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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/43 20060101AFI20220711BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
E02F3/43 A
E02F9/26 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019119204
(22)【出願日】2019-06-27
(65)【公開番号】P2021004504
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2021-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】作田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】草間 謙三
(72)【発明者】
【氏名】松本 厚
(72)【発明者】
【氏名】森 裕也
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-088610(JP,A)
【文献】特開平06-081376(JP,A)
【文献】特開平05-295753(JP,A)
【文献】特開平07-158105(JP,A)
【文献】特公昭63-037210(JP,B2)
【文献】特開昭58-156641(JP,A)
【文献】特開昭59-122636(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0063034(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/43
E02F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と、
前記機体に取り付けられ且つ上下方向に揺動可能な揺動体と、
前記揺動体の先端に姿勢変更可能に取り付けられたバケットと、
前記バケットの高さを検知する高さ検知装置と、
前記バケットの姿勢を検知する姿勢検知装置と、
前記バケットによる掘削の目標深さを設定する設定部と、
前記高さ検知装置により検知されたバケットの高さが前記目標深さに対応する高さに達し且つ前記姿勢検知装置により検知されたバケットの姿勢が掘削姿勢にあるときに、前記バケットの下降動作を制限する制御装置と、
を備え
前記姿勢検知装置は、前記バケットの先端の位置と、前記バケットの姿勢変更の動作支点となる枢軸の位置とを検知し、
前記制御装置は、前記バケットの先端が前記枢軸よりも前方に位置するときにバケットが掘削姿勢にあると判断する作業機。
【請求項2】
機体と、
前記機体に取り付けられ且つ上下方向に揺動可能な揺動体と、
前記揺動体の先端に姿勢変更可能に取り付けられたバケットと、
前記バケットの高さを検知する高さ検知装置と、
前記バケットの姿勢を検知する姿勢検知装置と、
前記バケットによる掘削の目標深さを設定する設定部と、
前記高さ検知装置により検知されたバケットの高さが前記目標深さに対応する高さに達し且つ前記姿勢検知装置により検知されたバケットの姿勢が掘削姿勢にあるときに、前記バケットの下降動作を制限する制御装置と、
を備え
前記姿勢検知装置は、前記揺動体と前記バケットの角度を検知する角度センサを有し、
前記制御装置は、前記角度センサにて検知された角度が所定角度を超えるときにバケットが掘削姿勢にあると判断する作業機。
【請求項3】
機体と、
前記機体に取り付けられ且つ上下方向に揺動可能な揺動体と、
前記揺動体の先端に姿勢変更可能に取り付けられたバケットと、
前記バケットの高さを検知する高さ検知装置と、
前記バケットの姿勢を検知する姿勢検知装置と、
前記バケットによる掘削の目標深さを設定する設定部と、
前記高さ検知装置により検知されたバケットの高さが前記目標深さに対応する高さに達し且つ前記姿勢検知装置により検知されたバケットの姿勢が掘削姿勢にあるときに、前記バケットの下降動作を制限する制御装置と、
を備え
前記姿勢検知装置は、前記バケットの底面の湾曲部の頂点の位置と、前記バケットの姿勢変更の動作支点となる枢軸の位置とを検知し、
前記制御装置は、前記湾曲部の頂点が前記枢軸よりも上方に位置するときにバケットが掘削姿勢にあると判断する作業機。
【請求項4】
機体と、
前記機体に取り付けられ且つ上下方向に揺動可能な揺動体と、
