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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】細胞培養方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/00 20060101AFI20220712BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20220712BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20220712BHJP
   C12M 3/00 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
C12N1/00 A
C12N5/071
C12M1/00 A
C12M3/00 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018001091
(22)【出願日】2018-01-09
(65)【公開番号】P2019118319
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2020-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末永 亮
(72)【発明者】
【氏名】光石 真稀
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-008667(JP,A)
【文献】特開2017-184716(JP,A)
【文献】国際公開第2016/208526(WO,A1)
【文献】特開2013-247926(JP,A)
【文献】特開2014-023540(JP,A)
【文献】特開2019-000045(JP,A)
【文献】国際公開第2018/230544(WO,A1)
【文献】特開2016-086774(JP,A)
【文献】特開2009-011260(JP,A)
【文献】国際公開第2016/121292(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M
C12N
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周辺部をシールした上面及び下面フィルムから構成され、前記下面フィルムに細胞培養部となる複数の凹部が形成されたバッグ本体と、前記バッグ本体に取り付けられたポートとを備え細胞培養バッグを用いて、前記複数の凹部において細胞又は細胞の凝集塊を培養する細胞培養方法であって、
細胞又は細胞の凝集塊を培養する際に、
前記バッグ本体に収容された培地を前記ポートから排出して、前記上面フィルムで前記複数の凹部を閉塞して前記複数の凹部内で培養されている細胞又は細胞の凝集塊を閉じ込める閉塞工程と、
前記上面フィルムによって閉塞された前記複数の凹部の一部又は全部の凹部において、当該凹部の内面に接着している前記細胞又は細胞の凝集塊を剥離する剥離工程と
を有することを特徴とする、細胞培養方法。
【請求項2】
前記剥離工程において、閉塞された前記複数の凹部の一部又は全部の凹部において、前記細胞培養バッグの外部から前記凹部に物理的な刺激を与えて、当該凹部の内面に接着している細胞又は細胞の凝集塊を剥離する
ことを特徴とする、請求項1記載の細胞培養方法。
【請求項3】
前記剥離工程において、閉塞された前記複数の凹部のうちの一部又は全部の凹部に振動又は揺動を与える
ことを特徴とする、請求項2記載の細胞培養方法。
【請求項4】
前記剥離工程において、閉塞された前記複数の凹部のうちの一部又は全部の凹部を外側から突く
ことを特徴とする、請求項2又は3記載の細胞培養方法。
【請求項5】
前記剥離工程において、前記複数の凹部を閉塞したまま、前記細胞培養バッグを上下反転及び/又は傾斜させる
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の細胞培養方法。
【請求項6】
前記剥離工程において、前記複数の凹部の一部の凹部内の細胞又は細胞の凝集塊を選択的に剥離し、
前記剥離工程に続いて、
前記ポートから前記バッグ本体内に培地を注入して、前記上面フィルムによる前記複数の凹部の閉塞を解除する解除工程と、
前記剥離工程において選択的に剥離した細胞又は細胞の凝集塊を、培地と共に前記ポートから前記バッグ本体の外部へ排出する排出工程と
を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の細胞培養方法。
【請求項7】
