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特許7102445薬剤を含有するフィラメントを有する編組縫合糸
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】薬剤を含有するフィラメントを有する編組縫合糸
(51)【国際特許分類】
   A61L 17/00 20060101AFI20220711BHJP
   A61L 17/14 20060101ALI20220711BHJP
   A61L 17/10 20060101ALI20220711BHJP
   A61L 17/12 20060101ALI20220711BHJP
   A61L 17/04 20060101ALI20220711BHJP
   A61L 31/16 20060101ALI20220711BHJP
   A61L 31/08 20060101ALI20220711BHJP
   A61L 31/04 20060101ALI20220711BHJP
   A61L 31/02 20060101ALI20220711BHJP
   A61L 31/14 20060101ALI20220711BHJP
   A61K 31/075 20060101ALN20220711BHJP
   A61K 31/155 20060101ALN20220711BHJP
   A61K 38/44 20060101ALN20220711BHJP
   A61P 31/04 20060101ALN20220711BHJP
   A61P 43/00 20060101ALN20220711BHJP
   A61K 45/00 20060101ALN20220711BHJP
【FI】
A61L17/00 100
A61L17/14 100
A61L17/10
A61L17/10 100
A61L17/12
A61L17/04
A61L31/16
A61L31/08
A61L31/04
A61L31/02
A61L31/14 500
A61K31/075
A61K31/155
A61K38/44
A61P31/04
A61P43/00 121
A61K45/00
【請求項の数】 53
(21)【出願番号】P 2019563334
(86)(22)【出願日】2018-02-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 US2018016950
(87)【国際公開番号】W WO2018148161
(87)【国際公開日】2018-08-16
【審査請求日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】15/427,963
(32)【優先日】2017-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512080321
【氏名又は名称】エシコン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Ethicon, Inc.
【住所又は居所原語表記】P.O. Box 151, U.S. Route 22, Somerville, NJ 08876, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】スカルツォ・ハワード
(72)【発明者】
【氏名】クリクスノフ・レオ・ビー
(72)【発明者】
【氏名】タンハウザー・ロバート・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】スクラ・エミル・リチャード
【審査官】参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-539003(JP,A)
【文献】特開2009-254831(JP,A)
【文献】特開昭62-213754(JP,A)
【文献】特開2002-205941(JP,A)
【文献】特表2013-511527(JP,A)
【文献】特開2005-177499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 17/00
A61K 31/00
A61K 38/00
A61L 27/00
A61L 15/00
A61L 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋植可能な医療用装置であって、
フィラメントの集合体であって、
第1のポリマー材料から形成された複数の第1の種類のフィラメントと、
前記第1の種類のフィラメントとは異なる少なくとも1つの第2の種類のフィラメントと、
少なくとも1つの第3の種類のフィラメントと、を含むフィラメントの集合体を備え、前記第2の種類のフィラメントは、第1の生物医学的に有用な薬剤でコーティング又は含浸されており、前記第3の種類のフィラメントは、前記第1の生物医学的に有用な薬剤とは異なる第2の生物医学的に有用な薬剤でコーティング又は含浸されており
(a) 前記第1の生物医学的に有用な薬剤はグルコースであり、かつ、前記第2の生物医学的に有用な薬剤はグルコース酸化酵素である、又は
(b) 前記第1の生物医学的に有用な薬剤は酸性剤であり、かつ、前記第2の生物医学的に有用な薬剤はアルカリ剤である、又は
(c) 前記第1の生物医学的に有用な薬剤はpH調節剤であり、かつ、前記第2の生物医学的に有用な薬剤は抗菌剤又は抗生物質である、
医療用装置。
【請求項2】
編組縫合糸である、請求項1に記載の医療用装置。
【請求項3】
メッシュである、請求項1に記載の医療用装置。
【請求項4】
前記第2の生物医学的に有用な薬剤は前記抗菌剤である、請求項1~3のいずれか一項に記載の医療用装置。
【請求項5】
前記抗菌剤はトリクロサンを含む、請求項に記載の医療用装置。
【請求項6】
前記抗菌剤はグルコン酸クロルヘキシジンを含む、請求項4又は5に記載の医療用装置。
【請求項7】
前記第2の生物医学的に有用な薬剤はグルコース酸化酵素である、請求項1~3のいずれか一項に記載の医療用装置。
【請求項8】
前記第1の生物医学的に有用な薬剤は前記pH調整剤である、請求項5又は6に記載の医療用装置。
【請求項9】
前記第2の種類のフィラメントは、第2のポリマー材料から形成されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の医療用装置。
【請求項10】
前記第1のポリマー材料及び前記第2のポリマー材料は両方とも吸収性であり、かつ異なる吸収プロファイルを有する、請求項に記載の医療用装置。
【請求項11】
前記第2のポリマー材料は、前記第1のポリマー材料よりも速く吸収する、請求項10に記載の医療用装置。
【請求項12】
前記第2のポリマー材料は、前記第1のポリマー材料よりも遅く吸収する、請求項10に記載の医療用装置。
【請求項13】
前記第2の種類のフィラメントは、前記第1の生物医学的に有用な薬剤に対して高い親和性を有する、請求項10~12のいずれか一項に記載の医療用装置。
【請求項14】
前記第2の種類のフィラメントは、前記第1の生物医学的に有用な薬剤に対する高い溶解度を有するポリマー材料を含む、請求項10~13のいずれか一項に記載の医療用装置。
【請求項15】
前記第2のポリマー材料は、少なくとも30重量%のポリカプロラクトンを含む、請求項10~14のいずれか一項に記載の医療用装置。
【請求項16】
前記第1のポリマー材料及び前記第2のポリマー材料は、PLA、PGA、PCL、PLGA、PP、PE、PDS又はそれらのモノマーの組み合わせもしくはコポリマーを含む、請求項10~15のいずれか一項に記載の医療用装置。
【請求項17】
前記第1のポリマー材料及び前記第2のポリマー材料のうちの一方が吸収性であり、他方が非吸収性である、請求項に記載の医療用装置。
【請求項18】
前記フィラメントの集合体を包囲するコーティングをさらに含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の医療用装置。
【請求項19】
前記フィラメントの集合体を包囲する前記コーティングは、前記第1の生物医学的に有用な薬剤と相互作用する化合物を含有する、請求項18に記載の医療用装置。
【請求項20】
少なくとも2つの前記第2の種類のフィラメントを備える、請求項1~19のいずれか一項に記載の医療用装置。
【請求項21】
記第2の種類のフィラメントは、同じ生物医学的に有用な薬剤でコーティング又は含浸されている、請求項20に記載の医療用装置。
【請求項22】
前記医療用装置内の前記同じ生物医学的に有用な薬剤の装填量を変更するために、前記第2の種類のフィラメントの数が変更される、請求項21に記載の医療用装置。
【請求項23】
記第2の種類のフィラメントは、異なる生物医学的に有用な薬剤でコーティング又は含浸されており、前記薬剤は、任意選択で異なる放出プロファイルを有する、請求項20に記載の医療用装置。
【請求項24】
(a)前記第1の生物学的に有用な薬剤がグルコースであり前記第2の生物学的に有用な薬剤がグルコース酸化酵素でる、請求項に記載の医療用装置。
【請求項25】
(b)前記第1の生物学的に有用な薬剤前記酸性剤であり前記第2の生物学的に有用な薬剤前記アルカリ剤でる、請求項に記載の医療用装置。
【請求項26】
(c)前記第1の生物学的に有用な薬剤が前記pH調整剤であり前記第2の生物学的に有用な薬剤が前記抗菌剤又は前記抗生物質である、請求項に記載の医療用装置。
【請求項27】
前記第2の種類のフィラメントは第2のポリマー材料から形成されており、前記第3の種類のフィラメントは第3のポリマー材料から形成されている、請求項に記載の医療用装置。
【請求項28】
編組縫合糸又はメッシュである、請求項27に記載の医療用装置。
【請求項29】
前記第1の生物医学的に有用な薬剤は前記pH調整剤であり、前記第2の生物医学的に有用な薬剤は前記抗生物質である、請求項27又は28に記載の医療用装置。
【請求項30】
少なくとも前記第2のポリマー材料及び前記第3のポリマー材料は吸収性ポリマーである、請求項27~29のいずれか一項に記載の医療用装置。
