(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】熱処理設備の運転支援システム、運転支援プログラム
(51)【国際特許分類】
E01C 19/10 20060101AFI20220711BHJP
【FI】
E01C19/10 Z
(21)【出願番号】P 2022030221
(22)【出願日】2022-02-28
【審査請求日】2022-03-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000226482
【氏名又は名称】日工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊田 浩亘
(72)【発明者】
【氏名】茂木 徹
(72)【発明者】
【氏名】松浪 智広
(72)【発明者】
【氏名】中浦 孝明
(72)【発明者】
【氏名】西畑 彰展
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-023535(JP,A)
【文献】特開2020-026647(JP,A)
【文献】特開2011-192039(JP,A)
【文献】特開2020-176780(JP,A)
【文献】国際公開第2020/183690(WO,A1)
【文献】特開平10-245808(JP,A)
【文献】特開2000-148233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理設備により熱処理を施した骨材を溶融アスファルトに混合させて、アスファルト合材を生産するアスファルトプラントにおける、熱処理設備の運転支援システムであって、
前記熱処理設備のエネルギーの消費状態を監視するエネルギー管理情報と、前記骨材に依存するアスファルト合材の製品品質を監視する製品品質情報と、前記熱処理設備の燃焼状態に支障を来す要因を監視するための設備保全情報と、を含む量的データを取得する量的データ取得部と、
前記熱処理設備を操作するオペレータの個人識別能力、前記オペレータの勤務体系、及び天候状
況を含む前記オペレータ毎の原単位の状況から、アスファルト合材生産時の質的データを取得する質的データ取得部と、
前記量的データ取得部で取得した前記量的データ
に基づく生データ
と、所定期間の前記生データを前記質的データ毎に集計した運転パラメータデータ
と、前記運転パラメータデータに基づく劣化又は改善の動向変化を集計したトレンド集計データ
と、を含む集計情報を生成すると共に、
過去の量的データ及び質的データをもとに生産量と投入速度との相関関係から出荷に必要な生産量を生産する際にエネルギーデマンドを上限値より低く抑え原単位を最小とする運転を可能するパラメータ及び該パラメータの目標値からなる改善情報と
、過去の量的データ及び質的データから生成したビッグデータに基づいて機械学習により各バッチ処理の結果を収束させるための最適運転方法を実行するための最適運転プログラム情報
と、を含むアドバイス情報を生成する情報生成部と、
前記情報生成部で生成した何れかの情報を提供する情報提供部と、
を有する熱処理設備の運転支援システム。
【請求項2】
前記質的データの前記処理結果が、前記質的対象のバッチ処理毎の原単位の振れ幅分布であり、前記情報生成部は、前記質的対象に起因する原単位への影響度合いを判定する、請求項1記載の熱処理設備の運転支援システム。
【請求項3】
前記エネルギー管理情報が、
前記熱処理設備の燃焼空気比、前記骨材の熱処理の原単位、前記骨材の供給量に対する燃料要求量を含む、請求項1又は請求項2記載の熱処理設備の運転支援システム。
【請求項4】
前記製品品質情報が、
前記骨材の乾燥温度、前記骨材の配合量、前記アスファルト合材の生産量を含む、請求項1~請求項3の何れか1項記載の熱処理設備の運転支援システム。
【請求項5】
前記設備保全情報が、
排ガスに含まれる骨材の粉塵を除去するフィルタの詰まり、熱処理設備の温度、熱処理設備内の稼働部の状態、を含む請求項1~請求項4の何れか1項記載の熱処理設備の運転支援システム。
【請求項6】
コンピュータを、
請求項1~請求項5何れか1項記載の熱処理設備の運転支援システムにおける、前記量的データ取得部、前記質的データ取得部、前記情報生成部、及び前記情報提供部として機能させる、
運転支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、熱処理設備を備えたアスファルトプラントにおいて、製品品質や、使用エネルギーの管理、並びに、燃焼装置や設備の保全に対する支援を行う熱処理設備の運転支援システム、運転支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
アスファルトプラントとは、アスファルト合材の生産設備であり、骨材を加熱乾燥するドライヤや排ガスを処理する脱臭炉等のエネルギー消費設備を有している。
【0003】
アスファルトプラントは、基本的に受注生産により運用されており、生産計画通りの運用が難しく、生産する合材に利用される骨材の割合も受注製品毎に異なる場合がある。
【0004】
また、アスファルトプラントは、基本的に屋外に設置されており、気温や気候等の外部環境に大きく影響を受けるため、時間や日毎に生産を調整する必要がある。
【0005】
このため、アスファルトプラントの運用に向けて、各運転パラメータを受注生産毎に検討する必要がある。
【0006】
また、可燃性のアスファルトを含む再生材の乾燥処理では、他の設備よりも火元の管理等、安全対策を強化する必要がある。
【0007】
