IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソウル大学校産学協力団の特許一覧

特許71024882次元ポリマーナノシート及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】2次元ポリマーナノシート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/02 20060101AFI20220711BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20220711BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20220711BHJP
【FI】
C08G61/02 ZNM
B82Y30/00
B82Y40/00
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020186979
(22)【出願日】2020-11-10
(65)【公開番号】P2021109958
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2020-11-10
(31)【優先権主張番号】10-2020-0002112
(32)【優先日】2020-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2019年11月12日、Journal of the American Chemical Society、”Morphologically Tunable Square and Rectangular Nanosheets of a Simple Conjugated Homopolymer by Changing Solvents”、第A~F頁
(73)【特許権者】
【識別番号】513246872
【氏名又は名称】ソウル大学校産学協力団
【氏名又は名称原語表記】SEOUL NATIONAL UNIVERSITY R&DB FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】チェ,テ‐リム
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,サンヒ
(72)【発明者】
【氏名】ガン,スン‐ユン
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-257094(JP,A)
【文献】特開2009-057355(JP,A)
【文献】特表2010-502570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 61/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表されるホモポリマー(homopolymer)を含む、2次元ポリマーナノシート:
前記化学式1において、
~Rは、それぞれ独立に、線状又は分枝状のC1-4アルキル基であり、
nは、5~25の整数である。
【請求項2】
~Rは、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、又はtert-ブチル基である、請求項1に記載の2次元ポリマーナノシート。
【請求項3】
前記ホモポリマーの分子量の分散度は、1~1.3である、請求項1に記載の2次元ポリマーナノシート。
【請求項4】
前記ナノシートは、正方形又は長方形の形状を有するものであり、
前記正方形又は前記長方形の内角は、90゜~95゜である、請求項1に記載の2次元ポリマーナノシート。
【請求項5】
前記ナノシートの縦横比は、1~12である、請求項4に記載の2次元ポリマーナノシート。
【請求項6】
前記ナノシートの厚さは、0.5nm~10nmである、請求項1に記載の2次元ポリマーナノシート。
【請求項7】
前記ナノシートは、斜方晶系の結晶格子を含む、請求項1に記載の2次元ポリマーナノシート。
【請求項8】
前記ナノシートの長さ分散度は、1~1.3である、請求項1に記載の2次元ポリマーナノシート。
【請求項9】
前記ナノシートは、電気伝導性を有する、請求項1に記載の2次元ポリマーナノシート。
【請求項10】
前記ナノシートは、蛍光性を有する、請求項1に記載の2次元ポリマーナノシート。
【請求項11】
請求項1~10のうち何れか一項によるナノシートを含む、デバイス。
【請求項12】
前記デバイスは、トランジスタ又は発光ダイオードを含む、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
(a)下記化学式2で表されるモノマー及び第3世代グラブス触媒を第1の溶媒であるジクロロメタンに添加することで反応溶液を製造し、
(b)前記反応溶液を加熱してから熟成させることにより、下記化学式1で表されるホモポリマー(homopolymer)を含むポリマーナノシートを収得する
ことを含む、ポリマーナノシートの製造方法:
前記化学式1及び前記化学式2において、
~Rは、それぞれ独立に、線状又は分枝状のC1-4アルキル基であり、
nは、5~25の整数である。
【請求項14】
前記(b)の加熱は、45℃~85℃の温度範囲で行われる、請求項13に記載のポリマーナノシートの製造方法。
【請求項15】
前記(b)の熟成は、0℃~35℃の温度範囲で行われる、請求項13に記載のポリマーナノシートの製造方法。
【請求項16】
前記製造方法により収得されるポリマーナノシートは、正方形の形状を有する、請求項13に記載のポリマーナノシートの製造方法。
【請求項17】
前記(b)の前記加熱後及び前記熟成前に、前記反応溶液に第2の溶媒を添加することをさらに含み、
前記第2の溶媒は、前記第1の溶媒とは異なるものであって、テトラヒドロフラン、及び/又はクロロホルム含む、請求項13に記載のポリマーナノシートの製造方法。
【請求項18】
前記第1の溶媒対前記第2の溶媒の体積比を調節することで前記ポリマーナノシートの縦横比を調節することを含む、請求項17に記載のポリマーナノシートの製造方法。
【請求項19】
前記第2の溶媒の割合が増加するほど前記ポリマーナノシートの縦横比が線形に増加し、
前記ポリマーナノシートの縦横比は、1~12である、請求項17に記載のポリマーナノシートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2次元ポリマーナノシート、前記ナノシートを含むデバイス、及び前記ナノシートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2次元(2D)ポリマー性ナノシートは、それらの固有な超薄膜及び平らな形態により、光学デバイス、有機電子装置、メンブレイン、及び触媒に広く利用されている。以前、これらの2Dナノシートは、ポリ-(エチレングリコール)、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(L-ラクチド)、多分岐型ポリ(エーテルアミン)、ポリ-(フェロセニルジメチルシラン)(PFS;poly-(ferrocenyl dimethylsilane))、又はポリ(p-フェニレンビニレン)(PPV;poly(p-phenylenevinylene))により作られた結晶性コアブロック及びポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS;poly(dimethylsiloxane))又はポリ(2-ビニルピリジン)(P2VP;poly(2-vinylpyridine))のような可溶性コロナ(corona)ブロックを含有するブロックコポリマー(BCP;block copolymers)のボトムアップ式自己組織化によって製造されていた。様々な2Dナノシートのうち、Mannersグループは、PFS-b-P2VPシード(seeds)及びPFS20[PPhMe]Iユニマー(unimers)のアセンブリからサイズ調節された六角形、擬似長方形、及びダイヤモンド状のナノシートを生成する結晶化駆動自己組織化(CDSA;crystallization driven self-assembly)の興味深い例示を報告した。より最近は、PPV-b-P2VPの前記CDSAによって製造された特有の半導体性の正方形ナノシートが報告されており、ここで前記ブロックの割合又はポリマー濃度がそのサイズを決定していた。しかし、単なるホモポリマー、特にコンジュゲートされたものから製造された2Dナノシートの例示はなく、これは、コア形成ホモポリマーの結晶化を調節することが、可溶性コロナがない場合にかなり挑戦的に見えるためである。
【0003】
