(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】画像形成装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20220712BHJP
G03G 15/23 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
G03G21/00 384
G03G15/23
(21)【出願番号】P 2017210161
(22)【出願日】2017-10-31
【審査請求日】2020-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩川 康夫
(72)【発明者】
【氏名】川上 嘉輝
(72)【発明者】
【氏名】大久保 貴弘
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特許第6907889(JP,B2)
【文献】特開2003-201069(JP,A)
【文献】特開平11-352746(JP,A)
【文献】特開2008-096593(JP,A)
【文献】特開2002-049184(JP,A)
【文献】特開2001-134106(JP,A)
【文献】特開平02-123065(JP,A)
【文献】実開昭55-164654(JP,U)
【文献】特開2014-122960(JP,A)
【文献】特開昭63-127932(JP,A)
【文献】特開2004-069917(JP,A)
【文献】特開平11-193188(JP,A)
【文献】特許第6977349(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2009/0196667(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 21/14
G03G 15/00-15/01
G03G 15/16
G03G 15/20
G03G 15/23
B65H 5/02
B65H 5/06
B65H 5/22
B65H 29/12-29/24
B65H 29/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙に画像を形成する画像形成部において、ニップ部を形成する回転体対と、
用紙を前記ニップ部に搬送する搬送経路と、
前記ニップ部よりも前記搬送経路の下流側に設けられた第1分岐点から分岐して前記ニップ部よりも前記搬送経路の上流側に設けられた合流点に繋がれた引き込み経路と、前記引き込み経路の途中に設けられた第2分岐点から分岐して前記ニップ部よりも前記搬送経路の上流側に設けられた再給紙点に繋がれた再給紙経路と、を有する反転搬送経路と、
片面に画像が形成された用紙を用紙後端が前記引き込み経路の前記第2分岐点よりも前記合流点側に到達するまで引き込む引き込み動作と、前記引き込み動作後に、用紙を逆方向に搬送して前記再給紙経路を介して表裏が反転された用紙を前記再給紙点から前記搬送経路に再給紙する再給紙動作と、を行う制御部と、
を備え、
前記合流点は、前記再給紙点よりも用紙搬送方向上流であり、
前記制御部は、用紙の搬送方向の長さが前記引き込み動作完了時に前記ニップ部に到達する長さ以上の場合、前記再給紙動作前に前記回転体対を離間させて、画像形成時に用紙の画像形成面側となる一方の回転体に用紙を非接触な状態とさせることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、用紙の長さ、種類及び坪量が所定条件を満たす場合には、前記引き込み動作により用紙が前記ニップ部に到達する前に、前記回転体対を離間させることを特徴とする請求項
1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記再給紙動作前に前記回転体対を離間させる際、当該用紙を前記一方
の回転体に非接触で且つ他方の回転体に接触した状態とさせ、前記再給紙動作において前記他方の回転体を画像形成時とは逆方向に回転させることを特徴とする請求項1
又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
用紙に画像を形成する画像形成部において、ニップ部を形成する回転体対と、
用紙を前記ニップ部に搬送する搬送経路と、
前記ニップ部よりも前記搬送経路の下流側に設けられた第1分岐点から分岐して前記ニップ部よりも前記搬送経路の上流側に設けられた合流点に繋がれた引き込み経路と、前記引き込み経路の途中に設けられた第2分岐点から分岐して前記ニップ部よりも前記搬送経路の上流側に設けられた再給紙点に繋がれた再給紙経路と、を有する反転搬送経路と、
を備え、
前記合流点は、前記再給紙点よりも用紙搬送方向上流であり、
片面に画像が形成された用紙を用紙後端が前記引き込み経路の前記第2分岐点よりも前記合流点側に到達するまで引き込む引き込み動作と、前記引き込み動作後に、用紙を逆方向に搬送して前記再給紙経路を介して表裏が反転された用紙を前記再給紙点から前記搬送経路に再給紙する再給紙動作と、を行う画像形成装置のコンピューターを、
用紙の搬送方向の長さが前記引き込み動作完了時に前記ニップ部に到達する長さ以上の場合、前記再給紙動作前に前記回転体対を離間させて、画像形成時に用紙の画像形成面側となる一方の回転体に用紙を非接触な状態とさせる制御部として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンターやスキャナー、コピー機、ファックス等の機能を兼ねた多機能な画像形成装置において、用紙の両面に画像形成を行う両面印刷の機能を備えたものが知られている。
