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特許7102617有機エレクトロルミネッセンス材料及びその使用
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  • 特許-有機エレクトロルミネッセンス材料及びその使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセンス材料及びその使用
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20220711BHJP
   C07D 491/153 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
H05B33/22 D
H05B33/14 B
H05B33/22 B
C07D491/153
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021527099
(86)(22)【出願日】2019-11-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 CN2019115179
(87)【国際公開番号】W WO2020125240
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-05-17
(31)【優先権主張番号】201811566947.3
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515177907
【氏名又は名称】広東阿格蕾雅光電材料有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】李 慧楊
(72)【発明者】
【氏名】戴 雷
(72)【発明者】
【氏名】蔡 麗菲
【審査官】酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/069717(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/051234(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50-51/56
H05B 33/00-33/28
H01L 27/32
C07D 491/153
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の構造を有する化合物であり、
****8
Bは、O、S及びNRのうちから選択され、Rは、C1-C6のアルキル、C3-C40のヘテロアリール及びC6-C40のアリールのうちから選択され、
-Xは、それぞれ独立して、N又はCRから選択され、Rは、水素、重水素、C1-C6のアルキル、C3-C40のヘテロアリール及びC6-C40のアリールのうちから選択される、ことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス材料。
【請求項2】
Bは、O、S及びNRのうちから選択され、Rは、C1-C6のアルキル、C3-C9のヘテロアリール及びC6-C14のアリールのうちから選択され、
-Xは、それぞれ独立して、N又はCRから選択され、Rは、水素、重水素、C1-C6のアルキル、C3-C9のヘテロアリール及びC6-C14のアリールのうちから選択される、ことを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス材料。
【請求項3】
Bは、O、S及びNRのうちから選択され、Rは、メチル、フェニル、トリル、ナフチル及びピリジルのうちから選択され、
-Xは、それぞれ独立して、N又はCRから選択され、Rは、水素、重水素、C1-C6のアルキル、C3-C9のヘテロアリール及びC6-C14のアリールのうちから選択される、ことを特徴とする請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス材料。
【請求項4】
Bは、O、S及びNRのうちから選択され、Rは、メチル、フェニル及びピリジルから選択され、X-Xは、それぞれ独立して、N又はCHから選択される、ことを特徴とする請求項3に記載の有機エレクトロルミネッセンス材料。
【請求項5】
-Xのうちの0~2つはNであり、その他はCHである、ことを特徴とする請求項4に記載の有機エレクトロルミネッセンス材料。
【請求項6】
式(I)は以下のいずれかの化合物である、ことを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス材料。
****9
【請求項7】
式(I)は以下の化合物である、ことを特徴とする請求項6に記載の有機エレクトロルミネッセンス材料。
****10
【請求項8】
陰極、陽極及び有機層を含み、前記有機層は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子注入層及び電子輸送層のうちの1つ以上の層であり、前記有機層は、請求項1~7のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス材料を含む、ことを特徴とする有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス材料を含む層は、正孔注入層又は電子輸送層であり、請求項1~7のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス材料は単独で、又は他の化合物と混合して使用される、ことを特徴とする請求項8に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項10】