【請求項31】
少なくとも前記第2のポリマー材料及び前記第3のポリマー材料は吸収性ポリマーであり、かつ異なる吸収プロファイルを有する、請求項27~30のいずれか一項に記載の医療用装置。
【請求項32】
前記第1の生物医学的に有用な薬剤は、前記第2の生物医学的に有用な薬剤の放出プロファイルとは異なる放出プロファイルを有する、請求項27~31のいずれか一項に記載の医療用装置。
【請求項33】
(a)前記第1の生物医学的に有用な薬剤はグルコースであり、前記第2の生物医学的に有用な薬剤はグルコース酸化酵素である、請求項27に記載の医療用装置。
【請求項34】
(b)前記第1の生物医学的に有用な薬剤は前記酸性剤であり、前記第2の生物医学的に有用な薬剤は前記アルカリ剤である、請求項27に記載の医療用装置。
【請求項35】
(c)前記第1の生物医学的に有用な薬剤は前記pH調整剤であり、前記第2の生物医学的に有用な薬剤は前記抗菌剤又は前記抗生物質剤である、請求項27に記載の医療用装置。
【請求項36】
フィラメントの集合体を備える埋植可能な医療用装置を製造するための方法であって、
第1のポリマー材料から形成された複数の第1の種類のフィラメントを提供することと、
少なくとも1つの第2の種類のフィラメントを提供することと
なくとも1つの第3の種類のフィラメントを提供することと、
前記第2の種類のフィラメント及び前記第3の種類のフィラメントを、前記複数の第1の種類のフィラメントと組み合わせることと、
を含み、
前記第2の種類のフィラメント及び前記第3の種類のフィラメントは、少なくとも1つの生物医学的に有用な薬剤でコーティング又は含浸されており
前記第2の種類のフィラメントは第1の生物医学的に有用な薬剤でコーティング又は含浸されており、前記第3の種類のフィラメントは、前記第1の生物医学的に有用な薬剤とは異なる第2の生物医学的に有用な薬剤でコーティング又は含浸されており、
(a) 前記第1の生物医学的に有用な薬剤はグルコースであり、かつ、前記第2の生物医学的に有用な薬剤はグルコース酸化酵素である、又は
(b) 前記第1の生物医学的に有用な薬剤は酸性剤であり、かつ、前記第2の生物医学的に有用な薬剤はアルカリ剤である、又は
(c) 前記第1の生物医学的に有用な薬剤はpH調節剤であり、かつ、前記第2の生物医学的に有用な薬剤は抗菌剤又は抗生物質である、
方法。
【請求項37】
前記第2の種類のフィラメント及び前記第3の種類のフィラメントは、それらを前記複数の第1の種類のフィラメントと組み合わせる前に、前記第1の生物医学的に有用な薬剤及び前記第2の生物医学的に有用な薬剤で予めコーティング又は含浸されている、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記医療用装置に熱処理及び/又は真空処理を施すことと、前記第1の生物医学的に有用な薬剤及び前記第2の生物医学的に有用な薬剤を前記第2の種類のフィラメント内及び前記第3の種類のフィラメント内に再分配することとをさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記第2の生物医学的に有用な薬剤はトリクロサンである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記熱処理及び/又は真空処理は滅菌処理の一部である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記第2の種類のフィラメントは第2のポリマー材料から形成されており、前記第3の種類のフィラメントは第3のポリマー材料から形成されている、請求項36~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記第1の生物医学的に有用な薬剤及び前記第2の生物医学的に有用な薬剤は、前記第2の種類のフィラメント及び前記第3の種類のフィラメントを押し出す前に、前記第2のポリマー材料及び前記第3のポリマー材料に配合される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記第2の生物医学的に有用な薬剤はグルコン酸クロルヘキシジンを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項44】
前記第2の生物医学的に有用な薬剤はグルコース酸化酵素である、請求項36に記載の方法。
【請求項45】
前記第2の種類のフィラメントは、前記第1の生物医学的に有用な薬剤に対して高い親和性を有し、前記第1の生物医学的に有用な薬剤を含む環境に前記医療用装置をさらすことをさらに含む、請求項36~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記医療用装置に熱処理及び/又は真空処理を施すことと、前記第3の種類のフィラメント内に前記トリクロサンを再分配することとをさらに含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記第2の種類のフィラメントを、前記第1の生物医学的に有用な薬剤でコーティング又は含浸する前に、熱い水溶液中で又は照射により前処理することをさらに含む、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記医療用装置は縫合糸である、請求項36~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記医療用装置はメッシュである、請求項36~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記医療用装置は、編組された又は撚り合わされた縫合糸である、請求項36~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
(a)前記第1の生物学的に有用な薬剤がグルコースであり、前記第2の生物学的に有用な薬剤がグルコース酸化酵素である、請求項36に記載の方法。
【請求項52】
(b)前記第1の生物学的に有用な薬剤が前記酸性剤であり、前記第2の生物学的に有用な薬剤が前記アルカリ剤である、請求項36に記載の方法。
【請求項53】
(c)前記第1の生物学的に有用な薬剤が前記pH調整剤であり、前記第2の生物学的に有用な薬剤が前記抗菌剤又は前記抗生物質である、請求項36に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明が関連する技術分野は、編組されたマルチフィラメント縫合糸あるいは織成又は編成されたメッシュなどの医療用装置であり、より具体的には生体内特性を含む新規な特性を有する複数のポリマーのフィラメントから製造される編組された手術用縫合糸である。
【背景技術】
【0002】
(環境)
手術用縫合糸及び縫合糸付き縫合針は、従来の様々な外科手術において用いられることが、当該技術分野において周知である。例えば、そのような縫合糸を、表皮層及びその下の筋膜層の切開又は裂傷の周囲の組織に接近し、血管の端部を接合し、心臓弁のような医療用装置に組織を取り付け、身体器官を修復し、結合組織を修復することなどに使用することが可能である。従来の手術用縫合糸は、既知の生体適合性材料、特に合成及び天然の生体適合性ポリマー材料から作製可能であり、これらは非吸収性である場合も吸収性である場合もある。非吸収性縫合糸を製造するために有用な合成の非吸収性ポリマー材料の例は、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリフッ化ビニリデン、及びポリアミドを含む。吸収性縫合糸を製造するために有用な合成の吸収性ポリマー材料の例は、ラクチドのようなラクトン、グリコリド、p-ジオキサノン、ε-カプロラクトン、及びトリメチレンカーボネートから作られるポリマー及びコポリマーを含む。吸収性という用語は、生体吸収性、再吸収性、生体再吸収性、分解性、又は生体分解性も含み得る、総称的な用語であることが意図される。
【0003】
吸収性縫合糸は、その有する様々な利点及び特性ゆえに、多くの外科的処置における使用において、外科医により好まれている。吸収性縫合糸は、組織の効果的治癒が可能となるのに十分な期間にわたって、望ましい生体内抗張力を提供することが可能でなければならない。傷の治癒は、具体的な組織の性質に加え、外科的処置を受けた個人の治癒特性にも依存する。例えば、血管新生のうまくいかない組織は、血管新生がうまくいく組織と比べて治癒に時間がかかり、同様に、糖尿病の患者や高齢者もまた、治癒に時間がかかる。したがって、様々な傷の治癒特性にマッチした縫合糸材料を提供する機会が存在することになる。縫合糸のように埋植されるものは何であれ、患者の免疫系にとっては異物として現れるものである。吸収性縫合糸が吸収されると、縫合糸をなしているポリマー材料は身体から消滅し、患者にとってより良い結果をもたらすものと考えられている。こうした結果の改善は、複数の要因によってもたらされ得るが、それには、術後の痛みが減少すること、長期的にみて感染症のリスクが低減すること、及び患者にとってより快適なものとなること等が含まれる。加えて、縫合糸を含む埋植可能な医療装置は、細菌が付着し、バイオフィルムを形成するためのプラットフォームを提供し得るということが知られている。吸収性縫合糸が吸収され消滅することにより、感染症を相当程度減少させ、創傷部位においてバイオフィルムが形成されるのを減らすこともできる。
【0004】
吸収性縫合糸は、望ましくかつ効き目のある生体内での挙動を確保するのに必要な物理的特性を有するように設計されている。具体的には、縫合糸は、必要とされる治癒期間中、適切な抗張力を保つ必要があり、典型的にはこれは、破壊強度保持率(BSR)として特性評価されるものである。求められる設計特性を得るためには、求められる特性を有する吸収性縫合糸を作り出せるような吸収性ポリマー及び製造プロセスを提供することが必要となる。
【0005】
