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特許7102416エネルギー弁別光子計数検出器およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】エネルギー弁別光子計数検出器およびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20220711BHJP
   G01N 23/046 20180101ALI20220711BHJP
   G01N 23/087 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
A61B6/03 370Z
G01N23/046
G01N23/087
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019536314
(86)(22)【出願日】2018-01-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-06
(86)【国際出願番号】 US2018012474
(87)【国際公開番号】W WO2018129243
(87)【国際公開日】2018-07-12
【審査請求日】2020-12-02
(31)【優先権主張番号】15/400,798
(32)【優先日】2017-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100151286
【弁理士】
【氏名又は名称】澤木 亮一
(72)【発明者】
【氏名】ジン,ヤナン
(72)【発明者】
【氏名】エディック,ピーター・マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ルイ,シュエ
(72)【発明者】
【氏名】フ,ゲン
【審査官】伊知地 和之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-230589(JP,A)
【文献】特開2004-325183(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0215230(US,A1)
【文献】特表2012-517604(JP,A)
【文献】特表2011-527223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/14
G01N 23/00 - 23/227
G01T 1/00 - 1/16
G01T 1/167 - 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数のエネルギースペクトル(150、152)でX線(20)を放出するように構成されたX線源(12)と、
ケイ素ベースの直接変換材料を含むX線検出器(28)であって、前記X線検出器(28)は、動作中に前記透過X線(20)に応答して信号を生成するように構成され、前記信号は、各露光間隔について異なるエネルギーレベルで観察された光子計数に対応するX線検出器(28)と、
前記X線検出器(28)から前記信号を受信し、観察されたエネルギーレベルに基づいて少なくとも1つのそれぞれのエネルギースペクトル(150、152)について光子計数データを
第1の閾値を超える一次高エネルギービン(132)、
第2の閾値と前記第1の閾値との間の低エネルギービン(130)、および
廃棄閾値(120、136)を超え、前記第2の閾値を下回る二次高エネルギービン(140)
の1つにビニングするように構成された処理構成要素と
を備え、
前記処理構成要素は、前記一次高エネルギービン(132)および二次高エネルギービン(140)について導出された高エネルギー光子計数(NHE)を使用し、かつ前記低エネルギービン(130)の低エネルギー光子計数(NLE)を使用して1つまたは複数の画像を生成するようにさらに構成される、X線ベースの撮像システム(10)。
【請求項2】
前記処理構成要素が、観察されたエネルギーレベルに基づいて前記少なくとも1つのそれぞれのエネルギースペクトル(150、152)についての前記光子計数データを、少なくとも前記廃棄閾値(120、136)を下回る光子計数を含む廃棄ビン(110)にビニングするようにさらに構成される、請求項1に記載のX線ベースの撮像システム(10)。
【請求項3】
前記第1の閾値が、低エネルギー/高エネルギー閾値(122)を含む、請求項1に記載のX線ベースの撮像システム(10)。
【請求項4】
前記第2の閾値が、前記X線ビーム(20)の最高エネルギーに基づくコンプトン閾値(138)を含む、請求項1に記載のX線ベースの撮像システム(10)。
【請求項5】
前記廃棄閾値(120、136)が、前記第1の閾値に対応する前記エネルギーレベルで観察可能なコンプトン散乱の最高エネルギーに基づいて設定される、請求項1に記載のX線ベースの撮像システム(10)。
【請求項6】
前記第1の閾値および前記第2の閾値の一方または両方が、観察されたコントラスト対ノイズ比(CNR)または線量正規化コントラスト対ノイズ比(CNRD)に基づいて設定される、請求項1に記載のX線ベースの撮像システム(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される主題は、材料分解の場面におけるような、ケイ素ベースの光子計数検出器を含む、エネルギー弁別光子計数検出器の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