前記揺動体の先端に姿勢変更可能に取り付けられたバケットと、
前記バケットの高さを検知する高さ検知装置と、
前記バケットの姿勢を検知する姿勢検知装置と、
前記バケットによる掘削の目標深さを設定する設定部と、
前記高さ検知装置により検知されたバケットの高さが前記目標深さに対応する高さに達し且つ前記姿勢検知装置により検知されたバケットの姿勢が掘削姿勢にあるときに、前記バケットの下降動作を制限する制御装置と、
を備え
前記姿勢検知装置は、前記バケットの底面の平面部の向きを検知し、
前記制御装置は、前記平面部が前方に向かうにつれて下方に移行する向きにあるときにバケットが掘削姿勢にあると判断する作業機。
【請求項5】
前記制御装置は、前記バケットの下降動作が制限された後、前記高さ検知装置により検知されたバケットの高さが前記目標深さより高くなったときに前記制限を解除する請求項1~のいずれか1項に記載の作業機。
【請求項6】
報知音を発生可能な報知装置を備え、
前記制御装置は、前記高さ検知装置により検知されたバケットの高さが前記目標深さに対応する高さに達し且つ前記姿勢検知装置により検知されたバケットの姿勢が掘削姿勢にあるときに、前記報知装置を作動して報知音を発生させる請求項1~のいずれか1項に記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックホー等の作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示された作業機が知られている。
特許文献1に開示された作業機は、掘削深さを制限することができる作業深さ制限装置を備えている。作業深さ制限装置は、ブーム、アーム、作業工具等から構成される作業装置が所定深さに到達したときに作業装置の駆動を停止することにより、作業装置が通信線、電力線、ガス管、水道管等の埋設物に接触することを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-81376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した作業深さ制限装置を備えた作業機では、掘削作業とは異なる作業(例えば転圧作業等)をしている場合にも作業深さに制限がかかる場合があり、作業効率を低下させるという問題があった。
本発明は、このような従来技術に鑑みて、深さ制限機能が要求される作業時にのみ作業深さを制限することができる作業機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る作業機は、機体と、前記機体に取り付けられ且つ上下方向に揺動可能な揺動体と、前記揺動体の先端に姿勢変更可能に取り付けられたバケットと、前記バケットの高さを検知する高さ検知装置と、前記バケットの姿勢を検知する姿勢検知装置と、前記バケットによる掘削の目標深さを設定する設定部と、前記高さ検知装置により検知されたバケットの高さが前記目標深さに対応する高さに達し且つ前記姿勢検知装置により検知されたバケットの姿勢が掘削姿勢にあるときに、前記バケットの下降動作を制限する制御装置と、を備え、前記姿勢検知装置は、前記揺動体と前記バケットの角度を検知する角度センサを有し、前記制御装置は、前記角度センサにて検知された角度が所定角度を超えるときにバケットが掘削姿勢にあると判断する
【発明の効果】
【0006】
上記作業機によれば、バケットの高さと姿勢に基づいて作業深さを制限することができるため、深さ制限機能が要求される作業時にのみ作業深さを制限することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】掘削深さ制限システムを示す図である。
図2】バケットが掘削姿勢であるか否かの判断基準を示す側面図であって、(a)は第1実施形態、(b)は第2実施形態、(c)は第3実施形態、(d)は第4実施形態を示す。
図3】掘削深さ制限システムの処理動作を示すフローチャートである。
図4】作業機の平面図である。
図5】作業機の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(作業機の全体構成)
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図4図5は、本発明に係る作業機1の一実施形態を示している。本実施形態では、作業機1として、旋回作業機であるバックホーが例示されている。
