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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】青緑色蛍光体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/08 20060101AFI20220712BHJP
   C09K 11/55 20060101ALI20220712BHJP
   C01G 9/00 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
C09K11/08 B
C09K11/55
C01G9/00 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018011757
(22)【出願日】2018-01-26
(65)【公開番号】P2019127570
(43)【公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000174541
【氏名又は名称】堺化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東條 知則
(72)【発明者】
【氏名】森 健治
(72)【発明者】
【氏名】緒方 七重
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-094283(JP,A)
【文献】国際公開第2018/004006(WO,A1)
【文献】特開2008-208195(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101104797(CN,A)
【文献】特表2009-511645(JP,A)
【文献】国際公開第2010/024389(WO,A1)
【文献】特開2004-305732(JP,A)
【文献】特開2003-342563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00
C01G 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長365nmの光で励起したときの極大発光波長が460nm~504nmの範囲である青緑色蛍光体を製造する方法であって、
該製造方法は、酸素含有亜鉛化合物とマグネシウム化合物と硫黄単体及び/又は硫黄含有化合物とを、酸素含有亜鉛化合物とマグネシウム化合物の、亜鉛原子とマグネシウム原子のモル比率(亜鉛/マグネシウム)が70/30~98/2となる割合であって、かつ、硫黄単体及び/又は硫黄含有化合物に含まれる硫黄原子の重量割合が、酸素含有亜鉛化合物とマグネシウム化合物の合計100重量%に対して0.01~0.5重量%となる割合で乾式で混合する工程と、
該混合工程で得られた混合物を還元雰囲気下で焼成する工程と
該還元焼成工程の後に、更に大気雰囲気下で550~850℃で焼成する工程とを含み、
該マグネシウム化合物は、比表面積が5~40m /gである
ことを特徴とする青緑色蛍光体の製造方法。
【請求項2】
前記酸素含有亜鉛化合物は、比表面積が5~30m/gの酸化亜鉛であることを特徴とする請求項1に記載の青緑色蛍光体の製造方法。
【請求項3】
前記マグネシウム化合物は、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム及び炭酸マグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の青緑色蛍光体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、青緑色蛍光体の製造方法に関する。より詳しくは、化粧料の材料等に用いることができる青緑色蛍光体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光体は、外部から光エネルギーを吸収して別の波長の光を放出する物質である。蛍光体は、テレビや蛍光灯、表示板の他、近年では肌の色を改善すること等を目的として化粧料にも使用されている(特許文献1参照。)。中でも青色~緑色の発光色の蛍光体は、肌の赤味を補正したり、透明感を演出する効果が期待される。
このような青色系蛍光体の製造方法として、紫外線や電界及び電子線に対して安定であり、優れた青色発光特性を有する青色系蛍光体を製造することを目的とした青色系蛍光体の製造方法が報告されている(特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第2805373号公報
