(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/16 20060101AFI20220712BHJP
【FI】
G03G15/16
(21)【出願番号】P 2018053757
(22)【出願日】2018-03-22
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094330
【氏名又は名称】山田 正紀
(72)【発明者】
【氏名】小島 紀章
【審査官】富士 春奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-039840(JP,A)
【文献】特開2010-089925(JP,A)
【文献】特開2010-061060(JP,A)
【文献】特開2007-304430(JP,A)
【文献】特開2016-071183(JP,A)
【文献】特開2015-140246(JP,A)
【文献】特開2005-008391(JP,A)
【文献】特開2005-266689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/02-13/16
15/00-15/16
B65H 1/00-3/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
未定着トナー像を保持して転写位置に運ぶトナー像保持部と、
搬送されてきた用紙の、前記トナー像保持部側を向いた第1面に接して該用紙を前記転写位置に案内する用紙案内部と、
前記用紙案内部に案内されてきた用紙を前記転写位置において前記トナー像保持部との間に挟み、該トナー像保持部により運ばれてきた未定着トナー像を該用紙上に転写する転写部とを備え、
前記用紙案内部が、
前記転写位置側の基準の端縁よりも該転写位置側に突出した、用紙搬送方向に対し交わる幅方向両側に設けられた一対の端部案内部と、
前記幅方向について前記一対の端部案内部材に挟まれた中央部に設けられた、前記端縁よりも該転写位置側に最近接した頂部から該幅方向それぞれの端部に向かうにしたがって突出量を減少させながら該転写位置側に突出した中央案内部とを有する突出し部を備え
、
前記頂部の、前記端縁からの突出量が、前記一対の端部案内部各々の該端縁からの突出量以上の突出量であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記突出し部の少なくとも前記用紙側を向いた面が、前記トナー像保持部に近づく向きに屈曲あるいは湾曲していることを特徴とする請求項
1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記突出し部が、前記トナー像保持部に近づく向きに、該突出し部の表裏面ともに屈曲あるいは湾曲していることを特徴とする請求項
2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記突出し部の、少なくとも前記端縁よりも突出した部分が、前記用紙案内部の、該突出し部よりも用紙搬送方向上流側の部分よりも可撓性を有することを特徴とする請求項1から
3のうちいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記用紙案内部が、前記端縁を前記転写位置側の端縁とし、該端縁よりも用紙搬送方向上流側に広がる案内部材を備え、
前記突出し部が、前記端縁から突出したフイルム状の可撓性部材と、前記案内部材の前記端縁側の、該可撓性部材が固着された先端部とからなることを特徴とする請求項1から
4のうちのいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記可撓性部材が、前記一対の端部案内部を構成する一対の端部案内用可撓性部材と前記中央案内部を構成する中央案内用可撓性部材とに分離されて各々が前記先端部に固着されていることを特徴とする請求項
5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記中央案内用可撓性部材の、前記幅方向両端が、前記端縁よりも突出していることを特徴とする請求項
6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記一対の端部案内用可撓性部材の各々が、前記端縁からの突出量が幅方向の位置によって異なる形状を有することを特徴とする請求項
6または7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記中央案内用可撓性部材が、前記一対の端部案内用可撓性部材の各々よりも可撓性が低いことを特徴とする請求項
6から8のうちのいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送されてきた用紙を、その用紙上に未定着トナー像を転写する転写部へと案内する、いわゆるシュートあるいはガイド板等と称される案内部材が配置されることがある。
【0003】
この案内部材が配置された構成において、その案内部材により転写部へと案内されてきた用紙の後端がその案内部材から離れる際に、その用紙の剛性や転写部への進入角度等に起因して、用紙あるいはその用紙の後端部がその面内方向に急激に動いて、未定着トナー像を保持して運んできたトナー像保持体に接触し、像ずれや像こすれといった画像欠陥が発生するおそれがある。
【0004】
ここで、特許文献1には、先端部にシート部材を設けた案内部材が開示されている。また、特許文献2には、先端部が三角形状に形成された案内部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-139168号公報
