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特許7102518光学信号の歪みを低減するための装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】光学信号の歪みを低減するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 2/00 20060101AFI20220711BHJP
   G02F 1/01 20060101ALI20220711BHJP
   H04B 10/2537 20130101ALI20220711BHJP
   H04B 10/2575 20130101ALI20220711BHJP
   H04B 10/61 20130101ALI20220711BHJP
【FI】
G02F2/00
G02F1/01 B
H04B10/2537
H04B10/2575 120
H04B10/61
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2020522067
(86)(22)【出願日】2018-10-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-07
(86)【国際出願番号】 EP2018078662
(87)【国際公開番号】W WO2019077090
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-06-02
(31)【優先権主張番号】1717084.6
(32)【優先日】2017-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】306032578
【氏名又は名称】レオナルド・ユーケー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Leonardo UK Ltd
【住所又は居所原語表記】1 Eagle Place,St.James’s,London,SW1Y 6AF,United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】フリント、イアン
(72)【発明者】
【氏名】モハメッド、アロム
(72)【発明者】
【氏名】ハシャ、シャイキリ
【審査官】井部 紗代子
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-267798(JP,A)
【文献】特開2008-139784(JP,A)
【文献】国際公開第2007/063774(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0048061(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0075679(KR,A)
【文献】ZHU, Wenwu et al.,Dynamic Range Improvement of a Microwave Photonic Link Based on Brillouin Processing,IEEE Photonics Technology Letters,Volume: 28, Issue: 23,米国,2016年10月04日,pp. 2681 - 2684
【文献】SANCHO, Juan et al.,Dynamic Microwave Photonic Filter Using Separate Carrier Tuning Based on Stimulated Brillouin Scattering in Fibers,IEEE Photonics Technology Letters,Volume: 22, Issue: 23,米国,2010年09月30日,pp. 1753 - 1755
【文献】SONG, Kwang Yong,Brillouin dynamic grating in optical fibers and its applications,2009 Asia Communications and Photonics conference and Exhibition,Vol. 7630,米国,2010年02月02日,pp. 763008-1 - 763008-8
【文献】保立和夫,痛みの分かる材料 構造のための光ファイバ神経網技術,非破壊検査,60巻3号,日本,2011年,142頁-149頁,学術文献等2015-01091-003
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00 - 1/125
G02F 1/21 - 7/00
H04B 10/00 -10/90
H04J 14/00 -14/08
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学信号における歪みを低減するための装置であって、前記装置は、
光学導波管と、
無線周波数(RF)信号を受信するための入力と、
前記入力において受信された前記RF信号を搬送するように変調された第1のコヒーレント光ビームを生成するための手段と、
第2のコヒーレント光ビームを生成するための手段と
を備え、前記第1のコヒーレント光ビーム及び前記第2のコヒーレント光ビームの光学周波数は、ブリルアン条件を満たすために異なり、
前記装置は、誘導ブリルアン散乱を通して前記光学導波管中でダイナミックブリルアングレーティングを生成するために、前記第1のコヒーレント光ビームに、第1の方向に前記光学導波管に沿って伝搬させ、前記第2のコヒーレント光ビームに、反対方向に前記光学導波管に沿って伝搬させるように構成され、
前記入力において受信された前記RF信号を搬送するように前記第2のコヒーレント光ビームを変調するための手段を備えることと、前記第1のコヒーレント光ビーム及び前記第2のコヒーレント光ビームが、異なる基本波対歪み成分比を有することを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記第2のコヒーレント光ビームは、前記第1のコヒーレント光ビームより低い基本波対歪み成分比を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1のコヒーレント光ビームを前記生成するために手段は、前記第1のコヒーレント光ビームが前記第2のコヒーレント光ビームと比較して相対的に高い基本波対歪み成分比を有するように、前記変調された第2のコヒーレント光ビームを前記生成するための手段と比較して相対的に高い効率且つ相対的に高い線形を有するように同調された第1の光学変調器を備える、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1のコヒーレント光ビームを前記生成するための手段は、単側波帯(SSB)変調器を備える、請求項1~3のうちのいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
