(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】並列運転電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20220711BHJP
【FI】
H02M3/28 W
(21)【出願番号】P 2020127602
(22)【出願日】2020-07-28
【審査請求日】2021-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000144393
【氏名又は名称】株式会社三社電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三宅 剛洋
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-128668(JP,A)
【文献】特開平11-004579(JP,A)
【文献】特開平10-304663(JP,A)
【文献】特開平10-271823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列接続した3台の電力制御装置を備え、前記3台の電力制御装置の出力電流を合流させて負荷に供給する並列運転電源装置において、
前記各電力制御装置は、出力電圧が予め設定した基準電圧となるように電流制御指令値を生成して出力電流の制御を行うフィードバック制御回路を備え、
前記3台の電力制御装置のそれぞれの出力電流のバランスを検出し、それらの出力電流の不平衡の大きさに応じて前記電流制御指令値を補正する出力電流バランス部と、
前記3台の電力制御装置のそれぞれの入力電圧のバランスを検出し、それらの入力電圧の不平衡の大きさに応じて前記電流制御指令値を補正する入力電圧バランス部と、
を備える、並列運転電源装置。
【請求項2】
前記出力電流バランス部により補正した前記電流制御指令値を、前記入力電圧バランス部によりさらに補正する請求項1記載の並列運転電源装置。
【請求項3】
前記出力電流バランス部は、前記3台の電力制御装置の各電流制御指令値をアナログ的に平均して同一の値となるように接続する接続ラインで構成した、請求項1または2記載の並列運転電源装置。
【請求項4】
前記入力電圧バランス
部は、前記3台の電力制御装置のそれぞれの入力電圧を判定し、入力電圧が他のどの電力制御装置の入力電圧より小さく変化したとき前記電流制御指令値をその値が小さくなるように補正し、入力電圧が少なくとも一つの他の電力制御装置より大きく変化したとき前記電流制御指令値を補正しない、請求項1~3のいずれかに記載の並列運転電源装置。
【請求項5】
前記3台の電力制御装置のそれぞれの入力端子は3相電源のΔ結線端子またはY結線端子に接続される、請求項1~4のいずれかに記載の並列運転電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、特に3相電源と直流負荷の間に3台の電力制御装置(電源制御装置)を並列接続して並列運転を行う並列運転電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
3相電源により直流負荷を駆動する場合、3相電源にAC-DC変換を行う3台の電力制御装置を接続する。各電力制御装置は、出力電圧が所定の電圧となるように出力電流をフィードバック回路で制御し、各電力制御装置の出力電流を合流させて負荷に供給する。
【0003】
このような3台の電力制御装置を並列接続する電源装置では、各電力制御装置の出力電流制御が独立して行われるため、それらの電流バランスが崩れる可能性がある。3相電源が中性点端子のない3相3線Y結線の場合は、特にその現象が生じやすい。電流バランスが崩れると、出力電圧が乱れ安定した電源制御を出来なくなる。また、出力電流の電流バランスが平衡していても、3相の各入力電圧のバランスが崩れる場合もある。この現象が生じる主たる原因は、部品バラつきのために各電力制御装置が全く同一の特性にならないからである。
【0004】
