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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】塗装含有廃水処理方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 35/02 20060101AFI20220712BHJP
   B01D 29/00 20060101ALI20220712BHJP
   C02F 1/52 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
B01D35/02 Z
B01D23/02 Z
C02F1/52 G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020159068
(22)【出願日】2020-09-23
(65)【公開番号】P2022052595
(43)【公開日】2022-04-04
【審査請求日】2020-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】520368529
【氏名又は名称】株式会社MOT
(73)【特許権者】
【識別番号】520368530
【氏名又は名称】株式会社新伸興業
(74)【代理人】
【識別番号】100182154
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100141988
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】谷本 哲也
(72)【発明者】
【氏名】具志 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】神谷 洋介
【審査官】谷本 怜美
(56)【参考文献】
【文献】特公昭45-005041(JP,B2)
【文献】特開2019-013868(JP,A)
【文献】特開2003-251366(JP,A)
【文献】実開昭56-007504(JP,U)
【文献】特表平08-504658(JP,A)
【文献】特開2015-027637(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 29/00-29/96
B01D 35/02
B01D 35/10-37/04
C02F 1/52
B08B 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗装物から水で剥離された塗装を含む塗装含有廃水(W)を篩い器(10)の斜面(12)に滑り落とす第一滑落工程(S501)と、
前記第一滑落工程で滑り落とした前記塗装含有廃水を、前記斜面(12)に形成された複数の溝(12h)の間隙を通過させ、第一処理水(Wf)と大きさが前記間隙より大きい前記塗装が集められた第一固形物(Sf)とに分離する第一分離工程(S502)と、
前記第一分離工程を経て分離された前記第一処理水(Wf)に、前記第一処理水に分散している前記間隙より小さい粒子を凝集し、前記間隙より大きい集合体を形成する凝集剤(F)を混合する凝集剤混合工程(S701)と、
前記凝集剤(F)が混合された前記第一処理水(Wf)を前記斜面(12h)に滑り落とす第二滑落工程(S702)と、
前記第二滑落工程で滑り落とした前記第一処理水(Wf)を、前記溝(12h)の間隙を通過させ、第二処理水(Ws)と前記集合体が集められた第二固形物(Ss)とに分離する第二分離工程(S703)と
を行うことを特徴とする塗装含有廃水処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載された塗装含有廃水処理方法であって、
前記篩い器に形成された複数の溝は、前記塗装含有廃水が滑り落ちる下方向側に湾曲する折曲溝(12h)である
ことを特徴とする塗装含有廃水処理方法。
【請求項3】
請求項2に記載された塗装含有廃水処理方法であって、
前記第一滑落工程は、前記塗装含有廃水を整流板(17)に通過させ、前記塗装含有廃水(W)の前記篩い器の斜面(12)における流れを均一にする
ことを特徴とする塗装含有廃水処理方法。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載された塗装含有廃水処理方法であって、
前記篩い器は、持ち運び自在な装置である
ことを特徴とする塗装含有廃水処理方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載された塗装含有廃水処理方法であって、
前記第二分離工程を経た前記第二処理水の鉛の含有量が、環境基準値を満たす
ことを特徴とする塗装含有廃水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装含有廃水処理方法に関する。さらに詳しく説明すると、本発明は、塗装含有廃水を効率的に分離する処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路や建物などの表面の塗装(塗料)を除去するには、例えば、高圧洗浄機等を使用して、超高圧水を塗装面に噴射して、表面から塗装(塗料)を除去していた。従来は、塗料に含まれる物質による環境汚染問題も厳しく管理されていなかったため、塗装面から除去された塗料は、回収されることなく、そのまま土壌や、河川や海に廃棄(環境中へ放出)されていた。近年、鉛が含まれた塗料(LBP:Lead-Based Paint)の有害性について問題視され、LBPを環境中へ放出することに関する規制も厳しくなり、高圧洗浄機で塗装面から除去された塗装(塗料)は、高性能バキューム(真空吸引)で大量の塗装含有廃水とともに回収されている。回収された塗装含有廃水は、鉛を含むため、産業廃棄物処理場で処分する必要がある。しかし、近隣に産業廃棄物処理場がない場所で回収された塗装含有廃水は、産業廃棄物処理場のある遠隔地に運ばなければならず、大量の廃水の輸送費がかかるという問題点があった。
【0003】
また、輸送費を減らすため、塗装含有廃水を濾過することで、遠隔地にある産業廃棄物処理場へ輸送する塗装含有廃水の分量を減らし、鉛が濾過された廃水を近隣の一般廃棄物処理場で処分する方法がある。しかし、従来行われている濾過膜等による廃水と鉛含有固形物の分離は、濾過処理に長時間を要するため、高圧洗浄と同時並行で行うことは困難であるという問題点があった。特に空港の工事においては、日中は飛行機の離着陸があり、作業時間が夜間に限られるため、作業現場において時間のかかる濾過作業迄は行えないという問題点があった。
