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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】エンジンの燃料供給装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 55/02 20060101AFI20220712BHJP
【FI】
F02M55/02 360A
F02M55/02 310Z
F02M55/02 350D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018016965
(22)【出願日】2018-02-02
(65)【公開番号】P2019132247
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100157808
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 耕平
(72)【発明者】
【氏名】平林 千典
(72)【発明者】
【氏名】白井 裕久
(72)【発明者】
【氏名】小松 央
(72)【発明者】
【氏名】田上 真一朗
(72)【発明者】
【氏名】住本 浩
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-054731(JP,A)
【文献】特開平10-009075(JP,A)
【文献】特開2006-144628(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0299207(US,A1)
【文献】特開2001-207927(JP,A)
【文献】特開平11-044276(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0023818(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 39/00 ー 71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の気筒を有するエンジンに燃料を供給する燃料供給装置であって、
前記燃料を前記複数の気筒に所定の順序で噴射する複数の燃料噴射弁と、
前記複数の燃料噴射弁のうち燃料噴射順序が連続しない一部の複数の燃料噴射弁からなる第1燃料噴射弁群に前記燃料を分配供給する第1分配管と、前記複数の燃料噴射弁のうち燃料噴射順序が連続しない他の一部の複数の燃料噴射弁からなる第2燃料噴射弁群に前記燃料を分配供給する第2分配管と、を有する燃料分配部と、
前記燃料を吐出する燃料ポンプ部と、
前記燃料ポンプ部と前記第1分配管とを接続する第1供給管と、
前記燃料ポンプ部と前記第2分配管とを接続する第2供給管と、
前記第1分配管内の圧力が所定の設定圧力を超えたときに開かれる第1減圧弁と、
前記第1減圧弁が開かれたときに前記第1分配管内の余剰の燃料をリターンする第1リターン管と、
前記第2分配管内の圧力が所定の設定圧力を超えたときに開かれる第2減圧弁と、
前記第2減圧弁が開かれたときに前記第2分配管内の余剰の燃料をリターンする第2リターン管と、
前記第1リターン管及び前記第2リターン管が連結されているとともに前記第1分配管に取り付けられた連結部と、を備え、
前記第1分配管及び前記第2分配管は、前記複数の気筒が配列された所定の配列方向に直列に延設されており
前記第1供給管及び前記第2供給管は、前記燃料ポンプ部から前記第1分配管及び前記第2分配管まで独立した前記燃料の供給経路をそれぞれ形成しており、
前記連結部は、前記第1供給管が前記第1分配管に連結された第1供給連結部よりも前記第2分配管に近い側の前記第1分配管の端部に配置されていることを特徴とする
エンジンの燃料供給装置。
【請求項2】
前記燃料分配部は、前記第1燃料噴射弁群への前記燃料の分配経路を形成する複数の分配枝管を含み、
前記複数の分配枝管は、前記第1分配管の延設方向において対称的な位置で前記第1分配管に連結されていることを特徴とする
請求項1に記載のエンジンの燃料供給装置。
【請求項3】
前記第2リターン管は、前記第2供給管が前記第2分配管に連結された第2供給連結部よりも前記第1分配管から遠い側の前記第2分配管の端部から延設されていることを特徴とする
請求項1又は2に記載のエンジンの燃料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンへ燃料を供給する燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料圧の脈動が気筒への燃料の噴射量に影響することが知られている。脈動の影響を低減するための方法として、複数の燃料噴射弁へ燃料をそれぞれ分配する2つの燃料分配管を連結し燃料が貯留される貯留空間の容積を大きくすることや、これらの燃料分配管が連結される連結部位にダイアフラムを配設することが知られている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-170209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の従来技術は、1つの燃料分配管に連結された複数の燃料噴射弁間で伝達される脈動を十分に低減することはできない。1つの燃料噴射弁からの燃料噴射に起因して生じた脈動は、ダイアフラムを通過する前に燃料分配管を通じて他の燃料噴射弁に到達する。脈動に曝された燃料噴射弁からの燃料噴射は脈動の影響を受け、燃料の噴射量は目標値から大きく外れることもある。
【0005】
