(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 5/16 20060101AFI20220712BHJP
H02K 5/08 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
H02K5/16 A
H02K5/08 A
(21)【出願番号】P 2019508675
(86)(22)【出願日】2018-02-02
(86)【国際出願番号】 JP2018003657
(87)【国際公開番号】W WO2018179833
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-01-27
(31)【優先権主張番号】P 2017072719
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】398061810
【氏名又は名称】日本電産テクノモータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【氏名又は名称】梶原 慶
(72)【発明者】
【氏名】柚木 康伸
(72)【発明者】
【氏名】石川 将之
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-033586(JP,U)
【文献】特開2010-142055(JP,A)
【文献】特開2009-112065(JP,A)
【文献】特開2014-137314(JP,A)
【文献】特開2006-333670(JP,A)
【文献】特開2004-147467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/16
H02K 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸に沿って延びる回転軸を有するロータと、
前記ロータの外周面と径方向に対向するステータコアに絶縁体を介して巻き回された複数の巻線を有するステータと、
前記ステータの少なくとも前記絶縁体及び前記巻線を封止する樹脂ケーシングと、
中心軸方向に互いに離間した位置で前記回転軸を回転可能に支持する複数の軸受と、
前記樹脂ケーシングを覆うカバーと、を備え、
前記ステータは、前記複数の軸受がそれぞれ収納される複数の軸受収納部材を備え、
前記軸受収納部材は、導電性を有し、
前記軸受収納部材のそれぞれは、導電部材により電気的に導通され、
前記複数の軸受収納部材のそれぞれは、前記カバーと電気的に絶縁され、
前記カバーは、前記導電部材と電気的に絶縁されるモータ。
【請求項2】
前記カバーは、前記絶縁体の径方向外方又は軸方向一方側の少なくとも一方において、樹脂ケーシングを覆い、
前記絶縁体の径方向外方又は軸方向一方側の少なくとも一方において、少なくとも一部に前記カバーと前記樹脂ケーシングとの間に隙間を備えた請求項1記載のモータ。
【請求項3】
前記複数の巻線は、渡り線部を介して電気的に接続され、
前記絶縁体は、前記渡り線部が配線される配線部が設けられ、
前記隙間は、前記配線部の径方向外方又は軸方向一方側の少なくとも一方に位置した請求項2記載のモータ。
【請求項4】
前記隙間は、前記樹脂ケーシングの外面から径方向に凹む凹部である請求項1又は請求項2に記載のモータ。
【請求項5】
前記ステータコアは、
環状のコアバック部と、
前記コアバック部から径方向内側に延びるティース部と、を有し、
前記絶縁体は、
前記ティース部を覆う絶縁体ティース部と、
前記コアバック部の少なくとも軸方向端部を覆う絶縁体コアバック部と、を有し、
前記配線部は、前記絶縁体コアバック部の軸方向端部から軸方向に向かって延び、
前記渡り線は、前記配線部の径方向外側面で配線され、
前記樹脂ケーシングの外周面に前記凹部が位置する請求項4に記載のモータ。
【請求項6】
前記凹部の一部分において径方向に突出した突出部を有し、
前記導電部材が前記突出部に配置される請求項4又は請求項5に記載のモータ。
【請求項7】
前記複数の軸受収納部材のうち少なくとも一つは、前記樹脂ケーシングによって封止される樹脂封止軸受収納部材であり、
前記樹脂封止軸受収納部材は、径方向に延びるフランジ部を備え、
前記フランジ部の一部は、前記樹脂ケーシングに封止され、
前記カバーは、前記樹脂ケーシングと接触し、軸方向から視た位置が前記フランジ部と重なるケーシング接触部を備え、
前記導電部材は、前記フランジ部に対して電気的に導通する導電接続部を有し、
前記ケーシング接触部は、軸方向に貫通する貫通部を備え、
前記導電接続部は、前記貫通部に位置する請求項1から請求項6のいずれかに記載のモータ。
【請求項8】
前記樹脂ケーシング部の出力軸側端面は、軸方向に凹む凹穴を備え、
前記ケーシング接触部は、前記凹穴に沿って接触し、
前記出力軸には、前記軸受収納部を覆う軸受カバーが取り付けられる請求項7に記載のモータ。
【請求項9】
前記カバーは軸方向に延びる筒状であり、
前記樹脂ケーシングは、前記カバーの内部で圧入される圧入部を備えた請求項1から請求項8のいずれかに記載のモータ。
【請求項10】
前記圧入部は、前記樹脂ケーシングを径方向に見て、前記ステータコアと重なる請求項9に記載のモータ。
【請求項11】
前記カバーの内径は、前記樹脂ケーシングの圧入方向に向かって漸次的に小さくなる請求項9又は請求項10に記載のモータ。
【請求項12】
前記カバーの内径は、前記樹脂ケーシングの圧入方向に向かって段階的に小さくなる請求項9又は請求項10に記載のモータ。
【請求項13】
前記カバーは、
軸方向における一方側から前記樹脂ケーシングを覆う第1カバー部材と、
軸方向における他方側から前記樹脂ケーシングを覆う第2カバー部材と、を備え、
前記第1カバー部材は、外周面から径方向外側に延びる第1フランジを有し、
前記第2カバー部材は、外周面から径方向外側に延びる第2フランジを有し、
前記第1カバー部材及び前記第2カバー部材は、前記樹脂ケーシングを覆ったとき、前記第1フランジと前記第2フランジと直接的又は間接的に接続される請求項1から請求項12のいずれかに記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のモータは特許文献1及び特許文献2等に開示されている。特許文献1に記載のインナーロータ型モールドモータにおいて、ロータは、モールド樹脂によりモールド成形されて外郭が形成されたステータの内径側に配置され、ロータの出力回転軸の出力側と反出力側とがベアリングで支持されて回転する。そして、ベアリングは、ステータの外郭の出力側と反出力側の両側に配置されたブラケットに形成されたベアリングハウスに収められる。
【0003】
このインナーロータ型モールドモータでは、出力側のブラケットと反出力側のブラケットの間に電位差が生じると、ベアリングに電流が流れる。ベアリングに電流が流れると、電食が生じ、電食によってモータの振動や騒音が発生する。そこで、特許文献1に開示されたインナーロータ型モールドモータでは、出力側のブラケットと反出力側のブラケットとを導通板を介して導通している。
【0004】
また、特許文献2に記載のブラシレスDCモータは、回転子と、固定子と、を備える。固定子は、回転子との間に回転磁界を形成する環状の固定子コアと、固定子コアに巻装された固定子コイルと、を備える。そして、固定子を樹脂からなるハウジングと一体にモールド成形して、ハウジングの外表面を金属からなる保護カバーで被覆した構成を有する。
【0005】
このブラシレスDCモータは、固定子コイルで発生した熱を樹脂からなるハウジングを介して外部に放熱し、さらに、ハウジングの外表面を金属からなる保護カバーで被覆することで、外部からの衝撃によるハウジングの破損を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012‐210064号公報
【文献】特開平9-261935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のインナーロータ型モールドモータでは、モールド樹脂によるモールド成形された外郭が外部に剥き出しであるため、外部からの衝撃で導通板が損傷し、導通板が脱落する虞がある。そこで、特許文献2の構成の保護カバーを取り付けることで、外郭を保護することが可能となる。このとき、保護カバーと出力側及び(又は)反出力側のブラケット、又は、保護カバーと導通板とが接触し、保護カバーと軸受とが導通状態になる場合がある。