同様に、埋植後に機械的特性を維持できるということは、吸収性医療用装置にとっては重要かつ決定的な特徴である場合が多い。装置は、組織が十分に治癒するまで機械的完全性を保持しなければならない。身体組織によっては、治癒するのにより時間がかかり、機械的完全性をより長く保持する必要がある。前述のように、これは、血管新生が不十分である組織と関連している場合が多い。同様に、所与の患者(例えば、糖尿病患者)は、治癒が遅い傾向があり得るというような他の状況が存在する。
【0006】
外科手術後の感染の可能性を減らすために、長期間にわたって生体内に留まらなければならない縫合糸又はヘルニアメッシュのようなその他の医療用インプラントなどに、抗菌剤のようなある種の薬剤を含有させることが知られている。しかしながら、特に粒子形態のインプラントのポリマー材料に組み込まれるそのような物質の存在は、その加工性及び/又は機械的完全性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
最近の進歩にもかかわらず、それらの機械的強度及び長期的な完全性を維持しながら、医療用装置に薬剤を提供するという当技術分野における満たされていない必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1のポリマー材料から形成された複数の第1の種類のフィラメント及び少なくとも1つの第2の種類のフィラメントを含むフィラメントの集合体を備える埋植可能な医療用装置であって、第2の種類のフィラメントが生物医学的に有用な薬剤でコーティング又は含浸されている医療用装置が提供される。
【0009】
いくつかの形態では、医療用装置は編組縫合糸又はメッシュである。
【0010】
別の形態では、編組縫合糸は、第1の種類のフィラメントのみを有する同等の編組縫合糸の機械的特性の10%以内の機械的特性を有するか、あるいは第1の種類のフィラメントのみを有する同等の編組縫合糸の機械的特性と実質的に同等の機械的特性を有する。
【0011】
さらに別の形態では、生物医学的に有用な薬剤は、トリクロサン、グルコン酸クロルヘキシジン又はグルコース酸化酵素などの抗菌剤を含む。
【0012】
さらに別の形態では、第1の種類のフィラメント及び第2の種類のフィラメントのいずれか一方又は両方は、生物医学的に有用な薬剤としてpH調整物質を含有する。
【0013】
さらなる形態では、例えば第2のポリマー材料が第1のポリマー材料よりも速く吸収するか、又は第2のポリマー材料が第1のポリマー材料よりも遅く吸収するなど、第1及び第2のポリマー材料は双方共に吸収性であり、かつ異なる吸収プロファイルを有する。
【0014】
有利には、例えば第2の種類のフィラメントが生物医学的に有用な薬剤に対して高い溶解度を有するポリマー材料を含むなど、第2の種類のフィラメントが生物医学的に有用な薬剤に対して高い親和性を有する。
【0015】
一形態では、第2の種類のフィラメントは第2のポリマー材料から形成されている。
【0016】
別の形態では、第1及び第2のポリマー材料は、PLA、PGA、PCL、PLGA、PP、PE、PDS、又はそれらのモノマーの組み合わせもしくはコポリマーを含み、有利には、第2のポリマー材料は少なくとも30重量%のポリカプロラクトンを含む。
【0017】
別の形態では、第1及び第2のポリマー材料の一方は吸収性であり、他方は非吸収性である。
【0018】
別の形態では、医療用装置は、フィラメントの集合体を包囲するコーティングをさらに含むことができる。
【0019】
いくつかの形態では、コーティングは生物医学的に有用な薬剤と相互作用する化合物を含有する。
【0020】
他の形態では、医療用装置が少なくとも2つの第2の種類のフィラメントを備えてもよく、少なくとも2つの第2の種類のフィラメントは同じ生物医学的に有用な薬剤でコーティング又は含浸されるか、あるいは少なくとも2つの第2の種類のフィラメントは、異なる放出プロファイルを任意に有する異なる生物医学的に有用な薬剤でコーティング又は含浸されている。
【0021】
有利には、医療用装置における生物医学的に有用な薬剤の装填量を変えるために、第2の種類のフィラメントの数を変えることができる。
【0022】
一形態では、少なくとも2つの第2の種類のフィラメントのうちの一方はグルコースでコーティング又は含浸され、他方はグルコース酸化酵素でコーティング又は含浸されている。
【0023】
別の形態では、少なくとも2つの第2の種類のフィラメントのうちの一方が酸性剤でコーティング又は含浸され、他方がアルカリ剤でコーティング又は含浸されている。
【0024】
別の形態では、少なくとも2つの第2の種類のフィラメントのうちの1つは、生物医学的に有用な薬剤を強化するpH調整剤でコーティング又は含浸されている。
【0025】
第1のポリマー材料から形成された複数の第1の種類のフィラメント、少なくとも1つの第2の種類のフィラメント及び、少なくとも1つの第3の種類のフィラメントを含み、第2の種類のフィラメントが第1の生物医学的に有用な薬剤でコーティング又は含浸されており、第3の種類のフィラメントが、第1の生物医学的に有用な薬剤とは異なる第2の生物医学的に有用な薬剤でコーティング又は含浸されているフィラメントの集合体を備える埋植可能な医療用装置も提供される。
【0026】
一形態では、第2の種類のフィラメントは第2のポリマー材料から形成されており、第3の種類のフィラメントは第3のポリマー材料から形成されている。
【0027】
一形態では、医療用装置は編組縫合糸又はメッシュである。
【0028】
別の形態では、第1の生物医学的に有用な薬剤は抗菌剤であり、第2の生物医学的に有用な薬剤は抗生物質である。
【0029】
別の形態では、第1の生物医学的に有用な薬剤はpH調整剤であり、第2の生物医学的に有用な薬剤は抗生物質である。
【0030】
別の形態では、例えば第1の生物医学的に有用な薬剤がグラム陽性細菌に対して有用な抗生物質であり、第2の生物医学的に有用な薬剤がグラム陰性細菌に対して有用な抗生物質であるなど、第1の生物医学的に有用な薬剤が抗生物質であり、第2の生物医学的に有用な薬剤がこれとは異なる抗生物質である。
【0031】
いくつかの形態では、少なくとも第2及び第3のポリマー材料が吸収性ポリマーであり、かつ異なる吸収プロファイルを有してもよい。同様に、第1の生物医学的に有用な薬剤が、第2の生物医学的に有用な薬剤の放出プロファイルとは異なる放出プロファイルを有してもよい。
【0032】
有利には、第1の生物医学的に有用な薬剤はグルコースであり、第2の生物医学的に有用な薬剤はグルコース酸化酵素である。
【0033】
別の形態では、第1の生物医学的に有用な薬剤は酸性剤であり、第2の生物医学的に有用な薬剤はアルカリ剤である。
【0034】
あるいは、第1の生物医学的に有用な薬剤はpH調整剤であり、第2の生物医学的に有用な薬剤は抗菌剤又は抗生物質剤である。
【0035】
有利には、編組縫合糸が、第1の種類のフィラメントのみを有する同等の編組縫合糸の機械的特性の10%以内の機械的特性を有するか、あるいは、編組縫合糸が、第1の種類のフィラメントのみを有する同等の編組縫合糸の機械的特性と実質的に同等の機械的特性を有する。
【0036】
第1のポリマー材料から形成された複数の第1の種類のフィラメントを提供すること、少なくとも1つの第2の種類のフィラメントを提供すること、少なくとも1つの第3の種類のフィラメントを任意に提供すること及び、第2の種類のフィラメントと任意選択の第3の種類のフィラメントとを複数の第1の種類のフィラメントを組み合わせることを含む、フィラメントの集合体を含む埋植可能な医療用装置の製造方法であって、第2の種類のフィラメントと、存在する場合には第3の種類のフィラメントとが、少なくとも1つの生物医学的に有用な薬剤でコーティング又は含浸される方法も提供される。
【0037】
本方法の一形態では、第2の及び任意選択の第3の種類のフィラメントが、それらを複数の第1の種類のフィラメントと組み合わせる前に、生物医学的に有用な薬剤で予めコーティング又は含浸される。
【0038】
一形態において、第2の種類のフィラメントは第2のポリマー材料から形成されており、任意選択の第3の種類のフィラメントは任意選択の第3のポリマー材料から形成されている。
【0039】
別の形態では、本方法がさらに、医療用装置に熱処理及び/又は真空処理を施すことと、生物医学的に有用な薬剤をフィラメント内に再分配することを含んでもよく、特に生物医学的に有用な薬剤がトリクロサンであり、熱処理及び/又は真空処理が滅菌処理の一部である。
【0040】
いくつかの形態では、生物医学的に有用な薬剤は、第2の種類のフィラメント及び任意選択の第3の種類のフィラメントを押し出す前に、第2及び任意選択の第3のポリマー材料に配合され、例えば生物医学的に有用な薬剤がグルコン酸クロルヘキシジンを含む。
【0041】
有利には、生物医学的に有用な薬剤はグルコース酸化酵素である。
【0042】
一形態では、例えば第2の種類のフィラメントがポリカプロラクトンを少なくとも約30重量%を含み、生物医学的に有用な薬剤がトリクロサンであり、トリクロサンが第2の種類のフィラメント内に優先的に濃縮されるなど、第2の種類のフィラメントが生物医学的に有用な薬剤に対して高い親和性を有し、本方法がさらに、生物医学的に有用な薬剤を含む環境に医療用装置をさらすことを含む。したがって、この方法は、医療用装置に熱処理及び/又は真空処理を施すこと及び、フィラメント内にトリクロサンを再分配することをさらに含むことができる。
【0043】
別の形態では、本方法が、第2の種類のフィラメントを、生物医学的に有用な薬剤でコーティング又は含浸する前に、熱水溶液中で又は照射により前処理することを含んでもよい。
【0044】
有利には、この方法に従って製造された医療用装置は編組縫合糸又はメッシュである。
【0045】
組織修復、組織強化又は縫合のような外科的処置において上述の医療用装置を埋植する方法も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
本開示には、様々な修正形態及び代替形態が考えられるが、その特定の例示的な実装形態を図面に示し、本明細書において詳細に説明する。しかしながら、特定の例示的な実施形態に関する本明細書における説明は、本開示を本明細書に開示された特定の形態に限定することを意図していないことを理解されたい。
【0047】