そこで、電力制御装置の出力電流のバランスの安定化に寄与する各種方法が提案されている。例えば、入力側に設けられている力率改善回路(PFC回路)の入力部の平滑コイルに直列にコモンモードチョークコイルを接続し、このコイルによりコモンモードノイズを抑制する。これにより、入力側の電位安定を図り、出力電流のバランスが崩れることを防止する(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、出力電流のバランスが崩れる原因は、コモンモードノイズに限らない。また、出力電流のバランスを安定化できたとしても入力電圧のバランスの安定化を保証するものではない。出力電流と入力電圧のバランスの安定化を妨げる最大の要因は、各電力制御装置の特性が完全に一致していないことにある。
【0007】
出力電流のバランスが崩れるときの電力制御装置の動作は以下のようになる。
【0008】
通常時は、各電力制御装置において出力電圧を一定値にする制御のためのフィードバック回路が同じように動作し、各フィードバック回路での電流制御指令値の大きさと応答性は同じである。ところが、各電力制御装置の部品のバラつきなどを原因として、いずれかの相で同指令値の応答遅れが生じたり、スイッチングコンバータの動作に差が生じると、出力電流にバラツキが生じる。
【0009】
また、入力電圧のバランスが崩れるときの電力制御装置の動作は以下のようになる。
【0010】
通常時は、各電力制御装置の入力側に設けられている力率改善回路(PFC回路)のスイッチング動作が同じ特性で行われ、その出力側に接続されているコンデンサ電圧もリップル位相のずれを除いて各相で同じように変動する。ところが、各電力制御装置の部品のバラつきなどを原因として、ある瞬間にいずれかの相の電力制御装置に対する入力電流が増大または減少することがある。すると、各相の入力電流が不平衡となり、入力電圧も不平衡となりバランスが崩れてしまう。さらに、このような入力電圧の不平衡は拡大する方向に進む。この状態で、いずれかの相の入力電圧が一定電圧を超えてしまうと出力電圧が異常に上昇し、保護手段により入力側に設けられた保護リレーが開放状態となって装置が停止してしまう。
【0011】
そこで、この発明は、入力電圧と出力電流のバランスを保持することができる並列運転電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明の並列運転電源装置は、並列接続した3台の電力制御装置を備え、前記3台の電力制御装置の出力電流を合流させて負荷に供給する並列運転電源装置において、
前記各電力制御装置は、出力電圧が予め設定した基準電圧となるように電流制御指令値を生成して出力電流の制御を行うフィードバック制御回路を備え、
前記3台の電力制御装置のそれぞれの出力電流のバランスを検出し、それらの出力電流の不平衡の大きさに応じて前記電流制御指令値を補正する出力電流バランス部と、
前記3台の電力制御装置のそれぞれの入力電圧のバランスを検出し、それらの入力電圧の不平衡の大きさに応じて前記電流制御指令値を補正する入力電圧バランス部と、
を備える。
【0013】
前記電流制御指令値の補正は、出力電流バランス部と入力電圧バランス部とによって二重に行われる。それぞれの補正は、電流制御指令値に対して同時に行っても良いし、出力電流バランス部により補正した電流制御指令値を、入力電圧バランス部によりさらに補正するようにしても良い。
【0014】
前記出力電流バランス部は、前記3台の電力制御装置の各電流制御指令値をアナログ的に平均して同一の値となるように接続する接続ラインで構成する。このような構成では、電力制御装置による電流制御指令値は常にアナログ的に平均化され、同一の値である。このため、いずれかの電力制御装置の電流制御値だけが大きく変化することはなく、制御遅れを生じることもない。結果として全体の電流制御バランスが高精度に安定化される。
【0015】
前記入力電圧バランス回路は、前記3台の電力制御装置のそれぞれの入力電圧を判定し、入力電圧が他のどの電力制御装置の入力電圧よりも小さくなるように変化したとき前記電流制御指令値をその値が小さくなるように補正し、入力電圧が少なくとも他の一つの電力制御装置の入力電圧より大きくなるように変化したときは前記電流制御指令値を補正しない。このような構成では、電力制御装置の入力側インピーダンスの僅かな不平衡を原因として、いずれかの相(第1相と称する)の電力制御装置の入力電流が増えると、それに伴い第1相の入力電圧が減少する。そのとき、入力電圧バランス回路は第1相の電流制御指令値が小さくなるように制御する。第1相において、電流制御指令値が小さくなると、出力電流が小さくなることから入力電流も減少する方向となる。その結果、第1相の入力電圧が大きくなる。したがって、入力電圧の変動が抑制されることとなり、入力電圧のバランスが保持される。