【0008】
モールドモータの保護カバーの電位は、取り付けられる機器によって異なる場合がある。この場合、保護カバーの電位によっては、保護カバーと軸受との導通で電食が発生しやすくなる虞がある。
【0009】
そこで、本発明は、取り付けられる機器にかかわらず、外部衝撃からの保護及び軸受の電食対策を行うことができるモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の例示的なモータは、中心軸に沿って延びる回転軸を有するロータと、前記ロータの外周面と径方向に対向するステータコアに絶縁体を介して巻き回された複数の巻線を有するステータと、前記ステータの少なくとも前記絶縁体及び前記巻線を封止する樹脂ケーシングと、中心軸方向に互いに離間した位置で前記回転軸を回転可能に支持する複数の軸受と、前記樹脂ケーシングを覆うカバーと、を備え、前記ステータは、前記複数の軸受がそれぞれ収納される複数の軸受収納部材を備え、前記軸受収納部材は、導電性を有し、前記軸受収納部材のそれぞれは、導電部材により電気的に導通され、前記複数の軸受収納部材のそれぞれは、前記カバーと電気的に絶縁され、前記カバーは、前記導電部材と電気的に絶縁されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
例示的な本発明のモータによれば、取り付けられる機器にかかわらず、外部衝撃からの保護及び軸受の電食対策を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明にかかるモータの一例の分解斜視図である。
【
図4】
図4は、ステータに備えられるステータコアの斜視図である。
【
図6】
図6は、本実施形態にかかるモータの変形例の樹脂ケーシング及びカバーを示す部分断面図である。
【
図7】
図7は、本実施形態にかかるモータの他の変形例の樹脂ケーシング及びカバーを示す部分断面図である。
【
図8】
図8は、本発明にかかるモータの他の例の分解斜視図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態にかかるモータの変形例の断面図である。
【
図11】
図11は、本発明にかかるモータのさらに他の例の断面図である。
【
図12】
図12は、本発明にかかるモータのさらに他の例の断面図である。
【
図13】
図13、本発明にかかるモータのさらに他の例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
<1.第1実施形態>
図1は、本発明にかかるモータの一例の分解斜視図である。
図2は、
図1に示すモータの断面図である。なお、以下の説明では、中心軸Axが延びる方向、すなわち、
図2において左右方向を軸方向とする。また、軸方向に対して直交する方向を径方向とし、軸を中心とする円の接線方向を周方向とする。
【0015】
また、本書では、軸方向について、
図2を参照して以下のとおり設定する。すなわち、
図2において、軸方向右側に向かう方向を第1方向Opとし、左側に向かう方向を第2方向Orとする。なお、本書における「左方向」、「右方向」は、説明のために設定したものである。そのため、これらの方向は、モータAを実際に使用するときの向きを限定するものではない。
【0016】
<1.1 モータの構成>
図1に示すように、本実施形態にかかるモータAは、ステータ1と、樹脂ケーシング2と、カバー3と、ロータ4と、第1軸受51と、第2軸受52とを有する。樹脂ケーシング2は、ステータ1の外周面を覆う。すなわち、モータAは、ステータ1を樹脂ケーシング2で封止した、いわゆる、モールドモータである。ロータ4は、ステータ1の内側に配置される。ロータ4は、中心軸Axに沿って延びる回転軸40を備える。そして、回転軸40が、第1軸受51及び第2軸受52に支持されており、ステータ1に対して回転可能である。すなわち、本実施形態にかかるモータAは、ステータ1の内側でロータ4が回転するインナーロータ型DCブラシレスモータである。そして、複数の軸受(51、52)は、軸方向に互いに離間した位置で回転軸40を回転可能に支持する。
【0017】
<1.2 ステータの構成>
ステータ1について、新たな図面を参照して説明する。
図3は、ステータコアの斜視図である。
図4は、ステータに備えられるステータコアの斜視図である。
図3、
図4に示すように、ステータ1は、ステータコア11と、絶縁体12と、巻線13とを備える。そして、ステータ1は、ロータ4の外周面と径方向に対向するステータコア11に絶縁体12を介して巻きつけられた複数の巻線13を有する。また、
図2に示すように、ステータ1は、第1軸受51が収納される第1軸受収納部材61と、第2軸受52が収納される第2軸受収納部材62とを備える。すなわち、ステータ1は、複数の軸受(51、52)がそれぞれ収納される複数の軸受収納部材(61、62)を備える。
【0018】
ステータコア11は導電性を有する。
図4に示すように、ステータコア11は、環状のコアバック部111と、ティース部112とを備える。コアバック部111は、軸方向に延びる環状である。ティース部112は、コアバック部111の内周面から径方向内側に突出する。すなわち、ステータコア11は、環状のコアバック部111と、コアバック部111から径方向内側に延びるティース部112と、を有する。
図4に示すようにステータコア11は、12個のティース部112を備える。ティース部112は、周方向に等間隔に配列される。すなわち、本実施形態のモータAにおいて、ステータ1は、12スロットである。
【0019】
絶縁体12は、ステータ11を覆う。絶縁体12は、樹脂の成形体である。絶縁体12は、ティース部112の全体を覆うとともに、コアバック部111の軸方向の両端面を覆う。絶縁体12で覆われたティース部112に導線を巻きつけて巻線13が形成される。すなわち、絶縁体12は、ティース部112を覆う絶縁体ティース部121と、コアバック部111の少なくとも軸方向端部を覆う絶縁体コアバック部122とを有する。絶縁体12によって、ステータコア11と巻線13とが絶縁される。なお、本実施形態において、絶縁体12は、樹脂の成型体であるが、これに限定されない。ステータコア11と巻線13とを絶縁することができる構成を広く採用できる。
【0020】
上述のとおり絶縁体12は、ステータコア11と巻線13を絶縁する。そのため、ステータコア11において、コアバック部111の径方向の外周面は、絶縁体12で被覆されずに露出してもよい。なお、ステータコア11は、電磁鋼板を積層した構造であってもよいし、紛体の焼成、鋳造等、単一の部材であってもよい。また、ステータコア11は、ティース部112を1個含む分割コアに分割可能な構成であってもよいし、帯状の部材を巻いて形成される構成であってもよい。ステータ1の、径方向中央には、軸方向に貫通し、ロータ4が配置される。
【0021】
巻線13は、ステータコア11のティース部112のそれぞれに配置される。すなわち、モータAでは、12個の巻線13が配置される。そして、ステータ1に備えられた12個の巻線13は、電流が供給されるタイミングによって3系統(以下、3相とする)に分けられる。この3相を、それぞれ、U相、V相、W相とする。つまり、ステータ1は、4個のU相巻線、4個のV相巻線及び4個のW相巻線を備える。なお、以下の説明において、各相の巻線をまとめて単に巻線13として説明する。
【0022】
また、ステータ1には、複数の巻線13同士を接続する又は巻線13とモータAに備えられた基板Bdに実装された、制御回路(不図示)と電気的に接続される渡り線部131を備える。複数の巻線13は、渡り線部131を介して電気的に接続される。そして、渡り線部131は、絶縁体12のコアバック部111の軸方向の端面をカバーする絶縁体コアバック部122に備えられた配線部120に配置される。すなわち、絶縁体12は、渡り線部131が配線される配線部120が設けられる。なお、
図2に示すように、ステータ1は、コアバック部111の第1方向Op側の端面を覆う絶縁体12の径方向外側の面に渡り線131が配置される配線部120を備える。すなわち、配線部120は、絶縁体コアバック部122の軸方向端部から軸方向(第1方向Op側)に向かって延び、渡り線131は、配線部120の径方向外側面で配線される。そして、樹脂ケーシング2の外周面に凹部23が位置する。
【0023】
