(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】ベルトクランプ
(51)【国際特許分類】
F16G 3/00 20060101AFI20220711BHJP
F16G 1/28 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
F16G3/00 C
F16G1/28 B
(21)【出願番号】P 2021503845
(86)(22)【出願日】2019-07-23
(86)【国際出願番号】 US2019043036
(87)【国際公開番号】W WO2020023510
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-02-12
(32)【優先日】2018-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504005091
【氏名又は名称】ゲイツ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,レスリー
(72)【発明者】
【氏名】デサンティ,ヤング ダブリュー.
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-005554(JP,A)
【文献】特開2018-054007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 3/00
F16G 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と、
前記第1部材に接続可能であり、第1の溝と第2の溝を有する第2の面を備え、各溝が歯付きベルトの歯を受容するためであり、頂部が各溝の間に配置された第2部材とを備え、
前記第2部材は前記第1部材に共同的に係合して、間にある前記歯付きベルトに係合し、
前記第1部材はクランプ幅にわたって延びる少なくとも1つの円弧状凹面を備え、前記第2部材が前記第1部材に固定されるとき、前記円弧状凹面は前記第2部材の頂部に対応
し、
前記円弧状凹面は、溝ピッチの約25%から50%の範囲内にある幅W2を有する
クランプ。
【請求項2】
前記円弧状凹面は、溝ピッチの約75%から200%の半径Rを有する請求項1に記載のクランプ。
【請求項3】
前記円弧状凹面の深さDは、溝ピッチの約10%である請求項1に記載のクランプ。
【請求項4】
前記クランプは、隣接するベルト歯の間にあり、かつベルト抗張コード上にある応力集中を減少させる請求項1に記載のクランプ。
【請求項5】
第1部材と、
前記第1部材に接続可能であり、少なくとも第1の溝と第2の溝を有する第2面を備える第2部材とを備え、前記第1の溝と第2の溝が溝ピッチ分だけ離間し、各溝が歯付きベルトの歯を共同的に受容し、前記第2部材が各溝の間に配置された第2部材の頂部を備え、
前記第2部材は、前記第1部材に共同的に係合して、間にある前記歯付きベルトに係合し、
前記第1部材は、クランプ幅にわたって延びる少なくとも1つの円弧状凹面を備え、前記第2部材が前記第1部材に固定されるとき、前記円弧状凹面は前記第2部材の頂部に共同的に一致し、
前記円弧状凹面は前記溝ピッチの約25%から50%の範囲内にある幅W2を有する
クランプ。
【請求項6】
第1部材と、
少なくとも第1の溝と第2の溝を有する第2面を有する第2部材とを備え、各溝は溝ピッチ分だけ離間し、各溝は歯付きベルトの歯を共同的に受容し、前記第2部材が各溝の間に配置された第2部材の頂部を備え、
前記第2部材は、前記第1部材に共同的に係合して、間にある前記歯付きベルトに係合し、
前記第1部材はクランプ幅にわたって延びる少なくとも1つの円弧状凹面を備え、前記第2部材と前記第1部材が間で前記歯付きベルトと係合関係にあるとき、前記円弧状凹面は第2部材
の頂部に対して共同的に配置され、
前記円弧状凹面は、前記溝ピッチの約25%から50%の範囲内にある幅W2と、前記溝ピッチの10%よりもほぼ小さい深さとを有する
クランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はベルトクランプに関し、より詳しくは、クランプ幅にわたって延びる少なくとも1つの円弧状凹面を有し、第2部材が第1部材に固定されるとき、円弧状凹面が第2部材の頂部に対応するクランプに関する。
【背景技術】
【0002】
