(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】エキソソームの亜集団の定量および神経変性障害の診断
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20220711BHJP
【FI】
G01N33/53 D
(21)【出願番号】P 2019526214
(86)(22)【出願日】2017-11-16
(86)【国際出願番号】 US2017062112
(87)【国際公開番号】W WO2018094120
(87)【国際公開日】2018-05-24
【審査請求日】2020-11-13
(32)【優先日】2016-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516122472
【氏名又は名称】ナノソミックス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NanoSomiX, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】マサト・ミツハシ
【審査官】白形 優依
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-535283(JP,A)
【文献】米国特許第08999655(US,B2)
【文献】特表2004-532410(JP,A)
【文献】国際公開第2015/200851(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/099925(WO,A1)
【文献】KO, J. et al.,Smartphone-enabled optofluidic exosome diagnostic for concussion recovery,Scientific reports,2016年08月08日,Vol.6, 31215,pp.1-12
【文献】GOETZL, E. J. et al.,Cargo proteins of plasma astrocyte-derived exosomes in Alzheimer's disease,FASEB Journal,2016年08月10日,Vol.30, no.11,pp.3853-3859
【文献】LUO, H. et al.,Effects of pramipexole treatment on the α-synuclein content in serum exosomes of Parkinson's disease patients,Experimental and Therapeutic Medicine,2016年06月21日,Vol.12, No.3,pp.1373-1376
【文献】GOETZL, E. J. et al.,Altered lysosomal proteins in neural-derived plasma exosomes in preclinical Alzheimer disease,Neurology,2015年07月07日,Vol.85, No.1,pp.40-47
【文献】KRAMER-ALBERS, E. et al.,Oligodendrocytes secrete exosomes containing major myelin and stress-protective proteins: Trophic support for axons?,Proteomics Clinical Applications,2007年11月02日,Vol.1, No.11,pp.1446-1461
【文献】GOSSELIN, R. et al.,Extracellular microvesicles from astrocyres contain functional glutamate transporters: regulation by protein kinase C and cell activation,frontiers in Cellular Neuroscience,2013年12月10日,Vol.7, Article 251,pp.1-15
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 - 33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
医中誌WEB
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料において二重陽性であるエキソソームを検出することを含む方法であって、
前記エキソソームがCD81、CD63、およびCD9からなる群から選択される1以上のエキソソームバイオマーカーについて陽性であり、かつ
前記エキソソームが
ドーパミン受容体(DR1)について陽性であり、それにより、
前記試料における脳由来のエキソソームのレベルを定量する、方法。
【請求項2】
付着された少なくとも1つのキャプチャー試薬を含む固体支持体上
で前記エキソソームを捕捉することをさらに含み、ここで、
前記キャプチャー試薬がCD81、CD63、CD9からなる群からの少なくとも1つのバイオマーカーに結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
付着された少なくとも1つのキャプチャー試薬を含む固体支持体上
で前記エキソソームを捕捉することをさらに含み、ここで、
前記キャプチャー試薬が
DR1に結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記生体試料が、全血、血清、血漿、尿、間質液、腹水、子宮頸部スワブ、涙、唾液、頬スワブ、皮膚、脳組織、および脳脊髄液からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記エキソソームが、ニューロン由来のエキソソーム、アストロサイト由来のエキソソーム、オリゴデンドロサイト由来のエキソソーム、およびミクログリア由来のエキソソームからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ニューロン由来のエキソソームが、シナプス前ドーパミン作動性ニューロン由来のエキソソーム、シナプス後ドーパミン作動性、セロトニン作動性、GABA作動性、グルタミン酸作動性、およびオピオイドニューロン由来のエキソソームからなる群から選択される、請求項
5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、その全体が出典明示により本明細書に組み込まれる、2016年11月16日に出願された米国仮特許出願第62/422,889号の優先権を主張する。
【0002】
技術分野
本発明は、エキソソームの亜集団を定量するための方法および神経変性障害(例えばアルツハイマー病)のための診断および予後判定方法に関する。本発明はまた、エキソソームの亜集団を定量するための組成物並びにアルツハイマー病および他の神経変性障害を治療することにおいて有用な組成物および方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
エキソソームは、例えば血漿などの生体試料に存在し、かつ病状(例えばアルツハイマー病)を診断するために使用されてもよい様々なバイオマーカーを保有する。血漿などの生体試料におけるエキソソームの正常なレベルは確立されていない。したがって、生体試料におけるエキソソームを定量する方法が当技術分野で必要とされている。さらに、540万人以上のアメリカ人および世界では3500万人が、認知症の最も一般的な形態であるアルツハイマー病を有する。現在、アルツハイマー病を診断する唯一の確実な方法は、患者の死亡後の脳組織の直接検査によるものである。医師は、アルツハイマー病を有する疑いのある患者における疾患を診断するために、脳イメージング、行動評価、精神医学的検査および他の手段を使用するが、いずれも高い正確性を示さず、かつ多くはコストがかかるか、実用的ではない。
【0004】
従って、エキソソームを定量するための方法およびアルツハイマー病および他の神経変性障害を診断するためのバイオマーカーおよび方法が当技術分野で必要とされている。さらに、エキソソームを定量するための組成物、ならびにアルツハイマー病および他の神経変性障害を治療するために有用な組成物および方法が、当技術分野で必要とされている。本発明は、アルツハイマー病および他の神経変性障害を診断するための、正確で、非侵襲的な方法を提供することによって、この必要性を満たす。本発明は、さらに、生体試料におけるエキソソームを定量するための新規な方法、アッセイ、キット、および組成物を提供する。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、以下の工程:(i)エキソソームを含む生体試料を得ること、および(ii)試料を抗体と接触させること、およびバイオマーカーおよび抗体間の結合を検出することによりバイオマーカーが試料に存在するかどうかを検出すること、ここでバイオマーカーは、シナプトソーム関連タンパク質25(SNAP25)、興奮性アミノ酸トランスポーター1(EAAT1)、オリゴデンドロサイト-ミエリン糖タンパク質(OMGP)、ドーパミン受容体1(DR1)、セロトニン受容体2A(SR2A)、セロトニン受容体2C(SR2C)、ガンマ-アミノ酪酸(GABA)B1受容体、グルタミン酸受容体-1(GluR-1)、オピオイド受容体(KOR)、睡眠ペプチドオレキシン受容体(OR)、およびドーパミントランスポーター(DAT)からなる群から選択される、を含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、抗体は、抗SNAP25抗体、抗EAAT1抗体、抗OMGP抗体、抗DR1抗体、抗SR2A抗体、抗SR2C抗体、抗GABAB1抗体、抗GluR-1抗体、抗KOR抗体、抗OR抗体、および抗DAT抗体からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、CD81、CD63、およびCD9からなる群から選択されるエキソソームバイオマーカーである。他の実施形態ではバイオマーカーは、SNAP25、EAAT1、OMGP、DR1、SR2A、SR2C、GABAB1、GluR-1、KOR、OR、およびDATからなる群から選択される神経バイオマーカーである。他の実施形態では、バイオマーカーは、ドーパミン、セロトニン、GABA、グルタミン酸、オピオイド、オレキシン、アドレナリン、ノルアドレナリン、アセチルコリン、およびドーパミントランスポーターについての受容体からなる群から選択される。他の実施形態では、該方法は、生体試料における1以上のバイオマーカーのレベルを定量することをさらに含む。さらに他の実施形態では、1以上のバイオマーカーのレベルが生体試料におけるエキソソームの量を決定する。他の実施形態では、エキソソームは、ニューロン由来のエキソソーム、アストロサイト由来のエキソソーム、オリゴデンドロサイト由来のエキソソーム、およびミクログリア由来のエキソソームからなる群から選択される。他の実施形態では、エキソソームは、シナプス前ドーパミン作動性ニューロン由来のエキソソーム、シナプス後ドーパミン作動性ニューロン由来のエキソソーム、セロトニン作動性ニューロン由来のエキソソーム、GABA作動性ニューロン由来のエキソソーム、グルタミン酸作動性ニューロン由来のエキソソーム、およびオピオイドニューロン由来のエキソソームからなる群から選択される。さらなる他の実施形態では、対象は神経変性障害を有すると診断され、または疑われている。他の実施形態では、神経変性障害は、以下からなる群から選択される:アルツハイマー病(AD)、血管疾患性認知症、前頭側頭型認知症(FTD)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、進行性核上性麻痺(PSP)、レビー小体型認知症、神経原線維変化優位型老年期認知症、ピック病(PiD)、嗜銀顆粒病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、他の運動ニューロン疾患、グアムパーキンソン認知症複合、FTDP-17、リティコ-ボディグ病、多発性硬化症、外傷性脳損傷(TBI)、およびパーキンソン病。いくつかの実施形態では、生体試料は、全血、血清、血漿、尿、間質液、腹水、子宮頸部スワブ、涙、唾液、頬スワブ、皮膚、脳組織、および脳脊髄液からなる群から選択される。
【0006】
