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特許7102727活性エネルギー線硬化性組成物およびそれを用いたインデックスマッチング層および積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化性組成物およびそれを用いたインデックスマッチング層および積層体
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20220712BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20220712BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20220712BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20220712BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
C08F2/44 A
C08F290/06
B32B27/18 Z
B32B7/023
G06F3/041 490
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017247866
(22)【出願日】2017-12-25
(65)【公開番号】P2019112555
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 光人
【審査官】佐藤 玲奈
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/183487(WO,A1)
【文献】特開2017-151321(JP,A)
【文献】特開2016-056341(JP,A)
【文献】特開2016-040355(JP,A)
【文献】特開2015-017233(JP,A)
【文献】特開2015-132760(JP,A)
【文献】国際公開第2017/169802(WO,A1)
【文献】特開2017-179222(JP,A)
【文献】特開2014-209333(JP,A)
【文献】特開2016-192182(JP,A)
【文献】国際公開第2014/123073(WO,A3)
【文献】特開2017-002112(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C08G
B32B 27/18
B32B 7/023
G06F 3/041
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上にインデックスマッチング層を形成するための、平均粒子径が4~200nmの金属酸化物を含有する活性エネルギー線硬化性組成物であって、以下(1)~(4)を満たすことを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物。
(1)金属酸化物は、酸化ジルコニウムと、酸化チタンおよび/または酸化亜鉛とを、99/1~65/35の質量比で含有する。
(2)金属酸化物の平均粒子径の比(酸化ジルコニウム/酸化チタンまたは酸化ジルコニウム/酸化亜鉛)は、1.0/0.3~1.0/1.8である。
(3)ペンタエリスリトールアクリレート系化合物を含有する。
(4)重量平均分子量1000~30000である、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート(ただし、カルド樹脂を除く)、およびエポキシアクリレートからなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂(ただし、上記ペンタエリスリトールアクリレート系化合物を除く)を含有する。
【請求項2】
酸化ジルコニウム、酸化チタンおよび酸化亜鉛から選ばれる少なくとも一種がシラン化合物により表面処理されていることを特徴とする請求項1 に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項3】
前記基材のインデックスマッチング層と接する面の濡れ指数は、35~65dyne/cmであることを特徴とする請求項1または2に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項4】
グラビア印刷用であることを特徴とする、請求項1~3いずれかに記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項5】
基材、請求項1~4いずれかに記載の活性エネルギー線硬化性組成物からなるインデックスマッチング層、透明電極層をこの順に有する積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化性組成物に関する。またそれを用いたインデックスマッチング層および積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タッチパネル用途等にポリエステル等の基材上に透明導電層を設けた積層体が用いられている。透明導電層としては酸化インジウム錫(ITO)等の金属酸化物の薄膜が一般的に用いられており、基材上にスパッタリング法や真空蒸着法によって積層されている。
タッチパネルの動作方式として、抵抗膜式が主流であるが、近年、静電容量式が急速に拡大している。抵抗膜式タッチパネルに用いられる透明導電性を有する積層体は通常、パターン化されていない透明導電層で構成されている。一方、静電容量式タッチパネルに用いられている積層体は、フォトリソエッチング等によって、透明導電層がパターン化されており、積層体上には透明導電層のパターン部と非パターン部が存在する。
【0003】
このようなパターン化された透明導電層を有する積層体を用いた静電容量式タッチパネルは、透明導電層のパターン部と非パターン部が目視で視認される、いわゆる「骨見え」という現象が問題となっており、最終的に表示装置としての外観を低下させるという問題がある。これに対して、例えば特許文献1では基材とITOなどの透明導電層との間に屈折率調整層(インデックスマッチング層という)を設けて視認性を解決するための試みがなされている。当該インデックスマッチング層は透明導電層を有する部分の反射率と透明導電層を有さない部分との反射率の差を小さくして「骨見え」を抑制するものである。
【0004】
近年ではインデックスマッチング層を有する積層体は、その用途によって積層体の片面あるいは両面は多層化され、多層化の過程あるいはその後の透明導電層のパターン化の際に、紫外線その他の活性エネルギー線が過剰に照射される場合がある。その場合、インデックスマッチング層と基材あるいはインデックスマッチング層と透明導電層との間の接着性が低下してしまうといった課題がある。
また、活性エネルギー線硬化性組成物は長期にて保管された場合、保存性の悪い組成物は増粘等を起こし、それを用いてインデックスマッチング層を形成した場合、透明性が低下するとともに、インデックスマッチング層の屈折率に影響を及ぼす、または塗工時に欠陥が発生してしまう場合もあり、活性エネルギー線硬化性組成物には活性エネルギー線への耐久性に加えて組成物の安定性や塗工適性も求められる。
【0005】
例えば特許文献2または3などに透明導電層パターンの視認および紫外線耐久性の課題を解決するインデックスマッチング層の提案がされている。特許文献2ではカルド樹脂を使用したインデックスマッチング層の提案がなされているが、ガラスおよびITOに対する密着性は示されているものの、プラスチック基材に対しての密着性については示されていない。また、特許文献3ではゼータ電位を規定したインデックスマッチング層を提案しているが、プラスチック基材とインデックスマッチング層との密着性に言及はあるものの、ITO電極層との密着性までは言及されておらず、また活性エネルギー線組成物自体の安定性や塗工適性に関しては明らかとなっていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-209333号公報
【文献】特開2014-152197号公報
【文献】特開2017-002112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、過剰の活性エネルギー線照射にかかわらず、基材および透明導電層に対する接着性を保持することができ、塗工適性に優れ、外観が良好となるインデックスマッチング層を形成するための活性エネルギー線硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題に対して鋭意研究を重ねた結果、以下に記載の活性エネルギー線硬化性組成物を用いることで解決することを見出し、本発明に至った。
【0009】
本発明は、基材上にインデックスマッチング層を形成するための、平均粒子径が4~200nmの表面処理されていてもよい金属酸化物を含有する活性エネルギー線硬化性組成物であって、以下(1)~(3)を満たすことを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
(1)金属酸化物は、酸化ジルコニウムと、酸化チタンおよび/または酸化亜鉛とを、99/1~65/35の質量比で含有する。
