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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】検出器用のコリメータ及びその用途
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/164 20060101AFI20220711BHJP
   G01T 1/161 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
G01T1/164 C
G01T1/161 B
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021510513
(86)(22)【出願日】2019-05-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-09
(86)【国際出願番号】 CN2019085728
(87)【国際公開番号】W WO2019210883
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2020-10-30
(31)【優先権主張番号】201820647942.2
(32)【優先日】2018-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810409873.6
(32)【優先日】2018-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520425903
【氏名又は名称】ベイジン ノーベル メディカル イクイップメント リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100072604
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 軍一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140501
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 栄一郎
(72)【発明者】
【氏名】ホウ,ヤンソン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ハイポン
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,リレイ
(72)【発明者】
【氏名】シュウ,ティエンポン
(72)【発明者】
【氏名】ティエン,ドンリン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ニィエンミン
(72)【発明者】
【氏名】チー,チャン
(72)【発明者】
【氏名】リュウ,マイ
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-503508(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105232074(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0161520(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0267530(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102008314(CN,A)
【文献】国際公開第2006/090595(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/161 - 1/166
G01T 7/00 - 7/12
G21K 1/00 - 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出器用のコリメータであって、
アレイ状に配列するイメージングスルーホールが設置される底板であって、前記イメージングスルーホールは、第1のホールセグメント及び第2のホールセグメントを含み、前記第1のホールセグメントの横方向の寸法は、自由端から前記第2のホールセグメントに向かう方向に徐々に小さくなり、前記第2のホールセグメントの横方向の寸法は、自由端から前記第1のホールセグメントに向かう方向に徐々に小さくなる底板と、
前記底板に形成される遮蔽リングと、
前記遮蔽リング内に設置されるとともに、前記遮蔽リングの開口の少なくとも一部を閉塞する頂板であって、前記頂板にアレイ状に配列する遮蔽スルーホールが設置され、前記イメージングスルーホールが、前記遮蔽スルーホールに1対1で対応して設置される頂板と、を含む