本発明は、複数の燃料噴射弁間で伝達される脈動の影響を低減することができる構造を有する燃料供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面に係る燃料供給装置は、複数の気筒を有するエンジンに燃料を供給する。燃料供給装置は、前記燃料を前記複数の気筒に所定の順序で噴射する複数の燃料噴射弁と、前記複数の燃料噴射弁のうち燃料噴射順序が連続しない一部の複数の燃料噴射弁からなる第1燃料噴射弁群に前記燃料を分配供給する第1分配管と、前記複数の燃料噴射弁のうち燃料噴射順序が連続しない他の一部の複数の燃料噴射弁からなる第2燃料噴射弁群に前記燃料を分配供給する第2分配管と、を有する燃料分配部と、前記燃料を吐出する燃料ポンプ部と、前記燃料ポンプ部と前記第1分配管とを接続する第1供給管と、前記燃料ポンプ部と前記第2分配管とを接続する第2供給管と、前記第1分配管内の圧力が所定の設定圧力を超えたときに開かれる第1減圧弁と、前記第1減圧弁が開かれたときに前記第1分配管内の余剰の燃料をリターンする第1リターン管と、前記第2分配管内の圧力が所定の設定圧力を超えたときに開かれる第2減圧弁と、前記第2減圧弁が開かれたときに前記第2分配管内の余剰の燃料をリターンする第2リターン管と、前記第1リターン管及び前記第2リターン管が連結されているとともに前記第1分配管に取り付けられた連結部と、を備える。前記第1分配管及び前記第2分配管は、前記複数の気筒が配列された所定の配列方向に直列に延設されている。前記第1供給管及び前記第2供給管は、前記燃料ポンプ部から前記第1分配管及び前記第2分配管まで独立した前記燃料の供給経路をそれぞれ形成している。前記連結部は、前記第1供給管が前記第1分配管に連結された第1供給連結部よりも前記第2分配管に近い側の前記第1分配管の端部に配置されている。
【0007】
上記の構成によれば、第1分配管は第1燃料噴射弁群に燃料を分配供給するように第1燃料噴射弁群の複数の燃料噴射弁に連結されている。したがって、第1燃料噴射弁群の複数の燃料噴射弁からの燃料噴射に起因して生じた脈動は第1分配管へ伝達される。同様に、第2分配管は第2燃料噴射弁群に燃料を分配供給するように第2燃料噴射弁群の複数の燃料噴射弁に連結されている。したがって、第2燃料噴射弁群の複数の燃料噴射弁からの燃料噴射に起因して生じた脈動は第2分配管へ伝達される。しかしながら、燃料噴射の順序は第1燃料噴射弁群の中で連続しないので、第1燃料噴射弁群内での燃料噴射間隔は長くなり脈動を十分に減衰させるための十分な長さの減衰期間が得られる。同様に、燃料噴射の順序が第2燃料噴射弁群の中で連続しないので、第2燃料噴射弁群内での燃料噴射間隔は長くなり脈動を十分に減衰させるための十分な長さの減衰期間が得られる。したがって、第1分配管及び第2分配管それぞれに連結された複数の燃料噴射弁間で伝達される脈動の影響は低減される。
【0008】
第1分配管は第1供給管を通じて燃料の供給を受けるので、第1分配管は第1供給管に連通している。したがって、第1分配管内の脈動は第1供給管に伝達されることもある。しかしながら、第1供給管が形成する燃料供給経路から独立して第2供給管は燃料供給経路を形成しているので、第1分配管から第1供給管に伝達された脈動は第2供給管へは伝達されない。
【0009】
同様に、第2分配管は第2供給管を通じて燃料の供給を受けるので、第2分配管は第2供給管に連通している。したがって、第2分配管内の脈動は第2供給管に伝達されることもある。しかしながら、第2供給管が形成する燃料供給経路から独立して第1供給管は燃料供給経路を形成しているので、第2分配管から第2供給管に伝達された脈動は第1供給管へは伝達されない。また、第1リターン管及び第2リターン管は、連結部に連結されるので、第1分配管及び第2分配管内の燃料の圧力が所定の圧力を超えたときに、余剰の燃料をリターンする1つの管路を形成することができる。作業者は、第1リターン管及び第2リターン管を1つの管部材として取り扱うことができるので、第1リターン管及び第2リターン管を容易に配管することができる。更に、第1燃料噴射弁群及び第2燃料噴射弁群内での燃料噴射順序は連続せず、第1分配管及び第2分配管内の燃料の圧力が同時に設定圧力を超えることはない。このため、第1分配管及び第2分配管内の余剰の燃料は、第1リターン管及び第2リターン管を通じて燃料タンクに円滑に戻ることができ、第1分配管及び第2分配管内の余剰の燃料をリターンするための経路は、1つの管路に集約される。第1分配管及び第2分配管は、複数の気筒が配列された所定の配列方向に直列に延設されているので、燃料分配部は気筒の配列方向に一線上に延び配列方向に交差する方向において、大きな配置領域必要としない。連結部は、第1供給経路が第1分配管に連結された第1供給連結部よりも第2分配管の近い側の第1分配管の端部に設けられているので、作業者は、連結部から延びる第1リターン管を第1供給管が第1分配管に連結された第1供給連結部と第2供給管が第2分配管に連結された連結部位との間で配管することができる。すなわち、第1リターン管は、第1供給管及び第2供給管の近くに配置される。したがって、作業者は、第1リターン管を第1供給管及び第2供給管から近い位置で効率的に配管することができる。
【0010】
上記の構成に関して、前記燃料分配部は、前記第1燃料噴射弁群への前記燃料の分配経路を形成する複数の分配枝管を含んでもよい。前記複数の分配枝管は、前記第1分配管の延設方向において対称的な位置で前記第1分配管に連結されていてもよい。
【0011】
上記の構成によれば、複数の分配枝管は第1分配管の延設方向において対称的な位置で第1分配管に連結されているので、第1供給経路から第1分配管への燃料の供給に起因して生じた脈動の影響は複数の分配枝管に亘って略均等に現れる。複数の分配枝管を通じて燃料を分配される複数の第1噴射弁に現れる脈動の影響も略均等化されるので、脈動の影響を考慮した複数の第1噴射弁の制御が容易になる。
【0017】
上記の構成に関して、前記第2リターン管は、前記第2供給管が前記第2分配管に連結された第2供給連結部よりも前記第1分配管から遠い側の前記第2分配管の端部から延設されていてもよい。
【0018】
上記の構成によれば、第2リターン管は第2供給連結部よりも第1分配管から遠い側の第2分配管の端部から延設されているので、第2リターン管が第2分配管に連結された連結部位は、第1リターン管及び第2リターン管が連結された連結部に過度に近接しない。すなわち、第2リターン管の両端部は適度に離れた位置で第1分配管上の連結部及び第2分配管に連結される。したがって、作業者は第2リターン管を第2分配管と連結部とに容易に連結することができる。