【文献】特許第4670079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発光色が青色~青緑色である青色系蛍光体の製造方法として特許文献2のような方法が知られているが、この方法は亜鉛とマグネシウムを溶解状態で含む水溶液を出発原料としており、大量の溶媒を使用するためコストが高い。また水素濃度が7%という高い濃度での還元焼成が必要であることから、安全性の高い方法であるとはいえず、青色系蛍光体の工業的な生産には不向きな方法である。一方、従来から蛍光体の製造に使用されている固相法は安価で安全な方法であるが、亜鉛とマグネシウムを原料とする蛍光体を固相法で製造するとマグネシウムが十分に固溶せず、得られる蛍光体の発光の主波長を青色側に十分にシフトさせることができず、またマグネシウムを含まない酸化亜鉛蛍光体と比べて発光強度が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑み、発光強度が高い青緑色蛍光体を安価かつ安全に製造することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、青緑色蛍光体の製造方法について種々検討し、酸素含有亜鉛化合物とマグネシウム化合物と硫黄単体及び/又は硫黄含有化合物とを乾式で混合し、得られた混合物を還元雰囲気下で焼成することにより青緑色蛍光体を製造すると、青緑色蛍光体を安価かつ安全に製造することができることを見出した。更に本発明者らは、還元雰囲気下で焼成の後に大気焼成をすることで、蛍光体の発光強度がより大きくなるとともに、発光の主波長がより青色側にシフトすることも見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、青緑色蛍光体を製造する方法であって、該製造方法は、酸素含有亜鉛化合物とマグネシウム化合物と硫黄単体及び/又は硫黄含有化合物とを乾式で混合する工程と、該混合工程で得られた混合物を還元雰囲気下で焼成する工程とを含む青緑色蛍光体の製造方法である。
【0008】
上記酸素含有亜鉛化合物は、比表面積が5~30m/gの酸化亜鉛であることが好ましい。
【0009】
上記マグネシウム化合物は、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム及び炭酸マグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0010】
上記マグネシウム化合物は、比表面積が5~40m/gであることが好ましい。
【0011】
上記製造方法は、還元焼成工程の後に、更に大気雰囲気下で焼成する工程を含むことが好ましい。
【0012】
上記大気焼成工程の温度は550~850℃であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の青緑色蛍光体の製造方法は、青緑色蛍光体を安価かつ安全に製造することができるため、化粧料用途等に使用される青緑色蛍光体の工業的な製造にも好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい形態について具体的に説明するが、本発明は以下の記載のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0015】
本発明の青緑色蛍光体の製造方法は、酸素含有亜鉛化合物とマグネシウム化合物と硫黄単体及び/又は硫黄含有化合物とを乾式で混合する工程と、該混合工程で得られた混合物を還元雰囲気下で焼成する工程とを含むことを特徴とする。
酸素含有亜鉛化合物とマグネシウム化合物と硫黄単体及び/又は硫黄含有化合物とを乾式で混合する混合工程における乾式混合は、一般に乾式混合とされるものであればよく、混合する成分が溶剤に分散した状態で混合されない限り、混合する成分が溶媒を含んでいてもよい。
なお、本発明において青緑色蛍光体とは、波長365nmの光で励起したときの極大発光波長(主波長)が460nm~504nmの範囲であるものをいう。
【0016】
上記混合工程において使用する酸素含有亜鉛化合物とマグネシウム化合物の、亜鉛原子とマグネシウム原子のモル比率は、亜鉛/マグネシウムが70/30~98/2であることが好ましい。このような割合で用いることで、得られる蛍光体がより発光強度の大きいものとなる。より好ましくは、80/20~95/5であり、更に好ましくは、85/15~90/10である。
【0017】
