(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】クレーン
(51)【国際特許分類】
B66C 23/26 20060101AFI20220712BHJP
B66C 23/36 20060101ALI20220712BHJP
B66C 23/66 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
B66C23/26 C
B66C23/36 A
B66C23/66 Z
(21)【出願番号】P 2018067417
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2020-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100178582
【氏名又は名称】行武 孝
(72)【発明者】
【氏名】前藤 鉄兵
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-109810(JP,A)
【文献】実開平03-041787(JP,U)
【文献】特開平09-240989(JP,A)
【文献】実開昭58-170383(JP,U)
【文献】国際公開第2019/050404(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 19/00-23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンであって、
クレーン本体と、
前記クレーン本体に起伏可能に軸支されるブームと、
前記ブームの先端部に起伏可能に軸支されるジブと、
前記ジブの後
側において前記ブームの先端部
または前記ジブの基端部に回動可能に軸支されるとともに、前記ジブと一体的に回動するように当該ジブに連結されるフロントストラットと、
前記フロントストラットの後側の位置で前記ブームの先端部
または前記ジブの基端部に回動可能に軸支されるリアストラットと、
前記リアストラットの先端部と前記フロントストラットの先端部との間で掛け渡されるジブ起伏用ロープと、
前記ジブ起伏用ロープの巻き取りおよび繰り出しを行うことで、前記リアストラットに対して前記フロントストラットを相対的に回動させて前記ジブを起伏させるジブ起伏用ウインチと、
吊り荷の巻上げおよび巻下げを行うための吊り荷用ロープと、
前記吊り荷用ロープの巻き取りおよび繰り出しを行う吊り荷用ウインチと、
前記吊り荷
用ロープを支持可能なシーブと前記シーブを回転可能に支持するブラケットとを含むシーブユニットと、
前記ブームの先端部に配置される第1ユニット保持部であって、前記ジブ、前記フロントストラットおよび前記リアストラットが前記ブームから脱離され前記ブームの先端部から前記吊り荷用ロープが垂下される前記クレーンの基本形態において前記吊り荷用ウインチから引き出された前記吊り荷用ロープが前記シーブによって支持されるとともに前記ブームの先端部から垂下されるように前記シーブユニットを保持することが可能な第1ユニット保持部と、
前記リアストラットおよび前記フロントストラットのうちの少なくとも一方のストラットである特定ストラットに配置される第2ユニット保持部であって、前記ジブ、前記フロントストラットおよび前記リアストラットが前記ブームに装着され前記ジブの先端部から前記吊り荷用ロープが垂下される前記クレーンのラッフィング形態において前記吊り荷用ウインチから引き出された前記吊り荷用ロープが前記シーブによって支持されるとともに前記ジブの先端部から垂下されるように前記シーブユニットを保持することが可能な第2ユニット保持部と、
を備え、
前記シーブユニットは、前記第1ユニット保持部および前記第2ユニット保持部に選択的に着脱され
、
前記シーブユニットの前記ブラケットは、
所定の第1回転軸を中心に回転可能なように前記シーブを支持する一対のシーブ支持部であって、当該一対のシーブ支持部には、前記シーブの回転における径方向において前記第1回転軸に対して間隔をおいた位置に配置されるブラケット第1孔部と、前記径方向において前記第1回転軸に対して間隔をおいた位置であって前記ブラケット第1孔部に対して前記シーブの回転方向に間隔をおいた位置に配置されるブラケット第2孔部とがそれぞれ開口されている、一対のシーブ支持部と、
前記一対のシーブ支持部のうち前記第1回転軸に対して前記ブラケット第1孔部および前記ブラケット第2孔部とは反対側の部分に固定され、所定の補助吊り上げ装置に接続されることが可能な被吊り上げ部と、
前記第1ユニット保持部および前記第2ユニット保持部のうちの少なくとも一方のユニット保持部である特定ユニット保持部に対する前記シーブユニットの位置を決定するユニット位置決め部と、
を有し、
前記特定ユニット保持部は、
前記ユニット位置決め部と係合可能な被係合部と、
前記シーブユニットを受け入れることで前記第1回転軸の軸方向において前記一対のシーブ支持部にそれぞれ対向して配置される一対の保持部側支持部であって、当該一対の保持部側支持部には、前記軸方向において前記一対のブラケット第1孔部に合致するように配置される一対の保持部側第1孔部と、前記軸方向において前記一対のブラケット第2孔部に合致するように配置される一対の保持部側第2孔部とがそれぞれ開口されており、
前記被吊り上げ部が前記補助吊り上げ装置に接続され前記シーブユニットが吊り上げられた状態で前記ユニット位置決め部が前記特定ユニット保持部の前記被係合部に係合され、前記シーブユニットが前記ユニット位置決め部を通り前記第1回転軸と平行な第2回転軸回りに回動されると、前記ブラケット第1孔部が保持部側第1孔部に合致するとともに前記ブラケット第2孔部が保持部側第2孔部に合致するように、前記ユニット位置決め部と前記ブラケット第1孔部との距離と前記被係合部と前記保持部側第1孔部との距離が同じに設定されている一方、前記ブラケット第1孔部と前記ブラケット第2孔部との距離と前記保持部側第1孔部と前記保持部側第2孔部との距離が同じに設定されている、クレーン。
【請求項2】
前記特定ストラットまたは前記ブームが地上に載置された状態において、前記特定ユニット保持部の前記保持部側第1孔部は、前記保持部側第2孔部の上方に間隔をおいた位置に配置されており、前記被係合部は、前記ユニット位置決め部を下方から支持可能なように前記保持部側第1孔部に隣接して配置されている、請求項
1に記載のクレーン。
【請求項3】
前記ユニット位置決め部は、前記第1回転軸と前記
ブラケット第1孔部との間において前記第1回転軸と平行に延びるとともに前記一対のシーブ支持部を互いに接続するように配置される位置決めピンであり、
前記被係合部は、前記位置決めピンを下方から保持可能なフック形状を有する、請求項
2に記載のクレーン。
【請求項4】
クレーンであって、
クレーン本体と、
前記クレーン本体に起伏可能に軸支されるブームと、
前記ブームの先端部に起伏可能に軸支されるジブと、
前記ジブの後側において前記ブームの先端部または前記ジブの基端部に回動可能に軸支されるとともに、前記ジブと一体的に回動するように当該ジブに連結されるフロントストラットと、
前記フロントストラットの後側の位置で前記ブームの先端部または前記ジブの基端部に回動可能に軸支されるリアストラットと、
前記リアストラットの先端部と前記フロントストラットの先端部との間で掛け渡されるジブ起伏用ロープと、
前記ジブ起伏用ロープの巻き取りおよび繰り出しを行うことで、前記リアストラットに対して前記フロントストラットを相対的に回動させて前記ジブを起伏させるジブ起伏用ウインチと、
吊り荷の巻上げおよび巻下げを行うための吊り荷用ロープと、
前記吊り荷用ロープの巻き取りおよび繰り出しを行う吊り荷用ウインチと、
前記吊り荷用ロープを支持可能なシーブと所定の第1回転軸を中心に前記シーブを回転可能に支持するブラケットとを含むシーブユニットと、
前記ブームの先端部に配置される第1ユニット保持部であって、前記ジブ、前記フロントストラットおよび前記リアストラットが前記ブームから脱離され前記ブームの先端部から前記吊り荷用ロープが垂下される前記クレーンの基本形態において前記吊り荷用ウインチから引き出された前記吊り荷用ロープが前記シーブによって支持されるとともに前記ブームの先端部から垂下されるように前記シーブユニットを保持することが可能な第1ユニット保持部と、