両面印刷を実行する機構としては、例えば、搬送経路上の転写ニップ部及び定着ニップ部を通って片面に画像が形成された用紙を、搬送経路から分岐して設けられた引き込み経路に引き込んだ後、引き込み経路に設けられた反転ローラー対を逆回転させて、再給紙経路を介して搬送経路の転写ニップ部の上流に再給紙するものなどが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、近年、このような画像形成装置において、装置構成に対して相対的に用紙長の長い用紙に対しても両面印刷を行いたいという要求が高まっている。
かかる用紙に両面印刷を行うには、用紙の反転を達成させるために引き込み経路の距離を長く取る必要があり、例えば、画像形成装置内部の側面に沿って装置下部まで延在するように引き込み経路を設けるなどの構成が考えられている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-124100号公報
【文献】特開平11-139646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献2に記載の構成とした場合、引き込み経路に引き込まれた際に用紙は画像形成装置を構成する複数ユニットに跨がった状態となるため、この状態でジャムが発生すると、ジャム処理のためのユニット開放動作により用紙が裂けてしまうおそれがある。また、これを回避するため機内において引き込み経路を広く取ると、筐体の剛性が確保できなくなる可能性がある。
【0006】
そこで、引き込み経路の引き込み方向奥側を、搬送経路の転写ニップ部の上流に接続させるように構成することで、引き込み経路の距離を確保する構成が検討されている。
しかしながら、このような構成においては、用紙の長さによっては、用紙の引き込み時に用紙先端が搬送経路上の転写ニップ部に到達してしまうおそれがある。転写ニップ部を構成する転写ベルトは逆回転駆動可能に構成されていないため、そのような状態で再給紙動作が開始されると、用紙との接触で擦れて傷がつき、画像ノイズが発生して画像品質を低下させる要因となる。
【0007】
そこで、本発明は、画像品質を低下させることなく、用紙の両面印刷を行うことができる画像形成装置及びプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の画像形成装置は、
用紙に画像を形成する画像形成部において、ニップ部を形成する回転体対と、
用紙を前記ニップ部に搬送する搬送経路と、
前記ニップ部よりも前記搬送経路の下流側に設けられた第1分岐点から分岐して前記ニップ部よりも前記搬送経路の上流側に設けられた合流点に繋がれた引き込み経路と、前記引き込み経路の途中に設けられた第2分岐点から分岐して前記ニップ部よりも前記搬送経路の上流側に設けられた再給紙点に繋がれた再給紙経路と、を有する反転搬送経路と、
片面に画像が形成された用紙を用紙後端が前記引き込み経路の前記第2分岐点よりも前記合流点側に到達するまで引き込む引き込み動作と、前記引き込み動作後に、用紙を逆方向に搬送して前記再給紙経路を介して表裏が反転された用紙を前記再給紙点から前記搬送経路に再給紙する再給紙動作と、を行う制御部と、
を備え、
前記合流点は、前記再給紙点よりも用紙搬送方向上流であり、
前記制御部は、用紙の搬送方向の長さが前記引き込み動作完了時に前記ニップ部に到達する長さ以上の場合、前記再給紙動作前に前記回転体対を離間させて、画像形成時に用紙の画像形成面側となる一方の回転体に用紙を非接触な状態とさせることを特徴とする。
【0009】
また、本発明のプログラムは、
用紙に画像を形成する画像形成部において、ニップ部を形成する回転体対と、
用紙を前記ニップ部に搬送する搬送経路と、
前記ニップ部よりも前記搬送経路の下流側に設けられた第1分岐点から分岐して前記ニップ部よりも前記搬送経路の上流側に設けられた合流点に繋がれた引き込み経路と、前記引き込み経路の途中に設けられた第2分岐点から分岐して前記ニップ部よりも前記搬送経路の上流側に設けられた再給紙点に繋がれた再給紙経路と、を有する反転搬送経路と、
を備え、
前記合流点は、前記再給紙点よりも用紙搬送方向上流であり、
片面に画像が形成された用紙を用紙後端が前記引き込み経路の前記第2分岐点よりも前記合流点側に到達するまで引き込む引き込み動作と、前記引き込み動作後に、用紙を逆方向に搬送して前記再給紙経路を介して表裏が反転された用紙を前記再給紙点から前記搬送経路に再給紙する再給紙動作と、を行う画像形成装置のコンピューターを、
用紙の搬送方向の長さが前記引き込み動作完了時に前記ニップ部に到達する長さ以上の場合、前記再給紙動作前に前記回転体対を離間させて、画像形成時に用紙の画像形成面側となる一方の回転体に用紙を非接触な状態とさせる制御部として機能させるプログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、画像品質を低下させることなく、用紙の両面印刷を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】引き込み動作時の長尺紙の位置を示す概略図である。
【
図3】引き込み動作完了時の長尺紙の位置を示す概略図である。
【
図4】再給紙動作時の長尺紙の位置を示す概略図である。
【
図5】
図1の画像形成装置の制御系の構成を概略的に示すブロック図である。
【
図6】第1の実施の形態の長尺紙反転制御処理を示すフローチャートである。
【
図7】
図6の長尺紙反転制御処理による転写部の動作を説明するための図である。
【
図8】第1の実施の形態の転写部付近の構成の変形例を示す模式図である。
【
図9】第2の実施の形態の転写部付近の構成を示す模式図である。
【
図10】第2の実施の形態の長尺紙反転制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施の形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施の形態及び図示例に限定するものではない。
