(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】油圧式係留索保持装置、システム及び方法
(51)【国際特許分類】
E02B 3/20 20060101AFI20220711BHJP
B63B 21/00 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
E02B3/20 A
B63B21/00 Z
(21)【出願番号】P 2019513879
(86)(22)【出願日】2017-09-07
(86)【国際出願番号】 NL2017050588
(87)【国際公開番号】W WO2018048303
(87)【国際公開日】2018-03-15
【審査請求日】2020-08-18
(32)【優先日】2016-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】519080919
【氏名又は名称】ショアテンション ホールディング ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】ファン デア ブルグ ゲリット
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-246983(JP,A)
【文献】国際公開第2010/110666(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/20
B63B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの油圧式係留索保持装置を備えた油圧式係留システムであって、前記少なくとも2つの油圧式係留索保持装置は、波止場地域に配置されて、同じ船に接続された係留索に、それぞれの係留点から、前記波止場地域の方向に沿った逆向きの成分を有する引張力を発揮し、前記油圧式係留索保持装置の各々が、
油圧シリンダと、この油圧シリンダ内のピストンと、
前記船と
この船に対して引張力を発揮する前記油圧式係留索保持装置のそれぞれの係留点との間の係留索接続部において前記装置を接続するための、前記油圧シリンダ及び前記ピストンへの接続部と、
前記油圧シリンダ
の第1の端部に結合されて、気体及び作動液を含むメインリザーバと、前記油圧シリンダと前記メインリザーバとの間に互いに並列に結合された過圧弁及び一方向弁とを有し、前記過圧弁が、前記シリンダ内の第1の圧力と前記メインリザーバ内の第2の圧力との間の差分が第1の閾値を上回った時に前記油圧シリンダから前記メインリザーバに作動液を通すように構成され、前記一方向弁が、前記差分が前記第1の閾値よりも低い第2の閾値未満に低下した時に前記メインリザーバから前記油圧シリンダに作動液を通すように構成された、加圧保護部と、
前記油圧シリンダ
の第1の端部に結合された、気体及び作動液を含む補助リザーバと、を備え、
前記メインリザーバは、前記油圧シリンダからの前記作動液の体積が等しく変化しても前記メインリザーバ内の圧力が前記補助リザーバ内の圧力ほど変化しない
場合において、前記補助リザーバの第2の圧力-体積変化特性とは異なる第1の圧力-体積変化特性を有する、ことを特徴とする
油圧式係留システム。
【請求項2】
前記油圧式係留索保持装置は、
前記補助リザーバと前記油圧シリンダとの間に結合されて、開いた時に前記補助リザーバと前記油圧シリンダとの間の油圧連通を可能にし、閉じた時に前記油圧連通を防ぐように構成された制御可能弁と、
センサ信号及び/又はコマンド信号を受け取るための入力部と、前記制御可能弁の制御入力部に結合された出力部と、を有し、前記センサ信号及び/又は前記コマンド信号に応じて前記制御可能弁の開閉を制御するように構成された制御ユニットと、を備える、請求項1に記載の
油圧式係留システム。
【請求項3】
前記油圧式係留索保持装置は、前記油圧シリンダと前記補助リザーバとの間に結合されて、前記メインリザーバ内の第1の圧力と前記補助リザーバ内の第3の圧力との間の差分が前記第1の閾値と前記第2の閾値との間に存在する第3の閾値を上回った時に前記油圧シリンダから前記補助リザーバに作動液を通すように構成されたさらなる過圧弁を備える、請求項1又は2に記載の
油圧式係留システム。
【請求項4】
前記油圧式係留索保持装置は、前記油圧シリンダと前記補助リザーバとの間に結合されて、前記差分が前記第2の閾値未満に低下した時に前記補助リザーバから前記油圧シリンダに作動液を通すように構成されたさらなる一方向弁を備える、請求項3に記載の
油圧式係留システム。
【請求項5】
前記油圧式係留索保持装置は、少なくとも前記過圧弁が閉じたままである全ての圧力において前記油圧シリンダ内の前記作動液圧と前記補助リザーバ内の前記作動液圧とを均一にするように構成された、前記補助リザーバと前記油圧シリンダとの間の流体接続部を備える、請求項1に記載の
油圧式係留システム。
【請求項6】
前記油圧式係留索保持装置は、前記油圧シリンダと前記補助リザーバとの間の流体流路内に、この流体流路に接続された流体流駆動式発電機を備える、請求項1乃至5の何れか1項に記載の
油圧式係留システム。
【請求項7】
前記油圧式係留索保持装置は、前記油圧シリンダと前記補助リザーバとの間の流体流路内に、該流体流路に接続された流体流駆動式発電機を備える、請求項1乃至6の何れか1項に記載の
油圧式係留システム。
【請求項8】
前記制御ユニットは、さらなる油圧式係留索保持装置
の第1の端部又は中央ユニットからの情報及び/又はコマンドを受け取るための通信装置を有し、前記制御ユニットは、前記情報及び/又は前記コマンドに応じて
前記油圧式係留索保持装置の第2の端部の前記制御可能弁の開放を制御するように構成される、請求項2に記載の
油圧式係留システム。
【請求項9】
前記油圧シリンダに対する前記ピストンの位置及び/又は動きを測定するように構成された位置及び/又は動きセンサを備え、
前記制御ユニットは、前記位置及び/又は動きセンサから導出された情報又はコマンドを、前記さらなる油圧式係留索保持装置の制御に使用できるように、前記通信装置を介して前記さらなる油圧式係留索保持装置又は前記中央ユニットに送信するように構成される、請求項8に記載の
油圧式係留システム。
【請求項10】
第1及び第2の係留索保持装置を用いて係留船を保持する方法であって、前記第1及び第2の係留索保持装置の各々は、油圧シリンダと、この油圧シリンダ内のピストンと、作動液及び気体を含むメインリザーバ及び補助リザーバとを備え、前記方法は、
それぞれの係留索を介して、波止場地域の方向に沿った逆
の引張り方向の成分を有する力を前記係留船に対して発揮する第1及び第2の係留索を、前記係留船から前記第1及び第2の油圧式係留索保持装置の前記ピストン及び前記油圧シリンダをそれぞれ介して波止場地域に結合するステップと、
前記第1又は第2の係留索に加わる力がそれぞれ第1の閾値を上回った時に、前記第1及び第2の係留索保持装置の前記油圧シリンダ
の第1の端部から前記メインリザーバにそれぞれ作動液を解放するステップと、
前記メインリザーバ内の油圧が前記第1及び第2の係留索保持装置の閾値よりも低い第2の閾値よりもそれぞれ高い時に、前記第1及び第2の係留索保持装置の前記メインリザーバから前記油圧シリンダ
の第1の端部にそれぞれ作動液を戻すステップと、
前記第1及び第2の係留索保持装置の前記メインリザーバによって前記油圧シリンダから作動液の解放又は前記油圧シリンダへの作動液の復帰がそれぞれ行われていない段階中に、前記第1及び第2の係留索保持装置の前記油圧シリンダ
の第1の端部と補助リザーバとの間に油圧連通流体をそれぞれ供給するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記油圧連通は、前記第2及び第1の係留索保持装置が前記第2又は第1の係留索を引き戻したことの検出に応答して、前記第1及び第2の係留索保持装置においてそれぞれ選択的に作動する、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記作動液は、前記油圧シリンダ内の前記作動液の圧力が前記補助リザーバ内の圧力を第3の閾値だけ上回った時に、前記第1及び第2の係留索保持装置の前記油圧シリンダから前記補助リザーバに移送される、請求項
10又は
11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1及び第2の係留索保持装置の前記補助リザーバと前記油圧シリンダとの間の作動液圧差によって発電機を駆動するステップを含む、請求項
10乃至
12の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧式係留索保持装置、係留システム、及び係留船の保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2010/110666号からは、係留索に加わる力が閾値を上回った時に係留索を繰り出し、この力が再び閾値を十分に下回った時にのみ係留索を引き戻す油圧式係留索保持装置が知られている。この装置は、係留索に張力が加わった時に油圧が高まるように係留索に接続されたピストン付き油圧シリンダを含む。この圧力が閾値を上回ると、安全弁がシリンダからリザーバに作動液を排出する。係留索に加わった張力が第2の閾値未満に低下すると、一方向弁がリザーバからシリンダに流体を戻す。
【0003】
油圧シリンダ及びリザーバは、油圧シリンダ内の圧力が高レベルに上昇した時、及び低レベルに低下した時に、それぞれ繰り出し段階及び引き戻し段階での動作をもたらす。この結果、船が緊張係留状態に保たれると同時に、例えば突風の影響などを受けた過剰な力によって係留索が破断するのを防ぐ。この装置は、船を係留状態に保つために外部電源を必要としないので非常に安全に作動する。
【0004】
繰り出し段階と引き戻し段階との間には、油圧シリンダとメインリザーバとの間に作動液の流れが生じない中間段階が存在する。これらの段階では、ピストンの位置は実質的に一定のままであるが、係留索に加わる力は、係留索保持装置が許容する力範囲内で変化することができる。
【0005】
船の両端の係留索に接続されたこのような2つの係留索保持装置によって船が係留されている時には、船を緊張係留状態に保つことができる。静止状態では、両係留索保持装置がその中間段階にあり、係留索を緊張状態に保って船を固定位置に保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、海洋波又は船舶の通過によるうねりに起因して外力が変化した結果、船の位置が変化することがある。外力が十分に大きい時には、これによって一方の係留索保持装置が過度の力を避けるために係留索を繰り出すようになる。他方の係留索保持装置は引き戻しを行う。外力が大きい場合にはこの動作が必要であるが、不要な船の動きも生じ得ることが分かった。このような不要な動きを避けることが望ましいと思われる。
【0008】
とりわけ、係留の改善を図ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
油圧式係留索保持装置であって、
油圧シリンダ、油圧シリンダ内のピストン、並びに船と係留点との間の係留索接続部において装置を接続するための、油圧シリンダ及びピストンへの接続部と、
油圧シリンダに結合されて、気体及び作動液を含むメインリザーバと、油圧シリンダとメインリザーバとの間に互いに並列に結合された過圧弁及び一方向弁とを有し、過圧弁が、シリンダ内の第1の圧力とメインリザーバ内の第2の圧力との間の差分が第1の閾値を上回った時に油圧シリンダからメインリザーバに作動液を通すように構成され、一方向弁が、この差分が第1の閾値よりも低い第2の閾値未満に低下した時にメインリザーバから油圧シリンダに作動液を通すように構成された、加圧保護部と、
を備えた油圧式係留索保持装置を提供する。
【0010】
先行技術の係留索保持装置と同様に、油圧シリンダ及びメインリザーバは、繰り出し段階及び引き戻し段階、並びに中間段階での動作をもたらす。
【0011】
さらに、油圧式係留索保持装置は、油圧シリンダに結合された、気体及び作動液を含む補助リザーバを含み、メインリザーバは、油圧シリンダからの作動液の体積が等しく変化してもメインリザーバ内の圧力が補助リザーバ内の圧力ほど変化しないという意味において、補助リザーバの第2の圧力-体積変化特性とは異なる第1の圧力-体積変化特性を有する。
【0012】
油圧シリンダと補助リザーバとの間の油圧連通によって、中間動作段階において係留索に加わる力に調整を加えることができる。
【0013】
本発明は特定の動作理論に限定されるものではないが、油圧シリンダ及びメインリザーバを伴う動作理論は、同じ船からの係留索に接続された複数の係留索保持装置が補助リザーバを有していない時に、これらの係留索保持装置が係留索の動的条件及び弾性力によって非協調的に動作するようになることしか示さない。例えば、1つの係留索保持装置が引き戻し段階にあって別の係留索保持装置が依然として中間段階にある場合、これらの係留索保持装置は、逆方向に位相ずれして動作することができる。この結果、一方の係留索保持装置がそのメインリザーバとの間で不必要に大量の作動液を移動させ、これによってその後に他方の係留索保持装置もさらに不必要な反応を行う可能性がある。
【0014】
これを避けるために、油圧シリンダと補助リザーバとの間の作動液の移送を使用することができる。1つの実施形態では、補助リザーバが、過圧保護によって許容される圧力範囲全体を通じた、又は閾値を上回る中間段階中の油圧の変化に比例して、油圧シリンダ内の作動液の量を変化させて係留索の繰り出し及び/又は引き戻しを可能にすることができる。これにより、船の安定位置において係留索に加わる力が安定するようになる。
【0015】
ある実施形態では、係留索保持装置が、センサ入力に応じて補助リザーバと油圧シリンダとの間の圧力連通の作動タイミングを制御する制御ユニットを含む。圧力連通は、例えば同じ船に作用する別の係留索保持装置が逆方向に引っ張った時に係留索保持装置において選択的に作動する。制御ユニットは、外部コマンドを受け取って実行し、又は外部センサデータを用いて圧力連通を作動させるように構成することができる。係留索保持装置は、この目的でこのようなコマンド又は外部センサデータを生成して別の係留索保持装置に送信するために使用される、ピストンの位置及び/又は動き、液体の体積又は圧力を検出するセンサを含む。
【0016】
油圧シリンダと補助リザーバとの間の油圧連通によって、中間動作段階において係留索に加わる力に調整を加えることができる。
【0017】
なお、補助リザーバと油圧シリンダとの間の圧力連通の作動及び停止を行う代わりに、メインリザーバと油圧シリンダとの間の圧力連通の作動及び停止を行うこともできる。異なる圧力-体積応答特性を使用しない実施形態では、この場合に補助リザーバを省略することもできる。しかしながら、たとえ異なる圧力-体積応答特性自体が不要な状況であっても、さらに良好なフェイルセーフ動作及び/又はさらに高速な応答のために補助リザーバとの圧力連通を使用することが望ましい場合もある。