本開示は、添付の特許請求の範囲によって定義されるような全ての修正及び等価物を網羅するものである。また、図面は必ずしも一定の縮尺ではなく、代わりに本発明の例示的な実施形態の原理を明確に示すことに重点が置かれていることも理解されるべきである。さらに、そのような原理を視覚的に伝えるのを助けるために特定の寸法が誇張されることがある。さらに、適切と考えられる場合には、対応する要素又は類似の要素を示すために図面間で参照番号を繰り返すことがある。さらに、図面において別個の又は別々のものとして示されている2つ以上のブロック又は要素は、単一の機能ブロック又は要素に組み合わせることができる。同様に、図面に示されている単一のブロック又は要素は、複数の工程として、又は協働する複数の要素によって具現化され得る。
【0048】
本明細書に開示される形態は、添付図面の図において、例として、かつ限定としてではなく図示され、同様の参照番号は、類似の要素を指す。
図1】本発明による編組縫合糸の略断面図である。
図2】本発明による別の編組縫合糸の略断面図である。
図3】本発明によるさらに別の編組縫合糸の略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
様々な態様を、説明の目的で選択された特定の形態を参照しながら以下に説明する。本明細書に開示された装置、システム及び方法の精神及び範囲は選択された形態に限定されないことが理解されるであろう。さらに、本明細書で提供される図は、特定の比率又は縮尺で描かれているわけではなく、図示の形態に対して多くの変形を加えることができることに留意されたい。
【0050】
本明細書中で使用されるとき、「a」、「an」、及び「the」という単数の文法的形態で書かれた以下の用語のそれぞれはまた、本明細書において特に具体的に定義又は記載されない限り、又は文脈がそうでない旨を明確に指示しない限り、複数の記載された実体又はオブジェクトを指し、かつそれを包含してもよい。例えば、本明細書で使用するとき、語句「装置」、「アセンブリ」、「機構」、「成分」、及び「要素」もまた、複数の装置、複数のアセンブリ、複数の機構、複数の成分、及び複数の要素を、それぞれ参照し、包含してもよい。
【0051】
以下の用語、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含む(comprises)」、及び「含む(comprising)」のそれぞれ、並びにそれらの言語的もしくは文法的な変異形、派生語、及び/又は活用形は、本明細書で使用するとき、「含むが、これらに限定されない」を意味する。
【0052】
例示的な説明、実施例及び添付の特許請求の範囲を通して、パラメータ、特徴、目的又は寸法の数値は、ある数値範囲形式を用いて述べられ又は説明される。記載された数値範囲形式は、本明細書に開示された形態の実施を説明するために提供されているのであり、本明細書に開示された形態の範囲を限定するものであると理解又は解釈されるべきではない。
【0053】
さらに、数値範囲を記載又は説明するために、「約第1の数値と約第2の数値との間の範囲内の」という表現は、「約第1の数値から約第2の数値まで範囲内の」という表現と同等であると見なされ、同じことを意味する。したがって、2つの同義の意味の句は互換的に使用することができる。
【0054】
本明細書に開示される様々な形態は、それらの適用において、本方法の形態の操作もしくは実施のステップもしくはプロシージャ、及びサブステップもしくはサブプロシージャの順番もしくは順序、及び数の詳細に限定されない、又は、本明細書で特に具体的に記載されない限り、以下の例示的な説明、添付の図面、及び実施例に記載される、システム、システムサブユニット、装置、アセンブリ、サブアセンブリ、機構、構造体、成分、要素、及び機器構成の、種類、組成、構造、配置、順序、及び数、並びにシステムの形態の周辺機器、ユーティリティ、付属品、及び材料の詳細に限定されないことが理解するべきである。本明細書に開示される機器、システム、及び方法は、様々な他の代替形態及び様々な他の代替方法に従って実施又は実現することができる。
【0055】
本開示全体を通して本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語、用語、及び/又は語句は、本明細書において特に具体的に定義又は記載されない限り、当業者のうちの一人によって一般的に理解されるものと同一又は類似の意味のいずれかを有することも理解されたい。本開示全体を通して本明細書で使用される表現法、用語法、及び表記法は、説明の目的のためのものであり、限定するものと見なされるべきではない。
【0056】
濃度、寸法、量及びその他の数値データは、本明細書では範囲形式で提示することができる。そのような範囲形式は単に便宜上及び簡潔さのために使用され、範囲の限界として明示的に列挙された数値だけでなく、その範囲内に包含される全ての個々の数値又は部分範囲も、各数値及び部分範囲が明示的に記載されているかのように含むように柔軟に解釈されるべきである。例えば、約1~約200の範囲は、明示的に列挙された1~約200の範囲だけでなく、2、3、4などのような個々のサイズ及び10~50、20~100などの部分範囲も含むと解釈されるべきである。同様に、数値範囲が記載されている場合、そのような範囲は、その範囲の低い方の値だけを列挙する請求項の限定及びその範囲の高い方の値だけを列挙する請求項の限定を確実に裏付けるものと解釈されるべきであることを理解されたい。例えば、開示された10~100の数値範囲は、「10を超える」(上限なし)と記載している請求項及び「100未満」(下限なし)と記載している請求項に対して確実な裏付けを与える。図面において、類似の数字は、類似の又は同様の構造及び/又は特徴を示す。また、図示された構造及び/又は特徴のそれぞれが、必ずしも本明細書中で図面を参照しながら詳細に説明されるわけではない。同様に、各構造及び/又は特徴が、図面において明示的に図示されているわけではない。図面を参照しながら本明細書で説明されているいかなる構造及び/又は特徴も、本開示の範囲から逸脱することなく、任意の他の構造及び/又は特徴と共に利用してもよい。
【0057】
編組構造は、糸を形成するなどのために、複数の別個のフィラメントを撚り合わせて、これらのフィラメントを密着した束としたものからなることが知られている。多くの場合、これらのフィラメントの束はさらに一緒に編組されて糸を形成し、及び/又はメッシュもしくは布地などのより大きな物品に編成されるか又は織成される。
【0058】
医療用装置産業は、編組プロセスを利用して、縫合糸及びメッシュなどの埋植可能な医療用装置を形成する。多くの場合、医療用装置に使用されるフィラメントは、生体分解性のもの;時間の経過と共に体組織に「同化」又は「吸収」されるもの及び生物耐久性のあるもの;同化も吸収もされず、その形状を時が経っても保たれるものに分類される生体適合性合成ポリマーから形成される。生体分解性ポリマーは、湿った体内組織にさらされると、容易に分解して小さな断片になる。これらの断片は次いで、身体に吸収されるか、あるいは身体を通り抜ける。より具体的には、生分解された断片は、永続的に追跡されないよう又は断片の残留物が体内に保持されないように、体内に吸収されるか又は体内を通過するため、永続的な慢性の異物反応を誘発しない。
【0059】
縫合糸などの医療用装置用に望ましい特定のポリマー又はコポリマーの選択は、他の要因の中でも特に、どのような種類の組織が治療されているのか及び、治癒プロセスにかかると予想される時間に依存する。縫合糸は、接近しようとしている特定の組織を通して引っ張られ、少なくとも治癒プロセスの間はその機械的完全性を維持するのに十分なBSRを有しなければならない。
【0060】
上述のように、抗菌剤のようなある種の薬剤を縫合糸材料の中又は上に組み込むことは、望ましい場合が多いものの、医療用装置/縫合糸中への正確な装填が困難であるか、及び/あるいは製造中の加工性又は生体内での機械的な経時的強度に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0061】
本明細書で使用される「薬剤」という用語は、生体内で有益な効果を有する任意の生物医学的に有用な薬剤を意味する。本発明の手術用縫合糸に組み込むことができる生物医学的に有用な薬剤には、抗菌剤、治療剤、抗生物質、抗ウイルス剤、抗炎症剤、創傷治癒剤、有益なサイトカイン、抗癌剤、鎮痛剤及び鎮痛剤の組み合わせ、食欲抑制薬、駆虫薬、抗関節炎薬、喘息治療薬、癒着防止剤、抗けいれん薬、抗うつ薬、抗利尿薬、抗下痢薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、抗片頭痛薬、抗けいれん薬、抗嘔吐薬、抗悪性腫瘍薬、抗パーキンソン病薬、鎮痒剤、抗精神病薬、解熱剤、鎮痙薬、抗コリン薬、交換神経作動薬、キサンチン誘導体及びpH調整剤が含まれる。
【0062】
必要に応じて、本発明の縫合糸又は繊維は、その他の医学的に有用な従来の成分及び薬剤を含有し得る。その他の成分、添加剤又は薬剤も、制御された薬剤溶出、治療的側面、放射線不透化性及び骨結合の改善が含まれるがこれらに限定されないさらなる望ましい特性を本発明の縫合糸に付与するために存在するであろう。
【0063】
また、手術用縫合糸又は繊維には、その他の従来の添加剤も含まれ得るが、そのような添加剤には、染料、放射線不透化剤、成長因子等が含まれる。染料は、一般に、吸収性ポリマーと共に臨床で用いることが可能であるものである必要があり、これには、D&C Violet No.2及びD&C Blue No.6、並びにこれらに同様のものを組み合わせたものが含まれるが、それらに限られない。有用な追加的染料には、吸収性ポリマーと共に用いるのに有用な従来の染料が含まれ、それらには、D&C Green No.6、及びD&C Blue No.6が含まれる。
【0064】
典型的には、他の添加剤の量は、約0.1重量%~約20重量%、より典型的には約1重量%~約10重量%、好ましくは約2重量%~約5重量%である。
【0065】
