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特許7102436セキュリティエレメント及びセキュリティエレメントの形成方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】セキュリティエレメント及びセキュリティエレメントの形成方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/18 20060101AFI20220711BHJP
   G03H 1/02 20060101ALI20220711BHJP
   B42D 25/324 20140101ALI20220711BHJP
   B42D 25/328 20140101ALI20220711BHJP
【FI】
G02B5/18
G03H1/02
B42D25/324
B42D25/328
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019552483
(86)(22)【出願日】2018-03-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-23
(86)【国際出願番号】 EP2018057465
(87)【国際公開番号】W WO2018172528
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2020-10-16
(31)【優先権主張番号】102017106433.8
(32)【優先日】2017-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506151626
【氏名又は名称】オーファウデー キネグラム アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルター ハラルト
(72)【発明者】
【氏名】フラシナ コラド
(72)【発明者】
【氏名】マデル セバスチャン
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第2489524(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0167422(US,A1)
【文献】特開2016-203627(JP,A)
【文献】特開2011-022478(JP,A)
【文献】特開2018-134840(JP,A)
【文献】特表2016-503356(JP,A)
【文献】特表2011-510339(JP,A)
【文献】特開平08-161449(JP,A)
【文献】特開2012-198371(JP,A)
【文献】欧州特許第1599345(EP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/18
5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つ又は複数の第1の微細構造(10)を有するセキュリティエレメント(1)であって、
前記第1の微細構造(10)は、少なくとも所定のセクションにおいて湾曲した一つ又は複数の軌道(2,2a~2u)あるいは少なくとも所定のセクションにおいて湾曲した軌道(2,2a~2u)の一つ又は複数のセクションにそれぞれ設けられ、及び/又は、少なくとも所定のセクションにおいて湾曲した一つ又は複数の軌道(2,2a~2u)あるいは少なくとも所定のセクションにおいて湾曲した軌道(2,2a~2u)の一つ又は複数のセクションに沿ってそれぞれ延在しており、
前記第1の微細構造(10)は、光学的に可変の情報の第1の項目を提供し、
前記光学的に可変の情報の前記第1の項目は、複数のイメージ点(3a~3u)を含む一つ又は複数のイメージエレメント(3,3’~3IX)を有し、
前記一つ又は複数のイメージエレメントはモチーフとして形成され、
前記複数のイメージ点は、前記一つ又は複数の第1の微細構造(10)の前記一つ又は複数の軌道(2,2a~2u)により生成され、
前記複数のイメージ点の各々は、前記第1の微細構造(10)のうち割り当てられた第1の微細構造により設けられ、前記割り当てられた第1の微細構造(10)は、前記一つ又は複数の軌道(2,2a~2u)の割り当てられた軌道(2,2a~2u)に設けられるか、あるいは前記一つ又は複数の軌道(2,2a~2u)の割り当てられた軌道(2,2a~2u)に沿ってそれぞれ延在し、前記一つ又は複数の軌道(2,2a~2u)の異なる1つの軌道が前記イメージ点(2,2a~2u)の各々に割り当てられ、
前記第1の微細構造(10)は、前記一つ又は複数の微細構造エレメントを有し、当該微細構造エレメントは、格子線として形成され、
前記微細構造エレメントの長手方向の向きは、前記軌道(2,2a~2u)又は前記割り当てられた軌道(2,2a~2u)の輪郭に追従し、かつ、前記軌道(2,2a~2u)の進行方向と平行に方向付けられるか、あるいは、前記割り当てられた軌道の接線方向に対して一定の角度を有し、
前記セキュリティエレメントは、光学情報の第2の項目を生じさせる一つ又は複数の第2の微細構造(20)を有し、
前記一つ又は複数の第1の微細構造(10)及び前記一つ又は複数の第2の微細構造(20)の少なくとも一方の微細構造は、所定の方向に沿って観察したときに、当該所定の方向に対する横断方向及び垂直方向の少なくとも一方の方向に観察した場合と比べて、入射光についてより大きな散乱能及びより大きな散乱角の少なくとも一方を有する一つ又は複数の異方性のマット構造(10e)として形成される、ことを特徴とするセキュリティエレメント(1)。
【請求項2】
一つ又は複数の第1の微細構造(10)を有するセキュリティエレメント(1)であって、
前記第1の微細構造(10)は、少なくとも所定のセクションにおいて湾曲した一つ又は複数の軌道(2,2a~2u)あるいは少なくとも所定のセクションにおいて湾曲した軌道(2,2a~2u)の一つ又は複数のセクションにそれぞれ設けられ、及び/又は、少なくとも所定のセクションにおいて湾曲した一つ又は複数の軌道(2,2a~2u)あるいは少なくとも所定のセクションにおいて湾曲した軌道(2,2a~2u)の一つ又は複数のセクションに沿ってそれぞれ延在しており、
前記第1の微細構造(10)は、光学的に可変の情報の第1の項目を提供し、
前記光学的に可変の情報の前記第1の項目は、複数のイメージ点(3a~3u)を含む一つ又は複数のイメージエレメント(3,3’~3IX)を有し、
前記一つ又は複数のイメージエレメントはモチーフとして形成され、
前記複数のイメージ点は、前記一つ又は複数の第1の微細構造(10)の前記一つ又は複数の軌道(2,2a~2u)により生成され、
前記複数のイメージ点の各々は、前記第1の微細構造(10)のうち割り当てられた第1の微細構造により設けられ、前記割り当てられた第1の微細構造(10)は、前記一つ又は複数の軌道(2,2a~2u)の割り当てられた軌道(2,2a~2u)に設けられるか、あるいは前記一つ又は複数の軌道(2,2a~2u)の割り当てられた軌道(2,2a~2u)に沿ってそれぞれ延在し、前記一つ又は複数の軌道(2,2a~2u)の異なる1つの軌道が前記イメージ点(2,2a~2u)の各々に割り当てられ、
前記第1の微細構造(10)は、前記一つ又は複数の微細構造エレメントを有し、当該微細構造エレメントは、格子線として形成され、
前記微細構造エレメントの長手方向の向きは、前記軌道(2,2a~2u)又は前記割り当てられた軌道(2,2a~2u)の輪郭に追従し、かつ、前記軌道(2,2a~2u)の進行方向と平行に方向付けられるか、あるいは、前記割り当てられた軌道の接線方向に対して一定の角度を有し、
前記一つ又は複数の軌道及び前記一つ又は複数の第1の微細構造の少なくとも一方は、一つ又は複数の交差領域において1回又は複数回交差し、
前記交差領域(11)の各々において交差する前記軌道の前記一つ又は複数の第1の微細構造(10)が排他的に一つ又は複数の交差領域(11)に設けられる、ことを特徴とするセキュリティエレメント(1)。
【請求項3】
前記第1の微細構造(10)は、光学的に可変の情報の第1の項目を提供し、
前記光学的に可変の情報の第1の項目は、複数のイメージ点(3a~3u)からなる一つ又は複数のイメージエレメント(3,3’~3IX)を有し、前記イメージ点(3a~3u)は、前記軌道(2,2a~2u)の異なる軌道に設けられるか、又は、前記軌道(2,2a~2u)の異なる軌道に沿って延在する第1の微細構造(10)により設けられ、かつ/又は、
前記光学的に可変の情報の第1の項目は、複数のイメージ点(3a~3u)からなる一つ又は複数のイメージエレメント(3,3’~3IX)を有し、前記イメージ点(3a~3u)の各々は、前記第1の微細構造(10)のうち割り当てられた第1の微細構造により設けられ、割り当てられた前記第1の微細構造(10)の各々は、前記一つ又は複数の軌道(2,2a~2u)のうち割り当てられた軌道(2,2a~2u)に設けられるか、あるいは前記一つ又は複数の軌道(2,2a~2u)のうち割り当てられた軌道(2,2a~2u)に沿ってそれぞれ延在し、前記一つ又は複数の軌道(2,2a~2u)の異なる1つの軌道が前記イメージ点(3a~3u)の各々に割り当てられ、
前記セキュリティエレメント(1)が傾斜及び/又は折曲及び/又は回転中に少なくとも1つの光源又は少なくとも1つの点光源により照射されると、前記一つ又は複数のイメージ点(3a~3u)が、前記割り当てられた軌道(2,2a~2u)に沿って移動し、
前記セキュリティエレメント(1)の傾斜及び/又は回転中における一定の角速度で前記軌道(2,2a~2u)に沿った前記イメージ点(3a~3u)の移動速度は、互いに異なり、かつ及び/又は互いに異なる移動速度曲線を有する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のセキュリティエレメント(1)。
【請求項4】
前記第1の微細構造(10)は、前記セキュリティエレメント(1)が傾斜及び/又は折曲及び/又は回転したときに第1の光学的効果として、ムーブメント効果、モーフィング効果及び/又は反転効果を生じさせる一連のイメージエレメント(3,3’~3IX)を生じさせ、かつ/又は、
前記第1の微細構造(10)は、前記セキュリティエレメント(1)が傾斜及び/又は折曲及び/又は回転したときに第1の光学的効果として、3Dムーブメント効果、3Dモーフィング効果及び/又は3D反転効果を生じさせる一連のイメージエレメント(3,3’~3IX)を生じさせ、
前記一連のイメージエレメント(3,3’~3IX)は、前記セキュリティエレメント(1)が傾斜及び/又は折曲及び/又は回転したときの前記軌道(2,2a~2u)に沿ったイメージ点(3a~3u)の移動により生じる、ことを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のセキュリティエレメント(1)。
【請求項5】
前記一つ又は複数の軌道(2,2a~2u)は、各々の場合、円弧形及び/又は円形の軌道として形成され、
一つ又は複数のイメージエレメント(3,3’~3IX)の少なくとも2つのイメージエレメントは、前記一つ又は複数のイメージエレメント(3,3’~3IX)の前記少なくとも2つのイメージエレメントが、各々の割り当てられた円形軌道上の同じ位置に配置されないように配置及び/又は配列され、
前記円形軌道の中心点(M,4a~4j,4k,4q)は、最大の円形軌道の半径の10%以下である最大距離を互いの間に有し、及び/又は
前記円形軌道の前記中心点(M,4a~4j,4k,4q)は、3mm以下である最大距離を互いの間に有する、ことを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のセキュリティエレメント(1)。
【請求項6】
前記一つ又は複数の軌道(2,2a~2u)は、楕円軌道としてそれぞれ形成されており、かつ/又は、
前記一つ又は複数の軌道(2,2a~2u)は、閉軌道及び/又は開軌道としてそれぞれ形成されている、ことを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のセキュリティエレメント(1)。
【請求項7】
前記一つ又は複数の軌道(2,2a~2u)の幅は、各々の軌道の進行方向に応じて変化し、
前記各々の軌道(2,2a~2u)の幅は、前記各々の軌道の長手方向縁部間の距離によって決まる、ことを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のセキュリティエレメント(1)。
【請求項8】
前記一つ又は複数の軌道(2,2a~2u)の半径(Rf~Rp)及び/又は曲率及び/又は曲率半径は、各々の軌道の進行方向に応じて変化し、少なくとも所定のセクションにおいて前記各々の軌道の進行方向に沿って連続又は不連続に変化する、ことを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のセキュリティエレメント(1)。
【請求項9】
前記一つ又は複数の軌道(2,2a~2u)の幅は、各々の軌道の1つの半径又は複数の半径(Rf~Rp)よりも小さく、及び/又は、前記各々の軌道の曲率半径よりも小さく、かつ/又は、
前記一つ又は複数の軌道(2,2a~2u)の幅は、3μm~300μmである、ことを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のセキュリティエレメント(1)。
【請求項10】
前記一つ又は複数の軌道(2,2a~2u)の曲率は、前記軌道の進行方向全体に亘って符号が変わらず、かつ/又は、
前記一つ又は複数の軌道(2,2a~2u)の曲率は、0.02mm-1~2mm-1である、ことを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のセキュリティエレメント(1)。
【請求項11】
前記一つ又は複数の軌道(2,2a~2u)は互いに異なる曲率進行を有する、ことを特徴とする請求項1~1のいずれかに記載のセキュリティエレメント(1)。
【請求項12】
2つ以上の軌道の曲率進行は同一である、ことを特徴とする請求項1~1のいずれかに記載のセキュリティエレメント(1)。
【請求項13】
前記セキュリティエレメント(1)は、光学情報の第2の項目を生じさせる一つ又は複数の第2の微細構造(20)を有する、ことを特徴とする請求項2~1のいずれかに記載のセキュリティエレメント(1)。
【請求項14】
前記一つ又は複数の第1の微細構造(10)は、複数の第1の微細構造エレメント(100)を有し、一つ又は複数の第2の微細構造(20)は、複数の第2の微細構造エレメント(200)を有し、
前記第1又は第2の微細構造エレメントは、前記第1又は第2の微細構造エレメントの間隔、レリーフ深さ、レリーフ形状、前記第1又は第2の微細構造エレメントの長手方向の向きのパラメータによりそれぞれ特徴づけられ、
前記第1又は第2の微細構造(10,20)の一つ又は複数の第1又は第2の微細構造エレメント(100,200)は、マイクロミラーを形成する少なくとも1つの第1又は第2のファセット面を有し、
一つ又は複数の第1のファセット面及び/又は一つ又は複数の第2のファセット面は、10μm~5000μmの最小表面積を有し、かつ/又は、
前記一つ又は複数の第1のファセット面及び/又は前記一つ又は複数の第2のファセット面は、前記セキュリティエレメント(1)の表面法線に対して1°~45°の傾斜角を有し、かつ/又は、
