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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】ガス発生器
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/264 20060101AFI20220712BHJP
【FI】
B60R21/264
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018073389
(22)【出願日】2018-04-05
(65)【公開番号】P2019182102
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】100131392
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 武司
(74)【代理人】
【識別番号】100126505
【弁理士】
【氏名又は名称】佐貫 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100123098
【弁理士】
【氏名又は名称】今堀 克彦
(74)【代理人】
【識別番号】100160945
【弁理士】
【氏名又は名称】菅家 博英
(72)【発明者】
【氏名】山本 紘士
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0288574(US,A1)
【文献】特開2001-097174(JP,A)
【文献】特開2001-239914(JP,A)
【文献】特開2011-207326(JP,A)
【文献】特開2007-015675(JP,A)
【文献】特開2018-012418(JP,A)
【文献】特開2003-089337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16-21/33
B01J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジング内に配置される第1点火器と、
前記ハウジング内に配置され、前記第1点火器と同時に又は該第1点火器よりも遅れて作動される第2点火器と、
前記第1点火器が収容され、且つ該第1点火器により燃焼される第1ガス発生剤が充填される第1空間と、前記第2点火器が収容され、且つ該第2点火器により燃焼される第2ガス発生剤が充填される第2空間とを、前記ハウジング内に画定する隔壁部材と、
前記ハウジングに設けられ、前記第1空間と該ハウジングの外部とを連通する排出孔と、
前記隔壁部材に設けられ、前記第1空間と前記第2空間とを連通する連通孔と、
を備える、ガス発生器であって、
前記連通孔を前記第1空間側から閉塞する閉塞部材であって、前記第1空間側からの加圧に対しては前記隔壁部材によってその変形が阻害され、前記第2空間側からの加圧に対してはその変形が許容され該連通孔の閉塞状態を解消するように構成される閉塞部材を更に備え、
前記第2点火器の作動により生じた前記第2ガス発生剤の燃焼生成物が、前記第2空間側から前記連通孔を流れる際に前記許容された変形を可能とするために、前記閉塞部材に対して所定角度で傾斜して当たるように、該連通孔での該第2ガス発生剤の燃焼生成物の流れが規定され、当該燃焼生成物の流れによって前記閉塞部材が曲げられることで前記連通孔の閉塞状態を解消する
ガス発生器。
【請求項2】
前記隔壁部材に形成される前記連通孔の中心軸が、前記閉塞部材に対して前記所定角度で交わるように構成されることで、前記第2ガス発生剤の燃焼生成物の流れが規定される、
請求項1に記載のガス発生器。
【請求項3】
前記連通孔の、前記第2空間側の開口部近傍に設けられ、且つ、前記隔壁部材から該第2空間側に突出し前記閉塞部材に対して前記所定角度で交わる方向に延在するガイド部を有するカバー部材を、更に備える、
請求項1又は請求項2に記載のガス発生器。
【請求項4】
前記隔壁部材は、前記連通孔が形成された筒状部を有し、
前記閉塞部材は、前記筒状部の、前記第1空間側の内壁面に圧入されて、前記連通孔の、該第1空間側の開口部を閉塞するように配置される、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載のガス発生器。
【請求項5】
前記閉塞部材は、
前記隔壁部材の前記筒状部に沿って延在し、前記連通孔の、前記第1空間側の開口部を閉塞する周壁面と、
前記周壁面の延在方向における一方の端部近傍から前記第1空間の半径方向内側に延出した延出部と、
を有し、
前記周壁面が前記連通孔の開口部を閉塞する閉塞部位は、該周壁面の前記一方の端部より該周壁面の他方の端部の近くに位置する、
請求項4に記載のガス発生器。
【請求項6】
前記周壁面は、該周壁面の他の部位より強度が弱められ、且つ、前記第2ガス発生剤の燃焼生成物により、前記連通孔の開口部に対応する部位の前記許容された変形を可能とする脆弱部を、含む、
請求項5に記載のガス発生器。
【請求項7】
前記隔壁部材は、
前記第1点火器を収容する筒状の内筒部材であって、該内筒部材の内側空間は、前記第1空間の一部又は全部である内筒部材を、
含み、
前記内筒部材に、該内筒部材の内側空間とその外側とを連通するように前記連通孔が形成され、
前記内筒部材は、前記第1点火器を収容して前記ハウジングの中央寄りの位置に配置され、且つ、前記第2点火器は、該ハウジングにおいて該内筒部材の周囲に位置する前記第2空間内に配置される、
請求項1から請求項6の何れか1項に記載のガス発生器。
【請求項8】
前記内筒部材は、その一方の端部で前記ハウジングの底面部と接続され、
前記隔壁部材は、
前記内筒部材の他方の端部と接続され、且つ、前記ハウジングの内部空間を上部空間と下部空間とに分割する上下隔壁部材を、
更に含み、
前記内筒部材の内部空間が前記上部空間と繋がることで、前記第1空間が形成され、
前記下部空間のうち前記内筒部材の周囲の空間が、前記第2空間とされる、