【0013】
<第1の実施の形態>
[画像形成装置の構成]
まず、本実施の形態における画像形成装置100の構成について説明する。
図1は、本実施の形態に係る画像形成装置100を模式的に示す構成図である。
この画像形成装置100は、例えば複写機といった電子写真方式の画像形成装置100であり、複数の感光体を一本の中間転写ベルトに対面させて縦方向に配列することによりフルカラーの画像を形成する、いわゆる、タンデム型カラー画像形成装置である。
また、画像形成装置100は、規格サイズである定型紙Pのみならず、当該定型紙Pよりも用紙長の長い長尺紙P1(
図3等参照)に対しても画像形成を行うことができる。定型紙Pは、後述するように給紙トレイ21等に収容され、長尺紙P1は、画像形成装置100に外部接続される長尺紙トレイ41や手差しトレイ42から装置内に給紙される。
以下の説明においては、主に、長尺紙P1に対する画像形成について説明するが、定型紙Pに対しても同様に画像形成可能である。
【0014】
画像形成装置100は、原稿読取装置SC、画像形成部10、用紙搬送部20、制御部11を主体に構成され、これらが一つの筐体内に収められている。
【0015】
原稿読取装置SCは、走査露光装置の光学系により原稿の画像を走査露光し、その反射光をラインイメージセンサーにより読み取り、これにより、画像信号を得る。この画像信号は、A/D変換、シェーディング補正、圧縮等の処理が施された後、画像データとして制御部11に入力される。なお、制御部11に入力される画像データとしては、原稿読取装置SCで読み取ったものに限らず、例えば、通信部13により画像形成装置100に接続されたパーソナルコンピューターや他の画像形成装置から受信したものであっても良い。
【0016】
画像形成部10は、例えば、4組の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kと、中間転写ベルト(一方の回転体)6及び二次転写ローラー(他方の回転体)8を有する転写部9と、定着装置50と、を備えて構成されている。画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kは、イエロー(Y)の画像を形成する画像形成ユニット10Y、マゼンタ(M)の画像を形成する画像形成ユニット10M、シアン(C)の画像を形成する画像形成ユニット10C、ブラック(K)の画像を形成する画像形成ユニット10Kで構成されている。
【0017】
画像形成ユニット10Yは、感光体ドラム1Y、その周辺に配置された帯電部2Y、光書込部3Y、現像装置4Y及びドラムクリーナー5Yで構成されている。同様に、画像形成ユニット10M、10C、10Kは、感光体ドラム1M、1C、1K、その周辺に配置された帯電部2M、2C、2K、光書込部3M、3C、3K、現像装置4M、4C、4K及びドラムクリーナー5M、5C、5Kで構成されている。
【0018】
感光体ドラム1Y~1Kは、帯電部2Y~2Kによりその表面が一様に帯電させられており、光書込部3Y~3Kによる走査露光により、感光体ドラム1Y~1Kには潜像が形成される。さらに、現像装置4Y~4Kは、トナーで現像することによって感光体ドラム1Y~1K上の潜像を顕像化する。これにより、感光体ドラム1Y~1K上には、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックのいずれかに対応する所定色のトナー画像が形成される。感光体ドラム1Y~1K上に形成されたトナー画像は、1次転写ローラー7Y、7M、7C、7Kにより、回転する中間転写ベルト6上の所定位置へと逐次転写される。
中間転写ベルト6上に転写された各色よりなるトナー画像は、用紙搬送部20により所定のタイミングで搬送される長尺紙P1に対して、二次転写ローラー8によって転写される。
【0019】
二次転写ローラー8は、中間転写ベルト6と圧接して配置されることによりニップ部(以下「転写ニップ部」という)を形成する圧接部材であり、高圧電源部81(
図7(a)参照)により転写電圧が印加される。
トナー画像の長尺紙P1への転写は、二次転写ローラー8にトナーの正規帯電極性とは逆極性の転写電圧を印加し、静電引力により中間転写ベルト6上のトナー画像を長尺紙P1側に転写させることにより実施される。
【0020】
なお、本実施の形態においては、この二次転写ローラー8は、後述する長尺紙反転制御処理を実行する際に、高圧電源部81により所定の電圧が印加されることで、転写ニップ部を通過する長尺紙P1に電荷を付与して帯電状態とする電荷付与部(用紙接触手段)としても機能している。
【0021】
また、二次転写ローラー8は、制御部11の制御下で、転写ニップ部を形成する圧接状態と、中間転写ベルト6から離間した離間状態とを、切り換え可能に構成されている。
また、二次転写ローラー8は、離間状態において、二次転写時とは逆方向に回転駆動可能に構成されている。具体的には、例えば、二次転写ローラー8は、正逆方向に回転駆動可能に構成された駆動ローラーであって、制御部11の制御下で、離間状態において、二次転写時とは逆方向に回転駆動する構成とすることができる。或いは、二次転写ローラー8は、従動ローラーであって、当該二次転写ローラー8よりも上流側にあるローラー(例えば、搬送ローラー対27の下側のローラー)と連結され、この上流側のローラーの回転に伴って回転する構成としても良い。
【0022】
定着装置50は、トナー画像が転写された長尺紙P1、すなわち、転写ニップ部から送り出された長尺紙P1に定着処理を施す装置であり、例えば、一対の定着部材51、52と、当該定着部材51、52の一方又は双方を加熱するヒーター53とで構成されている。