前記一つ又は複数の第1のファセット面及び/又は前記一つ又は複数の第2のファセット面は、平滑な表面あるいは凸状又は凹状に湾曲した表面を有し、かつ/又は、
前記一つ又は複数の第1及び/又は第2のファセット面は、少なくとも1つの無彩色の三次元表現のレリーフイメージを表し、
前記第1又は第2のファセット面の傾斜角は、好ましくは、1°~45°であり、及び/又は、前記一つ又は複数の第1又は第2のファセット面の周期及び/又は傾斜は、一つ又は複数の横方向寸法に沿って連続的にそれぞれ変化する、ことを特徴とする請求項1~1のいずれかに記載のセキュリティエレメント(1)。
【請求項15】
前記一つ又は複数の軌道(2,2a~2u)の少なくとも部分的領域において、前記第1の微細構造(10)の一つ又は複数の第1の微細構造エレメント(100)の局所的な向き、前記第1の微細構造(10)の一つ又は複数の第1のファセットの局所的な所定の方向及び/又は局所的な傾斜角は、前記軌道(2,2a~2u)の重心線により決まる、前記軌道(2,2a~2u)の局所的な曲率に対応し、かつ/又は、
前記一つ又は複数の軌道(2,2a~2u)の少なくとも部分的領域において、前記第1の微細構造(10)の一つ又は複数の第1の微細構造エレメント(100)の局所的な向き、前記第1の微細構造(10)の一つ又は複数の第1のファセットの局所的な所定の方向及び/又は局所的な傾斜角は、前記軌道(2,2a~2u)の局所的な曲率と0°~30°以下の範囲で異なっており、
前記局所的な曲率は前記軌道(2,2a~2u)の重心線により決まり、かつ/又は、
前記一つ又は複数の軌道(2,2a~2u)の少なくとも部分的領域において、前記第1の微細構造(10)の一つ又は複数の第1の微細構造エレメント(100)の局所的な向き、前記第1の微細構造(10)の一つ又は複数の第1のファセットの局所的な所定の方向及び/又は局所的な傾斜角は、所定の偏差角度+/-30°の範囲で前記軌道(2,2a~2u)の局所的な曲率と異なり、
前記局所的な曲率は前記軌道(2,2a~2u)の重心線により決まり、かつ/又は、
前記一つ又は複数の軌道(2,2a~2u)の少なくとも部分的領域において、前記第1の微細構造(10)の一つ又は複数の第1の微細構造エレメント(100)の局所的な向き、前記第1の微細構造(10)の一つ又は複数の第1のファセットの局所的な所定の方向及び/又は局所的な傾斜角は、前記軌道(2,2a~2u)の局所的な曲率に対して、-45°~+45°の角度を有し、
前記局所的な曲率は前記軌道(2,2a~2u)の重心線により決まり、かつ/又は、
前記一つ又は複数の軌道(2,2a~2u)の少なくとも部分的領域において、前記第1の微細構造(10)の一つ又は複数の第1の微細構造エレメント(100)の長手方向の範囲及び/又は所定の方向は、前記セキュリティエレメントの表面法線に垂直に広がる平面に対して、前記軌道(2,2a~2u)に平行及び/又は直交して延び、前記軌道(2,2a~2u)の重心線に平行及び/又は直交して延びており、
前記部分的領域は、前記軌道(2,2a~2u)の長さ及び/又は表面積の少なくとも50%である、ことを特徴とする請求項1~1のいずれかに記載のセキュリティエレメント(1)。
【請求項16】
前記一つ又は複数の軌道(2,2a~2u)及び/又は前記一つ又は複数の第1の微細構造(10)は、一つ又は複数の交差領域(11)において1回又は複数回交差し、
各々の交差領域(11)において交差する前記軌道(2,2a~2u)の前記一つ又は複数の第1の微細構造(10)が排他的に一つ又は複数の交差領域(11)に設けられ、
前記一つ又は複数の交差領域(11)において、交差する軌道(2,2a~2u)の前記一つ又は複数の第1の微細構造(10)が一次元又は二次元の格子に設けられ、当該格子の幅は10μm~300μmであり、
前記一つ又は複数の交差領域(11)の領域における前記一つ又は複数の軌道(2,2a~2u)の外側に、一つ又は複数の表面領域(15)が設けられ、当該表面領域には、前記各々の交差領域において交差する前記軌道(2,2a~2u)の1つの前記第1の微細構造(10)が設けられ、
前記一つ又は複数の表面領域は、前記交差領域(11)から150μm未満に配置される、ことを特徴とする請求項1~1のいずれかに記載のセキュリティエレメント(1)。
【請求項17】
前記一つ又は複数の軌道(2,2a~2u)は、前記第1の微細構造(10)が設けられていない一つ又は複数の中断部(12)を有し、
前記中断部(12)は、前記一つ又は複数の軌道(2,2a~2u)の表面積及び/又は長さの0%~30%であり、
前記一つ又は複数の中断部(12)は、前記一つ又は複数の軌道(2,2a~2u)の一つ又は複数の交差領域(11)に配置されており、
前記一つ又は複数の中断部(12)は、ランダム及び/又は擬似ランダムに分配される、ことを特徴とする請求項1~に記載のセキュリティエレメント(1)。
【請求項18】
前記一つ又は複数の軌道(2,2a~2u)及び/又は前記一つ又は複数の第1の微細構造(10)は、一つ又は複数のオフセット(13)をそれぞれ有し、
前記一つ又は複数のオフセット(13)の横方向寸法は、前記軌道(2,2a~2u)の幅より小さく、
前記一つ又は複数のオフセット(13)は、ランダム及び/又は擬似ランダムにそれぞれ分配される、ことを特徴とする請求項1~1に記載のセキュリティエレメント(1)。
【請求項19】
第2の微細構造(20)は、前記軌道(2,2a~2u)に重ならない表面領域に設けられ、かつ/又は、
前記第2の微細構造(20)は、300μmより小さい幅を有する縞状にそれぞれ形成され、互いに離間した2つ以上の部分的領域からなる表面領域に設けられ、かつ/又は、
前記第2の微細構造(20)は、300μmより小さい幅を有する縞状にそれぞれ形成され、互いに離間した2つ以上の部分的領域からなる表面領域に設けられ、一つ又は複数の部分的領域は、少なくとも所定の領域において、前記一つ又は複数の軌道(2,2a~2u)の割り当てられた中断領域と重なる、ことを特徴とする請求項1~18のいずれかに記載のセキュリティエレメント(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セキュリティエレメント及びセキュリティエレメントを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
当技術分野において種々のデザインを有するセキュリティエレメントが公知である。セキュリティエレメントは、特に、セキュリティ上の効果を生じさせて、対象物の認証を行うように機能する。さらに、セキュリティエレメントは、特に対象物の操作、例えば偽造をより困難にする。セキュリティエレメントは、例えばID文書などのセキュリティ文書及び例えば紙幣などの有価証券において特に重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本願発明の目的は、セキュリティエレメントを改善すること、及び、特に良好な視覚上の効果を有するセキュリティエレメントを形成する方法を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的は、請求項1に記載のセキュリティエレメント及び請求項63に記載の方法により実現する。
【0005】
そのようなセキュリティエレメント及び方法は、一つ又は複数の第1の微細構造を有するセキュリティエレメントであって、第1の微細構造は、少なくとも所定のセクションにおいて湾曲した一つ又は複数の軌道あるいは少なくとも所定のセクションにおいて湾曲した軌道の一つ又は複数のセクションにそれぞれ設けられ、及び/又は、少なくとも所定のセクションにおいて湾曲した一つ又は複数の軌道あるいは少なくとも所定のセクションにおいて湾曲した軌道の一つ又は複数のセクションに沿ってそれぞれ延在している。
【0006】
そのようなセキュリティエレメントを形成する方法において、一つ又は複数のイメージエレメントのイメージ点を含む少なくとも1つのファイルが設けられ、当該ファイルは、イメージ点の位置的配置を含み、少なくとも所定のセクションにおいて湾曲した一つ又は複数の軌道又は少なくとも所定のセクションにおいて湾曲した一つ又は複数の軌道の一つ又は複数のセクションは、イメージ点の位置的配置から決定され、一つ又は複数の軌道又は軌道のセクションにおいて、照射されたときに光学的に可変の情報の第1の項目、特に一つ又は複数の3D効果(3D=3次元)及び/又はムーブメント効果、好ましくは無彩色又は単色の3D効果及び/又はムーブメント効果を生じさせる、一つ又は複数の第1の微細構造が設けられる。
【0007】
これにより、セキュリティエレメントの真正性を確認でき、セキュリティエレメントの偽造に対する保護がさらに改善される。
【0008】
驚くべきことに、本発明により、一つ又は複数のイメージエレメントの一つ又は複数の視覚的に魅力的な激しいムーブメント、モーフィング及び/又は反転効果、並びに/あるいは、一つ又は複数のイメージエレメントの一つ又は複数の視覚的に魅力的な激しい3Dムーブメント、3Dモーフィング及び/又は3D反転効果が実現する。構造の選択に応じて、さらに好ましくは、無彩色又は単色の効果が生じる。モーフィング効果とは、一のモチーフから他のモチーフへの変化、変形又は移行を意味する。この変化、変形又は移行は、いくつかの中間段階を有する。反転効果とは、好ましくは、一のモチーフから他のモチーフへの切り替えを意味する。切り替えは、特に中間段階を経ずに行われる。
【0009】
本発明の有利な設計が従属クレームに記載されている。
【0010】
セキュリティエレメントは、人間の観察者が認識可能な情報の項目を生成する。この情報の項目は光学的に可変である。光学的に可変とは、情報項目の光学的な外観が観察角及び/又は照射角に依存することを意味する。セキュリティエレメント、特に光学的なセキュリティエレメントは、好ましくは、転写フィルムの転写プライ、ラミネートフィルム又はフィルムエレメントからなる。あるいは、セキュリティエレメントは、対象物の表面に直接適用される。セキュリティエレメント、特に光学セキュリティエレメントは、好ましくは、セキュリティ文書の表面に適用されるか、あるいは少なくとも部分的にセキュリティ文書に埋め込まれる。
【0011】
光の照射下で、第1の微細構造は、好ましくは、人間の観察者又は機械により検知可能な一つ又は複数の光学的効果を生じさせる。人間の目で認識可能な波長は、電磁スペクトルの380nm(紫)~780nm(暗赤色)の範囲であり、430nm未満及び690nmを超える目の相対感度は、555nmでの最大値の1%未満である。その結果、例えば、明るいLED又はレーザなどの非常に強い光源だけが、380nm~430nm及び690nm~780nmのスペクトル範囲で認識される。
【0012】
第1の微細構造は、好ましくは光学的に可変の情報の第1の項目をもたらす。この光学的に可変の情報の第1の項目は、好ましくは、一つ又は複数の3D効果及び/又はムーブメント効果を含む。これらの効果は、好ましくは、無彩色又は単色である。無彩色の効果の場合、回折色効果が生じないか又はほとんど生じず、イメージエレメントは人間の観察者にとって白色又は灰色、マット又は光沢のある金属のように見える。単色の効果の場合、イメージエレメントは、実質的に単色を表示し、「通常の」回折構造の場合に生じるレインボー効果を生じさせない。
【0013】
光学的に可変の情報の第1の項目は、好ましくは、一つ又は複数のイメージエレメントを有する。これらのイメージエレメントは、好ましくは、いくつかのイメージ点からなる。イメージ点は、好ましくは、異なる軌道に設けられるか又は異なる軌道に沿って延在する第1の微細構造によりもたらされる。
【0014】
したがって、所定の観察及び/又は照射方向にイメージ点をもたらすため、イメージエレメントのイメージ点は、一つ又は複数の軌道又は一つ又は複数の軌道での配置に基づいて入射光を散乱、反射又は回折する一つ又は複数の第1の微細構造によりもたらされる。
【0015】
一つ又は複数のイメージエレメントの各イメージ点は、好ましくは、割り当てられた第1の微細構造の1つによりもたらされ、割り当てられた第1の微細構造の各々は、一つ又は複数の軌道の割り当てられた軌道にそれぞれ設けられるか、あるいは割り当てられた軌道に沿って延在する。一つ又は複数の軌道のうち異なる1つの軌道は、好ましくは、イメージエレメントの各イメージ点に割り当てられる。さらに好ましくは、少なくとも1つの光源、好ましくは点光源で照射したときに、セキュリティエレメントが傾斜及び/又は折曲及び/又は回転すると、イメージ点が割り当てられた軌道に沿って移動するように、各軌道に割り当てられた微細構造が設計される。単一の点光源で照射したときに、軌道ごとに1つのイメージ点だけが表れることが好ましい。
【0016】
好ましくは、一つ又は複数のイメージエレメントのイメージ点が好ましくは互いに対して一定の距離で移動するように、一つ又は複数の第1の微細構造が提供される。イメージ点は、互いに対して移動するか、あるいは互いに結合される。イメージエレメントが変化しないことが好ましい。
【0017】
また、好ましくは互いに対するイメージ点の距離が変わるように一つ又は複数の第1の微細構造が設けられてもよい。特に、イメージ点の配置により狭い観察角範囲だけにおいてイメージエレメントが表されてもよい。他方、セキュリティエレメントがこの狭い観察角範囲外から観察された場合、ランダムに表れる配置でイメージ点が見えることが好ましく、特にイメージエレメントを表さないが、好ましくは点群として表される。
【0018】
「折曲」とは、好ましくは、力の作用による特定の方法でのセキュリティエレメントの変形を意味する。したがって、セキュリティエレメントの「折曲」とは、特に、セキュリティエレメントに対する力の作用を意味し、力の作用により、セキュリティエレメントの形状が変化するか又は変化する可能性がある。したがって、折曲した(折れ曲がった)セキュリティエレメントは、折曲していないセキュリティエレメントと比較して、形状、特に曲率が変化している。
【0019】
セキュリティエレメントの傾斜及び/又は折曲及び/又は回転の間における各々の軌道に沿った一定の角速度でのイメージ点の移動速度は、同一であるか又は互いに異なっていてもよく、かつ/あるいは、イメージ点は、互いに異なる移動速度曲線を有していてもよい。各々の軌道上におけるイメージ点の移動速度及び/又は移動速度曲線の対応する選択により、興味深い光学的に可変の効果が光学的に可変の情報の第1の項目として生じる。イメージ点の空間的配置及び空間的進行は、軌道及び/又は軌道のセクションに設けられる微細構造の対応する選択を通じて決定され得る。したがって、特に、少なくとも1つの軌道を有するセキュリティエレメントの一つ又は複数の任意の軸に対する一つ又は複数の回転及び/又は折曲及び/又は傾斜により、好ましくは、一つ又は複数のイメージエレメントの一つ又は複数のムーブメント効果、特に少なくとも1つの軌道に沿った光学的なムーブメント効果が観察者により認識され得る。特に、セキュリティエレメントの平面に対して垂直な一つ又は複数の軸を中心とした一つ又は複数の回転の場合、及び/又は、一つ又は複数の軸に対する一つ又は複数の傾斜の場合、及び/又は、セキュリティエレメントの平面及びしたがって第1の微細構造及び/又は軌道の平面における一つ又は複数の軸に対する一つ又は複数の折曲の場合、ムーブメント効果などが観察者により認識され得る。さらに、一つ又は複数のムーブメント効果は、照射及び/又は観察角に応じて、好ましくは、無彩色及び/又は単色のムーブメント効果及び/又はムーブメント効果となり得る。