【文献】特開2007-304430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、小サイズかつ硬質の、例えば葉書などの用紙と、葉書と比べ大サイズかつ軟質の、例えばA4サイズの普通紙などの用紙との双方について、転写部での像ずれや像こすれといった画像欠陥の発生を抑えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1は、
未定着トナー像を保持して転写位置に運ぶトナー像保持部と、
搬送されてきた用紙の、前記トナー像保持部側を向いた第1面に接して該用紙を前記転写位置に案内する用紙案内部と、
前記用紙案内部に案内されてきた用紙を前記転写位置において前記トナー像保持部との間に挟み、該トナー像保持部により運ばれてきた未定着トナー像を該用紙上に転写する転写部とを備え、
前記用紙案内部が、
前記転写位置側の基準の端縁よりも該転写位置側に突出した、用紙搬送方向に対し交わる幅方向両側に設けられた一対の端部案内部と、
前記幅方向について前記一対の端部案内部材に挟まれた中央部に設けられた、前記端縁よりも該転写位置側に最近接した頂部から該幅方向それぞれの端部に向かうにしたがって突出量を減少させながら該転写位置側に突出した中央案内部とを有する突出し部を備え、
前記頂部の、前記端縁からの突出量が、前記一対の端部案内部各々の該端縁からの突出量以上の突出量であることを特徴とする画像形成装置である。
【0009】
請求項2は、前記突出し部の少なくとも前記用紙側を向いた面が、前記トナー像保持部に近づく向きに屈曲あるいは湾曲していることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置である。
【0010】
請求項3は、前記突出し部が、前記トナー像保持部に近づく向きに、該突出し部の表裏面ともに屈曲あるいは湾曲していることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置である。
【0011】
請求項4は、前記突出し部の、少なくとも前記端縁よりも突出した部分が、前記用紙案内部の、該突出し部よりも用紙搬送方向上流側の部分よりも可撓性を有することを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1項に記載の画像形成装置である。
【0012】
請求項5は、
前記用紙案内部が、前記端縁を前記転写位置側の端縁とし、該端縁よりも用紙搬送方向上流側に広がる案内部材を備え、
前記突出し部が、前記端縁から突出したフイルム状の可撓性部材と、前記案内部材の前記端縁側の、該可撓性部材が固着された先端部とからなることを特徴とする請求項1から4のうちのいずれか1項に記載の画像形成装置である。
【0013】
請求項6は、前記可撓性部材が、前記一対の端部案内部を構成する一対の端部案内用可撓性部材と前記中央案内部を構成する中央案内用可撓性部材とに分離されて各々が前記先端部に固着されていることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置である。
【0014】
請求項7は、前記中央案内用可撓性部材の、前記幅方向両端が、前記端縁よりも突出していることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置である。
【0015】
請求項8は、前記一対の端部案内用可撓性部材の各々が、前記端縁からの突出量が幅方向の位置によって異なる形状を有することを特徴とする請求項6または7に記載の画像形成装置である。
【0016】
請求項9は、前記中央案内用可撓性部材が、前記一対の端部案内用可撓性部材の各々よりも可撓性が低いことを特徴とする請求項6から8のうちのいずれか1項に記載の画像形成装置である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の画像形成装置によれば、中央案内部あるいは端部案内部が設けられていない突出し部を備えた場合と比べ、小サイズかつ硬質の用紙と大サイズかつ軟質の用紙との双方について、転写部での画像欠陥の発生が抑えられる。
【0018】
また、請求項1の画像形成装置によれば、頂部の突出量が端部案内部の突出量よりも小さい場合と比べ、大サイズの用紙についての画像欠陥の発生がさらに抑えられる。
【0019】
請求項2の画像形成装置によれば、屈曲あるいは湾曲のない突出し部を備えた用紙案内部と比べ、その用紙案内部から用紙後端が離れる際の衝撃がさらに抑えられる。
【0020】
請求項3の画像形成装置によれば、板状の部材の折曲げにより屈曲あるいは湾曲を形成することができる。
【0021】
請求項4の画像形成装置によれば、可撓性のない突出し部を備えた用紙案内部と比べ、その用紙案内部から用紙後端が離れる際の衝撃がさらに抑えられる。
【0022】
請求項5の画像形成装置によれば、フイルム状の可撓性部材を備えた突出し部とすることで、可撓性のある突出し部を容易に形成することができる。
【0023】
請求項6の画像形成装置によれば、一対の端部案内部と中央案内部とに広がる、一体に繋がった可撓性部材を備えた場合と比べ、材料の節減が図られる。
【0024】
請求項7の画像形成装置によれば、中央案内用可撓性部材の幅方向両端が端縁よりも引っ込んだ形状の場合と比べ、中央案内用可撓性部材の全幅を衝撃吸収に役立たせることができる。
【0025】
請求項8の画像形成装置によれば、突出量が幅方向に一定の端部案内用可撓性部材を備えた場合と比べ、サイズの大きな用紙が用紙案内部から離れる際の、幅方向端部の衝撃がさらに弱められる。
【0026】
請求項9の画像形成装置によれば、中央案内用可撓性部材と端部案内用可撓性部材が同レベルの可撓性を有するよりも、小サイズかつ硬質の用紙と大サイズかつ軟質の用紙のそれぞれについて衝撃吸収の目的により適合させた突出し部とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の画像形成装置の一実施形態としてのプリンタの概要を示した模式図である。
