(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】液晶表示デバイス及び液晶表示デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1333 20060101AFI20220712BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20220712BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
G02F1/1333
G09F9/00 338
G09F9/30 309
G09F9/30 330
G09F9/30 338
G09F9/30 349C
(21)【出願番号】P 2018038466
(22)【出願日】2018-03-05
【審査請求日】2020-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】文珠寺 弘明
【審査官】井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-308822(JP,A)
【文献】特開2007-256416(JP,A)
【文献】米国特許第05808354(US,A)
【文献】特開2004-258621(JP,A)
【文献】特開2002-296568(JP,A)
【文献】米国特許第06356334(US,B1)
【文献】国際公開第2008/114396(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0139446(US,A1)
【文献】特開2005-196027(JP,A)
【文献】特開2005-134567(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/133,1/1333,1/1334
G02F 1/1339-1/1341,1/1347
G09F 9/00,9/30-9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端子と、複数の画素電極が配置され、かつ、外部から照射される照明光を前記画素電極ごとに光変調する表示画素部とを有する液晶表示素子と、
第2の端子を有する配線基板と、
前記第1の端子と第1のボンディングにより接合され、前記第2の端子と第2のボンディングにより接合されて、前記液晶表示素子と前記配線基板とを接続するボンディングワイヤと、
前記ボンディングワイヤにおける前記第2の端子との接合部上に形成されたボンディング補強部材と、
前記液晶表示素子に対して前記照明光が照射される側に配置された遮光マスクと、
ヒートシンクと、
を備え、
前記液晶表示素子は、
前記第1の端子、及び、前記表示画素部を有する第1の基板と、
前記第1の基板に対して前記照明光が照射される側に所定の間隙を有して配置され、前記複数の画素電極と対向する対向電極を有する第2の基板と、
前記表示画素部の外周部に沿って形成され、前記第1の基板と前記第2の基板とを固定するシール材と、
前記所定の間隙に充填され、前記シール材により封止された液晶と、
を有し、
前記遮光マスクは、
前記表示画素部に対応する光透過領域を有し、
前記ボンディングワイヤは、アーチ形状を有し、かつ、前記ボンディングワイヤの頂部が前記第2の基板の上面よりも低くなるように形成されており、
前記第1の基板と前記配線基板とは位置合わせされて、第1の接着部材によって互いに固定されており、
前記第1の基板は熱伝導性部材を介して前記ヒートシンク上に配置され、
前記第2の基板は前記ヒートシンクに位置合わせされて、第2の接着部材によって前記ヒートシンクに固定されており、
前記配線基板は、前記配線基板が前記第1の接着部材によって前記第1の基板に固定されている第1の位置とは離れた第2の位置で、第3の接着部材によって前記ヒートシンクと固定され、
前記遮光マスクは前記液晶表示素子及び前記ヒートシンクに位置合わせされて、第
4の接着部材によって前記ヒートシンクに固定され
、
前記配線基板における前記第1の位置と前記第2の位置との間は、前記ヒートシンクに固定されておらず、前記ボンディングワイヤは、前記第1の位置と前記第2の位置との間に位置している
液晶表示デバイス。
【請求項2】