さらに、受注生産のため、短時間に大量のエネルギーを使用する場合もあり、エネルギーのデマンドの制御も行う必要がある。
【0008】
特許文献1には、アスファルト合材を製造可能なアスファルトプラントが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来技術では、燃焼ガスを直接利用するエネルギー消費設備に対して、エネルギー管理、乾燥品質管理、及び安全管理を総合的に監視し、適正な稼働を支援するシステムは存在しない。
【0011】
本発明は、熱処理設備において、エネルギー管理、乾燥品質管理、及び安全管理を総合的に監視し、適正な運転を支援することができる熱処理設備の運転支援システム、運転支援プログラムを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る熱処理設備の運転支援システムは、熱処理設備により熱処理を施した骨材を溶融アスファルトに混合させて、アスファルト合材を生産するアスファルトプラントにおける、熱処理設備の運転支援システムであって、前記熱処理設備のエネルギーの消費状態を監視するエネルギー管理情報と、前記骨材に依存するアスファルト合材の製品品質を監視する製品品質情報と、前記熱処理設備の燃焼状態に支障を来す要因を監視するための設備保全情報と、を含む量的データを取得する量的データ取得部と、前記熱処理設備を操作するオペレータの個人識別能力、前記オペレータの勤務体系、及び天候状況を含む前記オペレータ毎の原単位の状況から、アスファルト合材生産時の質的データを取得する質的データ取得部と、前記量的データ取得部で取得した前記量的データに基づく生データと、所定期間の前記生データを前記質的データ毎に集計した運転パラメータデータと、前記運転パラメータデータに基づく劣化又は改善の動向変化を集計したトレンド集計データと、を含む集計情報を生成すると共に、過去の量的データ及び質的データをもとに生産量と投入速度との相関関係から出荷に必要な生産量を生産する際にエネルギーデマンドを上限値より低く抑え原単位を最小とする運転を可能するパラメータ及び該パラメータの目標値からなる改善情報と、過去の量的データ及び質的データから生成したビッグデータに基づいて機械学習により各バッチ処理の結果を収束させるための最適運転方法を実行するための最適運転プログラム情報と、を含むアドバイス情報を生成する情報生成部と、前記情報生成部で生成した何れかの情報を提供する情報提供部と、を有している。
【0013】
本発明によれば、量的データ取得部は、熱処理設備のエネルギーの消費状態を監視するエネルギー管理情報と、前記骨材に依存するアスファルト合材の製品品質を監視する製品品質情報と、前記熱処理設備の燃焼状態に支障を来す要因を監視するための設備保全情報と、を含む量的データを取得する。
【0014】
質的データ取得部は、熱処理設備を操作するオペレータの個人識別能力、前記オペレータの勤務体系、及び天候状況の少なくとも1つを含む質的対象毎の処理結果から、アスファルト合材生産時の質的データを取得する。
【0015】
情報生成部では、量的データ取得部で取得した量的データと、質的データ取得部で取得した質的データと、を用いて、量的データに基づく生データ、所定期間の前記生データを前記質的データ毎に集計した運転パラメータデータ、及び運転パラメータデータに基づく劣化又は改善の動向変化を集計したトレンド集計データ、の少なくとも1つの集計情報を生成すると共に、運転改善につながる改善情報、及び最適運転プログラム情報の少なくとも1つのアドバイス情報を生成する。また、情報提供部では、情報生成部で生成した何れかの情報を提供する。
【0016】
これにより、熱処理設備において、エネルギー管理、乾燥品質管理、及び安全管理を総合的に監視し、適正な運転を支援することができる。
【0017】
本発明において、前記質的データの前記処理結果が、前記質的対象のバッチ処理毎の原単位の振れ幅分布であり、前記情報生成部は、前記質的対象に起因する原単位への影響度合いを判定することを特徴としている。
【0018】
質的データを、質的対象のバッチ処理毎の原単位の振れ幅分布等の数値データとすることで、原単位への影響度合いを判定するが可能である。
【0019】
また、本発明において、前記エネルギー管理情報が、前記熱処理設備の燃焼空気比、前記骨材の熱処理の原単位、前記骨材の供給量に対する燃料要求量を含むことを特徴としている。
【0020】
さらに、本発明において、前記製品品質情報が、前記骨材の乾燥温度、前記骨材の配合量、前記アスファルト合材の生産量を含むことを特徴としている。
【0021】
また、本発明において、前記設備保全情報が、排ガスに含まれる骨材の粉塵を除去するフィルタの詰まり、熱処理設備の温度、熱処理設備内の稼働部の状態、を含むことを特徴としている。
【0022】
エネルギー管理情報、製品品質情報、及び設備保全情報は、量的データであるので、アスファルトプラントの各所に設置した検出デバイスの計測値に基づき、取得可能である。
【0023】
本発明に係る運転支援プログラムは、コンピュータを、上記の熱処理設備の運転支援システムにおける、前記量的データ取得部、前記質的データ取得部、前記情報生成部、及び前記情報提供部として機能させる、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、熱処理設備において、エネルギー管理、乾燥品質管理、及び安全管理を総合的に監視し、適正な運転を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本実施の形態に係るアスファルトプラントの斜視図である。
