IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 王子ホールディングス株式会社の特許一覧

特許7102759SAPシートの製造方法、SAPシート、吸収性物品の製造方法、及び吸収性物品
<>
  • 特許-SAPシートの製造方法、SAPシート、吸収性物品の製造方法、及び吸収性物品 図1
  • 特許-SAPシートの製造方法、SAPシート、吸収性物品の製造方法、及び吸収性物品 図2
  • 特許-SAPシートの製造方法、SAPシート、吸収性物品の製造方法、及び吸収性物品 図3A
  • 特許-SAPシートの製造方法、SAPシート、吸収性物品の製造方法、及び吸収性物品 図3B
  • 特許-SAPシートの製造方法、SAPシート、吸収性物品の製造方法、及び吸収性物品 図4
  • 特許-SAPシートの製造方法、SAPシート、吸収性物品の製造方法、及び吸収性物品 図5
  • 特許-SAPシートの製造方法、SAPシート、吸収性物品の製造方法、及び吸収性物品 図6
  • 特許-SAPシートの製造方法、SAPシート、吸収性物品の製造方法、及び吸収性物品 図7
  • 特許-SAPシートの製造方法、SAPシート、吸収性物品の製造方法、及び吸収性物品 図8
  • 特許-SAPシートの製造方法、SAPシート、吸収性物品の製造方法、及び吸収性物品 図9
  • 特許-SAPシートの製造方法、SAPシート、吸収性物品の製造方法、及び吸収性物品 図10
  • 特許-SAPシートの製造方法、SAPシート、吸収性物品の製造方法、及び吸収性物品 図11
  • 特許-SAPシートの製造方法、SAPシート、吸収性物品の製造方法、及び吸収性物品 図12
  • 特許-SAPシートの製造方法、SAPシート、吸収性物品の製造方法、及び吸収性物品 図13
  • 特許-SAPシートの製造方法、SAPシート、吸収性物品の製造方法、及び吸収性物品 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】SAPシートの製造方法、SAPシート、吸収性物品の製造方法、及び吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20220712BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
A61F13/15 329
A61F13/15 351A
A61F13/15 355C
A61F13/15 331
A61F13/53 200
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018019656
(22)【出願日】2018-02-06
(65)【公開番号】P2019136151
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-07-22
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野田 敏弘
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-070501(JP,A)
【文献】特開2006-014878(JP,A)
【文献】特開平08-215242(JP,A)
【文献】国際公開第2017/149609(WO,A1)
【文献】特開2008-119860(JP,A)
【文献】特開2007-136162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15
A61F 13/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高吸収性重合体であるSAPの粒子群が配置されたSAPシートの製造方法であって、
繊維状材料からなる第1シート上に、前記SAPの粒子群を配置するステップと、
前記SAPの粒子群が配置された前記第1シートとの間に該SAPの粒子群を挟むように、繊維状材料からなる第2シートを配置するステップと、
前記SAPの粒子群を間に挟んだ前記第1シートと前記第2シートの重畳体を、前記第1シートと前記第2シートとの間に介在する前記SAPの粒子群の一部を挟んでいる部位で押圧しながら切断することにより、切断部分において前記SAPの粒子が前記押圧により前記第1シート及び前記第2シートのそれぞれの繊維状材料に絡み合った状態の接着部で、切断部分において両シートが互いに接着された前記SAPシートを形成するステップと、
を含む、SAPシートの製造方法。
【請求項2】
前記SAPの粒子群を配置するステップでは、少なくとも前記両シートを接着するステップで切断される部位に該SAPの粒子群が存在するように、前記第1シート上に該SAPの粒子群を配置する、
請求項1に記載のSAPシートの製造方法。
【請求項3】
前記両シートを接着するステップでは、前記両シートを切断する頂点と、前記頂点から斜めに続く傾斜部分とを、回転軸を面内に持つ断面の外周部分に有するローラを用いて、前記両シートを切断する、
請求項1または2に記載のSAPシートの製造方法。
【請求項4】
前記両シートを接着するステップでは、前記両シートを切断する回転刃と、前記回転刃の前方または後方で前記両シートを加圧する加圧ローラとを有する切断機構を用いて、前記両シートを切断する、
請求項1または2に記載のSAPシートの製造方法。
【請求項5】
前記SAPの粒子群を配置するステップでは、前記第1シートを巻き付けたロールから連続的に繰り出されるシートに前記SAPの粒子群を配置しており、