前記ボンディング補強部材は、前記ボンディングワイヤにおける前記接合部との境界部を覆って前記接合部上に形成されている請求項1に記載の液晶表示デバイス。
【請求項3】
第1の端子と複数の画素電極が配置され、かつ、外部から照射される照明光を前記画素電極ごとに光変調する表示画素部とを有する第1の基板と、前記第1の基板に対して前記照明光が照射される側に所定の間隙を有して配置され、前記複数の画素電極と対向する対向電極を有する第2の基板と、前記表示画素部の外周部に沿って形成され、前記第1の基板と前記第2の基板とを固定するシール材と、前記所定の間隙に充填され、前記シール材により封止された液晶とを備える液晶表示素子と、第2の端子を有する配線基板とを位置合わせして、
前記第1の基板と前記配線基板とを第1の接着部材によって互いに固定し、
ボンディングワイヤを第1のボンディングにより前記第1の端子に接合し、
前記ボンディングワイヤがアーチ形状を有し、かつ、前記ボンディングワイヤの頂部が前記第2の基板の上面よりも低くなるように、前記ボンディングワイヤを第2のボンディングにより前記第2の端子に接合し、
前記ボンディングワイヤにおける前記第2の端子との接合部上にボンディング補強部材を形成し、
前記第1の基板を熱伝導性部材を介してヒートシンク上に配置し、
前記第2の基板を前記ヒートシンクに位置合わせして、第2の接着部材によって前記ヒートシンクに固定し、
前記配線基板を、前記配線基板が前記第1の接着部材によって前記第1の基板に固定されている第1の位置とは離れた第2の位置で、第3の接着部材によって前記ヒートシンクに固定し、
前記表示画素部に対応する光透過領域を有する遮光マスクを、前記光透過領域が前記表示画素部に対して前記照明光が照射される側に位置するように、前記液晶表示素子に対して前記照明光が照射される側に配置し、
前記遮光マスクを前記液晶表示素子及び前記ヒートシンクに位置合わせして、第
4の接着部材によって前記ヒートシンクに固定
し、
前記配線基板における前記第1の位置と前記第2の位置との間を前記ヒートシンクに固定しない状態として、前記ボンディングワイヤを、前記第1の位置と前記第2の位置との間に位置させる
液晶表示デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示デバイス及び液晶表示デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示デバイスは、プロジェクタまたはヘッドアップディスプレイ等の表示装置に用いられている。液晶表示デバイスは、照射された照明光を画素ごとに光変調して画像光を生成する。表示装置は、液晶表示デバイスにより生成された画像光をスクリーン等に投射することにより、画像を表示する。特許文献1には液晶表示デバイスの一例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液晶表示素子は、複数の画素が配置されている表示画素部を有する。液晶表示素子は、表示画素部に照射された照明光を画素ごとに光変調して画像光を生成する。液晶表示素子の上方には遮光マスクが配置されている。遮光マスクは、表示画素部以外の領域に照射される照明光を遮光する。表示画素部以外の領域を精度よく遮光するためには、遮光マスクを液晶表示素子に接近させて配置することが望ましい。
【0005】
一般的に、液晶表示デバイスは、液晶表示素子とフレキシブル配線基板とがボンディングワイヤにより接続されている。近年、フレキシブル配線基板は、液晶表示デバイスとボンディングワイヤを介して接続される端子の数が増加する傾向にある。そのため、フレキシブル配線基板の端子を多段化して配置する必要がある。
【0006】
液晶表示素子の端子とフレキシブル配線基板の端子とをボンディングワイヤを介して接続する場合、液晶表示素子の端子とフレキシブル配線基板の端子との距離に応じて、ボンディングワイヤの高さを調整して、各端子をワイヤボンディングすることが望ましい。
【0007】
具体的には、液晶表示素子の端子とフレキシブル配線基板の端子との距離が長くなるほど、ボンディングワイヤの頂部を高くすることが望ましい。しかしながら、ボンディングワイヤの頂部を高くすると、ボンディングワイヤと遮光マスクとが接触する。ボンディングワイヤと遮光マスクとが接触すると、ボンディングワイヤ同士が接触し、液晶表示デバイスの性能または信頼性を悪化させる要因となる。
【0008】