<1.3 樹脂ケーシング及びカバーの構成>
図1、
図2等に示すように、樹脂ケーシング2は、円筒形状である。樹脂ケーシング2は、内部にステータコア11を封止した樹脂のモールド成型体である。すなわち、樹脂ケーシング2は、ステータ1の少なくとも絶縁体13及び巻線12を封止する。なお、
図2に示すように、モータAでは、ステータコア11の径方向の外面も覆う。樹脂ケーシング2は、第1方向Op側の端部の少なくとも一部が閉じられた有底円筒形状である。そして、底部の径方向中央部分に軸方向に延びる樹脂ケーシング孔20が設けられる。
【0024】
底部の第1方向Op側の面の樹脂ケーシング孔20の径方向外側には、軸方向に凹んだ凹穴21が設けられる。すなわち、樹脂ケーシング2の出力軸側端面は、軸方向に凹む凹穴20を備える。ロータ4に取り付けられた回転軸40が、樹脂ケーシング孔20を軸方向に貫通する。また、樹脂ケーシング孔20には、第1軸受収納部材61の後述するフランジ部611がインサート成形にて固定される。なお、第1軸受収納部61の詳細については、後述する。
【0025】
図1、
図2等に示すように、カバー3は、樹脂ケーシング2を覆う。カバー3は、第1方向Op側の端部の少なくとも一部が閉じられた有底円筒形状である。すなわち、カバー3は軸方向に延びる筒状である。カバー3は、例えば、金属板を押し出し加工することで、形成される。すなわち、カバー3は、絶縁体12の径方向外方および絶縁体12の軸方向一方側(第1方向Op側)の少なくとも一方の樹脂ケーシング2を覆う。そして、カバー3は、底部の径方向中央部に、樹脂ケーシング2の凹穴21と接触するケーシング接触部31を備える。すなわち、ケーシング接触部31は、凹穴21に沿って接触する。ケーシング接触部31は、カバー3の第1方向Op側から第2方向Or側に凹んでいる。そして、ケーシング接触部31の中央は、軸方向に貫通したカバー孔30を備える。
【0026】
また、ケーシング接触部31は、軸方向に貫通する貫通部310を備える。貫通部310は、周方向に閉じた形状の孔であってもよいし、周方向の一部が解放した、いわゆる、切欠きであってもよい。貫通部310と軸方向に重なる位置に、導電部材8の後述する導電接続部81が取り付けられる。
【0027】
樹脂ケーシング2をカバー3に圧入したとき、ケーシング接触部31が、凹穴21と接触する。カバー3が、樹脂ケーシング2を覆うとき、ケーシング接触部31は、軸方向に見て、フランジ部611と重なる。すなわち、カバー3は、樹脂ケーシング2と接触し、軸方向から見た位置がフランジ部と重なるケーシング接触部31を備える。ケーシング接触部31が凹穴21と軸方向を押さえる。これにより、凹穴21とケーシング接触部31とが密着し、ガス、水、塵、埃等の進入が抑制される。
【0028】
次に、樹脂ケーシング2のカバー3への取り付けについて説明する。樹脂ケーシング2は、径方向外周面に圧入部22と、凹部23とを備える。すなわち、樹脂ケーシング2は、カバー3の内部に圧入される圧入部22を備える。
図2に示すように、圧入部22は、樹脂ケーシング2の外周面のステータコア11と径方向に重なる部分に備えられる。すなわち、圧入部22は、樹脂ケーシング2を径方向に見て、ステータコア22と重なる。樹脂ケーシング2は、凹部23が形成された側の端部からカバー3の開口に挿入される。その後、樹脂ケーシング2はカバー3に圧入により固定される。
【0029】
つまり、樹脂ケーシング2は、圧入部22においてカバー3の内周面に圧入される。圧入部22は、ステータコア11と径方向に重なる位置に備えられる。圧入時はカバー3から樹脂ケーシング2に対して、径方向及び軸方向に力が作用する。圧入部22が樹脂ケーシング2の樹脂よりも強度が高いステータコア11と径方向に重なる位置に備えられることで、圧入時にカバー3から力が作用しても、樹脂ケーシング2の変形等が発生しにくい。
【0030】
凹部23は、樹脂ケーシング2の外周面の絶縁体12の渡り線部131が配置される配線部120と径方向に重なる。すなわち、隙間Gpは、配線部120の径方向外方に位置する。(請求項3)また、樹脂ケーシング2の外周面は、間隙Gpと接する部分に凹部23を備える。凹部23は、樹脂ケーシング2の第1方向Op側の端部に設けられており、周方向に連続して形成される。本実施形態では、樹脂ケーシング2の径方向端部に形成されるが、これに限定されない。
【0031】
また、モータAの取り付け場所の条件によって、モータAの内部の空気に含まれる水が結露して結露水が溜まる場合がある。凹部23にも空気が溜まっており、溜まった空気に含まれる水分が結露する場合がある。そこで、樹脂ケーシング2の外周面には、凹部23から第2方向Or側に向かって延びる凹溝200が備えられる。
【0032】
これにより、凹部23に溜まった結露水は、凹溝200を通り、カバー3と、第2軸受収納部材62の間から外部に放出される。なお、例えば、電気回路が絶縁された等で結露水が発生しても影響を受けない又は受けにくい構造の場合、凹溝200は、省略してもよい。凹溝200が省略されていても、結露水はモータAの駆動時の熱で凹部23の空気中に蒸発する。また、樹脂ケーシング2がカバー3に完全に覆われる場合、カバー3又は第2軸受収納部材62に、結露水を排水するための孔を設けておいてもよい。
【0033】
樹脂ケーシング2は、軸方向において、凹部23が設けられる側からカバー3に挿入されて、圧入により固定される。樹脂ケーシング2がカバー3の内部に圧入されたとき、凹部23が形成される部分とカバー3の内面とは、径方向に隙間Gpが形成される。なお、樹脂ケーシング2とカバー3との隙間Gpの詳細については、後述する。
【0034】
また、
図2に示すように、樹脂ケーシング2の凹部23が備えられる部分の径方向の厚みは、樹脂ケーシング2の他の部分の厚みよりも薄い。すなわち、凹部23が設けられる部分は、他の部分よりも厚みが薄い薄肉部24である。渡り線部131に電流が流れて、渡り線部131が加熱される場合がある。このとき、薄肉部24が形成されることで、渡り線部131の熱が樹脂ケーシング2の外部に放出されやすい。
【0035】
<1.4 ロータの構成>
図5は、ロータの斜視図である。
図5に示すように、ロータ4は、ロータコア41と、複数個のマグネット42と、モールド部43とを備える。ロータコア41は、軸方向に延びる筒形状部材411と、筒形状の部材の径方向内側に配される軸支持部材412とを備える。筒状部材411と軸支持部材412とは、樹脂のモールド成形体であるモールド部43で相互に固定される。ロータコア41は、磁性体である。ロータコア41は、磁性板を径方向に積層した積層体であってもよいし、例えば、紛体を焼結して同一の部材として形成した成形体であってもよい。
【0036】
回転軸40は、円柱形状である。回転軸40は、ロータコア41の軸支持部材412の径方向中心部を貫通する。回転軸40と軸支持部材412とは、相対的に固定される。なお、固定方法としては、圧入、溶接等を挙げることができるが、これに限定されない。回転軸40と軸支持部材412とを固定できる方法を広く採用することができる。すなわち、回転軸40は、ロータ4に固定されており、ロータ4が回転することで、回転軸40が中心軸Axを中心として回転する。
【0037】
複数個のマグネット42は、ロータコア41の径方向外側に配置される。本実施形態のロータ4では、複数個のマグネット42を周方向に並べて配置する。例えば、ロータコア41は、8個のマグネット42を備える。なお、本実施形態では、複数個のマグネット42を並べたが、これに限定されない。例えば、円筒形の磁性体に対し、周方向にN極とS極とを交互に着磁させたマグネットを用いてもよい。
【0038】
すなわち、ロータコア41では、N極とS極とを1対の磁極とし、1対の磁極を複数個備える。マグネット42は、例えば、樹脂のモールド等によって、ロータコア41に固定される。なお、マグネット42の固定方法は、樹脂のモールドに限定されず、接着、溶着、機械的な固定方法等、ロータ4の回転に悪影響を与えない又は与えにくい方法が採用される。
【0039】
<1.5 軸受の構成>
回転軸40は、軸方向に離れた2箇所で第1軸受51及び第2軸受52に圧入される。すなわち、回転軸40は、第1軸受51及び第2軸受52によって、軸方向に異なる2箇所で、回転可能に支持される。第2軸受52の内輪には、回転軸40の第2方向Or側の端部が圧入される。第1軸受51の内輪には、回転軸40の第2軸受52に圧入される部分よりも第1方向Op側の部分が圧入される。