【
図2】本実施の形態に係るアスファルトプラントを制御する制御系の概略図である。
【
図3】本実施の形態に係るドライヤ設備の斜視図である。
【
図4】本実施の形態に係るドライヤ設備へのセンサ系の配置図である。
【
図5】本実施の形態に係るアスファルトプラントを監視する監視支援制御装置の制御ブロック図である。
【
図6】本実施の形態に係る監視支援制御装置の大規模記憶装置に記憶された、アスファルトプラントからの制御信号情報及び計測値情報の組み合わせによる監視対象の関係を示すテーブルの概念図である。
【
図7】本実施の形態に係る監視支援制御装置で実行される情報提供サービスを含む支援制御ルーチンを示すフローチャートである。
【
図8】
図7のステップ214で実行される生データ情報提供処理サブルーチンの流れを示すフローチャートである。
【
図9】本実施の形態に係るアスファルトプラントにおける、稼働月-原単位特性図である。
【
図10】
図7のステップ218で実行される運転パラメータ情報提供処理サブルーチンの流れを示すフローチャートである。
【
図11】本実施の形態に係るアスファルトプラントにおける、オペレータ毎の原単位特性図である。
【
図12】
図7のステップ222で実行されるトレンド集計データ提供処理サブルーチンの流れを示すフローチャートである。
【
図13】本実施の形態に係るアスファルトプラントにおける、日毎の集塵機内バグフィルタ前後差圧特性図である。
【
図14】
図7のステップ226で実行される運用改善情報提供処理サブルーチンの流れを示すフローチャートである。
【
図15】本実施の形態に係るアスファルトプラントにおける、生産量-骨材投入速度特性図である。
【
図16】
図7のステップ229で実行される最適運転プログラム情報提供処理サブルーチンの流れを示すフローチャートである。
【
図17】本実施の形態に係るアスファルトプラントにおける、生産量-原単位特性図であり、(A)が現状の特性図、(B)が改善後の特性図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1及び
図2は、本実施の形態に係るアスファルト合材製造用のアスファルトプラント10の概略図である。
【0027】
アスファルトプラント10は、骨材を加熱処理するドライヤ設備12と、該ドライヤ設備12にて加熱処理した骨材を持ち上げるエレベータ14と、該エレベータ14にて送り出した骨材を篩い分けて貯蔵・計量し、溶融アスファルト及び石粉を添加して混合するミキシングタワー設備16とを主体に構成している。
【0028】
図3及び
図4に示される如く、前記ドライヤ設備12は、内周部に複数の掻き上げ羽根(図示せず)を周設した円筒状のドラム18を回転自在に支持し、駆動装置(図示せず)により所定の速度で回転させるようにしている。駆動装置は電源配線系統には、電流計20(
図4参照)が設置されており、電流計20の計測値により、駆動装置の駆動状態を把握することができる。
【0029】
また、前記ドラム18の一端部のホットホッパ22には熱風供給用のバーナ24を備えている。また、ホットホッパ22は、ドラム18で加熱処理した骨材を排出する骨材排出口26を備えている。
【0030】
バーナ24には、燃料供給系統28(
図2参照)から燃料が供給され、かつ、空気(図示省略)が供給され、燃料と空気が所定の比率で混合されることで、燃焼する。なお、バーナ24には、燃料の流量を検出する燃料流量計30及び空気の流量を検出する空気流量計32を備えている。
【0031】
前記ドライヤ設備12のホットホッパ22の骨材排出口26には排出中の骨材温度を検出する骨材温度センサ27を備えていると共に、該骨材温度センサ27にて検出した骨材温度に基づいて前記バーナ24の燃焼量を調整制御する。本実施の形態では、例えば、被加熱物である新規骨材の加熱処理量や含水率が変動しても所定温度、例えば約160℃程度に加熱処理できるように制御される。
【0032】
なお、骨材温度センサ27に加え、バーナ24の燃焼状態を火炎検出センサ(図示省略)によって監視するようにしてもよい。
【0033】
また、ドラム18の他端部のコールドホッパ34には、骨材をドラム18内に供給するベルトコンベヤ設備36を備える。また、コールドホッパ34には、ドラム18内から排ガスを導出する排気ダクト38の一端部が連結されている。排気ダクト38の他端部は、集塵機40に連結されている。
【0034】
ベルトコンベヤ設備36は、骨材ホッパ36A~36Dを備え、例えば、砂、7号砕石、6号砕石、5号砕石等の骨材を種別毎に貯蔵している。そして、骨材ホッパ36A~36Dの下部に設けられた可変速フィーダー37A~37Dにより所定割合で骨材を切り出し、コンベヤ39を介して、ドライヤ設備12に送り出す。骨材ホッパ36A~36Dには、それぞれ骨材センサ42A~42Dが取り付けられている。また、本実施の形態では、コンベヤ39の回転数を検出する回転数センサ44が取り付けられ、この回転数センサ44の検出値(周波数)に基づき、骨材の送出量を監視している。
【0035】
また、排気ダクト38には、排ガス温度センサ46が取り付けられ、集塵機40に送出される排気ガスの温度を検出している。
【0036】
ベルトコンベヤ設備36には、骨材ホッパ36Aが設置されており、粒径別に骨材が貯蔵されている。ベルトコンベヤ設備36では、骨材ホッパ36Aから所定量ずつ払い出された骨材を、ドラム18内に投入し、掻き上げ羽根にて掻き上げながらドラム18内を転動流下させる間にバーナ24からの熱風に接触させ、所望温度まで昇温させてホットホッパ22下端部の骨材排出口26より排出する。