前記リアストラットおよび前記フロントストラットのうちの少なくとも一方のストラットである特定ストラットに配置される第2ユニット保持部であって、前記ジブ、前記フロントストラットおよび前記リアストラットが前記ブームに装着され前記ジブの先端部から前記吊り荷用ロープが垂下される前記クレーンのラッフィング形態において前記吊り荷用ウインチから引き出された前記吊り荷用ロープが前記シーブによって支持されるとともに前記ジブの先端部から垂下されるように前記シーブユニットを保持することが可能な第2ユニット保持部と、
を備え、
前記シーブユニットは、前記第1ユニット保持部および前記第2ユニット保持部に選択的に着脱され、
前記シーブユニットの前記ブラケットは、
ブラケット第1孔部が開口された第1支持部およびブラケット第2孔部が開口された第2支持部を含むシーブ支持部と、
所定の補助吊り上げ装置に接続されることが可能な被吊り上げ部と、
を有し、
前記第1ユニット保持部および前記第2ユニット保持部は、保持部側第1孔部が開口された第1固定部と保持部側第2孔部が開口された第2固定部とをそれぞれ有し、
前記保持部側第1孔部と前記保持部側第2孔部とが水平方向に並んでいる場合、前記ブラケット第1孔部および前記ブラケット第2孔部が水平方向に並ぶように前記被吊り上げ部において前記補助吊り上げ装置によって吊り上げられた前記シーブユニットが下げられることで、前記ブラケット第1孔部が前記保持部側第1孔部に合致するとともに前記ブラケット第2孔部が前記保持部側第2孔部に合致し、
前記保持部側第1孔部と前記保持部側第2孔部とが上下方向に並んでいる場合、前記ブラケット第1孔部および前記ブラケット第2孔部が水平方向に並ぶように前記被吊り上げ部において前記補助吊り上げ装置によって吊り上げられた前記シーブユニットのうち、前記第1支持部が前記第1固定部に係合したのち、当該第1固定部を支点として前記シーブユニットが回動されることで、前記第2支持部が前記第2固定部に近づき、前記ブラケット第1孔部および前記ブラケット第2孔部が前記保持部側第1孔部および前記保持部側第2孔部にそれぞれ合致することが可能なように、
前記被吊り上げ部が、前記第1回転軸に対して、前記第1支持部および前記第2支持部とは反対側に配置されている、クレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動式クレーンとして、下部走行体と、上部旋回体と、起伏部材と、を備えたものが知られている。起伏部材は、水平な回転中心軸回りに起伏可能なように上部旋回体に支持される。
【0003】
特許文献1には、起伏部材としてのブームが上部旋回体に装着されたクレーンが開示されている。当該クレーンは、主巻用ウインチと、アイドラシーブと、ブームポイントシーブと、主巻ロープと、フックと、を更に備える。主巻用ウインチは、上部旋回体に備えられる。アイドラシーブは、ブームの先端部の背面側に回転可能に支持されている。また、ブームポイントシーブは、ブームの先端部の前面側に回転可能に支持されている。主巻用ウインチから引き出された主巻ロープがアイドラシーブに掛けられた後、ブームポイントシーブと吊荷用のフックに設けられたシーブブロックのシーブとの間に掛け渡される。主巻用ウインチが主巻ロープの巻き取りや繰り出しを行うと、ブームの先端部から垂下されたフックの巻上げ及び巻下げが行われる。
【0004】
上記のようにブームの先端部から垂下されたフックを備えるクレーン(基本形態)よりも、更に高い位置からフックが吊り下げられる構成が必要とされる場合には、上記の基本形態からラッフィング形態にクレーンの形態が変更される。ラッフィング形態では、上記のブームの先端部にジブが起伏可能に接続され、当該ジブの先端部から主巻ロープを介してフックが垂下される。当該クレーンは、更に、フロントストラットとリアストラットとを備える。フロントストラットはジブの後方でブームの先端部に回動可能に軸支されるとともに、ガイラインによってジブの先端部に接続されている。この結果、フロントストラットとジブとは一体的に回動する。また、リアストラットはフロントストラットの後方でブームの先端部に回動可能に軸支される。フロントストラットの先端部に配置されたシーブブロックとリアストラットの先端部に配置されたシーブブロックとの間に掛け渡されたジブ起伏用ロープの巻き取り、繰り出しが行われることで、ジブがブームに対して起伏する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような構成のクレーンにおいて、ブームの先端部からフックが垂下される基本形態からラッフィング形態にクレーンの形態が変更される場合、所定の形態において使用されない部材が発生しクレーンのコストが増してしまうという問題があった。具体的に、基本形態においてブームの先端部に備えられているアイドラシーブは、ラッフィング形態では不要となる。一方、ラッフィング形態ではフロントストラットやリアストラットの中間部に主巻ロープを支持するための他のアイドラシーブが備えられている。したがって、各形態で使用されるアイドラシーブが個別に備えられているため、クレーンのコストが増加してしまう。
【0007】
また、上記の構成では、アイドラシーブがブームの先端部にも備えられているため、ラッフィング形態では、吊り作業中あるいは自立・降下作業中において、アイドラシーブの質量の分だけクレーンが前方に転倒する方向にかかるモーメントが大きくなるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、複数の形態に形態変更が可能なクレーンにおいて、各形態間でシーブを有効活用することでクレーンのコストを低減するとともにクレーンに不要なモーメントが付与されることを抑止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一局面に係るクレーンは、クレーン本体と、前記クレーン本体に起伏可能に軸支されるブームと、前記ブームの先端部に起伏可能に軸支されるジブと、前記ジブの後側において前記ブームの先端部または前記ジブの基端部に回動可能に軸支されるとともに、前記ジブと一体的に回動するように当該ジブに連結されるフロントストラットと、前記フロントストラットの後側の位置で前記ブームの先端部または前記ジブの基端部に回動可能に軸支されるリアストラットと、前記リアストラットの先端部と前記フロントストラットの先端部との間で掛け渡されるジブ起伏用ロープと、前記ジブ起伏用ロープの巻き取りおよび繰り出しを行うことで、前記リアストラットに対して前記フロントストラットを相対的に回動させて前記ジブを起伏させるジブ起伏用ウインチと、吊り荷の巻上げおよび巻下げを行うための吊り荷用ロープと、前記吊り荷用ロープの巻き取りおよび繰り出しを行う吊り荷用ウインチと、前記吊り荷用ロープを支持可能なシーブと前記シーブを回転可能に支持するブラケットとを含むシーブユニットと、前記ブームの先端部に配置される第1ユニット保持部であって、前記ジブ、前記フロントストラットおよび前記リアストラットが前記ブームから脱離され前記ブームの先端部から前記吊り荷用ロープが垂下される、前記クレーンの基本形態において前記吊り荷用ウインチから引き出された前記吊り荷用ロープが前記シーブによって支持されるとともに前記ブームの先端部から垂下されるように前記シーブユニットを保持することが可能な第1ユニット保持部と、前記リアストラットおよび前記フロントストラットのうちの少なくとも一方のストラットである特定ストラットに配置される第2ユニット保持部であって、前記ジブ、前記フロントストラットおよび前記リアストラットが前記ブームに装着され前記ジブの先端部から前記吊り荷用ロープが垂下される、前記クレーンのラッフィング形態において前記吊り荷用ウインチから引き出された前記吊り荷用ロープが前記シーブによって支持されるとともに前記ジブの先端部から垂下されるように前記シーブユニットを保持することが可能な第2ユニット保持部と、を備え、前記シーブユニットは、前記第1ユニット保持部および前記第2ユニット保持部に選択的に着脱され、前記シーブユニットの前記ブラケットは、所定の第1回転軸を中心に回転可能なように前記シーブを支持する一対のシーブ支持部であって、当該一対のシーブ支持部には、前記シーブの回転における径方向において前記第1回転軸に対して間隔をおいた位置に配置されるブラケット第1孔部と、前記径方向において前記第1回転軸に対して間隔をおいた位置であって前記ブラケット第1孔部に対して前記シーブの回転方向に間隔をおいた位置に配置されるブラケット第2孔部とがそれぞれ開口されている、一対のシーブ支持部と、前記一対のシーブ支持部のうち前記第1回転軸に対して前記ブラケット第1孔部および前記ブラケット第2孔部とは反対側の部分に固定され、所定の補助吊り上げ装置に接続されることが可能な被吊り上げ部と、前記第1ユニット保持部および前記第2ユニット保持部のうちの少なくとも一方のユニット保持部である特定ユニット保持部に対する前記シーブユニットの位置を決定するユニット位置決め部と、を有し、前記特定ユニット保持部は、前記ユニット位置決め部と係合可能な被係合部と、前記シーブユニットを受け入れることで前記第1回転軸の軸方向において前記一対のシーブ支持部にそれぞれ対向して配置される一対の保持部側支持部であって、当該一対の保持部側支持部には、前記軸方向において前記一対のブラケット第1孔部に合致するように配置される一対の保持部側第1孔部と、前記軸方向において前記一対のブラケット第2孔部に合致するように配置される一対の保持部側第2孔部とがそれぞれ開口されており、前記被吊り上げ部が前記補助吊り上げ装置に接続され前記シーブユニットが吊り上げられた状態で前記ユニット位置決め部が前記特定ユニット保持部の前記被係合部に係合され、前記シーブユニットが前記ユニット位置決め部を通り前記第1回転軸と平行な第2回転軸回りに回動されると、前記ブラケット第1孔部が保持部側第1孔部に合致するとともに前記ブラケット第2孔部が保持部側第2孔部に合致するように、前記ユニット位置決め部と前記ブラケット第1孔部との距離と前記被係合部と前記保持部側第1孔部との距離が同じに設定されている一方、前記ブラケット第1孔部と前記ブラケット第2孔部との距離と前記保持部側第1孔部と前記保持部側第2孔部との距離が同じに設定されている。
【0010】
本構成によれば、クレーンは、ブームの先端部から吊り荷用ロープが垂下される基本形態と、ジブの先端部から吊り荷用ロープが垂下されるラッフィング形態と、の間で形態変更が可能とされる。そして、クレーンは、シーブを含むシーブユニットと、ブームに配置されシーブユニットを保持可能な第1ユニット保持部と、特定ストラットに配置されシーブユニットを保持可能な第2ユニット保持部と、を備える。クレーンが基本形態に設定される際には、前記シーブユニットが第1ユニット保持部に保持されることで、ブームの先端部でシーブが吊り荷用ロープを支持することができる。一方、クレーンがラッフィング形態に設定される際には、同じシーブユニットが第2ユニット保持部に保持されることで、特定ストラットにおいてシーブが吊り荷用ロープを支持することができる。したがって、基本形態およびラッフィング形態の2つの形態において吊り荷用ロープを支持するために、ブームの先端部および特定ストラットに個別のシーブが回転可能に保持されている他のクレーンと比較して、クレーンのコストを低減することができる。また、ラッフィング形態では、前記シーブユニットが第1ユニット保持部に装着されていないため、ブームの先端部に不要なモーメントがかかることを抑止することができる。
【0011】
また、本構成によれば、シーブユニットを第1ユニット保持部および第2ユニット保持部のうちの少なくとも一方のユニット保持部である特定ユニット保持部に容易に装着、固定することができる。具体的に、補助クレーンなどの補助吊り上げ装置がシーブユニットの被吊り上げ部に接続された状態で、シーブユニットが吊り上げられる。そして、シーブユニットのユニット位置決め部が特定ユニット保持部の被係合部に係合され、シーブユニットが第2回転軸回りに回動されると、一対のブラケット第1孔部が一対の保持部側第1孔部に合致するとともに一対のブラケット第2孔部が一対の保持部側第2孔部に合致する。このため、作業者は、合致した各孔部に連結ピンを挿入することで、シーブユニットを容易に特定ユニット保持部に固定することができる。
【0012】
上記の構成において、前記特定ストラットまたは前記ブームが地上に載置された状態において、前記特定ユニット保持部の前記保持部側第1孔部は、前記保持部側第2孔部の上方に間隔をおいた位置に配置されており、前記被係合部は、前記ユニット位置決め部を下方から支持可能なように前記保持部側第1孔部に隣接して配置されていることが望ましい。
【0013】
本構成によれば、シーブユニットのユニット位置決め部が特定ユニット保持部の被係合部に係合されると、補助吊り上げ装置がシーブユニットを下降させることで、シーブユニットの自重によってシーブユニットが第2回転軸回りに回動することができる。したがって、シーブユニットを特定ユニット保持部に更に容易に固定することができる。
【0014】
上記の構成において、前記ユニット位置決め部は、前記第1回転軸と前記ブラケット第1孔部との間において前記第1回転軸と平行に延びるとともに前記一対のシーブ支持部を互いに接続するように配置される位置決めピンであり、前記被係合部は、前記位置決めピンを下方から保持可能なフック形状を有することが望ましい。
【0015】
本構成によれば、フック形状を有する被係合部に位置決めピンを係合させることで、シーブユニットを第2回転軸回りに容易に回動させることができる。
【0016】
また、本発明の他の局面に係るクレーンは、クレーン本体と、前記クレーン本体に起伏可能に軸支されるブームと、前記ブームの先端部に起伏可能に軸支されるジブと、前記ジブの後側において前記ブームの先端部または前記ジブの基端部に回動可能に軸支されるとともに、前記ジブと一体的に回動するように当該ジブに連結されるフロントストラットと、前記フロントストラットの後側の位置で前記ブームの先端部または前記ジブの基端部に回動可能に軸支されるリアストラットと、前記リアストラットの先端部と前記フロントストラットの先端部との間で掛け渡されるジブ起伏用ロープと、前記ジブ起伏用ロープの巻き取りおよび繰り出しを行うことで、前記リアストラットに対して前記フロントストラットを相対的に回動させて前記ジブを起伏させるジブ起伏用ウインチと、吊り荷の巻上げおよび巻下げを行うための吊り荷用ロープと、前記吊り荷用ロープの巻き取りおよび繰り出しを行う吊り荷用ウインチと、前記吊り荷用ロープを支持可能なシーブと所定の第1回転軸を中心に前記シーブを回転可能に支持するブラケットとを含むシーブユニットと、前記ブームの先端部に配置される第1ユニット保持部であって、前記ジブ、前記フロントストラットおよび前記リアストラットが前記ブームから脱離され前記ブームの先端部から前記吊り荷用ロープが垂下される前記クレーンの基本形態において前記吊り荷用ウインチから引き出された前記吊り荷用ロープが前記シーブによって支持されるとともに前記ブームの先端部から垂下されるように前記シーブユニットを保持することが可能な第1ユニット保持部と、前記リアストラットおよび前記フロントストラットのうちの少なくとも一方のストラットである特定ストラットに配置される第2ユニット保持部であって、前記ジブ、前記フロントストラットおよび前記リアストラットが前記ブームに装着され前記ジブの先端部から前記吊り荷用ロープが垂下される前記クレーンのラッフィング形態において前記吊り荷用ウインチから引き出された前記吊り荷用ロープが前記シーブによって支持されるとともに前記ジブの先端部から垂下されるように前記シーブユニットを保持することが可能な第2ユニット保持部と、を備え、前記シーブユニットは、前記第1ユニット保持部および前記第2ユニット保持部に選択的に着脱され、前記シーブユニットの前記ブラケットは、ブラケット第1孔部が開口された第1支持部およびブラケット第2孔部が開口された第2支持部を含むシーブ支持部と、所定の補助吊り上げ装置に接続されることが可能な被吊り上げ部と、を有し、前記第1ユニット保持部および前記第2ユニット保持部は、保持部側第1孔部が開口された第1固定部と保持部側第2孔部が開口された第2固定部とをそれぞれ有し、前記保持部側第1孔部と前記保持部側第2孔部とが水平方向に並んでいる場合、前記ブラケット第1孔部および前記ブラケット第2孔部が水平方向に並ぶように前記被吊り上げ部において