最近、本発明者らは、結晶性フルオレン残基及びネオヘキシル側鎖を含有するポリ(シクロペンテニレン-ビニレン)(PCPV;poly(cyclopentenylene-vinylene))を利用して大面積2Dナノシートの形成を立証しており、これはホモポリマーに対する限界溶解度(marginal solubility)を提供した。面白いことに、前記ホモポリマーは2Dナノシートを自ら形成した。しかし、本発明者らは、恐らく多重積層された2Dナノシートを誘導する、動力学的に捕獲された過程(コンジュゲートされたポリマーのin‐situナノ粒子化、INCPと知られている)によってそれらの形態やサイズを正確に調節することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】大韓民国特許公開公報第10-2018-0107853号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願は、2次元ポリマーナノシート、前記ナノシートを含むデバイス、及び前記ナノシートの製造方法を提供することを目的としている。
【0006】
しかし、本願が解決しようとする課題は、上記したような課題に限定されるものではなく、言及されていない他の課題は、以下の記載から通常の技術者にとって明確に理解できるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の第1の側面は、下記化学式1で表されるホモポリマー(homopolymer)を含む、2次元ポリマーナノシートを提供する:
前記化学式1において、R~Rは、それぞれ独立に、線状又は分枝状のC1-4アルキル基であり、nは、約5~約25の整数である。
【0008】
本願の第2の側面は、第1の側面によるナノシートを含む、デバイスを提供する。
【0009】
本願の第3の側面は、(a)下記化学式2で表されるモノマー及び第3世代グラブス触媒を第1の溶媒に添加することで反応溶液を製造し、(b)前記反応溶液を加熱してから熟成させることにより、下記化学式1で表されるホモポリマー(homopolymer)を含むポリマーナノシートを収得することを含む、ポリマーナノシートの製造方法を提供する:
前記化学式1及び前記化学式2において、R~Rは、それぞれ独立に、線状又は分枝状のC1-4アルキル基であり、nは、約5~約25の整数である。
【発明の効果】
【0010】
本願の具現例に係る、高い均一性を有する良く定義されたナノ構造を形成するために、本発明者らは、フルオレン残基上において前記側鎖を操作することによって前記ホモポリマーの結晶性を調節するのに焦点を合わせた。本願において、本発明者らは、バルキー(bulky)なトリイソプロピルシリル(TIPS;triisopropylsilyl)側鎖を含有するモノマー及びそれのリビング重合(living polymerization)を含有するモノマーの新規設計を報告した。本発明によれば、第1の溶媒[例えば、ジクロロメタン(DCM;dichloromethane)]内において単純加熱及び熟成により狭い長さと面積分散性を有する正方形ナノシートの良く定義された単層を形成することができる。面白いことに、THF又はクロロホルムを追加添加したことが、正方形から長方形へと形態が正確に調節された切り換えを誘導し、前記ナノシートの縦横比がTHF又はクロロホルムの添加量に応じて線形に増加した。
【0011】
本願の具現例によれば、P10がDCM内において単純加熱及び熟成により約1.01の狭い長さ分散度及び約91゜の平均角度を有する良く定義された約5nmの厚さの正方形ナノシートを形成することができる。また、共溶媒として第2の溶媒の添加によりナノシートの形態学的変化を誘導し、長さ分散が約1.06未満である長方形ナノシートを収得することができ、前記長方形ナノシートの縦横比は、共溶媒として利用される第2の溶媒の量を増加させることで約1~約10.6において正確に調節されても良い。
【0012】
本願の具現例によって製造される蛍光及び半導体特性を有する前記ナノシートは、光電子応用のための潜在的物質として機能することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1(a)は、0.5g/LのDCM溶液中のP10から直接(不規則な凝集)収得したTEMイメージ、図1(b)は、前記P10溶液を65℃で30分間加熱した後に収得したTEMイメージ、図1(c)は、30分間25℃で熟成させた後に収得されたTEMイメージであり、図1(d)は、図1(a)~図1(c)の各状態からの前記P10溶液のDLSプロファイルを示すグラフである。また、図1(e)は、P10の2D正方形のAFMイメージ及び高さプロファイルであり、図1(f)は、図1(e)のP10の2D正方形の3Dプロファイルであり、図1(g)は、P10の2D正方形の成長過程の概略図である。
図2図2(a)は、0.5g/LのDCM中のP10溶液における2D正方形の低倍率(low-magnified)TEMイメージであり、図2(b)は、50個のナノ正方形の中からランダムに選定された統計的情報(statistical information)を示すものである。
図3】DCM溶液中の共溶媒として利用されるTHF%及びクロロホルム%の増加に応じた縦横比の増加を示す正方形及び長方形ナノシートのTEMイメージ(スケールバー、10μm)を示すものであり、括弧内の数字は縦横比である。具体的に、図3(a)は0%の共溶媒(より短い側面の平均長さ(Ls:8.8μm))であり;THF%は、図3(b)において17%(4.4μm)、図3(c)において25%(5.5μm)、図3(d)において40%(3.4μm)、図3(e)において50%(3.1μm)、及び図3(f)において67%(2.3μm)であり;クロロホルム%は、図3(g)において25%(4.4μm)、図3(h)において33%(2.8μm)、図3(i)において40%(3.9μm)、図3(j)において50%(3.1μm)、図3(k)において67%(1.5μm)、及び図3(l)において83%(0.9μm)である。また、図3(m)は、P10の2DナノシートのTHF%又はクロロホルム%対縦横比のプロットであり、図3(n)は、P10の2DナノシートのTHF%又はクロロホルム%対平均角度のプロットである。
図4(a)】共溶媒として4.8%(縦横比=1.1)~100%の範囲のTHFの異なる体積比を有するP10からの様々な2D長方形のTEMイメージ(括弧内の数字は縦横比である)である。
図4(b)】共溶媒として4.8%(縦横比=1.1)~100%の範囲のTHFの異なる体積比を有するP10からの様々な2D長方形のDLSプロファイルを示すグラフである。
図4(c)】共溶媒として4.8%(縦横比=1.1)~100%の範囲のTHFの異なる体積比を有するP10からの様々な2D長方形のUV-visスペクトルである。
図5(a)】共溶媒として16.7%(縦横比=2.2)~100%の範囲のクロロホルムの異なる体積比を有するP10からの様々な2D長方形のTEMイメージ(括弧内の数字は縦横比である)である。
図5(b)】共溶媒として16.7%(縦横比=2.2)~100%の範囲のクロロホルムの異なる体積比を有するP10からの様々な2D長方形のDLSプロファイルを示すグラフである。
図5(c)】共溶媒として16.7%(縦横比=2.2)~100%の範囲のクロロホルムの異なる体積比を有するP10からの様々な2D長方形のUV-visスペクトルである。
図6図6(a)は、0.5g/LのDCM中のP10溶液における2D正方形のフィルムXRDイメージであり、図6(b)は、追加の断面ヒストグラムと共に前記2D正方形において選択された領域のHR-TEMイメージである(19.2Åのd-間隔は電子密度の差から計算された)。図6(c)及び図6(d)は、それぞれ前記2D正方形のHR-TEMイメージ及びSAEDイメージのFFTパターンであり、図6(e)は、提案されたモデルであって、斜方晶系の結晶格子に基づく2D正方形の3D概略図である。図6(f)は、異なる結晶成長速度による長方形の形成を示し、(100)平面の最も遅い結晶成長により、長方形ナノシートの形成がもたらされた。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、添付した図面を参照しながら、本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように本願の具現例及び実施例を詳しく説明する。ところが、本願は様々な異なる形態に具現されることができ、ここで説明する具現例及び実施例に限定されるものではない。そして、図面において、本発明を明確に説明するために、説明とは関係ない部分は省略しており、明細書全体に亘って類似した部分に対しては類似した図面符号を付けている。
【0015】