第2のコヒーレント光ビームを前記生成するための手段は、実質的にパイ(π)でバイアスされる、離調された変調器を備える、請求項1~4のうちのいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記第2のコヒーレント光ビームを前記生成するための手段は、単側波帯(SSB)変調器を備える、請求項1~5のうちのいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
ブリルアン条件を満たすために、前記第1のコヒーレント光ビームに対して前記第2のコヒーレント光ビームの前記光学周波数をシフトするための手段を備える、請求項1~6のうちのいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記ダイナミックブリルアングレーティングを通過した前記第1のコヒーレント光ビームの一部分を受信するように構成された光学受信機を備える、請求項2~7のうちのいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記光学受信機からの出力を受信するように構成されたアナログ-デジタルコンバータを備える、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
ビート周波数だけ前記無線周波数信号からシフトされた周波数で変調された第3のコヒーレント光ビームを生成するための手段、ブリルアングレーティングを通過した出力光学信号を前記第3のコヒーレント光ビームと結合するように構成された偏光コンバイナを備え、それにおいて、前記光学受信機は、前記ビート周波数を搬送する電気信号を出力するために、前記偏光コンバイナから前記出力を受信するように構成される、請求項8又は9に記載の装置。
【請求項11】
前記変調された第2のコヒーレント光ビームを、それが前記光学導波管を通って伝搬される前に増幅するように構成された増幅器を備える、請求項1~10のうちのいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記増幅器は、前記ブリルアングレーティングを通過した前記第1のコヒーレント光ビームの一部分における光学歪み成分がノイズフロア未満となるのに十分な程度に前記第1のコヒーレント光ビームの前記歪み成分を前記グレーティングに散乱させるパワーにまで前記変調された第2のコヒーレント光ビームを増幅するように構成される、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
無線周波数受信機及び光学リンクを備える無線受信機システムであって、前記光学リンクは、請求項1に記載の装置を備える、無線受信機システム。
【請求項14】
光学信号における歪みを低減するための方法であって、前記方法は、
無線周波数(RF)信号を搬送するように第1のコヒーレント光ビームを変調し、光学導波管に沿って前記変調されたコヒーレント光ビームを伝搬することと、
前記第1のコヒーレント光ビームとは反対方向に前記光学導波管を通って第2のコヒーレント光ビームを伝搬することによって、誘導ブリルアン散乱を使用して前記光学導波管中でダイナミックブリルアングレーティングを生成することと、
を備え、前記第1のコヒーレント光ビーム及び前記第2のコヒーレント光ビームの光学周波数は、ブリルアン条件を満たすために異なり、前記第2のコヒーレント光ビームが、入力において受信された前記RF信号を搬送するように変調され、それにおいて、前記第1及び第2のコヒーレント光ビームが、異なる基本波対歪み成分比を有するように変調されることを特徴とする、方法。
【請求項15】
前記第2のコヒーレント光ビームは、前記第1のコヒーレント光ビームより低い基本波対歪み成分比を有するように変調され、光学-電子トランスデューサは、前記ブリルアングレーティングを通過した前記第1のコヒーレント光ビームの一部分を受信するように構成される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
アナログ-デジタルコンバータは、前記光学-電子トランスデューサの出力を受信するように構成される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第2のコヒーレント光ビームは、離調された光学変調器によって変調される、請求項14~16のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記第2のコヒーレント光ビームは、実質的にπに離調された光学変調器によって変調される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第2のコヒーレント光ビームは、ブリルアン散乱のために反ストークスシフトに実質的に等しい周波数だけアップコンバートされる、請求項14~17のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記変調された第2のコヒーレント光ビームは、前記光学導波管を通って伝搬される前に増幅される、請求項14~19のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記変調された第2のコヒーレント光ビームは、光学歪みから引き起こされた歪み成分がノイズフロア未満となるようなパワーに増幅される、請求項14~20のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記第1のコヒーレント光ビームは、単側波帯(SSB)変調器によって変調される、請求項14~21のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記第1及び第2のコヒーレント光ビームを作成するために、コヒーレント光ビームを分割することを備える、請求項14~22のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
第3のコヒーレント光ビームは、前記アナログ-デジタルコンバータの動作帯域幅内にある分離周波数だけ対象周波数から離間される周波数がその上に課されるように変調され、前記第3のコヒーレント光ビームは、前記光学-電子トランスデューサによって受信される混合されたビームを形成するために、前記ブリルアングレーティングを通過した前記第1のコヒーレント光ビームの一部分と混合される、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
前記光学信号は、RF受信機又はRF送信機に接続されたフォトニックリンクによって搬送され、前記RF信号は、前記RF受信機によって受信される又は前記RF送信機によって送信される、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、光学信号における歪みを低減する装置及び方法に関する。本発明は、電子戦(electronic warfare:EW)システムにおける超広帯域フォトニック無線周波数受信機(RF)と共に使用されるフォトニックリンクに対して考案されたが、本発明は、長距離電気通信ケーブルにおける歪みを除去するためなどの他の用途を有し得る。