上記混合工程において使用する硫黄単体及び/又は硫黄含有化合物は、硫黄単体及び/又は硫黄含有化合物に含まれる硫黄原子の重量割合が、混合工程において使用する酸素含有亜鉛化合物とマグネシウム化合物の合計100重量%に対して0.01~0.5重量%であることが好ましい。このような割合で用いることで、得られる蛍光体がより発光強度の大きいものとなる。より好ましくは、0.02~0.2重量%であり、更に好ましくは、0.05~0.1重量%である。
【0018】
上記酸素含有亜鉛化合物としては、酸素原子と亜鉛原子とを含む化合物であればよく、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、酢酸亜鉛、炭酸亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、リン酸亜鉛、ピロリン酸亜鉛、シュウ酸亜鉛等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも酸化亜鉛が好ましい。
【0019】
酸素含有亜鉛化合物は、比表面積が5~30m/gの酸化亜鉛であることが好ましい。このような比表面積を有する微細な粒子状の酸素含有亜鉛化合物を用いると、得られる蛍光体がより発光強度の大きいものとなる。より好ましくは、比表面積が7~15m/gである酸化亜鉛である。
酸化亜鉛の比表面積は、比表面積測定装置(マウンテック製、Macsorb Model HM-1220)により測定することができる。
【0020】
上記マグネシウム化合物としては、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、酢酸マグネシウム、フッ化マグネシウム、シュウ酸マグネシウム等が挙げられるが、これらの中でも、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム及び炭酸マグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。マグネシウム化合物としてこれらの少なくとも1種を用いることで、マグネシウムをより均一に、酸化亜鉛に固溶させることができる。
【0021】
上記マグネシウム化合物は、比表面積が5~40m/gであることが好ましい。このような比表面積を有する微細な粒子状のマグネシウム化合物を用いると、マグネシウムの酸化亜鉛への固溶反応が進行しやすくなる。
マグネシウム化合物の比表面積は、比表面積測定装置(マウンテック製、Macsorb Model HM-1220)により測定することができる。
【0022】
上記硫黄含有化合物としては、硫黄原子を含む化合物であればよいが、例えば、硫化物及び/又は硫酸塩を用いることが好ましい。塩としては、例えば、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩が好ましい。具体的にいうと、金属塩を構成する金属原子としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等の1価金属;亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の2価金属;アルミニウム等の3価金属;鉄、チタン等のその他の金属;等が挙げられる。有機アミン塩を構成する有機アミン基としては、例えば、モノエタノールアミン基、ジエタノールアミン基、トリエタノールアミン基等のアルカノールアミン基;モノエチルアミン基、ジエチルアミン基、トリエチルアミン基等のアルキルアミン基;エチレンジアミン基、トリエチレンジアミン基等のポリアミン基;等が挙げられる。塩の中でも好ましくは金属塩であり、より好ましくは亜鉛塩である。すなわち硫黄含有化合物としては、硫化亜鉛及び/又は硫酸亜鉛を用いることが特に好適である。
【0023】
上記硫黄含有化合物としては、硫黄単体及び/又は硫黄含有化合物のいずれを用いてもよいが、それらの中でも、取り扱いが容易という点で、硫黄単体が最も好ましい。
【0024】
上記混合工程ではまた、必要に応じてフラックス剤(融剤とも称す)を更に混合してもよい。
【0025】
フラックス剤としては特に限定されず、例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化アンモニウム、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化アルミニウム、フッ化アンモニウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウム、臭化アンモニウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