【0016】
なお、負荷に変化はないから、合成された出力電流の大きさは一定である。このため、上記の制御によって第1相の電力制御装置の出力電流が減少すると、他の相の電力制御装置の出力電流が増大しようとする。しかし、出力電流のバランスは、前記出力電流バランス部によって保持されるから、結局、出力電流の変動も抑制される。
【0017】
このようにして、各電力制御装置の部品のバラつきなどがあっても、出力電流と入力電圧のバランスが高精度に安定化される。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、3台の電力制御装置のそれぞれの出力電流バランス部と入力電圧バランス部との相乗作用により、出力電流と入力電圧のバランスが高精度に安定化される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態の並列運転電源装置の構成図を示す。
【
図2】電力制御装置1R、1S、1Tの結線図を示す。
【
図4】フィードバック制御回路14Rの回路図である。
【
図5】電力制御装置1R、1S、1Tの入力側の各要素(電流、電圧等)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の実施形態の3相並列運転電源装置の結線図を示す。
【0021】
この3相並列運転電源装置は、3台の電力制御装置(以下、モジュールと称する)1R、1S、1Tを含み、
図2のように中性点接続端子のないY結線接続される。入力電源は、AC400V系の中性点端子のないY結線の3相電源2である。
【0022】
図1のように、Y結線接続された3台のモジュール1R、1S、1Tは、その入力端子が、Y結線の3相電源2のRST電源端子(Y結線端子)に対し接続される。すなわち、3相電源2のR端子はモジュール1Rの入力側の端子TB1に接続される。3相電源2のS端子はモジュール1Sの入力側の端子TB3に接続される。3相電源2のT端子はモジュール1Tの入力側の端子TB5に接続される。
【0023】
モジュール1Rの入力側の端子TB2、モジュール1Sの入力側の端子TB4、モジュール1Tの入力側の端子TB6は中性点として接続される。
【0024】
モジュール1R、1S、1Tの出力は並列接続して出力電流を合流し、負荷6に供給する。すなわち、モジュール1Rの出力側の端子TB7と、モジュール1Sの出力側の端子TB9と、モジュール1Tの出力側の端子TB11とが出力電流端子Pに接続される。また、モジュール1Rの出力側の端子TB8と、モジュール1Sの出力側の端子TB10と、モジュール1Tの出力側の端子TB12とが出力電流端子Nに接続される。負荷6は、出力電流端子P、N間に接続される。
【0025】
モジュール1R、1S、1Tのそれぞれは同じ構成であるため、以下、モジュール1Rの構成を説明する。
【0026】
モジュール1Rは、リレー接点を有するRY部10Rと、整流回路を含む力率改善コンバータ部11Rと、力率改善コンバータ部11Rの出力側に接続されるコンデンサ12Rと、DC-DCコンバータ部13Rと、フィードバック制御回路14Rと、入力電圧バランス部15Rとを備える。
【0027】
RY部10Rは、モジュール1R、1S、1Tの入力電圧が不平衡となって、その状態が一定の水準を超えたときにリレー接点をオフしてモジュール1Rの動作を停止させる。例えば、入力電圧が不平衡となって、モジュール1Rにおいて、コンデンサ12Rの充電電圧が過充電になると、これを検出してリレー接点をオフする。
【0028】
力率改善コンバータ部11Rは、入力電流をスイッチング回路により整形することで入力電流と入力電圧の位相を同位相として力率を良くする。
【0029】
コンデンサ12Rは、力率改善コンバータ部11Rの出力を充電し、このコンデンサ12Rの充電電圧により、後段に接続されるDC-DCコンバータ部13Rを駆動する。
【0030】