【0020】
さらに、特にセキュリティエレメントが傾斜及び/又は折曲及び/又は回転するとき、ムーブメント効果、モーフィング効果及び/又は反転効果を生じさせる一連のイメージエレメントが第1の微細構造によりもたらされる。さらに好ましくは、セキュリティエレメントが傾斜及び/又は折曲及び/又は回転するとき、3Dムーブメント効果、3Dモーフィング効果及び/又は3D反転効果生じさせる一連のイメージエレメントが第1の微細構造によりもたらされる。前述のように、セキュリティエレメントが傾斜及び/又は折曲及び/又は回転するとき、一連のイメージエレメントは、軌道に沿ったイメージ点の移動により生じることが好ましい。
【0021】
第1の微細構造により生成されるイメージ点は、異なる形状を有し得る。これらのイメージ点は、好ましくは、円盤状又は楕円形状を有する。
【0022】
本明細書において、個々のイメージ点の寸法は、好ましくは、イメージ点が人間の裸眼で知覚されるように選択される。イメージ点の横方向寸法は、好ましくは、200μm~500μm、さらに好ましくは200μm~300μmである。しかし、さらに、イメージ点の横方向寸法が人間の目の解像度以下であってもよく、これにより、イメージエレメントの特定の高解像度を達成することができる。イメージ点の横方向寸法は、好ましくは、20μm~200μm、さらに好ましくは75μm~200μmである。人間の裸眼により知覚されるイメージ点の大きさは、イメージ点の実際の大きさと異なっていることがある。例えば、明るく発光するイメージ点はより大きく認識され得る。これにより、特に、実際のサイズが人間の裸眼の解像度以下であるイメージ点が認識される。イメージ点の少なくとも1つの横方向寸法は、好ましくは、各々のイメージ点を生成する第1の微細構造が配置される各々の軌道の幅により決まる。イメージ点の他の横方向寸法は、好ましくは、割り当てられた第1の微細構造の構造上のパラメータの選択に基づき決まる。
【0023】
2つ以上のイメージ点は、人間の裸眼で解像されないように互いに離間していてもよい。本実施例では、イメージ点の間隔は、好ましくは、5μm~300μm、さらに好ましくは、10μm~200μmとなるように選択される。
【0024】
本明細書において、イメージ点の間隔とは、好ましくは、互いに対するイメージ点の外縁の間隔を意味する。この間隔は、好ましくは、各々のイメージ点を生成する割り当てられた軌道の対応する間隔により決まる。
【0025】
さらに、個々のイメージ点が人間の目で解像できるように、イメージ点が互いに離間していてもよい。本実施例では、イメージ点の間隔は、好ましくは300μm以上、さらに好ましくは500μm以上である。
【0026】
有利には、一つ又は複数のイメージエレメントは、例えば、モチーフ、図形的に形成された輪郭、造形的な表現、イメージ(画像)、視覚的に認識可能なイメージ、シンボル、ロゴ、ポートレート、パターン、英数字、テキスト等とし得る。
【0027】
また、イメージエレメントの個々のイメージ点は、特に好ましくは、セキュリティエレメントが傾斜及び/又は折曲及び/又は回転する際に、軌道に対する異なる移動方向及び/又は各々の軌道上における速度を採用してもよい。特に、イメージエレメントのムーブメント効果は、所望のように、軸を中心とした回転に依存していてもよい。
【0028】
特に、変換、特にモーフィング、好ましくは反転は、ムーブメント、変換及び/又はモーフィング効果として観察者が認識可能な少なくとも1つの一連のイメージエレメントを生じさせる。
【0029】
一つ又は複数の軌道及び/又は第1の微細構造は、好ましくは、変換、特にモーフィング、好ましくは反転が1つのイメージエレメントから一つ又は複数のさらなるイメージエレメントに向かう一連のものとして生じるように互いに配置されてもよい。
【0030】
特に、任意の所望の軸に対するセキュリティエレメントの回転及び/又は折曲及び/又は傾斜は、観察者がムーブメント、変換及び/又はモーフィング効果として認識し得る一連のイメージエレメントを生じさせる。同様に、これは3Dムーブメント、3D変換及び/又は3Dモーフィング効果にも適用される。
【0031】
変換、特にモーフィング、好ましくは反転は、好ましくは、観察者が認識可能な少なくとも1つの無彩色又は単色のムーブメント、変換及び/又はモーフィング効果並びに/あるいは軌道及び/又は第1の微細構造に沿った少なくとも1つの照射及び/又は観察角に応じたムーブメント、変換及び/又はモーフィング効果を生じさせる。
【0032】
セキュリティエレメントが、例えば、数字の4及び数字の2の機能を有する場合、セキュリティエレメントが傾斜及び/又は折曲及び/又は回転すると、数字の4が数字の2に変わり、かつ/又は数字の2が数字の4に変わる。
【0033】
さらに、セキュリティエレメントが1つの軌道だけを有していてもよい。軌道が光源により照射され、セキュリティエレメントが任意の所望の軸に対して回転及び/又は折曲及び/又は傾斜すると、軌道に沿った照射及び/又は観察角に応じて少なくとも1つのムーブメント効果、特に少なくとも1つのムーブメント効果を生じさせる好ましくはイメージ点が観察者に認識可能となる。
【0034】
セキュリティエレメントは、好ましくは、複数の第1の微細構造を含む複数の軌道を有する。これにより、前述したように、特に、一つ又は複数のイメージエレメントを生じさせる、軌道の数に対応する数のイメージ点が観察者に認識可能となる。
【0035】
さらに、複数の光源により照射されるようにセキュリティエレメントを設計してもよい。複数の光源に対応する、観察者が認識可能な一つ又は複数のイメージエレメントを共に生じさせる複数の光源は、通常、軌道ごと及び/又は第1の微細構造ごとに設けられる。
【0036】
さらに、興味深い光学的効果が生成される。最も単純な場合、異なる点光源により同時に照射されたときに前述の光学的効果が複数回生じてもよい。さらに、また、異なる点光源を用いて異なる角度で照射されたときに、異なる光学的に可変の効果がセキュリティエレメントにより生成されてもよく、これにより、偽造が困難となるさらなるセキュリティ機能部、特にいわゆる「第2ライン」セキュリティ機能部がセキュリティエレメントにより提供されてもよい。「第2ライン」セキュリティ機能部とは、好ましくは、補助具を用いることによってのみ認識及び/又は検出可能なセキュリティ機能部を意味する。必要な補助具は、例えば、ルーペ又はUVランプ(UV=紫外線)などの通常の広く用いられる技術的な器具である。
【0037】
軌道とは、少なくとも所定のセクションにおいて湾曲した曲線、好ましくは楕円形、円形、らせん状及び/又は円弧曲線状に延び、所定の幅、好ましくは一定の幅を有する特に平坦な領域を意味する。曲線は、特に開いていても閉じていてもよいし、特に閉じた曲線の部分的領域であってもよい。さらに有利な設計では、軌道及び/又は軌道の一つ又は複数の輪郭は、一方の側において湾曲した曲線であってもよい。その結果、好ましくは、曲率の符号はどこでも同じであり、特に少なくとも1つの曲線の曲率はその符号を変えない。
【0038】
曲率とは、特に曲線の直線からの局所的なずれを意味する。曲線の曲率とは、特に、長さごとの方向の1つの変化及び/又は十分に短い曲線片又は曲線の進行に亘る延伸を意味する。直線の曲率はどの箇所においてもゼロに等しくなる。半径rを有する円は、どの箇所においても同一の曲率、具体的には1/rを有する。ほとんどの曲線の場合、曲率は曲線上の点から曲線上の点へと変化し、特に、曲率は曲線上の点から曲線上の点へと連続的に変化する。その結果、特に曲線は、ねじれや不連続な点を含まない。したがって、点Pにおける曲線の曲率は、点Pの周囲の曲線がどれだけ直線から逸脱しているかを示す。曲率の量は曲率半径と呼ばれ、局所的な半径ベクトル量の逆数に対応する。曲率半径は、曲線の接線点P及び/又は接触点の局所周囲における最良の近似を表す円の半径である。
【0039】
2つ以上の軌道、特に円軌道又は円形軌道及び/又は楕円軌道の曲率進行は同一であってもよい。特に好ましくは、一つ又は複数の第1の微細構造をそれぞれ含む2つ以上の軌道、さらに好ましくは円軌道又は円形軌道及び/又は楕円軌道は異なる曲率進行であってもよい。特に独特の3D効果、さらに好ましくは、強い無彩色ムーブメント効果と組み合わされた3D効果が生じ得る。一つ又は複数の第1の微細構造をそれぞれ含む2つ以上の軌道、好ましくは、円軌道又は円形軌道及び/又は楕円軌道は、特に互いに離間していてもよい。
【0040】
有利には、一つ又は複数の軌道の幅は、3μm~300μm、好ましくは10μm~100μmである。
【0041】
また、さらに、一つ又は複数の軌道の幅は、各軌道の進行方向に応じてそれぞれ変化してもよい。前記幅は、好ましくは、少なくとも所定のセクションにおいて各軌道の進行方向に沿って連続又は不連続に変化する。各軌道の幅は、好ましくは、各軌道の長手方向縁部の間の距離によって定まる。
【0042】
さらに、複数の軌道の全軌道の少なくとも50%、好ましくは70%、特に好ましくは90%は、閉軌道の少なくとも5分の1、好ましくは少なくとも4分の1、特に好ましくは3分の1、特に好ましくは半分をそれぞれ形成してもよい。
【0043】
本発明の特に有利な実施例において、複数の軌道の全軌道の少なくとも50%、好ましくは70%、特に好ましくは90%は、少なくとも4分の1円、好ましくは少なくとも3分の1円、特に好ましくは半円をそれぞれ形成してもよい。
【0044】
有利には、一つ又は複数の軌道の曲率は、各々の場合、0.02mm-1~2mm-1、好ましくは0.1mm-1~1mm-1であり、又は、半径は、0.5mm~50mm、特に1mm~10mmである。
【0045】
さらに好ましくは、一つ又は複数の軌道は、同じ、特に、全ての箇所、各々の軌道上の全ての箇所、さらに好ましくは各々の軌道上の全ての点において特に同一の曲率を有する。
【0046】
好ましくは、2つ以上の軌道、特に全ての軌道、さらに好ましくは全ての円形及び/又は楕円軌道の曲率進行はそれぞれ同一である。さらに、一つ又は複数の軌道、特に全ての軌道、さらに好ましくは全ての円形及び/又は楕円軌道が互いに異なる曲率進行をそれぞれ有していてもよい。
【0047】
上記の全ての実施例では、一つ又は複数の軌道、特に全ての軌道の曲率が各々の軌道の全進行に亘って符号が変わらないことが特に好ましい。
【0048】
さらにまた、一つ又は複数の軌道の半径及び/又は曲率及び/又は曲率半径が、各々の軌道の進行方向に応じてそれぞれ変化してもよい。この変化は、少なくとも所定のセクションにおいて各々の軌道の進行方向に沿って連続又は不連続であることが好ましい。さらに、一つ又は複数の軌道の幅は、各々の軌道の1つの半径又は複数の半径及び/又は各々の軌道の曲率半径よりも小さい。
【0049】
割り当てられた第1の微細構造は、好ましくは、各々の軌道又は各々の軌道のセクションに設けられる。各々の軌道又は各々のセクションの表面領域全体が割り当てられた第1の微細構造により覆われることが好ましい。さらに、割り当てられた第1の微細構造は、各々の軌道又は軌道の各セクションの表面領域の外側に設けられないことが好ましい。
【0050】
割り当てられた第1の微細構造は、割り当てられた軌道又は軌道の割り当てられたセクションに沿って延在することが好ましい。これは、割り当てられた第1の微細構造の少なくとも1つの構造パラメータは、軌道のパラメータ、特に軌道の接線方向の配置及び/又は幅に応じて変化し、特に第1の微細構造の構造エレメントの長手方向の範囲が割り当てられた軌道の接線方向の配置に対して一定の角度を有することを意味している。
【0051】
したがって、第1の微細構造及び/又は第1の微細構造の構造エレメントの長手方向の範囲、好ましい方向及び/又は少なくとも1つの配置は、好ましくは、割り当てられた軌道又は割り当てられた軌道の輪郭を追従する。微細構造の配置、長手方向の範囲及び/又は好ましい方向は、好ましくは、軌道上の全ての位置において軌道及び/又は軌道の輪郭の進行方向と平行に方向付けられており、かつ/又は所定のオフセット角を囲う。
【0052】
基本的な第1の微細構造の一つ又は複数の構造パラメータの局所的な配置は、好ましくは、各々の軌道の局所的な接線方向の配置と整列する。特に好ましくは、一つ又は複数の第1の微細構造の一つ又は複数の構造パラメータの局所的な接線方向の配置は、局所的な曲率半径ベクトルに対して各々の軌道と同じ角度を有してもよい。「局所的」とは、局所的な配置及び局所的な曲率半径ベクトルが観察される各軌道における同じ位置、特に同じ点を意味する。
【0053】
第1の微細構造として使用される異なる微細構造の選択に関する具体的な手順については、この微細構造の対応する箇所において後述する。
【0054】
さらに好ましくは、セキュリティエレメントは、光学情報の第2の項目を提供する一つ又は複数の第2の微細構造を有する。特に、光学情報の第2の項目は光学的に可変である。
【0055】
一つ又は複数の第2の微細構造は、好ましくは、軌道に重ならない表面領域にそれぞれ設けられる。
【0056】
一つ又は複数の第2の微細構造が設けられる表面領域は、好ましくは、パターン、特に英数字、模様、グラフィックモチーフとして又はポートレートとして形成される。
【0057】
さらに、第2の微細構造は、特に300μmより小さい幅で縞状に形成される、互いに離間した2つ以上の部分的領域からなる表面領域に設けられ得る。一つ又は複数の部分的領域は、少なくとも所定の領域において、一つ又は複数の軌道の割り当てられた中断領域と重なってもよい。
【0058】
さらに、特に、一つ又は複数の第2の微細構造の一つ又は複数の第2の微細構造エレメントは、一つ又は複数のレリーフ構造として、特に一つ又は複数の表面レリーフとして、好ましくは一つ又は複数の楕円形又は円形レンズとして、さらに好ましくは一つ又は複数のレンズ効果を有する一つ又は複数の自由形状面として、特に好ましくは一つ又は複数の自由に及び/又は円形に形成されたフレネルレンズとして形成されてもよい。
【0059】
一つ又は複数の第2の微細構造は、好ましくは、三次元に表れるレリーフイメージ、特に三次元で無彩色に表れるレリーフイメージをもたらす。このため、各々の第2の微細構造は、好ましくは、複数の第2のファセット面を有し、その進行及び/又は傾斜角の進行は、レリーフイメージが入射光の回折及び/又は反射により生じるように決定される。
【0060】
さらに、一つ又は複数の微細構造又は全ての微細構造又は第1の微細構造又は第1及び第2の微細構造は、好ましくは、体積ホログラムとして形成されるか、あるいは、HRI反射層(HRI=高屈折率)又は金属層又は色ずれ効果を生じさせる層又は色ずれ効果を生じさせる多層系と組み合わされる。
【0061】
使用する微細構造について、特に以下のことが明らかになる。
【0062】
一つ又は複数の第1及び/又は第2の微細構造は、ホログラフィック露光により体積ホログラムに変換されるか、又は、レリーフ構造として成形され得る。
【0063】
さらに好ましくは、一つ又は複数の第1及び/又は第2の微細構造は、微細構造エレメントの間隔、レリーフの深さ、レリーフの形状、微細構造エレメントの長手方向の向きなどのパラメータにより特徴付けられる複数の第1又は第2の微細構造エレメントからなる。
【0064】
さらに、特に、一つ又は複数の第1及び/又は第2の微細構造は、格子として、特に正弦波又は長方形又は三角格子として形成され得る。
【0065】
有利には、正弦波格子は、特に2つの等しく強い回折イメージを、好ましくは、-1次及び+1次回折次数で生成する。しかし、特により高い回折次数が生じてもよい。