【0002】
RFフィルタリングを使用する現在の非フォトニックEW受信機は、中間の50dBの典型的なダイナミックレンジを有する。フォトニックRFリンクは、フィルタリングなしで同じ周波数範囲及び帯域幅に対してわずかに良好なダイナミックレンジを達成する。従って、フォトニックRFリンクは、EW受信機に改善されたダイナミックレンジを提供するための有望なルートを提供する。
【0003】
フォトニックRF信号のダイナミックレンジは、光学ビームを変調して受信RF信号を搬送する変調器によって、変調プロセスを通して導出される歪み成分が優勢になり始める前に適用されることができる光学変調の量(典型的には4%)によって制限される。本発明の目的は、フォトニックRF信号のダイナミックレンジを改善することである。
【背景技術】
【0004】
ブリルアン散乱は、光搬送媒体内の光学不均一性(optical inhomogeneity)から生じる非弾性光学光散乱(inelastic optical light scattering)の形態である。光学媒体内部の分子の熱運動は、光学材料内の音響振動の形成につながる局所的な密度変動を引き起こす。そのような波は、音響フォノンを表す。入射光とこれらのフォノンとの相互作用は、ブリルアン散乱をもたらす。
【0005】
自然ブリルアン散乱(Spontaneous Brillouin scattering)は、光学媒体内の自然な熱変動によって引き起こされる。しかしながら、媒体を通って伝播される光ビームの強度が十分に高いとき、光ビームの電場における変動は、材料内に音響振動を誘発する可能性がある。これらの誘発された音波によって引き起こされる散乱は、誘導ブリルアン散乱(SBS:Stimulated Brillouin scattering)として知られている。
【0006】
入射ビームの周波数からの散乱光の光学周波数における変化は、ストークスシフトと呼ばれる。より低い周波数にシフトされる散乱光は、ストークス成分として示され、より高い周波数に散乱される光は、反ストークス成分として示される。
【0007】
ブリルアン散乱光のストークスシフト(ブリルアンシフト)は、光学材料内の音響波の周波数に等しい。シリカ光ファイバでは、約1.55μmの波長を有する入射光からのブリルアン散乱光のストークスシフトの典型的な値は、10.8GHzである。これは、シリカ中の音速(V=5900m/s)とシリカの屈折率n=1.46との結果である。
【0008】
SBSの適用では、信号を搬送する第1の弱いビームが、第1の方向に光学材料を通って伝搬され、SBSをもたらすのに十分な光学パワーの第2の光ビームが、反対方向に光学材料を通って伝搬される。逆伝搬するビームが適切に偏光されるように構成し、光学媒体に対するブリルアンシフトによって周波数を分離することによって、形成されるダイナミックブリルアングレーティング(Dynamic Brillouin grating)は、信号の一部分を第1のビーム源に向けて反射して戻すように作用する。
【0009】
ダイナミックブリルアングレーティングの生成及びその背後にある原理を説明する更なる情報は、Generation and Application of Dynamic Grating in Optical Fibres using Stimulated Brillouin Scattering; Nikolay Primerov; Thesis No. 5615 (2013); Ecole Polytechnique Federale De Lausannaに見出されることができ、それは、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
以下のものは、変調された光学信号とブリルアングレーティングを使用することについて記載している。
米国特許出願公開第2002/048061号
ZHU WENWU ET AL: "Dynamic Range Improvement of a Microwave Photonic Link Based on Brillouin Processing", IEEE PHOTONICS TECHNOLOGY LETTERS, IEEE SERVICE CENTER, PISCATAWAY, NJ, US, vol. 28, no. 23, 1 December 2016 (2016-12-01 ), pages 2681-2684, XP011626995, ISSN: 1041-1135
JUAN SANCHO ET AL: "Dynamic Microwave Photonic Filter Using Separate Carrier Tuning Based on Stimulated Brillouin Scattering in Fibers", IEEE PHOTONICS TECHNOLOGY LETTERS, IEEE SERVICE CENTER, PISCATAWAY, NJ, US, vol. 22, no. 23, 1 December 2010 (201 0-12-01 ), pages 1753-1755, XP011349139, ISSN: 1041-1135
TONDA-GOLDSTEIN S ET AL: "40 dB dynamic enhancement of modulation depth for optically carried microwave signals", ELECTRONICS LET, lEE STEVENAGE, GB, vol. 39, no. 1 0, 15 May 2003 (2003-05-15), pages 790-792, XP006020343, ISSN: 0013-5194
米国特許出願公開第2008/144987号
【発明の概要】
【0010】
第1の態様では、請求項1に記載の装置が提供される。
無線周波数信号は、EW信号であり得る。無線周波数信号は、RF受信機から受信され得る。
【0011】
第1及び第2のビームは、異なる基本波:歪み成分比(即ち、基本波の振幅対最大振幅歪み成分の振幅の比)を有するので、ダイナミックブリルアングレーティングは、信号中の基本波又は歪み成分のうちの一方を他方より優先的に反射するように作用することになる。装置の選ばれた構成に応じて、グレーティングを透過されたビーム又はグレーティングから反射されたビームのいずれかは、グレーティングに入射する前の変調された光ビームと比較して、低減されたRF歪み成分を有することになる。従って、装置は、低減された歪みRF歪み成分を有する信号を搬送するグレーティングからの出力ビームを受信するように構成された電子-光学トランスデューサを含み得る。
【0012】