前記排出工程において、前記細胞培養バッグを上下反転させた状態で、前記選択的に剥離した細胞又は細胞の凝集塊を、培地と共に前記ポートから前記バッグ本体の外部へ排出する
ことを特徴とする、請求項6記載の細胞培養方法。
【請求項8】
前記排出工程において、前記ポートが前記複数の凹部よりも下方に位置するように、前記細胞培養バッグを傾斜させた状態で、前記選択的に剥離した細胞又は細胞の凝集塊を、培地と共に前記ポートから前記バッグ本体の外部へ排出する
ことを特徴とする、請求項7記載の細胞培養方法。
【請求項9】
前記閉塞工程において、押圧部材で、前記上面フィルムを上方から押圧する
ことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の細胞培養方法。
【請求項10】
周辺部をシールした上面及び下面フィルムから構成され、前記下面フィルムに細胞培養部となる複数の凹部が形成されたバッグ本体と、前記バッグ本体に取り付けられたポートとを備え細胞培養バッグ
前記細胞培養バッグが載置される載置面を有する架台と、
前記複数の凹部内で培養されている細胞又は細胞の凝集塊を閉じ込めるように、前記上面フィルムで前記複数の凹部が閉塞されまで、前記バッグ本体に収容された培地を前記ポートから排出する送液手段と、
前記上面フィルムによって閉塞された前記複数の凹部の一部又は全部の凹部において、当該凹部の内面に接着している前記細胞又は細胞の凝集塊を剥離する剥離手段と
を備えることを特徴とする、細胞培養装置。
【請求項11】
前記剥離手段は、閉塞された前記複数の凹部の一部又は全部の凹部において、当該凹部の内面に接着している細胞又は細胞の凝集塊を剥離させるために、前記細胞培養バッグの外部から当該凹部に物理的な刺激を与える
ことを特徴とする、請求項10記載の細胞培養装置。
【請求項12】
前記剥離手段は、閉塞された前記複数の凹部のうちの一部又は全部の凹部に振動又は揺動を与える
ことを特徴とする、請求項10又は11記載の細胞培養装置。
【請求項13】
前記剥離手段は、閉塞された前記複数の凹部のうちの一部又は全部の凹部を下方から突き上げる突上げ部材と、
前記突上げ部材を上下動させるアクチュエータと
を備え、
前記架台の前記載置面に、前記突上げ部材が上下動可能な開口部が形成されている
ことを特徴とする、請求項10~12のいずれか一項に記載の細胞培養装置。
【請求項14】
前記剥離手段は、前記複数の凹部のうちの一部の凹部の内面に接着した細胞を選択的に剥離し、
前記送液手段は、前記ポートから前記バッグ本体内に培地を注入して、前記上面フィルムによる前記複数の凹部の閉塞を解除し、次いで、前記剥離手段により選択的に剥離された細胞又は細胞の凝集塊を培地と共に前記ポートから前記バッグ本体の外部へ排出する
ことを特徴とする、請求項10~13のいずれか一項に記載の細胞培養装置。
【請求項15】
前記細胞培養バッグの前記上面フィルムを上方から押圧する押圧部材を更に備える
ことを特徴とする、請求項10~14のいずれか一項に記載の細胞培養装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞培養方法及び装置に係り、より詳細には、複数の凹部を設けた細胞培養バッグを使用する細胞培養方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医薬品の生産や、遺伝子治療、再生医療、免疫療法などの分野において、細胞(組織、微生物、ウイルスなどを含む)を人工的な環境下で効率良く大量に培養・分化誘導することが求められている。
【0003】
そのような細胞培養においては、コンタミネーションのリスクを回避するため、閉鎖系の細胞培養バッグが使用されることがある。細胞培養バッグは、例えば、周辺部をシールしたプラスチックフィルムで構成されたバッグ本体と、バッグ本体に取り付けられたポートとから構成されている。特許文献1には、バッグ本体の底面に複数の凹部を設けることにより、細胞培養バッグ内での細胞の移動を抑制した細胞培養バッグが記載されている。
【0004】
ところで、細胞培養においては、一般に、細胞の増殖に伴い培地中の細胞濃度が高くなり過ぎると、増殖に必要な培地成分の枯渇や、細胞自身の代謝産物の蓄積などにより細胞の成長が阻害されて細胞の増殖効率が低下し、一方、培地中の細胞濃度が低過ぎても、細胞の増殖・分化誘導の効率が低下する。このため、細胞の培養・分化誘導効率を向上させるためには、細胞濃度を適正な範囲に維持する必要がある。
【0005】
複数の凹部を設けた細胞培養バッグを使用してスフェロイド培養を行う場合においても、各凹部で細胞濃度を適正な範囲に維持する必要があり、そのため、各凹部の細胞数が均一になるように、各凹部に細胞が播種される。
【0006】