【0018】
ある実施形態では、係留索保持装置が、補助リザーバと油圧シリンダとの間の油圧差に基づいて作動液の流れから電力を生成するように接続された流体流駆動式発電機を含むことができる。
【0019】
さらに、それぞれが油圧シリンダと、油圧シリンダ内のピストンと、作動液及び気体を含むメインリザーバ及び補助リザーバとを含む第1及び第2の係留索保持装置を用いて係留船を保持する方法も提供する。
【0020】
以下の図を用いた例示的な実施形態の説明から、これらの及びその他の目的及び有利な態様が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】波止場地域に沿って係留された船の平面図である。
【
図2a】係留索保持装置の構成の実施形態を示す図である。
【
図3a】ピストン位置の関数としての力のグラフである。
【
図3b】ピストン位置の関数としての力のグラフである。
【
図3c】ピストン位置の関数としての力のグラフである。
【
図3d】ピストン位置の関数としての力のグラフである。
【
図3e】ピストン位置の関数としての力のグラフである。
【
図3f】ピストン位置の関数としての力のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、波止場地域から船まで伸びる第1及び第2の係留索12a、12bを用いて波止場地域に沿って係留された船10の概略的平面図である。船は、波止場地域から伸びる岸辺の防舷材(図示せず)に接触することができる。この波止場地域の係留地には、第1及び第2の係留索12a、12bにそれぞれ結合された第1及び第2の係留索保持装置14a、14bが設けられる。各係留索保持装置14a、14bは、一方の側を固定双係柱などの係留点に結合され、他方の側を係留索12a、12bに結合される。或いは、係留点は、係留索保持装置14a、14bの一方の側を固定できる波止場地域の他の構造とすることもできる。係留点を固定岸壁の代わりに浮体構造物上に設けて、この浮体構造物に対して船を係留することもできる。
【0023】
図示の実施形態では、係留索12a、12bが、係留索保持装置14a、14bからさらなる双係柱16a,16bを介して船10まで伸びる。図示のように、係留索12a、12bは、波止場地域に沿った海岸線方向に対してほぼ垂直に(例えば、垂直方向からの逸脱が45度未満の状態で)船から係留索保持装置14a、14bまで伸びる。これに加えて、又はこれとは別に、垂直方向に対してさらに大きな角度を成すばね係留索(図示せず)を使用することもできる。海岸線に対してほぼ垂直に伸びる係留索12a、12bを使用すると、一方では船10にとって必要な岸壁空間が最小限に抑えられるが、他方ではうねり又は風に起因して船10が上向き又は横向きに動いた結果として係留索12a、12bに高い張力が生じることにより、係留索が破断するリスクが高くなり得ると理解されたい。このような係留構成では、係留索保持装置14a、14bが、係留索12a、12bに加わる高い張力を防ぐ一方で、ばね構成の高い張力を防ぐこともできる。
【0024】
図2は、係留索保持装置を概略的に示す図である。この装置は、メインシリンダ20と、メインシリンダ20内のメインピストン22と、メインピストン22から延びるピストンロッドとを含む。メインシリンダ20及びピストンロッド23は、メインシリンダ20の両端にそれぞれの接続部を有する。第1の端部は、船(図示せず)まで伸びる係留索を取り付けるためのものであり、第2の端部は、例えば波止場地域の双係柱(図示せず)などの係留点に係留索を介して接続するためのものである。例えばこの目的で、メインシリンダ20及びピストンロッド23に関連して係留索接続アイ(cable connection eyes)を設けることもできる。メインシリンダ20は、メインピストン22の少なくともピストンロッド23の方向の側を作動液(例えば、油)で満たされる。
【0025】
メインピストン22の係留索取り付け接続部が存在する側であるメインシリンダ20の第1の端部では、メインシリンダ20の内部が、作動液のメインリザーバ260を含む過圧保護部26と、作動液の補助リザーバを含む補助緩衝器24とを有する油圧回路に結合される。
【0026】
過圧保護部26は、油圧シリンダ内の作動液の圧力とメインリザーバ内の圧力との間の差分が第1の閾値を上回った時に油圧シリンダから作動液を吸い上げ、この差分が第1の閾値よりも小さな第2の閾値を下回った時に油圧シリンダに作動液を戻すように構成される。このように、係留索保持装置は、過圧保護部26によって、係留索に加わる力が第1の閾値に対応する閾値を上回った時に緩みを与え、この力が衰えた時に係留索を引っ張ることができる。
【0027】
過圧保護部26は、メインリザーバ260と、過圧弁262と、一方向弁264とを含む。過圧弁262は、弁に加わる作動液圧がばね力に打ち勝った時に作動液の流れが発生するようにばね付勢弁によって実現することができるが、他のあらゆるタイプの過圧弁262を使用することができる。メインリザーバ260は、気体(例えば、窒素又は空気)と、可変量の作動液(好ましくは作動液様の油)とを含む。メインリザーバ260は、通常は過圧弁262及び一方向弁264の効果を除いて内部の気体及び作動液を加圧下に保持するという意味で閉鎖リザーバ(closed reservoir)である。
【0028】
メインリザーバ260は、内部の作動液の体積及び温度の関数として内部の圧力を定める所定の圧力特性を有する。この圧力特性は、気体圧力変動の結果である。メインリザーバ260の体積及びその中の気体の量は、メインリザーバ260内の作動液の体積の実際の変化と共に圧力が大きく変動しないほど大きいことが好ましい。ある実施形態では、過圧保護部26が、気体と作動液との間に自由移動可能なセパレータ(例えば、ピストン)を含むことができるが、例えば気体が占める空間が確実に一方向弁264との接続部よりも上方に存在する時には必要としないこともできる。
【0029】
メインシリンダ20の第1の端部は、メインシリンダ20の第1の端部におけるメインシリンダ20の側面に加わる圧力がメインリザーバ260内の圧力を所定量だけ上回った時に開いて作動液を流すように構成された過圧弁262を介してメインリザーバ260の液体収容部に結合される。この時、メインシリンダ20からメインリザーバ260に作動液が流れることにより、メインピストン22を実質的に一定の力でさらに動かすことができる。このように、過圧弁262は、係留索によって伝わる力が閾値を上回った時に装置が係留索(図示せず)に緩みを与えるようにする役割を果たす。
【0030】
メインリザーバ260は、メインリザーバ260の側面に加わる圧力とメインシリンダ20の第1の端部におけるメインシリンダ20内の圧力との間の差分が閾値を上回った時に(例えば、メインシリンダ20内の圧力がメインリザーバ260内の圧力よりわずかに低くなった時に)開いて作動液を流すように指示される一方向弁264を介してメインシリンダ20の第1の端部にさらに結合される。この場合、作動液は、一方向弁264を介してメインシリンダ20に戻る。このように、一方向弁264は、係留索に加わる力が実質的にゼロまで衰えた時に装置が係留索(図示せず)に引っ張るようにする役割を果たす。
【0031】