フラックス剤を使用する場合、その使用量は所望の粒径に応じて適宜設定すればよく特に限定されないが、例えば、酸素含有亜鉛化合物100mol%に対し、フラックス剤を0.01~20mol%とすることが好ましい。より好ましくは0.02~10mol%である。
【0027】
上記混合工程において酸素含有亜鉛化合物とマグネシウム化合物と硫黄単体及び/又は硫黄含有化合物との乾式混合を行う方法は、これらが必要な程度に混合される限り特に制限されないが、袋混合、乳鉢混合、振盪混合、ミキサー、シェイカー、ボールミル、ブレンダー等を用いて行うことができる。
【0028】
上記乾式混合では、酸素含有亜鉛化合物とマグネシウム化合物と硫黄単体及び/又は硫黄含有化合物とが均一に混合されるように十分に混合することが好ましい。
例えば、上記乾式混合を袋混合で行う場合、酸素含有亜鉛化合物とマグネシウム化合物と硫黄単体及び/又は硫黄含有化合物とを十分に混合するために、これらを袋に入れた後、150回以上振盪することが好ましい。より好ましくは、500回以上振盪することであり、更に好ましくは、1000回以上振盪することである。
【0029】
上記混合工程で得られた混合物を還元雰囲気下で焼成する工程(以下、還元焼成工程と記載)において、焼成する温度は800~900℃であることが好ましい。このような温度で焼成することで、得られる青緑色蛍光体が発光特性のより優れたものとなる。
【0030】
上記還元焼成工程を行う時間は、2~20時間であることが好ましい。このような時間の焼成を行うことで、得られる青緑色蛍光体が発光特性のより優れたものとなる。より好ましくは、4~10時間であり、更に好ましくは、6~8時間である。
【0031】
上記還元焼成工程は、還元雰囲気下で行われるものであればよいが、不活性ガス中に還元性ガスが0.5~5vol%の濃度で含まれる雰囲気下で行われることが好ましい。このように、還元焼成時の還元雰囲気中の還元性ガスの濃度が、上述した特許文献1に記載の従来の方法に比べて低くより安全な製造条件で発光特性に優れる青緑色蛍光体を製造することができる点が本発明の製造方法の有利な点の1つである。還元雰囲気中の還元性ガスの濃度は、より好ましくは、1~4vol%であり、更に好ましくは、1~3vol%である。
【0032】
上記還元雰囲気に含まれる還元性ガスとしては、水素、一酸化炭素、硫化水素、二酸化硫黄、亜酸化窒素等が挙げられるが、これらの中でも安全性及びコストの点から水素が好ましい。また不活性ガスとしては、ヘリウム、窒素、アルゴン等が挙げられる。
【0033】
本発明の青緑色蛍光体の製造方法は、還元焼成工程の後に、更に大気雰囲気下で焼成する工程(以下、大気焼成工程と記載)を含むことが好ましい。これにより得られる青緑色蛍光体の発光波長がより短波長側にシフトし、発光色がより青色に近くなる。また、発光強度も向上する。
大気焼成の焼成温度は、550~850℃であることが好ましい。更に好ましくは、600~800℃である。
【0034】
上記大気焼成工程を行う時間は、0.5~4時間であることが好ましい。更に好ましくは、1~2時間である。
【0035】
本発明では、必要に応じ、還元焼成や大気焼成の前後に粉砕や分級を行ってもよい。特に、還元焼成後で、かつ大気焼成前に、粉砕を行うことが好適である。粉砕は、湿式粉砕、乾式粉砕のいずれでもよいが、乾式粉砕により行うことが好ましい。乾式粉砕では、必要に応じて、乳鉢、ロールクラッシャー、アトマイザー、ハンマーミル、ジェットミル、流体エネルギーミル、ミックスマラー等の乾式粉砕機を用いてもよい。
【0036】
本発明ではまた、必要に応じ、上記焼成工程で得られた焼成物について、リパルプ(例えばスラリー化後、撹拌)、ろ過、水洗、粉砕、乾燥等の後処理を行ってもよい。また、必要に応じて篩による分級を行ってもよい。篩による分級は、湿式分級や乾式分級が挙げられる。
【0037】
本発明では、必要に応じ、得られる青緑色蛍光体が表面処理を施されたものであってもよい。すなわち本発明の製造方法は、更に表面処理工程を含んでもよい。表面処理工程は、上記焼成工程の後(その後に後処理工程等を行う場合は、これらの後)に行うことが好適である。
【0038】
表面処理方法は特に限定されず、従来知られている様々な表面処理を行えばよい。例えば、表面処理対象物(例えば、上記焼成工程で得られた焼成物や、更に後処理工程を行う場合はその処理物等)の水性ディスパージョン中で、表面処理剤を添加した後、必要に応じてpHを調整することで被覆することができる。水溶性ではない有機化合物を使用する場合は、有機化合物を乾式にて添加し、粉砕や混合を行い、必要に応じて加熱する方法が挙げられる。
