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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】光コネクタ
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/42 20060101AFI20220711BHJP
   G02B 6/32 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
G02B6/42
G02B6/32
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019154760
(22)【出願日】2019-08-27
(65)【公開番号】P2021033132
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2021-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】彦坂 知弘
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-026345(JP,A)
【文献】特開2017-003941(JP,A)
【文献】特開2003-329895(JP,A)
【文献】特開2003-227972(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0021287(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/26-6/27
G02B 6/30-6/34
G02B 6/42-6/43
H01L 31/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
発光素子及び受光素子を有し、前記ハウジング内に収容された光トランシーバと、
前記ハウジング内に収容されて相手光コネクタと前記光トランシーバとの間に介在するレンズ体と、を備え、
前記レンズ体が、前記発光素子と前記相手光コネクタの一方の光ファイバとの間に介在する発光側レンズ部と、前記受光素子と前記相手光コネクタの他方の光ファイバとの間に介在する受光側レンズ部と、前記受光側レンズ部を包囲した筒状の受光側レンズ包囲部と、を一体に備え、
前記レンズ体における前記発光側レンズ部と前記受光側レンズ部とを結ぶ部分に遮光部が形成されており、
前記受光側レンズ包囲部は、前記相手光コネクタ側の端部が透明に形成されており、それ以外の部分が前記遮光部の一部として形成されている
ことを特徴とする光コネクタ。
【請求項2】
前記受光側レンズ包囲部は、前記受光側レンズ部の光ファイバ対向面外縁部と交わっており、当該交わり部よりも前記相手光コネクタ側の部分が透明に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の光コネクタ。
【請求項3】
前記レンズ体が、前記発光側レンズ部を包囲した筒状の発光側レンズ包囲部を備え、当該発光側レンズ包囲部が黒色樹脂で形成されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光トランシーバ(FOT:Fiber Optic Transceiver)とレンズ体を備えた光コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車用LAN等において、基板と光ファイバとを一対の光コネクタを介して接続することが行われている。前記一対の光コネクタのうちの一方である「基板側光コネクタ」は、基板に接続された光トランシーバ、レンズ機能を有する導光部材(以下、「レンズ体」と呼称する。)、これらを収容したハウジング、等を備えている。他方の「光ファイバ側光コネクタ」は、送信用と受信用の2本の光ファイバの端部各々に取り付けられたフェルール、これらフェルールを収容したハウジング、等を備えている。
【0003】
上記基板側光コネクタのハウジングには、光ファイバ側光コネクタを受け入れる嵌合室が形成されている。この嵌合室に光ファイバ側光コネクタが嵌合することで、各光ファイバの端面が上記レンズ体と向かい合う。そして、一方の光ファイバからレンズ体を介して光トランシーバの受光素子へ光が伝送され、光トランシーバの発光素子からレンズ体を介して他方の光ファイバへ光が伝送される(特許文献1等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-56895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の基板側光コネクタにおいては、発光素子からの出射光の一部がレンズ体を介して受光素子に入り込む「クロストーク」が生じ得るという問題があった。このクロストークが生じた場合、正確な信号の送受信ができなくなり好ましくない。
【0006】
上記問題を解決するため、本発明は、クロストークを抑制できる光コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光コネクタは、ハウジングと、発光素子及び受光素子を有し、前記ハウジング内に収容された光トランシーバと、前記ハウジング内に収容されて相手光コネクタと前記光トランシーバとの間に介在するレンズ体と、を備え、前記レンズ体が、前記発光素子と前記相手光コネクタの一方の光ファイバとの間に介在する発光側レンズ部と、前記受光素子と前記相手光コネクタの他方の光ファイバとの間に介在する受光側レンズ部と、前記受光側レンズ部を包囲した筒状の受光側レンズ包囲部と、を一体に備え、前記レンズ体における前記発光側レンズ部と前記受光側レンズ部とを結ぶ部分に遮光部が形成されており、前記受光側レンズ包囲部は、前記相手光コネクタ側の端部が透明に形成されており、それ以外の部分が前記遮光部の一部として形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、レンズ体における発光側レンズ部と受光側レンズ部とを結ぶ部分に遮光部が形成されているので、発光素子からの出射光の一部がレンズ体を介して受光素子に入り込むこと(クロストーク)を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態にかかる光コネクタが相手光コネクタと嵌合している状態を示す斜視図である。
図2図1の光コネクタの分解図である。
図3図1の相手光コネクタの分解図である。
図4図1中のA-A線に沿った断面図である。
図5図2のレンズ体の拡大図である。
図6図4の光ファイバと受光側レンズ部との間に軸ズレが生じた際の光の進路を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態にかかる「光コネクタ」について、図1~6を参照して説明する。
【0011】
図1に示す光コネクタ1は、基板に実装されるコネクタである。この光コネクタ1は、光ファイバ11の端末に接続された相手光コネクタ2と嵌合される。図示例では、2本の光ファイバ11の両端末に相手光コネクタ2が接続されており、これら相手光コネクタ2がそれぞれ光コネクタ1と嵌合されている。
【0012】
相手光コネクタ2は、図3に示すように、送信用と受信用の2本の光ファイバ11の端部各々に取り付けられた円筒状のフェルール7と、これらフェルール7を収容した合成樹脂製のハウジング8と、ハウジング8に組み付けられてフェルール7の抜けを防止するホルダ9と、を備えている。
【0013】
2本の光ファイバ11は、それぞれ、コアとクラッドからなる芯線12と、芯線12を覆った被覆13とで構成されている。各光ファイバ11は、その端部の被覆13が剥ぎ取られてフェルール7内に挿入されている。
【0014】
光コネクタ1は、図2に示すように、合成樹脂製のハウジング3と、シールドケース6と、ハウジング3内に収容された光トランシーバ(FOT:Fiber Optic Transceiver)4と、ハウジング3内に収容されて相手光コネクタ2と光トランシーバ4との間に介在するレンズ体5と、を備えている。
【0015】
ハウジング3は、四角筒状の外壁部30と、外壁部30の内部空間に配された一対の筒部31と、を一体に有している。図4に示すように、外壁部30の内部空間における筒部31の一方側には、レンズ体5と光トランシーバ4が収容されている。また、外壁部30の内部空間における筒部31の他方側には、相手光コネクタ2が嵌合される。この他方側の空間を「嵌合室34」と呼称する。
【0016】
筒部31は、図4に示すように相手光コネクタ2の光ファイバ11及びフェルール7を受け入れてこれらを位置決めするものである。筒部31は、フェルール7の先端形状に対応した円筒状に形成されている。一対の筒部31は、ハウジング3の幅方向に並んでいる。各筒部31の中心軸は、外壁部30の中心軸(即ち相手光コネクタ2の嵌合方向)と平行である。
【0017】
シールドケース6は、金属板にプレス加工等が施されて得られるものである。シールドケース6は、図2に示すように、外壁部30の上面を覆う上面部61、外壁部30の両側面を覆う一対の側面部62、光トランシーバ4を覆う背面部63、各側面部62から延びた基板接続部64を有している。
【0018】
光トランシーバ4は、図2,4に示すように、発光素子(発光ダイオード、レーザダイオード等)41と、受光素子(フォトダイオード等)42と、基板に接続される複数のリード44と、これらを保持した合成樹脂製の保持部40と、を備えている。保持部40の両端部には、レンズ体5と係止する一対の係止突起43が形成されている。
【0019】
レンズ体5は、図4,5に示すように、発光素子41と一方の光ファイバ11との間に介在する発光側レンズ部51と、受光素子42と他方の光ファイバ11との間に介在する受光側レンズ部52と、発光側レンズ包囲部54と、受光側レンズ包囲部55と、これらと一体化された板部50と、板部50の両端から延びた一対の係止アーム53と、を一体に備えている。
【0020】
発光側レンズ部51及び受光側レンズ部52は、両面が凸面の両凸レンズである。本例では、受光側レンズ部52の厚みが発光側レンズ部51よりも大きく形成されている。これら発光側レンズ部51及び受光側レンズ部52は、軸方向から見て円形に形成されている。発光側レンズ部51及び受光側レンズ部52の直径は、光ファイバ11の芯線12の直径よりも大きい。
【0021】