前記第2シートを配置するステップでは、前記第2シートを巻き付けたロールから連続的に繰り出されるシートを、前記SAPの粒子群が配置された前記第1シートとの間に該SAPの粒子群を挟むように配置しており、
前記両シートを接着するステップでは、前記第2シートを配置するステップによって連続的に送られる前記重畳体を連続的に切断し、切断部分において前記両シートを接着する、
請求項1から4の何れか一項に記載のSAPシートの製造方法。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載の製造方法で製造されたSAPシートを、液不透過性のバックシートと、前記バックシートに接合される液透過性のトップシートとの間に挟むステップを含む、
吸収性物品の製造方法。
【請求項7】
高吸収性重合体であるSAPの粒子群が配置されたSAPシートであって、
繊維状材料からなる第1シートと、
前記第1シートとの間に前記SAPの粒子群を挟むように該第1シートに対して配置される、繊維状材料からなる第2シートと、
前記第1シートと前記第2シートとの間に配置され、前記SAPの粒子を含んで形成されたSAP層と、
を備え、
前記SAP層は、
前記第1シートおよび前記第2シートとして原料シートから切り出される際に形成されて前記SAPシートの縁となった切断面から所定の幅で前記第1シートと前記第2シートとの間に介在し、切断による押圧によって前記SAPの粒子前記第1シート及び前記第2シートのそれぞれの繊維状材料に絡み合わさったものによって両シート間を封止する接着部
を有する、SAPシート。
【請求項8】
液不透過性のバックシートと、
前記バックシートに接合される液透過性のトップシートと、
前記バックシートと前記トップシートとの間に配される請求項7に記載のSAPシートと、
を備える、吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高吸収性重合体であるSAPの粒子群が配置されたSAPシートの製造方法、SAPシート、及び吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ、尿パッド、生理用品等の吸収性物品においては、尿や体液を吸収する吸収材として、パルプや高吸収性重合体(Super Absorbent Polymer:SAP)が用いられている。通常、これらの吸収材は薄いシート状、マット状等の形状に成形された吸収体として、吸収性物品の肌当接面側に配置される。例えば、パルプマット中に、SAP粒子が分散配置された吸収体や、複数のパルプマットの層間に、前記SAP粒子が層状に配置された吸収体が知られている。
【0003】
更に近年では、吸収性物品には排泄物の吸収性に優れ、漏れがないといった基本的な機能に加えて、着用感や装着時における外観の向上が求められている。そこで、吸収性物品の構成部材の中で比較的嵩高い吸収体を薄型化することが提案されている。例えば特許文献1には、不織布基材等に、熱可塑性樹脂等の結合剤を用いてSAP粒子を固定させることによって、SAP粒子の比率を増やした吸収性複合体等が開示されている。また、特許文献2には、2枚のシート部材の間にSAP粒子が配置されたSAPシートが開示されており、シート部材、SAP受容層、SAP粒子の間に互いに水素結合を生じさせることで、SAP粒子はSAP受容層を介してシートに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-24033号公報
【文献】特開2013-39804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
SAPは、粒子状の吸収性樹脂である。よって、SAPを吸収性物品に用いる場合、SAPを繊維状材料の袋体に内包することになる。しかし、吸収性物品は、着用者のサイズや製品の種類に応じた様々な形態及び大きさを有する。よって、吸収性物品が有する様々な形態及び大きさに対応するには、SAPを内包する繊維状材料の袋体を自在に形成する技術が望まれる。
【0006】
SAPを内包した繊維状材料の袋体を作成する方法としては、例えば、繊維状材料のシートを2枚重ね合わせた状態で打ち抜き加工を行い、シート同士を端部で溶着する方法がある。しかし、繊維状材料の表面は平滑でないため、このような方法で作成された袋体の中にSAPを充填することは容易でない。
【0007】
そこで、本発明は、製造工程を複雑化することなく繊維状材料の袋体にSAPを内包可能なSAPシートの製造方法、SAPシート、吸収性物品の製造方法、及び吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、SAP粒子を内包する2枚のシートを、SAP粒子を挟んだ状態で切断することにより、両シートを切断部分のSAPで接着することにした。
【0009】
詳細には、本発明は、高吸収性重合体であるSAPの粒子群が配置されたSAPシートの製造方法であって、繊維状材料からなる第1シート上に、SAPの粒子群を配置するステップと、SAPの粒子群が配置された第1シートとの間に該SAPの粒子群を挟むように、繊維状材料からなる第2シートを配置するステップと、SAPの粒子群を間に挟んだ第1シートと第2シートの重畳体を、第1シートと第2シートとの間に介在するSAPの粒子群の一部を挟んだ状態で切断し、切断部分においてSAPの粒子を第1シート及び第2シートのそれぞれの繊維状材料に絡み合わせることにより両シートを接着するステップと、を含む。
【0010】