DC-DCコンバータ部13Rは、コンデンサ12Rの電圧をDC-DC変換して出力する。DC-DCコンバータ部13Rの出力側には、出力電流Ioを検出する出力電流検出器3Rと、出力電圧Voを検出する出力電圧検出器4Rとを備えている。
【0031】
フィードバック制御回路14Rは、DC-DCコンバータ部13Rに接続され、出力電流Ioと出力電圧Voが入力される。フィードバック制御回路14Rは、出力電流Ioと出力電圧Voに基づいて、出力電圧Voが予め設定した基準電圧となるように電流制御指令値を生成する。この電流制御指令値は、フィードバック制御回路14R内の出力電流バランス部と入力電圧バランス部15Rとによって補正される。DC-DCコンバータ部13Rのスイッチング素子は、この補正された電流制御指令値と出力電流Ioとの誤差がなくなるように制御される。
【0032】
入力電圧バランス部15Rは、モジュール1R、1S、1Tの入力電圧のバランスを検出する。
図3は、入力電圧バランス部15Rの概略構成図である。入力電圧バランス部15Rは、R相の入力電圧VIN1_DETと、S相の入力電圧VIN2_DETと、T相の入力電圧VIN3_DETの大小を比較し、R相の入力電圧VIN1_DETが入力電圧VIN2_DETと入力電圧VIN3_DETより大きいか小さいかを判定する。入力電圧VIN1_DETが入力電圧VIN2_DETと入力電圧VIN3_DETのどちらよりも小さい場合は、その大きさに応じた出力電流補正値Vi_CORをフィードバック制御回路14Rに出力する。なお、モジュール1S内の入力電圧バランス部15Sと、モジュール1T内の入力電圧バランス部15Tも同様に、R相の入力電圧VIN1_DETと、S相の入力電圧VIN2_DETと、T相の入力電圧VIN3_DETの大小を判定し、出力電流補正値Vi_CORをフィードバック制御回路14S、フィードバック制御回路14Tに出力する。
【0033】
フィードバック制御回路14Rは、出力端子aを備え、接続ライン5がこの出力端子aに接続されている。同様に、モジュール1Sのフィードバック制御回路14Sは、出力端子bを備え、接続ライン5がこの出力端子bに接続されている。同様に、モジュール1Tのフィードバック制御回路14Tは、出力端子cを備え、接続ライン5がこの出力端子cに接続されている。
【0034】
この接続ライン5は、本発明の出力電流バランス部に相当し、後述のように、出力電流バランスが崩れると電流制御指令値を補正する。
【0035】
図4は、モジュール1R、1S、1T内に設けられているフィードバック制御回路14R、14S、14Tの回路図である。なお、モジュール1S、1T内に設けられているフィードバック制御回路14S、14Tは、フィードバック制御回路14Rと同じ構成であるため、以下、フィードバック制御回路14Rについてのみ説明する。
【0036】
フィードバック制御回路14Rは、3相並列運転電源装置の出力電圧Voが予め設定した基準電圧VREFとなるようにフィードバック制御を行う。フィードバック制御回路14Rは、電流制御指令値回路120RとPWM制御回路130Rとを備える。なお、フィードバック制御回路14Sは、電流制御指令値回路120SとPWM制御回路130Sとを備え、フィードバック制御回路14Tは、電流制御指令値回路120TとPWM制御回路130Tとを備えている。
【0037】
電流制御指令値回路120Rは、前記基準電圧VREFと前記出力電圧Voとの差に対応する電圧を前記出力電流Ioに対する電流制御指令値として出力する。この電流制御指令値は、出力電流バランス部を構成する接続ライン5によって補正され、また、後述するように、入力電圧バランス部15Rによっても補正される。
【0038】
PWM制御回路130Rは、補正された電流制御指令値と出力電流Ioの差から電流制御値を演算し、これに基づいてスイッチング素子を駆動するPWM信号を生成する。
【0039】
電流制御指令値回路120Rは、基準電圧VREF設定部120と、第1エラー検出部121と、第1ゲイン制御部122と、抵抗分圧回路123と、第2エラー検出部124とを備える。
【0040】
PWM制御回路130Rは、第3エラー検出部130と、第2ゲイン制御部131と、PWM制御部132と、鋸歯状波発生回路133と、スイッチング制御部134とを備える。