【0004】
このように、従来から様々な方法で塗装含有廃水は処理されているが、特許文献を基に従来の技術を説明する。塗料廃水から塗料粕を効率よく分離させることのできる塗料廃水分離装置の技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。塗料粕を含んだ汚水から効率良く塗料粕を除去することが可能な塗料粕処理システムの技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。凝集剤を被処理水である濁水又は廃水に投入して撹拌する部分の構造をコンパクト化し、装置全体を小型化することのできる水処理方法及び水処理装置の技術が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-251234号公報
【文献】特開2017-94257号公報
【文献】特開2018-43194公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に示された塗料廃水分離装置は、構成が複雑で移動が困難な反応分離槽等が必要なため、集めた塗料廃水を反応分離槽等がある施設まで運搬する必要があるという問題点があった。特許文献2に示された塗料粕システムや特許文献3に示された水処理方法も、集めた廃水等を所定の施設に運搬する必要があるという問題点があった。
【0007】
本発明は、このような社会的、技術的背景に基づいたものであり、次のような目的を達成する。本発明の目的は、塗装含有廃水を効率的に分離する処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記目的を達成するために次の手段をとる。
(1)請求項1記載の発明は、被塗装物から水で剥離された塗装を含む塗装含有廃水(W)を篩い器(10)の斜面(12)に滑り落とす第一滑落工程(S501)と、前記第一滑落工程で滑り落とした前記塗装含有廃水を、前記斜面(12)に形成された複数の溝(12h)の間隙を通過させ、第一処理水(Wf)と大きさが前記間隙より大きい前記塗装が集められた第一固形物(Sf)とに分離する第一分離工程(S502)と、前記第一分離工程を経て分離された前記第一処理水(Wf)に、前記第一処理水に分散している前記間隙より小さい粒子を凝集し、前記間隙より大きい集合体を形成する凝集剤(F)を混合する凝集剤混合工程(S701)と、前記凝集剤(F)が混合された前記第一処理水(Wf)を前記斜面(12h)に滑り落とす第二滑落工程(S702)と、前記第二滑落工程で滑り落とした前記第一処理水(Wf)を、前記溝(12h)の間隙を通過させ、第二処理水(Ws)と前記集合体が集められた第二固形物(Ss)とに分離する第二分離工程(S703)とを行うことを特徴とする塗装含有廃水処理方法。
(2)請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明であって、前記篩い器に形成された複数の溝は、前記塗装含有廃水が滑り落ちる下方向側に湾曲する折曲溝(12h)であることを特徴とする塗装含有廃水処理方法。
(3)請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明であって、前記第一滑落工程は、前記塗装含有廃水を整流板(17)に通過させ、前記塗装含有廃水(W)の前記篩い器の斜面(12)における流れを均一にすることを特徴とする塗装含有廃水処理方法。
(4)請求項4記載の発明は、請求項1~のいずれか記載の発明であって、前記篩い器は、持ち運び自在な装置であることを特徴とする塗装含有廃水処理方法。
(5)請求項5記載の発明は、請求項1~4のいずれか記載の発明であって、前記第二分離工程を経た前記第二処理水の鉛の含有量が、環境基準値を満たすことを特徴とする塗装含有廃水処理方法。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、本発明は、塗装含有廃水を効率的に分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の第一実施形態に係る塗装含有廃水処理をしている状態を示す模式図である。
図2図2は、塗装含有廃水処理に使用される篩い器10を示す図である。
図3図3は、篩い器10の斜面12を拡大した図である。
図4図4は、塗装含有廃水処理方法の工程を示すフローチャートである。
図5図5は、塗装含有廃水処理方法の工程を示す模式図である。
図6図6は、塗装含有廃水処理方法の工程を示す模式図である。
図7図7は、比較例1の工程を示す模式図である。
図8図8は、実施例1の工程を示す模式図である。
図9図9は、本発明の第二実施形態に係る塗装含有廃水処理方法の工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態の概要〕
本実施形態の塗装含有廃水の処理方法は、塗装含有廃水を篩い器10の斜面12に滑り落とす第一滑落工程と、前記第一滑落工程で滑り落とした前記塗装含有廃水を、前記斜面12に形成された複数の折曲溝12hに通過させ、前記塗装含有廃水Wを第一処理水Wfと第一固形物Sfとに分離する第一分離工程とを備えている。また、塗装含有廃水の処理方法は、前記第一分離工程を経て分離された前記第一処理水Wfに、前記第一処理水に分散している粒子を凝集する凝集剤(F)を混合する凝集剤混合工程と、前記凝集剤Fが混合された前記第一処理水Wfを前記斜面12に滑り落とす第二滑落工程と、前記第二滑落工程で滑り落とした前記第一処理水Wfを、前記折曲溝12hに通過させ、前記第一処理水Wfを第二処理水Wsと第二固形物Ssとに分離する第二分離工程とを備えている。
【0012】
塗装含有廃水の処理方法を使用することで、回収された塗装含有廃水を、第一処理水Wfと第一固形物Sfとに効率的に分離処理することができる。また、塗装含有廃水の処理方法を使用することで、凝集剤が混合された第一処理水Wfを第二処理水Wsと第二固形物Ssとに効率的に分離処理することができる。
【0013】
〔実施形態の詳細〕
〔第一実施形態〕
図1は、本発明の第一実施形態に係る塗装含有廃水処理をしている状態を示す模式図である。まず、空港の滑走路の塗装を除去する場合を例にして、塗装含有廃水処理に使用する道具について説明をする。塗装含有廃水処理の前提としておこなう被塗装物から塗装を除去する塗装除去処理は、滑走路に高圧洗浄機及び高性能バキュームを運びこんで行われる。塗装含有廃水処理は、滑走路に貯水容器C、ドラム缶D及び篩い器10を運び込んで行われる。図1に示すように、篩い器10は、所定の高さの台Stの上に置かれ、篩い器10の正面にドラム缶Dを配置して、篩い器10の背面に貯水容器Cを配置する。
