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特許7102440環状オリゴマーを製造するプロセス、それにより得ることができる環状オリゴマー、及びそれを重合するプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】環状オリゴマーを製造するプロセス、それにより得ることができる環状オリゴマー、及びそれを重合するプロセス
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/81 20060101AFI20220711BHJP
   C08G 63/85 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
C08G63/81
C08G63/85
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2019556825
(86)(22)【出願日】2018-03-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 EP2018057518
(87)【国際公開番号】W WO2018192743
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2020-12-16
(31)【優先権主張番号】17167601.8
(32)【優先日】2017-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515169326
【氏名又は名称】ズルツァー マネジメント アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コスタ、リボーリオ イヴァーノ
(72)【発明者】
【氏名】フレッケンシュタイン、ペーター ヨアヒム
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンブーム、ヤン - ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】ストルティ、ジュゼッペ
(72)【発明者】
【氏名】モルビデッリ、マッシモ
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-512811(JP,A)
【文献】特開平08-225633(JP,A)
【文献】特表2016-510084(JP,A)
【文献】特開昭58-150587(JP,A)
【文献】特開昭53-056681(JP,A)
【文献】特開昭55-081875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/81
C08G 63/85
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2~5個の繰り返し単位を有しフラン単位を含有する環状ポリエステルオリゴマーを含む(iv)環状ポリエステルオリゴマー組成物を製造するプロセスであって、
(a)線状オリゴマー化工程において、カルボン酸、エステル、酸ハロゲン化物及びそれらの組み合わせからなる群から選択される2つの官能基を有する(i)二官能性フラン誘導体と、(ii)ジオールとを含むモノマー組成物を反応して、1つ以上のフラン単位と2~4個の繰り返し単位とを含有する線状オリゴマー種を含む(iii)線状ポリエステルオリゴマー組成物を製造する工程、
(b)蒸留支援型環化(DA-C)工程において前記(iii)線状ポリエステルオリゴマー組成物を反応して、2~5個の繰り返し単位を有しフラン単位を含有する環状オリゴマーを含む(iv)環状ポリエステルオリゴマー組成物と(v)ジオール副産物とを形成する工程
を含み、
前記(b)蒸留支援型環化(DA-C)工程が溶媒の存在下で行われ、
前記(v)ジオール副産物及び前記溶媒が前記蒸留支援型環化(DA-C)工程において蒸発により除去され、
前記蒸留支援型環化は環化反応が、縮合反応副産物及び溶媒を、それらの蒸発により同時に除去し、その後、別個の容器での凝縮を介してこれらの副産物及び溶媒、並びに他の揮発性種を収集することを伴ことを意味する、
プロセス。
【請求項2】
前記環化反応が単一の反応容器で行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記溶媒が、イオン液体、置換されていてもよいナフタレン、置換されていてもよい芳香族化合物及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記(a)線状オリゴマー化工程中の粘度が50センチポアズ未満のままである、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記(a)線状オリゴマー化工程中の粘度が25センチポアズ未満のままである、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記(a)線状オリゴマー化工程中の粘度が10センチポアズ未満のままである、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記(a)線状オリゴマー化工程中の圧力が少なくとも0.8気圧のままである、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記(a)線状オリゴマー化工程中の圧力が少なくとも0.9気圧のままである、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記(a)線状オリゴマー化工程中の圧力が少なくとも1気圧のままである、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記(ii)ジオール及び/又は(v)ジオール副産物がエチレングリコール及び/又はブチレングリコールである、請求項1~のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
2つの官能基を有する前記(i)二官能性フラン誘導体が2,5-フランジカルボン酸(FDCA)又はFDCAの誘導体である、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記FDCAの誘導体がジエステル誘導体である、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記ジエステル誘導体がジメチル-、ジエチル-又はジプロピル-FDCAである、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記(a)線状オリゴマー化工程及び/又は前記(b)蒸留支援型環化(DA-C)工程中に1つ以上の触媒が存在する、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記1つ以上の触媒が遷移金属触媒である、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記1つ以上の触媒がスズ系触媒である、請求項14に記載のプロセス。
【請求項17】
2~5個の繰り返し単位を有しフラン単位を含有する環状ポリエステルオリゴマーを含む前記(iv)環状ポリエステルオリゴマー組成物を中間精製することなく直接重合して、少なくとも約5,000ダルトンの数平均分子量(Mn)を有するポリエステルポリマーを得る、請求項1~16のいずれか一項に記載のプロセスであって、Mnはポリスチレン標準に対してサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析により測定される、プロセス。
【請求項18】
前記重合が可塑剤(PL)及び場合により添加される触媒の存在下で行われる、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記触媒がスズ系触媒である、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
2~5個の繰り返し単位を有しフラン単位を含有する環状ポリエステルオリゴマーを含む前記(iv)環状ポリエステルオリゴマー組成物を、その後、選択的沈殿により精製して、1つ以上の線状オリゴマー及び/又はモノマー種を分離することにより(iv.a)精製環状ポリエステルオリゴマー組成物を形成する、請求項1~16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
前記分離した1つ以上の線状オリゴマー及び/又はモノマー種をリサイクルして、2~5個の繰り返し単位を有しフラン単位を含有する環状ポリエステルオリゴマーを含む(iv.b)更なる環状ポリエステルオリゴマー組成物を製造し、その後、選択的沈殿による任意の後続の精製を行って、1つ以上の線状オリゴマー及び/又はモノマー種を分離することにより(iv.a)精製環状ポリエステルオリゴマー組成物を形成する、請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
前記(iv.a)精製環状ポリエステルオリゴマー組成物又は前記(iv.b)更なる環状ポリエステルオリゴマー組成物を重合して、少なくとも約5,000ダルトンの数平均分子量(Mn)を有するポリエステルポリマーを得る、請求項20又は21に記載のプロセスであって、Mnはポリスチレン標準に対してサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析により測定される、プロセス。
【請求項23】
前記重合可塑剤(PL)及び場合により添加される触媒の存在下で行われる、請求項22に記載のプロセス。
【請求項24】
前記触媒がスズ系触媒である、請求項23に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを含む環状ポリエステルオリゴマー組成物を製造するプロセス、それにより得ることができる前記オリゴマー組成物、並びに、特に可塑剤(PL)の存在下でのポリエステルポリマーの製造における前記環状ポリエステルオリゴマー組成物の使用、及びそれにより得ることができるポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、工業規模の重合プラントでフラン系ビルディングブロックからポリエステルを製造するために従来使用されているジオール及び二酸又はジエステルモノマーの新しい代替原料が開発されている。国際公開第2014/139603(A1)号は、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを生成するのに十分な反応温度及び反応時間の条件下で、閉環オリゴマー化工程においてモノマー成分を反応する工程を含むプロセスで環状ポリエステルオリゴマーを容易に製造できることを開示している。このような環状ポリエステルオリゴマーは、大量の水又はアルコール副産物を製造せず、また、国際公開第2014/139602A1号に開示されているように重合を完了させるために、複雑な反応及び大容量の脱揮装置又は過酷な高温反応及び脱揮工程を必要としないことが有利である。
【0003】
それにもかかわらず、国際公開第’603号の環状ポリエステルオリゴマーには、低濃度の二酸、ジオール及びアシドールモノマー及び/又は二量体及び/又はオリゴマー種が平衡状態で存在しており、オリゴマーの貯蔵安定性又はその後の重合処理挙動に有害な影響を与えないようにそれらを除去する必要があることが報告されている。これらの望ましくない不純物は、クロマトグラフィー、選択的沈殿、蒸留、抽出及び結晶化などの従来の方法によってオリゴマー生成物から除去できることが開示され、ろ過とクロマトグラフィーの組み合わせが例によって教示されている。このような精製方法は効果的であるが、同様に効果的かつ選択的、好ましくはより効果的かつ選択的であり、特に大規模な商業生産のために大量の溶媒、長時間又はハイブリッドの組み合わせを必要としないものを有することが望ましい。
【0004】
このような環状オリゴマーからの溶融重合によるポリエステルポリマーの製造は、より温和な熱条件下(色や分解を最小限に抑える)で、国際公開第’602号の重縮合反応よりも簡単な装置で可能であることが示されているが、それにもかかわらず、環状オリゴマー種の中には非常に高い融点を有するものもある。例えば、しばしば支配的な環状二量体の融点は約370℃である。したがって、このようなオリゴマー組成物は300°C未満のより温和な温度で容易に重合する可能性があるが、それらの重合前に原料を溶融するにはかなり高い温度と厳しい条件が必要になる可能性があり、それにより熱に敏感な部分脂肪族オリゴマーの分解及び変色を引き起こす。これらの問題を克服するいくつかの方法は、欧州特許第16191553.3-1377号(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。しかしながら、特に、より大規模な商業プラントにより容易に適した、より商業的に実行可能なプロセスを提供するための更なるプロセスの単純化及び/又は変更に関する更なる改善が望ましい。
【0005】
結論として、特に大規模な商業的操作のために、そのような環状ポリエステルオリゴマーを製造するためのプロセス、並びに、それらを重合するためのプロセスをさらに改善することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この技術水準から始め、本発明の目的は、フラン単位を有し、特に前述の欠陥を被らないポリエステルポリマーの製造に使用するための、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを製造する改善されたプロセスを提供することである。関連する目的は、ポリエステルポリマーの製造において前記環状ポリエステルオリゴマー組成物を使用する改善されたプロセスを提供することである。
【0007】
本発明において、「フラン単位」は、モノマーFDA、HMFA、BHMF、及びそれらの部分的又は完全に反応したモノエステル又はジエステル誘導体に基づくものなどのフラン誘導体を指す。フラン単位を含有するとは、そのようなモノマーの部分的又は完全に反応したモノエステル又はジエステル誘導体が、環状又は線状ポリエステルオリゴマーに組み込まれていることを意味する。
【0008】
本発明において、「蒸留支援型環化(DA-C)」は、典型的には単一の反応容器における環化反応が、縮合反応副産物(例えば、エチレングリコールなどのジオール副産物)及び溶媒を、それらの蒸発により同時に除去し、その後、典型的には別個の容器での凝縮を介してこれらの副産物及び溶媒、並びに他の揮発性種を収集することを伴い、かつ、それによって増強されることを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、これらの目的は、
2~5個の繰り返し単位を有しフラン単位を含有する環状ポリエステルオリゴマーを含む(iv)環状ポリエステルオリゴマー組成物を製造するプロセスであって、
(a)線状オリゴマー化工程において、カルボン酸、エステル、酸ハロゲン化物及びそれらの組み合わせからなる群から選択される2つの官能基を有する(i)二官能性フラン誘導体と、(ii)ジオールとを含むモノマー組成物を反応して、1つ以上のフラン単位と2~4個の繰り返し単位とを含有する線状オリゴマー種を含む(iii)線状オリゴマー組成物を製造する工程、
(b)蒸留支援型環化(DA-C)工程で当該(iii)線状オリゴマー組成物を反応して、2~5個の繰り返し単位を有しフラン単位を含有する(iv)環状ポリエステルオリゴマーと(v)ジオール副産物とを含む環状ポリエステルオリゴマー組成物を形成する工程
を含み、
当該(v)ジオール副産物が、当該蒸留支援型環化(DA-C)工程において蒸発により除去される、
プロセス
により達成される。
【0010】
(a)線状オリゴマー化工程と(b)蒸留支援型環化(DA-C)工程は、通常、異なる反応ユニット又は反応器で、例えば連続又は半連続プロセスで、又はバッチプロセスの異なる時点で行われ、例えば、最初に(a)線状オリゴマー化工程が実行され、次に(b)蒸留支援型環化(DA-C)工程が実行される。(a)線状オリゴマー化工程では過剰の(ii)ジオールを有することが好ましいのに対し、(b)蒸留支援型環化(DA-C)工程では、(v)ジオール副産物を除去することが好ましいため、本発明では2つの工程を別個に実施するのが有利であり、多くの実施形態において、(ii)ジオールと(v)ジオール副産物は同じ化学種であってもよい。したがって、本発明の2段階プロセス[(a)及び(b)]は、複数の分離トレイを備えた蒸留カラムでのジカルボン酸のジエステルとジオールの反応蒸留によって大環状ポリエステルオリゴマーが製造され、カラムに沿った成分の同時分離と反応を可能にする米国特許出願第2006/128935号に開示されたプロセスとは全く異なる。本発明の2段階プロセス[(a)及び(b)]は、また、論文Wasserabscheider by Stefanie Ortlanderl from 2004-11-01 in the ROMPP Online-Enzyklopadie(XP055411633)に開示されているように、揮発性物質を除去する蒸留カラムを備えた反応器で単に反応を行うプロセスとも全く異なる。
【0011】
DA-Cは、国際公開第2014/139603(A1)号に開示されているもののような、環化解重合(CDP)プロセスに勝るいくつかの利点を有する。CDPとDA-Cの両方で、オリゴマー化と解重合の両工程が必要である。しかしながら、先行技術の例におけるCDPは、オリゴマー化工程において典型的には12時間以上の長い反応時間を必要とした。対照的に、DA-Cは、(a)線状オリゴマー化工程で比較的短い反応時間、例えば約1時間、のみを必要とする。
【0012】
処理及び処理装置に関しては、CDPはオリゴマー化工程で比較的高い粘度を持つが、DA-Cは比較的低い粘度しか持たない。さらに、CDPのオリゴマー化工程では、縮合反応副産物(エチレングリコールなど)を除去するために低圧が必要であるが、(a)線状オリゴマー化工程は、DA-Cにおける比較的単純な装置及び処理で、大気圧にて又は大気圧前後で都合よく実施することができる。
【0013】
最後に、CDPにおける反応生成物(iv.環状ポリエステルオリゴマー組成物)の純度は、オリゴマー化工程での縮合副産物(エチレングリコールなど)の除去によって制限され、これはオリゴマーの粘度によって制限される。対照的に、DA-Cにおける反応は、低粘度溶液からの環化解重合工程中の縮合副産物(例えば、v.エチレングリコールなどのジオール副産物)の除去によって促進することができる。これは非常に効果的で、収率をより高くする。
【0014】
例えば、いくつかの典型的な実施形態において、DA-Cは、反応生成物中に、HPLCにより測定して約1~約5質量%の線状オリゴマーのみを有する。対照的に、CDPプロセスは、典型的には、HPLCにより測定して約20~約50質量%の線状オリゴマーをその反応生成物中に含む。
【0015】
さらに、使用する特定の溶媒系によっては、多くの場合、DA-CにはCDPよりもさらに驚くべき利点がある。多くの場合、CDPに典型的に使用される線状オリゴマーは、反応溶媒(例えば、オルトジクロロベンゼン)にあまり溶けず、この場合、CDPは実行不可能になる。対照的に、DA-Cプロセスは短い又は低Mnオリゴマーから始まるので、溶解性がそれほど困難ではない。
【0016】
2~5個の繰り返し単位を有しフラン単位を含有する環状オリゴマーを含む本発明の(iv)環状ポリエステルオリゴマー組成物は、一般に高分子量の線状ポリエステルポリマーを含まない。特定実施形態において、5,000ダルトンを超えるMnを有する線状ポリエステルポリマーを20質量%未満、好ましくは15質量%、より好ましくは10質量%未満含有する。同様に、高分子量の線状ポリエステルポリマーを含まない類似の実施形態は、(iv.a)精製環状ポリエステルオリゴマー組成物及び(iv.b)更なる環状ポリエステルオリゴマー組成物にとって好ましいであろう。
【0017】
一実施形態において、(b)蒸留支援型環化(DA-C)工程は溶媒の存在下で行われ、当該溶媒は、好ましくはイオン液体、置換されていてもよいナフタレン、置換されていてもよい芳香族化合物及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0018】
DA-Cでの溶媒の使用は、バルク反応系と比較して、希釈反応系の末端基の変換レベルがはるかに低い環状ポリエステルオリゴマーの形成に強く有利である。より高沸点の芳香族溶媒は良好な溶解性を提供し、キシレンなどのより揮発性の溶媒は、その後より容易に除去される。ジクロロベンゼンは、沸点が低く、色がなく、融点が比較的低いため、しばしば好まれる。ジフェニルエーテルも無色無臭であるため、しばしば好ましい溶媒である。より低い沸点を有する溶媒は、溶媒の沸点で反応温度を維持し、したがって反応器への熱流束及び反応速度を調整することが容易であるため、有利である。1-メチルナフタレンは、必要な純度で容易に入手できず、強い臭気があり、色が茶色である可能性があるため、一部の実施形態では、DA-C工程の溶媒としてはあまり好ましくないことが判明した。特定の一実施形態において、(a)線状オリゴマー化工程中の粘度は、例えば同心又は同軸シリンダーシステムでISO3219に従って測定した場合、50センチポアズ未満、好ましくは25センチポアズ未満、最も好ましくは10センチポアズ未満のままである。前述のように、比較的低い粘度は、(a)線状オリゴマー化工程での縮合副産物(例えば、エチレングリコールなどのジオール副産物)の除去を促進する。例えば、既知のCDPプロセスの場合、オリゴマーは通常、繊維グレードのPEFと同様の固有粘度(0.4~0.7)を持つ固体である。代わりに、DA-Cの場合、オリゴマーは、通常、エチレングリコールの粘度に近い粘度(例えば、180°Cで0.7センチポアズ)のオリゴマー化反応温度で低粘度の液体である。
【0019】
別の特定実施形態において、(a)線状オリゴマー化工程中の圧力は少なくとも約0.8気圧、好ましくは少なくとも約0.9気圧、最も好ましくは少なくとも1気圧のままである。前に説明したように、大気圧又は大気圧付近でプロセスを操作できることにより、反応器の設計及び操作が簡単になる。
【0020】
特定の一実施形態において、ジオール及び/又はジオール副産物はエチレングリコール及び/又はブチレングリコールである。これらのジオールは、PEF又はPBFポリエステルポリマーの製造に使用されるため、しばしば好ましい。
【0021】
別の特定実施形態において、2つの官能基を有する二官能性フラン誘導体は2,5-フランジカルボン酸(FDCA)又はFDCAの誘導体である。さらにより具体的な実施形態において、FDCAの誘導体は、ジエステル誘導体、好ましくはジメチル-、ジエチル-又はジプロピル-FDCAである。これらのモノマーは、ポリエステルの製造時にテレフタル酸の代わりに使用できる再生可能な構成ブロックであり得るため、興味深いものである。
【0022】
さらに別の特定実施形態において、1つ以上の触媒は、(a)線状オリゴマー化工程及び/又は(b)蒸留支援型環化(DA-C)工程中に存在し、当該1つ以上の触媒は好ましくは遷移金属触媒であり、より好ましくはスズ系触媒である。そのような触媒の使用は、有利には、比較的温和な温度及び時間の条件下で、したがって低変色及びほとんど熱劣化のない(iv)環状ポリエステルオリゴマー組成物の製造を可能にする。
【0023】
特定の一実施形態では、2~5個の繰り返し単位を有しフラン単位を含有する環状ポリエステルオリゴマーを含む当該(iv)環状ポリエステルオリゴマー組成物を中間精製することなく直接重合して-好ましくは可塑剤(PL)及び場合により添加される触媒、好ましくはスズ系触媒の存在下で重合して-、少なくとも約5,000ダルトンのMnを有するポリエステルポリマーを得る。このような直接重合プロセスは、中間精製工程、機器及び試薬を排除することにより、プロセスの簡素化と低コストのインフラストラクチャを可能にする。本発明では、低分子量繊維グレード(FG)のポリエステルポリマーの製造のために、及び/又は、C2二量体種などの、より高融点の環状ポリエステルオリゴマーの含有量が比較的低い(iv)環状ポリエステルオリゴマー組成物の重合において、直接重合が可能である。一方、(iv)環状ポリエステルオリゴマー組成物において、C2二量体種などのより高融点の環状ポリエステルオリゴマーの含有量が比較的高い場合、直接重合は、しばしば可塑剤(PL)の存在下で行われることが好ましい。
【0024】
さらに別の特定実施形態では、2~5個の繰り返し単位を有しフラン単位を含有する環状ポリエステルオリゴマーを含む当該(iv)環状ポリエステルオリゴマー組成物を、その後、選択的沈殿により精製して、1つ以上の線状オリゴマー及び/又はモノマー種を分離することにより(iv.a)精製環状ポリエステルオリゴマー組成物を形成する。
【0025】
高融点のC2種及びC3種は、互いに離れて容易に沈殿するため、選択的沈殿がしばしば好ましい。高融点C2種をほとんど又は全く含まない精製されたC3リッチな(iv.a)精製環状ポリエステルオリゴマー組成物を、容易に重合できる。一方、一般に、それらを容易に溶融及び重合してボトルグレード(BG)のポリエステルポリマーを製造するために、高融点C2成分を含有するすべての環状ポリエステルオリゴマー組成物に可塑剤(PL)を添加する必要がある。
【0026】
より具体的な実施形態では、当該分離した1つ以上の線状オリゴマー及び/又はモノマー種をリサイクルして、(iv.b.)2~5個の繰り返し単位を有しフラン単位を含有する環状ポリエステルオリゴマーを含む更なる環状ポリエステルオリゴマー組成物を製造し、その後、選択的沈殿による任意の後続の精製を行って、1つ以上の線状オリゴマー及び/又はモノマー種を分離することにより(iv.a)精製環状ポリエステルオリゴマー組成物を形成する。分離された線状オリゴマー及び/又はモノマー種をリサイクルすることにより、プロセスの生産性と経済性が向上する。
【0027】
別のより具体的な実施形態では、当該(iv.a)精製環状ポリエステルオリゴマー組成物又は当該(iv.b)更なる環状ポリエステルオリゴマー組成物を重合して-好ましくは可塑剤(PL)及び場合により添加される触媒、好ましくはスズ系触媒の存在下で重合して-、少なくとも約5,000ダルトンのMnを有するポリエステルポリマーを得る。特に、重合時に使用する前に追加の処理工程を必要とせずに、これらの環状ポリエステルオリゴマー製品を重合に使用することは、プロセスの生産性に貢献する。
【0028】
本発明によれば、これらの目的は、一局面において、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを含む環状ポリエステルオリゴマー組成物を製造するプロセスによっても達成される。本プロセスは、いずれかの工程:
(I)構造Yのフラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを生成するのに十分な反応温度及び反応時間の条件下で、閉環オリゴマー化工程において、任意の触媒及び/又は任意の有機塩基の存在下でモノマー成分C又はDを反応する工程であって、
モノマー成分Cは構造
【化1】

