(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】光電センサ及び物体検出方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20220711BHJP
【FI】
G01S7/481 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021009626
(22)【出願日】2021-01-25
【審査請求日】2021-03-09
(31)【優先権主張番号】10 2020 102 247.6
(32)【優先日】2020-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591005615
【氏名又は名称】ジック アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マティアス イェーゲル
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-164121(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0323171(US,A1)
【文献】国際公開第2019/239845(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0187470(US,A1)
【文献】特開平08-178749(JP,A)
【文献】特開2013-072878(JP,A)
【文献】特開2013-072771(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102006040813(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - 7/51
G01S 17/00 - 17/95
G01C 3/00 - 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視領域(20)内の物体を検出するための光電センサ(10)であって、ある波長領域の発射光(26)を送出するための発光器(22)と、前記物体の表面で反射された発射光(28)から受光信号を生成するための受光器(34)と
、前記受光器(34)の手前に配置され
且つ画像フィールド角αのリング状の画像フィールドのために光学系の設計が最適化された受光光学系(30)と、前記受光信号から前記物体に関する情報を取得するように構成された制御及び評価ユニット(42)と、を備えるセンサ(10)において、
前記波長領域に合わせて調整され、受光路のうち前記反射された発射光(28)が平行な光線束になる箇所(60a)に配置された、外部光低減用の光学フィルタ(32)を有すること、
前記フィルタ(32)が前記画像フィールド角αに対応する前記反射された発射光(28)の非直角の入射角
のためにのみ狭い通過帯域を備えていること
、及び
前記フィルタ(32)が前記受光光学系(30)の他の素子より手前に配置されていること
を特徴とするセンサ(10)。
【請求項2】
前記受光光学系(30)が第1レンズ(52)と第2レンズ(54)を備え、前記第1レンズ(52)が、前記画像フィールド角αを持つ前記受光器(34)の個々の受光点(34b)の光束が前記第2レンズ(54)の半分にのみ当たるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のセンサ(10)。
【請求項3】
前記受光光学系(30)について、前記第1レンズ(52)の焦点距離をf1、直径をD1、前記第1レンズ(52)と前記第2レンズ(54)の間の距離をdとしたときに、不等式d≧(D1*f1)/(D1+2*f1*tanα)が満たされるこ
とを特徴とする請求項2に記載のセンサ(10)。
【請求項4】
少なくとも近似的にd=(D1*f1)/(D1+2*f1*tanα)が成り立つことを特徴とする請求項3に記載のセンサ(10)。
【請求項5】
前記受光光学系(30)が、前記フィルタ(32)に入射する前記反射された発射光(28)の光線束を平行化するための追加の光学素子を備えていないことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のセンサ(10)。
【請求項6】
前記発光器(22)が、互いに分かれた複数の光線をそれぞれ1つの発光点から送出するように構成され、前記受光器(34)が、反射されてそれぞれ1つの受光点(34b)に入射する複数の光線からそれぞれ受光信号を生成するように構成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のセンサ(10)。
【請求項7】
前記発光点及び/又は前記受光点(34b)が円周(50)上に配置されていることを特徴とする請求項6に記載のセンサ(10)。
【請求項8】
レーザスキャナとして構成され、前記監視領域(20)を周期的に通過するように前記発射光(26)を案内するための可動の偏向ユニット(12)を備え
ていることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載のセンサ(10)。
【請求項9】
前記偏向ユニット(12)が、前記発光器(22)及び/又は前記受光器(34)が収納された回転式の走査ユニットの形で構成されていることを特徴とする請求項8に記載のセンサ(10)。
【請求項10】