ことを特徴とする検出器用のコリメータ。
【請求項2】
前記第1のホールセグメント及び前記第2のホールセグメントは、上下方向に対称に設置される、
ことを特徴とする請求項1に記載のコリメータ。
【請求項3】
前記第1のホールセグメント及び前記第2のホールセグメントは、独立した円錐台または角錐台である、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のコリメータ。
【請求項4】
前記遮蔽スルーホールは、垂直なホールまたは斜めのホールである、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のコリメータ。
【請求項5】
前記遮蔽スルーホールの下縁は、前記第1のホールセグメントの内壁が所在するリング面の延長面と前記頂板の下面との交線と重なっている、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のコリメータ。
【請求項6】
前記コリメータの遮光率は10%以下であり、前記遮光率は、以下の式により決定され、
【数1】

S1は、前記コリメータの半影領域の投影面積を表し、
S2は、前記コリメータの本影領域の投影面積を表し、
Hは、前記イメージングスルーホールの中心から前記検出器の表面までの距離を表し、
αは、前記第1のホールセグメントと前記第2のホールセグメントとの接続面の中点から前記ホールセグメントまでの夾角を表し、
Dは、前記イメージングスルーホールの最大孔径を表し、
Tは、前記底板の底面から前記頂板の頂面までの距離を表す、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のコリメータ。
【請求項7】
前記頂板及び前記底板の厚さの両方は、3.5ミリメートル以上である、
ことを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のコリメータ。
【請求項8】
前記底板の厚さは10~14ミリメートルであり、前記頂板の厚さは2~6ミリメートルである、
ことを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のコリメータ。
【請求項9】
前記遮蔽スルーホールの孔径は3~6ミリメートルである、
ことを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載のコリメータ。
【請求項10】
前記遮蔽スルーホールの孔径は4.5ミリメートルである、
ことを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載のコリメータ。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載のコリメータを含む、
ことを特徴とする検出器。
【請求項12】
前記検出器は、角度可変型2検出器型単一光子放射コンピュータ断層撮影装置である、
ことを特徴とする請求項11に記載の検出器。
【発明の詳細な説明】
【優先権情報】
【0001】
本開示は、2018年05月02日付に中国国家知識産権局に提出した、特許出願番号が「201810409873.6」、出願の名称が「検出器用のコリメータ及びその用途」である中国特許出願、及び特許出願番号が「201820647942.2」、出願の名称が「検出器用のコリメータ及びコリメータを備える検出器」である中国特許出願の優先権を主張し、そのすべての内容は、参照により本開示に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、核医学イメージング技術の分野に関し、特に、検出器用のコリメータ及びその用途に関し、より具体的には、検出器用のコリメータ及び検出器に関する。
【背景技術】
【0003】
放射断層撮影イメージング技術は、非侵襲的な核医学イメージング法であり、単一光子放射コンピュータ断層撮影(SPECT,Single Photon Computed Tomography)は、放射断層撮影の一種であり、現在前臨床薬物研究及び臨床疾患診断に広く使用されている。空間分解能及び検出効率は、SPECTイメージング性能を評価するための2つの重要な技術的指標である。SPECTイメージングでは、放射線をコリメートする必要があり、従来の臨床SPECTには平行孔型コリメータが装備されている。核医学の発展に伴い、平行孔型コリメータSPECTの空間分解能及び検出効率は、より高い臨床ニーズを満足するのが困難であり、心臓、甲状腺、脳などの小器官のイメージングに対して、従来のSPECTの検出器に専用のマルチピンホールコリメータが装備される場合、イメージング視野を狭め適切なピンホール倍率及びピンホール配置を設計することによって、より高い検出効率及びより優れた空間分解能を取得することができる。したがって、マルチピンホールSPECTイメージングシステムは、現在放射断層撮影センシング技術の重要な発展方向である。