【0019】
第2リターン管は第2分配管の端部から延設される。同様に、第1リターン管も第1分配管の端部に配置された連結部に連結されている。したがって、設計者は第1分配管及び第2分配管の構造及び形状を容易に一致させることができる。
【発明の効果】
【0020】
上述の燃料供給装置は、複数の燃料噴射弁間で伝達される脈動の影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】エンジンへ燃料を供給する例示的な燃料供給装置の概略的な斜視図である。
図2】燃料供給装置の概略的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、エンジン200へ燃料を供給する例示的な燃料供給装置100の概略的な斜視図である。燃料供給装置100の前に、エンジン200が図1を参照して概略的に説明される。「前」、「後」、「右」、「左」、「上」や「下」といった方向を表す用語は説明の明瞭化のみを目的として用いられており、限定的に解釈されるべきものではない。
【0023】
<エンジン>
エンジン200は直列6気筒エンジンである。エンジン200は、シリンダブロック211とシリンダヘッド212とを含む。シリンダブロック211内には、上方に開口するとともに鉛直方向に延設された中心軸を有する6つの気筒が配置されている。シリンダヘッド212は、前後方向に配列された6つの気筒の開口端を閉じている。
【0024】
エンジン200は、6つの気筒内で鉛直方向に往復動する6つのピストン(図示せず)、6つのピストンの往復動を所定の回転軸周りの回転として出力するクランクシャフト(図示せず)及びクランクシャフトと6つのピストンそれぞれとを連結する連結機構(図示せず)を更に含む。クランクシャフトは、6つのピストンの下方で前後方向に延設されている。連結機構は、コネクティングロッド、ピストンロッド及びクロスヘッドを含むことができる。エンジン200の構造に対して、一般的な車両用エンジンの設計技術が適用されてもよい。したがって、本実施形態の原理は、エンジン200の特定の構造に限定されない。
【0025】
エンジン200のシリンダブロック211は左側面220と、左側面220から左方に(すなわち、6つの気筒の配列方向及び延設方向に対して直交する方向に)突出した6つの吸気ポート231~236と、を含む。左側面220は燃料供給装置100の取付に利用されている。6つの吸気ポート231~236はシリンダブロック211内の6つの気筒へ空気を送り込むために利用される。
【0026】
吸気ポート231は吸気ポート231~236の中で最も前方に形成されている。吸気ポート231は最も前方の気筒への吸気経路を形成している。吸気ポート232は吸気ポート231の後方に位置し、吸気ポート231から空気を送り込まれる気筒の後ろの気筒への吸気経路を形成している。吸気ポート233は吸気ポート232の後方に位置し、吸気ポート232から空気を送り込まれる気筒の後ろの気筒への吸気経路を形成している。吸気ポート234は吸気ポート233の後方に位置し、吸気ポート233から空気を送り込まれる気筒の後ろの気筒への吸気経路を形成している。吸気ポート235は吸気ポート234の後方に位置し、吸気ポート234から空気を送り込まれる気筒の後ろの気筒への吸気経路を形成している。吸気ポート236は吸気ポート231~236の中で最も後方に位置している。吸気ポート236は最も後方の気筒への吸気経路を形成している。
【0027】
吸気ポート232,233の間、吸気ポート233,234の間及び吸気ポート234,235の間には鉛直方向に延びる空隙が形成されている。これらの空隙は燃料供給装置100の配管に利用されている。燃料供給装置100の構造が以下に概略的に説明される。
【0028】
<燃料供給装置の構造>
燃料供給装置100は、エンジン200へ燃料を送り出す部位と、エンジン200の6つの気筒へ燃料を分配する部位と、6つの気筒へ燃料を噴射する部位と、を有する。燃料供給装置100はエンジン200へ燃料を送り出す部位として、エンジン200の左側面220に沿って燃料の供給経路を形成する燃料供給部110を有する。燃料供給装置100は6つの気筒へ燃料を分配する部位として、吸気ポート231~236の上方で前後方向(すなわち、気筒の配列方向)に延設された燃料分配部120を有する。燃料供給装置100は6つの気筒へ燃料を噴射する部位として、シリンダヘッド212の上面に取り付けられた複数の燃料噴射弁からなる弁群130を有する。燃料供給部110は燃料を燃料分配部120へ供給する。燃料分配部120は弁群130に分配する。弁群130は6つの気筒へ燃料を噴射する。
【0029】
弁群130へ燃料分配部120を通じて燃料を送り出す燃料供給部110は、エンジン200の左側面220の後部に固定された燃料ポンプ部111と、燃料ポンプ部111に連結された2つの供給管と、を含む。2つの供給管のうち一方は、以下の説明において「第1供給管112」と称される。2つの供給管のうち他方は、以下の説明において「第2供給管113」と称される。燃料ポンプ部111は燃料タンク(図示せず)から燃料を吸引し、吸引された燃料を第1供給管112及び第2供給管113へ吐出する。第1供給管112は燃料を前方且つ上方に案内する第1供給経路を形成している。第1供給管112と同様に、第2供給管113は燃料を前方且つ上方に案内する第2供給経路を形成している。第2供給経路は第1供給経路から独立した経路である。
【0030】
第1供給管112及び第2供給管113へ燃料を吐出する燃料ポンプ部111は、鉛直方向に整列した2つのポンプ114,115を含む。上側のポンプ114は燃料ポンプ部111によって燃料タンクから吸引された燃料が吐出される吐出部116を含む。吐出部116には第1供給管112が連結されている。下側のポンプ115は燃料ポンプ部111によって燃料タンクから吸引された燃料が吐出される吐出部117を含む。吐出部117には第2供給管113が連結されている。