遮光マスクとボンディングワイヤとが接触しないように、ボンディングワイヤの高さを制限すると、液晶表示素子の端子とフレキシブル配線基板の端子との距離が長くなるほど、ボンディングワイヤのネック部分で断線しやすくなる。
【0009】
本発明は、ボンディングワイヤの高さが制限されたとしてもボンディングワイヤの断線を抑制できる液晶表示デバイス及び液晶表示デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、第1の端子と、複数の画素電極が配置され、かつ、外部から照射される照明光を前記画素電極ごとに光変調する表示画素部とを有する液晶表示素子と、第2の端子を有する配線基板と、前記第1の端子と第1のボンディングにより接合され、前記第2の端子と第2のボンディングにより接合されて、前記液晶表示素子と前記配線基板とを接続するボンディングワイヤと、前記ボンディングワイヤにおける前記第2の端子との接合部上に形成されたボンディング補強部材と、前記液晶表示素子に対して前記照明光が照射される側に配置された遮光マスクと、ヒートシンクとを備え、前記液晶表示素子は、前記第1の端子、及び、前記表示画素部を有する第1の基板と、前記第1の基板に対して前記照明光が照射される側に所定の間隙を有して配置され、前記複数の画素電極と対向する対向電極を有する第2の基板と、前記表示画素部の外周部に沿って形成され、前記第1の基板と前記第2の基板とを固定するシール材と、前記所定の間隙に充填され、前記シール材により封止された液晶とを有し、前記遮光マスクは、前記表示画素部に対応する光透過領域を有し、前記ボンディングワイヤは、アーチ形状を有し、かつ、前記ボンディングワイヤの頂部が前記第2の基板の上面よりも低くなるように形成されており、前記第1の基板と前記配線基板とは位置合わせされて、第1の接着部材によって互いに固定されており、前記第1の基板は熱伝導性部材を介して前記ヒートシンク上に配置され、前記第2の基板は前記ヒートシンクに位置合わせされて、第2の接着部材によって前記ヒートシンクに固定されており、前記配線基板は、前記配線基板が前記第1の接着部材によって前記第1の基板に固定されている第1の位置とは離れた第2の位置で、第3の接着部材によって前記ヒートシンクと固定され、前記遮光マスクは前記液晶表示素子及び前記ヒートシンクに位置合わせされて、第4の接着部材によって前記ヒートシンクに固定され、前記配線基板における前記第1の位置と前記第2の位置との間は、前記ヒートシンクに固定されておらず、前記ボンディングワイヤは、前記第1の位置と前記第2の位置との間に位置している液晶表示デバイスを提供する。
【0011】
また、本発明は、第1の端子と複数の画素電極が配置され、かつ、外部から照射される照明光を前記画素電極ごとに光変調する表示画素部とを有する第1の基板と、前記第1の基板に対して前記照明光が照射される側に所定の間隙を有して配置され、前記複数の画素電極と対向する対向電極を有する第2の基板と、前記表示画素部の外周部に沿って形成され、前記第1の基板と前記第2の基板とを固定するシール材と、前記所定の間隙に充填され、前記シール材により封止された液晶とを備える液晶表示素子と、第2の端子を有する配線基板とを位置合わせして、前記第1の基板と前記配線基板とを第1の接着部材によって互いに固定し、ボンディングワイヤを第1のボンディングにより前記第1の端子に接合し、前記ボンディングワイヤがアーチ形状を有し、かつ、前記ボンディングワイヤの頂部が前記第2の基板の上面よりも低くなるように、前記ボンディングワイヤを第2のボンディングにより前記第2の端子に接合し、前記ボンディングワイヤにおける前記第2の端子との接合部上にボンディング補強部材を形成し、前記第1の基板を熱伝導性部材を介してヒートシンク上に配置し、前記第2の基板を前記ヒートシンクに位置合わせして、第2の接着部材によって前記ヒートシンクに固定し、前記配線基板を、前記配線基板が前記第1の接着部材によって前記第1の基板に固定されている第1の位置とは離れた第2の位置で、第3の接着部材によって前記ヒートシンクに固定し、前記表示画素部に対応する光透過領域を有する遮光マスクを、前記光透過領域が前記表示画素部に対して前記照明光が照射される側に位置するように、前記液晶表示素子に対して前記照明光が照射される側に配置し、前記遮光マスクを前記液晶表示素子及び前記ヒートシンクに位置合わせして、第4の接着部材によって前記ヒートシンクに固定し、前記配線基板における前記第1の位置と前記第2の位置との間を前記ヒートシンクに固定しない状態として、前記ボンディングワイヤを、前記第1の位置と前記第2の位置との間に位置させる液晶表示デバイスの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の液晶表示デバイス及び液晶表示デバイスの製造方法によれば、ボンディングワイヤの高さが制限されたとしてもボンディングワイヤの断線を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態の液晶表示デバイスを示す断面図である。
