(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】生理学的パラメータを測定するためのインプラント型医療用システム。
(51)【国際特許分類】
A61B 5/283 20210101AFI20220711BHJP
A61B 5/33 20210101ALI20220711BHJP
A61B 5/352 20210101ALI20220711BHJP
【FI】
A61B5/283
A61B5/33 110
A61B5/352
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020198058
(22)【出願日】2020-11-30
【審査請求日】2021-04-03
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】510166157
【氏名又は名称】ソーリン シーアールエム エス ア エス
【氏名又は名称原語表記】SORIN CRM S.A.S.
(74)【代理人】
【識別番号】100064012
【氏名又は名称】浜田 治雄
(72)【発明者】
【氏名】ミルコ マルダリ
【審査官】樋口 祐介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0055170(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0262365(US,A1)
【文献】米国特許第04686987(US,A)
【文献】特開昭52-125372(JP,A)
【文献】特表2006-501892(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0021585(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B5/05-5/0538、5/24-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの生理学的パラメータを測定するためのインプラント型医療用システムであって、
発電機(16)に接続され、電気信号を送るために構成された2つの電極(E1、E2)によって形成された少なくとも1つの双極子エミッタ(12)と、
双極子エミッタ(12)の電極(E1、E2)とはそれぞれ異なる2つの電極(E3、E4)によって形成された少なくとも1つの双極子レシーバ(14)であり、双極子エミッタ(12)の手段によって送られた電気信号を捕捉するように構成された双極子レシーバ(14)と、
少なくとも1つの増幅器(20)、エンベロープ検出器(22)およびアナログ-デジタル変換器(24)と、双極子レシーバ(14)によって捕捉された電気信号を処理するためのプロセッサ(25)とを備える分析モジュール(18)と、
心電図または電位図を捕捉するように構成された検出手段(26)と
を備え、
さらに、分析モジュール(18)は、処理された電気信号と心電図または電位図とを組み合わせて、前駆出期間を表すパラメータを決定するように構成されるインプラント型医療用システム
であって、
双極子エミッタ(12)を備える第1のインプラント型医療装置(100、200)、および第1のインプラント型医療装置(100、200)とは区別され、双極子レシーバ(14)を備える第2のインプラント型医療装置(100、200)を含むシステム。
【請求項2】
分析モジュール(18)は、双極子エミッタ(12)と双極子レシーバ(14)の間の電圧の低下に比例する時間の関数として、処理された電気信号から容積の変動および/または圧力の変動を抽出するように構成される請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前駆出期間の決定は、検出手段(26)によって捕捉されたQRS複合波のR波またはQ波の検出を含む請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
分析モジュール(18)が、前駆出期間を表すパラメータを考慮することによって、治療の有効性を表すパラメータを監視することが可能である請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
双極子レシーバ(14)の2つの電極(E3、E4)は、送られた電気信号と心電図または電位図を同時に捕捉するように構成される請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
分析モジュール(18)の活性化は、検出手段(26)によって捕捉されたPQRST複合波の少なくとも1つのピークの検出によって引き起こされる請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
心臓の音を表す音響信号から心臓の機械的活動を検出することができる手段
をさらに備え、かつ前記音響信号と処理された電気信号を比較する
ように構成されている分析モジュールが構成されている請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
第1のインプラント型医療装置または第2のインプラント型医療装置(100、200)の1つは、皮下インプラント型除細動器または事象記録器であり、第1のインプラント型医療装置または第2のインプラント型医療装置(100、200)のもう1つはインプラント型心内膜装置である請求項
1に記載のシステム。
【請求項9】
インプラント型心内膜装置(100、200)がリードレス心臓ペースメーカである請求項