作業機1は、機体(旋回台)2と、キャノピ3と、走行装置4と、作業装置5とを備えている。機体2上には、運転席6が設けられている。
【0009】
以下、機体2上に設けられた運転席6に着座した運転者(オペレータ)の前側(図5の左側)を前方、運転者の後側(図5の右側)を後方、運転者の左側(図5の手前側)を左方、運転者の右側(図5の奥側)を右方として説明する。
機体2は、走行装置4のフレーム上に、上下方向に延伸する旋回軸心(縦軸)回りに左
右に旋回自在に支持されている。機体2は、旋回基板17とウエイト22とを有している。旋回基板17は、旋回ベアリングに連結されており、油圧モータの駆動により縦軸回りに旋回する。ウエイト22は、機体2の後部に設けられている。
【0010】
走行装置4は、クローラ式の走行装置である。走行装置4は、機体2の右側と左側の下方に夫々設けられている。走行装置4は、油圧モータによって駆動される。走行装置4の前部にはドーザ装置10が設けられている。ドーザ装置10は、ドーザシリンダ30により上下方向に揺動する。
機体2の前部には、支持ブラケット7が設けられている。支持ブラケット7には、スイングブラケット8が装着されている。スイングブラケット8は、支持ブラケット7に対して縦方向の軸心回りに揺動可能に支持されている。スイングブラケット8の揺動は、機体2に取り付けられたスイングシリンダ9の伸縮により行われる。
【0011】
図5に示すように、作業装置5は、揺動体とバケット13とを有している。本実施形態では、揺動体は、ブーム11とアーム12とを有している。揺動体であるアーム12の先端にバケット13が姿勢変更可能に取り付けられている。
バケット13の基端にはブラケット18が設けられている。バケット13は、ブラケット18を介してアーム12の先端に取り付けられている。バケット13は、側壁131と底壁132とバケット爪133とを有している。側壁131は、左側壁と右側壁とを含む。底壁132は、左側壁と右側壁とを連結している。バケット爪133は、バケット13の先端に設けられている。底壁132の外面である底面は、湾曲部132aと平面部132bとを有している。湾曲部132aは、バケット13の開口と反対側に向けて膨出している。湾曲部132aは、ブラケット18側に設けられている。平面部132bは、バケット爪133側に設けられている。湾曲部132aと平面部132bとは連続している。
【0012】
さらに作業装置5は、ブーム11、アーム12及びバケット13の駆動機構(油圧アクチュエータ等)として、ブームシリンダ14、アームシリンダ15及びバケットシリンダ16を有している。ブームシリンダ14、アームシリンダ15、バケットシリンダ16、スイングシリンダ9及びドーザシリンダ30は、油圧シリンダにより構成されている。
ブーム11の基端部は、スイングブラケット8に対して第1横軸31回りに揺動可能に枢支されている。アーム12の基端部は、ブーム11の先端部に対して第2横軸32回りに揺動可能に枢支されている。バケット13の基端部は、アーム12の先端部に対して第3横軸(枢軸)33回りに揺動可能に枢支されている。ブーム11は、ブームシリンダ14の伸縮により上下に揺動する。アーム12は、アームシリンダ15の伸縮により上下に揺動する。バケット13は、バケットシリンダ16の伸縮によりスクイ・ダンプ動作する。
【0013】
機体2の右部には、機体2の旋回、走行装置4の駆動、作業装置5の駆動等を行うための油圧アクチュエータへの作動油の供給を制御するコントロールバルブ28等が搭載されている。機体2の後部には、原動機23、油圧ポンプ27等が搭載されている。原動機23は、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン等の内燃機関、あるいは電動モータ等である。原動機23は、内燃機関と電動モータとの両方を有するハイブリッド型であってもよい。
【0014】
機体2上部には、キャノピ3が搭載されている。キャノピ3は、運転席6を保護する運転席保護装置である。運転席保護装置としてキャノピ3に代えてキャビンを搭載してもよい。
運転席7の周囲には、機体2を旋回操作する旋回レバー、走行装置4を操作する走行レバー、作業装置5を操作する操作レバー(いずれも図示略)等を含む操作機器29が設けられている。
(掘削深さ制限システム)
作業機1は、作業装置5による掘削の深さを制限するための掘削深さ制限システム40を備えている。
【0015】
図1に示すように、掘削深さ制限システム40は、高さ検知装置41、姿勢検知装置42、設定部43、制御装置44、報知装置45を備えている。
(高さ検知装置)