【
図2】液晶表示素子の端子と配線基板の端子とを示す平面図である。
【
図3】液晶表示素子の端子と配線基板の端子との距離とボンディングワイヤの高さとの関係を示す図である。
【
図4】ボンディングワイヤの高さが制限された状態を示す図である。
【
図5】液晶表示デバイスの製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図6A】液晶表示デバイスの製造方法の一過程を示す図である。
【
図6B】液晶表示デバイスの製造方法の一過程を示す図である。
【
図7A】液晶表示デバイスの製造方法の一過程を示す図である。
【
図7B】液晶表示デバイスの製造方法の一過程を示す図である。
【
図7C】液晶表示デバイスの製造方法の一過程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1及び
図2を用いて、一実施形態の液晶表示デバイスを説明する。
図1は一実施形態の液晶表示デバイスの構成例を示している。
図2は、液晶表示素子の端子と配線基板の端子とを示している。
図1に示すように、液晶表示デバイス1は、液晶表示素子100と、配線基板10と、ヒートシンク20と、遮光マスク30とを備える。配線基板10としてフレキシブル配線基板を用いてもよい。ヒートシンク20の材料としてアルミニウムまたはアルミニウム合金を用いてもよい。
【0015】
液晶表示素子100は、例えば反射型の液晶表示素子である。液晶表示素子100は、駆動基板110(第1の基板)と、透明基板120(第2の基板)と、液晶130と、シール材140とを有する。
図1または
図2に示すように、駆動基板110は表示画素部111と複数の端子150(第1の端子)とを有する。表示画素部111には複数の画素電極112(第1の電極)が配置されている。駆動基板110としてシリコン基板を用いてもよい。画素電極112は光反射性を有する。画素電極112の材料としてアルミニウムまたはアルミニウム合金を用いてもよい。
【0016】
透明基板120は駆動基板110の上方に配置されている。透明基板120は対向電極121(第2の電極)を有する。対向電極121は、複数の画素電極112と対向するように、表示画素部111上に配置されている。複数の端子150は駆動基板110の表示画素部111、及び、対向電極121と接続する。透明基板120、及び、対向電極121は光透過性を有する。即ち、対向電極121は透明電極である。透明基板120としてガラス板を用いてもよい。対向電極121の材料としてITO(酸化インジウム錫)を用いてもよい。
【0017】
駆動基板110と透明基板120とは、所定の間隙を有してシール材140により固定されている。シール材140は表示画素部111の外周部に沿って環状に形成されている。液晶130は、駆動基板110と透明基板120との間隙に充填され、シール材140により封止されている。複数の端子150は、駆動基板110において透明基板120よりも外側の領域である外周部に形成されている。
【0018】
液晶表示素子100の駆動基板110と配線基板10とは、位置合わせされ、接着部材40により固定されている。接着部材40としてシート状の接着部材を用いてもよい。配線基板10は、複数の端子50(第2の端子)を有する。
図2は、配線基板10の端子50を多段化して配置する一例として、端子50が4段に配置されている場合を示している。
【0019】
各端子50を区別するため、液晶表示素子100に最も近い1段目の端子50を端子51とし、次に近い2段目の端子50を端子52とし、次に近い3段目の端子50を端子53とし、最も遠い4段目の端子50を端子54とする。例えば、端子51は接地端子であり、端子52は電源端子であり、端子53及び54は信号端子である。