この定着装置50は、長尺紙P1の搬送過程において、一対の定着部材51、52による加圧と定着部材51、52の有する熱との作用を通じて、長尺紙P1へのトナー画像の定着を行う。また、定着部材51と定着部材52とは圧接して配置されることによりニップ部(以下「定着ニップ部」という)を形成する圧接部材であり、制御部11の制御下で圧接状態を離間状態に切り換え可能に構成されている。
なお、定着部材51、52は、一対のローラーで構成する以外にも、ベルト同士の組み合わせや、ベルト及びローラーの組み合わせといったように、一対の回転部材からなる構成を広く採用することができる。
定着装置50により定着処理が施された長尺紙P1は、排紙ローラー28により、筐体の外部側面に取り付けられた排紙トレイ29に排出される。
【0023】
用紙搬送部20は、搬送経路R1及び反転搬送経路R2を備え、これらの経路に沿って、長尺紙P1を搬送する。
【0024】
搬送経路R1は、長尺紙トレイ41若しくは手差しトレイ42又は給紙トレイ21から、画像形成部10の転写ニップ部及び定着ニップ部を通って排紙トレイ29へ至る経路である。
長尺紙P1は、画像形成装置100に接続された長尺紙トレイ41に収容されるか、手差しトレイ42上に載置されており、当該長尺紙トレイ41又は手差しトレイ42から画像形成装置100内へ供給されて、搬送経路R1へと送り出される。
なお、定型紙Pは、給紙トレイ21に収容されており、給紙部22により取り込まれ、搬送経路R1へと送り出される。
【0025】
この搬送経路R1において、転写ニップ部よりも上流側には、長尺紙P1を搬送する搬送手段として、複数の搬送ローラー対23~27が設けられている。個々の搬送ローラー対23~27は、圧接された一対のローラーによって構成されており、電動モーターを主体とする駆動機構を通じて少なくとも一方のローラーが正方向に回転駆動することにより長尺紙P1を搬送する。また、搬送ローラー対23~27は、逆方向に回転駆動可能に構成されており、長尺紙P1を、逆送することもできる。ここで、正方向とは、長尺紙P1を下流側に搬送する回転方向であり、逆方向とは、正方向と反対の回転方向である。
また、個々の搬送ローラー対23~27を構成する一対のローラーは、制御部11の制御下で、ローラー間の状態を圧接状態と離間状態とで切り換え可能に構成されている。
なお、搬送手段は、一対のローラーで構成する以外にも、ベルト同士の組み合わせや、ベルト及びローラーの組み合わせといったように、一対の回転部材からなる構成を広く採用することができる。
【0026】
また、搬送ローラー対26は、ループローラー対として機能し、搬送ローラー対27は、レジストローラー対として機能する。すなわち、搬送経路R1において、給紙される長尺紙P1は、上流側から下流側に設けられた複数の搬送ローラー対23~26により順次搬送されて進行する。長尺紙P1の先端が搬送ローラー対27へと近づくと、搬送ローラー対26等によって搬送される長尺紙P1は、回転停止状態の搬送ローラー対27に突き当てられ、そして、搬送ローラー対26が所定時間だけ回転を継続することで、長尺紙P1にループが形成される。このループ形成の作用により、長尺紙P1の先端の曲がりが矯正される。次に、中間転写ベルト6が担持するトナー画像と同期するように所定のタイミングで搬送ローラー対27が回転を開始することで、長尺紙P1が転写ニップ部へ搬送される。
【0027】
反転搬送経路R2は、片面に対する画像形成を終えた長尺紙P1の裏面にも画像形成を行う場合(即ち、両面印刷を行う場合)に、長尺紙P1の表裏を反転するために用いられる経路であり、引き込み経路R21と再給紙経路R22とを有している。
【0028】
引き込み経路R21は、搬送経路R1の定着装置50よりも下流側の切換ゲート(第1分岐点)30と、搬送経路R1の二次転写ローラー8よりも上流側の合流点A1とを繋ぐ経路である。引き込み経路R21の途中には、第2分岐点A2が設けられている。
引き込み経路R21において第2分岐点A2よりも切換ゲート30側には、搬送ローラー対31、32が設けられ、引き込み経路R21において第2分岐点A2よりも合流点A1側には、搬送ローラー対33、34が設けられている。搬送ローラー対31~34は、上記搬送ローラー対23~27と同様に構成されている。
【0029】
再給紙経路R22は、引き込み経路R21の第2分岐点A2から分岐して設けられ、第2分岐点A2から搬送経路R1の二次転写ローラー8よりも上流側の再給紙点A3までを繋ぐ経路である。
再給紙経路R22には、搬送ローラー対35~39が設けられている。搬送ローラー対35~39は、上記搬送ローラー対23~27と同様に構成されている。
【0030】
ここで、
図2~
図4を用いて、両面印刷における長尺紙P1の動きを説明する。
図2は、片面に画像形成が行われた後の長尺紙P1が引き込み経路R21に引き込まれる時の状態を示し、
図3は、長尺紙P1の引き込みが完了した時の状態を示し、
図4は、反転された長尺紙P1が搬送経路R1に再給紙される時の状態を示している。
なお、
図2~
図4において、長尺紙P1の位置を、搬送経路R1又は反転搬送経路R2上の太線部分で示す。
【0031】
両面印刷を行う場合、片面に対する画像形成を終えた長尺紙P1は、
図2に示すように、切換ゲート30により、引き込み経路R21内へ案内され、搬送ローラー対31~34により、合流点A1側に搬送されていく(引き込み動作)。そして、第2分岐点A2に設けられるセンサー(図示略)の検出結果に基づき、長尺紙P1後端が第2分岐点A2よりも奥側(すなわち合流点A1側)に到達した時点で、
図3に示すように、長尺紙P1の搬送は停止され、引き込み動作が完了する。
このとき長尺紙P1の用紙長によっては、当該長尺紙P1の先端が、合流点A1から搬送経路R1内に進入し、転写ニップ部に到達する場合がある。本実施の形態においては、引き込み動作において長尺紙P1の先端が転写ニップ部に到達する場合には、後述する長尺紙反転制御処理が実行される。
【0032】
上記引き込み動作完了後、搬送ローラー対33、34は逆回転駆動し、引き込み経路R21内に引き込まれた長尺紙P1は逆送されて、