高さ検知装置41は、バケット13の所定部分の高さを検知する装置である。
高さ検知装置41は、バケット13の所定部分の高さとして、例えば、バケット13の枢軸33の高さを検知する。以下、この高さ検知装置41を「第1実施形態の高さ検知装置41」と称する。
【0016】
第1実施形態の高さ検知装置41は、ブーム11やアーム12等に取り付けられたポテンショメータと、ポテンショメータの検知値に基づいてバケット13の高さを算出する演算装置とを有している。
第1実施形態の高さ検知装置41が有するポテンショメータは、ブーム11の基端部と機体2のスイングブラケット8との間の第1横軸31回りにおける回転角度(スイングブラケット8に対するブーム11の回転角度)を検知するポテンショメータと、ブーム11の先端部とアーム12の基端部との間の第2横軸32回りにおける回転角度(ブーム11に対するアーム12の回転角度)を検知するポテンショメータを含む。
【0017】
第1実施形態の高さ検知装置41は、ポテンショメータが検知した回転角度(スイングブラケット8に対するブーム11の回転角度及びブーム11に対するアーム12の回転角度)と、既知の値であるブーム11の長さ(第1横軸31から第2横軸33までの距離)、アーム12の長さ(第2横軸32から第3横軸33までの距離)、第1横軸31と走行装置4の底面との距離(高さ)に基づき、バケット13の所定部分の高さとして、バケット13の枢軸23の高さを算出する。
【0018】
また、高さ検知装置41は、バケット13の所定部分の高さとして、バケット13の先端13aの高さを検知するものであってもよい。以下、この高さ検知装置41を「第2実施形態の高さ検知装置41」と称する。バケット13の先端13aとは、枢軸33から最も離れたバケット13の端部であり、具体的にはバケット爪133の先端である。
第2実施形態の高さ検知装置41は、アーム12の先端部とバケット13の基端部との間の第3横軸(枢軸)33回りにおける回転角度(アーム12に対するバケット13の回転角度)を検知するポテンショメータ(後述する角度センサ42a)と、バケット13の枢軸33の位置(枢軸位置)を検知する検知具とを有している。
【0019】
「枢軸位置」とは、バケット13の枢軸33の高さ(上下位置)と、当該枢軸33の前後位置(機体2(厳密には第1横軸31)から枢軸33までの水平距離)とを含む位置である。枢軸33の高さ(上下位置)は、上述した方法により算出することができる。枢軸33の前後位置は、スイングブラケット8に対するブーム11の回転角度、及び、ブーム11に対するアーム12の回転角度と、ブーム11の長さ及びアーム12の長さに基づいて算出することができる。
【0020】
第2実施形態の高さ検知装置41は、バケット13の枢軸位置と、アーム12に対するバケット13の枢軸33回りの回転角度と、バケット13の形状データに基づいて、バケット13の先端13aの高さを検知する。なお、上記のバケット13の形状データには、少なくともバケット13における枢軸33から先端13aまでの距離が含まれる。好ましくは、バケット13の形状データは、バケット13全体の3次元形状データである。バケット13の形状データは、高さ検知装置41、姿勢検知装置42又は制御装置44に設けられる記憶部に記憶される。
【0021】
また、第2実施形態の高さ検知装置41の変更例として、高さ検知装置41は、バケット13の所定部分の高さとしてバケット13の姿勢を考慮してバケット13の最も低い部位の高さを検知する構成としてもよい。この場合、高さ検知装置41は、上述した第1実施形態の高さ検知装置41がバケット13の枢軸33の高さを算出するために使用した値に加えて、上記枢軸位置と、アーム12に対するバケット13の枢軸33回りの回転角度と、バケット13の形状データとに基づいて、バケット13の最も低い部位の高さを検知する。
【0022】
また、上述した高さ検知装置41はポテンショメータを用いる構成のものであるが、ポテンショメータを用いる構成に代えて或いは加えて、例えば、ロータリエンコーダを用いる構成、ブーム11やアーム12或いはバケット13に取り付けた振動ジャイロ等の角度
センサを用いる構成、カメラ等にて撮像した画像を解析することによりバケット13の高さを検知する構成等を採用してもよい。
(姿勢検知装置)
姿勢検知装置42は、バケット13の姿勢を検知する装置である。
【0023】
姿勢検知装置42は、揺動体であるブーム11及びアーム12や、バケット13に取り付けられたポテンショメータと、ポテンショメータの検知値に基づいてバケット13の姿勢を算出する演算装置とを有している。
