(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】綴じ装置、および綴じ方法
(51)【国際特許分類】
B42B 5/04 20060101AFI20220712BHJP
B42F 13/04 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
B42B5/04
B42F13/04 Z
(21)【出願番号】P 2018041132
(22)【出願日】2018-03-07
【審査請求日】2020-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡部 円
(72)【発明者】
【氏名】小林 文則
(72)【発明者】
【氏名】大江 睦人
(72)【発明者】
【氏名】水口 弘美
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-059084(JP,U)
【文献】特開2013-031977(JP,A)
【文献】特開2002-356082(JP,A)
【文献】米国特許第05074696(US,A)
【文献】実開昭52-025015(JP,U)
【文献】米国特許第03814654(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42B 5/00 - 5/12
B42F 1/00 - 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮可能な変形前弾性体を記録媒体の束に形成された貫通孔に挿通する挿通装置を備え、
前記変形前弾性体は、挿通後において前記記録媒体の前記束を挟み込む方向に弾性付勢力を発現するように前記貫通孔に挿通さ
れ、
前記変形前弾性体は、前記記録媒体の前記束の厚み方向に直交する第一方向において前記貫通孔の径よりも大きい長さを有しており、
前記挿通装置が前記厚み方向の一方に前記変形前弾性体を引張って変形後弾性体とし、前記変形後弾性体を前記貫通孔に挿通させた後に、前記記録媒体の前記束に対して前記厚み方向の前記一方の上流側における前記変形後弾性体を切断する切断部をさらに備える、綴じ装置。
【請求項2】
伸縮可能な変形前弾性体を記録媒体の束に形成された貫通孔に挿通する挿通装置を備え、
前記変形前弾性体は、挿通後において前記記録媒体の前記束を挟み込む方向に弾性付勢力を発現するように前記貫通孔に挿通さ
れ、
前記変形前弾性体は、前記記録媒体の前記束の厚み方向に直交する第一方向において前記貫通孔の径よりも大きい長さを有しており、
前記挿通装置が前記厚み方向の一方に前記変形前弾性体を引張って変形後弾性体とし、前記変形後弾性体を前記貫通孔に挿通させた後に、前記挿通装置が前記変形後弾性体の引張りを解除した状態で、前記記録媒体の前記束に対して前記厚み方向の前記一方の上流側における、前記変形後弾性体の引張りが解除された状態である挿通後弾性体を切断する切断部をさらに備える、
綴じ装置。
【請求項3】
前記変形前弾性体が前記貫通孔に挿通された後の状態である挿通後弾性体は、前記記録媒体の前記束の厚み方向に沿って延在し前記貫通孔に挿通される挿入部と、前記厚み方向における前記挿入部の両端に設けられ前記記録媒体の前記束を挟み込む一対の挟み込み部と、を含み、
前記記録媒体の前記束を挟み込む方向に前記一対の挟み込み部が弾性付勢力を発現するように、前記挿入部が伸びた状態にあり、
前記一対の挟み込み部のうち少なくとも一方の前記挟み込み部と前記記録媒体の前記束との間に
は板状部がさらに配置されており、
前記
板状部には、前記厚み方向に貫通し前記貫通孔と連通する孔部が形成されており、
前記挿入部は、前記貫通孔と前記孔部とに挿通されており、
前記一対の挟み込み部のうち少なくとも一方の前記挟み込み部は、前記板状部を介して前記記録媒体の前記束を挟み込んでいる、請求項
1または請求項2に記載の綴じ装置。
【請求項4】
前記記録媒体の前記束の厚み方向に直交する平面における前記変形前弾性体の断面形状と、前記貫通孔の断面形状とは異なる、請求項
1から請求項
3のいずれか1項に記載の綴じ装置。
【請求項5】
前記変形前弾性体の内部には中空部が形成されている、請求項
1から請求項
4のいずれか1項に記載の綴じ装置。
【請求項6】
前記変形前弾性体の表面には、凹凸が設けられている、請求項
1から請求項
5のいずれか1項に記載の綴じ装置。
【請求項7】
前記変形前弾性体は、線状の形状を有している、請求項
1から請求項
6のいずれか1項に記載の綴じ装置。
【請求項8】
前記変形前弾性体は、巻回状に配置されている、請求項
7に記載の綴じ装置。
【請求項9】
前記記録媒体の前記束に対して前記記録媒体の前記束の厚み方向の一方の上流側に配置され、前記変形前弾性体を保持する保持部をさらに備える、請求項
1から請求項
8のいずれか1項に記載の綴じ装置。
【請求項10】
伸縮可能な変形前弾性体を準備する工程と、
前記変形前弾性体を記録媒体の束に形成された貫通孔に挿通させる工程と、をこの順に備え、
前記変形前弾性体は、挿通後において前記記録媒体の前記束を挟み込む方向に弾性付勢力を発現するように前記貫通孔に挿通さ
れ、
前記変形前弾性体は、前記記録媒体の前記束の厚み方向に直交する第一方向において前記貫通孔の径よりも大きい長さを有しており、
前記変形前弾性体を前記貫通孔に挿通させる工程においては、前記変形前弾性体を前記厚み方向の一方に引張って変形後弾性体として、前記変形後弾性体を前記貫通孔に挿通させ、
前記変形後弾性体を前記貫通孔に挿通させた後、前記記録媒体の前記束に対して前記厚み方向の前記一方の上流側の前記変形後弾性体を切断する工程をさらに備える、