【
図2】
図1に円Rで示した部分の拡大模式図である。
【
図4】従来構造の用紙案内板とその用紙案内板に案内されながら2次転写位置に向かって搬送されている用紙を示した模式図である。
【
図5】
図3に示す第1例における中央案内可撓性部材に類似した形状の可撓性部材が案内部材に接着された構造の用紙案内板を示した模式図である。
【
図6】
図3に示した第1例の用紙案内板の、普通紙に対する作用説明図である。
【
図7】用紙案内板の第2例を示した模式平面図である。
【
図8】用紙案内板の第3例を示した模式平面図である。
【
図10】用紙案内板の第5例を示した模式図である。
【
図11】用紙案内板の第6例を示した模式図である。
【
図12】用紙案内板の第7例を示した模式図である。
【
図13】用紙案内板の第8例を示した模式図である。
【
図14】用紙案内板の第9例を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0029】
図1は、本発明の画像形成装置の一実施形態としてのプリンタの概要を示した模式図である。
【0030】
このプリンタ10には、トナー像を形成する像形成部10が設けられ、その下方には引出し自在な用紙トレイ30が配備されている。この用紙トレイ30内には、画像形成に用いられる、画像形成前の用紙Pが積み重ねられて収容されている。画像形成にあたっては、その用紙トレイ30から用紙が取り出され、その取り出された用紙P上に画像が形成されて、プリンタ10の上部に設けられている排紙トレイ11上に排紙される。なお、このプリンタ10では、例えば葉書とA4サイズの普通紙など、複数種類の用紙を使用することができる。このプリンタ10では、それまで使用していた用紙とは異なる種類の用紙を使用するときは用紙トレイ30内の用紙が取り替えられる。
【0031】
以下、このプリンタ10における画像形成の過程を説明する。
【0032】
像形成部20には、横に並ぶ4つの像形成エンジン50Y,50M,50C,50Kが備えられている。これらの像形成エンジン50Y,50M,50C,50Kは、それぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、および黒(K)の色のトナーでトナー像を形成するエンジンである。これらの像形成エンジン50Y,50M,50C,50Kは、使用するトナーの色の違いを除き、同一の構成を有する。以下では、色の区別が不要の場合には、色を表わす符号であるY,M,C,Kは省略し、数字のみの符号で説明する。
【0033】
各像形成エンジン50には、矢印A方向に回転する感光体ドラム51が備えられている。また、各像形成エンジン50には、その感光体ドラム51の回りに、帯電器52、露光器53、現像器54、転写器55、およびクリーナ56が備えられている。
【0034】
帯電器52は、感光体ドラム51の表面を一様に帯電する。
【0035】
露光器53は、画像データに応じて変調された露光光を感光体ドラム51に照射して、その感光体ドラム51の表面に静電潜像を形成する。
【0036】
現像器54には、その像形成エンジン50Y,50M,50C,50Kに応じた色(Y,M,C,K)のトナーが収容されている。現像器54は、その収容されているトナーで感光体ドラム51上の静電潜像を現像することにより感光体ドラム51上にトナー像を形成する。
【0037】
横に並ぶ4つの像形成エンジン50Y,50M,50C,50Kの上部には、中間転写ベルト61が配置されている。この中間転写ベルト61は、無端状のベルトであり、複数のロール62に巻き架けられていて、これら4つの像形成エンジン50Y,50M,50C,50Kに沿う循環移動径路上を矢印B方向に循環移動する。
【0038】
中間転写ベルト61の上方には、各色(Y,M,C,K)のトナーがそれぞれ収容された4つのトナーカートリッジ59Y,59M,59C,59Kが備えられている。各像形成エンジン50に備えられている各現像器54内のトナーが減少すると、対応するトナーカートリッジ59から現像器54にトナーが補給される。
【0039】
各像形成エンジン50の転写器55は、中間転写ベルト61の内側の、感光体ドラム51との間に中間転写ベルト61を挟む位置に配置されている。そしてこの転写器55の作用により、感光体ドラム51上に形成されたトナー像が中間転写ベルト61上に転写される。ここで、4つの像形成エンジン50Y,50M,50C,50Kにおいて形成された4つのトナー像は、中間転写ベルト61の循環移動に従って、その中間転写ベルト61上に順次重なるように転写される。
【0040】
クリーナ56は、感光体ドラム51上の、転写後に残存している不要のトナーを感光体ドラム51上から除去することで、感光体ドラム51を清掃する。
【0041】
中間転写ベルト61上に順次重なるように転写されたトナー像は、その中間転写ベルト61によって搬送される。そして、中間転写ベルト61が巻き架けられている複数のロール62のうちの1つであるバックアップロール621と2次転写ロール89とが中間転写ベルト61を挟んで対向する2次転写位置Tにおいて、2次転写ロール89の作用により用紙上に転写される。用紙上への転写後の中間転写ベルト61上に残存する不要なトナーは、クリーナ64により中間転写ベルト61から除去される。
【0042】
ここで、本実施形態における中間転写ベルト61および2次転写ロール89は、本発明にいう、それぞれ、トナー像保持部および転写部の各一例に相当する。
【0043】
用紙トレイ31に収容されている用紙は、ピックアップロール81により取り出され、複数枚重なって取り出されたときは、捌きロール82により確実に1枚に分離され、その1枚の用紙が矢印Cの向きに、タイミング調整ロール83にまで搬送される。