前記補助吊り上げ装置によって吊り上げられた前記シーブユニットが下げられることで、前記ブラケット第1孔部が前記保持部側第1孔部に合致するとともに前記ブラケット第2孔部が前記保持部側第2孔部に合致し、前記保持部側第1孔部と前記保持部側第2孔部とが上下方向に並んでいる場合、前記ブラケット第1孔部および前記ブラケット第2孔部が水平方向に並ぶように前記被吊り上げ部において前記補助吊り上げ装置によって吊り上げられた前記シーブユニットのうち、前記第1支持部が前記第1固定部に係合したのち、当該第1固定部を支点として前記シーブユニットが回動されることで、前記第2支持部が前記第2固定部に近づき、前記ブラケット第1孔部および前記ブラケット第2孔部が前記保持部側第1孔部および前記保持部側第2孔部にそれぞれ合致することが可能なように、前記被吊り上げ部が、前記第1回転軸に対して、前記第1支持部および前記第2支持部とは反対側に配置されている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数の形態に形態変更が可能なクレーンにおいて、各形態間でシーブを有効活用することでクレーンのコストを低減するとともにクレーンに不要なモーメントが付与されることを抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係るクレーンの第1の形態(ラッフィング形態)の側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るクレーンの第2の形態(基本形態)の側面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るクレーンの上部ブームの側面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るクレーンのアイドラシーブの装着手順を示した側面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るクレーンのアイドラシーブの装着手順を示した側面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るクレーンのアイドラシーブの装着手順を示した側面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るクレーンの第1ユニット保持部の斜視図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るクレーンのシーブユニットの斜視図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係るクレーンの第1ユニット保持部にシーブユニットが装着された様子を示す斜視図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係るクレーンのアイドラシーブの装着手順を示した側面図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係るクレーンのリアストラットの側面図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係るクレーンのリアストラットの平面図である。
【
図13】本発明の一実施形態に係るクレーンの第2ユニット保持部にシーブユニットが装着された様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るクレーン10の第1の形態(クレーン10A)の側面図である。
図1に示されるクレーン10Aは、いわゆるラッフィング形態に相当する。なお、以後、各図には、「上」、「下」、「前」および「後」の方向が示されているが、当該方向は、本実施形態に係るクレーン10の構造および組立方法を説明するために便宜上示すものであり、本発明に係るクレーンの移動方向や使用態様などを限定するものではない。また、本実施形態に係るクレーン10は、一部の部材を組み替えることで、後記の第2の形態(基本形態のクレーン10B)に変更することができる。
【0020】
クレーン10は、クレーン本体に相当する旋回体12と、この旋回体12を旋回可能に支持する走行体14と、ブーム16及びジブ18を含む起伏部材と、ブーム起伏用部材であるマスト20と、を備える。また、旋回体12の後部には、クレーン10のバランスを調整するためのカウンタウエイト13が積載されている。また、旋回体12の前端部には、キャブ15が備えられている。キャブ15は、クレーン10の運転席に相当する。
【0021】
図1に示されるブーム16は、旋回体12に起伏可能に軸支される。ブーム16は、いわゆるラチス型であり、下部ブーム16Aと、一または複数(図例では2個)の中間ブーム16B,16Cおよび16Dと、上部ブーム16Tとから構成される。具体的に、下部ブーム16Aは、旋回体12の前部に起伏方向に回動可能となるように連結される。中間ブーム16B,16Cおよび16Dは、その順に下部ブーム16Aの先端側に着脱可能に継ぎ足される。上部ブーム16Tは中間ブーム16Dの先端側に着脱可能に継ぎ足され、この上部ブーム16Tの先端部に、ジブ18を回動させるためのリアストラット21及びフロントストラット22が回動可能に連結される。ブーム16は、下端部に備えられたブームフットピン16Sを支点として旋回体12に水平な回転中心軸回りに回動可能に軸支される。
【0022】
ただし、本発明ではブームの具体的な構造は限定されない。例えば、当該ブームは、中間ブームがないものでもよく、また、上記とは中間ブームの数が異なるものでもよい。更に、ブームは、単一の部材で構成されたものでもよい。
【0023】
ジブ18も、その具体的な構造は限定されないが、図例ではラチス型の構造を有する。ジブ18は、ブーム16の先端部に起伏可能に軸支される。そして、このジブ18の基端部は、ブーム16の上部ブーム16Tのジブ支持部16Wに回動可能に連結(軸支)されており、ジブ18の回動中心軸は、旋回体12に対するブーム16の回動中心軸(ブームフットピン16S)と平行な横軸になっている。
【0024】
ジブ18は、下部ジブ18Aと、一または複数(図例では1個)の中間ジブ18Bと、上部ジブ18Cとから構成される。具体的に、下部ジブ18Aは、ブーム16の上部ブーム16Tに配置されたジブ支持部16Wに起伏方向に回動可能となるように連結される。中間ジブ18Bは、下部ジブ18Aの先端側に着脱可能に継ぎ足される。上部ジブ18Cは中間ジブ18Bの先端側に着脱可能に継ぎ足される。
【0025】
マスト20は、基端及び回動端を有し、その基端が旋回体12に回動可能に連結される。マスト20の回動軸は、ブーム16の回動軸と平行でかつ当該ブーム16の回動軸のすぐ後方に位置している。すなわち、このマスト20はブーム16の起伏方向と同方向に回動可能である。一方、このマスト20の回動端は左右一対のブーム用ガイライン24を介してブーム16の先端に連結される。この連結は、マスト20の回動とブーム16の回動とを連携させる。
【0026】
旋回体12上には左右一対のバックストップ23が設けられる。これらのバックストップ23は、ブーム16が
図1に示される起立姿勢まで到達した時点で当該ブーム16の下部ブーム16Aの左右両側部に当接する。この当接によって、ブーム16が強風等で後方に煽られることが規制される。なお、他の実施形態において、左右一対のバックストップ23は下部ブーム16Aに設けられており、ブーム16が
図1に示される起立姿勢まで到達した時点で旋回体12の左右両側部に当接する態様でもよい。
【0027】
リアストラット21およびフロントストラット22は、ブーム16の先端部(上部ブーム16T)に回動可能に軸支される。リアストラット21は、フロントストラット22の後側の位置に配置される。リアストラット21は、上部ブーム16Tの先端からブーム起立側(