【0066】
特に好ましくは、一つ又は複数の第1及び/又は第2の微細構造は、一つ又は複数の鋸歯状の微細構造として、特にブレーズド回折格子として形成され得る。有利には、ブレーズド回折格子は、入射光を主に第1の回折次数、好ましくは+1次又は-1次回折次数に回折する。理想的な場合では、単一の光源、特に点光源で照射したとき、したがって、理想的な場合では、単一の光源、特に点光源で照明した場合、高強度、好ましくは他の回折次数よりも高い強度の回折イメージだけが見える。本明細書において、より高い強度とは、強度が、1つの回折次数、例えば-1次回折次数において、他の回折次数、例えば+1次回折次数よりも、特に少なくとも2倍、好ましくは3倍大きいことを意味する。
【0067】
有利には、特にブレーズド回折格子の好ましくは一つ又は複数の第1の微細構造は、各々の場合、少なくとも1つのより微細な構造、例えばサブ波長格子で覆われ得る。微細構造の無彩色回折は、好ましくは単色になる。上記効果を実現するため、特に高周波のサブ波長交差格子を重ねてもよい。
【0068】
周期、特に格子周期あるいは一つ又は複数の第1及び/又は第2の微細構造エレメントの微細構造エレメントの間隔は、有利には、0.2μm~50μm、好ましくは0.3μm~20μm、特に好ましくは2μm~10μmである。
【0069】
一つ又は複数の第1又は第2の微細構造の深さ、特にレリーフの深さは、通常、50nm~15μm、有利には各々の場合50nm~5000nm、好ましくは100nm~3000nmである。
【0070】
有利には、第1又は第2の微細構造は、直接反射した光、すなわちゼロ回折次数の光の周囲においてより狭い角度範囲、特に+10°と-10°との間の角度範囲で、入射光を回折及び/又は散乱させる。
【0071】
一つ又は複数の第1又は第2の微細構造エレメントのレリーフ形状は、好ましくは、各々の場合、正弦波、三角、鋸歯状及び/又は台形である。
【0072】
さらに、一つ又は複数の第1又は第2の微細構造エレメントは、各々の場合、線形状を有し、三角形の断面を有する格子線の形態で形成され得る。
【0073】
特に、一つ又は複数の線形の微細構造エレメント、特に格子線は、各々の場合、50μm~100mm、好ましくは0.5mm~50mm、特に2mm~20mmの長さを有し、及び/又は、一つ又は複数の線形の微細構造エレメント、特に格子線の長さは、各々の隣接する格子線からの各々の線形の微細構造エレメント、特に各々の格子線の間隔及び/又は格子周期よりも少なくとも5倍、好ましくは10倍大きい。
【0074】
好ましくは、一つ又は複数の第1又は第2の微細構造は、各々の場合、好ましい方向に沿って観察したときに、好ましい方向を横断しかつ/又は直交する方向に観察したときと比べて、入射光についてより大きな散乱角及び/又はより大きな散乱能力を有する、一つ又は複数の異方性散乱構造として、特に異方性のマット構造として形成され得る。一つ又は複数の異方性散乱構造の一つ又は複数の第1の微細構造エレメントの平均距離は、0.5μm~10μm、特に好ましくは0.8μm~5μmである。
【0075】
前記構造の平均距離は、構造、特にマット構造の隣接する局所的最大値及び/又は局所的最小値間の距離の平均値として定義される。
【0076】
特に好ましくは、一つ又は複数の第1の微細構造の少なくとも3つ、好ましくは少なくとも5つの格子周期及び/又は一つ又は複数の第1の微細構造の少なくとも3つ、好ましくは少なくとも5つの平均距離が一つ又は複数の軌道にそれぞれ設けられ得る。
【0077】
さらに、第1又は第2の微細構造の一つ又は複数の第1及び/又は第2の微細構造エレメントは、各々の場合において、好ましくは、一つ又は複数の主に屈折的に作用する微細構造、例えばマイクロミラーを形成する少なくとも1つの第1又は第2のファセット面を有する。第1又は第2のファセット面は、10μm~5000μm、特に25μm~900μmの最小表面積を有する。さらに、第1又は第2のファセット面は、好ましくは、セキュリティエレメントの表面法線に対して1°~45°、特に1°~20°の傾斜角を有する。好ましくは、第1又は第2のファセット面は、平滑な表面あるいは凸状又は凹状に湾曲した表面を有する。
【0078】
第1又は第2のファセット面を含む一つ又は複数の第2の微細構造エレメントは、好ましくは、レリーフイメージの少なくとも1つの、好ましくは無彩色の三次元表現を表す。好ましくは、第1又は第2のファセット面の傾斜角は、好ましくは、各々の場合、1°~45°、特に1°~20°である。好ましくは、一つ又は複数の第1又は第2のファセット面の周期及び/又は傾斜は、一つ又は複数の横方向寸法に沿って連続的に変化する。
【0079】
好ましくは、第1の微細構造の一つ又は複数の微細構造エレメントの一つ又は複数の構造パラメータは、一つ又は複数の軌道に沿って連続して及び/又は一定に変化してもよい。一つ又は複数の構造パラメータは、各々の場合、好ましくは、第1の微細構造エレメントの間隔、レリーフ深さ、第1の微細構造エレメントの長手方向の向き、好ましい方向、第1の微細構造エレメント間の平均距離、第1のファセットの傾斜角から選択される。
【0080】
さらに、第1の微細構造の一つ又は複数の第1の微細構造エレメントの向き及び/又は第1の微細構造の一つ又は複数の第1のファセットの好ましい方向及び/又は傾斜角は、特に各軌道の長手方向縁部の1つにより又は各軌道の重心線により決定される、各軌道の一つ又は複数の輪郭を追従することが好ましい。
【0081】
特に、少なくとも一つ又は複数の軌道の部分的領域において、各々の第1の微細構造の一つ又は複数の第1の微細構造エレメントの局所的な向き、あるいは、各々の第1の微細構造の一つ又は複数の第1のファセットの局所的な好ましい方向は、一つ又は複数の軌道の一つ又は複数の長手方向縁部により、及び/又は各々の一つ又は複数の軌道の一つ又は複数の重心線により決定される、各々の軌道の局所的な曲率に対応し得る。
【0082】
好ましくは、少なくとも一つ又は複数の軌道の部分的領域において、各々の第1の微細構造の一つ又は複数の第1の微細構造エレメントの局所的な向き、あるいは、各々の第1の微細構造の一つ又は複数の第1のファセットの局所的な好ましい方向は、各々の軌道の局所的な曲率と0°~30°以下だけ異なっていてもよい。局所的な曲率は、特に、各軌道の一つ又は複数の長手方向縁部によって又は各軌道の一つ又は複数の重心線によって決定され得る。
【0083】
好ましくは、少なくとも一つ又は複数の軌道の部分的領域において、各々の第1の微細構造の一つ又は複数の第1の微細構造エレメントの局所的な向き、あるいは、各々の第1の微細構造の一つ又は複数の第1のファセットの局所的な好ましい方向は、各々の軌道の局所的な曲率と最大±30°までの所定の偏差角度だけ異なっていてもよい。局所的な曲率は、特に、各軌道の一つ又は複数の長手方向縁部によって又は各軌道の一つ又は複数の重心線によって決定され得る。
【0084】
好ましくは、少なくとも一つ又は複数の軌道の部分的領域において、各々の第1の微細構造の一つ又は複数の第1の微細構造エレメントの局所的な向き、あるいは、各々の第1の微細構造の一つ又は複数の第1のファセットの局所的な好ましい方向は、各々の軌道の局所的な曲率に対して-45°~+45°、好ましくは-30°~+30°の角度、さらに好ましくは-15°~+15°の角度を有してもよい。局所的な曲率は、特に、各軌道の一つ又は複数の長手方向縁部により又は各軌道の一つ又は複数の重心線により決まる。
【0085】
好ましくは、少なくとも一つ又は複数の軌道の部分的領域において、各々の第1の微細構造の一つ又は複数の第1の微細構造エレメントの長手方向の範囲及び/又は好ましい方向は、セキュリティエレメントの表面法線に垂直に広がる平面に対して、各軌道に平行又は垂直に延在し、特に、各軌道一つ又は複数の重心線あるいは各軌道の一つ又は複数の長手方向縁部に平行又は垂直に延在してもよい。
【0086】
好ましくは、前述した一つ又は複数の軌道の部分的領域は、各軌道の少なくとも50%、特に好ましくは各軌道の少なくとも70%、特に好ましくは各軌道の少なくとも85%からなる。これにより、特に、そのようなセキュリティエレメントが少なくとも1つの放射源、特に光源、好ましくは点光源により照射されたときに、各軌道における1つの位置及び/又は1つの点だけが散乱かつ/又は回折し、かつ/又は光を反射させる。その結果、これにより生じたイメージエレメント、特に少なくとも1つのイメージ点が、特に任意の所望の軸に対して左方及び/又は右方及び/又は前方及び/又は後方への軌道を含むセキュリティエレメントの少なくとも1つの傾斜及び/又は折曲及び/又は回転時に少なくとも1つのムーブメント効果を生じさせる。
【0087】
さらに、一つ又は複数の軌道及び/又は一つ又は複数の第1の微細構造は、一つ又は複数の交差領域において交差し得る。一つ又は複数の軌道は、各々の場合1回又は2回又はそれ以上交差し、かつ/又は、一つ又は複数の軌道は、異なる周波数で対をなして交差し得る。したがって、3つの軌道B1,B2,B3から選択された軌道対であるB1とB2,B2とB3,B1とB3は、互いに異なる周波数で交差し得る。
【0088】
例えば、軌道B1,B2が2回交差し、軌道B1,B3が4回交差し、軌道B2,B3が1回だけ交差するように、3つの閉軌道及び/又は開軌道B1,B2,B3が交差し得る。
【0089】
また、1つの軌道は当該軌道と交差してもよい。好ましくは、複数の軌道は当該軌道自体と交差しない。
【0090】
一つ又は複数の交差領域には、各交差領域で交差する軌道の第1の微細構造又は第1の微細構造だけが設けられる。他の交差する軌道の第1の微細構造又は第1の微細構造はこの交差領域に設けられていない。
【0091】
しかし、交差領域において交差する、2つ以上、特に全ての軌道の第1の微細構造が一つ又は複数の交差領域に設けられてもよい。交差する軌道の第1の微細構造又は第1の微細構造が一次元又は二次元の格子に設けられることが好ましい。格子の幅は、特に10μm~300μmである。
【0092】
異なる第1の微細構造の格子を以下モザイク面と呼ぶ。
【0093】
そのようなモザイク面により、特に軌道がモザイク面を有していないセキュリティエレメントに関して、各軌道のムーブメント効果、特に光学的なムーブメント効果の中断を防止するか、少なくとも光学的により目立たないものとすることができる。
【0094】
モザイク面において、交差領域を通って延在する全ての軌道及び/又は第1の微細構造は、有利には、交差領域の表面積の同じ割合が割り当てられ得る。その結果、交差領域において、全ての軌道には、同じ割合、特に表面の割合が与えられる。
【0095】
例えば、2つの軌道及び/又は2つの第1の微細構造が交差する場合、交差領域における2つの軌道及び/又は2つの第1の微細構造の各々は、表面積、特に交差領域の表面積の50%の表面積の割合が割り当てられることが好ましい。したがって、3つ、通常n個の交差する軌道及び/又は第1の微細構造の各々は、交差領域の3分の1、通常1/nの表面の割合が割り当てられ得る。
【0096】
さらに、各交差領域において交差する軌道の1つの第1の微細構造が設けられた一つ又は複数の表面領域が一つ又は複数の交差領域の領域において一つ又は複数の軌道の外側に設けられてもよい。一つ又は複数の表面領域は、各交差領域から好ましくは150μm未満、さらに好ましくは50μm未満だけ離間して配置される。この距離は、交差領域及び/又は交差領域において交差する軌道の最も近い外縁と各表面領域の最も近い外縁との間の距離により決定される。
【0097】
そのようなデザインにより、光学的外観に悪影響を与えることなく、交差領域において交差する軌道の第1の微細構造のための既存の領域を効果的に拡大させることができる。これにより、各交差領域において交差する軌道によりもたらされる一連のムーブメント、モーフィング及び/又は反転効果における中断が防止されるか、少なくとも光学的により目立たないものとされ得る。
【0098】
さらに好ましくは、少なくとも1つの軌道及び/又は少なくとも1つの第1の微細構造は、少なくとも1つの中断部を有する。
【0099】
第1の微細構造又は各軌道の第1の微細構造は、好ましくは、中断部の領域において設けられないか又は連続していない。
【0100】
中断部により、セキュリティエレメントのさらなる光学的効果を含む第1の微細構造により生じる効果の重なりが向上し、したがって、セキュリティエレメントの偽造に対する保護がさらに向上する。
【0101】
軌道の中断部は、好ましくは、人間の目の解像度以下の各軌道の長手方向における広がりに関する寸法を有し、好ましくは、この方向における0.5μm~200μm、さらに好ましくは1μm~100μmの横方向の広がりを有する。
【0102】
少なくとも1つの軌道及び/又は少なくとも1つの第1の微細構造の少なくとも1つの中断部は、好ましくは、2つ以上の軌道の少なくとも1つの交差領域及び/又は2つ以上の第1の微細構造に存在し得る。
【0103】
さらに、少なくとも1つの軌道及び/又は少なくとも1つの第1の微細構造の少なくとも1つの中断部は、2つ以上の軌道及び/又は2つ以上の第1の微細構造の交差領域の外側に存在することが好ましい。
【0104】
好ましくは、中断部は、ランダム及び/又は擬似ランダムに分配される。特に、一つ又は複数の中断部は、各々の軌道の一つ又は複数の接線ベクトルに平行及び/又は直交してランダム及び/又は擬似ランダムに分配され得る。
【0105】
さらに、少なくとも1つの軌道及び/又は少なくとも1つの第1の微細構造が少なくとも1つのオフセットを有していてもよい。2つの部分及び/又は部分的領域及び/又は少なくとも1つの軌道のセクション及び/又は1つの第1の微細構造が互いにオフセットして、特に互いにシフトして配置されたときに、オフセットが存在する。変位、特にシフトの大きさは、必要に応じた大きさとすることができる。
【0106】
特に、オフセットの一つ又は複数の横方向寸法は、各々の場合、各軌道の幅より小さくてもよい。
【0107】
少なくとも1つの軌道及び/又は1つの第1の微細構造は、少なくとも1つのオフセットを有することが好ましい。少なくとも1つのオフセットは、少なくとも1つの軌道及び/又は1つの第1の微細構造のアーク長、好ましくはアーク長の一部に亘って、ランダム及び/又は擬似ランダムに分配され得る。さらに好ましくは、オフセット、特に変位及び/又はシフトの大きさは、ランダム及び/又は擬似ランダムに分配され得る。特に、一つ又は複数のオフセットは、各軌道の一つ又は複数の接線ベクトルに平行及び/又は直交してランダム及び/又は擬似ランダムに分配され得る。
【0108】
そのようなオフセットは、少なくとも1つの軌道及び/又は第1の微細構造に亘る、少なくとも1つのカット、特に少なくとも1つの直線状のカット、及び軌道及び/又は第1の微細構造に対するように切断された少なくとも1つの軌道及び/又は第1の微細構造のシフトにより設けられる。
【0109】
さらに好ましくは、少なくとも1つのカットの角度、特に少なくとも1つのカット角は、所望のように、特に配置及び/又は少なくとも1つの切断された軌道及び/又は第1の微細構造の長手方向の範囲に対して所望のように配置され得る。その結果、少なくとも1つのカットにより接断された少なくとも1つの軌道及び/又は第1の微細構造及び少なくとも1つの軌道及び/又は第1の微細構造は互いに面一に結合しない。
【0110】
さらに、特に少なくとも1つの軌道及び/又は第1の微細構造の長手方向の範囲及び/又は配置に直交する少なくとも1つの切断された軌道及び/又は1つの第1の微細構造のカットの隣接する部分は、互いに対してシフトして配置され得る。