前記評価ユニット(42)が前記発射光(26)の送出と前記反射された発射光(28)の受光との間の光伝播時間から前記物体の距離を測定するように構成されていることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載のセンサ(10)。
【請求項11】
監視領域(20)内の物体を検出する方法であって、ある波長領域の発射光(26)を送出し、前記物体の表面で反射された前記発射光(26)から受信光を生成し、該受信光を評価して前記物体に関する情報を取得し、その際、
画像フィールド角αのリング状の画像フィールドのために光学系の設計が最適化された受光光学系(30)によって前記反射された発射光(26)を案内する方法において、
前記波長領域に合わせて調整され、受光路のうち前記反射された発射光(28)が平行な光線束になる箇所(60a)であって且つ前記受光光学系(30)の他の素子より手前に配置された、外部光低減用の光学フィルタ(32)により前記反射された発射光(26)を案内すること、及び
前記フィルタ(32)が前記画像フィールド角αに対応する前記反射された発射光(28)の非直角の入射角
のためにのみ狭い通過帯域を備えていること
を特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1又は11のプレアンブルに記載の光電センサ及び監視領域内の物体の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの光電センサは、監視領域内へ光線を送出し、物体により反射された光線を再び受光して、受光信号を電子的に評価する、という検知原理により作動する。また、公知の位相法又はパルス法で光伝播時間を測定することで、検知された物体の距離を特定することも多い。
【0003】
単一光線式の光検知器の測定領域を広げるために、まず、レーザスキャナで行われるように光線を動かすことが考えられる。この場合、レーザから発せられた光線が偏向ユニットを介して周期的に監視領域を掃引する。測定された距離情報に加えて、偏向ユニットの角度位置から物体の角度位置が推定され、以て監視領域内での物体の位置が2次元極座標で検出される。
【0004】
測定範囲の拡大と追加の距離データの取得を行う別の可能性として、複数の走査光線で複数の測定点を同時に検出することが挙げられる。これをレーザスキャナと組み合わせることもできる。そうすれば、単一の監視平面だけでなく、多数の監視平面を通じて3次元空間領域が捕らえられる。大抵のレーザスキャナでは走査運動が回転ミラーによって達成される。ただし、まさに複数の走査光線を用いる場合については、例えば特許文献1に記載されているように、発光器と受光器を有する測定ヘッド全体を回転させるという方法も従来技術で知られている。
【0005】
このようなシステムの測定精度を高めるためにノイズ低減のための対策が講じられる。とりわけ屋外では太陽を、受光器に大きな恒明負荷をかけ、それと結びついた高いノイズをもたらす広帯域の光源として考慮する必要がある。この種の外部光は、発射光の波長に合わせて調整された光学的な帯域通過フィルタを用いて除去することができ、とりわけ太陽光のような広帯域の外部光の場合はそれにより信号雑音比が明らかに改善する。有効光を減衰させることなく帯域通過フィルタをより狭帯域にすることができれば利点もそれだけ大きくなる。このような帯域通過フィルタは、高級なものは最大数百層から成る干渉フィルタとして構成される。
【0006】
このような帯域通過フィルタの通過帯域は入射角とともに変化する。そのため、平行ではない光線束の成分は実質的に様々な通過帯域でフィルタ作用を受ける。ところが、波長が通過帯域に合っていなければ帯域通過フィルタは有効光まで遮断してしまう。光を束ね、収束する非平行の光路を作り出すことがまさに受光光学系の典型的な任務であるため、入射角範囲は比較的大きいことが通例である。その上、まさにコンパクトなセンサの場合は特に短い焦点距離が必要とされる。帯域通過フィルタの通過帯域はそれに応じた許容差で設計される。それが他方で有効光と外部光の効果的な区別を制約してしまう。
【0007】
そこで、帯域通過フィルタのために受信光を平行にする特別な光学的構成要素を光路に置くことが従来技術で提案されている。特許文献2ではそのためにアパーチャとマイクロレンズが設けられている。未公開の独国特許出願第102018118653.3号ではそのために発散型アキシコンが提案されている。しかし、光路内に平行化用の追加の部品を設けると、配置スペースが必要となる、コストが増大する、その部品が更なる構成要素として一連の許容差を増大させてしまうといった問題が生じる。
【0008】
入射角範囲の他にも、分離度の良いフィルタ作用を妨げる別の効果がある。まず、実践では主に発光器の温度の影響により有効光の波長領域がドリフトする。未公開の独国特許出願第102018128630.9号では通過帯域が異なる複数のフィルタ面が設けられる。そして、多数の受光素子のうち有効光に特に良く合ったフィルタ面に対応する素子が評価される。別の効果として、フィルタが組み込み許容差等により全体として最適な向きになっていないということがある。そこで、未公開の欧州特許出願第19158077.8号ではフィルタを傾けるための調節装置が設けられている。しかしどちらの場合も入射角範囲は小さくならない。即ち、フィルタは依然として、平行ではない受信光が通過できるように十分に広く設計されなければならない。
【0009】