図2に示す符号CWは配線基板10に形成され、端子51~54と接続する配線を簡略化して示している。
図2に示す端子51~54は、
図1に示す端子51~54に相当する。
【0020】
液晶表示素子100の駆動基板110と配線基板10とは複数のボンディングワイヤBWによって接続されている。具体的には、駆動基板110の複数の端子150と配線基板10の端子51~54とが、複数のボンディングワイヤBWによって接続されている。ボンディングワイヤBWの材料として金を用いてもよい。
図1では、駆動基板110の端子150と配線基板10の端子54とを接続する1本のボンディングワイヤBWのみを示している。
【0021】
ボンディングワイヤBWを形成するためのワイヤボンディングにおいて、駆動基板110の複数の端子150は、第1のボンディングを行うためのボンディングパッドとして機能する。配線基板10の端子51~54は、第2のボンディングを行うためのボンディングパッドとして機能する。
【0022】
ボンディングワイヤBWは、第1のボンディング(ボールボンディング)により駆動基板110の端子150に接合され、第2のボンディング(ウェッジボンディング)により配線基板10の端子51~54に接合される。
【0023】
ボンディングワイヤBWはアーチ形状を有する。ボンディングワイヤBWは、ボンディングワイヤBWの頂部BWTが透明基板120の上面120aよりも低くなるように形成されている。実際には、シール材140、及び、接着部材43の厚さは、透明基板120の厚さTN120と比較して無視できるほど薄い。
【0024】
従って、ボンディングワイヤBWは、ボンディングワイヤBWの高さBWHが透明基板120の厚さTN120よりも小さくなる(BWH<TN120)ように形成してもよい。ボンディングワイヤBWの高さBWHとは、駆動基板110の上面110aからボンディングワイヤBWの頂部BWTまでの高さである。
【0025】
封止樹脂41は、複数のボンディングワイヤBWと複数の端子50(51~54)及び150とを覆うように、駆動基板110上、及び、配線基板10上に形成されている。封止樹脂41は、外部からの機械的ストレスから複数のボンディングワイヤBWを保護し、かつ、複数のボンディングワイヤBWに対する耐湿性を向上させる。また、封止樹脂41は、駆動基板110と配線基板10との相対位置を固定する。
【0026】
封止樹脂41として熱硬化性樹脂を用いる場合、封止樹脂41を熱硬化させるときに封止樹脂41が硬化収縮する。封止樹脂41の硬化収縮によりボンディングワイヤBWには引っ張り応力が発生し、ボンディングワイヤBWを断線させる要因となる。そのため、封止樹脂41として、熱硬化性樹脂よりも硬化収縮が少ない紫外線硬化性樹脂を用いることが好ましい。
【0027】
液晶表示素子100の駆動基板110は、ゲル状の熱伝導性部材42を介して、ヒートシンク20上に配置されている。熱伝導性部材42は、外部からの機械的ストレスから液晶表示素子100を保護するクッション材として機能する。液晶表示素子100の透明基板120は、ヒートシンク20と位置合わせされ、接着部材43によりヒートシンク20上に固定されている。接着部材43として紫外線硬化性樹脂を用いてもよい。
【0028】
配線基板10は、接着部材44によりヒートシンク20上に固定されている。接着部材44は、外部からの機械的ストレスから配線基板10を保護し、配線基板10の自重等による機械的ストレスから液晶表示素子100を保護する。接着部材44として光硬化(例えば紫外線硬化)と熱硬化との併用が可能な樹脂を用いてもよい。
【0029】
遮光マスク30は、液晶表示素子100の上方に配置されている。遮光マスク30は、液晶表示素子100の表示画素部111に対応し、かつ、光を透過する光透過領域31を有する。遮光マスク30は、光透過領域31に替えて開口部を有する構成としてもよい。遮光マスク30は、光透過領域31と表示画素部111とが対応するようにヒートシンク20、及び、液晶表示素子100と位置合わせされ、接着部材45によりヒートシンク20上に固定されている。
【0030】
遮光マスク30は、表示画素部111以外の領域に入射する光を遮断する。表示画素部111以外の領域を精度よく遮光するためには、遮光マスク30を液晶表示素子100に接近させて配置することが望ましい。接着部材45として紫外線硬化性樹脂を用いてもよい。
【0031】