綴じ方法。
【請求項11】
前記変形前弾性体は、前記記録媒体の前記束の厚み方向に直交する第一方向において前記貫通孔の径よりも大きい長さを有しており、
前記変形前弾性体を前記貫通孔に挿通させる工程においては、前記変形前弾性体を前記厚み方向の一方に引張って変形後弾性体として、前記変形後弾性体を前記貫通孔に挿通させ、
前記変形後弾性体を前記貫通孔に挿通させた後、前記変形後弾性体の引張りを解除して挿通後弾性体とする工程をさらに備える、請求項
10に記載の綴じ方法。
【請求項12】
前記変形後弾性体の引張りを解除した後、前記記録媒体の前記束に対して前記厚み方向の前記一方の上流側の前記挿通後弾性体を切断する工程をさらに備える、請求項
11に記載の綴じ方法。
【請求項13】
前記記録媒体の前記束の厚み方向に直交する平面における前記変形前弾性体の断面形状と、前記貫通孔の断面形状とは異なる、請求項
10から請求項
12のいずれか1項に記載の綴じ方法。
【請求項14】
前記変形前弾性体の内部には中空部が形成されている、請求項
10から請求項
13のいずれか1項に記載の綴じ方法。
【請求項15】
前記変形前弾性体の表面には凹凸が設けられている、請求項
10から請求項
14のいずれか1項に記載の綴じ方法。
【請求項16】
前記変形前弾性体を前記貫通孔に挿通させる工程において、前記貫通孔、および、前記記録媒体の前記束上に配置された板状部に形成され前記記録媒体の前記束の厚み方向に貫通する孔部に前記変形前弾性体が挿通され、
前記変形前弾性体は、挿通後において前記板状部を介して前記記録媒体の前記束を挟み込むように挿通される、請求項
10から請求項
15のいずれか1項に記載の綴じ方法。
【請求項17】
前記変形前弾性体は、線状の形状を有している、請求項
10から請求項
16のいずれか1項に記載の綴じ方法。
【請求項18】
前記変形前弾性体は、巻回状に配置されている、請求項
17に記載の綴じ方法。
【請求項19】
前記変形前弾性体を前記貫通孔に挿通させる工程において、前記記録媒体の前記束に対して前記記録媒体の前記束の厚み方向の一方の上流側から前記変形前弾性体が保持される、請求項
10から請求項
18のいずれか1項に記載の綴じ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、綴じ装置、および綴じ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
用紙束を綴じる技術が、特開2013-31977号公報に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される用紙束の綴じ方法において、用紙束を貫通する孔部に熱可塑性樹脂を含む綴じ部材を挿入し、上記熱可塑性樹脂を加熱して用紙束を綴じる構成を採用している。
【0005】
しかし、上記構成においては、綴じ部材と用紙束とを接着するため、綴じ部材を用紙束から取り外しにくく、綴じ部材を用紙束から取り外すと用紙が損傷する場合がある。また、用紙を損傷させずに取り外せたとしても樹脂材が残り、汚れている印象を与える場合がある。さらに、熱源機構が必要な構成であるため、製造コストが増大する。
【0006】
本発明の目的は、簡素な構成で、綴じ部材を容易に取り外すことができる綴じ構造、綴じ装置、および綴じ方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る綴じ構造において、記録媒体の束が綴じられている。綴じ構造は、伸縮可能な挿通後弾性体を備えている。上記挿通後弾性体は、上記記録媒体の上記束に形成された貫通孔に挿通されている。上記挿通後弾性体は、挿入部と一対の挟み込み部とを含んでいる。上記挿入部は、上記記録媒体の上記束の厚み方向に沿って延在している。上記挿入部は、上記貫通孔に挿通されている。上記一対の挟み込み部は、上記厚み方向における上記挿入部の両端に設けられている。上記一対の挟み込み部は、上記記録媒体の上記束を挟み込んでいる。上記記録媒体の上記束を挟み込む方向に上記一対の挟み込み部が弾性付勢力を発現するように、上記挿入部が伸びた状態にある。
【0008】
上記綴じ構造は、板状部をさらに備えている。上記板状部は、上記一対の挟み込み部のうち少なくとも一方の上記挟み込み部と上記記録媒体の上記束との間に配置されている。上記板状部には、上記厚み方向に貫通し上記貫通孔と連通する孔部が形成されている。上記挿入部は、上記貫通孔と上記孔部とに挿通されている。上記一対の挟み込み部のうち少なくとも一方の上記挟み込み部は、上記板状部を介して上記記録媒体の上記束を挟み込んでいる。
【0009】
上記綴じ構造において、上記挿入部は、上記貫通孔を規定する記録媒体の束の周壁部と密着している。
【0010】
上記綴じ構造において、上記挿入部の表面には、凹凸が設けられている。
本開示に係る綴じ装置は、伸縮可能な変形前弾性体を記録媒体の束に形成された貫通孔に挿通する挿通装置を備えている。上記変形前弾性体は、挿通後において上記記録媒体の上記束を挟み込む方向に弾性付勢力を発現するように上記貫通孔に挿通される。
【0011】
