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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】抗PD‐L1抗体とIL‐7との融合
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20220712BHJP
   C07K 14/54 20060101ALI20220712BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20220712BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20220712BHJP
   C07K 14/00 20060101ALI20220712BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20220712BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20220712BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20220712BHJP
   C12N 15/24 20060101ALI20220712BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20220712BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20220712BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20220712BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220712BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220712BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220712BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220712BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220712BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220712BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20220712BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20220712BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220712BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20220712BHJP
   C12P 21/02 20060101ALN20220712BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20220712BHJP
   A61P 35/02 20060101ALN20220712BHJP
   A61P 35/04 20060101ALN20220712BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C07K14/54
C07K7/06
C07K7/08
C07K14/00
C07K14/725
C07K16/18
C12N15/62 Z
C12N15/24
C12N15/11 Z
C12N15/13
C12N15/12
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K45/00
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K47/65
A61K47/68
A61P43/00 111
C12P21/08
C12P21/02 K
C12P21/02 C
A61P35/00
A61P35/02
A61P35/04
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020526395
(86)(22)【出願日】2019-01-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 CN2019073264
(87)【国際公開番号】W WO2019144945
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-06-16
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2018/074121
(32)【優先日】2018-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519441109
【氏名又は名称】アイ-エムエービー バイオファーマ ユーエス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ファン、レイ
(72)【発明者】
【氏名】クイ、フェイフェイ
(72)【発明者】
【氏名】グ、ハイジュアン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ゼンイ
(72)【発明者】
【氏名】グオ、ビンシ
(72)【発明者】
【氏名】ザン、ジンウ
【審査官】原 大樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/215590(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/220990(WO,A1)
【文献】Biochemical and Biophysical Research Communications,2016年,Vol.480,p.160-165
【文献】Journal of Biotechnology,2011年,Vol.154,p.84-92
【文献】ANTICANCER RESEARCH,2017年,Vol.37,p.963-968
【文献】Protein Science,2000年,Vol.9,p.916-926
【文献】Structure,2009年,Vol.17,p.54-65
【文献】CYTOKINE,2002年,Vol.17, No.5,p.227-233
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
A61K
MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/CAplus(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトIL‐7タンパク質に、ペプチドリンカーにより融合された抗PD‐L1抗体、または、その抗原結合断片を含み、
前記ヒトIL‐7タンパク質は、
(a)SEQ ID NO:9のアミノ酸配列有し、
(b)野生型ヒトIL‐7タンパク質と比較して、IL‐7レセプタアルファへの低減された結合親和性を有する、
融合分子。
【請求項2】
前記ペプチドリンカーは、5から100のアミノ酸残基を有する、請求項1に記載の融合分子。
【請求項3】
前記ペプチドリンカーは、10から75のアミノ酸を有する、請求項2に記載の融合分子。
【請求項4】
前記ペプチドリンカーのアミノ酸残基の少なくとも20%は、アラニン、グリシン、システインおよびセリンから成る群から選択されるアミノ酸残基である、請求項1に記載の融合分子。
【請求項5】
前記ペプチドリンカーのアミノ酸残基の少なくとも40%は、アラニン、グリシン、システインおよびセリンから成る群から選択されるアミノ酸残基である、請求項1に記載の融合分子。
【請求項6】
前記ペプチドリンカーは、SEQ ID NO:1‐5から成る群から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の融合分子。
【請求項7】
前記抗PD‐L1抗体の前記抗原結合断片は、単一鎖断片、Fab断片、またはFab断片のペアである、請求項1に記載の融合分子。
【請求項8】
前記抗PD‐L1抗体はADCC(antibody-dependent cellular cytоtоxicity)有効化されている、請求項1に記載の融合分子。
【請求項9】
前記抗PD‐L1抗体またはその前記抗原結合断片は、SEQ ID NO:6の残基31‐35、残基50‐66、および残基99‐108のアミノ酸配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域を含み、SEQ ID NO:7の残基24‐34、残基50‐56、および残基89‐97の前記アミノ酸配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載の融合分子。
【請求項10】
前記抗PD‐L1抗体またはその前記抗原結合断片は、SEQ ID NO:6のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:7の前記アミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載の融合分子。
【請求項11】
前記ペプチドリンカーは、前記抗PD‐L1抗体、または、その抗原結合断片のC端残基に融合され、且つ、前記ヒトIL‐7タンパク質またはその断片のN端残基に融合される、請求項1から10のいずれか一項に記載の融合分子。
【請求項12】
前記ペプチドリンカーは、前記抗PD‐L1抗体、または、その抗原結合断片のN端残基に融合され、且つ、前記ヒトIL‐7タンパク質のC端残基に融合される、請求項1から10のいずれか一項に記載の融合分子。
【請求項13】
前記ペプチドリンカーは、抗PD‐L1抗体またはその断片の軽鎖の前記N端残基に融合される、請求項12に記載の融合分子。
【請求項14】
前記ペプチドリンカーは、抗PD‐L1抗体またはその断片の重鎖の前記N端残基に融合される、請求項12に記載の融合分子。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の融合分子、および、薬学的に許容可能なキャリアを含有する、組成物。
【請求項16】
請求項1から14のいずれか一項に記載の融合分子をエンコードする1または複数のポリヌクレオチドを含む、分離された細胞。
【請求項17】
PD-L1を発現する患者の癌を治療するための薬剤を製造するための、請求項1から14のいずれか一項に記載の融合分子の使用。
【請求項18】
前記癌は、膀胱癌、肝癌、大腸癌、直腸癌、子宮内膜癌、白血病、リンパ腫、膵臓癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、乳癌、尿道癌、頭頸部癌、消化器癌、胃癌、食道癌、卵巣癌、腎癌、メラノーマ、前立腺癌および甲状腺癌から成る群から選択される、請求項17に記載の融合分子の使用。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
インターロイキン7(IL‐7)は、骨髄および胸腺内の間質細胞によって分泌される造血成長因子である。IL‐7は、多能性造血幹細胞の、リンパ球前駆細胞への分化を刺激する。また、IL‐7は、リンパ球系列(B細胞、T細胞およびNK細胞)のすべての細胞の増殖も刺激する。IL‐7とは、B細胞およびT細胞の成長に重要なサイトカインである。このサイトカインおよび肝細胞増殖因子(HGF)は、pre‐pro‐B細胞増殖刺激因子として機能するヘテロダイマーを形成する。このサイトカインは、初期のT細胞成長中のT細胞レセプタベータ(TCRβ)のV(D)J再配置のための補因子であることが判明している。このサイトカインは、腸管上皮細胞および上皮杯細胞によって局所的に生成され得、腸粘膜リンパ球のための制御因子として機能し得る。
【0002】