タイミングベルトは、装置、機械、工具等のために、測定し、位置決めし、搬送し、動揺させる種々の駆動機構に用いられる。タイミングベルトは、ネオプレン、ポリウレタン等の耐久性樹脂の形態であり、抗張金属コードによって強化されてもよい。タイミングベルトは、幅、歯数、タイミングベルトに作用する作動条件に適した樹脂のタイプ、および他のパラメータにおいて変化する。
【0003】
タイミングベルトは、通常の使用すなわち標準的な長さで入手可能である。精密な機械要素の提供者および販売業者に所有されている標準長さよりも、ベルト長さが長いことが要求されるとき、新しい、より長いベルトが、所定長さのタイミングベルトの在庫品から成形される。所定長さのベルトの在庫品の反対側の端部を結合させて無端状ベルトを成形するために、クランプが用いられる。結果として生じる無端状ベルトは標準的なベルトよりも長さが大きく、使用者の特別な要求に対応することができる。ベルト長さはまた、各端部において、ピック・パック動作に用いられるXY装置に連結されるかもしれない。
【0004】
製造工程により、応力集中が歯付きベルトの歯の間に生じ得る。応力集中は、抗張コードの早期の損傷を引き起こすことにより、ベルトの作動寿命を短縮しうる。
【0005】
したがって、応力集中を消失させて作動寿命を延長させるベルトクランプの必要性が低下することはない。
【0006】
この技術の代表は米国特許出願第2008/0060171A1であり、これは、所定長さのタイミングベルトの在庫品の自由端を相互に固定して、無端状タイミングベルトを成形するためのベルトクランプを開示する。クランプは、逆U字状カバーと、U字状ベースと、カバーとベース内の開口に整列され、芯合わせされて配置され、カバーとベース重合関係に引き合わせる固定具とから成る。複数の凹部がベースの上面に成形され、ベッドが芯合わせされて凹部に干渉する。所定長さのタイミングベルトの在庫品の自由端はベッドに位置決めされ、カバーとベースが相互に引かれるとき、固定具によって付与される圧力により固定位置に保持される。タイミングベルトの在庫品の一端側または両側に形成された、リブ、歯あるいはボタンのような突起は、ベースの相補的な凹部内に押し込められる。ブラケット、あるいは他の取付け支持具が、ベルトクランプの上面において、上方へ延びるピンまたは突起に取付けられ、ベルトクランプとともに移動するために、位置表示センサが突起に位置決めされ、および/またはブラケットに固定されてもよい。
【0007】
必要なものは、クランプ幅にわたって延びる、少なくとも1つの円弧状凹面を備え、第2部材が第1部材に固定されたときに、円弧状凹面が第2部材の頂部に対応するクランプである。本発明はこの必要性に合致する。
【発明の概要】
【0008】
本発明の主な特徴は、クランプ幅にわたって延びる、少なくとも1つの円弧状凹面を備え、第2部材が第1部材に固定されたときに、円弧状凹面が第2部材の頂部に対応するクランプである。
【0009】
本発明の他の特徴は、本発明の次の記載と添付した図面により示され、明らかになる。
【0010】
本発明は、第1部材と、第1部材に接続可能であり、第1の溝と第2の溝を有する第2の面を備え、各溝が歯付きベルトの歯を受容するためであり、頂部が各溝の間に配置された第2部材とを備え、第2部材は第1部材に共同的に係合して、間にある歯付きベルトに係合し、第1部材はクランプ幅にわたって延びる少なくとも1つの円弧状凹面を備え、第2部材が第1部材に固定されるとき、円弧状凹面は第2部材の頂部に対応するクランプである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
この明細書に組み込まれその一部を構成する添付図面は、本発明の好ましい実施形態を示し、説明とともに本発明の原理を説明するために用いられる。
【
図3】歯付きベルトを伴うクランプの側面図である。
【
図4】歯付きベルトを伴うクランプの側面図である。
【
図5】歯付きベルトを伴うクランプの側面図である。
【
図6】歯付きベルトを伴うクランプの斜視図である。
【
図7】歯付きベルトを伴うクランプの透視斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は従来技術のベルトの側面図である。ベルト100はベルト本体10を有する。ベルト本体10は、例えばポリウレタン、あるいはこれの派生物のような、ベルトの分野において使用される多くの公知の熱可塑性樹脂のうちの1つであってもよい。ベルト本体の中には、複数の抗張コード20が埋設されている。抗張コード20は、ほんの2、3の例を挙げれば、カーボンファイバ、ポリエステル、スチールおよびナイロンであってもよい。抗張コードはベルトの長手方向に延びる。