本願の明細書全体において、ある部分が他の部分と「連結」されているという場合、これは「直接的に連結」されている場合だけでなく、その中間に他の素子を挟んで「電気的に連結」されている場合も含む。
【0016】
本願の明細書全体において、ある部材が他の部材の「上に」位置しているという場合、これは、ある部材が他の部材に接している場合だけでなく、両部材の間にまた他の部材が存在する場合も含む。
【0017】
本願の明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」という場合、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0018】
本明細書において使用される程度の用語「約」、「実質的に」などは、言及された意味に固有の製造及び物質許容誤差が提示される場合、その数値で、またはその数値に近接した意味として使用され、本願の理解を助けるために、適確であるか絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に利用することを防止するために使用される。
【0019】
本願の明細書全体において使用される程度の用語「~するステップ」又は「~のステップ」は、「~のためのステップ」を意味するものではない。
【0020】
本願の明細書全体において、マーカッシュ形式の表現に含まれた「これらの組み合わせ(たち)」の用語は、マーカッシュ形式の表現に記載された構成要素からなる群より選択される1つ以上の混合又は組み合わせを意味するものであり、前記構成要素からなる群より選択される1つ以上を含むことを意味する。
【0021】
本願の明細書全体において、「A及び/又はB」の記載は、「A又はB、あるいはA及びB」を意味する。
【0022】
本願の明細書全体において、「アルキル」又は「アルキル基」という用語は、1~12個の炭素原子、1~10個の炭素原子、1~8個の炭素原子、又は1~5個の炭素原子を有する線状又は分枝状のアルキル基、及びこれらの全ての可能な異性質体を含む。例えば、前記アルキル又はアルキル基は、メチル基(Me)、エチル基(Et)、n-プロピル基(Pr)、iso-プロピル基(Pr)、n-ブチル基(Bu)、iso-ブチル基(Bu)、tert-ブチル基(tert-Bu、Bu)、sec-ブチル基(sec-Bu、secBu)、n-ペンチル基(Pe)、iso-ペンチル基(isoPe)、sec-ペンチル基(secPe)、tert-ペンチル基(Pe)、neo-ペンチル基(neoPe)、3-ペンチル基、n-ヘキシル基、iso-ヘキシル基、ヘプチル基、4,4-ジメチルペンチル基、オクチル基、2,2,4-トリメチルペンチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、及びこれらの異性質体などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0023】
以下では、本願の具現例を詳しく説明するが、本願がこれに限定されるものではない。
【0024】
本願の第1の側面は、下記化学式1で表されるホモポリマー(homopolymer)を含む、2次元ポリマーナノシートを提供する:
前記化学式1において、
~Rは、それぞれ独立に、線状又は分枝状のC1-4アルキル基であり、
nは、約5~約25の整数である。
【0025】
本願の一具現例において、R~Rは、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、又はtert-ブチル基であっても良いが、これに限定されるものではない。本願の一具現例において、R~Rは、それぞれ独立に、n-プロピル基又はiso-プロピル基であっても良い。本願の一具現例において、R~Rは、全てiso-プロピル基であっても良い。
【0026】
本願の一具現例において、R~Rは、互いに同一あるいは異なっていても良いが、これに限定されるものではない。本願の一具現例において、R~Rは、互いに同一であっても良い。
【0027】
本願の一具現例において、nは、約5~約25の整数であっても良いが、これに限定されるものではない。例えば、nは、約5~約25、約5~約20、約5~約15、約5~約10、約7~約25、約7~約20、約7~約15、約7~約10、約10~約25、約10~約20、約10~約15、約10~約12、約12~約25、約12~約20、又は約12~約15の整数であっても良いが、これに限定されるものではない。
【0028】
本願の一具現例において、前記ホモポリマーの分子量は、前記nの値に応じて異なっていても良く、例えば、約1kDa~約10kDa、約1kDa~約8kDa、約3kDa~約10kDa、又は約3kDa~約8kDaであっても良いが、これに限定されるものではない。
【0029】
本願の一具現例において、前記ホモポリマーの分子量の分散度は、約1~約1.3であっても良いが、これに限定されるものではない。例えば、前記ホモポリマーの分子量の分散度は、約1~約1.3又は約1.1~約1.3であっても良いが、これに限定されるものではない。本願の一具現例において、前記ホモポリマーの分子量の分散度は、約1.27未満であっても良く、約1~約1.3、又は約1.1~約1.3であっても良い。
【0030】
本願の一具現例において、前記ナノシートは、正方形又は長方形の形状を有するものであり、前記正方形又は前記長方形の内角は、約90゜~約95゜又は約91゜~約93゜であっても良い。ここで、前記ナノシートの内角は、鈍角を基準に測定されるものであっても良い。
【0031】
本願の一具現例において、前記ナノシートの縦横比は、約1~12であっても良いが、これに限定されるものではない。例えば、前記ナノシートの縦横比は、約1~約12、約1~約11、約1~約10、約1~約9、約1~約8、約1~約7、約1~約6、約1~約5、約1~約4、約1~約3、又は約1~約2であっても良いが、これに限定されるものではない。本願の一具現例において、前記ナノシートの縦横比は、約1~約11の範囲内で調節されても良いが、これに限定されるものではない。
【0032】
本願の一具現例において、前記ナノシートの厚さは、約0.5nm~約10nmであっても良いが、これに限定されるものではない。例えば、前記ナノシートの厚さは、約0.5nm~約10nm、約0.5nm~約9nm、約0.5nm~約8nm、約0.5nm~約7nm、約0.5nm~約6nm、約0.5nm~約5nm、約0.5nm~約4nm、約0.5nm~約3nm、約0.5nm~約2nm、約0.5nm~約1nm、約1nm~約10nm、約1nm~約9nm、約1nm~約8nm、約1nm~約7nm、約1nm~約6nm、約1nm~約5nm、約1nm~約4nm、約1nm~約3nm、約1nm~約2nm、約2nm~約10nm、約2nm~約9nm、約2nm~約8nm、約2nm~約7nm、約2nm~約6nm、約2nm~約5nm、約2nm~約4nm、約2nm~約3nm、約3nm~約10nm、約3nm~約9nm、約3nm~約8nm、約3nm~約7nm、約3nm~約6nm、約3nm~約5nm、約3nm~約4nm、約4nm~約10nm、約4nm~約9nm、約4nm~約8nm、約4nm~約7nm、約4nm~約6nm、約4nm~約5nm、約5nm~約10nm、約5nm~約9nm、約5nm~約8nm、約5nm~約7nm、約5nm~約6nm、約6nm~約10nm、約6nm~約9nm、約6nm~約8nm、約6nm~約7nm、約7nm~約10nm、約7nm~約9nm、約7nm~約8nm、約8nm~約10nm、約8nm~約9nm、又は約9nm~約10nmであっても良いが、これに限定されるものではない。本願の一具現例において、前記ナノシートの厚さは、約3nm~約7nm、又は約4nm~約6nmの超薄(ultrathin)シートであっても良い。また、前記ナノシートの厚さは、前記縦横比とは関係なく相当均一であっても良い。ここで、前記ナノシートの厚さは、ホモポリマーの重合度によって決定されても良く、前記重合度が1の場合、前記ナノシートの厚さは約0.5nmであっても良いが、これに限定されるものではない。
【0033】
本願の一具現例において、前記ナノシートは、斜方晶系の結晶格子を含んでいても良いが、これに限定されるものではない。本願の一具現例において、前記正方形又は前記長方形の形状を有するナノシートが斜方晶系の結晶配向に形成されても良いが、これに限定されるものではない。例えば、前記斜方晶系単位セルの格子パラメータは、a=19.2Å(100)、b=15.2Å(010)、及びc=8.4Å(001)として計算されても良い。
【0034】