(2)金属酸化物の平均粒子径の比(酸化ジルコニウム/酸化チタンまたは酸化ジルコニウム/酸化亜鉛)は、1.0/0.3~1.0/1.8である。
(3)ペンタエリスリトールアクリレート系化合物を含有する。
【0010】
本発明は、酸化ジルコニウム、酸化チタンおよび酸化亜鉛から選ばれる少なくとも一種がシラン化合物により表面処理されていることを特徴とする前記活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【0011】
本発明は、更に重量平均分子量1000~30000である、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレートおよびアクリル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂(ただし、上記ペンタエリスリトールアクリレート系化合物を除く)を含有することを特徴とする前記活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【0012】
本発明は、前記基材のインデックスマッチング層と接する面の濡れ指数は、35~65dyne/cmであることを特徴とする前記活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【0013】
本発明は、グラビア印刷用であることを特徴とする、前記活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【0014】
本発明は、基材、前記活性エネルギー線硬化性組成物からなるインデックスマッチング層、透明電極層をこの順に有する積層体に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、過剰の活性エネルギー線照射にかかわらず、基材および透明導電層に対する接着性を保持することができ、塗工適性に優れ、外観が良好となるインデックスマッチング層を形成するための活性エネルギー線硬化性組成物を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する要件の説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその趣旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0017】
本発明は基材上にインデックスマッチング層を形成するための、平均粒子径が4~200nmの表面処理されていてもよい金属酸化物を含有する活性エネルギー線硬化性組成物であって、以下(1)~(3)を満たすことを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物である。
(1)金属酸化物は、酸化ジルコニウムと、酸化チタンおよび/または酸化亜鉛とを、99/1~65/35の質量比で含有する。
(2)金属酸化物の平均粒子径の比(酸化ジルコニウム/酸化チタンまたは酸化ジルコニウム/酸化亜鉛)は、1.0/0.3~1.0/1.8である。
(3)ペンタエリスリトールアクリレート系化合物を含有する。
金属酸化物が酸化ジルコニウムと、酸化チタンおよび/または酸化亜鉛とを、当該比率で含有することで基材および透明導電層との密着性が良好となり、金属酸化物の平均粒子径が該当範囲でインデックスマッチング層を有する積層体の透明性が良好である。更にペンタエリスリトールアクリレート系化合物を含有することで当該積層体の耐擦傷性を良好とすることが可能である。
【0018】
<インデックスマッチング層>
本発明において、「インデックスマッチング層」とは、基材と透明導電層との間に設けられる活性エネルギー線硬化樹脂層をいう。インデックスマッチング層の膜厚としては0.02~30μmのものが好ましく、インデックスマッチング層の屈折率としては1.4~2.0であることが好ましい。
【0019】
<活性エネルギー線硬化性組成物>
活性エネルギー線硬化性組成物とは、紫外線や電子線のような活性エネルギー線の照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂成分を含有する組成物をいう。なお、以下の説明で活性エネルギー線硬化性組成物は単に「組成物」と略記する場合があるが同義である。
活性エネルギー線硬化性組成物の塗工後に、紫外線や電子線のような活性エネルギー線を照射することにより硬化させてインデックスマッチング層が形成される。
【0020】
<金属酸化物>
平均粒子径が4~200nmである表面処理されていてもよい金属酸化物は、酸化ジルコニウムと、酸化チタンおよび/または酸化亜鉛とを含み、その含有量の比(酸化ジルコニウム/酸化チタンおよび酸化亜鉛)は99/1~65/35である。紫外線などの活性エネルギー線の遮断に寄与するため、好ましくは95/5~70/30である。酸化ジルコニウムと、酸化チタンおよび/または酸化亜鉛は合計で金属酸化物総質量中に80%以上含有することが好ましい。また、平均粒子径として好ましくは10~100nmである。平均粒子径とは分散状態での平均粒子径であり、動的光散乱法によるD50の測定値をいう。動的光散乱測定は例えば、日機装(株)社製「ナノトラックUPA」などを用いて測定できる。
【0021】
また、上記金属酸化物の平均粒子径の比(酸化ジルコニウム/酸化チタンまたは酸化ジルコニウム/酸化亜鉛)は、1.0/0.3~1.0/1.8である。酸化ジルコニウムと、酸化チタンおよび/または酸化亜鉛と、の分散状態の平均粒子径の比率は1.0/0.5~1.0/1.7であることがより好ましい。
なお、酸化ジルコニウムと、酸化チタンおよび/または酸化亜鉛の合計は、組成物の固形分総質量中に10~80質量%で含有することが好ましい。なお、固形分とは組成物における不揮発成分の総質量をいう。
【0022】
上記酸化チタンおよび酸化亜鉛は、比表面積が、20~160m/gであることが好ましく、30~150m/gであることがより好ましい。比表面積とはJIS Z 8830:2001に記載の測定方法による測定値をいう。比表面積が該範囲であると、インデックスマッチング層の透明性が良好となり、更に活性エネルギー線を積算光量として過剰に照射した場合でも、基材への接着性が良好に維持できる。
【0023】
本発明において金属酸化物は、酸化ジルコニウムと酸化チタンの組み合わせであることが好ましい。上記金属酸化物は、表面を有機物もしくは無機物で処理されていてもよい。酸化チタンとしてはルチル型結晶であることが好ましい。
【0024】
<シラン化合物による表面処理>
酸化ジルコニウム、酸化チタンおよび酸化亜鉛から選ばれる少なくとも一種の金属酸化物はシラン化合物により表面処理されていることが好ましい。表面処理には公知のシラン化合物を用いることができる。このようなシラン化合物は、アルコキシル基、ヒドロキシル基、ビニル基、スチリル基、(メタ) アクリロイル基、エポキシ基等の群から選択される一種の基を有するものが好ましく、特に、スチリル基、ビニル基又は(メタ)アクリロイル基を有するものがより好ましい。後述の樹脂等との相溶性が良好となるためである。
【0025】
なお、表面処理とは金属酸化物粒子が上記シラン化合物の反応により被覆されている状態をいう。上記シラン化合物による処理は例えば、特開2010-195967号公報などに記載のシラン化合物および処理方法を用いることができる。
【0026】
当該シラン化合物は、以下に限定されないが、スチリル基、ビニル基又は(メタ)アクリロイル基を有するシラン化合物が好ましく、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリフェノキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、p-スチリルトリエトキシシラン、p-スチリルトリクロルシシラン、p-スチリルトリフェノキシシラン、3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロイルオキシプロピルトリクロルシラン、3-アクリロイルオキシプロピルトリフェノキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリクロルシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリフェノキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリクロルシシラン、アリルトリフェノキシシラン等が挙げられる。
【0027】
シラン化合物は、上記のもの以外に、アルキル基を有するシラン化合物、フェニル基を有するシラン化合物、アミノ基を有するシラン化合物又はその他の重合性基でない基を有するシラン化合物を併用してもよい。
【0028】
また、シラン化合物の使用量は、金属酸化物に対して、0.1~40質量%の範囲であることが好ましい。5~30質量%であることがより好ましい。分散安定性が良好となるためである。シラン化合物での処理は酸化ジルコニウム、酸化チタンおよび酸化亜鉛から選ばれる少なくとも一種がなされていることが好ましい。少なくとも酸化ジルコニウムが表面処理されていることがより好ましい。
【0029】
以下の説明において、(メタ)アクリレートとはメタクリレートとアクリレート、(メタ)アクリルとはメタクリルとアクリルの併記であることを意味する。