図4に示すように、第2分岐点A2から再給紙経路R22内へ搬送される(再給紙動作)。そして、搬送ローラー対35~39により第2分岐点A2から再給紙点A3に向かって
図4中矢印方向に搬送され、再給紙点A3から搬送経路R1内に至り、再給紙動作が完了する。
これにより、長尺紙P1の反転が達成される。
【0033】
図5は、本実施形態に係る画像形成装置100の制御系の構成を概略的に示すブロック図である。
制御部11は、
図5に示すように、記憶部12、通信部13、操作部14、原稿読取装置SC、画像形成部10、用紙搬送部20及び環境検知センサーSEに接続されている。
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等により構成されている。制御部11のCPUは、記憶部12に記憶されているシステムプログラムや各種処理プログラムを読み出してRAMに展開し、展開されたプログラムに従って、画像形成装置100各部の動作を集中制御する。
例えば、制御部11は、ジョブ実行指令が入力されると、ジョブを実行し、原稿読取装置SCや通信部13により入力される画像データに基づいて長尺紙P1に画像を形成させる制御を行う。また、制御部11は、そのジョブが両面印刷ジョブの場合、長尺紙P1の両面に画像を形成させる制御を行う。
【0034】
記憶部12は、不揮発性の半導体メモリーやHDD(Hard Disk Drive)等により構成され、制御部11で実行される各種プログラムの他、各部で必要なパラメータやデータ等を記憶している。
【0035】
通信部13は、NIC(Network Interface Card)、MODEM(Modulator-DEModulator)、USB(Universal Serial Bus)等の各種インターフェースを備え、外部機器との接続を行う。
【0036】
操作部14は、ユーザーによって設定される種々の情報を制御部11に出力する。操作部14としては、例えば、ディスプレイ上に表示される情報に従い、入力操作を行うことが可能なタッチパネルを用いることができる。
かかる操作部14を通じて、ユーザーは、画像形成条件、すなわち、長尺紙P1の種類(例えば、サイズ、紙種、坪量等)、使用する給紙トレイ、画像の濃度、倍率、両面印刷の有無などを設定することができる。
また、ユーザーは、操作部14を通じて、ジョブの実行指令や調整モードでの動作指示を入力することができる。
また、制御部11は、操作部14を制御することにより、当該操作部14を介してユーザーに種々のメッセージを表示することができる。
【0037】
環境検知センサーSEは、例えば、温度センサーや湿度センサー等を備えて構成され、画像形成装置100の筐体内の温度や湿度を検知し、検知結果を制御部11に出力する。
【0038】
[画像形成装置の動作]
次に、本実施の形態における画像形成装置100の動作について説明する。
画像形成装置100は、長尺紙P1に対して両面印刷を実行可能なものであって、長尺紙P1の用紙長に応じて、即ち、長尺紙P1の搬送方向の長さが、用紙の引き込み時にその先端が搬送経路R1上の転写ニップ部に到達する長さ以上の場合、長尺紙反転制御処理を実行する。
【0039】
図6は、長尺紙反転制御処理の一例を示すフローチャートである。
このフローチャートに示す処理は、ユーザーからのジョブの実行指令に応じて、制御部11と記憶部12に記憶されているプログラムとの協働によって実行される。
なお、以下の説明において用いる長尺紙P1は、用紙の引き込み時(詳しくは、引き込み動作完了時)に、その先端が搬送経路R1上の転写ニップ部に到達する長さを有するものとする。
【0040】
図6に示すように、ジョブが開始された後、制御部11は、ユーザーによりあらかじめ入力された長尺紙P1のサイズや、原稿読取装置SCや通信部13により入力される画像データ等に基づき、長尺紙P1の片面に対する画像形成が終了したか否かを判定する(ステップS101)。
【0041】
そして、画像形成が終了していないと判断すると(ステップS101;NO)、制御部11は、かかるステップS101の処理を繰り返す。
【0042】
一方、画像形成が終了したと判断すると(ステップS101;YES)、制御部11は、
引き込み動作を開始する(ステップS102)。
具体的には、制御部11は、切換ゲート30により、片面に画像が形成された長尺紙P1を引き込み経路R21内に案内し、さらに、引き込み経路R21に設けられた搬送ローラー対31~34により、長尺紙P1を合流点A1に向かって搬送する。
【0043】
次いで、制御部11は、引き込み動作により引き込まれる長尺紙P1の先端部に対して電荷を付与する電荷供給処理を行う(ステップS103)。
具体的には、制御部11は、高圧電源部81により二次転写ローラー8に所定の電圧を印加することで、
図7(a)に示すように、転写ニップ部を通過する長尺紙P1の先端部に対して電荷を付与し、帯電状態とさせる。
このとき、制御部11は、所定条件(例えば、長尺紙P1の紙種、坪量、画像のカバレッジ、画像形成装置100周辺の温湿度などの環境変化)により、二次転写ローラー8や長尺紙P1の電気抵抗値が変動することを考慮して、これらの条件の変動が生じても一定以上の静電引力が確保されるように、上記条件の少なくとも一つに基づいて、適した電圧の値(電荷付与条件)を決定することが好ましい。
例えば、長尺紙P1が厚紙の場合や、湿度が基準値より高い場合などには、印加する電圧の値を高くするなどである。
【0044】
次いで、制御部11は、第2分岐点A2に設けられるセンサー(図示略)の検出結果に基づき、長尺紙P1後端が第2分岐点A2よりも奥側(すなわち合流点A1側)に到達した時点で、長尺紙P1の搬送を停止させ、引き込み動作を完了させる(ステップS104)。
【0045】