【0004】
しかしながら、マルチピンホールコリメータを臨床に適用するために、以下のいくつかの困難を克服する必要がある。マルチピンホールコリメータの目標視野は人体の小器官であるが、人体の他の部分からの放射性放射線もピンホールを通過して検出器に投影を生成する場合があり、この部分の投影が小器官の投影と重なると、再構成の空間分解能が低下するか、妥当な画像を再構成し難くなる。より高い検出効率を取得するために、マルチピンホールコリメータのピンホールの孔径を大きく設計する必要があり、この場合にピンホール投影の半影領域の影響により、投影の重なりがより深刻になる。コリメータの板の厚さを厚くすることにより半影領域をある程度小さくすることができるが、コリメータが厚すぎると材料のコストが高くなり、加工も困難になり、実際には適用できない。
【0005】
これにより、マルチピンホールコリメータにおける異なるピンホール投影の重なりを効果的に無くすとともに、検出効率、空間分解能、および再構成された画像の品質も考慮したコリメータの研究が期待されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、従来の技術における少なくとも一つの技術的課題を解決することを目的とする。そのため、本開示の一つの目的は、イメージングスルーホールを通過した放射性放射線を頂板によって2回目に遮蔽することによって、異なるピンホール投影間の重なりを効果的に低減し、検出器の検出効率及び空間分解能を大幅に向上させ、再構成画像の品質をより優れるようにする検出器用のコリメータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一つの態様によれば、本開示は、検出器用のコリメータを提供し、本開示の実施例によれば、当該コリメータは、アレイ状に配列するイメージングスルーホールが設置される底板であって、前記イメージングスルーホールは、第1のホールセグメント及び第2のホールセグメントを含み、前記第1のホールセグメントの横方向の寸法は、自由端から前記第2のホールセグメントに向かう方向に徐々に小さくなり、前記第2のホールセグメントの横方向の寸法は、自由端にから前記第1のホールセグメントに向かう方向に徐々に小さくなる底板と、前記底板に形成される遮蔽リングと、前記遮蔽リング内に設置されるとともに、前記遮蔽リングの開口の少なくとも一部を閉塞する頂板であって、前記頂板にアレイ状に配列する遮蔽スルーホールが設置され、前記イメージングスルーホールが、前記遮蔽スルーホールに1対1で対応して設置される頂板と、を含む。
【0008】
本開示の実施例のコリメータによれば、イメージングスルーホールを通過した放射性放射線を頂板によって2回目に遮蔽することによって、異なるピンホール投影間の重なりを効果的に低減するとともに、頂板と底板との間の距離、イメージングスルーホール及び遮蔽スルーホールのパラメータを調整することによって、遮光率の比率を変えることもできる。さらに、検出器の検出効率及び空間分解能を大幅に向上させ、再構成画像の品質をより優れるようにすることができる。また、当該コリメータの加工コストが低く、普及及び適用が容易である。
【0009】
また、本開示の上記の実施例のコリメータは、以下のような付加的な技術的特徴を有することができる。
本開示の実施例によれば、前記第1のホールセグメント及び前記第2のホールセグメントは、上下方向に対称に設置される。
【0010】
本開示の実施例によれば、前記第1のホールセグメント及び前記第2のホールセグメントは、独立した円錐台または角錐台である。
【0011】
本開示の実施例によれば、前記遮蔽スルーホールは、垂直ホールまたは斜めホールである。
【0012】
本開示の実施例によれば、前記遮蔽スルーホールの下縁は、前記第1のホールセグメントの内壁が所在するリング面の延長面と前記頂板の下面との交線と重なる。
【0013】
本開示の実施例によれば、前記コリメータの遮光率は10%以下であり、前記遮光率は、以下の式により決定され、
【数1】
ここで、Sは前記コリメータの半影領域の投影面積を表し、Sは前記コリメータの本影領域の投影面積を表し、Hは前記イメージングスルーホールの中心から前記検出器の表面までの距離を表し、αは前記イメージングスルーホールの対角線がなす夾角を表し、Dは前記イメージングスルーホールの最大孔径を表し、Tは前記底板の底面から前記頂板の頂面までの距離を表す。