【0013】
複数の歯30がベルト本体から拡張する。歯はベルトの幅にわたって延び、それは長手方向に対して垂直である。歯はスプロケット(図示せず)において、協働する溝に係合する。
【0014】
歯基部31は各歯の基部にある。歯基部はベルト歯からベルト本体へ移る。
【0015】
各歯の間には台形切欠き40がある。同期TPU(熱可塑性ポリウレタン)ベルトの現在の製造方法は典型的には、抗張コードの直ぐ下方の歯の間に台形の切欠きを生じる。ベルトがクランプによって強固に固定されるとき、これらの切欠きは、コードの損傷を生じてベルト寿命を短くする、応力集中部となる。
【0016】
図2Aは
図1の詳細である。応力集中部12は抗張コード20に近接して示される。応力集中部12はベルト歯30の間にあり、抗張コードの上に集まりうる。応力集中部は、抗張コードひいてはベルトの損傷を早める一因となりうる。応力集中部12は図において陰影をつけて示される。
【0017】
図2Bは
図2Aの他の形態である。切欠き40がないと、応力集中部13は、本体10の歯30とは反対側において上部に存在する。応力集中部30もまた、ベルトの損傷を早める一因となりうる。本発明のクランプは、上述した応力集中部(12、13)の大きさを小さくし、これはベルトの作動寿命を高める。応力集中部13は図において陰影をつけて示される。
【0018】
図3は歯付きベルトを伴うクランプの側面図である。本発明のクランプは、例えばXY多重軸装置内の歯付きベルトに用いられる。
【0019】
本発明のクランプは、凹面の輪郭形状51を台形切欠き40の真上に組み込んでいる。凹面51により与えられる余分な空間は、抗張コード20および台形切欠き40に蓄積される歪エネルギーのかなりの量を緩和させ、消失させる。
【0020】
凹面51は、歯のピッチの約25%から50%の範囲の幅W2を有する。歯のピッチは隣接する歯の頂部の間の距離である。
【0021】
凹面51の半径Rは歯のピッチの約75%から200%である。深さDは典型的には歯のピッチの10%である。横方向凹面を有する本発明のクランプは、切欠き40の上方に生じる応力集中を18%から55%減少させることができる。歪エネルギーの吸収量は著しく大きく、エネルギーは、台形切欠き40と抗張コード20に集中するのではなく、本体10の上層部に沿って消失する。
【0022】
図4は歯付きベルトを伴うクランプの側面図である。ベルト本体の突起11は凹面51内に膨出して示されている。突起11における応力集中は、
図2Aおよび
図2Bに示される応力集中と比較して、著しく減少している。
【0023】
図5は歯付きベルトを伴うクランプの側面図である。クランプ50は上方部分57と下方部分53を有する。部分53は固定具55によって部分57に固定される。固定具55はボルトまたはネジであってもよい。ベルト10は部分57と部分53の間に把持される。部分53は、ベルト10の歯の外形に協働する溝付き形状54を有する。
【0024】
図6は歯付きベルトを伴うクランプの斜視図である。クランプ50は、使用者によって要求されるかもしれないように、XY機械要素(図示せず)に係合することができる。例えば、それは倉庫の自動貯蔵・検索システム(ASRS)の一部でありうる。
【0025】
図7は歯付きベルトを伴うクランプの透視斜視図である。このワイヤフレーム画像は部分57、部分53およびベルト10を示す。ベルト10は概略幅W1を有する。クランプ幅とベルト幅はほぼ同じである。各凹面51は、部分53の頂部58に対して、共同的に一致し、反対側に位置する。各頂部58はベルト溝に係合する。隣接する溝の中心間の間隔は溝ピッチPである。クランプとベルトの間の共同的な係合が与えられると、溝ピッチと歯ピッチは等しくなり、すなわちPである。
【0026】
本発明の形態が説明されたが、ここに記載された発明の精神と範囲から逸脱することなく、当業者が、構成と部分の関係と方法において変形を施すことは自明である。特に否定しない限り、図面に示された要素は尺度を表さない。数値の例は本発明を説明するために用いられ、特許請求の範囲の幅を限定しない。さらに、「means for」または「step for」の語句が明確に用いられていない限り、添付された特許請求の範囲の要素のいずれかが米国特許法第112条(f)の問題を引き起こすことは意図していない。本件の開示は、図面に示され、またここに記載された、代表的な実施形態または数値の大きさに限定されるものではない。