図1では左側)に張り出す姿勢で保持される。この姿勢を保持する手段として、リアストラット21とブーム16との間に左右一対のバックストップ25及び左右一対のガイリンク26が介在する。バックストップ25は、中間ブーム16Dとリアストラット21の中間部位との間に介在し、リアストラット21を下から支える。ガイリンク26はリアストラット21の先端部とブーム16の下部ブーム16Aとを接続するように張設され、その張力によってリアストラット21の位置を規制する。なお、他の実施形態において、リアストラット21およびフロントストラット22は、ジブ18の基端部に回動可能に軸支されてもよい。また、リアストラット21がブーム16の先端部に回動可能に軸支され、フロントストラット22がジブ18の基端部に回動可能に軸支されてもよい。
【0028】
フロントストラット22は、ジブ18の後方においてブーム16の先端部に回動可能に軸支されるとともに、ジブ18と連動して(一体的に)回動するようにこのジブ18に連結される。詳しくは、このフロントストラット22の先端部とジブ18の先端部とを結ぶように左右一対のジブ用ガイライン28が張設される。従って、このフロントストラット22の回動駆動によってジブ18も回動駆動される。なお、前述のリアストラット21は、フロントストラット22との間で略二等辺三角形形状を形成する。
【0029】
クレーン10には、各種ウインチが搭載される。具体的には、ブーム16を起伏させるためのブーム起伏用ウインチ30と、ジブ18を起伏方向に回動させるためのジブ起伏用ウインチ32と、吊り荷の巻上げ及び巻下げを行うための主巻用ウインチ34とが搭載される。本実施形態に係るクレーン10では、ブーム起伏用ウインチ30がマスト20の基端近傍部位に据え付けられる。また、ジブ起伏用ウインチ32、主巻用ウインチ34がブーム16における下部ブーム16Aに据え付けられる。これらのウインチ30,32,34は旋回体12に搭載されていてもよい。
【0030】
ブーム起伏用ウインチ30は、ブーム起伏用ロープ38の巻き取り及び繰り出しを行う。そして、この巻き取り及び繰り出しによりマスト20が回動するようにブーム起伏用ロープ38が配索される。具体的には、マスト20の回動端部及び旋回体12の後端部にはそれぞれ複数のシーブが幅方向に配列されたシーブブロック40,42が設けられ、ブーム起伏用ウインチ30から引き出されたブーム起伏用ロープ38がシーブブロック40,42間に掛け渡される。従って、ブーム起伏用ウインチ30がブーム起伏用ロープ38の巻き取りや繰り出しを行うことにより、両シーブブロック40,42間の距離が変化し、これによってマスト20さらにはこれと連動するブーム16が起伏方向に回動する。
【0031】
ジブ起伏用ウインチ32は、リアストラット21とフロントストラット22との間に巻き回されたジブ起伏用ロープ44の巻き取り及び繰り出しを行う。そして、この巻き取りや繰り出しによってフロントストラット22がリアストラット21に対して相対的に回動するようにジブ起伏用ロープ44が配索される。具体的には、リアストラット21の長手方向中間部にはガイドシーブ46が設けられるとともに、リアストラット21の回動端部及びフロントストラット22の回動端部にそれぞれ複数のシーブが幅方向に配列されたシーブブロック47,48が設けられている。そして、ジブ起伏用ウインチ32から引き出されたジブ起伏用ロープ44がガイドシーブ46に掛けられ、かつ、シーブブロック47,48間(リアストラット21の先端部とフロントストラット22の先端部との間)に掛け渡される。従って、ジブ起伏用ウインチ32によるジブ起伏用ロープ44の巻き取りや繰り出しは、両シーブブロック47,48間の距離を変え、フロントストラット22さらにはこれと連動するジブ18を起伏方向に回動させる。
【0032】
主巻用ウインチ34は、主巻ロープ50(吊り荷用ロープ)による吊り荷の巻上げ及び巻下げを行う。この主巻について、リアストラット21の基端近傍部位、フロントストラット22の基端近傍部位にはそれぞれアイドラシーブ54、53が回転可能に設けられ、ジブ18の先端部(上部ジブ18C)には、アイドラシーブ52が装着されている。さらにアイドラシーブ52に隣接する位置には複数の主巻用ポイントシーブ56が幅方向に配列された主巻用シーブブロックが設けられている。主巻用ウインチ34から引き出された主巻ロープ50がアイドラシーブ54,53およびアイドラシーブ52に順に掛けられ、かつ、シーブブロックの主巻用ポイントシーブ56と吊荷用の主フック57(フック)に設けられたシーブブロックのシーブ58との間に掛け渡される。従って、主巻用ウインチ34(巻き取り用ウインチ)が主巻ロープ50の巻き取りや繰り出しを行うと、両シーブ56,58間の距離が変わって、ジブ18の先端部から垂下された主巻ロープ50に連結された主フック57の巻上げ及び巻下げが行われる。
【0033】
図2は、本実施形態に係るクレーン10の第2の形態(クレーン10B)の側面図である。
図1に示されるクレーン10(10A)が地上で分解され、その一部の部材によって、
図2に示されるクレーン10Bが組み立てられる。クレーン10Bは、いわゆる基本形態に相当する。
【0034】
クレーン10Bでは、
図1に示されるクレーン10Aのうち主にジブ18、リアストラット21、フロントストラット22などが装備されていない。また、これらの部材を支持するための部材(バックストップ25、ガイリンク26)も装備されていない。
【0035】
図2に示されるクレーン10Bでは、ブーム16の先端部(上部ブーム16T)から主巻ロープ50が垂下される。具体的に、上部ブーム16Tの背面側には、アイドラシーブ54が回転可能に装着されている。また、上部ブーム16Tのうち、ジブ支持部16Wの下方であってアイドラシーブ54に隣接する位置には、複数の主巻用ポイントシーブ16Xが幅方向に配列された主巻用シーブブロックが設けられている。そして、主巻用ウインチ34から引き出された主巻ロープ50がアイドラシーブ54に掛けられ、かつ、シーブブロックの主巻用ポイントシーブ16Xと、吊荷用の主フック57に設けられたシーブブロックのシーブ58との間に掛け渡される。従って、主巻用ウインチ34が主巻ロープ50の巻き取りや繰り出しを行うと、両シーブ16X,58間の距離が変わって、ブーム16の先端部から垂下された主巻ロープ50に連結された主フック57の巻上げ及び巻下げが行われる。
【0036】
図1および
図2を参照して、本実施形態では、
図1のクレーン10Aにおいてリアストラット21の基端部近傍に装着されていたアイドラシーブ54が、
図2のクレーン10Bではブーム16の先端部に装着される。すなわち、アイドラシーブ54は、クレーン10Aのリアストラット21およびクレーン10Bのブーム16の先端部に、選択的に装着される。
【0037】
図3は、本実施形態に係るクレーン10(10B)の上部ブーム16Tの側面図である。なお、
図3では、
図2のクレーン10Bの上部ブーム16Tが前後方向において反転して配置されている。
図4乃至
図6は、本実施形態に係るクレーン10Bのアイドラシーブ54の装着手順を示した側面図である。
図7は、クレーン10Bのシーブ装着部16Pの斜視図である。
図8は、本発明の一実施形態に係るクレーンのシーブユニット54Sの斜視図である。
図9は、本実施形態に係るクレーン10Bのシーブ装着部16Pにシーブユニット54Sが装着された様子を示す斜視図である。
【0038】
図2に示すように、クレーン10の基本形態(クレーン10B)では、リアストラット21およびフロントストラット22がブーム16から脱離され、ブーム16の先端部から主巻ロープ50が垂下される。また、クレーン10Bでは、アイドラシーブ54が上部ブーム16Tに装着される。なお、ブーム16が下部ブーム16A、中間ブーム16B~16Dおよび上部ブーム16Tに分解されると、安全上の観点から上部ブーム16Tは
図3に示されるような姿勢で地面G上に配置されることが多い(ブーム16の長手方向と直交する方向に延びる、上部ブーム16Tの底面部が地面Gに接する姿勢)。
【0039】
上部ブーム16Tは、前述の主巻用ポイントシーブ16X、ジブ支持部16Wに加え、左右一対の上部ブームフレーム板160と、ブーム第1パイプ161と、ブーム第2パイプ162と、シーブ装着部16P(第1ユニット保持部)と、を有する。
【0040】
左右一対の上部ブームフレーム板160は、上部ブーム16Tの左右方向の端部をそれぞれ画定する部材である。ブーム第1パイプ161およびブーム第2パイプ162は、それぞれ左右方向に沿って延びるパイプ材であって、左右一対の上部ブームフレーム板160を互いに接続する。なお、ブーム第1パイプ161は、ブーム第2パイプ162の上方に配置されている。また、ブーム第1パイプ161およびブーム第2パイプ162以外にも他のパイプ材が左右一対の上部ブームフレーム板160を互いに接続するように配置されている。