組換え体IL‐7は、いくつかのフェーズIおよびフェーズIIの臨床試験で患者に安全に投与されてきた。IL‐7の癌患者への人体実験により、このサイトカインの投与が、細胞CD8T細胞およびCD4T細胞の両方のホメオスタシスを一時的に混乱させ、CD4CD25Foxp3T調節細胞の比率において相応の減少を生じさせ得ることを示した。しかしながら、目的とする癌の消失は観察されなかった。
【0003】
分化クラスタ274(CD274)またはB7ホモログ1(B7‐H1)としても知られるPD‐L1(Programmed Death-Ligand 1)は、妊娠、組織異糸移植片、自己免疫疾患および肝炎等の他の病状といった特定のイベント中に、免疫系の抑制において大きな役割を果たすと考えられている40kDaタイプ1膜貫通タンパク質である。PD‐L1が、PD‐1またはB7.1に結合すると、リンパ節におけるCD8+T細胞の増殖を低減する阻害シグナルが伝達される。これに加えて、PD-1は、Bcl-2遺伝子の下向き調節によってさらに媒介されるアポトーシスを通して、リンパ節における外来抗原特異的T細胞の蓄積を制御することもできる。
【0004】
PD-L1の上向き調節は、癌が宿主の免疫系を回避することを可能にし得ることが実証されている。腎細胞癌の患者からの腫瘍標本の解析から、PD-L1の高い腫瘍発現は、腫瘍の攻撃性の増大および死亡リスクの増加に関連することが判明した。癌免疫療法として多くのPD-L1阻害剤が開発中であり、それらは臨床試験において良好な結果を示している。
【0005】
癌の治療に加え、PD-L1阻害は、感染症を治療する可能性も示している。細胞内感染のマウスモデルにおいて、L.モノサイトゲネスがT細胞、NK細胞およびマクロファージ内にPD‐L1タンパク質発現を誘発させた。PD‐L1ブロッキング(例えば、ブロッキング抗体を用いる)は、感染したマウスの死亡率の増加をもたらした。ブロッキングは、マクロファージによるTNFαと一酸化窒素の生成を低減させ、NK細胞によるグランザイムB生成を低減させ、L.モノサイトゲネス抗原特異性CD8T細胞(しかしながら、CD4T細胞ではなく)の増殖を低下させた。このエビデンスは、PD‐L1が細胞内感染において正の共刺激分子として機能することを示唆する。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、PD‐L1阻害剤がペプチドリンカーにより、IL‐7タンパク質に融合される場合、当該融合分子は、両方の成分の結合活性を維持できることを実証する。さらに、融合分子は、両方のタンパク質のみの組み合わせと同等の活性を示した。さらに、改善された結果は、低減された活性を有するミュータントIL‐7タンパク質を用いて達成され得る。
【0007】
従って、本開示の一実施形態により、ペプチドリンカーにより、ヒトIL‐7タンパク質またはその断片に融合されたPD‐L1阻害剤を含む融合分子が提供される。いくつかの実施形態において、ペプチドリンカーは、5から100のアミノ酸残基を有する。いくつかの実施形態において、ペプチドリンカーは、10から75のアミノ酸を有する。いくつかの実施形態において、ペプチドリンカーのアミノ酸残基の少なくとも20%は、アラニン、グリシン、システインおよびセリンから成る群から選択されるアミノ酸残基である。いくつかの実施形態において、ペプチドリンカーのアミノ酸残基の少なくとも40%は、アラニン、グリシン、システインおよびセリンから成る群から選択されるアミノ酸残基である。いくつかの実施形態において、ペプチドリンカーは、SEQ ID:NO:1‐5から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、PD‐L1阻害剤は、PD‐L1に結合する不活性PD‐1等のデコイPD‐1タンパク質である。いくつかの実施形態において、PD‐L1阻害剤は、抗PD‐L1抗体の断片の抗PD‐L1抗体である。いくつかの実施形態において、抗PD‐L1抗体は、IgG、IgM、IgA、IgEまたはIgDのアイソタイプである。いくつかの実施形態において、抗PD‐L1抗体の断片は、単一鎖断片、Fab断片またはFab断片のペアである。いくつかの実施形態において、抗PD‐L1抗体は、単一特異性抗体またはさらに二次特異性を有する二重特異性抗体である。いくつかの実施形態において、抗PD‐L1抗体はADCC有効である。
【0009】
いくつかの実施形態において、抗PD‐L1抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO:6の残基31‐35、残基50‐66および残基99‐108のアミノ酸配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を有する重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:7の残基24‐34、残基50‐56、および残基89‐97のアミノ酸配列を有するCDR1、CDR2およびCDR3をそれぞれ有する軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、抗PD‐L1抗体またはその断片は、アミノ酸配列SEQ ID NO:6を有する重鎖可変領域およびアミノ酸配列SEQ ID NO:7を有する軽鎖可変領域を有する。
【0010】
いくつかの実施形態において、IL‐7タンパク質は、アミノ酸配列SEQ ID NO:9、またはIL‐7レセプタアルファに結合可能でありつつ、SEQ ID NO:9の少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、IL‐7タンパク質は、SEQ ID NO:9による位置142において、Gly、Ala、Val、Cyc、Leu、Ile、MetおよびPheから選択されるアミノ酸残基を有する。いくつかの実施形態において、IL‐7タンパク質は、SEQ ID NO:9による位置142において、A、V、L、I、MおよびFから選択されるアミノ酸残基を有する。いくつかの実施形態において、SEQ ID NO:9と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列は、野生型ヒトIL‐7タンパク質と比較して、IL‐7レセプタアルファへの低減された結合親和性を有する。いくつかの実施形態において、IL‐7タンパク質は、SEQ ID NO:9のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、IL‐7タンパク質の断片が融合分子に含まれる。いくつかの実施形態において、当該断片は、少なくとも1つ、2つ、3つまたはすべての4つのアルファヘリックスモチーフを含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、ペプチドリンカーは、PD‐L1阻害剤のC端残基に融合され、IL‐7タンパク質のN端残基に融合される。いくつかの実施形態において、ペプチドリンカーは、PD‐L1阻害剤のN端残基に融合され、IL‐7タンパク質のC端残基に融合される。いくつかの実施形態において、ペプチドリンカーは、抗PD‐L1抗体またはその断片の軽鎖のN端残基に融合される。いくつかの実施形態において、ペプチドリンカーは、抗PD‐L1抗体またはその断片の重鎖のN端残基に融合される。
【0012】
また、一実施形態において、SEQ ID NO:9のアミノ酸配列、または、SEQ ID NO:9と少なくとも95%の配列同一性を有するペプチドを含む分離されたタンパク質が提供され、ペプチドは、IL‐7レセプタアルファに結合可能であるが、野生型ヒトIL‐7タンパク質と比較して、IL‐7レセプタアルファへの低減された結合親和性を有する。いくつかの実施形態において、ペプチドは、位置142において、Trp以外のアミノ酸残基を有する。いくつかの実施形態において、ペプチドは、位置142において、Ala、Gly、Cys、Leu、Ile、Met、PheおよびValから成る群から選択されるアミノ酸残基を有する。いくつかの実施形態において、ペプチドは、位置142において、Ala、Leu、Ile、Met、PheおよびValから成る群から選択されるアミノ酸残基を有する。
【0013】
癌治療を必要とする患者に、癌の治療方法も提供する。いくつかの実施形態において、方法は、本開示の分子を患者に投与する段階を伴う。いくつかの実施形態において、方法は、開示されたIL‐7バリアント投与する段階を伴い、オプションでPD‐L1阻害剤も投与する段階を伴う。いくつかの実施形態において、癌は、膀胱癌、肝癌、大腸癌、直腸癌、子宮内膜癌、白血病リンパ腫、膵臓癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、乳癌、尿道癌、頭頸部癌、消化器癌、胃癌、食道癌、卵巣癌、腎癌、メラノーマ、前立腺癌および甲状腺癌から成る群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】パネルA~Dで、2、3の融合分子構造を示す。
【0015】
図2】IL‐7タンパク質活性を低減させるW142A突然変異の同定を示す。
【0016】
図3】W142A突然変異が実際に、抗PDL1‐IL7融合分子のIL7効力を低減させたことを示す。
【0017】
図4】パネルA~Cで、STAT5シグナリングを刺激する融合分子の能力(A)、IL7Rに結合する融合分子の能力(B)、IL7R内在化を促進する融合分子の能力(C)の結果を示す。
【0018】
図5】細胞結合性PDL1タンパク質への融合分子の結合能力を示す。
【0019】
図6】すべての試験された融合分子が、抗PDL1モノクローナル抗体への同様の結合を示したことを示す。
【0020】
図7】抗PDL1‐IL7W142Aが、低減されたIL7Raへの結合性を有しており、それは抗PDL1‐IL7W142Aの低減されたIL‐7効力と整合していたことを示す。
【0021】
図8】抗PDL1‐IL7および抗PDL1‐IL7W142Aは、ヒトT細胞機能の向上において、抗PDL1 mAbまたはIL7よりも優れた効果を有していたことを示す。
【0022】
図9】抗PDL1抗体と同様に、試験された融合分子は、腫瘍部位においてエンリッチ化可能であったことを示す。
【0023】
図10】様々な試験された分子の腫瘍増殖阻止の効果を示す。
【0024】
図11】in vivo研究の終了時の、各動物の腫瘍の重さを示す。
【0025】
図12】in vivo研究の終了時の、各動物の脾臓および腫瘍におけるCD4T細胞およびCD8T細胞の絶対数を示すデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[定義]
「a(1つ)」または「an(1つ)」のエンティティという用語は、そのエンティティうちの1または複数を指す。例えば、「an antibody(1つの抗体)」は、1または複数の抗体を表わすと理解されることに留意されたい。そのため、用語「a」(または「an」)、「1または複数」および「少なくとも1つ」という用語は、本明細書で交換可能に用いられてよい。
【0027】
本明細書で用いられる用語「ポリペプチド」という用語は、単一の「ポリペプチド」および複数の「ポリペプチド」を包含する意図であり、アミド結合(ペプチド結合としても知られる)により線形に連結されたモノマー(アミノ酸)から構成される分子を指す。用語「ポリペプチド」は、2または2より多いアミノ酸の任意の鎖(複数を含む)を指し、生成物の特定の長さを指していない。故に、用いられるペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」、または、任意の他の用語は、2または2より多いアミノ酸の鎖を指し、「ポリペプチド」の定義に含まれ、「ポリペプチド」という用語は、これらの用語のいずれかの代わりに、または、これらの用語のいずれかと交換可能に使用され得る。「ポリペプチド」という用語は、これらに限定されないが、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、既知の保護/遮断基による誘導体化、タンパク質分解的切断、または、非天然に発生するアミノ酸による改変を含む、ポリペプチドの発現後改変の生成物を指すことを意図する。ポリペプチドは、天然の生物学的ソースに由来し得るか、または、組換え技術によって生成され得るが、必ずしも、指定された核酸配列から翻訳されるわけではない。ポリペプチドは、化学合成を含む任意の方式で生成されてよい。
【0028】