8に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理学的パラメータの測定を実施するように構成されたインプラント型医療用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
インピーダンスカルジオグラフィーは、生理学的パラメータ、特に血行動態パラメータを測定するための公知の技術である。
【0003】
インピーダンスカルジオグラフィーは、表面電極に結合された外部装置を用いる非侵襲的測定に使用され得る。
【0004】
インプラント型医療用システムの場合、心電図インピーダンス測定は、電流を供給し、同一リードの2つの電極間の電圧を測定することによって行われることが知られている。特許文献1は、同じ皮下リードの2つの電極間のこのような局所インピーダンス測定に関するものである。特許文献1は、電気信号から識別された心イベントに基づいて、心臓リズム、より正確には心不整脈の問題を検出することを提案している。
【0005】
しかし、その適切な機能に影響を及ぼす心臓の拍動の異常な変動に対応する、心臓不整脈のような心臓リズムの問題は、身体全体に十分な血流を確保するのに十分な量の血液を送り出す、心臓の能力の欠如である心不全と区別できることが知られている。
【0006】
心不全は、心臓の一部、またはそのすべてに影響を及ぼすことがある。心不全は慢性かつ進行性の変化であり、一般に緩徐であり、これは数年にわたって起こることがある。
【0007】
心リズムの問題を特定するための特許文献1で述べられているような心イベントの検出は、心不全(心臓まひとしても知られる)のモニタリングには適していないことが示されている。実際、特許文献1で提案されているインピーダンス測定は、同じリードの2つの電極間の局所測定と比較したものであり、肺活動や近隣臓器の血液の循環に対する感度が低い。しかし、肺活動や近隣臓器の血液循環に関連する呼吸、血行動態情報も、診断や心不全のモニタリングに有用な情報である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願公開第2019/0111268号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、本発明の目的は、心不全の診断およびモニタリングを改善し、最適化することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、少なくとも1つの生理学的パラメータを測定するためのインプラント型医療システムであって、発電機に接続され、電気信号を送るために構成された2つの電極によって形成された少なくとも1つの双極子エミッタと、双極子エミッタの電極とは別の2つの電極によって形成された少なくとも1つの双極子レシーバと、双極子レシーバは双極子エミッタによって送られた電気信号を捕捉するように構成され、少なくとも1つの増幅器と、エンベロープ検出器と、アナログ-デジタル変換器と、双極子レシーバによって捕捉された電気信号を処理するための処理手段とを備える分析モジュールと、心電図または電位図を生成するように構成された検出手段とを備え、分析モジュールはさらに、処理された電気信号と心電図または電位図とを組み合わせて、前駆出期間を表すパラメータを決定するように構成されている、インプラント型の医療システムによって達成される。
【0011】
システムが少なくとも4つの電極を有しているという事実は、双極子エミッタが双極子レシーバとは別であるように、周囲媒体をより完全に表すインピーダンスのより完全な測定値が得られることを意味し、このようにして、特に、同じリードの2つの電極間のみの測定値よりも、周囲媒体をより完全かつより典型的に表すことができる。実際、本システムは、双極子エミッタと双極子レシーバとの間の伝送媒体の電気特性の関数として変調されている振幅が変調された受信および処理された電気信号を分析することによって、2つの双極子の手段によって生理学的な機械的情報を回復するために使用することができる。
【0012】
従って、前駆出期間を表すパラメータは、心電図または電位図を考慮に入れることによって、双極子エミッタと双極子レシーバとの間の電圧の減衰から抽出され得る。前駆出期間を表すパラメータの決定は、心不全の診断およびモニタリングに適応される指標を提供する。
【0013】
本発明は、以下の実施形態の手段によってさらに改良され得る。
【0014】
一実施形態によれば、分析モジュールは、処理された電気信号から、双極子エミッタと双極子レシーバとの間の電圧の低下に比例する時間の関数として、容積の変動および/または圧力の変動を抽出するように構成されてもよい。
【0015】
心臓と肺の容積の変動の決定は、同じ処理された電気信号から血行動態情報と呼吸情報を回復するために有利に使用することができる。心臓の容積の変動の決定は、大動脈弁の開口を同定するために使用され得る。
【0016】
一実施形態によれば、前駆出期間の決定は、検出手段によって捕捉されたR波またはQRS複合波のQ波の検出を含むことができる。
【0017】
Q波またはR波の開始時間は、前駆出期間を決定することができるために必要なパラメータである。
【0018】
心電図を考慮すると、R波がQ波(Qピークよりも大きな振幅を有するRピーク)よりも優位であるため、Q波の開始時間がQRS複合波のR波から同定できる可能性があり、従ってQ波よりも検出しやすい。
【0019】
R波そのものの検出は、前駆出期間の開始時間の指標としても利用できる可能性があり、従って、Q波の同定に必要なシステムの分析モジュールの複雑さを低減するために利用できる。R波の検出は、心電図または電位図から行うことができる。
【0020】