請求項7に記載のガス発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点火器の作動によりガス発生剤を燃焼させて燃焼ガスを発生させるガス発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼室内に充填されたガス発生剤を燃焼させ、燃焼ガスを発生させ放出するガス発生器において、その燃焼ガスの排出量や排出時間等をパラメータとする特性(以下、「放出特性」という)を所望の特性とするために2台の点火器が使用され、各点火器に対応するガス発生剤の燃焼タイミングを制御する技術が開発されている。例えば、特許文献1に示すガス発生器では、そのハウジングの中に2台の点火器(第1点火器と第2点火器)が配置されている。第1点火器と第2点火器のそれぞれには、燃焼対象となるガス発生剤がそれぞれ別の燃焼室に配置されており、そこで発生したそれぞれの燃焼ガスは、ハウジングに共通に設けられた排出口から外部に排出される構成となっている。ここで、第1点火器は、キャップ内に充填されている第1点火薬を最初に燃焼させるように配置されている。第1点火薬の燃焼前の状態では、当該キャップの周壁によって、第1点火器で最終的に燃焼される第1ガス発生剤が収容されている空間に繋がる連通孔が塞がれた状態となっている。そして、第1点火器が作動して第1点火薬が燃焼されると、キャップが燃焼圧力により上方に摺動し、塞いでいた連通孔が開口する。その結果、第1点火薬の燃焼生成物が連通孔を通って第1ガス発生剤に接触し、当該第1ガス発生剤の燃焼が開始されることになる。なお、第1点火器より遅れて作動する第2点火器については、当該第2点火器に対応する第2ガス発生剤の燃焼を行うが、その第2ガス発生剤は、第1点火器で燃焼される第1点火薬や第1ガス発生剤とは隔離されている空間に収容されている。
【0003】
また、特許文献2には、1台の点火器を有するガス発生器が開示されている。当該ガス発生器では、点火器によって最初に燃焼される伝火薬で発生した燃焼生成物を別室のガス発生剤側に導く際に、その燃焼生成物が当該別室の底面に位置するガス発生剤に対して優先的に接触するように、燃焼生成物の流れを方向付けるガイド部材が利用されている。このガイド部材によりガス発生剤の全体を燃えやすくし、その着火性の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第6543805号明細書
【文献】特開2013-226889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
2台の点火器を有するガス発生器において、それぞれの点火器に対応するガス発生剤の燃焼タイミングがずれてしまうとガス発生器による燃焼ガスの放出特性が、所望の特性からずれてしまい好ましくない。特に、ガス発生剤の燃焼により生じた燃焼ガスが、ガス発生器のハウジング内で想定とは異なる流路でハウジング内を流れてしまうと、ガス発生器による燃焼ガスの放出特性が大きく変動し得る。例えば、一方の点火器の作動により生じた燃焼ガスが、想定された流れに対して逆流し他方の点火器に対応しているガス発生剤を燃焼させてしまうと、ガス発生器による燃焼ガスの放出特性は著しく悪化する。
【0006】
従来技術のように、点火薬の燃焼生成物による圧力上昇を利用してハウジング内でキャップを摺動させて、燃焼生成物の流れを制御する構成(すなわち、連通孔の開閉を制御す
る構成)を利用する場合、所定の圧力や荷重でキャップが摺動可能となるようにハウジング内に適切に配置する必要があり、ガス発生器の組立が容易ではない。また、ハウジング内でキャップが傾く等、ハウジング内でのキャップの配置が適切に行われないと、点火器の作動にもかかわらずキャップの摺動が好適に行われなくなり、場合によってはハウジング内の圧力が過剰に上昇してしまう虞があり、安全上好ましくない。
【0007】
本発明は、上記した問題に鑑み、ガス発生器のハウジング内における燃焼ガス等の燃焼生成物の流れを好適に制御する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、2台の点火器を有するガス発生器のハウジング内での燃焼生成物が流れる連通孔の閉塞、開放を、閉塞部材の変形を介して制御する構成を採用する。すなわち、一方の方向からの加圧に対しては変形しにくく、且つ他方の方向からの加圧に対しては変形しやすく閉塞部材を構成することで、当該連通孔を介して燃焼生成物の流れを好適に制御することができる。その結果、それぞれの点火器において、想定通りのタイミングで対応するガス発生剤を燃焼させ、且つ、その燃焼生成物を好適にガス発生器から放出させることができ、その放出特性を好適に発揮することができる。
【0009】
具体的には、本発明は、ハウジングと、前記ハウジング内に配置される第1点火器と、前記ハウジング内に配置され、前記第1点火器と同時に又は該第1点火器よりも遅れて作動される第2点火器と、前記第1点火器が収容され、且つ該第1点火器により燃焼される第1ガス発生剤が充填される第1空間と、前記第2点火器が収容され、且つ該第2点火器により燃焼される第2ガス発生剤が充填される第2空間とを、前記ハウジング内に画定する隔壁部材と、前記ハウジングに設けられ、前記第1空間と該ハウジングの外部とを連通する排出孔と、前記隔壁部材に設けられ、前記第1空間と前記第2空間とを連通する連通孔と、を備える、ガス発生器である。そして、前記連通孔を前記第1空間側から閉塞する閉塞部材であって、前記第1空間側からの加圧に対しては前記隔壁部材によってその変形が阻害され、前記第2空間側からの加圧に対してはその変形が許容され該連通孔の閉塞状態を解消するように構成される閉塞部材を更に備え、前記第2点火器の作動により生じた前記第2ガス発生剤の燃焼生成物が、前記連通孔を流れると前記許容された変形を可能とするための所定角度で前記閉塞部材に対して当たるように、該連通孔での該第2ガス発生剤の燃焼生成物の流れが規定される。
【0010】
本発明のガス発生器には、第1点火器と第2点火器が備えられ、それぞれ第1点火器により第1ガス発生剤が燃焼され、第2点火器により第2ガス発生剤が燃焼される。第1ガス発生剤と第2ガス発生剤は、同種類、同一形状、同一寸法のガス発生剤であってもよく、別種類、別形状、別寸法のガス発生剤であっても構わない。それぞれに対してどのようなガス発生剤を採用するかについては、ガス発生器としての燃焼生成物の放出特性に応じて適宜選択すればよい。ここで、ハウジング内には第1ガス発生剤を収容する第1空間と第2ガス発生剤を収容する第2空間とを、原則として隔離された空間として形成する隔壁部材が配置される。この隔壁部材により、各ガス発生剤が、対応しない点火器の作用により燃焼されることを回避でき、以て、各点火器による、対応するガス発生剤の燃焼を所望通りに制御しやすくなる。
【0011】
一方で、隔壁部材には連通孔が設けられており、この点において第1空間と第2空間とは、隔離した状態とはならない。これは連通孔を利用して、燃焼により発生した燃焼生成物を第2空間から第1空間に移すためである。上記ガス発生器では、第1空間は排出孔を介して外部と繋がっているが、第2空間は直接に排出孔を介して外部とは繋がっていない。すなわち、上記ガス発生器においては、第1空間において第1ガス発生剤の燃焼で生じた燃焼生成物は、排出孔を介して外部に排出されるが、第2空間において第2ガス発生剤
