(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】エンジン排気ガスからの有害化合物の除去方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
F01N 3/20 20060101AFI20220711BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20220711BHJP
F01N 3/22 20060101ALI20220711BHJP
F01N 3/035 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
F01N3/20 D
F01N3/08 B
F01N3/22 301Z
F01N3/035 E
(21)【出願番号】P 2019554747
(86)(22)【出願日】2018-03-27
(86)【国際出願番号】 EP2018057802
(87)【国際公開番号】W WO2018184921
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2021-03-15
(32)【優先日】2017-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】501399500
【氏名又は名称】ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D-63457 Hanau,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】パール・エル・テー・ガブリエルソン
【審査官】稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-122220(JP,A)
【文献】特開2013-245606(JP,A)
【文献】独国実用新案第202007018423(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00-3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン排気ガスからの、窒素酸化物、揮発性有機化合物、及び微粒子物質の除去方法であって、
酸化触媒を介して、粒子フィルタを介して、及び前記エンジン排気ガスに添加されたアンモニアの、そのままの形態又はその前駆体の形態のいずれかでの存在下で窒素酸化物を選択的に還元するための触媒を介して、前記エンジン排気ガスを直列に通すステップと、
前記窒素酸化物を選択的に還元するための触媒の上流で、二酸化窒素を含有する廃ガスを、前記エンジン排気ガス中に250℃未満のエンジン排気ガス温度で投入するステップと、
前記二酸化窒素を含有する廃ガスを提供するステップであって、
アンモニア又はその前駆体を酸素含有雰囲気により酸化触媒の存在下で、一酸化窒素及び酸素を含む廃ガスに触媒的に酸化するステップと、
前記廃ガスを周囲温度まで冷却することと、前記冷却された廃ガス中の前記一酸化窒素を二酸化窒素に酸化するステップとによる、提供するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記酸素含有雰囲気が、エンジン排気ガスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸素
含有雰囲気が、周囲の空気である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
二酸化窒素を含有する廃ガスを、前記粒子フィルタの上流で投入する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記二酸化窒素を含有する廃ガスを、前記エンジン排気ガス中に投入して、前記窒素酸化物を選択的に還元するための触媒への入口で、前記窒素酸化物の45~55体積%の量を二酸化窒素とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記冷却された廃ガス中の前記一酸化窒素の二酸化窒素への酸化を、酸化触媒の存在下で行う、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記粒子フィルタ
が、煤を燃焼し尽くすのに活性な触媒
を備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法に使用するためのシステムであって、エンジン排気ガス流路内に直列に、
揮発性有機化合物及び一酸化炭素を二酸化炭素及び水に酸化するための、並びに窒素酸化物を二酸化窒素に酸化するための酸化触媒ユニットと、
粒子フィルタと、
窒素酸化物を選択的に還元するための触媒と、
前記窒素酸化物を選択的に還元するための触媒の上流で、アンモニア又は尿素溶液を前記エンジン排気ガス流路内に投入するための投入手段と、
前記窒素酸化物を選択的に還元するための触媒の上流で、二酸化窒素含有廃ガスを投入するための投入手段と、
前記排気ガス流路の外側に、
アンモニア酸化触媒と、