【0044】
そして、中間転写ベルト61上に転写されたトナー像が2次転写位置Tに搬送されるタイミングと同期して用紙Pがその2次転写位置Tに搬送されるようにタイミングが調整されて、タイミング調整ロール83により用紙Pが矢印Dの向きに送り出される。この送り出された用紙Pは、支持部材79に支持された用紙案内板70により2次転写位置Tに案内される。この用紙案内板70は、用紙Pの、中間転写ベルト61側を向いた第1面に接して、その用紙Pを2次転写位置Tに案内する部材である。そして、その2次転写位置Tにおいて、2次転写ロール89の作用により、中間転写ベルト61上のトナー像が用紙Pの第1面上に転写される。この用紙案内板70は、本発明にいう用紙案内部の一例に相当する。
【0045】
トナー像の転写を受けた用紙はさらに矢印Eの向きに搬送されて定着器40を通過する。この定着器40には、加圧ロール41と加熱ロール42とが備えられている。そして、この定着器40に搬送されてきた用紙Pは、加圧ロール41と加熱ロール42とに挟まれて加圧および加熱され、これにより用紙P上のトナー像がその用紙P上に定着される。
【0046】
定着器40を通過した用紙はさらに矢印Fの向きに搬送され、排紙ロール84により、像形成部20の上部に設けられている排紙トレイ11上に、矢印Gの向きに排出される。
【0047】
また、このプリンタ10では、1枚の用紙Pの両面に画像を形成することができる。用紙Pの両面に画像を生成するにあたっては、先ずは、上記と同様にして用紙Pの第1面に画像が形成され、その第1面に画像が形成された用紙Pが、排紙ロール84により、矢印Gの向きに、排紙トレイ11上に、途中まで送り出される。そして、その用紙Pが排紙ロール84に未だ挟まれている途中で、その排紙ロール84が逆転する。すると、用紙Pは、今度は矢印Hの向きに進み、さらに矢印I,Jの向きに搬送され、搬送ロール85によりさらに矢印Kの向きに搬送されて、再び、タイミング調整ロール83に至る。その後は、第1面への用紙形成と同様にして、今度は用紙Pの第2面に画像が形成される。そして、第2面に画像が形成された用紙Pが、今度は排紙トレイ11上に排出される。
【0048】
図2は、
図1に円Rで示した部分の拡大模式図である。
【0049】
この
図2には、用紙案内板70に案内されて用紙Pが2次転写位置Tに搬送されてくる様子が示されている。用紙Pが用紙案内板70に案内されながら2次転写位置Tに向かって矢印Dの向きに進み、その用紙Pの後端が用紙案内板70から外れると、その外れた瞬間に用紙Pの後端が矢印Xの向きに動いて、一点鎖線で示したように、用紙Pが中間転写ベルト61に接触する。この矢印Xの向きへの動きが急激であったり、あるいはイレギュラーな動きであったりすると、用紙Pが中間転写ベルト61上のトナー像を乱し、像ずれや像こすれといった画像欠陥が発生する。この画像欠陥の発生を防止あるいは抑制するには、用紙Pを、用紙案内板70からそっと離して、矢印Xの向きへの動きを緩やかにすることが必要である。
【0050】
以下では、この動きを緩やかにするための用紙案内板70の構造について説明する。以下では、用紙案内板70について複数の例を説明する。そこで、以下では、各例の用紙案内板70を互いに区別するために、用紙案内板70A,70B,・・のように、A,B,・・の符号を付加して示す。ただし、各例を互いに区別する必要がないときは、用紙案内板70と標記する。
【0051】
図3は、用紙案内板の第1例を示した3面図である。ここで、
図3(A)は平面図、
図3(B)は正面図、
図3(C)は側面図である。
【0052】
この
図3には、用紙案内板70Aの、2次転写位置T(
図1,
図2参照)に近い先端部部分のみが示されている。用紙P(
図1,
図2参照)は、この用紙案内板70Aにより、2次転写位置Tに向けて、矢印Dの向きに案内される。
【0053】
この用紙案内板70Aは、この用紙案内板70Aの本体である案内部材71と、その案内部材71の、2次転写位置T側の先端部711に接着により固着されたフイルム状の可撓性部材72とで構成されている。案内部材71の先端部711を除く部分712は、ここには先端部711の近傍の部分しか示されていないが、実際は、用紙搬送方向上流側(矢印Dの向きとは逆向き)にさらに広がっている。
【0054】
可撓性部材72は、例えばPETフイルムからなり、一対の端部案内用可撓性部材721,722と、中央案内用可撓性部材723とに分離されて、それらの各々が案内部材71の先端部711に接着されている。ここでは、案内部材71の、2次転写位置T側(矢印Dで示す側)の端縁71aが、本発明にいう基準の端縁の一例とされる。そして、一対の端部案内用可撓性部材721,722は、案内部材71の、矢印Dで示す用紙搬送方向に対し交わる幅方向(
図3(A)の左右方向)の両側において、その基準の端縁71aよりも2次転写位置T側に突出している。また、中央案内用可撓性部材723は、幅方向について、一対の端部案内用可撓性部材721,722に挟まれた中央部に備えられている。そして、この中央案内用可撓性部材723は、予め定められた頂部723a(ここでは、この頂部723aは、中央案内用可撓性部材723の幅方向の中央の位置にある)から幅方向それぞれの端部に向かうにしたがって突出量を減少させながら突出した形状を有する。
図4~
図6を参照して後述するように、この第1例の用紙案内板70Aによれば、端部案内用可撓性部材721,722あるいは中央案内用可撓性部材723が設けられていない場合と比べ、例えば葉書のような小サイズかつ硬質の用紙と、例えばA4サイズの普通紙のような大サイズかつ軟質の用紙との双方について、2次転写位置Tでの画像欠陥の発生が抑えられる。
【0055】