本明細書で用いられる細胞、DNAまたはRNA等の核酸に関連して「分離された」という用語が使用される場合、高分子の天然のソースに存在する、他のDNAまたはRNAからそれぞれ分離された分子を指す。本明細書で用いられる「分離された」という用語は、組換えDNA技法により生成される場合に細胞物質、ウイルス物質若しくは培地を実質的に含まない、あるいは、化学的に合成された場合に前駆的化学物質若しくは他の化学物質を実質的に含まない核酸またはペプチドを指すこともある。さらに、「分離された核酸」は、天然では断片として発生しない、天然の状態で見られない核酸断片を含めることを意味している。「分離された」という用語は、本明細書において、他の細胞タンパク質または組織から分離された細胞またはポリペプチドを指すためにも使用される。分離されたポリペプチドとは、精製されたポリペプチド、および、組換えのポリペプチドの両方を包含することを意味している。
【0029】
本明細書で用いられる「組換え」という用語は、それがポリペプチドまたはポリヌクレオチドに関する場合、天然に存在しないポリペプチドまたはポリヌクレオチドの形態を意図し、それらの非限定的な例は、通常は共に発生しないポリヌクレオチドまたはポリペプチドを組み合わせることによって作成できる。
【0030】
「相同性」または「同一性」または「類似性」は、2つのペプチドの間、または、2つの核酸分子の間の配列類似性を指す。相同性は、比較の目的で位置揃え可能な各配列における位置を比較することによって決定できる。比較される配列内のある位置が、同一の塩基またはアミノ酸によって占められるとき、分子はその位置において相同である。配列間の相同性の程度は、配列によって共有される、一致する位置数または相同的な位置数によって決まる。「関連のない」、または、「非相同的」配列は、本開示の配列の1つと40%未満の同一性を共有するが、好ましくは25%未満の同一性を共有する。
【0031】
ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド領域(またはポリペプチドまたはポリペプチド領域)が別の配列と特定の割合(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%)の「配列同一性」を有することは、位置揃えされた状態で2つの配列を比較した際、その割合の塩基(またはアミノ酸)が同一であることを意味する。この位置揃えおよび百分率相同性または配列同一性は、例えば、Ausubel et al. eds. (2007) Current Protocols in Molecular Biology内で説明されているソフトウェアプログラム等の本技術分野で知られているソフトウェアプログラムを使用して決定できる。好ましくは、既定のパラメータが位置揃えに使用される。1つの位置揃えプログラムは、既定のパラメータを使用するBLASTである。特に、プログラムは、以下の既定のパラメータを使用するBLASTNおよびBLASTPである。Genetic code=standard;filter=none;strand=both;cutoff=60;expect=10;Matrix=BLOSUM62;Descriptions=50 sequences;sort by =HIGH SCORE;Databases=non-redundant,GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS translations+SwissProtein+SPupdate+PIR。生物学的に同等のポリヌクレオチドとは、上記の指定の百分率相同性を有し、且つ、同一または同様の生物学的活性を有するポリペプチドをエンコードするものである。
【0032】
「同等の核酸またはポリヌクレオチド」という用語は、核酸のヌクレオチド配列またはその相補的配列と、一定程度の相同性または配列同一性を有するヌクレオチド配列を有する核酸を指す。二本鎖核酸のホモログとは、ヌクレオチド配列またはその相補的配列と一定程度の相同性を有する抜くレオチド配列を有する核酸を含むことを意図している。一態様において、核酸のホモログは、核酸またはその補体にハイブリダイズ可能である。同様に、「同等のポリペプチド」は、基準ポリペプチドのアミノ酸配列と、一定程度の相同性または配列同一性を有するポリペプチドを指す。いくつかの態様において、配列同一性は、少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%である。いくつかの態様において、同等のポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、基準のポリペプチドまたはポリヌクレオチドと比較したとき、1、2、3、4または5個の追加、欠失、置換およびこれらの組み合わせを有している。いくつかの態様において、同等の配列は、基準配列の活性(例えば、エピトープ結合)または構造(例えば、塩橋)を保持する。
【0033】
ハイブリダイゼーション反応は、異なる「ストリンジェンシ」の条件下で実行できる。一般に、低ストリンジェンシハイブリダイゼーション反応は、約10倍のSSC、または、同等のイオン強度/温度の溶液において約40℃で実行される。中程度のストリンジェンシハイブリダイゼーションは、典型的には、約6倍のSSCにおいて約50℃で実行される。一般的に高ストリンジェンシハイブリダイゼーション反応は約1倍のSSCにおいて約60℃で実行される。ハイブリダイゼーション反応は、当業者に周知である「生理的条件」下で実行することもできる。生理的条件の非限定的な例は、細胞において通常見られる温度、イオン強度、pH、およびMg2+濃度である。
【0034】
ポリヌクレオチドは、4個のヌクレオチド塩基、すなわち、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)の特定配列(ポリヌクレオチドがRNAであるとき、チミンの代わりにウラシル(U))から構成される。故に、「ポリヌクレオチド配列」という用語は、ポリヌクレオチド分子のアルファベット表記である。このアルファベット表記は、中央処理装置を有するコンピュータ内のデータベースに入力でき、機能ゲノミクスおよび相同性検索等のバイオインフォマティクスの用途に使用できる。「ポリモーフィズム」という用語は、2以上の遺伝子の形態のまたはその部分が共存することを指す。少なくとも2つの異なる形態、すなわち、2つの異なるヌクレオチド配列が存在する遺伝子の一部が遺伝子のポリモーフィック(多型)領域」と呼ばれる。多型領域は単一のヌクレオチドであってよく、その同定は、異なる対立遺伝子において異なる。
【0035】
「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」という用語は交換可能に使用され、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドまたはその類似体のいずれかである、任意の長さの高分子形態のヌクレオチドを指す。ポリヌクレオチドは、任意の3次元構造を有することができ、既知または未知の任意の機能を実行し得る。以下はポリヌクレオチドの非限定的な例である。遺伝子または遺伝子断片(例えば、プローブ、プライマー、ESTまたはSAGEタグ)、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、dsRNA、siRNA、miRNA、組換えポリヌクレオチド、分岐型ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、任意の配列の単離RNA、核酸プローブおよびプライマー。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体等の修飾されたヌクレオチドを含み得る。ヌクレオチド構造への修飾は、もしそれがある場合、ポリヌクレオチドの構築の前または後に付与することができる。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって割り込まれ得る。ポリヌクレオチドは重合後、標識成分へのコンジュゲート等により、さらに修飾され得る。また、この用語は、二本鎖および一本鎖の分子両方を指す。別途の指定または要求がない限り、本開示の任意の実施形態のポリヌクレオチドは、二本鎖形と、二本鎖形を形成することが知られている、または、予想される、2つの相補的な一本鎖形の各々との両方を含む。
【0036】
ポリヌクレオチドに適用される「エンコード」という用語は、ポリヌクレオチドが天然型の状態において、または、当業者によく知られている方法によって操作されるとき、転写および/または翻訳されてポリペプチドおよび/またはその断片のためのmRNAを生成できる場合、ポリペプチドを「エンコード」すると言われるポリヌクレオチドを指す。アンチセンス鎖は、このような核酸の相補鎖であり、エンコード配列はそれから推測できる。
【0037】
本明細書で用いられる「抗体」または「抗原結合ポリペプチド」は、抗原を特異的に認識してそれに結合するポリペプチドまたはポリペプチド複合体を指す。抗体は、全抗体および任意の抗原結合断片、または、それらの単一本鎖であってよい。故に、「抗体」という用語は、抗原に結合する生物学的活性を有する免疫グロブリン分子の少なくとも一部を含む分子を含む任意のタンパク質またはペプチドを含む。このような例として、これらに限定はされないが、重鎖若しくは軽鎖の相補性決定領域(CDR)またはそれらのリガンド結合部分、重鎖若しくは軽鎖可変領域、重鎖若しくは軽鎖定常領域、フレームワーク(FR)領域、または、それらの任意の部分、または、結合性タンパク質の少なくとも1つの一部が含まれる。
【0038】
本明細書で用いられる「抗体断片」または「抗原結合断片」という用語は、F(ab')、F(ab)、Fab'、Fab、Fv、scFv等の抗体の一部である。構造に関わらず、抗体断片は、インタクトの抗体によって認識される同一の抗原に結合する。「抗体断片」という用語は、アプタマー、スピゲルマーおよび二重特異性抗体を含む。「抗体断片」という用語は、特異性抗原に結合して複合体を形成することによって抗体のように機能する、任意の合成タンパク質または遺伝子組み換えタンパク質も含む。
【0039】
「一本鎖可変断片」または「scFv」は、免疫グロブリンの重鎖(V)および軽鎖(V)の可変領域の融合タンパク質を指す。いくつかの態様において、この領域は10~約25アミノ酸から成る短いリンカーペプチドと接続される。リンカーは、柔軟性のためのグリシン、および、溶解性のためのセリンまたはスレオニンが豊富であり得、VのN端、または、VのC端のいずれかに接続され得る(逆も成立する)。このタンパク質は、定常領域が除去され、リンカーが導入されているにも関わらず、元の免疫グロブリンの特異性を保持する。本技術分野において、ScFv分子が知られており、例えば、米国特許第5,892,019号において説明されている。
【0040】
抗体という用語は、生化学的に区別可能な広範のクラスのポリペプチドを包含する。当業者であれば、重鎖はガンマ、ミュー、アルファ、デルタまたはイプシロン(γ、μ、α、δ、ε)として、また、それらの中のいくつかのサブクラス(例えば、γ1-γ4)に分類されることを理解するであろう。この鎖の性質によって、抗体の「クラス」がそれぞれIgG、IgM、IgA、IgGまたはIgEとして決定される。免疫グロブリンのサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG、IgG、IgG、IgG、IgG等は十分特徴付けられており、機能的な特化を付与することが知られている。これらのクラスおよびアイソタイプの各々の改変版は、当業者が本開示を参照して容易に認識でき、従って本開示の範囲内にある。すべての免疫グロブリンのクラスが本開示の範囲内にあることは明確であり、以下の説明は一般的に、免疫グロブリン分子のIgGクラスを対象としている。IgGについては、標準の免疫グロブリン分子は、分子量約23,000デルトンの2つの同一の軽鎖状ポリペプチド、および、分子量53,000-70,000の2つの同一の重鎖状ポリペプチドを含む。通常、4つの鎖は「Y」構成におけるジスルフィド結合で結合され、「Y」構成には、軽鎖が、「Y」の口から開始する重鎖をブラケットし、可変領域まで継続する。
【0041】