外部から画像データが配線基板10を介して液晶表示素子100へ入力されることにより、画像データに基づく駆動電圧が画素電極112ごとに印加される。外部から照明光ILが遮光マスク30の光透過領域31を透過し、さらに液晶表示素子100の透明基板120を透過して表示画素部111に照射される。照明光ILは液晶表示素子100により画素電極112ごとに光変調され、画像光GLが生成される。
【0032】
従って、遮光マスク30は、光透過領域31が表示画素部111に対して照明光ILが照射される側に位置するように、液晶表示素子100に対して照明光ILが照射される側に配置されている。透明基板120は、駆動基板110に対して照明光ILが照射される側に所定の間隙を有して配置されている。
【0033】
画像光GLは、複数の画素電極112により反射され、遮光マスク30の光透過領域31を透過して外部へ射出される。画像光GLが投射レンズを介してスクリーン等へ投射されることにより、スクリーン等に画像が表示される。
【0034】
図3は、液晶表示素子100の端子150と配線基板10の端子51~54との距離とボンディングワイヤBWの高さとの関係を示している。
図3では、ボンディングワイヤBW、及び、ボンディングワイヤBWにおける端子150及び50との接合部を簡略化して示している。
【0035】
図3に示す各符号について説明する。符号L1、L2、L3、及び、L4(L1<L2<L3<L4)は、液晶表示素子100の端子150と配線基板10の端子50(51、52、53、及び、54)との距離Lを区別して示している。符号BW1、BW2、BW3、及び、BW4は、ボンディングワイヤBWを距離L1、L2、L3、及び、L4に応じて区別して示している。
【0036】
符号BWH1、BWH2、BWH3、及び、BWH4は、ボンディングワイヤBW1、BW2、BW3、及び、BW4の高さBWH、具体的にはボンディングワイヤBW1、BW2、BW3、及び、BW4の頂部BWT1、BWT2、BWT3、及び、BWT4の高さBWHを示している。
【0037】
液晶表示素子100の端子150と配線基板10の端子50との距離Lが長くなるに従って、ボンディングワイヤBWのアーチ形状の半径を大きくすることが望ましい。これにより、ボンディングワイヤBW1、BW2、BW3、及び、BW4に作用する重力GRが、ボンディングワイヤBW1、BW2、BW3、及び、BW4における配線基板10の端子51、52、53、及び、54との接合部JC1、JC2、JC3、及び、JC4に対して垂直方向から加わる。
【0038】
そのため、接合部JC1、JC2、JC3、及び、JC4に作用する応力の影響を抑制することができる。よって、液晶表示素子100の端子150と配線基板10の端子50との距離Lが長くなるに従って、ボンディングワイヤBWの高さBWHは高くなる(BWH1<BWH2<BWH3<BWH4)。
【0039】
しかしながら、液晶表示デバイス1では、ボンディングワイヤBWの高さBWHを高くすると、ボンディングワイヤBWと遮光マスク30とが接触する。これにより、ボンディングワイヤBW同士が接触し、液晶表示デバイス1の性能または信頼性を悪化させる要因となる。
【0040】
図4は、ボンディングワイヤBW(BW4)の高さBWH(BWH4)が制限された状態を示している。
図4に示すように、ボンディングワイヤBWの高さBWHが制限された状態では、ボンディングワイヤBWに弛みが生じる。弛んだボンディングワイヤBWに作用する重力GRにより、ボンディングワイヤBW(BW4)における端子50との接合部JC(JC4)には水平方向の引っ張り応力TSが作用する。
【0041】
ボンディングワイヤBWの高さBWHが制限された状態では、液晶表示素子100の端子150と配線基板10の端子50との距離Lが長くなるに従って、ボンディングワイヤBWの弛みによる引っ張り応力TSが増大する。
【0042】
そのため、上記の距離Lが長くなるに従って、ボンディングワイヤBWが端子50との接合部JCで断線しやすくなる。なお、
図4では、説明をわかりやすくするために、ボンディングワイヤBW1、BW2、BW3、及び、BW4のうち、最も大きい引っ張り応力TSが作用するボンディングワイヤBW4のみを示している。
【0043】
そこで、
図1に示すように、ボンディングワイヤBWにおける端子50との接合部JC上には、ボンディング補強部材60が形成されている。ボンディング補強部材60は、ボンディングワイヤBWが断線しやすい接合部JCのネック部NCを覆って接合部JC上に形成されている。ネック部NCはボンディングワイヤBWにおける接合部JCとの境界部に相当する。