【0014】
本開示の実施例によれば、前記頂板及び前記底板の厚さの両方は、3.5ミリメートル以上である。本開示の好ましい実施例によれば、前記底板の厚さは10~14ミリメートルであり、前記頂板の厚さは2~6ミリメートルである。
【0015】
本開示の実施例によれば、前記遮蔽スルーホールの孔径は3~6ミリメートルである。本開示の好ましい実施例によれば、前記遮蔽スルーホールの孔径は4.5ミリメートルである。
【0016】
これに基づいて、本開示は検出器をさらに提供する。本開示の実施例によれば、当該検出器は、前記コリメータを含む。これにより、当該検出器は、検出効率及び空間分解能が高く、再構成画像の品質が優れる。なお、当該コリメータは、前記コリメータのすべての技術的特徴及び技術的効果を有し、ここでは説明を省略する。
【0017】
本開示の実施例によれば、前記検出器は、角度可変型2検出器型SPECTである。
【発明の効果】
【0018】
本開示の付加的な特徴及び利点は、一部が以下の説明において示され、一部が以下の説明により明らかになり、又は本開示の実践により理解される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本開示の上記及び/又は付加的な特徴及び利点は、実施例について図面を参照して以下に説明することにより、明らかになり、理解されやすくなる。
図1】本開示の一実施例に係るコリメータの部分構成の概略図を示す。
図2】本開示の一実施例に係る底板の概略構成図を示す。
図3】本開示の一実施例に係る底板の縦方向の断面の概略構成図を示す。
図4】本開示の一実施例に係る頂板の概略構成図を示す。
図5】既存のコリメータの遮光原理の概略図を示す。
図6】本開示の一実施例に係る遮光率の結果の概略図を示す。
図7】本開示の一実施例に係る頂板の縦方向の断面の概略構成図を示す。
図8】本開示の一実施例に係るコリメータの遮光原理の概略図を示す。
図9】本開示の一実施例に係るコリメータの遮光結果の概略図を示す。
図10】本開示の一実施例に係るコリメータの遮光結果の概略図を示す。
図11】本開示の一実施例に係る2検出器型SPECTによるイメージングの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本開示の実施例を詳細に説明し、前記実施例の例が図面に示されており、同一または類似する符号は、常に同一または類似する要素または同一または類似する機能を有する要素を示す。図面を参照して以下に説明される実施例は、例示をするものであり、本開示を解釈するためのものであり、本開示を限定するものと理解してはならない。
【0021】
本開示の説明において、「縦方向」、「横方向」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「鉛直」、「水平」、「頂」、「底」などの用語が示す方位又は位置関係は、図面に示された方位又は位置関係に基づくものであり、本開示を便利に又は簡潔に説明するためのものであり、本開示において必ず特定の方位に構造され操作されると指示又は暗示するものではないので、本開示を限定するものと理解してはならない。
【0022】
なお、「第1」、「第2」の用語は、単に説明するためのものであり、比較的な重要性を指示又は暗示するか、或いは示された技術特徴の数を黙示的に指示するものと理解してはならない。これによって、「第1」、「第2」が限定されている特徴は1つまたより多くの当該特徴を含むことを明示又は暗示するものである。さらに、本開示の説明において、明確且つ具体的な限定がない限り、「複数」とは、少なくとも2つを意味する。
【0023】
コリメータ
本開示の一態様によれば、本開示は、検出器用のコリメータを提供する。本開示の実施例のコリメータによれば、イメージングスルーホールを通過した放射性放射線を頂板によって2回目に遮蔽することによって、異なるピンホール投影間の重なりを効果的に低減するとともに、頂板と底板との間の距離、イメージングスルーホール及び遮蔽スルーホールのパラメータを調整することによって、遮光率の比率を変えることもできる。さらに、検出器のイメージングシステムの検出効率及び空間分解率を大幅に向上させ、再構成画像の品質をより優れるようにすることができる。また、当該コリメータの加工コストが低く、普及及び適用が容易である。
【0024】
当該コリメータの理解を容易にするために、本開示の実施例のコリメータを図1~9を参照して説明する。当該コリメータは、底板100と、遮蔽リング200と、頂板300と、を含むことができる。以下、当該コリメータの各コンポーネントを具体的に説明する。
底板100