非侵襲的撮像技術は、被検体(患者、製造品、手荷物、包装、または乗客)の内部構造または特徴の画像を非侵襲的に得ることを可能にする。特に、そのような非侵襲的撮像技術は、データを取得し、画像を構築し、あるいは被検体の内部特徴を表すために、ターゲット体積を通るX線の差動透過または音波の反射などの様々な物理的原理に依存している。
【0003】
例えば、X線ベースの撮像技術では、X線放射が人間の患者などの対象とする被検体に及び、放射の一部が検出器に衝突し、そこで強度データが収集される。デジタルX線システムでは、検出器は、検出器表面の個別のピクセル領域に衝突する放射の量または強度を表す信号を発生する。その後、信号を処理して、検討のために表示することができる画像を生成することができる。
【0004】
コンピュータ断層撮影(CT)として知られる1つのそのようなX線ベースの技法では、スキャナは、X線源からの扇形または円錐形のX線ビームを、患者などの撮像されている物体の周りの多数の視野角位置に投影し得る。X線ビームは、物体を横切るときに減衰され、検出器における入射X線強度の強度を表す信号を発生する一組の検出器要素によって検出される。信号は、処理されてX線経路に沿った物体の線形減衰係数の線積分を表すデータを発生する。これらの信号は、典型的には、「投影データ」または単に「投影」と呼ばれる。フィルタ補正逆投影法などの再構築技法を使用することによって、患者または撮像された物体の対象とする領域の体積または体積レンダリングを表す画像を生成することができる。医療の場面では、次に再構築された画像またはレンダリングされた体積から病状または他の対象とする構造を特定または識別することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2016/106348A1号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、これらのタイプの撮像技法で使用される放射検出器は、エネルギー積分(すなわち、取得間隔中に蓄積された全積分エネルギーの読み出し)モードまたは光子計数(各個々のX線光子が検出され、そのエネルギーが特徴付けられる)モードで動作する。エネルギー積分は、ほとんどの臨床用途におけるX線検出器の従来のモードである。しかしながら、エネルギー積分読み出し手法は、読み出し動作を含む、検出器に関連する電子ノイズが利用可能な信号を圧倒する可能性がある低フラックス撮像用途ではうまく機能しない。当業者に明らかなように、光子計数検出器は、分解能の向上、検出された光子を最適に重み付けすることによるコントラスト対ノイズ比を改善する能力、X線ビームの材料をより良好に描写する能力など、エネルギー積分検出器と比較して他の利点を提供する。
【0007】
いくつかの用途では、光子計数は、エネルギー積分手法に関連する全積分エネルギー情報よりも興味深いものである。陽電子放出断層撮影(PET)用の従来のシンチレータベースの光子計数検出器は、高価であり、CTなどの高計数率用途には実用的ではないケイ素光電子増倍管(SiPM)を利用する。さらに、いくつかの光子計数手法は、検出された光子のエネルギーに関する情報なしで生の光子計数データのみをもたらすなど、それらが発生する情報のタイプにおいて制限される可能性がある。
【0008】
対照的に、二重エネルギー(例えば、高および低エネルギー撮像)および/または材料分解撮像などの特定の技法は、一般的な意味で光子計数だけでなく、所与の露光間隔についてのスペクトル情報を得ることからも利益を得る。すなわち、そのような技法は、それぞれのエネルギービンに分割され、したがって異なるエネルギーでの光子事象を弁別し、それによって異なる光子エネルギー範囲で観察される光子の数を決定および計数する光子計数を利用する。この必要性に対処するために、特定のエネルギー弁別光子計数X線検出器技術を用いることができる。特定の場合には、そのような手法は、シンチレータベースの中間変換および後続の生成された光学光子の検出を用いる技法とは対照的に、入射X線を測定可能な信号(すなわち、直接変換材料を使用して生成される電子正孔対)に直接変換する検出媒体を用いる。
【0009】
そのような直接変換材料の例は、テルル化カドミウム亜鉛(CZT)およびテルル化カドミウム(CdTe)を含む。しかしながら、これらの材料は、実際には対象となり得るより高い入射計数率が可能ではない。あるいは、ケイ素ストリップを直接変換のエネルギー弁別光子計数検出器の一部として用いることができる。そのようなケイ素ストリップベースの検出器は、CZTまたはCdTe検出器よりも高い入射光子計数率が可能であり得る。しかしながら、ケイ素ストリップベースの検出器による主な減衰メカニズムは、コンプトン散乱であり、これは検出器の関連するエネルギー応答関数における線量効率およびスペクトル忠実度を実質的に低下させる可能性がある。特に、そのようなコンプトン散乱事象は、典型的には、そのエネルギーの一部を通過する際に相互作用する粒子(すなわち、偏向または散乱粒子)に伝達するX線光子をもたらし、それによってX線光子のエネルギーを変化させる(すなわち、低下させる)と共に、その軌道を潜在的に変化させる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態では、X線ベースの撮像システムが提供される。