を含み、
式中、基Aのそれぞれは、置換されていてもよい直鎖、分岐又は環状アルキル、フェニル、アリール、又はアルキルアリールであり、lは1~100の整数、好ましくは2~50の整数、最も好ましくは3~25の整数であり、
=OH、OR、ハロゲン、又はO-A-OH、
R=置換されていてもよい直鎖、分岐又は環状アルキル、フェニル、アリール、又はアルキルアリール、
=H又は
【化2】

であり、
モノマー成分Dは構造
【化3】

を含み、
式中、Aは置換されていてもよい直鎖、分岐又は環状アルキル、フェニル、アリール、又はアルキルアリールであり、基XのそれぞれはOH、ハロゲン、又は置換されていてもよいアルキルオキシ、フェノキシ、若しくはアリールオキシであり、Aがn-ブチルである場合、基XはOHではなく、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーの構造Y
【化4】

であり、
式中、mは1~20の整数、好ましくは2~15の整数、最も好ましくは3~10の整数である、
工程;
又は
(II)構造Yのフラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを生成するのに十分な反応温度及び反応時間の条件下で、閉環オリゴマー化工程において、任意の触媒及び/又は任意の有機塩基の存在下でモノマー成分C又はDを反応する工程であって、
モノマー成分Cは構造
【化5】

を含み、
式中、基Bのそれぞれは、置換されていてもよい直鎖、分岐又は環状のアルキル、フェニル、アリール、又はアルキルアリールであり、lは上記で定義された整数であり、n’は1~20の整数、好ましくは2~10の整数であり、
=OH、OR、ハロゲン、又はO-(B-O)n’-H、
R=置換されていてもよい直鎖、分岐又は環状アルキル、フェニル、アリール、又はアルキルアリール、
=H又は
【化6】

であり、式中、モノマー成分Dは構造
【化7】

を含み、
式中、基XのそれぞれはOH、ハロゲン、又は置換されていてもよいアルキルオキシ、フェノキシ、若しくはアリールオキシであり、基Bのそれぞれは置換されていてもよい直鎖、分岐又は環状アルキル、フェニル、アリール、又はアルキルアリールであり、n’は上で定義した整数であり、
フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーの構造Y
【化8】