【0014】
高性能洗浄機は、ポンプ車T1が備える超高圧発生ポンプを使用して、超高圧ホースを通じて、高圧水を噴射する装置である。高性能バキュームは、ポンプ車T1が備える超高圧発生ポンプを使用して、塗装含有廃水Wを収集する装置である。貯水容器Cは、高性能バキュームで収集された塗装含有廃水Wや所定の処理をされた第一処理水Wf又は第二処理水Wsを入れるための容器である。ドラム缶Dは、塗装含有廃水Wから分離された固形物を入れるための金属製のたる形の缶である。
【0015】
〔篩い器10〕
図2は、塗装含有廃水処理に使用される篩い器10を示す外観図(a)及び断面図(b)である。図3は、篩い器10の斜面12を拡大した正面図(a)及び拡大した断面図(b)である。篩い器10は、塗装含有廃水Wを、鉛を含有する固形物と処理水とに分離、脱水する装置である。図2に示すように、篩い器10は、本体部11、斜面12、支持軸13、載置棒14、上部水槽15、堰部16、整流板17及び下部水槽18とから構成されている。本例において、篩い器10は、有限会社アクアテックが代理店として取り扱っているハイドラシブを使用している。
【0016】
〔本体部11〕
図2に示すように、本体部11は、篩い器10の各部品を収容するための箱状の筐体である。本体部11は、全体が前面を縦長略長方形状の斜面状とし、前方を切り欠いた側面視略台形状の筐体である。本体部11は、硬質な金属で形成されており、例えば、SUS304(ステンレス鋼材)等で形成されていると良い。本体部11は、斜面状の部分が開口した開口11hが形成されている。本体部11は、開口11hを塞ぐように斜面12が載置されている。本体部11の側面には、貫通孔が形成され、斜面12を回動自在に軸支する支持軸13が取り付けられている。本体部11の側面11sには、貫通孔が形成され、斜面12を載置する載置棒14が2つ取り付けられている。本体部11の上方には上部水槽15が取り付けられ、本体部11の下方には下部水槽18が取り付けられている。
【0017】
〔斜面12〕
斜面12は、上部水槽15から供給された塗装含有廃水W等を、鉛を含有する固形物と処理水とに分離、脱水する部品である。斜面12は、硬質な金属で形成されており、例えば、SUS305(ステンレス鋼材)等で形成されていると良い。図2(b)に示すように、斜面12は、上方から下方にかけて、第一傾斜部12a、第二傾斜部12b及び第三傾斜部12cとが、異なる角度で形成されている。
【0018】
斜面12は、第一傾斜部12aの角度が最も急に形成されており、次いで第二傾斜部12bの角度が急に形成されており、第三傾斜部12cの角度が最も緩やかに形成されている。斜面12は、図3(a)に示すように、下方向側に湾曲する波形に形成され、図3(b)に示すように、断面視略くさび形状に形成されている。
【0019】
斜面12には、斜面12の表面から裏面側に貫通するように複数の折曲溝12hが形成されている。本例において、折曲溝12hの間隙は、0.25mmに形成されている。折曲溝12hの間隙は、塗装含有廃水Wの種類、処理量、塗装含有廃水Wに含まれる固形物の大きさに応じて、例えば、0.15mmから2.5mmの間隙を選択することができる。
【0020】
図2(a)及び図2(b)に示すように、斜面12の裏面側には3つの軸受け12dが取り付けられている。軸受け12dは、図2(b)に示すように略等脚台形に形成され、その略中心に貫通孔が形成されている。斜面12は、軸受け12dの貫通孔に支持軸13を通すことで、本体部11に回動自在に軸支される。
【0021】
〔上部水槽15〕
上部水槽15は、ポンプ車T1や貯水容器Cから供給された塗装含有廃水W等を、斜面12の上方で貯水する部品である。図2(b)に示すように、上部水槽15は、所定量の水が貯められるように、正面板、背面板、側面板、底面板が区画され、上面が開口した容器である。上部水槽15の背面板には、上部水槽15に塗装含有廃水W等を供給するための入水口15hが取り付けられている。上部水槽15は、正面板が折曲げられて堰部16が形成されている。
【0022】
〔堰部16〕
堰部16は、上部水槽15内における所定水位以上の水を溢れさせるための部品である。図2(b)に示すように、堰部16は、上部水槽15の正面板を斜面12と略同一の角度になるように折曲げて形成されている。堰部16は、上部水槽15の側面や背面と比較して開口が低い位置に配置されている。
【0023】
〔整流板17〕
整流板17は、上部水槽15から斜面12へ流す水の流れを均一にするための部品である。整流板17は、本体部11の側面11sに取り付けられた長方形状の薄板である。整流板17は、図2(a)に示すように、堰部16の幅方向全体を覆うように配置され、図2(b)に示すように、堰部16との間に所定の隙間ができるように配置されている。
【0024】
〔下部水槽18〕
下部水槽18は、斜面12を通過した塗装含有廃水W等を、斜面12の下方で貯水する部品である。図2(b)に示すように、下部水槽18は、所定量の水が貯められるように、正面板、背面板、側面板、底面板が区画され、上面が開口した容器である。下部水槽18の背面板には、下部水槽18に貯められた塗装含有廃水W等を排水するための排水口18hが取り付けられている。
【0025】
このように構成された篩い器10は、塗装含有廃水Wを、所定の流量(例えば、10m/s)で入水口15hに流し入れられ、塗装含有廃水W等を、鉛を含有する固形物と処理水とに分離、脱水する処理能力を備える。本例で使用する篩い器10は、重量が約90kgのハイドラシブ(12G型)であり、持ち運び自在であり、第一運搬車T2及び/又は第二運搬車T3に容易に積み込める。
【0026】
〔凝集剤F〕
凝集剤Fは、塗装含有廃水W等の中に分散している粒子を集合させ、沈降を促進するために用いられる薬剤である。本例において、凝集剤Fは、天然の鉱物である珪藻土やゼオライトを主体とした珪藻土系凝集剤(商品名:アクアネイチャープラス、株式会社ネクストリー製)を使用する。凝集剤Fは、塗装含有廃水W等に混合されることにより、塗装含有廃水W等の中に含まれる鉛を含んだ塗装、塵及び土砂等を固めた集合体(フロック)を形成する。本例において、凝集剤Fは、混合することにより形成される集合体(フロック)の大きさが折曲溝12hの間隙(0.25mm)より大きくなるように調整されている。
【0027】
〔塗装含有廃水処理の工程〕
次に、塗装含有廃水処理の工程について説明する。図4は、塗装含有廃水処理方法の工程を示すフローチャートである。図5は、塗装含有廃水処理方法の工程を示す模式図である。図6は、塗装含有廃水処理方法の工程を示す模式図である。