この実施形態によれば、X線ベースの撮像システムは、1つまたは複数のエネルギースペクトルでX線を放出するように構成されたX線源と、ケイ素ベースの直接変換材料を含むX線検出器とを含む。X線検出器は、動作中に透過X線に応答して信号を生成するように構成され、信号は、各露光間隔について異なるエネルギーレベルで観察された光子計数に対応する。X線ベースの撮像システムはまた、X線検出器から信号を受信し、観察されたエネルギーレベルに基づいて少なくとも1つのそれぞれのエネルギースペクトルについて光子計数データを第1の閾値を超える一次高エネルギービン、第2の閾値と第1の閾値との間の低エネルギービン、および廃棄閾値を超え、第2の閾値を下回る二次高エネルギービンの1つにビニングするように構成された処理構成要素を含む。処理構成要素は、一次高エネルギービンおよび二次高エネルギービンについて導出された高エネルギー光子計数を使用し、かつ低エネルギービンの低エネルギー光子計数を使用して1つまたは複数の画像を生成するようにさらに構成される。
【0011】
別の実施形態では、X線ベースの撮像システムが提供される。この実施形態によれば、X線ベースの撮像システムは、1つまたは複数のエネルギースペクトルでX線を放出するように構成されたX線源と、ケイ素ベースの直接変換材料を含むX線検出器とを含む。X線検出器は、動作中に透過X線に応答して信号を生成するように構成され、信号は、各露光間隔について異なるエネルギーレベルで観察された光子計数に対応する。X線ベースの撮像システムはまた、X線検出器から信号を受信し、観察されたエネルギーレベルに基づいて少なくとも1つのそれぞれの透過エネルギースペクトルについて光子計数データを第1の閾値を超える一次高エネルギービン、第2の閾値と第1の閾値との間の低エネルギービン、第3の閾値と第2の閾値との間の二次高エネルギービン、および電子ノイズ閾値と第3の閾値との間の未分解ビンの1つにビニングするように構成された処理構成要素を含む。処理構成要素は、未分解ビンの光子計数に基づいて補正高エネルギー光子計数データおよび補正低エネルギー光子計数データを生成し、補正高エネルギー光子計数データおよび低エネルギー光子計数データを使用して1つまたは複数の画像を生成するようにさらに構成される。
【0012】
さらなる実施形態では、X線光子計数データを分解するための方法が提供される。この方法によれば、測定された透過X線スペクトルは、物体を横切るX線光子を測定することによって物体について取得される。測定された透過スペクトルに基づいて、低エネルギー光子計数、高エネルギー光子計数、および未分解エネルギー光子計数が決定される。初期材料分解が低エネルギー光子計数および高エネルギー光子計数を使用して実行され、初期水面積密度推定値および初期ヨウ素面積密度推定値を生成する。シミュレートされた透過スペクトルは、シミュレートされたスペクトルと、初期水面積密度推定値および初期ヨウ素面積密度推定値からの減衰とを使用して生成される。シミュレートされた透過スペクトルおよび未分解エネルギー光子計数に基づいて、低エネルギー光子計数補正および高エネルギー光子計数補正が生成される。低エネルギー光子計数は、低エネルギー光子計数補正を使用して補正されて補正低エネルギー光子計数を生成し、高エネルギー光子計数は、高エネルギー光子計数補正を使用して補正されて補正高エネルギー光子計数を生成する。後続の材料分解は、補正低エネルギー光子計数および補正高エネルギー光子計数を使用して実行され、補正水面積密度推定値および補正ヨウ素面積密度推定値を生成する。
【0013】
別の実施形態では、X線光子計数データを分解するための方法が提供される。この方法によれば、測定された透過スペクトルは、物体を通るX線光子の透過を測定することによって物体について取得される。高エネルギー光子計数は、低エネルギー/高エネルギー閾値を超える光子、およびコンプトン散乱を受け、低エネルギー/高エネルギー閾値のコンプトンエッジを超え、X線ビームの最高エネルギー光子のコンプトンエッジを下回る検出されたエネルギーをもたらす光子を考慮することによって決定される。低エネルギー光子計数は、X線ビームの最高エネルギー光子のコンプトンエッジを超え、低エネルギー/高エネルギー閾値を下回る光子を考慮することによって決定される。材料分解が低エネルギー光子計数および高エネルギー光子計数を使用して実行され、水面積密度推定値およびヨウ素面積密度推定値を生成する。
【0014】
本発明のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明を読解すればより良好に理解され、添付の図面においては、図面全体を通して同一の符号は同一の部分を表している。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示の態様による、患者のCT画像を取得して画像を処理するように構成されたコンピュータ断層撮影(CT)システムの一実施形態の概略図である。
図2】本開示の態様による、様々な入射エネルギーレベルでのケイ素ベースの光子計数検出器のスペクトル応答を示す図である。
図3】本開示の態様による、24cmの水を横切った後の140kVでの検出されたスペクトルを示す図である。
図4】本開示の態様による、廃棄閾値を下回る光子計数がさらなる動作から廃棄される第1のビニング構成を示す図である。