本願の一具現例において、前記ナノシートの長さ分散度は、約1~約1.3であっても良いが、これに限定されるものではない。例えば、前記ナノシートの長さ分散度は、約1~約1.3、約1~約1.2、又は約1~約1.1であっても良いが、これに限定されるものではない。本願の一具現例において、前記正方形の形状を有するナノシート及び前記長方形の形状を有するナノシートは、約1~約1.2、又は約1~約1.1の長さ分散度を有していても良い。
【0035】
本願の一具現例において、前記ナノシートは、電気伝導性、熱伝導性、及び/又は蛍光性を有していても良い。
【0036】
本願の一具現例において、前記ナノシートは、乾燥状態及び/又は溶媒内においてコロイド状に安定して存在するものであっても良いが、これに限定されるものではない。前記溶媒は、水、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、及びオルトジクロロベンゼンより選択される1つ以上を含んでいても良いが、これに限定されるものではない。従って、前記ナノシートは、乾燥状態だけでなく溶媒内でも安定的に機能しながら使用されることができる。
【0037】
本願の第2の側面は、第1の側面によるナノシートを含む、デバイスを提供する。
【0038】
本願の第1の側面と重複する部分については詳細な説明を省略しているが、本願の第1の側面について説明した内容は、本願の第2の側面においてその説明が省略されているとしても同様に適用されても良い。
【0039】
本願の一具現例において、前記ナノシートは、下記化学式1で表されるホモポリマー(homopolymer)を含んでいても良い:
前記化学式1において、
~Rは、それぞれ独立に、線状又は分枝状のC1-4アルキル基であり、
nは、約5~約25の整数である。
【0040】
本願の一具現例において、R~Rは、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、又はtert-ブチル基であっても良いが、これに限定されるものではない。本願の一具現例において、R~Rは、それぞれ独立に、n-プロピル基又はiso-プロピル基であっても良い。本願の一具現例において、R~Rは、全てiso-プロピル基であっても良い。
【0041】
本願の一具現例において、R~Rは、互いに同一あるいは異なっていても良いが、これに限定されるものではない。本願の一具現例において、R~Rは、互いに同一であっても良い。
【0042】
本願の一具現例において、nは、約5~約25の整数であっても良いが、これに限定されるものではない。例えば、nは、約5~約25、約5~約20、約5~約15、約5~約10、約7~約25、約7~約20、約7~約15、約7~約10、約10~約25、約10~約20、約10~約15、約10~約12、約12~約25、約12~約20、又は約12~約15の整数であっても良いが、これに限定されるものではない。
【0043】
本願の一具現例において、前記デバイスは、トランジスタ又は発光ダイオードを含んでいても良いが、これに限定されるものではない。
【0044】
本願の一具現例において、前記デバイスは、キャパシタ、インダクタ、圧電素子、バリスタ及び/又はサーミスタを含んでいても良いが、これに限定されるものではない。
【0045】
本願の一具現例において、前記ホモポリマーの分子量の分散度は、約1~約1.3であっても良いが、これに限定されるものではない。例えば、前記ホモポリマーの分子量の分散度は、約1~約1.3又は約1.1~約1.3であっても良いが、これに限定されるものではない。本願の一具現例において、前記ホモポリマーの分子量の分散度は、約1.27未満であっても良く、約1~約1.3、又は約1.1~約1.3であっても良い。
【0046】
本願の一具現例において、前記ナノシートは、正方形又は長方形の形状を有するものであり、前記正方形又は前記長方形の内角は、約90゜~約95゜又は約91゜~約93゜であっても良い。ここで、前記ナノシートの内角は、鈍角を基準に測定されるものであっても良い。
【0047】
本願の一具現例において、前記ナノシートの縦横比は、約1~12であっても良いが、これに限定されるものではない。例えば、前記ナノシートの縦横比は、約1~約12、約1~約11、約1~約10、約1~約9、約1~約8、約1~約7、約1~約6、約1~約5、約1~約4、約1~約3、又は約1~約2であっても良いが、これに限定されるものではない。本願の一具現例において、前記ナノシートの縦横比は、約1~約11の範囲内で調節されても良いが、これに限定されるものではない。
【0048】
本願の一具現例において、前記ナノシートの厚さは、約0.5nm~約10nmであっても良いが、これに限定されるものではない。例えば、前記ナノシートの厚さは、約0.5nm~約10nm、約0.5nm~約9nm、約0.5nm~約8nm、約0.5nm~約7nm、約0.5nm~約6nm、約0.5nm~約5nm、約0.5nm~約4nm、約0.5nm~約3nm、約0.5nm~約2nm、約0.5nm~約1nm、約1nm~約10nm、約1nm~約9nm、約1nm~約8nm、約1nm~約7nm、約1nm~約6nm、約1nm~約5nm、約1nm~約4nm、約1nm~約3nm、約1nm~約2nm、約2nm~約10nm、約2nm~約9nm、約2nm~約8nm、約2nm~約7nm、約2nm~約6nm、約2nm~約5nm、約2nm~約4nm、約2nm~約3nm、約3nm~約10nm、約3nm~約9nm、約3nm~約8nm、約3nm~約7nm、約3nm~約6nm、約3nm~約5nm、約3nm~約4nm、約4nm~約10nm、約4nm~約9nm、約4nm~約8nm、約4nm~約7nm、約4nm~約6nm、約4nm~約5nm、約5nm~約10nm、約5nm~約9nm、約5nm~約8nm、約5nm~約7nm、約5nm~約6nm、約6nm~約10nm、約6nm~約9nm、約6nm~約8nm、約6nm~約7nm、約7nm~約10nm、約7nm~約9nm、約7nm~約8nm、約8nm~約10nm、約8nm~約9nm、又は約9nm~約10nmであっても良いが、これに限定されるものではない。本願の一具現例において、前記ナノシートの厚さは、約3nm~約7nm、又は約4nm~約6nmの超薄(ultrathin)シートであっても良い。また、前記ナノシートの厚さは、前記縦横比とは関係なく相当均一であっても良い。
【0049】
本願の一具現例において、前記ナノシートは、斜方晶系の結晶格子を含んでいても良いが、これに限定されるものではない。本願の一具現例において、前記正方形又は前記長方形の形状を有するナノシートが斜方晶系の結晶配向に形成されても良いが、これに限定されるものではない。例えば、前記斜方晶系単位セルの格子パラメータは、a=19.2Å(100)、b=15.2Å(010)、及びc=8.4Å(001)として計算されても良い。
【0050】
本願の一具現例において、前記ナノシートの長さ分散度は、約1~約1.3であっても良いが、これに限定されるものではない。例えば、前記ナノシートの長さ分散度は、約1~約1.3、約1~約1.2、又は約1~約1.1であっても良いが、これに限定されるものではない。本願の一具現例において、前記正方形の形状を有するナノシート及び前記長方形の形状を有するナノシートは、約1~約1.2、又は約1~約1.1の長さ分散度を有していても良い。
【0051】
本願の一具現例において、前記ナノシートは、電気伝導性、熱伝導性、及び/又は蛍光性を有していても良い。
【0052】
本願の一具現例において、前記ナノシートは、乾燥状態及び/又は溶媒内においてコロイド状に安定して存在するものであっても良いが、これに限定されるものではない。前記溶媒は、水、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、及びオルトジクロロベンゼンより選択される1つ以上を含んでいても良いが、これに限定されるものではない。従って、前記ナノシートを含むデバイスは、乾燥状態だけでなく溶媒内でも安定的に機能しながら使用されることができる。
【0053】
本願の第3の側面は、(a)下記化学式2で表されるモノマー及び第3世代グラブス(Grubbs)触媒を第1の溶媒に添加することで反応溶液を製造し、(b)前記反応溶液を加熱してから熟成させることにより、下記化学式1で表されるホモポリマー(homopolymer)を含むポリマーナノシートを収得することを含む、ポリマーナノシートの形態調節可能な製造方法を提供する:
前記化学式1及び前記化学式2において、
~Rは、それぞれ独立に、線状又は分枝状のC1-4アルキル基であり、
nは、約5~約25の整数である。
【0054】
本願の第1の側面及び第2の側面と重複する部分については詳細な説明を省略しているが、本願の第1の側面及び第2の側面について説明した内容は、本願の第3の側面においてその説明が省略されているとしても同様に適用されても良い。
【0055】