【0039】
表面処理剤としては特に限定されず、いかなる物質で処理してもよいが、得られた青緑色蛍光体を例えば化粧料用途に使用する場合には、化粧料に使用できる物質を用いればよい。例えば、表面処理剤として、無機化合物又は有機化合物が挙げられ、1種のみ単独使用してもよいし、数種類を組み合わせて積層又は混合処理してもよい。また、無機化合物で処理した後に有機化合物で被覆層を設けてもよいが、本来もつ発光を損なわないことが重要である。
【0040】
表面処理剤として具体的には、例えば、ケイ素、亜鉛、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、スズ等の酸化物又は水酸化物、炭酸塩、リン酸塩等の無機化合物が挙げられ、これらを表面処理剤として用いれば、これらの被覆層を有する青緑色蛍光体が得られる。また、撥水性を付与する目的で、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルメトキシポリシロキサン、ジメチルポリシロキサンジハイドロジェン等又はそれらの共重合体、ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸及びそれらの金属塩(アルミニウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等)、ポリビニルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、モノエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、アミノシラン、エポキシシラン、メタクリルシラン、ビニルシラン、メルカプトシラン、クロロアルキルシラン、アルキルシラン、フルオロアルキルシラン、ヘキサメチルシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールが挙げられる。
【0041】
表面処理剤の使用量は特に限定されないが、例えば、最終的に得られる青緑色蛍光体100質量%に対し、表面処理剤による被覆量が0.1~30質量%の範囲となるように表面処理剤の使用量を調節することが好ましい。0.1質量%以上とすることで、表面処理による機能性向上効果を発現することができ、30質量%以下とすることで、本来の発光特性を損なわず処理することができ、また経済的な観点で有利である。より好ましくは0.1~20質量%の範囲である。
【0042】
一般的には、マグネシウムを含むと酸化亜鉛蛍光体は発光強度が低下する傾向があるが、本発明の製造方法で得られる青緑色蛍光体は、マグネシウムを含まない酸化亜鉛蛍光体と同等以上の発光強度を有する。
また本発明の製造方法では、従来の固相法に比べて焼成による粒成長を抑制して青緑色蛍光体を製造することが可能であるため、微細な粒子の青緑色蛍光体を製造することができる。
【0043】
本発明の青緑色蛍光体の製造方法で得られる青緑色蛍光体の用途は特に制限されず、化粧料、医薬品、医薬部外品、放射線遮蔽材、塗料、樹脂材料、触媒、印刷用トナー、滑材等の他、各種製品に好ましく配合される。中でも特に、化粧料用途に用いられることが好適である。
【0044】
化粧料としては特に限定されず、例えば、ファンデーション、化粧下地、アイシャドウ、頬紅、マスカラ、口紅等のメイクアップ製品、サンスクリーン剤の他、スキンケア製品、頭髪製品、紫外線防御用製品等が挙げられ、この場合、蛍光性が付与された化粧料として有用である。中でも、ファンデーション、化粧下地、アイシャドウ等のメイクアップ化粧料や、サンスクリーン剤に特に好適に使用することができる。また化粧料は、油性化粧料、水性化粧料、O/W型化粧料、W/O型化粧料等の任意の形態とすることができる。また、化粧料の形状は特に限定されず、例えば液状、乳液状、クリーム状、固形状、ペースト状、ゲル状、多層状、ムース状、スプレー状等が挙げられる。
【実施例
【0045】
本発明を詳細に説明するために以下に実施例を挙げるが、本発明はこれらの例のみに限定されるものではない。なお、各種物性等は以下のようにして評価した。
【0046】
1.PL(フォトルミネセンス)評価
評価対象の蛍光体サンプルの発光物性(発光強度及び主波長)を、蛍光分光光度計(日本分光製、FP-6500)を用いて測定した。蛍光積分球にはISF-513型を使用し、光電子倍増管(PMT)の電圧の設定値を340として、波長365nmの光で励起したときの極大発光波長(主波長)及び発光強度を測定した。
【0047】
2.平均粒子径D50