図5】本開示の態様による、廃棄閾値とコンプトン閾値との間の光子計数がさらなる動作のために二次高エネルギービンでビニングされる第2のビニング構成を示す図である。
図6】本開示の態様による、廃棄されたコンプトン散乱光子(最も左側のグラフ)および利用されたコンプトン散乱光子(最も右側のグラフ)についての低および高エネルギーでのスペクトルを示す図である。
図7】本開示の態様による、電子ノイズ閾値とさらなる閾値との間の光子計数が後続の分解のために未分解エネルギービンでビニングされる第3のビニング構成を示す図である。
図8】本開示の態様による、未分解光子計数を分解するためのプロセスフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1つまたは複数の具体的な実施形態を、以下に記載する。これらの実施形態の簡潔な説明を提供することを目的として、実際の実施態様のすべての特徴は、本明細書には記載されないことがある。あらゆるエンジニアリングまたは設計プロジェクトなどの実際の実施態様の開発においては、開発者の特定の目的を達成するために、例えばシステム関連および事業関連の制約条件への対応など実施態様に特有の決定を数多くしなければならないし、また、これらの制約条件は実施態様ごとに異なる可能性があることを理解されたい。さらに、このような開発努力は、複雑で時間がかかるが、それでもなお本開示の利益を有する当業者にとっては、設計、製作、および製造の日常的な仕事であることを理解されたい。
【0017】
本発明の様々な実施形態の要素を導入する場合、冠詞「1つの(a)、(an)」、「この(the)」、および「前記(said)」は、その要素が1つまたは複数存在することを意味するものとする。「備える(comprising)」、「含む(including)」および「有する(having)」という用語は包括的なものであって、列挙した要素以外の追加の要素が存在し得ることを意味するものとする。さらに、以下の説明におけるあらゆる数値例は非限定的なものであり、したがって追加の数値、範囲および百分率は開示している実施形態の範囲内にあるものとする。
【0018】
以下の説明は一般に医用撮像の場面で提供されるが、本技法はそのような医療の場面に限定されないことを理解されたい。実際に、そのような医療の場面における例および説明の提供は、現実の実施態様および用途の事例を提供することによって説明を容易にすることに過ぎない。しかしながら、本手法は、製造された部品または商品の非破壊検査(すなわち、品質管理または品質検討用途)、および/または包装、箱、荷物の非侵襲的検査など(すなわち、セキュリティまたはスクリーニング用途)の他の場面でも利用することができる。一般に、本手法は、光子計数の場面におけるエネルギー弁別が望ましい、任意の撮像またはスクリーニングの場面において望ましい可能性がある。
【0019】
本明細書で説明されるように、エネルギー分解光子計数検出器は、従来のエネルギー積分検出器では利用可能ではないスペクトル情報を提供することができる。あるタイプのエネルギー弁別光子計数検出技術は、直接変換センサ材料としてケイ素ストリップを用いる。直接変換材料としてのケイ素の使用は、CZTまたはCdTeなどの他の直接変換材料で得ることができるよりも高い計数率能力を提供するかもしれないが、コンプトン吸収メカニズムのためにスペクトル忠実度が低下するという潜在的なコストがかかる。特に、CZTおよびCdTeと比較してケイ素の原子番号が比較的小さいため、コンプトン散乱が吸収メカニズムとして支配的であるのに対して、光電吸収は、CZTおよびCdTe直接変換センサにおいて支配的である。その結果、ケイ素直接変換センサのより高いX線エネルギーでは、X線光子の大部分は、光電効果に対してコンプトン効果(すなわち、散乱相互作用による部分エネルギー損失)を示す(すなわち、検出器における実質的に完全なエネルギー蓄積-直接変換X線検出器にとって望ましいメカニズム)。コンプトン効果を示すX線光子におけるエネルギーの部分損失に関して、散乱事象によって失われるエネルギーは、偏向角と初期エネルギーの関数である。ケイ素ベースの検出器を使用して観察されるコンプトン効果を示すX線光子の大部分は、より悪いエネルギー分解能をもたらし、観察された堆積エネルギーに基づいてX線光子の正しいエネルギーレベルを決定することを困難にする。例として、ケイ素ベースの光子計数検出器は、その検出器応答において約66%のコンプトン散乱を有する可能性があり、これはスペクトル忠実度および線量効率を低下させる。
【0020】
理論的には、デコンボリューション手法を使用して検出されたスペクトルから元のスペクトルを復元し、それによってコンプトン効果に起因する損失に対処することができる。しかしながら、実際には、この手法は、検出されたスペクトルが臨床的または非実験室の設定で典型的には利用可能なものを超えて、非常に高いエネルギー分解能を有する場合にのみ可能である。したがって、実際の用途では、ケイ素ベースの検出器は、デコンボリューションタイプのアルゴリズムには不十分な、測定事象を分類および特徴付けるための限られた数のエネルギービンを有するだけである。
【0021】
本手法は、コンプトン散乱光子から有用な情報を抽出するために、ケイ素ベースの光子計数X線検出器におけるコンプトン散乱のこれらの影響に異なる方法で対処する。これらの技法は、コンピュータ断層撮影検出器または他の適切なタイプの放射線写真用X線検出器などのケイ素ベースの光子計数検出器の二重または多重エネルギー性能を改善する。