例えば、一方向弁264は、メインリザーバ260内の圧力がメインシリンダ20内の第1の端部における圧力を上回った時に開くように構成することができる。しかしながら、過圧弁262の閾値よりも低い異なる閾値を使用することもできる。従って、過圧弁262及び一方向弁264はヒステリシスの形を引き起こし、すなわち過圧弁262を通過した作動液が一方向弁264を介して戻る前に、メインシリンダ20内の圧力が所定の非ゼロの量だけ低下する必要がある。
【0032】
また、係留索保持装置は、メインシリンダ20の係留索取り付け接続部が位置するメインシリンダ20の第2の端部の圧力を設定するためのプライミングユニット(priming unit)も含む。プライミングユニットは、ポンプと、弁と、作動液の補助リザーバとを含み、ポンプ及び弁は、補助リザーバとメインシリンダとの間に並列に結合される。補助リザーバは、圧力を維持する必要がなく、又は低圧のみを維持し、すなわち外部に通じる安全弁を有することができるという意味で開放リザーバ(open reservoir)とすることができる。
【0033】
動作中、プライミングユニットは、船10を係留した時のメインピストン22の位置を設定するために一時的に使用することができる。係留前には、メインピストン22の比例圧力調整部及び過圧保護部が接続された側とは反対側のメインシリンダ20内に補助リザーバから作動液を圧送することによって、最初にメインピストンを最大位置まで押し込んでおくことができる。この段階では、プライミングユニットの弁は閉じたままである。岸壁沿いの船と係留装置との間に係留索が留められると、弁が開いて補助リザーバに作動液を逆流させることにより、メインリザーバ260からの油圧がピストン22を後退させて、係留索に加わる力に起因する圧力に等しい緩みをメインリザーバ260から吸い上げる効果をもたらすことができる。さらなる使用中には、この弁を開いたままにしておくことができる。
【0034】
図2aは、係留索保持装置の構成の実施形態を示す図である。係留索保持装置は、メインシリンダ20と、外側シリンダ50と、(破線によって象徴的に示す)導管51と、ディスク形の弁マニホールド52とを含む。メインシリンダ20は、外側シリンダ50内に、好ましくは外側シリンダ50と同心的に、外側シリンダ50との間に空間を残して配置される。メインシリンダ20と外側シリンダ50との間の空間は、メインリザーバ260として機能する。外側シリンダ50及びメインシリンダ20の一方の軸端は、弁マニホールド52の第1のディスク面に取り付けられる。弁マニホールド52のディスク形状は、少なくとも外側シリンダ50の直径と同程度の大きさの直径を有する。導管51については、メインシリンダの外側の導管として示しているが、実際には、例えば外側シリンダ50とメインシリンダ20との間の外側シリンダ50内の空間を通り抜けることができる。
【0035】
補助リザーバ240の軸端は、弁マニホールド52の第1のディスク面とは反対側の第2のディスク面に取り付けられる。補助リザーバ240は、補助緩衝器の補助シリンダとして機能する。メインシリンダ20の中心軸と補助リザーバの中心軸は、互いに整列することができる。さらに、装置は、弁マニホールド52の第2の面から補助リザーバ240内に延びるパイプ54も含む。パイプ54の周囲には、補助ピストン242を摺動可能に取り付けることができる。パイプ54は、補助リザーバ240の端部付近に、パイプ54の内部と、補助ピストン242の弁マニホールド52から離れた方の側の補助リザーバ240の第1の部分との間の流体連通を可能にする1又は2以上の開口部を有することができる。パイプ54の内部と、パイプの外部の補助ピストン242と弁マニホールド52との間の補助リザーバ240の第2の部分との間に直接的な流体連通は存在しない。この第2の部分は気体を含む。パイプ54を含む実施形態を示しているが、中空パイプを省略することもでき、この場合は補助ピストンの異なる側における補助リザーバ240の空間の役割が入れ替わると理解されたい。
【0036】
メインシリンダ20内にはメインピストン22が位置する。メインピストン22からは、メインシリンダ20の外部にピストンロッド23が延びる。ピストンロッド23の直径は、作動液のための空間を残すようにメインシリンダ20の内径よりも小さい。ピストンロッド23とメインシリンダ20との間には、好ましくはメインシリンダ20の端部又はその付近にシールリング57が設けられる。導管51の一端は、メインピストン22とシールリング57との間でメインシリンダ20の内部と流体接続する。導管は、メインシリンダ20の端部付近に接続される。導管51の他端は、弁マニホールド52に接続される。導管51は、メインシリンダ20の内部と弁マニホールド52との間に作動液の連通をもたらす。ある実施形態では、導管51がメインシリンダ20と外側シリンダ50との間の空間内に設けられる。
【0037】
弁マニホールド52は、そのディスク形状内に複数の接続チャネルを含む。弁マニホールド52内の第1の接続チャネルは、導管51からパイプ54の内部に、そしてパイプ54を通じて補助ピストン242の弁マニホールド52から離れた方の側の補助リザーバ240の部分に伸びる。中空パイプを含まない実施形態では、第1の接続チャネルが、弁マニホールド52と補助ピストン242との間の空間と連通することができる。
【0038】
弁マニホールド52内の第2の接続チャネルは、導管51から過圧弁(図示せず)を介してメインシリンダ20と外側シリンダ50との間の空間まで伸びる。過圧弁を含む第2の接続チャネルの少なくとも一部は、弁マニホールド52内の一方向弁(図示せず)を含む第3の接続チャネルによって橋絡される。さらに、弁マニホールド52は、メインリザーバ内の圧力、メインシリンダ内の圧力、導管51からの圧力及び/又は補助リザーバ240からの圧力を示すように構成された1又は2以上の圧力計を含むことができる。
【0039】
ある実施形態では、弁マニホールド52内に、補助リザーバ240の外部からメインシリンダ20の弁マニホールド52とメインピストン22との間の内部空間に伸びる1又は2以上の第4の接続チャネルを設けることができる。補助リザーバを使用する実施形態では、外側補助シリンダ56を設け、その中に補助リザーバ240を配置して、補助リザーバ240と外側補助シリンダ56との間に空間を残すことができる。この空間は、作動液のための補助リザーバとして使用することができる。補助リザーバ240及び外側シリンダ56の一端は、弁マニホールド52のディスク形状の第2の面に取り付けることができる。この実施形態では、弁マニホールド52の1又は2以上の第4のチャネルが、一方では補助リザーバ240と外側補助シリンダ56との間の空間内に伸び、他方ではメインシリンダ20の内部空間内に伸びることができる。弁マニホールド52は、プライミングユニットの弁を含み、弁マニホールド52の外側には、この弁を制御するための制御機構(control organ)が存在することができる。プライミングユニットがポンプを含む場合、このポンプは、補助リザーバ240と外側補助シリンダ56との間の空間内、又は外部に配置することができる。
【0040】
ある実施形態では、メインピストン22の位置を特定する位置検知構成を設けることができる。この位置検知構成は、ピストンロッド上の磁気マーカーなどの1又は2以上のマーカーと、マーカーが通過した時にこれを感知する、メインシリンダ20上の又はその外部の位置センサとを含むことができる。
【0041】