本開示の抗体、抗原結合ポリペプチド、それらのバリアントまたは誘導体には、これらに限定されないが、ポリクローナル、モノクローナル、多特異性、ヒト型、ヒト化、霊長類化もしくはキメラ抗体、一本鎖抗体、エピトープ結合断片、例えば、Fab、Fab'およびF(ab')、Fd、Fvs、一本鎖Fv(scFv)、一本鎖抗体、ジスルフィド連結Fv(sdFv)、VKまたはVHドメインのいずれかを含む断片、Fab発現ライブラリによって生成される断片および抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本明細書において開示されるLIGHT抗体への抗Id抗体を含む)が含まれる。本開示の免疫グロブリンまたは抗体分子は、免疫グロブリン分子の任意の種類(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)、またはサブクラスであり得る。
【0042】
軽鎖はカッパまたはラムダ(Κ、λ)のいずれかに分類される。各重鎖クラスは、カッパまたはラムダのいずれかの軽鎖に結合し得る。一般に、軽鎖および重鎖は互いに共有結合し、免疫グロブリンがハイブリドーマ、B細胞、または、遺伝子操作した宿主細胞のいずれかによって生成されるとき、2つの重鎖の「テール」部分は、共有結合性ジスルフィド連結または非共有結合性連結によって互いに結合される。重鎖において、アミノ酸配列は、Y形状の分岐端におけるN端から、各鎖の底部におけるC端まで続いている。
【0043】
軽鎖および重鎖は両方とも、構造的および機能的に相同の複数の領域に分割される。「定常」および「可変」という用語は機能について使用される。この点において、軽鎖(VK)および重鎖(VH)部分の両方の可変ドメインは、抗原認識および特異性を決定することを理解されたい。逆に、軽鎖(CK)および重鎖(CH1、CH2またはCH3)の定常ドメインは、分泌、経胎盤移動性、Fc受容体結合および相補的結合等の重要な生物学的特性を付与する。慣習的に、定常領域ドメインの番号は、抗体の抗原結合部位またはアミノ末端から遠ざかるにつれて増加する。N端部分は可変領域であり、C端部分は定常領域であり、CH3およびCKドメインはそれぞれ、重鎖および軽鎖のカルボキシ末端を実際に含む。
【0044】
上記のように、可変領域は、抗体が抗原上のエピトープを選択的に認識し且つ特異的に結合することを可能にする。つまり、抗体のVKドメインおよびVHドメインまたは相補性決定領域(CDR)のサブセットが結合して、3次元の抗原結合部位を画定する可変領域を形成する。この4要素抗体構造は、Yの各腕の末端に存在する抗原結合部位を形成する。より具体的には、抗原結合部位は、VHおよびVK鎖の各々における3個のCDR(すなわち、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3)によって画定される。いくつかの場合において、例えば、ラクダ科に由来する、または、ラクダ科免疫グロブリンをベースにしてエンジニアリングされた特定の免疫グロブリン分子および完全な免疫グロブリン分子は、軽鎖が無く重鎖のみから成ることがあり得る。例えば、Hamers-Casterman et al.,Nature 363:446-448 (1993)を参照されたい。
【0045】
天然に発生する抗体において、各抗原結合ドメインに存在する6個の「相補性決定領域」または「CDR」は、アミノ酸の短い不連続配列であり、これらは、抗体が水性環境において3次元構成をとるときに、抗原結合ドメインを形成するように特異的に配置される。抗原結合ドメインにおける残りのアミノ酸は、「フレームワーク」領域と呼ばれ、分子間のより少ない可変性を示す。フレームワーク領域は主に、βシートの形態を取り、CDRは、βシート構造を接続する、および、場合により、βシート構造の一部を形成するループを形成する。故に、フレームワーク領域は、鎖間の非共有結合性相互作用によってCDRを正しい向きに位置決めするため足場を形成するように機能する。位置決めされたCDRによって形成される抗原結合ドメインは、免疫反応性抗原上のエピトープに相補的な表面を画定する。この相補的表面は、同族エピトープに対する抗体の非共有結合を促進する。CDRおよびフレームワーク領域をそれぞれ構成するアミノ酸は、正確に定義されているので("Sequences of Proteins of Immunological Interest," Kabat, E., et al., U.S. Department of Health and Human Services, (1983)、および、Chothia and Lesk,J.MoI. Biol., 196:901-917(1987)を参照)、当業者によって、任意の所定の重鎖または軽鎖可変領域について容易に同定されることができる。
【0046】
当分野において使用および/または受け入れられている用語に2つ以上の定義がある場合、本明細書で用いられる用語の定義は、別途明示の反対の記載がない限り、そのような意味をすべて含むことが意図されている。具体的な例は、重鎖および軽鎖ポリペプチドの両方の可変領域において見られる不連続抗原結合部位を説明するために、「相補性決定領域」(「CDR」)という語句を使用する場合である。この特定の領域についてはKabatらにより、アメリカ合衆国保健福祉省の「免疫学的興味のタンパク質配列」(1983)に説明され、且つ、Chothiaらにより、J.Mol.Biol.196:901‐917(1987)に説明されており、これらは参照によりこれらの全体が本明細書に組み込まれる。KabatおよびChothiaによるCDRの定義は、互いに比較したときに、アミノ酸残基の重複するまたはサブセットを含む。にかかわらず、抗体またはそのバリアントのCDRを指すために、いずれかの定義を適用することは、本明細書において定義および使用される用語の範囲内にあることが意図される。上記の引用文献の各々によって定義されるCDRを包含する適切なアミノ酸残基を下の表において比較として説明する。特定のCDRを包含する正確な残基番号は、CDRの配列およびサイズに応じて変動する。当業者であれば、抗体の可変領域アミノ酸配列を考慮することで、どの残基が特定のCDRを構成するかを定型的に決定できる。
【表1】
【0047】
また、Kabatらは、任意の抗体に適用される可変ドメイン配列のためにナンバリングシステムを定義した。当業者であれば、配列自体以外のいかなる実験データにも頼ることなく、この「Kabatナンバリング」のシステムを任意の可変ドメイン配列に明確に割り当てることができる。本明細書で用いられる「Kabatナンバリング」は、Kabatらにより、アメリカ合衆国保健福祉省の「免疫学的興味のタンパク質配列」(1983)に記載のナンバリングシステムを指す。
【0048】
上の表に加えて、Kabatナンバリングシステムは、CDR領域を以下のように説明する。CDR-H1は、約31番目のアミノ酸(すなわち、最初のシステイン残基の後の約9残基)から開始し、約5~7のアミノ酸を含み、次のトリプトファン残基で終了する。CDR-H2は、CDR-H1の末端の後の第15の残基から開始し、約16~19アミノ酸を含み、次のアルギニンまたはリジン残基で終了する。CDR-H3は、CDR-H2の末端の後の約33番目のアミノ酸残基から開始し、3~25アミノ酸を含み、配列W-G-X-Gにおいて終了し、Xは任意のアミノ酸である。CDR-L1は、約24番目の残基(すなわち、システイン残基の後)から開始し、約10~17残基を含み、次のトリプトファン残基で終了する。CDR-L2は、CDR-L1の末端の後の約16番目の残基から開始し、約7残基を含む。CDR-L3は、CDR-L2の末端の後の約33番目の残基(すなわち、システイン残基の後)から開始し、約7~11残基を含み、FまたはW-G-X-Gの配列で終了し、Xは任意のアミノ酸である。
【0049】
本明細書において開示される抗体は、鳥類および哺乳類を含む任意の動物起源であってよい。好ましくは、抗体は、ヒト、マウス、ロバ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ラマ、ウマ、または、ニワトリの抗体である。別の実施形態において、可変領域は(例えばサメからの)コンドリクトイド(condricthoid)が起源であってよい。
【0050】
本明細書で用いられる「重鎖定常領域」という用語は、免疫グロブリン重鎖由来のアミノ酸配列を含む。重鎖定常領域を含むポリペプチドは、CH1ドメイン、ヒンジ(例えば、上、中央、および/または、下のヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、または、それらのバリアント若しくは断片のうち少なくとも1つを含む。例えば、本開示において用いられる抗原結合ポリペプチドは、CH1ドメインを含むポリペプチド鎖、CH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部およびCH2ドメインを含むポリペプチド鎖、CH1ドメインおよびCH3ドメインを含むポリペプチド鎖、CH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部およびCH3ドメインを含むポリペプチド鎖、または、CH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含むポリペプチド鎖を含んでよい。別の実施形態において、本開示のポリペプチドは、CH3ドメインを含むポリペプチド鎖を含む。さらに、本開示で用いられる抗体には、CH2ドメインの少なくとも一部(例えば、CH2ドメインの全部または一部)が無いことがあり得る。上記のように、当業者であれば、天然に発生する免疫グロブリン分子とはアミノ酸配列が異なるように重鎖定常領域が改変され得ることを理解するであろう。
【0051】
本明細書において開示される抗体の重鎖定常領域は、異なる免疫グロブリン分子に由来してよい。例えば、ポリペプチドの重鎖定常領域は、IgG分子由来のCH1ドメイン、および、IgG分子由来のヒンジ領域を含み得る。別の例において、重鎖定常領域は、部分的にIgG分子に由来し、部分的にIgG分子に由来するヒンジ領域を含み得る。別の例において、重鎖部分は、部分的にIgG分子に由来し、部分的にIgG分子に由来するキメラヒンジを含み得る。
【0052】
本明細書で用いられる、「軽鎖定常領域」という用語は、抗体軽鎖に由来するアミノ酸配列を含む。好ましくは、軽鎖定常領域は、定常カッパドメインまたは定常ラムダドメインのうち少なくとも1つを含む。
【0053】
「軽鎖-重鎖ペア」は、軽鎖のCLドメインと重鎖のCH1ドメインとの間のジスルフィド結合を通して二量体を形成できる軽鎖および重鎖の組を指す。
【0054】
上述のように、様々な免疫グロブリンのクラスの定常領域のサブユニット構造および3次元構成は周知である。本明細書で用いられる「VHドメイン」という用語は、免疫グロブリン重鎖のアミノ端可変ドメインを含み、「CH1ドメイン」という用語は、免疫グロブリン重鎖の第1(最アミノ端)定常領域ドメインを含む。CH1ドメインは、VHドメインに隣接し、免疫グロブリン重鎖分子のヒンジ領域へのアミノ端である。
【0055】
本明細書で用いられる「CH2ドメイン」という用語は、例えば、従来のナンバリング方式を使用すると、抗体の約244番目の残基から360番目の残基まで延在する重鎖分子の部分を含む(Kabatナンバリングシステムでは残基244~360、EUナンバリングシステムでは残基231~340、Kabat et al.,アメリカ合衆国保健福祉省,"Sequences of Proteins of Immunological Interest" (1983)を参照)。CH2ドメインは、別のドメインと密に対になっていないという点でユニークである。むしろ、2つのN結合型分岐炭水化物鎖は、インタクトな天然型IgG分子の2つのCH2ドメインの間に介在する。また、CH3ドメインがCH2ドメインからIgG分子のC端へ延在し、約108残基を含むことが十分に文書化されている。
【0056】
本明細書で用いられる「ヒンジ領域」という用語は、CH1ドメインをCH2ドメインに連結させる重鎖分子の部分を含む。このヒンジ領域は、約25の残基を含み、柔軟であり、故に2つのN端抗原結合領域が独立に移動することを可能にする。ヒンジ領域は、3つの区別されるドメイン、すなわち、上、中央および下ヒンジドメインに細分割され得る(Roux et al., J.Immunol 161:4083(1998))。
【0057】