ここで、第1シートおよび第2シートは、別体のものに限定されるものでなく、例えば、折り曲げられた1枚のシートの折り曲げ部分を境にして複数に区画されたうちの1つを第1のシートとし、他の1つを第2のシートと称するものであってもよい。また、SAPの粒子群には、SAPの微粉やその他の異物が含まれてもよいが、主にSAP粒子が占めていることが好ましい。なお、本願においてSAP粒子とは、SAPを含む樹脂組成物を粒状としたものを指すものとする。そして、「SAPを含む樹脂組成物」とは、SAPのみからなる組成物、SAPを主成分とし、これに吸水性に悪影響を及ぼさない程度に他の物質が含まれた組成物、の双方を包含する概念である。またSAPには、デンプン系、セルロース系、合成樹脂系の材料を使用可能であり、その粒子形状、粒子寸法は、第1シートと第2シートを接着できる限りにおいて、特定の形状、寸法に限られない。
【0011】
なお、SAPの粒子群を配置するステップでは、少なくとも両シートを接着するステップで切断される部位に該SAPの粒子群が存在するように、第1シート上に該SAPの粒子群を配置してもよい。
【0012】
また、両シートを接着するステップでは、両シートを切断する頂点と、頂点から斜めに続く傾斜部分とを、回転軸を面内に持つ断面の外周部分に有するローラを用いて、両シートを切断してもよいし、或いは、両シートを切断する回転刃と、回転刃の前方または後方で両シートを加圧する加圧ローラとを有する切断機構を用いて、両シートを切断してもよい。
【0013】
また、SAPの粒子群を配置するステップでは、第1シートを巻き付けたロールから連続的に繰り出されるシートにSAPの粒子群を配置しており、第2シートを配置するステップでは、第2シートを巻き付けたロールから連続的に繰り出されるシートを、SAPの粒子群が配置された第1シートとの間に該SAPの粒子群を挟むように配置しており、両シートを接着するステップでは、第2シートを配置するステップによって連続的に送られる重畳体を連続的に切断し、切断部分において両シートを接着するものであってもよい。
【0014】
なお、本発明は、吸収性物品の製造方法の側面から捉えることもできる。例えば、本発明は、上記何れかに記載の製造方法で製造されたSAPシートを、液不透過性のバックシートと、バックシートに接合される液透過性のトップシートとの間に挟むステップを含むものであってもよい。
【0015】
また、本発明は、SAPシートの側面から捉えることもできる。例えば、本発明は、高吸収性重合体であるSAPの粒子群が配置されたSAPシートであって、繊維状材料からなる第1シートと、第1シートとの間にSAPの粒子群を挟むように該第1シートに対して配置される、繊維状材料からなる第2シートと、第1シートと第2シートとの間に配置され、SAPの粒子を含んで形成されたSAP層と、を備え、SAP層は、第1シートおよび第2シートとして原料シートから切り出される際に形成されてSAPシートの縁となった切断面から所定の幅で第1シートと第2シートとの間に介在し、SAPの粒子を第1
シート及び第2シートのそれぞれの繊維状材料に絡み合わせることによって両シート間を封止する接着部を有するものであってもよい。
【0016】
また、本発明は、吸収性物品の側面から捉えることもできる。例えば、本発明は、吸収性物品であって、液不透過性のバックシートと、バックシートに接合される液透過性のトップシートと、バックシートとトップシートとの間に配される上記SAPシートと、を備えるものであってもよい。
【発明の効果】
【0017】
上記のSAPシートの製造方法、SAPシート、吸収性物品の製造方法、及び吸収性物品であれば、製造工程を複雑化することなく繊維状材料の袋体にSAPを内包可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係るSAPシートの概略構成を示す図である。
図2図1に示すSAPシートの断面図である。
図3A】加圧時のSAPシートとSAP粒子群の境界部位近傍の第1の拡大図である。
図3B】加圧時のSAPシートとSAP粒子群の境界部位近傍の第2の拡大図である。
図4】SAPシートの製造に使用する第1ローラの構成を示す図である。
図5】SAPシートの製造に使用する第2ローラの構成を示す図である。
図6図1に示すSAPシートの製造方法の流れを示す図である。
図7図6に示す製造方法に従ったときの、SAPシートの製造状態を段階的に示す図である。
図8】第1ローラによるSAPシートの切断状態を示した図である。
図9】第2ローラによるSAPシートの切断状態を示した図である。
図10】第1ローラの変形例を示した図である。
図11図1に示すSAPシートを用いて形成された吸収性物品の概略構成を示す図である。
図12図11に示す吸収性物品を部品ごとに分解した図である。
図13図11に示す吸収性物品の断面図である。
図14図11に示す製造方法の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態に係るSAPシートについて説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本発明はこれらの実施の形態の構成に限定されるものではない。
【0020】
<SAPシートの構成>
図1は、実施形態に係るSAPシートの概略構成を示す図である。SAPシート6は、繊維状材料からなる第1シート61及び第2シート62と、両シートの間に高吸収性重合体であるSAP(Super Absorbent Polymer:SAP)の粒子「以下、「SAP粒子」ともいう」を含んで形成されたSAP層63とを有している。また、図2は、SAPシート6を、図1に示すXX断面(SAPシート6の幅方向に沿った断面)、YY断面(SAPシート6の長さ方向に沿った断面)で切断した場合の断面図である。なお、図2では、SAPシート6の厚さ方向の変化を強調して各断面の状態を表している。