図2及び3に示すように、本開示の実施例によれば、底板100には、アレイ状に配列するイメージングスルーホール110が設置され、当該イメージングスルーホール110は、第1のホールセグメント111と第2のホールセグメント112とを含み、第1のホールセグメント111の横方向の寸法は、自由端から前記第2のホールセグメントに向かう方向に徐々に小さくなり、第2のホールセグメント112の横方向の寸法は、自由端から第1のホールセグメント111に向かう方向に徐々に小さくなる。言い換えれば、第1のホールセグメント111及び第2のホールセグメント112は、自由端から底板の中心に向かう方向に横方向の寸法が徐々に小さくなる。発明者は、1つのスルーホールセグメントを使用する場合と比較して、本開示の実施例のイメージングスルーホール110が2つのスルーホールセグメントを使用することによって、横方向の寸法が最小の箇所における材料の厚さを厚くし、この部分から透過する放射線の強度を低減することができることを見出した。
【0025】
ここで、第1のホールセグメント111と第2のホールセグメント112とは、対称であってもよいし、対称でなくてもよい。つまり、第1のホールセグメント111と第2のホールセグメント112との形状、高さ及び横方向の寸法などのパラメータは同じであってもよいし、異なってもよい。本開示の好ましい実施例によれば、第1のホールセグメント111及び第2のホールセグメント112は、上下方向に対称に設置されている。
【0026】
本開示の実施例によれば、異なるイメージングスルーホール110の向き(すなわち円錐の軸線方向)は、異なる方向に向かっており、すべての向きはイメージング視野の中心に収束する。これにより、異なるイメージングスルーホールによる同一イメージング視野のイメージングを実現し、イメージング対象物体の異なる角度における投影を同時に取得して再構成に使用することができる。
【0027】
本開示の実施例によれば、第1のホールセグメント111と第2のホールセグメント112とは、独立した円錐台または角錐台であってもよい。つまり、第1のホールセグメント111と第2のホールセグメント112とは、任意の円錐台または角錐台であってもよい。ここで、円錐台の上面及び下面は、円形や楕円形であってもよいし、その他の不規則な円形であってもよい。
【0028】
遮蔽リング200
本開示の実施例によれば、当該遮蔽リング200は底板100に形成される。これにより、遮蔽リングは、外部環境からコリメータに入射する光線を遮蔽する。
【0029】
頂板300
図4を参照して、本開示の実施例によれば、当該頂板300は、遮蔽リング200内に設置されるとともに、遮蔽リング200の開口の少なくとも一部を閉塞し、当該頂板300には、アレイ状に配列する遮蔽スルーホール310が設置され、当該イメージングスルーホール310が遮蔽スルーホール110に1対1で対応して設置される。つまり、頂板300は、底板100の上方に相対的に設置され、且つその周辺が遮蔽リング200内に位置する。これにより、イメージングスルーホールを通過した放射性放射線を頂板によって2回目に遮蔽することによって、異なるピンホール投影間の重なりを効果的に低減するとともに、頂板と底板との間の距離、イメージングスルーホール及び遮蔽スルーホールのパラメータを調整することによって、遮光率の比率を変えることもできる。さらに、検出器の検出効率及び空間分解能を大幅に向上させ、再構成画像の品質をより優れるようにすることができる。
【0030】
本開示の実施例によれば、底板100と頂板300とは、平行に設置される。これにより、構造の設計を簡易にし、組み立てを容易にすることができる。
【0031】
ここで、コリメータの遮光原理をさらに説明する。図3に示すように、通常、目標視野は、ピンホールの開口角αでカバーされる領域内にあるが、実際に放射性放射線の入射を受け入れ可能な角度はβである。ピンホールの向きが第1の板に垂直な場合、αとβとは、以下の関係を有する。
【数2】
ここで、αは前記第1のホールセグメントと前記第2のホールセグメントとの接続面の中点から前記第1のホールセグメントの自由端までの夾角を表し、
βはイメージングスルーホール110の対角線がなす夾角を表し、
は底板100の厚さを表し、つまり、T=T+Tであり、
Dは前記第1のホールセグメントと前記第2のホールセグメントとの接続面の最大径方向寸法を表す。
【0032】
本影領域及び半影領域の投影範囲は図5に示される。本影領域は、図5におけるα開口角でカバーされる投影領域であり、半影領域は、図5におけるβ開口角でカバーされる投影領域から本影領域を引いた残りの領域である。この場合に、検出器600の平面には、本影領域及び半影領域の投影の両方を有し、投影の形状はすべて円形である。本影領域の投影面積をSとし、半影領域の投影面積をSとし、T=0の場合に、両者の比の値は、以下の関係を満足し、