姿勢検知装置42が有するポテンショメータは、ブーム11の基端部と機体2のスイングブラケット8との間の第1横軸31回りにおける回転角度(スイングブラケット8に対するブーム11の回転角度)を検知するポテンショメータと、ブーム11の先端部とアーム12の基端部との間の第2横軸32回りにおける回転角度(ブーム11に対するアーム12の回転角度)を検知するポテンショメータと、アーム12の先端部とバケット13の基端部との間の第3横軸(枢軸)33回りにおける回転角度(アーム12に対するバケット13の回転角度)を検知するポテンショメータを含む。これらのポテンショメータは、高さ検知装置41が有するポテンショメータと兼用することができるが、高さ検知装置41が有するポテンショメータと別に設けてもよい。
【0024】
以下、姿勢検知装置42の4つの実施形態(第1~第4実施形態)について説明する。
第1実施形態の姿勢検知装置42は、バケット13の姿勢として、バケット13の先端13aの位置と、バケット13の姿勢変更の動作支点となる枢軸33の位置(枢軸位置)とを検知する(図2(a)参照)。
バケット13の先端13aの位置は、バケット13の先端13aの高さ(上下位置)だけでなく、当該先端13aの前後位置(機体2(厳密には第1横軸31)から先端13aまでの水平距離)も含む。バケット13の先端13aの高さは、第2実施形態の高さ検知装置41により算出することができる。先端13aの前後位置は、スイングブラケット8に対するブーム11の回転角度、ブーム11に対するアーム12の回転角度、及び、アーム12に対するバケット13の回転角度と、ブーム11の長さ、アーム12の長さ、バケット13の形状データ(バケット13の枢軸33から先端13aまでの距離を含む)、及び、第1横軸31と作業機1の走行装置4の底面との距離に基づいて算出することができる。
【0025】
枢軸位置は、第2実施形態の高さ検知装置41により算出することができる。
第2実施形態の姿勢検知装置42は、バケット13の姿勢として、揺動体(アーム12)とバケット13の角度αを検知する(図2(b)参照)。第2実施形態の姿勢検知装置42は、揺動体(アーム12)とバケット13の角度αを検知する角度センサ42aを有する。この角度センサ42aは、上述した第2実施形態の高さ検知装置41が有するポテンショメータを用いることができる。
【0026】
第3実施形態の姿勢検知装置42は、バケット13の姿勢として、バケット13の湾曲部132aの頂点13bの位置とバケット13の姿勢変更の動作支点となる枢軸33の位置とを検知する(図2(c)参照)。尚、湾曲部132aの頂点13bは、バケット13の開口と反対側に最も膨出した点である。
湾曲部132aの頂点13bの位置は、頂点13bの高さ(上下位置)だけでなく、当該頂点13bの前後位置(機体2(厳密には第1横軸31)から頂点13bまでの水平距離)も含む。頂点13bの上下位置及び前後位置は、スイングブラケット8に対するブーム11の回転角度、ブーム11に対するアーム12の回転角度、及び、アーム12に対するバケット13の回転角度と、ブーム11の長さ、アーム12の長さ、バケット13の形状データ(バケット13の枢軸33から頂点13bまでの距離を含む)、及び、第1横軸31と作業機1の走行装置4の底面との距離に基づいて算出することができる。
【0027】
第4実施形態の姿勢検知装置42は、バケット13の姿勢として、バケット13の底面132の平面部132bの向きを検知する。言い換えれば、姿勢検知装置42は、平面部132bの水平方向に対する傾斜の向き(角度)を検知する。姿勢検知装置42は、少なくとも平面部132bが前方に向かうにつれて下方に移行する向きにあるか否かを検知す
る。平面部132bの向きは、スイングブラケット8に対するブーム11の回転角度、ブーム11に対するアーム12の回転角度、アーム12に対するバケット13の回転角度、バケット13の形状データに基づいて算出することができる。
【0028】
上述した第1~第4実施形態の姿勢検知装置42はポテンショメータを用いる構成のものであるが、ポテンショメータを用いる構成に代えて或いは加えて、例えば、ロータリエンコーダを用いる構成、ブーム11やアーム12或いはバケット13に取り付けた振動ジャイロ等の角度センサを用いる構成、カメラ等にて撮像した画像を解析することにより、バケット13の姿勢を検知する構成等を採用してもよい。
(設定部)
設定部43は、バケット13による掘削の目標深さを設定する。