であり、
式中、基Bのそれぞれは、置換されていてもよい直鎖、分岐又は環状アルキル、フェニル、アリール、又はアルキルアリールであり、n’は上記で定義された整数であり、mは1~20の整数、好ましくは2~15の整数、最も好ましくは3~10の整数である、
工程;
及び
フラン単位を有する線状オリゴマーポリエステル種が環状オリゴマー組成物から分離され除去される任意の後続工程(III)
を含み、
当該工程(III)は、以下のサブ工程:
(a)環状オリゴマー組成物の移動相を、固定相、好ましくはシリカゲルに通すこと、
(b)選択的沈殿、
(c)蒸留、
(d)抽出、
(e)結晶化、
(f)ゼオライトの添加及びゼオライトへの不純物の吸収、
(g)フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを沈殿させるために、環状オリゴマー組成物を冷却すること、
(h)フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを沈殿させるために、貧溶媒を添加すること、
(i)環状オリゴマー組成物から不純物を吸収したゼオライトを分離すること、
の1つ以上を含み、
閉環オリゴマー化工程における任意の触媒及び/又は任意の有機塩基の存在下でのモノマー成分C若しくはD又はC若しくはDの反応は、溶媒の存在下での反応蒸留によって行われ、
溶媒は、イオン液体、置換されていてもよいナフタレン、置換されていてもよい芳香族化合物及びそれらの混合物からなる群から選択され、
過剰のモノマー成分C若しくはD又はC若しくはD、好ましくはエチレングリコール及び縮合副産物、好ましくは水、アルコール、又はハロゲン酸若しくは塩、及び場合によりいくらかの溶媒は反応蒸留で除去され、
環状ポリエステルオリゴマー組成物は、HPLCにより測定して(a)約95~約99%又は(b)約99%以上の純度で形成される。
【0029】
本出願では、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを含む(iv)環状ポリエステルオリゴマー組成物を製造するための特許請求されたプロセスの文脈における「反応蒸留」は、化学工学で使用される古典的な用語と混同されるべきではなく、カラムに沿った異なる成分の同時分離と反応を可能にする複数の分離トレイの蒸留カラムを使用する反応器のセットアップ、又は米国特許出願第2006/128935A1号又は論文Wasserabscheider by Stefanie Ortlanderl from 2004-11-01 in the ROMPP Online-Enzyklopadie(XP055411633)に開示されるような蒸留カラムを備えた丸底フラスコなどの単純な反応器さえも意味する場合が多い。そのような従来の(「古典的な用語」)反応蒸留方法並びにカラムに沿った成分の同時分離及び反応のために具体化された従来の反応蒸留カラムの使用は、本発明では特に放棄される。本出願及びその特許請求された発明で使用される際、「反応蒸留」は、代わりに、蒸留促進型反応、すなわち、前述の蒸留支援型環化(DA-C)を指す。
【0030】
本発明によれば、これらの更なる目的は、まず、前記プロセスにより得ることができる環状ポリエステルオリゴマー組成物によって達成され、当該組成物は、その総重量に基づいて5重量%未満、好ましくは3重量%、最も好ましくは1重量%の線状オリゴマーポリエステル種を含む。前記環状ポリエステルオリゴマーは、ポリエステルポリマーの製造において本発明に従って使用される。
【0031】
一実施形態において、環状ポリエステルオリゴマー組成物が、HPLCにより測定して約95~約99%の純度で反応蒸留により形成され、環状ポリエステルオリゴマー組成物で開環重合が、好ましくは場合により添加される触媒の非存在下で、かつ、好ましくは任意の可塑剤の非存在下で行われて、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析より測定して重量平均分子量Mwが約15,000~約50,000ダルトン、好ましくは約20,000~約40,000ダルトン、より好ましくは約25,000~約35,000ダルトンの、フラン単位を有するポリエステルポリマーを生成する。
【0032】
別の実施形態において、環状ポリエステルオリゴマー組成物は、HPLCにより測定して約95~約99%の純度で反応蒸留により形成され、次いで、反応蒸留により製造された環状ポリエステルオリゴマー組成物は、好ましくは選択的沈殿、好ましくはシリカゲル上での分別クロマトグラフィー、抽出又は結晶化によりさらに精製されて、環状二量体ポリエステルオリゴマーの含有量が実質的に増加した環状ポリエステルオリゴマー組成物が生成され、好ましくは、環状二量体ポリエステルオリゴマーが、二重吸熱及び好ましくはDSCにより測定して約370℃の融点を有し、続いて、さらに精製された環状ポリエステルオリゴマー組成物で開環重合が、任意には、場合により添加される触媒の存在下で、かつ、添加される可塑剤の存在下で行われ、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析により測定して重量平均分子量Mwが少なくとも約50,000ダルトン、好ましくは少なくとも約55,000ダルトン、より好ましくは少なくとも約60,000ダルトンの、フラン単位を有するポリエステルポリマーが生成される。
【0033】
さらに別の代替実施形態において、環状ポリエステルオリゴマー組成物は、HPLCにより測定して約95~約99%の純度で反応蒸留により形成され、環状ポリエステルオリゴマー組成物は次に、好ましくは選択的沈殿、好ましくはシリカゲル上での分別クロマトグラフィー、抽出又は結晶化によりさらに精製されて、
(i)実質的に減少した、好ましくは実質的に排除された含有量の環状二量体ポリエステルオリゴマーであって、好ましくは二重吸熱、好ましくはDSCにより測定して約370℃の融点を有する環状二量体ポリエステルオリゴマー、
(ii)実質的に増加した含有量の環状三量体ポリエステルオリゴマーであって、好ましくは、DSCにより測定して約272℃の融点を有する環状三量体ポリエステルオリゴマー
を有する環状ポリエステルオリゴマー組成物が生成され、
さらに精製された環状ポリエステルオリゴマー組成物で開環重合が、任意には、場合により添加される触媒の存在下で、かつ、好ましくは場合により添加される可塑剤の非存在下で行われ、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析により測定して重量平均分子量Mwが少なくとも約50,000ダルトン、好ましくは少なくとも約55,000ダルトン、より好ましくは少なくとも約60,000ダルトンの、フラン単位を有するポリエステルポリマーが生成される。
【0034】
別の実施形態において、環状ポリエステルオリゴマー組成物は、HPLCにより測定して少なくとも約99%の純度で反応蒸留により形成され、環状ポリエステルオリゴマー組成物で開環重合が、任意には、場合により添加される触媒の存在下で、かつ、好ましくは場合により添加される可塑剤の非存在下で行われ、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析より測定して重量平均分子量Mwが少なくとも約50,000ダルトン、好ましくは少なくとも約55,000ダルトン、より好ましくは少なくとも約60,000ダルトンの、フラン単位を有するポリエステルポリマーが生成される。
【0035】
本発明は、これらの目的を達成し、フラン単位を有し、構造Y又はYのいずれかを有する環状ポリエステルオリゴマーを含む環状オリゴマー組成物を製造するプロセスにより、この問題に対する解決策を提供する。これらの環状オリゴマーは、有利には、比較的単純かつスケーラブルなプロセスにおいて、高変換率で、高純度で、アルコール及び/又は酸性末端基を有する直鎖モノマー又はオリゴマー種の含有量が低い状態で、容易に製造される。
【0036】
本発明において、用語「ポリエステル」及び「ポリマー」は、直鎖及び分岐ホモポリマー及びコポリマーを包含し、コポリマーはランダム、交互、ブロック又はグラフトであり得る。
【0037】
これらの結果は、まず驚くべきことに、反応蒸留により溶媒の存在下で環化反応を行うことにより達成される。溶媒の使用は、バルク反応系と比較して、希釈反応系の末端基の変換レベルがはるかに低い環状オリゴマー形成に強く有利である。特定のメカニズムにより拘束されることを望まないが、本発明者らは、この効果は、段階成長重合と環化の2つの独立した可逆反応間の競合に影響する溶媒の存在により得るものと考えている。より高沸点の芳香族溶媒は良好な溶解性を提供することがわかっているが、その後の除去を容易にするために、キシレンなどのより揮発性の溶媒を選択することが好ましい。
【0038】
環化のための別の好ましい溶媒は、沸点が低いためジクロロベンゼンであり、無色であり、室温で液体のままである。ジフェニルエーテルも無色であり、臭気がないため、さらに別の好ましい溶媒である。無色で無臭の溶媒が好ましいのは、環状オリゴマー又はその後のポリマーに色や臭いを与えないためである。臭気はまた、特に大規模製造工場では、ローカルな処理環境及び一般環境にとって非常に望ましくない。生成物を沈殿させるために、環化から粗生成物を容易に冷却できるため、室温で液体のままである溶媒が好ましい。
【0039】
ジクロロベンゼンのようなより低沸点の溶媒は、溶媒の沸点での反応温度の制御と維持が容易であり、反応器への熱流束、したがって反応速度を容易に調整できるため、有利である。
【0040】
1-メチルナフタレンは、必要な純度で大量に容易に入手できず、強い臭気があり、多くの場合茶色がかった色であるため、一部の実施形態において環化用溶媒として好ましくないことが判明した。
【0041】
環状オリゴマーは、酸性及び/又はアルコール性官能基を有する線状オリゴマー又は特にモノマー若しくは他の低分子量種(100g/mol未満)よりも溶媒への溶解性が低い傾向がある。したがって、反応生成物混合物を冷却すること及び/又は貧溶媒を添加することにより、追加的に又は代替的に環状体を除去することができる。貧溶媒として脂肪族炭化水素溶媒が一般的に好ましく、これらの化合物の火炎点、したがってその危険性は、鎖長が長くなると低下する。したがって、ヘプタン又はより長い種が、貧溶媒としてヘキサンよりもしばしば好ましい。ほとんどの貧溶媒は環状種と線状種に対して高い選択性を持たないため、環状種がより早く沈殿するように混合物を冷却することがしばしば好ましい。環状二量体などの多くの環状オリゴマー種は好ましくは130℃未満の温度で沈殿するため、多くの実施形態において120℃未満の温度に冷却することがしばしば好ましい。
【0042】
本出願において、「置換されていてもよい」とは、水素、アルキル、アリール、又はアルキルアリール基とは異なる化学置換基を指すことに留意されたい。そのような任意の置換基は、閉環オリゴマー化工程中は一般的に不活性であり、例えばハロゲン、又はエーテルであり得る。
【0043】
本発明において、「触媒」は、有機金属種又は金属塩などの無機又は金属含有化合物を指す。一方、「有機塩基」は、非金属性かつ塩基性の有機種を指す。
【0044】
本プロセスの別の好ましい実施形態において、任意の触媒は存在しないか、金属アルコキシド又は金属カルボキシレート、好ましくはスズ、亜鉛、チタン、カルシウム、鉄、マグネシウム、アルミニウム又はそれらの混合物の1つとして存在する。触媒の欠如は、原料のコストを削減し、環状ポリエステルオリゴマーの精製及び更なる使用を簡素化する。しかしながら、いくつかの金属系触媒が本発明のプロセスにおいて非常に効果的であり、したがって、比較的温和な温度及び時間の条件下で環状ポリエステルオリゴマー組成物を製造できることが発明者らによって見出された。これにより、生産性が向上し、プロセスにおける劣化と変色が最小限に抑えられる。加えて、いくつかの実施形態では、非金属触媒が使用される。例えば、ラクチドからのPLA製造に使用されるような非金属触媒を使用してもよい。特定実施形態において、非金属触媒は、N-複素環カルベン(NHC);トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(B(C);1,3,4-トリフェニル-4,5-ジヒドロ-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イリデンカルビン;及びDMAP/DMAP.HX(ここで、XH=CFSOH、CHSOH、HCl、(FCSONH)又はDMAP/DMAPCH.X(ここで、X=I-、-PF)からなる群の1つ以上から選択されてもよい。
【0045】
いくつかの実施形態において、鉄、カルシウム、亜鉛及びマグネシウムをベースとするものなどの「環境に優しい(greener)」又はより環境に配慮した、毒性の低い触媒を使用することが好ましい。適切な有機モノカルボン酸鉄錯体には、鉄及び酢酸、酪酸、イソ酪酸、ジクロロ酢酸及びトリフルオロ酢酸の錯体が含まれる。酢酸鉄、トリフルオロ酢酸鉄及びイソ酪酸鉄錯体は、効率的な触媒としてしばしば好ましい。適切な有機アミノカルシウム触媒(Ca/PO及びCa/EO)は、アンモニアカルシウムCa(NH3)6をそれぞれ酸化プロピレン及び酸化エチレンと反応することで製造できる。他の適切なカルシウム触媒には、カルシウムジメトキシド又はカルシウムジエトキシドなどのカルシウムジアルコキシドが含まれる。
【0046】
プロセスの溶媒の好ましい実施形態において、イオン液体は、カチオンが酸性プロトンを含まないイオン液体であり、より好ましくは、イオン液体はN-メチル-N-アルキルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(PYR1RTFSI)である。
【0047】
本プロセスの溶媒の別の好ましい実施形態において、置換されていてもよいナフタレンは、ナフタレン、1-メチルナフタレン及び2-メチルナフタレンからなる群から選択される。
【0048】
本プロセスの溶媒のさらに別の好ましい実施形態において、置換されていてもよい芳香族化合物は、ジフェニルエーテル、ジクロロベンゼン又はキシレン、好ましくはp-キシレンである。
【0049】
フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを沈殿させるために環状オリゴマー組成物を冷却するサブ工程は、好ましくは、50~125℃及び5~180分、好ましくは60~110℃及び30~120分、より好ましくは80~100℃及び45~90分の温度及び時間条件下で実施される。
【0050】
フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを沈殿させるために貧溶媒を添加するサブ工程は、5~95、好ましくは25~75、より好ましくは30~60重量%の量の炭化水素又はモノエステルの1つ以上から選択される貧溶媒を添加することにより実行する。好ましい実施形態において、炭化水素はアルカン、好ましくはヘキサンであり、エステルはサリチレート、好ましくはサリチル酸メチルである。
【0051】
本発明の別の局面は、本発明によるプロセスにより得ることができる、好ましくは得られる環状ポリエステルオリゴマー組成物に関し、当該組成物は、(i)5未満、好ましくは2、より好ましくは1重量%の濃度の残留溶媒であって、イオン液体、置換されていてもよいナフタレン、置換されていてもよい芳香族化合物及びそれらの混合物からなる群から選択される残留溶媒;(ii)フラン単位を有し、5%未満、好ましくは3重量%、最も好ましくは1重量%の濃度で存在する線状オリゴマーポリエステル種;及び(iii)場合により、5未満、好ましくは2、より好ましくは1重量%の濃度のゼオライトを含有し、前述の重量パーセントは環状ポリエステルオリゴマー組成物の総重量に対するものである。
【0052】
本発明におけるフラン単位を有する線状オリゴマーポリエステル種は、典型的には2~50、好ましくは2~20、より好ましくは2~10のモノマー繰り返し単位を含有する(本発明において、エステル結合は二酸又はジエステルモノマーとジオールとの反応により形成される)。このような低レベルの線状種を含む組成物は、後続の重合を効率的かつ再現可能に実行できるという点で有利である。環状オリゴマー組成物中の線状種のレベルが高い及び/又は可変であると、その後の重合化学量論を変化させ、したがって重合時に得ることができる分子量に影響を与える可能性がある。加えて、線状オリゴマー又はモノマー種の酸性、アルコール性又はエステル末端基が反応して、重合中に揮発性種を不利に放出する可能性がある。さらに、反応性酸性種は、塩基性触媒を急冷する、及び/又は処理装置に対して腐食性であるように作用する可能性がある。
【0053】
当該組成物の好ましい実施形態において、環状ポリエステルオリゴマー組成物中のC、D、C又はDなどの残留モノマー成分の含有量は、当該組成物の総重量に基づいて5未満、好ましくは3、最も好ましくは1重量パーセントである。
【0054】
環状ポリエステルオリゴマー組成物の好ましい一実施形態において、環状ポリエステルオリゴマー組成物は、ハロゲン化不純物、好ましくは酸塩化物及び/又はその残留物を含有する。本明細書では、残留物は、反応生成物又は副産物、例えば、HClなどのハロゲン酸又は塩化物塩などのハロゲン塩として定義される。そのような不純物は、カルボン酸とアルコールとの反応よりもオリゴマー組成物の製造においてより好ましい動態と平衡の両方を有する酸塩化物などの酸ハロゲン化物反応物の使用の副産物である。しかしながら、ハロゲン化種は腐食性である可能性があるため、後続の重合プラント用に特別な高価な建築材料を必要とする。したがって、本発明の環状ポリエステルオリゴマー組成物中のそれらの含有量は好ましくは、後続の分離及び除去工程中の除去などによって低く維持される。
【0055】
環状ポリエステルオリゴマー組成物の別の好ましい実施形態において、当該組成物は、フラン単位を有する、構造Y1’
【化9】