【0037】
図2に示される如く、骨材排出口26から排出した加熱骨材は、エレベータ14にてミキシングタワー設備16の上部まで持ち上げ、該ミキシングタワー設備16の最上部に備えた振動篩48に投入する構成としている。
【0038】
前記振動篩48の内部には網目サイズの異なる複数の篩網(図示省略)を複数段(例えば、3段)配設しており、エレベータ14より投入した骨材を各篩網にて粒径別に篩い分け、下位の骨材貯蔵ビン50の複数(例えば、4区画)の区画室(図示省略)に異なる粒径の骨材をそれぞれ貯蔵する構成としている。
【0039】
前記骨材貯蔵ビン50の下端部にはそれぞれ骨材排出用の排出ゲート(図示せず)を開閉自在に備え、その下位には骨材計量器52を備えている。骨材計量器52の下部には、ミキサ54が備えられ、骨材計量器52から所定量の骨材が投入される。
【0040】
また、同時に、ミキサ54には、石粉サイロ56から送られてくる石粉を計量する石粉計量器58、及び、アスファルトタンク60から送られてくる溶融アスファルトを計量するアスファルト計量器62のそれぞれで計量された石粉、溶融アスファルト等の材料がミキサ54内に投入され、骨材、石粉、及び溶融アスファルトが、混合調整されて所望のアスファルト合材が製造されるようになっている。
【0041】
製造されたアスファルト合材は、例えば、専用トラック63に積み込まれ、指定場所へと陸送される。
【0042】
なお、骨材貯蔵ビン50に温度センサ64、溶融アスファルト配管に温度センサ68がそれぞれ取り付けられており、骨材の温度及び溶融アスファルトの温度をそれぞれ検出している。
【0043】
本実施の形態における管理(設備保全)においては、骨材の温度と溶融アスファルトの温度は必須である。
【0044】
図4に示される如く、ドラム18に設けられた排気ダクト38の下流に配置された集塵機40は、排ガス中の粗粒ダスト及び微粒ダストを捕集する役目を有しており、例えば、一次集塵機、二次集塵機に分離されている場合がある。
【0045】
集塵機40の下流には排ガス吸引用の排風機70、及び煙突72を配置しており、集塵機40にて清浄化した排ガスを煙突72から大気中に放出するようにしている。なお、排風機70は、ドライヤ設備12の圧力に基づき、静圧制御されている。
【0046】
集塵機40の下端部は、それぞれ捕集した粗粒ダスト及び微粒ダストを排出する排出口となっている。
【0047】
集塵機40の排ガスの入口には、温度センサ74が取り付けられており、排ガスの温度(バグフィルタ入口温度という場合がある。)を検出する。
【0048】
また、集塵機40は、排ガスに粉塵となって含まれている骨材(粗粒ダスト及び微粒ダスト)を捕集するフィルタリング機能を有しており、内部にはフィルタ(図示省略)が設けられており、当該フィルタの上流側と下流側との圧力差を検出するバグ差圧センサ76が設けられている。
【0049】
アスファルトプラント10は、制御装置100を備えている。制御装置100は、ドライヤ設備12、エレベータ14、ミキシングタワー設備16、及びベルトコンベヤ設備36の各設備に設けられたセンサ等から計測値を取得し、計測値に基づき、当該各設備のそれぞれの制御対象機器の動作を制御し、かつ、各設備が連携された一連のアスファルト製造のシーケンスを制御する。
【0050】
ここで、本実施の形態の制御装置100は、ネットワーク102を介して、監視支援制御装置104に接続されている。
【0051】
制御装置100から監視支援制御装置104へは、アスファルトプラント10の各設備から取得したセンサ等の計測値が、ネットワーク102を介して送出されるようになっている。
【0052】
ネットワーク102には、複数の制御装置100が接続され、監視支援制御装置104には、この複数の制御装置100からの情報が集約されるようになっている。なお、以下では、1台の制御装置100と1台の監視支援制御装置104との関係で、情報の授受等について説明する。
【0053】
監視支援制御装置104では、アスファルトプラント10における骨材の加熱処理及び加熱処理の際の排ガスの集塵処理を主体とした、エネルギー管理、製品品質、及び設備保全を一括管理し、その結果を、制御装置100へ返信する。
【0054】
制御装置100には、出力デバイス(モニタやプリンタ等)106が接続され、例えば、エネルギー管理、製品品質、及び設備保全を一括管理の結果、各項目を改善するためのアドバイスを提供するようにしている。
【0055】
図5に示される如く、監視支援制御装置104は、マイクロコンピュータ108を備えており、マイクロコンピュータ108は、CPU108A、RAM108B、ROM108C、入出力部108D(I/O108D)、及びこれらを接続するデータベースやコントロールバス等のバス108Eで構成されている。
【0056】
I/O108Dには、I/F110が接続されている。このI/F110には、ネットワーク102を介して、複数の制御装置100に接続されている。
【0057】
また、I/O108Dには、大規模記録装置112が接続されている。
【0058】
監視支援制御装置104には、制御装置100から、アスファルトプラント10の稼働において、制御対象機器を制御するための制御信号情報、及び装置内に設置された各種センサで検出した計測値情報が送出される。この制御信号情報及び計測値情報は、相互に組み合わせることで、エネルギー管理情報、製品品質情報、及び設備保全情報の項目になり得る。
【0059】