上記綴じ装置において、上記変形前弾性体が上記貫通孔に挿通された後の状態である挿通後弾性体は、挿入部と一対の挟み込み部とを含んでいる。上記挿入部は、上記記録媒体の上記束の厚み方向に沿って延在している。上記挿入部は、上記貫通孔に挿通されている。上記一対の挟み込み部は、上記厚み方向における上記挿入部の両端に設けられている。上記一対の挟み込み部は、上記記録媒体の上記束を挟み込んでいる。上記記録媒体の上記束を挟み込む方向に上記一対の挟み込み部が弾性付勢力を発現するように、上記挿入部が伸びた状態にある。上記一対の挟み込み部のうち少なくとも一方の上記挟み込み部と上記記録媒体の上記束との間に配置された板状部には、上記厚み方向に貫通し上記貫通孔と連通する孔部が形成されている。上記挿入部は、上記貫通孔と上記孔部とに挿通されている。上記一対の挟み込み部のうち少なくとも一方の上記挟み込み部は、上記板状部を介して上記記録媒体の上記束を挟み込んでいる。
【0012】
上記綴じ装置は、切断部をさらに備えている。上記変形前弾性体は、上記記録媒体の上記束の厚み方向に直交する第一方向において上記貫通孔の径よりも大きい長さを有している。上記挿通装置が上記厚み方向の一方に上記変形前弾性体を引張って変形後弾性体とし、上記変形後弾性体を上記貫通孔に挿通させた後に、切断部は、上記記録媒体の上記束に対して上記厚み方向の上記一方の上流側における上記変形後弾性体を切断する。
【0013】
上記綴じ装置は、切断部をさらに備えている。上記変形前弾性体は、上記記録媒体の上記束の厚み方向に直交する第一方向において上記貫通孔の径よりも大きい長さを有している。上記挿通装置が上記厚み方向の一方に上記変形前弾性体を引張って変形後弾性体とし、上記変形後弾性体を上記貫通孔に挿通させた後に、上記挿通装置が上記変形後弾性体の引張りを解除した状態で、切断部は、上記記録媒体の上記束に対して上記厚み方向の上記一方の上流側における、上記変形後弾性体の引張りが解除された状態である挿通後弾性体を切断する。
【0014】
上記綴じ装置において、上記記録媒体の上記束の厚み方向に直交する平面における上記変形前弾性体の断面形状と、上記貫通孔の断面形状とは異なる。
【0015】
上記綴じ装置において、上記変形前弾性体の内部には中空部が形成されている。
上記綴じ装置において、上記変形前弾性体の表面には、凹凸が設けられている。
【0016】
上記綴じ装置において、上記変形前弾性体は、線状の形状を有している。
上記綴じ装置において、上記変形前弾性体は、巻回状に配置されている。
【0017】
上記綴じ装置は、保持部をさらに備えている。上記保持部は、上記記録媒体の上記束に対して上記記録媒体の上記束の厚み方向の一方の上流側に配置されている。上記保持部は、上記変形前弾性体を保持する。
【0018】
本開示に係る綴じ方法は、伸縮可能な変形前弾性体を準備する工程と、上記変形前弾性体を記録媒体の束に形成された貫通孔に挿通させる工程と、をこの順に備えている。上記変形前弾性体は、挿通後において上記記録媒体の上記束を挟み込む方向に弾性付勢力を発現するように上記貫通孔に挿通される。
【0019】
上記綴じ方法において、上記変形前弾性体は、上記記録媒体の上記束の厚み方向に直交する第一方向において上記貫通孔の径よりも大きい長さを有している。上記変形前弾性体を上記貫通孔に挿通させる工程においては、上記変形前弾性体を上記厚み方向の一方に引張って変形後弾性体として、上記変形後弾性体を上記貫通孔に挿通させる。上記綴じ方法は、上記変形後弾性体を上記貫通孔に挿通させた後、上記記録媒体の上記束に対して上記厚み方向の上記一方の上流側の上記変形後弾性体を切断する工程をさらに備えている。
【0020】
上記綴じ方法において、上記変形前弾性体は、上記記録媒体の上記束の厚み方向に直交する第一方向において上記貫通孔の径よりも大きい長さを有している。上記変形前弾性体を上記貫通孔に挿通させる工程においては、上記変形前弾性体を上記厚み方向の一方に引張って変形後弾性体として、上記変形後弾性体を上記貫通孔に挿通させる。上記綴じ方法は、上記変形後弾性体を上記貫通孔に挿通させた後、上記変形後弾性体の引張りを解除して挿通後弾性体とする工程をさらに備えている。
【0021】
上記綴じ方法は、上記変形後弾性体の引張りを解除した後、上記記録媒体の上記束に対して上記厚み方向の上記一方の上流側の上記挿通後弾性体を切断する工程をさらに備えている。
【0022】
上記記録媒体の上記束の厚み方向に直交する平面における上記変形前弾性体の断面形状と、上記貫通孔の断面形状とは異なる。
【0023】
上記綴じ方法において、上記変形前弾性体の内部には中空部が形成されている。
上記綴じ方法において、上記変形前弾性体の表面には凹凸が設けられている。
【0024】
上記綴じ方法において、上記記録媒体の上記束上に配置された板状部には孔部が形成されている。孔部は、上記記録媒体の上記束の厚み方向に貫通している。上記変形前弾性体を上記貫通孔に挿通させる工程において、上記貫通孔、および、上記孔部に上記変形前弾性体が挿通されている。上記変形前弾性体は、挿通後において上記板状部を介して上記記録媒体の上記束を挟み込むように挿通される。
【0025】
上記綴じ方法において、上記変形前弾性体は、線状の形状を有している。
上記綴じ方法において、上記変形前弾性体は、巻回状に配置されている。
【0026】
上記綴じ方法において、上記変形前弾性体を上記貫通孔に挿通させる工程において、上記記録媒体の上記束に対して上記記録媒体の上記束の厚み方向の一方の上流側から上記変形前弾性体が保持される。
【発明の効果】
【0027】
本開示に従えば、簡素な構成で、綴じ部材を容易に取り外すことができる綴じ構造、綴じ装置、および綴じ方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】実施の形態1の綴じ装置を示す概略斜視図である。
【
図2】変形前弾性体を貫通孔に挿通する際の状態を示す概略斜視図である。
【
図3】変形前弾性体を貫通孔に挿通する際の状態を示す概略断面図である。
【