本明細書で用いられる「ジスルフィド結合」という用語は、2つの硫黄原子の間に形成される共有結合を含む。アミノ酸システインは、第2のチオール基との間にジスルフィド結合またはブリッジを形成できるチオール基を含む。天然に発生する大部分のIgG分子において、CH1およびCK領域はジスルフィド結合によって連結され、2つの重鎖は、Kabatナンバリングシステムを使用したときの239および242(EUナンバリングシステムの場合、位置226または229)に対応する位置において2つのジスルフィド結合によって連結される。
【0058】
本明細書で用いられる「キメラ抗体」という用語は、免疫反応性領域または部位が第1の種から取得され、または、それに由来し、且つ、定常領域(本開示によれば、インタクト、部分的、または、改変されたものであり得る)が第2の種から取得される、任意の抗体を意味するものとして維持される。特定の実施形態おいて、標的結合領域または部位は、非ヒトのソースに由来し(例えば、マウスまたは霊長類)、定常領域はヒト型である。
【0059】
本明細書で用いられる「ヒト化率」は、ヒト化ドメインと生殖細胞系ドメインとの間のフレームワークアミノ酸の数の差(すなわち、非CDRの差)を決定し、その数を総アミノ酸数から減算し、それを総アミノ酸数で除算し、100で乗算することによって算出される。
【0060】
「特異的に結合」または「特異性を有する」は、一般的に、抗体が抗原結合ドメインを介してエピトープに結合すること、および、結合が抗原結合ドメインとエピトープとの間のいくらかの相補性を伴うことを意味する。この定義によれば、ランダムな関連のないエピトープに結合する場合より容易に、抗体が抗原結合ドメインを介してエピトープに結合するとき、そのエピトープに「特異的に結合」すると言われる。「特異性」という用語は、本明細書において、特定の抗体が特定のエピトープに結合する相対的な親和性を認めるために使用される。例えば、抗体「A」は、特定のエピトープに対し抗体「B」より高い特異性を有するとみなされてよく、または、抗体「A」は、関連するエピトープ「D」について有する特異性より高い特異性でエピトープに結合すると言われてよい。
【0061】
本明細書で用いられる「治療」または「治療法」という用語は、治療処置および予防または防止措置の両方を指し、ここで、その目的は癌の進行等の、望ましくない生理的変化または障害を防止または遅延(緩和)させることである。有利な、または、望ましい臨床結果には、これらに限定されないが、検出可能かどうかを問わず、症状の軽減、疾患の程度の減弱、病状の安定化(すなわち、悪化しない)、疾患の進行の遅延または鈍化、病状の改善または緩和および寛解(完全または部分的を問わず)が含まれる。「治療」は、治療を受けない場合に予想される生存期間と比較して、生存期間を延ばすことも意味し得る。治療を必要とする者には、既に病態または障害を有する者、および、病態または障害を有する傾向がある者、または、病態または障害を予防されるべき者が含まれる。
【0062】
「対象」または「個人」または「動物」または「患者」または「哺乳類」は、任意の対象、特に、診断、予後または治療が望ましい哺乳類対象を意味する。哺乳類対象には、ヒト、家畜動物、農業用の動物、およびイヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、畜牛、乳牛等の動物園、スポーツ、またはペット用の動物などが含まれる。
【0063】
本明細書で用いられる、「治療を必要とする患者に」または「治療を必要とする対象」等の文言は、例えば、検出、診断手順および/または治療に用いられる本開示の抗体または組成物の投与から恩恵を受けるであろう、哺乳類対象等の対象を含む。
[融合分子]
【0064】
本開示は、PD‐L1阻害またはブロッキングを、効果および安全性をさらに最大化させる相乗的な態様でIL‐7サイトカイン活性と組み合わせる融合分子を提供する。
【0065】
一実施形態において、融合分子は、ヒトIL‐7タンパク質またはその断片に、好ましくはペプチドリンカーにより融合されたPD‐L1阻害剤(例えば、デコイPD‐1タンパク質または抗PD‐L1抗体またはその断片)を含む。概して、ペプチドリンカーは、5から100のアミノ酸残基を有するペプチドである。リンカーは、その柔軟性を保証すべく、より小さなアミノ酸を十分含むことが好ましい。例えば、リンカーの長さは、5から100のアミノ酸、10から90のアミノ酸、10から80のアミノ酸、10から75のアミノ酸、15から90のアミノ酸、15から80のアミノ酸、15から70のアミノ酸、20から80のアミノ酸、20から70のアミノ酸、20から60のアミノ酸、25から90のアミノ酸、25から80のアミノ酸、25から75のアミノ酸、25から70のアミノ酸、25から60のアミノ酸、30から80のアミノ酸、30から70のアミノ酸、30から60のアミノ酸、または40から70のアミノ酸であってよいが、これらに限定はされない。
【0066】
リンカーの柔軟性は、より小さいアミノ酸、例えば、アラニン、グリシン、システインおよびセリンを最小割合で組み込むことで達成されてよい。いくつかの実施形態において、リンカーは、アラニン、グリシン、システインまたはセリンから選択されるアミノ酸を少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、または80%含む。ペプチドリンカーの非限定的な例は、SEQ ID:NO:1‐5に示されている。
【0067】
ヒトIL‐7タンパク質は、アクセッション番号NP_000871.1でGenBankに預けられたタンパク質配列を持つものとして知られており、成熟配列がSEQ ID NO:8に示されている。計算および試験を通して、野生型IL7と比較して、低減されたIL‐7活性を持つIL‐7タンパク質の突然変異型は、抗PD‐L1抗体との相乗効果を維持し、全体的に安全性が改善されていると決定された。このような突然変異体の非限定的な例には、IL7W142の位置で、アミノ酸置換を有するものが含まれる。置換は、G、A、V、C、P、L、I、MおよびF等の非極性アミノ酸で行われてよい。
【0068】
本明細書で用いられる「ヒトIL‐7タンパク質」という用語は、野生型ヒトIL‐7およびそれと生物学的同等のものを指し、すなわち、野生型ヒトIL‐7の少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%の配列同一性を有し、且つ、IL‐7レセプタ(例えば、レセプタアルファ)への結合性等の野生型の活性を維持するものであり、これは容易に測定可能である。いくつかの実施形態において、ヒトIL‐7タンパク質は、野生型と比較して、低減されたIL‐7活性を有する。いくつかの実施形態において、低減されたIL‐7活性は、野生型IL‐7と比較して、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%のIL‐7レセプタへの結合活性である。いくつかの実施形態において、IL‐7活性は、野生型IL‐7の活性よりも、少なくとも1%、2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%、99.9%、99.99%、99.999%、99.9999%低い。いくつかの実施形態において、IL‐7活性は、IL‐7W142Aと野生型IL‐7の活性の間である。いくつかの実施形態において、IL‐7タンパク質は、IL‐7レセプタに結合可能な合成類似体である。
【0069】
いくつかの実施形態において、ヒトIL‐7タンパク質は、野生型と比較して、W142の位置における突然変異を含む。いくつかの実施形態において、突然変異は、非極性アミノ酸に対するものである。突然変異の非限定的な例として、Ala、Gly、Leu、Ile、Met、PheまたはValに対する突然変異が含まれる。いくつかの実施形態において、突然変異は、Phe、Met、Ile、Leu、ValまたはAlaに対するものである。好ましい実施形態において、突然変異はW142A(例えば、SEQ ID NO:9)である。
【0070】
いくつかの実施形態において、IL‐7タンパク質の断片もまた使用されてよい。いくつかの実施形態において、断片は、野生型タンパク質と比較して、IL‐7レセプタ(例えば、レセプタアルファ)に結合可能であるが、低減されたIL‐7活性を有するものが好ましい。IL‐7レセプタと複合されたIL‐7の3次元構造が示されている。例えば、McElroyらのStructure.2009 Jan14;17(1):54-65を参照されたい。IL‐7は、2つのクロスオーバーループを持つup‐up‐down‐downの4つのヘリックスバンドルトポロジを使用する。αヘリックスA‐Dは、13から22の残基で長さが変わる。いくつかの実施形態において、断片は、アルファヘリックスの少なくとも1つ、2つまたは3つを含む。いくつかの実施形態において、断片は、アルファヘリックスの4つすべてを含む。いくつかの実施形態において、断片は、S19、D74およびK81を含む界面アミノ酸残基を保持する。
【0071】
IL‐7タンパク質は、さらに、他のアミノ酸の位置における追加、欠失および/または置換等の改変も可能にしてよい。このような改変は、1つ、2つ、または3つの箇所における置換であってよい。一実施形態において、改変は、これらの位置のうちの1つにおける置換である。いくつかの実施形態においてにおいて、このような置換は保存的置換である。
【0072】
「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されたものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは本技術分野において定義されており、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐型側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、および、芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。故に、免疫グロブリンポリペプチドにおける非本質的なアミノ酸残基は、同一の側鎖ファミリーの別のアミノ酸残基に好ましく置換される。別の実施形態において、アミノ酸の鎖は、側鎖ファミリーメンバーの順序および/または組成が異なる、構造的に同様の鎖に置き換えることができる。
【0073】
保存的アミノ酸置換の非限定的な例を以下の表に示す。ここでは、0またはそれより高い類似性スコアは、2つのアミノ酸の間の保存的置換を示す。
【表2】
【表3】
【0074】
本明細書で用いられる、用語「PD‐L1阻害剤」は分子を指し、例えば、PD‐L1に結合可能であり、且つ、PD‐1とPD‐L1との間の相互作用をブロッキング可能であり、故にPD‐L1の活性を阻害可能なタンパク質またはタンパク質含有複合体を指す。PD‐L1阻害剤の非限定的な例は、デコイPD‐1タンパク質、例えば、PD‐L1を結合する能力を維持する不活性PD‐1バリアントである。このようなPD‐1バリアントの例が、MauteらによるPNAS 2015 112(47)E6506‐E6514(2015)中の「Engineering high-affinity PD-1 variants for optimized immunotherapy and immuno-PET imaging」に示されている。別の非限定的な例は、抗PD‐L1抗体である。
【0075】
本開示の融合分子に含有されるものとして好適な既知の抗PD‐L1抗体およびそれらの断片が多く存在する。例示的な抗PD‐L1抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域の配列は、SEQ ID NO:6および7に示されている。例示的な抗体のCDR領域を含むバリアント抗PD‐L1抗体も、本技術の範囲内に属する。例えば、抗PD‐L1抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO:6の残基31‐35、残基50‐66および残基99‐108のアミノ酸配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域、および、SEQ ID NO:7の残基24‐34、残基50‐56および残基89‐97のアミノ酸配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域を含んでよい。
【0076】