【0028】
〔運搬工程S1〕
運搬工程S1は、塗装を除去する現場に必要な道具を運搬する工程である(図4(a)及び図5(a)参照)。本例において、施工者は、塗装除去処理に必要な高圧洗浄機、高性能バキュームを、ポンプ車T1に積み込んで滑走路に運搬する。本例において、施工者は、塗装含有廃水処理に必要な篩い器10、貯水容器C及びドラム缶Dを、第一運搬車T2及び/又は第二運搬車T3に積み込んで滑走路に運搬する。本例において、施工者は、篩い器10を1台、貯水容器Cを3台、ドラム缶Dを6台用意している。
【0029】
〔準備工程S2〕
準備工程S2は、塗装を除去する現場において、道具を用途に応じて配置する工程である(図4(a)及び図5(b)参照)。本例において、施工者は、塗装除去処理に必要な高圧洗浄機、高性能バキュームを、滑走路の塗装Pの側に配置する。施工者は、高圧洗浄機、高性能バキュームをポンプ車T1に繋げる。図5(b)に示すように、施工者は、篩い器10を、所定の高さの台Stの上に置き、篩い器10の正面にドラム缶D1を配置し、ドラム缶D1の隣にドラム缶D2を配置して、篩い器10の背面に貯水容器C1を配置する。施工者は、篩い器10と貯水容器C1との間に塗装含有廃水W等を循環させるための循環ポンプや、貯水容器C1に貯められた塗装含有廃水W等を撹拌する撹拌ポンプを配置する。なお、塗装含有廃水Wが、土壌や、河川や海に流れ出ないように、滑走路には仕切等を配置しても良い。
【0030】
施工者は、ドラム缶D3、D4及び貯水容器C2を一つのまとまりとして配置し、ドラム缶D3、D4と貯水容器C2との間に篩い器10が配置できるように隙間を用意する(図5(b)参照)。施工者は、ドラム缶D5、D6及び貯水容器C3を一つのまとまりとして配置し、ドラム缶D5、D6と貯水容器C3との間に篩い器10が配置できるように隙間を用意する(図5(b)参照)。
【0031】
〔剥離工程S3〕
剥離工程S3は、高圧洗浄機から噴射される高圧水を使用して塗装を被塗装物から剥離する工程である(図4(a)及び図5(c)参照)。施工者は、高圧洗浄機をポンプ車T1に繋げ、ポンプ車T1が備える超高圧発生ポンプを使用して、超高圧ホースを通じて、高圧洗浄機から高圧水を噴射する。施工者は、高圧水を滑走路の塗装に向けて噴射することで、塗装を滑走路から剥離させる。滑走路から剥離された塗装は、高圧水と混ざり合い、塗装含有廃水Wとなる。本例において、超高圧洗浄機は、例えば、圧力が180Mpa~200Mpa、水量が25~38L/min程度のものが使用される。
【0032】
〔収集工程S4〕
収集工程S4は、剥離工程で剥離された塗装及び剥離に使用された水を塗装含有廃水Wとしてポンプ車T1に収集する工程である(図4(a)及び図5(d)参照)。施工者は、高性能バキュームをポンプ車T1に繋げ、ポンプ車T1が備える超高圧発生ポンプを使用して、高性能バキュームから塗装含有廃水Wを収集する。収集された塗装含有廃水Wは、ポンプ車T1に貯められる。本例においては、説明の便宜のため剥離工程S3と収集工程S4とは、別々の工程として説明している。しかし、剥離工程S3と収集工程S4とは、作業時間短縮のため、複数人の施工者によって、同時並行に進めても良い。
【0033】
〔第一濾過工程S5〕
第一濾過工程S5は、図4(b)に示すように、第一滑落工程S501及び第一分離工程S502を経ることで、収集工程S4で集められた塗装含有廃水Wを分離し、分離された第一固形物Sfをドラム缶Dに入れ、分離された第一処理水Wfを貯水容器Cに入れる工程である。
【0034】
〔第一滑落工程S501〕
第一滑落工程S501は、塗装含有廃水Wを篩い器10の斜面12に滑り落とす工程である(図4(b)及び図5(e)参照)。施工者は、ポンプ車T1と入水口15hをホース等で繋げ、排水口18hと貯水容器Cとをホース等で繋げる。施工者は、塗装含有廃水Wが貯められたポンプ車T1を作動して、塗装含有廃水Wを篩い器10の入水口15hに供給する。ポンプ車T1は、貯水容器C1に貯められた塗装含有廃水Wを、所定の流量(例えば、10m/s)で入水口15hに流し、上部水槽15に供給する。上部水槽15に供給された塗装含有廃水Wは、所定量に達すると、堰部16から溢れて斜面12に滑り落ちていく。塗装含有廃水Wは、斜面12に滑り落ちる際に整流板17を通過することで、斜面12の表面において、幅方向に均一に拡がりながら流れ落ちる。
【0035】
〔第一分離工程S502〕
第一分離工程S502は、塗装含有廃水Wを、斜面12に形成された複数の折曲溝12hに通過させ、第一処理水Wfと第一固形物Sfとに分離する工程である(図4(b)及び図5(f)参照)。塗装含有廃水Wは、斜面12の表面において、幅方向に均一に拡がりながら流れ落ちているため、第一固形物Sfが一定の箇所に固まることなく、斜面12の表面全体に広がりながら第一処理水Wfが脱水される。
【0036】
塗装含有廃水Wは、角度が最も急に形成されている第一傾斜部12aで、ほとんどの水分が第一処理水Wfとして脱水される。塗装含有廃水Wは、第二傾斜部12bにおいて、水分が第一処理水Wfとしてさらに脱水され、斜面12の表面に分離された第一固形物Sfは斜面を滑り落ちていく。落下速度が減じられた第一固形物Sfは、第三傾斜部12cにたまり、その自重によってさらに脱水がされながら、斜面12から滑り落ち、ドラム缶D1に排出される。
【0037】
斜面12は、下方に湾曲する波形に形成されているため、塗装含有廃水Wは、図3(a)に示すように、矢印のように湾曲に沿って流れ、湾曲の中央で脱水される。塗装含有廃水Wは、斜面12の湾曲に沿って流れるため、第一固形物Sfが斜面12に目詰まりすることなく、第一処理水Wfの脱水ができる。斜面12は、断面視略くさび形状に形成されているため、図3(a)に示すように、第一処理水Wfのもつ水の粘性と表面張力により、水分がくさび形状の先端まで沿って移動し、第一処理水Wfを効率良く脱水できる。
【0038】
斜面12から脱水された第一処理水Wfは、下部水槽18に貯められる。下部水槽18に貯められた第一処理水Wfは、排水口18hから貯水容器C1に排水される。第一滑落工程S501、第一分離工程S502を行うことで、塗装含有廃水Wは、脱水がしっかりとされた状態で、第一固形物Sfと第一処理水Wfとに分離できる。施工者は、塗装含有廃水W、第一固形物Sf及び第一処理水Wf等に手を触れることなく作業を続けることができる。篩い器10は、ポンプ車T1から塗装含有廃水Wを所定の流量(例えば、10m/s)で流され続けても、第一固形物Sfが目詰まりすることなく、第一処理水Wfの脱水作業を継続して実行できる。