図4】挿通装置が変形後弾性体の引張りを解除した状態を示す概略斜視図である。
【
図5】挿通後弾性体を切断する状態を示す概略図である。
【
図6】切断された後の挿通後弾性体を示す概略断面図である。
【
図7】切断された後の挿通後弾性体の概略斜視図である。
【
図10】実施の形態1における用紙束の綴じ方法の工程を示すフローチャートである。
【
図11】貫通孔に挿通される実施の形態2の変形前弾性体を示す断面図である。
【
図12】貫通孔に挿通される実施の形態3の変形前弾性体を示す断面図である。
【
図13】実施の形態4の綴じ装置を示す概略斜視図である。
【
図14】実施の形態4の綴じ構造の概略断面図である。
【
図16】実施の形態5の綴じ装置を示す概略斜視図である。
【
図17】厚み方向の一方に変形前弾性体を引張るかぎ針の概略斜視図である。
【
図18】実施の形態5の挿通後弾性体を切断する状態を示す概略斜視図である。
【
図19】実施の形態6の綴じ構造を示す概略断面図である。
【
図20】実施の形態6の変形前弾性体の概略斜視図である。
【
図21】実施の形態6の綴じ装置を示す概略断面図である。
【
図22】変形前弾性体を貫通孔に挿通する直前における実施の形態6の綴じ装置を示す概略断面図である。
【
図23】実施の形態6の変形後弾性体を示す概略断面図である。
【
図24】変形後弾性体を用紙束に取付ける直前における実施の形態6の変形後弾性体を示す概略断面図である。
【
図25】実施の形態6の挿通後弾性体を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。以下の実施の形態において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0030】
[実施の形態1]
<綴じ装置1>
図1は、実施の形態1の綴じ装置1を示す概略斜視図である。綴じ装置1は、記録媒体の束をまとめて綴じる。実施の形態において、記録媒体の束は、用紙束Sである。
【0031】
図1中に示された両矢印は、厚み方向DR1と、第一方向DR2とを示している。厚み方向DR1は、用紙束Sの厚み方向であり、
図1中の上下方向である。第一方向DR2は、厚み方向DR1と、直交する方向であり、用紙束Sが延在している方向である。
【0032】
用紙束Sには、用紙束Sを厚み方向DR1に貫通する貫通孔50が形成されている。実施の形態1において、貫通孔50の断面形状は、円状である。綴じ装置1は、挿通装置20と、保持部30と、巻取部40と、切断部70とを備えている。実施の形態において、用紙束Sを綴じる綴じ部材として、弾性体からなる伸縮可能な変形前弾性体10が用いられている。貫通孔50に変形前弾性体10を挿通することにより、用紙束Sが綴じられる。
【0033】
変形前弾性体10は、線状の形状を有している。変形前弾性体10は、チューブ状の形状を有している。実施の形態1において、変形前弾性体10の断面形状は円状である。変形前弾性体10は、第一方向DR2において貫通孔50の径よりも大きい長さを有している。変形前弾性体10の径は、貫通孔50の径よりも大きい。変形前弾性体10は、巻取部40に巻き取られることにより、巻回状に配置されている。
【0034】
挿通装置20は、用紙束Sに対して巻取部40および変形前弾性体10と反対側に配置されている。挿通装置20は、貫通孔50に対応した位置に移動可能な構成である。挿通装置20は、用紙束S上を移動可能である。挿通装置20は、厚み方向DR1に移動可能である。挿通装置20は、変形前弾性体10に向かって移動し、変形前弾性体10を掴んで貫通孔50に挿通させる。
【0035】
保持部30は、用紙束Sに対して挿通装置20と反対側に配置されている。保持部30は、円筒状の形状を有している。保持部30の内部に変形前弾性体10が挿通されることにより、保持部30は、変形前弾性体10を保持している。
【0036】
切断部70は、用紙束Sに対して挿通装置20と反対側に配置されている。切断部70は、用紙束Sに対して保持部30および巻取部40と同じ側に配置されている。切断部70は、第一方向DR2に移動可能である。切断部70は、後述する変形後弾性体90または挿通後弾性体80を切断する。
【0037】
図2は、変形前弾性体10を貫通孔50に挿通する際の状態を示す概略斜視図である。挿通装置20は、把手21と、本体部22とを含んでいる。把手21は、本体部22の内部に設けられている。把手21は、変形前弾性体10を掴む際に本体部22から突出する。
【0038】
図2中に示された矢印は、厚み方向の一方DR3を示している。厚み方向の一方DR3は、厚み方向DR1の一方の方向であり、挿通装置20が変形前弾性体10を引張る方向である。厚み方向の一方DR3は、挿通装置20が巻取部40および保持部30から離れる方向であり、
図2中の上方向である。
【0039】
把手21により変形前弾性体10を掴んだ後、変形前弾性体10は厚み方向の一方DR3に引張られ、変形前弾性体10が弾性変形する。用紙束Sに対して厚み方向の一方DR3の上流側に配置されている保持部30が変形前弾性体10を保持していることにより、変形前弾性体10を厚み方向の一方DR3の上流側に引張る力が作用するため、変形前弾性体10は、弾性変形しやすくなる。
【0040】
図3は、変形前弾性体10を貫通孔50に挿通する際の状態を示す概略断面図である。挿通装置20が厚み方向の一方DR3に変形前弾性体10を引張ることにより変形前弾性体10が弾性変形し、変形前弾性体10が変形後弾性体90となる。変形後弾性体90が挿通装置20に引っ張られることにより、変形後弾性体90の径(
