(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】研削装置
(51)【国際特許分類】
B24B 3/54 20060101AFI20220711BHJP
B24B 3/36 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
B24B3/54
B24B3/36 F
(21)【出願番号】P 2019563693
(86)(22)【出願日】2018-01-26
(86)【国際出願番号】 FR2018050178
(87)【国際公開番号】W WO2018142046
(87)【国際公開日】2018-08-09
【審査請求日】2020-11-26
(32)【優先日】2017-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】519283440
【氏名又は名称】ソゲスト
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ゴーネイ ヤン ルーク
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/148878(WO,A1)
【文献】米国特許第06113476(US,A)
【文献】特開2001-009684(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0170941(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 3/00-3/60
B24B 9/00
B24B 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削工具のブレード(2)を研削する装置(1)であって、
少なくとも2つの可撓性ディスク(3)であって、各々が研磨用内面(3a)を有し、対向する研磨用内面(3a)と並び、同方向に同じ速度で同一の軸(4)を中心に回転するように取り付けられている、少なくとも2つの可撓性ディスク(3)、を備える研削装置(1)であり、
外側に配置される押圧手段(5)であって、非直径方向の弦に沿って前記可撓性ディスク(3)を把持する、押圧手段(5)と、
前記可撓性ディスク(3)のそれぞれの内側にある内部手段(6)であって、弦によって画定された部分であって前記軸(4)が貫通していない部分内において、前記可撓性ディスク(3)の前記研磨用内面(3a)に支圧をかけ、前記押圧手段(5)に対する前記内部手段(6)の位置の選択に応じて研削角(α)を決定する、内部手段(6)と、
を備えていることを特徴とする、研削装置(1)。
【請求項2】
前記押圧手段(5)は、一列に並んだ担持用ボール(51)で構成されていることを特徴とする、請求項1記載の研削装置(1)。
【請求項3】
前記押圧手段(5)は、互いに対向するように位置し、前記可撓性ディスク(3)に接触して配置されている摺動手段に連動している、極性が逆の2つの磁石で構成されている、ことを特徴とする、請求項1記載の研削装置(1)。
【請求項4】
前記押圧手段(5)は、セラミック製または鋼製の半月形の棒材で構成されている、ことを特徴とする、請求項1記載の研削装置(1)。
【請求項5】
前記研磨用内面(3a)は、前記可撓性ディスク(3)上に両面使用可能に取り付けられ固定されている研磨用ディスク(7)で構成されている、ことを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の研削装置(1)。
【請求項6】
前記研磨用ディスク(7)は、ベルベットフック型の固定機構によって前記可撓性ディスク(3)に固定されていることを特徴とする、請求項
5に記載の研削装置(1)。
【請求項7】
前記可撓性ディスク(3)の前記研磨用内面(3a)に支圧をかける前記内部手段(6)は、弦によって画定された部分であって前記可撓性ディスク(3)の各々の前記軸(4)が貫通していない部分の周囲を転動するように意図されるボールスペーサで構成されていることを特徴とする、請求項1記載の研削装置(1)。
【請求項8】
前記研削装置(1)は、その上部に、階段形状の脱着可能なブレードガイド(8)が設けられており、前記ブレードガイド(8)は、弦によって画定された部分であって前記2つの可撓性ディスク(3)の前記軸(4)が貫通していない部分同士の間に位置することが可能であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の研削装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、刃物、特にナイフを研削する装置の分野に関する。
周知の方法において、ブレードの研削が可能な機械が多数存在している。これらの機械は、一般的には、回転式研磨ストリップまたは回転式円形研磨石を有する砥石車機構を有しており、回転して研削される刃面のどちらか片側に接触する。
【0002】
実際には、研削作業を行うために、作業者は、研削されるブレードの2つの面の1つずつを、研磨ストリップまたは円形研磨石に交互に押し当てる。
これらの機構においては、片側の研削後にもう片側を研磨するためにはブレードを裏返す必要があるという難点があり、この動作は、作業者に対し、ある程度熟練していてブレードを直角に保てるある程度の経験があり、かつ、所望の研削形状が得られることを要求する。
【0003】