【0111】
好ましくは、オフセットは望ましくない色回折を低減させる。その結果、特に、改善された無彩色の外観、したがって改善された一連のイメージエレメントが提供される。
【0112】
特に好ましくは、軌道及び/又は第1の微細構造の部分的領域及び/又はセクションは、特に軌道及び/又は第1の微細構造の部分的領域及び/又はセクションのオフセットを生じさせるため、2つの同じように配置されたカットにより、特に互いに対して所望のように配置された2つのカットにより、さらに好ましくは軌道及び/又は第1の微細構造の異なる箇所、特に位置における互いに平行に配置された2つのカット及び切断されていない軌道及び/又は第1の微細構造に対するように切断された軌道及び/又は第1の微細構造の部分的領域の変位及び/又はシフトによりオフセットし得る。
【0113】
さらに好ましくは、少なくともオフセット、特にシフト及び/又は変位の大きさは、第1の微細構造及び/又は軌道の幅より小さい。さらに、オフセット、特にシフト及び/又は変位の大きさは、軌道の幅に対応し得る。さらに好ましくは、オフセット、特にシフト及び/又は変位の大きさは、第1の微細構造及び/又は軌道の幅の5倍以下である。特に、好ましくは一つ又は複数のイメージエレメント又は第1の微細構造のムーブメント、モーフィング及び/又は反転効果の作用の急増を防止することができる。特に好ましくは、オフセット、特にシフト及び/又は変位の大きさは、平均して、一つ又は複数の軌道及び/又は第1の微細構造の幅の1%~50%、好ましくは2%~20%である。
【0114】
軌道及び/又は第1の微細構造を形成する好ましい方法の第1のステップにおいて、一つ又は複数のイメージエレメントのイメージ点の一つ又は複数の位置的配置を含むファイルが提供される。好ましくは、さらなるステップにおいて、少なくとも所定のセクションにおいて湾曲した一つ又は複数の軌道及び/又は少なくとも所定のセクションにおいて湾曲した一つ又は複数の軌道の一つ又は複数のセクションは、イメージ点の位置的配置により決定される。さらに、特に、次のステップにおいて、照射されたときに、光学的に可変の情報の第1の項目、特に一つ又は複数の3D効果及び/又はムーブメント効果、特にセキュリティエレメントが傾斜及び/又は折曲及び/又は回転すると、好ましくは無彩色又は単色の3D効果及び/又はムーブメント効果を生じさせる一つ又は複数の軌道又は軌道のセクションに一つ又は複数の第1の微細構造が設けられる。微細構造を含む軌道は、例えば、電子ビームリソグラフィー又はレーザーリソグラフィーにより主基板に形成され得る。主基板の構造は、金属基板、特にガルバニックプロセスによりニッケルから形成される金属基板にも用いられる。このように金属基板を複製することにより、好ましくは、例えばロールツーロール複製法による微細構造の大量生産を可能にする対応する複製型が得られる。
【0115】
好ましくは、軌道及び/又は軌道のセクションを決定するため、ファイルにおいて、セキュリティエレメントが傾斜及び/又は折曲及び/又は回転する際の軌道に沿ったイメージ点の移動により所望とする一連のイメージエレメントが生じるように、一連のイメージエレメントが画定される。
【0116】
好ましくは、ファイルにおいて、一連のイメージエレメントが画定される。その結果、認識不可能なイメージ、例えばランダム又は擬似ランダムに配置された点及び/又は雲状に分配された点から、認識可能なイメージ、例えば額面金額が、セキュリティエレメントが傾斜及び/又は折曲及び/又は回転する際の軌道に沿ったイメージ点の移動によってもたらされる。
【0117】
第1及び/又は第2の微細構造は、複製法により、同一のセキュリティエレメントの同一の又は2つの異なる層に成形されることが好ましい。これらの層は、好ましくは、1μm~10μmの層厚を有するワニス層である。さらに、これらの層はセキュリティエレメントのキャリアフィルム、特にPETフィルムであってもよい。
【0118】
キャリアフィルムの視認される面から複製層の上方にある一つ又は複数のさらなる層は、色彩層、特に不透明、半透明又は透明の色彩層とし得る。これらの色彩層は、好ましくは、パターン化されて適用されるか又は形成される。代替例では、複製層は半透明又は透明の色彩層であってもよい。
【0119】
他の一つ又は複数のさらなる層は、セキュリティエレメントのキャリアフィルム上に配置され、特に、一つ又は複数のさらなる層は、剥離層、保護層、接合層、抗接着層、保護層、接着層から選択される。
【0120】
第1及び/又は第2の微細構造が成形されたセキュリティエレメントの一つ又は複数の層は、さらに好ましくは、少なくとも所定の領域において、一つ又は複数の第1及び/又は第2の微細構造を覆う一つ又は複数の反射層でコーティングされる。上記の反射層は、好ましくは金属製の反射層であり、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)または銀(Ag)、及び/又は高屈折率層、いわゆるHRI層、例えばTiO又はZnSから形成される。
【0121】
さらに、第1及び/又は第2の微細構造が成形されたセキュリティエレメントの一つ又は複数の層は、一つ又は複数の色彩層、特に半透明又は透明の色彩層によりコーティングされるか又はプリントされ得る。これらの色彩層は、好ましくは、パターンを有するように適用されるか、形成される。上記層は、好ましくは、異なる色を有する。さらに、第1及び/又は第2の微細構造が成形された一つ又は複数の層は、観察角に応じて変化する一つ又は複数のインク及び/又は層、例えば、コレステリック液晶層及び/又は色変化顔料を含む層でコーティングされるか又はプリントされ得る。特に、色の変化を生じさせる層は、干渉層系からなる。例えば、この干渉層系は、半透明の吸収層、誘電体スペーサ層及び半透明又は不透明なミラー層からなる三層系とし得る。
【0122】
前述のコーティングは、任意の所望の形態で互いに組み合わされてもよく、したがって、例えば、複数のコーティングは、一つ又は複数の第1及び/又は第2のレリーフ構造を含む層の一方又は両方の側に適用されていてもよく、特にパターン化されて形成されてもよい。これにより、注意を引く光学的効果、特に色彩効果が実現され、セキュリティエレメントの偽造に対する保護をさらに向上させる。
【0123】
以下、添付の図面を参照しながら本発明のいくつかの実施例について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0124】
図1a】複数の軌道を有するセキュリティエレメントの概略図である。
図1b】複数の軌道を有するセキュリティエレメントの概略図である。
図1c】複数の軌道を有するセキュリティエレメントの概略図である。
図1d】複数の軌道を有するセキュリティエレメントの概略図である。
図1e】複数の軌道を有するセキュリティエレメントの概略図である。
図2a】セキュリティエレメントの概略図である。
図2b】レリーフ及び格子構造の概略図である。
図2c】レリーフ及び格子構造の概略図である。
図2d】レリーフ及び格子構造の概略図である。
図3】複数の軌道を有するセキュリティエレメントの概略図である。
図4】交差領域を有するセキュリティエレメントの概略図である。
図5】交差領域及び中断部を有するセキュリティエレメントの概略図である。
図6】交差領域及びオフセットを有するセキュリティエレメントの概略図である。
図7】交差領域を有するセキュリティエレメントの概略図である。
図8】交差領域を有するセキュリティエレメントの概略図である。
図9a】セキュリティエレメントの光学的作用の概略図である。
図9b】セキュリティエレメントの光学的作用の概略図である。
図10a】セキュリティエレメントの光学的作用の概略図である。
図10b】2つの光源から照射したときのセキュリティエレメントの光学的作用を示す概略図である。
図11a】セキュリティエレメントの光学的作用を示す概略図である。
図11b】セキュリティエレメントの光学的作用を示す概略図である。
図11c】セキュリティエレメントの光学的作用を示す概略図である。
図12a】イメージ点間の距離に応じたセキュリティエレメントの光学的作用を示す概略図である。
図12b】イメージ点間の距離に応じたセキュリティエレメントの光学的作用を示す概略図である。
図13a】第1及び第2の微細構造を有するセキュリティエレメントの概略図である。
図13b】第1及び第2の微細構造を有するセキュリティエレメントの概略図である。
図14a】複数の軌道を有するセキュリティエレメントの概略図である。
図14b】複数の軌道を有するセキュリティエレメントの概略図である。
図14c】複数の軌道を有するセキュリティエレメントの概略図である。
図14d】複数の軌道を有するセキュリティエレメントの概略図である。
図14e】複数の軌道を有するセキュリティエレメントの概略図である。
図15】セキュリティエレメントの光学的作用を示す概略図である。
図16a】複数の軌道を有するセキュリティエレメントの概略図である。
図16b】複数の軌道を有するセキュリティエレメントの概略図である。
図16c】複数の軌道を有するセキュリティエレメントの概略図である。
図16d】複数の軌道を有するセキュリティエレメントの概略図である。
図17a】複数の軌道を有するセキュリティエレメントの概略図である。
図17b】複数の軌道を有するセキュリティエレメントの概略図である。
図17c】複数の軌道を有するセキュリティエレメントの概略図である。
図17d】複数の軌道を有するセキュリティエレメントの概略図である。
図17e】複数の軌道を有するセキュリティエレメントの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0125】
図1a~図1eは、セキュリティエレメント1を有するセキュリティ文書5の構造を例示している。
【0126】
図1a~図1dはセキュリティエレメント1の上面図であり、図1eは文書本体又はセキュリティ文書5の断面図である。
【0127】
セキュリティ文書5は、好ましくは、ID文書、例えばパスポート、パスポートカード、ビザ又はアクセスカードからなる。しかし、セキュリティ文書5は、さらなるセキュリティ文書5、例えば紙幣、セキュリティ又はクレジットカード又は銀行のカードであってもよい。
【0128】
セキュリティ文書5は、文書本体51及び一つ又は複数のセキュリティエレメントを有する。セキュリティエレメント1を図1a~図1eに示す。
【0129】
セキュリティエレメントは、セキュリティ文書5の文書本体51に適用されるか、あるいは、セキュリティ文書5の文書本体51に埋め込まれるものであって、特に完全に又は部分的に埋め込まれる。
【0130】
セキュリティ文書の文書本体51は、好ましくは、複数のプライから形成され、特に、紙基材及び/又はプラスチック基材により形成されるキャリア基材を有する。さらに、文書本体51は、他の一つ又は複数の保護層、一つ又は複数の装飾層及び/又は一つ又は複数のセキュリティ機能部を有していてもよい。さらに、文書本体51は、例えば、一つ又は複数の剥離層、接合層、抗接着層、保護層及び/又は接着層などの他のさらなる層を有していてもよい。文書本体51は、好ましくは、電子回路、特にRFIDチップを有し、これに情報の項目が格納される。
【0131】
文書本体51は、ウィンドウ領域を有する。ウィンドウ領域は、文書本体51における貫通口として、及び/又は文書本体51の透明領域として形成され得る。セキュリティエレメント1は、ウィンドウ領域と重なるように配置され、セキュリティ文書5の両側から見ることができる。
【0132】
セキュリティエレメント1は、特に、転写フィルムの転写プライ、ラミネートフィルム及び/又はフィルムエレメントによって、特に、セキュリティストリップパッチ又はセキュリティストリップ又はセキュリティスレッド(security thread)の形態で形成される、セキュリティエレメント1は、セキュリティ文書5の表面を全面に亘って及び/又は部分的に覆っており、例えば、図1eに示すセキュリティエレメント1に対してストリップ又はパッチの形態で形成される。
【0133】
セキュリティエレメント1は、好ましくは、保護層54、装飾層52及び接着層又は接着促進層53を有する。したがって、例えば、セキュリティエレメント1は、転写フィルムの転写プライの形態で形成され、保護層54、装飾層52及び接着層53を有し、図1eに示すように文書本体51の前面側に適用される。
【0134】
セキュリティエレメント1の装飾層52は、好ましくは人間の観察者により光学的に可視の一つ又は複数のセキュリティ機能部を形成する。
【0135】
したがって、例えば、装飾層52は、一つ又は複数の以下の層を有する。
【0136】
装飾層52は、各々の場合、一つ又は複数の第1及び/又は第2の微細構造を含む一つ又は複数の層を有する。
【0137】
本実施例では、一つ又は複数の第1又は第2の微細構造は、ホログラフィック露光により各々の層において体積ホログラムに変換され得る。しかし、微細構造は、各層の表面に成形されるレリーフ構造として形成されてもよい。これらの層は、好ましくは、体積ホログラムの生成のために異なる屈折率を有する領域が付与されるフォトポリマーの層であるか、あるいは、複製法により微細構造の表面レリーフが成形されるプラスチックフィルム又はワニス層である。
【0138】
好ましくは、微細構造は、例えば、長方形の回折格子、正弦波回折格子又はゼロ次回折構造などの回折構造である。微細構造は、等方性及び/又は異方性のマット構造、三角形のブレーズド回折格子及び/又はマイクロレンズ、マイクロプリズム又はマイクロミラーなど実質的な反射作用を伴う構造であってもよい。
【0139】
一つ又は複数の第1の微細構造は、好ましくは、少なくとも複数のセクションにおいて湾曲している一つ又は複数の軌道に設けられる。複数の軌道2a~2eを図1a~図1dに示す。さらに、少なくとも複数のセクションにおいて曲線軌道の一つ又は複数のセクション、例えば図1a~図1dに示す軌道のセクションに一つ又は複数の第1の微細構造を設けてもよい。さらに、一つ又は複数の第1の微細構造が少なくとも複数のセクションにおいて湾曲した一つ又は複数の軌道に沿って設けられてもよいし、又は少なくとも複数のセクションにおいて曲線軌道の一つ又は複数のセクションに沿って設けられてもよい。
【0140】
装飾層52は、好ましくは、一つ又は複数の金属層を有し、金属層は、好ましくは、表面全体に亘って又は部分的にセキュリティエレメントに設けられる。金属層は、不透明、半透明又は透過性に形成される。好ましくは、金属層は、明確に異なる反射及び/又は透過スペクトルを有する異なる金属から形成される。例えば、金属層は、アルミニウム、銅、クロム、金、銀又はこれら金属の合金から形成される。
【0141】
本実施例では、一つ又は複数の金属層は、好ましくは、パターン化された構造であり、好ましくは、英数字の形態で、及び/又はグラフィックとして及び/又は複雑な対象物の描写として形成されてもよい。
【0142】
さらに、装飾層52は、一つ又は複数の色彩層、好ましくは、透明又は半透明の色彩層を含んでいてもよい。これらの色彩層は、印刷法により適用され、顔料はバインダーマトリックスに組み込まれた一つ又は複数の染料及び/又は顔料を有する色彩層であることが好ましい。
【0143】