図3中のb)は、変形前弾性体10の径(
図3中のa)よりも小さくなる。変形後弾性体90の径は、貫通孔50の径(
図3中のc)よりも小さくなる。これにより、挿通装置20は、変形後弾性体90を貫通孔50に挿通させることができる。
【0041】
図4は、挿通装置20が変形後弾性体90の引張りを解除した状態を示す概略斜視図である。変形後弾性体90が貫通孔50に挿通された後、挿通装置20は、変形後弾性体90を厚み方向の一方DR3に引張ることを解除する。これにより、変形後弾性体90は、元の形状(変形前弾性体10の形状)に戻ろうとして、変形後弾性体90の外径が大きくなる(変形後弾性体90が径方向に膨らむ)。変形後弾性体90が貫通孔50に挿通された後、引張りが解除されると、変形後弾性体90は挿通後弾性体80となる。挿通後弾性体80は、変形前弾性体10が貫通孔50に挿通された後の状態である。変形前弾性体10の径は、貫通孔50の径よりも大きいことから、挿通後弾性体80は貫通孔50を規定する用紙束Sの周壁部51と密着する。
【0042】
図5は、挿通後弾性体80を切断する状態を示す概略図である。切断部70は、用紙束Sに対して厚み方向の一方DR3の上流側における挿通後弾性体80を切断する。切断部70は、用紙束Sに対して挿通装置20と反対側における挿通後弾性体80の一部分を切断する。切断部70は、用紙束Sと保持部30との間における挿通後弾性体80を切断する。挿通後弾性体80が切断された後、用紙束Sに残された挿通後弾性体80によって、用紙束Sが綴じられることになる。
【0043】
<綴じ構造2>
図6は、切断された後の挿通後弾性体80を示す概略断面図である。
図7は、切断された後の挿通後弾性体80の概略斜視図である。
図6および
図7を参照して、用紙束Sの綴じ構造2について説明する。
【0044】
綴じ構造2は、伸縮可能な挿通後弾性体80を備えている。挿通後弾性体80は、貫通孔50に挿通されている。挿通後弾性体80により用紙束Sが綴じられている。挿通後弾性体80は、挿入部81と、一対の挟み込み部82と、を含んでいる。挿入部81は、貫通孔50に挿通されている。挿入部81は、厚み方向DR1に沿って延在している。挿入部81は、伸びた状態のまま、貫通孔50に挿通されている。挿入部81は、貫通孔50を規定する用紙束Sの周壁部51と密着している。挿入部81(変形前弾性体10)の表面には、凹凸83が設けられている。
【0045】
挟み込み部82は、円板状の形状を有している。一対の挟み込み部82は、厚み方向DR1における挿入部81の両端81aに設けられている。挟み込み部82は、両端81aのそれぞれから第一方向DR2に突出している。挟み込み部82は、挿入部81の径方向に延在している。実施の形態1において、挟み込み部82は、用紙束Sと接している。第一方向DR2において、挟み込み部82の端部82aは、貫通孔50の外側に設けられている。端部82aは、貫通孔50よりも挿入部81の径方向の外側に設けられている。
【0046】
一対の挟み込み部82は、用紙束Sを挟み込んでいる。一対の挟み込み部82は、用紙束Sの表裏を押圧している。一方の挟み込み部82は、用紙束Sの表面を押圧し、他方の挟み込み部82は、用紙束Sの裏面を押圧している。一対の挟み込み部82が、用紙束Sを挟み込む方向(
図6中のC)において弾性付勢力を発現するように、挿入部81が伸びた状態にある。伸びた状態にある挿入部81が縮もうとする作用により、一対の挟み込み部82が、用紙束Sを挟み込む方向(
図6中のC)において、用紙束Sに対して弾性付勢力を発現する。
【0047】
図8は、貫通孔50が一か所の用紙束Sを示す図である。
図9は、貫通孔50が二か所の用紙束を示す図である。用紙束Sは、角で綴じられる場合(
図8)、用紙束S上の2点で綴じられる場合(
図9)等がある。実施の形態1の綴じ装置1は、いずれの用紙束Sにおいても適用することができる。
【0048】
(作用効果)
図6に示すように、変形前弾性体10は、挿通後において用紙束Sを挟み込む方向(
図6中のC方向)に弾性付勢力を発現するように貫通孔50に挿通される。挟み込み部82は、用紙束Sを挟み込む方向に押圧しているため、用紙束Sには圧縮方向の力が作用している。これにより、用紙束Sを挟み込み部82により挟むことができる。さらに、第一方向DR2において、挟み込み部82の端部82aは、貫通孔50の外側に設けられているため、用紙束Sから挿通後弾性体80が外れることを抑制することができる。したがって、弾性体からなる挿通後弾性体80で用紙束Sを綴じることができる。
【0049】
用紙束を綴じる綴じ部材として使用されている従来の金属製のステープルは、コの字状の形状であり、用紙束から金属針を取り外すのが難しく、針が刺さって怪我をする場合がある。さらに、食品現場においてステープルが食品に混ざること、機械内に侵入したステープルに起因して機械がショートすること、ステープルを付けたままシュレッダーで用紙束を細断することに起因してシュレッダーの刃を傷めること等の問題が発生する場合がある。
【0050】
弾性素材からなる挿通後弾性体80を綴じ部材として構成することにより、金属針が刺さって怪我をすること、および、金属針が機械内に侵入してショートすることがなくなり、安全性を向上させることができる。さらに、シュレッダーで細断してもシュレッダーの刃が損傷することを抑制することができる。
【0051】
また、上記構成においては、用紙束Sと綴じ部材とを接着することもなく、綴じ部材が弾性体からなるため、綴じ部材(挿通後弾性体80)を容易に取り外すことができる。さらに、挿通後弾性体80を取り外した後でも、用紙束Sが汚れることを抑制することができる。