一実施形態によれば、分析モジュールは、前駆出期間を表すパラメータを考慮することによって、治療の有効性を表すパラメータを監視することも可能であり得る。
【0021】
従って、本システムの分析モジュールは、心機能を評価するために使用できるパラメータである駆出率または駆出量のような血行動態パラメータを評価することができる。このように、本システムは、心不全および処方された治療のモニタリングにさらによく適応される。
【0022】
一実施形態によれば、双極子レシーバの2つの電極は、送られた電気信号と心電図または電位図を同時に捕捉するように構成されてもよい。
【0023】
従って、同じ電極が検出電極としても双極子レシーバとしても働く可能性がある。従って、双極子レシーバは、必要な電極の数を減らすことによって、システムを最適化できることを意味する二重機能を有する。
【0024】
一実施形態によれば、分析モジュールの活性化は、検出手段によって捕捉されたPQRST複合波の少なくとも1つのピークの検出によって引き起こされ得る。
【0025】
従って、体制の分析モジュールが起動される期間を制限することによって、体制のエネルギー消費を低減することができる。好都合なことに、分析モジュールは、例えば、PQRST複合波の少なくとも1つのピークの検出から始まり得る時間枠中に活性化され得る。
【0026】
一実施形態によれば、このシステムは、心臓の音を表す音響信号から心臓の機械的活動を検出することができる手段と、かつ前記音響信号と処理された電気信号を比較するための分析モジュールが構成され得る。
【0027】
音響信号は、心臓弁の機械的活動を明らかにするために使用することができる。様々なタイプの信号の分析は、それらをより良く特徴づけ、心不全のモニタリングに有用な情報を強調するために使用することができる。
【0028】
このため、システムは、心臓の音響活動を検出し、捕捉するように構成されている。このようにして捕捉される音響活動に関する情報は、システムの分析モジュールによって捕捉される処理済み電気信号を相関させるために使用され得る。
【0029】
一実施形態によれば、システムは、双極子エミッタを備える第1のインプラント型医療装置、および第1のインプラント型医療装置とは区別され、双極子レシーバを備える第2のインプラント型医療装置を含むことができる。
【0030】
従って、より完全であり、従って周囲の媒体をより典型的なインピーダンスの測定値を得ることが可能であり、特に、同じリードの2つの電極間の測定値よりも、周囲の媒体をより完全かつより典型的なものとすることができる。実際、双極子はガルバニック結合され、電界は双極子エミッタから双極子レシーバまで人体を通って伝搬される。次いで、双極子レシーバによって受信された電気信号は、振幅で変調される。受信された信号を復調することにより、前駆出期間を表すパラメータが定義され得る少なくとも1つの生理学的パラメータを回復することが可能である。
【0031】
一実施形態によれば、第1のインプラント型医療装置または第2のインプラント型医療装置の1つは、皮下インプラント型除細動器または事象記録器であってもよく、第1のインプラント型医療装置または第2のインプラント型医療装置のもう1つは、インプラント型心内膜装置であってもよい。
【0032】
このように、双極子エミッタによって送られる電場は、血行動態情報と呼吸情報の両方を回復できるチャネルを介して伝送される。少なくとも1つの生理学的パラメータを測定するための本インプラント型医療用システムは、既存のインプラント型医療用装置、すなわち、除細動機能などの前駆出期間を表すパラメータの決定に加えて補足的機能を有する装置を使用するために構成されている。
【0033】
一実施形態によれば、インプラント型心内膜装置は、リードレス心臓ペースメーカであってもよい。
【0034】
リードレス心臓ペースメーカは、リードを有するインプラント型装置よりも侵襲性の低いインプラント処置を行うために使用することができる。また、従来の心臓ペースメーカで使用されていた経静脈リードや皮下パルス発生器に起因する合併症を回避するために、リードレス心臓ペースメーカを使用することができる。
【0035】
本発明およびその利点は、以下で、好ましい実施形態、特に以下の図を参照することにより、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明によるインプラント型医療用システムの概略図を示す。
【
図2】本発明による双極子エミッタと双極子レシーバとの間の電気信号の伝送の概略図を示す。
【
図3】本発明によるインプラント型医療用システムの皮下インプラント型装置への統合を表す。
【
図4】本発明によるインプラント型医療用システムのマルチ装置システムへの統合を表す。
【
図5】
図4のマルチ装置システムに統合された本発明によるインプラント型医療用システムによって得られた心電図および処理済み電気信号を示す。
【
図6】
図4のマルチ装置システムに統合された本発明によるインプラント型医療用システムによって得られた処理された電気信号と、左心室および大動脈における圧力変動を表すグラフとの間の相関を示す。
【
図7】
図4のマルチ装置システムに統合された本発明によるインプラント型医療用システムによって得られた処理された電気信号と、左心室の容積の変動を表すグラフとの相関を示す。
【
図8】
図3の皮下インプラント型装置に統合された、本発明によるインプラント型医療用システムによって得られた心電図、心音図、および電気信号を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、ここで、有利な実施形態を用いて、実施例の方法により、および図を参照して、より詳細に記述されるであろう。実施態様は、可能な単純な構成であり、本発明を実施する際には、上記のような個々の特徴が互いに独立して提供され得るか、または完全に省略され得ることを念頭に置くべきである。