未公開の独国特許出願第102018125826.7号は複数光線型レーザスキャナ用の2レンズ式対物レンズに関する。この対物レンズはリング状の画像フィールドのために設計されており、要求をこれに限定することにより、レンズの枚数が少ないにも関わらず対物レンズの品質を高くすることができる。一方、リング状の画像フィールドは、光源と受光素子をそれに合わせてリング状に配置すれば、実際上は何ら制約を意味しない。後者は、やや古い特許文献3にも既に記載されている。しかし、どの文献も外部光低減用のフィルタについては論じられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】DE 197 57 849 B4
【文献】US 2017/0289524 A1
【文献】DE 10 2018 101 846 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
故に本発明の課題は冒頭で述べた種類のセンサの測定精度を更に改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題は、請求項1又は11に記載の光電センサ及び監視領域内の物体の検出方法により解決される。発光器が特定の波長領域内で発射光を生成し、物体の表面での反射の後、対応する反射された発射光、即ち受信光が発光器により受光信号に変換される。制御及び評価ユニットが受光信号を評価して物体に関する情報を取得する。
【0013】
受信光を受光器へ案内する受光光学系が、できるだけ反射された発射光だけを通過させつつ、そのスペクトルの外にある外部光を遮断するために、発射光の波長に合わせて調整された外部光低減用フィルタを備えている。このフィルタは受光路のうち、入射する受信光が平行になる箇所に配置されている。ここで「平行」とは厳密に数学的な要求ではなく、非常に小さい入射角範囲、例えば数度、せいぜい1度、それどころか10分の数度若しくは10分の1度という意味である。
【0014】
本発明の出発点となる基本思想は、受光光学系により、フィルタにとって好適な前述の場所がそもそも受光路内に存在するようにすることにある。冒頭で述べたように、受光光学系には受信光を束ねるという典型的な任務があるため、その光はまさに非平行である。そのため従来はフィルタのところでわざわざ平行な光路を作り出す追加の光学素子が必要であった。
【0015】
本発明では受光光学系が画像フィールド角αのリング状画像フィールドのために最適化されている。これは、受光光学系が、中心を外れた背軸の画像フィールド点に対して最適化されていると表現することもできる。他方でフィルタは、この画像フィールド角α、あるいは軸外れの画像フィールド点に対して、従って非直角の入射角に対して最適化されている。こうして、特殊な受光光学系の設計により、適切に設計されたフィルタのために、受信光が平行又は少なくともほぼ平行になるような特に好適な位置が用意される。
【0016】
本発明には平行な受信光によりフィルタの入射角依存性が事実上なくなるという利点がある。故にフィルタは非常に良好な分離度で有効光を通過させ、外部光を遮断することができるため、信号雑音比が明らかに改善する。例えば、非常に狭帯域の光学的な帯域通過フィルタ、特に干渉フィルタとして流通している構成のものを使用することができ、追加の光学部品や配置スペースを用いる必要はない。フィルタは、画像フィールド角αに相当する単一の入射角のために完全に特別に最適化することができる。
【0017】
受光光学系が第1レンズと第2レンズを備え、第1レンズが、画像フィールド角αを持つ個々の受光点の光束が第2レンズの半分にのみ当たるように構成されていることが好ましい。従って、このような光束、しかも好ましくは画像フィールド角αの全ての光束は、第2レンズの位置においては光軸の一方の側にのみ存在する。光軸を挟んで対向するフィールド点からの光束は第2レンズの面内では互いに交差しない。それらはもはや第2レンズの中心点をまともには照らさない。つまり、通常の対物レンズとは違ってここでは空間的につながった広い範囲の画像フィールド角(例えば-α~0度~α)は用いられず、分離した単独の画像フィールド角αだけが用いられる。画像フィールド角αの近傍には前記特性がまだ十分に実現されるような一定の許容範囲を含めてもよい。
【0018】
受光光学系はこれら2つのレンズのみを含み、他にはレンズがないこと、つまり単なる2レンズ式対物レンズであることが好ましい。2つのレンズは好ましくは集光レンズである。当然ながら、2レンズは3レンズや多レンズに比べて製造も調整も容易である。その代わり設計の自由度そのものはより制限されるが、本実施形態ではそれが十分に利用されるため、コストが下がるにもかかわらず依然としてセンサの要件が満たされる。これが成功するのは、鮮明な境界を持つ光線が全面的には要求されず、画像フィールド角αに対応する円環上でのみ要求されるということによる。それでも2レンズ式対物レンズでは多レンズ式対物レンズとは違ってk≦2又はk=1にさえなる大きな口径、つまり小さなF値、ひいては大きな口径と、長い測定射程を得ることができる。
【0019】
受光光学系について、第1レンズの焦点距離をf1、直径をD1、第1レンズと第2レンズの間の距離をdとしたときに、不等式d≧(D1*f1)/(D1+2*f1*tanα)が満たされることが好ましい。ここで距離dは好ましくは第1レンズの主面と第2レンズの第1の作用レンズ面(即ち、第1レンズの方に向いたレンズ面)の間で測定する。これは、画像フィールド角αの光束が第2レンズの半分にのみ当たるという既に提示した条件を数学的に定式化したものである。
【0020】
好ましくは少なくとも近似的に等式、即ちd=(D1*f1)/(D1+2*f1*tanα)が成り立つことが有用である。「少なくとも近似的に」とは、例えば5%又は10%という程度の許容差がまだ可能であり、光学系の特性が急には変化しない、という意味である。むしろ重要なのは、第2レンズもなお顕著な作用を発揮できるように、不等式の条件下でもなお光学系の像面に対して第2レンズの距離をできる限り大きく保つことである。そして、等式はこの距離が最大になっているという意味での最適解であり、この最適解は、近似的ではあるが、先に述べた許容差でもって達成してもよい。