さらに、かかるスフェロイド培養では、各凹部で均一で適切な大きさのスフェロイド(細胞の凝集塊)を形成させるため、各凹部にスフェロイドを1つずつ形成させ、1つの凹部につき1つのスフェロイドを培養終了まで維持することが求められる。
【0007】
1つの凹部に1つのスフェロイドを形成するためには、細胞培養バッグの内面に、細胞を接着し難くする細胞低接着処理を施して、細胞を細胞培養バッグの冠球状の凹部の底部中央に集めることが好ましい。細胞低接着処理としては、例えば、リン脂質ポリマー、ポリビニルアルコール誘導体、界面活性剤又はアルブミンのようなタンパク質などをコーティングしてプラスチックフィルムの表面に細胞接着性タンパクが吸着するのを阻害する処理などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2009-11260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、細胞培養バッグに細胞低接着処理を施していても、処理むらや培養細胞の接着力等の種々の要因により、細胞やスフェロイドが凹部の内面に接着することがある。例えば、図10に示すように、培地Sを収容した細胞培養バッグ1の各凹部4に播種した細胞Cが、細胞接着性タンパクにより凹部4の内面の複数箇所に接着してしまうことがある。その場合、各細胞Cは、接着した位置を起点としてそれぞれスフェロイドを形成するため、1つの凹部4に小さな複数のスフェロイドが形成されてしまう。そして、凹部4の内面に接着しているスフェロイドは移動しないため、スフェロイドどうしが接着して1つのスフェロイドを形成することができない。
【0010】
このため、各凹部にスフェロイドを1つずつ形成するためには、凹部内面の複数箇所に接着している細胞を剥離させ、凹部内の1カ所(例えば、底部中央)に集める必要がある。
【0011】
また、各凹部にスフェロイドが1つずつ形成されている場合であっても、スフェロイドが凹部の内面に接着することがある。スフェロイドのうち凹部内面に接着した部分では、培地成分が枯渇しやすく、かつ代謝産物が蓄積しやすいため、スフェロイド全体の細胞の増殖・分化誘導効率が低下してしまう。
このため、スフェロイド培養においては、細胞の増殖・分化誘導効率を向上させるために、凹部内面に接着しているスフェロイドを定期的に(例えば、培地交換時に)剥離させ、スフェロイドの接着位置を変えることが求められる。
【0012】
従来のウエルプレートを使用した細胞培養であれば、ピペットでウエル(凹部)内の培地に噴流を起こすことによって、ウエルの内面に接着している細胞(例えば、播種直後の細胞、又はスフェロイドを形成している細胞)を剥離することができる。具体的には、ウエルにピペット先端を挿入し、細胞を吸わないようにしながら培地を静かに吸い上げ、次いで、吸い上げた培地を勢い良くウエルに注入して培地に噴流を起こし、噴流によって細胞を剥離することができる。
【0013】
しかしながら、細胞培養バッグを使用した細胞培養においては、閉鎖系を維持したまま、細胞培養バッグ内の凹部にピペットを挿入することが困難である。
【0014】
なお、細胞培養バッグを使用した細胞培養において図11(a)に示すように、ポート3から培地Sを強く注入して細胞培養バッグ1内に培地Sの水流を発生させ、凹部4の内壁に接着している細胞Cを剥離させる方法が考えられる。
しかし、この方法では、図11(b)に示すように、凹部4内に沈殿していた細胞Cや剥離した細胞Cが他の凹部4へ移動してしまい、各凹部4内の細胞濃度が不均一となってしまう。特に、1つの凹部4に多くの細胞Cが入ると、やがて大き過ぎる塊C’となり、細胞の増殖・分化誘導効率が低下してしまう。
【0015】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであり、複数の凹部が形成された細胞培養バッグを使用して細胞培養を行うにあたり、細胞の凹部間の移動を防止しつつ、凹部の内面に接着している細胞又は細胞の凝集塊を剥離させて、細胞又は細胞の凝集塊の増殖・分化誘導効率を向上させることができる細胞培養方法及び装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る細胞培養方法は、周辺部をシールした上面及び下面フィルムから構成され、前記下面フィルムに細胞培養部となる複数の凹部が形成されたバッグ本体と、前記バッグ本体に取り付けられたポートとを備え細胞培養バッグを用いて、前記複数の凹部において細胞又は細胞の凝集塊を培養する細胞培養方法であって、前記バッグ本体に収容された培地を前記ポートから排出して、前記上面フィルムで前記複数の凹部を閉塞して前記複数の凹部内で培養されている細胞又は細胞の凝集塊を閉じ込める閉塞工程と、前記上面フィルムによって閉塞された前記複数の凹部の一部又は全部の凹部において、前記細胞培養バッグの外部から前記凹部に物理的な刺激を与えて、当該凹部の内面に接着している前記細胞又は細胞の凝集塊を剥離する剥離工程とを有することを特徴としている。