【0039】
塗装含有廃水Wは、第一分離工程S502を経ることで、第一処理水Wfと第一固形物Sfとに分離される。第一固形物Sfは、大きさが0.25mmより大きい塗装、塵及び土砂等で形成されている。一方、第一処理水Wfには、大きさが0.25mm以下の塗装、塵及び土砂等が残留している。
【0040】
〔固形物量確認工程S503〕
固形物量確認工程S503は、篩い器10から排出された第一固形物Sfが、ドラム缶Dの容量に達しているか否かを判断する工程である(図4(b)参照。)。施工者は、ドラム缶Dに貯められている第一固形物Sfの量が、ドラム缶Dの容量に達していない場合(S503:no)には、処理水量確認工程S505を実行する。施工者は、ドラム缶Dに貯められている第一固形物Sfの量が、ドラム缶Dの容量に達している場合(S503:yes)には、ドラム缶交換工程S504を実行する。
【0041】
〔ドラム缶交換工程S504〕
ドラム缶交換工程504は、容量が一杯になったドラム缶を、他のドラム缶Dに交換する工程である(図4(b)及び図5(g)参照。)。施工者は、例えば、篩い器10の正面に配置されたドラム缶D1の容量が一杯になった場合、図5(g)に示すように、ドラム缶D1と空のドラム缶D2とを交換する。なお、施工者は、篩い器10をドラム缶D1が配置された位置から、ドラム缶D2が配置された位置に移動させても良い。施工者は、容量が一杯になったドラム缶D1には、鉛を含有する汚染された産業廃棄物であることを示す目印(シールやステッカー)を付ける。
【0042】
〔処理水量確認工程S505〕
処理水量確認工程S505は、篩い器10から排水された第一処理水Wfが、貯水容器Cの容量に達しているか否かを判断する工程である(図4(b)参照。)。施工者は、貯水容器Cに貯められている第一処理水Wfの量が、貯水容器Cの容量に達していない場合(S505:no)には、未処理水量確認工程S507を実行する。施工者は、貯水容器Cに貯められている第一処理水Wfの量が、貯水容器Cの容量に達している場合(S505:yes)には、貯水容器交換工程S506を実行する。
【0043】
〔貯水容器交換工程S506〕
貯水容器交換工程506は、容量が一杯になった貯水容器Cを、他の貯水容器Cに交換する工程である(図4(b)及び図5(h)参照。)。施工者は、篩い器10を貯水容器C1が配置された位置から、図5(h)に示すように、貯水容器C2が配置された位置に移動させることで、貯水容器Cを交換する。なお、施工者は、例えば、篩い器10の背面に配置された貯水容器C1の容量が一杯になった場合、貯水容器C1と空の貯水容器C2とを交換しても良い。
【0044】
〔未処理水量確認工程S507〕
未処理水量工程507は、ポンプ車T1に貯められた全ての塗装含有廃水Wが、第一固形物Sfと第一処理水Wfとに分離されたか否かを確認する工程である(図4(b)参照。)。施工者は、ポンプ車T1に未処理の塗装含有廃水Wが残っている場合(S507:yes)には、再び第一滑落工程S501を実行する。施工者は、ポンプ車T1に塗装含有廃水Wが残っていない場合(S507:no)には、第一濾過工程S5を終了し、第一水質検査工程S6を実行する。つまり、施工者は、ポンプ車T1に貯められた塗装含有廃水Wを全て分離するまで、第一濾過工程S5を実行し続ける。第一濾過工程S5を経て、塗装含有廃水Wを全て分離すると、図5(i)に示すように、第一固形物Sfがドラム缶D1、D3及びD5に分配され、第一処理水Wfが貯水容器C1、C2及びC3に分配される。
【0045】
〔第一水質検査工程S6〕
第一水質検査工程S6は、それぞれの貯水容器Cに貯められた第一処理水Wfに含まれる鉛の含有量を検査する工程である(図4(a)及び図5(i)参照。)。施工者は、ポンプ車T1に貯められた塗装含有廃水Wをすべて排出し、それぞれの貯水容器Cに第一処理水Wfとして分配されると、作動しているポンプ車T1を止めて、それぞれの貯水容器Cに貯められている第一処理水Wfに含まれる鉛の含有量を検査する。
【0046】
施工者は、それぞれの貯水容器にCに貯められた第一処理水Wfの少量を検査センターに配送し、検査センターにおいて鉛の含有量が分析される。施工者は、第一処理水Wfの鉛の含有量が、大なり0.1mg/Lを示した場合(S6:no)には、第二濾過工程S7を実行する。施工者は、第一処理水Wfの鉛の含有量が、0.1mg/L以下を示した場合(S6:yes)には、分別工程S9を実行する。なお、鉛の含有量の基準を0.1mg/Lとしたのは、日本環境管理基準(JEGS:Japan Environmental Governing Standards)に記載されている基準(0.1mg/L)に従ったものである。
【0047】
〔第二濾過工程S7〕
第二濾過工程S7は、図4(c)に示すように、凝集剤混合工程S701、第二滑落工程S702及び第二分離工程S703を経ることで、第一濾過工程S5で集められた第一処理水Wfを分離し、分離された第二固形物Ssをドラム缶Dに入れ、分離された第二処理水Wsを貯水容器Cに入れる工程である。
【0048】
〔凝集剤混合工程S701〕
凝集剤混合工程S701は、第一処理水Wfに分散している粒子を凝集する凝集剤Fを第一処理水Wfに混合する工程である(図4(c)及び図6(a)参照。)。施工者は、篩い器10と貯水容器Cとの間に配置した撹拌ポンプを作動する。第一処理水Wfは、凝集剤Fを混合されて撹拌されることにより、大きさが0.25mmより大きい集合体(フロック)が形成される。第一処理水Wfは、第一分離工程S502を経ることで、既に大きめ(0.25mmより大きい)の塗装、塵及び土砂等は取り除かれている。このため、第一処理水Wfに混合された凝集剤Fは、微細な(0.25mm以下)塗装、塵及び土砂等のみを効率よく集合体にすることができる。施工者は、凝集剤Fによる集合体のうち浮遊したものについては、網を使用して取り除くと良い。
【0049】
〔第二滑落工程S702〕
第二滑落工程S702は、凝集剤Fが混合された第一処理水Wfを斜面12に滑り落とす工程である(図4(c)及び図6(b)参照。)。施工者は、循環ポンプで第一処理水Wfが循環するように、入水口15hと貯水容器Cとをホース等で繋げ、排水口18hと貯水容器Cとを繋げる。施工者は、篩い器10と貯水容器C1との間に配置した循環ポンプを作動して、貯水容器C1に貯められた第一処理水Wfを、篩い器10の入水口15hに供給する。循環ポンプは、貯水容器C1に貯められた第一処理水Wfを、所定の流量(例えば、10m/s)で入水口15hに流し、上部水槽15に供給する。上部水槽15に供給された第一処理水Wfは、所定量に達すると、堰部16から溢れて斜面12に滑り落ちていく。第一処理水Wfは、斜面12に滑り落ちる際に整流板17を通過することで、斜面12の表面において、幅方向に均一に拡がりながら流れ落ちる。