【0029】
目標深さは、例えば、掘削予定地の過去の施工データ(施工図面等)に基づいて設定することができる。過去の施工データは、例えば、埋設物(水道管、ガス管、電線、通信線等)の深さである。この場合、埋設物に到達しない深さが目標深さとして設定される。目標深さの設定は、掘削作業の開始前に行うことが好ましいが、掘削作業の途中で行ってもよい。例えば、埋設物が地表面より2m以深の深さにあることが事前に分かっている場合、地表面から1m程度の深さまで掘削した時点で目標深さを設定してもよい。
【0030】
図4に示すように、設定部43は、例えば、運転席6の周辺の操作機器29に配置されている。設定部43は、例えば、タッチパネル、回転ダイヤル、押しボタン等の入力装置から構成される。なお、目標深さの設定は、オペレータが設定部43を介して目標深さの数値を入力するようにしてもよく、オペレータが作業装置5を操作して設定したい深さまでバケット13を移動させた状態で設定部43を操作する(例えば、押しボタンを押す)ことにより、その時点のバケット13の深さを目標深さとして設定するようにしてもよい。
(報知装置)
報知装置45は、報知音を発生可能な装置である。
【0031】
報知装置45は、作業機1の運転者に対して高さ検知装置41により検知されたバケット13の高さが目標深さに対応する高さに達したことを報知音により報知する。上記の目標深さに対応する高さは、例えば、高さ検知装置41によるバケット13の高さ検知部分とバケット13の先端とのバケット13を揺動させたときの相対位置を考慮し、バケット13の揺動範囲が目標深さに達する高さに設定される。
【0032】
報知装置45は、報知音を発生させる装置と、光により警告を行う回転灯等の発光装置やディスプレイ等に警告の表示を行う表示装置等とを組み合わせた装置であってもよい。(制御装置)
制御装置44は、高さ検知装置41により検知されたバケット13の高さが目標深さに対応する高さに達し、且つ、姿勢検知装置42により検知されたバケット13の姿勢が掘削姿勢にあるときに、バケット13の下降動作を制限する制御を実行する装置である。バケット13の下降動作とは、バケット13の高さが下がる動作である。具体的には、ブーム11の下げ動作とアーム12のカキ動作・ダンプ動作を含み、バケット13のカキ動作・ダンプ動作は含まない。
【0033】
制御装置44は、CPUと記憶部とを備えたコンピュータから構成される。制御装置44は、例えば、作業機1に搭載されたECU(Electronic Control Unit)である。上述したバケット13の形状データや設定部43により設定された掘削の目標深さは、制御装置44の記憶部、或いは制御装置44により読み出し可能な他の記憶部に記憶される。
制御装置44は、高さ検知装置41や姿勢検知装置42からの検知信号を受けてバケット13が掘削姿勢にあるか否かを判断する。
【0034】
制御装置44は、姿勢検知装置42が第1実施形態の姿勢検知装置である場合、バケット13の先端13aが枢軸33よりも前方に位置するとき(図2(a1)参照)、バケット13が掘削姿勢にあると判断する。また、制御装置44は、バケット13の先端13aが、枢軸33と前後方向に同じ位置か又は後方に位置するとき(図2(a2)参照)、バケット13が掘削姿勢にない(非掘削姿勢である)と判断する。
【0035】
制御装置44は、姿勢検知装置42が第2実施形態の姿勢検知装置である場合、制御装置44は、角度センサ42aにて検知された角度αが所定角度(例えば90°)を超えるとき(図2(b1)参照)、バケット13が掘削姿勢にあると判断する。また、制御装置44は、角度センサ42aにて検知された角度αが所定角度以下であるとき(図2(b2)参照)、バケット13が掘削姿勢にない(非掘削姿勢である)と判断する。
【0036】
制御装置44は、姿勢検知装置42が第3実施形態の姿勢検知装置である場合、バケット13の底面の湾曲部132aの頂点13bが枢軸33よりも上方に位置するとき(図2(c1)参照)、バケット13が掘削姿勢にあると判断する。また、制御装置44は、バケット13の底面の湾曲部132aの頂点13bが枢軸33と上下方向に同じ位置か又は下方に位置するとき(図2(c2)参照)、バケット13が掘削姿勢にない(非掘削姿勢である)と判断する。
【0037】