これらの競合する要因に対処するために、編組縫合糸又は織成もしくは編成されたメッシュのようなフィラメント束から作成された医療用装置は、より割合の大きな部分においては少なくとも第1の種類のフィラメント材料、より割合の小さな部分においては生物医学的に有用な薬剤を組み込んだ少なくとも第2の種類のフィラメント材料の少なくとも2つの異なるフィラメント材料を用いて、より割合の大きな部分よりも機械的強度が劣る可能性があるより割合の小さな部分のフィラメントの存在が医療用装置の全体的な機械的強度又はBSRを大幅に低下させないように形成できることが見出されている。
【0066】
本発明は、第1のポリマー材料から形成された複数の第1の種類のフィラメントと、任意に第2のポリマー材料から形成されていてもよい少なくとも1つの第2の種類のフィラメントと、を含むフィラメントの集合体を備える埋植可能な医療用装置に関する。第2の種類のフィラメントは生物医学的に有用な薬剤でコーティング又は含浸されている。いくつかの形態では、医療用装置は編組縫合糸又はメッシュである。
【0067】
図1は、複数の第1の種類のフィラメント10と、生物医学的に有用な薬剤を含むものとして理解される単一の第2の種類のフィラメント20とを有するフィラメントの集合体である、本発明による編組縫合糸の単純化された略断面図を示している。この場合、第2の種類のフィラメントは束の外側に位置する。
【0068】
図2は、第2の種類のフィラメント20が束の中心に位置し、複数の第1の種類のフィラメント10によって包囲されている、本発明による別の編組縫合糸の単純化された略断面図を示している。当然のことながら、編組縫合糸は通常、図に描かれているよりもはるかに多くのフィラメントを有するので、図1及び図2は簡略化された表現である。
【0069】
上述の構造の編組縫合糸は、第1の種類のフィラメントのみを有する同等の編組縫合糸の機械的特性の10%以内の機械的特性を有するか、又は第1の種類のフィラメントのみを有する同等の編組縫合糸の機械的特性と実質的に同等の機械的特性を有することが見出されている。
【0070】
一形態において、本明細書の医療用装置を製造するために使用されるポリマーは吸収性ポリマーである。吸収性という用語は、生体吸収性、再吸収性、生体再吸収性、分解性、又は生体分解性も含み得る、総称的な用語であることが意図される。
【0071】
一形態では、第1及び第2の種類のフィラメントは、例えば第2のポリマー材料が第1のポリマー材料よりも速く吸収するか、又は第2のポリマー材料が第1のポリマー材料よりも遅く吸収するなど、双方共に吸収性であり、かつ異なる吸収プロファイルを有する第1及び第2のポリマー材料から形成される。
【0072】
好適な生体適合性、生体分解性のポリマーが、合成ポリマー又は天然ポリマーであってもよい。好適な合成の生体適合性、生体分解性ポリマーとしては、脂肪族ポリエステル、ポリ(アミノ酸)、コポリ(エーテル-エステル)、シュウ酸ポリアルキレン、チロシン由来ポリカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリオルトエステル、ポリオキサエステル、ポリアミドエステル、アミン基を含有するポリオキサエステル、ポリ(酸無水物)、ポリホスファゼン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるポリマーが挙げられる。
【0073】
本発明の目的のため、脂肪族ポリエステルは、ラクチド(乳酸、D-、L-及びmeso-ラクチドを含む)、グリコリド(グリコール酸を含む)、ε-カプロラクトン、p-ジオキサノン(1,4-ジオキサン-2-オン)、トリメチレンカーボネート(1,3-ジオキサン-2-オン)、トリメチレンカーボネートのアルキル誘導体及びこれらの混合物のホモポリマー及びコポリマーを非限定的に含む。
【0074】
好適な天然ポリマーは、コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸、ラミニン、ゼラチン、ケラチン、硫酸コンドロイチン及び脱細胞化組織を非限定的に含む。
【0075】
好適な生体吸収性、生体適合性のエラストマーコポリマーには、非限定的に、ε-カプロラクトンとグリコリドのコポリマー(ε-カプロラクトンとグリコリドのモル比は、好ましくは約30:70~約70:30、好ましくは35:65~約65:35、より好ましくは45:55~35:65である);ε-カプロラクトンと、L-ラクチド、D-ラクチド、それらの配合物又は乳酸コポリマーを含めたラクチドとのエラストマーコポリマー(ε-カプロラクトンとラクチドとのモル比は、好ましくは約35:65~約65:35、より好ましくは45:55~30:70である);p-ジオキサノン(1,4-ジオキサン-2-オン)と、L-ラクチド、D-ラクチド及び乳酸を含めたラクチドとのエラストマーコポリマー(p-ジオキサノンとラクチドとのモル比は、好ましくは約40:60~約60:40である);ε-カプロラクトンとp-ジオキサノンとのエラストマーコポリマー(イプシロン-カプロラクトンとp-ジオキサノンとのモル比は、好ましくは約30:70~約70:30である);p-ジオキサノンと炭酸トリメチレンとのエラストマーコポリマー(p-ジオキサノンと炭酸トリメチレンとのモル比は、好ましくは約30:70~約70:30である);炭酸トリメチレンとグリコリドとのコポリマー(炭酸トリメチレンとグリコリドとのモル比は、好ましくは約30:70~約70:30である);炭酸トリメチレンと、L-ラクチド、D-ラクチド、それらの配合物又は乳酸コポリマーを含めたラクチドとのエラストマーコポリマー(炭酸トリメチレンとラクチドとのモル比は、好ましくは約30:70~約70:30である)、並びにそれらの配合物が挙げられる。一実施形態において、エラストマー共重合体は、グリコリドとε-カプロラクトンとのコポリマーである。別の実施形態において、エラストマー共重合体は、ラクチドとε-カプロラクトンとのコポリマーである。
【0076】
別の形態では、第1及び第2のポリマー材料の一方は吸収性であり、他方は非吸収性、すなわち生物耐久性である。例えば、第1のポリマー材料が、ポリエチレン、ポリプロピレン又はそれらのモノマーのコポリマーであってもよく、第2のポリマー材料が、上記の生物分解性ポリマーのうちの1つであってもよい。
【0077】
好適な生物耐久性ポリマーの例は、ポリウレタン、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート、ポリアミド(例えばナイロン)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリトリフルオロクロロエチレン(PTFCE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリアセタール、ポリスルホン、シリコン及びそれらの組み合わせを非限定的に含む。
【0078】
有利には、第1及び第2のポリマーは、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリラクチド-グリコール酸(PLGA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリジオキサノン(PDS)又はそれらのモノマーの組み合わせもしくはコポリマーから選択される。有利には、第2のポリマー材料は、少なくとも30重量%のポリカプロラクトンを含む。
【0079】
吸収性の第2のポリマーフィラメント上に薬剤を含めることの1つの利点は、薬剤を医療用装置の長さ又は幅全体にわたって送達することができ、第2のポリマーの吸収プロファイルに応じて、薬剤を速い速度でも遅い速度でも送達できることである。
【0080】
別の利点は、医療用装置における生物医学的に有用な薬剤の装填量を変えるために第2の種類のフィラメントの数を変えることができることである。このように、生物医学的に有用な薬剤の投与量は、より多くの薬剤充填フィラメントをフィラメント束に加えることによって増加させることができる。
【0081】
さらに、薬剤を有する第2の種類のフィラメントの位置をフィラメント束の内側(図2)又は外側(図1)のいずれにするのかによって、薬剤が周囲の組織に送達される速度を増減することができる。
【0082】
好適な抗菌剤は、ハロゲン化ヒドロキシエーテル、アシルオキシジフェニルエーテル、又はそれらの組み合わせから選択されてもよいが、これらに限定されるものではない。特に、抗菌剤は、ハロゲン化2-ヒドロキシジフェニルエーテル及び/又はハロゲン化2-アシルオキシジフェニルエーテルであってもよく、酢酸エステル、クロロ酢酸エステル、メチル又はジメチルカルバミン酸エステル、安息香酸エステル、クロロ安息香酸エステル、メチルスルホン酸エステル及びクロロメチルスルホン酸エステルが特に適している。いくつかの特に有利な抗菌剤は、一般にトリクロサン、グルコン酸クロルヘキシジン及びグルコース酸化酵素と呼ばれる2、4、4’-トリクロロ-2’-ヒドロキシジフェニルエーテルである。
【0083】
上記の抗菌剤に加えて、医療用装置の第2の種類のフィラメントが、エタノール及びイソプロパノールなどのアルコール類;グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒドなどのアルデヒド類;トリクロロカルバニリドなどのアニリド類;クロルヘキシジンなどのビグアニド類;次亜塩素酸ナトリウム、二酸化塩素及び酸性亜塩素酸ナトリウムなどの塩素放出剤;ポビドンヨード、ポロキサマーヨードなどのヨウ素放出剤;硝酸銀、スルファジアジン銀、他の銀剤、銅-8-キノレート及びビスマスチオールのような金属;過酸化水素、過酢酸などの過酸素化合物;フェノール類;塩化ベンザルコニウム、セトリミド及びイオネンなどの第四級アンモニウム化合物-ポリ第四級アンモニウム化合物を含むがこれらに限定されない)殺生物剤、消毒剤及び/又は防腐剤を有してもよい。
【0084】