本願の一具現例において、R~Rは、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、又はtert-ブチル基であっても良いが、これに限定されるものではない。本願の一具現例において、R~Rは、それぞれ独立に、n-プロピル基又はiso-プロピル基であっても良い。本願の一具現例において、R~Rは、全てiso-プロピル基であっても良い。
【0056】
本願の一具現例において、R~Rは、互いに同一あるいは異なっていても良いが、これに限定されるものではない。本願の一具現例において、R~Rは、互いに同一であっても良い。
【0057】
本願の一具現例において、nは、約5~約25の整数であっても良いが、これに限定されるものではない。例えば、nは、約5~約25、約5~約20、約5~約15、約5~約10、約7~約25、約7~約20、約7~約15、約7~約10、約10~約25、約10~約20、約10~約15、約10~約12、約12~約25、約12~約20、又は約12~約15の整数であっても良いが、これに限定されるものではない。
【0058】
本願の一具現例において、前記第1の溶媒は、ジクロロメタン、クロロホルム、及びテトラヒドロフランより選択される1つ以上であっても良いが、これに限定されるものではない。
【0059】
本願の一具現例において、前記(b)の加熱は、約45℃~約85℃の温度範囲で行われても良いが、これに限定されるものではない。例えば、前記加熱は、約45℃~約85℃、約45℃~約80℃、約45℃~約75℃、約45℃~約70℃、約45℃~約65℃、約45℃~約60℃、約45℃~約55℃、約45℃~約50℃、約50℃~約85℃、約50℃~約80℃、約50℃~約75℃、約50℃~約70℃、約50℃~約65℃、約50℃~約60℃、約50℃~約55℃、約55℃~約85℃、約55℃~約80℃、約55℃~約75℃、約55℃~約70℃、約55℃~約65℃、約55℃~約60℃、約60℃~約85℃、約60℃~約80℃、約60℃~約75℃、約60℃~約70℃、約60℃~約65℃、約65℃~約85℃、約65℃~約80℃、約65℃~約75℃、約65℃~約70℃、約70℃~約85℃、約70℃~約80℃、約70℃~約75℃、約75℃~約85℃、約75℃~約80℃、又は約80℃~約85℃の温度範囲で行われても良いが、これに限定されるものではない。本願の一具現例において、前記(b)の加熱は、約60℃~約70℃の温度範囲で行われても良い。
【0060】
本願の一具現例において、前記(b)の熟成は、約0℃~約35℃の温度範囲で行われても良いが、これに限定されるものではない。例えば、前記(b)の熟成は、約0℃~約35℃、約0℃~約30℃、約0℃~約25℃、約0℃~約20℃、約0℃~約15℃、約0℃~約10℃、約0℃~約5℃、約5℃~約35℃、約5℃~約30℃、約5℃~約25℃、約5℃~約20℃、約5℃~約15℃、約5℃~約10℃、約10℃~約35℃、約10℃~約30℃、約10℃~約25℃、約10℃~約20℃、約10℃~約15℃、約15℃~約35℃、約15℃~約30℃、約15℃~約25℃、約15℃~約20℃、約20℃~約35℃、約20℃~約30℃、約20℃~約25℃、約25℃~約35℃、約25℃~約30℃、又は約30℃~約35℃の温度範囲で行われても良いが、これに限定されるものではない。本願の一具現例において、前記(b)の熟成は、約20℃~約30℃の温度範囲で行われても良い。
【0061】
本願の一具現例において、前記製造方法により収得されるポリマーナノシートは、正方形の形状を有していても良い。具体的に、(a)前記化学式2で表されるモノマー及び第3世代グラブス(Grubbs)触媒を第1の溶媒に添加することで反応溶液を製造し、(b)前記反応溶液を加熱してから熟成させることにより、前記化学式1で表されるホモポリマー(homopolymer)を含むポリマーナノシートを収得することを含む、ポリマーナノシートの形態調節可能な製造方法によれば、正方形の形状を有するポリマーナノシートを収得することができる。
【0062】
本願の一具現例において、前記ポリマーナノシートの形態調節可能な製造方法は、前記(b)の前記加熱後及び前記熟成前に、前記反応溶液に第2の溶媒を添加することをさらに含み、前記第2の溶媒は、前記第1の溶媒とは異なるものであって、テトラヒドロフラン、クロロホルム、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、及びオルトジクロロベンゼンより選択される1つ以上を含んでいても良い。
【0063】
本願の一具現例において、前記第1の溶媒対前記第2の溶媒の体積比を調節することで前記ポリマーナノシートの縦横比を調節することを含んでいても良く、前記第1の溶媒及び前記第2の溶媒を含む全溶媒のうち前記第2の溶媒の体積百分率は、0%~約100%であっても良い。例えば、前記第1の溶媒がジクロロメタンで、前記第2の溶媒がテトラヒドロフランである場合、前記第2の溶媒の体積百分率は、0%~約75%未満であることが好ましく、前記第2の溶媒の体積百分率が約75%以上である場合、前記ナノシートの形状の規則性が低下したり、あるいは凝集現象が増加し得るが、これに限定されるものではない。また、例えば、前記第1の溶媒がジクロロメタンで、前記第2の溶媒がクロロホルムである場合、前記第2の溶媒の体積百分率は、0%~約90%以下であることが好ましい。
【0064】
本願の一具現例において、前記第2の溶媒の割合が増加するほど前記ポリマーナノシートの縦横比が線形に増加し、前記ポリマーナノシートの縦横比は、約1~約12であっても良い。前記第2の溶媒の体積百分率が0%として前記第2の溶媒を添加しない場合に、正方形の形状を有するポリマーナノシートを収得することができる。また、前記第2の溶媒の体積百分率が0%超過~約100%未満、0%超過~約90%以下、又は0%超過~約75%未満として前記第2の溶媒を添加する場合に、長方形の形状を有するポリマーナノシートを収得することができ、前記第2の溶媒の割合が高くなるほど前記ナノシートの縦横比が線形に増加しても良い。例えば、前記ナノシートの縦横比は、約1~約12、又は約1~約11であっても良い。
【0065】
以下、本願について実施例を利用しながらより具体的に説明するが、下記実施例は本願の理解を助けるために例示するだけであり、本願の内容が下記実施例に限定されるものではない。
【0066】
[実施例]
A.物質
追加の言及がない場合、Sigma-Aldrich(登録商標),Tokyo Chemical Industry Co.Ltd.及びAlfa Aesar(登録商標)から商業的に利用可能な全ての試薬を追加精製なしに利用した。モノマー合成用の溶媒を商業的に収得した。他に指示があった場合を除いては、全ての反応はAr雰囲気下において行われた。報告されている文献に従って第3世代Grubbs触媒を製造した。予めコーティングされたプレート(MERCK TLCシリカゲル60,F254)上において薄層クロマトグラフィ(TLC;Thin-layer chromatography)を行い、MERCKシリカゲル60(0.040mm~0.063mm)を利用してフラッシュカラムクロマトグラフィ(flash column chromatography)を行った。イメージング及びサイズ排除クロマトグラフィ(SEC;size exclusion chromatography)の分析のために、BHT含有(104ppm)SEC等級THFをJ.T.Baker(登録商標)から購入した。
【0067】
2.一般的な分析情報
基材及びポリマーの特性分析
NMRスペクトルは、Varian/Oxford As-500(Hの場合500MHz及び13Cの場合125MHz)分光計及びAgilent 400-MR(Hの場合400MHz及び13Cの場合100MHz)によって記録された。Watersシステム(515pump、ループ体積が100μLの2707 autosampler)、Wyatt OptiLab T-rEx屈折率検出器及びクロロホルム(SEC等級、Honeywell Burdick&Jackson)で溶離されたShodex SEC LF-804カラムを利用してサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)分析を行った。流速は1.0mL/分で、前記カラムの温度は35℃に維持された。クロロホルムでサンプルを0.001重量%~0.005重量%に希釈し、利用前に0.20μmのPTFEフィルタを通して濾過した。JMS-700 MStation Mass Spectrometer(Japan)とUltra HR-ESI Q-TOF質量分光器(Bruker,Germany)により高分解能質量分光分析(HRMS;High Resolution Mass Spectroscopy)を行った。テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェイト(BuNPF、0.1M)の脱気されたACN溶液を利用してRTにおいてCHI 660 Electrochemical Analyzer(CH Instruments,Insc.,Texas,US)でサイクリックボルタンメトリー(CV;Cyclic voltammetry)測定を行った。100mV/sのスキャン速度で白金ワイヤカウンター電極を備えたAg/Agの基準電極(アセトニトリル中の0.1M AgNO)である、ガラス状炭素作用電極を利用して前記CVを記録した。ソウル大学校製薬科学研究所のSuperNova Diffractometerによって単結晶X線回折を行った。Brucker TENSOR 27でIRスペクトルを測定した。TA機器Q10を利用して加熱するための30℃/分のスキャン速度及び冷却するための2℃/分のスキャン速度で、N(g)下において示差走査熱量測定(DSC;Differential scanning calorimetry)を行った。