ある実施形態では、係留索保持装置が、無線送信機及び/又は受信機を含む。(プログラムされた)論理回路又はマイクロコンピュータを設けて、無線送信機及び位置センサ及び/又は圧力計に結合することができる。マイクロコンピュータは、位置センサ及び/又は圧力計からのデータを受け取り、このデータから導出された情報を無線送信機に送信させ、又はデータを評価してこのデータが信号を生成するための所定の条件を満たすかどうかを検出させ、条件が満たされた場合に無線送信機にメッセージを送信させる命令を含むプログラムを有することができる。この条件は、メインピストンが少なくとも所定の期間にわたって極端な位置範囲に留まっていたことがデータによって示されることとすることができる。送信メッセージは、例えば制御室において受け取って表示することができる。
【0042】
ある実施形態では、補助リザーバ240、外側補助シリンダ56及びパイプ54を交換可能とすることができる。この実施形態では、各組が異なる長さの補助リザーバ240をもたらす異なる補助リザーバ240、外側補助シリンダ56及びパイプ54の組を設けることができる。この場合、予想されるうねり状態に応じて選択された組からのシリンダを弁マニホールド52に取り付けることができる。異なる港、又は同じ港の異なる岸壁では、異なる長さの異なる組を使用することができる。補助リザーバ240、外側補助シリンダ56及びパイプ54は、弁マニホールド52にボルト締めされるボルト穴付きフランジを有することができる。
【0043】
力制限動作
動作中、係留索保持装置14a、14bは、係留索12a、12bに加わる過度の張力を避けながら船10の動きを制限する役割を果たす。この過度の張力は、風スコール(wind sqall)中などの力周期(force cycle)中に、又は船10がうねりによって上下に動く際に発生することがある。典型的なうねりは、1メートル程の大きさの振幅と、100メートル程の大きさの波長とを有し、これによってうねりの際に船の船首及び船尾において波の位相差が生じることがある。
【0044】
図3aに、過圧保護部26のみが存在して補助緩衝器24が存在しない装置の力周期中のメインピストン22の力FとストロークX(位置)のグラフを示す。例えば風又は水の動きに起因する外力が船に働くと、これによってメインピストン22に力が加わる。
【0045】
最初に、作動液は、この垂直方向の上昇39aに対応する力に抵抗する。係留索保持装置に加わる力は垂直に上昇するが、船に加わる力は、係留索の弾性に起因して緩やかに上昇する。
【0046】
力が所定の閾値に達すると過圧弁262が開き、この結果メインピストン22が実質的に一定の反力で動くことによって、ピストンが第1の力レベル32で動く。この動きは、力が衰えるまで、或いはピストンの動きがメインシリンダ20の内向きフランジによって定められる停止部に達するまで継続することができる。一定の第1の力レベル32を示しているが、実際のところ、この力は、圧縮に起因するメインリザーバ260内の気体の圧力の上昇と共にわずかに上昇する可能性はあるが、この効果は、十分に大きなメインリザーバ260を使用することによって所望の大きさ未満に保つことができると認識されたい。
【0047】
その後、係留索に加わる力が衰えると過圧弁262が閉じる。この結果、力は定位置で垂直方向に低下する(39c)。一方向弁264を開くことに関連する圧力(例えば、ゼロ圧力)に対応するレベルまで力が低下した場合、一方向弁264によって、補助ピストン244が実質的に一定(例えば、ゼロ)の反力で戻ることができる。この結果、実際には第1の力レベル32と同様にわずかに変動し得る第2の力レベル36でピストンが動く。
【0048】
この力が第2の力レベルから上昇すると、再び作動液がこの力に抵抗する。この抵抗は、(垂直方向の上昇39aによって示すような)元々の位置で生じることも、或いは、例えば垂直線39cによって示すような他の位置で生じることもでき、すなわち再び力が上昇するあらゆる位置で生じることができる。
【0049】
係留索保持装置は、異なる段階を区別できる周期を通じて動き、
図3aの上側の水平線32は繰り出し段階に対応し、下側の水平線36は引き戻し段階に対応し、これらの間には力が増加又は減少することができる中間段階が存在する。理解されるように、
図3の力と位置のグラフは、力-位置の関係がそれまでの動きの前歴に依存することを示しており、すなわちヒステリシスを示す。
図3aの力-位置のグラフの場合、力-位置の組み合わせが時間の関数としてループを通じて以前の値に戻ることができる。このループの面積は、船の動きによって発生して係留索保持装置によって吸収されるエネルギーに対応する。吸収されたエネルギーは作動液を加熱し、この作動液が係留索保持装置の表面を介してさらに周囲に熱を放出する。
【0050】
なお、力の制限を強要する異なる方法は、必ずしもヒステリシスを伴うとは限らない。例えば、過圧保護部26の代わりにさらなる比例的な圧力調整部を使用するさらに一様な解決策の場合、このようなさらなる比例的な圧力部が、変位に伴う力の上昇速度をヒステリシスを伴うことなく制限する。
【0051】
2つ又はそれよりも多くの係留索保持装置14a、14bを同じ船に接続すると、各装置が発揮する力が他の装置に働く力にも影響を及ぼす。
【0052】
図3bに示す船の位置の関数としての力のグラフにおける力は、2つの係留索保持装置が同じ船の逆方向に作用した時に2つの係留索保持装置が発揮する力である。この場合、プロットされた力は逆方向に作用する。船の位置は、船が岸壁に沿って動く場合には岸壁沿いの位置とすることができ、或いは船が波止場地域の平面内で垂直軸を中心にわずかに回転する場合には回転角とすることができる。
図3bのグラフは、共通の位置スケール(position scale)(
図3aと比べて圧縮された力スケール(force scale))で示している。
【0053】
概して、係留索保持装置が発揮する力が逆方向に作用する時には、これらの差分が係留索保持装置から外部的に船に働く力の和に等しく、これを外力と呼ぶ。静止時には外力はゼロであり、係留索保持装置が発揮する力は等しくなる。
図3bの例では、この状態が、原理上、両係留索保持装置がその中間段階にある船の位置、すなわち力と位置の図における垂直方向の上昇39aが生じる位置において発生する。垂直方向の上昇は垂直であるため、係留索保持装置が発揮する実際の力は、理論的にはその最小値と最大値の間で不確定であり、両装置の力は任意の力レベルで打ち消し合うことができる。実際には、係留索保持装置間の力が船を介して間接的に伝わるのでそのようにはならない。船に加わる力は、係留索の弾性的挙動、並びに波止場地域(の防舷材)と船との間に発生する、安定した力レベルをもたらす効果があるスティックスリップ力(stick slip forces)にも依存する。
【0054】
例えば、うねり又は風に起因して一時的な外力が発生すると、船の位置が変化することがある。この外力がスティックスリップに打ち勝つと、係留索保持装置の一方に加わる力が第1のレベル32に到達して、一方の係留索保持装置が繰り出し段階に入るとともに、他方の係留索保持装置が引き戻し段階に入る。この結果、船が動くようになる。外力が衰えると、船は変位した位置に留まり、新たな位置での垂直力上昇39aが生じる。事実上、この理由は、メインシリンダからの作動液の一部が過圧保護部26のメインリザーバ260内に残るからである。
【0055】