【0017】
また、本発明に係る細胞培養装置は、周辺部をシールした上面及び下面フィルムから構成され、前記下面フィルムに細胞培養部となる複数の凹部が形成されたバッグ本体と、前記バッグ本体に取り付けられたポートとを備え細胞培養バッグ、前記細胞培養バッグが載置される載置面を有する架台と、前記複数の凹部内で培養されている細胞又は細胞の凝集塊を閉じ込めるように、前記上面フィルムが前記複数の凹部を閉塞するまで、前記バッグ本体に収容された培地を前記ポートから排出する送液手段と、前記上面フィルムによって閉塞された前記複数の凹部の一部又は全部の凹部において、当該凹部の内面に接着している前記細胞又は細胞の凝集塊を剥離するために、前記細胞培養バッグの外部から当該凹部に物理的な刺激を与える剥離手段とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明の細胞培養方法及び装置によれば、複数の凹部が形成された細胞培養バッグを使用して細胞培養を行うにあたり、細胞の凹部間の移動を防止しつつ、凹部の内面に接着している細胞又は細胞の凝集塊を剥離させて、細胞又は細胞の凝集塊の増殖・分化誘導効率を向上させることができる。
【0019】
例えば、細胞培養バッグの凹部の内面の複数箇所に接着している場合において、凹部を閉塞して、凹部に物理的な刺激を与えることによって、細胞の凹部間の移動を防止しつつ、細胞を剥離させて一箇所に集合させて、1つの凹部に1つの細胞凝集塊(スフェロイド)を効率良く形成させ、細胞の増殖・分化誘導効率を向上させることができる。
さらに、例えば、細胞培養バッグの凹部の内面に細胞凝集塊が接着している場合において、凹部を閉塞して、凹部に物理的な刺激を与えることによって、細胞凝集塊の凹部間の移動を防止しつつ、細胞凝集塊を剥離させて細胞凝集塊の接着部位を変え、細胞凝集塊の増殖・分化誘導効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態で使用する細胞培養バッグの概略を示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は下面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る細胞培養装置の断面模式図あり、(a)は押圧部材が上がった状態を示し、(b)は押圧部材が下がった状態を示す。
図3】(a)は、本発明の第1実施形態における細胞培養中の状態を示す断面模式図であり、(b)は、本発明の第1実施形態における閉塞工程を示す細胞培養バッグの断面模式図である。
図4】本発明の第1実施形態における剥離工程を説明する説明する細胞培養バッグの断面模式図である。
図5】細胞が播種された1つの凹部内を示す写真であり、(a)は、播種から48時間後の凹部内を示し、(b)は、閉塞工程後の凹部内を示し、(c)は、剥離工程直後の凹部内を示し、(d)は、剥離工程から15時間後の凹部内を示す。
図6】本発明の第2実施形態を説明する説明する細胞培養バッグの断面模式図であり、(a)は、上下反転させた細胞培養バッグを示し、(b)は、傾斜させた細胞培養バッグを示し、(c)は、上下反転させ、かつ傾斜させた細胞培養バッグを示す。
図7】本発明の第3実施形態の剥離工程を説明する説明する細胞培養バッグの断面模式図である。
図8】本発明の第4実施形態に係る細胞培養方法を説明する細胞培養バッグの断面模式図であり、(a)は、剥離工程を示し、(b)は、解除工程を示し、(c)は、排出工程を示す。
図9】本発明の第5実施形態に係る細胞培養方法を説明する細胞培養バッグの断面模式図である。
図10】細胞培養バッグの凹部の内面の複数箇所に細胞が接着した状態を示す細胞培養バッグの断面模式図である。
図11】(a)は、細胞培養バッグ内の凹部からスフェロイドが剥離された状態を示す細胞培養バッグの断面模式図であり、(b)は、細胞培養バッグ内で剥離したスフェロイドが凹部間を移動した状態を示す細胞培養バッグの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
(細胞培養バッグ)
まず、本実施形態に係る細胞培養装置の説明に先立ち、図1を参照して、本実施形態で使用する細胞培養バッグを説明する。図1(a)~図1(c)に示す細胞培養バッグ1は、重ね合わせて周辺部20をヒートシールした上面フィルム21及び下面フィルム22から構成されたバッグ本体2と、このバッグ本体2に取り付けられたポート3とを備えている。バッグ本体2の大きさは特に限定されないが、例えば、縦50~500mm、横50~500mmとするのが好ましい。