【0022】
前述の説明を念頭に置いて、図1は、本明細書で説明されるエネルギー弁別光子計数手法の態様による、画像データを取得および処理するための撮像システム10の一実施形態を示す。図示の実施形態では、システム10は、複数のエネルギースペクトル(二重エネルギーの状況における高および低エネルギースペクトルまたは光子計数の状況における多重エネルギースペクトルなど)でX線投影データを取得し、組織または材料タイプを特徴付けるための材料分解を含む投影データを処理し、かつ表示および分析のために、投影データを体積再構築へと再構築するように設計されたコンピュータ断層撮影(CT)システムである。CT撮像システム10は、撮像セッション中に、異なるエネルギー特性を有する複数のスペクトルでのX線生成を可能にする1つまたは複数のX線管または固体放出構造などの1つまたは複数のX線源12を含む。例えば、放出スペクトルは、それらの平均値、中央値、最頻値、最大値、または最小値のX線エネルギーの1つまたは複数において異なってもよい。
【0023】
例として、一実施形態では、X線源12(例えば、X線管)は、比較的低エネルギーの多色放射スペクトル(例えば、約80kVpのX線管動作電圧)と、比較的高エネルギーの多色放出スペクトル(例えば、約140kVpのX線管動作電圧)との間で切り換えられてもよい。理解されるように、X線源(単数または複数)12は、本明細書に列挙したもの以外のエネルギーレベル(すなわち、特定のkVp範囲を含むスペクトル)付近に局在する多色スペクトルで、および/または所与の検査に対して2つより多い放出スペクトルで放出することができる。放出のためのそれぞれのエネルギーレベルの選択は、少なくとも部分的には、撮像される解剖学的構造および組織の特徴付けのために対象とする材料に基づいてもよい。
【0024】
特定の実施態様では、源12は、X線ビーム20を操縦し、X線ビーム20の高強度領域の形状および/または範囲を画定し、X線ビーム20のエネルギープロファイルを制御または画定し、かつ/または対象とする領域内にない患者24の部分へのX線露光を制限するために使用され得るフィルタアセンブリまたはビーム整形器22に近接して配置することができる。実際には、フィルタアセンブリまたはビーム整形器22は、源12と撮像体積との間でガントリ内に組み込まれてもよい。
【0025】
X線ビーム20は、被検体(例えば、患者24)または対象とする物体(例えば製造された構成要素、手荷物、包装など)が配置されている領域に入る。被検体は、X線20の少なくとも一部を減衰させ、その結果、本明細書で説明されるように複数の検出器要素(例えば、ピクセル)によって形成された検出器アレイ28に作用する減衰したX線26が生じる。本明細書で説明されるように、検出器28は、その出力が測定された位置で、スキャンまたは撮像セッションに対応する時間間隔にわたって検出器に衝突する光子の数とエネルギーに関する情報を伝えるエネルギー弁別光子計数検出器を含む光子計数検出器であり得る。特定のそのような実施形態では、エネルギー弁別光子計数検出器は、ケイ素ストリップに基づく検出器などの直接変換タイプの検出器(すなわち、シンチレータ中間変換を用いない)であり得る。
【0026】
各検出器要素は、ビームが検出器28に当たる間隔中に検出器要素の位置で入射X線光子(例えば、入射光子のエネルギーおよび数)を表す電気信号を発生する。電気信号を取得して処理し、1つまたは複数の投影データセットを生成する。図示の例では、検出器28は、システムコントローラ30に結合されており、システムコントローラ30は検出器28によって生成されたデジタル信号の取得を命令する。
【0027】
システムコントローラ30は、フィルタ化、検査および/または較正プロトコルを実施するように撮像システム10の動作を命令し、取得したデータを処理することができる。X線源12に関して、システムコントローラ30は、X線検査シーケンスのために電力、焦点場所、制御信号などを供給する。特定の実施形態によれば、システムコントローラ30は、フィルタアセンブリ22、CTガントリ(またはX線源12および検出器28が取り付けられる他の構造的支持体)、ならびに/または検査の過程にわたる患者支持体の並進および/もしくは傾斜の動作を制御し得る。
【0028】
加えて、システムコントローラ30は、モータコントローラ36を介して、撮像システム10の構成要素および/または被検体24を移動させるために使用される線形位置決めサブシステム32および/または回転サブシステム34の動作を制御することができる。システムコントローラ30は、信号処理回路および関連するメモリ回路を含むことができる。そのような実施形態では、メモリ回路は、X線源12および/またはフィルタアセンブリ22を含む撮像システム10を動作させ、本明細書で説明されるステップおよびプロセスに従って、検出器28によって取得されたデジタル測定値を処理するためにシステムコントローラ30によって実施されるプログラム、ルーチン、および/または符号化アルゴリズムを記憶し得る。一実施形態では、システムコントローラ30は、プロセッサベースのシステムの全部または一部として実装することができる。
【0029】