そのため、装置は、信号を搬送するように光を変調するプロセスを通して導入される歪み成分を低減又は除去する効率的な手段を提供し、RF受信機と共に使用される既存の光学及び電子リンケージと比較して、より高いスペクトルフリーの(spectrally free)ダイナミックレンジを有する出力信号を提供する。
【0013】
第2のビームは、グレーティングを形成するために誘導ブリルアン散乱をもたらすのに十分な光学パワーを有し得る。第2のビームは、第1のビームより高い光学パワーを有し得る。装置は、グレーティングを通って伝播した第1の光ビームの一部分を受信するように構成された光学受信機を備え得る。代替的に、光学受信器は、グレーティングから反射された第1の光ビームの一部分を受信するように構成され得る。
【0014】
1つの構成では、第2のビームは、反ストークス周波数シフトに実質的に等しい大きさだけ(例えば、第2のビームをアップコンバートすることを通して)第1のビームより高い周波数(より短い波長)を有し、第2のビームは、第1のビームより小さい基本波対歪み成分比を有し得、光学受信機は、グレーティングを透過された、即ち、第1のビームの方向に進む第1の光ビームの一部分を受信するように構成され得る。
【0015】
代替的に、あまり好ましくはないが、第2のビームは、ストークス周波数シフトだけ(例えば、ダウンコンバートすることを通して)第1のビームより低い周波数を有し得、第2のビームは、第1のビームより小さい基本波:歪み比を有し得、光学受信機は、グレーティングによって散乱(反射)される、即ち、第1のビームとは反対方向に進む第1のビームの一部分を受信するように構成され得る。第2の構成の認識される欠点は、自然ブリルアン散乱が出力の品質を低減し得ることである。
【0016】
グレーティングからの出力光学信号における歪み成分の振幅は、基本波と比較して実質的に低減され、好ましくは、最大歪み成分の振幅がノイズフロアを下回るように低減されるので、光学変調器は、より高い変調器指数(任意選択で100%に近い)で動作するように設定されることができ、それにより、出力信号の信号対雑音比を改善する。
【0017】
装置は、RF受信機のための光学リンクとして使用され得る。実施形態では、光学変調器に供給される信号を増幅するために使用されるRF受信機の増幅器は、典型的には、光学変調中に作成される歪み成分と整合する少なくともいくつかの歪み成分を生成するであろう。それにより、装置は、電気領域中の増幅器並びに光学変調器から導出される歪み成分を低減/実質的に除去するように更に有利に作用することになる。
【0018】
装置は、光源からのコヒーレント光を変調して第1の光ビームを提供する第1の変調器を有するコヒーレント光源を備え得る。
【0019】
装置は、第2の変調された光ビームを生成するために、コヒーレント光(例えば、コヒーレント光源からのコヒーレント光の一部分)を変調するように構成された第2の変調器を備え得、この場合、装置は、スプリッタを更に含み得る。
【0020】
代替的に、第2の変調された光ビームは、変調されたコヒーレント光源によって生成されることができる。
【0021】
第2の光ビームがより低い基本波:歪み成分の比を有するために、第2の変調器は、第1の変調器と比較して離調され得る。第2の変調器は、実質的にπに同調され得る。
【0022】
ダイナミックレンジが変調深度の二乗に依存することを考慮すると、装置は、典型的には4%の変調深度を使用する現在のシステムに対して28dBまでのダイナミックレンジの増大を提供することができることが期待される。
【0023】
第1及び第2のビームの両方が信号を搬送するように変調されるので、グレーティングは、歪み成分の変化する周波数を除去するために、変化する信号(例えば、EWスペクトル)と自動整合するであろう。
【0024】
第1及び第2のビームは典型的には別々に変調されることになるので、第1のビームにおける異なる歪み成分の相対的なサイズは、第2のビームにおける歪み成分の相対的なサイズとは異なり得る。装置は、第2のビームを増幅するように構成された増幅器を備え得る。これにより、第2のビームのゲインを調整してグレーティングの強度を制御し、第1のビームにおける最大歪み成分をノイズフロア未満に抑圧することができる。これは、比較的小さい歪み成分の過剰抑圧をもたらし得るが、全ての抑圧された歪み成分の合計幅が合計の観察された帯域幅と比較して非常に狭くなるので、少なくともEWの用途については、信号品質に対して有する有害な影響は非常に小さい。
【0025】
グレーティングの出力における基本波の減衰に応じて、装置は、出力信号を増幅するための光学増幅器(例えば、EDFAタイプ又はその他)を備え得る。
【0026】
光学導波管は、光ファイバを備え得る。
【0027】
グレーティングを構築するのに必要とされるブリルアンシフトのサイズは、光学導波管材料の物理的特性、例えば、音速及び屈折率、導波管における応力、並びに第1及び第2のビームの波長に依存するであろう。シリカガラス繊維が導波管材料として使用される場合、ブルリアン条件を満たすに約10GHz~11GHzのシフトが必要とされる可能性がある。これは、シリカ以外の材料又はシリカに加えて材料を備える導波管を使用する場合、調整される必要があり得る。シリカ繊維の可能な代替物の例は、有利な光学特性を有する材料(1つ以上)を保持し得る空洞を含むフォトニック結晶繊維である。
【0028】
第2のビームの光学パワーは、出力信号におけるレイテンシを低減するために、光学導波管の長さに対してトレードされ得る。より強力な第2のビームは、より短い導波管の使用を可能にするであろう。
【0029】
光学光源及び光学変調器は、例えば、別個の光源及び変調器又は単一ユニット変調光源によって提供され得る。
【0030】
第1及び第2の光ビームは、信号を搬送するように振幅変調され得る。第1の光学変調器は、単側波帯(SSB)変調器であり得る電子-光学変調器を備え得る。第2の光学変調器は、単側波帯(SSB)変調器であり得る電子-光学変調器を備え得る。SSB変調器の使用は、2つの側波帯間の起こり得る干渉を補償する必要性を回避する。
【0031】
任意選択で、第1及び/又は第2の変調器は、搬送波抑圧単側波帯変調器を備え得る。これは、光学受信機へのビームのパワーを有利に低下させ、より良好なパワー処理を可能にし、ノイズを低下させる。
【0032】
コヒーレント光源、例えば、レーザは、実質的に1550nmを中心とする波長Cバンドを有するコヒーレント光を出力するように構成され得る。これは、多くの市販のコンポーネントがこの波長で動作するように適合されているので好ましい。しかしながら、装置は、原理的には、紫外線からテラヘルツの範囲内に入る他の波長の第1及び第2の光学ビームを使用し得る。
【0033】
装置は、変調器のうちの一方又は両方を駆動するために、アンテナ及びRF増幅器を含み得るRF受信機を備え得る。RF受信機は、両方の変調器を駆動するために使用され得る。RF受信機は、例えば、1KHz~100GHz、好ましくは3KHz~100GHzの帯域幅内の任意のEW信号を受信するように構成された、非常に広帯域の受信機であり得る。