一対の端部案内用可撓性部材721,722および中央案内用可撓性部材723は、いずれもフイルム状の可撓性を有する部材であるため、それらの、基準の端縁71aよりも突出した部分は、可撓性を有し、用紙Pにより力が加わると撓み、可撓性のない用紙案内板の場合と比べ、その用紙案内板から用紙後端が離れる際の衝撃が抑えられる。この第1例では、案内部材71とは別に可撓性部材72(一対の端部案内用可撓性部材721,722および中央案内用可撓性部材723)を用意してその可撓性部材72を案内部材71に接着した構成であり、これにより、端縁71aよりも突出した部分について容易に可撓性が付与される。
【0056】
この
図3に示す第1例では、一対の端部案内用可撓性部材721,722と、案内部材71の先端部711の、端部案内用可撓性部材721,722の各々が接着されている部分とを合わせた構成が、本発明にいう一対の端部案内部の一例に相当する。また、これと同様に、中央案内用可撓性部材723と、案内部材71の先端部711の、中央案内用可撓性部材723が接着されている部分とを合わせた構成が、本発明にいう中央案内部の一例に相当する。そして、さらに、案内部材71の先端部711と、一対の端部案内用可撓性部材721,722および中央案内用可撓性部材723からなる可撓性部材72とを合わせた構成が、本発明にいう突出し部の一例に相当する。
【0057】
この用紙案内板70Aの場合、中央案内用可撓性部材723の頂部723aの、端縁71aからの突出量は、一対の端部案内用可撓性部材721,722の各々の、端縁71aからの突出量以上の突出量となっている。この用紙案内板70Aの場合、具体的には、
図3に示すように、頂部723aの、端縁71aからの突出量d1と、端部案内用可撓性部材721,722の突出量d2とを比べると、d1>d2となっている。説明は後に譲るが、これにより、d1<d2の場合と比べ、大サイズの用紙についての画像欠陥の発生がさらに抑えられる。
【0058】
また、この第1例の用紙案内板70Aの場合、中央案内用可撓性部材723の幅方向両端縁723b,723cは端縁71aよりも突出した位置まで延びている。中央案内用可撓性部材723の、端縁71aよりも引っ込んだ部分は、案内部材71への接着部であって、用紙が離れる際の衝撃吸収には役立たない。この第1例の場合、幅方向両端縁723b,723cを端縁71aよりも突出させたことにより、中央案内用可撓性部材723の幅方向全域が撓み、衝撃吸収に役立つことになる。
【0059】
図4は、従来構造の用紙案内板とその用紙案内板に案内されながら2次転写位置に向かって搬送されている用紙を示した模式図である。この
図4に示す用紙案内板は従来構造のものであり、本発明に対する比較例に相当する。ただし、分かり易さのため、ここでも、
図3に示した第1例と同じく、用紙案内板70、案内部材71、および可撓性部材72の用語をそのまま用いることとする。
【0060】
この従来構造の用紙案内板70は、案内部材71と、その案内部材71に接着された、矩形の可撓性部材72とで構成されている。ここでは、葉書サイズの厚紙の用紙P1が、矢印Dの向きに、用紙案内板70の幅方向中央部によって案内されている。葉書サイズの用紙P1は、横幅が狭いため、その用紙P1の側縁を支えて案内する部材がないまま搬送される。このため、
図4(B),(C)に示すように、傾いたまま搬送されることがある。
【0061】
図4(A)には、可撓性部材72が案内部材71に正しい姿勢で接着され、かつ、用紙P1が正しい姿勢で案内されている様子が示されている。このときは、用紙P1の後端縁P11が、幅方向全長に亘って可撓性部材72から一斉に離れることになる。この場合、用紙P1が受ける衝撃が強く、
図2に示した矢印Xの向きへの動きが急激となり、用紙P1が中間転写ベルト61に強くぶつかり、画像欠陥が発生するおそれが高い。
【0062】
また、
図4(B)には、可撓性部材72が案内部材71に傾いた姿勢で接着され、かつ、用紙P1も同じ向きに同じ角度だけ傾いた姿勢で案内されている様子が示されている。この場合も、用紙P1の後端縁P11は、幅方向全長に亘って可撓性部材72から一斉に離れることになり、画像欠陥が発生するおそれが高い。
【0063】
一方、
図4(C)には、可撓性部材72が案内部材71に正しい姿勢で接着され、用紙P1が傾いた姿勢で案内されている様子が示されている。この場合は、用紙P1の後端縁P11は、可撓性部材72から、時間をかけながらゆっくりと離れることになる。したがって、この場合は、用紙P1が受ける衝撃が弱められ、
図2に示した矢印Xの向きへの動きが緩やかとなり、用紙P1がは間転写ベルト61にそっと触れることになって、画像欠陥の発生が抑えられる。
【0064】
また、
図4(D)には、可撓性部材72が案内部材71に傾いた姿勢で接着され、用紙P1は正しい姿勢で案内されている様子が示されている。この場合も、用紙P1の後端縁P11は、可撓性部材72から、時間をかけながらゆっくりと離れることになり、画像欠陥の発生が抑えられる。
【0065】
図5は、
図3に示す第1例における中央案内可撓性部材に類似した形状の可撓性部材が案内部材に接着された構造の用紙案内板を示した模式図である。ここでは、この
図5を参照しながら、葉書等の小サイズの厚紙の用紙に対する、
図3に示した可撓性部材72のうちの中央案内可撓性部材723の作用について説明する。
【0066】
この
図5に示した可撓性部材72は、幅方向中央に最も突出した頂部72aを有し、その頂部72aから幅方向左右の各端部に向かうにしたがって突出量が減少する形状を有する。ここで、
図5(A)には、葉書サイズの厚紙の用紙P1が正しい姿勢で搬送されている様子が示されている。また、
図5(B)には、その用紙P1が少し傾いた姿勢で搬送されている様子が示されている。さらに、
図5(C)には、その用紙P1が
図5(B)とは逆向きに少し傾いた姿勢で搬送されている様子が示されている。