監視支援制御装置104では、制御装置100を管理する管理者に対して、エネルギー管理情報、製品品質情報、及び設備保全情報に基づいて、アスファルトプラント10の稼働状況情報、並びに、アスファルトプラント10の運用改善につながるアドバイス情報を提供する、アドバイス情報としては、前記項目に基づく情報提供、及び最適制御の提供が挙げられる。
【0060】
(アドバイス情報例)
【0061】
(1) 取得データ(生データ)を情報提供するサービスである。
【0062】
現状の原単位や生産量や温度等の状況をオンラインで監視することが可能である。
【0063】
また、時系列データとして収集データを保持(保管)することが可能である。
【0064】
(2) 運転データを自動で取得し、機械学習により解析を行い、最適な運転パラメータを提案するサービスである。
【0065】
処理バッチ毎、日別、月別等のデータに集計加工して、稼働状況を把握することが可能である。
【0066】
また、原単位、気温等のデータに加工して、稼働状況を把握することが可能である。
【0067】
さらに、運転パラメータを最適な値に設定することで、適正な生産(効率・品質・安全性の向上)を行うことが可能である。
【0068】
(3) トレンド集計データを情報提供するサービスである。
【0069】
運転パラメータデータについて、例えば、基準時点からの改善度(節約)や劣化度(無駄遣い)として表現して稼働状況のトレンド変化を把握することが可能である。また、蓄積データを活用することができる。
【0070】
(4) 運用改善に繋がるアドバイスを提供するサービスである。
【0071】
原単位等の各種指標に操業状態の健全性を判定するしきい値を設定することで、必要に応じて調整やメンテナンスを促す等のアドバイス情報を得ることが可能である。
【0072】
例えば、原料成分と投入速度のデータとから、原単位の改善のため、しきい値を超えた際には、メンテナンスの実施を促すようにアドバイスする。
【0073】
また、製品品質等を参照しながら、データ取得を重ねることで、判定しきい値の設定精度(燃料コストと品質とのバランスの最適化)が高まり、設備運用の最適化を図ることが可能である。
【0074】
(5) 過去の運転データから機械学習により導出した最適運転方法を決定するサービスである。
【0075】
アスファルトプラント10に組み込まれた制御装置100により最適制御を実現することが可能である。
【0076】
なお、アドバイス情報を提供するに際し、単一の制御装置100からの情報に限定されず、複数の制御装置100からの情報を集約し、その傾向等を解析することで、今後の予測等を含めたアドバイス情報を生成することが好ましいが、単一の制御装置100からの情報であっても、適切なアドバイス情報を生成することは可能である。
【0077】
図6に概念的に示される如く、監視支援制御装置104の大規模記憶装置112には、エネルギー管理情報、製品品質情報、及び設備保全情報の生成に必要な、アスファルトプラント10からの制御信号情報と計測値情報との組み合わせの関係を示すテーブル112Tが記憶されている。
【0078】
監視支援制御装置104では、このテーブル112Tに示す組み合わせによって、以下に示す項目に関する情報を取得し、取得した項目に基づいて、上記に示したアドバイス情報を生成する。
【0079】
以下に、アスファルトプラント10の稼働状況に関する情報の一例を、項目別に挙げる。
図6のテーブル112Tでは、各項目毎に必要な情報に対して「○」印を付与している。
【0080】
(項目1) エネルギー管理
エネルギー管理を監視するためには、(a)燃焼空気比、(b)処理原単位、及び(c)ガスデマンドに関する情報が必要となる。
【0081】
(a) 燃焼空気比は、燃焼部(バーナ24)の情報(燃料流量、空気流量)から取得される。
【0082】
燃焼空気比は、以下の(1)式の計算によって得ることができる。
【数1】
【0083】
(b) 処理原単位は、燃焼部(バーナ24)の情報(燃料流量、空気流量、排ガス温度)と、骨材搬送部であるベルトコンベヤ設備36の情報(骨材フィーダー回転数(周波数))、ドライヤ設備12の情報(骨材温度、ドラム18の回転駆動時の電流値)と、から取得される。
【0084】
処理原単位は、以下の(2)式の計算によって得ることができる。
【数2】
【0085】
(c)ガスデマンドは、燃焼部(バーナ24)の情報(燃料流量)と、骨材搬送部であるベルトコンベヤ設備36の情報(骨材フィーダー回転数(周波数))と、から取得される。結果として、ガスデマンドは、燃料流量の最大値となる。
【0086】
(項目2) 製品品質情報
製品品質情報を監視するためには、(d)骨材乾燥温度、(e)骨材配合量、及び(f)生産量に関する情報が必要となる。
【0087】
(d) 骨材乾燥温度は、ドライヤ設備12の情報(
図6に示す骨材温度)から取得される(骨材乾燥温度=骨材温度)。
【0088】
(e) 骨材配合量は、骨材搬送部であるベルトコンベヤ設備36の情報(骨材フィーダー回転数(周波数))から取得される。
骨材配合量は、骨材フィーダー37A~37Dのそれぞれにおいて、以下の(3)式の計算によって得ることができる。
骨材フィーダー回転数×係数・・・(3)
【0089】
(f) 生産量は、骨材搬送部であるベルトコンベヤ設備36の情報(骨材フィーダー回転数(周波数))から取得される。
生産量は、上記(3)式で得た各骨材フィーダー37A~37Dの合計値であり、以下の(4)式の計算によって得ることができる。
生産量=Σ(各骨材フィーダー回転数×係数)・・・(4)
【0090】
(項目3) 設備保全情報
【0091】
設備保全情報を監視するためには、(g)バグフィルタ(集塵機40の内部のフィルタ)の詰まり、(h)集塵機40の内部の温度(温度異常)、及び(i)キルン(ドラム18)詰まりに関する情報が必要となる。