【0040】
第1軸受51は、第1軸受収納部材61に収納される。第2軸受52は、第2軸受収納部材62に収納される。詳細は後述するが、第1軸受収納部材61及び第2軸受収納部材62は、直接的又は間接的に樹脂ケーシング2に固定される。このことから、回転軸40は、1対の軸受51、52によって、樹脂ケーシング2(に覆われたステータ1)に回転可能に支持される。
【0041】
回転軸40の第1方向Op側には、軸止め輪401が、第2方向Or側の端部には、軸止め輪402が取り付けられる。軸止め輪401は、第1軸受51と接触する。軸止め輪402は、第2軸受52と接触する。なお、軸止め輪401及び軸止め輪402は、回転軸40の外周面に設けられた溝に嵌って固定される。軸止め輪401は、第1軸受51の内輪の第2方向Or側と接触する。軸止め輪401によって、回転軸40の第1軸受51に対する第1方向Op側への移動が制限される。
【0042】
軸止め輪402は、第2軸受52の内輪の第1方向Op側と接触する。軸止め輪402によって、回転軸40の第2軸受52に対する第2方向Or側への移動が制限される。第1軸受51及び第2軸受52のステータ1に対する軸方向の移動が相対的に制限されており、回転軸40のステータ1に対する軸方向の移動が制限される。なお、軸止め輪401、402は、例えば、一般的にCリング、Eリングと呼ばれる軸用止め輪を採用するが、これに限定されない。1対の軸受51、52のそれぞれの内輪と接触し、回転軸40の移動を制限可能な構成を広く採用することができる。なお、本書における各実施形態では、回転軸40を2個の軸受(第1軸受51及び第2軸受52)で回転可能に支持しているが、これに限定されない。3個以上の軸受で支持してもよい。
【0043】
<1.6 軸受収納部材の構成>
第1軸受収納部材61および第2軸受収納部材62は、ここでは、鉄、真鍮等の金属製である。すなわち、軸受収納部材(61、62)は、導電性を有する。
【0044】
<1.6.1 第1軸受収納部材>
第1軸受収納部材61は、内部に第1軸受51が収納可能な筒形状を有する。第1軸受収納部材61の軸方向一方側の端部は、径方向中心部分に軸方向に貫通する端面部610を備える。また、第1軸受収納部材61の軸方向他方側の端部は、径方向外側に延びるフランジ部611を備える。フランジ部611の少なくとも一部が、樹脂ケーシング2にインサート成形される。なお、フランジ部611には、軸方向に貫通する貫通部分が設けられていてもよい。インサート成形時に貫通部分に樹脂が充填されることで、第1軸受収納部材61の周方向の移動が制限され、回り止めとなる。
【0045】
なお、樹脂によって回り止めが確実に行われるものであれば、貫通部分は孔に限定されず、例えば、径方向内側に凹む凹部や、径方向外側に突出した凸部であってもよい。また、フランジ部611自体を、多角形(例えば、三角形、四角形)等の形状としたり、楕円形にすることで、回り止めを行うようにしてもよい。第1軸受収納部材61は、中心軸を樹脂ケーシング2に覆われたステータ1の中心軸Axと一致させて、樹脂ケーシング2に固定される。第1軸受収納部材61の内部に第1軸受51の外輪が圧入される。
【0046】
モータAにおいて、第1軸受収納部材61は、フランジ部611の一部が樹脂ケーシング2によって封止される樹脂封止軸受収納部材である。すなわち、複数の軸受収納部材(第1軸受収納部材61及び第2軸受収納部材62)のうち少なくとも一つ(第1軸受収納部材61)は、樹脂ケーシング2によって封止される樹脂封止軸受収納部材である。そして、樹脂封止軸受収納部材(第1軸受収納部材61)は、径方向に延びるフランジ部611を備える。フランジ部611の一部は、前記樹脂ケーシングに封止される。
【0047】
<1.6.2 第2軸受収納部材>
図2に示すように、第2軸受収納部材62は、第2軸受52を保持する。第2軸受収納部材62は、収納部621と、外筒部620とを有する。収納部621は、筒形状であり、内部に第2軸受52を収納する。収納部621の内部に第2軸受52の外輪が圧入される。
【0048】
外筒部620は、収納部621よりも大径であり、外筒部620は、内部に樹脂ケーシング2の第2方向Or側の端部が圧入される。すなわち、第2軸受52を収納部621に圧入した後、第2軸受収納部材62の外筒部620の内部に樹脂ケーシング2の第2方向Or側の端部が圧入される。そして、第2軸受収納部材62に樹脂ケーシング2が圧入されることで、樹脂ケーシング2に覆われたステータ1に対して、第2軸受62が固定される。第2軸受52の外輪がステータ1に対して固定され、第2軸受52の中心軸が、ステータ1の中心軸Axと一致する。
【0049】
図2に示すように、収納部621と外筒部620とは、同一の部材で形成される。なお、ここでは、第2軸受収納部材62は、金属板を絞り加工して製造する。しかしながら、これに限定されない。また、
図2に示すように、第2軸受収納部材62とカバー3とは離間する。すなわち、第2軸受収納部材62は、カバー3と電気的に絶縁される。
【0050】
<1.7 導電部材>
【0051】
モータAにおいて、導電部材8は導電性を有する。
図2に示すように、導電部材8はリード線部80と、導電接続部81とを備える。リード線部80は、導線を含む。リード線部80は、樹脂ケーシング2の外周面に形成された溝201の内部に配置される。リード線部80は、導線の外周を絶縁性の被覆で覆われる。これにより、リード線部80はカバー3と電気的に絶縁される。なお、本実施形態では、樹脂ケーシング2の外周面に形成した溝201にリード線部80を配置するが、これに限定されない。ステータ1、第1軸受収納部材61を樹脂モールドして樹脂ケーシング2を作るときに、リード線部80の溝201に配置される部分を一緒にインサートしてモールドしてもよい。
【0052】
リード線部80の両端には、第1端子801及び第2端子802が取り付けられる。第1端子801及び第2端子802は、リード線の端部に取り付けられる導電性を有する端子であり、例えば、平形端子を挙げることができる。第1端子801は、第1軸受収納部材61のフランジ部611と電気的に導通される。また、第2端子802は、第2軸受収納部材62の外筒部620と電気的導通される。すなわち、軸受収納部材(第1軸受収納部材61及び第2軸受収納部材62)のそれぞれは、導電部材8により電気的に導通される。
【0053】
第1端子801は、ケーシング接触部31の貫通部310と軸方向から見て重なる位置に配置される。そして、第1端子801は、第1軸受収納部材61のフランジ部611と電気的に導通する。導電接続部81は、ボルトナットを含む。導電接続部81は、第1端子801とフランジ部611とを貫通するとともに、固定する。これにより、第1端子801は、フランジ部611に固定される。導電接続部81は、カバー3のケーシング接触部31の貫通部310と軸方向から見て重なる。すなわち、導電接続部81は、貫通部310に位置する(請求項7)。これにより、導電接続部81は、ケーシング接触部31と電気的に絶縁される。すなわち、カバー3は、導電部材8と電気的に絶縁される。
【0054】
なお、導電接続部81は、ねじを用いた構造に限定されない。例えば、第1端子801とフランジ部611とを半田付け、導電性を有する接着剤を用いた接着等で固定してもよい。さらには、第1端子801とフランジ部611とは、電気的に導通である、すなわち、接触していれば、固定されていなくてもよい。導電接続部81としては、フランジ部611と第1端子801とを電気的に導通させるとともに、カバー3と絶縁される構成を広く採用できる。また、第1端子801は、フランジ部611と電気的に導通になればよい。そのため、第1端子801は、接続のための端子(例えば、平形端子等)を取り付ける構成に限定されず、リード線部80の端部を纏めた構成等であってもよい。
【0055】
第2端子802は、第2軸受収納部材62と樹脂ケーシング2との間に挟まれる。これにより、第2端子802は、第2軸受収納部材62と電気的に導通される。第2端子802は、樹脂ケーシング2の第2方向Or側の端部を第2軸受収納部材62の外筒部620に圧入するとき、樹脂ケーシング2の第2方向Or側の端部と第2軸受収納部材62の外筒部620とに挟まれる。すなわち、第2端子802は樹脂ケーシング2と外筒部620とに圧入時の力で挟まれる。そのため、第2端子802は、第2軸受収納部材62と電気的に導通される。
