(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】リニアコンベアシステム、リニアモジュールおよびリニアモジュールの制御方法
(51)【国際特許分類】
H02P 25/064 20160101AFI20220711BHJP
【FI】
H02P25/064
(21)【出願番号】P 2021518240
(86)(22)【出願日】2019-05-08
(86)【国際出願番号】 JP2019018327
(87)【国際公開番号】W WO2020225862
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2021-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】上野 賢治
(72)【発明者】
【氏名】藤田 貴吉
(72)【発明者】
【氏名】青木 俊介
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/069203(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/069201(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/055755(WO,A1)
【文献】特開2003-244929(JP,A)
【文献】特開平11-18467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 25/064
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石を含むリニアモーター可動子を有するスライダーと、
前記スライダーの駆動方向に並ぶ複数の担当領域にそれぞれ対応して配置された複数のドライバーを有し、前記複数のドライバーのそれぞれが対応する前記担当領域に重複する前記スライダーの前記駆動方向への駆動を担当するリニアモジュールと、
前記ドライバーに制御信号を送信するホスト制御装置と
を備え、
前記スライダーは、当該スライダーを識別するための識別子を記憶する記憶部を有し、
前記制御信号は、前記スライダーに対する駆動指令と、前記スライダーの前記識別子とを対応付けて示し、
前記ドライバーは、対応する前記担当領域内に配置されて電磁石を含むリニアモーター固定子と、対応する前記担当領域に重複する前記スライダーの前記記憶部から前記識別子を読み取る読取部と、前記リニアモーター固定子に電流を供給する駆動制御部とを有し、前記読取部により読み取った前記識別子に前記制御信号により対応付けられた前記駆動指令に応じた電流を、前記駆動制御部により前記リニアモーター固定子に供給することで、対応する前記担当領域に重複する前記スライダーを前記駆動方向に駆動するリニアコンベアシステム。
【請求項2】
前記ホスト制御装置は、前記複数のドライバーに同一の前記制御信号を送信する請求項1に記載のリニアコンベアシステム。
【請求項3】
前記リニアモジュールは、前記複数のドライバーを用いて、複数のスライダーを駆動可能であり、
前記記憶部は、前記複数のスライダーのそれぞれを識別するための前記識別子を記憶し、
前記制御信号は、前記スライダーに対する前記駆動指令と、前記駆動指令の対象となる前記スライダーの前記識別子とを対応付けて、前記スライダー毎に示す請求項1または2に記載のリニアコンベアシステム。
【請求項4】
前記ドライバーは、前記読取部による前記識別子の読み取りを所定の読取周期で試行し、読み取りに成功した前記識別子に前記制御信号により対応付けられた前記駆動指令に応じた電流を、前記駆動制御部により前記リニアモーター固定子に供給する請求項1ないし3のいずれか一項に記載のリニアコンベアシステム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記制御信号を前記複数のドライバーに所定の送信周期で送信し、前記読取周期は前記送信周期より短い請求項4に記載のリニアコンベアシステム。
【請求項6】
前記ドライバーは、前記読取部により前記識別子を読み取れない場合には、前記駆動制御部による前記リニアモーター固定子への電流供給を行わない請求項1ないし5のいずれか一項に記載のリニアコンベアシステム。
【請求項7】
永久磁石を含むリニアモーター可動子を有するスライダーの駆動方向に並ぶ複数の担当領域にそれぞれ対応して配置された複数のドライバーを備え、
前記複数のドライバーのそれぞれが対応する前記担当領域に重複する前記スライダーの前記駆動方向への駆動を担当し、
前記ドライバーは、対応する前記担当領域内に配置されて電磁石を含むリニアモーター固定子と、対応する前記担当領域に重複する前記スライダーから当該スライダーを識別するための識別子を読み取る読取部と、前記リニアモーター固定子に電流を供給する駆動制御部と、前記スライダーに対する駆動指令と前記スライダーの前記識別子とを対応付けて示す制御信号を受信する通信処理部とを有し、前記読取部により読み取った前記識別子に前記制御信号により対応付けられた前記駆動指令に応じた電流を、前記駆動制御部により前記リニアモーター固定子に供給することで、対応する前記担当領域に重複する前記スライダーを前記駆動方向に駆動するリニアモジュール。
【請求項8】
永久磁石を含むリニアモーター可動子を有するスライダーの駆動方向に並ぶ複数の担当領域にそれぞれ対応して配置された複数のドライバーを備え、前記ドライバーは、対応する前記担当領域内に配置されて電磁石を含むリニアモーター固定子を有するリニアモジュールの制御方法であって、