源12は、システムコントローラ30内に含まれるX線コントローラ38によって制御することができる。X線コントローラ38は、電力、タイミング信号、および/または焦点サイズおよびスポット場所を源12に提供するように構成することができる。加えて、いくつかの実施形態では、X線コントローラ38は、システム10内の異なる場所にある管またはエミッタが互いに同期して、もしくは互いに独立して動作することができるように源12を選択的に作動させ、または撮像セッション中に異なるエネルギープロファイル間で源を切り替えるように構成され得る。
【0030】
システムコントローラ30は、データ取得システム(DAS)40を含むことができる。DAS40は、検出器28からのデジタル信号など、検出器28の読み出し電子回路によって収集されたデータを受信する。次に、DAS40は、コンピュータ42などのプロセッサベースのシステムによる後続の処理のためにデータを変換および/または処理することができる。本明細書で説明される特定の実施態様では、検出器28内の回路は、データ取得システム40への送信前に検出器のアナログ信号をデジタル信号に変換することができる。コンピュータ42は、コンピュータ42によって処理されたデータ、コンピュータ42によって処理されるべきデータ、またはコンピュータ42の画像処理回路44によって実施される命令を記憶することができる1つまたは複数の非一時的メモリ装置46を含むかまたはそれらと通信することができる。例えば、コンピュータ42のプロセッサは、メモリ46に記憶された1つまたは複数の命令セットを実施することができ、メモリ46は、コンピュータ42のメモリ、プロセッサのメモリ、ファームウェア、または同様のインスタンス化であってもよい。
【0031】
コンピュータ42はまた、オペレータワークステーション48を介してオペレータによって提供される命令およびスキャンパラメータに応答してなど、システムコントローラ30によって可能にされる機能(すなわち、スキャン動作およびデータ取得)を制御するように適合することができる。システム10はまた、オペレータが関連するシステムデータ、撮像パラメータ、生の撮像データ、再構成データ(例えば、軟組織画像、骨画像、セグメント化された血管樹など)、材料基礎画像、および/または材料分解などを見ることを可能にするオペレータワークステーション48に結合されたディスプレイ50を含むことができる。加えて、システム10は、オペレータワークステーション48に結合され、任意の所望の測定結果を印刷するように構成されたプリンタ52を含むことができる。ディスプレイ50およびプリンタ52はまた、(図1に示すように)直接またはオペレータワークステーション48を介してコンピュータ42に接続されてもよい。さらに、オペレータワークステーション48は、画像保管通信システム(PACS)54を含むか、またはそれに結合することができる。PACS54は、遠隔システムまたはクライアント56、放射線科情報システム(RIS)、病院情報システム(HIS)、または内部もしくは外部のネットワークに結合することができ、そのようにして様々な場所の第三者が画像データにアクセスすることができる。
【0032】
全体的な撮像システム10の前述の説明を念頭に置き、図2および図3を参照して、コンプトン散乱X線光子から情報を抽出する本手法のさらなる文脈を確立するために、スペクトル応答のさらなる説明を提供する。図2を参照すると、いくつかの典型的な入射エネルギーレベル(例えば、30keV、50keV、70keV、90keV、110keV、および130keV)でのケイ素ベースの光子計数検出器のスペクトル応答が示されている。逆に、図3は、24cmの水ファントムのスキャンについて、140kVpで動作するX線管から検出された制動放射スペクトル、すなわち、二重エネルギー撮像の状況における一般的な「高」エネルギースペクトルを示す。図2に示すように、所与の入射エネルギーのスペクトル応答関数は、入射エネルギーにおけるピークまたは「デルタパルス」100と、コンプトン散乱によって引き起こされる低エネルギーにおける半一定プラトー104とからなる(すなわち、高エネルギーX線光子は、それらのエネルギーの一部を「喪失」し、散乱事象において偏向し、それによってスペクトルの低エネルギー端で検出される)。このコンプトン散乱は、ケイ素ベースの検出器を使用するときに、検出されたスペクトルの低エネルギーにおける光子の大部分の原因となる。
【0033】
図3を参照すると、図3のプロットされたスペクトルは、X線管が140kVpで動作するときの24cmの水ファントムのスキャンに対するものである。理解され得るように、スペクトルが撮像物体によって減衰されると、スペクトルのコンプトン散乱部分(すなわち、スペクトルの低またはより低エネルギー端)は、大部分の低エネルギー光電光子が物体によって吸収されるので、光電部分(すなわち、スペクトルの高またはより高エネルギー端)からよりよく分離される。
【0034】
以下の図および説明は、ケイ素ベースの光子計数検出器の状況においてコンプトン散乱の影響を処理するための様々な手法を記載している。
【0035】
図4図6は、取得したデータセットのコンプトン散乱光子に対処するための特定の手法を示す。図4では、すべての潜在的な電子ノイズおよびコンプトン散乱事象(選択された廃棄閾値120を下回る事象)が廃棄され(廃棄セットまたはビン110)、これは、この例ではさらなる計算および動作から多数の検出された光子すべてを廃棄することからなる。残りの観察された光子計数は、特定された低エネルギー/高エネルギー閾値122に対するそれらの観察されたエネルギーに基づいて低エネルギービン130と高エネルギービン132との間でビニングされる。