なお、図1を含む各図において、ポート3に接続されたチューブ等の流路、及び、流路を閉塞するピンチ又はバルブ等の閉塞手段の図示を省略する。
【0023】
下面フィルム22には、図1(c)に示すように、各々が細胞培養部となる複数の凹部4が形成されている。凹部4は、バッグ本体2内における細胞の移動を抑止して、培養中の細胞が一つの凹部4に留まるようにするために、開口径(直径)Dが0.3~10mm、深さdが0.1mm以上であるのが好ましい。凹部4はまた、全ての凹部4で同一開口径としてもよいし、開口径が異なる二種以上の凹部を含んでもよい。例えば、下面フィルム22を複数の領域に分割して、それぞれの領域ごとに凹部4の開口径を異ならせてもよい。
【0024】
また、細胞培養バッグ1では、凹部4の底部に細胞が集まり易くするため、図1(b)に示すように、凹部4は球冠状の形状を有している。なお、凹部4の形状は、これに限定されない。例えば、凹部4は、擂り鉢状(円錐状)に窪んだ形状を有していてもよい。凹部4の底部に細胞が集まり易くするには、凹部4の直径Dに対する深さdの比d/Dを0.05~1とするのが好ましい。
また、凹部4の配列は、図1(c)に示すように千鳥状として、下面フィルム22に占める凹部4の占有面積ができるだけ大きくなるようにするのが好ましいが、必要に応じて格子状に配列してもよい。
【0025】
上面フィルム21は、図1(b)に示すように、複数の凹部4全体の上方を覆う実質的に平坦な天面部分21aと、天面部分21aの周囲に形成された傾斜部分21bとから構成された台地状に膨出した膨出形状を有する。これにより、二枚のプラスチックフィルムを重ねて周辺部をシールしただけの平パウチ状の容器と比較して、バッグ本体2を培地で満たしても、下面フィルム22の周辺部が持ち上がる変形が抑制される。
【0026】
バッグ本体2を形成する上面フィルム21及び下面フィルム22は、ガス透過性を有するプラスチックフィルムで形成される。このプラスチックフィルムのガス透過性は、JIS K 7126のガス透過度試験方法に準拠して、試験温度37℃で測定した酸素の透過度が、5000mL/(m・day・atm)以上であるのが好ましい。
【0027】
バッグ本体2を形成するプラスチックフィルムに用いる材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、シリコーン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などの熱可塑性樹脂が挙げられる。これらは単層で用いても、同種又は異種の材料を積層して用いてもよいが、周辺部をヒートシールする際の熱融着性を考慮すると、シーラント層として機能する層を有しているのが好ましい。
【0028】
また、上面フィルム21が可撓性を有しながらも膨出形状を保ち、かつ、下面フィルム22が凹部4の形状を保つように、バッグ本体2を形成するプラスチックフィルムの厚みは、適度の形状保持性を有する30~200μmであるのが好ましい。
【0029】
ポート3は、培地や細胞などが流通可能な管状の部材からなり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリスチレン系エラストマー、FEPなどの熱可塑性樹脂で成形することができる。
【0030】
(第1実施形態)
次に、図2及び図3を参照して、本発明の実施形態に係る細胞培養方法及び装置を説明する。図2は、第1実施形態に係る細胞培養装置100の断面模式図あり、図2(a)は押圧部材が上がった状態を示し、図2(b)は押圧部材が下がった状態を示す。
本実施形態の細胞培養装置100は、細胞培養バッグ1が載置される架台5と、上面フィルム21のうち天面部分21a分を押圧する底面6aを有する押圧部材6と、押圧部材6を支持する支持機構7とを備えている。
なお、図2では、細胞培養バッグ1のポート3から培地の注入、排出を行う送液手段としてのポンプ、細胞培養バッグ1の凹部4からスフェロイドを剥離する剥離手段の図示を省略する。なお、ポンプとしては、例えば、ポート3にチューブを介して接続したペリスタポンプが挙げられる。
なお、送液手段は、ポンプに限定されず、例えば、シリンジであってもよい。
【0031】
架台5は、細胞培養バッグ1が水平に載置される載置面5aを有する。この載置面5aには、細胞培養バッグ1の下面フィルム22に形成された複数の凹部4の各々を受け入れる形状として、開口部5bが形成されている。これにより、載置面5aが下面フィルム22を凹部4に非接触で支持するので、凹部4の潰れ、変形が回避されて凹部4内の細胞の流出が防止され、さらに、下面フィルム22からのガス透過性が高まる。