の特定の環状ポリエステルオリゴマーを含み、
式中、mは1~20の整数、好ましくは2~15の整数、最も好ましくは3~10の整数である。 この実施形態は、ポリ(2,5-エチレンフランジカルボキシレート)(PEF)を製造するのに適した原料であり、したがって、このオリゴマー組成物を製造するプロセスに関連して先に検討した利点を有する。
【0056】
環状ポリエステルオリゴマー組成物の代替の好ましい実施形態において、当該組成物は、フラン単位を有する、構造Y1”
【化10】

の特定の環状ポリエステルオリゴマーを含み、
式中、mは1~20の整数、好ましくは2~15の整数、最も好ましくは3~10の整数である。
この実施形態は、ポリ(2,5-ブチレンフランジカルボキシレート)(PBF)を製造するのに適した原料であり、したがって、このオリゴマー組成物を製造するプロセスに関連して先に検討した利点を有する。
【0057】
本発明の別の局面は、(i)フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを含む環状オリゴマー組成物を製造する本発明のプロセスを、(ii)ポリエステルポリマーを製造するための後続の重合工程と共に含む、ポリエステルポリマーの製造プロセスである。
【0058】
本発明の一局面は、本発明のプロセスにより得ることができる、好ましくは得られるポリエステルポリマー組成物であり、当該組成物は、(i)場合により、置換されていてもよいフェニルエーテル、イオン液体、置換されていてもよいキシレン、ポリエーテル、及びそれらの混合物からなる群から選択される可塑剤;(ii)フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマー、好ましくは約370℃での吸熱、より好ましくは約285℃及び約370℃での二重吸熱の存在を特徴とするもの;及び(iii)(a)PEFポリマー又は(b)PBFポリマーのいずれかを含有する。
【0059】
この独特なポリエステルポリマー組成物は、残留環状ポリエステルオリゴマー自体を含有するポリエステルポリマー組成物又はポリエステルポリマー組成物からの抽出及び/又は分離後の環状ポリエステルオリゴマーのいずれかのDSC分析により、約370°Cの融点(又は二重吸熱)を持つ残留未反応環状ポリエステルオリゴマー種の存在によって容易に識別できる。同様に、残留可塑剤の存在は、ポリエステルポリマー組成物のFTIR又はNMR分光分析により決定することができる。あるいは、ポリエステルポリマー組成物から残留可塑剤を抽出した後、HPLC又はGCなどの分光分析又はクロマトグラフィー法によって存在を決定してもよい。
【0060】
本プロセスの好ましい実施形態において、後続の重合は可塑剤の存在下で実施する。本発明のこの局面の代替実施形態において、可塑剤の存在下での後続の重合は、好ましくは先に論じた国際公開第2014/139603号に開示されているように、当技術分野で公知のプロセスにより得ることができる、好ましくは得られる環状オリゴマー組成物で行われる。
【0061】
本発明によれば、可塑剤は、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマー、好ましくは環状二量体の融点及び/又は粘度を低下させることができる化合物である。好ましい実施形態において、重合中の可塑剤の量は、初期未反応環状オリゴマー組成物の融点を少なくとも10℃、好ましくは少なくとも25℃、より好ましくは少なくとも50℃、最も好ましくは少なくとも約75℃低下させるのに十分である。好ましい実施形態において、重合中の可塑剤の量は、環状オリゴマー組成物を含む反応混合物の初期溶融粘度を少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%低下させるのに十分である。特定の他の好ましい実施形態において、可塑剤の量は、初期環状ポリエステルオリゴマー組成物の質量に基づいて、1~75質量%、好ましくは5~60質量%、より好ましくは10~50質量%、最も好ましくは15~40質量%である。溶融粘度は、当技術分野で一般的に知られている方法に従ってレオメーターを使用して測定することができる。特に好ましい実施形態において、可塑剤は、超臨界流体、置換されていてもよいフェニルエーテル、イオン液体、置換されていてもよいキシレン、ポリエーテル及びそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上である。プロセスのより具体的に好ましい実施形態において、超臨界流体は二酸化炭素であるか、ポリエーテルはグリム、好ましくはテトラエチレングリコールジメチルエーテルである。別の実施形態において、可塑剤は、環状ポリエステルオリゴマーのポリエステルポリマー、好ましくはPEFポリマー、好ましくは約15,000~約30,000g/mol(融点約220℃)の分子量を有するもの、又はPEFオリゴマー、好ましくは約1,000~約15,000g/mol未満の分子量を有するものである。前述の分子量は、ポリスチレン標準に対してSECより測定される。さらに別の好ましい実施形態において、上記の可塑剤のいずれかの混合物を使用する。
【0062】
可塑剤の存在には、いくつかの有益な効果がある。まず第一に、環状二量体などのいくつかの環状種は非常に高い融点を持ち、可塑剤の存在が効果的に低減する。したがって、ほとんどの環状オリゴマー組成物は、300℃未満の好ましい温度では融解せず、それを超えると、オリゴマーとそのポリマー生成物の両方の熱分解により、ポリマー生成物の著しい色形成と達成された分子量の減少が引き起こされる。次いで、可塑剤は、最初の溶融及びその溶融重合前の組成物の保持中の反応物環状オリゴマー組成物の熱プロファイル(温度及び/又は時間)を有益に最小化する。加えて、可塑剤は、融点より十分低い温度で、したがってより温和な条件下で環状オリゴマー組成物の重合を促進する。
【0063】
さらに、望ましい重合触媒の多くは液体ではなく固体である。例としては、商業用途向けの高分子量ポリマーを容易に生成する環状スタンノキサンや、スズ系触媒で得ることができるものと比べて色が低下したポリマー製品を提供するSbやBiなどの金属酸化物が含まれる。不活性可塑剤は、環状オリゴマー組成物とこれらの固体重合触媒との密接な接触及び混合を促進することにより重合を促進する。
【0064】
本発明の別の局面において、上記及び本願に開示されている可塑剤の存在下での開環重合は、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを含む既知の環状オリゴマー組成物、例えば欧州特許第2931784(A1)号に開示されているものなどの上で行うことができる。
【0065】
上記及び本願に開示されている可塑剤の存在下での開環重合のさらに別の局面では、重合は、置換フェノール及びフェニレンジアミンの誘導体などの1つ以上の酸化防止剤の存在下で行われる。適切な酸化防止剤としては、ベンゼンプロパンアミドであるN、N’-1,6-ヘキサンジイルビス[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシの商品名であるIRGANOX1098;式オクタデシル-3-(3,5-ジ-tertブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオナートを有するIRGANOX1076などの立体障害フェノール系酸化防止剤が挙げられる。
【0066】
本発明の関連する局面は、ポリエステルポリマーの製造における本発明の環状ポリエステルオリゴマー組成物の使用である。この重合プロセス及びこの使用は、有利な動態、腐食性酸性種の欠如、及び重合中のかなりの量の揮発性種の形成の欠如など、重合プロセスの原料としてオリゴマー組成物の望ましい特性を有利に利用する。
【0067】
当業者は、本発明の様々な請求項及び実施形態の主題の組み合わせが、そのような組み合わせが技術的に実行可能である限り、本発明において制限なく可能であることを理解するであろう。この組み合わせでは、いずれか1つの請求項の主題を、1つ以上の他の請求項の主題と組み合わせることができる。この主題の組み合わせでは、いずれか1つのプロセス請求項の主題を、1つ以上の他のプロセス請求項の主題、1つ以上の組成物請求項の主題、又は1つ以上のプロセス請求項と組成物請求項とを組み合わせたものの主題と組み合わせることができる。同様に、いずれか1つの組成物請求項の主題を、1つ以上の他の組成物請求項の主題、1つ以上のプロセス請求項の主題、又は1つ以上のプロセス請求項とシステム請求項とを組み合わせたものの主題と組み合わせることができる。当業者はまた、本発明の様々な実施形態の主題の組み合わせが、そのような組み合わせが技術的に実行可能である限り、本発明においても制限なく可能であることを理解するであろう。
【0068】
以下、本発明の様々な実施形態及び図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。概略図は以下の通りである。
本発明の一態様を以下に示す。
[発明1]
2~5個の繰り返し単位を有しフラン単位を含有する環状ポリエステルオリゴマーを含む(iv)環状ポリエステルオリゴマー組成物を製造するプロセスであって、
(a)線状オリゴマー化工程において、カルボン酸、エステル、酸ハロゲン化物及びそれらの組み合わせからなる群から選択される2つの官能基を有する(i)二官能性フラン誘導体と、(ii)ジオールとを含むモノマー組成物を反応して、1つ以上のフラン単位と2~4個の繰り返し単位とを含有する線状オリゴマー種を含む(iii)線状ポリエステルオリゴマー組成物を製造する工程、
(b)蒸留支援型環化(DA-C)工程において前記(iii)線状ポリエステルオリゴマー組成物を反応して、2~5個の繰り返し単位を有しフラン単位を含有する環状オリゴマーを含む(iv)環状ポリエステルオリゴマー組成物と(v)ジオール副産物とを形成する工程
を含み、
前記(v)ジオール副産物が前記蒸留支援型環化(DA-C)工程において蒸発により除去される、
プロセス。
[発明2]
前記(b)蒸留支援型環化(DA-C)工程が溶媒の存在下で行われ、前記溶媒が、好ましくはイオン液体、置換されていてもよいナフタレン、置換されていてもよい芳香族化合物及びそれらの混合物からなる群から選択される、発明1に記載のプロセス。
[発明3]
前記(a)線状オリゴマー化工程中の粘度が50センチポアズ未満、好ましくは25センチポアズ未満、最も好ましくは10センチポアズ未満のままである、発明1又は2に記載のプロセス。
[発明4]
前記(a)線状オリゴマー化工程中の圧力が少なくとも約0.8気圧、好ましくは少なくとも約0.9気圧、最も好ましくは少なくとも1気圧のままである、発明1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
[発明5]
前記(ii)ジオール及び/又は(v)ジオール副産物がエチレングリコール及び/又はブチレングリコールである、発明1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
[発明6]
2つの官能基を有する前記(i)二官能性フラン誘導体が2,5-フランジカルボン酸(FDCA)又はFDCAの誘導体である、発明1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
[発明7]
前記FDCAの誘導体がジエステル誘導体、好ましくはジメチル-、ジエチル-又はジプロピル-FDCAである、発明6に記載のプロセス。
[発明8]
前記(a)線状オリゴマー化工程及び/又は前記(b)蒸留支援型環化(DA-C)工程中に1つ以上の触媒が存在し、前記1つ以上の触媒が好ましくは遷移金属触媒、より好ましくはスズ系触媒である、発明1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
[発明9]
2~5個の繰り返し単位を有しフラン単位を含有する環状ポリエステルオリゴマーを含む前記(iv)環状ポリエステルオリゴマー組成物を中間精製することなく直接重合して-好ましくは可塑剤(PL)及び場合により添加される触媒、好ましくはスズ系触媒の存在下で重合して-、少なくとも約5,000ダルトンのMnを有するポリエステルポリマーを得る、発明1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
[発明10]
2~5個の繰り返し単位を有しフラン単位を含有する環状ポリエステルオリゴマーを含む前記(iv)環状ポリエステルオリゴマー組成物を、その後、選択的沈殿により精製して、1つ以上の線状オリゴマー及び/又はモノマー種を分離することにより(iv.a)精製環状ポリエステルオリゴマー組成物を形成する、発明1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
[発明11]
前記分離した1つ以上の線状オリゴマー及び/又はモノマー種をリサイクルして、2~5個の繰り返し単位を有しフラン単位を含有する環状ポリエステルオリゴマーを含む(iv.b)更なる環状ポリエステルオリゴマー組成物を製造し、その後、選択的沈殿による任意の後続の精製を行って、1つ以上の線状オリゴマー及び/又はモノマー種を分離することにより(iv.a)精製環状ポリエステルオリゴマー組成物を形成する、発明10に記載のプロセス。
[発明12]
前記(iv.a)精製環状ポリエステルオリゴマー組成物又は前記(iv.b)更なる環状ポリエステルオリゴマー組成物を重合して-好ましくは可塑剤(PL)及び場合により添加される触媒、好ましくはスズ系触媒の存在下で重合して-、少なくとも約5,000ダルトンのMnを有するポリエステルポリマーを得る、請求項10又は11に記載のプロセス。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1】閉環オリゴマー化工程におけるモノマー成分C又はDの反応からの構造Yのフラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを合成するための反応スキームを示す。
図2】閉環オリゴマー化工程におけるモノマー成分C又はDの反応からの構造Yのフラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを合成するための反応スキームを示す。
図3】閉環オリゴマー化工程における特定のモノマー成分C1’又はD1’の反応からの、PEFの製造に有用であり、フラン単位を有する構造Y1’の特定の環状ポリエステルオリゴマーを合成するための反応スキームを示す。
図4】閉環オリゴマー化工程における特定のモノマー成分C1”又はD1”の反応からの、PBFの製造に有用であり、フラン単位を有する構造Y1”の特定の環状ポリエステルオリゴマーを合成するための反応スキームを示す。
図5】開環重合中の環状PEF二量体の変換に対する可塑化の効果を示している。
図6】繊維グレード(FG)又はボトルグレード(BG)のポリエステルポリマーの製造のプロセスフロー図を示している。
図7】選択的沈殿により製造されたいくつかの精製環状ポリエステルオリゴマー組成物の収率及び純度を示す。
図8】異なる純度の環状ポリエステルオリゴマー組成物から製造されたポリエステルポリマーの変換及び分子量特性を示す。
図9】(iv)環状ポリエステルオリゴマー組成物を製造するための本発明によるプロセスの実施形態の概略反応スキームを示す。
【発明を実施するための形態】
【0070】
特許請求された発明は、国際公開第2014/139603(A1)号又は欧州特許第16191553.3号(いずれも参照により本明細書に組み込まれる)から知られているものなどの、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを含む環状ポリエステルオリゴマー組成物の製造プロセスに関する。
【0071】
本発明の環状ポリエステルオリゴマー組成物は特に限定されず、フラン単位を有し、構造Y又はYを含むポリエステルポリマーに添加して他の成分を含んでいてもよい。例えば、環状ポリエステルオリゴマー組成物は環状ポリエステルオリゴマーの製造に使用される、モノマー成分(未反応の二酸、ジオール又はアシドール試薬)、触媒、テンプレート剤、塩基、触媒クエンチャー、溶媒などの少量の1つ以上の未反応及び/又は未除去の反応成分をさらに含んでいてもよい。環状ポリエステルオリゴマー中のこれらの不純物の量は、環状ポリエステルオリゴマーの総重量に基づいて、好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満、さらに好ましくは3重量%未満、最も好ましくは1重量%未満である。
【0072】
さらに、環状ポリエステルオリゴマー組成物は、反応成分の1つに汚染物質として導入された、又は閉環オリゴマー化工程中の副反応又は後続の脱揮工程などの任意の追加工程により形成された低レベルの不純物をさらに含み得る。そのような不純物の例は、フラン単位を有する線状オリゴマーポリエステル種である。最後に、環状ポリエステルオリゴマー組成物は、酸化、熱劣化、光又はUV放射に対する安定剤などの、製造中又は使用前に添加される典型的なモノマー添加剤などの追加成分をさらに含んでいてもよい。当業者は、異なるモノマーの好ましい特性を組み合わせるための他のモノマーとのブレンドも本発明の範囲内にあると考えられることを理解するであろう。
【0073】
一実施形態において、環状ポリエステルオリゴマー組成物中の二酸、ジオール又はアシドールモノマーの含有量は、5重量%未満、好ましくは3重量%未満、より好ましくは1重量%未満である。本出願において、二酸、ジオール又はアシドールモノマーの含有量は、可溶性種の抽出とそれに続くGC-MS分析により測定されるそれらの含有量を指す。
【0074】
図1に示すように、フラン単位を有する構造Yの環状ポリエステルオリゴマーを含む環状オリゴマー組成物を製造する本発明のプロセスは、
(I)構造Yのフラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを生成するのに十分な反応温度及び反応時間の条件下で、閉環オリゴマー化工程において、任意の触媒及び/又は任意の有機塩基の存在下でモノマー成分C又はDを反応する工程を含み、
モノマー成分Cは構造
【化11】