【数3】
ここで、Sはコリメータの半影領域の投影面積、即ち図5におけるβ開口角でカバーされる投影領域から本影領域を引いた残りの領域の面積を表し、
はコリメータの本影領域の投影面積、即ち図5におけるα開口角でカバーされる投影領域の面積を表し、
Hはイメージングスルーホール110の中心から検出器の表面までの距離を表し、
αは第1のホールセグメント111と第2のホールセグメント112との接続面の中点から第1のホールセグメント111の自由端までの夾角を表し、
Dはイメージングスルーホール110の最大孔径を表し、
Tは底板100の底面から頂板300の頂面までの距離を表す。
【0033】
ここで、遮光率は、半影領域の投影面積Sと本影領域の投影面積Sとの比の値であり、遮光率とコリメータの厚さとの変化関係は図6に示される。図6から、半影領域面積を本影領域面積の10%程度に小さくするために、つまり、遮光率を10%にするために、コリメータの厚さを少なくとも約80mmにする必要があることがわかる。通常、コリメータの作製に使用される材料は比較的高価であり、しかも一部の材料(例えば、タングステン)の加工が困難であり、厚いコリメータを使用することは現実的ではない。発明者は、頂板300を設置して2回目に遮蔽すること、つまり底板100及び頂板300が図5における遮光板400の機能を共同で実現し、すなわち底板100、頂板300及び両者間の部分が図5における遮光板400を共同で構成することによって、底板100及び頂板300の厚さを大幅に薄くすることができるとともに、底板100及び頂板300の厚さ、底板100と頂板300との間の距離、及び異なる形状及び寸法のイメージングスルーホール110及び遮蔽スルーホール310によって、さまざまな設計ニーズを満足することができ、優れた柔軟性を有することを研究で見出した。
【0034】
本開示の一実施例において、図4に示すように、頂板300には、底板のイメージングスルーホール110に1対1で対応する12個の楕円形の遮蔽スルーホール310が設置されている。
【0035】
図7に示すように、本開示の実施例によれば、遮蔽スルーホール310は、垂直なホール(図7Aに示すように)または斜めのホール(図7Bに示すように)である。斜めのホールを垂直なホールに変えると、加工がさらに容易になり、遮蔽効果への影響を無視することができ、当業者は、加工の難しさに応じて自ら選ぶことができる。
【0036】
さらに、楕円形のホールのサイズは、イメージングピンホールの半影領域の投影を可能な限り遮蔽するとともに本影領域の投影に影響を与えないように設計され、遮蔽効果は、図8図9及び図10に示される。図10において、イメージング検出器における半影領域は非常に小さく、隣接する本影領域と重なることはほとんどない。発明者は、遮蔽スルーホール310の下縁が、第1のホールセグメント111の内壁が所在するリング面の延長面と頂板300の下面との交線と重なった場合、つまり、第1のホールセグメント111の内壁が所在するリング面の延長面と頂板300の下面との交差によって形成される図形は、遮蔽スルーホール310の下縁を形成した場合、遮光率が小さく、半影領域Sの面積がゼロに近いことを研究で見出した。
【0037】
なお、底板100と頂板300との間の距離、及び異なる形状及び寸法のイメージングスルーホール110及び遮蔽スルーホール310は、さまざまな設計ニーズに応じて調整することができ、優れた柔軟性を有する。したがって、非目標器官からの放射線の余分のある角度の投影に対して余分の遮蔽を選択的に行って、不要なデータまたは画像の品質に影響を与えるデータを無くし、検出器の検出効率及び空間分解能を大幅に向上させ、再構成画像の品質をより優れるようにする。
【0038】
上記のように、既存のコリメータに対して、本開示の実施例のコリメータの同等効果の厚さは、底板100の底面から頂板300の頂面までの距離であり、つまり、底板100の厚さと、頂板300の厚さと、底板100と頂板300との間の距離との三者の合計に等しい。式(2)及び設定された遮光率S/Sの値に基づいてDを算出した後、2つの板間の距離は、Dから第1の板の厚さ及び第2の板の厚さを引くことによって決定することができる。
【0039】
本開示の実施例において、底板100、頂板300及び遮蔽部材200は、金、タンタル、プラチナ、タングステン及び鉛の少なくとも1つで形成することができる。
【0040】
さらに、本開示の好ましい実施例において、底板100、頂板300及び遮蔽部材200は、同じ材料で形成することができる。
【0041】
なお、底板100及び頂板300の厚さは、放射線を透過させないことを確保する必要がある。放射線のエネルギが140keVで、板の材料がタングステンで、板が放射線の少なくとも99.999%を遮蔽するように設定されている場合、板の最小厚さTは、以下の式により算出することができ、