【0021】
第2レンズの焦点距離f2は第1レンズと第2レンズの間の距離と一致していることが好ましい。そうすると2レンズ式対物レンズは像側でテレセントリックになる。ここでの第1レンズと第2レンズの間の距離は、既に導入した距離dではなく、第2レンズの中央の厚みのほぼ半分だけずれた距離d’、つまり2つのレンズの主面間の距離であることが好ましい。もっとも、これを守ることは必須ではない。前の段落で論じたように、焦点距離f2が第1レンズと第2レンズの間の距離と近似的に等しければ既に有利であり、そうすれば2レンズ式対物レンズは像側で少なくともほぼテレセントリックになる。少なくとも中央の厚みの半分という範囲内の許容差は十分にまだ受け入れ可能である。
【0022】
第1レンズのF値k1が大きいこと、特にk1=1であることが好ましい。これがそもそも可能であるということが多レンズ式対物レンズに対する2レンズ式対物レンズの一つの利点である。k1をこのように選ぶと対物レンズ全体のF値の値kは小さくなる。このように大きなF値を用いれば特に高感度で射程の長いセンサを実装できる。
【0023】
受光光学系は、フィルタに入射する反射された発射光の光線束を平行化するための追加の光学素子を備えていないことが好ましい。このような追加の光学素子は本発明では必要ないため、コストと配置スペースを節約できる。本発明による受光光学系は、リング状の画像フィールドに合わせて最適化されているおかげで、受光器への光線の案内という本来の任務を果たすことで既に光路の平行化も行っている。
【0024】
フィルタは受光光学系の他の素子より手前に配置されていることが好ましい。この配置は入射する受信光の視点に関するものであって、光はまずフィルタに入射した後、本来の受光光学系とそのレンズに入射し、最後に受光器に入射する。従来はそうではなく、受信光がまずフィルタより前で受光光学系の一部を用いて平行化されていた。
【0025】
フィルタは、画像フィールド角αに対応する1つの非直角の入射角のためにのみ狭い通過帯域を備えていることが好ましい。従って該フィルタはこの1つの入射角のためにのみ設計されている。光学フィルタは帯域通過フィルタであることが好ましい。つまりこのフィルタは外部光を短い波長と長い波長の両方で遮断する。より広い入射角範囲のための従来のような広い通過帯域は必要ない。光学フィルタは半値幅が最大でも40nm、最大でも30nm、最大でも20nm又は最大でも10nmであることが好ましい。これらの値は、入射角範囲がより広いという留保のある従来の基準からすると、通過帯域としては狭すぎる。
【0026】
発光器は、互いに分かれた複数の光線をそれぞれ1つの発光点から送出するように構成され、受光器は、反射されてそれぞれ1つの受光点に入射する複数の光線からそれぞれ受光信号を生成するように構成されていることが好ましい。これにより本センサは複数の測定点を検知する複数光線型センサ又は多重式センサとなる。レーザスキャナの形をした好ましい発展形態では複数平面型スキャナが得られる。複数の測定光線は同じ受光光学系並びに同じフィルタを分け合うことが好ましい。本発明による対物レンズの設計では、複数の測定光線に対しても、光路のうち受信光が平行になっている箇所にフィルタを配置することができるため、非常に効果的に外部光を低減できる。
【0027】
各発光点は、そこから各々の送出光線が発射される実質的な発光器であるが、それらの発光点にそれぞれ物理的な発光器があることは差し当たり必須ではない。代わりに、1つの物理的な発光器が、例えば光線分割により、複数の送出光線を複数の又は全ての発光点において生成することもできる。また、送出光線は、より大きな光束の内部にある光線という光線光学的な意味での光線と理解すべきではなく、互いに分離した光束、つまり、監視領域内で物体に当たったときに互いに間隔を空けた別々の光スポットをそれぞれ生成する個別化された走査光線と理解すべきものである。発光点について述べたのと同様に受光点も実質的な受光器であって、各受光点に物理的に受光器がある必要はない。それでも、それぞれ受光器を設けたり、受光器が画素行列を備えていて、受光点にある一又は複数の画素のみを受光信号の取得に用いたりすることが好ましい。場合によっては他の画素も信号を生成するが、それは無視するか、読み出しを行わない。
【0028】
発光点及び/又は受光点が円周上に配置されていることが好ましい。この円周又は円環は受光光学系を設計する際の目標となる画像フィールド角αに対応している。このように発光点又は受光点と受光光学系の配置を互いに適合させれば、その最適化された特性がまさに利用される一方、代償として他の画像フィールド角に対する設計上の損失を受け入れたとしてももはや何ら実際的な影響はない。発光点又は受光点を円形に配置することは特にレーザスキャナにとっては一見すると意味がないように思われる。なぜなら、そこでは簡単な線上の配置で十分であり、それを用いて回転運動により一群の平面が走査されるからである。しかし、円環ではなく線にすると、本発明に従って2レンズ式対物レンズを通じて高い画質で所要の広い画像範囲にわたって像を結ぶことができない。しかもそうすると、特に複数の走査光線の場合、受信光が平行になっている位置にフィルタを配置することができなくなる。円周に合わせて配置された発光点又は受光点でも、レーザスキャナにおいて等間隔に配置された平面を走査することは可能である。なぜなら、レーザスキャナの回転方向のずれは、必要とあれば補償も可能な時間的なずれを測定値に生じさせるにすぎないからである。