【0050】
〔第二分離工程S703〕
第二分離工程S703は、第一処理水Wfを、斜面12に形成された複数の折曲溝12hに通過させ、第二処理水Wsと第二固形物Ssとに分離する工程である(図4(c)及び図6(c)参照。)。第一処理水Wfは、斜面12の表面において、幅方向に均一に拡がりながら流れ落ちているため、第二固形物Ssが一定の箇所に固まることなく、斜面12の表面全体に広がりながら第二処理水Wsが脱水される。
【0051】
第一処理水Wfは、角度が最も急に形成されている第一傾斜部12aで、ほとんどの水分が第二処理水Wsとして脱水される。第一処理水Wfは、第二傾斜部12bにおいて、水分が第二処理水Wsとしてさらに脱水され、斜面12の表面に分離された第二固形物Ssは斜面を滑り落ちていく。落下速度が減じられた第二固形物Ssは、第三傾斜部12cにたまり、その自重によってさらに脱水がされながら、斜面12から滑り落ち、ドラム缶D2に排出される。
【0052】
斜面12は、下方に湾曲する波形に形成されているため、第一処理水Wfは、図3(a)に示すように、矢印のように湾曲に沿って流れ、湾曲の中央で脱水される。第一処理水Wfは、斜面12の湾曲に沿って流れるため、第二固形物Ssが目詰まりすることなく、第二処理水Wsの脱水ができる。斜面12は、断面視略くさび形状に形成されているため、図3(a)に示すように、第二処理水Wsのもつ水の粘性と表面張力により、水分がくさび形状の先端まで沿って移動し、第二処理水Wsを効率良く脱水できる。
【0053】
斜面12から脱水された第二処理水Wsは、下部水槽18に貯められる。下部水槽18に貯められた第二処理水Wsは、排水口18hから貯水容器C1に排水される。第二滑落工程S702、第二分離工程S703を行うことで、第一処理水Wfは、脱水がしっかりとされた状態で、第二固形物Ssと第二処理水Wsとに分離できる。施工者は、第一処理水Wf、第二固形物Ss及び第二処理水Ws等に手を触れることなく作業を続けることができる。篩い器10は、貯水容器Cから塗装含有廃水Wを所定の流量(例えば、10m/s)で流され続けても、第一固形物Sfが目詰まりすることなく、第一処理水Wfの脱水作業を継続して実行できる。
【0054】
塗装含有廃水Wは、第二分離工程S703を経ることで、第二処理水Wsと第二固形物Ssとに分離される。第二固形物Ssは、凝集剤Fによって集合体とされ、大きさが0.25mmより大きい塗装、塵及び土砂等で形成されている。一方、第二処理水Wsは、第一処理水Wfから集合体が取り除かれているため、塗装、塵及び土砂等がほとんど残っていない。つまり、鉛は、主に塗装に含まれているため、第二固形物Ssが取り除かれた第二処理水Wsには、鉛がほとんど残っていないと考えられる。
【0055】
〔固形物量確認工程S704〕
固形物量確認工程S704は、篩い器10から排出された第二固形物Ssが、ドラム缶Dの容量に達しているか否かを判断する工程である(図4(c)参照。)。施工者は、ドラム缶Dに貯められている第二固形物Ssの量が、ドラム缶Dの容量に達していない場合(S704:no)には、処理水量確認工程S706を実行する。施工者は、ドラム缶Dに貯められている第二固形物Ssの量が、ドラム缶Dの容量に達している場合(S704:yes)には、ドラム缶交換工程S705を実行する。
【0056】
〔ドラム缶交換工程S705〕
ドラム缶交換工程S705は、容量が一杯になったドラム缶を、他のドラム缶Dに交換する工程である(図4(c)及び図6(d)参照。)。施工者は、例えば、篩い器10をドラム缶D2が配置された位置から、図6(d)に示すように、ドラム缶D4が配置された位置に移動させる。施工者は、例えば、篩い器10の正面に配置されたドラム缶D2の容量が一杯になった場合、ドラム缶D2と空のドラム缶D4とを交換しても良い。施工者は、容量が一杯になったドラム缶D2には、鉛を含有する汚染された産業廃棄物であることを示す目印を付ける。
【0057】
〔処理水量確認工程S706〕
処理水量確認工程S706は、篩い器10から排水された第二処理水Wsが、貯水容器Cの容量に達しているか否かを判断する工程である(図4(c)参照。)。施工者は、貯水容器Cに貯められている第二処理水Wsの量が、貯水容器Cの容量に達していない場合(S706:no)には、未処理水量確認工程S708を実行する。施工者は、貯水容器Cに貯められている第二処理水Wsの量が、貯水容器Cの容量に達している場合(S706:yes)には、貯水容器交換工程S707を実行する。
【0058】
〔貯水容器交換工程S707〕
貯水容器交換工程S707は、容量が一杯になった貯水容器Cを、他の貯水容器Cに交換する工程である(図4(c)及び図6(e)参照。)。施工者は、篩い器10を貯水容器C1が配置された位置から、図6(e)に示すように、貯水容器C2が配置された位置に移動させることで、貯水容器Cを交換する。なお、施工者は、例えば、篩い器10の背面に配置された貯水容器C1の容量が一杯になった場合、貯水容器C1と空の貯水容器C2とを交換しても良い。
【0059】
〔未処理水量確認工程S708〕
未処理水量確認工程S708は、貯水容器Cに貯められた全ての第一処理水Wfが、第二固形物Ssと第二処理水Wsとに分離されたか否かを確認する工程である。施工者は、貯水容器Cに未処理の第一処理水Wfがある場合(S708:yes)には、再び第二滑落工程S702を実行する。施工者は、貯水容器Cに未処理の第一処理水Wfがない場合(S708:no)には、第二濾過工程S7を終了し、第二水質検査工程S8を実行する。つまり、施工者は、貯水容器Cに貯められた第一処理水Wfを全て分離するまで、第二濾過工程S7を実行し続ける。第二濾過工程S7を経て、第一処理水Wfを全て分離すると、図6(f)に示すように、第二固形物Ssがドラム缶D2、D4及びD6に分配され、第二処理水Wsが貯水容器C1、C2及びC3に分配される。
【0060】
〔第二水質検査工程S8〕
第二水質検査工程S8は、それぞれの貯水容器Cに貯められた第二処理水Wsに含まれる鉛の含有量を検査する工程である(図4(a)及び図6(f)参照。)。施工者は、貯水容器Cに貯められた第一処理水Wfをすべて分離処理し、それぞれの貯水容器Cに第二処理水Wsとして分配されると、作動している循環ポンプを止めて、貯水容器Cに貯められている第二処理水Wsに含まれる鉛の含有量を検査する。
【0061】