制御装置44は、姿勢検知装置42が第4実施形態の姿勢検知装置である場合、制御装置44は、バケット13の底面132の平面部132bが前方に向かうにつれて下方に移行する向き(後傾姿勢)にあるとき(図2(d1)参照)、バケット13が掘削姿勢にあると判断する。また、制御装置44は、平面部132bが前方に向かうにつれて上方に移行する向き(前傾姿勢)にあるとき、言い換えれば、平面部132bが水平よりカキの方向にあるとき(図2(d2)参照)、バケット13が掘削姿勢にない(非掘削姿勢である)と判断する。
【0038】
制御装置44は、高さ検知装置41により検知されたバケット13の高さが設定部43により設定された目標深さに対応する高さに達し、且つ、バケット13が掘削姿勢にあると判断したとき、バケット13の下降動作を制限する。このとき、バケット13の下降動作以外の動作(例えば、ブーム11の上げ動作等)は制限されない。
バケット13の下降動作の制限方法は、バケット13の下降を直ちに停止させる方法(第1の制限方法)であってもよいし、バケット13の下降速度を徐々に遅くしてから目標深さに対応する高さに達するまでに停止させる方法(第2の制限方法)であってもよい。
【0039】
制御装置44は、第1の制限方法を採る場合、高さ検知装置41により検知されたバケット13の高さが目標深さに対応する高さに達し、且つ、姿勢検知装置42により検知されたバケット13の姿勢が掘削姿勢にあると判断した場合、バケット13の下降動作を制御するコントロールバルブ28のストップバルブをオフ状態とすることにより、直ちにバケット13の下降動作を停止する。
【0040】
制御装置44は、第2の制限方法を採る場合、高さ検知装置41により検知されたバケット13の高さが目標深さに対応する高さに達し、且つ、姿勢検知装置42により検知されたバケット13の姿勢が掘削姿勢にあると判断した場合、バケット13の下降動作を制御するコントロールバルブ28の比例バルブを絞っていく(作動油の供給量を減少していく)ことにより、バケット13の下降速度を徐々に遅くしてから目標深さに対応する高さに達するまでに停止させる。この場合、バケット13の下降が緩やかに停止するため、運転者が操作時に受ける違和感を低減することができる。
【0041】
制御装置44は、バケット13の下降動作が制限された後、高さ検知装置41により検知されたバケット13の高さが予め設定された高さ(解除高さ)より高くなったとき(ブーム11の上げ動作等により、バケット13を解除高さより上昇させたとき)に制限を解除する。解除高さは、制御装置44の記憶部、或いは制御装置44により読み出し可能な他の記憶部に記憶される。解除高さは、目標深さと同じであってもよいし、目標深さよりも上方の高さであってもよい。制限が解除されることによって、バケット13の下降動作を含むブーム11、アーム12及びバケット13の全ての動作(ブーム11の下げ動作及び上げ動作、アーム12の下げ動作及び上げ動作、バケット13のダンプ動作及びカキ(スクイ)動作)が可能となる。
【0042】
上述したように、制御装置44は、高さ検知装置41により検知されたバケット13の高さが目標深さに対応する高さに達し、且つ、姿勢検知装置42により検知されたバケット13の姿勢が掘削姿勢にあるときに、バケット13の下降動作を制限する。これにより、バケット13により目標深さを越えた掘削作業が進められることを防止できる。そのた
め、経験の浅い運転者であっても埋設物を傷付けることなく掘削作業を行うことが可能となる。
【0043】
一方、制御装置44は、バケット13が掘削姿勢にない(非掘削姿勢にある)と判断したときは、バケット13の高さが目標深さに対応する高さに達してもバケット13の下降動作を制限しない。バケット13の高さが目標深さに対応する高さに達しているが、バケット13が掘削姿勢にない(非掘削姿勢にある)とき、バケット13は掘削以外の作業(非掘削作業)を行っている場合が多い。非掘削作業は、例えば、転圧、固め、均し、土寄せ等の作業である。
【0044】
制御装置44が、バケット13が掘削姿勢にないと判断したときはバケット13の高さが目標深さに対応する高さに達してもバケット13の下降動作を制限しないことにより、非掘削作業を行っているときにはバケット13の下降動作が制限されず、非掘削作業を効率良く円滑に実行することができる。
また、制御装置44は、高さ検知装置41により検知されたバケット13の高さが目標深さに対応する高さに達し、且つ、姿勢検知装置42により検知されたバケット13の姿勢が掘削姿勢にあるときに、報知装置45を作動して報知音を発生させる。これにより、作業機1の運転者は、バケット13の高さが目標深さに対応する高さに達したことを明確に把握することができる。そのため、運転者は、速やかにバケット13を上昇させる操作を行ってバケット13の下降動作の制限を解除することができる。