【0068】
ナノ構造の特性分析
Malvern Zetasizer Nano-Sにより、クオーツ(quartz)ガラスセル(Hellma Analytics)でポリマー溶液(一般的に0.5g/L)によって動的光散乱(DLS;Dynamic light scattering)データを収得した。Jasco Inc(UV-vis分光計V-650)でUV-visスペクトルを収得した。原子間力顕微鏡(AFM;Atomic Force Microscopy)イメージングのために、多重モード8及びNanoscope Vコントローラ(Veeco Instrument)を利用した。120kVでJEM-2100(JEOL)を利用して透過電子顕微鏡(TEM;Transmission electron microscopy)イメージングを行った。GADDS(Bruker,Germany)と共にD8 Discoverを利用してソウル大学校農業生命科学大学農生命科学共同機器院(NICEM;National Instrumentation Center for Environmental Management)によってフィルムX線回折(Film-XRD;Film X-ray diffraction)を行った。488nm及び543nm励起を利用して共焦点レーザ走査顕微鏡(LSCM;laser scanning confocal microscopy)としてCarl Zeiss LSM710を利用した。561nm励起からの蛍光イメージは、正規(normal)のLSCMからSP8 X STEDレーザで収得した。FP-8300(JASCO,US)から蛍光スペクトルを収得した。
【0069】
Gatan Digital Micrographソフトウェアを利用してランダムに選択したナノシートの50個のサンプルに対して測定することにより、各サンプルに対してナノシートの長さ、面積、縦横比、及び角度分布を計算した。ナノシートの数の平均(X)、重量の平均(X)、及び標準偏差(σ)の値は下記のように計算されており、ここで、Nは、サンプルのサイズである:
【0070】
モノマー製造のための実験過程
【0071】
2,7-ジブロモフルオレン(2,7-Dibromofluorene)(97+%、3mmol、0.972g)を乾燥したフラスコに添加した後、触媒量のPdCl(PPh)(5mol%、0.15mmol、105mg)、CuI(5mol%、0.15mmol、27mg)及びPPh(10mol%、0.3mmol、80mg)を添加した。前記乾燥したフラスコをArで再充填し、3回排気した後、脱気されたトルエン(10mL)及びTEA(5mL)をシリンジ(syringe)により添加してこれらを溶解した。温度を80℃に上昇させた後、トリイソプロピルシリルアセチレン(triisopropylsilyl acetylene)(97%、9mmol、3当量、2.3mL)をシリンジにより添加し、その混合物を12時間還流した。80℃で12時間攪拌した後、前記混合物をNHCl水溶液(aq)でケンチングした。その生成物をジクロロメタンで抽出し、有機層を塩水(brine)で洗浄した。前記有機層をMgSOで乾燥し濃縮させて暗褐色の粘性の液体を収得した。シリカゲル(ヘキサン)上においてフラッシュカラムクロマトグラフィで精製し、化合物M-1を白色の固体(1.265g、80%)として収得した。
【0072】
H NMR(500MHz、CDCl)δ7.69(d、J=7.9Hz、2H)、7.66(s、2H)、7.50(d、J=7.9Hz、2H)、3.86(s、2H)、1.15(s、42H);13C NMR(125MHz、CDCl)δ143.54(s)、141.36(s)、131.19(s)、128.80(s)、122.22(s)、120.06(s)、107.89(s)、90.98(s)、36.60(s)、18.87(s)、11.57(s)。HR-MS(ESI)[M+Na]計算値。C3550SiNaの場合:549.3343、実測値:549.3343。
【0073】
M-1(2.4mmol、1.265g)及び活性炭粉末(100重量%、1.265g)上の5%のパラジウム(Palladium)をAr-パージされたフラスコ内のエチルアセテート(EA;ethyl acetate)(15mL)に添加した。前記溶液を排気してH(g)(3個層状風船)をシリンジにより添加した。室温で12時間攪拌した後、前記混合物をEAでセライト濾過により精製し、白色の固体として化合物M-2を収得した(1.232g、96%)。
【0074】
H NMR(400MHz、CDCl)、δ7.65(d、J=7.8Hz、2H)、7.37(s、2H)、7.19(d、J=7.8Hz、2H)、3.85(s、2H)、2.73(m、4H)、1.10(m、J=2.7Hz、42H)、1.00(m、4H);13C NMR(125MHz、CDCl)δ144.49(s)、143.68(s)、139.59(s)、126.32(s)、124.35(s)、119.54(s)、36.91(s)、30.94(s)、19.08(s)、12.60(s)、11.18(s)。HR-MS(FAB+)[M]計算値。C3558Siの場合:534.4077、実測値:534.4077。
【0075】
乾燥したフラスコにM-2(2.3mmol、1.232g)を添加し、ナトリウムヒドロキシド(ビード、50当量、4.608g)をさらに添加した。テトラn-ブチルアンモニウムブロミド(tetra n-butyl ammonium bromide)(98+%、0.5当量、0.372g)を添加した後、前記乾燥したフラスコをArで再充填し、3回排気した。トルエン:水=4:1(計10mL)を含有した混合溶媒を反応溶媒として利用し、温度を80℃に上昇させた。80℃で10分間攪拌した後、プロパルギルブロミド(propargyl bromide)(トルエン中の80%、9.2mmol、4当量、0.84mL)を前記反応混合物に添加した。80℃で12時間攪拌した後、前記混合物をNHCl(aq)と混合した。反応槽の生成物(crude)をエチルアセテートで抽出し、その有機層を塩水で洗浄した。前記有機層をMgSOで乾燥し濃縮させて褐色の粘性の液体を収得した。シリカゲル(ヘキサン)上においてフラッシュカラムクロマトグラフィで精製し、化合物Mを白色の固体として収得した(941mg、67%)。
【0076】
H NMR(500Hz、CDCl)δ7.62(s、2H)、7.59(d、J=7.7Hz、2H)、7.23(d、J=7.7Hz、2H)、2.83(d、J=2.6Hz、4H)、2.74(s、4H)、2.05(t、J=2.6Hz、2H)、1.10(m、42H)、1.01(s、4H);13C NMR(125MHz、CDCl)δ148.94(s)、144.99(s)、137.71(s)、127.54(s)、123.33(s)、119.53(s)、81.53(s)、70.68(s)、31.02(S)、27.70(S)、19.07(S)、12.31(S)、11.16(S)。HR-MS(ESI)[M+Na]計算値。C4162SiNaの場合:633.4282、実測値:633.4278。
【0077】
全体重合過程
セプタム(septum)が備えられた5mLのサイズのスクリューキャップ(screw-cap)バイアルを火炎乾燥してモノマー及びマグネチックバー(bar)で充填した。前記バイアルをArで4回パージし、脱気された無水DCMを添加した([M]=0.1M)。他の5mLのバイアル中のAr-パージされた第3世代Grubbs触媒をDCMに溶解した後、その溶液を強い攪拌下において0℃で前記モノマー溶液に速かに注入した。所望の反応時間の後、過量のエチルビニルエーテルで反応をケンチングし、室温でメタノール内に沈殿させた。収得された紫色の固体を濾過し、in vacuo乾燥した。残りの槽の生成物の混合物のH NMRスペクトルからモノマー転化率を計算した。