【0029】
前記円周は前記光軸を中心としていることが好ましい。このようにすれば、受光光学系の特性が回転対称である場合に複数の光線がそれぞれ同じ光線形成作用及び偏向作用を受ける。発光器と受光器を同軸に配置し、受光光学系が同時に発光光学系としても機能するようすることもできる。これにより非常にコンパクトな構造が得られる。
【0030】
本センサはレーザスキャナとして構成されていること、そして監視領域を通過するように発射光を案内するための可動の偏向ユニットを備えていることが好ましい。1本の発射光線を用いる場合、このレーザスキャナは可動の偏向ユニットの運動とともに監視領域を1つの平面内で走査し、複数本の発射光線の場合は複数の平面内で走査する。偏向ユニットは、発光器及び/又は受光器、そして好ましくは制御及び評価ユニットの少なくとも一部も収納された、実質的に可動式測定ヘッドである回転式の走査ユニットとして構成されていることが好ましい。
【0031】
評価ユニットは発射光の送出と反射された発射光の受光との間の光伝播時間から物体の距離を測定するように構成されていることが好ましい。これにより本センサは距離測定型となる。あるいは、単に物体の有無を確認して例えばスイッチ信号として出力する。
【0032】
本発明に係る方法は、前記と同様のやり方で仕上げていくことが可能であり、それにより同様の効果を奏する。そのような効果をもたらす特徴は、例えば本願の独立請求項に続く従属請求項に模範的に記載されているが、それらに限られるものではない。
【0033】
以下、本発明について、更なる特徴及び利点をも考慮しつつ、模範的な実施形態に基づき、添付の図面を参照しながら詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図2】(a)画像フィールド点の円形の配置の概略図、(b)画像フィールド点の直線的な配置の概略図、及び(c)画像フィールド点の円環状の配置の概略図。
【
図3】円形に配置された発光点又は受光点の平面図。
【
図4】円環状の画像フィールド用の2レンズ式対物レンズと光線の模範的な進路の概略図。
【
図5】
図4の対物レンズの第2レンズの概略平面図であって、第1レンズの光学的な作用を具体的に示すための図。
【
図6】フィルタを備える受光光学系の一実施形態における受光路。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1はレーザスキャナとしての実施形態における光電センサ10の概略断面図である。本センサ10は大きく分けて可動式の走査ユニット12と台座ユニット14を含む。走査ユニット12は光学的な測定ヘッドである一方、台座ユニット14には、給電部、評価用電子機器、接続部等、その他の要素が収納されている。稼働時には、監視領域20を周期的に走査するために、台座ユニット14の駆動装置16を用いて走査ユニット12が回転軸18を中心として回転駆動される。
【0036】
走査ユニット12において、複数の光源22a(例えばLED又は端面放射型発光器若しくはVCSELの形をしたレーザ)を有する発光器22が、概略的にのみ示した発光光学系24の助けを借りて、互いに対して角度のずれを持つ複数の発射光線26を生成し、これらの光線が監視領域20内へ送出される。発射光線26が監視領域20内で物体に当たると、それに対応する反射光線28がセンサ10まで戻ってくる。反射光線28は、同様に概略的にのみ示した受光光学系30(外部光低減のために手前に置かれたフィルタ32を有する)により複数の受光素子34aを有する受光器34へと導かれ、各受光素子34aがそれぞれ電気的な受光信号を生成する。受光素子34aは別々の部品でも、統合されたマトリックス配置の画素であってもよく、例えばフォトダイオード、APD(アバランシェダイオード)、又はSPAD(シングルフォトンアバランシェダイオード)である。
【0037】
発光器22は特定の波長領域において発射光線26を生成し、その波長領域に合わせてフィルタ32が調整されている。適切な光源、特にレーザを用いれば発射光線26の波長領域を非常に狭く限定することができる。使用する光の波長は典型的には200nmから2000nmの間にあり、特に660nm、850nm、900nm及び1550nm付近である。このフィルタ32により、前記波長領域によって決まる有効光帯域の外側の外部光が遮断される。
【0038】
全くの模範例として4つの光源22aと受光素子34aが断面図において上下に描かれている。実際にはこれらのグループのうち少なくとも1つが本発明の好ましい実施形態では円形内又は円周上に配置されている。これについてはまた後でより詳しく説明する。ただし、それは物理的な光源22a及び受光素子34aに関することではなく、発射光線26の出発点としての実質的な発光点及び反射光線28の終点としての受光点に関するのみである(もっとも今の例では発光点及び受光点は発光器及び受光器と一致している)。
図1から離れて、1つの物理的な光源で複数の発光点を生成すること、又は複数の受光点を同じ物理的な受光部品に収めることも考えられる。なお、複数の発射光線26を生成して複数の反射光線28を受光することも必須ではなく、単一光線式のシステムも考えられる。
【0039】
発光器22と受光器34は、
図1に示した実施形態では共に回路基板36上に配置されている。この基板は回転軸18上にあり、駆動部16のシャフト38に結合されている。なお、これは単なる模範例と理解すべきであり、実際には任意の数及び配置の回路基板が考えられる。発光器22と受光器34が二軸型で隣接している光学的な基本構造も必須ではなく、単一光線式の光電センサ又はレーザスキャナに関係する公知のいかなる構造でも置き換え可能である。一例としてビームスプリッタを持つ又は持たない同軸配置が挙げられる。