【0092】
(g) バグフィルタ(集塵機40内部のフィルタ)の詰まりは、集塵機40(バグフィルタ)の情報(バグ差圧、バグフィルタ入口温度)から取得される。
より具体的には、バグ差圧やバグフィルタ入口温度が、予め定めたしきい値を逸脱した値をとっているか否かを判断する。
【0093】
(h) 集塵機40の内部の温度(温度異常)は、集塵機40(バグフィルタ)の情報(バグフィルタ入口温度)から取得される。
より具体的には、各種温度センサが、予め定めたしきい値を逸脱した値をとっているか否かを判断する。
【0094】
(i) キルン(ドラム18)詰まりは、骨材搬送部であるベルトコンベヤ設備36の情報(骨材フィーダー回転数(周波数))から取得される。
より具体的には、ドライヤ電流値が、予め定めたしきい値を逸脱した値をとっているか否かを判断する。
【0095】
監視支援制御装置104では、上記(項目1)~(項目3)の各情報(a)~(i)に基づいて、アスファルトプラント10のエネルギー管理、製品品質、及び設備保全に関する各種情報の提供、並びに、運用改善に繋がるアドバイスを提供する。
【0096】
以下に本実施の形態の作用を
図7のフローチャートに従い説明する。
【0097】
ステップ200では、稼働中のアスファルトプラント10を制御している制御装置100を検索し、次いで、ステップ202へ移行して検索したアスファルトプラント10の制御装置100から計測値情報及び制御値情報(
図6参照)を収集し、ステップ204へ移行する。なお、複数の制御装置100ではなく、1台又は数台の制御装置を特定し、当該特定した制御装置100からの情報収集であってもよい。
【0098】
ステップ204では、把握する情報を特定する。把握する情報(特定情報)とは、前述した、本実施の形態では、(項目1)エネルギー管理情報、(項目2)製品品質情報、及び(項目3)設備保全情報の何れかの範疇に分類される情報であり、例えば、
図6に示す、「プラント稼働状況に関する情報」に記載された情報から選択する。なお、
図6に示す、「プラント稼働状況に関する情報」は一例であり、例えば、(項目1)のエネルギー管理の特定情報として、「二酸化炭素削減」に特化した特定情報を追加してもよい。この場合、二酸化炭素(CO
2)の排出量が確認できる測定項目が選択される。
【0099】
次のステップ206では、選択した特定情報(項目1~項目3の何れか)の把握に必要な計測値情報及び制御値情報を取捨選択し(
図6では、選択した情報に丸(○)印を付している。)、次いで、ステップ208へ移行して、予め定めた計算により特定情報を把握する。
【0100】
なお、本実施の形態では、計算によって特定情報を把握するようにしたが、AI等を用いた機械学習によって予測するようにしてもよい。また、計算と機械学習を併用してもよい。
【0101】
次のステップ210では、提供サービスを選択し、ステップ212へ移行する。
【0102】
ステップ212では、ステップ210で選択した提供サービスが、生データの情報を提供するサービスか否かを判断する。このステップ212で肯定判定されると、ステップ214へ移行して生データ情報提供処理(
図8参照)を実行し、このルーチンは終了する。
【0103】
また、ステップ212で否定判定された場合は、ステップ216へ移行して、ステップ210で選択した提供サービスが、運転パラメータデータの情報を提供するサービスか否かを判断する。このステップ216で肯定判定されると、ステップ218へ移行して運転パラメータデータ提供処理(
図10参照)を実行し、このルーチンは終了する。
【0104】
また、ステップ216で否定判定された場合は、ステップ220へ移行して、ステップ210で選択した提供サービスが、トレンド集計データの情報を提供するサービスか否かを判断する。このステップ220で肯定判定されると、ステップ222へ移行してトレンド集計データ提供処理(
図12参照)を実行し、このルーチンは終了する。
【0105】
また、ステップ220で否定判定された場合は、ステップ224へ移行して、ステップ210で選択した提供サービスが、運用改善アドバイスを提供するサービスか否かを判断する。このステップ224で肯定判定されると、ステップ226へ移行して運用改善アドバイス提供処理(
図14参照)を実行し、このルーチンは終了する。
【0106】
また、ステップ224で否定判定された場合は、ステップ228へ移行して、ステップ210で選択した提供サービスが、最適運転プログラムを提供するサービスか否かを判断する。このステップ228で肯定判定されると、ステップ229へ移行して最適運転プログラム情報提供処理(
図16参照)を実行し、このルーチンは終了する。
【0107】
また、ステップ228で否定判定された場合は、このルーチンは終了する。なお、複数のサービスの提供を選択した場合は、
図7のルーチンを繰り返し実行すればよい。
【0108】
(各提供処理の実施例)
以下に、ステップ214の生データ情報提供処理、ステップ218の運転パラメータ情報提供処理、ステップ222のトレンド集計データ提供処理、ステップ226の運用改善情報提供処理、及びステップ229の最適運転プログラム情報提供処理の実施例を示す。
【0109】
(生データ情報提供処理)
図8は、
図7のステップ214における生データ情報提供処理サブルーチンであり、ステップ230では、現状の原単位、生産量、温度等の状況をオンラインで監視し、次いで、ステップ232へ移行して、時系列にデータを収集し、収集データを保持(保管)し、このルーチンは終了する。