【0030】
<ペンタエリスリトールアクリレート系化合物>
ペンタエリスリトールアクリレート系化合物とは、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタアクリレートオクタ(メタ)アクリレート、さらにこれらの化合物のペンタエリスリトール構造と(メタ)アクリレート基構造の間に、ポリエチレンオキシド構造、ポリプロピレンオキシド構造などのポリエーテル構造を有している構造のものが挙げられ、これらからなる群より選ばれる少なくとも一種であり、分子量が700未満のものをいう。なお、これらペンタエリスリトール(メタ)アクリレート系化合物は、単独で用いても2種類以上を併用してもよい。ペンタエリスリトールアクリレート系化合物は、組成物の固形分総質量中に10~80質量%含有することが好ましい。また、10~70質量%で含有することがより好ましい。また、上記金属酸化物の合計とペンタエリスリトールアクリレート系化合物との質量比率(金属酸化物計/ペンタエリスリトールアクリレート系化合物)が、90/10~20/80であることが好ましく、90/10~30/70で含有することがより好ましい。
【0031】
<樹脂>
本発明において組成物中に、更に重量平均分子量1000~30000であるウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレートおよびアクリル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂を含有することが好ましい。
該樹脂の含有量として好ましくは組成物固形分総質量中、5~45質量%が好ましく、10~40質量%で含有することがより好ましい。また、グラビア塗工性の観点から、重量平均分子量は1000~20000であることが更に好ましい。またアクリロイル基などの重合性官能基を有し、一分子中の重合性官能基の数(官能基数)は4~15であることが好ましい。
該樹脂としては、塗膜強度、耐摩擦(擦傷)性の観点よりウレタンアクリレート、ポリエポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート等の、多官能の樹脂を好適に使用することができる。中でもポリエステルアクリレートおよび/またはウレタンアクリレートであることが好ましい。
【0032】
なお、上記樹脂を含有する場合、ペンタエリスリトールアクリレート系化合物との質量比率(樹脂/ペンタエリスリトールアクリレート系化合物)は90/10~10/90であることが好ましく、80/20~50/50であることがより好ましい。
【0033】
<エポキシアクリレート>
ポリエポキシアクリレートは、例えばエポキシ樹脂のグリシジル基を(メタ)アクリル酸でエステル化して、官能基を(メタ)アクリレート基としたものが挙げられ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂への(メタ)アクリル酸付加物、ノボラック型エポキシ樹脂への(メタ)アクリル酸付加物等がある。
【0034】
<ウレタンアクリレート>
ポリウレタンアクリレートは、例えば、ジイソシアネートと水酸基を有する(メタ)アクリレート類とを反応させて得られるもの、ポリオールとポリイソシアネートとをイソシアネート基過剰の条件下に反応させてなるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを、水酸基を有する(メタ)アクリレート類と反応させて得られるもの等がある。あるいは、ポリオールとポリイソシアネートとを水酸基過剰の条件下に反応させてなる水酸基含有ウレタンプレポリマーを、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート類と反応させて得ることもできる。
【0035】
例えば、ウレタンアクリレートは、ポリイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得ることができる。また、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーにと水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させることで得ることもできる。ただしウレタンアクリレートの合成方法はこれらに限定されない。
【0036】
上記ポリイソシアネートとしては公知のものを使用でき、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、および脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。
芳香族ジイソシアネートとしては例えば、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、および2,6-ジイソシアネート-ベンジルクロライド等が挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートとしては例えば、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、およびリジンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環族ジイソシアネートとしては例えば、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジメリールジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、およびダイマー酸のカルボキシ基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等が挙げられる。
これらは3量体となってイソシアヌレート環構造となっていても良い。これらのポリイソシアネートは単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
中でも好ましくはトリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、およびヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体である。
【0037】
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸1-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、(メタ)アクリル酸エチル-α-(ヒドロキシメチル)、単官能(メタ)アクリル酸グリセロール、あるいはこれらの(メタ)アクリレートと、ε-カプロラクトンラクトンの開環付加により末端に水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルや、上記水酸基含有(メタ)アクリレートに対してエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを繰り返し付加したアルキレンオキサイド付加(メタ)アクリル酸エステル等の水酸基含有の(メタ)アクリル酸エステル類等が挙げられる。中でもトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも一種を含むものが好ましい。
【0038】
<ポリエステルアクリレート>
ポリエステルアクリレートは、例えば、多塩基酸及び多価アルコールを重縮合して得られるポリエステルポリカルボン酸と、水酸基含有(メタ)アクリレート等とを反応させて得ることができる。
上記、多塩基酸としては、脂肪族系、脂環族系、及び芳香族系が挙げられ、それぞれ特に制限が無く使用できる。例えば脂肪族系多塩基酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、スベリン酸、マレイン酸、フマル酸、ドデカン二酸、ピメリン酸、シトラコン酸、グルタル酸、イタコン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸等が挙げられ、これらの脂肪族ジカルボン酸及びその無水物が利用できる。又、酸無水物の誘導体も利用できる。
【0039】
また、上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、3,3'-ジメチロールヘプタン、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、ポリオキシエチレングリコール(付加モル数10以下)、ポリオキシプロピレングリコール(付加モル数10以下)、プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、ブチルエチルペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール,トリシクロデカンジメタノール、シクロペンタジエンジメタノール、ダイマージオール等の脂肪族又は脂環式ジオール類を挙げることができる。
【0040】
また、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの3つ以上の水酸基を含有するポリオールを一部使用しても良い。