【0034】
装置は、光学受信機から電気出力を受信するように構成されたアナログ-デジタルコンバータ(ADC)を備え得る。
【0035】
現在のADCは、所望される忠実度に対して約2GHzの周波数までしか変換しないので、装置は、グレーティングからの出力をADCが変換することができる周波数にダウンコンバートするための手段を備え得る。
【0036】
1つの構成では、装置は、グレーティングからの出力信号をダウンコンバート又はアップコンバートするために、電子ミキサを含み得るが、より好ましくは、より少ない歪みを提供するフォニックコンバータを含み得る。
【0037】
装置は、グレーティングからの出力ビームを、局部発振器(lo)で同調されたSSB搬送波抑圧変調器によって変調された第3のコヒーレント光ビームと結合するように構成されたコンバイナ(例えば、偏光コンバイナ)を備え得る。局部発振器をADCの動作帯域幅(operational bandwidth)内の周波数だけ対象周波数(a frequency of interest)からシフトされた周波数に同調させることによって、ADCが変換することができる周波数でビート信号が光学受信機の出力において生成される。
【0038】
本発明は、方法の観点からも説明され得、従って、本発明の別の態様では、請求項14に記載の光学信号における歪みを低減するための方法が提供される
【0039】
第2の光ビームは、第1の光ビームより低い基本波-歪み成分比を有するように変調され得、第2の光ビームは、ブリルアンシフトによってアップコンバートされ得、使用される出力は、ブリルアングレーティングを通過した第1のビームの一部分である。代替的に、あまり好ましくはないが、第2のビームは、第1の光ビームより高い基本波-歪み成分比を有するように変調され、ストークスシフトによってダウンコンバートされ得る。
【0040】
第2のビームは、離調された光学変調器によって変調され得る。例えば、第2のビームは、実質的にπに同調された光学変調器によって変調される。
【0041】
(削除)
【0042】
第2の変調されたビームは、光学導波管を通って伝搬される前に増幅され得る。増幅は、変調された第2のビームへのストークスシフトの適用に続いて生じ得る。
【0043】
第2の変調されたビームは、少なくとも、光学歪みから引き起こされた歪み成分をノイズフロア未満のレベルまで低減するのに必要なパワーに増幅され得る。
【0044】
第1の光ビームは、単側波帯(SSB)変調器によって変調され得る。
【0045】
方法は、コヒーレント光ビームを分割して第1及び第2のコヒーレント光ビームを作成することを含み得る。
【0046】
出力は、光学-電子トランスデューサによって電気信号に変換され得る。アナログ-デジタルコンバータは、光学-電子トランスデューサの出力を受信するように構成され得る。
【0047】
第3の光ビームは、アナログ-デジタルコンバータの動作帯域幅内にある分離周波数(separation frequency)だけ対象周波数から離間された周波数をその上に課すように変調され得る。ブリルアングレーティングを通過した第1のビームの一部分は、第3のビームと結合され、光学-電子トランスデューサは、結合された第1及び第3のビームを受信するように構成される。
【0048】
別の態様では、RF受信機と信号プロセッサとの間のフォトニックリンクの光学信号における歪みを低減するための方法が提供され、前記方法は、請求項14に記載の方法を備える。
【0049】
ここで、本発明は、以下の図面を参照して例として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】光学歪み除去メカニズムの機能概略図である。
図2】光学歪み除去メカニズムを組み込んだ光学リンクを備える広帯域RFフォトニック受信機の概略図である。
図3形広帯域RFフォトニック受信機の概略図である。
図4図2の広帯域RFフォトニック受信機の変形の概略図である。
図5】電気ミキサの出力から歪みを除去するために使用されるフォトニックリンクの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1は、RF受信機、例えば、1Khz~100GHzのEW信号を受信するように適合された広帯域受信機と共に使用するための光学リンクの一部である歪み除去装置の機能概略図を例示する。
【0052】
基本波及び不要歪み成分の両方が課された第1の光ビームは、第1の方向に光学導波管を通って伝搬される。基本波及び不要歪み成分の両方が課された第2の光ビームは、第1のビームとは反対方向に光学導波管を通って伝搬する。基本波の振幅対最大歪み成分の振幅の比は、第1の光ビームの等価比より第2のビームの方が低い。言い換えれば、基本波に対する歪み成分の振幅は、第1のビームと比較して第2のビームにおいて相対的により大きい。第2の光ビームは、第1のビームの周波数に対して、導波管材料についての反ストークス周波数だけ周波数シフトされる(ブリルアンシフト)。
【0053】
第2のビームは、第1のビームを反対方向に部分的に反射して戻すように作用するダイナミックSBSグレーティングを導波管中に生成するのに十分な光学パワーを有する。
【0054】
第2のビームは、第1のビームと比較してより低い基本波対歪み成分の比を有するので、グレーティングは、基本波より第1のビーム内の歪み成分を優先的に反射する。そのため、グレーティングを通過する第1の光ビームの一部分は、グレーティングに入射する前の第1のビームと比較して、基本波に対して低減された振幅の歪み成分を有する。言い換えれば、出力は、第1のビームより高い基本波対歪み成分比を有する。装置は、グレーティングを透過された第1のビームの一部分を受信するように構成された光学-電気トランスデューサを含み得る。
【0055】
第2のビームが十分な光学パワーを有する場合、全ての歪み成分の振幅は、非常に高いスペクトルフリーのダイナミックレンジを有する出力を提供するように、ノイズフロア未満まで除去されることができる。
【0056】
SBSグレーティングを生成するために必要とされるビームの光学パワーは、使用される光学媒体に依存し、それは、経験的な実験を通して簡単に決定されることができる。第1及び第2のビームの偏光は、グレーティングを生成するために適切に制御される必要がある。そのような制御は、上述のNikolay Primerov論文に教示されているが、当業者には知られている。
【0057】
図2は、EW RF受信機と、図1の歪み除去装置を利用する光学リンケージとの概略図である。
【0058】
レーザ1、典型的には分布帰還型レーザ(a distributed feedback laser)、第1のスプリッタ2、偏光コントローラ3、単側波帯搬送波抑圧(SSB(C))変調器4、誘導ブリルアンダイナミックグレーティングが生成される光学媒体5(典型的には光ファイバ長、例えば、単一モードファイバ)、光学コンバイナ6、高周波フォトダイオード9、デジタルEWシステムによる受信のための出力を有するアナログデジタルコンバータ10、離調された変調器12、反ストークス周波数だけ入力をアップコンバートするように同調されたフォトニックアップコンバータ13、光学増幅器14(例えば、EDFA)、及び第2の偏光コントローラ15が示されている。