医療用装置の第2の種類のフィラメントが、アモキシシリン、オキサシリン及びピペラシリンなどのペニシリン類;セファゾリン、セファドロキシル、セフォキシチン、セフプロジル、セフォタキシム及びセフジニルなどの非経口的なセファロスポリン類;アズトレオナムなどのモノバクタム;クラブラン酸スルバクタムなどのβラクタマーゼ阻害剤;バンコマイシンなどの糖ペプチド;ポリミキシン;ナリジクス酸、シプロフロキサシン、レバキンなどのキノロン類;メトラニダゾール;ノボビオシン;アクチノマイシン;リファンピン;ネオマイシン、ゲンタマイシンなどのアミノグリコシド類;ドキシサイクリンなどのテトラサイクリン;クロラムフェニコール;エリスロマイシンなどのマクロライド;クリンダマイシン;スルファジアジンなどのスルホンアミド;トリメトプリム;局所用抗生物質;バシトラシン;グラミシジン;ムピロシン;及び/又はフシジン酸を含むがこれらに限定されない抗生物質を有してもよい。
【0085】
医療用装置の第2の種類のフィラメントが、デフェンシン、マガイニン、ナイシンなどの抗菌ペプチド;溶菌性バクテリオファージ;界面活性剤;抗体、オリゴ糖、糖脂質などの癒着防止剤;アンチセンスRNAなどのオリゴヌクレオチド;排出ポンプ阻害剤;ポルフィリンのような感光性染料;成長因子、インターロイキン、インターフェロン及び合成抗原などの免疫調節剤;及び/又はEDTA、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ラクトフェリン、トランスフェリンなどのキレート剤を有してもよい。
【0086】
有利には、例えば第2の種類のフィラメントが生物医学的に有用な薬剤に対して高い溶解度を有する物質を含み、具体的には第2の種類のフィラメントが少なくとも約30重量%のポリカプロラクトンを含み、生物医学的に有用な薬剤がトリクロサンであるなど、第2の種類のフィラメントが生物医学的に有用な薬剤に対して高い親和性を有する。トリクロサンは比較的穏やかな温度及び/又は低圧条件下で気化することが知られており、ポリカプロラクトン含有ポリマー中に優先的に吸収されるであろう。
【0087】
さらに別の形態では、第1の種類のフィラメント及び第2の種類のフィラメントのいずれか又は両方は、生物医学的に有用な薬剤としてpH調整物質を含有する。例えば、NaCOなどのpH調整剤と抗生物質との組み合わせは、いくつかの抗菌剤が細菌にストレスを与えることによってより高いpHで増強され、抗菌剤に対するより高い感受性をもたらすので、相乗的であり得る。また、アルカリ剤が、PLGAのようなほとんどの吸収性ポリマーの酸性加水分解生成物の中和を助け、吸収の促進を助けてもよい。
【0088】
同様に、酸性である酸化再生セルロース(ORC)が抗菌活性を示すことが知られており、医療用装置が配置されている箇所のpHを下げることが、同様に細菌にストレスを与えて抗菌剤を増強し得ることを示唆している。
【0089】
好適なpH調整が、重合性モノマーの存在、酸性基又は塩基性基によるポリマーの末端封鎖、水素化処理又は、より速い加水分解をもたらし、したがってより速い酸性化を生じさせるであろう照射によるポリマーの弱化及び他の類似の技術によって行われてもよい。短鎖をアルカリ性基又は酸性基で末端封鎖した、短ポリマー鎖のベースポリマーへの混合を利用することができる。他の有用な酸性化合物には、ホウ酸、安息香酸、尿酸及び尿酸塩、D-乳酸及びL-乳酸を含む乳酸並びにその他の、好ましくは固体又は半固体の公知の酸性化合物が含まれる。
【0090】
さらに、pH調整は、水酸化物、強塩基と弱酸の塩、又は強酸と弱塩基の塩及びそれらの組み合わせを含む、ポリマーに添加又は配合される任意の数の既知の塩基性剤又はアルカリ剤を使用することによって達成できる。炭酸塩、TRIS、ホウ酸塩、グリシン、リン酸塩、メチルアミン、2-(シクロヘキシルアミノ)エタンスルホン酸(CHES)、3-(シクロヘキシルアミノ)-1-プロパンスルホン酸(CAPS)又は3-(シクロヘキシルアミノ)-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸酸(CAPSO)を使用してもよい。有用なアルカリ成分には、NaOH水酸化ナトリウム、NaCO炭酸ナトリウム、NaHCO炭酸水素ナトリウム、NaBO、ホウ酸ナトリウム、NaCHCOO、酢酸ナトリウム、NaPO、NaHPO、NaHPOリン酸ナトリウムなどが含まれる。ナトリウムの代わりにカリウム又は任意のその他の金属の塩を使用することもできる。アンモニアカチオンNH4も塩に使用することができる。塩と対応する水酸化物との組み合わせもまた有用である。
【0091】
あるいは、医療用装置が、生物医学的に有用な薬剤がコーティングから分離されるように、フィラメントの集合体を包囲するコーティングをさらに含んでもよい。このような構造は、生物医学的に有用な薬剤がコーティング材料の存在下で不安定である場合、又はその逆の場合に有利であり得る。このようにして、生物医学的に有用な薬剤の成分とコーティングとの間の相互作用を、医療用装置が患者の中に配置されるまで遅らせることができる。コーティング組成物が、上に列挙したような抗菌剤、抗生物質剤又はpH調整剤のいずれかを含んでもよい。有利には、コーティングは、上述の増強剤などの生物医学的に有用な薬剤と良好に相互作用する化合物を含有する。
【0092】
別の形態では、医療用装置が、任意に第3のポリマー材料から形成された第3の種類のフィラメントをさらに含んでもよく、第3の種類のフィラメントは、第2の種類のフィラメント上にコーティング又は含浸される第1の生物医学的に有用な薬剤とは異なる第2の生物医学的に有用な薬剤でコーティング又は含浸されている。図3は、この実施形態の非限定的な例を示しており、複数の第1の種類のフィラメント10は、少なくとも1つの第2の種類のフィラメント20と少なくとも1つの第3の種類のフィラメント30とを有している。フィラメント20及びフィラメント30の物理的配置は、構造内のそれらの数と同様に変更することができる。第3の種類のフィラメントと第2の種類のフィラメントとは、異なるポリマーであることにより異なっていてもよいが、両方とも同じポリマーから形成され、フィラメント上にコーティング又は含浸される生物医学的に有用な薬剤の性質によって異なっていてもよい。
【0093】
そのような構造も、第1の生物医学的に有用な薬剤が第2の生物医学的に有用な薬剤の存在下で不安定である場合に有利であってもよく、これらの異なる生物医学的に有用な薬剤の成分間の相互作用を、医療用装置が患者の中に配置されて生物医学的に有用な薬剤の放出が始まるまで遅らせることができる。第1及び第2の生物医学的に有用な薬剤が、上に挙げたような抗菌剤、抗生物質剤、pH調整剤又は増強剤のいずれを含んでもよく、第2及び第3のポリマー材料が、双方が異なる吸収プロファイルを有する吸収性ポリマーであるなど、異なるポリマーであってもよい。好適なポリマーは、上記に列挙したものから選択することができる。同様に、第1及び第2の生物医学的に有用な薬剤は、異なる放出プロファイルを有するように選択することができる。
【0094】
特に有利な一形態において、第1の生物医学的に有用な薬剤はグルコースであり、第2の生物医学的に有用な薬剤はグルコース酸化酵素であり、それらは組み合わされると生体内で過酸化水素を形成する。
【0095】
別の形態では、第1の生物医学的に有用な薬剤は酸性剤であり、第2の生物医学的に有用な薬剤はアルカリ剤であり、これらは組み合わされると、医療用装置が配置されている箇所のpHを一定に維持するために使用することができる。酸性剤及びアルカリ剤の双方が、加水分解のための触媒として吸収性ポリマーフィラメントの吸収を促進し得るが、過剰の酸又は塩基を有すると、有害な組織反応をもたらすおそれがある。したがって、これらの相互中和材料を近接させると、全体的なバルクpHを中性に維持しながら、ミクロレベルでは縫合糸加水分解を促進できるであろう。
【0096】
別の有利な形態では、第1の生物医学的に有用な薬剤がグラム陽性細菌に対して有用な抗生物質であり、第2の生物医学的に有用な薬剤がグラム陰性細菌に対して有用な抗生物質であるなど、第1の生物医学的に有用な薬剤が抗生物質であり、第2の生物医学的に有用な薬剤がこれとは異なる抗生物質である。
【0097】
この場合にも、フィラメント束のうちで第2及び第3の種類のフィラメントが比較的少ないことから、編組縫合糸などの医療用装置は、第1の種類のフィラメントのみを有する同等の編組縫合糸の機械的特性の10%以内の機械的特性を有するか、あるいは、編組縫合糸が、第1の種類のフィラメントのみを有する同等の編組縫合糸の機械的特性と実質的に同等の機械的特性を有する。
【0098】
本発明の別の形態は、第1のポリマー材料から形成された複数の第1の種類のフィラメントを提供すること、第2のポリマー材料から形成されていてもよい少なくとも1つの第2の種類のフィラメントを提供すること及び、第2の種類のフィラメントを複数の第1の種類のフィラメントと組み合わせることを含む、フィラメントの集合体を備える埋植可能な医療用装置を製造するための方法に関する。当該第2の種類のフィラメントは生物医学的に有用な薬剤でコーティング又は含浸されている。組み合わせ工程が、複数の別個のフィラメントを一緒に糸の形に巻くか又は撚り合わせるか、あるいはそのような糸の集合体を巻くか又は撚り合わせて編組縫合糸を形成し、糸を任意にメッシュなどの二次元の又は面の形へと編成又は織成することによって実施されてもよい。当然のことながら、上述のように、フィラメントの集合体は、第2の生物医学的に有用な薬剤でコーティング又は含浸された第3のポリマー材料から形成されていてもよい少なくとも1つの第3の種類のフィラメントを含むことができる。
【0099】
方法は、第2の種類のフィラメントを複数の第1の種類のフィラメントと組み合わせる前に、第2の種類のフィラメントを当該生物医学的に有用な薬剤で予めコーティング又は含浸する工程を含むことができる。さらに、生物医学的に有用な薬剤が、トリクロサンを含むハロゲン化ヒドロキシルエーテル、アシルオキシジフェニルエーテルなどのように比較的揮発性である場合、生物医学的に有用な薬剤をフィラメント内に再分配するために、熱処理及び/又は真空処理を医療用装置に適用することが有利であり得る。この熱処理及び/又は真空処理が、エチレンオキシド滅菌などの滅菌処理の一部であると便利である。
【0100】
いくつかの形態では、生物医学的に有用な薬剤を、生物医学的に有用な薬剤がグルコン酸クロルヘキシジン又はグルコース酸化酵素を含む場合のように、第2の種類のフィラメントを押し出す前に第2のポリマー材料に配合することができる。