【0041】
上記、多価アルコールのうち、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、3,3'-ジメチロールヘプタン、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、ブチルエチルペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、などの、分岐したアルカンに水酸基が2つ以上導入されたものが、オリゴマーの、接着性、耐熱性等の点で好ましい。
【0042】
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、上記と同様のものが挙げられ、中でもトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも一種を含むものが好ましい。
【0043】
<アクリル樹脂>
アクリル樹脂は、アクリルモノマーを用いて得られる共重合体である。以下、アクリル樹脂を構成するアクリルモノマーについて列記する。尚、アクリルモノマーは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。アクリルモノマーは以下に列記するうちで、アルキルメタクリレートおよび/またはアルキルアクリレートを含有することが好ましく、また当該アクリルモノマーのアルキル基は炭素数1~6であることが好ましい。重量平均分子量としては1000~30000であることが好ましい。また、アクリロイル基などの重合性官能基は有していても良いし、有していなくても良い。当該官能基を有する場合に二重結合当量は200~2000g/molであることが好ましい。なお、二重結合当量とは二重結合1molあたりの重量平均分子量をいう。
【0044】
上記アクリルモノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレートが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシルなどが挙げられる。これらの中でも(メタ)アクリル酸メチルが、基材に対して良好な密着性を得やすいという点から好ましい。
【0045】
また、アクリルモノマーとしては水酸基含有アルキル(メタ)アクリレートも好適であり、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルや、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートなどのグリコールモノ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルアクリルアミドなどが挙げられる。これらの中でも(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルが好ましい。
【0046】
その他のアクリルモノマーとしてはカルボキシル基を有するもの、アミド結合を有するもの、アミノ基を有するもの、アルキレンオキサイド基を有するもの、エポキシ基を有するものなどが挙げられる。
【0047】
また、アクリルモノマー以外のモノマーをアクリル樹脂の構成単位として含んで良い。例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、モノエチルマレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、及びフマル酸などの酸性モノマー、スチレン、α-メチルスチレンなどのスチレン系モノマーなどが挙げられる。これらモノマーは本発明の効果を損なわない範囲で含有することが可能である。
【0048】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を構成するペンタエリスリトール系化合物、樹脂は安定性の観点から重合禁止剤を含むことが好ましい。重合禁止剤としてはヒドロキノン系の化合物が挙げられ、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、パラメトキシフェノールが好ましい。なお、含有量としては、樹脂に対して100~500ppmであることが好ましい。
【0049】
上記、樹脂の市販品としては、例えば以下のものが例示できる。
東亜合成(株)製:アロニックスM-7100、アロニックスM-8030、アロニックスM-8060、化薬サートマー(株)製:CN986NS、CN9010NS、ダイセル・オルネクス(株)製:Ebecryl 220、Ebecryl 1290、Ebecryl 1830、新中村化学工業(株)製:NKオリゴ U6LPA、NKオリゴ U10PA、NKオリゴ U10HA、NKオリゴ UA-33H、NKオリゴ UA-53H、荒川化学工業(株)製:ビームセット371、ビームセット575、ビームセット577、根上工業(株)製:アートレジンUN-3320HA、アートレジンUN-3320HB、アートレジンUN-3320HC、アートレジンUN-3320HS、アートレジンUN-9000H、アートレジンUN-901T、アートレジンUN-904、アートレジンUN-905、アートレジンUN-952、アートレジンHDP、アートレジンHDP-3、アートレジン H61、日本合成化学工業(株)製:紫光UV-7600B、紫光UV-7610B、紫光UV-7620EA、紫光UV-7630B、紫光UV-1700B、紫光UV-6300B、紫光UV-7640B
共栄社化学(株)製:UA-306H、UA-306T、UA-306I。
【0050】
<その他モノマー>
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、5官能以下の(メタ)アクリレートモノマーを含有して良い(ただし上記ペンタエリスリトール系化合物は含まない)。例えば、3~4官能の(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートが挙げられる。また、2官能、1官能のモノマーも種々のものを適宜使用可能である。
【0051】
2官能の(メタ)アクリレートモノマーとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロ-ルトリアクリレート、PO変性トリメチロールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの(メタ)アクリレートは単独で用いてもまたは2種以上を混合して用いてもよい。
【0052】
1官能の(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、などが挙げられる。
【0053】
<有機溶剤>
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、液状媒体として有機溶剤を含んで良い。使用される有機溶剤としては、混合溶剤としての使用が好ましく、トルエン、キシレンといった芳香族系有機溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンといったケトン系有機溶剤、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、エステル系有機溶剤、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、などのアルコール系有機溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコエーテル系有機溶剤など公知の有機溶剤を使用できる。特にグリコールエーテル系有機溶剤を含むことが好ましい。
【0054】
上記グリコールエーテル系有機溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノ‐n‐プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールイソアミルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル、メトキシエトキシエタノール、エチレングリコールモノアリルエーテル等のエチレングリコールエーテル類;
プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ブトキシプロパノール等のプロピレングリコールエーテル類;
が挙げられ、中でもメチルプロピレングリコール、3‐メトキシ-1-ブタノールが好ましい。
【0055】
<光重合開始剤>
活性エネルギー線硬化性組成物は、さらに、光重合開始剤を含むことができる。光重合開始剤としては、光励起によって活性エネルギー線硬化膜を形成するための(メタ)アクリロイル基のビニル重合を開始できる機能を有するものであれば特に限定はなく、例えばモノカルボニル化合物、ジカルボニル化合物、アセトフェノン化合物、ベンゾインエーテル化合物、アシルホスフィンオキシド化合物、アミノカルボニル化合物などが好適に使用できる。
【0056】