前記有機層の総厚は1~1000nmである、ことを特徴とする請求項8に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス材料に関し、具体的には、ピラジン及びシアノ基を含むエレクトロルミネッセンス材料及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機発光ダイオード(OLED)は、アプリケーションが非常に期待できる照明及びディスプレイ技術として、学界や産業界から大きな注目を集めている。OLEDデバイスは、自己発光、広視野角、短い応答時間、及び可撓性デバイスを製造できるなどの特性を有し、次世代のディスプレイ及び照明技術の有望な候補となっている。しかしながら、現在のOLEDには、効率の低さや寿命の短さなどの問題があり、更なる研究の必要がある。
【0003】
1998年にForrestらにより電気リン光デバイス(PHOLED)は報告され、その後、有機エレクトロルミネセンスデバイスは、産業上使用されている。その利点は、有機エレクトロルミネセンスの量子効率が25%未満の限界を打ち破り、量子収率を100%に高めることである。高効率PHOLEDデバイスは通常、陰極、陽極及び有機層を含む多層構造である。有機層は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子注入層及び電子輸送層のうちの1つ以上の層である。これらの有機層は、すべての層が存在する必要がなく、実際の状況に応じて一部の有機層を追加又は削減することができる。その利点は、キャリアー注入、輸送及び再結合などのプロセスを容易に調整して、キャリアーの輸送及び再結合の効率を向上させることができることである。
【0004】
有機エレクトロルミネセンスデバイスの性能最適化の重要な側面は、隣接する有機機能層の間の電荷注入を調整して、励起子の形成を促進し、それによって発光効率を向上させることである。TCNQF4は、正孔注入層としてよく使用され、正孔の注入を効果的に促進し、駆動電圧を下げることができる。しかしながら、その分子量が小さく、揮発性があるため、蒸着プロセス中に蒸着装置及びデバイスを汚染しやすい。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、デバイスの電圧を効果的に下げると同時に、効率を向上させることができる、ピラジン及びシアノ基を含む有機エレクトロルミネッセンス材料を提供することである。
【0006】
有機エレクトロルミネッセンス材料は、式(I)の構造を有する化合物である。
ここで、
Bは、O、S及びNRのうちから選択され、Rは、C1-C6のアルキル、C3-C40のヘテロアリール及びC6-C40のアリールから選択され、
-Xは、それぞれ独立して、N又はCRから選択され、Rは、水素、重水素、C1-C6のアルキル、C3-C40のヘテロアリール及びC6-C40のアリールのうちから選択される。
【0007】
好ましくは、Bは、O、S及びNRのうちから選択、Rは、C1-C6のアルキル、C3-C9のヘテロアリール及びC6-C14のアリールのうちから選択され、
-Xは、それぞれ独立して、N又はCRから選択され、Rは、水素、重水素、C1-C6のアルキル、C3-C9のヘテロアリール及びC6-C14のアリールのうちから選択される。
【0008】
好ましくは、Bは、O、S及びNRのうちから選択され、Rは、メチル、フェニル、トリル、ナフチル及びピリジルのうちから選択され、
-Xは、それぞれ独立して、N又はCHから選択される。
【0009】
より好ましくは、Bは、O、S及びNRのうちから選択され、Rは、メチル、フェニル及びピリジルのうちから選択され、
-Xは、それぞれ独立して、N又はCHから選択される。
【0010】
より好ましくは、Bは、O、S及びNRのうちから選択され、Rは、メチル、フェニル及びピリジルのうちから選択され、
X1-X4のうちの0~2つはNであり、その他はCHである。
【0011】
更に好ましくは、本発明の式(I)の発光材料は、次の1~18の化合物である。
【0012】
上記化合物は、有機エレクトロルミネセンスデバイス、メカノルミネセンスデバイス、有機電界効果トランジスタ、有機太陽電池、及び化学センサーに適用することができる。
【0013】
本発明では、化学式(I)の化合物の調製方法は特に限定されない。典型的な例として非限定的な化合物
の合成及び調製方法を以下に示す。
合成ルート:
【0014】
合成方法:
反応物1a(1eq)及びベンゾフラン-2-ボロン酸エステル1b(2.1eq)を、窒素雰囲気下でPd触媒によりカップリング反応させて、中間体1cを得る。1cを分子内閉環反応させて、中間体1dを得、次に縮合反応によって化合物1を得る。
【0015】
上記の調製方法が単なる例示的な例であることは明らかである。当業者であれば、それらの技術を改善することにより、本発明の他の化合物を得ることができる。
【0016】
本発明の有機エレクトロルミネセンスデバイスは、陰極、陽極及び有機層を含み、上記の有機層は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子注入層及び電子輸送層のうちの1つ以上の層である。これらの有機層として、すべての層が存在する必要はない。