本発明は、以下:(i)エキソソームを含む生体試料を得ること、(ii)試料を1以上の抗体と接触させること、および1以上のエキソソームバイオマーカーおよび1以上の抗体間の結合を検出することにより、1以上のエキソソームバイオマーカーが試料に存在するかどうかを検出すること、ここで、1以上のエキソソームバイオマーカーは、CD81、CD63、およびCD9からなる群から選択される、および(iii)試料を1以上の抗体と接触させること、および1以上の神経バイオマーカーおよび1以上の抗体間の結合を検出することにより、1以上の神経バイオマーカーが試料に存在するかどうかを検出すること、ここで1以上の神経バイオマーカーは、SNAP25、EAAT1、OMGP、DR1、SR2A、SR2C、GABAB1、GluR-1、KOR、OR、およびDATからなる群から選択される、を含む方法を提供する。
【0007】
他の実施形態では、本発明は、以下:(i)エキソソームを含む生体試料を得ること、および(ii)試料における少なくとも1つのエキソソームバイオマーカーおよび少なくとも1つの神経バイオマーカーの量を決定すること。いくつかの実施形態では、エキソソームバイオマーカーは、CD81、CD63、およびCD9からなる群から選択される。他の実施形態では、神経バイオマーカーは、SNAP25、EAAT1、OMGP、DR1、SR2A、SR2C、GABAB1、GluR-1、KOR、OR、およびDATからなる群から選択される、を含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、エキソソームバイオマーカーはCD81であり、かつ神経バイオマーカーはSNAP25である。いくつかの実施形態では、エキソソームバイオマーカーはCD81であり、かつ神経バイオマーカーはEAAT1である。いくつかの実施形態では、エキソソームバイオマーカーはCD81であり、かつ神経バイオマーカーはOMGPである。いくつかの実施形態では、エキソソームバイオマーカーはCD81であり、かつ神経バイオマーカーはDR1である。いくつかの実施形態では、エキソソームバイオマーカーはCD81であり、かつ神経バイオマーカーはSR2Aである。いくつかの実施形態では、エキソソームバイオマーカーはCD81であり、かつ神経バイオマーカーはSR2Cである。いくつかの実施形態では、エキソソームバイオマーカーはCD81であり、かつ神経バイオマーカーはGABAB1である。いくつかの実施形態では、エキソソームバイオマーカーはCD81であり、かつ神経バイオマーカーはGluR-1である。いくつかの実施形態では、エキソソームバイオマーカーはCD81であり、かつ神経バイオマーカーはKORである。いくつかの実施形態では、エキソソームバイオマーカーはCD81であり、かつ神経バイオマーカーはORである。いくつかの実施形態では、エキソソームバイオマーカーはCD81であり、かつ神経バイオマーカーはDATである。
【0008】
他の実施形態では、本発明は、生体試料において二重陽性であるエキソソームのレベルを検出することを含む、生体試料における脳由来のエキソソームのレベルを決定するための方法を提供し、ここで、エキソソームが、少なくとも1つのエキソソームバイオマーカーについて陽性であり、かつ少なくとも1つの神経バイオマーカーについて陽性であり、それにより脳由来のエキソソームのレベルを決定する。いくつかの実施形態では、エキソソームマーカーは、CD81、CD63、およびCD9からなる群から選択される。他の実施形態では、神経バイオマーカーは、ドーパミン、セロトニン、GABA、グルタミン酸、オピオイド、オレキシン、アドレナリン、ノルアドレナリン、アセチルコリン、およびドーパミントランスポーターについての受容体からなる群から選択される。他の実施形態では、神経バイオマーカーは、SNAP25、EAAT1、OMGP、DR1、SR2A、SR2C、GABAB1、GluR-1、KOR、OR、およびDATからなる群から選択される。本発明はまた、生体試料において二重陽性であるエキソソームのレベルを検出すること、ここで、エキソソームが、少なくとも1つのエキソソームバイオマーカーについて陽性であり、かつ少なくとも1つの神経バイオマーカーについて陽性であり、それにより脳由来のエキソソームのレベルを決定すること、を含む生体試料における脳由来のエキソソームを単離する方法を提供する。いくつかの実施形態では、エキソソームマーカーは、CD81、CD63、およびCD9からなる群から選択される。他の実施形態では、神経バイオマーカーは、SNAP25、EAAT1、OMGP、DR1、SR2A、SR2C、GABAB1、GluR-1、KOR、OR、およびDATからなる群から選択される。
【0009】
本発明はまた、(i)エキソソームを含む生体試料を得ること、(ii)試料を処理して試料をエキソソームについて単離するまたは濃縮すること、および(iii)生体試料における1以上のバイオマーカーのレベルを検出することを含む方法であって、ここで1以上のバイオマーカーの少なくとも1つは、SNAP25、EAAT1、OMGP、DR1、SR2A、SR2C、GABAB1、GluR-1、KOR、OR、およびDATからなる群から選択される方法を提供する。いくつかの実施形態では、生体試料からエキソソームを濃縮することまたは単離することは、以下を含む:生体試料に存在するエキソソームが薬剤に結合してエキソソーム-薬剤複合体を形成する条件下で生体試料を薬剤と接触させること;およびエキソソーム-薬剤複合体からエキソソームを単離して、エキソソームを含有する試料を得ること、ここで、試料に存在するエキソソームの純度が、生体試料に存在するエキソソームの純度より大きい。他の実施形態では、薬剤は、抗CD81抗体、抗CD63抗体、抗CD9抗体または抗CD171抗体である。他の実施形態では、薬剤は、抗SNAP25抗体、抗EAAT1抗体、抗OMGP抗体、抗DR1抗体、抗SR2A抗体、抗SR2C抗体、抗GABAB1抗体、抗GluR-1抗体、抗KOR抗体、抗OR抗体、および抗DAT抗体である。いくつかの実施形態では、薬剤は固体支持体上に固定化される。他の実施形態では、エキソソームは、ニューロン由来のエキソソーム、アストロサイト由来のエキソソーム、オリゴデンドロサイト由来のエキソソーム、およびミクログリア由来のエキソソームからなる群から選択される。さらに他の実施形態では、対象は神経変性障害を有すると診断され、または疑われている。いくつかの実施形態では、神経変性障害は、以下からなる群から選択される:アルツハイマー病(AD)、血管疾患性認知症、前頭側頭型認知症(FTD)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、進行性核上性麻痺(PSP)、レビー小体型認知症、神経原線維変化優位型老年期認知症、ピック病(PiD)、嗜銀顆粒病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、他の運動ニューロン疾患、グアムパーキンソン認知症複合、FTDP-17、リティコ-ボディグ病、多発性硬化症、外傷性脳損傷(TBI)、およびパーキンソン病。他の実施形態では、生体試料は、全血、血清、血漿、尿、間質液、腹水、子宮頸部スワブ、涙、唾液、頬スワブ、皮膚、脳組織、および脳脊髄液からなる群から選択される。
【0010】
本発明は、生体試料におけるエキソソームを定量するバイオマーカーのセットを提供し、ここでバイオマーカーは、SNAP25、EAAT1、OMGP、DR1、SR2A、SR2C、GABAB1、GluR-1、KOR、OR、およびDATからなる群から選択される。他の実施形態では、本発明は、生体試料におけるエキソソームを定量するバイオマーカーのセットを提供し、ここでバイオマーカーは、ドーパミン受容体、セロトニン受容体、GABA受容体、グルタミン酸受容体、オピオイド受容体、オレキシン受容体、アドレナリン受容体、ノルアドレナリン受容体、アセチルコリン受容体、およびドーパミントランスポーターからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、セットにおけるバイオマーカーのレベルはアッセイされ;かつバイオマーカーレベルが生体試料におけるエキソソームの量を決定する。他の実施形態では、エキソソームは、ニューロン由来のエキソソーム、アストロサイト由来のエキソソーム、オリゴデンドロサイト由来のエキソソーム、およびミクログリア由来のエキソソームからなる群から選択される。さらに他の実施形態では、生体試料は、全血、血清、血漿、尿、間質液、腹水、子宮頸部スワブ、涙、唾液、頬スワブ、皮膚、脳組織、および脳脊髄液からなる群から選択される。
【0011】
他の実施形態では、本発明は、対象における神経変性障害を診断する、もしくは予後判定する、神経変性障害のリスクがある対象を同定する、または治療レジメンを処方する、または神経変性障害を有する対象における治療による利益を予想するためのキットであって、該キットがエキソソームに特異的に結合する1以上の薬剤、バイオマーカーに特異的に結合する1以上の薬剤、生体試料を収集し、かつ/または保持するための1以上の容器、およびその使用のための指示書を含み、ここでバイオマーカーは、SNAP25、EAAT1、OMGP、DR1、SR2A、SR2C、GABAB1、GluR-1、KOR、OR、およびDATからなる群から選択される、キットを提供する。いくつかの実施形態では、薬剤は、抗SNAP25抗体、抗EAAT1抗体、抗OMGP抗体、抗DR1抗体、抗SR2A抗体、抗SR2C抗体、抗GABAB1抗体、抗GluR-1抗体、抗KOR抗体、抗OR抗体、および抗DAT抗体からなる群から選択される。他の実施形態では、エキソソームは、ニューロン由来のエキソソーム、アストロサイト由来のエキソソーム、オリゴデンドロサイト由来のエキソソーム、およびミクログリア由来のエキソソームからなる群から選択される。さらなる他の実施形態では、神経変性障害は、以下からなる群から選択される:アルツハイマー病(AD)、血管疾患性認知症、前頭側頭型認知症(FTD)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、進行性核上性麻痺(PSP)、レビー小体型認知症、神経原線維変化優位型老年期認知症、ピック病(PiD)、嗜銀顆粒病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、他の運動ニューロン疾患、グアムパーキンソン認知症複合、FTDP-17、リティコ-ボディグ病、多発性硬化症、外傷性脳損傷(TBI)、およびパーキンソン病。
【0012】
他の実施形態では、本発明は、対象における神経変性障害を診断する、もしくは予後判定する、神経変性障害のリスクがある対象を同定する、または治療レジメンを処方する、または神経変性障害を有する対象における治療による利益を予想する方法であって:対象からの生体試料における1以上のバイオマーカーのレベルをアッセイすること;およびバイオマーカーのレベルに基づいて、対象における神経変性障害を診断すること、もしくは予後判定すること、神経変性障害のリスクがある対象を同定すること、または治療レジメンを処方すること、または神経変性障害を有する対象における治療による利益を予想すること、ここで1以上のバイオマーカーの少なくとも1つは、SNAP25、EAAT1、OMGP、DR1、SR2A、SR2C、GABAB1、GluR-1、KOR、OR、およびDATからなる群から選択される、を含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、生体試料における1以上のバイオマーカーのレベルは、コントロール試料における1以上のバイオマーカーのレベルと比較され、ここで生体試料の1以上のバイオマーカーのレベルはコントロール試料と比較して上昇している。いくつかの実施形態では、生体試料における1以上のバイオマーカーのレベルは、コントロール試料における1以上のバイオマーカーのレベルと比較され、ここで、生体試料の1以上のバイオマーカーのレベルは、コントロール試料と比較して減少している。他の実施形態では、神経変性障害は、以下からなる群から選択される:アルツハイマー病(AD)、血管疾患性認知症、前頭側頭型認知症(FTD)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、進行性核上性麻痺(PSP)、レビー小体型認知症、神経原線維変化優位型老年期認知症、ピック病(PiD)、嗜銀顆粒病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、他の運動ニューロン疾患、グアムパーキンソン認知症複合、FTDP-17、リティコ-ボディグ病、多発性硬化症、外傷性脳損傷(TBI)、およびパーキンソン病。他の実施形態では、生体試料は、全血、血清、血漿、尿、間質液、腹水、子宮頸部スワブ、涙、唾液、頬スワブ、皮膚、脳組織、および脳脊髄液からなる群から選択される。他の実施形態では、該方法は、生体試料からエキソソームを単離することをさらに含む。或る実施形態では、単離されたエキソソームは、ニューロン由来のエキソソーム、アストロサイト由来のエキソソーム、オリゴデンドロサイト由来のエキソソーム、およびミクログリア由来のエキソソームからなる群から選択される。他の実施形態では、エキソソームは、シナプス前ドーパミン作動性ニューロン由来のエキソソーム、シナプス後ドーパミン作動性ニューロン由来のエキソソーム、セロトニン作動性ニューロン由来のエキソソーム、GABA作動性ニューロン由来のエキソソーム、グルタミン酸作動性ニューロン由来のエキソソーム、およびオピオイドニューロン由来のエキソソームからなる群から選択される。他の実施形態では、1以上のバイオマーカーのレベルは1以上のバイオマーカーのタンパク質、mRNA、またはmiRNAレベルである。いくつかの態様では、本発明の方法は、神経変性障害の前臨床から症状発現までの移行を予想することをさらに含む。他の態様では、本発明の方法は、神経変性障害のアウトカムまたは悪化を予想することをさらに含む。さらなる他の態様では、本発明の方法は、アルツハイマー病を予防することを含む。いくつかの態様では、本発明の方法は、軽度の認知機能障害からアルツハイマー病認知症への転換を予想することをさらに含む。他の実施形態では、該方法は、生体試料における1以上のバイオマーカーのレベルを測定することをさらに含み、ここで1以上のバイオマーカーの少なくとも1つは、SNAP25、EAAT1、OMGP、DR1、SR2A、SR2C、GABAB1、GluR-1、KOR、OR、およびDATからなる群から選択される。