【0040】
非接触式の給電及びデータインターフェイス40が可動式の走査ユニット12と静止した台座ユニット14とを接続している。台座ユニット14内には制御及び評価ユニット42があるが、少なくともその一部は走査ユニット12内の回路基板36上又は他の場所に収納されていてもよい。制御及び評価ユニット42は発光器22を制御し、受光器34の受光信号を受け取って更に評価する。また、同ユニットは駆動部16を制御し、レーザスキャナに関して公知である角度測定ユニット(図示せず)の信号を受け取る。角度測定ユニットは各時点における走査ユニット12の角度位置を特定する。
【0041】
前記評価のため、好ましくは、検知された物体までの距離が公知の光伝播時間法で測定される。これを角度測定ユニットから得られる角度位置に関する情報と合わせれば、走査平面内にある全ての対象点の2次元極座標が各走査周期の完了毎に角度と距離で利用可能となる。各時点の走査平面はその都度の反射光線28の識別情報と受光素子34aのいずれかにおける該光線の検出とを通じて同様に分かるから、結果として全体で3次元的な空間領域が走査される。
【0042】
これにより物体の位置又は輪郭が分かり、それをセンサインターフェイス44経由で出力することができる。センサインターフェイス44又は別の接続部(図示せず)は逆にパラメータ設定用インターフェイスとして機能する。また、センサ10は危険の発生源(例えば危険な機械)を監視するための安全技術に用いられる安全センサとして構成することもできる。その場合、機械の稼働中に操作者の進入を許してはならない防護区域が監視される。操作者の脚等の防護区域への許可なき侵入を認識すると、センサ10は機械の緊急停止を発動する。安全技術に用いられるセンサ10は特に高い信頼性で作動しなければならないため、例えば機械の安全に関する規格EN13849や非接触型防護装置(beruehrungslos wirkende Schutzeinrichtungen:BWS)に関する機器規格EN61496といった高い安全要求を満たさなければならない。その場合、防護区域への物体の侵入時に安全確保用の電源停止信号を出力するために、特にセンサインターフェイス44を安全な出力インターフェイス(Output Signal Switching Device;OSSD)として構成することができる。
【0043】
図示したセンサ10は回転式の測定ヘッド、即ち走査ユニット12を有するレーザスキャナである。なお、図示したように発光・受光モジュールだけが一緒に回転するのではなく、他にも類似のモジュールを回転軸18との関係で高さ又は角度をずらして設けることも考えられる。あるいは回転ミラー又は切り子面ミラーホイールを用いて周期的な偏向を行うことも考えられる。なお、複数の発射光線26の場合、該複数の発射光線26が監視領域20にどのように入射するかはその都度の回転位置に依存するということに注意が必要である。なぜなら、公知の幾何学的な考察から分かるようにそれらの光線の配置が回転ミラーにより回転するからである。更に別の実施形態では走査ユニット12が回転運動の代わりに又は追加的に該回転運動の軸に垂直な第2の軸を中心として上下に揺動することで、仰角方向にも走査運動を生じさせる。
【0044】
レーザスキャナとしての実施も模範例である。周期的な運動がない多重式センサも可能である。これは実質的に、静止した走査ユニット12とそれに対応する電子機器(但し台座ユニット14はない)のみから成り、特にフラッシュLiDARの変型となる。
【0045】
センサ10の回転中、各発射光線26によりそれぞれ1つの面が走査される。偏向角が0°の場合、つまり
図1にはない水平な発射光線によってのみ、監視領域20の平面が走査される。他の発射光線は、偏向角に応じて異なる鋭さで形成される円錐の側面を走査する。上方及び下方に異なる角度で偏向される複数の発射光線26の場合、全体的な走査構造は複数の砂時計を入れ子にしたようなものになる。本明細書ではこれらの円錐側面も単に走査平面と呼ぶことがある。
【0046】
図1に単に機能ブロックとして示した受光光学系30は本発明では画像フィールド角αのリング状画像フィールドのために設計されている。これについて今から
図2~5を参照して詳しく説明する。まず
図2(a)~(c)によりこの特別な光学設計の動機を説明する。なお、別の動機として、これによりフィルタ32のために特に好都合な位置が作り出されるということがある。これについては後で
図6を参照してより深く説明する。
【0047】
理想的な場合、受光光学系30は
図2(a)のようにイメージサークル46の内側に全ての画像フィールド位置48を鮮明に映し出すはずである。しかし、単式レンズではそれは非常に小さなイメージサークル46に対してしか達成されない。一方、それに適した対物レンズはコストがかかりすぎる上、他の光学的な制限を必然的に伴う。
【0048】
レーザスキャナにとって面的な結像は必ずしも必要ではない。なぜなら、光源22a及び受光素子34aを直線的に配置すればもう仰角方向に互いにずれた走査平面が生じるからである。それには
図2(b)のように画像フィールド位置48の直線的な配置の上で鮮明な像を結ぶような光学系があれば足りる。しかしそれも、より大きなイメージサークル46に対してはコストの高い対物レンズがなければ不可能である。
【0049】
一方、本発明では、