【0041】
電流制御指令値回路120Rにおいて、第1エラー検出部121は、出力電圧検出器4Rで検出した出力電圧Voに対応する電圧と基準電圧VREFとを比較し、その差電圧を検出する。第1ゲイン制御部122は、前記差電圧を適切なゲインで増幅し、Vi_REF_1として出力する。
【0042】
抵抗分圧回路123は、前記Vi_REF_1を抵抗RaとRbで分圧する。この分圧した電圧は補正前の電流制御指令値に対応したものとなる。モジュール1S、1Tのフィードバック制御回路14S、14Tにおいても同様にVi_REF_2、Vi_REF_3を抵抗RaとRbで分圧する。この分圧した電圧は、モジュール1R、1S、1Tそれぞれにおいて出力され、これらが接続ライン5によって、アナログ的に平均化される(補正される)。すなわち、モジュール1R、1S、1Tの第1エラー検出部121から出力される電流制御指令値(に対応する電圧)は、平均化されて(補正されて)Vi_REF_AVEとして出力される。
【0043】
第2エラー検出部124は、Vi_REF_AVEと入力電圧バランス部15Rからの出力電流補正値Vi_CORとの差電圧を検出し、接続ライン5で平均化された(補正された)電圧(電流制御指令値)Vi_REF_AVEを出力電流補正値Vi_CORによってさらに補正する。出力電流補正値Vi_CORは、
図3に示すように、入力電圧バランス部15Rにおいて、入力電圧VIN1_DET、VIN2_DET、VIN3_DETの大小の演算結果に基づいて得られる。
【0044】
PWM制御回路130Rにおいて、第3エラー検出部130は、電流制御指令値回路120Rから出力される電流制御指令値と、出力電流検出器3Rで検出した出力電流Ioに対応する電圧Vi_DETとを比較し、その差電圧を検出する。第2ゲイン制御部131は、前記差電圧を適切なゲインで増幅し、電流制御値Vi_Cとして出力する。
【0045】
電流制御値Vi_Cは、PWM制御部132に出力される。PWM制御部132には、鋸歯状波発生回路133から鋸歯状波が入力する。PWM制御部132は、前記電流制御値Vi_Cと前記鋸歯状波とを比較してPWM制御信号を出力する。スイッチング制御部134は、前記PWM制御信号に応じてDC-DCコンバータ部13Rのスイッチング素子のスイッチング周波数を変動させる。
【0046】
以上のフィードバック制御回路14Rは以下のように動作する。
【0047】
(1)入力電圧が平衡状態で出力電流が変動する時
出力電流Ioが変動し、出力電圧Voが基準電圧VREFから下降すると、第2ゲイン制御部131の出力である電流制御値Vi_Cが大きくなり、出力電流Ioを大きくするようにPWM制御信号が制御される。出力電流Ioが大きくなると負荷に加わる出力電圧Voが上昇しようとする。また、出力電圧Voが基準電圧VREFから上昇すると、第2ゲイン制御部131の出力である電流制御値Vi_Cが小さくなり、出力電流Ioを小さくするようにPWM制御信号が制御される。出力電流Ioが小さくなると負荷に加わる出力電圧Voが下降しようとする。このようにして、モジュール1Rにおいては、フィードバック制御回路14Rによる出力電圧が基準電圧VREFに安定するように動作する。モジュール1S、モジュール1Tにおいても同様に動作する。
【0048】
(2)入力電圧が平衡状態で出力電流が不平衡状態になろうとする時
一方、上記(1)の動作は各モジュールで個別に行われるため、モジュール間の動作がアンバランスとなると、各モジュールの出力電流が不平衡となる状態に遷移しようとする。このとき、端子a、端子b、端子cの電流制御指令値の大きさにも差が生じようとする。しかし、端子a、b、cは接続ライン5で接続されているため、結局、これらの電圧はアナログ的に平均化されて、端子aの電圧=端子bの電圧=端子cの電圧となり、この電圧は数1、数2の式で求められる電圧Vi_REF_AVEとなる。
【0049】
【0050】
【0051】