【0013】
本発明はまた、対象における神経変性障害を診断する、もしくは予後判定する、神経変性障害のリスクがある対象を同定する、または治療レジメンを処方する、または神経変性障害を有する対象における治療による利益を予想する方法であって、対象から得られる生体試料からエキソソームを単離すること;およびエキソソームにおける1以上のバイオマーカーのレベルを決定することを含み;ここで、コントロール試料における1以上のバイオマーカーのレベルと比較した試料における1以上のバイオマーカーの上昇したレベルは神経変性障害を示し、ここで1以上のバイオマーカーの少なくとも1つは、SNAP25、EAAT1、OMGP、DR1、SR2A、SR2C、GABAB1、GluR-1、KOR、OR、およびDATからなる群から選択される、方法を提供する。いくつかの実施形態では、生体試料における1以上のバイオマーカーのレベルは、コントロール試料と比較して減少している。いくつかの実施形態では、神経変性障害は、以下からなる群から選択される:アルツハイマー病(AD)、血管疾患性認知症、前頭側頭型認知症(FTD)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、進行性核上性麻痺(PSP)、レビー小体型認知症、神経原線維変化優位型老年期認知症、ピック病(PiD)、嗜銀顆粒病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、他の運動ニューロン疾患、グアムパーキンソン認知症複合、FTDP-17、リティコ-ボディグ病、多発性硬化症、外傷性脳損傷(TBI)、およびパーキンソン病。他の実施形態では、生体試料は、全血、血清、血漿、尿、間質液、腹水、子宮頸部スワブ、涙、唾液、頬スワブ、皮膚、脳組織、および脳脊髄液からなる群から選択される。さらに他の実施形態では、単離されたエキソソームは、ニューロン由来のエキソソーム、アストロサイト由来のエキソソーム、オリゴデンドロサイト由来のエキソソーム、およびミクログリア由来のエキソソームからなる群から選択される。他の実施形態では、生体試料からエキソソームを単離することは、以下を含む:生体試料に存在するエキソソームが薬剤に結合してエキソソーム-薬剤複合体を形成する条件下で生体試料を薬剤と接触させること;およびエキソソーム-薬剤複合体からエキソソームを単離して、エキソソームを含有する試料を得ること、ここで、試料に存在するエキソソームの純度が、生体試料に存在するエキソソームの純度より大きい。他の実施形態では、生体試料からエキソソームを単離することは、以下を含む:生体試料からエキソソームを単離してエキソソーム試料を得ること;エキソソーム試料に存在するエキソソームが薬剤に結合してエキソソーム-薬剤複合体を形成する条件下でエキソソーム試料を薬剤と接触させること;およびエキソソーム-薬剤複合体からエキソソームを単離して、エキソソームを含有する試料を得ること、ここで、試料に存在するエキソソームの純度が、生体試料に存在するエキソソームの純度より大きい。特定の態様では、薬剤は、抗体、レクチン、リガンド、可溶性受容体、結合タンパク質、またはオリゴヌクレオチドである。他の態様では、抗体はポリクローナルまたはモノクローナル抗体である。さらなる他の態様では、抗体は、モノクローナルNCAM抗体である。他の態様では、抗体は、モノクローナル抗ヒトNCAM抗体である。さらなる他の態様では、抗体は、モノクローナルCD171抗体である。他の態様では、抗体は、モノクローナル抗ヒトCD171抗体である。他の態様では、抗体は、モノクローナルCD9抗体である。他の態様では、抗体は、モノクローナルCD63抗体である。他の態様では、抗体は、モノクローナルCD81抗体である。他の態様では、抗体はニューロン特異的エノラーゼ抗体である。他の態様では、抗体は、モノクローナルニューロン特異的エノラーゼ抗体である。他の態様では、抗体は、モノクローナルSNAP25抗体である。他の態様では、抗体は、モノクローナルEAAT1抗体である。他の態様では、抗体は、モノクローナルOMGP抗体である。他の態様では、抗体は、モノクローナルDR1抗体である。他の態様では、抗体は、モノクローナルSR2A抗体である。他の態様では、抗体は、モノクローナルSR2C抗体である。他の態様では、抗体は、モノクローナルGABAB1抗体である。他の態様では、抗体は、モノクローナルGluR-1抗体である。他の態様では、抗体は、モノクローナルKOR抗体である。他の態様では、抗体は、モノクローナルOR抗体である。他の態様では、抗体は、モノクローナルDAT抗体である。他の態様では、抗体は、モノクローナルDAT抗体である。他の態様では、抗体は、モノクローナルドーパミン受容体抗体である。他の態様では、抗体は、モノクローナルセロトニン受容体抗体である。他の態様では、抗体は、モノクローナルGABA受容体抗体である。他の態様では、抗体は、モノクローナルグルタミン酸受容体抗体である。他の態様では、抗体は、モノクローナルオピオイド受容体抗体である。他の態様では、抗体は、モノクローナルオレキシン受容体抗体である。他の態様では、抗体は、モノクローナルアドレナリン受容体抗体である。他の態様では、抗体は、モノクローナルノルアドレナリン受容体抗体である。他の態様では、抗体は、モノクローナルアセチルコリン受容体抗体である。他の態様では、抗体は、モノクローナルドーパミントランスポーター抗体である。他の実施形態では、1以上のバイオマーカーのレベルは1以上のバイオマーカーのタンパク質、mRNA、またはmiRNAレベルである。
【0014】
本発明は、対象における神経変性障害を診断する、もしくは予後判定する、神経変性障害のリスクがある対象を同定する、または治療レジメンを処方する、または神経変性障害を有する対象における治療による利益を予想する方法であって:
対象から生体試料を得ること;エキソソームに特異的な抗体を試料に適用すること、ここでエキソソームの存在は抗体-エキソソーム複合体を作製する;抗体-エキソソーム複合体を単離すること;抗体-エキソソーム複合体における1以上のバイオマーカーのレベルをアッセイすること;および1以上のバイオマーカーのレベルに基づいて対象における神経変性障害を診断する、もしくは予後判定する、神経変性障害のリスクがある対象を同定する、または治療レジメンを処方する、または神経変性障害を有する対象における治療による利益を予想すること、を含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、抗体-エキソソーム複合体は固相上に作製される。さらなる他の実施形態では、該方法は、抗体-エキソソーム複合体からエキソソームを放出させることをさらに含む。或る実施形態では、固相は非磁性ビーズ、磁性ビーズ、アガロース、またはセファロースである。他の実施形態では、エキソソームは抗体-エキソソーム複合体を3.5-1.5間の低pHにさらすことにより放出される。さらなる他の実施形態では、放出されたエキソソームは、高pH溶液を加えることにより中和される。他の実施形態では、放出されたエキソソームは、放出されたエキソソームを溶解液とインキュベートすることにより溶解される。さらに他の実施形態では、溶解液はプロテアーゼおよびホスファターゼについての阻害剤を含有する。他の実施形態では、1以上のバイオマーカーのレベルは、エキソソームの数またはエキソソームバイオマーカーの値により正規化される。或る実施形態では、抗体はポリクローナルまたはモノクローナル抗体である。他の実施形態では、抗体は、モノクローナルNCAM抗体である。他の実施形態では、抗体は、モノクローナル抗ヒトNCAM抗体である。さらなる他の態様では、抗体は、モノクローナルCD171抗体である。他の態様では、抗体は、モノクローナル抗ヒトCD171抗体である。他の態様では、抗体は、モノクローナルCD9抗体である。他の態様では、抗体は、モノクローナルCD63抗体である。他の態様では、抗体は、モノクローナルCD81抗体である。他の態様では、抗体はニューロン特異的エノラーゼ抗体である。他の態様では、抗体は、モノクローナルSNAP25抗体である。他の態様では、抗体は、モノクローナルEAAT1抗体である。他の態様では、抗体は、モノクローナルOMGP抗体である。他の態様では、抗体は、モノクローナルニューロン特異的エノラーゼ抗体である。いくつかの実施形態では、エキソソームは、ニューロン由来のエキソソーム、アストロサイト由来のエキソソーム、オリゴデンドロサイト由来のエキソソーム、およびミクログリア由来のエキソソームからなる群から選択される。さらなる他の実施形態では、生体試料は、全血、血清、血漿、尿、間質液、腹水、子宮頸部スワブ、涙、唾液、頬スワブ、皮膚、脳組織、および脳脊髄液からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、神経変性障害は、以下からなる群から選択される:アルツハイマー病(AD)、血管疾患性認知症、前頭側頭型認知症(FTD)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、進行性核上性麻痺(PSP)、レビー小体型認知症、神経原線維変化優位型老年期認知症、ピック病(PiD)、嗜銀顆粒病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、他の運動ニューロン疾患、グアムパーキンソン認知症複合、FTDP-17、リティコ-ボディグ病、多発性硬化症、外傷性脳損傷(TBI)、およびパーキンソン病。他の実施形態では、1以上のバイオマーカーのレベルは1以上のバイオマーカーのタンパク質、mRNA、またはmiRNAレベルである。
【0015】
本発明は、1以上のバイオマーカーを含む対象の神経変性障害の状態を評価するためのバイオマーカーのセットを提供し、ここでセットにおけるバイオマーカーのレベルはアッセイされ;かつバイオマーカーレベルは少なくとも40%特異度で対象の神経変性障害の状態を決定する、ここで少なくとも1以上のバイオマーカーのセットは、SNAP25、EAAT1、OMGP、DR1、SR2A、SR2C、GABAB1、GluR-1、KOR、OR、およびDATからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、バイオマーカーレベルは、少なくとも40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、または100%特異度で対象の神経変性障害の状態を決定する。いくつかの実施形態では、生体試料は、全血、血清、血漿、尿、間質液、腹水、子宮頸部スワブ、涙、唾液、頬スワブ、皮膚、脳脊髄液からなる群から選択される。他の実施形態では、神経変性障害は、以下からなる群から選択される:アルツハイマー病(AD)、血管疾患性認知症、前頭側頭型認知症(FTD)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、進行性核上性麻痺(PSP)、レビー小体型認知症、神経原線維変化優位型老年期認知症、ピック病(PiD)、嗜銀顆粒病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、他の運動ニューロン疾患、グアムパーキンソン認知症複合、FTDP-17、リティコ-ボディグ病、多発性硬化症、外傷性脳損傷(TBI)、およびパーキンソン病。さらなる他の実施形態では、該方法は、試料からのエキソソームにおけるバイオマーカーのレベルをアッセイすることをさらに含む。他の実施形態では、本発明のバイオマーカーのセットは、SNAP25、EAAT1、OMGP、DR1、SR2A、SR2C、GABAB1、GluR-1、KOR、OR、およびDATからなる群から選択される1以上のバイオマーカーをさらに含む。