【0031】
第2供給管113は下側のポンプ115の吐出部117から上方且つ前方に延設され、吸気ポート233,234の間で形成された空隙に挿通されている。第2供給管113の上端は、燃料分配部120に連結されている。第2供給管113と同様に、第1供給管112は第2供給管113と立体的に交差するように、上側のポンプ114の吐出部116から上方且つ前方に延設され、吸気ポート233,232の間で形成された空隙に挿通されている。第1供給管112の上端は、第2供給管113の上端が燃料分配部120に連結された第2供給連結部より前方の第1供給連結部で燃料分配部120に連結されている。
【0032】
燃料分配部120は燃料を一時的に貯留し、貯留された燃料を弁群130へ分配する。燃料分配部120は燃料を一時的に貯留する部位として、吸気ポート231,232,233の上方で略水平に延設された第1分配管121と、第1分配管121の後方に配置された第2分配管122と、を有する。燃料分配部120は貯留された燃料を弁群130へ分配する部位として、第1分配管121及び第2分配管122から弁群130へ延設された6つの分配枝管124~129を有する。第1分配管121及び第2分配管122内で貯留された燃料は分配枝管124~129を通じて弁群130へ分配される。
【0033】
第1分配管121及び第2分配管122は、シリンダヘッド212の左方(すなわち、シリンダブロック211の上方)で気筒の配列方向(すなわち、前後方向)に直列に延設されている。第1分配管121及び第2分配管122それぞれは、略水平に延設された略円筒状の管部材である。第1分配管121の周壁の下部には、上側のポンプ114から延設された第1供給管112が連結されている。同様に、第2分配管122の周壁の下部には、下側のポンプ115から延設された第2供給管113が連結されている。第1供給管112及び第2供給管113を通じて燃料ポンプ部111から送り出された燃料は、第1分配管121が形成している内部空間(以下、「第1貯留空間」と称される)と第2分配管122が形成している内部空間(以下、「第2貯留空間」と称される)とに一時的に貯留される。第2貯留空間は、第1貯留空間から離隔されている。
【0034】
第1貯留空間を形成する第1分配管121は3つの気筒へ燃料を分配するために用いられる。第1分配管121の後方に配置された第2分配管122は、第1分配管121によって燃料を分配される3つの気筒の後方で配列された3つの気筒に燃料を分配するために用いられる。
【0035】
第1分配管121及び第2分配管122の中心軸に略一致する延設軸EXAが図1に示されている。延設軸EXAは6つの気筒の配列方向に延設され、6つの気筒が形成している気筒列に略平行である。延設軸EXAに沿って第1分配管121及び第2分配管122は延設されている。
【0036】
第1分配管121は、延設軸EXAに沿って延設された略円筒状の主管161と主管161から上方に突出した3つの分配コネクタ162,163,164とを含む。主管161は上述の第1貯留空間を形成している部位である。分配コネクタ162,163,164それぞれには弁群130の一部へ連なる分配枝管124,126,125が連結される。
【0037】
分配枝管124,126,125に加えて、上側のポンプ114から延設された第1供給管112が第1分配管121の主管161の周面の下部に連結され、上側のポンプ114が吐出した燃料は第1供給管112を通じて主管161内に流入する。主管161内の燃料の圧力は上側のポンプ114が燃料を送り出すにつれて増加する。したがって、主管161は高圧の燃料を貯留するように設計されている。主管161内の高圧の燃料は分配コネクタ162,163,164から流出する。
【0038】
分配コネクタ162は、分配コネクタ162,163,164の中で最も前方に形成されている。分配コネクタ164は、分配コネクタ162,163,164の中で最も後方に形成されている。分配コネクタ163は、分配コネクタ162,164の間に形成されている。分配コネクタ163並びに第1供給管112が主管161に連結された第1供給連結部は、第1分配管121の長手方向における中間位置で延設軸EXAに直交する仮想的な平面(図示せず)上に形成されている。この仮想的な平面について分配コネクタ162,164は対称的である。
【0039】
分配コネクタ162,163,164には、分配枝管124,126,125が連結され、第1分配管121から弁群130への燃料の分配経路を形成している。残りの分配枝管127,128,129は第2分配管122に連結され、第2分配管122から弁群130への燃料の分配経路を形成している。第2分配管122は形状及び構造において第1分配管121に略等しい。したがって、第1分配管121の形状及び構造に関する説明は第2分配管122に援用される。
【0040】
第2分配管122は、第1分配管121の主管161の後方で延設軸EXAに沿って延設された主管165と3つの分配コネクタ166,167,168とを含む。主管165は第1分配管121の主管161と直列に延設されている。主管165の周面の下部には、下側のポンプ115から延設された第2供給管113が連結され、下側のポンプ115が吐出した燃料は第2供給管113を通じて主管165が形成した上述の第2貯留空間内に流入する。主管165内の燃料の圧力は下側のポンプ115が燃料を送り出すにつれて増加する。したがって、主管165は高圧の燃料を貯留するように設計されている。主管165内の高圧の燃料は分配コネクタ166,167,168から流出する。
【0041】
分配コネクタ166は、分配コネクタ166,167,168の中で最も前方に形成されている。分配コネクタ168は、分配コネクタ166,167,168の中で最も後方に形成されている。分配コネクタ167は、分配コネクタ166,168の間に形成されている。分配コネクタ166,167,168には分配枝管128,127,129がそれぞれ連結され、弁群130への燃料の分配経路を形成している。分配コネクタ167並びに第2供給管113が主管165に連結された第2供給連結部は、第2分配管122の長手方向における中間位置において延設軸EXAに直交する仮想的な平面(図示せず)上に形成されている。この仮想的な平面について分配コネクタ166,168は対称的である。