【0052】
また、熱可塑性樹脂を綴じ部材として用いた場合のように、用紙束Sを綴じるにあたって、熱源機構が不要となるため、綴じ装置1の構成を簡素にすることができる。
【0053】
以上のように、弾性体からなる挿通後弾性体80を綴じ部材として用紙束Sを綴じる構成とするにより、簡素な構成で綴じ部材(挿通後弾性体80)を容易に取り外すことができる綴じ装置1および綴じ構造2を実現することができる。
【0054】
図3に示すように、変形前弾性体10は、第一方向DR2おいて、貫通孔50の径(
図3中のc)よりも大きい長さ(
図3中のa)を有している。変形後弾性体90の径(
図3中のb)は、貫通孔50の径よりも小さいが、挿通装置20が変形後弾性体90の引張りを解除すると、変形後弾性体90が第一方向DR2に膨らみ、変形後弾性体90と周壁部51とが密着することになる。
【0055】
図6に示すように、挿入部81と周壁部51とは密着している。周壁部51には挿入部81が膨らむ方向に力が作用しているため、挿入部81が周壁部51に食い込む(挿入部81が用紙束Sの用紙の間に食い込む)ことになる。これにより、用紙束Sが散らばることを抑制している。したがって、用紙束Sを強固に綴じることができる。
【0056】
図7に示すように、挿入部81の表面には、凹凸83が形成されている。これにより、周壁部51が挿入部81に食い込みやすくなる。したがって、用紙束Sをより強固に綴じることができ、挿通後弾性体80が用紙束Sから外れることを抑制することができる。
【0057】
図5に示すように、変形後弾性体90を弾性変形させて貫通孔50に挿通させた後に、変形後弾性体90の引張りを解除した状態で、切断部70が挿通後弾性体80を切断する構成とすることにより、確実に挿通後弾性体80と周壁部51とが密着した状態で切断することができる。これにより、強固に用紙束Sを綴じることができる。さらに、適切な長さで挿通後弾性体80を切断することができるため、材料費を抑制することができる。
【0058】
なお、変形後弾性体90を弾性変形させて貫通孔50に挿通させた後に、変形後弾性体90が引張りを解除しない状態で切断部70が変形後弾性体90を切断する構成であってもよい。変形後弾性体90を貫通孔50に挿通させた後に、用紙束Sに対して厚み方向の一方DR3の上流側の変形後弾性体90を切断する構成としても、強固に用紙束Sを綴じられる効果が得られる。
【0059】
変形前弾性体10は、線状の形状を有している。線状の変形前弾性体10は、一方向に長い形状を有しているため、用紙束Sの厚みに影響なく用紙束Sを綴じることができる。
【0060】
変形前弾性体10は、巻取部40により巻き取られ、巻回状に配置されている。これにより、変形前弾性体10をコンパクトに収納することができる。
【0061】
保持部30は、用紙束Sに対して厚み方向の一方DR3の上流側から変形前弾性体10を保持している。これにより、変形前弾性体10を厚み方向の一方DR2の上流側に引張る力が作用するため、変形前弾性体10は、弾性変形しやすくなる。
【0062】
<綴じ方法>
図10は、実施の形態1における用紙束Sの綴じ方法の工程を示すフローチャートである。
図2から
図5、および
図10を参照して用紙束Sの綴じ方法の工程について説明する。
【0063】
実施の形態における用紙束Sの綴じ方法では、まず、変形前弾性体10を準備する(S00)。次に工程(S10)において、貫通孔50に対応する位置に挿通装置20を移動し、
図2および
図3に示すように、貫通孔50に挿通装置20を挿通し、把手21に変形前弾性体10を把持させ、変形前弾性体10を厚み方向の一方DR3に引張る。このとき、保持部30によって用紙束Sに対して厚み方向の一方DR3の上流側から変形前弾性体10を保持する。
【0064】
変形前弾性体10を保持することにより、変形前弾性体10を厚み方向の一方DR3の上流側に引張る力が作用するため、変形前弾性体10は、弾性変形しやすくなる。
【0065】
厚み方向DR1に変形前弾性体10を引張って弾性変形させると、変形前弾性体10の径が小さくなり、変形前弾性体10よりも径が小さくなった変形後弾性体90を貫通孔50を挿通させることができる。
【0066】
工程(S10)において、変形後弾性体90を厚み方向の一方DR3に引張りながら変形後弾性体90を貫通孔50に挿通させる。
【0067】
次に工程(S20)において、変形後弾性体90を貫通孔50に挿通させた後、
図4に示すように、変形後弾性体90の引張りを解除する。これにより、変形後弾性体90は、元の形状(変形前弾性体10の形状)に戻ろうとして、変形後弾性体90の外径が大きくなる(変形後弾性体90が径方向に膨らむ)。
【0068】
次に工程(S30)において、
図5に示すように、用紙束Sに対して厚み方向の一方DR3の上流側の挿通後弾性体80を切断する。挿通後弾性体80が切断された後、用紙束Sに残された挿通後弾性体80によって、用紙束Sが綴じられることになる。
【0069】
変形後弾性体90の引張りを解除する工程を設けることで、挿通後弾性体80と周壁部51とが確実に密着した状態で切断することができる。なお、変形後弾性体90の引張りを解除する工程がない場合であっても、解除工程がある場合と同様に強固に用紙束Sを綴じられる効果が得られる。
【0070】
図10に示す工程(S00)から(S30)を経ることにより、
図1に示す用紙束Sが綴じられる。
【0071】
[実施の形態2]
図11は、貫通孔50に挿通される実施の形態2の変形前弾性体10を示す断面図である。