【0016】
本発明はまた、対象における神経変性障害を診断する、もしくは予後判定する、神経変性障害のリスクがある対象を同定する、または治療レジメンを処方する、または神経変性障害を有する対象における治療による利益を予想するためのキットであって、該キットがエキソソームに特異的に結合する1以上の薬剤、バイオマーカーmRNAまたはmiRNAを検出するための1以上のプローブまたはプライマー、生体試料を収集し、かつ/または保持するための1以上の容器、およびその使用のための指示書を含み、ここで、神経変性障害は変化したバイオマーカーレベルと関連し、かつここでバイオマーカーは、SNAP25、EAAT1、OMGP、DR1、SR2A、SR2C、GABAB1、GluR-1、KOR、OR、およびDATからなる群から選択される、キットを提供する。いくつかの実施形態では、薬剤はポリクローナルまたはモノクローナル抗体である。他の実施形態では、エキソソームは、ニューロン由来のエキソソーム、アストロサイト由来のエキソソーム、オリゴデンドロサイト由来のエキソソーム、およびミクログリア由来のエキソソームからなる群から選択される。さらなる他の実施形態では、神経変性障害は、以下からなる群から選択される:アルツハイマー病(AD)、血管疾患性認知症、前頭側頭型認知症(FTD)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、進行性核上性麻痺(PSP)、レビー小体型認知症、神経原線維変化優位型老年期認知症、ピック病(PiD)、嗜銀顆粒病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、他の運動ニューロン疾患、グアムパーキンソン認知症複合、FTDP-17、リティコ-ボディグ病、多発性硬化症、外傷性脳損傷(TBI)、およびパーキンソン病。さらに他の実施形態では、生体試料は、全血、血清、血漿、尿、間質液、腹水、子宮頸部スワブ、涙、唾液、頬スワブ、皮膚、脳脊髄液からなる群から選択される。他の実施形態では、キットは、試料におけるバイオマーカーレベルを分析するためのコンピューターモデルまたはアルゴリズムをさらに含む。いくつかの実施形態では、本発明のキットは、SNAP25、EAAT1、OMGP、DR1、SR2A、SR2C、GABAB1、GluR-1、KOR、OR、およびDATからなる群から選択される1以上のバイオマーカーに特異的に結合する1以上の薬剤をさらに含む。
【0017】
他の実施形態では、本発明は、神経変性障害について、診断すること、予後判定すること、決定すること、治療レジメンを予想すること、または治療による利益を予想することの方法を提供し、ここで複数のバイオマーカーについて対象からの試料におけるバイオマーカーレベルをアッセイすること、ここで、複数のバイオマーカーは、SNAP25、EAAT1、OMGP、DR1、SR2A、SR2C、GABAB1、GluR-1、KOR、OR、およびDATから選択される1以上のバイオマーカーを含む;および複数のバイオマーカーのレベルに基づいて神経変性障害の進行を診断する、予後判定する、決定すること、治療レジメンを予想することまたは神経変性障害を有する対象における治療による利益を予想すること、を含む方法を提供する。一態様では、神経変性障害は、以下からなる群から選択される:アルツハイマー病(AD)、血管疾患性認知症、前頭側頭型認知症(FTD)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、進行性核上性麻痺(PSP)、レビー小体型認知症、神経原線維変化優位型老年期認知症、ピック病(PiD)、嗜銀顆粒病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、他の運動ニューロン疾患、グアムパーキンソン認知症複合、FTDP-17、リティコ-ボディグ病、多発性硬化症、外傷性脳損傷(TBI)、およびパーキンソン病。他の実施形態では、該方法は、生体試料における1以上のバイオマーカーのレベルをアッセイすることをさらに含む、ここで1以上のバイオマーカーの少なくとも1つは、SNAP25、EAAT1、OMGP、DR1、SR2A、SR2C、GABAB1、GluR-1、KOR、OR、およびDATからなる群から選択される。
【0018】
別の実施形態では、本発明は、対象における神経変性障害を診断する、および治療する方法であって:(a)対象から試料を得ること、ここで試料は、エキソソームを含む;(b)バイオマーカーを含有する試料を処理して試料をエキソソームについて単離するまたは濃縮すること;および(c)エキソソームにおける1以上のバイオマーカーのレベルを検出すること、(d)コントロール試料におけるレベと比較して試料における1以上のバイオマーカーのレベルに基づいて神経変性障害を有する対象を診断すること;および(e)診断された対象に有効量の治療薬剤を投与すること、を含む方法を提供する。一態様では、神経変性障害は、以下からなる群から選択される:アルツハイマー病(AD)、血管疾患性認知症、前頭側頭型認知症(FTD)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、進行性核上性麻痺(PSP)、レビー小体型認知症、神経原線維変化優位型老年期認知症、ピック病(PiD)、嗜銀顆粒病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、他の運動ニューロン疾患、グアムパーキンソン認知症複合、FTDP-17、リティコ-ボディグ病、多発性硬化症、外傷性脳損傷(TBI)、およびパーキンソン病。他の実施形態では、該方法は、生体試料における1以上のバイオマーカーのレベルをアッセイすることをさらに含む、ここで1以上のバイオマーカーの少なくとも1つは、SNAP25、EAAT1、OMGP、DR1、SR2A、SR2C、GABAB1、GluR-1、KOR、OR、およびDATからなる群から選択される。他の実施形態では、エキソソームはニューロン由来のエキソソーム、アストロサイト由来のエキソソーム、オリゴデンドロサイト由来のエキソソーム、またはミクログリア由来のエキソソームである。
【0019】
いくつかの実施形態では、本発明は、脳由来のエキソソームのレベルを定量する方法であって、生体試料において二重陽性であるエキソソームを検出すること、ここでエキソソームは、CD81、CD63、およびCD9からなる群から選択される1以上のエキソソームバイオマーカーについて陽性であり、かつ、ここでエキソソームは、ニューロン、アストロサイト、またはオリゴデンドロサイトと特異的な1以上の神経バイオマーカーについて陽性であり、それにより試料における脳由来のエキソソームのレベルを定量すること、を含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、1以上の神経バイオマーカーは、ドーパミン、セロトニン、GABA、グルタミン酸、オピオイド、オレキシン、アドレナリン、ノルアドレナリン、アセチルコリン、およびドーパミントランスポーターについての受容体からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、1以上の神経バイオマーカーは、SNAP25、EAAT1、OMGP、DR1、SR2A、SR2C、GABAB1、GluR-1、KOR、OR、またはDATから選択される。他の実施形態では、該方法は、付着された少なくとも1つのキャプチャー試薬を含む固体支持体上のエキソソームを捕捉することをさらに含み、ここでキャプチャー試薬はCD81、CD63、およびCD9からなる群からの少なくとも1つのバイオマーカーと結合する。
【0020】
本発明のこれらの、および他の実施形態は、容易に、本明細書の開示に照らして当業者に想起され、全てのそのような実施形態が具体的に企図されている。
【0021】
本発明の各々の限定は、本発明の様々な実施形態を包含し得る。従って、任意の1つの要素または要素の組み合わせを伴う本発明の各々の限定は、本発明の各態様に含まれ得ると考えられる。本発明は、その適用にあたり、以下詳述される構造の詳細および構成要素の配置に限られない。本発明は他の実施形態が可能であり、様々な方法で実施または具体化することができる。また、本明細書で使用される表現および用語は説明の目的のためであり、限定とみなされるべきではない。本明細書における「含む(including)」、「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「伴う(involving)」、およびそれらの活用形の使用は、その後に列挙される項目およびその同等物ならびに追加項目を包含することを意味する。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに指示しない限り、複数の言及を含むことに注意しなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1A-1Eは、スパイクされたエキソソームとの血漿希釈試験を示すデータを示す。
【
図2】
図2A-2Eは、本発明の例示的なELISAのアッセイ内およびアッセイ外変動を示すデータを示す。
【
図3】
図3A-3Eは、コントロール対象および神経変性障害を有する対象におけるエキソソームの血漿レベルを示すデータを示す。
【
図4】
図4A-4Hは、全エキソソームの血漿レベルおよび脳由来のエキソソームの亜集団間の相互関係を示すデータを示す。
【
図5】
図5は、SK-N-SH細胞培養上清から調製されたエキソソームのフローサイトメトリープロフィールを示すデータを示す。
【
図6】
図6Aおよび6Bは、抗CD81および抗CD63抗体のスクリーニングを示すデータを示す。
【
図7】
図7は、低い、中間の、高い量のエキソソームの血漿希釈試験を示すデータを示す。
【
図8】
図8Aおよび8Bは、SNAP25-およびCD171ベースのニューロン由来のエキソソーム間の違いを示すデータを示す。
【
図9】
図9は、本発明の神経バイオマーカーが血漿からエキソソームを検出および単離するために使用され得ることを示すデータを示す。
【0023】
本発明は、本明細書中に記載された、変化し得るような特定の方法論、プロトコール、細胞株、アッセイ、および薬剤に限られないということが理解されるべきである。また、本明細書で使用される用語は、本発明の特定の実施形態を説明することを意図し、添付の特許請求の範囲に記載の本発明の範囲を限定することを意図するものではないことが理解されるべきである。
【0024】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに指示しない限り、複数への言及を含むことに注意しなければならない。従って、例えば「断片」への言及は、そのような断片の複数を含み、「抗体」への言及は、1つ以上の抗体および当業者に知られたその同等物などへの言及である。
【0025】
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと、類似もしくは同等の任意の方法および材料を、本発明の実施または試験に使用することができるが、好ましい方法、装置、および材料が以下に記載されている。本明細書に引用される全ての刊行物は、本発明に関連して使用されてもよい、刊行物で報告された方法論、薬剤、およびツールを説明および開示する目的で、その全体が出典明示により本明細書に組み込まれる。本明細書において、本発明が、先行発明により上述の開示に先行する権利がないと認めるものとして解釈されるべきものはない。
【0026】
特に指示しない限り、本発明の実施は、当技術分野の技術の範囲内で、化学、生化学、分子生物学、細胞生物学、遺伝学、免疫学および薬理学の従来の方法を採用するだろう。このような技術は、文献に十分に説明されている。例えば、Gennaro,A.R.,ed. (1990) Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th ed.,Mack Publishing Co.; Colowick,S. et al.,eds.,Methods In Enzymology,Academic Press,Inc.; Handbook of Experimental Immunology,Vols. I-IV (D.M. Weir and C.C. Blackwell,eds.,1986,Blackwell Scientific Publications); Maniatis,T. et al.,eds. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual,2nd edition,Vols. I-III,Cold Spring Harbor Laboratory Press; Ausubel,F. M. et al.,eds. (1999) Short Protocols in Molecular Biology,4th edition,John Wiley & Sons; Ream et al.,eds. (1998) Molecular Biology Techniques: An Intensive Laboratory Course,Academic Press); PCR (Introduction to Biotechniques Series)、2nd ed. (Newton & Graham eds.,1997,Springer Verlag)を参照のこと。