いくつかの実施形態において、抗PD‐L1抗体は、IgG、IgM、IgA、IgEまたはIgDのアイソタイプであり、その断片は、単一鎖断片、Fab断片またはFab断片のペア等の任意の形態を取ってよい。いくつかの実施形態において、抗PD‐L1抗体はADCC有効である。
【0077】
融合分子のいくつかの例示的構造は、図1のパネルA‐Dに示されている。パネルAでは、融合分子は、完全なIgG抗PD‐L1抗体、および、リンカーにより抗体のCH3のC端にそれぞれ融合された2つのIL‐7タンパク質を含む。この融合ポリペプチドは、2つの別個のDNA構築物で作成されてよい。パネルBでは、融合分子はまた、IgG抗PD‐L1抗体および2つのIL‐7タンパク質を含むが、IL‐7タンパク質はリンカーにより軽鎖可変領域のN端に融合されている。
【0078】
図1中のパネルCでは、パネルC中、IL‐7タンパク質がリンカーにより、重鎖のN端に融合されている点が異なる。パネルDに別の例示的構造が示されており、これは、各IL‐7タンパク質がリンカーにより抗体のCH2のN端に融合されており、そこでは、CH2‐CH3断片がVH‐CH2部分の上流側に配置されている。
【0079】
これらの図面中に示されていないさらに多くの構造も作成されてよく、それは、単一特異性抗体またはさらに二次特異性を有する二重特異性抗体であってよい。
【0080】
特定の実施形態において、デコイPD‐1タンパク質または抗体は、抗体に通常関連付けられないアミノ酸配列または1または複数の部分を含む。以下に、例示的改変について詳しく説明する。例えば、本開示の抗体は、柔軟なリンカー配列を含んでよく、または、官能基(例えば、PEG、薬剤、毒物、または、標識)を追加するように改変されてよい。
【0081】
本開示の抗体、バリアントまたはその誘導体は、改変された誘導体、すなわち、任意のタイプの分子を抗体に共有結合することで改変され、共有結合によって、抗体がエピトープに結合することを妨げられないような誘導体を含む。例えば、抗体は、これらに限定されないが、例えばグリコシル化、アセチル化、PEG化、リン酸化、アミド化、既知の保護/遮断基による誘導体化、タンパク質分解的切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質への連結等によって改変されてよい。多数の化学改変のいずれもが特異的な化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成等を含む、既知の技法によって実行されてよく、これらに限定されない。また、抗体は、1または複数の非従来型のアミノ酸を含んでよい。
【0082】
いくつかの実施形態において、デコイPD‐1タンパク質または抗体は、治療剤、プロドラッグ、ペプチド、タンパク質、酵素、ウイルス、脂質、生物反応調節剤、医薬品、またはPEGとコンジュゲートされてよい。
【0083】
デコイPD‐1タンパク質または抗体は、放射性標識等の検出可能な標識を含み得る治療剤、免疫調節剤、ホルモン、酵素、オリゴヌクレオチド、光活性治療剤または光活性診断剤、薬物または毒物であり得る細胞毒性剤、超音波造影剤、非放射性標識、これらの組み合わせ、および、本技術分野において既知である他のこのような物質にコンジュゲートまたは融合されてよい。
【0084】
デコイPD‐1タンパク質または抗体は、自身を化学発光化合物に結合することで検出可能に標識化されてよい。その後、化学発光タグ付き抗原結合ポリペプチドの存在は、化学反応の過程において生じる発光の存在を検出することで判定される。特定の有用な化学発光標識化合物の例としては、ルミノール、イソルミノール、セロマティックアクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩およびシュウ酸エステルが挙げられる。
【0085】
デコイPD‐1タンパク質または抗体は、152EUまたはランタニド系列の他のもの等の蛍光放射金属を使用しても検出可能に標識できる。これらの金属は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)等の金属キレート基を使用して、抗体に結合することができる。様々な部分を抗体にコンジュゲートする技法は周知である。例えば、Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeld et al. (eds.),pp.243-56(Alan R. Liss,Inc.(1985)のArnonらによる,"Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy"、Controlled Drug Delivery(2nd Ed.),Robinson et al.,(eds.),Marcel Dekker,Inc.,pp.623-53(1987)のHellstromらによる,"Antibodies For Drug Delivery"、Monoclonal Antibodies '84:Biological And Clinical Applications,Pinchera et al.(eds.),pp.475-506(1985)のThorpeによる,"Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review"、Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy,Baldwin et al.(eds.),Academic Press pp.303-16(1985)の"Analysis,Results,And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy"、および、Immunol.Rev.(52:119-58(1982))のThorpeらによる,"The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin Conjugates"を参照されたい。
[IL‐7バリアント]
【0086】
野生型タンパク質と比較して、低減された活性を有するヒトIL‐7タンパク質の突然変異体を作成した。これらの突然変異体は、このような活性の低減が所望される状況、例えば安全面が懸念される状況において有用であることが実証されている。従って、一実施形態において、本開示はまた、このような突然変異体を含む分離されたポリペプチドも提供する。
【0087】
いくつかの実施形態において、本開示は、SEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含む分離されたポリペプチドを提供する。いくつかの実施形態において、当該ポリペプチドは、SEQ ID NO:9の少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%の配列同一性を有するペプチドを含み、ペプチドは、IL‐7レセプタアルファに結合可能であるが、野生型ヒトIL‐7タンパク質と比較して、IL‐7レセプタアルファへの低減された結合親和性を有する。
【0088】
いくつかの実施形態において、ヒトIL‐7タンパク質は、野生型と比較して、低減されたIL‐7活性を有する。いくつかの実施形態において、IL‐7活性の低減は、IL‐7レセプタへの結合活性の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%である。
【0089】
いくつかの実施形態において、ヒトIL‐7タンパク質は、野生型と比較して、W142の位置に突然変異を含む。いくつかの実施形態において、突然変異は、非極性アミノ酸に対するものである。当該突然変異の非限定的な例として、Ala、Gly、Cys、Leu、Ile、Met、PheまたはValに対する突然変異が含まれる。いくつかの実施形態において、突然変異は、Phe、Met、Ile、Leu、ValまたはAlaに対するものである。好ましい実施形態において、突然変異はW142Aである。いくつかの実施形態において、W142における突然変異は、Gly、Cys、Leu、Ile、Met、PheまたはValから選択される。
【0090】
いくつかの実施形態において、IL‐7タンパク質の断片も使用されてよい。いくつかの実施形態において、当該断片はIL‐7レセプタ(例えば、レセプタアルファ)に結合可能であるが、野生型タンパク質と比較して、低減されたIL‐7活性を有することが好ましい。いくつかの実施形態において、断片は、少なくとも1つ、2つ、3つのアルファヘリックスを含む。いくつかの実施形態において、断片は、アルファヘリックスの4つすべてを含む。いくつかの実施形態において、断片は、S19、D74およびK81を含む界面アミノ酸残基を保持する。
【0091】
IL‐7タンパク質は、他のアミノ酸の位置において、追加、欠失、および/または、置換等のさらなる改変を可能にしてよい。このような改変は、1つ、2つまたは3つの位置における置換であってよい。一実施形態において、改変は、当該位置のうち1つの位置における置換である。いくつかの実施形態において、このような置換は保存的置換である。
[ポリペプチドをエンコードするポリヌクレオチドおよび当該ポリペプチドを作成する方法]
【0092】
本開示は、本開示のデコイPD‐1タンパク質、抗体、融合分子、そのバリアントまたは誘導体をエンコードする、分離されたポリヌクレオチドまたは核酸分子も提供する。本開示のポリヌクレオチドは、同一のポリヌクレオチド分子上または別個のポリヌクレオチド分子上の、抗原結合ポリペプチド、そのバリアントまたは誘導体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域の全体をエンコードしてよい。また、本開示のポリヌクレオチドは、同一のポリヌクレオチド分子上、または別個のポリヌクレオチド分子上の、抗原結合ポリペプチド、そのバリアントまたは誘導体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域の一部をエンコードしてよい。
【0093】
デコイタンパク質および抗体の作成方法は、当該分野で周知であり、ここに説明する。特定の実施形態においては、本開示の抗原結合ポリペプチドの可変領域および定常領域の両方は完全にヒトである。完全ヒト抗体は、当該分野において説明される技術および本明細書で説明される技術を用いて作成されてよい。例えば、特異性抗原に対する完全ヒト抗体は、抗原をトランスジェニック動物に投与することで作成でき、トランスジェニック動物は抗原攻撃に応答してかかる抗体を生成するように改変されているが、その内因性遺伝子座は無効にされている。このような抗体を作成するために使用可能な例示的な技術については、米国特許6,150,584号、6,458,592号、6,420,140号に説明されており、これらは、参照により本明細書にその全体が組み込まれる。
[癌治療]
【0094】
ここで実証するように、本開示の融合分子は癌の治療において相乗効果を示した。当該融合分子は、特定の治療方法および診断方法に用いられてよい。
【0095】
本開示は、さらに、本開示の融合分子を、本明細書に説明される障害または病状のうちの1または複数を治療するために、動物、哺乳類および人間等の患者に投与することを含む治療法を対象とする。本開示の治療用化合物としては、限定ではないが、本開示の融合分子(本明細書に記載されるそのバリアントおよび誘導体を含む)および本開示の融合分子(本明細書に記載されるそのバリアントおよび誘導体を含む)をエンコードする核酸またはポリヌクレオチドが含まれる。
【0096】
治療法は、また、本明細書に開示されるIL‐7バリアントを投与することを含んでよく、オプションで本明細書に開示されるPD‐L1阻害剤の投与と組み合わせられる。いくつかの実施形態において、投与されるIL‐7バリアントおよび投与されるPD‐L1阻害剤は、少なくとも5:1、4:1、3:1、2:1、1.5:1、1:1または1:2のモル比を有する。いくつかの実施形態において、投与されるIL‐7バリアントおよび投与されるPD‐L1阻害剤は、2:1、1.5:1、1:1、1:2、1:3、1:4または1:5を超えないモル比を有する。いくつかの実施形態において、投与されるIL‐7バリアントおよび投与されるPD‐L1阻害剤は、2:1から1:2の範囲内、または、1.5:1から1:1.5の範囲内のモル比を有する。
【0097】