【0059】
装置は、RFアンテナ及び増幅器を備えるEW受信機18と、広帯域RFカプラ19とを更に含む。
【0060】
受信機18によって受信されたEW信号は、ADC10が分解することができる周波数でフォトダイオード9がビートすることを保証するように同調された局部発振器(lo)と、広帯域RFカプラ19(例えば、ウィルキンソンカプラ)を通して結合される。カプラ19からの出力は、変調器4及び12を駆動するために使用される。
【0061】
レーザ1は、第1のスプリッタ2によって第1の光ビームL1と第2の光ビームL2とに分割される、例えば、近赤外周波数のコヒーレント光ビームを提供する。
【0062】
SSB(C)変調器4によって変調された第1の光ビームL1及び第2の光ビームL2は、第1の光ビームL1と第3の光ビームL2との両方が受信機18から供給されるEW信号を搬送するように、離調された変調器12によって変調される。
【0063】
第1及び第2の変調器の両方は、任意選択でマッハ・ツェンダー変調器である。第1の変調器は、高効率で、例えばπ/2にバイアスされる。
【0064】
離調された変調器L2は、L2がL1より小さい基本波の振幅:最大歪み成分の振幅の比を有するように、πでバイアスされる。
【0065】
L2における歪み成分の振幅は、依然として基本波の振幅より小さくあり得る(ただし、基本波より大きい振幅の方が好ましい)。
【0066】
変調されたビームL2は、反ストークス周波数(典型的には、光ファイバを構築するために使用される材料(1つ以上)に応じて約11GHz)だけアップコンバートされ、次いで、(例えば、EDFAタイプ又は他の)光学増幅器14によって増幅される。
【0067】
第1のビームL1及び第2のビームL2は、光ファイバ5を通って逆伝搬される。第2のビームL2は、光ファイバ5内にブリルアングレーティングを誘起するのに十分なパワーを有する。
【0068】
偏光コントローラ3及び15は、ファイバ5内でブリルアングレーティングが正しい向きで発生してL1の所望される反射を提供するように、それぞれL1及びL2の偏光を制御するために使用される。この技術は、当業者によく知られている。
【0069】
第2のビームL2における基本波:歪み成分の振幅の比は、第1のビームL1における基本波対歪み成分の振幅の比より低いので、グレーティングは、基本波よりL1内の歪み成分を優先的に反射し、これは、ファイバ5中のグレーティングを透過されたL1の一部である出力ビームL3が、L1より大きい基本波:歪み成分の比を有することを意味する。このことから、L3は、L1より高いスペクトルフリーのダイナミックレンジを有する。
【0070】
L2における歪み成分の振幅は、L1によって搬送される歪み成分を反射するのにブリルアングレーティングが効果的となるには閾値レベルを超える必要があることが理解されよう。
【0071】
L2の光学パワーは、増幅器14の制御を通して調整されることができる。有利には、L2は、L3内の全ての歪み成分をノイズフロア未満に低減するのに十分に光学的に強力であるように作られる。
【0072】
L2の光学パワーを増大させることによって、歪み成分は、より強く反射され、それは、ファイバ5の短縮を可能にし、このことから、L1に対するL3の信号のレイテンシを低減する。L2のパワー、及びこのことからグレーティングの効率に応じて、ファイバ5は、長さが数十メートルから数キロメートルの間であり得る。
【0073】
出力ビームL3は、対応する電気信号を出力するフォトダイオード9(任意選択で、EDFA又は同等物などの更なる増幅器によって事前に増幅される)によって受信される。フォトダイオード9の出力におけるビートは、ADC10によって検出される。いくつかの実施形態では、増幅器は、ADC10に入力されるフォトダイオード9からの出力を増幅するように位置付けられ得る。ADCの出力は、分析のためにデジタルEWシステムに供給され得る。
【0074】
離調された変調器12は、変調された第2のビームL2の基本波:歪み成分比が変調された第1のビームL1より小さい限り、π以外でバイアスされ得ることが理解されよう。
【0075】
離調された変調器12を使用するのではなく、直接変調されたレーザが低周波(約10GHz未満)で使用され得る。この構成は、大きな歪み成分を自然に生成することができる。直接変調されたレーザが使用される場合、レーザ1と同じ波長を有し、レーザ1と同じ又はそれより大きい線幅を有するべきである。
【0076】
L2が既に十分に強力である場合、増幅器14を省くことが可能であり得る。
【0077】
逆伝搬ビームの経路は、グレーティングを生成するために、逆伝搬ビームが同時にファイバ5を通過するように構成されるべきである。これは、光学成分及び/又はレーザ1のパルス長によって引き起こされる遅延を考慮して、光学経路長を実質的に同じにすることを必要とする。
【0078】
図3は、変形EW RF受信機と、図1の歪み除去装置を利用し、フォトニック混合を提供する光学リンケージとの概略図である。図2の実施形態と共通の部分には、同様の番号が付されている。
【0079】
レーザ1、典型的には分布帰還型レーザ、第1のスプリッタ2、偏光コントローラ3、単側波帯搬送波抑圧(SSB(C))変調器4、誘導ブリルアンダイナミックグレーティングが形成される光学媒体5(典型的には光ファイバ長、例えば、単一モードファイバ)、光学コンバイナ6、第2の偏光コントローラ7、偏光コンバイナ8、高周波フォトダイオード9、デジタルEWシステムへの出力を有するアナログデジタルコンバータ10、第2の光学スプリッタ11、離調された変調器12、アンチストークス周波数だけ入力をアップコンバートするように同調されたフォトニックアップコンバータ13、光学増幅器(例えば、EDFA)、及び第3の偏光コントローラ15が示されている。
【0080】
装置は、適切な局部発振器を有する同調された搬送波抑圧SSBコンバータ16と、第4の偏光コントローラ17とを更に備える。
【0081】
装置は、SSB(C)変調器4及び離調された変調器12を駆動する、RFアンテナ及び増幅器を備えるEW受信機18を更に含む。
【0082】
レーザ1は、第1のスプリッタ2によって第1の光ビームB1と第2の光ビームB2とに分割される、例えば、近赤外周波数のコヒーレント光ビームを生成する。第2の光ビームB2は、第3の光ビームB3と第4の光ビームB4とに更に分割される。
【0083】
第1の光ビームB1と第3の光ビームB3との両方が、受信機18から供給されるEW信号を搬送するように、第1の光ビームB1は、SSB(C)変調器4によって変調され、第3の光ビームB3は、離調された変調器12によって変調される。
【0084】