の燃焼で生じた燃焼生成物は、連通孔を介して一旦第1空間に移動した後に排出孔から外部に排出されることになる。このように想定される燃焼生成物の流れが生じることで、ガス発生器として設計された放出特性を発揮することが可能となる。
【0012】
換言すれば、第1空間において第1ガス発生剤が燃焼したときは、その燃焼生成物が連通孔に流れ込んでしまうと、排出孔からの燃焼生成物の放出特性が想定と異なってしまうとともに、第2空間において第2ガス発生剤が燃焼したときは、その燃焼生成物が連通孔に流れ込まないと、やはり排出孔からの燃焼生成物の放出特性が想定と異なってしまう。すなわち、燃焼生成物の放出特性の観点から、連通孔における燃焼生成物の流れは、各空間でのガス発生剤の燃焼に応じた流れとなる必要がある。
【0013】
そこで、本発明のガス発生器では、連通孔における燃焼生成物の流れを好適に制御するために閉塞部材が備えられている。閉塞部材は、連通孔を第1空間側から閉塞する部材である。閉塞部材により閉塞された状態となっている連通孔では、当該連通孔における燃焼生成物の流れは阻害されることになる。ここで、閉塞部材は、第1空間側からの加圧に対しては隔壁部材によってその変形が阻害されるように構成されている。すなわち、第1空間において第1ガス発生剤が燃焼されてそこの圧力が上昇しても、閉塞部材による連通孔の閉塞状態は維持されることになる。このとき、第1ガス発生剤の燃焼で生じた燃焼生成物は、連通孔には流れ込まない。一方で、閉塞部材は、第2空間側からの加圧に対してはその変形は許容され、且つ閉塞部材による連通孔の閉塞状態が解消されるように構成されている。なお、連通孔は、第1空間側から閉塞部材によって閉塞されるため、第2空間で第2ガス発生剤が燃焼されて発生した燃焼生成物は連通孔内に進入可能である。そして、当該燃焼により第2空間での圧力が上昇すると、閉塞部材が変形されて連通孔を介してその燃焼生成物が第2空間から第1空間へと移動可能な状態となる。このように構成される閉塞部材によって、連通孔における燃焼生成物の流れは、各空間でのガス発生剤の燃焼に応じた流れとなるように制御される。
【0014】
そして、本発明のガス発生器においては、第2ガス発生剤が燃焼されその燃焼生成物が連通孔に流れると、第1空間側で連通孔を閉塞している閉塞部材を変形させやすくするために、連通孔での第2ガス発生剤の燃焼生成物が閉塞部材に対して所定角度で当たるようにその流れが規定される。所定角度とは、上記変形が想定されている閉塞部材の構造に応じて適宜設定されればよい。連通孔における第2ガス発生剤の燃焼生成物の流れがこのように規定されることで、閉塞部材に対して第2空間側から好適に圧力を加えることができ、その変形が実現されることになる。
【0015】
このように構成されるガス発生器によれば、第1点火器の作動により第1ガス発生剤が燃焼されると、閉塞部材により連通孔は閉塞された状態に維持されるため第1ガス発生剤の燃焼生成物は連通孔に流れ込むことなく、排出孔から外部に放出される。また、第1点火器の作動時以降に作動される第2点火器により第2ガス発生剤が燃焼されると、閉塞部材は変形することで連通孔の閉塞状態が解消される。そのため第2ガス発生剤の燃焼生成物は連通孔を介して第1空間に流れ込み、そして排出孔から外部に放出される。このように、上記ガス発生器では、ハウジング内における燃焼生成物の流れが所望通りに制御され、想定される放出特性が実現される。
【0016】
ここで、上記のガス発生器において、前記隔壁部材に形成される前記連通孔の中心軸が、前記閉塞部材に対して前記所定角度で交わるように構成されることで、前記第2ガス発生剤の燃焼生成物の流れが規定されてもよい。すなわち、上記所定角度が形成されるように、連通孔と閉塞部材との相対的な位置関係が決定されることで、閉塞部材に対する第2ガス発生剤の燃焼生成物の流れを規定する。これにより、第2空間側から、変形のための圧力を効果的に閉塞部材に対して作用させることができ、以て、連通孔の閉塞状態の解消
を確実に生じせしめることができる。
【0017】
別法として、上述までのガス発生器は、前記連通孔の、前記第2空間側の開口部近傍に設けられ、且つ、前記隔壁部材から該第2空間側に突出し前記閉塞部材に対して前記所定角度で交わる方向に延在するガイド部を有するカバー部材を、更に備えてもよい。このようカバー部材を設けることで、連通孔に流れ込む、第2ガス発生剤の燃焼生成物の流れを方向付けることができる。更には、カバー部材が備えられることで、そのガイド部が第2空間側に突出する。その結果、連通孔の第2空間側の開口部近傍では、第2ガス発生剤が位置しにくくなり第2ガス発生剤により当該開口部および連通孔が塞がれてしまうことを抑制できる。このことは、第2ガス発生剤の燃焼生成物を連通孔に導くことを担保するものであり、ハウジング内における燃焼生成物の流れを閉塞させずに所望通りに制御する上で有用な構成と言える。
【0018】
ここで、上述までのガス発生器において、前記隔壁部材は、前記連通孔が形成された筒状部を有してもよい。その場合、前記閉塞部材は、前記筒状部の、前記第1空間側の内壁面に圧入されて、前記連通孔の、該第1空間側の開口部を閉塞するように配置されてもよい。このように閉塞部材の圧入により連通孔を第1空間側から閉塞した状態を形成できるため、ガス発生器の組立が用意となる。特に、上記の連通孔の閉塞状態の解消は、閉塞部材は圧入後における変形によるものであり、従来技術のように閉塞部材の摺動を生じさせる必要はない。そのため、圧入時の挿入力を厳密に管理する必要はなく、ガス発生器の組立手順の簡略化を図ることができる。
【0019】
また、上記のガス発生器において、前記閉塞部材は、前記隔壁部材の前記筒状部に沿って延在し、前記連通孔の、前記第1空間側の開口部を閉塞する周壁面と、前記周壁面の延在方向における一方の端部近傍から前記第1空間の半径方向内側に延出した延出部と、を有してもよい。その場合、前記周壁面が前記連通孔の開口部を閉塞する閉塞部位は、該周壁面の前記一方の端部より該周壁面の他方の端部の近くに位置する。このような構成によれば、第2ガス発生剤の燃焼生成物により、第2空間側から閉塞部材に対して圧力が作用する作用部位である、周壁面における上記閉塞部位が、該周壁面の他方の端部近くに位置することになる。当該他方の端部は、延出部が設けられ、その結果相対的に剛性が高められている一方の端部とは反対側の端部になるため、周壁面に対して折り曲げモーメントを掛けやすくなる。このことは、圧力作用時に、周壁面を速やかに変形させて第2ガス発生剤の燃焼生成物が第2空間から第1空間に移動することを可能にする。