を含み、
式中、基Aのそれぞれは、置換されていてもよい直鎖、分岐又は環状アルキル、フェニル、アリール、又はアルキルアリールであり、lは1~100の整数、好ましくは2~50の整数、最も好ましくは3~25の整数であり、
=OH、OR、ハロゲン、又はO-A-OH、
R=置換されていてもよい直鎖、分岐又は環状アルキル、フェニル、アリール、又はアルキルアリール、
=H又は
【化12】

であり、
モノマー成分Dは構造
【化13】

を含み、
式中、Aは置換されていてもよい直鎖、分岐又は環状アルキル、フェニル、アリール、又はアルキルアリールであり、基XのそれぞれはOH、ハロゲン、又は置換されていてもよいアルキルオキシ、フェノキシ、若しくはアリールオキシであり、Aがn-ブチルである場合、基XはOHではない。
【0075】
図2に示すように、フラン単位を有する構造Yの環状ポリエステルオリゴマーを含む環状オリゴマー組成物を製造する本発明のプロセスは、
(II)構造Yのフラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを生成するのに十分な反応温度及び反応時間の条件下で、閉環オリゴマー化工程において、任意の触媒及び/又は任意の有機塩基の存在下でモノマー成分C又はDを反応する工程を含み、
モノマー成分Cは構造
【化14】

を含み、
式中、基Bのそれぞれは、置換されていてもよい直鎖、分岐又は環状アルキル、フェニル、アリール、又はアルキルアリールであり、lは上記に定義された整数であり、n’は1~20の整数、好ましくは2~10の整数であり、
=OH、OR、ハロゲン、又はO-(B-O)n’-H、
R=置換されていてもよい直鎖、分岐又は環状アルキル、フェニル、アリール、又はアルキルアリール、
=H又は
【化15】