次いで、制御部11は、転写ニップ部(中間転写ベルト6と二次転写ローラー8)を離間させる(ステップS105)。
具体的には、
図7(b)に示すように、制御部11は、二次転写ローラー8を下方に移動させることで、中間転写ベルト6と二次転写ローラー8を離間させる。
これにより、長尺紙P1は、自重により二次転写ローラー8とともに下方に移動し、また、静電引力により二次転写ローラー8側に吸着されることとなるので、その表面が中間転写ベルト6と非接触で且つ裏面が二次転写ローラー8に接触した状態となる。
【0046】
次いで、制御部11は、二次転写ローラー8を、画像形成時とは逆方向に回転させる(ステップS106)。
このとき、長尺紙P1が二次転写ローラー8に接触した状態であるため、長尺紙P1を逆送させる推進力が発生する。
【0047】
次いで、制御部11は、再給紙動作を行う(ステップS107)。
具体的には、制御部11は、搬送ローラー対25~27、33、34を逆回転駆動させ、長尺紙P1を逆送させて、第2分岐点A2から再給紙経路R22内に送り込む。次いで、制御部11は、再給紙経路R22に設けられた搬送ローラー対35~39により長尺紙P1を搬送し、再給紙点A3から搬送経路R1内に搬送する。
このとき、長尺紙P1の先端部は、静電引力により二次転写ローラー8に接触した状態が維持されるので、逆送による長尺紙P1のばたつきが抑制される。
【0048】
ここで、中間転写ベルト6は逆回転できないため、中間転写ベルト6に長尺紙P1が接触した状態で再給紙動作を行うと、長尺紙P1との接触で擦れて中間転写ベルト6に傷がつき、画像ノイズが発生するおそれがある。
そのため、上記したように、引き込み動作により長尺紙P1が転写ニップ部に到達する場合には、再給紙動作を行う前に、中間転写ベルト6と長尺紙P1を非接触な状態とすることで、中間転写ベルト6に傷がつくのを防止している。
また、再給紙動作において、長尺紙P1が二次転写ローラー8に接触した状態が維持されることにより、長尺紙P1を逆送させる際の長尺紙P1のばたつきが抑制され、中間転写ベルト6に傷がつくのをより効果的に防止することができる。
また、再給紙動作の際に、二次転写ローラー8を逆回転駆動させ、長尺紙P1を逆送させる推進力を発生させることで、より円滑に長尺紙P1を逆送させることができる。
【0049】
次いで、制御部11は、逆送される長尺紙P1が二次転写ローラー8を抜けきったと判断されたタイミングで、二次転写ローラー8の逆回転駆動を停止させ(ステップS108)、二次転写ローラー8を元の位置に戻して(ステップS109)、本処理を終了する。
【0050】
なお、再給紙動作において、長尺紙P1が再給紙点A3を通過して、再給紙動作が完了したと判断されたタイミングで、二次転写ローラー8の逆回転を停止させても良い。
【0051】
また、転写ニップ部を離間させる際に、二次転写ローラー8を下方に移動させる構成を例示して説明したが、長尺紙P1と中間転写ベルト6とが非接触な状態となるものであれば、中間転写ベルト6を移動させても良いし、二次転写ローラー8及び中間転写ベルト6の両者を移動させても良い。
【0052】
また、本実施の形態における画像形成装置100は、用紙の引き込み時に長尺紙P1の先端が搬送経路R1上の転写ニップ部に到達しない長さの長尺紙P1に対しては、上記ステップS103、S105、S106、S108及びS109を行うことのない、通常の引き込み動作及び再給紙動作を行う。
【0053】
[本実施の形態の技術的効果]
以上のように、本実施の形態によれば、トナー画像が形成される中間転写ベルト6及び中間転写ベルト6とともに転写ニップ部を形成する二次転写ローラー8を有する転写部9と、長尺紙P1を転写部9に搬送する搬送経路R1と、搬送経路R1の転写部9よりも下流側の第1分岐点と搬送経路R1の転写部9よりも上流側の合流点A1とを繋ぐ引き込み経路R21と、引き込み経路R21の途中に設けられた第2分岐点A2と搬送経路R1の転写部9よりも上流側の再給紙点A3とを繋ぐ再給紙経路R22と、を有する反転搬送経路R2と、片面に画像が形成された長尺紙P1を用紙後端が引き込み経路R21の第2分岐点A2よりも合流点A1側に到達するまで引き込む引き込み動作と、引き込み動作後に、長尺紙P1を逆方向に搬送して再給紙経路R22を介して表裏が反転された長尺紙P1を再給紙点A3から搬送経路R1に再給紙する再給紙動作とを行う制御部11と、を備え、制御部11は、長尺紙P1の搬送方向の長さが引き込み動作完了時に転写ニップ部に到達する長さ以上の場合、再給紙動作前に中間転写ベルト6と二次転写ローラー8とを離間させて、当該長尺紙P1を中間転写ベルト6に非接触な状態とさせる。
このため、逆回転できない中間転写ベルト6に長尺紙P1が接触した状態で再給紙動作が行われることがないので、中間転写ベルト6が擦れて傷がつき、画像ノイズが発生するという不具合の発生を防止することができる。
よって、画像品質を低下させることなく、長尺紙P1の両面印刷を行うことができる。
【0054】
また、本実施の形態によれば、中間転写ベルト6と二次転写ローラー8とが離間した際に、長尺紙P1を二次転写ローラー8に接触した状態とさせる用紙接触手段を備え、制御部11は、再給紙動作において、用紙接触手段により長尺紙P1に二次転写ローラー8と接触した状態を維持させる。
このため、再給紙動作において長尺紙P1を逆送させる際の長尺紙P1のばたつきが抑制され、中間転写ベルト6に傷がつくのをより効果的に防止することができる。
【0055】
また、本実施の形態によれば、用紙接触手段は、長尺紙P1に対して電荷を付与する電荷付与部であって、二次転写ローラー8が電荷付与部として機能している。
このため、用紙接触手段として新たな構成を設ける必要がなく、既存の構成により、中間転写ベルト6と二次転写ローラー8とが離間した際に、長尺紙P1を二次転写ローラー8に接触した状態とさせることができる。
【0056】