【0042】
6つの分配コネクタ162~164,166~168から延設された6つの分配枝管124~129を通じて弁群130は燃料を受け取る。弁群130として用いられる複数の燃料噴射弁は、第1分配管121の分配コネクタ162,163,164から延設された分配枝管124,125,126に連結された第1燃料噴射弁群131と、第2分配管122の分配コネクタ162,163,164から延設された分配枝管124,125,126に連結された第2燃料噴射弁群132と、に大別される。
【0043】
第1燃料噴射弁群131の3つの燃料噴射弁は、以下の説明において「第1噴射弁133,134,135」と称される。第2燃料噴射弁群132の3つの燃料噴射弁は、以下の説明において「第2噴射弁136,137,138」と称される。第1噴射弁133,134,135及び第2噴射弁136,137,138はシリンダヘッド212の上面に固定され、第1噴射弁133,134,135及び第2噴射弁136,137,138の下方に配置された6つの気筒に燃料をそれぞれ噴射する。第1噴射弁133,134,135及び第2噴射弁136,137,138から6つの気筒への燃料噴射のタイミングは、ECU(Electronic Control Unit:図示せず)によって制御され、第1噴射弁133,134,135及び第2噴射弁136,137,138は所定の順序で燃料を6つの気筒へ噴射する。
【0044】
第1噴射弁133は、弁群130の中で最も前方に配置されている。第1噴射弁133は、分配コネクタ162から延設された分配枝管124と連結されている。第1噴射弁133の後方の第1噴射弁134は、分配コネクタ164から延設された分配枝管126と連結されている。第1噴射弁134の後方の第1噴射弁135は、分配枝管126と立体的に交差するように分配コネクタ162,164の間の分配コネクタ163から延設された分配枝管125と連結されている。第1噴射弁135の後方の第2噴射弁136は、分配コネクタ167から延設された分配枝管128と連結されている。第2噴射弁136の後方の第2噴射弁137は、分配枝管128と立体的に交差するように分配コネクタ167の前方の分配コネクタ166から延設された分配枝管127と連結されている。弁群130の中で最も後方の第2噴射弁138は、分配コネクタ167の後方の分配コネクタ168から延設された分配枝管129と連結されている。
【0045】
分配枝管124~129を通じて弁群130へ供給される燃料を上回る量の燃料を燃料ポンプ部111は吐出し、第1分配管121及び第2分配管122内の燃料の圧力を高い値に設定する。この結果、燃料は弁群130から勢いよく噴射される。燃料の噴射量を超えた量の燃料が燃料ポンプ部111から第1分配管121及び第2分配管122へ供給される結果、第1分配管121及び第2分配管122内の燃料の圧力は所定の設定圧力を超えることもある。したがって、第1分配管121及び第2分配管122内の圧力を低減するための圧力調整機構を燃料供給装置100は有している。燃料供給装置100の圧力調整機構が以下に説明される。
【0046】
圧力調整機構は、燃料分配部120内の燃料の圧力が低減されるように燃料分配部120から燃料を流出させ、燃料分配部120から流出した燃料を下方に案内する。燃料分配部120から燃料を流出させ燃料分配部120内の燃料の圧力を低減させる部位として、燃料供給装置100は、燃料分配部120に取り付けられた2つの弁体と燃料分配部120から上方に突出した2つの突出部位とを含む。2つの弁体のうち一方は第1分配管121に取り付けられた第1減圧弁171であり、2つの弁体のうち他方は第2分配管122に取り付けられた第2減圧弁172である。2つの突出部位のうち一方は第1分配管121の周壁から上方に突出した連結部173であり、2つの突出部位のうち他方は第2分配管122の周壁から上方に突出した流出部174である。燃料分配部120から流出した燃料を下方に案内する部位として、燃料供給装置100は案内管部180を含む。第1減圧弁171、第2減圧弁172、連結部173、流出部174及び案内管部180が以下に説明される。
【0047】
第1減圧弁171は、第1分配管121の主管161の後端に取り付けられている。第1減圧弁171は第1分配管121内の燃料の圧力に応じて、第1分配管121の第1貯留空間と分配コネクタ164の後方で第1分配管121の主管161の周壁の後端部から上方に突出した連結部173によって形成された流路とを連通させたり、第1分配管121及び連結部173の連通部位を閉じたりする機械的な弁体である。同様に、第2減圧弁172は第2分配管122内の燃料の圧力に応じて、第2分配管122の第2貯留空間と分配コネクタ168の後方で第2分配管122の主管165の周壁の後端部から上方に突出した流出部174によって形成された流路とを連通させたり、第2分配管122及び流出部174の連通部位を閉じたりする機械的な弁体である。
【0048】
第2減圧弁172が開いたときに第2分配管122から流出した燃料及び第1減圧弁171が開いたときに第1分配管121から流出した燃料を、案内管部180は下方へ案内する。案内管部180は、連結部173から下方に延設された第1リターン管181と、連結部173と流出部174とに連結された第2リターン管182と、第1分配管121及び第2分配管122の下方に配置された接続部材183と、を含む。第1リターン管181及び第2リターン管182は連結部173によって連結されている。第1リターン管181は接続部材183に連結され、連結部173から接続部材への燃料の案内経路を形成している。第2リターン管182は流出部174から連結部173への燃料の案内経路を形成している。接続部材183は、燃料タンクに連なる管部材(図示せず)に接続されている。すなわち、接続部材183は第1リターン管181と燃料タンクに連なる管部材との接続に用いられている。