【0027】
本発明は、部分的には、エキソソームのバイオマーカーをアッセイして、例えばアルツハイマー病(AD)、多発性硬化症(MS)、および前頭側頭型認知症(FTD)を含む神経変性障害を有する、または発症する可能性のある対象を同定できるという発見に関する。
【0028】
本発明は、部分的には、神経変性疾患(例えばアルツハイマー病)を有する対象の血液循環中に存在するニューロン由来のエキソソーム中の特定のバイオマーカーの予想外の増加の発見に基づく。本発明は、これらのバイオマーカーのエキソソームのレベルをアッセイして、神経変性疾患を有する対象における神経変性障害を診断し得ることを実証する。本発明は、さらに、対象からのニューロン由来のエキソソーム中の特定のバイオマーカーの測定を用いて、神経変性疾患のその後の発症を予測し得る(例えば、神経変性障害を発症するリスクのある対象を同定し得る)ということを示す。
【0029】
また、本発明は、本明細書中に記載の方法における使用のための組成物を提供する。かかる組成物は、低分子化合物、抗体もしくはそれらの機能的に活性な断片を含む、ペプチドおよびタンパク質;ならびに低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボザイム、およびアンチセンス配列を含む、ポリヌクレオチドを含んでもよい。(Zeng (2003) Proc Natl Acad Sci USA 100:9779-9784; and Kurreck (2003) Eur J Biochem 270:1628-1644を参照のこと。)
【0030】
本発明は、さらに、対象における神経変性障害を診断もしくは予後判定する、神経変性障害のリスクのある対象を同定する、または、治療レジメンを処方もしくは神経変性障害を有する対象における治療の利益を予測するためのキットを提供する。これらの実施形態では、キットは、エキソソームに特異的に結合する1つ以上の抗体、バイオマーカーに特異的に結合する1つ以上の抗体、生体試料を収集および/または保持するための1つ以上の容器、およびキットの使用のための指示書を含む。
【0031】
セクションの見出しは、構成上の目的のためのみに本明細書中で使用され、本明細書に記載の主題を限定するものとして決して解釈されるべきではない。
【0032】
生体試料
本発明は、アルツハイマー病および他の神経変性障害のための、バイオマーカーならびに診断方法および予後判定方法を提供する。本発明はまた、生体試料におけるエキソソームレベルを定量するためのバイオマーカーを提供する。バイオマーカーおよびエキソソームレベルは対象から得られた生体試料において決定される。いくつかの実施形態では、本発明の生体試料は、血液から得ることができる。いくつかの実施形態では、約1-10mlの血液が対象から採血される。他の実施形態では、約10-50mlの血液が対象から採血される。血液は、腕、脚、または中心静脈カテーテルを介してアクセス可能な血液を含む、身体の任意の適切な領域から採血できる。いくつかの実施形態では、血液は、処置または活動の後に収集される。例えば、血液は、健康診断の後に収集できる。また、収集のタイミングは、試料中に存在するエキソソームの数および/または組成を増加するように調整することができる。例えば、血液は、血管拡張を誘導する運動または処置の後に収集できる。
【0033】
血液は、その後の技術のために、試料を保存または準備するための収集の後に、様々な成分と組み合わせることができる。例えば、いくつかの実施形態では、血液は、収集後に、抗凝固剤、細胞固定剤、プロテアーゼ阻害剤、ホスファターゼ阻害剤、タンパク質、DNA、もしくはRNA保存剤で処理される。いくつかの実施形態では、血液は、EDTAまたはヘパリンなどの抗凝固剤を含有する真空採取チューブを用いて静脈穿刺によって収集される。また、血液は、ヘパリンコーティングされた注射器および皮下注射針を用いて収集できる。血液はまた、細胞培養のために有用であろう成分と組み合わせることができる。例えば、いくつかの実施形態では、血液は、細胞培養培地または補充した細胞培養培地(例えば、サイトカイン)と組み合わせられる。
【0034】
生体試料はまた、全血、血清、血漿、尿、間質液、腹水、子宮頸部スワブ、涙、唾液、頬スワブ、皮膚、脳脊髄液、または、例えば脳組織を含む他の組織を含む、当技術分野で知られた他の供給源から得ることができる。
【0035】
エキソソームの濃縮または単離
試料は、ポジティブセレクション、ネガティブセレクション、またはポジティブセレクションおよびネガティブセレクションの組み合わせを通して、エキソソームについて濃縮され得る。いくつかの実施形態では、エキソソームは直接捕捉される。他の実施形態では、血液細胞が捕捉され、エキソソームは残りの生体試料から収集される。いくつかの実施形態では、生体試料中で濃縮されたエキソソームは、ニューロン由来のエキソソーム、アストロサイト由来のエキソソーム、オリゴデンドロサイト由来のエキソソーム、およびミクログリア由来のエキソソームである。
【0036】
試料はまた、エキソソームの生化学的特性の差異に基づいて、エキソソームについて濃縮され得る。例えば、試料は、抗原、核酸、代謝、遺伝子発現、またはエピジェネティックな差異に基づいて、エキソソームについて濃縮され得る。抗原の差異に基づくいくつかの実施形態では、磁場勾配における抗体結合磁性もしくは常磁性ビーズまたはフローサイトメトリーと蛍光標識された抗体が使用される。核酸の差異に基づくいくつかの実施形態では、フローサイトメトリーが使用される。代謝の差異に基づくいくつかの実施形態では、フローサイトメトリーにより測定される色素の取り込み/排出または他のソーティング技術が使用される。遺伝子発現に基づく実施形態のいくつかでは、サイトカインとの細胞培養が使用される。試料はまた、当技術分野で知られた他の生化学的特性に基づいて、エキソソームについて濃縮され得る。例えば、試料は、pHおよび運動性に基づいて、エキソソームについて濃縮され得る。さらに、いくつかの実施形態では、1より多くの方法がエキソソームについての濃縮のために使用される。他の実施形態では、試料は、抗体、リガンド、または可溶性受容体を使用してエキソソームについて濃縮される。
【0037】
他の実施形態では、表面マーカーが、試料中のエキソソームを正に濃縮するために使用される。他の実施形態では、NCAM、CD171、CD9、CD63、CD81、ニューロン特異的エノラーゼ、多様なニューロンもしくはアストロサイト接着タンパク質、ミクログリアCD18/11、またはCD3 T細胞膜の細胞表面マーカーが、エキソソームについての濃縮に使用される。他の実施形態では、SNAP25、EAAT1、OMGP、DR1、SR2A、SR2C、GABAB1、GluR-1、KOR、OR、またはDATがエキソソームの濃縮について使用される。いくつかの実施形態では、エキソソーム集団上で見られない細胞表面マーカーが、細胞集団を枯渇させることにより、エキソソームを負に濃縮するために使用される。また、フローサイトメトリーソーティングが、蛍光標識にコンジュゲートした細胞表面マーカーまたは細胞内もしくは細胞外マーカーを用いて、エキソソームについてさらに濃縮するために使用されてもよい。細胞内および細胞外のマーカーは、核染色、またはエキソソーム中に優先的に発現する細胞内もしくは細胞外タンパク質に対する抗体を含んでもよい。細胞表面マーカーは、エキソソーム上に優先的に発現される細胞表面抗原に対する抗体を含んでいてもよい(例えばNCAM)。いくつかの実施形態では、細胞表面マーカーは、例えばNCAMまたはCD171、SNAP25、EAAT1、OMGP、DR1、SR2A、SR2C、GABAB1、GluR-1、KOR、OR、またはDATを含む、ニューロン由来のエキソソーム表面マーカーである。いくつかの実施形態では、モノクローナルNCAM、CD9、CD63、CD81、ニューロン特異的エノラーゼ、CD171、SNAP25、EAAT1、OMGP、DR1、SR2A、SR2C、GABAB1、GluR-1、KOR、OR、またはDAT抗体が、試料からエキソソームを濃縮または単離するために使用される。ある特定の態様において、NCAM、CD9、CD63、CD81、ニューロン特異的エノラーゼ、CD171、SNAP25、EAAT1、OMGP、DR1、SR2A、SR2C、GABAB1、GluR-1、KOR、OR、またはDAT抗体は、ビオチン化されている。この実施形態では、ビオチン化されたNCAMまたはCD171抗体は、ストレプトアビジン-アガロース樹脂またはビーズを用いて、その後に単離され得る抗体-エキソソーム複合体を形成し得る。他の実施形態では、NCAM、CD9、CD63、CD81、ニューロン特異的エノラーゼ、CD171、SNAP25、EAAT1、OMGP、DR1、SR2A、SR2C、GABAB1、GluR-1、KOR、OR、またはDAT抗体は、モノクローナル抗ヒトNCAM、CD9、CD63、CD81、ニューロン特異的エノラーゼ、CD171、SNAP25、EAAT1、OMGP、DR1、SR2A、SR2C、GABAB1、GluR-1、KOR、OR、またはDAT抗体である。いくつかの実施形態では、生体試料から濃縮されたエキソソームは、その後、エキソソームの特定のタイプ(例えばエキソソームの亜集団)について濃縮される。例えば、生体試料は、エキソソームについて濃縮され、次いで、濃縮されたエキソソームは、その後、ニューロン由来のエキソソームについて濃縮される。いくつかの実施形態では、生体試料は、エキソソームの個々の神経細胞供給源について濃縮される。ある特定の態様では、エキソソームの神経細胞供給源は、ミクログリア、ニューロン、またはアストロサイトである。
【0038】
他の実施形態では、表面マーカーはエキソソームの特定のタイプ(例えばニューロン由来のエキソソーム)について濃縮するために使用される。いくつかの実施形態では、SNAP25、EAAT1、OMGP、DR1、SR2A、SR2C、GABAB1、GluR-1、KOR、OR、および/またはDAT細胞表面マーカーは、エキソソームの特定のタイプについて濃縮するために使用される。いくつかの実施形態では、目的のエキソソーム上に見いだされない細胞表面マーカーは、望ましくない細胞集団を枯渇させることによりエキソソームを負に濃縮するために使用される。フローサイトメトリー選別はまた、細胞表面マーカーまたは蛍光標識に結合した細胞内もしくは細胞外マーカーを使用してエキソソームの特定のタイプをさらに濃縮するために使用され得る。細胞内もしくは細胞外マーカーは、核染色または目的のエキソソーム内または上で優先的に発現した細胞内または細胞外タンパク質に対する抗体を含んでもよい。細胞表面マーカーは、エキソソーム上で優先的に発現する細胞表面抗原(例えばSNAP25、EAAT1、OMGP、DR1、SR2A、SR2C、GABAB1、GluR-1、KOR、OR、およびDAT)に対する抗体を含んでもよい。いくつかの実施形態では、細胞表面マーカーは例えば、SNAP25を含むニューロン由来のエキソソーム表面マーカーである。いくつかの実施形態では、細胞表面マーカーは例えば、EAAT1を含むアストロサイト由来のエキソソーム表面マーカーである。いくつかの実施形態では、細胞表面マーカーは例えば、OMGPを含むオリゴデンドロサイト由来のエキソソーム表面マーカーである。いくつかの実施形態では、細胞表面マーカーは、ドーパミン、セロトニン、GABA、グルタミン酸、オピオイド、オレキシン、アドレナリン、ノルアドレナリン、アセチルコリン、および/またはドーパミントランスポーターについての受容体である。いくつかの実施形態では、モノクローナルSNAP25、EAAT1、OMGP、DR1、SR2A、SR2C、GABAB1、GluR-1、KOR、OR、またはDAT抗体は、試料からエキソソームを濃縮するまたは単離するために使用される。特定の態様では、SNAP25、EAAT1、OMGP、DR1、SR2A、SR2C、GABAB1、GluR-1、KOR、OR、またはDAT抗体はビオチン化される。この施形態では、ビオチン化SNAP25、EAAT1、OMGP、DR1、SR2A、SR2C、GABAB1、GluR-1、KOR、OR、またはDAT抗体は、ストレプトアビジン-アガロースレジンまたはビーズを使用してその後単離され得る抗体-エキソソーム複合体を形成できる。他の実施形態では、SNAP25、EAAT1、OMGP、DR1、SR2A、SR2C、GABAB1、GluR-1、KOR、OR、またはDAT抗体は、モノクローナル抗ヒトSNAP25、EAAT1、OMGP、DR1、SR2A、SR2C、GABAB1、GluR-1、KOR、OR、またはDAT抗体である。