離調された変調器12は、B3における基本波の振幅:最大歪み成分の振幅の比が、B1における基本波の振幅:最大歪み成分の振幅の比より低くなるように、πでバイアスされた標準的なマッハ・ツェンダー変調器とすることができる(ただし、他の変調器を使用することもできる)。B3における歪み成分の振幅は、依然として基本波の振幅より小さくあり得る(ただし、基本波より大きいことが好ましい)。
【0085】
変調された第3のビームB3は、反ストークス周波数だけアップコンバートされ、光学増幅器14によって増幅される。
【0086】
第1のビームB1及び第3のビームB3は、互いに反対に光ファイバ5を透過される。第3のビームB3は、光ファイバ5内にブリルアングレーティングを形成するのに十分なパワーを有する。
【0087】
偏光コントローラ3及び15は、ファイバ5内でブリルアングレーティングが正しい向きで発生してB1の所望される反射を提供するように、それぞれB1及びB3の偏光を制御するために使用される。
【0088】
前と同様に、B3における基本波:歪み成分の振幅の比は、B1における基本波:歪み成分の振幅の比より低いので、グレーティングは、基本波より歪み成分を優先的に反射し、これは、ファイバ5中のグレーティングを透過された出力ビームB5が、B1より大きい基本波:歪み成分の比を有することを意味する。
【0089】
B3の光学パワーは、好ましくは、歪み成分がノイズフロア未満に抑圧されることを保証するように選択される。
【0090】
第4のビームB4は、同調された搬送波抑圧SSBコンバータ16によって、対象周波数からシフトされるように同調された局部発振器を使用する周波数だけ周波数変換され、シフトのサイズは、ADC10の分解能帯域幅内である。
【0091】
アップコンバートされた第4のビームB4及び出力ビームB5は、偏光コンバイナ8において結合され、出力(任意選択で、更なる増幅器によって増幅される)がフォトダイオード9に供給される。結合されたビームB4 B5は、フォトダイオード9の出力中に、ADC10の分解能帯域幅内のビートを生成する。いくつかの実施形態では、増幅器は、ADCへの入力のために、フォトダイオードからの出力を増幅するように位置付けられ得る。ADCの出力は、分析のためにデジタルEWシステムに供給され得る。
【0092】
偏光コントローラ7及び17は、偏光コンバイナ8へのL5及びL4の偏光を制御して、効率的な結合を提供するために使用される。その構成は、当業者によく知られている。
【0093】
基本波:歪み成分比がL1より小さい限り、離調された変調器L2は他の場所にバイアスされ得ることが理解されよう。この場合も、離調された変調器12の代わりに直接変調されたレーザが使用され得る。
【0094】
SSBコンバータ16を使用するのではなく、代わりに、例えば、適切な光ファイバを使用することによって、導波管中の誘導放出からのブリルアン散乱光を方向変換することが可能であり得る。
【0095】
増幅器14は、B3が十分に強力である場合には省かれ得る。
【0096】
上述の実施形態は、光学信号を増幅するために、フォトダイオードの前に位置付けられた更なる光学増幅器(図示せず)を任意選択で含み得る。
【0097】
図4は、図2の変形であり、loの出力が、変調器4のIチャネルへと供給され、受信機18の出力が、変調器4のQチャネルへと供給される。これにより、図2のRFカプラを省略することができる。この実装の更なる詳細については、Erwin H. W. Chan and Robert A. Minasian, "High conversion efficiency microwave photonic mixer based on stimulated Brillouin scattering carrier suppression technique," Opt. Lett. 38, 5292-5295 (2013)を参照。
【0098】
図5は、電子ミキサの出力の歪みを低減するために使用される本発明の適用を例示する。
【0099】
光学リンクは、図2のものと同じ構成を有するが、第1の変調器4が、高パワー及び低歪みで動作するように構成された第1の電気ミキサ20Aからの出力を使用して信号を搬送するように第1の光ビームを変調するように構成されている点が異なる。第2の変調器12は、高パワーで動作し、且つ高歪みを作成するように構成された第2のミキサ20Bの出力を使用して信号を搬送するように第2の光ビームを変調するように構成される。このようにして、変調器12から出力されるビームは、変調器4から出力されるビームより低い基本波対歪み成分比を有し、そのため、ファイバ5中に形成されるダイナミックブリルアングレーティングは、変調器4の出力からの歪み成分を優先的に反射する(及びこのことから抑圧する)ように作用することになる。
【0100】
光学リンクは、RF受信機を処理システムに接続する以外の用途を有すると考えられる。例えば、光学リンクは、RF送信器をアンテナに接続するために使用され得る。そのような構成では、例えば、電子ミキサ又はフォトニックミキサを使用して、アンテナへの送信前にグレーティングからの出力をアップコンバートすることが好ましくあり得る。そのような構成では、ADCは省かれることができる(アナログ出力のみが必要とされる任意の用途で可能であるため)。
【0101】
光学リンクはまた、広帯域セルラネットワークの一部を形成するRF送信器及び/又はRF受信器を用いるような、商業電気通信の用途において使用され得る。
以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[C1]
光学信号における歪みを低減するための装置であって、前記装置は、
光学導波管と、
信号を受信するための入力と、
前記入力において受信された前記信号を搬送するように変調された第1のコヒーレント光ビームを生成するための手段と、
前記入力において受信された前記信号を搬送するように変調された第2のコヒーレント光ビームを生成するための手段と
を備え、前記第1の光ビーム及び第2の光ビームの光学周波数は、ブリルアン条件を満たすために異なり、それにおいて、前記第1及び第2の光ビームは、異なる基本波対歪み成分比を有し、
前記装置は、誘導ブリルアン散乱を通して前記光学導波管中でダイナミックブリルアングレーティングを生成するために、前記第1のコヒーレント光ビームに、第1の方向に前記光学導波管に沿って伝搬させ、前記第2の光ビームに、反対方向に前記光学導波管に沿って伝搬させるように構成される、装置。
[C2]
前記第2のコヒーレント光ビームは、前記第1のコヒーレント光ビームより低い基本波対歪み成分比を有する、C1に記載の装置。
[C3]
前記第1のコヒーレント光ビームを前記生成するために手段は、前記第1のコヒーレント光ビームが前記第2のコヒーレント光ビームと比較して相対的に高い基本波対歪み成分比を有するように、前記変調された第2のコヒーレント光ビームを前記生成するための手段と比較して相対的に高い効率且つ相対的に高い線形を有するように同調された第1の光学変調器を備える、C2に記載の装置。
[C4]