【0110】
アスファルトプラント10のドラム18(キルン)の燃焼加熱に用いられる燃料流量を流量計のデータから把握し、同様に、ベルトコンベヤ設備36の回転数センサ44から周波数を取得し、生産量を把握することで、アスファルトプラント10の処理原単位と効率を取得することができる。
【0111】
より具体的には、1バッチあたりの「ガス使用量(
図6では、燃料流量)」と、「骨材フィーダー回転数」とから、前述した(2)式に基づき、1バッチあたりの「原単位」を計算する。そして、(2)式で得た処理原単位のトレンド情報を時系列的に収集して保持し、提供する。
【0112】
例えば、
図9は、稼働月(経過時間)-原単位特性図である。この処理バッチ毎の原単位を含め、経過時間毎の種々のデータを取得し、取得したデータを当該アスファルトプラント10に関連付けて保持し、保持された情報から得られるエネルギー管理の情報を事象に応じて送信することができる。
【0113】
(運転パラメータデータ提供処理)
図10は、
図7のステップ218における運転パラメータデータ提供処理サブルーチンであり、ステップ240では、処理バッチ毎、日別、月別等のデータに集計加工して稼働状況を把握し、次いで、ステップ242へ移行して、原単位、気温等のデータに加工して稼働状況を把握してステップ244へ移行する。ステップ244では、ステップ240、242で把握した稼働状況に基づいて、運転パラメータの最適値を提供し、このルーチンは終了する。
【0114】
アスファルトプラント10のエネルギー管理、製品品質、安全管理に関わるアドバイス情報は、圧力や温度等の量的データ(数値データ)だけでなく、
図11に示すようにオペレータ(Aさん、Bさん、Cさん、Dさん、及びEさん)等の質的データ(数値では表現しにくいデータ)を、機械学習を用いて解析するようにしてもよい。
【0115】
より具体的には、前述の(2)式に基づき、1バッチあたりの「原単位」を計算する。
【0116】
量的データから(2)式で得た情報と、「オペレータ」等の質的データ情報とを組み合わせることで、オペレータごとの原単位データを蓄積し、蓄積した原単位データから、FX、株価、商品先物等のマーケットの解析に利用されているローソク足チャートを生成する(
図11参照)。このローソク足チャートを利用することで、オペレータごとの原単位の状況が視覚的に比較することができる。
【0117】
図11は、オペレータごとの原単位の状況を、ローソク足チャートで示した一例であり、点線の範囲内にn回の処理(Aさんで言えば、93回の処理)が含まれ、その内の25%の処理の原単位が四角枠の範囲内であることを示す。なお、四角枠内の実線は、平均値である。
【0118】
すなわち、量的データのみならず、
図11に示すような、アスファルト合材生産担当者(オペレータ)が誰だったのか(個人識別能力)といった質的データを集計することで、それらが原単位やデマンドの最大値等に及ぼす影響度について分析評価することができる。
【0119】
なお、質的データには、上記オペレータが誰だったのかの差以外に、オペレータの勤務体系(日勤、夜勤等)、天候状況(晴れ、曇り、雨等)等が考えられ、少なくともる。
【0120】
(トレンド集計データ提供処理)
図12は、
図7のステップ222におけるトレンド集計データ提供処理サブルーチンであり、ステップ250では、運転パラメータデータについて、基準点から改善度(節約)や劣化度(無駄遣い)として表現し、次いでステップ252へ移行して、稼働状況のトレンド変化を把握する。次のステップ254では、把握したトレンド変化に基づき、メンテナンス時期情報を提供し、このルーチンは終了する。
【0121】
過去のトレンドデータやバッチ毎の集計データの解析を行うことで、予防保全情報やメンテナンスのタイミング情報を取得する。これらのデータを取得し、取得したデータを当該アスファルトプラント10に関連付けて保持し、保持された情報から得られるプラントの保全情報を事象に応じて送信する。
【0122】
より具体的には、バグフィルタの前後の差圧(
図6では、バグ差圧)を時系列的に関しし、所定のしきい値を設けることで、当該しきい値を超えたときに、警告を出す。この警告により、故障する前にメンテナンスのアラートを出し、修繕等を行うことが可能となる。
【0123】
また、しきい値だけでなく、LSTM(Long Short Term Memory)等の機械学習手法を用いることで、異常が出る前の予兆を検知することが可能となり、余裕を持ったメンテナンス時期情報を提供することができる。
【0124】
LSTMは,ある程度長い時系列データに対しても学習ができるため、アスファルトプラント10における骨材の加熱処理及び加熱処理の際の排ガスの集塵処理を主体とした、エネルギー管理、製品品質、及び設備保全を一括管理する際に適した機械学習手法ということができる。
【0125】
図13は、集塵機40の内部に設けられたバグフィルタの前後の差圧を、バグ差圧センサ76で検出した、日毎の差圧の推移特性図である。
【0126】
燃焼排ガスには、材料由来の粉塵が含まれているため、バグフィルタで詰まりが生じる。そこで、アスファルトプラント10の起動時の製品が流れていないときのバグフィルタの前後の差圧を計測し、これを日毎に集計し、保持する。
【0127】
保持された情報から、予め定めたしきい値を超えた場合に、メンテナンス時期情報を提供することができる。
【0128】
(運用改善アドバイス提供処理)
図14は、