【0039】
他の実施形態では、エキソソームは生体試料から単離または濃縮され、生体試料中に存在するエキソソームが薬剤に結合してエキソソーム-薬剤複合体を形成する条件下で、生体試料を薬剤と接触させること、およびエキソソーム-薬剤複合体からエキソソームを単離してエキソソームを含有する試料を得ることを含み、ここで、試料中に存在するエキソソームの純度は生体試料中に存在するエキソソームの純度より高い。特定の実施形態では、薬剤は抗体またはレクチンである。エキソソーム-レクチン複合体を形成するのに有用なレクチンは、米国特許出願公開第2012/0077263号に記載されている。いくつかの実施形態では、エキソソームは、エキソソーム、微粒子、微エキソソーム、ナノソーム、細胞外エキソソーム、またはエクトソームである。いくつかの実施形態では、エキソソームは、ニューロン由来のエキソソーム、アストロサイト由来のエキソソーム、オリゴデンドロサイト由来のエキソソーム、またはミクログリア由来のエキソソームである。いくつかの実施形態では、複数の単離または濃縮段階が実施される。本実施形態の特定の態様において、第一の単離段階は血液試料からエキソソームを単離するために実施され、第二の単離段階は他のエキソソームからニューロン由来のエキソソームを単離するために実施される。他の実施形態では、エキソソーム-薬剤複合体のエキソソーム部分は、溶解薬剤を用いて溶解され、溶解されたエキソソームのタンパク質レベルが分析される。いくつかの実施形態では、抗体-エキソソーム複合体が固相上に作成される。さらに他の実施形態では、当該方法は、抗体-エキソソーム複合体からエキソソームを放出することをさらに含む。特定の実施形態では、固相は非磁性ビーズ、磁性ビーズ、アガロースまたはセファロースである。他の実施形態では、抗体-エキソソーム複合体を低pH3.5-1.5にさらすことによって、エキソソームが放出される。さらに他の実施形態では、放出されたエキソソームは、高pH溶液を加えることによって中和される。他の実施形態では、放出されたエキソソームは、放出されたエキソソームを溶解溶液とインキュベートすることによって溶解される。さらに他の実施形態では、溶解溶液は、プロテアーゼおよびホスファターゼに対する阻害剤を含有する。特定の実施形態では、薬剤は抗体またはレクチンである。エキソソーム-レクチン複合体を形成するのに有用なレクチンは、米国特許出願公開第2012/0077263号に記載されている。いくつかの実施形態では、エキソソームは、エキソソーム、微粒子、微エキソソーム、ナノソーム、細胞外エキソソーム、またはエクトソームである。いくつかの実施形態では、エキソソームは、ニューロン由来のエキソソーム、アストロサイト由来のエキソソーム、オリゴデンドロサイト由来のエキソソーム、またはミクログリア由来のエキソソームである。いくつかの実施形態では、複数の単離または濃縮段階が実施される。本実施形態の特定の態様において、第一の単離段階は血液試料からエキソソームを単離するために実施され、第二の単離段階は他のエキソソームからニューロン由来のエキソソームを単離するために実施される。他の実施形態では、エキソソーム-薬剤複合体のエキソソーム部分は、溶解薬剤を用いて溶解され、溶解されたエキソソームのタンパク質レベルが分析される。いくつかの実施形態では、抗体-エキソソーム複合体が固相上に作成される。さらに他の実施形態では、当該方法は、抗体-エキソソーム複合体からエキソソームを放出することをさらに含む。特定の実施形態では、固相は非磁性ビーズ、磁性ビーズ、アガロースまたはセファロースである。他の実施形態では、抗体-エキソソーム複合体を低pH3.5-1.5にさらすことによって、エキソソームが放出される。さらに他の実施形態では、放出されたエキソソームは、高pH溶液を加えることによって中和される。他の実施形態では、放出されたエキソソームは、放出されたエキソソームを溶解溶液とインキュベートすることによって溶解される。さらに他の実施形態では、溶解溶液は、プロテアーゼおよびホスファターゼに対する阻害剤を含有する。
【0040】
神経変性障害
本発明は、対象における神経変性障害を診断する、もしくは予後判定する、神経変性障害のリスクがある対象を同定する、または治療レジメンを処方する、または神経変性障害を有する対象における治療による利益を予想する方法を提供する。
【0041】
いくつかの実施形態では、神経変性障害は、以下からなる群から選択される:アルツハイマー病(AD)、血管疾患性認知症、前頭側頭型認知症(FTD)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、進行性核上性麻痺(PSP)、レビー小体型認知症、神経原線維変化優位型老年期認知症、ピック病(PiD)、嗜銀顆粒病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、他の運動ニューロン疾患、グアムパーキンソン認知症複合、FTDP-17、リティコ-ボディグ病、多発性硬化症、外傷性脳損傷(TBI)、およびパーキンソン病。
【0042】
いくつかの実施形態では、本発明は、医師が対象における1つ以上の神経変性障害を診断または予後判定することを可能にする。他の実施形態では、本発明は、医師が診断可能性としての1つ以上の神経変性疾患を除外または排除することを可能にする。さらに他の実施形態では、本発明は、医師が神経変性障害を発症するリスクのある対象を同定することを可能にする。他の実施形態では、本発明は、医師が、対象が後に神経変性障害を発症するかどうかを予測することを可能にする。さらなる実施形態では、本発明は、医師が、治療レジメンを処方もしくは神経変性障害を有する対象における治療の利益を予測することを可能にする。
【0043】
バイオマーカー
バイオマーカーレベルは神経変性障害(例えばアルツハイマー病)を有するまたは有するリスクがある対象から得られる生体試料においてアッセイされる。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、ドーパミン、セロトニン、GABA、グルタミン酸、オピオイド、オレキシン、アドレナリン、ノルアドレナリン、アセチルコリン、および/またはドーパミントランスポーターについての受容体である。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、SNAP25、EAAT1、OMGP、DR1、SR2A、SR2C、GABAB1、GluR-1、KOR、OR、および/またはDATである。他の既知の神経変性障害バイオマーカーは本発明のバイオマーカーと組み合わせて使用されてもよい。かかるバイオマーカーの例は、出典明示により組み込まれる米国特許出願公報第2015/0119278号内容に提供される。
【0044】
いくつかの実施形態では、本発明のバイオマーカーレベルは、バイオマーカーの量または遺伝子発現を決定することにより測定される。特定の実施形態では、表1に示される1つ以上の遺伝子の発現レベルを決定することにより、遺伝子発現の変化が測定される。特定の態様では、バイオマーカーの遺伝子発現は、PCR、マイクロアレイまたはシーケンシングを使用して決定される。いくつかの実施形態では、バイオマーカーの発現レベルは、バイオマーカーのmRNAまたはmiRNAのレベルを測定することによって決定される。
【0045】
当業者は、本発明のマーカーの検出および分析のために利用可能ないくつかの方法および装置を有する。患者試験試料中のポリペプチドまたはタンパク質に関して、多くの場合イムノアッセイ装置および方法が利用される。これらの装置および方法は、目的の分析物の存在または量に関するシグナルを生成するために、様々なサンドイッチ(sandwich)、競合、または非競合アッセイ形式で標識分子を利用することができる。さらに、バイオセンサーおよび光学的イムノアッセイなどの特定の方法および装置が、標識分子を必要とすることなく、分析物の存在および量を決定するために使用されてもよい。
【0046】
他の方法(例えば、マーカーRNAレベルの測定)は、当業者に良く知られているが、好ましくは、マーカーはイムノアッセイを使用して分析される。マーカーの存在または量は、一般的に、各マーカーに特異的な抗体を使用して、かつ特異的な結合を検出して、決定される。任意の適切なイムノアッセイ、例えば、酵素結合免疫測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、競合結合アッセイ、プレーナーウェイブガイド技術などが利用されてもよい。マーカーに対する特異的な抗体の免疫学的結合は、直接的にまたは間接的に決定され得る。直接標識は、抗体に結合した蛍光もしくは発光タグ、金属、色素または放射性核種などを含む。間接標識は、アルカリホスファターゼ、西洋わさびペルオキシダーゼなどの当技術分野でよく知られた種々の酵素を含む。
【0047】
マーカーに特異的な固定化抗体の使用も、本発明によって企図される。抗体は、磁気もしくはクロマトグラフィーマトリックス粒子、アッセイ場所(マイクロタイターウェルなど)の表面、固体基板材料片(プラスチック、ナイロン、紙など)等などの、種々の固体支持体上に固定化され得る。アッセイストリップは固体支持体上のアレイに抗体または複数の抗体をコーティングすることによって調製できる。このストリップを、試験試料中に浸漬し、次いで、洗浄および検出段階を経て迅速に処理して、着色されたスポットなどの測定可能なシグナルを生成できる。
【0048】
複数のマーカーの分析は1つの試験試料と別々にまたは同時に行ってもよい。複数の試料の効率的な処理のために、いくつかのマーカーは1つの試験に組み合わされてもよい。さらに、当業者は、同じ個体からの複数の試料(例えば、連続した時点)を試験する価値を認識するだろう。そのような連続した試料を試験することは、経時的なマーカーレベルの変化の同定を可能にするだろう。マーカーレベルの増加または減少だけでなく、マーカーレベルの変化の非存在は、事象の開始からのおおよその時間を同定すること、救助可能な組織(salvageable tissue)の存在および量、薬物療法の妥当性、様々な治療法の有効性、事象の重症度の同定、疾患の重症度の同定、ならびに将来の事象のリスクを含む患者の治療結果(アウトカム)の同定に限定されるものではないが、これらを含む、疾患状態についての有用な情報を提供するだろう。
【0049】
本発明で参照されるマーカーの組み合わせからなるアッセイを構築し、鑑別診断に関する関連情報を提供してもよい。そのようなパネルは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20もしくはそれ以上、または個別のマーカーを使用して構築されてもよい。単一のマーカー、またはより大きなマーカーのパネルを含むマーカーのサブセットの分析を本発明内に記載された方法において実施し、種々の臨床状況における臨床的感度または特異度を最適化することができる。
【0050】
マーカーの分析は、同様に種々の物理的形式において実施され得る。例えば、マイクロタイタープレートの使用または自動化を用いて、多数の試験試料の処理を容易にすることができる。あるいは、単一試料形式を開発し、例えば、外来輸送(ambulatory transport)または緊急治療室の状況において、時機を逸せずに迅速な処置および診断を容易にすることができる。特に、有用な物理形式は、複数の異なる検体の検出のための、複数の不連続な、アドレス可能な位置を有する表面を含む。かかる形式はプロテインマイクロアレイもしくは「プロテインチップ」およびキャピラリー装置を含む。
【0051】
本発明のバイオマーカーは、神経変性障害(例えばアルツハイマー病)早期検出およびモニタリングにおいて、重要な役割を果たす。かかる障害のマーカーは典型的に、測定することができる身体試料中に見られる物質である。測定された量は、基礎障害もしくは疾患の病態生理、神経変性障害の存在もしくは非存在、または将来の神経変性障害の可能性に相関し得る。患者の状態の治療を患者が受ける際に、測定された量はまた、治療の反応性に相関するだろう。いくつかの実施形態では、本発明の1以上のバイオマーカーのレベルの増加は第一の神経変性障害を示し、かつ同じ1以上のバイオマーカーのレベルの減少は第二の神経変性障害を示す。したがって、本発明の方法は神経変性障害の鑑別診断に有用である。
【0052】
いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、免疫組織化学、免疫細胞化学、免疫蛍光、免疫沈降、ウェスタンブロッティング、およびELISAからなる群から選択される方法で測定される。
【0053】
臨床アッセイ性能