前記ドライバーが、対応する前記担当領域に重複する前記スライダーから当該スライダーを識別するための識別子を読み取る工程と、
前記スライダーに対する駆動指令と、前記スライダーの前記識別子とを対応付けて示す制御信号を前記ドライバーに送信する工程と、
前記ドライバーが、前記スライダーから読み取った前記識別子に前記制御信号により対応付けられた前記駆動指令に応じた電流を、前記リニアモーター固定子に供給することで、対応する前記担当領域に重複する前記スライダーを前記駆動方向に駆動する工程と
を備えるリニアモジュールの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、リニアモジュールによりスライダーを駆動する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、リニアモーター方式によりスライダーを駆動するリニアモジュールが記載されている。つまり、スライダーは永久磁石を含む固定子を有し、リニアモジュールは電磁石を含む固定子を有する。そして、リニアモジュールは、電磁石に電流を供給することで生じる固定子と電磁石との間の磁気的な相互作用によりスライダーを駆動する。
【0003】
特に特許文献1では、スライダーの駆動方向に並ぶ複数の領域が設定されており、リニアモジュールは、セクションコントローラーと固定子とでそれぞれ構成される複数のドライバーを有し、複数のドライバーはそれぞれ複数の領域に対応する。そして、各ドライバーは、担当する領域に存在するスライダーの駆動を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように複数のドライバーのそれぞれに複数の担当領域を設けたリニアモジュールによりスライダーを駆動するには、スライダーが存在する担当領域に対応するドライバーに当該スライダーの駆動を的確に実行させる必要がある。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、複数のドライバーのそれぞれに対応して複数の担当領域を設けたリニアモジュールにおいて、スライダーが存在する担当領域に対応するドライバーにスライダーの駆動を的確に実行させることを可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るリニアコンベアシステムは、永久磁石を含むリニアモーター可動子を有するスライダーと、スライダーの駆動方向に並ぶ複数の担当領域にそれぞれ対応して配置された複数のドライバーを有し、複数のドライバーのそれぞれが対応する担当領域に重複するスライダーの駆動方向への駆動を担当するリニアモジュールと、ドライバーに制御信号を送信するホスト制御装置とを備え、スライダーは、当該スライダーを識別するための識別子を記憶する記憶部を有し、制御信号は、スライダーに対する駆動指令と、スライダーの識別子とを対応付けて示し、ドライバーは、対応する担当領域内に配置されて電磁石を含むリニアモーター固定子と、対応する担当領域に重複するスライダーの記憶部から識別子を読み取る読取部と、リニアモーター固定子に電流を供給する駆動制御部とを有し、読取部により読み取った識別子に制御信号により対応付けられた駆動指令に応じた電流を、駆動制御部によりリニアモーター固定子に供給することで、対応する担当領域に重複するスライダーを駆動方向に駆動する。
【0008】
本発明に係るリニアモジュールは、永久磁石を含むリニアモーター可動子を有するスライダーの駆動方向に並ぶ複数の担当領域にそれぞれ対応して配置された複数のドライバーを備え、複数のドライバーのそれぞれが対応する担当領域に重複するスライダーの駆動方向への駆動を担当し、ドライバーは、対応する担当領域内に配置されて電磁石を含むリニアモーター固定子と、対応する担当領域に重複するスライダーから当該スライダーを識別するための識別子を読み取る読取部と、リニアモーター固定子に電流を供給する駆動制御部と、スライダーに対する駆動指令とスライダーの識別子とを対応付けて示す制御信号を受信する通信処理部とを有し、読取部により読み取った識別子に制御信号により対応付けられた駆動指令に応じた電流を、駆動制御部によりリニアモーター固定子に供給することで、対応する担当領域に重複するスライダーを駆動方向に駆動する。
【0009】
本発明に係るリニアモジュールの制御方法は、永久磁石を含むリニアモーター可動子を有するスライダーの駆動方向に並ぶ複数の担当領域にそれぞれ対応して配置された複数のドライバーを備え、ドライバーは、対応する担当領域内に配置されて電磁石を含むリニアモーター固定子を有するリニアモジュールの制御方法であって、ドライバーが、対応する担当領域に重複するスライダーから当該スライダーを識別するための識別子を読み取る工程と、スライダーに対する駆動指令と、スライダーの識別子とを対応付けて示す制御信号をドライバーに送信する工程と、ドライバーが、スライダーから読み取った識別子に制御信号により対応付けられた駆動指令に応じた電流を、リニアモーター固定子に供給することで、対応する担当領域に重複するスライダーを駆動方向に駆動する工程とを備える。
【0010】