前記第1のコヒーレント光ビームを前記生成するための手段は、単側波帯(SSB)変調器を備える、C1~3のうちのいずれか一項に記載の装置。
[C5]
第2のコヒーレント光ビームを前記生成するための手段は、前記第2のコヒーレント光ビームが前記第1のコヒーレント光ビームに比べて相対的に低い基本波対歪み成分比を有するように、前記第1の変調器と比較して離調された変調器を備える、C1~4のうちのいずれか一項に記載の装置。
[C6]
前記離調された変調器は、実質的にパイ(π)でバイアスされる、C5に記載された無線受信機。
[C7]
前記第2のコヒーレント光ビームを前記生成するための手段は、単側波帯(SSB)変調器を備える、C1~6のうちのいずれか一項に記載の装置。
[C8]
ブリルアン条件を満たすために、前記第1の光学ビームに対して前記第2の光学ビームの前記周波数をシフトするための手段を備える、C1~7のうちのいずれか一項に記載の装置。
[C9]
前記ダイナミックブリルアングレーティングを通過した前記第1の光ビームの一部分を受信するように構成された光学受信機を備える、C2~8のうちのいずれか一項に記載の装置。
[C10]
前記光学受信機からの出力を受信するように構成されたアナログ-デジタルコンバータを備える、C9に記載の装置。
[C11]
ビート周波数だけ対象周波数からシフトされた周波数で変調された第3のコヒーレント光ビームを生成するための手段、ブリルアングレーティングを通過した出力光学信号を前記第3のビームと結合するように構成されたフォトニックミキサを備え、それにおいて、前記光学受信機は、前記ビート周波数を搬送する電気信号を出力するために、前記フォトニックミキサから前記出力を受信するように構成される、C9又は10に記載の装置。
[C12]
前記変調された第2のコヒーレントビームを、それが前記光学導波管を通って伝搬される前に増幅するように構成された増幅器を備える、C1~11のうちのいずれか一項に記載の装置。
[C13]
前記増幅器は、前記ブリルアングレーティングを通過した前記光ビームの一部分における前記歪みがノイズフロア未満となるのに十分な程度に前記第1の光ビームの光学歪み成分を前記グレーティングに散乱させるパワーにまで前記第2の変調された光ビームを増幅するように構成される、C12に記載の装置。
[C14]
無線受信機システムであって、
無線周波数受信機及び光学リンクを備え、前記光学リンクは、
光学導波管と、
前記無線周波数受信機から信号を受信するための入力と、
前記入力において受信された信号を搬送するように変調された第1のコヒーレント光ビームを生成するための手段と、
前記入力において受信された前記信号を搬送するように変調された第2のコヒーレント光ビームを生成するための手段と
を備え、前記第1の光ビーム及び第2の光ビームの光学周波数は、ブリルアン条件を満たすために異なり、それにおいて、前記第1及び第2の光ビームは、異なる基本波対歪み成分比を有し、
前記装置は、誘導ブリルアン散乱を通して前記光学導波管中でダイナミックブリルアングレーティングを生成するために、前記第1のコヒーレント光ビームが第1の方向に前記光学導波管に沿って伝搬し、前記第2の光ビームが反対方向に前記光学導波管に沿って伝搬するように構成される、無線受信機システム。
[C15]
光学信号における歪みを低減するための方法であって、前記方法は、
信号を搬送するように第1のコヒーレント光ビームを変調し、光学導波管に沿って前記変調されたコヒーレント光ビームを伝搬することと、
前記信号を搬送するように第2のコヒーレント光ビームを変調し、光学導波管に沿って前記変調されたコヒーレント光ビームを伝搬することと、
前記第1の光ビームとは反対方向に前記光学導波管を通って前記第2の光ビームを伝搬することによって、誘導ブリルアン散乱を使用して前記光学導波管中でダイナミックブリルアングレーティングを生成することと、それにおいて、前記第1及び第2の光ビームは、異なる基本波対歪み成分比を有するように変調される、
を備える、方法。
[C16]
前記第2の光ビームは、前記第1の光ビームより低い基本波対歪み成分比を有するように変調され、光学-電子トランスデューサは、前記ブリルアングレーティングを通過した前記第1のビームの一部分を受信するように構成される、C15に記載の方法。
[C17]
前記第2のビームは、離調された光学変調器によって変調される、C15又は16に記載の方法。
[C18]
前記第2のビームは、実質的にπに離調された光学変調器によって変調される、C17に記載の方法。
[C19]
前記第2の光ビームは、ブリルアン散乱のために反ストークスシフトに実質的に等しい周波数だけアップコンバートされる、C15~17のうちのいずれか一項に記載の方法。
[C20]
前記第2の変調されたビームは、前記光学導波管を通って伝搬される前に増幅される、C15~19のうちのいずれか一項に記載の方法。
[C21]
前記第2の変調されたビームは、光学歪みから引き起こされた歪み成分がノイズフロア未満となるようなパワーに増幅される、C15~20のうちのいずれか一項に記載の方法。
[C22]
前記第1の光ビームは、単側波帯(SSB)変調器によって変調される、C15~21のうちのいずれか一項に記載の方法。
[C23]
前記第1及び第2のコヒーレント光ビームを作成するために、コヒーレント光ビームを分割することを備える、C15~22のうちのいずれか一項に記載の方法。
[C24]
アナログ-デジタルコンバータは、前記光学-電子トランスデューサの出力を受信するように構成される、C15~23のうちのいずれか一項に記載の方法。
[C25]
第3の光ビームは、前記アナログ-デジタルコンバータの動作帯域幅内にある分離周波数だけ対象周波数から離間される周波数がその上に課されるように変調され、前記第3のビームは、前記光学-電子トランスデューサによって受信される混合されたビームを形成するために、前記ブリルアングレーティングを通過した前記第1のビームの一部分と混合される、C24に記載の方法。
[C26]
RF受信機又はRF送信機に接続されたフォトニックリンクの光学信号における歪みを低減するための方法であって、前記方法は、
前記RF受信機によって受信される又は前記RF送信機によって送信される信号を搬送するように第1のコヒーレント光ビームを変調し、光学導波管に沿って前記変調されたコヒーレント光ビームを伝搬することと、
前記RF受信機によって受信される又は前記RF送信機によって送信される前記信号を搬送するように第2のコヒーレント光ビームを変調し、光学導波管に沿って前記変調されたコヒーレント光ビームを伝搬することと、
前記第1の光ビームとは反対方向に前記光学導波管を通って前記第2の光ビームを伝搬することによって、誘導ブリルアン散乱を使用して前記光学導波管中でダイナミックブリルアングレーティングを生成することと、前記第1のビーム及び第2のビームの光学周波数は、ブリルアン条件を満たす量が異なり、
それにおいて、前記第1及び第2の光ビームは、異なる基本波対歪み成分比を有するように変調される、
を備える、方法。
図1
図2
図3
図4
図5