【0021】
第1シート61及び第2シート62は、ともに繊維状材料から形成される。第1シート
61及び第2シート62は、繊維状材料の原料シートを芯材に巻き付けたロールから切り出されたシートであり、概ね同じ形状(本実施形態では、矩形状)を有している。第1シート61は、SAP層63の表面を覆うシートであり、着用者の肌が配置される側に配置して用いる。第1シート61は親水性のシートである。第2シート62は、SAP層63の背面を覆うシートであり、着用者の肌と背向する面側に配置して用いる。第2シート62は、必ずしも第1シート61のように親水性のシートである必要はない。例えば、第2シート62は、撥水性材料によって構成されていてもよい。なお、第2シート62が親水性材料で形成されると、第2シート62側の面からも排泄物等の液体を吸収させることが可能となる。従って、SAPシート6全体の吸収効率を向上させることができる。また、第1シート61、第2シート62のいずれも、着用者の肌と対向することができ、SAPシート6の利便性が高い。
【0022】
ここで、一例として、第1シート61及び第2シート62は、ともにポリプロピレン(PP)繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維等の合成繊維からなる不織布から形成できる。「不織布」とは、一例として、非セルロース系合成繊維からなる短繊維やフィラメントを接着ないし交絡させることにより形成されたシート又はウェブとすることができる。なお、各シートを親水性のシートにするためには、上記不織布の原綿に界面活性剤を塗布、スプレー、含浸させる等の親水化処理を行えばよい。
【0023】
また、第1シート61及び第2シート62に使用する不織布の坪量は、10~30g/mであることが好ましい。10g/m以上とすることで、各シートの強度を確保することができる。一方、30g/m以下とすることで、各シートの柔軟性、可撓性を確保し、SAPシート6全体を好適に薄型化することが可能となる。より好ましくは、不織布の坪量が15~25g/mである。
【0024】
また、第1シート61及び第2シート62を親水性シートとする場合、両シートを紙製とすることができる。一例として、「紙」は、セルロース系繊維を絡み合わせることにより形成されたシート又はウェブである。紙を構成するセルロース系繊維としては、例えば針葉樹や広葉樹の木材パルプ、古紙パルプ、麻や綿等の非木材パルプ、化学合成パルプ、コットン等由来のセルロース繊維の他、レーヨン(再生セルロース繊維)、リヨセル(精製セルロース繊維)等のセルロース系合成繊維も含まれる。2種以上のセルロース系繊維同士、或いはセルロース系繊維と非セルロース系合成繊維(PP、PET等の繊維)との混合繊維を用いることもできる。なお、紙製のシートによってSAP粒子の膨潤が妨げられず、SAPシート6により高い吸収性能を発揮させるためには、第1シート61及び第2シート62を形成する紙が、ティシュ又は吸収紙であることが好ましい。ティシュや吸収紙は他の紙に比して裂け易く、SAP粒子の膨潤の支障となりにくい。
【0025】
次に、SAP層63に含まれるSAP粒子について説明する。SAP粒子は、粒状のSAPであり、SAPとしては、例えば、自重の5倍以上の水を吸収し保持することが可能なものを採用できる。また、SAPとしては、デンプン系、セルロース系、合成樹脂系等のSAPが使用でき、例えば、デンプン-アクリル酸(塩)グラフト共重合体、デンプン-アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物、またはアクリル酸(塩)重合体からなるものであってもよい。また、SAPの粒子形状については、例えば破砕タイプのものやパールタイプのものが公知であるが、好ましくは破砕タイプのSAP粒子が採用される。
【0026】
また、本実施形態のSAP粒子とは、SAPを含む樹脂組成物を粒状としたものを指す。ここで言う「SAPを含む樹脂組成物」とは、SAPのみからなる組成物、SAPを主成分とし、これに吸水性に悪影響を及ぼさない程度に他の物質が含まれた組成物、の双方を包含する概念である。「他の物質」としては、添加剤(粒子表面を疎水化する目的で添
加される表面改質剤等)、SAPの合成時に残存した未反応のモノマー等を挙げることができる。
【0027】
また、SAP粒子に関する「粒状」には、例えば粒状、顆粒状等の形態が含まれる。これらの形状とすると、SAP粒子を配置した際に均一な厚さのSAP層を形成しやすくなる。また、SAP粒子の粒径や粒度分布について、後述するように加圧工程によりSAP粒子で第1シート61と第2シート62とを接着できる限りにおいて、特に制限はない。ただし、SAP層63での吸収性やSAP粒子による接着性の観点から、好ましくはSAP粒子の質量平均粒子径を180~500μmとする。「質量平均粒子径」は公知の篩い分け法により測定することができる。
【0028】
ここで、SAPシート6は、図1及び図2に示すように第1シート61と第2シート62との間にSAP層63が配置されている。その上で、SAP層63を形成するSAP粒子群の一部が、第1シート61と第2シート62とを接着する接着部として機能している。以下、このSAP粒子群によるシートの接着について説明する。
【0029】