図2(c)に示したように、鮮明な結像はただ1つの画像フィールド角αに対してしか要求されない。同図では画像フィールド位置48の円環が画像フィールド角αに対応している。光学系の設計はこの固定された画像フィールド角αに向けられることが好ましいが、一定の周辺領域においてもなお結像が鮮明であることは排除されない。もっとも、円環から逸れた(特に、小さくなる側の)画像フィールド角については、それはもはや設計上の要求事項ではない。十分に鮮明な結像の一定の許容帯を持つ画像フィールド角αは、センサ10の光線26、28の間にできるだけ大きな間隔を得るため、
図2(c)ではできるだけ大きく、例えばα±15度とする。この円環状の画像フィールドへの限定により、既に単式レンズでもカバー角がある程度改善されて、例えば±8度に達することができる。後で
図4及び5に基づいて説明する受光光学系30の2レンズ式の設計ではそれがもっと明らかに改善される。
【0050】
図3は円周50上の受光素子34aの好ましい配置を平面図で示している。好ましくは、図示したように受光光学系30の光学的な中心軸が円周50の中心を貫通するようにする。発光光学系24にも同様の要求が課されるから、
図3は発光路についても同様に描くことができる。ただし発光路にはフィルタ32はないことが好ましい。なぜなら、発光器22はそれ自身で既に狭い波長帯域で発射光線26を生成できるからである。
【0051】
円周50上の配置に基づいて、画像フィールド角αに対応する円環状の画像フィールドだけが実質的に受光光学系30により利用される。故にこの配置は、受光光学系30のうち最適化された領域がまさに利用されるため、特に有利である。αから外れた画像フィールド角に関する受光光学系30の結像誤差は実際には重要ではない。
【0052】
複数の受光点34bは別々の受光素子34aで実現してもよいし、受光素子34aを集積した多重配列の画素又は画素領域で実現してもよい。
図3は3個の受光点34bが円周50に沿って均等に配分された例を示している。個数を変え、配置を不規則にすることも考えられる。
【0053】
図4は第1レンズ52と第2レンズ54を有する受光光学系30の2レンズ式対物レンズのみ模範例として概略図で示している。両レンズ52、54は好ましくは集光レンズである。対応する対物光学系は、発光光学系24として、あるいは同軸配置であれば共通の発光・受光光学系としても用いることができる。先に
図2に関して説明したように、円環状の画像フィールドに対して最適化された単式レンズでは最大±8度の画像フィールド角が可能である。2レンズ式対物レンズではそれが大幅に改善され、±20度以上となる。
【0054】
図4には、光軸を挟んで互いに反対側にある、画像フィールド角αに対応した2本の模範的な光束56、58が描かれている。この画像フィールド角αとそれにより決まる円環状の画像フィールドに対して2レンズ式対物レンズが最適化されている。
【0055】
第1レンズ52は光束56、58の光線直径を所定の断面まで減少させるが、それは最大でまだ第1レンズ52への入射時の半分もある。そしてこの縮小された断面は第2レンズ54の半分だけに当たる。これにより第2レンズ54は所与の箇所では常に1つのフィールド点からの光でのみ照らされ、光軸を挟んでその反対側にあるフィールド点からの光では照らされない。
【0056】
図5は2レンズ式対物レンズのこの光学的な特性を第2レンズ54の平面図で再度示している。互いに反対側にあるフィールド点の光束56、58並びに56’、58’は交差せず、それぞれ光軸を挟んで反対側の第2レンズ54の半分には到達しない。横方向に隣接するフィールド点は多少重なっても構わない。第2レンズ54の中心は照らされない状態にある。
【0057】
この定性的に説明した特性は2レンズ式対物レンズのパラメータに基づいてより正確に説明することができる。求めるのは、1本の光束56、58の全ての光線が光軸に対して完全に一方の側でフィールド点まで到達するような、第1レンズ52の主面と第2レンズ54の第1の光学的な作用面との間の距離dである。
【0058】
dが可変である場合、第1レンズ52の中心を通る光束56、58の主光線は横方向のずれtanα*dを持ち、関係する周縁光線は更に追加の横方向のずれ(D1/2)/f1*dを持つ。ここでD1は用いられる直径、f1は第1レンズ52の焦点距離である。全体としてこの横方向のずれにより周縁光線が光軸を超えて外へ動くようにする必要がある。それには横方向のずれD1/2が必要である。従って、以下の不等式が満たされなければならない。
[(D1/2)/f1+tanα]*d≧D1/2
これは次のように変形できる。
d≧(D1*f1)/(D1+2*f1*tanα)
【0059】
ここで、dには少なくとも等式に近い数値を選ぶことが有利である。不等式において残余の差が大きければ大きいほど、第2レンズ54はむしろ像面のすぐ近くまで接近する。そこではレンズは有効な作用をほとんど発揮できない。
【0060】
2つのレンズ52、54は平凸型、凸平型、両凸型、及び、可能であれば凸凹型又は凹凸型として実装することができる。ただし最後の2つの場合もなお集光レンズである。古典的な屈折レンズ、フレネルレンズ若しくは回折型の光学系又はそれらの組み合わせが可能である。2つのレンズ52、54はこれらの一般的な成形特性及び作用原理において互いに違っていてもよいし、一致していてもよい。2つのレンズ52、54は異なる焦点距離f1、f2、異なる直径D1、D2及び異なる形状を有していてもよい。
【0061】
有利な実施形態では、先に示した不等式に基づいて2つのレンズ52、54の間の距離が選ばれるだけでなく、f2=d’という選択も行われる。ここでd’はレンズ52、54の主面間の距離である。これは第2レンズ54の中央の厚みに応じて前記距離dより若干大きくなる。