【0049】
<燃料供給装置の動作>
燃料供給装置100の概略的な動作が以下に説明される。
【0050】
燃料ポンプ部111が作動すると、燃料タンク内の燃料は燃料ポンプ部111によって吸引され燃料ポンプ部111に到達する。燃料ポンプ部111は、燃料を吐出部116,117から吐出する。燃料は、吐出部116,117から延設された第1供給管112及び第2供給管113によって第1分配管121及び第2分配管122へそれぞれ案内される。燃料はその後、第1分配管121及び第2分配管122内で一時的に貯留される。燃料ポンプ部111は弁群130からの燃料噴射量より多い量の燃料を吐出するので、第1分配管121及び第2分配管122内の燃料の圧力は高くなる。
【0051】
第1分配管121及び第2分配管122内の高圧の燃料は、弁群130が開くと、エンジン200内の6つの気筒へ噴射される。第1噴射弁133,134,135及び第2噴射弁136,137,138はECUの制御下で、互いに異なるタイミングで開かれる。第1噴射弁133,134,135が開かれると、第1分配管121内の燃料は分配枝管124,126,125を通じて第1噴射弁133,134,135へ流れ、第1噴射弁133,134,135から3つの気筒へ噴射される。同様に、第2噴射弁136,137,138が開かれると、第2分配管122内の燃料は分配枝管128,127,129を通じて第2噴射弁136,137,138へ流れ、第2噴射弁136,137,138から3つの気筒へ噴射される。
【0052】
第1噴射弁133,134,135及び第2噴射弁136,137,138からの燃料の噴射量を超える燃料が燃料ポンプ部111から吐出されるので、第1分配管121及び第2分配管122内の燃料の圧力が所定の設定圧力を超えることがある。第1分配管121及び第2分配管122内の燃料の圧力が所定の設定圧力を超えると、第1減圧弁171及び第2減圧弁172は開かれる。第1減圧弁171が開かれると、第1分配管121の第1貯留空間は第1リターン管181と連通する。このとき、第1分配管121の第1貯留空間内の燃料は連結部173から流出し第1リターン管181に流入する。この結果、第1貯留空間内の燃料の圧力は下がる。第2減圧弁172が開かれると、第2分配管122の第2貯留空間は第2リターン管182と連通する。このとき、第2分配管122の第2貯留空間内の燃料は流出部174から流出し第2リターン管182に流入する。この結果、第2貯留空間内の燃料の圧力は下がる。第2貯留空間から第2リターン管182に流入した燃料は、第2リターン管182及び連結部173を順次通過し第1リターン管181に流入する。
【0053】
第2貯留空間から流出部174、第2リターン管182及び連結部173を通じて第1リターン管181に流入した燃料及び第1貯留空間から連結部173を通じて第1リターン管181に流入した燃料は、第1リターン管181に沿って流下し第1分配管121及び第2分配管122の下方の接続部材183に到達する。燃料はその後、接続部材183から燃料タンクに連なる管部材に流入し燃料タンクに戻る。
【0054】
<燃料分配部内での脈動の低減のための制御>
接続部材183へ燃料を案内する第1リターン管181の隣で配管された第1供給管112は上述の如く、燃料ポンプ部111の上側のポンプ114から延設され第1分配管121に連結されている。第1分配管121の後方に配置された第2分配管122には、下側のポンプ115から延設された第2供給管113が連結されている。第2供給管113が形成している第2供給経路は第1分配管121が形成している第1供給経路とは独立しており、且つ、第2分配管122は第1分配管121から離れているので、燃料ポンプ部111に由来する脈動は、第1分配管121と第2分配管122との間で伝播されない。しかしながら、脈動は弁群130によって引き起こされることもある。弁群130に由来する脈動を低減する制御が以下に説明される。
【0055】
図2は、燃料供給装置100の概略的な斜視図である。図1及び図2を参照して、弁群130に由来する脈動を低減する制御が説明される。
【0056】
図2は燃料供給装置100に加えて、上述の6つの気筒として第1気筒261~第6気筒266を示す。加えて、図2は弁群130を制御するECU300を示す。
【0057】
第1噴射弁133は第1噴射弁133の下方の第1気筒261にECU300の制御下で燃料を噴射する。第1噴射弁134は第1噴射弁134の下方の第2気筒262にECU300の制御下で燃料を噴射する。第1噴射弁135は第1噴射弁135の下方の第3気筒263にECU300の制御下で燃料を噴射する。第2噴射弁136は第2噴射弁136の下方の第4気筒264にECU300の制御下で燃料を噴射する。第2噴射弁137は第2噴射弁137の下方の第5気筒265にECU300の制御下で燃料を噴射する。第2噴射弁138は第2噴射弁138の下方の第6気筒266にECU300の制御下で燃料を噴射する。
【0058】
第1噴射弁133,134,135は、分配枝管124,126,125によって第1分配管121に連結されている。したがって、第1噴射弁133,134,135の作動に起因して生じた脈動は第1分配管121へ伝播される。第1噴射弁133,134,135の後方の第2噴射弁136,137,138は、分配枝管128,127,129によって第2分配管122に連結されている。したがって、第2噴射弁136,137,138の作動に起因して生じた脈動は第2分配管122へ伝播される。
【0059】
第1分配管121及び第2分配管122へ伝播された脈動が低減されるように、ECU300は弁群130からの燃料の噴射タイミングを定めている。ECU300は、第1分配管121に連なる第1燃料噴射弁群131(すなわち、第1噴射弁133,134,135)の燃料噴射順序が連続しないように、且つ、第2分配管122に連なる第2燃料噴射弁群132(すなわち、第2噴射弁136,137,138)の燃料噴射順序が連続しないように、作動指令を弁群130へ出力する。弁群130は作動指令に応じて作動する。以下の表1は、弁群130の例示的な燃料噴射順序を示す。