また、本実施の形態によれば、制御部11は、長尺紙P1の紙種、坪量、画像のカバレッジ及び環境のうち少なくとも何れか一つに基づいて、電荷付与部による電荷付与条件を決定する。
このため、それぞれの長尺紙P1に応じて、より適した制御を行うことができる。
【0057】
また、本実施の形態によれば、制御部11は、再給紙動作前に中間転写ベルト6と二次転写ローラー8とを離間させる際、長尺紙P1を中間転写ベルト6に非接触で且つ二次転写ローラー8に接触した状態とさせ、再給紙動作において二次転写ローラー8を画像形成時とは逆方向に回転させる。
このため、再給紙動作において長尺紙P1を逆送させる推進力が発生し、より円滑に長尺紙P1を転写部9から送り出すことができる。
【0058】
なお、上記実施の形態においては、電荷付与部として二次転写ローラー8を利用する構成を例示して説明したが、例えば、
図8に示すように、二次転写ローラー8とは別に、長尺紙P1に電荷を供給する電荷付与部71を設置しても良いのは勿論である。
電荷付与部71は、二次転写ローラー8の近傍の、長尺紙P1に電荷を供給可能な位置であれば、その設置位置に特に限定はない。図示は省略するが、長尺紙P1の上側に設けられていても良い。
【0059】
また、上記実施の形態においては、所定条件によって電荷付与条件を変更することとして説明したが、例えば、
図8に示すように、転写ニップ部の上流側に電荷検知部72を備え、制御部11は、その測定結果に基づき、電荷付与部による電荷付与条件を決定することとしても良い。
かかる構成であっても、それぞれの長尺紙P1に応じて、適した制御を行うことができる。
【0060】
また、操作部14を通じたユーザー操作により、電荷付与条件を設定変更することも可能である。
【0061】
また、上記実施の形態においては、上述したように長尺紙P1の先端部に対して電荷を付与する構成について説明したが、単純に二次転写ローラー8を帯電させて長尺紙P1を吸着させても良い。
【0062】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態について、第1の実施の形態と異なる点を中心に説明する。なお、以下の説明において、第1の実施の形態と同様の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0063】
[画像形成装置の構成]
まず、本実施の形態における画像形成装置の構成について説明する。
本実施の形態においては、画像形成装置(図示省略)は、再給紙動作において、長尺紙P1を二次転写ローラー8に接触した状態とさせる手法が、第1の実施の形態と異なっている。即ち、電荷付与部とは異なる用紙接触手段を備えた構成である。
【0064】
かかる用紙接触手段としては、例えば、
図9(a)に示すように、二次転写ローラー8の近傍の長尺紙P1の下面側となる位置に備えられたファン73を挙げることができる。このようなファン73は、転写ニップ部の離間時及び再給紙動作において、長尺紙P1の下面側から空気を吸引することで、長尺紙P1に二次転写ローラー8と接触した状態を維持させる。
【0065】
また、例えば、
図9(b)に示すように、二次転写ローラー8の上方であって長尺紙P1の上面に対向する位置に備えられたファン73であっても良い。このようなファン74は、転写ニップ部の離間時及び再給紙動作において、長尺紙P1の上面側から長尺紙P1に対して送風することで、長尺紙P1に二次転写ローラー8と接触した状態を維持させる。
【0066】
また、例えば、
図9(c)に示すように、二次転写ローラー8の上方であって長尺紙P1の上面に対向する位置に、上下移動可能に設けられた回転体(搬送補助部材)63であっても良い。このような回転体75は、転写ニップ部の離間時及び再給紙動作において、長尺紙P1に接触する位置まで下降されることで、長尺紙P1を上面側から二次転写ローラー8に対して押し付けて、長尺紙P1に二次転写ローラー8と接触した状態を維持させる。かかる回転体75は、長尺紙P1の逆送に伴い、長尺紙P1の上面に接触した状態で従動回転する。
【0067】
[画像形成装置の動作]
次に、本実施の形態における画像形成装置の動作について説明する。
図9は、本実施の形態における長尺紙反転制御処理の一例を示すフローチャートである。
このフローチャートに示す処理は、ユーザーからのジョブの実行指令に応じて、制御部11と記憶部12に記憶されているプログラムとの協働によって実行される。
【0068】
図9に示すように、制御部11は、上記ステップS101と同様にして、長尺紙P1の片面に対する画像形成が終了したか否かを判定する(ステップS201)。
【0069】
そして、画像形成が終了したと判断すると(ステップS201;YES)、制御部11は、引き込み動作を実行し、完了させる(ステップS202)。
【0070】
次いで、制御部11は、転写ニップ部を離間させる(ステップS203)。
具体的には、制御部11は、二次転写ローラー8を下方に移動させることで、中間転写ベルト6と二次転写ローラー8を離間させる。
これにより、長尺紙P1は、自重により二次転写ローラー8と共に下方に移動し、その表面が中間転写ベルト6と非接触で且つ裏面が二次転写ローラー8に接触した状態となる。
【0071】
次いで、制御部11は、用紙接触手段を稼働させる(ステップS204)。
具体的には、用紙接触手段がファン73の場合、制御部11は、ファン73を駆動させ、長尺紙P1の下方から空気を吸引する。また、用紙接触手段がファン74の場合、制御部11は、ファン74を駆動させ、長尺紙P1の上方から長尺紙P1に対して送風する。
このとき、制御部11は、所定条件(例えば、長尺紙P1の紙種、坪量、画像のカバレッジ、画像形成装置100周辺の温湿度などの環境変化)により、長尺紙P1への風の影響が変動することを考慮して、これらの条件の変動が生じても一定以上の密着性が確保されるように、上記条件の少なくとも一つに基づいて、適した風圧及び風量(風量条件)を決定することが好ましい。