【0038】
図1は、本発明によるインプラント型医療用システム10を例示する。さらに、
図1の下部は、電気信号V
0~V
4を示す。
【0039】
本発明によるインプラント型医療用システム10は、双極子エミッタ12と双極子レシーバ14とを備える。双極子エミッタ12は、一対の電極E1、E2によって形成される。双極子レシーバ14は、一対の電極E3、E4によって形成される。電極E1、E2は電極E3、E4とは異なる。
【0040】
双極子エミッタ12の2つの電極E1、E2は、定義された周波数f0で電気入力信号V0を生成するように構成された発電機16に接続される。周波数f0は、患者の正常な心臓活動を妨害することによって患者の心臓を刺激しないように十分に高くなければならないことに注意すべきである。特に、定義された周波数f0は1kHz以上であり、特に、10kHz以上であってもよい。発電機16は、電圧または電流発生器であってもよい。
【0041】
インプラント型医療用システム10は、分析モジュール18も含む。分析モジュール18は、増幅器20、特に周波数f0で信号V1を増幅するために使用することができる低雑音帯域通過増幅器を備える。
【0042】
増幅器20は、アナログフィルタを含むことができる。
【0043】
変形例では、増幅器20は、複数の低雑音増幅器によって構成されてもよい。この変形例では、低雑音増幅器の1つの選択は、双極子エミッタ12の相互位置および電気信号の減衰に影響をおよぼす双極子レシーバ14の相互位置の関数として行われる。このようにして、システム10のエネルギー消費は、測定のための電気信号の十分な検出を提供するために必要な低雑音増幅器のみを起動することによって、すなわち、ある所定の信号対雑音比を満たすことによって、最適化され得る。
【0044】
別の変形例では、増幅器20は、可変利得増幅器および/またはプログラム可能な利得増幅器であってもよい。
【0045】
さらに、分析モジュール18は、エンベロープ検出器22とアナログ-デジタル変換器24とを含み、これらは、双極子レシーバ14の手段によって捕捉された電気信号を処理するように構成されている。
【0046】
分析モジュール18は、さらに処理手段25を含む。処理手段25は、プロセッサ25である。プロセッサ25は、電気信号V4をデジタル処理するために、デジタルフィルタ手段を備えることができる。変形例では、デジタルフィルタ手段は、アナログ-デジタル変換器24とプロセッサ25との間に配置される。
【0047】
プロセッサ25は、心電図または電位図を生成するように構成されている検出手段26に接続されている。
【0048】
検出手段26がインプラント型皮下除細動器またはインプラント型ループレコーダのような皮下装置である一実施形態では、検出手段26は心電図、特に皮下心電図を生成するように構成されている。従って、検出手段26は、PQRST複合波、特にP波、Q波およびR波を検出することができる。
【0049】
検出手段26が、カプセルの形態のインプラント型リードレス心臓ペースメーカのようなインプラント型心内膜装置である別の実施形態では、検出手段26は、電位図を生成するように構成されている。従って、検出手段26は、右心室の脱分極の局所測定からR波を検出することができる。分析モジュール18の作動は、検出手段26からの信号、特に分析モジュール18の能動部品の作動持続時間を最適化し、ひいてはシステム10の所要エネルギー消費を低減するために、R波の検出によってトリガすることができる。
【0050】
システム10のエネルギー消費を更に低減するために、前駆出期間を表すパラメータの測定は、所定の時間窓の間だけ、一定の間隔で行われてもよい。また、エネルギーを節約するために、測定間隔の頻度を減らすことができる。
【0051】
双極子レシーバ14の2つの電極E3、E4は、電気信号を同時に捕捉するように構成されてもよい。
【0052】
変形例では、双極子レシーバ14の2つの電極E3、E4は、送られた電気信号と心電図を同時に捕捉するように構成されている。
【0053】
分析モジュール18のプロセッサ25は、さらに、前駆出期間を表すパラメータを決定するために、処理された電気信号と心電図を組み合わせるように構成されている。
【0054】
インプラント型医療システム10の動作は、
図1に図示されている電気信号V
0~V
4を使用することによって、以下により詳細に説明される。
図1は、固定された振幅を有する電気入力信号V
0を図示する。変形例では、電気入力信号V
0は、信号対雑音比を改善するために、可変振幅を有してもよい。
【0055】
別の変形例では、電気入力信号V0の振幅は、双極子レシーバ14からのフィードバックから調整されてもよく、この変形例では、さらに、第三者装置、例えば、外部装置による遠隔測定を介して送信するように構成されている。
【0056】
双極子レシーバ14は、インピーダンスがゼロでない例えばヒト組織と呼ばれる容積を介して電気信号V0の適用に続いて、電気信号V0が伝送されたためV0とは異なる電気信号V1を捕捉する。
【0057】
次いで、電気信号V1が増幅器20によって増幅され、その結果、増幅された電気信号V2が得られる。信号V3によって表される電気信号V2のエンベロープは、エンベロープ検出器22によって、特に電気信号V2の振幅復調によって決定される。電気信号V3のエンベロープは、次に、nがサンプルの数を表すデジタル信号V4(n)を得るような方法で、アナログ-デジタル変換器24によってサンプリングされる。
【0058】
