のようなさらなるアニーリングステップを行うことができると予期される。鋼の耐食性、靭性、降伏強度、延性、耐摩耗性、および磁気特性の変化は、このようにして調整されることになる。
【0134】
ステンレス鋼:ステンレス鋼を作る技術分野の当業者は、勾配ナノ粒子を使用して、ステンレス鋼の被覆、薄膜、ワイヤー、パターン、および添加剤を準備する。本明細書に記載のように、ステンレス鋼の被覆は、薄膜を堆積させることにより準備することになり、この場合、厚さは勾配ナノ粒子の1~1000ナノメートルの間であり、その後、>200℃の温度に様々な大気条件で加熱して、連続した鋼層を生成することになる。同様のアプローチを使用して、細線(勾配を金型に堆積する)、およびパターン(この場合、パターン寸法はナノからマイクロメートルの寸法範囲をとることができる)を形成することができる。当業者は、SAEにより:J405、904L、440F、440C、440B、440A、430、410、409、32iH、321、317L、316Ti、316LN、316L、316、312、310S、310、305、304LN、304L、304H、301LN、301、254SMO、2304、2205、と定義されたあらゆるステンレス鋼の等級、またはオーステナイト―スーパーオーステナイト鋼、フェライト鋼、マルテンサイト鋼、および二相鋼、またはそれらの組み合わせを含む、その他の200、300、および400シリーズの形態を準備することができると予期される。さらに異なる種類のステンレス鋼を、ナノ粒子勾配の異なる領域に付与することができ、それらの領域が機能性ボイドを含有していてもよいと予期される。さらに、当業者は、ナノスケールの寸法の勾配を活用して、鋼を作るのに典型的に要求される温度よりも相当低い温度でそのような鋼を加工することになる。
【0135】
医療用合金。医療用合金を作り実装する技術分野の当業者は、勾配ナノ粒子を活用して、一般に医療用合金組成物と称される合金からなる安定な金属被覆および膜を準備してもよく、これらの組成物は、アルミニウム、クロム、コバルト、モリブデン、バナジウム、およびチタンである。等級5と同様なチタン合金(Ti6Al4V、Ti-6Al-4V、Ti6-4)を有する勾配ナノ粒子であって、その中でナノ粒子がその磁気特性および耐食特性を保持するが、等級5に一般に見いだされる特性、例えば生物学的な環境、溶液、および界面における生体適合性、強度、および耐食性を付与された勾配ナノ粒子を構築することができると予期される。さらに、本明細書に記載の手順にしたがうことより、医療用合金の被覆、膜、およびパターンを、他の金属、プラスチック、セラミックス、移植片、移植片、デバイス、および外科用ツール上に堆積することができる。
【0136】
チタン合金。チタンを作る技術分野の当業者は、勾配ナノ粒子を活用して、チタンに富んだ勾配を有するナノ粒子を準備し、全部がチタンである粒子を製造しなくてもよいようにしてもよい。勾配を注意深く選ぶことにより、チタンに富んだ勾配、そしてその後の合金を同様にして形成できるようになると予期される。続いてこれらの合金を、本明細書に記載のものと同様の実施形態において使用することができる。さらに、チタンに富んだ勾配ナノ粒子を使用して、薄膜、被覆、ワイヤー、およびパターンを、本明明細書に記載のものと同様にして作ることができると予期される。
【0137】
アルミニウム合金。アルミニウムを作る技術分野の当業者は、勾配ナノ粒子を活用して、本明細書のチタンに予期されるのと同様に、アルミニウムに富んだ勾配を有するナノ粒子を準備してもよい。
【0138】
磁気冷凍。磁気冷凍の技術分野の当業者は、勾配ナノ粒子を冷凍における磁性部品として、勾配ナノ粒子の低い保磁力、高い磁気モーメント、および高い安定性を活用することにより使用する。鉄、コバルト、およびニッケルに富み、その界面がステンレスである勾配ナノ粒子は、効率を向上させるのに高磁場の急速な切り替えを必要とする磁気冷凍において、高い性能を有すると予期される。
【0139】