【0041】
シーブ装着部16Pは、ブーム第1パイプ161およびブーム第2パイプ162(ブーム16の先端部)に配置され、シーブユニット54Sが装着されることを許容する。
図3、
図7を参照して、シーブ装着部16Pは、左右一対の第1固定部161Aおよび左右一対の第2固定部162Aを有する。シーブ装着部16Pは、クレーン10Bにおいて、主巻用ウインチ34から引き出された主巻ロープ50がアイドラシーブ54によって支持されるとともにブーム16の先端部から垂下されるように、シーブユニット54Sを保持する。
【0042】
一対の第1固定部161Aは、ブーム第1パイプ161の左右方向の中央部において間隔を置いて配置される。第1固定部161Aは、ブーム第1パイプ161の外周面から
図3、
図7の前方かつ下方(
図2では後方かつ下方)に突出するようにブーム第1パイプ161に固定された板状部材である。第1固定部161Aは、第1固定用孔部161Bと、ピン係合部161C(被係合部)と、を有する。第1固定用孔部161Bは、第1固定部161Aの中央部付近において第1固定部161Aを左右方向に貫通するように形成された円形状の孔部である。ピン係合部161Cは、第1固定部161Aのうち第1固定用孔部161Bよりも先端側に配置されており、フック形状を有する。ピン係合部161Cは、シーブユニット54Sの位置決めピン544が係合することを許容する。
【0043】
一対の第2固定部162Aは、
図7に示すように、一対の第1固定部161Aの下方に間隔を置いて配置される。また、一対の第2固定部162Aは、ブーム第2パイプ162の左右方向の中央部において間隔を置いて配置される。第2固定部162Aは、ブーム第2パイプ162の外周面から
図3、
図7の前方かつ上方(
図2では後方かつ上方)に突出するようにブーム第2パイプ162に固定された板状部材である。第2固定部162Aは、第2固定用孔部162Bを有する。第2固定用孔部162Bは、第2固定部162Aの先端部付近において第2固定部162Aを左右方向に貫通するように形成された円形状の孔部である。なお、
図4に示すように、第1固定用孔部161Bの中心と第2固定用孔部162Bの中心を結ぶ直線は、略鉛直方向に沿って延びている。
【0044】
なお、左右一対の第1固定部161Aおよび第2固定部162Aは、本発明の一対の保持部側支持部を構成する。一対の保持部側支持部は、シーブユニット54Sを受け入れることでシーブ回転軸541の軸方向において一対の固定用ブラケット54Tにそれぞれ対向して配置される。また、当該一対の保持部側支持部には、前記軸方向において前記一対のブラケット第1孔部542に合致するように配置されることが可能な一対の第1固定用孔部161B(保持部側第1孔部)と、前記軸方向において前記一対のブラケット第2孔部543に合致するように配置されることが可能な一対の第2固定用孔部162B(保持部側第2孔部)とがそれぞれ開口されている。
【0045】
一方、
図8を参照して、シーブユニット54Sは、前述のアイドラシーブ54に加え、アイドラシーブ54を回転可能に支持する左右一対の固定用ブラケット54T(シーブ支持部)と、左右一対の吊上げ用ブラケット54Wと、位置決めピン544(ユニット位置決め部)と、を有する。アイドラシーブ54は、主巻ロープ50を支持可能とされている。
【0046】
一対の固定用ブラケット54Tは、シーブ回転軸541(所定の第1回転軸)を中心に回転可能なようにシーブユニット54Sを支持する。一対の固定用ブラケット54Tは、それぞれ略V字状の部材であって、左右方向において互いに間隔をおいて配置されている。一対の固定用ブラケット54Tの屈曲部には、シーブ回転軸541が一対の固定用ブラケット54Tを互いに接続するように左右方向に沿って延びている。シーブ回転軸541は、アイドラシーブ54を回転可能に軸支しており、アイドラシーブ54の回転における回転軸となる。
図7に示すように、シーブ回転軸541に軸支されたアイドラシーブ54は、左右一対の固定用ブラケット54Tの間に配置される。また、V字形状を有する固定用ブラケット54Tの2つの先端部には、それぞれブラケット第1孔部542およびブラケット第2孔部543が形成されている。これらの孔部は、それぞれ固定用ブラケット54Tを左右方向に沿って貫通するように開口された円形の孔部である。ブラケット第1孔部542は、アイドラシーブ54の回転における径方向においてシーブ回転軸541に対して間隔をおいた位置に配置される。ブラケット第2孔部543は、前記径方向においてシーブ回転軸541に対して間隔をおいた位置であってブラケット第1孔部542に対してアイドラシーブ54の回転方向に間隔をおいた位置に配置される。
【0047】
一対の吊上げ用ブラケット54Wは、一対の固定用ブラケット54Tの屈曲部近傍から突出するように固定用ブラケット54Tに固定されている。吊上げ用ブラケット54Wは、固定用ブラケット54Tのうちシーブ回転軸541に対してブラケット第1孔部542およびブラケット第2孔部543とは反対側の部分に固定されている。
図8に示すように、吊上げ用ブラケット54Wの先端部には、吊り上げ用孔部54W1が開口されている。吊上げ用ブラケット54Wは、吊り上げ用孔部54W1を介して、補助クレーンAC(補助吊り上げ装置)(
図4)に接続される。
【0048】
位置決めピン544は、シーブ回転軸541とブラケット第1孔部542との間において、左右一対の固定用ブラケット54Tを互いに接続するように延びるピンであり、円柱形状を有している。アイドラシーブ54を含むシーブユニット54Sがシーブ装着部16Pに装着される際に、位置決めピン544がピン係合部161Cに係合される。この結果、アイドラシーブ54は、シーブ装着部16Pおよび後記のシーブ装着部21P(特定ユニット保持部)に対するシーブユニット54Sの位置を決定する。
【0049】
次に、
図4乃至
図9を参照して、クレーン10が基本形態に設定される工程について、説明する。シーブ装着部21Pから脱離された状態の前記シーブユニット54Sをシーブ装着部16Pに装着した上でブーム16を旋回体12に装着し、主巻用ウインチ34から引き出された主巻ロープ50をシーブ装着部16Pに装着されたシーブユニット54Sのアイドラシーブ54によって案内し、ブーム16の先端部から主巻ロープ50を垂下させることで、クレーン10を基本形態にする(基本クレーン組立工程)。次に、上記の工程の前において、シーブユニット54Sが
図3の上部ブーム16Tに装着される準備工程について説明する。
【0050】
図4に示すように、補助クレーンACのフックから垂下されたロープが吊上げ用ブラケット54Wの吊り上げ用孔部54W1に接続される。補助クレーンACによってシーブユニット54Sが吊り上げられながら、シーブユニット54Sが上部ブーム16Tのシーブ装着部16Pに近づけられる。やがて、
図5に示すように、シーブユニット54Sが下降しながら(
図5の矢印D1)、シーブユニット54Sの位置決めピン544が左右一対のピン係合部161Cに上から係合される。
【0051】
更に、補助クレーンACによってシーブユニット54Sが下降されると、シーブユニット54Sが位置決めピン544を支点として後方に回動する(
図5の矢印D2)。この結果、
図6、
図9に示すように、シーブユニット54Sのブラケット第1孔部542と第1固定部161Aの第1固定用孔部161Bとが合致するとともに、シーブユニット54Sのブラケット第2孔部543と第2固定部162Aの第2固定用孔部162Bとの位置が合致する。そして、作業者が、連結ピンS1をブラケット第1孔部542および第1固定用孔部161Bに挿入するとともに、連結ピンS2をブラケット第2孔部543および第2固定用孔部162Bに挿入する。この結果、アイドラシーブ54を含むシーブユニット54Sが、ブーム16の上部ブーム16Tのシーブ装着部16Pに装着、固定される。なお、