このように構成された本発明(リニアコンベアシステム、リニアモジュールおよびリニアモジュールの制御方法)では、スライダーを識別するための識別子が当該スライダーに与えられている。これに対して、複数のドライバーに送信される制御信号は、スライダーに対する駆動指令と、当該スライダーの識別子とを対応付けて示す。そして、ドライバーは、その担当領域に重複するスライダーから当該スライダーを識別するための識別子を読み取って、制御信号によりこの識別子に対応付けられた駆動指令に応じた電流をリニアモーター固定子に供給する。つまり、複数のドライバーのうち、スライダーが重複する担当範囲に対応するドライバーが、スライダーから識別子を読み取って、この識別子に対応付けられた駆動指令に応じてスライダーを駆動する。こうして、スライダーが存在する担当領域に対応するドライバーにスライダーの駆動を的確に実行させることが可能となっている。
【0011】
また、ホスト制御装置は、複数のドライバーに同一の制御信号を送信するように、リニアコンベアシステムを構成してもよい。かかる構成では、ホスト制御装置は、制御の対象となるスライダーの識別子と駆動指令とを含む制御信号を生成して、この制御信号を複数のドライバーに送信するだけで、スライダーが存在する担当領域に対応するドライバーに当該スライダーを的確に駆動させることができる。つまり、複数のドライバーのうちから、スライダーの駆動を実行させるべきドライバーを特定して、これに駆動指令を送信するといった制御ではなく、複数のドライバーに制御信号を一斉に送信するといった簡単な制御により、スライダーを適切に駆動できる。
【0012】
また、リニアモジュールは、複数のドライバーを用いて、複数のスライダーを駆動可能であり、記憶部は、複数のスライダーのそれぞれを識別するための識別子を記憶し、制御信号は、スライダーに対する駆動指令と、駆動指令の対象となるスライダーの識別子とを対応付けて、スライダー毎に示すように、リニアコンベアシステムを構成してもよい。かかる構成では、複数のスライダーのそれぞれについて、当該スライダーの駆動指令と識別子とを対応付けて示す制御信号を生成して複数のドライバーに送信することで、複数のスライダーのそれぞれを的確に駆動することができる。
【0013】
また、ドライバーは、読取部による識別子の読み取りを所定の読取周期で試行し、読み取りに成功した識別子に制御信号により対応付けられた駆動指令に応じた電流を、駆動制御部によりリニアモーター固定子に供給するように、リニアコンベアシステムを構成してもよい。かかる構成では、各ドライバーは識別子の読み取りを所定の読取周期で試行するため、スライダーの移動に伴って、スライダーが重複する担当領域が変化した場合には、スライダーの移動先の担当領域に対応するドライバーがスライダーの駆動を実行する。こうして、スライダーの移動に応じて、スライダーの駆動を実行するドライバーを変更することができる。
【0014】
また、制御装置は、制御信号を複数のドライバーに所定の送信周期で送信し、読取周期は送信周期より短いように、リニアコンベアシステムを構成してもよい。かかる構成では、スライダーの駆動を実行するドライバーの変更をスライダーの移動に的確に追従させることができる。
【0015】
また、ドライバーは、読取部により識別子を読み取れない場合には、駆動制御部によるリニアモーター固定子への電流供給を行わないように、リニアコンベアシステムを構成してもよい。かかる構成では、スライダーが重複しない担当領域に対応するドライバーがリニアモーター固定子へ電流供給を実行したために、不要な誘導磁場が生じてスライダーの移動が乱されたり、無駄に電力が消費されたりするのと抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数のドライバーのそれぞれに対応して複数の担当領域を設けたリニアモジュールにおいて、スライダーが存在する担当領域に対応するドライバーにスライダーの駆動を的確に実行させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係るリニアコンベアシステムの一例を模式的に示す図。
【
図2】本発明に係るリニアモジュールの一例を示す斜視図。
【
図3】
図2のリニアモジュールの内部を部分的に露出させて示す斜視図。
【
図4】
図2のリニアモジュールのY方向における部分断面図。
【
図5】
図2のリニアモジュールのX方向における部分断面図。
【
図6】
図1のリニアコンベアシステムが備える電気的構成を示すブロック図。
【
図7】ホストコントローラーにより生成される制御信号を示す図。
【
図8】リニアドライバーが実行する受信制御を示すフローチャート。
【
図9】リニアドライバーが実行する駆動制御を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は本発明に係るリニアコンベアシステムの一例を模式的に示す図である。
図1では、水平方向に平行なX方向、X方向に直交しつつ水平方向に平行なY方向および鉛直方向に平行なZ方向を有するXYZ直交座標軸が表記されている。さらに、X方向の一方側がX1側と表記され、X方向の一方側と逆の他方側がX2側と表記されている。同様の表記は、以下の図においても適宜用いられる。リニアコンベアシステム1は、4台のリニアモジュール2を備える。なお、同図では、4台のリニアモジュール2に対して互いに異なる符合2a、2b、2c、2dが付されている。
【0019】
リニアモジュール2a、2bはリニアコンベアシステム1の設置面に固定された固定リニアモジュールであり、リニアモジュール2c、2dは設置面に対してY方向に動くことができる可動リニアモジュールである。固定リニアモジュール2a、2bと、可動リニアモジュール2c、2dとは、Y方向に同一の幅を有する一方、X方向において異なる長さを有する。ただし、これらは、X方向における長さを除いて、
図2~
図5を用いて後述する基本構成を共通に有する。
【0020】