上記モノカルボニル化合物としては、ベンゾフェノン、4-メチル-ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、メチル-o-ベンゾイルベンゾエート、4-フェニルベンゾフェノン、4-(4-メチルフェニルチオ)フェニル-エタノン、3,3´-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、4-(1,3-アクリロイル-1,3,3´-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、4-(1,3-アクリロイル-1,4,7,10,13-ペンタオキソトリデシル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-N,N,N-トリメチル-1-プロパンアミン塩酸塩、4-ベンゾイル-N,N-ジメチル-N-2-(1-オキソ-2-プロペニルオキシエチル)メタアンモニウムシュウ酸塩、2-/4-イソ-プロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、2-ヒドロキ-3-(3,4-ジメチル-9-オキソ-9Hチオキサントン-2-イロキシ-N,N,N-トリメチル-1-プロパンアミン塩酸塩、ベンゾイルメチレン-3-メチルナフト(1,2-d)チアゾリン等が挙げられる。
【0057】
上記ジカルボニル化合物としては、1,2,2-トリメチル-ビシクロ[2.1.1]ヘプタン-2,3-ジオン、ベンザイル、2-エチルアントラキノン、9,10-フェナントレンキノン、メチル-α-オキソベンゼンアセテート、4-フェニルベンザイル等が挙げられる。
アセトフェノン化合物としては、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-ジ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-スチリルプロパン-1-オン重合物、ジエトキシアセトフェノン、ジブトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2,2-ジエトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、3,6-ビス(2-メチル-2-モルホリノ-プロパノニル)-9-ブチルカルバゾール等が挙げられる。
【0058】
上記ベンゾインエーテル化合物としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイゾブチルエーテル、ベンゾインノルマルブチルエーテル等が挙げられる。
上記アシルホスフィンオキシド化合物としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、4-n-プロピルフェニル-ジ(2,6-ジクロロベンゾイル)ホスフィンオキシド等が挙げられる。
【0059】
上記アミノカルボニル化合物としては、メチル-4-(ジメトキシアミノ)ベンゾエート、エチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2-n-ブトキシエチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、イソアミル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2-(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、4,4’-ビス-4-ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ビス-4-ジエチルアミノベンゾフェノン、2,5’-ビス(4-ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン等が挙げられる。
【0060】
上記光重合開始剤の市販品としてはIGM Resins製Omnirad73、481、659、248、264、4817、BDK、TPO、TPO-L、380、Omnipol910、BP、2702、Esacure One、1001M、A198、KIP150、等があげられる。
【0061】
光重合開始剤は、上記化合物に限定されず、一種類で用いてもよいし二種類以上を混合して用いてもよい。光重合開始剤の使用量に関しては、本発明におけるインデックスマッチング層を形成する活性エネルギー線硬化性組成物において、金属酸化物を除く固形分総質量に対して1~20質量%の範囲内で使用することが好ましい。なお、増感剤として、公知の有機アミン等を加えることもできる。さらに、上記ラジカル重合用開始剤のほかに、カチオン重合用の開始剤を併用することもできる。
【0062】
<その他併用樹脂>
活性エネルギー線硬化性組成物はその特性を損なわない範囲で他の高分子材料を含有しても良く、以下に限定するものではないが、上記ペンタエリスリトールアクリレート系化合物および上記樹脂以外の光硬化性樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、アルキッド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、石油樹脂、およびこれらの変性樹脂などを挙げることができる。これらの樹脂は、単独で、または2種以上を混合して用いることができ、その含有量は、活性エネルギー線硬化性組成物中の樹脂固形分総質量中、1~20質量%が好ましい。
【0063】
<添加剤>
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、さらに様々な添加剤を、本発明の目的や効果を損なわない範囲において含むことができる。具体的には、重合禁止剤、光増感剤、レベリング剤、界面活性剤、抗菌剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤、導電性ポリマー、導電性界面活性剤、無機充填剤、顔料、染料などが挙げられる。
【0064】
<活性エネルギー線硬化性組成物の製造>
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、均一に撹拌混合できれば問題はなく、例えば活性エネルギー線硬化性組成物を構成する、金属酸化物、ペンタエリスリトール系化合物、樹脂、有機溶剤等を、所定の攪拌機ディスパーやホモジナイザーなどを用いて均一に撹拌することにより製造することができる。なお、本発明において酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛などの金属酸化物はペンタエリスリトールアクリレート系化合物や、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレートなどの樹脂および有機溶剤とともに3本ロール、サンドミル、ガンマミル等を用いて分散したものを配合しても良いし、市販されている有機溶剤の分散体などを配合して使用しても良い。
【0065】
<基材>
本発明の基材としては以下に限定されないが、ポリエステルフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ポリオレフィンフィルム、シクロオレフィン系フィルム、アクリル系フィルムおよびポリカーボネート系フィルムその他のプラスチック基材であることが好ましい。特にポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどのポリエステルフィルムが好適である。上記基材の膜厚は、所望の用途に応じて適宜選択すればよいが、20μmから300μmの範囲が適当であり、50μmから250μmの範囲が好ましく、50μmから200μmの範囲がより好ましい。また、基材の屈折率は、基材、インデックスマッチング層、透明導電層を順に有する積層体全体における視認性に大きく寄与する点から、好ましくは1.45~1.75であり、より好ましくは、1.45~1.70である。
【0066】
上記基材は、インデックスマッチング層と接する面の濡れ指数が35~65dyne/cmであることが好ましく、38~60dyn/cmがさらに好ましい。インデックスマッチング層と接する面に有機物および/または無機物からなる層をさらに有していてもよく、その具体例としては他の層との接着性を上げるための易接着層が挙げられる。易接着層としてはコロナ放電処理、UV-オゾン処理、プラズマ処理、プライマー処理など種々のものが挙げられ、組み合わせて処理されていても良い、中でも、特にプライマー処理もしくはコロナ放電処理された基材が好ましく、プライマー処理された基材であることがより好ましい。なお、当該濡れ指数とはJISK6768による測定値をいう。
【0067】
<インデックスマッチング層の製造>
インデックスマッチング層の製造方法は、たとえば、活性エネルギー線硬化性組成物を基材に塗布する工程および活性エネルギー線を照射して、基材上の活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させる工程とを含む。より具体的には、この活性エネルギー線硬化性組成物を基材に、乾燥後の膜厚が好ましくは0.02~30μm、より好ましくは0.02~20μmになるように塗工後、活性エネルギー線による硬化処理により形成することができる。
【0068】