【0036】
逆に、図5では、ビニング戦略が用いられ、ここでは廃棄可能な電子ノイズ(廃棄ビン110)と有用な情報を抽出するために回収またはビニングされる可能性があるコンプトン散乱事象とを区別するために別々の廃棄閾値136およびコンプトン散乱閾値138が用いられる。廃棄閾値136は、一次高エネルギー事象と一次低エネルギー事象とを区別するために閾値122として使用されるエネルギーレベルで観察可能なコンプトン散乱の最高エネルギーであるなど、低エネルギー(LE)/高エネルギー(HE)閾値122の関数として決定することができる。すなわち、最適化された廃棄閾値136は、低エネルギー/高エネルギー閾値122における光子のコンプトンエッジとして特徴付けることができる。同様に、コンプトン閾値138および低エネルギー/高エネルギー閾値122の閾値最適化は、最高のコントラスト対ノイズ比(CNR)または線量正規化コントラスト対ノイズ比(CNRD)についてスクリーニングすることによって達成することができる。コンプトン閾値138はまた、X線ビームの最高エネルギーの光子のコンプトン散乱から生じる可能性のある最高エネルギーのコンプトン散乱事象、すなわち図3に示すスペクトルに対する140keVの光子に対しては約50keVに基づいて選択され得る。
【0037】
例として、図5では、低エネルギー光子と高エネルギー光子とを区別するためのエネルギー閾値122が図5に示すように65keVであると特定される場合、次に廃棄閾値は、65keVの入射エネルギーからのコンプトン散乱の最高エネルギーである13keVであると特定することができる。13keVと閾値138(ここでは図4のように約40keV)との間の観察された光子は、コンプトン散乱事象を介してエネルギーを失い、低エネルギーコンプトン散乱事象として観察または測定されている高エネルギー光子の入射によって主にまたは完全に引き起こされるので、このビン(すなわち、ビン140)で観察された光子は、高エネルギー光子として計数され、廃棄ビン110と低エネルギービン130との間に二次高エネルギービン140を効果的に作り出す。2つの高エネルギービンの計数を組み合わせて、材料分解画像、軟組織画像、骨画像、セグメント化された血管樹などのような1つまたは複数の画像の生成において低エネルギー計数データと併せて使用することができる。
【0038】
このビニング戦略は、スペクトル分離および線量効率に大きな影響を与える。図6は、図4に示す手法による廃棄されたコンプトン散乱光子(最も左側のグラフ)および図5に示す手法による利用されたコンプトン散乱光子(最も右側のグラフ)についての低および高エネルギーでのスペクトルを示す。これらの例では、低および高エネルギースペクトルは、24cmの水を通して、40keVのコンプトン閾値で得られた。示すように、低エネルギースペクトル150は変化しないが、コンプトン散乱事象が利用される高エネルギースペクトル152は、そのような事象が廃棄される場所よりも高く、その結果、実質的により有用な高エネルギー事象が検出される。
【0039】
特徴付けられた低エネルギー事象と高エネルギー事象との間の不均衡は、図5に示すビニング手法から観察され得、これはそのような不均衡が観察されるノイズ特性を増幅し得るので、材料分解の場面において最適にはなり得ない。しかしながら、エネルギー閾値122をより高くシフトすることは、廃棄閾値136もそれに従ってより高くシフトされ、これはより多くの光子が廃棄されることを意味するので、低エネルギーフラックスと高エネルギーフラックスとの間のこの不均衡に対する満足のいく解決策ではない。したがって、場合によっては、平衡フラックスと線量効率の間にトレードオフがある場合がある。
【0040】
この状況に対処するために、追加の実施態様を用いることができる。図7に示すように、一例では、このさらなる実施態様は、一次低エネルギー/高エネルギー閾値122を約70~75keVなどに増加させ、廃棄閾値を電子ノイズをわずかに上回るように低下させ、閾値は、例えば約5keVまでの電子ノイズ閾値136として表される。上述のように低エネルギー/高エネルギー閾値122に基づいて決定されるコンプトンエッジ150は、これらの状況では約18~20keVである。したがって、検出された光子が低エネルギービンと高エネルギービンの両方に由来する未分解または混合エネルギービン152が存在する。
【0041】
未分解ビン152の低エネルギー光子と高エネルギー光子の混合物は、様々な手法を使用して分解することができる。一実施態様では、電子ノイズ閾値136から低エネルギー/高エネルギー閾値のコンプトンエッジまたは閾値150までのX線光子は、少なくとも一次低エネルギーおよび高エネルギービン130、132内に明確に含まれるX線光子から導出され得るスペクトル形状およびスペクトル応答関数を使用して分解され得る。補正高エネルギー計数を組み合わせて、材料分解画像、軟組織画像、骨画像、セグメント化された血管樹などのような1つまたは複数の画像の生成において補正低エネルギー計数データと併せて使用することができる。
【0042】