【0056】
図2に示すとおり、第1軸受収納部材61とカバー3とは、電気的に絶縁される。また、第2軸受収納部材62とカバー3とは、電気的に絶縁される。すなわち、カバー3と軸受収納部材(61、62)とが電気的に絶縁である。このことから、第1軸受収納部材61及び第2軸受収納部材62と導電部材8とは、電気的に絶縁される。すなわち、軸受(51、52)と導電部材8とは、電気的に絶縁である。
【0057】
引用文献のような従来のモータでは、第1軸受51の外輪と内輪、又は、第2軸受52の外輪と内輪との間に電位差が発生すると、第1軸受51及び第2軸受52の外輪とボール、内輪とボールの間で放電(スパーク)が発生する場合がある。放電の発生によって、軸受の外輪、ボール、内輪の表面が損傷する、いわゆる、軸受の電食が発生する。第1軸受51及び第2軸受52の電食は、モータAの振動や騒音の原因になる。電食の原因としては、モータAを駆動するインバータ回路に含まれるスイッチング素子を高周波高電圧で駆動することが挙げられる。また、これ以外の要因として、ステータコア、ロータコアの電位状態等も挙げられる。
【0058】
そこで、本実施形態にかかるモータAでは、軸受の電食を抑制するため、導電部材8が、第1軸受収納部材61と第2軸受収納部材62とを電気的に導通させる。これにより、第1軸受51の外輪と、第2軸受52の外輪とが、電気的に導通されることで、第1第1軸受と第2軸受の内輪と外輪の電位差を小さくなり、モータAの軸受(51、52)の電食の発生を抑えることができる。
【0059】
モータAを取付対象の装置に取り付けたとき、モータAのカバー3は装置のフレームと接触する。一般的な装置のフレームは、装置内で予め決められた基準電圧に調整されており、カバー3も基準電圧に調整される。しかしながら、基準電圧は、装置に備えられたモータA或いはモータAと異なる装置の駆動によって変動する場合がある。すなわち、カバー3は導電部材8と電気的に絶縁される。また、軸受収納部材(第1軸受収納部材61及び第2軸受収納部材62)のそれぞれは、導電部材8により電気的に導通される。そして、第1軸受収納部材61及び第2軸受収納部材62の少なくとも一方が、フレームと電気的に導通されると、第1軸受51の外輪及び第2軸受52の外輪も、変動する、換言すると、不安定な基準電圧と同電位となり、条件によっては、軸受電食の発生を招く虞がある。
【0060】
モータAでは、第1軸受51の外輪と電気的に導通の第1軸受収納部材61及び第2軸受52の外輪と電気的に導通の第2軸受収納部材62と、カバー3とを絶縁する。これにより、第1軸受51及び第2軸受52が、装置の基準電圧に調整されるのを抑制し、基準電圧のばらつきによる電食の発生が抑えられる。
【0061】
モータAでは、軸受電食の発生を抑制することで、第1軸受51および第2軸受52が長期間にわたって、精度よく回転することができる。これにより、モールドモータAの長期間にわたる安定した動作が可能となる。つまり、モールドモータAの長寿命化が可能である。
【0062】
<1.8 その他の構成部>
図2に示すように、モータAでは、カバー3の第2方向Or側が、第2軸受収納部材62の外筒部620に圧入される。そのため、外筒部620とカバー圧入部300の隙間からの水、埃、塵等の異物の進入が抑制される。一方で、モータAの第1方向Op側は、回転軸40が第1軸受収納部61の端面部610に軸受収納部孔を備える。この軸受収納部孔は、回転軸40の回転を邪魔しないために、回転軸40との間に隙間が形成される大きさである。このすきまから、水、塵、埃等の異物がモータAの内部に浸入しやすい。そこで、モータAには、第1軸受収納部材61からの異物の進入を抑制するための軸受側侵入防止部材71およびシャフト側侵入防止部材72を備える。
【0063】
図2に示すように、軸受側侵入防止部材71は、第1軸受収納部材61の外面を覆う。そして、回転軸40の外側を囲むとともに径方向に延びる。なお、軸受側侵入防止部材71は、例えば、ゴム等の材料で形成されており、第1軸受収納部材61に密着する。また、軸受側侵入防止部材71は、回転軸40との間に隙間を有して、すなわち、非接触を維持して取り付けられる。
【0064】
また、シャフト側侵入防止部材72は、回転軸40に備えられた溝400内に配置される。すなわち、出力軸40には、軸受収納部61を覆う軸受カバー72が取り付けられる。これにより、シャフト側侵入防止部材72の軸方向の移動が制限される。シャフト側侵入防止部材72は、軸方向に沿って延びる筒状である。軸受側侵入防止部材71の径方向外側を囲んで配置される。軸受側侵入防止部材71とシャフト側侵入防止部材72との間の空間を小さくすることで、異物のモータAへの進入が抑制される。すなわち、軸受側侵入防止部材71とシャフト側侵入防止部材72とは同時にモータAに取り付けることで、モータAの内部への異物の進入を抑制する役割を果たす。
【0065】
シャフト側侵入防止部材72の第2方向Or側の先端の一部は、凹穴21と重なる。また、カバー3のケーシング接触部31も凹穴21に備えられるが、シャフト側侵入防止部材72は、ケーシング接触部31と非接触状態で回転軸40に固定される。すなわち、シャフト側侵入防止部材72の開口の一部が、凹穴21内に配置される。そして、ケーシング接触部31とシャフト側侵入防止部材72とが非接触であるため、回転軸40が回転を制限しない。
【0066】
また、樹脂ケーシング2のステータ1よりも第2方向Or側には、基板Bdと、保護シートIsとが備えられる。基板Bdは、複数個の巻線13に供給する電流のタイミング、電流の大きさ等を制御する制御回路(不図示)が実装される。なお、制御回路がモータAの外部に設けられる場合もあり、その場合には、基板Bdを省略してもよい。保護シートIsは、基板Bdと第2軸受収納部材62との間に配置される絶縁部材である。第2軸受収納部材62と基板Bdとのショートを防ぐために備えられる。基板Bdを備えないモータの場合、保護シートIsを省略してもよい。
【0067】
<1.9 モータの動作>
以上示したモータAの動作について説明する。モータAの駆動時において、巻線13には、電流が供給される。このとき、電流によって巻線13が発熱する。このとき、巻線13と共にステータコア11も加熱される。ステータコア11及び巻線13は、樹脂ケーシング2に覆われる。ステータコア11及び巻線の熱は、樹脂ケーシング2に伝達される。
【0068】
樹脂ケーシング2の熱はカバー3に伝達する。カバー3は、主に金属製の材料が用いられ、樹脂ケーシング2よりも、線膨張係数が小さい。これにより、樹脂ケーシング2とカバー3の熱膨張による変形量の差が発生する。ただし、樹脂ケーシング2の圧入部22において、樹脂ケーシング2とカバー3とが圧入されている。そのため、樹脂ケーシング2の熱がカバー3に伝達され放熱されるため、圧入部22においては、樹脂ケーシング2の熱膨張は抑えられる。
【0069】
樹脂ケーシング2において、圧入部22から軸方向にずれた部分では、絶縁体12を樹脂ケーシング2で封止している。絶縁体12は樹脂であり、絶縁体12の線膨張係数は、ステータコア11よりも大きい。そのため、樹脂ケーシング2のステータコア11と径方向に重ならない部分は、ステータコア11と径方向に重なる圧入部22に比べて、熱膨張による径方向外側への変形はより大きい。また、ステータコア11からカバー3の距離がより離れているため、圧入部22よりも放熱性が劣る。よって、絶縁体12とカバー3の熱膨張による変形量の差による、樹脂ケーシング2のひずみ、ずれ等の不具合が発生する。
【0070】
なお、樹脂ケーシング2のカバー3の開口側(
図2において、第2方向Or側)は、樹脂ケーシング2の熱膨張による変形が開口側に逃げる。一方で、カバー3の奥側(
図2において、第1方向Op側)は、熱膨張による変形を逃がす場所がない。そのため、モータAでは、絶縁体12の径方向外方に、カバー3と樹脂ケーシング2との間に隙間Gpが備えられる。
【0071】
これにより、樹脂ケーシング2のステータコア11と軸方向にずれた位置(特に、圧入方向における奥側)における樹脂ケーシング2とカバー3の変形量の差が、隙間Gpに吸収される。これにより、樹脂ケーシング2とカバー3の熱膨張による変形量の差による、樹脂ケーシング2のひずみ、ずれ等の不具合を抑制できる。
【0072】