本発明の方法は、対象における神経変性障害を診断もしくは予後判定する、神経変性障害のリスクのある対象を同定する、および/または、治療レジメンを処方もしくは神経変性障害を有する対象における治療の利益を予測するために、臨床アッセイにおいて用いられてもよい。臨床アッセイ性能は、アッセイの感度、特異度、ROC曲線下面積(AUC)、精度、陽性適中率(PPV)、および陰性適中率(NPV)を決定することによって評価できる。本明細書中に開示されているものは、対象における神経変性障害を診断もしくは予後判定する、神経変性障害のリスクのある対象を同定する、または、治療レジメンを処方もしくは神経変性障害を有する対象における治療の利益を予測するためのアッセイである。
【0054】
アッセイの臨床性能は感度に基づいてもよい。本発明のアッセイの感度は、少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%または100%であってもよい。アッセイの臨床性能は特異度に基づいてもよい。本発明のアッセイの特異度は、少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%または100%であってもよい。アッセイの臨床性能はROC曲線下面積(AUC)に基づいてもよい。本発明のアッセイのAUCは、少なくとも約0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9または0.95であってもよい。アッセイの臨床性能は精度に基づいてもよい。本発明のアッセイの精度は、少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%または100%であってもよい。
【0055】
組成物
本発明の方法において有用な組成物は、神経変性障害に関連するバイオマーカーを特に認識する組成物であり、当該バイオマーカーは、SNAP25、EAAT1、OMGP、DR1、SR2A、SR2C、GABAB1、GluR-1、KOR、OR、およびDATである。さらに他の実施形態では、組成物は、ペプチド、核酸、抗体および低分子からなる群から選択される。
【0056】
或る実施形態では、本発明は、神経変性障害に関連するバイオマーカーを特異的に検出する組成物に関する。本明細書の他の場所で詳述されるように、本発明は、SNAP25、EAAT1、OMGP、DR1、SR2A、SR2C、GABAB1、GluR-1、KOR、OR、およびDATが神経変性障害の診断において使用され得るエキソソームの亜集団に特異的なバイオマーカーであるという発見に基づく。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、SNAP25、EAAT1、OMGP、DR1、SR2A、SR2C、GABAB1、GluR-1、KOR、OR、およびDATに特異的に結合し、かつ検出する。他の実施形態では、本発明の組成物は、ドーパミン、セロトニン、GABA、グルタミン酸、オピオイド、オレキシン、アドレナリン、ノルアドレナリン、アセチルコリン、および/またはドーパミントランスポーターについての受容体に特異的に結合し、かつ検出する。
【0057】
いくつかの実施形態では、組成物は抗体を含み、前記抗体は本発明のバイオマーカーまたはエキソソームと特異的に結合する。本明細書中で使用され、さらに以下に説明される「抗体」なる用語は、バイオマーカーまたはエキソソーム(例えばエキソソーム)と特異的に反応する、それらの断片を含むことを意図している。抗体は従来の技術を用いて断片化することができ、全長抗体(whole antibody)に関して上記に記載したものと同じ方法で、断片は有用性についてスクリーニングできる。例えば、F(ab)2断片は、ペプシンで抗体を処理することによって生成され得る。得られたF(ab)2断片をジスルフィド架橋を還元するように処理して、Fab断片を産生することができる。抗原結合部位はまた、組換えDNA技術により、または無傷の(intact)抗体の酵素的もしくは化学的切断により、産生されてもよい。抗原結合部位は、とりわけ、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、dAb、および相補性決定領域(CDR)断片、一本鎖抗体(scFv)、単一ドメイン抗体、二重特異性抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ダイアボディ、および、ポリペプチドに特異的抗原結合を付与するために十分な、少なくとも免疫グロブリンの部分を含有するポリペプチドを含む。特定の実施形態では、抗体は、抗体に結合し、かつ検出され得る、標識をさらに含む(例えば、標識は放射性同位体、蛍光物質、酵素または酵素の補酵素とすることができる)。
【0058】
特定の実施形態では、本発明の抗体はモノクローナル抗体であり、かつ特定の実施形態では、本発明は、本発明のバイオマーカーまたはエキソソームに特異的に結合する新規抗体を生成するための方法を利用可能にする。例えば、バイオマーカーまたはエキソソームに特異的に結合するモノクローナル抗体を生成するための方法は、検出可能な免疫応答を刺激するのに有効な、バイオマーカーもしくはエキソソーム、またはそれらのフラグメントを含む免疫原性組成物の量をマウスへ投与すること、マウスから抗体産生細胞(例えば、脾臓由来の細胞)を得て、抗体産生ハイブリドーマを得るために、骨髄腫細胞と抗体産生細胞を融合すること、および、バイオマーカーまたはエキソソームに特異的に結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを同定するために抗体産生ハイブリドーマを試験することを含んでもよい。いったん得られると、ハイブリドーマは細胞培養で、任意に、ハイブリドーマ由来の細胞がバイオマーカーまたはエキソソームに特異的に結合するモノクローナル抗体を生成する培養条件で、増殖され得る。モノクローナル抗体は、細胞培養物から精製されてもよい。
【0059】
抗体に関して使用される「と特異的に反応する」という用語は、当技術分野において一般に理解されるように、抗体が目的の抗原(例えばバイオマーカーまたはエキソソーム)と目的でない他の抗原の間で、十分に選択的であることを意味することを意図している。治療応用などの抗体を使用する特定の方法では、結合におけるより高い程度の特異性が望まれてもよい。モノクローナル抗体は、一般に、所望の抗原と、交差反応するポリペプチドとの間で効果的に識別する、より大きな傾向(ポリクローナル抗体と比較して)を有する。抗体:抗原相互作用の特異性に影響する1つの特徴は、抗原に対する抗体のアフィニティーである。所望の特異性は異なるアフィニティーの範囲に到達してもよいが、一般に、好ましい抗体は、約10-6、10-7、10-8、10-9またはそれ以下のアフィニティー(解離定数)を有するだろう。
【0060】
抗体は、例えば、ニューロン由来のエキソソーム、アストロサイト由来のエキソソーム、オリゴデンドロサイト由来のエキソソーム、SNAP25、EAAT1およびOMGPを含む本発明のエキソソームのエピトープまたはバイオマーカーに特異的に結合するよう生成され得る。いくつかの実施形態では、ニューロン由来のエキソソームはシナプス前ドーパミン作動性ニューロン由来のエキソソーム、またはシナプス後ドーパミン作動性、セロトニン作動性、GABA作動性、グルタミン酸作動性、およびオピオイドニューロン由来のエキソソームである。
【0061】
また、所望の抗体を同定する目的で抗体をスクリーニングするために用いられる技術は、得られる抗体の性質に影響してもよい。種々の異なる技術は、特に望ましい抗体を同定するために、抗体抗原間の相互作用を試験するために利用できる。このような技術は、ELISA、表面プラズモン共鳴結合アッセイ(例えば、Biacore結合アッセイ、Biacore AB、Uppsala、Sweden)、サンドイッチアッセイ(例えば、常磁性ビーズシステム、IGEN International,Inc.,Gaithersburg,Md.)、ウェスタンブロット、免疫沈降アッセイ、免疫細胞化学、および免疫組織化学を含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、本発明は、神経変性障害を治療するまたは予防するために使用される組成物に関する。本明細書の他の場所で詳述されるように、本発明は、SNAP25、EAAT1、OMGP、DR1、SR2A、SR2C、GABAB1、GluR-1、KOR、OR、およびDATがエキソソームの特定の亜集団についての細胞表面マーカーであるという発見に基づく。したがって、一実施形態では、本発明は、エキソソームの亜集団を検出すること、および/または定量することに有用な組成物を提供する。
【0063】
治療方法
本発明は、対象からの生体試料におけるSNAP25、EAAT1、OMGP、DR1、SR2A、SR2C、GABAB1、GluR-1、KOR、OR、および/またはDATを検出すること、および神経変性障害を治療する有効量の組成物を対象に投与することを含む、対象における神経変性障害を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、神経変性障害は、以下からなる群から選択される:アルツハイマー病(AD)、血管疾患性認知症、前頭側頭型認知症(FTD)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、進行性核上性麻痺(PSP)、レビー小体型認知症、神経原線維変化優位型老年期認知症、ピック病(PiD)、嗜銀顆粒病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、他の運動ニューロン疾患、グアムパーキンソン認知症複合、FTDP-17、リティコ-ボディグ病、多発性硬化症、外傷性脳損傷(TBI)、およびパーキンソン病。他の実施形態では、生体試料は、全血、血清、血漿、尿、間質液、腹水、子宮頸部スワブ、涙、唾液、頬スワブ、皮膚、脳組織、および脳脊髄液からなる群から選択される。
【0064】
キット
本発明の別の態様は、対象における神経変性障害を検出またはモニタリングするためのキットを包含する。様々な構成要素を有する種々のキットが、本発明により企図されている。一般的に言うと、キットは対象から得られる生体試料におけるにおける1つ以上のバイオマーカーを定量するための手段を含む。別の実施形態では、キットは生体試料を収集するための手段、生体試料中の1つ以上のバイオマーカーを定量する手段、およびキットの内容物の使用のための説明書を含む。特定の実施形態では、キットは生体試料中のエキソソームを濃縮または単離するための手段を含む。さらなる態様では、エキソソームを濃縮または単離するための手段は、生体試料からエキソソームを濃縮または単離するために必要な試薬を含む。特定の態様では、キットは、バイオマーカーまたはエキソソームの特定のタイプ(例えばニューロン由来のエキソソーム)の量を定量するための手段を含む。さらなる態様では、バイオマーカーの量を定量するための手段は、バイオマーカーの量を検出するために必要な試薬を含む。
【表1】
【0065】
本発明のこれら、および他の実施形態は、容易に、本明細書の開示に鑑みて当業者に想起されるだろう。
【実施例】
【0066】
本発明は、本発明の単なる例示であるよう意図された、以下の実施例を参照することによってさらに理解されるだろう。これらの実施例は、本発明を例示するためにのみ提供される。本発明は、本発明の単一の態様の例示としてのみ意図されている例示の実施形態によって範囲は限定されない。機能的に同等である任意の方法は、本発明の範囲内である。本明細書に記載したものに加えて、本発明の種々の改変は、前述の説明から当業者に明らかになるだろう。このような改変は、添付の特許請求の範囲内に入ることが意図される。
【0067】
実施例1:生体試料からのエキソソームの亜集団の単離および定量
エキソソームの特定の亜集団は以下のように生体試料から単離され、定量される。ELISAアッセイはホワイトELISAプレート(Coster,Corning,NY)、ELISAコーテイングバッファ、およびELISA洗浄バッファ(BioLegend,San Diego,CA)を使用して実施した。抗体は、抗CD81(BD Pharmigen,San Jose、CA)、抗CD63(Sino Biological,North Wales、PA)、および抗SNAP25(Santa Cruz Biotechnology,Dallas TX)を含んだ。ビオチン化抗体は、抗CD81(LS Bio,Seattle、WA、およびMBL,Nagoya,Aichi,Japan)、抗CD171(eBioscience,San Diego、CA)、および抗SNAP25(Thermo Fisher Waltham、MA)を含んだ。EAAT1およびOMGP(Bioss抗体,Woburn、MA)に対する非コンジュゲートおよびビオチン化抗体もまた利用した。追加の材料には、正常マウスIgG(Santa Cruz Biotechnology,Dallas TX)、ExoQuick(System Biosciences,Palo Alto、CA)、ヒト血漿(Innovative Research,Novi、MI;Precision Med,San Diego、CA;BioReclamation IVT,Chestertown、MD)、tween-20(Sigma-Aldrich,St.Louis、MO)、EZ-Link Sulfo-NHS-ビオチン、Zebraスピンカラム、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、10%ウシ血清アルブミン(BSA)、ブロッカーカゼイン、ストレプトアビジン(SA)Poly-HRP、HRP基質スーパーシグナル(Thermo Fisher)、ヒト神経芽腫細胞系(SK-N-SH、RIKEN BRC,Tsukuba,Ibaraki,Japan)、およびN2サプリメント(Wako Pure Chemicals Industries.,Osaka,Japan)を含んだ。