例として、図8は、フォワードモデルを使用してビン152の低エネルギー光子と高エネルギー光子の混合物を分解する1つの材料分解手法のステップを示すフローチャートを示す。この手法では、測定されたデータは、最初にビン110および152のデータを廃棄し、水およびヨウ素の面積密度、すなわち水およびヨウ素密度分布の投影データを導出する標準的な材料分解プロセスを受ける。未分解ビン152の測定された計数は次に、水およびヨウ素面積密度推定値を、検出器応答および材料分解プロセスをエミュレートするフォワードモデルに供給して補正項(すなわち、Δ)を生成することによって分解される。低および高エネルギーでの分解された計数は、測定された計数に加算され、最終的な材料分解が低および高エネルギービンの補正計数に基づいて実行される。
【0043】
より詳細な説明として、図8のフローチャートは、X線管放出スペクトルS(E)および撮像を受けている物体に基づいて、X線スペクトルが物体によって減衰され(ブロック180)、透過スペクトルS(E)が得られる例を示す。透過スペクトルは、光子計数検出によって検出され(ブロック182)、低エネルギー光子計数(NLE)、高エネルギー光子計数(NHE)、および分解されるべき光子計数(Nmix)を生成するように(図7で説明したビニング動作に基づいて)処理される。
【0044】
図示の例では、低エネルギー光子計数(NLE)および高エネルギー光子計数(NHE)は、他の出力の中でも特に、ヨウ素面積密度推定値および水面積密度推定値をもたらす材料分解プロセス184で使用される。シミュレートされたスペクトルS(E)(これは初期透過スペクトルに対応する)は、導出された水およびヨウ素面積密度推定値に基づいて減衰され(ブロック190)、シミュレートされた透過信号に対する透過スペクトルS(E)を決定する。次いで、分解されるべき光子計数(Nmix)は、シミュレートされた透過スペクトルと共に、光子計数検出器モデル192への入力として提供されてもよく、これは出力として、測定された透過データから決定される低エネルギー光子計数(NLE)および高エネルギー光子計数(NHE)に対する、推定上は増加である、低エネルギーおよび高エネルギー計数に対する補正(ΔNLEおよびΔNHE)をもたらす。低エネルギー光子計数(NLE)および高エネルギー光子計数(NHE)に伴う変化(ΔNLEおよびΔNHE)は、光子計数補正ステップ196への入力として提供され、補正低エネルギー光子計数(補正NLE)および補正高エネルギー光子計数(補正NHE)が決定される。補正低エネルギー光子計数(補正NLE)および補正高エネルギー光子計数(補正NHE)は、次いで、材料分解プロセス198への入力として提供され得、これは1つの出力として、補正ヨウ素および水面積密度推定値を提供する。
【0045】
本発明の技術的効果は、低エネルギーのビンと廃棄された計数のビンとの間に追加の高エネルギービンを用いることならびに/またはスペクトル形状および/もしくはスペクトル応答関数を使用して不確定のコンプトン散乱光子を分解するなどによってコンプトン散乱効果が対処される、ケイ素ベースの光子計数検出器を含むシステムを含む。
【0046】
本明細書は、最良の様式を含む本発明を開示するため、およびどのような当業者も、任意の装置またはシステムの作製および使用ならびに任意の組み込まれた方法の実行を含む本発明の実践を可能にするために、実施例を使用している。本発明の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者が想到する他の実施例を含むことができる。そのような他の実施例は、それらが特許請求の範囲の文言から相違しない構造要素を有する場合、または特許請求の範囲の文言から実質的には相違しない同等の構造要素を含む場合、特許請求の範囲の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0047】
10 撮像システム
12 X線源
20 X線ビーム、X線
22 フィルタアセンブリ、ビーム整形器
24 患者、被検体
26 減衰したX線
28 検出器、検出器アレイ
30 システムコントローラ
32 線形位置決めサブシステム
34 回転サブシステム
36 モータコントローラ
38 X線コントローラ
40 データ取得システム(DAS)
42 コンピュータ
44 画像処理回路
46 非一時的メモリ装置、メモリ
48 オペレータワークステーション
50 ディスプレイ
52 プリンタ
54 画像保管通信システム(PACS)
56 遠隔システム、クライアント
100 ピーク、デルタパルス
104 半一定プラトー
110 廃棄ビン
120 廃棄閾値
122 低エネルギー(LE)/高エネルギー(HE)閾値
130 低エネルギービン
132 高エネルギービン
136 廃棄閾値、電子ノイズ閾値
138 コンプトン散乱閾値、コンプトン閾値
140 ビン、二次高エネルギービン
150 コンプトンエッジ、閾値、低エネルギースペクトル
152 ビン、未分解ビン、混合エネルギービン、高エネルギースペクトル
180 ブロック
182 ブロック
184 材料分解プロセス
190 ブロック
192 光子計数検出器モデル
196 光子計数補正ステップ
198 材料分解プロセス
LE 低エネルギー光子計数
HE 高エネルギー光子計数
mix 分解されるべき光子計数
ΔNLE 低エネルギー計数に対する補正
ΔNHE 高エネルギー計数に対する補正
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8