【0067】
可撓性部材72を、この
図5に示すように山形に突出した形状にすると、
図5(B)のように正しい姿勢で搬送された場合、
図5(B),(C)のように少し傾いた姿勢で搬送された場合のいずれであっても、用紙P1の後端縁P11が可撓性部材72からゆっくりと離れることになり、画像欠陥の発生が抑えられる。
【0068】
図6は、
図3に示した第1例の用紙案内板の、普通紙に対する作用説明図である。
【0069】
この
図6には、
図3にも示した用紙案内板70Aに案内されながら矢印Dの向きに進む用紙P2が示されている。この
図6には、用紙P2の後端縁P21の近傍の部分のみが示されているが、この用紙P2は、矢印Dの向きにさらに広がっている。
【0070】
この用紙P2は、このプリンタ10(
図1参照)で使用される範囲内における大サイズの用紙であって、さらに、葉書等の厚紙とは違い、可撓性のある用紙、例えば、A4サイズの普通紙である。
【0071】
ここで、この第1例の用紙案内板70Aの場合、
図3を参照して説明した通り、端部案内用可撓性部材721,722よりも中央案内用可撓性部材723の頂部723aの方が突出量が大きい。このため、矢印Dの向きに進んでいる用紙P2の後端縁P21がこの用紙案内板70Aから離れる際には、用紙P2は、先ずは、その左右両端部が端部案内用可撓性部材721,722から離れて中央案内用可撓性部材723の頂部723aのみで支持される状態を経由した後、その全域が用紙案内板70Aから離れることになる。すなわち、これにより、用紙P2が用紙案内板70Aからゆっくりと離れるという作用を成す。一方、これとは逆に、中央案内用可撓性部材723の頂部723aよりも端部案内用可撓性部材721,722の突出量が大きいと、用紙P2は、用紙案内板70から離れる最終まで、その幅方向両端部が端部案内用可撓性部材721,722支えられたままの状態となり、用紙P2の後端縁P21が用紙案内板70から一斉に離れるのと同様となって、用紙P2が用紙案内板70からゆっくりと離れるという作用が希薄となるおそれがある。したがって、この第1例の通り、端部案内用可撓性部材721,722よりも中央案内用可撓性部材723の頂部723aの方が突出量が大きい方が好ましい。
【0072】
また、端部案内用可撓性部材721,722は、この普通紙の用紙P2に関して、さらに別の作用を成す。
【0073】
図1に示すプリンタ10は、用紙Pの両面に画像を形成することができるプリンタである。このため、用紙Pの両面に画像を形成するにあたっては、第1面への画像形成時に定着器40を通過し、その後、第2面への画像形成にあたって、再度、この用紙案内板70Aに案内される。
【0074】
ここで、
図6(B)には、3種類の用紙P2-1,P2-2,P2-3が示されている。これら3種類の用紙P2-1,P2-2,P2-3は画像形成前は同一種類の用紙P2である。これら3種類の用紙P2-1,P2-2,P2-3のうち、用紙P2-1は、カールのない用紙である。また、用紙P2-2は、幅方向中央部が用紙案内板70Aに接し、両端部が用紙案内板70Aから浮く向きにカールしている用紙である。また、用紙P2-3は、用紙P2-2とは逆向きにカールし、幅方向両端部が用紙案内板70Aに接し、中央部が用紙案内板70Aはら浮いた状態にある。これらのカールが生じる原因は、定着器40にあり、用紙P2-1の向きのカールが生じるか、あるいは用紙P2-3の向きのカールが生じるかは、その定着器40の構造に起因する。
【0075】
以下に説明する作用は、それら3種類の用紙P2-1,P2-2,P2-3のうちの、中央が浮く向きにカールした用紙P2-3の場合に特に有効な作用である。
【0076】
仮に、端部案内用可撓性部材721,722が存在しない場合、用紙P2は、その後端縁P21が案内部材71の端縁71aから離れた時点で、円Eで示した両端部が中間転写ベルト61(
図1,
図2参照)に向かって垂れ下がって中間転写ベルト61上のトナー像に接触し、画像欠陥を生じるおそれがある。端部案内用可撓性部材721,722は、用紙P2の後端縁P21が中間転写ベルト61に十分に近づくまで用紙P2の後端部の両端を支持してから離す作用を成す。これにより、用紙P2の後端部の両端部が中間転写ベルト61にそっと接触し、その部分への画像欠陥の発生が抑えられる。また、この第1例の場合、中央案内用可撓性部材723とともに端部案内用可撓性部材721,722が撓むため、その撓みにより、用紙P2の円Eの部分が端部案内用可撓性部材721,722から離れるときには、中間転写ベルト61にさらに近づいた状態となり、これにより、画像欠陥の発生がさらに抑えられる。
【0077】
以上で、第1例の説明を終了し、以下、第2例以降の各例のついて説明する。なお、以下の各例の説明にあたっては、第1例の用紙案内板70Aの要素に対応する要素には、同じ符号を付して示し、相違点のみを説明する。
【0078】
図7は、用紙案内板の第2例を示した模式平面図である。
【0079】
図3の場合と同様、この
図7に示す用紙案内板70Bも、2次転写位置T(
図1,
図2参照)に近い先端部分のみが示されている。この
図7に続く各図の場合も同様である。
【0080】
この用紙案内板70Bは、案内部材71と、その案内部材71の2次転写位置T側の先端部711に接着された、例えばPETフイルム等からなる可撓性部材72とで構成されている。
図3に示した第1例の場合、可撓性部材72は、一対の端部案内用可撓性部材721,722と中央案内用可撓性部材723とに分離されてそれらの各々が案内部材71の先端部711に接着されている。これに対し、この
図7に示す第2例の用紙案内板70Bの場合、可撓性部材72は、それら一対の端部案内用可撓性部材721,722と中央案内用可撓性部材723とが一体的に繋がった、1枚のフイルム状の部材で構成されている。