であり、
モノマー成分Dは構造
【化16】

を含み、
式中、基XのそれぞれはOH、ハロゲン、又は置換されていてもよいアルキルオキシ、フェノキシ、若しくはアリールオキシであり、基Bのそれぞれは置換されていてもよい直鎖、分岐又は環状アルキル、フェニル、アリール、又はアルキルアリールであり、n’はYについて前に定義された整数である。
【0076】
(I)又は(II)のいずれかに続く工程(III)において、フラン単位を有する線状オリゴマーポリエステル種を分離し、環状オリゴマー組成物から除去する。
【0077】
図3は、閉環オリゴマー化工程における特定のモノマー成分C1’又はD1’の反応から、PEFの製造に有用であり、フラン単位を有し、構造Y1’の特定の環状ポリエステルオリゴマーを合成するための反応スキームを示す。図4は、閉環オリゴマー化工程における特定のモノマー成分C”又はD”の反応から、PBFの製造に有用であり、フラン単位を有し、構造Y1”の特定の環状ポリエステルオリゴマーを合成するための反応スキームを示す。l、m及びnは、いずれの図の場合についても前に定義した通りである。
【0078】
特に明記しない限り、従来の閉環オリゴマー化プロセス及びそれらの様々な試薬、操作パラメーター及び条件、例えば国際公開第2014/139603(A1)号から知られているものを、構造Y、Y、Y1’、又はY1”を有する環状ポリエステルオリゴマーの製造において本発明によるプロセスで使用することができる。
【0079】
閉環オリゴマー化工程でフラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを生成するのに十分な反応温度及び反応時間の条件は特に限定されない。ここで十分であるとは、反応温度及び時間が、閉環反応を引き起こすのに十分であり、そのため、特許請求されたm値を有するオリゴマーがモノマー成分から製造されることを意味する。当業者は、適切な特定の反応温度及び反応時間が、反応温度と時間との間の相互作用に起因していくらか変化する可能性があることを理解するであろう。
【0080】
例えば、反応温度を上げると反応がより短時間で行われたり、反応時間を長くすると使用する反応温度が低くなったりすることがある。より低分子量の環状ポリエステルオリゴマーが製造される場合、及び/又はモノマー成分のオリゴマーへのより低い変換が許容され得る場合、より低い反応温度及び/又はより短い反応時間が適切である場合がある。あるいは、より高分子量の環状ポリエステルオリゴマーが製造される場合、及び/又はモノマー成分のより高い変換が望まれる場合、より高い反応温度及び/又はより長い反応時間が適切である場合がある。
【0081】
さらに、より効果的な触媒若しくは塩基又はより高い濃度の触媒若しくは有機塩基の使用により、より温和な反応条件(例えば、より低い反応温度及びより短い反応時間)を使用することが可能になり得る。逆に、不純物、特に触媒急冷又は連鎖停止不純物の存在は、より強力な反応条件を必要とする場合がある。
【0082】
DA-Cプロセスの好ましい実施形態において、線状オリゴマー化工程の圧力は、典型的には0.05~1.2バール、好ましくは0.5~1.1バール、最も好ましくは0.8~1.05バールである。線状オリゴマー化工程の温度は、典型的には約140~約300℃、好ましくは約160℃~約280℃、最も好ましくは約170℃~220℃である。反応時間は一般に0.5~2時間、好ましくは0.75~1.5時間、最も好ましくは0.9~1.1時間である。ジメチルエステル、meFDCAなどのモノマーに対するモル触媒濃度は、典型的には0.01~5%、好ましくは0.02~3%、最も好ましくは0.05~1%である。
【0083】
一実施形態において、環化反応温度は100~350℃、好ましくは150~300℃、最も好ましくは180~280℃であり、反応時間は30~600分、好ましくは40~400分、最も好ましくは50~300分である。特定の特定実施形態において、これらの開示された範囲のいずれかを組み合わせることにより得られる様々な特定の温度及び時間範囲の組み合わせを使用することができる。より好ましい実施形態において、これらの温度及び/又は時間範囲は、モノマー成分C又はCを用いた閉環オリゴマー化工程で使用される。
【0084】
別の実施形態において、環化反応温度は-10~150℃、好ましくは-5~100℃、最も好ましくは0~80℃であり、反応時間は5~240分、好ましくは10~180分、最も好ましくは15~120分である。特定の特定実施形態において、これらの開示された範囲のいずれかを組み合わせることにより得られる様々な特定の温度及び時間範囲の組み合わせを使用することができる。より好ましい実施形態において、これらの温度及び/又は時間範囲は、モノマー成分D又はDを用いた閉環オリゴマー化工程で使用される。
【0085】
本発明の実施において、閉環オリゴマー化を触媒して環状ポリエステルオリゴマーを形成することができる任意の触媒を使用することができる。本発明で使用するのに適した触媒は、無機塩基、好ましくは金属アルコキシド、金属カルボン酸塩、又はルイス酸触媒などの環状エステルの重合のために当技術分野で知られているものである。ルイス酸触媒は、2つ以上の安定な酸化状態を有する金属イオンを含む金属配位化合物であってもよい。この種類の触媒のうち、スズ含有化合物又は亜鉛含有化合物が好ましく、それらのアルコキシド及びカルボキシレートがより好ましく、オクタン酸スズが最も好ましい触媒である。
【0086】
閉環オリゴマー化工程は、好ましくは、任意の有機塩基の存在下で行われる。有機塩基は特に限定されず、無機塩基であっても有機塩基であってもよい。一実施形態においては、一般構造Eを有し、他の実施形態においては、トリエチルアミンなどのアルキルアミンであるか、又はピリジンである。さらに他の実施形態においては、Eとアルキルアミンの組み合わせである。本出願において、「触媒」は、有機金属種又は金属塩などの無機又は金属含有化合物を指す。一方、「有機塩基」は、非金属性かつ塩基性の有機種を指す。
【0087】
触媒と塩基の特定の組み合わせが特に効果的であり、それらの使用が好ましい場合がある。好ましい一実施形態において、触媒はスズ、亜鉛、チタン、又はアルミニウムアルコキシド又はカルボキシレートであり、有機塩基はDABCO(CAS番号280-57-9)又はDBU(CAS番号83329-50-4)であり、好ましくはトリエチルアミンと共に使用される。モノマー成分は、触媒及び/又は有機塩基と混合される場合、固相にあってもよい。しかしながら、溶媒を使用してモノマー成分を溶融相又は液相にし、その後触媒及び/又は有機塩基を添加することが好ましい。
【0088】
本発明のプロセスにおける触媒及び/又は有機塩基の量は特に限定されない。一般に、触媒及び/又は有機塩基の量は、選択された反応温度及び時間で閉環オリゴマー化工程を生じさせ、特許請求されたl値を有するオリゴマーがモノマー成分から製造されるのに十分である。一実施形態において、触媒及び/又は有機塩基が存在する。触媒は、モノマー成分の総重量に対して1ppm~1重量%、好ましくは10~1000ppm、より好ましくは50~500ppmの量で存在し、有機塩基は、プロセスで反応物として使用されるすべてのモノマー成分種1モルに対して0.5~6モル、好ましくは1~4モル、より好ましくは2~3モルの化学量論比で存在する。触媒及び有機塩基の濃度は、モノマー成分の濃度に対するこれらの試薬の使用される質量又は質量流量により容易に測定できる。
【0089】
DA-Cプロセスの好ましい実施形態において、蒸留支援型環化(DA-C)工程における圧力は、典型的には0.5~5バール、好ましくは0.8~3バール、最も好ましくは1~2バールである。温度は通常140~300℃、好ましくは180℃~240℃、最も好ましくは190℃~210℃である。反応時間は、典型的には1~10時間、好ましくは2~8時間、最も好ましくは3~7時間である。この蒸留支援型環化(DA-C)工程におけるオリゴマー組成物の濃度は、典型的には約1~約500g/L、好ましくは約5~約100g/L、最も好ましくは約10~約20g/Lである。
【0090】
本発明の環状ポリエステルオリゴマー組成物を製造するプロセスは特に限定されず、バッチ式、半連続式又は連続式で行うことができる。本発明の環状ポリエステルオリゴマー組成物を製造するのに適したオリゴマー化プロセスは2つのグループ、すなわち、溶媒の存在下での溶液オリゴマー化、又は溶媒の実質的非存在下でのオリゴマー化、例えばモノマー成分及びオリゴマー種の融解温度よりも高い温度で行われる溶融オリゴマー化、に分けることができる。
【0091】
環状ポリエステルオリゴマー組成物中に相当量の未反応モノマー成分、線状オリゴマー、又は他の低分子量種、特に酸性又は他の遊離OH基を有するものが存在すると、オリゴマー組成物の貯蔵安定性及び/又は重合処理挙動に悪影響を与える可能性があるため、環状ポリエステルオリゴマー組成物を、酸性及び/又はヒドロキシル基を有する低分子量(例えば100g/mol未満)種などの任意のその他の不純物と同様に線状オリゴマーポリエステル種を除去する工程に供する。
【0092】
本発明の環状ポリエステルオリゴマー組成物から、フラン単位を有する線状オリゴマーポリエステル種、並びに場合により他の不純物を分離及び除去する工程は特に限定されない。他の不純物の例は、二酸若しくはジオールなどの未反応の出発物質、又は塩基若しくはそれらの残留物(例えば、アミン残留物)などの残留試薬である。分離及び精製方法は、例えば、Purification of Laboratory Chemicals,Sixth Ed.,by W.E.Armarego and C.L.L.Chai,published in 2009 by Elsevier,Oxford(ISBN-13:978-1856175678)及びThe Molecular World,Separation,Purification and Identification by L.E.Smart,published in 2002 by the Royal Society of Chemistry,Cambridge(ISBN:978-1-84755-783-4)に開示されているように、当技術分野で周知である。
【0093】
特に明記しない限り、従来の分離及び精製プロセス並びにそれらの様々な装置、操作パラメーター及び条件を、構造Y、Y、Y1’、又はY1”の環状ポリエステルオリゴマー及びそれらの組成物の製造において本発明によるプロセスで使用することができる。
【0094】
一実施形態において、線状オリゴマー種及び任意の他の不純物を除去する分離工程は、環状オリゴマー組成物の移動相を固定相に通す、選択的沈殿、蒸留、抽出、結晶化又はそれらの組み合わせの1つ以上の分離サブ工程を含む。
【0095】
分離工程後に得られる環状ポリエステルオリゴマー組成物生成物において、フラン単位を有する線状オリゴマーポリエステル種は、環状ポリエステルオリゴマー組成物の総重量に対して、一般に5重量%未満の量で、特に3重量%未満の量で、さらにより具体的には1重量%未満の量で存在する。本発明の環状ポリエステルオリゴマー組成物中のフラン単位を有する線状オリゴマーポリエステル種の含有量は、従来の方法により容易に決定することができる。例えば、線形オリゴマー種の含有量は、エレクトロスプレー質量分析、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)質量分析、質量分析と組み合わせた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法、及びゲルろ過クロマトグラフィーより測定できる。本出願及び発明において、フラン単位を有する線状オリゴマーポリエステル種の濃度は、HPLCにより測定される濃度を指す。
【0096】
当該組成物の好ましい実施形態において、環状ポリエステルオリゴマー組成物中のC、D、C又はDなどの残留モノマー成分の含有量は、当該組成物の総重量に基づいて5未満、好ましくは3、最も好ましくは1重量パーセントである。そのような残留モノマー(又は溶媒)成分の含有量は、組成物のFTIR又はNMR分光分析により決定することができる。あるいは、含有量は、HPLC又はGCなどのクロマトグラフィー法より測定することができる。本出願及び発明において、残留モノマー(及び溶媒)成分の濃度は、HPLCにより測定される濃度を指す。
【0097】
本発明は、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを含む環状ポリエステルオリゴマー組成物に関し、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーの構造はY又はYであり、ポリエステルポリマー組成物は上記の方法で得ることができる。前記環状ポリエステルオリゴマー組成物は、(i)5未満、好ましくは2、より好ましくは1重量%の濃度の残留溶媒であって、イオン液体、置換されていてもよいナフタレン、置換されていてもよい芳香族化合物及びそれらの混合物からなる群から選択される残留溶媒;(ii)フラン単位を有し、5%未満、好ましくは3重量%、最も好ましくは1重量%の濃度で存在する線状オリゴマーポリエステル種;及び(iii)場合により、5未満、好ましくは2、より好ましくは1重量%の濃度のゼオライトを含有することを特徴とし、前述の重量パーセントは環状ポリエステルオリゴマー組成物の総重量に対するものである。そのようなオリゴマー組成物は、現在の重合用途によって提起されるほとんどの要件に応えることができる。
【0098】
別の好ましい実施形態において、組成物はハロゲン化不純物、好ましくは酸塩化物及び/又はその残渣を含む。オリゴマー中のハロゲン化不純物の検出方法はよく知られており、燃焼イオンクロマトグラフィー(IC)、光学原子分光分析、蛍光X線分析(XRF)が含まれる。しかしながら、ハロゲン化種は腐食性である可能性があるため、後続の重合プラント用に特別な高価な建築材料を必要とする。したがって、本発明の環状ポリエステルオリゴマー組成物中のそれらの含有量は好ましくは、後続の分離及び除去工程中の除去などによって低く維持される。
【0099】
環状ポリエステルオリゴマー組成物の好ましい実施形態において、フラン単位を有する特定の環状ポリエステルオリゴマーは、構造Y’又はY”の1つであり、mは1~20の整数、好ましくは2~15の整数、最も好ましくは3~10の整数である。
【0100】
本発明のさらに別の局面は、(i)フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを含む環状オリゴマー組成物を製造する本発明のプロセスを、(ii)ポリエステルポリマーを製造するための後続の重合工程と共に含む、ポリエステルポリマーの製造プロセスである。適切な開環重合触媒、プロセス条件、装置及び方法は、以前に議論された国際公開第2014/139602号(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているものである。この局面に関連するのは、ポリエステルポリマーの製造における本発明の環状ポリエステルオリゴマー組成物の使用の局面である。このプロセス又は使用の好ましい実施形態は、ポリエステルポリマーがPEFポリマー又はPBFポリマーであるものである。
【0101】
特に好ましいのは、本発明の開環重合プロセスにより得ることができる、好ましくは得られるポリエステルポリマー組成物であり、当該組成物は、(i)置換されていてもよいフェニルエーテル、イオン液体、置換されていてもよいキシレン、ポリエーテル、及びそれらの混合物からなる群から選択される可塑剤;(ii)フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマー、好ましくは約370℃での吸熱、より好ましくは約285℃及び約370℃での二重吸熱の存在を特徴とするもの;及び(iii)(a)PEFポリマー又は(b)PBFポリマーのいずれかを含有する。残留可塑剤は、好ましくは10未満、より好ましくは5、さらにより好ましくは2、最も好ましくは1重量%の量で存在する。ポリマー中の可塑剤の含有量は、Quantifying Polymer Plasticizer Content Through Direct Analysis of Tracer Compounds,IP.com Disclosure Number:IPCOM000246667D,Publication Date:2016-Jun-24に開示されているような従来の方法で測定することができる。フラン単位を有する残留未反応環状ポリエステルオリゴマーは、好ましくは5重量%未満、より好ましくは2重量%、さらにより好ましくは1重量%の量で存在する。いくつかの実施形態において、残留可塑剤及び未反応環状オリゴマーの含有量は、溶媒抽出、高温蒸留又はカラムクロマトグラフィーによってポリマーから分離し、次いでUV、NMR又はIR分光分析及び/又は質量分析によってそれらを同定することより測定する。PEF及びPBFポリマーは、しばしば、SECにより測定されるポリスチレン標準と比較して、少なくとも10,000ダルトン、好ましくは少なくとも15,000ダルトン、より好ましくは少なくとも20,000ダルトンの分子量を有することが好ましい。
【0102】
図6は、フラン単位を有する繊維グレード(FG)又はボトルグレード(BG)のポリエステルポリマーの製造のプロセスフロー図を示す。第一段階(1)では、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを、溶媒の存在下で一段階反応蒸留(RD)により特定の純度で製造する。ここでは、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーが製造され、エチレングリコールなどの過剰な反応物、縮合副産物及びおそらくは何らかの溶媒が除去される。
【0103】
一実施形態(A)では、反応蒸留下で環状ポリエステルオリゴマー化を実施して、HPLC分析で測定して約95%~約99%未満の純度を有する環状ポリエステルオリゴマー生成物を得る。別の実施形態(B)では、反応蒸留下で環状ポリエステルオリゴマー化を実施して、HPLC分析により測定して少なくとも約99%の純度を有する環状ポリエステルオリゴマー生成物を得る。これら2つの実施形態においてHPLCにより測定される純度の差は、主に線状オリゴマーに起因するであろう。線状オリゴマーのヒドロキシル、エーテル、又はカルボン酸若しくはエステル末端基により結果としてより多くの鎖が生成されるため、高分子量ポリエステルポリマー、例えばボトルグレードの用途に適しているもの、及び故に開環重合により製造されるより低分子量のポリエステルポリマーなどを製造するために線状オリゴマーを除去することが重要である。しかしながら、線状オリゴマーの除去は、環化反応の触媒を偶発的に除去することもある。線状オリゴマーの除去は、例えば、ゼオライトへの吸着、又は冷却及び/又は貧溶媒の添加による環状ポリエステルオリゴマーの選択的沈殿により実施することができる。その後、この触媒を重合に有利に使用することができる。しかしながら、偶発的に除去された触媒は、後続の重合プロセスで新しい触媒を追加することで置き換えることができる。
【0104】
HPLC分析により測定して少なくとも約99%の純度を有する環状ポリエステルオリゴマー生成物を生成する実施形態(B)の場合、本発明者らは驚くべきことに、この生成物を容易に直接重合して、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析により測定して、少なくとも約50,000ダルトン、好ましくは少なくとも約55,000ダルトン、より好ましくは少なくとも約60,000ダルトンの重量平均分子量Mwを有する「BGポリエステルポリマー」を製造できることを見出した。この実施形態は、一般に触媒を添加する必要がないことが判明しているため、非常に有利である。さらに、驚くべきことに、重合を実施するために可塑剤(PL)を添加する必要もないことも判明した。特定のメカニズムに拘束されることを望まないが、本発明者らは、形成されたポリマー種自体が高融点C2環状二量体ポリエステルオリゴマー種の可塑化に効果的であるため、可塑剤の添加は必要ないと考えている。
【0105】
HPLC分析により測定して約95~約99%未満の純度を有する環状ポリエステルオリゴマー生成物は開環重合により直接重合されて繊維グレード(FG)ポリエステルポリマーを生成し得る。「FGポリエステルポリマー」は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析により測定して、約15,000~約50,000ダルトン、好ましくは約20,000~約40,000ダルトン、より好ましくは約25,000~約35,000ダルトンの重量平均分子量Mwを有する。
【0106】
あるいは、HPLC分析により測定される純度が約95~約99%未満の環状ポリエステルオリゴマー生成物を次に精製(PUR)して、精製された二量体(C2)又は三量体(C3)リッチな環状ポリエステル生成物を生成することができる。適切な精製方法(PUR)には、選択的沈殿、シリカゲル上などでの分別クロマトグラフィー、抽出又は結晶化が含まれ得る。C2種とC3種は互いに離れて容易に沈殿するため、選択的沈殿がしばしば好ましい。結晶化は、C2種とC3種では融点がかなり異なるため、大規模なプロセス又は商業的なプロセスでしばしば好ましい。当業者は、C2及びC3リッチな精製生成物がより少ない量の他の環状種を含むことがあることを理解するであろう。しかしながら、C3リッチな精製生成物は、一般に、高融点C2種をほとんど又は全く持たないことが好ましい。
【0107】
高融点C2成分によるC2リッチな精製環状ポリエステルオリゴマー生成物の高融点特性に起因して、一般に、それらを重合してボトルグレード(BG)のポリエステルポリマーを製造するために可塑剤(PL)を添加する必要がある。一般に、触媒を再度追加することも必要であり、可塑剤(PL)の添加は、この添加された触媒を効率的に分散するのに役立つ。
【0108】
ほとんど又は好ましくは本質的にすべての高融点C2種が精製されたC3リッチな環状ポリエステルオリゴマーから除去されているため、一般に、重合を行ってボトルグレード(BG)のポリエステルポリマーを製造するために、可塑剤(PL)を添加する必要はない。一般に、触媒を再度添加する必要もあるが、この添加された触媒を効率的に分散させるために可塑剤(PL)を添加する必要はない。
【実施例
【0109】
以下の例は、本明細書において特許請求されたプロセス、ポリエステルポリマー組成物、及び使用が評価される方法についての詳細な説明を当業者に提供するために記載されており、発明者が発明とみなす範囲を限定することを意図するものではない。
【0110】
これらの例では、以下の特性評価方法は、例で製造された環状ポリエステルオリゴマー組成物の特性評価に使用されたパラメーターである。
【0111】
SEC-MALS
290nmで動作するAgilent 1100 VWD/UV検出器、DAWN HELEOS IIマルチアングルレーザー光散乱(MALS)検出器(Wyatt Technology Europe)、続いてAgilent 1100 RI検出器と直列に接続された2つのPFGリニアMカラム(PSS)を使用し、Agilent 1100 GPCでサイズ排除クロマトグラフィーとマルチアングル光散乱(SEC-MALS)を組み合わせて用いて、ポリエステルの変換及び分子量分布を分析した。サンプルは、室温で1mL/minの0.02M K-TFAcを含むHFIPで溶出した。
【0112】
H NMR
300MHzの周波数で動作し、溶媒としてCDClを使用するBruker AV 300分光計で測定を行った。
【0113】
HPLC-MS
クォータナリポンプ、オートサンプラ及びUV検出器を備えたAgilent 1200シリーズHPLCに、Agilent Eclipse XDB-C18、5m、4.6 x 150mmカラムを装着した。(A)ギ酸で安定化した水(1mL/L)と(B)ギ酸で安定化したアセトニトリル(1mL/L)で溶離液混合物を構成した。勾配を1mL/minで60分間実行した。Bの溶媒比は、11分間で20%から45.2%に直線的に変化し、29分間で45.2%から80%に変化し、その後10分で97%、10分で20%に変化した。サンプルをHFIP/CHCL3(15%)に1mg/mLで溶解した。注入量は10μLであり、280nmでUV検出を行った。ピークは、Agilent 1640シングル四重極MSを使用したオンライン質量分析法によって特性評価した。
【0114】
MALDI-TOF
マトリックスはT-2-[3-(4-t-ブチル-フェニル)-2-メチル-2-プロペニリデン]マロノニトリル(DCTB)+Naミックス10:1で、機器タイプはBruker Daltonics Ultraflex IIであった。取得モードはリフレクターであった。
【0115】
例1:PEF製造用環状ポリエステルオリゴマー組成物(Yの実施形態)
この例では、図3に示す環状ポリエステルオリゴマーの製造について説明する。この環状ポリエステルオリゴマーは、その後、PEF、すなわち、ポリ(2,5-エチレンフランジカルボキシレート)の製造に使用できる。40gのme-FDCAを20mLのEGと一緒に攪拌機を備えたガラス製反応器に入れた。反応は、0.50gの触媒(Bu2SnO)の存在下、140°Cの開始温度にて不活性雰囲気下で行われ、最終温度180°Cまで徐々に加熱した。1時間の反応後、圧力を700mbarに下げた。圧力を40分後に400mbarに再び下げ、30分後にさらに200mbarに下げた。最終的に、圧力を10mbarまで段階的に下げた。温度を200°Cまで上げ、系をこの状態で2時間放置した。系を室温まで冷却させ、固体生成物を取り出し、粉砕し、乾燥させた。得られたプレポリマーを、HPLC及びGPCで特性評価し、その同一性がC1’であることを確認した。
【0116】
プレポリマーC1’を溶媒としての2-メチルナフタレンに10g/lの濃度で溶解し、得られた溶液を不活性雰囲気下で200°C(追加の触媒なし)で3時間反応して、プレポリマーC1’を環状オリゴマーY1’に変換した。次に、ゼオライトYを10g/lの濃度で添加した。HPLC分析により、環状オリゴマー(m=2~5)の濃度が本質的に変化しなかったが、線形種(l=1~8)は本質的に溶液から除去されたことが確認された。この結果は、未反応の線形残留種がゼオライトへの吸着により反応系から容易に除去できることを裏付けている。
【0117】
比較例1及び2:触媒を伴わない低量の可塑剤の存在下での、又は触媒も可塑剤も伴わない場合の、環状ポリエステルオリゴマー組成物(Y1’)の重合の欠如
この例では、例1の環状オリゴマーY1’(m=2)を、260°C~320°Cの異なる温度で、それぞれ30分間、可塑剤としてテトラグリムと、180mgの環状オリゴマーY1’につきテトラグリム60μLの濃度で、不活性雰囲気下、添加触媒の非存在下で反応した。反応は起こらず、材料は変化しないままであった。
【0118】
第2の比較例では、例1の混合環状オリゴマーY1’(m=2~7)を、可塑剤又は触媒を添加せずに、280℃の温度で60分間反応した。GPC分析により、m=2の環状オリゴマーの反応が生じないことが確認された。したがって、これらの比較例は、一般的に最も豊富な種である低分子量環状オリゴマー(m=2)が、触媒又は可塑剤の非存在下では重合しないことを示している。
【0119】
例2:環状ポリエステルオリゴマー組成物(Y1’)からのPEFの製造:触媒を伴う低量の可塑剤の存在下
この例では、例1の環状オリゴマーY1’(m=2)を比較例1と同様に反応したが、触媒として環状スタンノキサンを、環状オリゴマー繰り返し単位1モル当たり0.1モル%の濃度で存在させた。この場合、20分以内に95%を超える変換が達成された。
【0120】
図5は、テトラグリム可塑剤のより低い(1/3v/m)及びより高い(2/3v/m)濃度の両方を有する環状PEF二量体の変換に関する比較データを示す。
【0121】
重合の他の実験では、Sb又はBiなどの他の金属酸化物触媒をスズ系触媒と比較した。Sb又はBiを使用して製造されたポリマーは、スズ系触媒で得られたやや黄色がかった茶色よりも外観が無色透明であることが観察された。
【0122】
例3:環状ポリエステルオリゴマー組成物(Y1’)からのPEFの製造:触媒を伴わないより多量の可塑剤の存在下
この例では、例1の環状オリゴマーY1’(m=2)を比較例1と同様に、180mgの環状オリゴマーY1’当たり240μLのテトラグリムのより高い濃度で、可塑剤としてのテトラグリムと反応した。この場合、すべての温度で60分以内に95%を超える変換が達成された。
【0123】
例4:環状ポリエステルオリゴマー組成物からのPEFの製造:触媒の存在下
この例では、HPLCで測定した純度が約95%のジクロロベンゼン(DCB)中で、この種の反応蒸留により環状オリゴマーを製造した。
【化17】