これにより、たとえ係留索保持装置のメインシリンダ内の作動液の量が初期位置に従って準備できていなくても、両係留索保持装置が比例的な力で船を安定位置に保つように作用する位置を船が自動的に取るという点で有利な効果を得ることができる。しかしながら、実際には、外力による擾乱が、船の安定位置の望ましくない不要な反復的変化を引き起こすこともある。例えば、係留索の弾性効果に起因して係留索保持装置からの力の伝達に時間差が生じると、両係留索保持装置が逆の引き戻し/繰り出し段階に入らずに、一方が引き戻し段階に入っている間に他方が未だに中間段階、又はその前の引き戻し段階に入っていることもある。これによって安定位置が変化することがある。
【0056】
補助緩衝器の比例的実施形態
図4に、中間段階における係留索保持装置の動作中に補助緩衝器24が比例的な力をもたらす係留索保持装置の第1の実施形態を示す。従って、係留索保持装置が依然として中間段階にある間に、力の変化に比例してピストンの位置が変化することができる(本明細書で使用する「比例して(in proportion)」という表現は、力の変動と共に位置が変化することを意味するが、線形的な力-位置の関係に限定されるものではない)。
【0057】
係留された船と、船を波止場地域に結合する複数の係留索保持装置とによって形成されるシステム、及びこのシステムの動作では、これによって係留索保持装置間の相互作用が船の安定位置の変化に及ぼす影響が抑えられるという効果がもたらされる。
【0058】
図4の実施形態では、補助緩衝器24が、内部に可動補助ピストン242が設けられた補助リザーバ240を含む。補助リザーバ240は、気体及び作動液を含む。補助ピストン242は、気体と作動液とを分離する。補助ピストン242の第1の側における補助リザーバ240の第1の部分は、作動液を含んでメインシリンダ20の第1の端部に結合される。従って、作動液はメインシリンダ20と流体連通する。
【0059】
補助ピストン242の第2の側における補助リザーバ240の第2の部分は気体(例えば、窒素)を含む。補助ピストン242は、作動液及び気体がもたらす圧力から離れて、第1の部分の圧力と第2の部分の圧力とが等しくなるように補助リザーバ240内を自由に移動することができる。いくつかの実施形態では、例えば気体が占める空間が確実にメインシリンダ20への接続部よりも上方に存在する時には、補助ピストン242を省略することもできる。
【0060】
補助リザーバ240とメインシリンダ20とは流体連通しているので、これらの液圧は等しく、メインリザーバ260の圧力以上である。油圧シリンダの作動液圧と、補助リザーバの作動液圧とは等しい。任意に、補助リザーバ240とメインシリンダ20との間の流体接続部に1又は2以上の弁(図示せず)を配置することもできるが、この実施形態では使用中にこれらの弁が開き、メインシリンダ20からの過圧保護部26が許容する圧力範囲内の圧力下では自動的に閉じない。
【0061】
補助リザーバ240は、メインシリンダ20との接続の影響を除き、通常は気体及び作動液を加圧下に保持するという意味で閉鎖リザーバである。補助リザーバ240は、メインリザーバ260と同様に所定の圧力特性を有するが、補助リザーバ240の圧力特性は、(理論的には温度が等しい時に、ただし事実上あらゆる実際の温度において)それぞれのリザーバ内の作動液の体積が等しく変化してもメインリザーバ260の圧力は補助リザーバ240の圧力ほど変化しないという意味において、メインリザーバ260の圧力特性とは異なる。
【0062】
上述したように、リザーバの圧力特性は、リザーバ240、260内の気体の圧力変動の結果である。比例定数をcとすれば、わずかな体積変化dVに応答する圧力変化dPは、dP=c*dVである。理想気体の法則下では、cが、リザーバ内の気体の質量Mをその体積Vの2乗で除算したものに比例する。従って、係留索に力が加わっていない初期体積では補助リザーバ240のM/(V*V)よりも小さなメインリザーバ260のM/(V*V)を用いて所望の異なる特性を実現することができる。
【0063】
補助リザーバ240内の気体の量と補助リザーバ240の体積との組み合わせは、動作中に生じる作動液の量の変化によって気体の圧力が大きく影響されるように選択される。例えば、この組み合わせは、メインピストン22がフルストロークの状態で気体の圧力が少なくとも2倍になるように選択することができる。
【0064】
図示の実施形態では、使用中に、メインシリンダ20及び補助リザーバ240が、過圧弁262及び一方向弁264と同様に機能する弁を使用せずに、好ましくは圧力に応じて自動的に開閉する弁を介在させずに直接結合される。従って、補助リザーバ240は、過圧保護部のようなヒステリシスを引き起こさない。
【0065】
図3cは、係留索保持装置がメインピストンの位置の関数として発揮する力の図である。
図3cは、
図3aと比較することができる。
図3cは、
図3aと同様に、繰り出し段階及び引き戻し段階での動作に対応する第1及び第2のレベル32、36を示す。
図3cは、
図3aとは異なり、中間段階における比例的な変動30、34を示す。
【0066】
図3cには、力周期中のメインピストン22の力FとストロークX(位置)のグラフを示している。この周期では、例えばうねりによって船が持ち上がっている間に力の増加が生じる。最初は、メインピストン22が、この力の結果として第1の方向に動く一方で、補助リザーバ240内の補助ピストン242による気体の圧縮によって決まる反力の増加を生じる。この反力は、補助ピストン242の効果に起因して、第1の方向におけるメインピストン22の変位の関数30として増加する。
【0067】
力が所定の閾値に達すると過圧弁262が開き、この結果メインピストン22が実質的に一定の反力で動くことによって、ピストンが第1の力レベル32で動く。この動きは、力が衰えるまで、或いはピストンの動きがメインシリンダ20の内向きフランジによって定められる停止部に達するまで継続することができる。一定の第1の力レベル32を示しているが、実際のところ、この力は、圧縮に起因するメインリザーバ260内の気体の圧力の上昇と共にわずかに上昇する可能性はあるが、この効果は、十分に大きなメインリザーバ260を使用することによって所望の大きさ未満に保つことができると認識されたい。
【0068】
その後、係留索に加わる力が衰えると過圧弁262が閉じる。力は、補助ピストン242の効果に起因して、力が閾値を上回る前の、ただし変位した位置における関数30と同様の、第1の方向におけるメインピストン22の変位の関数39bになる。
【0069】
一方向弁264を開くことに関連する圧力(例えば、ゼロ圧力)に対応するレベルまで力が低下した場合、一方向弁264によって、補助ピストン244が実質的に一定(例えば、ゼロ)の反力で戻ることができる。この結果、実際には第1の力レベル32と同様にわずかに変動し得る第2の力レベル36でピストンが動く。
【0070】
この力が第2の力レベルから上昇すると、補助緩衝器24が作用し始めて、力が閾値を上回る前の、ただし変位した位置における関数30と同様の、第1の方向におけるメインピストン22の変位の関数38としての力を生じる。なお、結果として生じる周期では、メインリザーバ260内の圧力は実質的に一定のままであるのに対し、補助リザーバ240内の圧力は力と共に上下する。
【0071】
ある船が係留され、この船に第1及び第2の係留索保持装置が結合され、例えば第1及び第2の係留索保持装置が船の両端に結合されることによってこれらの係留索保持装置が逆方向に動作するようになっている場合、第1及び第2の係留索保持装置は、いずれも
図4に示すタイプのものになり得る。