【0044】
図1では、ボンディングワイヤBW1、BW2、BW3、及び、BW4のうち、最も大きい引っ張り応力TSが作用するボンディングワイヤBW4の接合部JC4のネック部NC4にボンディング補強部材60が形成されている状態を示している。
【0045】
ボンディング補強部材60は、ボンディングワイヤBW1、BW2、BW3、及び、BW4のうち、最も大きい引っ張り応力TSが作用するボンディングワイヤBW4の接合部JC4のネック部NCのみに形成されていてもよいし、ボンディングワイヤBW4及びBW3の接合部JC4及びJC3のネック部NCのみに形成されていてもよい。
【0046】
また、ボンディング補強部材60は、ボンディングワイヤBW4、BW3、及び、BW2の接合部JC4、JC3、及び、JC2のネック部NCのみに形成されていてもよいし、全てのボンディングワイヤBW(BW1~BW4)の接合部JC(JC1~JC4)の各ネック部NCに形成されていてもよい。
【0047】
図5に示すフローチャート、
図6A、
図6B、
図7A、
図7B、及び、
図7Cを用いて、液晶表示デバイス1の製造方法の一例を説明する。
図6A、
図6B、
図7A、
図7B、及び、
図7Cは、液晶表示デバイス1の製造方法の各過程を示している。オペレータは、
図5に示すフローチャートのステップS1にて、液晶表示素子100の駆動基板110と配線基板10とを位置合わせし、接着部材40により固定する。
【0048】
オペレータは、ステップS2にて、液晶表示素子100の駆動基板110と配線基板10とを接続するボンディングワイヤBWを、ワイヤボンディングにより形成する。具体的には、オペレータは、駆動基板110の複数の端子150と配線基板10の複数の端子50(51,52,53,及び、54)とを接続する複数のボンディングワイヤBWを形成する。
【0049】
オペレータは、駆動基板110の端子150に第1のボンディング(ボールボンディング)を行う。オペレータは、ボンディングワイヤBWの頂部BWTが透明基板120の上面120aよりも低くなるように、例えばボンディングワイヤBWの高さBWHが透明基板120の厚さTN120よりも小さくなるように、配線基板10の端子50(51,52,53,及び、54)に第2のボンディング(ウェッジボンディング)を行う。
【0050】
図6Aは、ボンディングワイヤBWが配線基板10の端子50に第2のボンディングされている状態を示している。
図6Aに示す符号BHはワイヤボンディングするためのボンディングヘッドである。ボンディングヘッドBHは例えばキャピラリである。
図6B、
図7A、
図7B、及び、
図7Cは
図6Aに対応する。オペレータは、ボンディングヘッドBHを操作して、第2のボンディングを行う。ボンディングワイヤBWは、ボンディングヘッドBHによって端子50に圧着されることにより、端子50と接合する。
【0051】
図6Bに示すように、オペレータは、ボンディングヘッドBHを端子50の上方に移動させる。駆動基板110の端子150と配線基板10の端子50とを接続するボンディングワイヤBWが形成される。端子50の上方に移動したボンディングヘッドBHの先端から露出するボンディングワイヤBWの先端部を溶融させることにより、球状のワイヤ溶融固化物WMが形成される。
【0052】
ボンディングワイヤBWにおける端子50との接合部JCは、ボンディングヘッドBHがボンディングワイヤBWを端子50に圧着することにより形成される。そのため、ボンディングワイヤBWは接合部JCで薄くなっている。
【0053】
図4に示すように、ボンディングワイヤBWの高さBWHが制限された状態では、ボンディングワイヤBWには、ボンディングワイヤBWの弛みに起因する引っ張り応力TSが作用する。そのため、ボンディングワイヤBWは、接合部JCのネック部NCで断線しやすい形状となる。
【0054】
オペレータは、ステップS3にて、ボンディング補強部材60を接合部JCのネック部NC上に形成する。オペレータは、
図7Aに示すように、ワイヤ溶融固化物WMが接合部JCのネック部NCの上方に位置するように、ボンディングヘッドBHを所定の距離Laだけ端子150に接近する方向に移動させる。所定の距離Laを50μm~100μmの範囲内に設定することが好ましい。