本実施形態のモータAによれば、樹脂ケーシング2をカバー3で覆うことで、内部に配されるステータ1やロータ4、第1軸受51、第2軸受52等は外部からの作用する衝撃や振動から保護される。また、第1軸受収納部材61と第2軸受収納部材62とを、電気的に導通させる。そして、第1軸受収納部材61及び第2軸受収納部材62と外部装置と電気的に接触する可能性があるカバー3とを電気的に絶縁とすることで、第1軸受51及び第2軸受52に対する、外部装置の電圧(例えば、接地点の基準電圧)の変動の影響が及びにくい。これにより、電圧の変動による第1軸受51及び第2軸受52の軸受電食を抑制できる。すなわち、モータAでは、取り付けられる装置に関係なく、第1軸受51及び第2軸受52の電食を抑制できる。
【0073】
<1.10 変形例>
<1.10.1 変形例1>
本実施形態に示すモータの変形例について図面を参照して説明する。
図6は、本実施形態にかかるモータの変形例の樹脂ケーシング及びカバーを示す部分断面図である。
図6に示すモータA1は、樹脂ケーシング2a1及びカバー3a1が異なる以外、
図2に示す、モータAと同じ構成を有する。そのため、実質上同じ部分には、同じ符号を付すとともに、同じ部分の詳細な説明は省略する。
【0074】
図6に示すモータA1では、樹脂ケーシング2a1の外周面が圧入方向の奥側、すなわち、
図6における第1方向Op側に向かって、漸次小径になる。すなわち、樹脂ケーシング2a1の外周面を、圧入方向の奥側が小径になる傾斜面(テーパ面)とする。そして、カバー3a1は、樹脂ケーシング2a1が挿入可能な形状を備える。カバー3a1は筒状であり、少なくとも内周面の圧入方向の奥側、すなわち、
図6における第1方向Op側に向かって、漸次小径になる。すなわち、カバー3a1の内径は、樹脂ケーシング2a1の圧入方向に向かって漸次的に小さくなる。樹脂ケーシング2a1及びカバー3a1の形状を変更することで、挿入が容易になる。また、圧入部221が傾斜面であるため、圧入時の樹脂ケーシング2a1の変形量を小さくできる。これにより、ステータ1のひずみ等の発生を抑制しやすい。
【0075】
そして、樹脂ケーシング2a1の外周面には、傾斜面に沿って軸方向に延びる、溝2011が形成される。溝2011に導電部材8のリード線部80が配置される。
【0076】
<1.10.2 変形例2>
本実施形態に示すモータの変形例について図面を参照して説明する。
図7は、本実施形態にかかるモータの他の変形例の樹脂ケーシング及びカバーを示す部分断面図である。
図7に示すモータA2は、樹脂ケーシング2a2及びカバー3a2が異なる以外、
図2に示す、モータAと同じ構成を有する。そのため、実質上同じ部分には、同じ符号を付すとともに、同じ部分の詳細な説明は省略する。
【0077】
図7に示すモータA2では、樹脂ケーシング2a2の外周面が圧入方向の奥側、すなわち、
図7における第1方向Op側に向かって、段階的に小径になる。すなわち、樹脂ケーシング2a2の外周面は、異なる複数の外形を有する。そして、樹脂ケーシング2a2の外周面は、圧入方向の奥側が小径であり、外形が変化する部分に段差が形成される。そして、カバー3a2は、樹脂ケーシング2a2が挿入可能な形状を備える。カバー3a2は筒状であり、少なくとも内周面の圧入方向の奥側、すなわち、
図7における第1方向Op側が、段階的に小径になる。すなわち、カバー3a2の内径は、樹脂ケーシング2a2の圧入方向に向かって段階的に小さくなる。
【0078】
樹脂ケーシング2a2及びカバー3a2の形状を備えることで、挿入が容易になる。また、樹脂ケーシング2a2の段差と、カバー3a2の段差とを接触させて、樹脂ケーシング2a2をカバー3a2に挿入するときの位置決めとすることが可能である。さらに、樹脂ケーシング2a2の圧入部222が、カバー3a2の圧入される部分に接触して圧入が開始される。これにより、圧入で作用する力を減らすことができる。圧入時の樹脂ケーシング2a2の変形量を小さくできる。これにより、ステータ1のひずみ等の発生を抑制しやすい。
【0079】
そして、樹脂ケーシング2a2の外周面には、各段に軸方向に延びる、溝2012が形成される。各段の溝2012は、連続した溝である。そして、溝2012に導電部材8のリード線部80が配置される。
【0080】
<第2実施形態>
本発明にかかるモータの他の例について図面を参照して説明する。
図8は、本発明にかかるモータの他の例の分解斜視図である。
図9は、
図8に示すモータの断面図である。
図8及び
図9に示すように、モータBは樹脂ケーシング2b及びカバー3bが異なる以外、第1実施形態のモータAと同じ構成を有する。そのため、モータBの構成に関して、モータAと実質的に同じ部分には、同じ符号を付すとともに、詳細な説明を省略する。
【0081】
図8、
図9に示すように、樹脂ケーシング2bは、凹部23から径方向外側に突出する突出部231と、外周面から径方向外側に延びる段部25とを備える。
図8に示すように、樹脂ケーシング2bの外周面には、第1方向Op側の端部に、径方向に凹むとともに、周方向に連続した凹部23を備える。そして、凹部23の周方向の一箇所には、径方向外側に突出した突出部231を備える。突出部231は、凹部23から突出するが、径方向外側の曲面は、樹脂ケーシング2bの外周面と一致する。そして、導電部材8のリード線部80が配置される溝201の一部が、突出部231に形成される。このように、突出部231を設け、溝201の一部を形成することで、軸方向において、溝201の外周面からの深さを一定にすることができる。これにより、リード線部80が、溝201からずれにくい。すなわち、凹部23の一部分において径方向に突出した突出部231を有し、導電部材8が突出部231に配置される。
【0082】
また、凹部23では、リード線部80がたるみやすい。リード線部80がたるむと、樹脂ケーシング2bをカバー3bに圧入するとき、リード線部80が圧入部22とカバー3bとの間に挟まる。これにより、リード線部80が断線することがある。すなわち、第1軸受収納部材61と第2軸受収納部材62とが、電気的に導通でなくなる虞がある。また、リード線部80の切断端がカバー3bと短絡されて第1軸受収納部材61及び第2軸受収納部材62がカバー3bと電気的に導通になる虞がある。突出部231を設けることで、リード線部80の溝201からのずれを抑制し、リード線部80の切断及びカバー3bとの短絡を抑制できる。
【0083】
段部25は、樹脂ケーシング2bに複数個(ここでは、4個)備えられる。段部25は、樹脂ケーシング2bは軸方向に同じ位置で、周方向に等間隔に並んでいる。そして、カバー3bは、外周面から外側に突出した当接部311を備える。当接部311は、樹脂ケーシング2bをカバー3bに圧入したとき、当接部311が段部25と接触する。当接部311は、段部25の圧入方向(
図9において、第1方向Op側)の面と接触する。
【0084】
また、本実施形態のモータBでは、第2軸受収納部材62の外筒部620には、樹脂ケーシング2bが直接圧入される。そして、リード線部80は、周方向に隣り合う段部25同士の間に形成された溝201に配置される。そして、リード線部80は、樹脂ケーシング2bの第2方向Or側の端部まで伸び、第2端子802を介して、第2軸受収納部材62の外筒部620と電気的に導通される。なお、第2端子802は、リード線部80と導通であるとともに、外筒部620と、外筒部620に圧入される樹脂ケーシング2bとに挟まれる。
【0085】
この段部25は、モータBを機器に取り付けるための取付用の凸部である。そのため、段部25には、ねじ等の固定具が貫通する。そして、樹脂ケーシング2bと同一の部材で形成された段部25と接触する当接部311を樹脂ケーシング2bよりも強度が高いカバー3bと同一の部材で形成される。これにより、モータBを強固に固定することが可能である。また、振動や衝撃等が作用しても、モータBが脱落しにくくなる。なお、段部25の個数及び位置は、上述に限定されるものではなく、モータBが取り付けられる装置の取り付け箇所(不図示)の形状及び位置等によって、変更される。
【0086】
本実施形態のモータBによると、凹部23に突出部231を備えることで、導電部材8のリード線部80がずれにくい。これにより、第1軸受収納部材61と第2軸受収納部材62とを電気的に導通することができる。また、カバー3bが、第1軸受収納部材61及び第2軸受収納部材62と電気的に絶縁であるため、段部25及び当接部311を取付対象の装置に固定しても、取付対象の装置と第1軸受収納部材61及び第2軸受収納部材62とが絶縁される。これにより、取付対象の装置の電圧(例えば、基準電圧)が変動しても、電圧の変動が、第1軸受収納部材61及び第2軸受収納部材62に影響しにくい。これにより、第1軸受51及び第2軸受52の電食を抑制できる。すなわち、モータBでは、取り付けられる装置に関係なく、第1軸受51及び第2軸受52の電食を抑制できる。