デジタル信号V4は、処理された電気信号から回収された血行動態情報から、呼吸情報を区別するために、プロセッサ25によって処理され、さらにデジタル的に除去され得る。
【0059】
フィルタのカットオフ周波数は、決定される各生理学的パラメータの特性の関数として調整され得ることに注意すべきである。一例として、fc=0.5Hz~5Hz、特にfc=1Hzの範囲のカットオフ周波数fcを有する低周波フィルタが呼吸信号を絶縁するために使用され、一方、fc1=1Hzおよびfc2=30Hzを有する帯域通過フィルタが処理された電気信号V4から血行動態信号を絶縁するために使用される。
【0060】
分析モジュール18は、双極子エミッタ12と双極子レシーバ14との間の電圧の低下に比例する時間の関数として、処理された電気信号から、容積の変動および/または圧力の変動をそこから抽出するように構成される。
【0061】
図2は、本発明に係るインプラント型医療システム10の一対の電極E3、E4によって形成される双極子レシーバ14までの、一対の電極E1、E2によって形成される双極子エミッタ12からの電気信号V
0の伝送を図式的に示す。
【0062】
図1の説明に既に使用されているのと同じ参照番号をもつ要素については、再度詳細には記載しない。上記のそれらの記述を参照すること。
【0063】
装置のインプラント状態において、かつ信号V
0を適用することによって、双極子エミッタ12は、人体の組織を通って双極子レシーバ14に伝搬する電界Eを生成するために使用される。双極子レシーバ14は、電気信号V
1によって
図2に示されている電界Eに依存する電位差を検出する。検出される電気信号V
1は、主に、伝搬チャネルの長さ「d」、すなわち、双極子エミッタ12と双極子レシーバ14との間の距離、互いに対する双極子12、14の配向「α」;双極子12、14に対する電極間距離「d
e1」および「d
e2」、すなわち、電極E1、E2と電極E3、E4との間の距離、および伝搬媒体の電気的特性の4つの要因に依存する。
【0064】
図2から分かるように、電極E3、E4は、双極子レシーバを形成し、その配向は、双極子レシーバの配向とは異なる、電極E3、E4’によって形成される。双極子E3、E4およびE3、E4’間の配向の違いを
図2の配向αによって図示し、インプラント型医療用システム10を人体、特に、または心臓の近傍に植え込むと、双極子レシーバ14の電気信号V
1が振幅で変調される。これは、呼吸が環境の特性、特に肺に存在する酸素の量を変化させ、それが伝送チャネルに沿った伝達の間に電気信号の減衰を変化させ、従って電気信号V
1の振幅の変動を引き起こすという事実に起因する。
【0065】
第2の実施形態によれば、
図3は、本発明に係るインプラント型医療用システム10のインプラント型装置100、この場合にはインプラント型皮下除細動器に組み込まれることを表す。変形例では、装置100は、事象記録器、例えば、インプラント型ループレコーダである。
【0066】
図3に示されるインプラント型皮下装置100は、ハウジング102、3つの電極104、106、108、および除細動電極110を備える。インプラント型皮下装置100のハウジング102は、遠隔測定モジュール(図示されていない)を含むことができる。
【0067】
インプラント型皮下装置100は、各双極子の電極が互いに異なる双極子エミッタ、および双極子レシーバを少なくとも含むため、本発明によるインプラント型医療システム10を統合するのに適している。以下の表1に、本発明によるシステム10を作動させるために、インプラント型皮下装置100に使用され得る双極子エミッタと双極子レシーバの構成を列挙する。
【0068】
【0069】
表1に示されるように、電極の1つは、装置のハウジング102によって構成されてもよい。除細動電極110を含む、電極の組合せのいずれを用いてもよい。
【0070】
インプラント型皮下装置100は、また、PQRST複合波を検出することができる皮下心電図を作成するように構成された、表1に列挙された電極から少なくとも1対の電極によって形成される検出手段を備えることができる。従って、特にRおよびQ波はPQRST複合波から識別可能である。
【0071】
したがって、本発明によるシステム10は、既存の装置の手段によって実装され得る。さらに、医師は、捕捉されるべき生理学的パラメータに最も適している双極子エミッタおよび双極子レシーバの構成を有利に選択することができる。
【0072】
変形例によれば、システム10は、インプラント型皮下装置100に組み込まれた加速度計を含み、これは、心臓の機械的活動を検出するために使用することができる。信号間の相関を確立するために、心臓の機械的活動を捕捉された電気信号と比較することができる。
【0073】
第3の実施形態によれば、
図4は、本発明によるインプラント型医療用システム10のマルチ装置システム100、200への組込みを表す。
図4に示されるマルチ装置システム100、200は、インプラント型皮下装置を含む第2の実施形態による装置100、および心臓ペースメーカ、特にリードレスペースメーカ200などの心内膜装置を含む。
【0074】
図3の説明に既に使用されているのと同じ参照番号をもつ要素については、再度詳細には記載しない。上記のそれらの記述を参照すること。
【0075】
変形例では、事象記録器またはインプラント型ループレコーダを、インプラント型皮下装置100の代わりに使用することができる。このタイプの事象記録器またはインプラント型ループレコーダは、少なくとも一対の電極によって形成され、PQRST複合波を検出することができる皮下心電図を作成するように構成された検出手段を含むことができる。このように、特にRおよびQ波はPQRST複合波から識別可能である。
【0076】