【0055】
さらに、オペレータは、
図7Bに示すように、ボンディングヘッドBHがネック部NCの上方に位置した状態で、端子50に対して第1のボンディング(ボールボンディング)と第2のボンディング(ウェッジボンディング)とを連続して行う。
【0056】
これにより、ボンディングヘッドBHは、ワイヤ溶融固化物WMを、ネック部NCを覆うように端子50に圧着させる。なお、第1のボンディングを行った後に、ボンディングヘッドBHを所定の距離Lbだけ移動させ、端子50に対して第2のボンディングを行ってもよい。
【0057】
図7Cに示すように、オペレータは、ボンディングヘッドBHを端子50の上方に移動させる。端子50上に圧着されたワイヤ溶融固化物WMは、ボンディング補強部材60として端子50上に形成される。ボンディング補強部材60は、断線しやすいネック部NCを覆って端子50上に形成されているため、ボンディングワイヤBWのネック部NCを含む接合部JCの強度を向上させることができる。
【0058】
オペレータは、駆動基板110の複数の端子150と配線基板10の端子50(51~54)とを複数のボンディングワイヤBWによりそれぞれ接続する。オペレータは、複数のボンディングワイヤBWのネック部NCをそれぞれ覆うように、各端子50上にボンディング補強部材60を形成する。
【0059】
オペレータは、ボンディングワイヤBWとボンディング補強部材60とをボンディングワイヤBWごとに交互に形成してもよいし、複数のボンディングワイヤBWを形成した後に各ボンディングワイヤBWに対してボンディング補強部材60をそれぞれ形成してもよい。オペレータがワイヤボンディング装置を操作することにより、ワイヤボンディング装置がステップS2及びS3を実行してもよい。
【0060】
オペレータは、ステップS4にて、封止樹脂41を、複数のボンディングワイヤBWと複数の端子50(51~54)及び150とを覆うように、駆動基板110上、及び、配線基板10上に形成する。
【0061】
オペレータは、ステップS5にて、液晶表示素子100の駆動基板110を、熱伝導性部材42を介してヒートシンク20上に配置する。さらに、オペレータは、液晶表示素子100をヒートシンク20に対して位置合わせし、液晶表示素子100の透明基板120を、接着部材43を用いてヒートシンク20上に固定する。これにより、液晶表示素子100は、ヒートシンク20に対して位置決めされ、かつ、接着部材43によりヒートシンク20上に固定される。
【0062】
オペレータは、ステップS6にて、配線基板10を、接着部材44を用いてヒートシンク20上に固定する。オペレータは、ステップS7にて、遮光マスク30を、光透過領域31が表示画素部111の上方に位置するように、液晶表示素子100の上方に配置する。さらに、オペレータは、遮光マスク30を、ヒートシンク20、及び、液晶表示素子100と位置合わせする。さらに、オペレータは、遮光マスク30を、接着部材45を用いてヒートシンク20上に固定する。液晶表示デバイス1は、上記のステップS1~S7により作製される。
【0063】
本実施形態の液晶表示デバイス1、及び、液晶表示デバイス1の製造方法では、ボンディング補強部材60を、ボンディングワイヤBWの切断されやすいネック部NCを覆って端子50上に形成する。従って、本実施形態の液晶表示デバイス1、及び、液晶表示デバイス1の製造方法によれば、遮光マスク30によりボンディングワイヤBWの高さが制限されたとしても、ボンディング補強部材60により、ボンディングワイヤBWのネック部NCを含む接合部JCの強度を向上させることができる。
【0064】
よって、本実施形態の液晶表示デバイス1、及び、液晶表示デバイス1の製造方法によれば、ボンディングワイヤBWの高さが制限されたとしてもボンディングワイヤBWの断線を抑制できる。
【0065】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 液晶表示デバイス
10 配線基板
30 遮光マスク
31 光透過領域
50,51,52,53,54 端子(第2の端子)
60 ボンディング補強部材
100 液晶表示素子
110 駆動基板(第1の基板)
111 表示画素部
112 画素電極
120 透明基板(第2の基板)
121 対向電極
130 液晶
140 シール材
150 端子(第1の端子)
BW ボンディングワイヤ