【0072】
図3dに示す船の位置の関数としての力のグラフにおける力は、2つの係留索保持装置が同じ船の逆方向に作用した時に2つの係留索保持装置が発揮する力である。この場合、プロットされた力は逆方向に作用する。船の位置は、船が岸壁に沿って動く場合には岸壁沿いの位置とすることができ、或いは船が波止場地域の平面内で垂直軸を中心にわずかに回転する場合には回転角とすることができる。
【0073】
外力が生じると、船の位置が変化することがある。原理上、結果として得られる船の位置は、一方の曲線が正味の外力量だけ他方に対して垂直に動いた後に一方の曲線が交差する位置に対応する。これにより、船の位置の変動は、
図3bに示す例のものよりも小さくなる。
【0074】
船に加わる外力によって船が動き、最終的に一方の係留索保持装置が引き戻し段階に入ると、他方の係留索保持装置は、その係留索に発揮する力を増加させて船の動きに対抗する。
【0075】
圧力ブーストを含む実施形態
図5に、複数の係留索保持装置のさらに協調的な作用をもたらす係留索保持装置の実施形態を示す。同じ構成要素については、
図2のものと同じ参照番号によって示す。メインシリンダ20と補助緩衝器24の補助リザーバ240との間の作動液チャネル41内に、電子制御可能な補助弁40を追加した。さらに、この係留索保持装置は、補助弁40の制御入力部に結合された制御装置46を含む。一例として、図示の係留索保持装置はセンサ42を含み、制御ユニット46はセンサ42、43の出力部に結合される。さらに、制御ユニット46は、電子通信装置44を含む(例示として、図示の電子通信装置44は制御ユニット46に接続しているが、制御ユニット46の他の構成要素と同じユニットの一部とすることもできる)。電子通信装置44は、WIFIトランシーバなどの無線トランシーバ、UMTS受信機、又は有線接続を介して異なる係留索保持装置間で通信するための装置とすることができる。
【0076】
ある船が係留され、この船に第1及び第2の係留索保持装置が結合され、例えば第1及び第2の係留索保持装置が船の両端に結合されることによってこれらの係留索保持装置が逆方向に動作するようになっている場合、第1及び第2の係留索保持装置は、いずれも
図5に示すタイプのものになり得る。
【0077】
制御ユニット46は、補助弁40の開閉を制御するように構成される。作動液チャネル41における補助弁40の位置は、補助弁40を閉じると補助緩衝器24がメインシリンダ20内の液圧から遮断される効果を奏することを意味する。従って、補助弁40は、補助リザーバ240とメインシリンダとの間に制御可能な圧力連通をもたらすために使用される。このような圧力連通をもたらすあらゆる補助弁40を使用することができる。
【0078】
制御ユニット46は、メインシリンダ20内の圧力が比較的高い(例えば、第1の力レベル32に対応するレベルにある)時には補助弁40を閉じて、たとえメインシリンダ20内の圧力が低下した場合でもこの比較的高い圧力が補助リザーバ240内で維持されるように構成される。制御ユニット46は、その後の時点で、係留索保持装置によって相殺される方向に外力によって係留船が動いた時に再び補助弁40を開くように構成される。従って、この時点で、好ましくは繰り出し段階に入る前に、動きを低減する増加した力がもたらされる。
【0079】
図3eに、このような増加した力の例を示す。この例では、引き戻し段階36後にも依然として補助弁40が閉じており、従って力の変化に対する応答の結果、応答曲線の部分300によって示すように位置がほとんど又は全く変化していない。補助弁40を開くとさらなる力が生じ、この結果、応答曲線の部分302によって示すようにさらなる引き戻しが行われ、その後の力の変化に対する応答は
図3cのものと同様になる。破線で示すように、係留索は力の増加と共に繰り出され、力の減少と共に引き戻される。なお、補助弁40を開いた後の応答部分30を示すために使用した図示の力-位置の急勾配は例示を目的として選択したものにすぎない。例えば、実際にはこの急勾配をさらに急にすることもできる。
【0080】
制御ユニット46は、補助弁40の閉鎖を引き起こす複数の方法のうちのいずれかを使用するように構成することができる。一例として、制御ユニット46は、メインシリンダ20、補助リザーバ240又は作動液チャネル41に結合された圧力センサ43を使用して、圧力がいつ閾値を超えたかを検出し、閾値を超えた時に閉鎖を引き起こす。或いは、制御ユニット46の一部とみなすことができる、圧力が閾値を超えた時に補助弁40を閉じる機械的トリップ装置(mechanical trip device)を使用することもできる。別の選択肢として、制御ユニット46は、メインピストンの位置を測定するように構成された位置センサ32に結合し、測定された位置に応じて補助弁40の閉鎖を制御するように構成することもできる。
【0081】
同様に、補助弁40の再開放を引き起こすために船の動きを検出する複数の方法のうちのいずれかを使用することもできる。ある実施形態では、制御ユニット46を、通信装置44を介して情報を受け取り、この情報に基づいて再開放を制御するように構成することができる。制御ユニット46は、センサ42からのピストン位置及び/又は動き検知情報を読み取り、別の係留索保持装置の制御ユニットが再開放を制御できるように、導出された情報をその制御ユニットに通信装置44を介して送信するように構成することができる。
【0082】
例えば、係留索保持装置が引き戻し段階にあることを示す方向及び速度でピストンが動いていることが検知情報によって示された場合、この係留索保持装置の制御ユニット46は、このことを示す導出された情報を船の反対端に結合された係留索保持装置に送信することができ、この反対端の係留索保持装置の制御ユニット46は、この送信された情報を用いてこの係留索保持装置の補助弁40の再開放を制御することができる。別の例では、船の位置又は動きを測定する外部センサを用いて制御ユニット46に情報を送信して補助弁40の再開放を制御することができる。
【0083】
なお、通信に失敗した場合及び/又は制御ユニット46が故障した場合にも、装置は、過圧保護部26、メインピストン22及びメインシリンダ20を用いて引き続き安全な係留を行う。このような故障時には、繰り返される安定位置の移動を抑える機能のみが失われる。
【0084】
制御ユニット46は、説明した機能を実行するようにユニット46を制御するよう構成された(プログラムされた又は配線接続された)論理回路、又は制御ユニット46をそのように構成する役割を果たすプログラムを有するプログラムメモリを備えたコンピュータを含む。この選択は、装置の制御ユニット46が決定することができ、補助弁40は、電子通信装置44を介して他の係留索保持装置から受け取られたセンサデータに基づいて開閉される。しかしながら、これとは別に、他の係留索保持装置の制御装置、又は両装置の外部に存在する中央制御装置がこれらの選択の少なくとも一部を決定し、コマンドによって通信して開閉を行うこともできる。後者の場合には、いずれも制御ユニット46が電子通信装置44から受け取られたコマンドを実行して補助弁40を開閉することができれば十分となり得る。
【0085】
補助緩衝器の閾値実施形態