図7のステップ226における運用改善アドバイス提供処理サブルーチンであり、ステップ260では、過去のデータをもとに、操業状態の原単位の良さを判定する次のステップ262では、各種操業条件を考慮し、原単位が改善されるような運転パラメータの改善情報を提供し、このルーチンは終了する。
【0129】
より具体的には、過去のデータをもとに、「生産量」等の各種条件を考慮した、原単位の良し悪しの分類を行う(
図15に示す、原単位A>原単位B>原単位Cといった良し悪しの相関等)。分類の結果は、処理後に運転の効率としてアナウンスしてもよい。
【0130】
また、「気温」や「湿度」、「生産量」等の各種操業時の条件を考慮し、原単位が改善させるような「投入速度」等の運転パラメータの適正な運転範囲を提示し、改善情報を提供する。
【0131】
複数の運転目標を同時に満たす最適な運転パラメータを過去の運転データから機械学習により予測し、最適な運転制御パラメータの目標設定値を提供する。
【0132】
図15は、生産量と骨材投入速度との関係を特性図として整理した例である。
図15に示すような特性図に基づき、出荷に必要な生産量を生産する際に、エネルギーデマンドを上限値より低く抑え、かつ原単位を最小とする運転を可能するパラメータとその目標値を導出する。
【0133】
(最適運転プログラム情報提供処理)
図16は、
図7のステップ229における最適運転プログラム情報提供処理サブルーチンであり、ステップ270では、過去の種々の取得データを読み出す。すなわち、活用するビッグデータを生成する。次のステップ272では、生成したビッグデータに基づいて、機械学習により最適運転方法を導出し、次いで、ステップ274へ移行して、最適運転方法を実行するための最適運転プログラムを構築して提供し、このルーチンは終了する。
【0134】
より具体的には、ステップ270での過去の運転データの収集後、この収集した運転データから、XGBoost(eXtreme Gradient Boosting)、LSTM等の機械学習手法により学習したモデルを作成し、当該モデルに、当日の予定「生産量」や、当日の「気温」、「湿度」等の操業条件を入力すると、モデルからは、「骨材フィーダー回転数」等の各種運転パラメータの最適な組み合わせが出力され、この組み合わせに基づいて、最適運転プログラムを提供することができる。
【0135】
図17は、生産量-原単位特性図であり、(A)が現状の特性図、(B)が運転パラメータの最適化による改善後の予測特性図を示す。
【0136】
ビッグデータにより、
図17(A)の特性図を解析(機械学習)することで、各バッチ処理の結果が比較的散らばっているのを、
図17(B)に示すように収束させるための最適運転プログラムを提供することができる。
【0137】
なお、本実施の形態において、乾燥工程中の各位置で計測値情報及び制御値情報を取得するセンサ等の位置は、
図2及び
図3に示される位置に限定されるものではなく、それぞれの目的とする情報を取得できれば、何れの位置であってもよい。また、一部の情報において、他の情報から予測可能であれば予測値としてもよく、他のファクタから計算可能であれば、計算値としてもよい。
【0138】
また、本実施の形態のアスファルトプラント10は、直火式のバーナ24によって加熱された雰囲気をドラム18に供給する構成としたが、骨材の熱処理が可能であれば、雰囲気の生成は、蒸気や電気で生成してもよい。この場合、例えば、エネルギー管理情報として、燃料の流量に代えて、蒸気の水量や消費電力量とすればよい。その他の情報においても、同様に置き換え可能な情報は置き換えればよい。
【符号の説明】
【0139】
10 アスファルトプラント
12 ドライヤ設備
14 エレベータ
16 ミキシングタワー設備
18 ドラム
20 電流計
22 ホットホッパ
24 バーナ
26 骨材排出口
27 骨材温度センサ
28 燃料供給系統
30 燃料流量計
32 空気流量計
34 コールドホッパ
36 ベルトコンベヤ設備
36A 骨材ホッパ
37A~37D 可変速フィーダー
38 排気ダクト
39 コンベヤ
40 集塵機
42A~42D 骨材センサ
44 回転数センサ
46 排ガス温度センサ
48 振動篩
50 骨材貯蔵ビン
52 骨材計量器
54 ミキサ
56 石粉サイロ
58 石粉計量器
60 アスファルトタンク
62 アスファルト計量器
63 専用トラック
64、68 温度センサ
70 排風機
72 煙突
74 温度センサ
76 バグ差圧センサ
100 制御装置
102 ネットワーク
104 監視支援制御装置(量的データ取得部、質的データ取得部、情報生成部、情報提供部)
106 出力デバイス
108 マイクロコンピュータ
108A CPU
108B RAM
108C ROM
108D 入出力部
108E バス
110 I/F
112 大規模記録装置
【要約】
【課題】熱処理設備において、エネルギー管理、乾燥品質管理、及び安全管理を総合的に監視し、適正な運転を支援する。
【解決手段】アスファルトプラント10の稼働における制御信号情報及び計測値情報が相互に組み合わされ、エネルギー管理情報、製品品質情報、及び設備保全情報を取得する。取得したエネルギー管理情報、製品品質情報、及び設備保全情報に基づいて、アスファルトプラント10の稼働状況情報、並びに、アスファルトプラント10の運用改善につながるアドバイス情報(1)~(5)を提供する。(1)生データを情報提供するサービス、(2)運転データを自動で取得し、機械学習により解析を行い、最適な運転パラメータを提案するサービス、(3)トレンド集計データを情報提供するサービス、(4)運用改善に繋がるアドバイスを提供するサービス、(5)過去の運転データから機械学習により導出した最適運転方法を決定するサービス。
【選択図】
図5