装飾層52は、さらに好ましくは、入射光を波長選択的に反射又は屈折させる一つ又は複数の干渉層を有する。これらの層は、例えば、入射光の半波長又は四分の一波長の領域において光学的深さを有する層の配置に基づいて、画角に応じて色ずれ効果を生じさせる薄膜フィルムエレメントから形成され得る。これらの層は、典型的には、特に半透明吸収体層と、半透明又は不透明のミラー又は反射層との間に配置された誘電体スペーサ層を含むか、あるいは、好ましくは、薄膜顔料を含む層から形成され得る。
【0144】
装飾層52は、さらに好ましくは、入射光の偏光並びに液晶の配列に応じて入射光の透過及び/又は波長選択的な反射を生成する一つ又は複数の液晶層を有していてもよい。
【0145】
図1aは、互いにオフセットした、曲線軌道2a,2b,2c,2d,2eを有するセキュリティエレメント1の細部を示している。軌道は、半径R,R,R,R,Rを有している。軌道の中心点4a,4b,4c,4d,4eは、軌道2a,2b,2c,2d,2eの幾何学的中心に配置されており、半径R,R,R,R,Rを有する円形軌道2a,2b,2c,2d,2eの全ての点から離間している。軌道2a,2b,2c,2d,2eの曲率は、それぞれ、1/R,1/R,1/R,1/R,1/Rである。軌道が存在するか又は空間範囲を有する平面は、基底ベクトルx及びyで示す二次元座標系によって表される。ベクトルx及びyは、好ましくは、図1aに示すように、互いに直交している。
【0146】
しかし、特に、2次元以上の座標系及び/又は少なくとも1つの曲線軌道における座標系を選択してもよい。
【0147】
図1a~図1dは、全ての軌道が同一の半径を有する例を示している。さらに好ましくは、軌道2a~2eの半径は互いに異なっていてもよい。さらに、好ましくは、軌道が円形に形成されておらず、例えば楕円形及び/又は螺旋形及び/又は円弧状に形成されている場合、少なくとも1つの軌道2a~2eは、可変の曲率を有していてもよい。さらに好ましくは、軌道2a~2eは、連続的な及び/又は微分可能な及び/又は積分可能な曲線であってもよい。軌道2a~2eは、厳密に一次元の曲線ではなく、好ましくは、例えば球の表面の部分的領域などの二次元の曲線であってもよい。
【0148】
軌道2a~2eは、特に好ましくは、閉軌道として及び/又は閉軌道の少なくとも1つの部分的領域から形成され得る。特に、全ての軌道の少なくとも50%、好ましくは70%、特に好ましくは90%は、特に、各々の場合、閉軌道の少なくとも5分の1、好ましくは少なくとも4分の1、特に好ましくは少なくとも3分の1、特に好ましくは少なくとも半分を形成する。さらに、全ての軌道の特に少なくとも50%、好ましくは70%、特に好ましくは90%は、特に各々の場合、少なくとも4分の1円、好ましくは少なくとも3分の1円、特に好ましくは半円を形成する。
【0149】
図1a~図1dにおける軌道2a,2b,2c,2d,2eは、図示した実施例では、二次元の円形の曲線として設計されており、点線で表されている。曲線軌道の曲率の符号は変化せず、特に円軌道又は円形軌道の場合は一定である。さらに好ましくは、軌道の曲率は、0.02mm-1~2mm-1、好ましくは0.01mm-1~1mm-1である。特に好ましくは、少なくとも1つの軌道、特に少なくとも1つの円形軌道は、どの位置においても同一の曲率を有していてもよい。特に好ましくは、図1a~図1dに示すように、全ての軌道2a~2e、特に全ての円軌道又は円形軌道の曲率は等しくてもよい。特に好ましくは、軌道2a~2eの曲率は互いに異なっていてもよい。
【0150】
軌道2a~2eに設けられた第1の微細構造は、光学的に可変の情報の第1の項目を生じさせる。この光学的に可変の情報の第1の項目は、図1a~図1dに示す実施例ではムーブメント効果である。光学的に可変の情報の第1の項目は、一つ又は複数のイメージエレメントを有し、イメージエレメントは、複数のイメージ点を含む。
【0151】
図1a~図1dに示す実施例では、軌道2a~2eに設けられた第1の微細構造は、特にイメージ点3a,3b,3c,3d,3eの配列により形成されるイメージエレメント3を生成する。好ましくは、セキュリティエレメント1は、観察者に一つ又は複数のイメージエレメント3をもたらし、少なくとも1つのイメージエレメント3は、例えば、モチーフとして形成される。
【0152】
イメージ点3a,3b,3c,3d,3eは、各々の場合、軌道2a,2b,2c,2d,2eの第1の微細構造により生じる。セキュリティエレメント1が傾斜及び/又は折曲及び/又は回転するときに、少なくとも1つの光源、好ましくは点光源で照射されると、イメージ点3a,3b,3c,3d,3eは、割り当てられた軌道に沿ってそれぞれ移動する。
【0153】
図1a~1dに示すように、イメージエレメント3のイメージ点3a~3eは、点状、特に円形のディスク形状を有する。しかし、イメージ点は、他の形状、例えば楕円形を有していてもよい。
【0154】
軌道2a,2b,2c,2d,2eが光源により照射されている場合、観察者は図1aのイメージエレメント3を認識又は確認することができる。観察者が軌道ごとに1つのイメージ点だけを見ることができるように、軌道が設計されている。そのように認識され得るイメージ点3a,3b,3c,3d,3eは、軌道上の配置及び互いに対する一定の距離を介してイメージエレメント3を形成する。
【0155】
特に、軌道を有するセキュリティエレメント1が傾斜及び/又は折曲及び/又は回転、及び/又は観察者及び/又は放射源に対して傾斜すると、イメージエレメント3は、観察者が見たときに軌道2a,2b,2c,2d,2eに沿って移動する。特に好ましくは、イメージエレメント3は、傾斜及び/又は折曲及び/又は回転及び/又は観察者に対するセキュリティエレメント1の傾斜の方向に応じて、軌道ごと二つの移動方向のうち一方の方向へと、特に軌道に沿って自由に移動する。
【0156】
さらに好ましくは、イメージエレメント3は、図1aに示す5つのイメージ点3a~3eの配置として、5つの軌道2a,2b,2c,2d,2eに沿って移動する。その結果、図1aにおける互いに対するイメージ点3a,3b,3c,3d,3eの配列が維持され、かつ/又は、セキュリティエレメント1が傾斜及び/又は折曲及び/又は回転したときに、図1a~1dに示したベクトルx及びyに亘る座標系に対する配向性が変化しない。
【0157】
本明細書において、セキュリティエレメント1の回転とは、ベクトルx及びyに亘る平面に対して直角をなすセキュリティエレメント1の表面法線を中心としたセキュリティエレメント1の回転を意味する。セキュリティエレメント1の傾斜とは、ベクトルx及びyに亘る平面における軸に対するセキュリティエレメント1の傾斜を意味する。
【0158】
有利には、イメージエレメント3は、特に、セキュリティエレメント1の回転及び/又は折曲及び/又は傾斜の間、図1a~図1dに示す座標系のベクトルx及び/又はyに沿った軸及び/又はベクトルx及び/又はyと平行をなす軸に対するイメージエレメント3の配置を変化させる、好ましくは連続的に変化させることができる。これにより、連続的または不連続的なムーブメント効果が観察者にもたらされる。さらに好ましくは、イメージエレメント3は、図1a~図1dに示す座標系のベクトルx及び/又はyに沿った軸及び/又はベクトルx及び/又はyと平行をなす軸に対するイメージエレメント3の配置を、セキュリティエレメント1の回転及び/又は折曲及び/又は傾斜の間、一定に維持することができる。
【0159】
図1a~図1dにおいて、ベクトルx及びyにより特徴づけられる座標系に対するイメージエレメント3の配置は、移動中に亘って、特に各々の位置30,31,32,33において一定である。
【0160】
図1a~図1dは、5つのイメージ点3a,3b,3c,3d,3eを含むイメージエレメント3のムーブメント効果を任意の順序に示している。図1aに示すイメージ点3cの位置におけるイメージエレメント3の中心点30は、図1bに示す位置31に移動し、図1cに示す位置32に移動し、最終的に図1dに示す位置33に移動する。イメージエレメント3の移動方向は、異なるムーブメント効果を生じさせるように所望のように選択されることが好ましい。
【0161】
図2aは、幅B及び半径Rを有する曲線軌道2のセグメントを含むセキュリティエレメント1の細部を示している。曲線軌道は、特に、図1a~1eに示す軌道2a~2eの1つとし得る。
【0162】
さらに、図2aは、イメージ点3aを示している。イメージ点3aは、好ましくは、軌道上に位置しており、好ましくは軌道に沿って移動する。その結果、ムーブメント効果、特に連続的なムーブメント効果が観察者にもたらされる。さらに、図2aに示すカットA→A’は、特に、閉軌道、好ましくは円形及び/又は楕円軌道の中心点に対して半径方向に延びている。カットは、軌道を通って半径方向に延びている。さらに、図2aは、軌道2が位置するか又は埋め込まれた平面に亘った互いに直交する2つのベクトルx及びyによる二次元座標系を示している。
【0163】
好ましくは、軌道2は、2μm~300μm、特に5μm~150μm、さらに好ましくは10μm~100μmの幅Bを有する。
【0164】
軌道の表面積は、軌道のアーク長及び軌道の幅に依存している。軌道の幅は、一定であるか、又は軌道に沿って変動する。好ましくは、軌道の幅は、軌道の進行、特に、基底ベクトルx及びyを含む座標系に対する方位角αの進行によって変化しない。
【0165】
内側輪郭20aは、軌道2の内縁及び/又は好ましくは内径Rを有する軌道の部分的領域の内縁に対応している。軌道2及び/又は軌道の部分的領域の外側輪郭20bは、好ましくは外径Rを有する軌道の外縁に対応している。内側輪郭は、曲率半径ベクトルにより決まる、円の中心点Mの方向に面する軌道の側に配置される。一方、軌道の外側輪郭20bは、曲率半径ベクトルから離れた軌道の側20aに配置される。さらに、半径ベクトルRの延長線上には、軌道の外縁に適合する接線ベクトルtに垂直な垂線Sが図示されている。本実施例では、接線ベクトルTの方向は、半径ベクトルRに直交するように配置される。
【0166】
好ましくは、曲率半径ベクトル、特に局所的な曲率半径ベクトルは、軌道2に亘る表面積内の位置及び/又は任意の所望の点に関連する。曲率半径ベクトルの量及び角度は、軌道2に亘る表面積上の位置及び/又は方位角αに依存する。
【0167】
また、曲率半径ベクトルは、少なくとも1つの軌道2の内側輪郭又は縁部20aあるいは外側輪郭又は縁部20bに関連する。曲率半径ベクトルの量及び角度は、軌道2の内側輪郭及び/又は外側輪郭及び/又は方位角αに依存する。
【0168】
軌道2及び/又は軌道の部分的領域の特定の方位角αにおける内側輪郭の曲率は、好ましくは、この方位角αにおける外側輪郭の曲率よりも常に大きい。外側輪郭の特定の方位角αにおける特定の位置及び/又は特定の点と、内側輪郭の特定の方位角αにおける同一の位置及び/又は同一の点との間の距離は、好ましくは、特定の方位角αにおける位置及び/又は点に応じた軌道2の幅、特に軌道2の幅に対応している。
【0169】
さらに好ましい実施例では、軌道2及び/又は軌道の部分的領域の表面積は、少なくとも1つの第1の微細構造10により覆われる。特に、第1の微細構造10は、また、軌道2及び/又は軌道の部分的領域の内側輪郭及び/又は外側輪郭を追従してもよい。
【0170】
図2b,2c,2dは、例えば、図2aの軌道2及び/又は図2aの軌道の部分的領域上に設けられた少なくとも1つの第1の微細構造10の一実施例をそれぞれ示している。
【0171】
特に、図2b,2c,2dは、図2aのカット線A→A’に沿った第1の微細構造のカットを示している。
【0172】
図2bは、第1の微細構造10のデザインとして正弦波の形状を有する格子10aを示している。格子10aは、好ましくは周期的に互いから離間した複数の連続した構造エレメントを有する。個々の構造エレメントは、好ましくは、長手方向の範囲が横方向の範囲よりもはるかに大きい。したがって、構造エレメントは、好ましくは、線形の形状を有し、特に、正弦波断面を有する格子線として形成される。これらの格子線の進行は、格子10aの微細構造エレメントの長手方向の方向を画定する。また、代替例では、格子線は、正弦曲線に代えて、長方形の断面を有し、したがって長方形状を有してもよい。
【0173】
図2cは、ブレーズド格子10dとしての第1の微細構造10のデザインを示している。第1の微細構造は、特に、鋸歯状格子及び/又は三角格子として形成されている。
【0174】
同様に、ブレーズド格子10dは、好ましくは、それぞれ三角形の断面を有する一連の微細構造エレメントからなる。本実施例では、ベクトルx及びyに亘る平面に対する微細構造エレメントの2つの側の傾斜は、異なることが好ましい。その結果、微細構造エレメントは非対称の形状を有する。本実施例では、さらに、微細構造エレメントは、横方向の範囲よりも大きい、特にはるかに大きい長手方向の範囲を有する。その結果、微細構造エレメントは、同様に、三角形の断面を有する線形の微細構造エレメントとなる。微細構造エレメントの長手方向の範囲の進行は、微細構造エレメントの長手方向を画定する。
【0175】
好ましくは、特に図2b及び図2cに示す第1の微細構造10は、0.2μm~50μm、好ましくは0.3μm~20μm、さらに好ましくは2μm~20μm、特に好ましくは3μm~10μmの周期又は格子周期Λを有し、かつ/又は、50nm~15,000nm、有利には50nm~5000nm、好ましくは100nm~3000nmの格子深さを有する。
【0176】
図2dは、異方性マット散乱構造及び/又は異方性マット構造10eとして形成された第1の微細構造10を示している。そのようなマット構造は、非対称散乱挙動を示し、したがって光学的に可変な効果を生成すること特徴としている。異方性マット構造10eは、好ましい方向を横断及び/又は直交する方向と比べて、好ましい方向から観察したときに入射光に対してより大きな散乱能及び/又はより大きな散乱角を有する。マット構造10eの微細構造エレメント間の平均距離は、好ましくは、0.5μm~10μm、特に好ましくは0.8μm~5μmである。
【0177】
特に好ましくは、第1の微細構造10の少なくとも3つ、好ましくは少なくとも5つの格子周期及び/又は第1の微細構造10間の少なくとも3つ、好ましくは少なくとも5つの平均距離は、少なくとも1つの軌道2、特に軌道2の幅、及び/又は軌道の少なくとも1つの部分的領域、特に軌道2の部分的領域の幅に亘って配置される。
【0178】
特に好ましくは、少なくとも1つの第1の微細構造10は、さらに、ベクトルx及びyに亘る平面に対して各々の傾斜角で傾斜する複数のマイクロミラーの配置からなる。
【0179】
さらに好ましくは、第1の微細構造10の一つ又は複数の第1の微細構造エレメントは、それぞれ、特にマイクロミラーを形成する少なくとも1つの第1又は第2のファセット面を有する。さらに好ましい実施例では、第1の微細構造10は、レンズ構造、格子10a、マット構造10e又はブレーズド格子10dとして形成されてもよく、一つ又は複数のマイクロミラーとの組み合わせからなってもよい。好ましくは、格子10aは、正弦波状、長方形、鋸歯状及び/又は三角形の形状を有する。
【0180】
図3は、複数の湾曲した、閉じていない軌道2及び/又は軌道の部分的領域を有するセキュリティエレメントを示している。軌道及び/又は部分的領域は、交差領域11において交差しかつ/又は重なる。
【0181】
図4は、3つの湾曲した曲線軌道2a,2b,2cを有するセキュリティエレメント1の細部を示している。軌道2b,2cは、特に交差領域11において交差している。さらに、図4は、各々の軌道2a,2b,2cに沿って配置された第1の微細構造100a,100b,100cを示している。