なお、複数の凹部4の各々を受け入れる形状は、開口部に限定されず、例えば、凹部であってもよいし、金網状であってもよい。
【0032】
押圧部材6は、細胞培養バッグ1の天面部分21aに合わせた略長方形の平面形状を有する板状部材であり、平坦な底面6aを有している。
【0033】
支持機構7は、架台5上に設けたフレーム71と、押圧部材6の上面の四隅から上方に延びてフレーム71を上下動可能に貫通しているガイドピン72と、押圧部材6を下方へ付勢する付勢手段73とから構成されている。付勢手段73は、押圧部材6の上面と、フレーム71とに互いに同極側を対向させて配置した磁石73で構成されている。永久磁石73同士の間に働く斥力により、押圧部材6は、上面フィルム21の高さに従って上下に移動する。
なお、付勢手段73は、永久磁石に限定されない。また、付勢手段73を省略し、押圧部材6の自重により、押圧部材6を上面フィルム21の高さに従って上下に移動させてもよい。
【0034】
次に、図3及び図4を参照して、本実施形態の細胞培養方法を説明する。なお、図3及び図4では、図2に示した細胞培養装置のうち、支持機構7の図示を省略する。
図3(a)に示すように、細胞培養中、形成されたスフェロイドCは、各凹部4に均一な細胞濃度で収容されている。
【0035】
図3(b)に示すように、閉塞工程では、ポンプ(図示せず)でバッグ本体2に収容された培地Sをポート3から排出することによって、上面フィルム21で複数の凹部4が全て閉塞される。上面フィルム21を押圧部材6の平坦な底面6aで押圧しているため、上面フィルム21が平坦となり、上面フィルム21で複数の凹部4の各々が確実に閉塞される。これにより、各凹部4内にそれぞれスフェロイドCが閉じ込められるので、次の剥離工程において、スフェロイドCの各凹部4からの流出が防止される。
なお、上面フィルム21による複数の凹部4の閉塞にあたっては、各凹部4を密閉してもよいし、密閉しなくてもよい。複数の凹部4が密閉されない場合には、細胞の凹部4からの流出が阻止できる程度に、複数の凹部4が塞がれていればよい。
【0036】
次に、図4に示すように、剥離工程では、閉塞された複数の凹部4の一部又は全部において、当該凹部4の内面からスフェロイドCを剥離する。
剥離工程では、複数の凹部のうちの一部又は全部の凹部4に振動又は揺動を与えるとよい。その場合、細胞培養装置100全体に、振動又は揺動を与えてもよいし、凹部4を形成している下面フィルム22に、振動又は揺動の物理的な力を加えてもよい。凹部4に加えられた振動又は揺動は、凹部4の内面に接着したスフェロイドCにも伝わり、スフェロイドCが、凹部4内面から剥離する。
なお、振動又は揺動を与える手段として、図4に示した、細胞培養装置の架台5に取り付けられた振動子(バイブレータ)8を用いてもよいし、揺動装置を利用してもよい。また、凹部4に振動子を直接接触させて、凹部4に振動を直接加えてもよい。また、一部の凹部4に、選択的に振動又は揺動を加えてもよい。
また、振動及び揺動は、往復運動でもよいし、例えば試験官ミキサーによる回転運動でもよい。
【0037】
ここで、図5に、本実施形態において、細胞が播種された1つの凹部4内を示す写真を示す。ここでは、味の素株式会社製の培地(StemFit(登録商標))を使用し、未分化iPS細胞(細胞株1231A3)を、1つの凹部(ウエル)あたり3×10個播種した。
【0038】
図5(a)は、播種から48時間後の凹部を示す。同図に示すように、播種された細胞は、凹部の底部中央だけでなく、凹部の内面の至る所に接着してスフェロイドを形成している。なお、同図では、凹部の周囲内面に接着しているスフェロイドは、写真の焦点面から離れているため、明瞭に現れていない。
【0039】
図5(b)は、閉塞工程後の凹部を示す。凹部4を閉塞しただけでは、まだ、スフェロイドは内面の各所に接着したままである。
閉塞工程では、送液手段としてペリスタポンプを使用し、1.0ml/分の送液速度で、上面フィルム21が各凹部4を閉塞するまで培地をポート3から排出した。
【0040】
図5(c)は、剥離工程直後の凹部を示す。振動子8により架台5を振動させた。同図に示すように、凹部4の周囲内面から剥離した多数の小さなスフェロイドが、凹部の底部中央に集まっている。
剥離工程では、剥離手段として振動子8である試験管ミキサー8を使用した。そして、図4に示したように、試験管ミキサー8を細胞培養装置100の架台5の下面に1分間押し当てることによって、細胞培養バッグ1の各凹部4に外部から物理的な刺激を与えた。試験官ミキサー8としては、振動速度:約2800回転/分、水平振動式のタイテック社製のプレゼントミキサー6076881を使用した。
【0041】