図11では、厚み方向DR1に直交する平面における断面を図示している。実施の形態1と異なり、厚み方向DR1に直交する平面において、変形前弾性体10の断面形状は、楕円状である。厚み方向DR1に直交する平面における変形前弾性体10の断面形状と、貫通孔50の断面形状とは異なっている。これにより、変形前弾性体10と貫通孔50との間に隙間が形成され、把手21で変形前弾性体10を掴みやすくなる。したがって、変形前弾性体10を用紙束Sに挿通しやすくなる。
【0072】
[実施の形態3]
図12は、貫通孔50に挿通される実施の形態3の変形前弾性体10を示す断面図である。実施の形態1と異なり、実施の形態3の変形前弾性体10の内部には中空部11が形成されている。中空部11は、変形前弾性体10が延びる方向に延びている。これにより、変形前弾性体10の伸縮性を向上させることができる。
【0073】
さらに、実施の形態1と異なり、厚み方向DR1に直交する平面において、貫通孔50の断面形状は、楕円状である。実施の形態3の変形前弾性体10の断面形状は、円状であるため、変形前弾性体10の断面形状と、貫通孔50の断面形状とは異なっている。これにより、実施の形態2と同様に、変形前弾性体10を用紙束Sに挿通しやすくなる。なお、実施の形態3のように、貫通孔50が楕円である場合、貫通孔50の径とは、短径部分(
図12中のd)を示す。
【0074】
[実施の形態4]
図13は、実施の形態4の綴じ装置1を示す概略斜視図である。
図14は、実施の形態4の綴じ構造2の概略断面図である。
図15は、綴じた後の用紙束Sの概略斜視図である。
図13から
図15を参照して、実施の形態4の綴じ装置1および綴じ構造2について説明する。
【0075】
実施の形態4の綴じ構造2は、板状部60をさらに備えている。板状部60は、一対の挟み込み部82のうち少なくとも一方の挟み込み部82と用紙束Sとの間に配置されている。実施の形態1において、板状部60は、用紙束Sに接している。板状部60は、用紙束Sと対向している。板状部60は、用紙束S上に配置されている。一方の挟み込み部82は、板状部60を介して、用紙束Sを押圧している。
【0076】
板状部60には、板状部60を厚み方向DR1に貫通する孔部61が形成されている。孔部61は、貫通孔50と連通している。挿入部81は、貫通孔50と孔部61とに挿通されている。一対の挟み込み部82のうち少なくとも一方の挟み込み部82は、板状部60を介して用紙束Sを挟み込んでいる。
【0077】
第一方向DR2において、挟み込み部82の端部82aは、孔部61の外側に設けられている。端部82aは、孔部61よりも挿入部81の径方向の外側に設けられている。第一方向DR2における挟み込み部82の長さは、孔部61の径よりも大きい。変形前弾性体10は、第一方向DR2において、孔部61の径よりも大きい長さを有している。
【0078】
実施の形態4における変形前弾性体10を貫通孔50に挿通させる工程において、貫通孔50、および、孔部61に変形前弾性体10が挿通される。孔部61に変形後弾性体90を挿通させた後に、挿通装置20が引張りを解除し、切断部70が挿通後弾性体80を切断する。変形前弾性体10は、挿通後において板状部60を介して用紙束Sを挟み込むように挿通される。このようにすれば、挿通後弾性体80と用紙束Sとの間に板状部60を配置して、用紙束Sを綴じることができる。
【0079】
これにより、挿通後弾性体80が用紙束Sを押圧する面積を広くとることができるため、より強固に用紙束Sを綴じることができる。さらに、
図15に示すように、板状部60を装飾品として用いることで、見栄えをよくすることができる。
【0080】
[実施の形態5]
図16は、実施の形態5の綴じ装置1を示す概略斜視図である。
図17は、厚み方向の一方DR3に変形前弾性体10を引張るかぎ針23の概略斜視図である。
図18は、実施の形態5の挿通後弾性体80を切断する状態を示す概略斜視図である。
図16から
図18を参照して、実施の形態5の綴じ装置1について説明する。
【0081】
実施の形態5の綴じ装置1は、実施の形態1と異なり、回転保持部31および、挿通装置20としてのかぎ針23を備えている。かぎ針23は、本体部24およびフック部25を含んでいる。フック部25は、本体部24から突出する。フック部25は、本体部24から出し入れが可能である。
【0082】
回転保持部31は、複数のスリット部32を有している。スリット部32において、変形前弾性体10が保持されている。スリット部32同士の間において、変形前弾性体10は、円弧状に保持されている。
【0083】
フック部25は、スリット部32同士の間に向かって延び、スリット部32同士の間における変形前弾性体10を引掛けて、厚み方向の一方DR3に変形前弾性体10を引き込む(
図17中の矢印A)。変形後弾性体90が貫通孔50を挿通した後、
図18に示すように、切断部70は、挿通後弾性体80を切断する。用紙束Sに残された挿通後弾性体80により用紙束Sが綴じられることになる。
【0084】
実施の形態5においても、実施の形態1と同様に、簡素な構成で挿通後弾性体80を容易に取り外すことができる綴じ装置1および綴じ構造2を実現することができる。
【0085】
[実施の形態6]
図19は、実施の形態6の綴じ構造2を示す概略断面図である。
図20は、実施の形態6の変形前弾性体10の概略斜視図である。実施の形態1と異なり、弾性材からなる変形前弾性体10は、棒状の変形前軸部14と一対の棒状の変形前棒部15とを含んでいる。変形前軸部14と変形前棒部15とは直交している。厚み方向DR1における変形前軸部14の長さは、厚み方向DR1における貫通孔50の長さよりも小さい。