施工者は、それぞれの貯水容器にCに貯められた第二処理水Wsの少量を検査センターに配送し、検査センターで鉛の含有量が分析される。施工者は、第二処理水Wsの鉛の含有量が、大なり0.1mg/Lを示した場合(S8:no)には、再び第二濾過工程S7を実行する。施工者は、第二処理水Wsの鉛の含有量が、0.1mg/L以下を示した場合(S8:yes)には、分別工程S9を実行する。つまり、本例において、施工者は、第二処理水Wsの鉛の含有量が、0.1mg/L以下を示すまで、第二濾過工程S7を実行し続ける。
【0062】
〔分別工程S9〕
分別工程S9は、第一処理水Wfや第二処理水Wsの配送先を、鉛の含有量に応じて、一般廃棄物処理場と産業廃棄物処理場とに分別する工程である(図4(a)及び図6(g)参照。)。施工者は、第一処理水Wfや第二処理水Wsに対して行った鉛含有量の検査結果が、大なり0.1mg/Lの場合には、鉛を含有する汚染された産業廃棄物であることを示す目印を付ける。施工者は、第一処理水Wfや第二処理水Wsに対して行った鉛含有量の検査結果が、0.1mg/L以下の場合には、一般廃棄物であることを示す目印を付ける。本例において、第二処理水Wsは、鉛含有量が、0.1mg/L以下になるまで第二濾過工程S7(図4(a)参照)を実行するため、貯水容器C1、C2及びC3には、一般廃棄物であることを示す目印を付ける。施工者は、一般廃棄物処理場で処分するものを第一運搬車T2に運び、産業廃棄物処理場で処分するものを第二運搬車T3に運ぶ。
【0063】
〔荷積工程S10〕
荷積工程S10は、分別工程における分別に応じて荷積みをする工程である(図4(a)及び図6(h)参照。)。施工者は、一般廃棄物処理場で処分するものを第一運搬車T2に積み込み、産業廃棄物処理場で処分するものを第二運搬車T3に積み込む。施工者は、一般廃棄物であることを示す目印が付けられた貯水容器C1、C2及び3を、第一運搬車T2に積み込む。また、施工者は、産業廃棄物であることを示す目印が付けられたドラム缶D1~D6を第二運搬車T3に積み込む。
【0064】
〔輸送工程S13〕
輸送工程S13は、処理された塗装含有廃水Wを一般廃棄物処理場と産業廃棄物処理場とに輸送する工程である。施工者は、一般廃棄物であることを示す目印が付けられた貯水容器C1、C2及び3が積み込まれた第一運搬車T2を一般廃棄物処理場に輸送する。施工者は、産業廃棄物であることを示す目印が付けられたドラム缶Dが積み込まれた第二運搬車T3を産業廃棄物処理場に輸送する。
【0065】
本発明の塗装含有廃水処理方法を使用することで、施工者は、塗装を除去する被塗装物がある現場で、塗装除去処理と塗装含有廃水処理を同時並行で行うことができる。施工者は、塗装含有廃水処理において、篩い器10を使用することで、塗装含有廃水W、第一固形物Sf及び第一処理水Wf等に手を触れることなく作業を続けることができる。また、施工者は、塗装を除去する被塗装物がある現場で、一般廃棄物処理場に輸送するものと、産業廃棄物処理場に輸送するものを分別することができる。さらに、施工者は、塗装含有廃水Wが複数の貯水容器Cに分けられている場合であっても、篩い器10の移動とポンプの取付作業をするだけで、複数箇所に配置された貯水容器C間の塗装含有廃水処理を容易に行うことができる。
【0066】
〔実施例〕
次に、着工前試験、比較例及び実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。表1は、空港における塗装のLBPの含有量を調べた着工前試験の結果を示す。表1に示すように、空港における塗装(黄色、赤及び黒)のLBPの含有量は、JEGSで許容されている基準(0.1mg/L)を超えていることがわかる。
【0067】
【表1】
【0068】
表2は、空港における塗装を高性能洗浄機と高性能バキュームを使用して収集した塗装含有廃水の水質を示す。50ton以上の鉛含有廃棄物を処分するには、梱包やラベリングをした跡で、産業廃棄物処理場への輸送が必要となる。例えば、表2で示すような鉛を含有する塗装含有廃水を沖縄の空港で収集した場合、県外である九州の産業廃棄物処理場へ輸送しなければならない。
【0069】
【表2】
【0070】
表3は、比較例1及び実施例1で処理された処理水の鉛の含有量を、所定の分析方法で測定した結果を示す。なお、処理水の鉛の含有量の分析方法としては、JIS K102:2016 54.1「工場排水試験方法(フレーム原子吸光法)」、JIS K102:2016 54.2「工場排水試験方法(電気加熱原子吸光法)」及びJIS K102:2016 54.4「工場排水試験方法(ICP質量分析法)」により測定した。本例において、処理水の鉛の含有量は、まず、フレーム原子吸光法で測定し、測定結果で数値が低かった場合には、電気加熱原子吸光法又はICP質量分析法を用いて測定した。
【0071】
【表3】
【0072】
〔比較例1〕
比較例1は、従来の塗装含有廃水処理方法による場合であり、図7に示すように、次の工程を経る。
(1)高性能洗浄機で塗装を除去した。
(2)53.6tの塗装含有廃水を高性能バキュームで収集した。
(3)不織布のマットを使用して塗装含有廃水を濾過し、塗装含有廃水を処理水と固形物に分離した。塗装含有廃水を処理水と固形物に分離する作業は、1t当たり1時間程度の時間を必要とし、合計約53.6時間かかった。
(4)処理水を貯水容器a、貯水容器b及び貯水容器cに配分した。
(5)貯水容器a~cの処理水について、鉛の含有量を測定をした。
【0073】
比較例1の工程を経た場合の処理水の測定結果は、以下の通りである。表3に示すように、貯水容器aの処理水は、鉛の含有量が、3.0mg/Lであり、JEGS(0.1mg/L)の基準を大きく上回った。表3に示すように、貯水容器Bの処理水は、鉛の含有量が、0.5mg/Lであり、JEGS(0.1mg/L)の基準を大きく上回った。表3に示すように、貯水容器Cの処理水は、鉛の含有量が、3.7mg/Lであり、JEGS(0.1mg/L)の基準を大きく上回った。
【0074】
比較例1における本発明の塗装含有廃水処理方法によって、沖縄の空港において、鉛を含有する塗装含有廃水を収集、処理した場合、50tonの処理水も3.6tonの固形物も、県外である九州の産業廃棄物処理場へ輸送しなければならない。
【0075】
〔実施例1〕
実施例1は、本発明の塗装含有廃水処理方法による場合であり、次の工程を経る。
(1)高性能洗浄機で塗装を除去した。
(2)塗装含有廃水を高性能バキュームで収集した。
(3)篩い器10としてハイドラシブを使用して塗装含有廃水を濾過し、塗装含有廃水を第一処理水と第一固形物に分離した。塗装含有廃水を処理水と固形物に分離する作業は、10t当たり1時間程度の時間を必要とし、約5.36時間かかった。