【0068】
ExoQuickを使用して様々なヒト血漿および培養上清から全エキソソームを調製し、PBS中に懸濁した。Hartley et al(10)の方法に従ってSK-N-SH細胞を1x10
-5Mのall-transレチノイン酸の存在下で培養し、続いてN2サプリメントを伴う血清フリーHam F-12/Dulbecco改変Eagle培地で7日培養した。培養上清を収集し、アリコートを-80℃冷凍庫で保存した。CD81およびCD171表面マーカーの二重発現をフローサイトメトリーにより確認した(
図5)。
【0069】
様々な濃度の抗体を1X ELISAコーテイングバッファに懸濁し、50μLをホワイトELISAストリップの各ウェルに分注した。次にストリップを冷蔵庫内で一晩700rpmで一定に振盪しながらインキュベートした。各ウェルを1X洗浄バッファで1回洗浄した後、1%BSAを補充した75μLのブロッカーカゼインを加え、室温で1時間、700rpmで一定に振盪しながらインキュベートした。インキュベーション後、各ウェルを1X洗浄バッファで2回洗浄し、そして使用するまで冷蔵庫に保存した。
【0070】
EZ-Link Sulfo-NHS-ビオチン(Thermo)のプロトコールに従って、抗体をビオチン化し、および遊離ビオチンは試料をスピンカラムにアプライすることにより除去した。
【0071】
50μLの抗体を固定化に使用したため、ELISAを最終容量40μLで実施した。標準および試料を40μLのPBSに懸濁し、ELISAウェルにアプライし、700rpmで一定に振盪しながら冷蔵庫で一晩インキュベートした。各ウェルを1X洗浄バッファで二回洗浄した後、1%tween20(tPBS)、1%BSA、ビオチン化抗体、およびマウスIgG(4μg/mL)を加えた40μLのPBSを各ウェルに加え、そして室温で1時間、700rpmで一定に振盪しながらインキュベートした。各ウェルを1X洗浄バッファで二回洗浄した後、ブロッカーカゼイン(5%)およびSAポリ-HRP(1/16,000希釈)を加えた40μLのtPBS-BSAを各ウェルに加え、そして室温で30分、700rpmで一定に振盪しながらインキュベートした。各ウェルを1X洗浄バッファで3回洗浄した後、50μLスーパーシグナルHRP基質を各ウェルに加え、アルミホイルで覆い、そして室温で4分、700rpmで一定に振盪しながらインキュベートした。化学発光シグナル(相対発光量(RLU))を照度計(DSL active GLO(ANSH lab Webster、TX))でsoftware,Ansh Lite DRS v.12を用いて決定した。
【0072】
結果
血漿試料を抗CD81または抗CD63抗体が以前に固定化されたELISAウェルにアプライした。未結合物質を除去した後、各ウェルを様々なビオチン化抗体にさらし、続いてSAポリ-HRP反応させ、化学発光シグナルを生じさせた。我々のスクリーニング試験の例として
図6に示されるように、我々は最初に、抗CD81が抗CD63よりも良好な結果を示すことを見出した。多くのモノクローナル抗体の中で、我々は非常に強力な抗SNAP25および抗CD171抗体を見出した。エピトープ-エピトープ変動を避けるために、我々はEAAT1およびOMGPに対するポリクローナル抗体を使用し、かつ両抗体が抗CD81固定化ウェル上の血漿試料に非常に反応性であることを見出した。我々はまた、抗SNAP25、CD171、EAAT1、およびOMGPを固定化することにより抗体の組み合わせを切り替え、ビオチン化抗CD81でプローブした。結果は全く同等であったが、抗EAAT1およびOMGP固定化ウェルは、シグナル-ノイズ比を高めることによりわずかに優れた性能を示した。したがって、我々は、全エキソソーム(TE)(抗CD81プローブ)の定量のための抗CD81固定化ストリップならびにADEおよびODEの定量のための2種のNDE[抗SNAP25(sNDE)および抗CD171(cNDE)]、および抗EAAT1およびOMGP固定化ストリップ(抗CD81プローブ)を使用した。
【0073】
アッセイ特異度はエキソソームマーカーCD81および脳マーカーSNAP25、CD171、EAAT1、およびOMGPの組み合わせに基づく。
図6に示されるように、多くの抗体および無ビオチンコントロールは、大量の血漿をアプライした後であってもシグナルを示さなかった。強いシグナルは適切な抗体の組み合わせからのみ得られたものであり、ELISAシステムが2つの抗体の組み合わせに特異的であることを示している。この研究で使用された各抗体の特異度は、製品の添付文書で特徴付けられた。
【0074】
従来のサンドイッチELISAとは異なり、これらの物質が2つの異なる標的エピトープを発現しないため組み換えタンパク質またはペプチドは定量標準に適用できない。したがって、我々は定量標準として使用するためにシングルドナーから50mLの血漿を得、100U/mLを任意に割り当て、-80℃冷凍庫で凍結保存した複数のアリコートを調製した。各アリコートをその後の研究に使用した。
【0075】
図1に示されるように、TE、sNDE、cNDE、ADE、およびODEについてのELISAシグナルは適用した標準血漿の量に比例して直線的に増加した。2つの異なる濃度の全エキソソーム懸濁液を標準血漿にスパイクしたとき、RLUは全ての分析物と平行して上方にシフトし、これはエキソソームの回収が一貫していることを示す。
【0076】
図3(A-E)において使用される72血漿試料からの二連の試料のアッセイ内変動並びに8つの異なる血漿試料の2つの別々の測定のアッセイ内変動(
図2F)を示す、アッセイ精度を
図2A-Eに示す。アッセイ内およびアッセイ外変動の両方は最小であった。
【0077】
血漿試料をPBSで8倍に希釈し、5-20μLを各ELISAに二連で使用した。5つのすべての分析物について必要とされる血漿容量は14μL程度に小さかった。第一のコントロール群は複数の決定を伴う商業的供給源(Innovative Research)(n=8)から得られる健康なコントロール血漿である。セット1は、16の年齢-性別一致コントロールおよび各8人のMCIおよびADを含んだ。セット2は、ADおよび商業的供給源(Precision Med)から得られる年齢-性別一致コントロール試料の各5人を含んだ。セット3は、ADおよび第二の商業的供給源(BioReclamation)から得られる年齢-性別一致コントロールの各4人を含有した。
【0078】
図3A-Eに示されるように、5つのすべての分析物について、我々の検出限界より高いレベルの15を超える対象を見出した。セット3において、ADにおけるTE、sNDE、cNDEのレベルは、対のコントロールよりも低かったが、これらの値はセット1における対のコントロールよりもADにおける方がわずかに高かった。2つの異なる集団のために、我々は次に検出限界を超える対象の発生率を算出した(
図3、a-e)。コントロールおよびAD試料の両方は、上限を超えて15-25%を示しが、MCI試料は上限の50%をもたらした。ノンパラメトリックMann-Whitney検定を使用して、ODEにおけるMCIの発生率は、コントロールのものよりも有意に(p<0.05)高かった。
【0079】
図3における値はX-Yプロットで再分析した。
図4に示されるように、sNDEおよびcNDEのレベルは全エキソソームの値とよく相関した。これは、NDEの量が全エキソソームの計算に影響を与えるのに十分大きいことを示していてもよい。興味深いことに、sNDEおよびcNDEの値はr
2=0.991と非常に近く、NDEの値はADEおよびODEの値とは非常に異なり、NDE、ADE、ODEが異なる標的であることを示している。
【0080】
図3に示されるように、TE、sNDE、cNDE、ADE、およびODEのレベルは、2つの異なる群、我々の検出範囲内の1群および検出上限を超える他の群を実証した。
図2に示されるように二連の試料間のばらつきが非常に小さかったため、高い値は技術的な問題に起因した。かかる高い値は第二の実験において再現された(
図2F)。かかる対象の血漿希釈は、範囲内の値の減少(
図7)を実証した。脳のエキソソームは近隣領域に病変を広め、伝播させることが知られており、かかるエキソソームの過剰生産は、将来最も重要な研究の焦点となるだろう。MCIは、コントロールよりも有意に高い値を示したため(
図3E)、これは、認識機能障害またはADのさらなる発症の素因に関連する可能性がある。
【0081】
我々は、
図4に示される分析物間の相互関係を解析した。sNDEおよびcNDEのレベルはr
2=0.991により示されるように密接に相関した。
図8に示されるように、CD171は、抗SNAP25-固定化されたELISAストリップ上で検出されたが、SNAP25は抗CD171-固定化されたELISAストリップでは非常に低かった。我々の予備的研究において、我々はそれぞれsNDEおよびcNDEを単離し、タウタンパク質の量が、sNDE(データ示さず)よりもcNDEにおいてはるかに高いことを見出した。したがって、これらの2つのNDEsは同一ではない。しかしながら、これらの2種のNDEsの値は、ADEおよびODEの値とは異なり、NDE、ADE、およびODEは異なる標的を見ていることを示す。
【0082】
これらの結果は、本発明の方法および組成物がエキソソームおよびエキソソームの特定の亜集団を単離および定量するために有用であるということを示した。これらの結果は、本発明の方法および組成物は神経変性障害を有する対象を同定するために有用であるということをさらに示した。これらの結果は本発明の方法およびバイオマーカーは神経変性障害を診断するために有用であるということをさらに示した。これらの結果は、本発明の方法が神経変性障害を有する対象を治療するために有用であろうことを示唆した。
【0083】
実施例2:生体試料からのエキソソームの亜集団の単離および定量
エキソソームの特定の亜集団は以下のように生体試料から単離され、定量された。ELISAアッセイはホワイトELISAプレート(Coster,Corning,NY)、ELISAコーテイングバッファ、およびELISA洗浄バッファ(BioLegend,San Diego,CA)を使用して実施した。様々な抗体およびコントロールマウスIgGをELISAプレート上に固定化した。プールしたヒト血漿をELISAプレートにアプライした後、キャプチャーされたエキソソームを抗CD81抗体(BD Pharmigen,San Jose、CA)とインキュベートした。
【0084】
図9に示されるように、様々な神経伝達物質受容体に対する抗体は陽性であり、それはドーパミン受容体1(DR1)、セロトニン受容体2A(SR2A)および2C(SR2C)、ガンマ-アミノ酪酸(GABA)B1受容体、グルタミン酸受容体-1(GluR-1)、オピオイド受容体(KOR)、および睡眠ペプチドオレキシン受容体(OR)を含んだ。ドーパミントランスポーター(DAT)はシナプス前ドーパミン作動性ニューロン上に存在する膜タンパク質であり、これはまた、抗CD81で増加したシグナルを示した(
図9参照)。
【0085】
これらの結果は、本発明の方法および組成物が、エキソソームおよびシナプス前ドーパミン作動性ニューロン由来のエキソソーム、またはシナプス後ドーパミン作動性、セロトニン作動性、GABA作動性、グルタミン酸作動性、およびオピオイドニューロン由来のエキソソームの特定の亜集団を単離および定量するのに有用であることを示した。これらの結果は、本発明の方法およびバイオマーカーがエキソソームおよび例えば、ニューロン由来のエキソソームを含むエキソソームの特定の亜集団を単離および定量するのに有用であることをさらに示した。
【0086】
本明細書に示され記載されたものに加え、本発明の種々の改変が、前述の説明から当業者に明らかになるであろう。このような改変は、添付の特許請求の範囲内に入ることが意図される。
【0087】
本明細書中で引用されるすべての参考文献は、その全体が出典明示により本明細書に組み込まれる。