キメラ抗原レセプタ(CAR)T細胞治療等の細胞治療法も、本開示に示される。好適な細胞が用いられてよく、細胞は、本開示の抗PD‐L1抗体と接触させられる(あるいは代替的に、本開示の抗PD‐L1抗体を発現するようエンジニアリングされる)。このような接触またはエンジニアリングがなされると、その後、細胞は治療を必要とする癌患者に導入されてよい。癌患者は、本明細書で開示されたタイプの任意の癌を有してよい。細胞(例えば、T細胞)は、例えば腫瘍湿潤T細胞療法(Tumor Infiltrating T Lymphocyte)、CD4+T細胞、CD8+T細胞またはこれらの組み合わせであってよいが、これらに限定はされない。
【0098】
いくつかの実施形態において、細胞は癌患者自身から分離された。いくつかの実施形態において、細胞はドナーまたは細胞バンクから提供された。細胞が癌患者から分離される場合、望ましくない免疫反応が最小化されてよい。
【0099】
本開示の融合分子、バリアントまたはその誘導体を用いて、治療、予防、診断および/または予後されてよい細胞生存の増加に関連する追加の病気または病状として、限定ではないが、白血病(急性白血病(例えば、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病(骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性および赤白血病を含む))および慢性リンパ性白血病(例えば、慢性骨髄性(顆粒状)白血病および慢性リンパ性白血病)を含む)、真性赤血球増加症、リンパ腫(例えば、ホジキン病および非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、重鎖病および固形腫瘍(限定ではないが、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索種、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、大腸癌、膵臓癌、乳癌、甲状腺癌、子宮内膜癌、メラノーマ、前立腺癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛癌、精上脾腫、胎児性癌、ウイルムス腫痘、子宮頚癌、精巣腫瘍、肺癌、肺小細胞癌、膀胱癌、上皮癌、グリオーマ、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、希突起膠腫、髄膜腫、メラノーマ、神経芽細胞腫および網膜芽細胞腫が含まれる)等の悪性腫瘍および関連疾患の進行および/または転移が含まれる。
【0100】
任意の特定の患者に対する特定の投与量および治療計画は、様々な要因によって決まり、これらには、使用する特定の融合分子、そのバリアントまたは誘導体、患者の年齢、体重、健康全般、性別および食事、投与時間、排泄率、薬物の組み合わせ、並びに治療される特定の病気の深刻さが挙げられる。医療従事者が考慮するこのような要因の判定は、当業者に想定される範囲である。投与量も、治療すべき個々の患者、投与経路、調合タイプ、使用する化合物の特徴、病気の深刻さおよび所望の効能により決まる。使用する量は、本技術分野で周知の薬学的および薬物動態的原理によって判定されてよい。
【0101】
融合分子またはバリアントの投与方法には、限定ではないが、皮内経路、筋肉内経路、腹腔内経路、静脈内経路、皮下経路、鼻腔内経路、硬膜外経路および口腔経路が含まれる。抗原結合ポリペプチドまたは組成物は、任意の好都合な経路で投与されてよく、例えば、注入またはボーラス注入により、上皮または皮膚粘膜(例えば、口腔粘膜、直腸および腸の粘膜等)を通した吸収によって投与されてよく、他の生物学的活性剤と共に投与されてよい。故に、本開示の抗原結合ポリペプチドを含有する医薬組成物は、経口、経直腸、非経口、嚢内、膣内、腹腔内、局所的(粉末、軟膏、ドロップまたは経皮パッチとして)、口腔内に、または、口腔若しくは鼻腔スプレーとして投与されてよい。
【0102】
本明細書で用いられる「非経口」という用語は、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下および関節内の注射および注入を含む投与方式を指す。
【0103】
投与は全身投与であっても、または、局所的投与であってもよい。また、本開示の融合分子を、脳室内注射およびくも膜下腔内注射を含む任意の好適な経路により、中枢神経系に導入することが所望されてよい。脳室内注射は、例えば、オマヤリザーバー等のリザーバーに取り付けられた脳室内カテーテルによって容易に行うことができる。例えば、吸入器または噴霧器およびエアロゾル化剤の調合を用いた肺投与も採用されてよい。
【0104】
本開示の融合分子または組成物を、治療の必要な領域に局所的に投与することが所望されてよい。これは、例えば、非限定的な例ではあるが、外科手術中の局所注入、局所塗布(例えば、手術後の創傷包袋と組み合わせて)によって、注射によって、カテーテルを用いて、座薬を用いて、または、インプラントを用いて達成されてよく、上記インプラントは、多孔性、非多孔性、またはシラスティック膜等の膜を含むゼラチン状物質または線維である。好ましくは、抗体を含む本開示のタンパク質を投与する際、タンパク質が吸収されない材料を使用するよう考慮する必要がある。
【0105】
炎症、免疫性疾患または悪性疾患、障害または病状の治療、阻害および予防で効果的となる本開示の融合分子の量は、標準的な臨床技術で判定されてよい。また、オプションで、最適な投与量範囲を識別すべく、in vitroアッセイが採用されてよい。調合において用いられるべき正確な用量は、投与経路および病気の深刻さ、障害または病状にも依存し、医師の判断により、および各患者の状況により決定されるべきである。効果的な用量は、in vitro試験システムまたは動物モデル試験システムから導かれた用量反応曲線から外挿法で推定されてよい。
【0106】
一般的な提案として、本開示の抗原結合ポリペプチドの患者への投与量は通常、患者の体重に対して0.1mg/kgから100mg/kg、患者の体重に対して0.1mg/kgから20mg/kgの範囲内、または、患者の体重に対して1mg/kgから10mg/kgの範囲内である。一般的に、ヒト抗体は、他の種に由来する抗体と比べて、ヒトの身体内における半減期が長い。これは、外来ポリペプチドに対する免疫反応に起因する。故に、ヒト抗体の投与量をより少なくすること、および、投与の頻度をより少なくすることが、しばしば可能である。さらに、例えば、脂質化等の改変により、融合分子の接種と組織浸透(例えば、脳への)を向上させることによって、本開示の融合分子の投与の投与量および頻度は低減されてよい。
[組成物]
【0107】
本開示は、医薬組成物も提供する。このような組成物は、有効量の融合分子および許容可能なキャリアを含む。いくつかの実施形態において、組成物は、さらに、第2の抗癌剤(例えば、免疫チェックポイント阻害剤)を含む。
【0108】
特定の実施形態において、「薬学的に許容可能」という用語は、連邦政府または州政府の規制当局によって承認されていること、または、動物およびより具体的には人間への使用が、米国薬局方若しくは他の一般的に認知された薬局方に記載されていることを意味する。さらに、「薬学的に許容可能なキャリア」とは、一般的に、非毒性の固体、半固体、または、液体のフィラー、希釈剤、封入材、または、任意のタイプの配合助剤である。
【0109】
「キャリア」という用語は、治療薬と共に投与される希釈剤、補助剤、賦形剤、またはビヒクルを指す。このような医薬キャリアは水および油等の滅菌液であってよく、油には、石油、動物油、植物油またはピーナッツ油、大豆油、鉱油、ごま油等の合成起源のものが含まれる。水は、医薬組成物が静脈内に投与される場合に好ましいキャリアである。また、生理食塩水および水性デキストロースおよびグリセロール溶液も液体キャリア、特に注射溶液として採用されてよい。好適な医薬品添加物としては、澱粉、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水およびエタノール等が含まれる。所望される場合は、組成物は、少量の湿潤剤または乳化剤、あるいは、アセテート、クエン酸塩若しくはリン酸塩等のpH緩衝剤も含有してよい。ベンジルアルコールまたはメチルパラベン等の抗菌剤、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム等の抗酸化物質、エチレンジアミン四酢酸等のキレート剤、および、塩化ナトリウムまたはデキストロース等の浸透圧調整剤も想定される。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、タブレット、錠剤、カプセル、粉末、徐放性製剤等の形態を取ってよい。組成物は、従来の結合剤およびトリグリセライド等のキャリアを用いて座薬として調合されてよい。経口製剤は、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等の標準的なキャリアを含んでよい。好適な医薬品キャリアの例は、E.W.MartinによるRemington's Pharmaceutical Sciencesに記載されており、当該文献は本明細書に参照により組み込まれる。このような組成物は、患者への適切な投与形態を提供すべく、好適な量のキャリアと組み合わされた、好ましくは精製形態における治療に有効な量の抗原結合ポリペプチドが含まれる。製剤は、投与の方式に適するものであるべきである。非経口製剤は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジ、または多回投与バイアルの中に封入されてよい。
【0110】
一実施形態において、組成物は、人間への静脈内投与に適合された医薬組成物として、定型的な手順に従って調合される。通常、静脈内投与のための組成物は、無菌等張水性緩衝液の溶液である。必要に応じて、組成物は、可溶化剤および注射部位の痛みを和らげるためのリグノカイン等の局所麻酔薬も含んでよい。一般的に、成分は、例えば、活性薬剤の量を示すアンプルまたは小袋等の密封容器内の凍結乾燥粉末または無水濃縮物等の単位投与量形態で、別個に供給されるか、または、混合されるかのいずれかである。組成物が注入によって投与されるべき場合、組成物は、医薬品グレードの無菌水または生理食塩水を含む注入ボトルを用いて分注できる。組成物が注射によって投与される場合、投与前に成分が混合され得るように、注射用の無菌水または生理食塩水のアンプルが提供されてよい。
[実施例]
実施例1:抗PDL1およびヒトIL7の融合分子の設計と生成
【0111】
抗PDL1抗体の重鎖遺伝子または軽鎖遺伝子(表1の可変領域シーケンスを参照)が、表3のペプチドリンカーを用いて、ヒトIL7遺伝子(表2)と融合するように設計された。その後、得られた遺伝子は、哺乳類発現ベクターにクローニングされ、HEK293T細胞にトランスフェクトされた。抗体とサイトカインとの融合タンパク質(図1のパネルA中の構造)がプロテインAにより、トランスフェクトされた細胞の上清から精製された。
【表4】
【表5】
【表6】
実施例2:抗PDL1‐IL7融合分子のIL7サイトカインの効力
【0112】
以下の実施例中のすべての抗PDL1‐IL7融合分子は、図1中のフォーマットAを用いた。これらの二機能性分子は、PDL1拮抗とIL7細胞活性とを組み合わせたものである。抗PDL1とIL7との固定モル比(1:1)を条件とすると、異なる活性レベルを持つIL7バリアントは、抗PDL1機能とのより優れた相乗作用を有する可能性がある。
【0113】
IL7/IL7Rの結晶構造は解明されている(構造2009、17:54‐65)。当該データから、アミノ酸K120、R133、L135、Q136、E137、K139、T140、W142、N143およびK144は、IL7および共通γ鎖(IL7シグナルトランダクションレセプタ)(図2)の界面に存在することが示されている。これら10個のアミノ酸の各々は、Alaに対して突然変異がなされており、SEC‐HPLCにより純度について、2E8細胞増殖アッセイ(IL7は、2E8の増殖を駆動できる)によりIL7活性について評価された。図2に示される通り、突然変異体W142Aが、大きく低減されたIL7の効力および優れた純度を示した。
【0114】