例えば、長尺紙P1が厚紙の場合や、湿度が基準値より高い場合などには、ファン73の吸引力を高く、或いは、ファン74の風圧を高くするなどである。
また、用紙接触手段が回転体75の場合、制御部11は、回転体75を長尺紙P1に接触する位置まで下降させる。
【0072】
次いで、制御部11は、上記ステップS106~S109と同様にして、二次転写ローラー8を逆方向に回転させ(ステップS205)、再給紙動作を行い(ステップS206)、二次転写ローラー8を逆方向の回転を停止した後(ステップS207)、移動させた二次転写ローラー8を元の位置に戻して(ステップS208)、本処理を終了する。
【0073】
[本実施の形態の技術的効果]
以上のように、本実施の形態によれば、比較的構成の簡単な用紙接触手段(ファン73、ファン74又は回転体75)を備えることで、上記第1の実施の形態と同一の効果を得ることができる。
なお、用紙接触手段は、中間転写ベルト6と二次転写ローラー8とが離間した際、及び再給紙動作時に、長尺紙P1を二次転写ローラー8に接触した状態とさせることができるものであれば、ここで例示したものに限定されない。
【0074】
《その他》
なお、上記実施の形態における記述は、本発明に係る画像形成装置の好適な一例を示すものであり、これに限定されるものではない。
【0075】
例えば、上記第1及び第2の実施の形態においては、引き込み動作を行う際に転写ニップ部を圧着させたままの制御を実行しているが、長尺紙P1の長さ、種類及び坪量に基づき、それらが所定の条件を満たす場合、引き込み動作により長尺紙P1が転写ニップ部に到達する前に、転写ニップ部を離間させることとしても良い。
具体的に、例えば、長尺紙P1の長さが、引き込み動作完了時にその先端が二次転写ローラー8に到達する長さ以上であり、かつ、長尺紙P1の種類及び坪量が、基準値より剛性が高いと判断されるものの場合に、制御部11は、所定の条件を満たすと判断し、引き込み動作により長尺紙P1が転写ニップ部に到達する前に、転写ニップ部を離間状態とする。
【0076】
このように制御することで、以下のような効果を得ることができる。
即ち、片面に画像が形成され、引き込み動作により合流点A1から搬送経路R1内に搬送される長尺紙P1は、定着装置50を通過した直後であるため高温になっている。
そのような高温状態の長尺紙P1が、引き込み動作により転写ニップ部に到達する場合、二次転写ローラー8や中間転写ベルト6が温度上昇し、裏面に形成される画像に画像不良が発生するおそれがあるところ、上記のようにして、引き込み動作により長尺紙P1が転写ニップ部に到達する前に、転写ニップ部を離間状態としておくことで、当該画像不良の発生を抑制することができる。
なお、剛性が基準値以下の長尺紙P1の場合には、上記した画像不良発生のおそれが少ないため、引き込み動作においても転写ニップ部を圧着状態としておくことで、搬送性を良好に保つことができる。
【0077】
また、上記第1及び第2の実施の形態においては、再給紙動作における用紙搬送性を安定させる観点から、転写ニップ部の離間時及び再給紙動作時に、長尺紙P1を二次転写ローラー8に接触した状態とさせる用紙接触手段を備える構成を例示して説明したが、用紙接触手段を備えないこととしても良い。特に、重い長尺紙P1や、厚い長尺紙P1の場合、その自重により、長尺紙P1が二次転写ローラー8に接触した状態を十分維持することができる。
【0078】
また、上記第1及び第2の実施の形態においては、再給紙動作における用紙搬送性を向上させる観点から、再給紙動作において二次転写ローラー8を逆方向に回転させて搬送力を発生させる構成を例示して説明したが、二次転写ローラー8を回転させなくとも良い。
【0079】
また、上記実施の形態によれば、定着装置50として、定着部材51と定着部材52とが圧接して配置されることにより定着ニップ部を形成する構成を例示して説明したが、例えば、
図11に示すように、定着ローラー54、加圧ローラー55、加熱ローラー56、加熱ヒーター57及び定着ベルト58等を備える定着装置(定着部)50Aであっても良い。
この定着装置50Aでは、定着ベルト58は、加熱ローラー56と定着ローラー54とに張架され、定着ローラー54及び加圧ローラー55は、当該定着ベルト58を介して、用紙を挟持して搬送する定着ニップ部を形成している。
かかる定着装置50Aを備える画像形成装置においては、長尺紙P1の長さが、引き込み動作完了時に定着ニップ部に到達する長さ以上である場合には、制御部は、再給紙動作前に、定着ベルト58と加圧ローラー55も、中間転写ベルト6と二次転写ローラー8と同様に離間させ、長尺紙P1を中間転写ベルト6及び定着ベルト58に非接触な状態とさせる制御を行うことが好ましい。
【0080】
また、本発明における画像形成装置は、カラーの画像形成装置だけでなく、モノクロの画像形成装置であっても良い。また、本発明における「一方の回転体」としては、中間転写ベルト6や定着ベルト58のベルト部材だけでなく、ローラー部材であっても良い。
【符号の説明】
【0081】
10 画像形成部
9 転写部
6 中間転写ベルト(一方の回転体)
8 二次転写ローラー(他方の回転体、電荷付与部、用紙接触手段)
81 高圧電源部
20 用紙搬送部
R1 搬送経路
R2 反転搬送経路
R21 引き込み経路
R22 再給紙経路
30 切換ゲート(第1分岐点)
A1 合流点
A2 第2分岐点
A3 再給紙点
23-27、31-39 搬送ローラー対
50、50A 定着装置(定着部)
54 定着ローラー
55 加圧ローラー
56 加熱ローラー
58 定着ベルト
11 制御部
71 電荷付与部(用紙接触手段)
72 電荷検知部
73、74 ファン(用紙接触手段)
75 回転体(搬送補助部材、用紙接触手段)
100 画像形成装置
P1 長尺紙(用紙)