【0078】
重合過程の間、リアルタイムTEMサンプリングの場合に、マイクロシリンジ(microsyringe)を利用して異なる時間に溶液(620μL)から20μLの分取液を取出した。10μLの分取液をin vacuo乾燥して転化率計算のためにCDClに希釈し、他の10μLの分取液をDCM(0.5g/L)及びDLSで直接希釈して、UV-vis分析及びTEMサンプリングを行った。
【0079】
ポリマーの H及び 13 C特性分析
H NMR(400MHz、CDCl)δ7.41(br m、2H)、7.04(br m、4H)、6.61(br m、2H)、3.06(br m、4H)、2.53(br m、4H)、0.96(br m、46H);13CNMR(125MHz、C):δ149.56、145.19、137.62、137.39、126.68、123.31、121.86、119.87、52.30、31.21、27.56、19.05、12.71、11.26。
【0080】
詳しい自己組織化実験
【0081】
10の正方形ナノシートの製造
DCM中のP10溶液(0.5g/L、4mLのバイアル中の1mL)をテフロンライニングキャップで密封し、バイアル加熱ブロックにおいて65℃で30分間加熱した。次いで、前記加熱されたP10を25℃で30分間ヒュームフード(fume hood)で熟成させた。
【0082】
10の長方形ナノシートの製造
DCM中のP10溶液(0.5g/L、4mLのバイアル中の1mL)をテフロンライニングキャップで密封し、バイアル加熱ブロックにおいて65℃で30分間加熱した。次いで、THF(250ppmのBHT抑制剤を含有)を前記加熱されたバイアルに直ぐ添加して密封した。THF含量をDCMと比較して体積比で計算した。前記溶液を25℃で30分間ヒュームフードで熟成させた。
【0083】
シード成長実験
ユニマー対シードの比=1の正方形ナノシートと共に、P10DCM溶液にトルエン(10g/L)中のユニマー溶液、P又はP10を添加した。他の方法として、上記と同一なユニマー溶液をそれぞれのP10シード溶液に添加し、前記P10シード溶液は、65℃で30分間加熱されたDCM溶液であった。
【0084】
セルフシーディング(Self-seeding)実験
テフロンライニングキャップでDCM中のP10溶液(0.5g/L、4mLのバイアル中の1mL)を密封し、30分間様々な温図(40℃~70℃)でバイアル加熱ブロック内において加熱した。次いで、前記加熱されたP10を25℃で30分間ヒュームフードで熟成させた。
【0085】
3.結果及び考察
新規な良く定義されたナノ構造を形成するために、本発明者らは、1,6-ヘプタジイン単量体であるMを設計しており、これは、フルオレン残基の2-位置及び7-位置にTIPS側鎖を有し、前記TIPS基は、以前の報告書で利用されたtert-ブチル基よりもバルキーなため、生成されたホモポリマーの溶解度及び結晶性を変更させた(スキーム1b)。本発明者らは、DCM中の第3世代Grubbs触媒(G3)([M]/[I]の割合が7~20である)及び添加剤として弱く配位する3,5-ジクロロピリジンを利用して0℃でMのリビング環化重合(cyclopolymerization)を行った(表1)。その結果として、本発明者らは、増加した凝集を生成する低い溶解度により、n=20で多少の偏差にもかかわらず、3.4kDa~7.0kDaの範囲に調節されたMn及び1.27未満の狭い分散度を有する新規コンジュゲートされたホモポリマー(Pn、n=[M]/[I])を高い収率で収得した(表1)。
【0086】
【0087】
【表1】
【0088】
前記[表1]において、aは、[M]/[I]=単量体対開始剤の比を意味し、bは、クロロホルムサイズ排除クロマトグラフィ(SEC;size exclusion chromatography)で測定されてポリスチレン(PS;polystyrene)基準に補正されたものであり、cは、H NMRスペクトルから計算されたものであり、dは、エチルビニルエーテルで急冷した後にメタノールで沈殿させたものである。
【0089】
先ず、本発明者らは、プロトン核磁気共鳴(H NMR)分光分析によってPを特性分析し、これは、trans異性質体に相応する6.62ppmで単一のオレフィン性ピークを示した。Pのフーリエ変換赤外線(FT-IR;Fourier transform infrared)スペクトルは、1,015cm-1及び950cm-1でtransオレフィン性バンドを示すことによって、立体化学を追加確認した。また、前記DCM溶液中のPに対する紫外可視光(UV-vis)吸収スペクトルは、前記フルオレン及びポリアセチレン(PA;polyacetylene)骨格(backbone)に相応する2つの広い吸収を示した。特に、前記PA骨格からの前記2番目の吸収は、580nmで0-0振動ピークを示し、これはPが長いほどより強く成長した。以前のPCPVの場合と類似した、このような観察は、前記コンジュゲートされたPが堅固で且つ全てtrans拡張された形態を有することを示した。
【0090】
以前のポリマーと類似するように、0.5g/LのDCM溶液中のP10~P20は、自発的に自己組織化し、動的光散乱(DLS;dynamic light scattering)分析において大きい流体力学的直径(D:1.2μm~2.9μm)を示した。しかし、より短いPは、低い分子間相互作用により、同じ条件下において、164nmのより小さいDを有する。前記ナノ構造を詳しく調べるために、本発明者らは、透過電子顕微鏡(TEM;transmission electron microscopy)イメージングを行ったが、残念ながら、前記溶媒の選択(DCM、THF又はクロロホルム)とは関係なく、マイクロメートルサイズの良く定義されない凝集のみが観察された(図1a)。しかし、本発明者らが重合の間に反応溶液を直接サンプリングすることでリアルタイムTEMイメージをモニタリングしたとき、本発明者らは、P10がDCM内において2Dナノシートにおける一部の単層を初期に自発的に形成したことを発見した。これは、最終のナノ構造が、実際、不規則に積層されたナノシートで形成され得るという推測を導いた。前記凝集体を破壊するために、本発明者らは、先ずCDSAの通常戦略を採択し、前記溶液を超音波処理することで均一なシード(seed)構造を収得した。しかし、前記結果には一部の不規則な構造が依然として存在するため、満足なものではなかった。その代案として、本発明者らは、様々な濃度のDCM中の前記P10溶液を加熱した。最後に、数回最適化した後、65℃で30分間0.5g/L溶液を加熱することによって、小さいナノシートのシード(DLS分析でDが約133.2nm)を収得した(図1b及び図1d)。
【0091】
幸いに、前記シードは、CDSAを経て25℃でただ30分間熟成された後、1.04の縦横比及び91゜の平均角度を有する均一な単層2Dナノスクエア(nanosquares)を形成した(D=1180nm)(図1c、図1d及び図2a)。また、前記生成された2Dナノシートは、狭い長さ及び面積分散度(L/L:1.01及びA/A:1.02)と8.8(±0.6)μmの均一な長さ及び82.1(±11.8)μmの面積を有する(図2b)。原子間力顕微鏡(AFM;atomic force microscopy)によって測定された単一の2Dシートの平均高さも比較的均一であり(約5.1±1.0nm)、これはかなり薄い2Dシートを示している(図1e及び図1f)。自己組織化メカニズムを理解するために、本発明者らは、前記熟成過程の間に他のリアルタイムTEMイメージングを行い、結晶化がシードとユニマーの間のみで発生する通常のCDSAよりもメカニズムがより複雑であることを認識した。加熱によって生成された前記2Dシード及びユニマーは、エピタキシャルシード成長を経、また、前記シードは、他のシードと並んで付着することでさらに他の成長を示した。接着剤として作用する前記ユニマー及び前記シード対シード成長により、最終の2D正方形の数は、前記初期シードの数よりも遥かに少ないのに対し、通常のCDSAの場合、これは初期シードの数と同一ではなければならない。DCM溶液のうちこのような同時的で且つ繰り返し的なシード対ユニマー及びシード対シードのアセンブリがどのようにして短時間にかなり均一な大面積2D正方形の形成を誘導するのか驚きである(図1g)。残念ながら、シード成長方法によりリビングCDSAによるそれらのサイズを正確に追加調節しようとする試みは成功することができず、不規則なナノ構造のみが収得された。また、P12からP20までのより大きいポリマーの加熱溶液は、均一なナノ構造を提供するために良く定義されたシードを生成したり、調節されたCDSAを促進してはいないものの、本発明者らは、前記収得した単層の高さをP12からP20まで測定できており、これは、6.4nmから11.3nmへと線形に増加することが分かった。前記高さは前記ポリマーの重合度(DP;degree of polymerization)に比例し、これは、前記厚さが完全に拡張されたポリマー単一鎖の長さと相関関係があることを意味する。