【0182】
好ましくは、第1の微細構造100a,100b,100cの配置及び/又は第1の微細構造100a,100b,100cの少なくとも1つの構造パラメータ、特に微細構造エレメントの間隔、レリーフ深さ、微細構造エレメントの長手方向の向き、好ましい方向、微細構造エレメント間の平均距離及び/又はマイクロミラーの傾斜角は、各々の軌道に沿って連続して及び/又は常に変化する。
【0183】
図4は、対応する軌道2a,2b,2cに沿った格子構造100a,100b,100cの微細構造エレメントの長手方向の向き又は長手方向の範囲における配置の連続的な変化を例示している。したがって、各々の軌道2a,2b,2cの全ての位置における格子構造100a,100b,100cの長手方向の範囲は、各々の軌道2a,2b,2cにおける対応する位置の接線方向に対して平行に配置される。セキュリティエレメント1の細部における格子構造は、好ましくは、7つの格子周期の軌道を横断する幅を有する。
【0184】
好ましくは、一つ又は複数の軌道2a,2b,2cの一つ又は複数の第1の微細構造100a,100b,100cの長手方向の範囲及び/又は配置は、輪郭、特に軌道2a,2b,2cの内側輪郭、好ましくは外側輪郭を追従する。さらに好ましくは、一つ又は複数の軌道上のほとんどの点における、好ましくは軌道全体に沿った第1の微細構造の配置は、一つ又は複数の軌道の曲率半径ベクトルに対して同一の角度を有する。特に、一つ又は複数の第1の微細構造100a,100b,100cの長手方向の範囲及び/又は配置は、主に垂直に、特に曲率半径ベクトルに対して垂直に配置される。
【0185】
特に好ましくは、特に一つ又は複数の楕円形及び/又は円形軌道の場合、特に好ましい方向における第1の微細構造100a,100b,100cのほとんどの点、好ましくは少なくとも50%の点、特に好ましくは70%の点、特に好ましくは85%の点、理想的には軌道2a,2b及び/又は2cにおける全ての点における配置は、軌道2a,2b,2cにおける垂直線、特に軌道2a、2b、2cの一つまたは複数の接線ベクトルに垂直な線と同一に配置される。
【0186】
好ましくは、図4に例示するように、軌道2a,2b,2cは、交差領域11において交差する。図4に示す交差領域11は、曲線軌道2b,2cが互いに重なりかつ/又は交差する表面領域に対して幾何学的に対応する。図4の実施例では、軌道2cの第1の微細構造100cだけが軌道2b,2cの交差領域11に存在し、軌道2bの第1の微細構造100bは存在しない。
【0187】
図5は、第1の微細構造100a,100b,100cを含む3つの曲線軌道2a,2b,2cを有するセキュリティエレメント1を示している。軌道2b及び軌道2cは、特に交差領域124において交差している。さらに、軌道2bは、中断部122を有する。第1の微細構造100bは、中断部122には設けられていない。交差領域124に微細構造100bの中断部が存在する。さらに、軌道2cは、中断部121,123を有する。この中断部には、軌道2cの第1の微細構造100cが設けられていない。
【0188】
さらに、特に中断部121,122,123,124の1つは、各々の軌道2a,2b及び/又は2cが第1の微細構造100a,100b,100cを有していない表面領域に幾何学的に対応している。各々の軌道2a,2b,2cの中断部121,122,123及び/又は124は、ランダム及び擬似ランダムに分配されている。好ましくは、中断部121~124は、対応する接線ベクトルに平行及び/又は垂直にランダム及び/又は擬似ランダムに分配されている。
【0189】
図5の実施例は、軌道2c及び軌道2bの交差領域124の外側に配置された複数の中断部121,122,123を有する。
【0190】
特に好ましくは、交差領域124に配置された中断部121,122及び/又は123は、軌道2a,2b及び/又は2cの表面積及び/又は長さの0.1%~30%、好ましくは1%~10%を占める。微細構造の光学的効果に加えて、そのような中断部は、散乱効果を生じさせ、全体としてより無彩色の印象を与える。
【0191】
図6は、第1の微細構造100a,100b,100cを含む3つの曲線軌道2a,2b,2cを有するセキュリティエレメント1の一実施例を示している。軌道2cは、2つのオフセット部131,132を有する。オフセット部131は、カットエッジ131a,131bに平行に延びており、軌道の部分的領域21aは、図6の観察方向に対するオフセット部131の全長に亘って下方にシフトしている。さらに、オフセット部132は、カットエッジ132a,132bに平行に延びており、軌道の部分的領域22aは、図6の観察方向に対するオフセット部132により左方にシフトしている。オフセット部131,132のシフト方向は、特に互いに直交するように位置している。
【0192】
オフセット部131,132によりシフトした部分的領域21a,22aの表面積は、幅及び/又は部分的領域21a又は22aの進行に亘る幅の進行、及び/又は部分的領域21a又は22aのアーク長に依存している。部分的領域21a又は22aは、幅及び/又はカットを有しないオリジナルの軌道2cの幅の進行を有し、そこから部分的領域21a又は22aが取り除かれるか、部分的領域21a又は22aがシフトしている。
【0193】
軌道2a,2b,2c及び/又は第1の微細構造100a,100b,100cのオフセット部131,132は、ランダムに及び/又は疑似的に分散され、特に配置され、かつ/又は、ランダムに及び/又は疑似ランダムに分散され、及び/又は対応する接線ベクトルと平行及び/又は直交して配置される。
【0194】
さらに好ましくは、一つ又は複数のオフセット部131,132は、軌道2a,2b,2c及び/又は第1の微細構造100a,100b,100cの一つ又は複数の幅よりも小さい。好ましくは、オフセットは、1μm~100μm、特に3μm~50μmシフトされている。図5の中断部と同様に、オフセットは、付加的な散乱効果を生成し、全体としてセキュリティエレメントのより無彩色の印象をもたらす。
【0195】
図7は、第1の微細構造100a,100b,100cを含む3つの曲線軌道2a,2b,2cを有するセキュリティエレメント1を示している。軌道2b,2cはモザイク面14を有している。モザイク面14は、軌道2b,2cの第1の微細構造100b,100cを含む複数の部分的モザイク面141,142,143,144に分割されている。少なくとも1つの部分的モザイク面の第1の微細構造は、部分的モザイク面における残りの第1の微細構造と異なる。
【0196】
特に、軌道2b,2cのモザイク面14における第1の微細構造100b,100c及び/又は軌道2b,2cの第1の微細構造100b,100cのモザイク型の配置、特に格子が設けられている。これは、2つの軌道の中断部が観察者にとって目立ちにくいという効果を生じさせる。
【0197】
図8は、第1の微細構造100a,100b,100cを含む3つの曲線軌道2a,2b,2cを有するセキュリティエレメント1を示している。交差領域11における軌道2b,2cは、モザイク面14を有し、モザイク面14は、第1の微細構造100b,100cを含む複数の部分的モザイク面141,142,143,144に分割されている。さらに、図8は、表面15の領域、特にモザイク面14の近傍における部分的モザイク面141a,142a,143a,144aを示している。部分的モザイク面141a,142a,143a,144aは、第1の微細構造100b,100cを有する。
【0198】
好ましくは、部分的モザイク面141,142,143,144,141a,142a,143a,144aの少なくとも1つの第1の微細構造100b又は100cは、残りの部分的モザイク面の第1の微細構造と異なっている。
【0199】
特に、表面15の領域、したがって好ましくは部分的モザイク面141a,142a,143a,144aは、150μm未満、好ましくは50μm未満だけモザイク面14から離れて設けられている。これらの部分的モザイク面は、軌道2b,2cの連続的なムーブメント効果が中断されないように人間の裸眼に映る効果を有する。
【0200】
図9aは、イメージエレメント3を有するセキュリティエレメント1を示している。イメージエレメント3は、数字の「4」及び「2」からなり、数字の「4」が図9aの観察方向において数字の「2」の上方に配置されている。
【0201】
図9bは、イメージエレメント3’を有するセキュリティエレメント1を示している。イメージエレメント3’は、180°回転した数字の4及び180°回転した数字の2からなる。180°回転した数字の「2」は、図9bの観察方向において、180°回転した数字の「4」の上方に配置されている。
【0202】
図9a,9bの実施例における軌道及び/又は第1の微細構造及び/又は軌道の移行は、軌道及び/又は第1の微細構造がイメージエレメント3からイメージエレメント3’への変形、特にモーフィング、好ましくは反転し得るように配置される。イメージエレメント3は上記軌道等に沿ってムーブメント効果を介してイメージエレメント3’に変形する。図9aに示すイメージエレメント3の図9bに示すイメージエレメント3’への変形又は観察者が認識可能な変更は、光源及び/又は観察者に対するセキュリティエレメント1の傾斜及び/又は折曲及び/又は回転によって生じる。
【0203】
図10aは、イメージエレメント3を有するセキュリティエレメント1を概略的に示している。イメージエレメント3は数字の「5」を示している。イメージエレメント3の3つの例示的なイメージ点3a,3b,3cは、セキュリティエレメント1が傾斜及び/又は折曲及び/又は回転するとき、曲線軌道2a,2b,2c又は軌道セクション上を軌道2a,2b,2cの双方の方向に位置30,31,32へと移動する。好ましくは、セキュリティエレメント1が傾斜及び/又は折曲及び/又は回転するときに、観察者は連続的なムーブメント効果を検知する。イメージエレメント3は、軌道2a,2b,2cに沿って特定の方向R1へと特に位置30,31,32の間を連続して移動することができ、かつ傾斜方向及び/又は折曲方向及び/又は回転方向が変わったときに、特定の方向R1とは反対つまり方向R2(又はその逆)へと移動する。
【0204】
図10bは、照射下における数字の「5」をデザインした2つのイメージエレメント3,3’を有するセキュリティエレメント1の光学的作用を示す図である。各々のイメージエレメントは1つの光源により生じる。円軌道又は円形軌道に沿って、イメージエレメント3,3’を接続する一連のイメージ点として示された、好ましくはブレーズド構造、特に線形のブレーズド回折格子が配置されている。本実施例では、ブレーズド回折格子の格子周期は6μmであり、ブレーズド回折格子の格子深さは2μmである。本実施例において、軌道上の全ての位置における線形のブレーズド回折格子の長手方向の範囲は、軌道上の対応する位置における半径ベクトルに直交するように配置されている。
【0205】
図10bに示すセキュリティエレメントが傾斜及び/折曲及び/又は回転するときに、光学的作用は、数字の「5」として形成されたイメージエレメント3,3’の移動からなる。観察者は、セキュリティエレメントの上方又は下方におけるイメージエレメントの仮想的な移動により、三次元の印象を得る。
【0206】
図11a,11b,11cは、ピラミッド形のイメージエレメント3を形成する4つのイメージ点3a,3b,3c,3dを含むセキュリティエレメント1を概略的に示している。4つの点状のエレメント3a,3b,3c,3dは、曲線軌道2a,2b,2c,2dにそれぞれ位置し、4つの三角形の面を有するピラミッドの頂点を形成する。セキュリティエレメント1が傾斜及び/又は折曲及び/又は回転すると、イメージ点はムーブメント効果を生じさせる。イメージ点3a,3b,3c,3dは、傾斜方向及び/又は折曲方向及び/又は回転方向に応じて、対応する軌道2a,2b,2c,2dにおいて前方及び/又は後方に移動する。
【0207】
図11a,11b,11cに示す曲線軌道a,2b,2c,2dは、互いに異なる曲率半径を有する。軌道2aは、軌道2b,2c,2dよりも小さい曲率を有する。
【0208】
さらに、図11a,11b,11cは、対応する軌道2a,2b,2c,2d上の動きの過程における異なる位置30,31,32にある4つのイメージ点3a,3b,3c,3dを示している。図11a,11b,11cに示す軌道2b,2c,2dの曲率よりも小さい軌道2aの曲率により、イメージ点3aは、イメージ点3b,3c,3dよりも軌道2aの長い範囲に亘っている。これにより、観察者により認識され得るピラミッドの三次元のムーブメント効果が実現する。
【0209】
図11a,11b,11cに示すそのような三次元の効果つまり3D効果は、三次元のピラミッドの二次元投影としてのイメージエレメント3の形成により生じる。軌道2b,2c,2dの曲率がより大きいため、移動時におけるピラミッドの3つのイメージ点3b,3c,3dの位置変化は僅かである。他方、ピラミッドの頂点にあるイメージ点3aは、緩やかに湾曲した軌道2aにおいてより長い範囲に亘る。観測者の脳がピラミッドの変形を三次元空間内の三次元オブジェクトの変形として解釈するように、ピラミッドは、観察者の視点のムーブメント効果の過程で変形する。
【0210】
イメージ点3a,3b,3c,3dのムーブメント効果は、少なくとも1つの光源及び/又は観察者に対して、セキュリティエレメント1の傾斜及び/又は折曲及び/又は回転により生じる。
【0211】
図12a及び図12bは、軌道上に配置された複数のイメージ点3a,3bを含む2つのイメージエレメント3,3’を有する図11aのセキュリティエレメント1の反転した光学的作用を示している。イメージエレメントは、互いに同一のピラミッド形状を有する。イメージエレメント3のイメージ点3aは、互いからの距離が人間の目により解像され得るように互いに離間している。これにより、図12aにおけるピラミッド形のイメージエレメント3の個々のイメージ点が知覚され得る。他方、イメージエレメント3’のイメージ点3bは密度が非常に高いため、個々の点の互いの距離を人間の目で解像することができない。これにより、ピラミッド形のイメージエレメント3’は、僅かにぼやけた又は連続したピラミッド型の配置として知覚される。
【0212】
図11a,11b,11c,12a,12bに示す軌道の円軌道又は円形軌道の半径は、ピラミッドの先端のイメージ点3aにおいて10mmであり、ピラミッドの底部のイメージ点3cにおいて1mmである。
【0213】
図13a及び図13bは、一つ又は複数の第2の微細構造により光学情報の第2の項目が生成された例示的なセキュリティエレメント1を示している。
【0214】
図13aは、特に図4に示した第1の微細構造エレメント100a,100b,100cを含む軌道2a,2b,2cが第2の微細構造20と隣接しているセキュリティエレメント1を示している。本図では、第1の微細構造エレメント100a,100b及び/又は100cは、微細構造20の第2の微細構造エレメント200aと重なっていない。
【0215】
図13bは、一つ又は複数の軌道が第1の光学的可変効果を生じさせる第1及び第2の微細構造を示している。本図では、軌道2a,2bは第2の微細構造20の表面領域と交差している。
【0216】