【0062】
この焦点距離f2では第2レンズ54の前側の焦点面が第1レンズ52の主面内に置かれる。その結果、主光線が対物レンズの像面内で光軸に平行に走る。つまり対物レンズが像側でテレセントリックになる。これにより、とりわけ発光光学系24としても利用する場合に、光源22aを互いに平行に向けてもよくなり、傾斜させる必要がなくなる。焦点距離f2を距離d’に厳密に合わせなくても、f2≒d’とするだけでも利点はある。なぜなら、そうすればもう像側の主光線の角度が0度にはならないにせよ明らかに小さくなるからである。
【0063】
更に好ましくは、第2レンズ54の直径D2が、光束56、58の貫通に必要とされる程度の大きさしかないように選ばれる。このようにすれば2レンズ式対物レンズが3つのパラメータだけで完全に決まる。即ち、第1レンズ52の直径D1と焦点距離f1は自由に選択できる。第2レンズ54の距離dは前述の不等式から得られる。最後に焦点距離f2は距離d’に設定される。
【0064】
こうして分かったこれらの寸法から、それ自体公知である幾何光学(近軸光学)の公式を用いて対物レンズの全体の焦点距離fを算出することもできる。逆に2レンズ式対物レンズをその近軸的な基本寸法だけで確定することができる。即ち、対物レンズの焦点距離f、対物レンズの口径D=D1、円形の画像フィールドのフィールド角αである。
【0065】
別の好ましい実施形態では、非常に大きいがまだ実現可能な第1レンズのf値k1:=D1/f1=1を用いて前記関係を非常に分かりやすい方法で簡略化する。
d=f1/(1+2tanα)、例えばα=30度ならd≒0.5*f1
f2=d’≒d≒f1/(1+2tanα)
【0066】
こうして、この好ましい実施形態については、所望のフィールド角α毎及び所望の口径D=D1毎に、全ての焦点距離f1、f2と距離d又はd’が2レンズ式対物レンズの設計のために定まる。ここでも必要に応じて、組み合わされた2つのレンズの全体の焦点距離を計算するためのそれ自体公知である公式を用いてこれらの全ての値を対物レンズのfとDの所望の値から直接求めることもできる。
【0067】
念のため、また数値例を挙げる。
対物レンズの焦点距離 f=19mm
口径 D=20mm(レンズ1の直径)→k=D/f=1.05
第1レンズ F2-ガラス:f1=29.8mm、中央の厚み4mm、非球面の凸平型
第2レンズ F2-ガラス:f2=21.6mm、中央の厚み5mm、球面の凸平型
レンズ間の距離 d=14.8mm、第2レンズから像面までの距離:4.2mm
画像フィールド角 α=±15.4度
スポット径 20μm(=約1mrad)
【0068】
図6は2つのレンズ52、54を有する対物レンズとして前述の原理により構成された受光光学系30の受光路における反射された発射光線28の模範的な光線進路を示している。冒頭で既に論じたように、フィルタ32の通過帯域は入射角とともにシフトする。平行ではない光がフィルタ32に当たると様々な入射角が生じるため、その入射角範囲を含む許容差を持つ通過帯域を設計する必要がある。一方、そうすると受光器34に達する外部光も増える。
【0069】
故に、できるだけ狭い通過帯域で済むようにするために、フィルタ32は光路中で入射角範囲ができるだけ小さくなる位置、つまり反射された発射光線28の光線束ができるだけ互いに平行に進むような位置に配置すべきである。一般にはそのために最適な位置は受光光学系内にはなく、そのため従来はフィルタに入射する光を平行化するための追加の光学素子をわざわざ用いていた。
【0070】
図6において位置60a~eは、画像フィールド角αに対応する背軸の画像フィールド点に対して最適化された、2枚のレンズ52、54を有する2レンズ式対物レンズ内における様々な光学的な面に記されている。フィルタ32は、センサ10の前面パネル62の内側で第1レンズ52の手前の位置60の付近に配置されている。この位置では入射角範囲がわずか0.1度である。つまり、反射された発射光線28はここではほぼ完全に平行である。他の位置60b~eでは入射角範囲はずっと大きくなり、第1レンズ52の湾曲した入射面の位置60bでは43.8度、第1レンズ52の平坦な裏面の位置60cでは34.4度、第2レンズ54の湾曲した入射面の位置60dでは14.4度、そして第2レンズ54の平坦な裏面の位置60eでは21.2度である。
【0071】
受光光学系30をリング状の画像フィールドに合わせて特別に設計し、その設計が他方で受光点34bをリング状に配置するために特に好適になっていることにより、追加の光学素子なしでも、反射された発射光線28がほぼ最適に平行になるような位置が作り出され、その光線の光線束が実質的に同じ角度でフィルタ32に入射する。これは少なくともある一定の距離より遠い物体について当てはまり、そのような物体は通例、エネルギーに関する条件が極めて厳しい。即ち、より近くの物体については、余りに狭く調整されたフィルタ32において大きな入射角範囲により有効光の一定の損失が生じても測定上の問題は生じない。
【0072】
従って、フィルタ32を位置60aに配置し、干渉フィルタとして非常に狭い帯域で設計すること乃至は単一の入射角だけに合わせて計算することができる。個々の光線束に残る発散は、最大の距離及び口径しだいで、全ての許容差の範囲内でほぼ無視することができる。前面パネル62自体はプラスチック製カバーとして形成することが好ましく、故に帯域通過フィルタ用の基板としては適していない。しかし、原理的にはフィルタ32を前面パネル62に直接取り付けることや、そこに例えば適宜のコーティングにより統合することも考えられる。