【0020】
また、上記のガス発生器において、前記周壁面は、該周壁面の他の部位より強度が弱められ、且つ、前記第2ガス発生剤の燃焼生成物により、前記連通孔の開口部に対応する部位の前記許容された変形を可能とする脆弱部を、含んでもよい。脆弱部を含むことで、第2ガス発生剤の燃焼生成物により圧力が作用した際に、周壁面を速やかに変形させることができ、以てその燃焼生成物の第2空間から第1空間への速やかな移動が可能となる。
【0021】
ここで、上述までのガス発生器の具体的な構成について例示的に言及する。例えば、前記隔壁部材は、前記第1点火器を収容する筒状の内筒部材であって、該内筒部材の内側空間は、前記第1空間の一部又は全部である内筒部材を、含んでもよい。その場合、前記内筒部材に、該内筒部材の内側空間とその外側とを連通するように前記連通孔が形成され、また、前記内筒部材は、前記第1点火器を収容して前記ハウジングの中央寄りの位置に配置され、且つ、前記第2点火器は、該ハウジングにおいて該内筒部材の周囲に位置する前記第2空間内に配置されてもよい。更に、前記内筒部材は、その一方の端部で前記ハウジングの底面部と接続されてもよい。そして、前記隔壁部材は、前記内筒部材の他方の端部と接続され、且つ、前記ハウジングの内部空間を上部空間と下部空間とに分割する上下隔壁部材を、更に含んでもよい。そのような場合、前記内筒部材の内部空間が前記上部空間
と繋がることで、前記第1空間が形成され、前記下部空間のうち前記内筒部材の周囲の空間が、前記第2空間とされてもよい。なお、上述までの具体的な構成は例示的なものであり、その他の構成を本願発明のガス発生器に適用することは妨げられない。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ガス発生器のハウジング内における燃焼ガス等の燃焼生成物の流れを好適に制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1の実施例のガス発生器の概略構成を示す図である。
図2図1に示すガス発生器に組み込まれるカバー部材の概略構成を示す図である。
図3図1に示すガス発生器に適用可能な、カバー部材の変形例を示す図である。
図4図1に示すガス発生器において第2燃焼室で第2ガス発生剤が燃焼したときの、該第2ガス発生剤の燃焼ガスの連通孔への流通を説明するための図である。
図5図1に示すガス発生器に組み込まれる閉塞部材の概略構成を示す図である。
図6図1に示すガス発生器に適用可能な、閉塞部材の変形例を示す図である。
図7】第2の実施例のガス発生器における連通孔近傍の概略構成を示す図である。
図8】第3の実施例のガス発生器の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態に係るガス発生器について説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本発明はこれらの実施の形態の構成に限定されるものではない。
【0025】
<実施例1>
図1は、ガス発生器1の高さ方向の断面図である。ガス発生器1は、上部シェル2及び下部シェル3で形成されるハウジング4内に充填されたガス発生剤を燃焼させて、その燃焼生成物である燃焼ガスを放出するように構成されている。上部シェル2は周壁部2cと頂面部2dを有し、これらにより凹状の内部空間を形成する。頂面部2dは、後述の下部シェル3の底面部3bとともに、上面視で概ね円形状を有しており、周壁部2c及び後述の下部シェル3の周壁部3aは、それぞれ頂面部2d、底面部3bの周囲を囲み、各面部から概ね垂直に延在した環状の壁面を形成している。上部シェル2の内部空間は、後述するように第1ガス発生剤22が充填される空間である。周壁部2cの一端側に頂面部2dが接続し、その他端側は上部シェル2の開口部となる。そして、周壁部2cの当該他端側には、当該開口部から順に、嵌合壁部2a、突き当て部2bが設けられている。嵌合壁部2aによる内部空間の半径は、頂面部2d寄りの周壁部2cによる内部空間の半径より大きく形成され、嵌合壁部2aは、突き当て部2bを介して周壁部2cへと繋がっている。
【0026】
また、下部シェル3は周壁部3aと底面部3bを有し、これらにより凹状の内部空間を形成する。当該内部空間は、後述するように第2ガス発生剤26が充填される空間である。周壁部3aの一端側に底面部3bが接続し、その他端側は下部シェル3の開口部となる。そして、周壁部3aによる内部空間の半径は、上部シェル2の周壁部2cによる内部空間の半径と概ね同じである。また、下部シェル3の底面部3bには、第1点火器23と第2点火器27がそれぞれ固定される嵌合孔3c及び嵌合孔3dが設けられている。
【0027】
更に、ハウジング4内には、上部シェル2と下部シェル3との間に上下隔壁部材10と内筒部材40が配置されている。上下隔壁部材10と内筒部材40とは協働してハウジング4内の空間を、第1ガス発生剤22が充填される第1空間21(上部空間)と、第2ガス発生剤26が充填される第2空間25(下部空間)とに分割することとなる。そして、
内筒部材40は、内部に空間を有する筒状の部材であって、下部シェル3の底面部3bに接合される終端部45と、その終端部45から上方に延在する周壁部44と、周壁部44に繋がる接続部43と、接続部43と繋がり更に上方に延在し且つ内側空間の直径が周壁部44より小さい嵌合壁部42と、嵌合壁部42に繋がり内部空間側に曲がって終端し、その端縁によって開口部を形成する終端部41とを有する。図1に示すように、終端部45が下部シェル3の嵌合孔3cの近傍の位置に、且つ、嵌合孔3cに固定された第1点火器23が内筒部材40の内部に収容されるように内筒部材40が底面部3bに接合されると、周壁部44及び嵌合壁部42は底面部3bに対して概ね垂直に且つ頂面部2dに向かって延在した状態となる。
【0028】
また、上下隔壁部材10は、終端部15と、その終端部15から下部シェル3の周壁部3aに沿って延在する嵌合壁部14と、嵌合壁部14に繋がりハウジング4内を概ね上下の空間に分割する分割壁部13と、分割壁部13に繋がり上部シェル2の頂面部2dに向かって延在する周壁部12とを有する。なお、周壁部12の開放端部11によって、上下隔壁部材10には開口部が形成されている。そして、図1に示すように、終端部15が下部シェル3の周壁部3aの終端面上に置かれて上下隔壁部材10がハウジング4に取り付けられたとき、開放端部11によって形成される上下隔壁部材10の開口部に、内筒部材40の嵌合壁部42が嵌入された状態となる。その結果、上下隔壁部材10は、下部シェル3の周壁部3aと内筒部材40とによって支えられた状態でハウジング4内に配置されることになり、その配置状態では、分割壁部13は、上部シェル2の頂面部2dや下部シェル3の底面部3bに概ね平行となる壁面を形成している。