前記アンモニア酸化触媒からの一酸化窒素含有廃ガスを冷却及び酸化するための手段であって、その出口端で前記二酸化窒素含有廃ガスを投入するための投入手段に接続された、手段と、
を含む、システム。
【請求項9】
前記二酸化窒素含有廃ガスを投入するための投入手段が、前記粒子フィルタの上流に配置されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記一酸化窒素含有廃ガスを冷却及び酸化するための手段が、渦巻状に巻かれた管の形態である、請求項8又は9に記載のシステム。
【請求項11】
前記一酸化窒素含有廃ガスを冷却及び酸化するための手段に、酸化触媒が提供されている、請求項8~10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記粒子フィルタが、煤を燃焼し尽くすのに活性な触媒
を備える、請求項8~11のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン排気ガス中に存在している窒素酸化物(NOx)及び微粒子物質の放出の低減方法及びシステムに関する。具体的には、本発明の方法及びシステムは、エンジンのコールドスタートの際に、NOxの改善された低減を提供する。
【背景技術】
【0002】
典型的には、リーンバーンエンジンによる車両エンジン又は定置エンジンの排気ガス浄化システムには、酸化触媒、微粒子フィルタ、及び、還元剤の存在下でNOx(SCR)を選択的に還元するための触媒が備えられている。
【0003】
揮発性有機化合物、一酸化窒素、及び一酸化炭素の酸化に活性である酸化触媒、並びにSCR触媒は、当該技術分野において公知であり、多数の刊行物に開示されている。
【0004】
公知のSCR触媒の問題は、250℃未満の排気ガス温度で効率が比較的低いことである。
【0005】
特に、コールドスタートの放出減少は、エンジンを認証する際に重要な問題点となる。異なる取り組みが探究されてきており、それらのほとんどは、異なるエンジン対策により排気を加熱することに基づくものであるが、多くの場合、燃料効率が悪化する。
【0006】
SCR反応を大幅に加速することができ、排気ガス中の等モル量のNO及びNO2で、いわゆる「高速」SCR反応:
2NH3+NO+NO2→2N2+3H2O
によって、低温活性を著しく上昇させることができることは公知である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
NO2の量を増加させる通常の取り組みでは、SCR触媒の上流で酸化触媒を使用して、NOをNO2に酸化する。しかし、問題は、コールドスタート条件での酸化触媒の効率が悪いこと、及び非常に低い濃度のNO2が200℃未満の排気ガス温度で生成することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、排気ガス流路内において排気ガス浄化システムの外部でNO2を生成させること、及び得られたNO2を、高速SCR反応を促進する量でエンジン排気ガス中に投入することに基づく。第1のステップにおいて貴金属含有触媒上でNH3をNOに、続いて、後続のステップにおいて酸化されたNO2に酸化することによって、NH3からNO2を生成させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
したがって、本発明は、第1の態様では、エンジン排気ガスからの、窒素酸化物、揮発性有機化合物、及び微粒子物質の除去方法であって、
酸化触媒を介して、粒子フィルタを介して、及びエンジン排気ガスに添加されたアンモニアの、そのままの形態又はその前駆体の形態のいずれかでの存在下で窒素酸化物を選択的に還元するための触媒を介して、エンジン排気ガスを直列に通すステップと、
窒素酸化物を選択的に還元するための触媒の上流で、二酸化窒素を含有する廃ガスを、エンジン排気ガス中に250℃未満のエンジン排気ガス温度で投入するステップと、
二酸化窒素を含有する廃ガスを提供するステップであって、
アンモニアを酸素含有雰囲気により酸化触媒の存在下で、一酸化窒素及び酸素を含む廃ガスに触媒的に酸化するステップと、
廃ガスを周囲温度まで冷却することと、冷却された廃ガス中の一酸化窒素を二酸化窒素に酸化するステップとによる、提供するステップと、を含む、方法を提供する。
【0010】
圧縮点火エンジンからのエンジン排気ガスの浄化に使用するための浄化方法及びシステムであって、エンジン排気ガスを、酸化触媒(DOC)を介して、粒子フィルタ(PDF)を介して、及びエンジン排気ガスに添加されたアンモニアの、そのままの形態又は尿素前駆体の形態のいずれかでの存在下で窒素酸化物を選択的に還元するための触媒(SCR)を介して、エンジン排気ガスを直列に通すこと、を含む、浄化方法及びシステムは、それ自体が当該技術分野において公知である。
【0011】
公知の方法及びシステムでの問題は、上述したように、250℃の排気ガス温度未満のコールドスタート条件での、SCR触媒の効率が比較的低いことである。この問題は、「高速」SCR反応が促進されるコールドスタート温度の際に、NO2をエンジン排気ガス中に投入することによる本発明によって解決される。この反応は、低温SCRのNO2による促進に関与する。