【0017】
上記の正孔注入層、正孔輸送層、正孔阻止層、発光層及び/又は電子輸送層のうちの少なくとも1つの層は、式(I)に記載の化合物を含む。
【0018】
好ましくは、式(1)に記載の化合物が位置する(存在する)層は、正孔注入層又は電子輸送層である。
【0019】
本発明のデバイスの有機層の総厚は、1~1000nmであることが好ましく、1~500nmであることがより好ましく、5~300nmであることがさらに好ましい。
【0020】
上記の有機層は、蒸着又は溶液法によって薄膜として形成され得る。
【0021】
実験結果は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス材料を用いることにより、デバイスの電圧を効果的に下げると同時に、デバイスの電力効率を向上させることができ、有機エレクトロルミネセンスデバイスの分野に適用される可能性があることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の有機エレクトロルミネセンスデバイスの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施例を参照しながら本発明を更に詳細に説明する。
〈実施例1〉
【0024】
化合物1の合成
【0025】
中間体1cの合成:
窒素雰囲気下で、化合物1a(3.3g、10.0mmol)(合成については特許WO2007/149478を参照)、ベンゾフラン-2-ボロン酸エステル1b(5.2g、21.0mmol)(合成については特許US2009/54454を参照)、Pd(PPh(0.58g、0.5mmol)、KCO(6.9g、50.0mmol)、テトラヒドロフラン(30mL)及び水(5mL)を順にシュレンクチューブに入れた。80℃に加熱し、24時間反応させた。室温に冷却した後、上記反応液を水に入れ、塩酸でpHを中性に調整し、淡黄色の固体を沈殿させ、n-ヘキサンとメタノールで再結晶して中間体1c(2.5g、収率62%)を得た。
【0026】
化合物1dの合成:
窒素雰囲気下で、化合物1c(1.5g、3.8mmol)を塩化オキサリル(20mL)に溶解し、DMF(0.5mL)を滴下添加し、還流まで加熱し、6時間反応させた。塩化オキサリルを減圧で蒸発させ、残留物をジクロロメタンに溶解し、0℃で溶解し、三塩化アルミニウム(20.0g、15mmol)を加え、室温まで徐々に加熱し、24時間撹拌した。反応液を塩酸(2M、20mL)に入れ、1時間撹拌し、濾過して、赤紫色の固体(1.1g、収率80%)を得た。
【0027】
化合物1の合成:
窒素雰囲気下で、化合物1d(1.0g、3.8mmol)及びマロノニトリル(3.3 g, 50 mmol)をピリジン(50 mL)に溶解し、室温で一晩撹拌した。濾過により得られた紫色の固体をメタノールで再結晶して化合物1(0.6g、収率34%)を得た。ESI-MS (m/z): 461.1 (M+1).
〈実施例2〉
【0028】
本発明の有機発光材料を用いて、エレクトロルミネセンスデバイスを製造した。デバイスの構造を図1に示す。
【0029】
まず、透明な導電性膜(ITO膜)ガラス基板10(その上に陽極20がある)を洗浄剤溶液、脱イオン水、エタノール、アセトン及び脱イオン水で順次洗浄し、次に、酸素プラズマで30秒間処理した。
【0030】
次に、ガラス基板10のITO上に厚さ10nmの正孔注入層30を蒸着した。正孔注入層は、化合物1(3%)とHT1(97%)の混合ドーピングとした。
【0031】
次に、化合物HT1を蒸着して、厚さ40nmの正孔輸送層40を形成した。
【0032】
次に、正孔輸送層上に厚さ30nmの発光層50を蒸着した。発光層は、Ir(PPy)(10%)とCBP(90%)の混合ドーピングとした。
【0033】
次に、発光層上に厚さ50nmの化合物AlQを電子輸送層60として蒸着した。
【0034】
最後に、電子注入層70として1nmのLiFを、デバイスの陰極80として100nmのAlを蒸着した。
〈比較例1〉
【0035】
厚さ10nmのHT1を正孔注入層として蒸着し、他の各層は、実施例2と同様として、同様の方法で、有機発光デバイスを製造した。
【0036】
デバイスの各化合物の構造式は以下のとおりである。
【0037】
実施例2及び比較例の有機エレクトロルミネセンスデバイスの性能パラメータを以下の表に示す。
【0038】
同じ条件で、本発明の化合物をドープすることによって製造された有機エレクトロルミネセンスデバイスは、電力効率が比較例のものよりも著しく良好であり、ターンオン電圧を低減することができ、有機光電子デバイスの性能を最適化することに非常に有効である。
【0039】
上記の様々な実施形態は単なる例であり、本発明の範囲を制限するものではない。本発明の技術的思想から逸脱することなく、本発明の様々な材料及び構造を他の材料及び構造に置き換えることができる。当業者は、創造的な作業なしに、本発明のアイデアに従って多くの修正や変更を行うことができることを理解されたい。従って、既存の技術に基づいて分析、推測、又は部分的な調査を通じて当業者が取得できる技術的解決策は、本発明の特許請求の範囲によって規定される保護範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
10はガラス基板、20は陽極、30は正孔注入層、40は正孔輸送層、50は発光層、60は電子輸送層、70は電子注入層、80は陰極

図1