【0029】
また、内筒部材40の周壁部44には連通孔46が設けられており、連通孔46は、上下隔壁部材10と内筒部材40により分割されて形成される第1空間21と第2空間25とを連通する。また、連通孔46の近傍には、カバー部材47と閉塞部材48が設けられている。カバー部材47は、第2空間25側における連通孔46の開口部近傍に配置され、連通孔46に流れ込む燃焼ガスの流れ(すなわち、燃焼ガスが連通孔46に向かって流れる方向)を規定する機能を有する。また、閉塞部材48は、第1空間21側における連通孔46の開口部を閉塞するように配置される。カバー部材47と閉塞部材48の詳細については、後述する。
【0030】
ガス発生器1の組立については、下部シェル3の嵌合孔3c、3dにそれぞれ第1点火器23、第2点火器27を固定し、内筒部材40が第1点火器23を収容するようにその内筒部材40を下部シェル3に対して当接する。このときカバー部材47及び閉塞部材48も取り付けられる(閉塞部材48は内筒部材40を下部シェル3に取り付ける前に終端部45側から挿入される)。このように内筒部材40が配置されることで第2空間25が形成されることになり、そこに第2ガス発生剤26が充填される。そして、第2ガス発生剤26が充填されると、下部シェル3及び内筒部材40に対して上下隔壁部材10が取り付けられる。このとき、上下隔壁部材10と充填されている第2ガス発生剤26との間には、第2ガス発生剤26の振動を抑制するためのクッション29が配置される。また、第2ガス発生剤26と下部シェル3との接触により第2ガス発生剤26の粉化を抑制するための、樹脂製のシート部材28が下部シェル3の周壁部3aの内壁面に配置されている。
【0031】
そして、上下隔壁部材10が取り付けられると、フィルタ32を配置し、その内側に第1ガス発生剤22を充填するとともに上部シェル2が取り付けられる。上記の通り、上部シェル2の嵌合壁部2aによる内部空間の半径は、周壁部2cによる内部空間の半径より大きく形成されているため、上部シェル2は、その突き当て部2bが上下隔壁部材10の終端部15に突き当たるまで、下部シェル3に対して嵌め込まれる。上部シェル2の突き当て部2bが終端部15に突き当たった状態において、嵌合壁部14は下部シェル3の周壁部3aに嵌合された状態となる。なお、ハウジング4において、上部シェル2、下部シ
ェル3の接触部位は、内部に充填されるガス発生剤の防湿等のために好適な接合方法(例えば、溶接等)により接合される。
【0032】
このようにハウジング4においては、上下隔壁部材10と内筒部材40とによってその内部空間が概ね上下に2つの空間、すなわち第1空間21と第2空間25に分割されることになる。なお、内筒部材40の内部空間は、終端部41による開口部を介して上部シェル2側の内部空間と繋がることで、第1空間21が形成されることになる。ハウジング4の内部空間のうち第1空間21には、第1点火器23、第1ガス発生剤22が配置され、第2空間25には、第2点火器27、第2ガス発生剤26が配置されることで、ガス発生器1は2つの第1点火器23、第2点火器27を備えるデュアルタイプのガス発生器として構成されている。なお、第1点火器23と第2点火器27はともに下部シェル3の底面部3b上に固定されており、そのため、第1点火器23は、第1点火器23の側方が内筒部材40に囲まれ、且つその頂部が内筒部材40の終端部41から上部シェル2側に飛び出さないように、内筒部材40内に収められた状態となっている。
【0033】
ここで、第1空間21では、内筒部材40による収容空間には第1点火器23が収容されるため、その上方の空間(概ね、上下隔壁部材10より上方の空間)に第1ガス発生剤22が充填されることになるが、その第1ガス発生剤22を取り囲むように環状のフィルタ32が配置されている。また、第1ガス発生剤22が第1空間21内で不要に振動しないように付勢するクッション31が、上部シェル2の頂面部2dの内側に配置されている。第1ガス発生剤22は、比較的燃焼温度の低いガス発生剤を使用している。第1ガス発生剤22の燃焼温度は、1000~1700℃の範囲にあることが望ましく、例えば、硝酸グアニジン(41重量%)、塩基性硝酸銅(49重量%)及びバインダーや添加物からなる、単孔円柱状のものを用いることができる。
【0034】
なお、フィルタ32は、ステンレス鋼製平編の金網を半径方向に重ね、半径方向及び軸方向に圧縮して形成されており、第1ガス発生剤22による燃焼ガスを冷却し、その燃焼残渣を捕集する。フィルタ32として、その他に針金を心棒に多層に巻いて形成された巻線タイプの構造のものを採用してもよい。なお、フィルタ32は、第2空間25に充填された第2ガス発生剤26の燃焼残渣も捕集する。また、上部シェル2の周壁部2cとフィルタ32との間に形成された間隙33により、フィルタ32の周囲に半径方向断面に環状のガス通路が形成される。そして、この間隙33により、燃焼ガスはフィルタ32の全領域を通過し、フィルタ32の有効利用と燃焼ガスの効果的な冷却・浄化が達成される。間隙33を流れる燃焼ガスは、周壁部2cに設けられたガス排出孔5に至る。また、ハウジング4内に外部より湿気が侵入するのを阻止するために、ガス発生器1の作動前では、アルミニウムテープ34によりガス排出孔5がハウジング4の内部から塞がれている。
【0035】
また、第2空間25では、下部シェル3の嵌合孔3dに固定された第2点火器27に対応して、第2ガス発生剤26が充填されている。第2ガス発生剤26にも、第1ガス発生剤22と同様に、硝酸グアニジン(41重量%)、塩基性硝酸銅(49重量%)及びバインダーや添加物からなる、単孔円柱状のものを用いることができる。
【0036】
このような構成により、ガス発生器1では第1点火器23の作動による第1ガス発生剤22の燃焼と、第2点火器27の作動による第2ガス発生剤26の燃焼とによって、比較的多量の燃焼ガスを生成し、外部に放出することができる。また、本実施例においては、第2点火器27は、第1点火器23の作動タイミング以降の所定のタイミングで作動される。各点火器の作動タイミングは、そこで発生する燃焼ガスの外部への放出タイミングに相関する。したがって、ガス発生器1に対して求められる燃焼ガスの放出特性に応じて、各点火器の作動タイミングは決定され、それによってガス発生器1全体の出力性能が決まる。ここで、ガス発生器1では、第1点火器23が作動すると、第1ガス発生剤22が燃