各サンプルにつき、レーザー回折型粒度分布測定装置(日機装社、マイクロトラックMT3000)により粒度分布を測定し、粒度分布曲線を得た。この測定ではまず、測定対象の粉末(粉体)を、透過率が0.7~0.99になるように投入し、流速60%にて、超音波分散及び循環させながら測定を行った。測定時の装置循環水は水とした。そして、この個数基準粒度分布曲線において積算値が50%のときの粒径値を、平均粒子径D50(μm)とした。
【0048】
3.BET比表面積及びBET径
以下の条件によりBET比表面積(SSA)の測定を行った。
-測定条件-
使用機:マウンテック社製、Macsorb Model HM-1220
雰囲気:窒素ガス(N
外部脱気装置の脱気条件:105℃-15分
比表面積測定装置本体の脱気条件:105℃-5分
【0049】
実施例1
原料として用いる酸化亜鉛と水酸化マグネシウムの純度を考慮して、亜鉛とマグネシウムのモル比が85:15になるように、酸化亜鉛(堺化学工業製、微細酸化亜鉛)18.5g、水酸化マグネシウム(岩谷化学工業製、MH-30)2.4g、硫黄(和光純薬工業製)0.012gを秤量してポリ袋に入れ、ポリ袋を1000回程度振盪して混合を行った。得られた原料混合粉をアルミナ坩堝に全量充填し、1体積%H/N雰囲気中で200℃/時にて850℃まで昇温し、そのまま6時間保持した後、200℃/時で降温した。こうして得られた焼成物を乳鉢で解砕し、アルミナ坩堝に全量充填した後、大気雰囲気にて200℃/時で700℃まで昇温し、そのまま1時間保持後、200℃/時で降温し、蛍光体Aを得た。蛍光体Aについて上述した評価試験を行った。結果を表1に示す。なお、表1では、実施例2~11及び比較例1~3における各蛍光体の発光強度は、実施例1の蛍光体Aの発光強度を基準(100)とした強度比で記載した。
【0050】
実施例2
1体積%H/N雰囲気中での焼成工程まで、実施例1と同様にして行い、大気雰囲気での焼成を行わずに、蛍光体Bを得た。蛍光体Bについて上述した評価試験を行った。結果を表1に示す。
【0051】
実施例3
硫黄の代わりに、硫化亜鉛(堺化学工業製、RAK-T)を0.035g使用したこと以外は、実施例1と同様にして、蛍光体Cを得た。蛍光体Cについて上述した評価試験を行った。結果を表1に示す。
【0052】
実施例4
原料として用いる酸化亜鉛と水酸化マグネシウムの純度を考慮して、亜鉛とマグネシウムのモル比が90:10になるように、酸化亜鉛(堺化学工業製、微細酸化亜鉛)19.1g、水酸化マグネシウム(岩谷化学工業製、MH-30)1.6g、硫黄(和光純薬工業製)0.012gを秤量してポリ袋に入れ、ポリ袋を1000回程度振盪して混合を行った。得られた原料混合粉をアルミナ坩堝に全量充填し、1体積%H/N雰囲気中で200℃/時にて850℃まで昇温し、そのまま6時間保持した後、200℃/時で降温した。こうして得られた焼成物を乳鉢で解砕し、アルミナ坩堝に全量充填した後、大気雰囲気にて200℃/時で700℃まで昇温し、そのまま1時間保持後、200℃/時で降温し、蛍光体Dを得た。蛍光体Dについて上述した評価試験を行った。結果を表1に示す。
【0053】
実施例5
原料として用いる酸化亜鉛と水酸化マグネシウムの純度を考慮して、亜鉛とマグネシウムのモル比が95:5になるように、酸化亜鉛(堺化学工業製、微細酸化亜鉛)19.6g、水酸化マグネシウム(岩谷化学工業製、MH-30)0.76g、硫黄(和光純薬工業製)0.012gを秤量してポリ袋に入れ、ポリ袋を1000回程度振盪して混合を行った。得られた原料混合粉をアルミナ坩堝に全量充填し、1体積%H/N雰囲気中で200℃/時にて850℃まで昇温し、そのまま6時間保持した後、200℃/時で降温した。こうして得られた焼成物を乳鉢で解砕し、アルミナ坩堝に全量充填した後、大気雰囲気にて200℃/時で700℃まで昇温し、そのまま1時間保持後、200℃/時で降温し、蛍光体Eを得た。蛍光体Eについて上述した評価試験を行った。結果を表1に示す。
【0054】
実施例6~9
亜鉛原料として、微細酸化亜鉛(堺化学工業製)を使用し、マグネシウム原料として、水酸化マグネシウム(堺化学工業製、MGZ-0)、酸化マグネシウム(岩谷化学工業製、MJ-30もしくはMTK-30)、炭酸マグネシウム(神島化学工業製、GP-30N)を使用した。亜鉛原料とマグネシウム原料の純度を考慮して、亜鉛とマグネシウムのモル比が85:15になるように、実施例6では、微細酸化亜鉛を18.5gとMGZ-0を2.3g、実施例7では、微細酸化亜鉛を18.5gとMJ-30を1.7g、実施例8では、微細酸化亜鉛を18.5gとMTK-30を2.2g、実施例9では、微細酸化亜鉛を18.5gとGP-30Nを3.8gとをそれぞれ秤量してポリ袋に入れ、さらに、それぞれポリ袋に硫黄(和光純薬工業製)0.012gを秤量して加えて、ポリ袋を1000回程度振盪して混合を行った。得られた原料混合粉をアルミナ坩堝に全量充填し、1体積%H/N雰囲気中で200℃/時にて850℃まで昇温し、そのまま6時間保持した後、200℃/時で降温し、蛍光体F、G、H、Iを得た。蛍光体F、G、H、Iについて上述した評価試験を行った。結果を表1に示す。