【0081】
可撓性部材72は、このように一体的に繋がった1枚のフイルム状の部材であってもよい。ただし
図3に示した第1例のように分離した構造を採用すると、材料の節約に役立つことになる。
【0082】
図8は、用紙案内板の第3例を示した模式平面図である。
【0083】
この
図8に示す第3例の用紙案内板70Cを構成する可撓性部材72は、
図3に示した第1例の場合と同様、一対の端部案内用可撓性部材721,722と中央案内用可撓性部材723とに分離されていて、それぞれが案内部材71の先端部711に接着されている。ただし、
図3に示した第1例の場合、端部案内用可撓性部材721,722の端縁71aからの突出量は幅方向(
図8の左右方向)について均一であるのに対し、この
図8に示す第3例の用紙案内板70Cの場合、端部案内用可撓性部材721,722は、幅方向の位置によって突出量が異なる形状となっている。この幅方向の突出量の変化は、実線で示すように直線的な変化であってもよく、あるいは1点鎖線で示すように弧を描く変化であってもよい。あるいは、2点鎖線で示すように、実線と比べて幅方向逆向きに変化した形状であってもよく、あるいは、点線で示すように、中央の突出量が大きく両側ほど突出量を減じた形状であってもよい。
【0084】
このような、幅方向に異なる突出量の端部案内用可撓性部材721,722を採用すると、
図3に示した第1例の場合のような、突出量が幅方向に一定の端部案内用可撓性部材721,722を採用した場合と比べ、用紙P2の後端縁P21が可撓性部材72の先端に近づいたときの撓みが大きくなり、用紙P2が用紙案内板70Cから離れる際の、
図6に円Eで示す幅方向端部にかかる衝撃がさらに弱められる。
【0085】
また、この
図8に示す第3例の用紙案内板70Cの場合、中央案内用可撓性部材723の形状も、
図3に示した第1例の中央案内用可撓性部材723とは異なっている。すなわち、
図3に示した第1例の場合、中央案内用可撓性部材723は、その頂部723aから両側に向かって直線状にその突出量を減じる形状となっているが、この第3例の場合、その突出量を弧状に減じる形状となっている。この弧形状は、実線で示すように頂部723aを尖らせる向きの弧形状であってもよく、あるいは、1点鎖線で示すように頂部723aを鈍らせる向きの弧形状であってもよい。このような形状の工夫により、用紙P2の後端縁P21(
図6参照)が用紙案内板70Cの先端に進んで行ったときの中央案内用可撓性部材723の撓みの変化を調整することができる。
【0086】
図9は、用紙案内板の第4例を示した模式図である。ここで、
図9(A)は平面図、
図9(B)は正面図である。
【0087】
図3に示した第1例の用紙案内板70Aの場合、端部案内用可撓性部材721,722と中央案内用可撓性部材723は、同じ材質、同じ厚みのフイルム状の部材である。これに対し、この
図9に示す第4例の用紙案内板70Dの場合、
図9(B)にあらわれている通り、中央案内用可撓性部材723は、端部案内用可撓性部材721,722と比べ、材質は同じであるが厚みのある部材となっている。すなわち、この第4例の場合、中央案内用可撓性部材723は、一対の端部案内用可撓性部材721,722と比べ可撓性が低い。これは、葉書等の小サイズの厚紙の用紙P1(
図5参照)と大サイズの普通紙からなる用紙P2(
図6参照)に対応づけたものである。厚紙の用紙P1の場合、その腰の強さで中央案内用可撓性部材723が強く押されるため、それに対抗するだけの腰の強さが必要となる。これに対し、普通紙からなる用紙P2の場合、腰が弱く可撓性部材72を弱くしか押さない。したがって、端部案内用可撓性部材721,722よりも中央案内用可撓性部材723の可撓性を下げることにより、中央案内用可撓性部材723と端部案内用可撓性部材721,722が同レベルの可撓性を有する場合と比べ、小サイズかつ硬質の用紙P1と大サイズかつ軟質の用紙とのそれぞれについて、衝撃吸収の目的に一層適合した可撓性部材72とすることができる。なお、ここでは、厚みを変えることにより可撓性を調整しているが、厚みは一定とし、あるいは厚みを変えるとともに、材質を変えることにより、中央案内用可撓性部材723あるいは端部案内用可撓性部材721,722の可撓性を調整してもよい。
【0088】
図10は、用紙案内板の第5例を示した模式図である。ここで、
図10(A)は平面図、
図10(C)は側面図である。
【0089】
図3に示した第1例の用紙案内板70Aの場合、案内部材71は、その先端部711を含む全体が平板状の部材である。これに対し、この
図10に示す第5例の場合、案内部材71の先端部711の、用紙P側を向いた面が、中間転写ベルト61(
図1,
図2参照)に近づく向きに屈曲した面となっている。その屈曲した面に可撓性部材72(中央案内用可撓性部材723と一対の端部案内用可撓性部材721,722)が接着されている。この可撓性部材72の形状等は、
図3の第1例の用紙案内板70Aの場合と同一である。
【0090】
このように、案内部材71の先端部711と可撓性部材72とからなる、本発明にいう突出し部の、用紙P側を向いた面を、中間転写ベルト61に近づく向きに屈曲させると、この用紙案内板70Eから用紙Pが離れる直前には、その用紙Pの後端が中間転写ベルト61に、さらに近づく位置に進み、
図3に示した、屈曲のない突出し部を備えた用紙案内板70Aと比べ、その用紙案内板70Eから用紙Pの後端が離れたときの衝撃がさらに抑えられる。
【0091】
図11は、用紙案内板の第6例を示した模式図である。ここで、
図11(A)は平面図、
図11(C)は側面図である。
【0092】
図10に示した第5例の用紙案内板70Eの場合、案内部材71の先端部711は、用紙P側を向いた片面のみが屈曲した形状となっている。これに対し、この