活性エネルギー線硬化性組成物の塗工方法としては、公知の方法を用いることができ、例えばロットまたはワイヤーバーなどを用いた方法や、マイクログラビア塗工方法、グラビア塗工方法、ダイ塗工方法、カーテン塗工方法、リップ塗工方法、スロット塗工方法またはスピン塗工方法などの各種コーティング方法を用いることができる。本発明ではグラビア印刷方式であるマイクログラビア塗工方法またはグラビア塗工方法であることが特に好ましい。塗工表面の平滑性に優れるためである。
【0069】
塗工後の硬化方法としては、公知の技術を用いることができる。例えば、紫外線、電子線、波長400~500nmの可視光線等の活性エネルギー線を照射することにより硬化できる。紫外線および波長400~500nmの可視光線の線源(光源)には、例えば高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ガリウムランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ等を使用することができる。電子線源には、熱電子放射銃、電解放射銃等を使用することができる。照射する活性エネルギー線の積算光量は、工程上管理しやすい点から、50~1000mJ/cmの範囲内であることが好ましい。これらの活性エネルギー線照射に、赤外線、遠赤外線、熱風、高周波加熱等による熱処理を併用することができる。
【0070】
インデックスマッチング層は、基材に活性エネルギー線硬化性組成物を塗工し、自然または強制乾燥させたあとに硬化処理を行なって形成しても良いし、塗工し硬化処理を行なったあとに自然または強制乾燥させても良いが、自然または強制乾燥させたあとに硬化処理を行なう方がより好ましい。特に、電子線で硬化させる場合は、水による硬化阻害または有機溶剤の残留による塗膜の強度低下を防ぐため、自然または強制乾燥させたあとに硬化処理を行なう方がより好ましい。硬化処理のタイミングは、塗工と同時でもよいし、塗工後でもよい。
【0071】
得られる硬化膜は、透明性、接着性に優れるため、光学材料として好適に利用することが出来る。硬化膜の厚みは、0.02~30μmであることが好ましい。さらに、硬化膜の屈折率は、1.4~2.0の範囲であることが好ましく、1.5~1.9の範囲であることがより好ましい。
【0072】
<透明導電層>
透明導電層の材料としては、タッチパネルの電極に用いられる公知の材料を用いることができる。例えば酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、ITO(酸化インジウム錫)、ATO(酸化アンチモン錫)等の金属酸化物が挙げられる。これらの中でもITOが好ましく用いられる。透明導電層の形成方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。具体的には、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などのドライプロセスを用いることができる。
【0073】
透明導電層の厚みは、例えば表面抵抗値が10Ω/□以下の良好な導電性を確保するという観点から、10~60nmが好ましく、15~50nmがより好ましく、20~40nmが特に好ましい。また、透明導電層の屈折率は1.8以上である。さらに透明導電層の屈折率は1.8~2.2であることがこのましい。また1.9~2.1であることがより好ましい。本発明の透明導電層はパターン化されている。例えば、ストライプ状、格子状などが挙げられ、一般的にはエッチングによって行われる。エッチングは例えば、フォトリソグラフィ法、レーザー露光法などが挙げられ、エッチング液としては、例えば、塩化水素、臭化水素、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、酢酸等の有機酸、およびこれらの混合物ならびにそれらの水溶液が用いられる。
【0074】
<積層体>
本発明の積層体は、基材、インデックスマッチング層および透明導電層を順に有するものをいう。基材とインデックスマッチング層は接しており、それ以外の層構成は任意であり、必要に応じて基材層、屈折率の異なる層、粘着層その他の層(M)を設けることができる。以下に例を示す。
(I) 基材/インデックスマッチング層/透明導電層
(II) 基材/インデックスマッチング層/(M)/透明導電層
(III) (M)/基材/インデックスマッチング層/透明導電層
(IV) (M)/基材/インデックスマッチング層/(M)/透明導電層
(V) (M)/インデックスマッチング層/基材/インデックスマッチング層/透明導電層
(VI)インデックスマッチング層/基材/インデックスマッチング層/透明導電層
【実施例
【0075】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明における部および%は、特に注釈の無い場合、重量部または重量%を表わす。
【0076】
(平均粒子径)
25℃の環境下にて、動的光散乱法(日機装社製ナノトラックUPA)を用いて測定した。ローディングインデックス値を0.7以上1.3以下の範囲に分散液濃度を調整し、レーザー光の散乱光を検出することによって測定されるD50の値を平均粒子径とした。
(比表面積)
JISZ8830:2001に記載の方法で測定した。
(粘度)
JISZ8803:2011に記載の方法で測定した。
(酸価)
JISK0070に記載の方法で固形分の酸価を測定した。
(濡れ指数)
JISK6768に記載の方法に従って求めた。
(重量平均分子量)
重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)装置(東ソー株式会社製HLC-8220)を用いて分子量分布を測定し、ポリスチレンを標準物質に用いた換算分子量として求めた。下記に測定条件を示す。
カラム:下記カラムを直列に連結して使用した。
東ソー株式会社製 TSKgel SuperAW2500
東ソー株式会社製 TSKgel SuperAW3000
東ソー株式会社製 TSKgel SuperAW4000
東ソー株式会社製 TSKgel guardcolumn SuperAWH
検出器:RI(示差屈折計)
測定条件:カラム温度40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
【0077】
(合成例1)<ウレタンアクリレートPU1>
攪拌翼、温度計、還流冷却器、ガス導入管を備えたフラスコに、酢酸プロピル150部、ヘキサメチレンジイソシアネート17部、温度90℃、空気を吹き込みながら、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート約60重量%とジペンタエリスリトールヘキサアクリレート約40重量%との混合物(製品名:「アロニックスM403」東亞合成社製)182部と酢酸プロピル49部をよく混合した後に滴下し、滴下終了後10時間撹拌を維持した。なお、ヘキサメチレンジイソシアネート由来のイソシアネート基とジペンタエリスリトールペンタアクリレート由来の水酸基のモル比は、イソシアネート基:水酸基(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート由来)=1:1である。IRスペクトルでイソシアネート基由来のピークの消失を確認した後、室温に冷却し、ウレタンアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物PU1を得た。なおPU1は以下の性状である。
<PU1の性状>
・PU1中の、ウレタンアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの固形分質量比率が、61:39である。
・PU1中のウレタンアクリレートはアクリレート基(アクリロイル基)を10個有する。
・PU1の重量平均分子量は1900である。
【0078】
(合成例2)<ウレタンアクリレートPU2>
合成例3において用いたヘキサメチレンジイソシアネート17部の代わりに、イソホロンジイソシアネートを22部用いた以外は合成例3と同様の操作を行い、ウレタンアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物PU2を得た。なおPU2は以下の性状である。
<PU2の性状>
・PU2中の、ウレタンアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの固形分質量比率が、63:37である。
・PU2中のウレタンアクリレートはアクリレート基(アクリロイル基)を10個有する。
・PU2の重量平均分子量は2100である。
【0079】
(合成例3)<ウレタンアクリレートPU3>
合成例1において用いたヘキサメチレンジイソシアネート17部の代わりに、イソホロンジイソシアネート(NCO基:2個)を22部用い、「アロニックスM403」182部の代わりに、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートが重量比70:30の混合物(製品名:「アロニックスM306」東亞合成社製)90重量部を用いた以外は合成例1と同様の操作を行い、ウレタンアクリレートとペンタエリスリトールトリアクリレートの混合物PU3を得た。なおPU3は以下の性状である。
<PU3の性状>