本願の発明者は、第1シート61と第2シート62にSAP粒子群を挟んだ状態で所定の加圧力で加圧すると、その所定の加圧力が作用した加圧部位に対応するSAP粒子が加圧されて各シートの繊維状部材と絡み合った結果、そのSAP粒子が第1シート61及び第2シート62に対して結合力を発揮し両シートを事実上接着する現象を見出した。ここで、図3A及び図3Bに、このように両シートが接着されたときの、各シートとSAP粒子群との境界部位近傍の拡大図を示す。図3A及び図3Bは、SEM (Scanning Electron Microscope)による顕微鏡写真であり、図3Aの倍率は200倍、図3Bの倍率は50
0倍である。両図においては、シートの繊維状部材に絡み合っているSAP粒子の一部を白丸で囲み、例示的に抽出している。特に図3Aでは、図の概ね左側においてシートの繊維状部材も加圧によって部材間の空隙が閉塞した状態となっており、その中にSAP粒子が入り込んでいることが理解できる。また、所定の加圧力によっては、SAP粒子が圧縮されて潰れたり変形したり等して両シートの繊維状部材に絡み合うことで、両シートの接着が実現されるとも考えられる。なお、所定の加圧力は、SAPの種類やその粒子径、第1シート61及び第2シート62の間に配置されたSAP粒子群の厚さ、第1シート61及び第2シート62の材質等により変化すると考えられる。そして、本実施形態では、この所定の加圧力での加圧を介したSAP粒子による接着を利用して、SAPシート6が形成される。
【0030】
SAPシート6では、SAP層63を形成するSAP粒子群の一部による第1シート61及び第2シート62の接着部として、その幅方向(短手方向)に沿って両端の切断部分に端部接着部63Aが形成され、その長さ方向(長手方向)に沿って片端の切断部分に端部接着部63Cが形成されている。端部接着部63A、63Cにおいて第1シート61と第2シート62を接着するSAPは、SAPシート6の縁の切断面から所定の幅で第1シート61と第2シート62との間に介在し、両シート間を封止する。この所定の幅とは、SAPシート6がSAP粒子群を内包する袋体としての形態を維持できる程度に端部接着部63A、63CのSAPが接着力を発揮するのに必要な幅であり、想定される外力の大きさやSAPの接着力に応じて適宜決定された幅である。なお、SAPシート6では、端部接着部63Cが形成されている側の端部とは反対側の端部に端部接着部64が形成されている。端部接着部64は、SAP粒子群を介さない第1シート61と第2シート62との溶着によるものであってもよいし、SAPにより接着される部位であってもよい。第1シート61と第2シート62との溶着部分の有無は、第1シート61と第2シート62の原料として仕入れた原材料の形態に応じる。
【0031】
SAPシート6では、その幅方向に沿って延在する端部接着部63Aと、その長さ幅方向に沿って延在する端部接着部63C及び端部接着部6と、第1シート61及び第2シート62とによって、SAP粒子群を封止する矩形状の封止空間60が形成される。すなわち、封止空間60は、その周囲が端部接着部63Aと端部接着部63Cと端部接着部64で囲まれ、その上下方向(SAPシート6の厚さ方向)が第1シート61及び第2シート62で囲まれた閉空間である。
【0032】
封止空間60は、接着部の形成に際して所定の加圧力が作用しなかった非加圧部位に形成される。そのため、封止空間60に封止されているSAP粒子には所定の加圧力が作用していないことから、当該SAP粒子は、第1シート61及び第2シート62に対して自由状態で封止されている。そして、封止空間60は、その内部に封止されたSAP粒子群が、封止空間の外に漏れ出さない程度に閉じられた空間である。そのため、封止空間60に封止されたSAP粒子群は、第1シート61及び第2シート62に対して自由状態でありながらも、その封止空間60の中でしか移動できない。一方で、尿や体液等の液体や空気は封止空間60に対しては進入可能である。すなわち、第1シート61や第2シート62を介して液体は封止空間60に進入し、そこに封止されているSAP粒子に吸収され得る。また、空気についても、第1シート61や第2シート62を介して封止空間60に出入りが自在であり、封止空間60は、SAPシート6の通気性を低下させるものではない。
【0033】
上記のように、封止空間60は非加圧部位に対応するものであるから、図2に示すように、SAPシート6において、封止空間60のSAP層63の厚さは、端部接着部63A、63CのSAP層63の厚さよりも大きくなる。そのため、封止空間60に封止されているSAP粒子の空間密度は相対的には小さくなっており、液体が封止空間60に進入しやすく、封止されたSAP粒子による液体の効果的な吸収が可能である。
【0034】
なお、上記の実施形態では、SAP粒子が加圧されることで両シートを接着する端部接着部63A、63Cが形成されているが、その態様に代えて両シートを接着するために、上記のSAP粒子の加圧による接着方法に加えて、別の接着方法も併用することもできる。例えば、端部接着部63Aの形成においては、上記のSAP粒子の加圧による接着方法とは異なる、従来のホットメルトを用いた接着方法や超音波溶着方法を採用することができる。その上で、端部接着部63Cの形成においては、上記のSAP粒子の加圧による接着方法を採用してもよい。
【0035】
また、上記のSAP粒子の加圧による接着方法は、SAPシート6の完成体を製造するために採用できるだけではなく、SAPシート6の完成体を製造する前の段階で、第1シート61と第2シート62とを暫定的に接着するため、すなわち仮止めのための接着方法として採用することもできる。例えば、最終的にはホットメルトを用いて第1シート61と第2シート62とを接着してSAPシート6の完成体を製造する場合、そのホットメルトを利用する前の段階で、第1シート61と第2シート62との間にSAP粒子を挟んだ状態でこれらの位置決めを暫定的に行うために、上記のSAP粒子の加圧による接着方法を採用することができる。