【0086】
変形前弾性体10が貫通孔50に挿通されることにより、変形前弾性体10が挿通後弾性体80となり、用紙束Sが綴じられる。実施の形態6の挿通後弾性体80は、挿入後軸部84と、挿入後棒部85とを含んでいる。挿入後軸部84は実施の形態1の挿入部81(
図6参照)に、挿入後棒部85は実施の形態1の挟み込み部82に対応している。
【0087】
挿入後軸部84は、貫通孔50に挿通されている。挿入後軸部84は、厚み方向DR1に沿って延在している。変形前軸部14が貫通孔50に挿入されて弾性変形することにより、変形前軸部14は挿入後軸部84となる。変形前軸部14が弾性変形するため、厚み方向DR1における挿入後軸部84の長さは、厚み方向DR1における変形前軸部14の長さよりも大きい。
【0088】
挿入後棒部85は、挿入後軸部84の厚み方向DR1における両端84aのそれぞれから第一方向DR2に突出している。挿入後棒部85は、挿入後軸部84と直交している。一対の挿入後棒部85は、厚み方向DR1に用紙束Sの表裏を押圧している。第一方向DR2において、挿入後棒部85の端部85aは、貫通孔50の外側に設けられている。第一方向DR2において、挿入後棒部85の長さは、貫通孔50の径よりも大きい。
【0089】
挿入後軸部84は、伸びた状態のまま、貫通孔50に挿通されている。一対の挿入後棒部85が、用紙束Sを挟み込む方向(
図19中のD)において弾性付勢力を発現するように、挿入後軸部84が伸びた状態にある。伸びた状態にある挿入後軸部84が縮もうとする作用により、一対の挿入後棒部85が、用紙束Sを挟み込む方向において、用紙束Sに対して弾性付勢力を発現する。
【0090】
図21は、実施の形態6の綴じ装置1を示す概略断面図である。
図22は、変形前弾性体10を貫通孔50に挿通する直前における実施の形態6の綴じ装置1を示す概略断面図である。
【0091】
実施の形態6の挿通装置20は、押出部26、および本体部27を含んでいる。押出部26は、本体部27の内部に設けられている。押出部26は、厚み方向にDR1に移動可能であり、本体部27の外部に向けて突出可能である。本体部27は、厚み方向DR1に移動可能である。本体部27は、厚み方向の一方DR3(
図21中の下方向)に移動して、変形前棒部15の一端が本体部27に挿入される。その状態のまま、本体部27は厚み方向の一方DR3に移動する(
図21中のD方向)。
【0092】
図23は、実施の形態6の変形後弾性体90を示す概略断面図である。変形前弾性体10は厚み方向の一方DR3に引張られて弾性変形し変形後弾性体90となる。変形前棒部15および変形前軸部14は、それぞれ変形後棒部95および変形後軸部94となる。変形後弾性体90は、本体部27の移動に伴って、貫通孔50に挿通される。
【0093】
図24は、変形後弾性体90を用紙束Sに取付ける直前における実施の形態6の変形後弾性体90を示す概略断面図である。本体部27の内部から外部に向けて押出部26が突出し(
図24中のE方向)、変形後棒部95を本体部27の外部に押し出す。
【0094】
図25は、実施の形態6の挿通後弾性体80を示す概略断面図である。変形後棒部95が本体部27の内部から外部に向けて押し出された後、挿通装置20は厚み方向の他方DR4に向かって移動し退避する(
図25中のF方向)。挿通装置20は、貫通孔50の外部に移動する。これにより、変形後弾性体90が用紙束Sに取付けられる。
【0095】
変形後弾性体90が、貫通孔50に挿通された後の状態において、変形後弾性体90は挿通後弾性体80となり、挿通後弾性体80が用紙束Sを厚み方向DR1に押圧することにより、用紙束Sが綴じられることになる。
【0096】
実施の形態6においても、簡素な構成で挿通後弾性体80を容易に取り外すことができる綴じ装置1および綴じ構造2を実現することができる。さらに、実施の形態1と異なり、切断部70を要しないため、構成をより簡素にすることができる。
【0097】
なお、実施の形態6において、実施の形態2の板状部60(
図14参照)が挿入後棒部85と用紙束Sとの間に配置されている構成であってもよい。この場合においても、実施の形態4と同様に、より強固に用紙束Sを綴じることができる効果が得られる。
【0098】
(その他)
実施の形態において、適切な長さの変形前弾性体10を貫通孔50に挿通させることのみで、用紙束Sを綴じる構成であってもよい。この場合、切断部70を要しないため、綴じ装置1の構成および綴じ方法を簡素にすることができる。
【0099】
実施の形態において、挿通装置20の位置を貫通孔50の位置に対応させるために、挿通装置20が移動可能な構成としたが、用紙束Sを移動機構で移動させることにより、挿通装置20の位置と貫通孔50の位置とを対応させる構成としてもよい。
【0100】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0101】
1 綴じ装置、2 綴じ構造、10 前弾性体、11 中空部、14 変形前軸部、15 変形前棒部、20 挿通装置、21 把手、22,24,27 本体部、23 かぎ針、25 フック部、26 押出部、30 保持部、31 回転保持部、32 スリット部、40 巻取部、50 貫通孔、60 板状部、61 孔部、70 切断部、80 挿通後弾性体、81 挿入部、81a,84a 両端、82a,85a 端部、83 凹凸、84 挿入後軸部、85 挿入後棒部、90 変形後弾性体、94 変形後軸部、95 変形後棒部、DR1 厚み方向、DR2 第一方向、DR3 厚み方向の一方、DR4 厚み方向の他方、S 用紙束。