リードレスペースメーカ200は、ペースメーカ200の一端に配置された先端電極202、第1のリング電極204および第2の環状電極206を備える。電極202、204または202、206または204、206は、双極子レシーバまたは双極子エミッタを形成することができる。リードレスペースメーカ200は、遠隔測定モジュール(図示されていない)を備えることができる。
【0077】
リードレスペースメーカ200は、さらに、電極202、204、206のうち2つを含み、そこからR波を検出することができる電位図を作成するように構成された、一対の電極によって形成される検出手段を備えることができる。
【0078】
インプラント型皮下装置100とリードレス心臓ペースメーカ200は、双極子レシーバと双極子エミッタとして働くことができる電極を各構成する。従って、インプラント型皮下装置100とリードレス心臓ペースメーカ200の両方が、本発明のインプラント型システム10内でエミッタまたはレシーバとして働くことができる。
【0079】
図4に例示されるようなインプラント型皮下装置100およびリードレス心臓ペースメーカ200の移植は、経胸壁測定に適合しており、リードレス心臓ペースメーカ200が移植されている心臓以外の、心臓のチャンバの容積の変化を検出するために使用することができる。
【0080】
一実施例によれば、インプラント型皮下装置100をエミッタとして使用し、右心室に移植されたリードレス心臓ペースメーカ200をレシーバとして使用することにより、心房の収縮(「心房キック」)に関する情報は、心房の機械的活動が、右心室に存在する血液の量およびリードレス心臓ペースメーカ200の向きの両方を変更することを前提として、リードレス心臓ペースメーカ200によって回復され得る。心房の収縮に関する情報は、心房の正常な活動に刺激を適応させるために、リードレス心臓ペースメーカ200によって使用され得る。
【0081】
加えて、システム10は、双極子エミッタが双極子レシーバとは別個であるように、少なくとも4つの電極を有するので、同じリードの2つの電極間のみの測定よりも、より完全であり、従って、周囲の媒体のより典型的なインピーダンスの測定値を得ることができる。
【0082】
さらに、2つの装置100、200は、双極子エミッタと双極子レシーバとを統合するために構成される。従って、装置100、200の各々は、医師の要望に応じて、エミッタとして、またレシーバとしても作用し得る。従って、特に装置100、200が移植されている患者の寿命の間に、最も感度が高くかつ/または最もエネルギー節約できる双極子の構成を選択することが可能である。この選択は、遠隔測定モジュールを用いてリアルタイムに行うことができる。
【0083】
変形例では、本発明のインプラント型医療用システムは、インプラント型皮下装置、例えば装置100および2つのリードレスペースメーカ、それぞれがペースメーカ200のタイプ(1つは右心室への移植用に提供され、もう1つは右心房への移植用に提供される)、それぞれのインプラント型皮下装置および少なくとも1つの双極子エミッタおよび/またはレシーバ電極を含むリードレスペースメーカを含む、マルチ装置システムに統合されることができる。このタイプのシステムは、経胸壁測定に適しており、右心室および右心房で観察される容積の変化を検出するために使用することができる。このタイプのシステムは、経胸壁測定のより網羅的に行うために使用できる。さらに、2つのリードレスペースメーカのうちの1つは、右心房の心臓を刺激するように適応されている。この変形例の代替として、2つのリードレスペースメーカのうちの1つは、右心房ではなく、左心室への移植のために提供される。1つのペースメーカが左心室に移植され、もう1つが右心室に移植されるという事実により、心室間再同期が行われるようになる。
【0084】
本発明のインプラント型医療用システムは、装置100のようなインプラント型皮下装置と、ペースメーカ200のような3つのリードレスペースメーカ(1つは右心室に、もう1つは右心房に、さらにもう1つは左心室への移植用に提供される)からなるマルチ装置システムに統合することができ、インプラント型皮下装置とリードレスペースメーカのそれぞれは、少なくとも1つの双極子エミッタおよび/またはレシーバ電極を含む。このタイプのシステムは、トリプルチャンバー(右心室、右心房、左心室)システムと呼ばれるインプラント型心臓再同期療法(CRT)システムを構成し、診断だけでなく心不全(心臓まひとしても知られる)の治療にも適している。実際、インプラント型心臓再同期システムでは、心室内収縮と心室間収縮を同期させるために、左心室に刺激を与えるためのリードレスペースメーカを必要とする。
【0085】
図5は、心電
図30と処理された電気信号32を示している。心電
図30は、手段16によって捕捉され、電気信号32は、
図4に見られるように、マルチ装置システム100、200に統合されたシステム10の分析モジュール18によって捕捉され、処理される。
【0086】
図1~4の記述に既に使用されているのと同じ参照番号をもつ要素については、再度詳細には記載しない。上記のそれらの記述を参照すること。
【0087】
分析モジュール18、特に、プロセッサ25は、前駆出期間を表すパラメータを決定するために、処理された電気信号32と心電
図30を組み合わせるように構成されている。
【0088】
血行動態において、前駆出期間は、駆出収縮期に先行する等容性収縮に対応する。それは交感神経系の依存下にあり、心筋収縮力を反映する。
【0089】
前駆出期間は、QRS複合波、すなわちQ波またはR波の開始から大動脈弁の開口までの期間と定義される。
【0090】