・PU3中の、ウレタンアクリレートとペンタエリスリトールトリアクリレートの固形分質量比率が、73:27である。
・PU3中のウレタンアクリレートはアクリレート基(アクリロイル基)を6個有する。
・PU2の重量平均分子量は1500である。
【0080】
(合成例4)<ポリエステルアクリレートPE1>
撹拌機、還流冷却管、ドライエアー導入管、温度計を備えた4口フラスコに3,3’、4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物80.0部、水酸基価122mgKOH/gのペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬社製 製品名:KAYARAD PET-30 ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物)250.0部、メチルヒドロキノン0.24部、シクロヘキサノン217.8部を仕込み、60℃まで昇温した。次いで触媒として1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン1.65部を加え、90℃で8時間撹拌した。この時点で反応物の酸価を測定したところ、94mgKOH/gであった。
その後、メタクリルグリシジルエーテル78.3部、シクロヘキサノン54.0部を加え、次いで触媒として、ジメチルベンジルアミン2.65部を加え、100℃で6時間撹拌し、反応を継続しながら定期的に反応物の酸価を測定し、酸価が5.0mgKOH/g以下になったところで、室温まで冷却して反応を停止させて、ポリエステルアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物であるPE1を得た。PE1は淡黄色透明で、固形分60%、酸価は3.0mgKOH/gであった。
<PE1の性状>
・PE1中の、ポリエステルアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの固形分質量比が76:24である。
・PE1中のポリエステルアクリレートはアクリレート基(アクリロイル基)を8個有する。
・PE1の重量平均分子量は3500である。
【0081】
(合成例5)<ポリエステルアクリレートPE2>
ペンタエリスリトールトリアクリレートをジペンタエリスリトールペンタアクリレート(新中村化学工業製 製品名:A-9570W ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物)に変更して用いた以外は合成例4と同様の方法でポリエステルアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物PE2を得た。
<PE2の性状>
・PE2中の、ポリエステルアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの固形分質量比が69:31である。
・PE2中のポリエステルアクリレートはアクリレート基(アクリロイル基)を12個有する。
・PE2の重量平均分子量は4000である。
【0082】
(合成例6)<アクリル樹脂Ac1>
アクリルモノマーとして、メタクリル酸メチル29部、およびメタクリル酸ブチル71部、および酢酸n-プロピル125部、および2,2’-アゾビスイソブチロニトリル2.5部を混合して、窒素気流下、85℃の温度で6時間反応させたのち、追加で2,2’-アゾビスイソブチロニトリル1.5部を加えて更に1時間反応させた。反応終了後、酢酸n-プロピルを125部加えて固形分を40%とした。
得られたアクリル樹脂Ac1は重量平均分子量(Mw)30000、分子量分布(Mw/Mn)4.5、ガラス転移温度40℃であった。
【0083】
(調整例1)<酸化ジルコニウム粒子の表面処理(ZrO分散体(1))>
酸化ジルコニウム粒子分散体(粒子濃度30重量%、平均粒子径22nm(アイテック社製 製品名:「Zirconeo-Ck」)200.0gをセパラブルフラスコに入れ、さらに、3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(商品名KBM-5103;信越化学工業株式会社製)18.0gを加え、撹拌混合して均一溶液とした。さらに、この混合液に、反応触媒として0.18質量%のHCl水溶液3.1gを加え、内温40℃の条件で6時間加熱撹拌することにより、シラン化合物により表面処理された酸化ジルコニウム粒子(ZrO分散体(1))を得た。平均粒子径は25nmであった。
【0084】
(調整例2)<酸化チタン粒子の表面処理(TiO分散体(1))>
酸化チタン分散体(粒子濃度20重量%、平均粒子径10nm比表面積120m/g ルチル型酸化チタン 日揮触媒社製)を用いた以外、製造例1と同様の方法でシラン化合物により表面処理された酸化チタン微粒子(TiO分散体(1))を得た。平均粒子径は11nmであった。
【0085】
( 実施例1)<活性エネルギー線硬化性組成物S1の作成>
金属酸化物として、調整例1で得られたZrO分散体(1)を粒子固形分として47部、調整例2で得られたTiO分散体(1)を粒子固形分として5部、ペンタエリスリトールアクリレート系化合物として、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(東亜合成社製 製品名:「アロニックスM450」)とを、ZrO粒子質量:TiO粒子質量:ペンタエリスリトールアクリレート系化合物質量=47部:5部:44部となるよう混合し、さらに光重合開始剤としてESACURE ONE(IGM Resins製オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン])5部、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルを組成物の固形分が40%となるよう調整して、活性エネルギー線硬化性組成物S1を得た。
ただし、実施例1は参考例である。
【0086】
(実施例2~20)<活性エネルギー線硬化性組成物S2~S20の作成>
表1に記載の原料および組成比率を用いた以外は実施例1と同様の手順で活性エネルギー線硬化性組成物S2~S20を作成した。なお、表1には固形分の成分のみ示した。表中の略称は以下を示す。
ただし、実施例2~4、11、16~20は参考例である。
< 無機酸化物粒子>
ZrO分散体(2):シラン化合物処理無し、粒子固形分30重量%、平均粒子径22n m(アイテック社製 製品名:「Zirconeo-Ck」)
TiO分散体(2):シラン化合物処理無し、粒子固形分15重量%、平均粒子径36nm、比表面積45m/g アナターゼ型酸化チタン 球状粒子(CIKナノテック社製 製品名:「NanoTeck TiO」)
ZnO分散体: シラン化合物処理無し、粒子固形分15重量%、平均粒子径34nm 比表面積30m/g(CIKナノテック社製 製品名:「NanoTeck ZnO」)
<ペンタエリスリトール系化合物>
PET4A:ペンタエリスリトールテトラアクリレート(東亜合成(株)製、製品名:「アロニックスM450」)
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(サートマー社製、製品名:「DPHA」)
PET3A/PET4A=70/30:ペンタエリスリトールトリアクリレート/ペンタエリスリトールテトラアクリレート=70/30(質量比)の混合物(東亜合成(株)製、製品名:「アロニックスM306」)
DPPA/DPHA=60/40:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート/ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート=60/40(質量比)の混合物(東亜合成(株)製、製品名:「アロニックスM403」)
<エポキシアクリレート>
EP1:エポキシアクリレート ダイセル・オルネクス社製 製品名EBECRYL860 官能基数4 重量平均分子量1200
【0087】
(比較例1~10)<活性エネルギー線硬化性組成物SS1~SS10の作成>
表2に記載の原料および組成比率を用いた以外は実施例1~20と同様の手順で活性エネルギー線硬化性組成物SS1~SS8を作成した。なお、実施例9および10は実施例1と同様の手順で混合したのち、更にビーズミルで10分間分散処理を行って作成した。
表中の略称は以下を示す。
TiO顔料:テイカ社製 酸化チタン JR-403 平均粒子径250nm
Al分散体:粒子濃度15重量%、平均粒子径31nm 比表面積55m/g(製品名:「NanoTeck Al」、CIKナノテック(株)社製)
SiO分散体:粒子濃度15重量%、平均粒子径25nm 比表面積110m/g(製品名:「NanoTeck SiO2」、CIKナノテック(株)社製)
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート 新中村化学社製
DTMPTA:ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート 新中村化学社製
<ウレタンアクリレート樹脂>
PU4:ウレタンアクリレート 共栄社化学社製 製品名UF8001-G 官能基数2 重量平均分子量4500
【0088】