図4(シーブ回転軸541と平行な方向から見た図)を参照して、上記のようにシーブユニット54Sの位置決めピン544回りの回動によって各孔部の位置が合致するように、位置決めピン544とブラケット第1孔部542との距離とピン係合部161Cと第1固定用孔部161Bとの距離が同じに設定されている一方、ブラケット第1孔部542とブラケット第2孔部543との距離と第1固定用孔部161Bと第2固定用孔部162Bとの距離が同じに設定されている。
【0052】
なお、上部ブーム16Tからシーブユニット54Sが取り外される際には、連結ピンS1、S2が引き抜かれた上で、
図6、
図5および
図4の順に、上記の装着工程とは逆の工程が実施される。
【0053】
以上のように、アイドラシーブ54を含むシーブユニット54Sが上部ブーム16Tのシーブ装着部16Pに装着されると、
図2のクレーン10Bにおいて、ブーム16の先端部から主巻ロープ50が垂下され、不図示のフックによって吊り荷の巻上げ、巻下げ作業が実施可能とされる。
【0054】
なお、シーブユニット54Sは、上部ブーム16Tが単独で地上に載置されている場合(
図3)のみならず、ブーム16が地上に倒伏された状態でシーブ装着部16Pに着脱されてもよい。
図10は、本実施形態に係るクレーン10のアイドラシーブ54の装着手順を示した側面図であり、ブーム16が一体的に地上に倒伏された状態で、シーブユニット54Sが上部ブーム16Tのシーブ装着部16Pに装着される様子を示した図である。
【0055】
図10に示すように、補助クレーンACによってシーブユニット54Sが吊り上げられながら、シーブユニット54Sがブーム16の上部ブーム16Tのシーブ装着部16Pに上から近づけられる。やがて、シーブユニット54Sが下降しながら、シーブユニット54Sの位置決めピン544が左右一対のピン係合部161Cに上方かつ後方から係合される。
【0056】
この結果、シーブユニット54Sのブラケット第1孔部542と第1固定部161Aの第1固定用孔部161Bとが合致するとともに、シーブユニット54Sのブラケット第2孔部543と第2固定部162Aの第2固定用孔部162Bとの位置が合致する。そして、作業者が、予め準備された連結ピンS1(
図6)をブラケット第1孔部542および第1固定用孔部161Bに挿入するとともに、連結ピンS2(
図6)をブラケット第2孔部543および第2固定用孔部162Bに挿入する。この結果、アイドラシーブ54を含むシーブユニット54Sが、ブーム16の上部ブーム16Tのシーブ装着部16Pに上方から装着、固定される。
【0057】
なお、このような場合においても、上部ブーム16Tからシーブユニット54Sが取り外される際には、連結ピンS1、S2が引き抜かれた上で、上記の装着工程とは逆の工程が実施される。
【0058】
一方、クレーン10が
図2に示される基本形態のクレーン10Bから
図1に示されるラッフィング形態のクレーン10Aに形態変更される際には、上部ブーム16Tから取り外されたシーブユニット54Sが、リアストラット21のシーブ装着部21Pに装着される。クレーン10をラッフィング形態で組み立てる際には、ブーム16を旋回体12に装着し、シーブ装着部16Pから脱離された状態のシーブユニット54Sをリアストラット21のシーブ装着部21Pに装着した上でジブ18、リアストラット21およびフロントストラット22をブーム16に装着し、主巻用ウインチ34から引き出された主巻ロープ50をシーブ装着部21Pに装着されたシーブユニット54Sのアイドラシーブ54によって案内し、ジブ18の先端部から主巻ロープ50を垂下させることで、クレーン10をラッフィング形態にする(ラッフィングクレーン組立工程)。
図11および
図12は、本実施形態に係るクレーン10(10A)のリアストラット21の側面図および平面図である。
図13は、本実施形態に係るクレーン10(10A)のシーブ装着部21Pにシーブユニット54Sが装着された様子を示す斜視図である。
【0059】
図11を参照して、リアストラット21は、左右一対のストラット第1メインフレーム211と、左右一対のストラット第2メインフレーム212と、複数のストラットラチス213と、を備える。なお、
図11では、右側のストラット第1メインフレーム211およびストラット第2メインフレーム212が現れている。一対のストラット第1メインフレーム211およびストラット第2メインフレーム212によってリアストラット21の断面四角形状が形成される。すなわち、ストラット第1メインフレーム211およびストラット第2メインフレーム212は、リアストラット21の四つの角部に配置されている。複数のストラットラチス213は、それぞれストラット第1メインフレーム211およびストラット第2メインフレーム212を互いに連結している。更に、リアストラット21は、シーブブロック47と、ストラットフット21Sと、ストラット第1パイプ261と、ストラット第2パイプ262と、シーブ装着部21P(第2ユニット保持部)と、を有する。
【0060】
シーブブロック47は、リアストラット21の先端部に回転可能に支持されている。前述のように、シーブブロック47には、ジブ起伏用ロープ44が掛けられる。
【0061】
ストラット第1パイプ261およびストラット第2パイプ262は、それぞれ左右方向に沿って延びるパイプ材であって、それぞれ左右一対のストラット第2メインフレーム212および左右一対のストラット第1メインフレーム211を左右方向において互いに接続する。なお、
図11では、ストラット第1パイプ261はストラット第2パイプ262の上方に配置されており、
図1では、ストラット第1パイプ261はストラット第2パイプ262の下方に配置されている(
図1では不図示)。また、ストラット第1パイプ261およびストラット第2パイプ262以外にも他のパイプ材がストラット第2メインフレーム212およびストラット第1メインフレーム211を互いに接続するように配置されている。ストラットフット21Sは、ブーム16の上部ブーム16Tに回動可能に軸支される。
【0062】
シーブ装着部21Pは、前述のシーブ装着部16Pと同様の構造を備えている。シーブ装着部21Pは、ストラット第1パイプ261およびストラット第2パイプ262に配置され、シーブユニット54Sが装着されることを許容する(
図13)。シーブ装着部21Pは、クレーン10のラッフィング形態10Aにおいて、主巻用ウインチ34から引き出された主巻ロープ50がアイドラシーブ54によって支持されるとともにジブ18の先端部から垂下されるように、シーブユニット54Sを保持する。
図13を参照して、シーブ装着部21Pは、左右一対の第1固定部261Aおよび第2固定部262Aを有する。第1固定部261Aは、前述の第1固定部161Aと同様に、第1固定用孔部261Bおよびピン係合部261Cを有する。また、第2固定部262Aは、前述の第2固定部162Aと同様に、第2固定用孔部262Bを有する。
【0063】
なお、シーブユニット54Sがリアストラット21のシーブ装着部21Pに装着される工程は、前述のシーブ装着部16Pに対する装着工程と同様である。この際、リアストラット21が
図11に示されるような姿勢で地上に載置された状態で、シーブ装着部21Pに上方からシーブユニット54Sが装着される。
図12に示すように、リアストラット21には、シーブユニット54Sが進入可能な挿入空間Hが形成されている。また、シーブユニット54Sがリアストラット21のシーブ装着部21Pから脱離される工程も、前述のシーブ装着部16Pに対する脱離工程と同様である。
【0064】
以上のように、アイドラシーブ54を含むシーブユニット54Sがリアストラット21のシーブ装着部21Pに装着されると、
図1のクレーン10Aにおいて、主巻用ウインチ34から引き出された主巻ロープ50が、アイドラシーブ54、53および52を介して、ジブ18の先端部から垂下され、不図示のフックによって吊り荷の吊り上げ、吊り下げ作業が実施可能とされる。
【0065】