【0087】
これ以外の特徴については、第1実施形態と同じである。
【0088】
<2.1 変形例>
本実施形態にかかるモータの変形例について、図面を参照して説明する。
図10は、第2実施形態にかかるモータの変形例の断面図である。
図10に示すモータB1は、樹脂ケーシング2bの外周面に形成された溝201に替えて、内部に形成され軸方向に延びる孔202を備える。これ以外の部分は、
図8、
図9に示すモータBと同じ構成を有する。そのため、モータB1の構成において、モータBと実質上同じ部分には、同じ符号を付すとともに、詳細な説明は省略する。
【0089】
図10に示すように、モータB1では、樹脂ケーシング2bに軸方向に延びる孔202を備える。そして、孔202に、導電部材8が配置される。絶縁性を有する樹脂ケーシング2bの内部に形成された孔202に導電部材8が取り付けられるため、導電部材8のリード線部80は、被覆で覆われなくても、カバー3と絶縁される。すなわち、導電部材8の構成部品を減らす、或いは、導電部材8として選択可能な部材が増える。これにより、モータB1のコストを低く抑えることが可能である。なお、本実施形態では、溝201と対比するため、孔202にリード線部80を配置するがこれに限定されない。例えば、ステータ1、第1軸受収納部材61を樹脂モールドして樹脂ケーシング2bを制作するときに、導電部材8も一緒にインサートしてモールドしてもよい。このようにすることで、製造工程も簡略化することができる。
【0090】
<3.第3実施形態>
図11は、本発明にかかるモータのさらに他の例の断面図である。
図11に示すモータCでは、ステータ1c及び樹脂ケーシング2cが異なるが、それ以外の部分については、第1実施形態のモータAと同じである。そのため、モータCの構成において、モータAと実質上同じ部分には、同じ符号を付すとともに、同じ部分の詳細な説明を省略する。
【0091】
図11に示すように、モータCのステータ1cでは、絶縁体12の第1方向Op側の端部に、絶縁体コアバック部122を有する。そして、絶縁体コアバック部122に、渡り線部131が配置される配線部120cを備える。そして、樹脂ケーシング2cの配線部120cと軸方向に重なる位置に、凹部23cが形成される。そして、凹部23cと軸方向に重なるカバー3cの間に隙間Gpが備えられる。すなわち、モータCでは、絶縁体12の軸方向一方側において、一部にカバー3cと樹脂ケーシング2cとの間に隙間が備えられる。隙間Gpは、配線部120cの軸方向一方側(第1方向Op側)に位置する。また、凹部23cの部分が薄肉部24cである。
【0092】
樹脂ケーシング2cの圧入部22は、外周面に備えられる。そのため、カバー3cに樹脂ケーシング2cを圧入するとき、樹脂ケーシング2cの外周面に圧入時の力が作用する。モータCでは、凹部23cを軸方向の第1方向Op側の端部に備えることで、圧入時の力が凹部23cに集中しにくい。これにより、カバー3cの樹脂ケーシング2cに対するずれも抑制される。また、凹部が軸方向の端部に設けられるため、樹脂ケーシング2cの外周面に形成された溝201では、導電部材8のリード線部80がずれにくい。これにより、圧入時にリード線部80が、樹脂ケーシング2cとカバー3cとに挟まれて、断線したり、カバー3cと短絡されたりしにくい。これにより、第1軸受51と第2軸受52との電食の発生を抑える効果が高くなる。すなわち、モータCでは、取り付けられる装置に関係なく、第1軸受51及び第2軸受52の電食を抑制できる。
【0093】
これ以外の特徴については、第1実施形態と同じである。
【0094】
<4.第4実施形態>
本発明にかかるさらに他の例について図面を参照して説明する。
図12は、本発明にかかるモータのさらに他の例の断面図である。本実施形態のモータDでは、カバーが異なる以外、第1実施形態のモータAと同じ構成を有する。そのため、モータDの構成において、モータAの構成と実質上同じ部分には、同じ符号を付し、同じ部分の詳細な説明は省略する。
【0095】
<4.1 カバー>
図12に示すように、モータDのカバーは、第1カバー部材3daと、第2カバー部材3dbとを備える。すなわち、カバーは、軸方向における一方側(第1方向Op側)から樹脂ケーシング2を覆う第1カバー部材3daと、軸方向における他方側(第2方向Or側)から樹脂ケーシング2を覆う第2カバー部材3dbと、を備える。第1カバー部材3daには、樹脂ケーシング2の第1方向Op側が圧入される。また、第2カバー部材3dbには、樹脂ケーシング2の第2方向Or側が挿入される。なお、本実施形態のモータDにおいて、樹脂ケーシング2は、第1方向Op側が、第1カバー部材3daに圧入されるがこれに限定されない。例えば、樹脂ケーシング2の第2方向Or側が、第2カバー部材3dbに圧入されてもよい。また、両方が圧入されてもよい。第1カバー部材3da及び第2カバー部材3dbのいずれのカバー部材に樹脂ケーシング2が圧入されるかは、樹脂ケーシング2の圧入部22の位置によって決定される。
【0096】
<4.2 第1カバー部材>
図12に示すように、第1カバー部材3daは、第1方向Op側の端部の少なくとも一部が閉じられた有底円筒形状である。そして、第1カバー部材3daは、第2方向Or側の端部に、径方向外側に延びる第1フランジ32を備える。すなわち、第1カバー部材3daは、外周面から径方向外側に延びる第1フランジ32を有する。第1フランジ32は、軸方向に見て四角形(例えば、正方形)である。なお、第1フランジ32は、モータDが取り付けられる装置(不図示)の取り付け箇所に取り付け可能な形状が採用される。
【0097】
<4.3 第2カバー部材>
図12に示すように、第2カバー部材3dbは軸方向に延びる筒状の部材である。第2カバー部材3dbは、第1方向Op側の端部に、径方向外側に延びる第2フランジ33を備える。すなわち、第2カバー部材3dbは、外周面から径方向外側に延びる第2フランジ33を有する。第2フランジ33は、軸方向に見て四角形(例えば、正方形)である。第2フランジ33は、第1フランジ32と軸方向に重なる形状を有する。
【0098】
樹脂ケーシング2は、第2カバー部材3dbを第1方向Op側から第2方向Or側に貫通する。そして、樹脂ケーシング2の第2カバー部材3dbの第2方向Or側の端部から軸方向に突出した部分は、第2軸受収納部材62の外筒部620の内部に圧入される。
【0099】
<4.4 モータの組み立て>
樹脂ケーシング2は、溝201に導電部材8を配置した後、第1方向Op側から第1カバー部材3daに挿入され、圧入部22が第1カバー部材3daに圧入される。第1軸受収納部材61は、第1カバー部材3daのカバー孔30を貫通する。このとき、第1軸受収納部材61とカバー孔30の辺縁部とは非接触である、つまり、第1軸受収納部材61と第1カバー部材3daとは、電気的に絶縁である。
【0100】
一方、第2カバー部材3dbは、樹脂ケーシング2の外周面を覆う。そして、第2カバー部材3dbを軸方向に移動させることで、第2フランジ33が第1カバー部材3daの第1フランジ32と接触する。
【0101】
第1フランジ32及び第2フランジ33は、第1カバー部材3daと第2カバー部材3dbとを相互に固定する。そのため、第1フランジ32及び第2フランジ33には、固定具(ここでは、ねじ)が貫通するねじ固定孔が備えられる。そして、第1フランジ32及び第2フランジ33を相互に固定することで、第1カバー部材3da及び第2カバー部材3dbが相互に固定される。すなわち、第1カバー部材3da及び第2カバー部材3dbは樹脂ケーシング2を覆ったとき、第1フランジ32と第2フランジ33とが直接的又は間接的に接続される。
【0102】
樹脂ケーシング2が第1カバー部材3daに圧入され、第2カバー部材3dbが第1カバー部材3daの第1フランジ32に第2フランジ33を介して固定される。このとき、樹脂ケーシング2の第2方向Or側の端部は、第2カバー部材3dbから第2方向Or側に突出する。樹脂ケーシング2の第2方向Or側の端部は、第2軸受収納部材62の外筒部620に圧入される。このとき、外筒部620と樹脂ケーシング2との間に、第2端子802が挟まれる。また、外筒部620と第2カバー部材3dbとは、離れた、すなわち、電気的に絶縁である。