上記数1において、n=3となるから、Vi_REF_AVEは、数2で求められる。この式では、Vi_REF_1、Vi_REF_2、Vi_REF_3が平均化されてVi_REF_AVEとなり、フィードバック制御回路14R、14S、14Tの電流制御指令値に対応する抵抗分圧電圧は同一の値である。つまり、電力制御装置1R、1S、1Tのいずれかの出力電圧が基準電圧VREFから増加しようとしたときでも、逆に減少しようとしたときでも、フィードバック制御回路14R、14S、14Tの電流制御指令値は常に同じように変化し、常に同じ値を維持している。そして、電流制御指令値の変化量は、Vi_REF_1、Vi_REF_2、Vi_REF_3を平均化した値に対応している。結果として、いずれかのモジュール1R、1S、1Tの出力電流が変化しようとしても、そのモジュールの電流制御指令値は大きく変化せず、且つ、3つのモジュール1R、1S、1Tの電流制御指令値は同一値を維持するから、モジュール1R、1S、1Tからそれぞれ出力される電流バランスは安定する。
【0052】
(3)入力電圧が不平衡状態になろうとする時
入力電圧は入力電圧バランス部15Rによって、そのバランスが検出される。すなわち、入力電圧バランス部15Rは、R相の入力電圧VIN1_DETと、S相の入力電圧VIN2_DETと、T相の入力電圧VIN3_DETの大小を比較し、R相の入力電圧VIN1_DETがVIN2_DETとVIN3_DETのどちらよりも小さいときに、その大きさに応じた出力電流補正値Vi_CORをフィードバック制御回路14Rに出力する。VIN1_DETがVIN2_DETかVIN3_DETの少なくともどちらか一方よりも大きいときは、Vi_COR=0Vを出力する。なお、モジュール1S内の入力電圧バランス部15Sと、モジュール1T内の入力電圧バランス部15Tも同様に、R相の入力電圧VIN1_DETと、S相の入力電圧VIN2_DETと、T相の入力電圧VIN3_DETとの大小を比較し、その大きさに応じた、出力電流補正値Vi_CORをフィードバック制御回路14S、フィードバック制御回路14Tに出力する。
【0053】
フィードバック制御回路14Rでは、第2エラー検出部124に出力電流補正値Vi_CORが入力し、第2エラー検出部124では、出力電流補正値Vi_CORと抵抗分圧回路123の出力の電圧Vi_REF_AVEとの差を検出する。
【0054】
すなわち、電流制御指令値である電圧Vi_REF_AVEが、出力電流補正値Vi_CORによって補正される。
【0055】
入力電圧バランス部15Rは、R相の入力電圧VIN1_DETがVIN2_DETとVIN3_DETのどちらよりも小さくなると、出力電流補正値Vi_CORを正の値にする。そのとき、第2エラー検出部124の出力は小さくなるため、電流制御指令値回路120Rから出力される電流制御指令値は小さくなり、モジュール1Rの出力電流Ioが小さくなる。後述のように、出力電流Ioが小さくなれば、モジュール1Rの入力電圧が上昇する。その結果、入力電圧が小さくなっても、元の入力電圧に戻ろうとする。
【0056】
また、入力電圧バランス部15Rは、R相の入力電圧VIN1_DETがVIN2_DETかVIN3_DETの少なくともどちらか一方よりも大きくなると、出力電流補正値Vi_CORを0Vにする。そのとき、第2エラー検出部124の出力は変化しないため、電流制御指令値回路120Rから出力される電流制御指令値は変化せず、モジュール1Rの出力電流Ioも変化しない。しかしこの状況では、入力電圧バランス部15Sの出力または15Tのどちらかの出力は正の値をとるため、正の値をとる相(S相かT相)の出力電流が小さくなる。出力電圧一定制御により総合負荷電流は一定になるように制御されるためR相の出力電流Ioは大きくなる。後述のように、出力電流Ioが大きくなれば、モジュール1Rの入力電圧が下降する。その結果、入力電圧が大きくなっても、元の入力電圧に戻ろうとする。
【0057】
上記のように、モジュール1Rにおいて、出力電流Ioが小さくなれば、モジュール1Rの入力電圧が上昇し、その反対に、出力電流Ioが大きくなれば、モジュール1Rの入力電圧が下降する。その理由は以下の通りである。
【0058】
(a)今、モジュール1R、1S、1Tの出力電流のバランスが崩れて、モジュール1Rの出力電流Ioが減少したと仮定する。
【0059】
(b)モジュール1S、1Tの出力電流が増加する(総合出力電流(負荷電流)が一定のため)。
【0060】
(c)力率改善コンバータ部11Rの出力電流が減少する(力率改善コンバータ部11S、11Tの出力電流が増加する)。
【0061】