発光側レンズ包囲部54は、円筒状に形成されており、発光側レンズ部51を包囲している。発光側レンズ部51の外周部は発光側レンズ包囲部54の内周部と繋がっている。発光側レンズ包囲部54の相手光コネクタ2側の端面は、発光側レンズ部51の光ファイバ対向面51aの中心部(最も突出した部分)よりも相手光コネクタ2側に位置している。
【0022】
受光側レンズ包囲部55は、円筒状に形成されており、受光側レンズ部52を包囲している。受光側レンズ部52の外周部は受光側レンズ包囲部55の内周部と繋がっている。受光側レンズ包囲部55の相手光コネクタ2側の端面は、受光側レンズ部52の光ファイバ対向面52aの中心部(最も突出した部分)よりも相手光コネクタ2側に位置している。この受光側レンズ包囲部55と受光側レンズ部52の光ファイバ対向面52a外縁部とが交わった個所を「交わり部」と呼称し、符号55cを付す。
【0023】
板部50は、発光側レンズ部51及び受光側レンズ部52の軸方向から見て長方形板状に形成されている。板部50は、発光側レンズ包囲部54の外周部及び受光側レンズ包囲部55の外周部と繋がっている。
【0024】
一対の係止アーム53は、図4に示すように、光トランシーバ4の一対の係止突起43と係止する。光トランシーバ4とレンズ体5は、これら係止突起43と係止アーム53同士が係止することで互いに組み付けられ、互いに組み付けられた状態でハウジング3に組み付けられる。また、その後、シールドケース6がハウジング3に組み付けられる。
【0025】
図4に示すようにレンズ体5がハウジング3に組み付けられた状態で、発光側レンズ部51及び発光側レンズ包囲部54の一部が一方の筒部31内に位置し、受光側レンズ部52及び受光側レンズ包囲部55の大部分が他方の筒部31内に位置する。
【0026】
上記レンズ体5は、透明樹脂と、黒色樹脂とを用いた二色成形により得られる。本例では、発光側レンズ部51、受光側レンズ部52、受光側レンズ包囲部55における相手光コネクタ2側の端部55b、板部50の両端部50a,50b、及び一対の係止アーム53が透明樹脂で形成されている。また、前記受光側レンズ包囲部55の「端部55b」の範囲については、より詳細には、受光側レンズ包囲部55における交わり部55cよりも少し光トランシーバ4側の部分から相手光コネクタ2側の端面までである。そして、その余の部分、即ち、発光側レンズ包囲部54、受光側レンズ包囲部55における光トランシーバ4側の部分55a、板部50の中央部50cが黒色樹脂で形成されている。これら黒色樹脂で形成された部分を「遮光部」と称し、符号56を付す。
【0027】
上記遮光部56は、レンズ体5における発光側レンズ部51と受光側レンズ部52とを結ぶ部分を含んでいるので、発光素子41からの出射光の一部がレンズ体5を介して受光素子42に入り込むこと(クロストーク)を抑制できる。
【0028】
なお、本例では、黒色樹脂で遮光部56を形成しているが、本発明の遮光部は、使用波長に対し低透過率の材料であればよい。また、本例では、クロストークをより確実に防ぐために、レンズ体5における発光側レンズ部51と受光側レンズ部52とを結ぶ部分(発光側レンズ部51と受光側レンズ部52の間の部分)の他に、発光側レンズ部51及び受光側レンズ部52の周囲に広範囲に遮光部56が形成されているが、本発明では、少なくとも発光側レンズ部51と受光側レンズ部52とを結ぶ部分に遮光部が形成されていればよい。また、本例では、板部50の両端部50a,50b及び一対の係止アーム53が透明樹脂で形成されているが、これらの部分は黒色樹脂で形成されていてもよい。
【0029】
上記受光側レンズ包囲部55の端部55bは、以下の理由により透明樹脂で形成されている。即ち、光コネクタ1は、相手光コネクタ2との嵌合ガタや、組付け部品のガタ等に起因して、図6に示すように相手光コネクタ2の光ファイバ11と受光側レンズ部52との間に軸ズレが生じることがある。その場合、光ファイバ11からの出射光の一部が受光側レンズ部52の光ファイバ対向面52aからはみ出し、受光側レンズ包囲部55の端部55bに当たる。この端部55bが仮に黒色樹脂で形成されていると、当たった光が吸収され、光コネクタ1,2間の通信信頼性が低下してしまう。
【0030】
この点において、本例では、端部55bが透明に形成されているので、上述した軸ズレにより光ファイバ対向面52aからはみ出した光を、図6に示すように端部55bで反射させて光ファイバ対向面52aに入射させることができる。よって、光コネクタ1,2間の通信信頼性が低下することを抑制できる。
【0031】
このように、本例の光コネクタ1は、発光素子41からの出射光の一部がレンズ体5を介して受光素子42に入り込む「クロストーク」を抑制できる上、相手光コネクタ2の光ファイバ11と受光側レンズ部52との間に軸ズレが生じた場合でも光損失を抑制できるので、相手コネクタ2との通信信頼性低下を抑制できる。
【0032】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0033】
1 光コネクタ
2 相手光コネクタ
3 ハウジング
4 光トランシーバ
5 レンズ体
11 光ファイバ
41 発光素子
42 受光素子
51 発光側レンズ部
52 受光側レンズ部
54 発光側レンズ包囲部
55 受光側レンズ包囲部
56 遮光部
図1
図2
図3
図4
図5
図6