図5の参照30によって示される心電図は、PQRST複合波のRピークからQ波のピークを同定するために使用することができる。実際、RピークはQ波のピークよりもRピークの振幅が大きいので、RピークはQ波のピークよりも検出しやすい。
【0091】
従って、
図5の参照T1によって示されるQピークの同定は、前駆出期間の開始を決定するために使用することができる。
【0092】
変形例では、R波の検出は、前駆出期間の開始時間の指標としてそのまま使用され、これは、Q波の同定に必要なシステム10の分析モジュール18の複雑さを低減することができることを意味する。
【0093】
別の変形例では、R波の検出は、電位図から行われる。
【0094】
大動脈弁の開口部は、システム10の分析モジュール18によって処理された処理済電気信号32によって決定される。処理された電気信号32は、システム10のアナログ-デジタル変換器24によってデジタル化され、電気信号に含まれる血行動態情報から呼吸情報を識別するためにデジタル的に除去されている。0.5Hz~30Hzの帯域通過フィルタが血行動態情報を回復するために使用され、一方、呼吸情報の回復にはカットオフ周波数fcが0.5Hzおよび5Hzの範囲、特にfc=1Hzの低周波フィルタが使用される。帯域通過フィルタの周波数0.5Hz~30Hzの範囲は、0.5Hz未満の周波数をカットして呼吸器系のアーチファクトを除去することと、30Hz超の高周波の雑音を除去することの両方に使用できる。
【0095】
変形例では、周波数の調整が必要な場合、帯域通過フィルタおよび低周波フィルタに対する周波数に対する値は、プロセッサ25によって調整される。
【0096】
当業者は、呼吸情報が肺の容積の変化と相対的であり、双極子レシーバによって順番に検出される電場の伝送に対する修飾を引き起こすことを理解するであろう。
【0097】
図5に例示されるように、T2によって示される大動脈弁の開口は、Q波、すなわちT1からの開始に続く、処理された電気信号32の最初の局所最小値34に相当することが示されている。
【0098】
このため、心電
図30の手段によって検出されたQ波の開始と、処理された電気信号32の手段によって検出された大動脈弁の開口との間の期間、すなわちT1とT2との間の期間を、参照ΔPEPによって
図6に示される前駆出期間を決定するために使用することができる。従って、T2は駆出の開始時間に相当する。
【0099】
前駆出期間ΔPEPの持続時間は、心不全をモニタリングする際の指標として作用する可能性がある。例として、前駆出期間ΔPEPが高いほど、心臓が効率的に機能していないと考えられる。
【0100】
本発明のシステム10は、特に、当業者に知られている先行技術の方法によって、前駆出期間の終了の決定において遭遇する困難を克服するために使用することができる。
【0101】
変形例では、分析モジュール18は、処理された電気信号32から、駆出率または駆出量のような治療の効力を表すパラメータを、特に、数週間、数ヶ月または数年の期間、特に、長期間にわたる測定された前駆出期間ΔPEPの変化を考慮することによって監視することも可能である。この目的のために、測定された前駆出期間ΔPEPに対する値は、システム10の遠隔測定モジュールによって外部装置に転送されてもよい。変形例では、測定された前駆出期間ΔPEPの値は、保存手段、例えば、システム10の装置100、200の1つの保存手段上に記録され得る。
【0102】
別の変形例では、システム10は、心臓からの音を表す音響信号から心臓の機械的活動を検出することができる。次に、分析モジュール18は前記音響信号と処理された電気信号とを比較するように構成される。さらに別の変形例では、システム10は、例えば、心臓の機械的活動を検出するために使用することができるインプラント型皮下装置100に組み込まれた加速度計を備える。
【0103】
このため、システム10は、心臓の機械的/音響的活動を検出し、捕捉するために構成されてもよい。機械的/音響的活動に関してこのように捕捉される情報は、システム10の分析モジュール18によって捕捉される電気信号32を相関させるために使用され得る。
【0104】
図6は、大動脈圧および左心室圧の変動と、
図5に表される捕捉および処理された電気信号32との間の比較を示す。
【0105】
図1~5の記述に既に使用されているのと同じ参照番号をもつ要素については、再度詳細には記載しない。上記のそれらの記述を参照すること。
【0106】
図6のプロット36によって表される左心室圧の変動、および
図6のプロット38によって表される大動脈圧の変動を、当業者によって知られている方法に従って、大動脈および左心室に置かれた2つの心室内ミラー圧カテーテルによって取得した。
【0107】
図6では、T3は心室の収縮の開始を示している。実際、
図6のプロット36上の参照番号37によって示されるように、T3を超えて、左心室内の圧力が増加している。
【0108】
図6のプロット38上の参照番号40によって示されるように、T2’を超えて、血液が動脈内を循環すると大動脈圧が上昇する。
【0109】
心電
図30のQRS複合波に表される心室の脱分極後、心筋が収縮し、プロット36上の時間T4に見られるように、左心室の圧力が増加する。圧は、T2’時に大動脈弁を開くのに十分な値に達するまで上昇する。T4とT2’の間の時間は心臓の等容性収縮の持続時間を表し、心腔内の血液量が変化しない(弁はまだ開いていない)ことから、この時間は心室の等容性収縮の持続時間と呼ばれる。T2’では、大動脈弁が開口し、血液が大動脈を通って循環することを可能にし、それにより、参照番号40によって示される
図6のプロット38に見られるように、動脈の圧力を増加させる。
【0110】
次いで、大動脈圧38の変動を用いて、駆出の開始に対応する時間T2’を測定する。