【0092】
面白いことに、THFが共溶媒(cosolvent)としてDCM(0.5g/L)のうち前記シード溶液に添加されたとき、9個の異なる含量割合において、本発明者らは、正方形から長方形ナノシートへの興味深い形態学的変化を観察した(図3a~図3f、及び図4a)。THFの体積百分率[共溶媒の体積/(基準溶媒の体積+共溶媒の体積)の百分率]が5%から67%に増加することに従い、驚くことに、生成された長方形ナノシートの縦横比は1.1から3.7へと線形に増加し、狭い長さ分散度は1.05未満であった。しかし、THF含量が75%を超える場合、前記ナノシートはそれほど規則的ではなくなり、より多くの凝集が観察された(図4a)。これは恐らく、THFにおいてP10の低い溶解度のためであると推定され、これは、結晶化の間に配列を妨げる。また、本発明者らは、前記DCM溶液に他の共溶媒としてクロロホルムを添加し、それの体積百分率を17%から83%に変更し、1.06未満の狭い長さの分散度を維持しながら前記2Dナノシートの縦横比が10.6まで追加増加するさらに延びた長方形へ変形する類似した傾向を観察した(図3g及び図5)。面白いことに、前記縦横比対THF%又はクロロホルム%のプロットは、優れた線形関係を示し、これにより、前記長方形の形態を正確に調節することができる(図3m)。丸いエッジを有する以前のナノプレートレット(nanoplatelets)とは対照的に、P10から18個の異なる長方形の実施例の前記エッジはシャープであり、平均角度(より大きいものの)は、91゜と93゜の間でほぼ完璧な直角であった(図3n)。
【0093】
10及び前記2Dシートの結晶性について詳しく調べるために、本発明者らは、フィルムX線回折(XRD;X-ray diffraction)パターン、高分解能TEM(HR-TEM;high-resolution TEM)を利用した電子回折、及び制限視野電子回折(SAED;selected-area electron diffraction)、及び単結晶XRDパターンを分析した。前記フィルムサンプルのフィルムXRDにおいて、6.6Å及び4.0Å~4.4Åで広いピークが観察され、19.2Åでシャープなピークが観察されており(図6a)、これは、HR-TEMの高速フーリエ変換(FFT;fast Fourier transform)分析及びSAED分析で観察された19.2Åのd-間隔(d-spacing)と一致した(図6b及び図6c)。また、10個を超える異なるd-間隔値を有する非常に良く整列された回折パターンは、P10の2D正方形ナノシートが斜方晶系(orthorhombic)の結晶配向に形成されているという結論を導いた(図6d)。前記値に基づき、本発明者らは、回折パターンのうち3.0Å~4.0Åの間のd-間隔を示す回折パターンがないため、前記コンジュゲートされた骨格のπ-π相互作用が不在するモデルを提案した(図6e)。また、前記TIPS側鎖のサイズは、前記tert-ブチル基よりも遥かに大きく(単結晶XRDにより、7.4Å対5.2Å)、従って、前記TIPS側鎖は、8.4Åのギャップを有するP10上の2つの隣り合うフルオレンの間に挿入されることができなかった。これは、隣り合うフルオレン内でのより小さいtert-ブチル側鎖の絡み合い(interdigitation)を表した以前の報告書の場合とは異なっている。従って、本発明者らは、前記TIPS側鎖が結晶パッキング(packing)のための並行(side-by-side)配列を誘導できることを提案した(図6e)。前記斜方晶系単位セルの格子パラメータは、a=19.2Å(100)、b=15.2Å(010)、及びc=8.4Å(001)として計算された。このモデルに基づき、図6dにおいて、SAED分析からの全てのd-間隔は、それぞれの(hkl)平面に相応し、前記フィルムXRDからの6.6Å、4.4Å及び4.0Åのd-間隔は、(201)、(102)及び(002)平面に相応する。H NMR及びFT-IR分析から、P10の骨格が全てtrans配位を有することが示され、完全に拡張されたP10ホモポリマー鎖の長さ及びその末端のスチレン残基は約5nmであるはずであり、これは、AFMによって測定された前記正方形ナノシートの平均高さに近接する(H=5.1nm、図1e)。また、PのDPの増加が前記ナノスクエアの高さの増加をもたらすという事実は、延びたP鎖の方向が表面に垂直であることを示唆する(図4)。
【0094】
同じ分析方法を利用し、本発明者らは、様々な縦横比を有する長方形ナノシートが、フィルムXRDパターンにおいて、(100)平面のd-間隔強度の一部減少にもかかわらず、類似した斜方晶系の結晶格子を有することを発見した。また、AFMによって測定された前記2Dナノシートの平均高さは、前記縦横比に関係なくほぼ均一であり、前記長方形の長手面は、結晶性アレイの(010)平面の方向と常に一致した。このような結果から、本発明者らは、正方形から長方形への形態学的変化が各平面の表面エネルギーと結晶成長速度の差に起因した可能性があることを類推することができる[参考、(110)>(010)>(100)]。従って、前記正方形ナノシートの一側面(010)は他側面(100)よりも速く成長し、これは、Wulff構造によって異方性長方形ナノシートの形成を誘導するが、前記共溶媒%に対するこのようなナノシートの前記縦横比の線形依存性は依然として説明し難い(図6f)。
【0095】
最後に、これらの電気的特性を分析するために、P10からの前記2Dナノシートに対してサイクリックボルタンメトリー(CV;cyclic voltammetry)調査を行った。最も高い占有分子軌道のレベルは-5.15eVで、そのバンドギャップ(E)は1.99eVであり、これは、UV-vis吸収分光分析によって測定された2.00eVの光学Eと一致した。P10の蛍光特性(図S34及び表S2)を利用して、前記正方形及び長方形ナノシートを共焦点レーザ顕微鏡(CLSM;confocal laser scanning microscopy)及び超解像構造化照明顕微鏡(SR-SIM;super-resolution structured illumination microscopy)により直接的に視覚化することができ、これは、光電子デバイスでこれらの光安定性ナノシートの潜在的な応用を表す。乾燥状態のイメージに加え、本発明者らは、溶液状態で前記蛍光2D正方形と長方形の動画を収得することができ、これは、最小光漂白(photobleaching)又は分解によるこれらの形態と蛍光が維持されることを証明する。
【0096】
4.結論
結論として、本発明者らは、単なるコンジュゲートされたホモポリマーを縦横比が予測可能に調節された様々な2D正方形及び長方形ナノシートに自己組織化することを立証した。これは、P10がDCM内において単純加熱及び熟成により1.01の狭い長さ分散度及び91゜の平均角度を有する良く定義された5nmの厚さの正方形ナノシートを形成できる点が注目に値する。THF又はクロロホルムの添加は形態学的変化を誘導し、長さ分散が1.06未満である長方形ナノシートを収得した。これらの縦横比は、共溶媒として利用されるTHF又はクロロホルムの量を増加させることで1.0~10.6において正確に調節されることができ、これは、異なる表面エネルギーと結晶成長速度に起因する。蛍光及び半導体特性を有する前記ナノ構造は、光電子応用のための潜在的物質である。
【0097】
上述した本願の説明は例示のためのものであり、本願の属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、本願の技術的思想や必須の特徴を変更せずに他の具体的な形態に容易に変形可能であるということを理解できるはずである。それゆえ、上記した実施例は全ての面において例示的なものであり、限定的なものではないと理解すべきである。例えば、単一型で説明されている各構成要素は分散して実施されても良く、同様に、分散したものと説明されている構成要素も結合された形態で実施されても良い。
【0098】
本願の範囲は、上記詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び範囲、並びにその均等概念から導出される全ての変更又は変形された形態が本願の範囲に含まれると解釈されなければならない。
図1
図2
図3
図4(a)】
図4(b)】
図4(c)】
図5(a)】
図5(b)】
図5(c)】
図6