【0060】
【表1】
【0061】
第1噴射弁133,134,135(すなわち第1分配管121に連なる弁群)は、奇数の噴射順序で噴射する。第2噴射弁136,137,138(すなわち第2分配管122に連なる弁群)は、偶数の噴射順序で噴射する。
【0062】
<燃料分配部内での脈動の低減等の効果>
第1噴射弁133,134,135の噴射順序は奇数順序であり連続しない。第1噴射弁133は表1に示されるように、弁群130の中で最初に燃料を噴射する。第1噴射弁134は、弁群130の中で5番目に燃料を噴射する。第1噴射弁135は、弁群130の中で3番目に燃料を噴射する。第1噴射弁133が燃料を噴射する時刻から第1噴射弁135が燃料を噴射する時刻までの間に、第2噴射弁137は燃料を噴射する。第1噴射弁135が燃料を噴射する時刻から第1噴射弁134が燃料を噴射する時刻までの間に第2噴射弁138が燃料を噴射する。したがって、第1噴射弁133,135が燃料を噴射する時間間隔及び第1噴射弁135,134が燃料を噴射する時間間隔は長くなる。第1噴射弁133の作動に起因する脈動は、第1噴射弁135が燃料を噴射するまでの長い期間の間に十分に減衰され、第1噴射弁135からの燃料噴射量にほとんど影響しない。第1噴射弁135の作動に起因する脈動は、第1噴射弁134が燃料を噴射するまでの長い期間の間に十分に減衰され、第1噴射弁134からの燃料噴射量にほとんど影響しない。
【0063】
第1噴射弁133,135,134の後に燃料をそれぞれ噴射する第2噴射弁137,138,136は第1分配管121から分離して配置された第2分配管122に連なるので、第1噴射弁133,135,134の作動に由来する脈動には影響されない。第2噴射弁137は表1に示されるように、弁群130の中で2番目に燃料を噴射する。第2噴射弁138は、弁群130の中で4番目に燃料を噴射する。第2噴射弁136は、弁群130の中で最後に燃料を噴射する。すなわち、第2噴射弁137,138,136の噴射順序は偶数順序であり連続しない。
【0064】
第2噴射弁137が燃料を噴射する時刻から第2噴射弁138が燃料を噴射する時刻までの間に、第1噴射弁135は燃料を噴射する。第2噴射弁138が燃料を噴射する時刻から第2噴射弁136が燃料を噴射する時刻までの間に第1噴射弁134が燃料を噴射する。したがって、第2噴射弁137,138が燃料を噴射する時間間隔及び第2噴射弁138,136が燃料を噴射する時間間隔は長くなる。第2噴射弁137の作動に起因する脈動は、第2噴射弁138が燃料を噴射するまでの長い期間の間に十分に減衰され、第2噴射弁138からの燃料噴射量にほとんど影響しない。第2噴射弁138の作動に起因する脈動は、第2噴射弁136が燃料を噴射するまでの長い期間の間に十分に減衰され、第2噴射弁136からの燃料噴射量にほとんど影響しない。
【0065】
第2噴射弁136,137,138に燃料を分配する第2分配管122は、第1噴射弁133,134,135に燃料を分配する第1分配管121から分離して配置されている。第1分配管121は第1供給管112が形成する第1供給経路を通じて燃料の供給を受ける一方で、第2分配管122は第2供給管113が第1供給経路とは独立して形成した第2供給経路を通じて燃料を受ける。この結果、第1供給経路及び第2供給経路に燃料を吐出する燃料ポンプ部111の動作に起因する脈動は、第1分配管121と第2分配管122との間で伝播されない。
【0066】
脈動の伝播を防止するために、燃料分配部120は第1分配管121と第2分配管122とに分けられているので、第1分配管121及び第2分配管122内の余剰の燃料を案内する複数の管部材が必要とされる。燃料供給装置100はこれらの管部材として第1リターン管181と第2リターン管182とを有する。第1リターン管181及び第2リターン管182はともに第1分配管121の主管161から突出した連結部173に連結されているので、作業者は第1リターン管181及び第2リターン管182を1つの管部材として取り扱うことができ、燃料供給装置100を効率的に組み立てることができる。
【0067】
第1リターン管181及び第2リターン管182が連結部173で連結されているので、第1分配管121及び第2分配管122内の余剰の燃料をリターンするための経路は1つの管路に集約される。この場合、第1減圧弁171及び第2減圧弁172が同時に開かれると第1リターン管181及び第2リターン管182内での燃料の円滑な流動が妨げられることもある。しかしながら、第1燃料噴射弁群131及び第2燃料噴射弁群132それぞれの中での燃料噴射順序は連続せず、第1噴射弁133,135,134及び第2噴射弁137,138,136は交互に燃料を噴射するので、第1分配管121及び第2分配管122内の燃料の圧力が同時に設定圧力を超えることはない。すなわち、第1減圧弁171及び第2減圧弁172は同時に開かない。したがって、第1分配管121及び第2分配管122内の余剰の燃料は第1リターン管181及び第2リターン管182を通じて燃料タンクに円滑に戻ることができる。
【0068】
第1リターン管181及び第2リターン管182の連結に用いられる連結部173は、第1分配管121の後端に取り付けられている。第1分配管121の長手方向における中間位置に、第1供給経路(上側のポンプ114からの燃料供給経路)を形成している第1供給管112が連結されているので、連結部173は第1供給管112が第1分配管121に連結された第1供給連結部よりも第2分配管122の近くに位置する。同様に、第2分配管122の長手方向における中間位置に、第2供給経路(下側のポンプ115からの燃料供給経路)を形成している第2供給管113が連結されているので、連結部173は第2供給管113が第2分配管122に連結された第2供給連結部よりも第1分配管121の近くに位置している。加えて、連結部173に連結された第1リターン管181、第1分配管121に連結された第1供給管112及び第2分配管122に連結された第2供給管113は下方に延設される。したがって、これらの管部材は互いに近くに配置される。この結果、作業者はこれらの管部材に対する配管作業をまとめて行うことができるので、これらの管部材の配管作業は効率化される。