好ましくは、図13bの場合、第2の微細構造20及び軌道2a,2bの表面領域は互いに格子化されている。このため、微細構造20及び軌道2a,2b,2cは、各々の場合に、少なくとも1つの特定の方向において複数のストリップ形状の部分的領域に分解される。これらのストリップ形状の部分的領域は、微細構造20又は微細構造20の一部を含むストリップ形状の部分的領域が一つ又は複数の軌道2a,2b,2c又は軌道2a,2b,2cの一部を含むストリップ形状の部分的領域を有する交差部分の両側に隣接するように、各々の場合、互いに対して配置される。この結果、微細構造を含むストリップ形状の部分的領域及び軌道を含むストリップ形状の部分的領域は、交差方向に垂直な方向において空間的に互い違いになる。本実施例では、ストリップの幅は、好ましくは、300μm未満である。
【0217】
第2の微細構造20は、好ましくは、光学的に可変の情報の項目を生成する。
【0218】
第2の微細構造20は、好ましくは、各々の場合、複数の第2の微細構造エレメント200a,200bを含む。第2の微細構造エレメント200a,200bは、好ましくは、第2の微細構造エレメントの間隔、レリーフ深さ、レリーフ形状及び/又は第2の微細構造エレメントの長手方向の向き等のパラメータによって特徴づけられる。
【0219】
第2の微細構造エレメント200a及び/又は200bは、好ましくは、図13bに示すように配置された、特に三角形の外形状を有する線形の構造エレメントとして形成され、第2の光学的効果として、三次元に見えるレリーフイメージ、特に三次元的に無彩色に見えるレリーフイメージをもたらす。
【0220】
さらに、第2の微細構造20は、複数の第2のファセット面を有する。第2のファセット面は、光が反射及び/又は回折されるとき、ファセット面の進行及び/又は傾斜角に応じてレリーフイメージをもたらす。
【0221】
しかし、第2の微細構造は、それぞれ、格子、特に正弦波及び/又は三角格子、異方性散乱構造、マット構造、ブレーズド回折格子及び/又は表面レリーフホログラムとして形成されてもよい。第1及び/又は第2の微細構造は、金属及び/又はHRI反射層及び/又は色ずれ効果を生じさせる層と組み合わされてもよい。また、第1及び第2の微細構造は、ホログラフィック露光により体積ホログラムに変換されてもよい。
【0222】
図14a~図14eは、セキュリティエレメント1を有するセキュリティ文書の構造を示している。図14a~図14eは、セキュリティエレメント1の上面図であり、図14eは、異なる観察角度におけるセキュリティエレメント1のパターンを示している。
【0223】
図14aには、5つの点又はイメージ点3f,3g,3h,3i,3jを含み、図1aのイメージエレメントと同一のイメージエレメントが図示されている。しかし、図1aと異なり、円軌道又は円形軌道2f,2g,2h,2i,2jの中心又は中心点4f,4g,4h,4i,4jは、ランダムに又は擬似ランダムに配置されている。また、中心又は中心点4f,4g,4h,4i,4jの配置は、5つの点又は5つのイメージ点3f,3g,3h,3i,3jを含む、特に、5つの点又は5つのイメージ点3f,3g,3h,3i,3jの位置に応じて配置されたイメージエレメントを示していない。特にイメージ点3f,3g,3h,3i,3jを含む所望のイメージエレメントが所定の照射及び/又は観察角で観察者に見えるように、軌道2f,2g,2h,2i,2jにおける微細構造が好ましくは選択され、配置される。他の全ての照射及び/又は観察角では、軌道2f,2g,2h,2i,2j上のイメージ点3f,3g,3h,3i,3jが分岐(逸脱)し、特にイメージ点3f,3g,3h,3i,3jを含むイメージエレメントは、もはや検知され得ない。図14b~図14dは、5つのイメージ点3f,3g,3h,3i,3jの分岐を概略的に示している。
【0224】
任意選択として、軌道のセクションだけが存在していてもよい。これらのセクションは、好ましくは、イメージエレメントが所定の照射及び/又は観察角で検知可能であるか、視認できる場所で終了する。これにより、特に正しい又は適切な角度構成を見つけやすくなる。同様に、任意選択として、異なる半径を円軌道又は円形軌道にランダム又は疑似ランダムに割り当ててもよい。
【0225】
図14e(a)~(d)は、円軌道又は円形軌道の擬似ランダムに配置された中心又は中心点を有する円軌道又は円形軌道を含むセキュリティエレメント1の例示的なデザインを示す写真である。円軌道又は円形軌道の2つの円軌道又は円形軌道を参照符号2i,2jでそれぞれ示している。特に図14e(a)に示す中央の観察位置では、イメージ点から構成されたイメージエレメント3IIは、文字「K」の形を表している。セキュリティエレメント1が右側に傾斜すると、イメージ点が分岐(逸脱)し、定義された割り当てが失われ、図14e(b)~図14e(d)に示すようにイメージエレメント3IIがもはや認識できなくなる。特に、文字「K」として認識可能なイメージエレメント3IIは、右側に傾斜した場合、拡散イメージエレメント3IIIとなる。
【0226】
図15は、照射下で数字「5」及び文字「K」として現れる2つのイメージエレメント3IV,3を含むセキュリティエレメント1の光学的作用を示す2つの写真である。2つのイメージエレメント3IV,3は、好ましくは、単一の光源によりもたらされる。本実施例では、円軌道又は円形軌道は、好ましくは、2つのイメージエレメント3IV,3について計算され、その後、一方が他方の上に配置される。好ましくは、計算ソフトウェアは、円軌道又は円形軌道の多くの交点を2つのイメージエレメント3IV,3に略均等に割り当てる。これにより、特に双方のイメージエレメント3IV,3が実質的に同じように明るく見えるようになる。微細構造は、非対称であることが好ましく、特に、例えば、ブレーズド回折格子又はマイクロミラーなどのブレーズド構造であることが好ましい。これらの微細構造は、2つのイメージエレメント3IV,3が、好ましくは、円軌道又は円形軌道の同じ位置で光らないように、2つのイメージエレメント3IV,3の円軌道又は円形軌道に配置及び配列される。イメージエレメントは、円軌道又は円形軌道上で正反対に表れることが好ましい。例えば、微細構造は、2つのイメージエレメント3IV,3が特に円の同一方向に移動するように配置される。図15のセキュリティエレメントが傾斜及び/又は回転するときの光学的作用は、好ましくは、円軌道又は円形軌道上の場所を交換したイメージエレメント「5」及び「K」の位置からなる。また、特に本実施例では、ブレーズド回折格子の格子周期は6μmであり、ブレーズド回折格子の格子深さは2μmである。ブレーズド回折格子の代わりに、例えば正弦波格子などの対称格子が使用されている場合、両方のイメージエレメントが同時に表示されるため、特に2つの位置で重なる。傾斜及び/又は回転時における2つのイメージエレメントの位置の交換又は場所の交換を確認することにより、好ましくは、ブレーズドタイプの微細構造の存在を単純かつ間接的に証明することができる。
【0227】
前述したように、図15(a)は、イメージエレメント3IV,3を有するセキュリティエレメント1を示している。イメージエレメント3IVは、数字「5」としてデザインされ、そのように観察者に認識される。イメージエレメント3は、文字「K」としてデザインされ、そのように観察者に認識される。図15(b)は、イメージエレメント3VI,3VIIを有するセキュリティエレメント1であって、図15(a)のセキュリティエレメント1が右側に傾斜した後のセキュリティエレメント1を示している。イメージエレメント3VIは、文字「K」としてデザインされ、そのように観察者に認識される。イメージエレメント3VIIは、文字「K」としてデザインされ、そのように観察者に認識される。好ましくは、所定位置にあるイメージエレメント3IV(数字「5」)は、セキュリティエレメント1が右側に傾斜したときにイメージエレメント3VI(文字「K」)と交換され、所定位置にあるイメージエレメント3(文字「K」)は、セキュリティエレメント1が右側に傾斜したときにイメージエレメント3VII(数字の「5」)と交換される。
【0228】
図16a~図16dは、セキュリティエレメント1を含むセキュリティ文書の構造を示している。本実施例では、中心又は中心点4k、特に少なくとも75%、好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは全ての円軌道又は円形軌道2k,2l,2m,2n,2o,2pは、同一又は略同一である。略同一とは、特にほとんど、好ましくは全ての円軌道又は円形軌道2k,2l,2m,2n,2o,2pの中心又は中心点4kが、特に最大の円軌道又は円形軌道2kの半径Rkの10%以下、好ましくは半径Rkの5%以下である最大距離を互いの間に有し、かつ/又は、特にほとんど、好ましくは全ての円軌道又は円形軌道2k,2l,2m,2n,2o,2pの中心又は中心点が、3mm以下、さらに好ましくは1mm以下、特に好ましくは0.5mm以下である最大距離を互いの間に有していることを意味している。各々の円軌道又は円形軌道2k,2l,2m,2n,2o又は2pの半径Rk,Rl,Rm,Rn,Ro又はRpは、イメージエレメント3VIIIの割り当てられたイメージ点3k,3l,3m,3n,3o,3pの各々の位置に起因している。軌道2k,2l,2m,2n,2o,2pにおける微細構造は、好ましくは、イメージエレメント3VIIIが所望の照射及び観察角の状態で表れるように、選択され、配置される。セキュリティエレメント1が傾斜又は回転すると、イメージエレメント3VIIIは、好ましくは、円軌道又は円形軌道2k,2l,2m,2n,2o,2pの中心又は中心点4kを中心として軌道2k,2l,2m,2n,2o,2pに沿って回転する。例えば、イメージエレメントは、傾斜又は回転の場合に円を描く鳥を表すことができる。同様に、第2のイメージエレメントのため、2つのイメージエレメントが好ましくは同じ位置で光らないように微細構造を配置するため円軌道又は円形軌道の一方が他方の上に位置してもよい。例えば、第1のイメージエレメントが鳩を表し、第2のイメージエレメントが鷲を表してもよい。傾斜又は回転の場合、鷲が鳩の後ろを仮想的に飛ぶ。
【0229】
全ての円軌道又は円形軌道の同一又は略同一である中心又は中心点を有して設計されたセキュリティエレメント1は、重なる円軌道又は円形軌道がほとんどなく、したがって、イメージエレメントがより明るく表れるという利点を有する。
【0230】
図17a~図17eは、セキュリティエレメント1を含むセキュリティ文書の構造を示している。本実施例では、少なくとも75%、好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは全ての円軌道又は円形軌道2q,2r,2s,2t,2u又は円軌道セクション又は円形軌道2q,2r,2s,2t,2uのセクションの中心又は中心点4qは、同一又は略同一である。略同一とは、好ましくは、特にほとんど、好ましくは全ての円軌道又は円形軌道2q,2r,2s,2t,2u又は円軌道セクション又は円形軌道セクション2q,2r,2s,2t,2uの中心又は中心点4qが、最大の円軌道又は円形軌道2q又は最大の円軌道セクション2qの半径Rqの10%以下、好ましくは半径Rq5%以下である最大距離を互いの間に有し、及び/又は、特にほとんど、好ましくは全ての円軌道又は円形軌道2q,2r,2s,2t,2u又は円形軌道2q,2r,2s,2t,2uの全ての円軌道セクション又はセクションの中心又は中心点4qが、3mm以下、さらに好ましくは1mm以下、特に好ましくは0.5mm以下である最大距離を互いの間に有していることを意味している。各々の円軌道又は円形軌道2q,2r,2s,2t又は2u又は各々の円軌道セクション又は円形軌道セクション2q,2r,2s,2t,2uの半径2q,2r,2s,2t,2uは、イメージエレメント3IXの割り当てられたイメージ点2q,2r,2s,2t,2uの各々の位置に起因している。円軌道又は円形軌道2q,2r,2s,2t,2u又は円軌道セクション又は円形軌道セクション2q,2r,2s,2t,2uにおける微細構造は、好ましくは、イメージエレメント3IXが所望の照射及び観察角の状態で表れるように、選択され、配置される。セキュリティエレメント1が傾斜及び/又は回転すると、イメージエレメント3IXは、好ましくは、消失及び/又は再出現及び/又は継続的に存在するイメージ点3q,3r,3s,3t,3uにより、アニメーション(動画)が観察者に認識されるように変化する。例えば、イメージエレメントは、傾斜又は回転の場合、円を描いて飛ぶ鳥を表わすことができ、その過程で羽をはばたかせているように見える。
【0231】
図17b~図17eは、点(種)3q,3r,3s,3t,3uのアニメーション(動画)を示している。5つの点3q,3r,3s,3t,3uのアニメーション(動画)は、2つの点3q,3uまで「数を数える」。すなわち、点の数が、特に図17b~図17eの順に1つの点ずつ減少する。
【0232】
同様に、第2のイメージエレメントのため、円軌道又は円形軌道の1つを他の軌道の上に重ねてもよい。微細構造は、特に2つのイメージエレメントが同じ場所で光らないように配置、配列される。例えば、第1のイメージエレメントは、飛ぶ鳥のアニメーションを表し、第2のイメージエレメントは、変化しないイメージエレメント、例えば額面金額等を表してもよい。アニメーションと不変のイメージエレメントとの組み合わせは、情報の伝達が容易であり、したがって、偽造に対する保護が向上する。
【符号の説明】
【0233】
1 セキュリティエレメント
2,2a,2b,2c,2d,2e 軌道
20a 軌道の内側輪郭
20b 軌道の外側輪郭
21a,22a 軌道の部分的領域
3,3’ イメージエレメント
3a,3b,3c,3d,3e イメージ点
300a,300b,300c,300d,300e,300f 接続線
30,31,32,33 位置
4a,4b,4c,4d,4e 軌道の中心点
5 セキュリティ文書
51 文書本体
52 装飾層
53 接着層
54 保護層
,R,R,R,R 半径
B 幅
Λ 格子周期
R1,R2 方向
M 中心点
α 方位角
10 第1の微細構造
20 第2の微細構造
100 第1の微細構造エレメント
10a 正弦波格子
10d ブレーズド格子
10e 異方性の マット構造
100a,100b,100c 第1の微細構造
11,12 交差領域
121,122,123 中断部
13,131,132 オフセット
14 モザイク面
141,142,143,144 部分的モザイク面
141a,142a,143a,144a 部分的モザイク面
15 自由な表面領域
200a,200b 第2の微細構造
2f,2g,2h,2i,2j 軌道
II,3III,3IV,3,3VI イメージエレメント
3f,3g,3h,3i,3j イメージ点
4f,4g,4h,4i,4j 中心点
Rf,Rg,Rh,Ri,Rj 半径
2k,2l,2m,2n,2o,2p 軌道
VIII イメージエレメント
3k,3l,3m,3n,3o,3p イメージ点
4k 中心点
Rk,Rl,Rm,Rn,Ro,Rp 半径
2q,2r,2s,2t,2u 軌道
IX,3,3XI,3XII イメージエレメント
3q,3r,3s,3t,3u イメージ点
4q 中心点
図1a-1d】
図1e
図2a
図2b
図2c
図2d
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9a
図9b
図10a
図10b
図11a
図11b
図11c
図12a
図12b
図13a
図13b
図14a
図14b
図14c
図14d
図14e
図15(a)】
図15(b)】
図16a
図16b
図16c
図16d
図17a
図17b
図17c
図17d
図17e