以上のように、本実施形態では、クレーン10は、ブーム16の先端部から主巻ロープ50が垂下される基本形態と、ジブ18の先端部から主巻ロープ50が垂下されるラッフィング形態と、の間で形態変更が可能とされる。そして、クレーン10は、アイドラシーブ54を含むシーブユニット54Sと、ブーム16に配置されシーブユニット54Sを保持可能なシーブ装着部16Pと、リアストラット21に配置されシーブユニット54Sを保持可能なシーブ装着部21Pと、を備える。クレーン10が基本形態に設定される際には、シーブユニット54Sがシーブ装着部16Pに保持されることで、主巻ロープ50をブーム16の先端部でアイドラシーブ54によって支持することができる。一方、クレーン10がラッフィング形態に設定される際には、シーブユニット54Sがシーブ装着部21Pに保持されることで、主巻ロープ50をリアストラット21においてアイドラシーブ54によって支持することができる。したがって、基本形態およびラッフィング形態の2つの形態において主巻ロープ50を支持するために、ブーム16の先端部およびリアストラット21に個別のシーブが回転可能に保持されている他のクレーンと比較して、クレーン10のコストを低減することができる。また、ラッフィング形態では、シーブユニット54Sがシーブ装着部16Pに装着されていないため、ブーム16の先端部に不要なモーメントがかかることを抑止することができる。
【0066】
また、上記の実施形態によれば、シーブユニット54Sをシーブ装着部16P(特定ユニット保持部)に容易に装着、固定することができる。具体的に、補助クレーンACなどの補助吊り上げ装置がシーブユニット54Sの吊上げ用ブラケット54Wに接続された状態で、シーブユニット54Sが吊り上げられる。そして、シーブユニット54Sの位置決めピン544がシーブ装着部16Pのピン係合部161Cに係合され、シーブユニット54Sがシーブ回転軸541と平行な位置決めピン544の回転軸(第2回転軸)回りに回動されると、左右一対のブラケット第1孔部542が左右一対の第1固定用孔部161Bに合致するとともに、左右一対のブラケット第2孔部543が左右一対の第2固定用孔部162Bに合致する。このため、作業者は、合致した各孔部に連結ピンS1、S2を挿入することで、シーブユニット54Sを容易にシーブ装着部16Pに固定することができる。
【0067】
特に、本実施形態では、ブーム16の上部ブーム16Tが地上に載置された状態において、シーブ装着部16Pの第1固定用孔部161Bは、第2固定用孔部162Bの上方に間隔をおいた位置に配置されており、ピン係合部161Cは、位置決めピン544を下方から支持可能なように第1固定用孔部161Bに隣接して配置されている。このような構成によれば、シーブユニット54Sの位置決めピン544がシーブ装着部16Pのピン係合部161Cに係合されると、補助クレーンACがシーブユニット54Sを下降させることで、シーブユニット54Sの自重によってシーブユニット54Sが位置決めピン544の回転軸回りに回動することができる。したがって、シーブユニット54Sをシーブ装着部16Pに更に容易に固定することができる。
【0068】
また、本実施形態では、位置決めピン544は、シーブ回転軸541とブラケット第1孔部542との間においてシーブ回転軸541と平行に延びるとともに左右一対の固定用ブラケット54Tを互いに接続するように配置され、ピン係合部161Cは、位置決めピン544を下方から保持可能なフック形状を有している。このような構成によれば、フック形状を有するピン係合部161Cに位置決めピン544を係合させることで、シーブユニット54Sを位置決めピン544の回転軸回りに容易に回動させることができる。なお、上記の内容については、シーブ装着部21P(特定ユニット保持部)に対しても、同様の効果が奏される。
【0069】
また、本実施形態に係るクレーンの組立方法は、主巻ロープ50を支持可能なアイドラシーブ54とアイドラシーブ54を回転可能に支持する固定用ブラケット54Tとを含み、リアストラット21に配置されたシーブ装着部21Pおよびブーム16の先端部に配置されたシーブ装着部16Pに選択的に着脱可能なシーブユニット54Sを準備する工程と、シーブ装着部21Pから脱離された状態のシーブユニット54Sをシーブ装着部16Pに装着した上でブーム16を旋回体12に装着し、主巻用ウインチ34から引き出された主巻ロープ50をシーブ装着部16Pに装着されたシーブユニット54Sのアイドラシーブ54によって案内し、ブーム16の先端部から主巻ロープ50を垂下させることで、クレーン10を基本形態にする基本クレーン組立工程と、ブーム16を旋回体12に装着し、シーブ装着部16Pから脱離された状態のシーブユニット54Sをシーブ装着部21Pに装着した上でジブ18、フロントストラット22およびリアストラット21をブーム16に装着し、主巻用ウインチ34から引き出された主巻ロープ50をシーブ装着部21Pに装着されたシーブユニット54Sのアイドラシーブ54によって案内し、ジブ18の先端部から主巻ロープ50を垂下させることで、前記クレーンをラッフィング形態にするラッフィングクレーン組立工程と、を備える。
【0070】
このような方法によれば、基本形態およびラッフィング形態の2つの形態において主巻ロープ50を支持するために、ブーム16の先端部およびリアストラット21に個別のシーブを回転可能に保持する他のクレーンの組立方法と比較して、クレーン10のコストを低減することができる。また、ラッフィング形態では、シーブユニット54Sをシーブ装着部16Pに装着していないため、ブーム16の先端部に不要なモーメントがかかることを抑止することができる。なお、各形態間で、共通のシーブユニット54Sを使用するために、予めシーブ装着部16Pおよびシーブ装着部21Pの一方から他方にシーブユニット54Sを付け替える工程が含まれる。
【0071】
以上、本発明の実施形態に係るクレーン10(10A、10B)およびクレーン10の組立方法(形態変更方法)について説明した。なお、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。本発明は、例えば以下のような変形実施形態を取ることができる。
【0072】
(1)上記の実施形態では、上部ブーム16Tに対してシーブユニット54Sが着脱される際には、
図3に示すように上部ブーム16Tが地面G上に載置される態様にて説明したが、ブーム16が地上に倒伏された状態で、ブーム16の上部ブーム16Tに対してシーブユニット54Sが着脱されてもよい。
【0073】
(2)上記の実施形態では、シーブユニット54Sが、ブーム16に配置されたシーブ装着部16Pに加え、リアストラット21に配置されたシーブ装着部21Pに着脱可能とされる態様にて説明したが、シーブユニット54Sは、フロントストラット22(特定ストラット)に配置された不図示のシーブ装着部(特定ユニット保持部)に着脱可能とされるものでもよい。
【符号の説明】
【0074】
10 クレーン
10A 基本形態
10B ラッフィング形態
12 旋回体(クレーン本体)
14 走行体
16 ブーム
161 ブーム第1パイプ
161A 第1固定部
161B 第1固定用孔部(保持部側第1孔部)
161C ピン係合部(被係合部)
162 ブーム第2パイプ
162A 第2固定部
162B 第2固定用孔部(保持部側第2孔部)
16A 下部ブーム
16B、16C、16D 中間ブーム
16P シーブ装着部(第1ユニット保持部)
16T 上部ブーム
16W ジブ支持部
16X 主巻用ポイントシーブ
18 ジブ
20 マスト
21 リアストラット
21P シーブ装着部(第2ユニット保持部)
211 ストラット第1メインフレーム
212 ストラット第2メインフレーム
213 ストラットラチス
22 フロントストラット
261 ストラット第1パイプ
261A 第1固定部
261B 第1固定用孔部(保持部側第1孔部)
261C ピン係合部(被係合部)
262 ストラット第2パイプ
262A 第2固定部
262B 第2固定用孔部(保持部側第2孔部)
32 ジブ起伏用ウインチ
34 主巻用ウインチ(吊り荷用ウインチ)
44 ジブ起伏用ロープ
50 主巻ロープ(吊り荷用ロープ)
54 アイドラシーブ(シーブ)
541 シーブ回転軸(第1回転軸)
542 ブラケット第1孔部
543 ブラケット第2孔部
544 位置決めピン(ユニット位置決め部)
54S シーブユニット
54T 固定用ブラケット(ブラケット、一対のシーブ支持部)
54W 吊上げ用ブラケット(被吊り上げ部)
56 主巻用ポイントシーブ
57 フック
70 ロングブーム
71~76 中間ブーム
81 ガイライン
82 アイドラシーブ
AC 補助クレーン(補助吊り上げ装置)
G 地面