【0101】
別の形態では、例えば第2の種類のフィラメントがポリカプロラクトンを少なくとも30重量%含み、生物医学的に有用な薬剤がトリクロサンであるなど、第2の種類のフィラメントが当該生物医学的に有用な薬剤に対して高い親和性を有する場合に、本方法はさらに、当該生物医学的に有用な薬剤を含む環境に医療用装置をさらすことを含むことができる。この形態では、トリクロサンは優先的に第2の種類のフィラメント内に濃縮される。所望の場合には、この方法はさらに、医療用装置に熱処理及び/又は真空処理を施すこと及び、フィラメント内にトリクロサンを再分配することを含むことができる。
【0102】
あるいは、本方法が、第2の種類のフィラメントを、当該生物医学的に有用な薬剤でコーティング又は含浸する前に、熱水溶液中で又は照射により前処理することを含んでもよい。
【実施例
【0103】
本開示によるシステム及び方法のさらなる例示的かつ非限定的な例を、以下に列挙する段落に示す。以下に列挙する段落を含む本明細書に記載された方法の個々の工程が、追加的に又は代替的に、列挙された動作を実行する「ための工程」と呼ばれてもよいことは本開示の範囲内である。
【0104】
PCT1.第1のポリマー材料から形成された複数の第1の種類のフィラメント及び少なくとも1つの第2の種類のフィラメントを含むフィラメントの集合体を備える埋植可能な医療用装置であって、当該第2の種類のフィラメントが生物医学的に有用な薬剤でコーティング又は含浸されている、医療用装置。
【0105】
PCT2.医療用装置が編組縫合糸又はメッシュである、段落PCT1の医療用装置。
【0106】
PCT3.第1の種類のフィラメントのみを有する同等の編組縫合糸の機械的特性の10%以内、又は実質的に等しい機械的特性を有する編組縫合糸である、段落PCT1又はPCT2に記載の医療用装置。
【0107】
PCT4.当該生物医学的に有用な薬剤が、トリクロサン、グルコン酸クロルヘキシジン又はグルコース酸化酵素などの抗菌剤を含む、段落PCT1からPCT3のいずれかに記載の医療用装置。
【0108】
PCT5.第1の種類のフィラメント及び第2の種類のフィラメントのいずれか又は両方がpH調整剤を含有する、段落PCT1からPCT4のいずれかに記載の医療用装置。
【0109】
PCT6.第2の種類のフィラメントが第2のポリマー材料から作成されている、段落PCT1からPCT5のいずれかに記載の医療用装置。
【0110】
PCT7.第1及び第2のポリマー材料がPLA、PGA、PCL、PLGA、PP、PE、PDS又はそれらのモノマーの組み合わせもしくはコポリマーを含む、段落PCT1からPCT6のいずれかに記載医療用装置。
【0111】
PCT8.第1及び第2のポリマー材料のうちの一方が吸収性であり、他方が非吸収性であるか、又は第1及び第2のポリマー材料が両方とも吸収性であり、かつ異なる吸収プロファイルを有する、段落PCT1からPCT7のいずれかに記載の医療用装置。
【0112】
PCT9.任意選択の第3のポリマー材料から形成された少なくとも1つの第3の種類のフィラメントをさらに含み、当該第2の種類のフィラメントが第1の生物医学的に有用な薬剤でコーティング又は含浸され、当該第3の種類のフィラメントが、第1の生物医学的に有用な薬剤とは異なる第2の生物医学的に有用な薬剤でコーティング又は含浸されている、段落PCT1からPCT8のいずれかに記載の医療用装置。
【0113】
PCT10.第1の生物医学的に有用な薬剤が抗菌剤であり、第2の生物医学的に有用な薬剤が抗生物質であるか、又は第1の生物医学的に有用な薬剤がpH調整剤であり、第2の生物医学的に有用な薬剤が抗生物質であるか、又は第1の生物医学的に有用な薬剤が抗生物質であり、第2の生物医学的に有用な薬剤がこれとは異なる抗生物質である、段落PCT9に記載の医療用装置。
【0114】
PCT11.少なくとも第2及び任意選択の第3のポリマー材料が吸収性ポリマーであり、かつ異なる吸収プロファイルを有し、任意に第1の生物医学的に有用な薬剤が第2の生物医学的に有用な薬剤の放出プロファイルと異なる放出プロファイルを有する、段落PCT9又はPCT10に記載の医療用装置。
【0115】
PCT12.第1の生物医学的に有用な薬剤がグルコースであり、第2の生物医学的に有用な薬剤がグルコース酸化酵素であるか、又は第1の生物医学的に有用な薬剤が酸性剤であり、第2の生物医学的に有用な薬剤がアルカリ剤であるか、又は第1の生物医学的に有用な薬剤がpH調整剤であり、第2の生物医学的に有用な薬剤が抗菌剤もしくは抗生物質剤である。段落PCT9からPCT11のいずれかに記載の医療用装置。
【0116】
PCT13.第1のポリマー材料から形成された複数の第1の種類のフィラメントを提供すること、少なくとも1つの第2の種類のフィラメントを提供すること、少なくとも1つの第3の種類のフィラメントを任意に提供すること及び、第2の種類のフィラメントと任意選択の第3の種類のフィラメントとを複数の第1の種類のフィラメントを組み合わせることを含む、フィラメントの集合体を備える埋植可能な医療用装置の製造方法であって、第2の種類のフィラメントと、存在する場合には第3の種類のフィラメントとが、少なくとも1つの生物医学的に有用な薬剤でコーティング又は含浸される方法。
【0117】
PCT14.第2の種類のフィラメントが第2のポリマー材料から形成され、任意選択の第3の種類のフィラメントが第3のポリマー材料から形成される、段落PCT13に記載の方法。
【0118】
PCT15.第2の種類のフィラメント及び任意選択の第3の種類のフィラメントが、それらを複数の第1の種類のフィラメントと組み合わせる前に、当該生物医学的に有用な薬剤で予めコーティング又は含浸される、段落PCT13又はPCT14に記載の方法。
【0119】
PCT16.医療用装置に熱処理及び/又は真空処理を施すこと及び、生物医学的に有用な薬剤をフィラメント内に再分配することをさらに含む、段落PCT13からPCT15のいずれかに記載の方法。
【0120】
PCT17.生物医学的に有用な薬剤がトリクロサンである、段落PCT13からPCT16のいずれかに記載の方法。
【0121】
PCT18.熱処理及び/又は真空処理が滅菌処理の一部である、段落PCT11からPCT17のいずれかに記載の方法。
【0122】
PCT19.当該生物医学的に有用な薬剤が、第2の種類のフィラメント及び任意選択の第3の種類のフィラメントを押し出す前に、第2及び任意選択の第3のポリマー材料に配合される、段落PCT11からPCT18のいずれかに記載の方法。
【0123】
PCT20.第2の種類のフィラメントが当該生物医学的に有用な薬剤に対して高い親和性を有し、当該生物医学的に有用な薬剤を含む環境に医療用装置をさらすことによって、生物医学的に有用な薬剤に対して高い親和性を有する第2の種類のフィラメント内に生物医学的に有用な薬剤を濃縮することをさらに含む、段落PCT11からPCT18のいずれかに記載の方法。
【0124】
PCT21.第2の種類のフィラメントを、生物医学的に有用な薬剤でコーティング又は含浸する前に、熱水溶液中で又は照射により前処理することをさらに含む、段落PCT11からPCT20のいずれかに記載の方法。
【0125】
PCT22.少なくとも1つの生物医学的に有用な薬剤がトリクロサン、グルコン酸クロルヘキシジン又はグルコース酸化酵素から選択される、段落PCT11からPCT21のいずれかの方法。
【0126】
PCT23.組織修復、組織強化又は縫合などの外科手術において、段落PCT1からPCT12のいずれかに記載の医療用装置を埋植する方法。
【0127】
産業上の利用可能性
本明細書に開示されるシステム及び方法は、医療装置産業に適用可能である。
【0128】
上記の開示は、独立した有用性を有する複数の別個の発明を包含すると考えられる。これらの発明のそれぞれは、その好ましい形態で開示されているが、本明細書に開示及び例示されるこれらの特定の実施形態は、多くの変形が可能であるため、限定的な意味で考慮されるべきではない。本発明の主題は、本明細書に開示される様々な要素、特徴、機能、及び/又は特性の全ての新規かつ非自明のコンビネーション及びサブコンビネーションを含む。同様に、「特許請求の範囲」が「a」又は「第1の」要素又はその等価物を列挙する場合、このような「特許請求の範囲」は、1つ以上のそのような要素の組み込みを含み、2つ又はそれ以上のそのような要素を必要とすることも除外することも含まないことを理解すべきである。
【0129】
以下の「特許請求の範囲」は、開示される発明の1つを対象とする特定のコンビネーション及びサブコンビネーションを具体的に指摘し、新規かつ非自明であると考えられる。特徴、機能、要素、及び/又は特性の他のコンビネーション及びサブコンビネーションで具現化された発明は、本特許請求の範囲の修正、又は本願もしくは関連出願における新規の特許請求の範囲の提示を介して主張され得る。そのような修正又は新規の特許請求の範囲は、それらが異なる発明を対象とするか、又は同一の発明を対象としているかに関わらず、元の特許請求の範囲と異なるか、より広いか、より狭いか、又は同一の範囲であるかに関わらず、本開示の発明の主題に含まれるものと見なされる。
【0130】
〔実施の態様〕
(1) 埋植可能な医療用装置であって、
フィラメントの集合体であって、
第1のポリマー材料から形成された複数の第1の種類のフィラメントと、
前記第1の種類のフィラメントとは異なる少なくとも1つの第2の種類のフィラメントと、を含むフィラメントの集合体を備え、
前記第2の種類のフィラメントは、生物医学的に有用な薬剤でコーティング又は含浸されている、
医療用装置。
(2) 編組縫合糸である、実施態様1に記載の医療用装置。
(3) 前記編組縫合糸は、前記第1の種類のフィラメントのみを有する同等の編組縫合糸の機械的特性の10%以内の機械的特性を有する、実施態様2に記載の医療用装置。
(4) 前記編組縫合糸は、前記第1の種類のフィラメントのみを有する同等の編組縫合糸の機械的特性と実質的に同等の機械的特性を有する、実施態様2に記載の医療用装置。
(5) メッシュである、実施態様1に記載の医療用装置。