図5(d)は、剥離工程から15時間後の凹部を示す。剥離工程後、バッグ本体2内に培地を注入し、培養を再開した。同図に示すように、凹部4の底部中央に1つのスフェロイドが形成されている。
【0042】
このように、本実施形態によれば、スフェロイドの凹部4間の移動を防止しつつ、スフェロイドを内面から剥離させて一箇所に集合させる。これにより、1つの凹部4に1つのスフェロイドを効率良く形成させてスフェロイドの増殖・分化誘導効率を向上させることができる。
【0043】
さらに、1つの凹部4に1つのスフェロイドが形成されていても、凹部4の内面にスフェロイドが接着している場合には、再度凹部4を閉塞して、凹部4に物理的な刺激を与えることによって、スフェロイドの凹部4間の移動を防止しつつ、スフェロイドを内面から剥離させてスフェロイドの接着部位を変え、スフェロイドの増殖・分化誘導効率を向上させることができる。
【0044】
(第2実施形態)
次に、図6を参照して、本発明の第2実施形態を説明する。同図では、第1実施形態と同一構成部分の図示を一部省略する。
本実施形態では、第1実施形態で説明した閉塞工程後、剥離工程において、細胞培養バッグの凹部4に外部から物理的な刺激を与える代わりに、図6(a)に示すように、各凹部4を閉塞したまま、細胞培養バッグ1を図1に示した細胞培養装置100ごと上下反転させる。
【0045】
また、図6(b)に示すように、剥離工程において、凹部に外部から物理的な刺激を与える代わりに、各凹部4を閉塞したまま、細胞培養バッグ1を図1に示した細胞培養装置100ごと傾斜させてもよい。なお、細胞培養バッグ1の水平に対する傾斜角度は、特に限定されず、例えば、90度まで傾斜させてもよい。
【0046】
さらに、図6(c)に示すように、剥離工程において、凹部に外部から物理的な刺激を与える代わりに、各凹部4を閉塞したまま、細胞培養バッグ1を図1に示した細胞培養装置100ごと上下反転させ、かつ傾斜させてもよい。
【0047】
このように、本実施形態では、培養バッグ100を上下反転及び/又は傾斜させるという簡単な操作によって、凹部4の内面に接着していたスフェロイドCが、重力により剥離するまた、各凹部4が上面フィルム21で閉塞されているため、剥離した細胞又はスフェロイドCが他の凹部4へ移動することが回避される。
また、本実施形態は、細胞培養バッグ1の凹部4の内側に接着している細胞及び凝集塊が細胞培養バッグ1を上下反転及び/又は傾斜させただけで剥離する場合に好適である。
【0048】
なお、細胞培養バッグ1は、人手で上下反転及び/又は傾斜させてもよいし、ロボットアーム等の機構により上下反転及び/又は傾斜させてもよい。
また、上述した第1実施形態の剥離工程において、更に本実施形態のように細胞培養バッグ1を上下反転及び/又は傾斜させてもよい。また、後述の第3及び4実施形態の剥離工程においても、更に本実施形態のように細胞培養バッグ100を上下反転及び/又は傾斜させてもよい。
【0049】
(第3実施形態)
次に、図7を参照して、本発明の第3実施形態を説明する。同図では、第1実施形態と同一構成部分の図示を一部省略する。
本実施形態では、第1実施形態で説明した閉塞工程後、剥離工程において、細胞培養バッグの凹部4に振動又は揺動を与える代わりに、複数の凹部4の下方にそれぞれ配置された突上げ部材9によって各凹部を下方から突き上げることによって、各凹部4に物理的な刺激を与える。
【0050】
突上げ部材9は、架台5の載置面5aに形成された開口部5b内をアクチュエータ(図示せず)によって上下動する。下側に凸状に湾曲した冠球状の凹部4の底部は、突上げ部材9によって突き上げられ、上側に凸状に湾曲するように膨らみが反転する。凹部4を突き上げることによって、凹部4の内面に接着したスフェロイドCが剥離する。
【0051】
凹部4が上側に反転したままとなった場合には、例えば、次に培地をバッグ本体2内に注入した後に、押圧部材6等でバッグ本体2を押圧してバッグ本体2の内圧を上昇させることによって、元の下側に凸状に湾曲した冠球状の形状を回復させることができる。また、例えば、上側に反転した凹部4を下側から吸引することによっても、凹部4の形状を回復させることができる。
【0052】
なお、図7では、突上げ部材9が全部の凹部4を同時に突き上げた例を示したが、突上げ部材は一部の凹部4を選択的に突き上げてもよい。
また、1つの突上げ部材9が、凹部4を1つずつ順次に突き上げてもよい。その場合、アクチュエータ(図示せず)は、突上げ部材9を上下動させるだけでなく、突上げ部材を水平方向移動させて所望の凹部4の下方に順次に位置決めするように構成するとよい。
また、凹部4を突き上げ部材9で突き上げるとともに、細胞培養バッグ1に振動又は揺動を加えることによって、凹部4に物理的な刺激を与え、凹部4の内面に接着しているスフェロイドCを剥離してもよい。