【0069】
第2供給管113が連結された第2分配管122の後端部に配置された流出部174に第2リターン管182は連結されている。流出部174は、第2供給管113が第2分配管122に連結された第2供給連結部よりも第1分配管121から離れているので、流出部174と第1分配管121の後端部に配置された連結部173との間の距離は過度に短くならない。したがって、作業者は第2リターン管182を流出部174と連結部173とに容易に連結することができる。
【0070】
連結部173及び流出部174は第1分配管121及び第2分配管122の主管161,165の主管の後端部から突出した部位である。連結部173及び流出部174のレイアウトの共通性に加えて、第2分配管122の分配コネクタ166,167,168のレイアウト及び第2分配管122に対する第2供給管113の連結位置も、第1分配管121の分配コネクタ162,163,164のレイアウト及び第1分配管121に対する第1供給管112の連結位置に共通している。したがって、設計者は、第1分配管121及び第2分配管122を形状的及び構造的に一致させることができる。
【0071】
第1分配管121の分配コネクタ162~164及び第2分配管122の分配コネクタ166~168のレイアウトに関して、分配コネクタ163,167は第1分配管121及び第2分配管122の長手方向の中間位置に配置されている。分配コネクタ162,164は、第1分配管121の中間位置において延設軸EXAに直交する仮想的な平面について対称的に配置されている。同様に、分配コネクタ166,168は、第2分配管122の中間位置において延設軸EXAに直交する仮想的な平面について対称的に配置されている。したがって、第1分配管121の分配コネクタ162~164及び第2分配管122の分配コネクタ166~168は第1分配管121及び第2分配管122の中間位置について対称的である。第1分配管121の分配コネクタ162~164及び第2分配管122の分配コネクタ166~168の対称的な配置の結果、第1供給管112から第1分配管121への燃料の供給に起因して生じた脈動の影響は分配コネクタ162,164に略均等に現れる。したがって、分配コネクタ163,165を通じて燃料を分配される第1噴射弁133,134に対する脈動の影響も略均等化される。同様に、第2供給管113から第2分配管122への燃料の供給に起因して生じた脈動の影響は分配コネクタ166,168及びこれらを通じて燃料を分配される第2噴射弁137,138に略均等に現れる。この結果、第1噴射弁133,134間及び第2噴射弁137,138間での燃料の噴射特性の差は低減される。したがって、弁群130からの燃料噴射に対する制御は容易になる。
【0072】
上述の実施形態に関して、エンジン200は6つの気筒を有するので、燃料供給装置100は6つの気筒へ燃料を噴射するように形成されている。しかしながら、燃料供給装置は6未満の気筒又は6を越える気筒に燃料を噴射するように形成されてもよい。
【0073】
上記の実施形態に関して、6つの気筒へ燃料を分配する燃料分配部120は、第1分配管121と第2分配管122とに分割される。しかしながら、燃料分配部は2を超える分配管に分割されていてもよい。
【0074】
上記の実施形態に関して、第1分配管121及び第2分配管122それぞれから3つの分配経路(弁群130への燃料の供給経路)が形成される。しかしながら、1つの分配管から延設される分配経路は2つであってもよいし、3よりも多くてもよい。
【0075】
上述の実施形態に関して、第1分配管121から燃料を分配される第1噴射弁133~135からの燃料の噴射に起因して生じた脈動の減衰効果は、第1噴射弁133~135からの燃料の噴射順序並びに第1燃料噴射弁群131と分岐枝管124,125,126との間の連結関係によって専ら得られる。同様に、第2分配管122から燃料を分配される第2噴射弁136~138からの燃料の噴射に起因して生じた脈動の減衰効果は、第2噴射弁136~138からの燃料の噴射順序並びに第2燃料噴射弁群132と分岐枝管127,128,129との間の連結関係によって専ら得られる。したがって、設計者は燃料分配部120よりも上流の燃料の供給経路に関して様々な配管構造を採用してもよい。
【0076】
上述の実施形態に関して、第1分配管121及び第2分配管122内の燃料の圧力を調整するための圧力調整機構が詳細に説明されている。しかしながら、設計者は既知の燃料供給装置に用いられている圧力調整機構を採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
上述の実施形態の原理は、様々な車両に好適に利用される。
【符号の説明】
【0078】
100・・・・・・・・・・燃料供給装置
112・・・・・・・・・・第1供給管
113・・・・・・・・・・第2供給管
121・・・・・・・・・・第1分配管
122・・・・・・・・・・第2分配管
124~129・・・・・・分配枝管
131・・・・・・・・・・第1燃料噴射弁群
132・・・・・・・・・・第2燃料噴射弁群
133~135・・・・・・第1噴射弁(一部の複数の燃料噴射弁)
136~138・・・・・・第2噴射弁(他の一部の複数の燃料噴射弁)
171・・・・・・・・・・第1減圧弁
172・・・・・・・・・・第2減圧弁
173・・・・・・・・・・連結部
181・・・・・・・・・・第1リターン管
182・・・・・・・・・・第2リターン管
261・・・・・・・・・・第1気筒(複数の気筒のうち1つ)
262・・・・・・・・・・第2気筒(複数の気筒のうち1つ)
263・・・・・・・・・・第3気筒(複数の気筒のうち1つ)
264・・・・・・・・・・第4気筒(複数の気筒のうち1つ)
265・・・・・・・・・・第5気筒(複数の気筒のうち1つ)
266・・・・・・・・・・第6気筒(複数の気筒のうち1つ)
図1
図2