推進。推進部品を作る技術分野の当業者は、勾配ナノ粒子を推力のエネルギー源として使用する。この実施形態では勾配ナノ粒子は、燃焼を促進することが知られ高エネルギー密度を有する材料から形成される可能性がある。
【0140】
発射体。発射体の技術分野の当業者は、勾配ナノ粒子を、可燃エネルギーの高度に安定で小型の源として使用する。発射体は、既存技術の薄膜、粉末、または添加剤として準備することができる。そのような勾配は、金属鉄、炭素、マグネシウム、またはアルミニウムに富んだものになると予期される。
【0141】
生命科学。生命科学の一般的な技術分野の当業者は、勾配ナノ粒子を高度に安定な磁気支持体として使用した。本明細書に記載の特性を使用して、前記分子を勾配ナノ粒子界面に付着させることにより、生体分子、生体高分子、タンパク質、酵素、抗体、小分子、複合体、自己組織化構造、および薬物を分離、収集、または加工し、続いて、強力な携帯用磁石により印加された磁場を通じて分離することになると予期される。ここで当業者は、勾配のナノサイズ、それらの強い磁気特性、および機能性を活用して、高い効率で分離してもよい。
【0142】
生命科学。生命科学の一般的な技術分野の当業者は、勾配ナノ粒子を、磁気ビーズとしても知られる高度に安定な磁気支持体として使用する。本明細書に記載の勾配ナノ粒子特性、および磁気ビーズの検討(
図26~27)は、生体分子、生体高分子(DNA、RNA等)、タンパク質、酵素、エキソソーム、抗体、小分子、複合体、自己組織化構造、およびまたは薬物を、さらに良好に分離、収集、または加工するために精緻化することができると予期される。それらの方法においては、免疫沈降の技術分野の当業者は、前記分子、または高親和性化学基を、標準的な方法により、勾配ナノ粒子の無機または有機界面に付着させることになる。続いて勾配ナノ粒子の磁気特性によって、磁場により印加された磁場を通じた急速な分離を行えるようになる可能性がある。ここで当業者は、高い効率および選択性で、特にサイズが勾配ナノ粒子と同程度の目的物を分離する方法として、勾配のナノサイズ、界面の安定性、磁気特性の、組成およびサイズ依存性を活用してもよい。
【0143】
環境浄化。環境浄化の一般的な技術分野の当業者は、勾配ナノ粒子の磁気特性を使用して、土壌、水塊、建物、空気、または表面から毒素を収集する。本明細書に記載の実施形態を用いて、当業者は勾配の界面を修飾して前記毒素を吸収させた後、磁場により収集することができる。勾配に加わった耐食性、磁気安定性、および強い磁気特性により、材料の再利用可能性が増して、同じ材料を複数回集めるようにすることができると予期される。
【0144】
磁性流体。磁性流体を生成し使用する技術分野の当業者は、勾配ナノ粒子を前記流体および他の成分の添加剤として使用する。本明細書に記載の特性を使用して、勾配ナノ粒子を溶媒中に高濃度で分散させることができ、その時点で溶液の粘度が印加磁場により調整できると予期される。当業者が、勾配ナノ粒子の強い磁気特性および低い保磁力を使用して、ますます増えるより小さくてより応答性の強い磁性流体要素、例えば能動的ショックアブソーバ、シール、能動的潤滑剤、光学、熱伝達、および推進を準備することになると予期される。
【0145】
導電性表面。導電性表面を生成する技術分野の当業者は勾配ナノ粒子を前駆体として使用し、そうした表面を形成する。勾配ナノ粒子の薄膜、被覆、またはパターンを形成した後、勾配ナノ粒子を焼結して連続した金属にするために(炉、レーザー等を通じて)加熱することができる。ここで、勾配の組成、耐食性、および加工性が、従来技術およびアプローチと比較して有益となると予期される。
【0146】
エアロゲル。金属エアロゲルまたは発泡金属を生成する技術分野の当業者は、勾配ナノ粒子を金属前駆体として使用する。その界面の性質に起因して、勾配ナノ粒子が、超臨界溶媒中に容易に溶解し、必要に応じてさらなる成分と組み合せることができると予期される。超臨界化学の蒸発を通じていったん形成されると、勾配ナノ粒子は相互接続されることになり、それらの技術に由来するステップを通じてさらに加工することができる。この実施形態では、勾配のステンレスの特性がエアロゲルの長期的な性能を向上させることになり、ナノサイズが、相互接続された新たな微細構造を生じさせることになり、そして高濃度のボイドを有する勾配ナノ粒子が重量を減少させ、表面積を増加させ,そしてまた必要な場合にはエアロゲルの反応性を増加せることになると期待される。