【0053】
このように、細胞培養バッグ1を使用した細胞培養であっても、スフェロイドCの凹4部間の移動を防止しつつ、凹部4内でスフェロイドCの接着位置を変えることができる。これにより、細胞の培養・分化誘導効率を向上させることができる。
【0054】
(第4実施形態)
次に、図8を参照して、本発明の第4実施形態の細胞培養方法及び装置を説明する。
本実施形態の細胞培養装置の構造は、第2実施形態のものと同じにすることができる。本実施形態では、第1実施形態で説明した閉塞工程後、不要なスフェロイドC1を選択的に剥離して排除する。
【0055】
図8(a)に示すように、剥離工程では、閉塞された複数の凹部4のうち、一部の凹部内のスフェロイドC1を選択的に剥離する。本実施形態においても、第1実施形態と同じ剥離手段を用いる。
【0056】
次に、図8(b)に示すように、解除工程では、ポンプでポート3からバッグ本体2内に培地を注入することによって、上面フィルム21による凹部4の閉塞が解除される。凹部4の閉塞が解除された結果、剥離したスフェロイドC1は、当該凹部4の外部へ流出可能な状態となる。
【0057】
次に、図8(c)に示すように、排出工程では、ポンプでポート3からバッグ本体2内の培地を排出することによって、選択的に剥離したスフェロイドC1が、培地Sと共に排出される。このようにして、不要なスフェロイドC1が選択的に剥離して除去することができる。
不要なスフェロイドC1が選択的に剥離、除去される一方、選択されなかった他の凹部4のスフェロイドCは、各凹部4内面にそれぞれ接着しているため、ポート3から排出されない。
なお、本実施形態では、不要なスフェロイドC1を選択したが、選択されるスフェロイドは不要なものに限定されず、例えば、抽出サンプルとして選択してもよい。また、2つ以上の凹部4内のスフェロイドを選択的に剥離することもできる。
【0058】
(第5実施形態)
次に、図9を参照して、本発明の第5実施形態を説明する。
本実施形態の細胞培養装置の構造は、第4実施形態のものと同じにすることができる。
本実施形態では、第4実施形態で説明した排出工程において、細胞培養バッグ1を上下反転させ、かつ、ポート3が複数の凹部4よりも下方に位置するように、細胞培養バッグ1を傾斜させた状態で、選択的に剥離したスフェロイドC1を、培地Sと共にポート3からバッグ本体2の外部へ排出する。
【0059】
なお、細胞培養バッグ1を傾斜させずに上下反転だけさせた状態で、剥離されスフェロイドC1を、培地Sと共にポート3からバッグ本体2の外部へ排出してもよい。
また、本実施形態は、細胞培養バッグ1の凹部4の内側に接着している細胞及び凝集塊が細胞培養バッグ1を上下反転させただけでは剥離しない場合に好適である。
また、細胞培養バッグ1の上下反転及び/又は傾斜させる操作は、排出工程において実施してもよいし、排出工程よりも前段階で実施してもよい。
【0060】
このように、細胞培養バッグ1を上下反転させることにより、剥離工程で選択的に剥離されスフェロイドC1が凹部4の外部へ移動し、ポート3から容易に排出される。さらに、細胞培養バッグ1を、ポート3が複数の凹部4よりも下方に位置するように傾斜させれば、剥離した巣フェロイドC1をポート3からより容易に排出することができる。
【0061】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。前述した実施形態では、棒状の突上げ部材を使用したが、突上げ部材の形状はこれに限定されない。また、上述した実施形態では、押圧部材で上面フィルムを押圧した例を説明したが、本発明では押圧部材を省略してもよい。
【0062】
また、上述した実施形態では、細胞培養バッグの凹部の内面に接着したスフェロイドを剥離する例を説明したが、本発明は、スフェロイドを形成していない細胞を細胞培養バッグの凹部の内面から剥離する場合にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、種々の細胞を効率良く培養する技術として利用できる。
【符号の説明】
【0064】
1 細胞培養バッグ
2 バッグ本体
20 周辺部
21 上面フィルム
21a 天面部分
21b 傾斜部分
22 下面フィルム
3 ポート
4 凹部(ウエル)
5 架台
5a 載置面
5b 開口部
6 押圧部材
6a 底面
7 支持機構
71 フレーム
72 ガイドピン
73 付勢手段(磁石)
8 振動子(試験管ミキサー)
9 突上げ部材
100 細胞培養装置
C,C’,C1 細胞又は細胞の凝集塊(スフェロイド)
S 培地
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11