【0036】
<SAPシートの製造方法>
次に、図4図5に基づいて、SAPシート6の製造方法について説明する。上記の通り、SAPシート6のSAP層63には、端部接着部63A、63Cが形成される。端部接着部63Cは、図4に示す第1ローラ75により、所定の加圧力が、第1シート61と第2シート62に挟まれたSAP層63のSAP粒子群に付与されることで形成される。第1ローラ75には、このような所定の加圧力を付与して端部接着部63Cの形成を可能とするために、第1加圧表面部75Lと第2加圧表面部75Rが設けられている。第1加圧表面部75Lと第2加圧表面部75Rの大きさや傾斜角は、端部接着部63Cが上記所
定の幅を持つように適宜決定される。また、端部接着部63Aは、図5に示す第2ローラ76により、所定の加圧力が、第1シート61と第2シート62に挟まれたSAP層63のSAP粒子群に付与されることで形成される。第2ローラ76には、このような所定の加圧力を付与して端部接着部63Aの形成を可能とするために、第1加圧表面部76Lと第2加圧表面部76Rが設けられている。
【0037】
具体的には、第1ローラ75は、円板状のローラであり、円板の中心軸が回転軸75Sとなる。そして、第1ローラ75は、最外周部分を形成する切断部75Cを頂部として捉えた場合に、その頂部の両側の傾斜面を形成する第1加圧表面部75Lと第2加圧表面部75Rが円板の外周面を形成する。よって、第1ローラ75は、回転軸75Sを面内に持つ断面で見た場合、切断部75Cを頂点とし、その頂点から斜めに続く傾斜部分を第1加圧表面部75Lと第2加圧表面部75Rが形成する断面構造を外周部分に有するローラとして捉えることができる。
【0038】
また、第2ローラ76は、円柱状のローラであり、円柱の中心軸が回転軸76Sとなる。そして、第2ローラ76は、外周面を形成する非加圧表面部76Hの表面から回転軸76Sと平行に隆起する切断部76Cを頂部として捉えた場合に、その頂部の両側の傾斜面が第1加圧表面部76Lと第2加圧表面部76Rを形成する。第1加圧表面部76Lと第2加圧表面部76Rの大きさや傾斜角は、端部接着部63Aが上記所定の幅を持つように適宜決定される。
【0039】
ここで、図6から図9に基づいて、SAPシート6の製造方法の流れについて説明する。図6は、SAPシート6の製造方法の流れを示すフローチャートであり、図7は、SAPシート6の製造状態を段階的に示す図である。また、図8は、第1ローラ75によるSAPシート6の切断状態を示した図である。また、図9は、第2ローラ76によるSAPシート6の切断状態を示した図である。先ず、S101では、第1シート61の上にSAP粒子群を配置する。なお、このとき、SAP粒子群の厚さΔhが、第1シート61の全体において概ね一定の値となるように、公知の粉体フィーダ等を用いてそのSAP粒子群が配置される。これにより、製造されたSAPシート6でのSAPの均等配置を実現しやすくなる。次に、S102では、第1シート61上に配置されたSAP粒子群の上に第2シート62を配置する。第2シート62は、第1シート61上に配置されたSAP粒子群を過不足なく覆うように、その位置決めが行われる。そして、このS102で第2シート62が配置された状態が、第1ローラ75と第2ローラ76による切断前状態であり、その状態における第1シート61、SAP粒子群、第2シート62の重畳体を、切断前重畳体65と称する。
【0040】
そして、次にS103では、第1ローラ75により切断前重畳体65の切断を行う。具体的には、図8に示すように、第1ローラ75と受けローラ77の間に切断前重畳体65が順次送り込まれる。受けローラ77は、第1ローラ75と同じように円板状のローラであるが、その外周面は平滑な表面とされ、切断部75Cに相当する隆起物等は設けられていない。したがって、第1ローラ75と第1ローラ75の間に送り込まれた切断前重畳体65に対しては、第1ローラ75に設けられた切断部75Cによる切断力の他、第1加圧表面部75Lと第2加圧表面部75Rを介した所定の加圧力の付与が行われることになる。その結果、第1加圧表面部75Lと第2加圧表面部75Rで押圧された第1シート61上の加圧部位に対応して、図1に示す端部接着部63CがSAP層63内に形成される。
【0041】
また、S103では、第2ローラ76により切断前重畳体65の切断を行う。具体的には、図9に示すように、第2ローラ76と受けローラ78の間に切断前重畳体65が順次送り込まれる。受けローラ78は、第2ローラ76と同じように円柱状のローラであるが、その外周面は平滑な表面とされ、切断部76Cに相当する隆起物等は設けられていない
。したがって、第2ローラ76と受けローラ78の間に送り込まれた切断前重畳体65に対しては、第2ローラ76に設けられた切断部76Cによる切断力の他、第1加圧表面部76Lと第2加圧表面部76Rを介した所定の加圧力の付与が行われることになる。その結果、第1加圧表面部76Lと第2加圧表面部76Rで押圧された第1シート61上の加圧部位に対応して、図1に示す端部接着部63AがSAP層63内に形成される。
【0042】
なお、S103では切断前重畳体65が第1ローラ75と受けローラ77の間を通過した後に第2ローラ76と受けローラ78の間を通過していたが、切断前重畳体65は、第2ローラ76と受けローラ78の間を通過した後に第1ローラ75と受けローラ77の間を通過してもよい。