【0147】
3D印刷。3D印刷のプラスチック、金属、またはその他の材料の技術分野の当業者は、勾配ナノ粒子を活用して、金属性、磁性、またはステンレスの特性を3D印刷対象物中にまたはその上に付与することができる。勾配ナノ粒子の特性の性質、サイズ、および加工性に起因して、それらを3D印刷フィラメントに注入することができ、これにより、金属に富んだ対象物の直接印刷が可能になると予期される。さらに、印刷された3D対象物に、勾配ナノ粒子の最終的な被覆を噴霧塗布して、この対象物を改良、保護、または修飾することができる可能性があると予期される。最後に、金属3D印刷およびレーザー印刷では、金属描画源として、またはレーザー刻印可能な勾配の膜を使用することによって、勾配ナノ粒子をさらに活用することができ、これにより導電性パターンが生成可能になると予期される。
【0148】
希土類磁石。希土類磁石、または同様の材料を作る技術分野の当業者は、勾配ナノ粒子のアプローチを活用して、ナノスケール磁石を作る、またはバルク磁石を腐食から保護することができる。勾配技術の性質およびその耐食性に起因して、ナノスケール磁石が強い磁気特性および高い磁化率を有する可能性があると予期される。さらに、膜および被覆として、勾配を費用対効果と空間/重量を節約する解決策として使用して、バルク磁石、例えば風力タービン、ハイブリッド電気自動車、および電気自動車に見受けられるものを被覆または改質することができる。被覆は、磁石を特に湿潤なまたは塩に富んだ環境において動作させた場合に、その寿命を延ばす可能性がある。被覆は、Nd水酸化物の形成を低減する、亀裂および粒界を結合もしくは充填するなど、磁石自体に対して機能性を有するか、または不純物(例えば製造中に生成されるNdまたは鉄の充填)を不動態化するかのいずれかである可能性がある。そのような被覆を使用して、現在の技術、例えばニッケル-銅-ニッケルメッキ、またはエポキシ/有機被覆を置き換え、よって保護層の厚さおよびコストを低減させることができる可能性がある。
【0149】
マイクロ流体。マイクロ流体を設計および使用する技術分野の当業者は、マイクロ流体チャネルの内部での使用に、勾配ナノ粒子の高い組成安定性とともに、制御されたコロイド安定性を活用することができる。ここで、磁気勾配ナノ粒子の流れを連続的に最適化するとともに、勾配ナノ粒子を使用して、磁気的に誘起された、チャネル閉塞、ポンピング、混合、免疫沈降、分析、診断、または送達を実行するようにして、マイクロ流体のチャネル、貯蔵部、および混合チャンバーを設計することができる。それぞれのマイクロ流体デバイスが、複数の勾配ナノ粒子の変動を相前後して利用する可能性があること、そして組成およびサイズに依存する磁気特性を活用して応答を調整してもよいことが予期される。
【0150】
偽造防止技術。偽造防止材料およびデバイスを設計および製造する技術分野の当業者は、勾配ナノ粒子のコロイド的性質、アドレス指定可能な高い磁性、プラスチックへの埋め込み容易性、および高いEMI吸収特性を活用して、セキュリティインク、無線周波数認識(RFID)タグ、および他のアドレス指定可能な磁気デバイスを準備することができる。勾配ナノ粒子の様々な印刷されたパターン、3Dの特徴、または交代層を容易に作る、印刷する、パターン形成する、または機械加工することができ、これにより、現状では手に入らない調整可能な電磁吸収特性が実現可能になると予期される。そのような特徴に加えて、勾配ナノ粒子の複数の型、組成、サイズ、および処方を同時に使用して、磁気応答をさらに生み出すことができる。さらに、前記勾配ナノ粒子を、さらなるナノ材料(金属性、セラミック、半導体のもの)、ポリマー(導電性および非導電性)および表面(ガラス、金属、セラミックス、半導体)と組み合わせて、導電性を変更する、またはさらにアンテナ特性を改良することができる。