【0045】
作業機1は、制御装置44による掘削深さ制限機能のオン状態とオフ状態とを切り換える切り換え装置を備えていてもよい。この場合、制御装置44は、切り換え装置の切り換えによってオン状態となることにより掘削深さ制限制御を開始する。また、制御装置44は、原動機23の駆動に伴って掘削深さ制限制御を開始する構成であってもよい。
(掘削深さ制限システムの動作)
図3は、掘削深さ制限システム40の処理動作を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理動作は、第1実施形態~第4実施形態の掘削深さ制限システム40に共通である。
【0046】
まず、原動機23の駆動或いは制御装置44のオン状態への切り換えによって、制御装置44による制御の実行が開始される(S1)。
高さ検知装置41及び姿勢検知装置42は、スイングブラケット8に対するブーム11の回転角度、ブーム11に対するアーム12の回転角度、及び、アーム12に対するバケット13の回転角度と、ブーム11の長さ、アーム12の長さ、バケット13の形状データ、及び、第1横軸31と作業機1の走行装置4の底面との距離に基づいて、バケット13の高さやバケット13の姿勢を算出する(S2)。
【0047】
制御装置44は、高さ検知装置41により検知されたバケット13の高さが設定部43により設定された目標深さに対応する高さに達したとき、姿勢検知装置42により検知されたバケット13の姿勢が掘削姿勢にあるか否かを判断し(S3)、掘削姿勢にあると判断した場合(S3、Yes)、バケット13の下降動作を制限する(S4)。また、バケット13の高さが目標深さに対応する高さに達したことを報知音により報知する。
【0048】
一方、制御装置44は、高さ検知装置41により検知されたバケット13の高さが目標深さに対応する高さに達しているが、姿勢検知装置42により検知されたバケット13の姿勢が掘削姿勢にないと判断した場合(S3、No)、バケット13の下降動作を制限しない(S5)。
また、制御装置44は、姿勢検知装置42により検知されたバケット13の姿勢が掘削姿勢にあると判断したが、高さ検知装置41により検知されたバケット13の高さが目標深さに対応する高さに達していない場合(S3、No)も、バケット13の下降動作を制限しない(S5)。
【0049】
また、制御装置44は、高さ検知装置41により検知されたバケット13の高さが目標深さに対応する高さに達しておらず、姿勢検知装置42により検知されたバケット13の姿勢が掘削姿勢にないと判断した場合(S3、No)も、制御装置44は、バケット13の下降動作を制限しない(S5)。
また、図示していないが、上記S4の後、運転者がブーム11の上げ動作をすることにより、高さ検知装置41により検知されたバケット13の高さが解除高さに達した場合、制御装置44はバケット13の下降動作の制限を解除する。
【0050】
上記S4、S5のいずれかのステップに制御処理が移行した後、あるいはS4に続いてバケット13の下降動作の制限が解除された後、制御装置44は、制御を終了する指令の有無を判定する(S6)。制御の終了指令を受信していない場合(S6、No)、上記S2に戻って制御を続行する(S2)。一方、制御の終了指令を受信した場合(S6、Yes)、制御装置44は制御を終了する。
(変更例)
上記実施形態では、高さ検知装置41及び姿勢検知装置42がポテンショメータの検知値に基づいてバケット13の高さや姿勢を算出する演算装置を備えている構成について説明したが、制御装置44がポテンショメータの検知値に基づいてバケット13の高さや姿勢を算出する演算装置を備えている構成としてもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、制御装置44の記憶部が掘削の目標深さを記憶する構成について説明したが、設定部43が掘削の目標深さを記憶する記憶部を有する構成としてもよい。
以上、本発明について説明したが、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0052】
1 作業機
2 機体
11 揺動体(ブーム)
12 揺動体(アーム)
13 バケット
13a バケットの先端
13b バケットの底面の湾曲部の頂点
132b バケットの底面の平面部
33 バケットの枢軸
41 高さ検知装置
42 姿勢検知装置
42a 角度センサ
43 設定部
44 制御装置
45 報知装置
図1
図2
図3
図4
図5