(d)モジュール1Rの入力電流が減少する(モジュール1S、1Tの入力電流が増加する)。
【0062】
(e)モジュール1Rの入力電圧が増加する(モジュール1S、1Tの入力電圧が下降する)。
【0063】
モジュール1Rの出力電流Ioが増加した場合は、以下のようになる。
【0064】
(f)今、モジュール1R、1S、1Tの出力電流のバランスが崩れて、モジュール1Rの出力電流Ioが増加したと仮定する。
【0065】
(g)モジュール1S、1Tの出力電流が減少する(総合出力電流(負荷電流)が一定のため)。
【0066】
(h)力率改善コンバータ部11Rの出力電流が増加する(力率改善コンバータ部11S、11Tの出力電流が減少する)。
【0067】
(i)モジュール1Rの入力電流が増加する(モジュール1S、1Tの入力電流が減少する)。
【0068】
(j)モジュール1Rの入力電圧が減少する(モジュール1S、1Tの入力電圧が上昇する)。
【0069】
上記(a)~(e)のように、出力電流Ioが減少すれば、モジュール1Rの入力電圧が増加し、(f)~(j)のように、出力電流Ioが増加すれば、モジュール1Rの入力電圧が減少する。
【0070】
したがって、
・R相の入力電圧VIN1_DETがVIN2_DETとVIN3_DETのどちらよりも小さくなる→出力電流補正値Vi_CORが正の値をとる→出力電流Ioが小さくなる→入力電圧VIN1_DETが増加する。
【0071】
・R相の入力電圧VIN1_DETがVIN2_DETかVIN3_DETの少なくともどちらか一方よりも大きくなる→出力電流補正値Vi_CORが0Vになり、S相またはT相の出力電流が小さくなる→R相の出力電流Ioが大きくなる→入力電圧VIN1_DETが減少する。
【0072】
以上の動作で、入力電圧VIN1_DETが小さくなって、入力電圧が不平衡になろうとしても、入力電圧バランス部15Rの動作により、平衡状態に戻ろうとする。また、入力電圧VIN1_DETが大きくなって、入力電圧が不平衡になろうとしても、入力電圧バランス部15Rの動作により、平衡状態に戻ろうとする。
【0073】
モジュール1S、1Tにおいても同じように動作する。
【0074】
なお、上記(d)、(e)または、(i)、(j)となる理由を、
図5を参照して以下に述べる。
【0075】
図5は、モジュール1R、1S、1Tを入力側から見たときの要素(電流、電圧、インピーダンス)を示す。
【0076】
図5において、ある相の入力電流の増加は、その相の入力インピーダンス(=抵抗)が減少することにより生じる。入力電圧は入力電流×入力インピーダンスに等しいが、入力インピーダンスの減少量の方が大きく影響し、入力電圧は減少する。
【0077】
R相の入力電流IRは以下の数3のように表せる。
【0078】
【0079】
この式より、もしもR相の入力インピーダンスZRが減少したとすると入力電流IRが増加することが言える。R相の入力電圧VRは以下の数4のように表せる。
【0080】
【0081】
数4より、ZRが減少すると入力電圧VRも減少する。
【0082】
以上を纏めると、
R相の入力インピーダンスZRが減少→入力電流IRが増加し入力電圧VRが減少。すなわち、入力電流IRが増加すると、入力電圧VRが減少する(上記(i)と(j))。
【0083】
同様に、R相の入力インピーダンスZRが増加→入力電流IRが減少し入力電圧VRが増加。すなわち、入力電流IRが減少すると、入力電圧VRが増加する(上記(d)と(e))。
【0084】
他の相についても同様である。
【0085】
以上のように、入力電圧が不平衡となったときには、入力電圧バランス部15R、15S、15Tにより、平衡状態に戻すことが出来る。
【0086】
このように、本実施形態では、各モジュールのそれぞれの出力電流バランス部と入力電圧バランス部との相乗作用により、出力電流と入力電圧のバランスが崩れることを防ぐことが出来る。
【0087】
また、電源は、中性点端子のない3相電源に代えて、Δ結線の3相電源であっても良い。
【符号の説明】
【0088】
1R、1S、1T・・・電力制御装置
14R、14S、14T・・・フィードバック制御回路
120R、120S、120T・・・電流制御指令値回路
15R、15S、15T・・・入力電圧バランス部
5・・・接続ライン