この問題を解決するために、交差する2つの研磨ストリップまたは円形研磨石を有する研削機械が製造されてきた。この両側研磨機構を用いると、ブレードは、2つの研磨ストリップまたは2つの研磨石の間に位置決めされることになり、それぞれに対向する面の同時研削を可能にする。
【0004】
しかしながら、これらの機構においては、そのブレードに望まれる用途に見合う適切なブレードの角度が得られるようにするためにはその作業者の特別に機敏な動作を必要とする、という難点がある。
【0005】
この問題を解決するために、研削作業中にブレードを挟み込んで保持することを可能にするブレードガイド機構が使用されている。これらの機構は、両側研磨ストリップまたは研磨石の上流側に位置している。
【0006】
それでも、従来技術から既知の研削機械は、完全に満足できるものではない。
実際のところ、機械の使用者にとっては研削時間は長く、1~3分程度かかる。さらに、研削角の精度には、当初の角度に対する誤差のリスクが含まれており、その値は10~25%になる可能性がある。これは、研削されるブレードの使用者にとって、まだ高すぎる値である。
【0007】
既存のブレード研削装置に対し、上述の難点がなく、容易な研削、高速での実行、及び既存の装置よりも優れた品質と研削角精度が実現可能である、別の解決法を見出さなくてはならない。
【0008】
本発明は、これらの従来技術の難点を、ナイフ型などの切削工具のブレードを研削する装置を提案することによって補うことを目的とする。
本装置は、少なくとも2つの可撓性ディスクであって、各々が研磨用内面を有し、対向する研磨面と並び、同方向に同じ速度で同一の軸を中心に回転するように取り付けられている、少なくとも2つの可撓性ディスクと、外側に配置され、前記ディスクを非直径方向の弦に沿って把持する、押圧手段と、前記ディスクのそれぞれの内側にある手段であって、弦によって画定された部分であって軸が貫通していない部分内において、ディスクの内面に支圧をかけ、前記押圧手段に対する内部手段の位置の選択に応じて研削角を決定する、内部手段と、を備えている。
【0009】
さらに、本発明の他の特徴によれば、
・前記押圧手段は、一列に並んだ担持用ボールで構成される。
・前記押圧手段は、互いに対向するように位置し、前記可撓性ディスクに接触して配置される摺動手段に連動する、極性が逆の2つの磁石で構成される。
【0010】
・前記研磨用内面は、前記可撓性ディスクに両面使用可能に取り付けられ固定される研磨用ディスクで構成される。
・前記研磨用ディスクは、ベルベットフック型の固定機構を介して前記可撓性ディスクに固定される。
【0011】
・前記ディスクの前記内面に支圧をかける前記内部手段は、弦によって画定された部分であって前記可撓性ディスクの各々の軸が貫通していない部分の周囲を転動するように意図されるボールスペーサで構成される。
【0012】
有利には、本発明によれば、本装置は、その上部に、階段形状の脱着可能なブレードガイドが設けられており、ブレードガイドは、弦によって画定され、2つの可撓性ディスクの軸が貫通していない2つの部品同士の間に配置されることが可能である。
【0013】
本発明の他の特徴及び利点は、以下に続く、これに限定されない本発明の実施形態の、添付の図面を参照とする詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の研削装置の概観断面図を模式的に示している。
【
図2】
図2は、可撓性ディスクの外面の正面図を模式的に示している。
【
図3A】
図3A及び3Bは、可撓性ディスクの内面の図を、研磨手段を支持する接着手段のある状態とない状態をそれぞれ模式的に示している。
【
図3B】
図3A及び3Bは、可撓性ディスクの内面の図を、研磨手段を支持する接着手段のある状態とない状態をそれぞれ模式的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明はブレード2用の研削装置1に関する。
対象となるブレード2はナイフ型などであり、例えば包丁や外科用メスである。
図1に示されているように、本発明の装置1は2つの可撓性ディスク3を備えている。
【0016】
有利には、可撓性ディスク3は、プラスチック、厚紙、可撓性鋼材等の材料からなる。
本発明によれば、
図3A及び
図3Bに示されているように、各可撓性ディスク3は内面3a及び外面3bを有している。
【0017】
内面3aは研磨用であり、ブレード2を研削する機能を有する。
本発明のある好適な実施形態によれば、内面3aは例えば、可撓性ディスク3に両面使用可能に取り付けられ固定されている研磨用ディスク7で構成されている。
【0018】
好ましくは、研磨用ディスク7においては、粒径が8~5000nmである。
好ましくは、研磨用ディスク7も可撓性であり、ベルベットフック型の固定機構を介して可撓性ディスク3に固定されている。
【0019】
しかしながら、従来技術から既知である他の任意の両面使用可能な固定手段、例えば両面接着剤、プルタブ式機構、押しボタン式機構、または磁石式機構といった手段も使用可能である。
【0020】
図1に示されているように、2つの可撓性ディスク3は互いに並んでおり、それぞれの研磨面が互いに対向するように取り付けられている。
本発明によれば、可撓性ディスク3は、同一の軸4を中心にして回転するように取り付けられている。
【0021】
第1実施形態によれば、2つの可撓性ディスク3は、モータによって回転する同一の車軸4上で固定されて取り付けられている。