【数4】
ここで、μ=3.268mm-1であり、エネルギが140keVの光子に対する材料タングステンの線形減衰係数である。
【0042】
対応的に、本開示の実施例によれば、頂板300及び底板100の厚さの両方は、3.5ミリメートル以上である。これにより、放射線を効果的に遮蔽し、放射線の透過を防止することができる。
【0043】
同時に、1つのイメージングスルーホール110を透過した放射線が1つの対応する遮蔽スルーホール310のみに到達できることを確保するために、底板の厚さを薄すぎにしてはならない。本開示の好ましい実施例によれば、底板100の厚さは10~14ミリメートルであり、頂板300の厚さは2~6ミリメートルである。これにより、底板及び頂板の厚さは適切であり、イメージングスルーホールの放射線はそれに対応する1つの遮蔽スルーホールのみに到達でき、遮光率はより低くなり、検出器の検出効率及び空間分解能が大幅に向上し、再構成画像の品質がより優れるようになる。
【0044】
具体的には、本開示の好ましい実施例によれば、遮蔽スルーホール310の孔径は3~6ミリメートルである。本開示の好ましい実施例によれば、遮蔽スルーホール310の孔径は4.5ミリメートルである。これにより、遮蔽スルーホールの孔径は適切であり、イメージングスルーホールの放射線は、それに対応する1つの遮蔽スルーホールのみに到達でき、遮光率はより低くなる。
【0045】
本開示の実施例によれば、当該コリメータは、頂板300と底板100との間に設置され、頂板300及び底板100を支持して固定するための支持部材500をさらに含む。
【0046】
本開示の実施例によれば、当該支持部材500は、タングステン、鉛、金、プラチナ、タンタルの少なくとも1つで形成されることもできる。さらに、当該支持部材500は、底板100及び頂板300と同じ材料で形成されることもできる。
【0047】
検出器
これに基づいて、本開示は検出器をさらに提供する。本開示の実施例によれば、当該検出器は上記のコリメータを含む。これにより、当該検出器の検出効率及び空間分解能が高くなり、再構成画像の品質が優れる。本開示の実施例によれば、前記コリメータを備える2検出器型SPECTは、回転せずに人体の小器官の断層撮影イメージング及び動的断層撮影イメージングを行うことができる。なお、当該コリメータは、上記のコリメータのすべての技術的特徴及び技術的効果を有し、ここでは説明を省略する。
【0048】
なお、本開示の実施例の検出器は、心臓、甲状腺または脳などの人体の小器官のイメージングに特に適するが、当該検出器の用途は、人体の小器官の断層撮影イメージング及び動的断層撮影イメージングに限定されず、動物のいくつかの器官と臓器の断層撮影イメージング及び動的断層撮影イメージングにも適用することができ、さらに本開示の実施例の検出器を用いてイメージングできる他の目標物も本開示の実施例の検出器に適用することができる。
【0049】
本開示の実施例によれば、検出器は、角度可変型2検出器型SPECTであってもよい。図11に示すように、2検出器型SPECTによる人体の小器官のイメージングの概略図である。上記のコリメータ10を備えるマルチピンホールSPECTイメージング装置では、2つの検出器が一定の夾角をなして配置され、イメージング視野が、2つの検出器がなした夾角の間にあり、すべてのピンホールは、心臓領域を十分に含める球形の視野をカバーできる。これにより、当該SPECTイメージング装置は、非常に高い感度を達成することができ、例えば、回転せずに心臓の高速断層撮影イメージングを実現することができ、特に、当該装置は心臓の動的イメージングも実現することができる。
【0050】
本明細書の説明において、「一実施例」、「一部の実施例」、「例」、「具体的な例」、或いは「一部の例」などの用語を参照した説明とは、当該実施例或いは例に合わせて説明された具体的な特徴、構成、材料或いは特性が、本開示の少なくとも一つの実施例或いは例に含まれることである。本明細書において、上記用語の例示的な説明は、必ずしも同じ実施例或いは例を指すものではない。また、説明された具体的な特徴、構成、材料或いは特性は、いずれか一つ或いは複数の実施例又は例において適切に結合することができる。
【0051】
本開示の実施例を示し説明したが、当業者は、本開示の原則及び趣旨から逸脱しない場合に、これらの実施例に対して多くの変更、修正、置き換え及び変形を行うことができ、本開示の範囲は、特許請求の範囲およびそれらの同等物によって限定されると理解することができる。
図1
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図11