2個の固定リニアモジュール2a、2bは、Y方向に間隔を空けつつX方向に平行に配置されている。こうしてX方向に並列に配置された固定リニアモジュール2a、2bは、X方向に同一の長さを有する。一方、可動リニアモジュール2c、2dは、X方向において、固定リニアモジュール2a、2bよりも短い、同一の長さを有する。ただし、可動リニアモジュール2c、2dおよび固定リニアモジュール2a、2bの寸法関係はここの例には限られない。
【0021】
かかるリニアコンベアシステム1は、可動リニアモジュール2c、2dをY方向に駆動する2個のアクチュエーター5c、5dを有する。アクチュエーター5cは、固定リニアモジュール2a、2bのX方向のX1側で、Y方向に平行に配置される。アクチュエーター5dは、固定リニアモジュール2a、2bのX方向のX2側で、Y方向に平行に配置される。このように、2個のアクチュエーター5c、5dは、X方向から2個の固定リニアモジュール2a、2bを挟むように配置されている。
【0022】
アクチュエーター5cは、例えばY方向に平行なボールネジを備えた単軸ロボットであり、アクチュエーター5cのボールネジのナットに可動リニアモジュール2cが取り付けられている。このアクチュエーター5cは、可動域Rcに沿ってY方向に可動リニアモジュール2cを駆動する。ここで、可動域Rcは、X方向においてX1側から固定リニアモジュール2aのX1側の端に対向する対向範囲Fcaと、X方向においてX1側から固定リニアモジュール2bのX1側の端に対向する対向範囲Fcbとを含み、Y方向に延びる領域である。
【0023】
アクチュエーター5dは、例えばY方向に平行なボールネジを備えた単軸ロボットであり、アクチュエーター5dのボールネジのナットに可動リニアモジュール2dが取り付けられている。このアクチュエーター5dは、可動域Rdに沿ってY方向に可動リニアモジュール2dを駆動する。ここで、可動域Rdは、X方向においてX2側から固定リニアモジュール2aのX2側の端に対向する対向範囲Fdaと、X方向においてX2側から固定リニアモジュール2bのX2側の端に対向する対向範囲Fdbとを含み、Y方向に延びる領域である。
【0024】
また、このようなアクチュエーター5c、5dを駆動するためのアクチュエータードライバー50c、50dがリニアコンベアシステム1に具備されている。アクチュエータードライバー50cは、アクチュエーター5cのモーターに電流を供給することで、リニアモジュール2cをY方向に駆動し、アクチュエータードライバー50dは、アクチュエーター5dのモーターに電流を供給することで、リニアモジュール2dをY方向に駆動する。
【0025】
このようなリニアコンベアシステム1では、スライダー4を循環的に駆動することができる。例えば可動リニアモジュール2cが対向範囲Fca内に位置する状態で、固定リニアモジュール2aがそれに係合するスライダー4をX方向のX1側に駆動することで、固定リニアモジュール2aから可動リニアモジュール2cにスライダー4を移動させることができる。そして、アクチュエーター5cが対向範囲Fcaから対向範囲Fcbに可動リニアモジュール2cを移動させてから、対向範囲Fcb内に位置する可動リニアモジュール2cがそれに係合するスライダー4をX方向のX2側に駆動することで、可動リニアモジュール2cから固定リニアモジュール2bにスライダー4を移動させることができる。
【0026】
さらに、可動リニアモジュール2dが対向範囲Fdb内に位置する状態で、固定リニアモジュール2bがそれに係合するスライダー4をX方向のX2側に駆動することで、固定リニアモジュール2bから可動リニアモジュール2dにスライダー4を移動させることができる。そして、アクチュエーター5dが対向範囲Fdbから対向範囲Fdaに可動リニアモジュール2dを移動させてから、対向範囲Fda内に位置する可動リニアモジュール2dがそれに係合するスライダー4をX方向のX1側に駆動することで、可動リニアモジュール2dから固定リニアモジュール2aにスライダー4を移動させることができる。
【0027】
こうして、スライダー4を反時計回りに循環的に駆動することができる。また、上記と逆の動作を実行することで、スライダー4を時計回りに循環的に駆動することができる。なお、循環駆動は、リニアコンベアシステム1で実行可能なスライダー4の駆動態様の一例に過ぎず、他の種々の態様でスライダー4を駆動することができる。
【0028】
また、リニアコンベアシステム1は、各リニアモジュール2(2a~2d)やアクチュエーター5c、5dの駆動を統括的に制御するホストコントローラー10を備える。このホストコントローラー10は、制御に必要な演算機能を備えたコンピューターである。
【0029】
図2は本発明に係るリニアモジュールの一例を示す斜視図であり、
図3は
図2のリニアモジュールの内部を部分的に露出させて示す斜視図であり、
図4は
図2のリニアモジュールのY方向における部分断面図であり、
図5は
図2のリニアモジュールのX方向における部分断面図である。上述の通り、リニアモジュール2a、2b、2c、2dはX方向への長さを除いて、共通する基本構成を備える。そこで、
図2~
図5では、これらを特に区別せずに、リニアモジュール2と表している。
【0030】
図2および
図3では、X方向に延設されたリニアモジュール2と、リニアモジュール2を下側から支持するベース部材3と、リニアモジュール2に係合するスライダー4とが示されている。リニアモジュール2は、X方向に等間隔で並ぶ3個のベース部材3の上端に取り付けられている。かかるリニアモジュール2は、X方向において全長範囲Raに渡って延設され(すなわち、全長範囲Raの長さを有し)、リニアモジュール2に係合するスライダー4は、この全長範囲RaにおいてX方向に可動である。