【0043】
<変形例>
上記の実施形態では、第1ローラ75が切断前重畳体65の切断と端部接着部63Cの形成の両方を担っていたが、第1ローラ75が両方を担うものに限られない。図10は、第1ローラ75の変形例を示した図である。第1ローラ75は、例えば、端部接着部65Cの形成を担う加圧ローラ75HPと、X65の切断を担う回転刃75HCの2つを有する切断機構で代用することもできる。具体的には、加圧ローラ75HPは、外周面が平滑な円板状のローラであり、切断部75Cに相当する隆起物等は設けられていない。加圧ローラ75HPは、上記した所定の幅の2倍の横幅を有する。一方、回転刃75HCは、外周部分に鋭利な刃を有する円板状のローラであり、切断前重畳体65の進行方向に沿って加圧ローラ75HPの後方に配置される。切断前重畳体65は、加圧ローラ75HPとその受けローラとの間を通過する過程で端部接着部65Cが形成され、回転刃75HCとその受けローラとの間を通過することで端部接着部65Cの部分で切断される。
【0044】
なお、回転刃75HCは、加圧ローラ75HPの前方に配置されていてもよい。回転刃75HCは、外周部分に鋭利な刃を有する円板状のローラであるため、加圧ローラ75HPほどの加圧力は発揮不能であるが、外周部分の鋭利な刃が切断前重畳体65を少なからず加圧する力を発揮するため、加圧ローラ75HPによる加圧前の仮接着程度の効果を発揮可能である。
【0045】
<SAPシートを用いた吸収性物品>
上記のSAPシート6を利用した吸収性物品の一例として、図11図13に開示のテープ型使い捨ておむつについて説明する。図11は、テープ型使い捨ておむつ(以下、単に「おむつ」という)1の斜視図である。おむつ1は、着用状態において着用者の陰部を覆う股下領域1Bと、股下領域1Bの前側に位置する前身頃領域1Fと、股下領域1Bの後ろ側に位置する後身頃領域1Rとを有する。後身頃領域1Rの左右両側の縁には、前身頃領域1Fの非着用者側の面に設けられたフロントパッチ2Fへ貼着可能なテープ2L、2Rが設けられている。よって、おむつ1は、前身頃領域1Fが着用者の腹側に配置され、後身頃領域1Rが着用者の背側に配置された状態でテープ2L、2Rがフロントパッチ2Fに貼着されると、着用者の腹囲と大腿部を取り巻く状態で着用者の身体に固定される。
【0046】
おむつ1には、液体を吸収して保持することができる吸収体が主に股下領域1B付近を中心に配置されている。当該吸収体に上記のSAPシート6が含まれる。また、おむつ1には、おむつ1と着用者の肌との間に液体の流出経路となる隙間が形成されるのを抑制するべく、着用者の大腿部を取り巻く部位に立体ギャザー3BL、3BRが設けられ、着用者の腹囲を取り巻く部位にウェストギャザー3Rが設けられている。立体ギャザー3BL、3BRとウェストギャザー3Rは、糸ゴムの弾性力で着用者の肌に密着する。よって、着用者の陰部から排出される液体は、おむつ1から殆ど漏出することなくおむつ1の吸収体に吸収される。
【0047】
図12は、おむつ1の分解斜視図である。また、図13は、股下領域1Bをその幅方向に切断した場合の断面図である。おむつ1は、装着状態において外表面を形成するカバーシート4を有する。カバーシート4は、長辺に相当する部位に括れ4KL,4KRを設けた略長方形の外観を有するシート状の部材である。括れ4KL,4KRは、着用者の大腿部が位置する箇所に設けられる。カバーシート4は、バックシート5の補強や手触りの向上のために設けられ、例えば、排泄物の漏れを抑制するために、液不透過性の熱可塑性樹脂からなる不織布をその材料として用いることができる。液不透過性の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等が例示できる。
【0048】
そして、おむつ1は、カバーシート4の着用者側の面において順に積層されるバックシート5、吸収体6C、トップシート7を有する。バックシート5、吸収体6C、トップシート7は、何れも長方形の外観を有するシート状の部材であり、長手方向がカバーシート4の長手方向と一致する状態でカバーシート4に順に積層されている。バックシート5は、カバーシート4と同様に、排泄物の漏れを抑制するために液不透過性の熱可塑性樹脂を材料として形成されたシートである。また、トップシート7は、吸収体6Cの吸水面を被覆するように着用者の肌面側に配置される、シート状の部材である。このトップシート7は、その一部又は全部において液透過性を有する。そのため、おむつ1が装着された状態において、着用者から排泄された液体は、着用者の肌に接触し得るトップシート7を通って吸収体6Cに進入し、そこで吸収される。例えば、織布、不織布、多孔質フィルムがトップシート7の材料として材用できる。さらにトップシート7も親水性を有していてもよい。
【0049】
そして、バックシート5と吸収体6Cとトップシート7が積層されているカバーシート4で着用者の陰部を覆うと、バックシート5と吸収体6Cとトップシート7の各長手方向の両端部は、着用者の腹側と背側に位置する状態となる。すなわち、着用者の陰部は、着用者の腹側から背側まで吸収体6Cに覆われる状態となる。したがって、着用者が腹を下へ向けた姿勢と背を下へ向けた姿勢の何れの姿勢で液体を体外へ排出しても、排出された液体はトップシート7を介して吸収体6Cに触れることになる。
【0050】