焼し、第1空間21で生じた燃焼ガスは、フィルタ32を経由してガス排出孔5を経て外部へと放出されることが想定されている。一方で、第1点火器23以降に作動する第2点火器27によって第2ガス発生剤26が燃焼されると、第2空間25で生じた燃焼ガスは、連通孔46を経て第1空間21へ移り、そしてフィルタ32およびガス排出孔5を経て外部へと放出されることが想定されている。したがって、ガス発生器1では、第1点火器23の作動時と第2点火器27の作動時のそれぞれにおいて、連通孔46における燃焼ガスの流れが適切に制御されなければ、ガス発生器1として想定された燃焼ガスの放出特性を発揮することができなくなる。
【0037】
<カバー部材47について>
そこで、ガス発生器1では、上述したように連通孔46における燃焼ガスの流れを好適に制御できるように、連通孔46の近傍にカバー部材47と閉塞部材48とが配置されている。カバー部材47について、図2図4に基づいて説明する。図2及び図3は、カバー部材47の概略構成を示す。また、図4は、カバー部材47が内筒部材40に対して固定された状態に関する、内筒部材40の軸方向に沿った断面を示している。
【0038】
ここで、カバー部材47は、円筒状の胴部47aと、胴部47aから半径方向外側に拡径していく傘部(ガイド部)47bとを有している。胴部47aは、内筒部材40の周壁部44に圧入されて、胴部47aが連通孔46の第2空間25側の開口部を塞がない、該開口部の近傍の位置に位置決めされる。この結果、胴部47aの内周面が周壁部44の外周面に圧接された状態となり、内筒部材40に対してカバー部材47が固定される。そして、その固定状態においては、傘部47bは、周壁部44の外表面及び内表面に対して一定の鋭角θで傾斜した状態となっている。図4に示すように、当該傾斜角θは、周壁部44の外表面及び内表面に平行な軸L1と、傘部47bの内表面L0とが為す角度として定義される。
【0039】
このように内筒部材40に対して固定されたカバー部材47は、第2空間25で第2点火器27が作動して第2ガス発生剤26が燃焼すると、そこで発生した燃焼ガスを傘部47bの内表面に沿って連通孔46に導くことができる。すなわち、傘部47bがガイド部材として機能して連通孔46へ燃焼ガスが集約されやすくなる。また、傘部47bは、その方向付けにより連通孔46での燃焼ガスの流れを規定することになる。更に、図4(a)に示すように、傘部47bは、第2空間25側の連通孔46の開口部を塞がないように、且つ、周壁部44の外表面に対して開くように傾斜しているため、当該連通孔46の開口部近くに第2ガス発生剤26が存在しない空間SP0を確保することができる。この空間SP0が存在することで、第2ガス発生剤26により連通孔46の開口部が塞がれてしまうことを抑制できる。当該構成は、傘部47bによるガイド機能と同様に、連通孔46への燃焼ガスの集約を促進させるものである。
【0040】
<カバー部材47の変形例1>
また、図2の下段(b)には、カバー部材47の変形例を示す。図2(a)に示す形態では、傘部47bはその周方向に連続する傾斜面を有するように形成されているが、図2(b)に示す形態では、傘部47bは、内筒部材40の周壁部44に設けられた連通孔46に対応する部分のみに、カバー部材47の周方向において傾斜面が断続的に配置される。本変形例では、連通孔46は周壁部44の周方向に沿って等間隔で4つ設けられており、したがって、図2(b)に示すカバー部材47は、断片化された傘部47bを4つ有している。また、第2ガス発生剤26が空間SP0に入り込みにくくする効果を更に高める目的で、1つの傘部47bの両側端部にカバーを形成してもよい。
【0041】
<カバー部材の変形例2>
更なるカバー部材の変形例について、図3に基づいて説明する。本変形例においては、
カバー部材は、内筒部材40の周壁部44の一部が加工されて、上記カバー部材47の傘部47bのように燃焼ガスをガイドする構成部が形成される。具体的には、周壁部44の一部に切込み部51を設ける。この切込み部51は、周壁部44の周方向に沿って延在し周壁部44の外表面と内表面とを貫通する。そして、この切込み部51を、内筒部材40の内側から外側に押し出すことで周壁部44の外表面に開口部を形成する。当該開口部から周壁部44の内表面に至る貫通孔が連通孔46となるとともに、当該開口部の下方に形成される傾斜部53が燃焼ガスをガイドする構成部となる。すなわち、本変形例では、傾斜部53が、上記カバー部材47の傘部47bに相当する構成となり、以て、傾斜部53により連通孔46への燃焼ガスの集約及び連通孔46での燃焼ガスの流れの方向付けが促進される。
【0042】
<閉塞部材48について>
次に、閉塞部材48について図4図6に基づいて説明する。図4に示すように、閉塞部材48は、円筒状の周壁面48aと、周壁面48aから半径方向内側に延出した延出部48bとを有している。延出部48bは、周壁面48aに対して折り曲げられて接続しているため、閉塞部材48全体において、その接続部位の近傍は比較的剛性が高く形成されている。そして、周壁面48aは、内筒部材40の周壁部44の内側に圧入されて、周壁面48aが連通孔46の第1空間21側の開口部を閉塞する位置に位置決めされる。更には、周壁面48aが当該開口部を閉塞する閉塞位置は、周壁面48aの、延出部48bとの接続部位側の端部よりその反対側の端部の近くに位置している。この結果、周壁面48aの外表面が周壁部44の内周面に圧接された状態となり、閉塞部材48が連通孔46の開口部を第1空間21側から閉塞した状態で内筒部材40に対して固定される。
【0043】
このように内筒部材40に対して固定された閉塞部材48は、第1空間21で第1点火器23が作動して第1ガス発生剤22が燃焼すると、そこで発生した燃焼ガスが周壁面48aを内筒部材40の周壁部44に押し付けるように加圧する。しかし、加圧された周壁面48aの概ね全面は、内筒部材40の周壁部44によって支持されるため、その変形は阻害されることになり、以て、連通孔46が閉塞部材48によって閉塞された状態は維持されることになる。
【0044】