【0131】
(6) 前記生物医学的に有用な薬剤は抗菌剤を含む、実施態様1に記載の医療用装置。
(7) 前記抗菌剤はトリクロサンを含む、実施態様6に記載の医療用装置。
(8) 前記抗菌剤はグルコン酸クロルヘキシジンを含む、実施態様6に記載の医療用装置。
(9) 前記生物医学的に有用な薬剤はグルコース酸化酵素を含む、実施態様1に記載の医療用装置。
(10) 前記第1の種類のフィラメント及び前記第2の種類のフィラメントのいずれか一方又は両方はpH調整剤を含有する、実施態様1に記載の医療用装置。
【0132】
(11) 前記第2の種類のフィラメントは、第2のポリマー材料から形成されている、実施態様1に記載の医療用装置。
(12) 前記第1及び第2のポリマー材料は両方とも吸収性であり、かつ異なる吸収プロファイルを有する、実施態様11に記載の医療用装置。
(13) 前記第2のポリマー材料は、前記第1のポリマー材料よりも速く吸収する、実施態様12に記載の医療用装置。
(14) 前記第2のポリマー材料は、前記第1のポリマー材料よりも遅く吸収する、実施態様12に記載の医療用装置。
(15) 前記第2の種類のフィラメントは、前記生物医学的に有用な薬剤に対して高い親和性を有する、実施態様12に記載の医療用装置。
【0133】
(16) 前記第2の種類のフィラメントは、生物医学的に有用な薬剤に対する高い溶解度を有するポリマー材料を含む、実施態様12に記載の医療用装置。
(17) 前記第2のポリマー材料は、少なくとも30重量%のポリカプロラクトンを含む、実施態様12に記載の医療用装置。
(18) 前記第1及び第2のポリマー材料は、PLA、PGA、PCL、PLGA、PP、PE、PDS又はそれらのモノマーの組み合わせもしくはコポリマーを含む、実施態様12に記載の医療用装置。
(19) 前記第1及び第2のポリマー材料のうちの一方が吸収性であり、他方が非吸収性である、実施態様12に記載の医療用装置。
(20) 前記フィラメントの集合体を包囲するコーティングをさらに含む、実施態様1に記載の医療用装置。
【0134】
(21) 前記コーティングは、前記生物医学的に有用な薬剤と相互作用する化合物を含有する、実施態様20に記載の医療用装置。
(22) 少なくとも2つの第2の種類のフィラメントを備える、実施態様1に記載の医療用装置。
(23) 前記少なくとも2つの第2の種類のフィラメントは、同じ生物医学的に有用な薬剤でコーティング又は含浸されている、実施態様22に記載の医療用装置。
(24) 前記医療用装置内の前記生物医学的に有用な薬剤の装填量を変更するために、第2の種類のフィラメントの数が変更される、実施態様23に記載の医療用装置。
(25) 前記少なくとも2つの第2の種類のフィラメントは、異なる生物医学的に有用な薬剤でコーティング又は含浸されており、前記薬剤は、任意選択で異なる放出プロファイルを有する、実施態様22に記載の医療用装置。
【0135】
(26) 前記少なくとも2つの第2の種類のフィラメントのうちの一方がグルコースでコーティング又は含浸され、他方がグルコース酸化酵素でコーティング又は含浸されている、実施態様22に記載の医療用装置。
(27) 前記少なくとも2つの第2の種類のフィラメントのうちの一方が酸性剤でコーティング又は含浸され、他方がアルカリ剤でコーティング又は含浸されている、実施態様22に記載の医療用装置。
(28) 前記少なくとも2つの第2の種類のフィラメントのうちの1つは前記生物医学的に有用な薬剤を強化するpH調整剤でコーティング又は含浸されている、実施態様22に記載の医療用装置。
(29) 埋植可能な医療用装置であって、
フィラメントの集合体であって、
第1のポリマー材料から形成された複数の第1の種類のフィラメントと、
少なくとも1つの第2の種類のフィラメントと、
少なくとも1つの第3の種類のフィラメントと、を含むフィラメントの集合体を備え、
前記第2の種類のフィラメントは、第1の生物医学的に有用な薬剤でコーティング又は含浸され、前記第3の種類のフィラメントは、前記第1の生物医学的に有用な薬剤とは異なる第2の生物医学的に有用な薬剤でコーティング又は含浸されている、
医療用装置。
(30) 前記第2の種類のフィラメントは第2のポリマー材料から形成されており、前記第3の種類のフィラメントは第3のポリマー材料から形成されている、実施態様29に記載の医療用装置。
【0136】
(31) 編組縫合糸又はメッシュである、実施態様29に記載の医療用装置。
(32) 前記第1の生物医学的に有用な薬剤は抗菌剤であり、前記第2の生物医学的に有用な薬剤は抗生物質である、実施態様29に記載の医療用装置。
(33) 前記第1の生物医学的に有用な薬剤はpH調整剤であり、前記第2の生物医学的に有用な薬剤は抗生物質である、実施態様29に記載の医療用装置。
(34) 前記第1の生物医学的に有用な薬剤は抗生物質であり、前記第2の生物医学的に有用な薬剤は、これとは異なる抗生物質である、実施態様29に記載の医療用装置。
(35) 前記第1の生物医学的に有用な薬剤はグラム陽性細菌に対して有用な抗生物質であり、前記第2の生物医学的に有用な薬剤はグラム陰性細菌に対して有用な抗生物質である、実施態様32に記載の医療用装置。
【0137】
(36) 少なくとも前記第2及び第3のポリマー材料は吸収性ポリマーである、実施態様29に記載の医療用装置。
(37) 少なくとも前記第2及び第3のポリマー材料は吸収性ポリマーであり、かつ異なる吸収プロファイルを有する、実施態様29に記載の医療用装置。
(38) 前記第1の生物医学的に有用な薬剤は、前記第2の生物医学的に有用な薬剤の放出プロファイルとは異なる放出プロファイルを有する、実施態様29に記載の医療用装置。
(39) 前記第1の生物医学的に有用な薬剤はグルコースであり、前記第2の生物医学的に有用な薬剤はグルコース酸化酵素である、実施態様29に記載の医療用装置。
(40) 前記第1の生物医学的に有用な薬剤は酸性剤であり、前記第2の生物医学的に有用な薬剤はアルカリ剤である、実施態様29に記載の医療用装置。
【0138】
(41) 前記第1の生物医学的に有用な薬剤はpH調整剤であり、前記第2の生物医学的に有用な薬剤は抗菌剤又は抗生物質剤である、実施態様29に記載の医療用装置。
(42) 前記編組縫合糸は、前記第1の種類のフィラメントのみを有する同等の編組縫合糸の機械的特性の10%以内の機械的特性を有する、実施態様31に記載の医療用装置。
(43) 前記編組縫合糸は、前記第1の種類のフィラメントのみを有する同等の編組縫合糸の機械的特性と実質的に同等の機械的特性を有する、実施態様31に記載の医療用装置。
(44) フィラメントの集合体を備える埋植可能な医療用装置を製造するための方法であって、
第1のポリマー材料から形成された複数の第1の種類のフィラメントを提供することと、
少なくとも1つの第2の種類のフィラメントを提供することと、
任意選択で少なくとも1つの第3の種類のフィラメントを提供することと、
前記第2の種類のフィラメント及び任意選択の第3の種類のフィラメントを、前記複数の第1の種類のフィラメントと組み合わせることと、
を含み、
前記第2の種類のフィラメント及び、存在する場合には前記第3の種類のフィラメントは、少なくとも1つの生物医学的に有用な薬剤でコーティング又は含浸されている、
方法。
(45) 前記第2の種類のフィラメント及び任意選択の第3の種類のフィラメントは、それらを前記複数の第1の種類のフィラメントと組み合わせる前に、前記生物医学的に有用な薬剤で予めコーティング又は含浸されている、実施態様44に記載の方法。
【0139】
(46) 前記医療用装置に熱処理及び/又は真空処理を施すことと、前記生物医学的に有用な薬剤を前記フィラメント内に再分配することとをさらに含む、実施態様45に記載の方法。
(47) 前記生物医学的に有用な薬剤はトリクロサンである、実施態様46に記載の方法。
(48) 前記熱処理及び/又は真空処理は滅菌処理の一部である、実施態様47に記載の方法。
(49) 前記第2の種類のフィラメントは第2のポリマー材料から形成されており、前記任意選択の第3の種類のフィラメントは第3のポリマー材料から形成されている、実施態様44に記載の方法。
(50) 前記生物医学的に有用な薬剤は、前記第2の種類のフィラメント及び前記任意選択の第3の種類のフィラメントを押し出す前に、前記第2のポリマー材料及び前記任意選択の第3のポリマー材料に配合される、実施態様49に記載の方法。
【0140】
(51) 前記生物医学的に有用な薬剤はグルコン酸クロルヘキシジンを含む、実施態様44に記載の方法。
(52) 前記生物医学的に有用な薬剤はグルコース酸化酵素である、実施態様44に記載の方法。
(53) 前記第2の種類のフィラメントは、前記生物医学的に有用な薬剤に対して高い親和性を有し、前記生物医学的に有用な薬剤を含む環境に前記医療用装置をさらすことをさらに含む、実施態様44に記載の方法。
(54) 前記第2の種類のフィラメントは少なくとも約30重量%のポリカプロラクトンを含み、前記生物医学的に有用な薬剤はトリクロサンであり、前記トリクロサンは前記第2の種類のフィラメント内に優先的に濃縮される、実施態様53に記載の方法。
(55) 前記医療用装置に熱処理及び/又は真空処理を施すことと、前記フィラメント内に前記トリクロサンを再分配することとをさらに含む、実施態様53に記載の方法。
【0141】
(56) 前記第2の種類のフィラメントを、前記生物医学的に有用な薬剤でコーティング又は含浸する前に、熱い水溶液中で又は照射により前処理することをさらに含む、実施態様53に記載の方法。
(57) 前記医療用装置は縫合糸である、実施態様44に記載の方法。
(58) 前記医療用装置はメッシュである、実施態様44に記載の方法。
(59) 前記医療用装置は、編組された又は撚り合わされた縫合糸である、実施態様44に記載の方法。
(60) 外科手術において実施態様1に記載の医療用装置を埋植する方法。
【0142】
(61) 前記外科手術は組織修復である、実施態様60に記載の方法。
(62) 前記外科手術は組織強化である、実施態様60に記載の方法。
(63) 前記外科手術は縫合である、実施態様60に記載の方法。
図1
図2
図3