図6に、過圧保護部26と同様の並列な第2の一方向弁47及び第2の過圧弁48によって補助リザーバ240とメインシリンダ20とが結合された係留索保持装置の別の実施形態を示す。補助リザーバ240の圧力特性は、メインリザーバ260の圧力特性と比べて、それぞれのリザーバ内の作動液の体積が等しく変化してもメインリザーバ260内の圧力が補助リザーバ240内の圧力ほど変化しないという意味において異なる。補助リザーバ240は、メインリザーバ260よりも小さな体積を有することが好ましい。ある実施形態では、第2の過圧弁48を、過圧保護部26の過圧弁262が開くように設定された過圧よりも低い過圧で開くように設定することができる。
【0086】
基本的に、この実施形態の補助リザーバ240及びメインリザーバ260は、補助リザーバ240の圧力の方がメインリザーバ260の圧力よりも作動液の流入に応答して強く上昇する点を除いて同様に機能する。
【0087】
結果として得られる力と位置の図を
図3fに示す。第2の過圧弁48の過圧に対応する力レベルよりも高い力レベルで開始してメインリザーバが定める第1の力レベル32で終了する比例段階39aが加わっている。比例段階39aでは、位置の変化に比例して力が増加する。これによって船の位置の変動が小さくなる。
図3fに示す力-位置の急勾配は、代表的な急勾配としてではなく例示を目的として選択したものである。
【0088】
任意に、
図6に示すように、制御ユニットと、1又は2以上のセンサと、電子制御式補助弁40とを
図5の実施形態と同様に設け、補助弁40を第2の一方向弁47と直列に接続することもできる。これにより、力が第2の力レベル36まで衰えた時に、補助リザーバ240内に蓄積されたさらなる圧力を維持し、このさらなる圧力を
図5の実施形態と同様に繰り出し段階に入る前に増圧に使用して動きを抑えることが可能になる。
図5と比べて、補助リザーバ240の充填に第2の過圧弁48を使用すると、係留索保持装置が中間段階にある時に力-位置の応答が強くなるという効果が得られる。
【0089】
なお、通信に失敗した場合及び/又は制御ユニット46が故障した場合にも、装置は、過圧保護部26、メインピストン22及びメインシリンダ20を用いて引き続き安全な係留を行う。このような故障時には、繰り返される安定位置の移動を抑える機能のみが失われる。一方向弁47は、任意に制御ユニット46の制御下にある補助弁40によってその機能を実現できるため省略することもできる。補助弁40が閉じたまま又は開いたままである場合、係留索保持装置は、基本的に補助緩衝器を備えていない装置又は
図4の装置のように動作する。一方向弁47は、制御ユニット46が故障した場合にこの状態を防いで、明確に定義されたフェールセーフモードを保証する役割を果たす。
【0090】
別の実施形態では、補助弁40を戻り弁264と直列に結合することができる。このようにして同等の圧力特性を達成することができる。この実施形態では、補助リザーバの圧力-体積応答特性を使用しない時には補助リザーバを省略することもできる。しかしながら、補助リザーバの使用には、メインリザーバの動作が影響を受けないという利点がある。
【0091】
発電
図7に、補助緩衝器を用いて制御ユニット46及び通信装置44への給電に使用できる電力を生成する実施形態を示す。この目的のために、補助リザーバ240とメインシリンダ20との間に、第2の過圧弁47と並列に流体駆動型発電機70、蓄電池回路72及び作動液流路を設けて、作動液流路が流体駆動型発電機70を含むようにする。流体流路は、弁を含む流体流路に並行する漏れバイパス(leakage bypass)の役割を果たす。流体駆動型発電機70の出力は、蓄電池回路72に結合される。蓄電池回路72は充電式バッテリを含み、従来の蓄電制御回路及び/又は出力電圧制御回路(図示せず)を含むことができる。蓄電池回路72の出力は、制御ユニット46の電力入力部に結合される。流体駆動型発電機70は、流体駆動型発電機70を通る作動液の流れによって補助リザーバ240の圧力損失が徐々にしか生じないように流体流制限器を含むことができ、或いは流体駆動型発電機70と直列に流体流制限器を配置することができる。
【0092】
動作中、補助リザーバ240内の作動液がメインシリンダ20内の流体よりも高い圧力にある時には、この圧力差によって流体駆動型発電機70が電力を生成し、この電力が蓄電池回路72に蓄積される。係留索保持装置が繰り返す、船の動きによって発生して作動液によって吸収されるエネルギーを表す力-位置ループの面積は、漏れ電流によってわずかに減少する(
図3aを参照)。
【0093】
図8に、一方向弁74と、補助リザーバ240とは異なるさらなる補助リザーバ76とを追加した実施形態を示す。さらなる補助リザーバ76は、発電に使用される。補助リザーバ240は、
図6の実施形態と同様に接続される。補助リザーバ240とさらなる補助リザーバ76との間には一方向弁74が結合される。さらなる補助リザーバ76とメインシリンダ20との間には流体駆動型発電機70が結合される。一方向弁74は、さらなる補助リザーバ76内の作動液圧が補助リザーバ240よりも低い時に、補助リザーバ240からさらなる補助リザーバ76に作動液を通すように構成される。このようにして、増圧にとって十分な圧力下にある流体を補助リザーバ240から常に利用できることを保証することができる。
【0094】
なお、さらなる補助リザーバ76及び流体駆動型発電機70と、作動液圧がメインシリンダ20からの作動液によって蓄積されるが流体駆動型発電機70を通じてしか解放されないようにする弁とを組み合わせた構造は、説明したあらゆる実施形態において使用することができる。他の実施形態では、他の目的のための既存のリザーバのうちの1つ又は2つ以上をさらなる補助リザーバ76の代わりに発電用に使用することもできる。実施形態では、メインシリンダ20から補助リザーバ240への作動液の流れを使用して発電機を駆動することができる。上述したように、いくつかの実施形態では、補助リザーバの圧力-体積応答特性を使用しない時には補助リザーバを省略し、代わりに補助リザーバ240に結合された追加要素をメインリザーバ260に結合することもできる。補助リザーバの使用には、メインリザーバの動作が影響を受けないという利点がある。
【0095】
係留索保持装置の実施形態には複数の弁を示しているが、係留索保持装置内にはさらに多くの弁が存在することもできる。例えば、油圧回路の選択可能な部分を遮断又は開放するための手動弁、又は所望の動作に寄与しない流れの可能性を防ぐためのさらなる一方向弁を設けることができる。作動液回路の構成要素は、全て単一の接続部を介してメインシリンダに接続されるように示しているが、これらは異なる接続部を介して接続することもできる。過圧弁のうちの1つ又は2つ以上が開く過圧閾値を制御ユニットが制御できるようにする過圧調整アクチュエータなどのさらなる制御アクチュエータを設けることもできる。同様に、例えば異なる作動液リザーバ内の圧力をモニタするためのさらなる圧力センサが存在することもできる。複数の弁の機能は、センサ入力に応じて、制御ユニットによる制御を用いて実装することができる。
【0096】
油圧回路によって定められる圧力に抗してメインシリンダからメインピストンを引き出すように係留索の引張力が作用する実施形態を示したが、代わりに係留索からの引張力を、油圧回路によって定められる圧力に抗してメインピストンをメインシリンダ内に押し込むように作用する力に変換する伝達機構を使用することもできる。この場合、油圧回路は、図示の端部以外のメインシリンダの端部に接続すべきである。
【符号の説明】
【0097】
20 メインシリンダ
22 メインピストン
23 ピストンロッド
24 補助緩衝器
26 過圧保護部
260 メインリザーバ
262 過圧弁
264 一方向弁