一方で、第2空間25で第2点火器27が作動して第2ガス発生剤26が燃焼すると、そこで発生した燃焼ガスは、上述したようにカバー部材47によって効率的に連通孔46へと導かれる。このとき、第2ガス発生剤26の燃焼ガスは、傘部47bの傾斜状態による方向付けで、閉塞部材48の周壁面48aに対して所定角度で当たるように連通孔46での流れが規定される。当該所定角度は、第2ガス発生剤26の燃焼ガスが当たることで第2空間25側から周壁面48aに作用する圧力により、周壁面48aを第1空間21側に折り曲げるモーメントを生じさせる作用角度である。すなわち、図4の下段(b)に示すように、第2ガス発生剤26の燃焼ガスが連通孔46を通り所定角度で周壁面48aに当たることで、周壁面48aは、延出部48bとの接続部位の近くである部位48cで折り曲げられる。特に、第2ガス発生剤26の燃焼ガスによる圧力が作用する部位、すなわち周壁面48aが連通孔46を閉塞している閉塞部位は、周壁面48aの上方の端部近くであるため、当該圧力が効果的に周壁面48aを折り曲げるモーメントとして作用することになる。そして、このように周壁面48aが変形すると、連通孔46が閉塞部材48によって閉塞された状態は解消されることになる。
【0045】
閉塞部材48についてまとめると、第1点火器23が作動するまでの期間、及び第1点火器23が作動してから第2点火器27が作動するまでの期間においては、図5の上段に示すように、周壁面48aは変形することなく、内筒部材40に圧入された状態を維持している。このため、第1ガス発生剤22の燃焼ガスは、連通孔46に流れ込むことなく、ガス排出孔5から外部へ放出されていく。そして、その後第2点火器27が作動すると、
図5の下段に示すように、連通孔46を閉塞している閉塞部位を中心として周壁面48aが変形し、周壁面48aにおいて変形部位48a1と概ね変形前の状態が維持されている非変形部位48a2が形成される。この変形部位48a1は連通孔46に対応する部位であるため、変形部位48a1の形成により、内筒部材40と閉塞部材48との間に間隙が形成され、第2ガス発生剤26の燃焼ガスが第2空間25から第1空間21へと流れ込むことができるようになる。第1空間21へ流れ込んだ当該燃焼ガスは、ガス排出孔5から外部へ放出されていく。
【0046】
このようにガス発生器1は、カバー部材47と閉塞部材48を備えることで、第1点火器23の作動により生じる第1ガス発生剤22の燃焼ガスを的確にその外部に放出させ、且つ、第2点火器27の作動により生じる第2ガス発生剤26の燃焼ガスも的確にその外部に放出させることを可能とする。すなわち、2台の点火器を有するガス発生器1において、連通孔46における燃焼ガスの流れが好適に制御され、想定されている燃焼ガスの放出特性を実現することが可能となる。
【0047】
<閉塞部材48の変形例>
ここで、閉塞部材48の変形例について、図6に基づいて説明する。本変形例の閉塞部材48も、図5に示す形態と同様に、円筒状の周壁面48aとそれより半径方向内側に延出する延出部48b(図6においては不図示)を有しているが、更に、周壁面48a上に脆弱部49が形成されている。この脆弱部49は、周壁面48aの他の部位よりも強度が弱められた部位であり、具体的には、周壁面48aの上側端部(延出部48bが接続されていない端部)から始まり、その下側端部(延出部48bと接続している端部)の近くまで至る破断線である。周壁面48aには、一対の脆弱部49により挟まれた領域49aが4つ形成され、各領域49aが内筒部材40の周壁部44に設けられた4つの連通孔46のそれぞれに対応し、図4に示す状態と同じように各連通孔46の第1空間21側の開口部をその領域49aで閉塞するように、閉塞部材48が内筒部材40に対して圧入されてそこに固定される。
【0048】
このような閉塞部材48を用いた場合でも、第1点火器23が作動するまでの期間、及び第1点火器23が作動してから第2点火器27が作動するまでの期間においては、図6の上段に示すように、周壁面48aは変形することなく、内筒部材40に圧入された状態を維持している。このため、第1ガス発生剤22の燃焼ガスは、連通孔46に流れ込むことなく、ガス排出孔5から外部へ放出されていく。そして、その後第2点火器27が作動すると、第2ガス発生剤26の燃焼ガスによる圧力で脆弱部49が破断する。その結果、図6の下段に示すように、領域49aが内側に倒れ込むように周壁面48aの下側端部近くで折り曲がって変形し、周壁面48aにおいて変形部位48a1と概ね変形前の状態が維持されている非変形部位48a2が形成される。この変形部位48a1は連通孔46に対応する部位であるため、変形部位48a1の形成により第2ガス発生剤26の燃焼ガスが第2空間25から第1空間21へと流れ込むことが可能となり、以て、第1空間21へ流れ込んだ当該燃焼ガスは、ガス排出孔5から外部へ放出されていく。したがって、図6に示す閉塞部材を用いたガス発生器1においても、連通孔46における燃焼ガスの流れが好適に制御され、想定されている燃焼ガスの放出特性を実現することが可能となる。
【0049】
<実施例2>
第2の実施例に係るガス発生器1について、図7に基づいて説明する。図7は、図4と同じようにガス発生器1における内筒部材40近傍の構成を拡大した図である。第2の実施例のガス発生器1では、内筒部材40の周壁部44に設けられている連通孔46は、その中心軸L2が、周壁部44の外表面及び内表面に平行な軸L1に対して鋭角の所定角度θで交わるように形成されている。なお、連通孔46の第1空間21側の開口部は、上記の第1の実施例と同じように閉塞部材48によって閉塞された状態となっている。閉塞部
材48の構成は第1の実施例と同じであるため、その詳細な説明は割愛する。
【0050】
また、第2の実施例のガス発生器1において、内筒部材40に対しては、上記の第1の実施例のカバー部材47に相当する構成は設けられていない。しかし、上記の通り、連通孔46そのものが軸L1に対して傾斜するように周壁部44に形成されているため、第2空間25で第2点火器27が作動して第2ガス発生剤26が燃焼すると、そこで発生した燃焼ガスは連通孔46に沿って流れ方向付けがされる。その結果、当該燃焼ガスは、閉塞部材48の周壁面48aに対して上記所定角度、すなわち周壁面48aを第1空間21側に折り曲げて変形させるために好ましい作用角度で当たるように、その流れが規定される。
【0051】
このようにガス発生器1でも、図7に示すように軸L1に対して傾斜した連通孔46と閉塞部材48によって、第1点火器23の作動により生じる第1ガス発生剤22の燃焼ガスを的確にその外部に放出させ、且つ、第2点火器27の作動により生じる第2ガス発生剤26の燃焼ガスも的確にその外部に放出させることを可能とする。すなわち、2台の点火器を有するガス発生器1において、連通孔46における燃焼ガスの流れが好適に制御され、想定されている燃焼ガスの放出特性を実現することが可能となる。
【0052】
<実施例3>