次いで、DCBを使用して、HPLCで測定して99%を超える純度までシリカゲルでその環状オリゴマーを精製した。次に、触媒として0.1%cySTOXを使用して開環重合を実施し、SEC分析により測定して60,000ダルトンの分子量を有するボトルグレードのPEFポリマーを得た。
【0124】
例5:環状ポリエステルオリゴマー組成物からのPEFの製造:
この例では、ジメチルFDCAとエチレングリコール(EG)を2時間にわたって予備重合して、1,000ダルトン未満のMnを有するEG-FDCA-EGを生成することにより、環状オリゴマーを製造した。ジクロロベンゼン(DCB)での2時間にわたるその後の反応蒸留により、HPLCで測定した純度が約95%の環状オリゴマーが得られた。次に、HPLCにより測定して99%を超える純度までDCBを使用してシリカゲル上で精製した。次いで、開環重合を行い、SEC分析により測定して60,000ダルトンの分子量を有するボトルグレードのPEFポリマーを得た。
【0125】
例6:環状ポリエステルオリゴマー組成物からのPEFの製造:
この例では、ジクロロベンゼン(DCB)中でこの種の反応蒸留により環状オリゴマーを製造し、
【化18】

HPLCにより測定して約95%の純度を有する環状オリゴマーを生成した。次いで、開環重合により直接重合して、SEC分析により測定して35,000ダルトンの分子量を有する繊維グレードのPEFポリマーを得た。
【0126】
例7
本発明のDA-Cプロセスの例では、不活性雰囲気下で、蒸留ブリッジ及び収集フラスコを備えた100mLフラスコに、1gのジメチルエステル、meFDCAを1.3gのエチレングリコール(EG)と共に充填した。混合物を140℃に加熱し、そこで16mgの環状スタンノキサンを溶融物に添加し、温度を200℃に上げた。混合物を200℃で1時間保持し、その間に0.2mLのMeOH及びEGを収集フラスコに収集した。その後、125mLのo-ジクロロベンゼン(o-DCB)を溶融物に添加した。7時間かけて、25mLのEG及びo-DCBを蒸発により収集した。得られた混合物は、環状体純度(cyclic purity)96%で10g/Lの環状ポリエステルオリゴマーを含有しており、残りの不純物は線状オリゴマーであった。
【0127】
例8
本発明のDA-Cプロセスの別の例では、不活性雰囲気下で、蒸留ブリッジ及び収集フラスコを備えた100mLフラスコに、2gのmeFDCAを2.6gのEGと共に充填した。混合物を140℃に加熱し、そこで32mgの環状スタンノキサンを溶融物に添加し、温度を200℃に上げた。混合物を200℃で1時間保持し、その間に0.2mLのMeOH及びEGを収集フラスコに収集した。その後、125mLのo-DCBを溶融物に添加した。7時間かけて、25mLのEG及びo-DCBを蒸発により収集した。得られた混合物は、93%の環状体純度で20g/Lの環状ポリエステルオリゴマーを含有しており、残りの不純物は線状オリゴマーであった。
【0128】
例9
本発明のDA-Cプロセスのさらに別の例では、不活性雰囲気下で、蒸留ブリッジ及び収集フラスコを備えた100mLフラスコに、3gのmeFDCAを3.9gのEGと共に充填した。混合物を140℃に加熱し、そこで48mgの環状スタンノキサンを溶融物に添加し、温度を200℃に上げた。混合物を200℃で1時間保持し、その間に0.2mLのMeOH及びEGを収集フラスコに収集した。その後、125mLのo-DCBを溶融物に添加した。7時間かけて、25mLのEG及びo-DCBを蒸発により収集した。得られた混合物は、91%の環状体純度で30g/Lの環状ポリエステルオリゴマーを含有しており、残りの不純物は線状オリゴマーであった。
【0129】
例10
本発明のDA-Cプロセスのさらに別の例では、不活性雰囲気下で、蒸留ブリッジ及び収集フラスコを備えた100mLフラスコに、1gのmeFDCAを1.3gのEGと共に充填した。混合物を140℃に加熱し、そこで16mgの環状スタンノキサンを溶融物に添加し、温度を200℃に上げた。混合物を200℃で40分間保持し、その間に0.15mLのMeOHとEGを収集フラスコに収集した。その後、10mLのo-DCBを溶融物に添加した。20分間にわたって、10mLのEG及びo-DCBを蒸発により収集した。最後に、125mLのo-DCBを溶融物に添加した。3時間かけて25mLのEGとo-DCBを除去した。得られた混合物は、97%の環状体純度で10g/Lの環状ポリエステルオリゴマーを含有しており、残りの不純物は線状オリゴマーであった。
【0130】
例11
本発明のDA-Cプロセスのさらに別の例では、不活性雰囲気下で、滴下漏斗及び収集フラスコを備えた蒸留ブリッジを備えた100mLフラスコに、1gのmeFDCAを1.3gのEGと共に充填した。混合物を140℃に加熱し、そこで16mgの環状スタンノキサンを溶融物に添加し、温度を200℃に上げた。混合物を200℃で1時間保持し、その間に0.2mLのMeOH及びEGを収集フラスコに収集した。その後、100mLのo-DCBを溶融物に添加した。7時間かけて、60mLのEGとo-DCBを蒸留により除去し、並行して同量を系にフィードバックした。得られた混合物は、98.5%の環状体純度で10g/Lの環状ポリエステルオリゴマーを含有しており、残りの不純物は線状オリゴマーであった。
【0131】
例12
本発明のDA-Cプロセスのさらに別の例では、例1からの反応溶液を180℃から50℃まで段階的に冷却した。150℃、120℃、100℃、80℃及び50℃で、生成物を一定温度で1時間放置した後、サンプルを採取し、ろ過し、固相及び液相の組成を決定した。このデータから、図7に示すように、沈殿した環状体の収率と純度を決定した。この図のデータは、降水温度が上がると純度が上がるが収率は下がることを示している。
【0132】
例12
本発明のDA-Cプロセスのさらに別の例では、上記の例で説明したのと同様の反応から得られた純度の異なる環状ポリエステルオリゴマーを不活性雰囲気下でフラスコに充填し、260℃まで急速に加熱した。図8に示すように、環状ポリエステルオリゴマーの純度に応じて、様々なMw製品が得られた。特に、高純度の環状ポリエステルオリゴマーにより、高分子量ポリエステルポリマーの製造が可能になることがわかる。
【0133】
例示の目的で様々な実施形態が示されているが、前述の説明は、本明細書の範囲に対する制限とみなされるべきではない。したがって、本明細書の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な修正、適応、及び代替が当業者に想定され得る。
【0134】
実施形態
i.フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを含む環状ポリエステルオリゴマー組成物を製造するプロセスであって、本プロセスは、以下の(I)又は(II)のいずれかの工程:
(I)フラン単位を有する構造Yの環状ポリエステルオリゴマーを生成するのに十分な反応温度及び反応時間の条件下で、閉環オリゴマー化工程において、任意の触媒及び/又は任意の有機塩基の存在下でモノマー成分C又はDを反応する工程であって、
モノマー成分Cは構造
【化19】

を含み、
式中、基Aのそれぞれは、置換されていてもよい直鎖、分岐又は環状アルキル、フェニル、アリール、又はアルキルアリールであり、lは1~100の整数、好ましくは2~50の整数、最も好ましくは3~25の整数であり、
=OH、OR、ハロゲン、又はO-A-OH、
R=置換されていてもよい直鎖、分岐又は環状アルキル、フェニル、アリール、又はアルキルアリール、
=H又は
【化20】