(4)第一処理水を貯水容器a、貯水容器b、貯水容器c及び貯水容器dに配分した。
(5)さらに、篩い器10としてハイドラシブを使用して第一処理水を濾過し、第一処理水を第二処理水と第二固形物に分離した。第一処理水を第二処理水と第二固形物に分離する作業は、15t当たり2時間程度の時間を必要とし、約7.14時間かかった。
(6)第二処理水を貯水容器a、貯水容器b、貯水容器c及び貯水容器dに配分した。
(7)貯水容器a~dの第二処理水について、鉛の含有量を測定をした。なお、第二処理水は、貯水容器a~dのそれぞれ2箇所から採取し、計8箇所における、鉛の含有量を測定した。
【0076】
実施例1の工程を経た場合の処理水の測定結果は、以下の通りである。表3に示すように、貯水容器a(a1箇所及びa2箇所)の第二処理水は、鉛の含有量が、<0.01mg/Lであり、JEGS(0.1mg/L)の基準を十分に満たしている。表3に示すように、貯水容器b(b1箇所及びb2箇所)の第二処理水は、鉛の含有量が、<0.01mg/Lであり、JEGS(0.1mg/L)の基準を十分に満たしている。表3に示すように、貯水容器c(c1箇所及びc2箇所)の第二処理水は、鉛の含有量が、<0.01mg/Lであり、JEGS(0.1mg/L)の基準を十分に満たしている。表3に示すように、貯水容器d(d1箇所及びd2箇所)の第二処理水は、鉛の含有量が、<0.01mg/Lであり、JEGS(0.1mg/L)の基準を十分に満たしている。
【0077】
実施例1における本発明の塗装含有廃水処理方法によって、沖縄の空港において、鉛を含有する塗装含有廃水を収集、処理した場合、50tonの処理水は、近隣である沖縄の一般廃棄物処理場の輸送でたりる。一方、3.6tonの固形物は、県外である九州の産業廃棄物処理場へ輸送する必要がある。実施例1における本発明の塗装含有廃水処理方法は、50tonの処理水を県外である九州の産業廃棄物処理場に輸送する必要がないため、比較例1と比べて、輸送費を減らすことができる。比較例1における塗装含有廃水を処理水と固形物に分離する作業は、約53.6時間である。一方、実施例1における塗装含有廃水を第一処理水と第一固形物に分離する作業は約5.6時間であり、第一処理水を第二処理水と第一固形物に分離する作業は約7.14時間である。比較例1では約7日間要する作業を、実施例1は半日で処理できることがわかる。
【0078】
〔第二実施形態〕
第一実施形態は、第二処理水Wsの鉛の含有量が0.1mg/L以下になるまで、第二濾過工程S7と第二水質検査工程S8を実行し続ける。しかし、第二処理水Wsの鉛の含有量が0.1mg/L以下になるのは、第二濾過工程S7を何回実行すれば良いかが経験則からわかる場合がある。このため、第二実施形態では、第二濾過工程S7を実行する回数をカウントし(図9(a)S6_2及び図9(c)S701_2参照)、3回実行した場合(図9(a)S7_2参照)に第二濾過工程S7を終了する。このようにすることで、第二水質検査工程S8を実行する回数を減らすことができる。なお、本例において、第二濾過工程S7を実行する回数は3回にしているが、回数については、適宜変更しても良い。
【0079】
〔第三実施形態〕
第一実施形態の塗装含有廃水処理方法は、塗装を除去する被塗装物を空港の滑走路として説明を行った。しかし、被塗装物は、空港の滑走路に限らず、道路や建物であっても良い。建物に塗られた塗装を除去する場合を例にして、第三実施形態の塗装含有廃水処理方法について説明をする。例えば、建物に塗られた塗装を除去する場合には、まず、塗装された壁等に剥離材(例えば、リムーバや軟化剤)を塗って塗装を軟化させる。軟化されて壁への付着力が弱くなった塗装は、ヘラ(例えば、電動サンダー、スクレパーやケレン棒)で、削ぎ落として、高圧洗浄機を使って除去される。
【0080】
本例において、高圧洗浄機は、例えば、圧力が20Mpa、水量が15L/min程度のものが使用される。建物から剥離された塗装は、高圧水と混ざり合い、塗装含有廃水Wとなる。このような作業を経て得られた塗装含有廃水Wは、第一実施形態の塗装含有廃水処理方法と同様に、第一濾過工程S5や第二濾過工程S7を経て分離することができる。このように、本発明の塗装含有廃水処理方法は、土木の分野だけでなく、建築の分野でも使用することができる。
【0081】
本発明の塗装含有廃水処理方法によれば、施工者は、塗装含有廃水W、処理水及び固形物等の危険な物質に直接触れることがないため、安全面に配慮した防護服等の装備が低減できる。本発明の塗装含有廃水処理方法によれば、塗装含有廃水Wは、処理水と固形物に短い時間で容易に分離できるため、多数の施工者を必要とせず、人員不足による遅延が生じない。本発明の塗装含有廃水処理方法によれば、短い時間で容易に作業できるため、大面積の施工を短期間で完了できる。本発明の塗装含有廃水処理方法によれば、塗装を除去する現場で作業ができるため、屋内の閉ざされた高温かつ狭小な場所で作業する必要がない。
【0082】
以上、本発明の実施の形態の説明を行ったが、本発明は、この実施の形態に限定されることはなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内で変更ができる。本例において、篩い器10は、1台しか使用していないが、複数台使用しても良い。複数台の篩い器10を同時に使用して一度に多くの塗装含有廃水Wを分離しても良い。また、一の篩い器10は、第一濾過工程S5を実行させ、他の篩い器10には、第二濾過工程S7を実行させても良い。さらに、一の篩い器10の折曲溝12hの間隙は0.25mmにして、他の篩い器10のの折曲溝12hの間隙は0.1mmにするなど、間隙が異なるようにしても良い。
【0083】
本例において、施工者は、それぞれの貯水容器にCに貯められた第一処理水Wf等を検査センターに配送し、検査センターで鉛の含有量が分析している。しかし、持ち運びができる分析用試験紙キット等を使用して、施工現場で、鉛の含有量の検査しても良い。本例で使用する篩い器10は、ハイドラシブ(12G型)を使用しているが、被塗装物がある現場の大きさや、塗装含有廃水の種類に応じて、適宜他の大きさのものを使用しても良い。
【符号の説明】
【0084】
10 :篩い器
11 :本体部
12 :斜面
13 :支持軸
14 :載置棒
15 :上部水槽
16 :堰部
17 :整流板
18 :下部水槽
Sf :第一固形物
Ss :第二固形物
St :台
T1 :ポンプ車
T2 :第一運搬車
T3 :第二運搬車
W :塗装含有廃水
Wf :第一処理水
Ws :第二処理水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9