【0012】
エンジン排気ガス中に含有されている250℃超のNOは、エンジンから出ると、DOCとの接触によってNO2に酸化される。したがって、250℃超の温度では、生成したNO2の全ての量を、フィルタの受動的煤再生及び高速SCR反応のために使用することができる。
【0013】
このことにより、ガス温度が250℃に達すると、NO2のエンジン排気ガス中への投入を中断してもよい。
【0014】
アンモニアのNOへの酸化を、通常、微量成分としての貴金属触媒、典型的には白金、又は白金と他の貴金属との合金により、反応器内にて、空気などの酸素含有雰囲気の存在下で、250℃~800℃の反応温度で行う。
【0015】
必要とする反応温度を得るために、酸化反応器を、例えば、電気加熱又は誘導加熱によって加熱してもよい。
【0016】
一実施形態では、酸素含有雰囲気は、酸化反応器の加熱負荷の一部を更にもたらす、高温再循環エンジン排気ガスを含む。
【0017】
第1のステップにおいてNH3を貴金属含有触媒と接触させて酸化することによりNH3から生成したNOは、続いて、第1のステップからのNO含有廃ガス中でガスを周囲温度まで冷却して、平衡反応2NO+O2⇔2NO2を上記反応式におけるNO2の生成に向かわせることにより、NO2に酸化される。
【0018】
本明細書で使用するとき、用語「周囲温度」は、本発明の方法及びシステムを使用する車両エンジン又は定置エンジンの周囲に行き渡っている任意の温度を意味するものとする。典型的には、周囲温度は、-20℃~40℃である。
【0019】
NO含有廃ガスの冷却及び酸化を、ガスの滞留時間が約1分以上となるような大きさにした劣化反応器内で、行うことができる。
【0020】
一実施形態では、酸化反応を、NOのNO2への酸化を促進する触媒の存在下で行う。これらの触媒は、当該技術分野において公知であり、それには、TiO2上のPt、SiO2上のPt、及び活性炭が挙げられる。
【0021】
上述したように、所望の高速SCR反応には、等量のNO及びNO2が必要とされる。このことにより、250℃未満の温度のコールドスタート条件でエンジン排気ガス中に投入するNO2の量を制御して、SCR触媒ユニットへの入口で、エンジン排気ガス中の窒素酸化物含有量の45~55体積%をNO2とする。
【0022】
NO2を使用して、DPF上に捕捉された煤粒子を酸化することができ、NO2は、DPFの受動的再生に有用である。
【0023】
したがって、本発明の一実施形態では、二酸化窒素を含有する廃ガスを、粒子フィルタの上流で投入する。
【0024】
蓄積した煤の燃焼による確実なDPF再生を促進するために、並びに炭化水素及び一酸化炭素を同時に除去するために、好ましくはDPFに触媒コーティングを設ける。
【0025】
煤の燃焼に活性な触媒は、それ自体が当該技術分野において公知である。このような触媒の例は、ZrO2で安定化したCeO2と組み合わせたパラジウム、又はアルミナ上の白金である。
【0026】
250℃超で、排気ガス中でのNOを、DOCとの接触によってNO2に酸化する。生成したNO2を、DPFの受動的再生に使用する。したがって、250℃超の温度では、生成したNO2の全ての量をフィルタの受動的煤再生のために使用して、高速SCRを促進することができ、NO2含有ガスの投入を中断する。
【0027】
更なる態様では、本発明は、本発明による方法に使用するためのシステムを提供する。
【0028】
システムは、エンジン排気ガス流路内に直列に、
揮発性有機化合物及び一酸化炭素を二酸化炭素及び水に酸化するための、並びに窒素酸化物を二酸化窒素に酸化するための酸化触媒ユニットと、
粒子フィルタと、
窒素酸化物を選択的に還元するための触媒と、
窒素酸化物を選択的に還元するための触媒の上流で、アンモニア又は尿素溶液をエンジン排気ガス流路内に投入するための投入手段と、
窒素酸化物を選択的に還元するための触媒の上流で、二酸化窒素含有廃ガスを投入するための投入手段と、
排気ガス流路の外側に、
アンモニア酸化触媒と、
アンモニア酸化触媒からの一酸化窒素含有廃ガスを冷却及び酸化するための手段であって、その出口端で二酸化窒素含有廃ガスを投入するための投入手段に接続された、手段と、を含む。
【0029】
本発明の一実施形態では、二酸化窒素含有廃ガスを投入するための投入手段は、粒子フィルタの上流に配置されている。この実施形態により、エンジン排気ガスが、上流酸化触媒により十分な量のNO2が生成する温度に達する前に、粒子フィルタの受動的再生はより低い温度で可能である。
【0030】
上述したように、NOのNO2への酸化反応には、NO含有ガスの約1分の滞留時間が必要とされる。典型的には、1~2分である。
【0031】
これは、好ましくは、渦巻状に巻かれた管として、長さは管を通るガスの所望の滞留時間が得られるものにして、冷却及び酸化手段を形成すると、達成することができる。
【0032】
別の実施形態では、一酸化窒素含有廃ガスを冷却及び酸化するための手段に、NOのNO2への酸化を促進する酸化触媒が提供されている。
【0033】
更なる一実施形態では、粒子フィルタは、煤を燃焼し尽くすのに活性な触媒で触媒されている。