【0031】
リニアモジュール2は、X方向に延設された基板21を有する。ここの例では、基板21は、X方向に配列された2枚の分割基板211で構成される。2枚の分割基板211のうち、X1側の分割基板211は3個のベース部材3のうちX1側の端のベース部材3と中央のベース部材3との間に架設され、X2側の分割基板211は3個のベース部材3のうちX2側の端のベース部材3と中央のベース部材3との間に架設される。基板21を構成するモジュールユニット20の個数は、2個に限られず、1個あるいは3個以上でもよい。さらに言えば、基板21を構成する分割基板211の枚数を変更することで、リニアモジュール2の長さ(全長範囲Ra)を変えることができる。
【0032】
かかる基板21はZ方向からの平面視で矩形状を有する。基板21の上面には、X方向に平行な2本のガイドレール22がY方向に間隔を空けて取り付けられるとともに、所定の配列ピッチP23でX方向に一列に並ぶ複数のリニアモーター固定子23が取り付けられている。Y方向において、複数のリニアモーター固定子23は、2本のガイドレール22の間に配置されている。各リニアモーター固定子23は、コイルと当該コイルに挿入されたコアとで構成された電磁石である。
【0033】
さらに、基板21には、所定の配列ピッチP24でX方向に一列に並ぶ複数(8個)のサーボユニット24が取り付けられている。Y方向において、複数のサーボユニット24は、複数のリニアモーター固定子23と1本のガイドレール22との間に配置されている。なお、サーボユニット24の配列ピッチP24はリニアモーター固定子23の配列ピッチP23よりも長く、1個のサーボユニット24に対応して複数のリニアモーター固定子23が設けられている。
【0034】
複数のサーボユニット24のそれぞれは、基板21の上面に取り付けられた磁気センサー25と、基板21の下面に取り付けられたドライバー基板26とを有する。磁気センサー25は、スライダー4のX方向の位置を検出する位置センサーである。ドライバー基板26は、磁気センサー25の検出結果に応じた電流をリニアモーター固定子23に供給するフィードバック制御を実行する電気回路を搭載する。
【0035】
かかるリニアモジュール2では、全長範囲Raがサーボユニット24の個数でX方向において等分されて、サーボユニット24の個数分の担当領域Rbが設定されている。つまり、全長範囲Raが複数の担当領域Rbに分割され、各担当領域Rbに1個のサーボユニット24が配置される。また、各担当領域Rbには、上記のように1個のサーボユニット24に対応して設けられた複数のリニアモーター固定子23が並ぶ。
【0036】
このように、各担当領域Rbでは、1個のサーボユニット24(換言すれば、1個の磁気センサー25と1個のドライバー基板26)と、これに対応する複数のリニアモーター固定子23とで構成される1個のリニアドライバーDが配置されており、全長範囲Raでは複数(8個)のリニアドライバーDが等間隔でX方向に並ぶ。
【0037】
また、リニアモジュール2は、ガイドレール22とリニアドライバーDを上側から覆う、平面視で矩形状のカバー部材27を有する。カバー部材27は、Y方向の中央で下方に突出する支持脚271を有し、支持脚271が基板21の上面に取り付けられる。Y方向の両端において、カバー部材27と基板21との間には隙間272が形成されている。
【0038】
スライダー4は、スライダー筐体40を有する。このスライダー筐体40は、リニアモジュール2のカバー部材27を上側から覆う上板401と、上板401のY方向の端から下方に延設された側板402と、側板402の下端から隙間272を介してカバー部材27と基板21の間に入るフランジ403とを有する。フランジ403の下面には、係合部材42が取り付けられ、この係合部材42がリニアモーター固定子23に係合する。これによって、スライダー4の移動がガイドレール22によりX方向に案内される。
【0039】
また、スライダー4は、リニアモーター固定子23に対向するようにスライダー筐体40に取り付けられたリニアモーター可動子43を有する。このリニアモーター可動子43は、永久磁石と当該永久磁石を保持するバックヨークで構成される。さらに、スライダー4は磁気センサー25に対向するようにスライダー筐体40に取り付けられた磁気スケール45を有する。この磁気スケール45は、スライダー4のX方向の位置を示す。
【0040】
かかるスライダー4は、X方向においてリニアモジュール2の端からリニアモジュール2の中央側に進入して、リニアモジュール2のガイドレール22に係合することができる。また、スライダー4は、X方向においてリニアモジュール2の端から外側に抜けて、リニアモジュール2のガイドレール22から離脱することができる。
【0041】
このように構成されたリニアモジュール2では、スライダー4の駆動を複数のリニアドライバーDが分担して実行する。つまり、各リニアドライバーDのリニアモーター固定子23は、それが配置された担当領域Rbに重複するスライダー4のリニアモーター可動子43に対して磁気的な駆動力を付与できる一方、当該担当領域Rbに重複しないスライダー4のリニアモーター可動子43に対しては磁気的な駆動力を付与できない。そこで、複数のリニアドライバーDは、全長範囲Raのうち、それぞれが配置された担当領域Rbに重複するスライダー4の駆動を担当する。続いては、リニアドライバーDによるスライダー4の駆動について説明する。