であり、
モノマー成分Dは構造
【化21】

を含み、
式中、Aは置換されていてもよい直鎖、分岐又は環状アルキル、フェニル、アリール、又はアルキルアリールであり、基XのそれぞれはOH、ハロゲン、又は置換されていてもよいアルキルオキシ、フェノキシ、若しくはアリールオキシであり、Aがn-ブチルである場合、基XはOHではなく、
フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーの構造Y
【化22】

であり、
式中、mは1~20の整数、好ましくは2~15の整数、最も好ましくは3~10の整数である、
工程;
又は
(II)フラン単位を有する構造Yの環状ポリエステルオリゴマーを生成するのに十分な反応温度及び反応時間の条件下で、閉環オリゴマー化工程において、任意の触媒及び/又は任意の有機塩基の存在下でモノマー成分C又はDを反応する工程であって、
モノマー成分Cは構造
【化23】

を含み、
式中、基Bのそれぞれは、置換されていてもよい直鎖、分岐又は環状のアルキル、フェニル、アリール、又はアルキルアリールであり、lは上記で定義された整数であり、n’は1~20の整数、好ましくは2~10の整数であり、
=OH、OR、ハロゲン、又はO-(B-O)n’-H、
R=置換されていてもよい直鎖、分岐又は環状アルキル、フェニル、アリール、又はアルキルアリール、
=H又は
【化24】

であり、
式中、モノマー成分Dは構造
【化25】

を含み、
式中、基XのそれぞれはOH、ハロゲン、又は置換されていてもよいアルキルオキシ、フェノキシ、若しくはアリールオキシであり、基Bのそれぞれは置換されていてもよい直鎖、分岐又は環状アルキル、フェニル、アリール、又はアルキルアリールであり、n’は上で定義した整数であり、
フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーの構造Y
【化26】

であり、
式中、基Bのそれぞれは、置換されていてもよい直鎖、分岐又は環状アルキル、フェニル、アリール、又はアルキルアリールであり、n’は上記で定義された整数であり、mは1~20の整数、好ましくは2~15の整数、最も好ましくは3~10の整数である、
工程;
並びに、
・フラン単位を有する線状オリゴマーポリエステル種が環状オリゴマー組成物から分離され除去される任意の後続工程(III);
を含み、
当該工程(III)は、以下のサブ工程:
(a)環状オリゴマー組成物の移動相を、固定相、好ましくはシリカゲルに通すこと、
(b)選択的沈殿、
(c)蒸留、
(d)抽出、
(e)結晶化、
(f)ゼオライトの添加及びゼオライトへの不純物の吸収、
(g)フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを沈殿させるために、環状オリゴマー組成物を冷却すること、
(h)フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを沈殿させるために、貧溶媒を添加すること、
(i)環状オリゴマー組成物から不純物を吸収したゼオライトを分離すること、
の1つ以上を含み、
閉環オリゴマー化工程における任意の触媒及び/又は任意の有機塩基の存在下でのモノマー成分C若しくはD又はC若しくはDの反応は、溶媒の存在下での反応蒸留によって行われ、
溶媒は、イオン液体、置換されていてもよいナフタレン、置換されていてもよい芳香族化合物及びそれらの混合物からなる群から選択され、
過剰のモノマー成分C若しくはD又はC若しくはD、好ましくはエチレングリコール及び縮合副産物、好ましくは水、アルコール、又はハロゲン酸、及び場合によりいくらかの溶媒が反応蒸留で除去され、
環状ポリエステルオリゴマー組成物が、HPLCにより測定して(a)約95~約99%又は(b)約99%以上の純度で反応蒸留中に形成される。
【0135】
ii.環状ポリエステルオリゴマー組成物が、HPLCにより測定して約95~約99%の純度で形成され、続いて環状ポリエステルオリゴマー組成物で開環重合が、好ましくは場合により添加される触媒の非存在下で、かつ、好ましくは任意の可塑剤の非存在下で行われて、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析より測定して重量平均分子量Mwが約15,000~約50,000ダルトン、好ましくは約20,000~約40,000ダルトン、より好ましくは約25,000~約35,000ダルトンの、フラン単位を有するポリエステルポリマーを生成する、実施形態iのプロセス。
【0136】
iii.環状ポリエステルオリゴマー組成物が、HPLCにより測定して約95~約99%の純度で形成され、
次いで、環状ポリエステルオリゴマー組成物が、好ましくは選択的沈殿、好ましくはシリカゲル上での分別クロマトグラフィー、抽出又は結晶化によりさらに精製されて、環状二量体ポリエステルオリゴマーの含有量が実質的に増加した環状ポリエステルオリゴマー組成物が生成され、好ましくは、環状二量体ポリエステルオリゴマーが、二重吸熱及び好ましくはDSCにより測定して約370℃の融点を有し、
さらに精製された環状ポリエステルオリゴマー組成物で開環重合が、任意には、場合により添加される触媒の存在下で、かつ、添加される可塑剤の存在下で行われ、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析により測定して重量平均分子量Mwが少なくとも約50,000ダルトン、好ましくは少なくとも約55,000ダルトン、より好ましくは少なくとも約60,000ダルトンの、フラン単位を有するポリエステルポリマーが生成される、
実施形態iのプロセス。
【0137】
iv.環状ポリエステルオリゴマー組成物が、HPLCにより測定して約95~約99%の純度で形成され、
次いで、環状ポリエステルオリゴマー組成物が、好ましくは選択的沈殿、好ましくはシリカゲル上での分別クロマトグラフィー、抽出又は結晶化によりさらに精製されて、
(i)実質的に減少した、好ましくは実質的に排除された含有量の環状二量体ポリエステルオリゴマーであって、好ましくは二重吸熱、好ましくはDSCにより測定して約370℃の融点を有する環状二量体ポリエステルオリゴマー、
(ii)実質的に増加した含有量の環状三量体ポリエステルオリゴマーであって、好ましくは、DSCにより測定して約272℃の融点を有する環状三量体ポリエステルオリゴマー
を有する環状ポリエステルオリゴマー組成物が生成され、
さらに精製された環状ポリエステルオリゴマー組成物で開環重合が、任意には、場合により添加される触媒の存在下で、かつ、好ましくは場合により添加される可塑剤の非存在下で行われ、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析により測定して重量平均分子量Mwが少なくとも約50,000ダルトン、好ましくは少なくとも約55,000ダルトン、より好ましくは少なくとも約60,000ダルトンの、フラン単位を有するポリエステルポリマーが生成される、
実施形態iのプロセス。
【0138】
v.環状ポリエステルオリゴマー組成物が、HPLCにより測定して約99%の純度で形成され、環状ポリエステルオリゴマー組成物で開環重合が、任意には、場合により添加される触媒の存在下で、かつ、好ましくは場合により添加される可塑剤の非存在下で行われ、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析より測定して重量平均分子量Mwが少なくとも約50,000ダルトン、好ましくは少なくとも約55,000ダルトン、より好ましくは少なくとも約60,000ダルトンの、フラン単位を有するポリエステルポリマーが生成される、実施形態iのプロセス。
【0139】
vi.フラン単位を有する線状オリゴマーポリエステル種が環状オリゴマー組成物から分離され除去される任意の後続工程(III)が実施される、実施形態i~vのいずれか1つのプロセス。
【0140】
vii.
(I)
・モノマー成分がCであり、Aが置換されていてもよい直鎖、分岐又は環状アルキルであり、lが3~25の整数であり、mが3~10の整数である、
又は
・モノマー成分がDであり、Aが置換されていてもよい直鎖、分岐又は環状アルキルであり、Xがハロゲン、又は置換されていてもよいアルキルオキシ若しくはフェノキシであり、mが本請求項で先に定義された通りであり、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーの構造がYの1つである、
又は
(II)
・モノマー成分がCであり、Bが置換されていてもよい直鎖、分岐又は環状アルキルであり、l及びmが上記で定義された整数であり、n’が2から10の整数である、
又は
・モノマー成分がDであり、XがOH、ハロゲン、又は置換されていてもよいアルキルオキシ、フェノキシ、若しくはアリールオキシであり、Bが置換されていてもよい直鎖、分岐又は環状アルキル又はフェニルであり、n’及びmが本請求項で先に定義された整数であり、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーの構造がYの1つである、
実施形態i~viのいずれか1つのプロセス。
【0141】
viii.
・モノマー成分がCであり、Aが置換されていてもよい直鎖、分岐又は環状のC~Cアルキルであり、lが3~25の整数であり、mが3~10の整数である、
・モノマー成分がDであり、Aが置換されていてもよい直鎖、分岐又は環状のC~Cアルキルであり、Xがハロゲン、又は置換されていてもよいアルキルオキシ又はフェノキシであり、mが上記で定義された整数である、
・モノマー成分がCであり、Bが置換されていてもよい直鎖、分岐鎖又は環状C~Cアルキルであり、l及びmが上記で定義された整数であり、n’が2~10の整数である、
又は
・モノマー成分がDであり、Xがハロゲン、又は置換されていてもよいアルキルオキシ、フェノキシ、若しくはアリールオキシであり、Bが置換されていてもよい直鎖、分岐、又は環状のC~Cアルキル又はフェニルであり、n’及びmが請求項2で定義された整数である、
実施形態i~viiのいずれか1つのプロセス。
【0142】
ix.モノマー成分がC又はCであり、反応温度が100~350℃、好ましくは150~300℃、最も好ましくは180~280℃であり、反応時間が30~600分、好ましくは40~400分、最も好ましくは50~300分である、
又は
モノマー成分がD又はDであり、反応温度が-10~150℃、好ましくは-5~100℃、最も好ましくは0~80℃であり、反応時間が5~240分、好ましくは10~180分、最も好ましくは15~120分である、
実施形態i~viiiのいずれか1つのプロセス。
【0143】
x.モノマー成分Cが以下の特定の構造:
【化27】

を含むか、又は、モノマー成分Dが特定の構造
【化28】

を含み、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーの構造Yが特定の構造:
【化29】

であり、
式中、
=OH、OR、ハロゲン、又はO-CHCH-OH、
R=置換されていてもよい直鎖、分岐又は環状アルキル、フェニル、アリール、又はアルキルアリール、
=H又は
【化30】

であり、
X、l、及びmが、本請求項が従属する1つ以上の前記請求項に示されたように定義される、
実施形態i~ixのいずれか1つのプロセス。
【0144】
xi.モノマー成分Cが以下の特定の構造C1”
【化31】

を含むか、又は、モノマー成分Dが特定の構造D1”
【化32】

を含み、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーの構造Yが特定の構造Y1”
【化33】

であり、
式中、
=OH、OR、ハロゲン、又はO-CHCH-OH CHCH-OH、
R=置換されていてもよい直鎖、分岐又は環状アルキル、フェニル、アリール、又はアルキルアリール、
=H又は
【化34】

であり、
X、l、及びmが、本請求項が従属する1つ以上の前記請求項に示されたように定義される
実施形態i~ixのいずれか1つに記載のプロセス。
【0145】
xii.任意の有機塩基Eが存在し、それがモノアミン化合物又は以下の構造:
【化35】

を有する化合物であり、
式中、R~R12の各基が、水素、置換されていてもよいアルキル、フェニル、アリール又はアルカリールであり、基R~R12のそれぞれが、環状の任意の有機塩基Eにおける環状置換基の一部として単結合又は二重結合基により結合されていてもよく、好ましくは有機塩基Eが、
(i)次の構造を持つDABCO:
【化36】

又は
(ii)次の構造を持つDBU
【化37】

のいずれかであり、
DABCO又はDBUが、アルキルアミン、より好ましくはトリメチルアミンと一緒に使用されていてもよく、
任意の有機塩基Eが、プロセスで反応物として使用される全モノマー成分種1モルに対して、好ましくは0.5~6モル、好ましくは1~4モル、より好ましくは2~3モルの化学量論比で存在する、
実施形態i~xiのいずれか1つのプロセス。
【0146】
xiii.任意の触媒が存在しないか、又は存在しそれが金属アルコキシド又は金属カルボキシレート、好ましくはスズ、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、チタン、鉄又はアルミニウムの1つであるか、又は環状ジブチルスズ化合物、Sb及びSnOctから選択され、より好ましくは、環状ジブチルスズ化合物が1,1,6,6-テトラ-n-ブチル-1,6-ジスタンナ-2,5,7,10-テトラオキシアシクロデカンである、
実施形態i~xiiのいずれか1つのプロセス。
【0147】
xiv.可塑剤が存在し、超臨界流体及びポリエーテルからなる群から選択される1つ以上であり、好ましくは超臨界流体が二酸化炭素であるか、ポリエーテルがグリム、好ましくはテトラエチレングリコールジメチルエーテルである、実施形態iiからvのいずれか1つのプロセス。
【0148】
xv.実施形態ii~xivのいずれか1つのプロセスにより得ることができる、好ましくは得られるポリエステルポリマー組成物であって、
(i)場合により、置換されていてもよいフェニルエーテル、イオン液体、置換されていてもよいキシレン、ポリエーテルおよびそれらの混合物からなる群から選択される可塑剤、
(ii)フラン単位有する環状ポリエステルオリゴマー、好ましくは約370℃での吸熱、より好ましくは約285℃および約370℃での二重吸熱の存在を特徴とするもの、および
(iii)(a)以下の構造を含むPEFポリマー:
【化38】

または
(b)構造を含むPBFポリマー
【化39】

式中、nは10~100,000、好ましくは100~10,000の整数である
のいずれかを含有する、ポリエステルポリマー組成物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9