IL7は、STAT5リン酸化(pSTAT5)および後のCD4 T細胞の増殖を誘発できるので、プライマリヒトT細胞上での野生型(WT)およびW142A IL7のIL‐7効力をさらに評価すべく、pSTAT5アッセイおよびCD4増殖アッセイが行われた。簡潔に言うと、pSTAT5アッセイでは、ヒトPBMCが、指定の濃度で15分間、抗PDL1‐IL7および抗PDL1‐IL7W142Aで処理された。CD4増殖アッセイでは、精製されたCD4 T細胞が、抗PDL1‐IL7および抗PDL1‐IL7W142Aで1週間、処理された。図3に示される通り、実際にW142A突然変異は、抗PDL1‐IL7融合分子のIL7効力を低減させた。
【0115】
抗PDL1‐IL7融合分子のIL活性を微調整すべく、IL7のW142での一連の単一部位の突然変異が生成された。極性、アミノ数およびヒドロキシル数に基づき、20個のアミノ酸は、非極性(G、A、V、C、P、L、I、M、WおよびF)グループ、極性(S、T、Y、NおよびQ)グループ、正に帯電した(K、RおよびH)グループおよび負に帯電した(DおよびE)グループの4つのカテゴリに分割できる。各グループからの2、3の典型的なアミノ酸が選択されて、以下(表4)に示されるようなミュータント抗PDL1‐IL7分子が構築された。プロリン(P)以外の非極性アミノ酸のすべてがW142と置換されて、高SEQ純度(>96.8%)のミュータント抗PDL1‐IL7が生成可能であることが示された。これに対し、他の3つのタイプのアミノ酸に対するW142の突然変異は、分子安定性の低減およびSEQ純度の低減(<84%)をもたらした。次に、2E8増殖アッセイによりIL活性の検証を行うために(表5)、非極性アミノ酸サブタイプ内の各アミノ酸を用いてWを置換し、一連のミュータント抗PDL1‐IL7分子を生成した。Wとの置換アミノ酸がより少ない類似性を持つにつれ、突然変異がなされた分子はより低いIL7活性を有することが示された(W>F>M>I>L>V>A)。
【0116】
上記のように、プライマリCD4T細胞の抗PDL1‐IL7ミュータント分子のIL活性の減衰を確認すべく、STAT5シグナリングアッセイが行われた。図4のAに示される通り、ヒトプライマリCD4T細胞におけるSTAT5シグナリングを刺激する融合分子の能力は徐々に減少し(W>I>V>A)、これは、2E8増殖アッセイにおけるこれらの対応する活性と関連する。一連のミュータント抗PDL1‐IL7分子の減衰されたIL活性のメカニズムについて説明するために、IL7レセプタ(IL7R)結合性およびライゲーションを介した内在化が評価された。簡潔に言うと、IL7R結合アッセイについては、ヒトプライマリCD4T細胞が様々な抗PDL1‐IL7融合分子と共に4℃にて30分間インキュベートされた。PE‐コンジュゲート抗ヒトFc二次抗体を用いて、FACSによりCD4T細胞のIL7Rに結合した融合分子を検出した。図4のBに示される通り、低下されたIL活性を持つ3つの抗PDL1‐IL7融合分子(W142I、VおよびA)のすべてが低減されたIL7R結合性を有していた。ライゲーションを介したレセプタ内在化アッセイについては、ヒトプライマリCD4T細胞が融合分子と共に37℃にて15分間共培養された。PE‐cy7‐コンジュゲート‐抗CD127(IL7Ra)抗体を用いて、FACSにより表面IL7Rを検出した。IL7R結合性の傾向と同様、低減されたIL7レセプタ結合効力を持つこれらの融合分子は、IL7R内在化を損ない(図4のC)、減退したIL7シグナリングトランスダクションを示している。結論として、我々は、W142の単一部位の突然変異を修飾することで、減衰された、異なるIL活性を持つ一連の抗PDL1‐IL7分子を開発した。
【表7】
【表8】
実施例3:抗PDL1‐IL7融合分子のPDL1結合特性
【0117】
この実施例では、Biacore(登録商標)により、ヒト化抗体の完全な運動親和性を検査した。
【0118】
抗PDL1‐IL7融合分子の組換えPD‐L1タンパク質(ヒトPD‐L1‐his taq)への結合性が捕捉方法を用いて、BIACORE(登録商標)で試験された。CM5チップ上でコーテイングされた抗ヒトFc抗体を用いて、抗PDL1‐IL7融合分子が捕獲された。捕獲された抗体に対して、ヒトPD-L1-his taqタンパク質の希釈系列を、流速25μg/mlで3分間注入した。抗原は、900秒間の間、分離することを可能にされた。すべての実験が、Biacore T200で行われた。Biacore T200評価ソフトウェアを用いて、データ解析が行われた。データは、融合分子においてPDL1結合親和性は損なわれていないことを示す(表6)。
【表9】
【0119】
抗原の結合特性を評価するために、FACSにより,融合分子は、哺乳類に発現されたPD‐L1へのその結合性について分析された。簡潔に言うと、まずPDL1ラジ細胞が3段階希釈されたヒト化抗体と共に、15μg/mlから開始して室温にて1時間インキュベートされた。FACSバッファ(PBS+2%FBS)による洗浄後、Alexa488抗ヒトIgG抗体が各ウェルに加えられ、室温にて1時間インキュベートされた。Alexa488のMFIがFACSAriaIIIにより評価された。図5に示される通り、すべての融合分子が、抗PDL1モノクローナル抗体への同様の結合性を示した。
実施例4:抗PDL1‐IL7融合分子のPDL1拮抗薬活性
【0120】
PDL1拮抗薬を評価すべく、PD1/PDL1 Jurkatアッセイが行われた。ラジ細胞の存在下、ラジ上のMHCIIおよびJurkat上のTCR分子のライゲーションを介して、スーパー抗原ブドウ球菌(SEE)がJurkat T細胞によるIL2生成を刺激した。ラジ細胞上に外因性発現したPDL1は、Jurkat T細胞により過剰発現したPD1に結合し、JurkatによるIL2生成を阻害した。抗PDL1モノクローナル抗体(mAb)は、PD1/PDL1経路により抑制されたIL2生成を逆行させた。図6に示される通り、抗PDL1‐IL7融合分子および抗PDL1‐IL7W142A融合分子は、抗PDL1 mAbと同等のPDL1拮抗薬機能を示した。
実施例5:抗PDL1‐IL7融合分子の二重特異的結合
【0121】
PDL1およびIL7レセプタアルファ(IL7Ra)との二重特異的結合特性を持つ融合分子を検証すべく、この実施例では、Bio‐layer干渉法(BLI)を用いて、二重特異的結合性を測定した。簡潔に言うと、まず、ビオチン標識されたIL7Raがストレプトアビジンセンサによって捕獲された。抗PDL1‐IL7融合分子が、IL7Raによって捕獲された。his‐PDL1の飽和濃度(100nM)を用いて、PDL1結合性を評価した。すべての融合分子が、PDL1およびIL7Ra(図7)との二重特異的結合性を示した。また、抗PDL1‐IL7W142AはIL7Raへの低減された結合性を示し、これは、その低減されたIL‐7効力と整合している(図7)。
実施例6:抗PDL1‐IL7融合分子のヒトT細胞機能の相乗的促進
【0122】
融合分子のin vitro機能を評価すべく、ヒトT細胞の応答が、混合リンパ球反応の環境において評価された。GM‐CSFおよびIL‐4の存在下、7日間にわたり、CD14モノサイトからヒトDCが分化された。その後、別のドナーから分離されたCD4T細胞がDCおよび段階希釈された融合分子と共に共培養された。
【0123】
植付から5日目、培養上清がIFNγ生成について分析された。結果は、抗PDL1‐IL7および抗PDL1‐IL7W142AはヒトT細胞機能の向上に対し、抗PDL1 mAbまたはIL7よりも、優れた効果を呈することが示された(図8)。低減されたIL‐7効力を持つ抗PDL1‐IL7W142Aは、ヒトT細胞反応においてL1I7と同等の効力を呈した。従って、融合分子は、PDL1拮抗と、IL7効果と、完全なIL活性との必要十分な相乗効果を有していた。低減されたIL活性を持つ抗PDL1‐IL7分子および免疫刺激への強力な相乗効果は、将来の臨床において、より優れた安全プロファイルを有するであろう。
実施例7:抗PDL1‐IL7のin vivo追跡
【0124】
抗PDL1‐IL7融合分子の分布をin vivoで評価するために、in vivo追跡アッセイが行われた。簡潔に言うと、腫瘍サイズが500mmに到達した時点で、ICG標識された抗PDL1 mAb、抗PDL1‐IL7またはFc‐IL7が、HCC827が移植されたCD34造血幹細胞(HSC)を持つヒト化マウスに静脈内注射された。イメージングシステムを用いて、異なる時間間隔において、蛍光シグナルが捕獲された。図9に示される通り、抗PDL1 mAbと同様、抗PDL1‐IL7が腫瘍部位において著しくエンリッチ化したのに対し、Fc‐IL7はとりわけ投与後の1日目に広範囲に広がった。これらのデータは集約的に、抗PDL1‐IL7の選択的且つ特異的な分布を示し、融合分子におけるIL7の低減された全身作用を実証する。
実施例8:PDL1治療耐性B16F10マウスモデルにおける抗PDL1‐IL7のin vivo効果
【0125】
抗PDL1‐IL7のin vivo効果を評価するために、PDL1抗体耐性B16F10メラノーマ同系マウスモデルが、マウスPDL1と交差反応された抗PDL1抗体と融合された2つのマウスIL7から成る分子であるサロゲート抗PDL1‐IL7と共に用いられた。この時点で、(hIgG1N297A)を持つ、または、(mIgG2a)を持たないIgGのADCC機能の2つのアイソフォームが用いられ、ADCCの当該効果への寄与を評価した。簡潔に言うと、B16F10腫瘍細胞の移植の日を含み4日おきに反復的に、等モルの抗PDL1、mlL7‐Fc、これら2つの分子の組み合わせまたは融合分子が、C57/Bl6マウスに皮下投与された。
【0126】
図10に示される通り、mlL7‐FcおよびADCC無効の抗PDL1‐hIgG1N297A単剤療法が、腫瘍増殖阻止において非常に弱い効果を示した(それぞれ、腫瘍増殖インデックス(TGI)=22.5%および21%)。これに対し、ADCC機能が有効にされた抗PDL1‐mlgG2aが、腫瘍増殖の中程度の減衰を示した(TGI=52.0%)。抗PDL1mAbおよびmIL7の組み合わせは、ADCC無効化グループおよびADCC有効化グループの両方において、それぞれの単剤療法と比較して、相乗効果を示し、ADCC有効化グループにおいて腫瘍増殖がより厳格に阻害された(TGI=42.3%および73.4%)。より重要なことには、コンボグループと比較して、両方の融合分子(ADCC機能を持つおよび持たない)は、腫瘍増殖の防止においてより優れた効果を示し(TGI=82.0%および86.3%)、このことは腫瘍の成長に対する部位特異的制御における二機能性分子のメカニズム利点を実証している。実験の終わりに、各動物の腫瘍の重さが測定された。腫瘍の重さのばらつき傾向は、腫瘍の容積の変化のばらつきと同様であった(図11)。これらのデータは、抗PDL1‐IL7分子の腫瘍増殖制御に対するADCCの寄与を示す。
【0127】
次に、脾臓腫瘍湿潤CD4T細胞およびCD8T細胞の絶対数がFACSによって分析された。モノ治療、コンボ治療あるいは融合分子治療であれ、mIL-7治療関連グループにおいては、脾臓腫瘍湿潤CD4T細胞およびCD8T細胞の増加が観察され、周辺環境および腫瘍内環境の両方において、IL7がT細胞増殖を向上させる機能を発揮することが示された(図12)。これらのデータは、抗PDL1‐IL7融合分子が、PDL1拮抗効果とIL7‐駆動のT細胞増殖とが相まって、優れた効果を呈し、抗腫瘍微環境の強化をもたらすことを示している。
【0128】
本開示は、本開示の個々の態様の単一例を意図して説明された特定の実施形態によって範囲を限定されることはなく、機能的に均等であるあらゆる組成物または方法が本開示の範囲内に属する。当業者には、本開示の精神または範囲を逸脱することなく、本開示の方法および組成物に様々な修正および変形を加え得ることが自明であろう。故に、本開示はこれら修正および変形が添付の特許請求の範囲およびその均等技術の範囲内に属する限り、本開示の修正および変形に及ぶ意図である。
【0129】
本明細書で言及されたすべての文献および特許出願は、それらの各文献または特許出願が参照により組み込まれることが具体的且つ個別に示されているのと同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0130】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
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