【0103】
このように、第1カバー部材3daと第2カバー部材3dbとで樹脂ケーシング2を覆うことで、圧入部22が圧入される長さがを短くすることが可能である。これにより、樹脂ケーシング2やカバーに作用する力を減らし、樹脂ケーシング2やカバーのひずみ、ずれ等の変形を抑制できる。さらに、このことから、ステータ1とロータ4を正確に位置合わせ可能であり、モータDの能力低下を抑制できる。また、圧入部22が圧入される長さを短くすることで、導電部材8のリード線部80が第1カバー部材3daと樹脂ケーシング2との間に挟まれにくい。これにより、導電部材8が断線したり、第1カバー部材3da及び第2カバー部材3dbの少なくとも一方と短絡したりするのを抑制できる。このことから、第1軸受51と第2軸受52とを外部の装置の電圧(例えば、基準電圧)と絶縁した状態で、第1軸受51と第2軸受52とを電気的に導通し、軸受電食を抑制できる。すなわち、モータDでは、取り付けられる装置に関係なく、第1軸受51及び第2軸受52の電食を抑制できる。
【0104】
モータDでは、第1カバー部材3daと第2カバー部材3dbとは、直接接触する。そして、第1カバー部材3daと通電部材8とが電気的に絶縁される。これにより、第2カバー部材3dbと通電部材8とが電気的に絶縁される。これにより、カバー(第1カバー部材3da及び第2カバー部材3db)と通電部材8とが、電気的に絶縁される。
【0105】
<5.第5実施形態>
本発明にかかるさらに他の例について図面を参照して説明する。
図13、本発明にかかるモータのさらに他の例の断面図である。本実施形態のモータEでは、樹脂ケーシング2e、第1カバー部材3ea及び第2カバー部材3ebが異なる以外、第4実施形態のモータDと同じ構成を有する。そのため、モータEの構成において、モータDの構成と実質上同じ部分には、同じ符号を付し、同じ部分の詳細な説明は省略する。また、モータEでは、第1軸受51を、モータAと同様の構成の第1軸受収納部材61に収納する。
【0106】
図13に示すように、モータEの樹脂ケーシング2eは、外周面の圧入部22よりも第2方向Or寄りの部分から、径方向外側に突出した、段部25eを備える。なお、段部25eは、
図8、
図9に示すモータBが備える段部25と軸方向の位置が異なるが、同様の形状を有し及び同様の目的で備えられる。すなわち、段部25eは樹脂ケーシング2eに4個備えられ、周方向に等間隔に配列される。また、樹脂ケーシング2eの第1方向Op側の端部には、第1軸受収納部材61が固定される。なお、第1軸受収納部材61の固定方法は、モータAの樹脂ケーシング2と同じであり、詳細は省略する。
【0107】
第1カバー部材3eaは、第1方向Op側の端部が閉じられた有底円筒形状である。そして、底部には、カバー3と同様に、ケーシング接触部31と、導電部312とを備える。また、第1カバー部材3eaは、第1カバー部材3daと同様の構成を有する第1フランジ32を備える。
【0108】
第2カバー部材3ebは軸方向に延びる筒状の部材である。第2カバー部材3ebと第2軸受収納部材62dとが同一の部材で形成される。なお、第2カバー部材3ebの第2方向Or側の端部に第2軸受収納部材62dが連続して形成される。また、第2カバー部材3ebは、第1方向Op側の端部に、径方向外側に延びる第2フランジ33eと、当接部35eとを備える。第2フランジ33eは、第2カバー部材3ebを樹脂ケーシング2eの第2方向Or側からかぶせたとき、第1カバー部材3eaの第1フランジ32と接触する位置に設けられる。また、当接部35eは、第2カバー部材3ebを樹脂ケーシング2eの第2方向Or側からかぶせたとき、段部25eの第2方向Or側の面と接触する位置に設けられる。
【0109】
図15に示すように、第2カバー部材3ebにおいて、第2フランジ33eは、当接部35eよりも第1方向Op側に備えられる。そして、第2フランジ33eと当接部35eとは、周方向に交互に配置される。
【0110】
第1カバー部材3daに樹脂ケーシング2を圧入すると、第1フランジ32が段部25eの第1方向Op側の面と接触する。そして、樹脂ケーシング2eの第2方向Or側を第2カバー部材3ebが覆う。このとき、第2カバー部材3ebの当接部35eが、樹脂ケーシング2eの段部25eの第2方向Or側の端面と接触し、第2フランジ33eが、第1フランジ32と接触する。
【0111】
このように、樹脂ケーシング2eが段部25eを備えることで、第1カバー部材3eaへの圧入時の軸方向の位置決めが容易になる。同様に、第2カバー部材3ebの樹脂ケーシング2eに対する軸方向の位置決めが容易になる。例えば、モータEは使用期間が延びると、樹脂ケーシング2eを構成する樹脂の経年変化によって圧入部22の外径が小さくなる場合がある。このとき、圧入による、樹脂ケーシング2eの第1カバー部材2daに対する固定が弱くなる。モータEの場合、取付位置に、第1フランジ32と当接部35eと共に段部25eも固定される。そのため、圧入による固定が弱くなっても、樹脂ケーシング2eの移動が制限される。これにより、長期間の使用であってもモータEの能力低下を抑制できる。
【0112】
モータEでは、第1フランジ32と第2フランジ33eとが直接接触する。そして、第1カバー部材3eaは、第1軸受収納部材61と電気的に絶縁される。また、第2カバー部材3ebは、第2軸受収納部材62と電気的に絶縁される。そして、第1軸受収納部材61と第2軸受収納部材62とは、第1カバー部材3ea及び第2カバー部材3ebと電気的に絶縁された導電部材8にて、電気的に導通される。これにより、第1軸受収納部材61と第2軸受収納部材62とは、電気的に導通であるとともに、第1カバー部材3ea及び第2カバー部材3ebと電気的に絶縁される。これにより、モータEは、取り付けられる装置の基準電圧(フレームグランドの電圧)の変動があっても、その電圧の変動による、第1軸受51及び第2軸受52の電食は抑えられる。すなわち、モータEでは、取り付けられる装置に関係なく、第1軸受51及び第2軸受52の電食を抑制できる。
【0113】
その他の特徴については、第4実施形態と同じである。
【0114】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨の範囲内であれば、実施形態は種々の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明は、空気調和機、扇風機等を駆動するモータとして用いることができる。
【符号の説明】
【0116】
A・・・モータ、A1・・・モータ、A2・・・モータ、B・・・モータ、B1・・・モータ、C・・・モータ、D・・・モータ、E・・・モータ、1・・・ステータ、11・・・ステータコア、111・・・コアバック部、112・・・ティース部、12・・・絶縁体、120・・・配線部、121・・・絶縁体ティース部、122・・・絶縁体コアバック部、13・・・巻線、130・・・渡り線部、2・・・樹脂ケーシング、20・・・樹脂ケーシング孔、200・・・凹溝、201・・・溝、2011・・・溝、2012・・・溝、0202・・・孔、21・・・凹穴、22・・・圧入部、23・・・凹部、231・・・突出部、24・・・薄肉部、25・・・段部、25e・・・段部、3・・・カバー、3b・・・カバー、3c・・・カバー、3da・・・第1カバー部材、3db・・・第2カバー部材、3ea・・・第1カバー部材、3eb・・・第2カバー部材、30・・・カバー孔、31・・・ケーシング接触部、310・・・貫通部、311・・・当接部、32・・・第1フランジ、33・・・第2フランジ、33e・・・第2フランジ、4・・・ロータ、40・・・回転軸、411・・・筒形状部材、412・・・軸支持部材、400・・・溝、401・・・軸止め輪、402・・・軸止め輪、42・・・マグネット、43・・・モールド部、51・・・第1軸受、52・・・第2軸受、61・・・第1軸受収納部材、610・・・端面、611・・・フランジ部、62・・・第2軸受収納部材、620・・・外筒部、621・・・収納部、71・・・軸受側侵入防止部材、72・・・シャフト側侵入防止部材、8・・・導電部材、80・・・リード線部、801・・・第1端子、802・・・第2端子、81・・・導電接続部、Bd・・・基板、Is・・・保護シート