(実施例21)<積層体R1の作成>
活性エネルギー線硬化性組成物S1を、125μm厚の易接着処理ポリエステル(PET)フィルム(東レ(株)製「ルミラーUH13」: 濡れ指数44dyn/cm)(以下「基材1」と略記する)に、マイクログラビアコーター((株)康井精機社製)を用いて、乾燥後の膜厚が1.5μmになるように塗工した後、高圧水銀ランプで500mJ/cmの紫外線を照射し、インデックスマッチング層を形成した。更に得られたインデックスマッチング層の上に、透明導電層としてITO膜の厚みが30nmとなるようにスパッタリング法で積層後、透明導電層のみをストライプ状にエッチング処理(パターン加工)して、積層体R1を得た。
ただし、実施例21は参考例である。
【0089】
(実施例22~40)<積層体R2~R20の作成>
表1に記載の活性エネルギー線硬化性組成物S2~S20を用いた以外は実施例21と同様の手順で積層体R2~R20を作成した。
ただし、実施例22~24、31、36~40は参考例である。
【0090】
(実施例41~47)<積層体R21~R27の作成>
以下の濡れ指数の基材を用いた以外は実施例21と同様の手順でS8を塗工して積層体R2~R20を得た。なお、基材2~基材8は以下を示す。
基材2:易接着処理ポリエステル(PET)フィルム:ルミラーU34、東レ社製(濡れ指数38dyn/cm)
基材3:易接着処理ポリエステル(PET)フィルム:コスモシャイン A4300、東洋紡社製(濡れ指数58dyn/cm)
基材4:トリアセチルセルロースフィルム:フジタックTD80UF、富士フイルム社製(濡れ指数44dyn/cm)
基材5:ポリカーボネートフィルム:ピュアエース、帝人(株)製、コロナ処理により濡れ指数44dyn/cm)
基材6:シクロオレフィンフィルム:ゼオノアZF16(日本ゼオン社製:濡れ指数34dyn/cm)
基材7:シクロオレフィンフィルム:ゼオノアZF16(日本ゼオン社製:濡れ指数55dyn/cm)
基材8:シクロオレフィンフィルム:ゼオノアZF16(日本ゼオン社製:濡れ指数62dyn/cm)
上記基材の濡れ指数はコロナ放電処理により調整した。
【0091】
(実施例48)<積層体R28の作成>
活性エネルギー線硬化性組成物S1を、膜厚125μmの易接着処理ポリエステル(PET)フィルム(東レ(株)製「ルミラーUH13」:濡れ指数44dyn/cm)に、バーコーター♯4を用いて、乾燥後の膜厚が1.5μmになるように塗工した後、高圧水銀ランプで500mJ/cmの紫外線を照射し、インデックスマッチング層を形成した。更に得られたインデックスマッチング層の上に、透明導電層としてITO膜の厚みが30nmとなるようにスパッタリング法で積層後、透明導電層のみをストライプ状にパターン加工(エッチング処理)して、本発明の積層体R28を得た。
【0092】
表3において「MG」とはマイクログラビアコーターでの塗工、「B」とはバーコーターでの塗工を示す。
【0093】
(比較例11~20)<積層体RR1~RR10の作成>
表2に記載の活性エネルギー線硬化性組成物S1およびSS1~SS10を用いた以外は実施例21と同様の手順で積層体RR1~RR10を作成した。
【0094】
[特性評価]
上記にて得られた活性エネルギー硬化性組成物S1~S20(実施例)およびSS1~SS10(比較例)、積層体R1~R28(実施例)、RR1~RR10(比較例)を用いて、以下の評価を行った。なお評価結果を表3および表4に示した。
【0095】
<組成物の経時安定性>
組成物S1~S20(実施例)、SS1~SS10(比較例)それぞれについて40℃にて10日静置前および静置後で比較し、組成物の粘度の変化率(増粘率)および外観から以下の5段階で評価した。
A:粘度の変化率が10%未満であり、沈殿が見られない。(優秀)
B:粘度の変化率が10%以上20%未満であり、沈殿が見られない。(良好)
C:粘度の変化率が20%以上50%未満である、沈殿がやや見られる。(やや不良)
D:粘度の変化率が50%以上100%未満である、沈殿が見られる。(不良)
E:組成物が極めて増粘している、または沈殿が極めて多い。(極めて不良)
なお、AおよびBは実用上問題ないレベルである。
【0096】
<外観>
積層体R1~R28(実施例)、RR1~RR10(比較例)それぞれについて100mm×100mmサイズの試験片に切り出し、目視によって外観を以下の5段階で評価した。
(評価基準)
A:積層体にムラもしくは欠陥が目視で確認できない。(優秀)
B:積層体にムラもしくは欠陥が1~2個確認できる。(良好)
C:積層体にムラもしくは欠陥が3~10個確認できる。(やや不良)
D:積層体にムラもしくは欠陥が11個以上確認できる。(不良)
E:積層体にムラもしくは欠陥が多数あり基材がむき出しの部分がある。(極めて不良)
なお、AおよびBは実用上問題ないレベルである。
【0097】
<接着性>(基材/インデックスマッチング層間)
積層体R1~R28(実施例)、RR1~RR10(比較例)において、高圧水銀ランプにて積算光量で、10500mJ/cmおよび14500mJ/cmの紫外線を照射したのち、積層体のITO層を積層していない部分について、JIS K5600-5-6に準拠し、付着性クロスカット法により基材/インデックスマッチング層間の接着性を評価した。なお、該JIS規格における0~5の評価はそれぞれをA~Fと置き換えて表記した。
(評価基準)
A:カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にもはがれがない。(優秀)
B:カットの交差点における積層体の小さなはがれ。単位面積当たり5%未満のはがれ。(良好)
C:積層体がカットの縁に沿って、および/又は交差点においてはがれている。
単位面積当たり5%以上15%未満のはがれ。(やや不良)
D:積層体がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大はがれが生じており、
および/又は目のいろいろな部分が、部分的又は全面的にはがれている。
単位面積当たり15%以上35%未満の剥がれ。(不良)
E:積層体がカットの縁に沿って、部分的または全面的に大はがれが生じており、
および/または数箇所の目が部分的または全面的にはがれている。
単位面積当たりの35%未満の剥がれ。(DとFの中間程度の不良)
F:単位面積当たり35%以上の剥がれ。(極めて不良)
なお、AおよびBは実用上問題ないレベルである。
【0098】
<接着性>(インデックスマッチング層/透明電極間)
積層体R1~R28(実施例)、RR1~RR10(比較例)において、上記と同様の方法でインデックスマッチング層/透明電極間の接着性を評価した。なお評価基準は上記と同様とした。評価AおよびBは実用上問題ないレベルである。
【0099】
<透明性>
積層体R1~R28(実施例)、RR1~RR10(比較例)において、上記と同条件(10500mJ/cm)で紫外線を照射したのち、積層体のITO層を積層していない部分について、透明性を、Hazeメーター(スガ試験機社製)を用いてその濁度値(Haze値)により評価した。
(評価基準)
A:Haze値が1.0%未満である。(優秀)
B:Haze値が1.0%以上1.5%未満である。(良好)
C:Haze値が1.5%以上2.0%未満である。(やや不良)
D:Haze値が2.0%以上3.0%未満である。(不良)
E:Haze値が3.0%以上である。(極めて不良)
なお、A、Bが実用上問題ないレベルである。
【0100】
<耐擦傷性>
積層体R1~R28(実施例)、RR1~RR10(比較例)それぞれを、上記と同条件(10500mJ/cm)で紫外線を照射したのち、学振試験機にセットし、スチールウール(No.0000)を用いて、荷重250gで10回擦り合わせた。取り出した積層体について、キズのつき具合を以下の5段階の目視評価に従って判断した。
(評価基準)
A:キズが全くない。(優秀)
B:僅かにキズが付いている。(良好)
C:キズは付いているが、基材は見えていない。(やや不良)
D:キズが付き、一部硬化膜が剥がれている。(不良)
E:硬化膜が剥がれてしまい、基材が剥き出しの状態。(極めて不良)
なお、AおよびBは実用上問題ないレベルである。
【0101】
表3及び表4の結果より、組成物S1~S20(実施例)は塗工適性および保存安定性に優れ、その積層体R1~R28(実施例)は、透明性、耐擦傷性と接着性のすべてにおいてが両立でき、優れていた。これに対し、組成物SS1~SS10(比較例)は保存安定性が不良であり、その積層体RR1~RR10(比較例)は、基材とインデックスマッチング層間の接着性あるいはインデックスマッチング層と透明導電層(ITO)間の接着性が不足していた。なお、接着性が良好であった場合でも透明性もしくは耐擦傷性が劣化であった。
ただし、S1~S4、S11、S16~S20、および、R1~R4、R11、R16~R20は参考例である。
【0102】
本発明により、多量の活性エネルギー線照射にかかわらず、基材および透明導電層に対する接着性を保持することができ、塗工適性に優れ、外観が良好となるインデックスマッチング層を形成するための活性エネルギー線硬化性組成物を提供することができた。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【0105】
【表3】
【0106】
【表4】