第2実施形態によれば、図示されてはいないが、可撓性ディスク3はそれぞれが、モータによって回転する軸の端部に取り付けられている。2本の軸は同軸とされ、1つのモータ手段または同期されている数個のモータ手段によって、同方向に同じ速度で駆動されている。
【0022】
上述の実施形態にかかわらず、本発明に係る装置1の動作中、モータ手段を作動させると、可撓性ディスク3は、同方向に同じ速度で共に回転するが、それぞれの内側研磨面は互いに並んでいる状態である。
【0023】
本発明によれば、研削装置はまた、外側に配置される押圧手段であって、可撓性ディスク3の外面3bと直接的に協働するする押圧手段5を備えている。
この押圧手段5は、
図2に示されているように、可撓性ディスク3の直径方向に延びてはいない弦に沿って一直線に並んでおり、それらの間で少なくとも2つの可撓性ディスク3を把持する。
【0024】
つまり、一直線に並んだ押圧手段5が、可撓性ディスク3上で弦を画定する。この弦は軸4を通ってはいない。
図1及び
図2で可視化されている、ある保護された実施形態によれば、押圧手段5は、一列に並んだ担持用ボール51で構成されている。
【0025】
装置1の動作中、可撓性ディスク3が回転可能である場合、担持用ボール51によって、2つのディスク3が直線に沿って確実に挟み込まれることになり、それぞれのディスクが可能な回転により減摩の機能が働く。
【0026】
別の実施形態によれば、図示されてはいないが、押圧手段5は、極性が逆の2つの磁石で構成されている。2つの磁石は、互いに対向するように配置され、可撓性ディスク3に接触して配置されている摺動手段に連動する。
【0027】
さらに別の実施形態によれば、図示されてはいないが、押圧手段5は、例えばセラミック製または鋼製の半月形の2つの単一棒で構成されている。
さらに別の実施形態によれば、図示されてはいないが、押圧手段5は、空圧システムで構成されている。
【0028】
研削装置1はまた、可撓性ディスク3の各内面3aに支圧をかける内部手段6も備えている。各ディスク3の内部手段6は、
図1及び
図3Aに示されているように、ディスク3のうち、弦によって画定された部分であって軸4が貫通していない部分30内での支圧によって作用している。
【0029】
つまり、この内部手段6は、可撓性ディスク3の各内面3aに支圧をかけることによって、互いに並んでいる両ディスク3の間隔を生じさせている。内部手段6が押圧手段5に対してディスクのどの位置に支圧をかけるかに応じて、
図1に示されているような研削角αが決定される。
【0030】
両ディスク3の間隔によって画定された空間内には、ブレード2が、回転している2つの可撓性ディスク3の間に位置するように導入される。したがって、角αはブレードの特徴2に応じて決定される角度であり、研削作業中、このブレード2の研削を可能にする角度である。
【0031】
ある特定の実施形態によれば、ディスク3の内面3aに支圧をかける内部手段6は、
図3A及び
図3Bに示されているように、ボールスペーサで構成されている。ボールスペーサは、弦によって画定された部分であって可撓性ディスク3の各々の軸が貫通していない部分の周囲を転動するように意図されている。
【0032】
この実施形態では、研削作業中、可撓性ディスク3が回転している間、スペーサの各ボールは、互いに並んでいる2つのディスク3の内面3aに接触して転動することによって、ディスク同士の間隔が空いている状態を維持して、研削されるブレード2の経路を残す。この経路が研削角に相当する。
【0033】
ブレード2を研削角内へと導入しやすくするために、装置1にはその上部に、脱着可能なブレードガイド8、好ましくは
図1に示されているような階段形状のブレードガイドが設けられていることが有利である。
【0034】
このブレードガイド8は、2つの可撓性ディスク3の各々の部分3aの間に配置されることができる。つまり、
図1に示されているように、ブレードガイド8は研削角の角度で位置している。
【0035】
ある特定の実施形態によれば、本発明に係る装置1は、2組の可撓性ディスク3を有し、2組の可撓性ディスク3は、同一のモータによって順に作動する車軸4に各々が接続されている。これにより、2つのブレードの研削を、同じ装置で同時に行うことができる。
【0036】
本発明は、ブレードの研削であって、精密な角度での望まれる研削が容易に行えるという利点を有する。より詳細には、本発明に係る装置1を用いることによって、
・研削角の精度を高めて、その角度誤差のリスクが最大でも0.1~0.2%である
・研削速度を速めて、研削時間が、従来技術の装置では2~3分であるのに対して、約15~20秒と高速化する
・研削されたブレードの鋭利度を保持できる期間を長くする
・研削されたブレードの両面で同等かつ等角度を有する
ことが可能になる。
【0037】
本発明に係る装置1の他の利点は、装置1の研削角の範囲内にブレードの位置を決めるために作業者が特別な努力をする必要がないという使いやすさで成り立っている。研削角は内部手段6に対する押圧手段5の位置を決めることによって形成されているので、研削されるブレード2の両面を並行して同時に研削した結果、従来技術の装置で得られたものと比較して、より高い研削品質と研削角精度が得られる。
【0038】
したがって、研削作業を行うのが専門の訓練を受けた者でない使用者だとしても、装置1を用いることによって得られたブレード2は、従来技術で得られたブレードと比較して切れ味の品質やその維持期間において優れている。