また、おむつ1は、上述した立体ギャザー3BL,3BRを形成するための細長い帯状のサイドシート8L,8Rを有する。サイドシート8L,8Rは、トップシート7の長辺の部分に設けられる。サイドシート8L,8Rには、おむつ1の立体ギャザー3BL,3BRと同様、着用者の大腿部が位置する箇所に括れ8KL,8KRが設けられる。そして、括れ8KL,8KRには糸ゴム8EL,8ERが長手方向に沿って編み込まれている。よって、括れ8KL,8KRは、おむつ1が着用状態の形態、すなわち、おむつ1が側面視U字状の形態になると、糸ゴム8EL,8ERの収縮力で長手方向に引き寄せられてトップシート7から立ち上がり、液体の流出を防ぐ立体ギャザーとなる。
【0051】
また、上述したウェストギャザー3Rを形成するための糸ゴム9ERは、吸収体6Cの端部よりも更に背側の位置において、バックシート5とトップシート7の間に設けられる。糸ゴム9ERは、伸縮方向となる長手方向がおむつ1の左右方向となる向きでバックシート5とトップシート7の間に設けられる。よって、糸ゴム9ERの左右両側に設けられるテープ2L,2Rが、着用者の腹側においてフロントパッチ2Fに貼着されると、糸ゴム9ERは、収縮力を発揮しておむつ1を着用者に密着させ、おむつ1と着用者の腹囲との間に隙間が形成されるのを防ぐ。なお、吸収体6Cの両側にも、おむつ1と着用者の腹囲との間に隙間が形成されるのを防ぐ糸ゴム9SL,9SRが設けられている。
【0052】
また、おむつ1は、吸収体6Cの長辺部分である左右両側の各縁において、少なくとも一部が吸収体6Cに重なる状態でトップシート7とバックシート5との間に配されている
SAPシート6L,6Rを有する。
【0053】
吸収体6Cは、パルプ繊維、レーヨン繊維、またはコットン繊維のようなセルロース系繊維の短繊維や、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエチレンテレフタレート等の合成繊維に親水化処理を施した短繊維の隙間に、水を吸収し保持することのできる架橋構造を持つ親水性ポリマーであるSAP等の粒状の吸収性樹脂を保持させた構造を有する。これに対し、SAPシート6L,6Rは、SAPの粒子を繊維の隙間に点在配置した構造ではなく、SAPの粒子群を不織布等のシート状基材の表面に固定させた構造、或いは、SAPの粒子群を液透過性の繊維状材料の袋に内包した構造を有する。
【0054】
このように構成されるおむつ1において、着用者から液体が排泄されると、排出された液体はトップシート7を介して吸収体6CとSAPシート6L,6Rに接触する。そして、上記の通り、SAPシート6L,6Rにおいては、SAP粒子が繊維状材料に内包されている。その結果、吸収体6CとSAPシート6L,6Rは、着用者から排出された液体を吸収し、液体がおむつ1から外部に漏れ出すのを好適に抑制する。
【0055】
なお、上記実施形態では、テープ型の使い捨ておむつが例示されていたが、その他の形態の吸収性物品においてもSAPシート6L,6Rを吸収体6Cの左右両側の縁へ重ねた形態を適用可能である。SAPシート6L,6Rを吸収体6Cの左右両側の縁に重ねた形態を適用可能な吸収性物品としては、例えば、パンツ型の使い捨ておむつ、尿パッド、軽失禁パッドといったギャザー付きの各種形態の吸収性物品や、ギャザーの無いフラットな吸収性物品を挙げることができる。
【0056】
また、上記実施形態では、吸収体6Cの左右両側にSAPシート6L,6Rを配していたが、吸収体6CをSAPシート6に代えてもよい。この場合、SAPシート6L,6Rは省略されてもよい。
【0057】
上記SAPシート6L,6Rは、例えば、以下のような方法で吸収体6Cの左右両側の縁に重ねることができる。
【0058】
図14は、おむつ1の製造方法の一例を示した図である。本製造方法において、SAPシート6L,6Rは、上述のS101からS103の製造方法で製造される。すなわち、上述したS101において第1シート61の上にSAP粒子群が配置され、次に、S102において第2シート62が更に配置されることにより、切断前重畳体65が用意される。次に、S103では、図14にも示されるように、第1ローラ75と第2ローラ76により切断前重畳体65の切断が行われ、図1に示したような端部接着部63A、63CがSAP層63内に形成されたSAPシート6(6L,6R)が製造される。
【0059】
このようにして製造されたSAPシート6L,6Rが、図14に示されるように、吸収体原料G6Cから切り出された吸収体6Cと共にカバーシート4上のバックシート5へ載せられ、トップシート7に覆われる。その後、テープ2L,2Rやフロントパッチ2Fの取付等の後工程が行われ、おむつ1が完成する。
【0060】
本製造方法であれば、第1シート61と第2シート62から切断前重畳体65を連続的に形成し、この切断前重畳体65からSAPシート6L,SAPシート6Rを第1ローラ75及び第2ローラ76で連続的に形成することができるため、連続生産に好適である。
【符号の説明】
【0061】
1 :おむつ(テープ型使い捨ておむつ)
4 :カバーシート
5 :バックシート
6 :SAPシート
7 :トップシート
60 :封止空間
61 :第1シート
62 :第2シート
63 :SAP層
63A :端部接着部
63C :端部接着部
64 :端部接着部
65 :切断前重畳体
75 :第1ローラ
75C :切断部
75L :第1加圧表面部
75R :第2加圧表面部
75S :回転軸
76 :第2ローラ
76C :切断部
76L :第1加圧表面部
76R :第2加圧表面部
76H :非加圧表面部
76S :回転軸
77 :受けローラ
78 :受けローラ
75HC:回転刃
75HP:加圧ローラ
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14