【0042】
図6は
図1のリニアコンベアシステムが備える電気的構成を示すブロック図であり、
図7はホストコントローラーにより生成される制御信号を示す図である。
図6に示すように、ホストコントローラー10は、初期処理部11、プログラム処理部12、命令処理部13、モーション制御部14、軸状態管理部15および通信制御部16を備える。これらのうち、機能部11~15は、ホストコントローラー10が備えるCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーにより実現される。
【0043】
初期処理部11は、電源投入時にリニアコンベアシステム1の初期設定を実行する。この初期設定には、複数のスライダー4を識別するための識別子IDの設定が含まれる。つまり、リニアコンベアシステム1に設けられた複数のスライダー4に対してはそれぞれ異なる識別子IDが与えられており、これらスライダー4は識別子IDにより識別される。そして、スライダー4の磁気スケール45には、当該スライダー4を識別するための識別子IDが記憶(着磁)されている。これに対して、初期処理部11は、一の対象スライダー4が重複する担当領域Rbに配置されたドライバーDの磁気センサー25により、対象スライダー4の磁気スケール45から識別子IDを読み出して、対象スライダー4と関連付けて管理する処理を、複数のスライダー4のうちで対象スライダー4を変更しながら、全スライダー4について実行する。こうして、スライダー4の識別子IDの設定が実行される。なお、識別子IDは、複数のスライダー4に順に付された軸番号と関連付けて管理される。
【0044】
プログラム処理部12は、各スライダー4の移動を規定するプログラムを保持する。このプログラムは、例えばPLC(Programmable Logic Controller)等を用いて、ユーザーにより生成されて、プログラム処理部12にインストールされる。命令処理部13は、プログラムが規定するようにスライダー4を移動させる移動命令を生成し、モーション制御部14は命令処理部13により生成された移動命令に応じたスライダー4の移動をリニアドライバーDに実行させるための指令値(位置指令値Cp、速度指令値Cv)を生成する。
【0045】
こうして、
図7に示す制御信号Scが生成される。この制御信号Scは、スライダー4の識別子IDと、当該スライダー4に対する位置指令値Cpおよび速度指令値Cvとを対応付けて、スライダー4毎に示す。つまり、制御信号Scは、識別子IDにより識別させるスライダー4を、当該識別子IDに対応付けられた位置指令値Cpおよび速度指令値Cvに従って駆動せよとの指令を、複数のスライダー4のそれぞれについて示す。なお、指令コードは、スライダー4に与えられる指令の種類を示すコードである。かかる制御信号Scは、識別子ID、指令コード、位置指令値Cpおよび速度指令値Cvからなるデータを、スライダー4の軸番号の順に並べた信号であり、リニアコンベアシステム1に具備された全リニアドライバーDにシリアル通信により送信される。
【0046】
軸状態管理部15は、複数のスライダー4(軸)それぞれの状態を管理する。具体的には、軸状態管理部15は、一の対象スライダー4が重複する担当領域Rbに配置されたドライバーDの磁気センサー25により、対象スライダー4の磁気スケール45からスライダー4の位置(軸状態)を読み出して、対象スライダー4と関連付けて管理する処理を、複数のスライダー4のうちで対象スライダー4を変更しながら、全スライダー4について実行する。
【0047】
通信制御部16は、ホストコントローラー10と、リニアモジュール2のリニアドライバーDとの通信を制御する。リニアドライバーDへの制御信号Scの送信や、リニアドライバーDからの軸状態の取得は、通信制御部16により実行される。
【0048】
これに対して、各リニアドライバーDのドライバー基板26は、初期処理部261、通信制御部262、軸状態管理部263およびサーボ制御部264を有する。初期処理部261は、電源投入時にリニアドライバーDの初期設定を実行する。通信制御部262は、ホストコントローラー10や他のリニアドライバーDの通信制御部262との通信を制御する。
【0049】
軸状態管理部263は、スライダー4(軸)の位置(状態)を管理する。具体的には、軸状態管理部263は、スライダー4の磁気スケール45が示す識別子IDと位置の読み取りを磁気センサー25に周期的に試行させる。そして、読み取りが成功した場合には、スライダー4の識別子IDと位置とを対応付けて保存するとともに、通信制御部262を介してこれらをホストコントローラー10に送信する。そして、上述のようにホストコントローラー10の軸状態管理部15がこれらを管理する。
【0050】
サーボ制御部264は、担当領域Rbに重複するスライダー4の駆動に対してサーボ制御を実行する。つまり、サーボ制御部264は、ホストコントローラー10から受信した位置指令値Cpおよび速度指令値Cvと、磁気センサー25によって読み取ったスライダー4の位置および速度との偏差に基づき、リニアモーター固定子23に供給する電流を制御するサーボ制御により、スライダー4を駆動する。
【0051】
ところで、リニアコンベアシステム1に設けられた複数のリニアドライバーDはシリアルに接続されている。具体的には、
図1の破線で示すように、リニアモジュール2d、リニアモジュール2b、リニアモジュール2aおよびリニアモジュール2cがこの順で配線Loによりシリアルに接続されている。また、各リニアモジュール2では、