【0111】
図6に見られるように、本発明による処理された電気信号32は、プロット38のT2’における大動脈圧40の増加の開始に本質的に対応する局所最小値34を有する。
【0112】
図6は、T2’=T2、すなわち、処理された電気信号32上で観測された局所最小値の横軸が、大動脈弁の開口の時間に起因する可能性があることを示す。
【0113】
大動脈圧38の変動は、T2’とT4の間の期間に相当する「左心室駆出時間」について、参照LVETによって
図6に示される左心室駆出の持続時間を決定するためにも使用され得る。
【0114】
図7は、
図4に見られるように、ソノメトリック測定から決定された左心室の容積の変動と、マルチ装置システム100、200に統合されたシステム10の分析モジュール18によって捕捉され、処理された電気信号との間の比較を表す。
【0115】
図1~6の記述に既に使用されているのと同じ参照番号をもつ要素については、再度詳細には記載しない。上記のそれらの記述を参照すること。
【0116】
図7のプロット42によって示される左心室容積の変動は、当業者に周知の方法に従ったソノメトリック測定によって決定された。
【0117】
図7のプロット32および42の比較は、ピーク、特に、間隔44および46に含まれるピーク、ならびに信号の期間、特に前駆出期間ΔPEP
1とΔPEP
2は一方の区画から他方の区画に保存される。さらに、
図7のプロット32と42は、間隔44と46の繰り返しなど、モチーフが繰り返しであることを証明している。このため、処理された電気信号32は、プロット42によって表される左心室の容積のものと類似した変動を有し、それによって、処理された電気信号と心臓の血行動態特性との相関が示される。
【0118】
図8は、心電
図48、心音
図50、電気信号52、呼吸信号54および血行動態信号56を示している。
【0119】
図1~
図7の記述に既に使用されているのと同じ参照番号を付した要素については、再度詳細には記載しない。上記のそれらの記述を参照すること。
【0120】
電気信号52は、
図3に見られるように、インプラント型皮下装置100に統合されたシステム10の分析モジュール18によって捕捉された電気信号である。
【0121】
図8に表される電気信号52は、生信号である。すなわち、
図1を参照して説明したように、この目的のために設けられたフィルタによってまだデジタル処理されていない。
【0122】
図8に表わされる呼吸信号54は、当業者に周知の方法に従った音響測定の手段によって決定された。
【0123】
一実施形態では、システム10は、心音図を捕捉するのに適した音響測定手段を含むことができる。変形例では、システム10は、加速度計を備えることができる。従って、システム10は、心臓の機械的/音響的活動を検出し、捕捉するように構成されてもよい。機械的/音響的活動に関するこのようにして捕捉された情報は、システム10の分析モジュール18によって捕捉された電気信号52を相関させるために使用されてもよい。
【0124】
呼吸信号54および血行動態信号56は、電気信号52から抽出され、デジタル処理によって識別されている。特に、1Hz~30Hzの帯域通過フィルタが、血行動態情報を回復するために使用され、一方、呼吸情報を回復にはカットオフ周波数fcが0.5Hzおよび5Hzの範囲、特にfc=1Hzを有する低周波フィルタが、電気信号52から使用される。
【0125】
図5~7を参照して説明したように、心電
図48を使用して、前駆出期の開始を決定することができる。
【0126】
図8の時間T1は、Q波の検出から求められる駆出前期間の開始時刻に相当し、T1はピークQに相当する。
【0127】
図8の時間T1’は、R波の検出から決定される駆出前期間の開始時刻に相当し、T1’はピークRに相当する。
【0128】
従って、T1とT1’はそれぞれ前駆出期間の開始を示すことができる。
【0129】
図8を使用して、システム100から捕捉され、処理され、抽出された血行動態信号56を心音
図50からの信号と比較することができ、それによって、これら2つの信号50、52の間の相関を図示することができる。
【0130】
図8に見られるように、T2によって示される大動脈弁の開口は、Q波またはR波の開始に続く血行動態信号56の2番目の局所最大値58、すなわち、それぞれT1またはT1’からのものに相当することが示されている。
【0131】
従って、
図8のQ波から求めた前駆出期間ΔPEPはΔPEP=T2-T1に相当する。
【0132】
図8のR波から求めた前駆出期間ΔPEP’はΔPEP’=T2-T1’に相当する。
【0133】
従って、前駆出期間ΔPEPの持続時間は、インプラント型皮下装置100から決定され、心不全のモニタリング時の指標として作用する可能性がある。
【0134】
従って、本システムは、前駆出期間を表すパラメータを決定するために、呼吸および血行動態の両方の情報を回復するための簡略化された手段を提供する。従って、本システムは、特に得られた信号における高信号/雑音比のために、前駆出期間の検出が困難な心音センサに頼る必要がなく、前駆出期間を決定するために使用することができる。
【0135】
前駆出期間の決定は、心不全の診断およびモニタリングに適した指標を提供する。さらに、システムが少なくとも1つの遠隔測定モジュールを含む変形例では、分析モジュールが、時間の経過に伴う前駆出期間の異常な増加を検出した場合、警告メッセージをケア職員に送信することができ、これは、心不全の指標となり得る。
【0136】
従って、本システムは、左心室駆出時間を変更することなく前駆出期間を短縮することを目的とする心臓再同期療法を評価し、最適化するのに適している。