第3の実施例に係るガス発生器1について、図8に基づいて説明する。図8は、第3の実施例のガス発生器101の高さ方向の断面図である。ガス発生器101は、上部シェル102及び下部シェル103で形成されるハウジング104内に充填されたガス発生剤を燃焼させて、燃焼ガスを上部シェル102設けられたガス排出孔105から外部に放出するように構成されている。上部シェル102は周壁部102cと頂面部102dを有し、これらにより凹状の内部空間を形成する。頂面部102dにガス排出孔105が設けられている。なお、ガス排出孔105は、後述の点火器が作動する前にハウジング104内への湿気の侵入を抑制するために、不図示のアルミニウムテープによりハウジング104の内部から塞がれてもよい。また、下部シェル103は周壁部103aと底面部103bを有し、これらにより凹状の内部空間を形成する。頂面部102dは、後述の下部シェル103の底面部103bとともに、上面視で概ね円形状を有しており、周壁部102c及び後述の下部シェル103の周壁部103aは、それぞれ頂面部102d、底面部103bの周囲を囲み、各面部から概ね垂直に延在した環状の壁面を形成している。周壁部102cの一端側に頂面部102dが接続し、その他端側は上部シェル102の開口部となる。周壁部103aの一端側に底面部103bが接続し、その他端側は下部シェル103の開口部となる。
【0053】
そして、ハウジング104の内部には、円筒状の内筒部材140が配置されている。内筒部材140の下端部は下部シェル103の底面部103bに接合され、内筒部材140の上端部は上部シェル102の頂面部102dに接合されている。そのため、ハウジング104の内部の空間は、内筒部材140の内側の第1空間121と、内筒部材140の外側の第2空間125とに分割される。なお、内筒部材140と上部シェル102との接合部位はガス排出孔105とは干渉せず、全てのガス排出孔105は、内筒部材140の内側の第1空間121に対応する、頂面部102dの一部の領域に位置している。また、内筒部材140には、第1空間121と第2空間125とを連通する連通孔146が設けられている。連通孔146の中心軸は、内筒部材140の外表面及び内表面に対して概ね直交する。
【0054】
そして、第1空間121には、第1ガス発生剤122が充填されるとともに、その燃焼のための第1点火器123が底面部103bに配置されている。更に、第1空間121には、ガス排出孔105を覆うように層状のフィルタ132が配置されている。フィルタ1
32は、ステンレス鋼製平編の金網で形成されており第1ガス発生剤122による燃焼ガスを冷却し、その燃焼残渣を捕集する。また、フィルタ132が金網で形成されるため、ある程度のクッション性を有している。そこで、第1ガス発生剤122が第1空間121で不要に振動しないように、フィルタ132により第1ガス発生剤122に付勢力を付与して底面部103bに押さえつけてもよい。また、別法として、そのような付勢力を付すためのクッションを、例えば、第1点火器123の周囲の底面部103b上に配置してもよい。更に、第2空間125には、第2ガス発生剤126が充填されるとともに、その燃焼のための第2点火器127が底面部103bに配置されている。そして、第2空間125における第2ガス発生剤126の不要な振動を抑制するために、クッション129が頂面部102d側に配置されている。第1ガス発生剤122及び第2ガス発生剤126としては、例えば、硝酸グアニジン(41重量%)、塩基性硝酸銅(49重量%)及びバインダーや添加物からなる、単孔円柱状のものを用いることができる。
【0055】
そして、このように構成されるガス発生器101でも第1点火器123が作動し、それ以降に第2点火器127が作動されることで、ガス発生器101として所望の燃焼ガスの放出特性の発揮が想定されている。この場合、第1ガス発生剤122の燃焼ガスは、連通孔146を介して第1空間121から第2空間125に流れ込むことなく、ガス排出孔105から放出されることが求められ、且つ、第2ガス発生剤126の燃焼ガスは、連通孔146を介して第2空間125から第1空間121に流れ込み、更にガス排出孔105から放出されることが求められる。このように連通孔146での燃焼ガスの流れが制御されるために、ガス発生器101においても内筒部材140に対してカバー部材147と閉塞部材148が設けられている。
【0056】
カバー部材147の構造は、基本的には第1の実施例で示したカバー部材47と同じである。カバー部材147は、胴部が連通孔146の第2空間125側の開口部を塞がない位置であって、且つ、その傘部により第2ガス発生剤126の燃焼ガスが連通孔146に向かってガイドされる位置に来るように内筒部材140に対して固定される。また、閉塞部材148は、第1の実施例で示した閉塞部材48の周壁面48aに相当する構成のみを有する。当該閉塞部材148は、内筒部材140の内表面に圧入されて連通孔146の第1空間121側の開口部を閉塞するように配置される。このとき、閉塞部材148上の閉塞部位は、その下端側より上端側の近くに位置している。
【0057】
このようにカバー部材147と閉塞部材148が設けられることで、第1点火器123が作動したときには、第1ガス発生剤122の燃焼ガスによって閉塞部材148が第1空間121側から加圧されても内筒部材140によって支持されるため、閉塞部材148はその変形が阻害され、連通孔146の閉塞状態は維持される。そのため、第1ガス発生剤122の燃焼ガスは、ガス排出孔105より外部に放出される。また、その後第2点火器127が作動すると、第2ガス発生剤126の燃焼ガスが円滑に連通孔146に集められるとともに、連通孔146を流れる当該燃焼ガスの流れによって、閉塞部材148に対して第2空間125側から第1空間121に圧力が掛けられ、第1の実施例で示したように閉塞部材148が第1空間121側に折れ曲がるように変形する。この結果、第2ガス発生剤126の燃焼ガスは、連通孔146を通って第1空間121に移りガス排出孔105から外部に放出される。このように第3の実施例のガス発生器101においても、連通孔146での燃焼ガスの流れが好適に制御され、以て、想定された燃焼ガスの放出特性を発揮することが可能となる。
【符号の説明】
【0058】
1、101 :ガス発生器
4、104 :ハウジング
5、105 :ガス排出孔
10 :上下隔壁部材
21、121 :第1空間
22、122 :第1ガス発生剤
23、123 :第1点火器
25、125 :第2空間
26、126 :第2ガス発生剤
27、127 :第2点火器
40、140 :内筒部材
46、146 :連通孔
47、147 :カバー部材
47a :胴部
47b :傘部
48、148 :閉塞部材
48a :周壁面
48b :延出部
49 :脆弱部
51 :切込み部
53 :傾斜部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8