図5に示すように、配線Liにより各リニアドライバーDがシリアルに接続されている。これに対して、ホストコントローラー10は、個々のリニアドライバーDを区別することなく、複数のリニアドライバーDをシリアルに接続する配線経路Lo、Liに、各リニアドライバーDに共通の制御信号Sc(
図7)を送信する。これによって、制御信号Scは、複数のリニアドライバーDを順番に通過する。一方、各リニアドライバーDは、受信した制御信号Scに基づき、スライダー4の駆動を実行する。このような受信制御および駆動制御の詳細は次の通りである。
【0052】
図8はリニアドライバーが実行する受信制御を示すフローチャートである。なお、複数のリニアドライバーDのそれぞれは共通して
図8のフローチャートを実行するため、ここでは一のリニアドライバーDを代表に挙げて受信制御の説明を行う。
【0053】
ステップS101では、通信制御部262は、ホストコントローラー10の軸状態管理部15から制御信号Scを受信したかを確認する。ホストコントローラー10からの制御信号Scの送信は、所定の送信周期Tsで実行される。そして、制御信号Scを受信すると(ステップS101で「YES」)、この制御信号Scがサーボ制御部264のメモリーに保存される(ステップS102)。これによって、制御信号Scが受信される度に、初期処理部261に保存される制御信号Scが更新される。
【0054】
図9はリニアドライバーが実行する駆動制御を示すフローチャートである。なお、複数のリニアドライバーDのそれぞれは共通して
図9のフローチャートを実行するため、ここでは一のリニアドライバーDを代表に挙げて駆動制御の説明を行う。
【0055】
ステップS201では、軸状態管理部263は、所定の読取周期Trが経過したかを確認する。なお、読取周期Trは送信周期Tsより短い。そして、読取周期Trが経過すると(ステップS201で「YES」)、軸状態管理部263は、スライダー4からの識別子IDの読み取りを磁気センサー25に試行させる(ステップS202)。ステップS203では、軸状態管理部263は、識別子IDの読み取りに成功したかを確認する。
【0056】
いずれのスライダー4も該当のリニアドライバーDが対応する担当領域Rbに重複しない場合には、当該担当領域Rbに配置された磁気センサー25に対向する磁気スケール45が存在しない。その結果、識別子IDを読み取ることができず(ステップS203で「NO」)、ステップS201に戻る。一方、いずれかのスライダー4が該当のリニアドライバーDが対応する担当領域Rbに重複する場合には、当該担当領域Rbに配置された磁気センサー25に、このスライダー4の磁気スケール45が対向する。その結果、このスライダー4からの識別子IDの読み取りに成功する(ステップS203で「YES」)。
【0057】
こうして識別子IDの読み取りに成功すると、サーボ制御部264は、軸状態管理部263により読み取られた識別子IDに対応する位置指令値Cpおよび速度指令値Cvを、ステップS102で保存した制御信号Scから読み出す(ステップS204)。そして、サーボ制御部264は、位置指令値Cpおよび速度指令値Cvと、磁気センサー25によって読み取ったスライダー4の位置および速度との偏差に基づき、リニアモーター固定子23に供給する電流をフィードバック制御(サーボ制御)により制御する(ステップS205)。これによって、位置指令値Cpおよび速度指令値Cvに応じたスライダー4の駆動が実行される。リニアドライバーDでは、かかる処理が読取周期Tr毎に実行される。
【0058】
以上に説明する実施形態では、スライダー4を識別するための識別子IDが当該スライダー4に与えられている。これに対して、複数のリニアドライバーDに送信される制御信号Scは、スライダー4に対する位置指令値Cpおよび速度指令値Cvと、当該スライダー4の識別子IDとを対応付けて示す(
図7)。そして、リニアドライバーDは、その担当領域Rbに重複するスライダー4から当該スライダー4を識別するための識別子IDを読み取って(ステップS202、S203)、制御信号Scによりこの識別子IDに対応付けられた位置指令値Cpおよび速度指令値Cvに応じた電流をリニアモーター固定子23に供給する(ステップS204、S205)。つまり、複数のリニアドライバーDのうち、スライダー4が重複する担当領域Rbに対応するリニアドライバーDが、スライダー4から識別子IDを読み取って、この識別子IDに対応付けられた位置指令値Cpおよび速度指令値Cvに応じてスライダー4を駆動する。こうして、スライダー4が存在する担当領域Rbに対応するリニアドライバーDにスライダー4の駆動を的確に実行させることが可能となっている。
【0059】
このように、リニアドライバーDは、スライダー4からの識別子IDを読み取った場合には、自らがスライダー4の駆動を担当すると自律的に判断し、スライダー4に対してサーボ制御を実行する。したがって、ホストコントローラー10は、複数のリニアドライバーDのうち、いずれのリニアドライバーDにスライダー4の駆動を制御させるかといった判断をする必要が無く、スライダー4に対する位置指令値Cpおよび速度指令値Cvを生成して送信するだけでよい。
【0060】
また、ホストコントローラー10は、複数のリニアドライバーDに同一の制御信号Sc(