【0055】
実施例10、11
亜鉛原料である酸化亜鉛として、酸化亜鉛一種(堺化学工業製)もしくはFINEX-30(堺化学工業製)を使用し、また、マグネシウム原料として炭酸マグネシウム(神島化学工業製、GP-30N)を使用した。
亜鉛原料とマグネシウム原料の純度を考慮して、亜鉛とマグネシウムのモル比が85:15になるように、実施例10では、酸化亜鉛一種を9.3gと炭酸マグネシウムを1.9g、実施例11では、FINEX-30を9.3gと炭酸マグネシウムを1.9gをそれぞれ秤量してポリ袋に入れ、さらに、それぞれのポリ袋に硫黄(和光純薬工業製)0.0058gを秤量して加えて、ポリ袋を1000回程度振盪して混合を行った。得られた原料混合粉をアルミナ坩堝に全量充填し、1体積%H/N雰囲気中で200℃/時にて850℃まで昇温し、そのまま6時間保持した後、200℃/時で降温した。こうして得られた焼成物を乳鉢で解砕し、アルミナ坩堝に全量充填した後、大気雰囲気にて200℃/時で700℃まで昇温し、そのまま1時間保持後、200℃/時で降温し、蛍光体J、Kを得た。蛍光体J、Kについて上述した評価試験を行った。結果を表1に示す。
【0056】
実施例12
大気雰囲気での焼成における保持時の温度を600℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、蛍光体Lを得た。蛍光体Lについて上述した評価試験を行った。結果を表1に示す。
【0057】
実施例13
大気雰囲気での焼成における保持時の温度を800℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、蛍光体Mを得た。蛍光体Mについて上述した評価試験を行った。結果を表1に示す。
【0058】
比較例1
水酸化マグネシウムを使用しないこと以外は、実施例2と同様にして、蛍光体Nを得た。蛍光体Nについて上述した評価試験を行った。結果を表1に示す。
【0059】
比較例2
硫黄を使用しないこと以外は、実施例1と同様にして、蛍光体Oを得た。蛍光体Oについて上述した評価試験を行った。結果を表1に示す。
【0060】
比較例3
塩化マグネシウム六水和物(和光純薬工業製)10gを純水30mlに溶解した。亜鉛原料とマグネシウム原料の純度を考慮して、亜鉛とマグネシウムのモル比が90:10になるように、この塩化マグネシウム水溶液11.2gと酸化亜鉛(堺化学工業製、微細酸化亜鉛)9.5gをポリ袋に入れて混合した。得られた原料混合ペーストを磁性皿に移し、130℃で一晩乾燥した。得られた乾燥物を乳鉢で粉砕した。
乳鉢粉砕物9.8gと硫黄(和光純薬工業製)0.0053gを秤量してポリ袋に入れ、ポリ袋を1000回程度振盪して混合を行った。得られた原料混合粉をアルミナ坩堝に全量充填し、1体積%H/N雰囲気中で200℃/時にて850℃まで昇温し、そのまま6時間保持した後、200℃/時で降温し、蛍光体Pを得た。蛍光体Pについて上述した評価試験を行った。結果を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
実施例1~13より、酸素含有亜鉛化合物とマグネシウム化合物と硫黄単体及び/又は硫黄含有化合物とを乾式で混合し、還元雰囲気下で焼成することで、微細で発光強度の高い青緑色蛍光体が得られることがわかり、さらに還元焼成後に大気雰囲気下で焼成する工程を含むことで発光強度を維持もしくは向上させつつ、発光の主波長がより短波長にシフトすることもわかった。
また、実施例1、3及び比較例2の比較から、硫黄もしくは硫化亜鉛を使用した場合には発光強度の高い蛍光体が得られるのに対し、硫黄含有化合物を使用しないと著しく発光強度が低下することがわかった。さらに、比較例3の結果から、混合をより均一にする目的で水を使用して混合すると、主波長のシフトは大きくなるが、発光強度が著しく低下することがわかった。
更に、実施例1、4および5より、添加するマグネシウムの量に応じて、発光強度を維持したまま、主波長を制御することが可能であることがわかり、実施例9~11より、比表面積が異なる酸化亜鉛を使用することで、異なる粒子径の蛍光体を得ることができることがわかった。