図11に示す第6例の場合、案内部材71の先端部711は、その表裏両面ともに、中間転写ベルト61(
図1,
図2参照)に近づく向きに屈曲した面となっている。すなわち、この第6例の場合、板状の案内部材71の先端部711が斜めに折り曲げられている。そして、その折り曲げられた先端部711に可撓性部材72(中央案内用可撓性部材723と一対の端部案内用可撓性部材721,722)が接着されている。この可撓性部材72の形状等は、
図3の第1例の用紙案内板70Aの場合と同一である。
【0093】
このように、案内部材71の先端部711と可撓性部材72とからなる、本発明にいう突出し部を、中間転写ベルト61に近づく向きへの板の折り曲げにより、屈曲させてもよい。その場合も、
図10に示した第5例の場合と同様、この用紙案内板70Fから用紙Pが離れる直前には、その用紙Pの後端が中間転写ベルト61に、さらに近づく位置に進み、
図3に示した、屈曲のない突出し部を備えた用紙案内板70Aと比べ、その用紙案内板70Eから用紙Pの後端が離れたときの衝撃がさらに抑えられる。
【0094】
図12は、用紙案内板の第7例を示した模式図である。ここで、
図12(A)は平面図、
図12(C)は側面図である。
【0095】
これまで説明してきた第1例~第6例の用紙案内板70A~70Fは、案内部材71に可撓性部材72を接着した構造を有するが、この
図12に示す第7例の用紙案内板70Gは、案内部材71のみで構成されている。ただし、この案内部材71の先端部分の平面形状は、
図3に示した第1例の用紙案内板80Aの、可撓性部材72を含めた形状と同一の形状となっている。この場合、凹凸のある2次転写位置T側の端縁の中で用紙搬送方向最も上流側の部分が、本発明にいう基準の端縁の一例に相当する端縁71aとして定義することができる。
【0096】
この第7例の用紙案内板70Gの場合、
図3に示した、可撓性部材72を備えた用紙案内板70Aと比べ、先端部分の可撓性は失われ、その先端部分の形状のみで衝撃吸収が図られることとなり、
図3に示した、可撓性部材72を備えた用紙案内板70Aと比べ、衝撃吸収能が低下する。ただし、衝撃吸収の作用がこれで十分な場合は、案内部材71のみで構成された用紙案内板とすることにより、用紙案内板のコストを下げることができる。
【0097】
図13は、用紙案内板の第8例を示した模式図である。ここで、
図13(A)は平面図、
図13(C)は側面図、
図13(D)は、この第8例における変形例の側面図である。
【0098】
この
図13に示す第8例の用紙案内板70Hは、
図12に示した第7例の用紙案内板70Gと同様、案内部材71のみで構成されている。ただし、この第8例の用紙案内板70Hの場合は、その案内部材71の先端部分の、用紙P側を向いた面が、
図10に示した第5例の用紙案内板70Eと同様、中間転写ベルト61に近づく向きに屈曲している。
【0099】
例えば
図3の第1例の用紙案内板70Aのように、可撓性部材72を備えると、その可撓性部材72が中間転写ベルト61側に撓むことで衝撃がさらに吸収されることになるが、この第8例の用紙案内板70Hの場合は、可撓性部材72を備えて撓ませることの代わりに、先端部分の用紙P側を向いた面を屈曲させることで、衝撃吸収能を向上させている。すなわち、案内部材71の先端部分の用紙P側を向いた面を中間転写ベルト61に近づく向きに屈曲させたことで、先端部分の屈曲のない、
図12に示す第7例の用紙案内板70Gと比べ、この用紙案内板70Hから用紙Pが離れる直前には、その用紙Pの後端が中間転写ベルト61により近づき、その用紙案内板70Eから用紙Pの後端が離れるときの衝撃がさらに抑えられる。この屈曲に代えて、
図13(D)に示すように、案内部材の先端部分の用紙P側を向いた面を、中間転写ベルト61側に湾曲させてもよい。
【0100】
図14は、用紙案内板の第9例を示した模式図である。ここで、
図14(A)は平面図、
図14(C)は側面図、
図14(D)は、この第9例における変形例の側面図である。
【0101】
この
図14に示す第9例の用紙案内板70Iは、
図12に示した第7例の用紙案内板70Gおよび
図13に示した第8例の用紙案内板70Hと同様、案内部材71のみで構成されている。ただし、この第9例の用紙案内板70Iの場合は、板形状の案内部材71の先端部分の折り曲げにより、中間転写ベルト61に近づく向きに屈曲している。
【0102】
この
図14に示す第9例の用紙案内板70Iの場合も、
図13に示した第8例の用紙案内板70Hと同様、可撓性部材72を備えて撓ませるのではなく、先端部分を屈曲させることで、衝撃吸収能を向上させている。すなわち、案内部材71の先端部分を中間転写ベルト61に近づく向きに屈曲させたことで、先端部分の屈曲のない、
図12に示す第7例の用紙案内板70Gと比べ、この用紙案内板70Iから用紙Pが離れる直前には、その用紙Pの後端が中間転写ベルト61により近づき、その用紙案内板70Iから用紙Pの後端が離れるときの衝撃がさらに抑えられる。この屈曲に代えて、
図14(D)に示すように、案内部材の先端部分の折り曲げにより、中間転写ベルト61側に湾曲させてもよい。
【0103】
以上の各例の用紙案内板70A~70Iによれば、小サイズかつ硬質の、例えば葉書などの用紙と、葉書と比べ大サイズかつ軟質の、例えばA4サイズの普通紙などの用紙との双方について、転写時における像ずれや像こすれといった画像欠陥の発生が抑えられる。
【符号の説明】
【0104】
10 プリンタ
20 像形成部
30 用紙トレイ
61 中間転写ベルト
621 バックアップロール
70 用紙案内板
71 案内部材
711 案内部材の先端部
712 案内部材の先端部を除く部分
72 可撓性部材
721,722 端部案内用可撓性部材
723 中央案内用可撓性部材
723a 頂部
83 タイミング調整ロール
89 2次転写ロール