図7)を送信する。かかる構成では、ホストコントローラー10は、制御の対象となるスライダー4の識別子IDと位置指令値Cpおよび速度指令値Cvとを含む制御信号Scを生成して、この制御信号Scを複数のリニアドライバーDに送信するだけで、スライダー4が存在する担当領域Rbに対応するリニアドライバーDに当該スライダー4を的確に駆動させることができる。つまり、複数のリニアドライバーDのうちから、スライダー4の駆動を実行させるべきリニアドライバーDを特定して、これに位置指令値Cpおよび速度指令値Cvを送信するといった制御ではなく、複数のリニアドライバーDに制御信号Scを一斉に送信するといった簡単な制御により、スライダー4を適切に駆動できる。
【0061】
また、リニアコンベアシステム1では複数のリニアドライバーDが具備されており、複数のリニアドライバーDを用いて複数のスライダー4を個別に駆動可能である。また、各スライダー4の磁気スケール45は、複数のスライダー4のそれぞれを識別するための識別子IDを記憶する。そして、制御信号Scは、スライダー4に対する位置指令値Cpおよび速度指令値Cvと、これら指令値Cp、Cvの対象となるスライダー4の識別子IDとを対応付けて、スライダー4毎に示す(
図7)。かかる構成では、複数のスライダー4のそれぞれについて、当該スライダー4の指令値Cp、Cvと識別子IDとを対応付けて示す制御信号Scを生成して複数のリニアドライバーDに送信することで、複数のスライダー4のそれぞれを的確に駆動することができる。
【0062】
また、リニアドライバーDは、磁気センサー25による識別子IDの読み取りを所定の読取周期Trで試行する(ステップS201、S202)。そして、読み取りに成功した識別子IDに制御信号Scにより対応付けられた位置指令値Cpおよび速度指令値Cvに応じた電流を、ドライバー基板26によりリニアモーター固定子23に供給する(ステップS204、S205)。かかる構成では、各リニアドライバーDは識別子IDの読み取りを所定の読取周期Trで試行するため、スライダー4の移動に伴って、スライダー4が重複する担当領域Rbが変化した場合には、スライダー4の移動先の担当領域Rbに対応するリニアドライバーDがスライダー4の駆動を実行する。こうして、スライダー4の移動に応じて、スライダー4の駆動を実行するリニアドライバーDを変更することができる。
【0063】
また、ホストコントローラー10が制御信号Scを複数のリニアドライバーDに送信する送信周期Tsよりも、読取周期Trが短い。かかる構成では、スライダー4の駆動を実行するリニアドライバーDの変更をスライダー4の移動に的確に追従させることができる。
【0064】
また、リニアドライバーDは、磁気センサー25により識別子IDを読み取れない場合(ステップS203で「NO」の場合)には、ドライバー基板26によるリニアモーター固定子23への電流供給を行わない。かかる構成では、スライダー4が重複しない担当領域Rbに対応するリニアドライバーDがリニアモーター固定子23へ電流供給を実行したために、不要な誘導磁場が生じてスライダー4の移動が乱されたり、無駄に電力が消費されたりするのと抑制できる。
【0065】
このように本実施形態では、リニアコンベアシステム1が本発明の「リニアコンベアシステム」の一例に相当し、ホストコントローラー10が本発明の「ホスト制御装置」の一例に相当し、リニアモジュール2が本発明の「リニアモジュール」の一例に相当し、リニアモーター固定子23が本発明の「リニアモーター固定子」の一例に相当し、磁気センサー25が本発明の「読取部」の一例に相当し、ドライバー基板26が本発明の「駆動制御部」の一例に相当し、スライダー4が本発明の「スライダー」の一例に相当し、リニアモーター可動子43が本発明の「リニアモーター可動子」の一例に相当し、磁気スケール45が本発明の「記憶部」の一例に相当し、位置指令値Cpおよび速度指令値Cvが本発明の「駆動指令」の一例に相当し、リニアドライバーDが本発明の「ドライバー」の一例に相当し、識別子IDが本発明の「識別子」の一例に相当し、担当領域Rbが本発明の「担当領域」の一例に相当し、制御信号Scが本発明の「制御信号」の一例に相当し、読取周期Trが本発明の「読取周期」の一例に相当し、送信周期Tsが本発明の「送信周期」の一例に相当し、X方向が本発明の「駆動方向」の一例に相当する。
【0066】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、各リニアドライバーDは、制御信号Scを受信する度にこれを保存・更新する(
図7)。しかしながら、各リニアドライバーDは、その担当領域Rbにスライダー4が重複している場合に制御信号Scを保存・更新する一方、その担当領域Rbにスライダー4が重複していない場合には制御信号Scの保存・更新を行わなくてもよい。
【0067】
また、リニアモジュール2の個数や配置を適宜変更してもよい。
【0068】
また、リニアコンベアシステム1におけるスライダー4の駆動態様は、循環駆動に限られず、所定の方向に直線的にスライダー4を駆動する直動駆動でもよい。
【0069】
リニアモジュール2やスライダー4の具体的な構成、例えば形状あるいは寸法等を変更してもよい。
【0070】
また、スライダー4からの識別子IDの読み取りは、磁気によらず、光あるいは電気によって行ってもよい。
【符号の説明】
【0071】
1…リニアコンベアシステム
10…ホストコントローラー(ホスト制御装置)
2…リニアモジュール
23…リニアモーター固定子
25…磁気センサー(読取部)
26…ドライバー基板(駆動制御部)
4…スライダー
43…リニアモーター可動子
45…磁気スケール(記憶部)
Cp…位置指令値(駆動指令)
Cv…速度指令値(駆動指令)
D…リニアドライバー(ドライバー)
ID…識別子
Rb…担当領域
Sc…制御信号
Tr…読取周期
Ts…送信周期
X…X方向(駆動方向)